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特表2022-507823マルチマテリアルのセグメント化された回転電機用固定子の製造方法とその方法で製造された固定子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】マルチマテリアルのセグメント化された回転電機用固定子の製造方法とその方法で製造された固定子
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20220111BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20220111BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H02K1/18 C
H02K15/02 D
H02K3/34 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527931
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(85)【翻訳文提出日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 US2019062445
(87)【国際公開番号】W WO2020106864
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】62/769,765
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595012659
【氏名又は名称】シーアールエス・ホールディングス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】CRS HOLDINGS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】ダス,ジャイディプ
(72)【発明者】
【氏名】メヘディ,モハマド
(72)【発明者】
【氏名】ガーレット,カイル
(72)【発明者】
【氏名】ストリッチ,カイル
(72)【発明者】
【氏名】シャー,タパン
【テーマコード(参考)】
5H601
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA29
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601FF02
5H601GA02
5H601GB12
5H601GB33
5H601GC12
5H601GD02
5H601GD07
5H601GD08
5H601GD18
5H601GD22
5H601KK10
5H601KK21
5H601KK22
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604PB03
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP06
5H615RR05
5H615SS16
5H615SS18
5H615SS24
5H615SS33
5H615SS34
5H615SS35
(57)【要約】
本発明は、高飽和誘導材料の歯セグメントとケイ素鋼の材料のヨークセグメントを有する回転電機用固定子の製造方法である。ヨークセグメントに歯セグメントを接着することにより、少なくとも2つの磁気飽和度を有する固定子を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高飽和誘導の材料から歯セグメントを準備すること;
ケイ素鋼の材料からヨークセグメントを準備すること;
前記歯セグメントを積み重ねて、歯セグメントスタックを形成すること;
前記歯セグメントスタックが、第1の磁気特性および第1の機械特性を有するまで、歯セグメントスタックを加熱すること;
ヨークセグメントを積み重ねて、ヨークリングセグメントスタックを形成すること;
歯セグメントスタックを接着材料で一体に接着して、歯セグメントの積層体を形成すること;
接着材料を有する歯セグメントの積層体を硬化させること;
ヨークリングセグメントスタックを接着材料で一体に接着すること;
接着材料を有するヨークリングセグメントを硬化させること;
歯セグメントスタックとヨークセグメントスタックとを組み立てて、接着または溶接して、組み立てられた固定子を形成すること;および
組み立てられた固定子を硬化させること、
を含む、回転電機用固定子を製造する方法。
【請求項2】
歯セグメントスタックは、電気絶縁層で被覆されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
接着材料と接合材料を、接着強度、熱安定性、耐水・薬品性、電気絶縁性、電磁特性、制振性および耐衝撃性により選択することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
歯セグメントスタックを電気絶縁層で被覆することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
積み重ねる前に、歯ラミネーションとヨークラミネーションとを加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
接着材料をスプレーすること、接着材料をローラーでコーティングすること、毛細管現象によって接着材料が浸透するように、積み重ねたラミネーションを浸漬すること、および積み重ねたラミネーションの露出面を塗装することの少なくとも1つによって、接着材料を適用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
固定子の歯の幅(t)は、ヨークセグメントの環状幅(d)よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
高飽和誘導の材料から選択された歯セグメント;
ケイ素鋼製のヨークセグメント;
歯セグメントスタックを形成する複数の前記歯セグメント;
歯セグメントを加熱する第1の熱源;
ヨークリングセグメントスタックを形成する複数のヨークセグメント;
歯セグメントスタックを一体に接着して歯セグメントの積層体を形成すると共に、ヨークリングセグメントスタックを一体に接着する接着材料;
歯セグメントスタックとヨークセグメントスタックとを接合して、組み立てられた固定子を形成する溶接部;および
組み立てられた固定子を硬化させる硬化デバイス
を含む、回転電機用固定子。
【請求項9】
歯セグメントスタックは、電気絶縁層で被覆されている、請求項8に記載の固定子。
【請求項10】
接着材料は、接着強度、熱安定性、耐水・薬品性、電気絶縁性、電磁特性、制振性および耐衝撃性により選択される、請求項8に記載の固定子。
【請求項11】
歯セグメントスタックは、電気絶縁層で被覆されている、請求項8に記載の固定子。
【請求項12】
さらに歯部を含み、
前記歯部は、さらに
ヨークから半径方向内向きに延在するステムであって、前記ステムは、ケイ素鋼の材料からなるステム;および
高飽和誘導の材料からなるキャップ部
を含む、請求項8に記載の固定子。
【請求項13】
固定子の歯の幅(t)は、ヨークセグメントの環状幅(d)よりも小さい、請求項8に記載の固定子。
【請求項14】
複数の歯セグメントであって、歯セグメントは、高飽和誘導を有する軟磁性合金で形成されている、複数の歯セグメント;
歯セグメントに隣接し、歯セグメントを取り囲む複数のヨークリングセグメントであって、ヨークリングセグメントは、歯セグメントよりも低い飽和誘導を有する軟磁性合金で形成されている、複数のヨークリングセグメント;および
複数の歯セグメントに配置され、複数のヨークリングセグメントに向かって半径方向外向きに延在する少なくとも1つのキーであって、複数のヨークリングセグメントの対応するキー溝と係合して、ヨークとのラッチを生成する、キー
を含む、固定子組立体。
【請求項15】
ヨークリングセグメントは、その上に形成されたキーを有し、当該キーは、歯セグメントの間であってヨークリングに最も近い歯セグメントの端部に形成されたキー溝に半径方向に延在する、請求項14に記載の固定子組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機用固定子に関するものであり、特に複数の軟磁性材料を用いた固定子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回転電機用固定子は、通常、複数の、軟磁性材料の積み重ねられた複数のラミネーションから作られている。従来の固定子の構造は、環状のヨークと、ヨークから半径方向内向きに延在する複数の歯から構成されている。しかし、回転電機の種類によっては、電気機械の動作時に、歯とヨークの磁束密度が異なることが知られている。具体的には、通常、歯は、ヨーク部よりもかなり高い磁束密度を受ける。そのような現象のため、回転電機の効率を向上させるために、そのような部品を異なる磁性材料で作ることが提案されている。例えば、US 6,960,862 B2; US 2017/0237303 A1; WO 02/49190;およびWO 2015/062884を参照のこと。
【0003】
マルチマテリアルの概念は認識されているが、当技術分野では、そのような部品を作るための実行可能な方法は提供されていない。また、現在使用されている標準的な軟磁性材料と比較して、複数の軟磁性材料を使用することで、性能面で効果的であり、コスト面でも経済的であるため、そのような部品の形状に物理的な制限があることも認識されていない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、以下のステップを含む回転電機用固定子の製造方法が提供される。
a. 高飽和誘導のシート/ストリップ(strip)材料から、固定子の歯セグメント用のラミネーションをスタンピングまたは切断すること;
b. ケイ素鋼のシート/ストリップ材料から、ヨークセグメント用のラミネーションをスタンピングまたは切断すること;
c. 歯セグメントのラミネーションを積み重ねて、歯セグメントスタックを形成すること;
d. 歯セグメントスタックを熱処理して、所望の磁気特性と機械特性の組み合わせを得ること;
e. ヨークセグメントのラミネーションを積み重ねて、ヨークセグメントスタックを形成すること;
f. 歯セグメントのラミネーションを接着材料で一体に接着し、接着材料を硬化させること;
g. ヨークリングセグメントのラミネーションを接着材料で一体に接着し、接着材料を硬化させること;
h. 歯セグメントスタックをヨークセグメントスタックに組み付けて接着材料で接着し、固定子を形成すること;および
i. 組み立てられた固定子を熱処理して、接着材料を硬化させること。
【0005】
ステップaにおいて、高飽和誘導の材料は、絶縁層で被覆されていてもよいし、被覆されていなくてもよい。ステップdにおいて、高飽和誘導材料をストリップ状(または帯状)で熱処理してもよいし、積み重ねた状態で熱処理してもよい。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、以下のステップを含む回転電機用固定子の第2の製造方法が提供される。
a. 高飽和誘導のシート/ストリップ材料から、歯部およびヨーク部を含む固定子用ラミネーションをスタンピングまたは切断すること;
b. ケイ素鋼の固定子シート/ストリップ材料から、固定子用ラミネーションをスタンピングまたは切断すること;
c. 高飽和誘導材料のラミネーションと一般的な固定子材料のラミネーションとを交互に積み重ねることによって、ラミネーションを積み重ねて、固定子を形成すること;
d. ラミネーションを接着材料で接着し、接着剤を硬化させること;および
e. 組み立てられたラミネーションを熱処理して、所望の磁気特性と機械特性の組み合わせを得ること。
【0007】
この第2の製造過程のさらなる実施形態では、交互に積み重ねられたラミネーションの厚さを、所望の磁気特性および機械特性に応じて変化させることができる。このとき、スタック内の一方の磁性材料のラミネーションは、他方の磁性材料のラミネーションよりも厚くしてもよい。第2の製造過程の代替的な実施形態では、スタック内の両方の磁性材料のラミネーションを同じ厚さとしてもよく、一方の磁性材料の2つ以上のラミネーションを一緒に積み重ねることによって、一方の磁性材料の層の厚さを増加させてもよい。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、環状のヨークと、ヨークから半径方向内向きに延在する複数の歯と、を含む回転電機用固定子が提供され、歯の幅(t)と環状のヨークの環状幅(d)とが、tがdより小さい(t<d)関係にあり、固定子の材料の最大75体積%、好ましくは20~75体積%が高飽和誘導の材料であり、固定子の材料の残部が、歯の材料の飽和誘導よりも低い飽和誘導を有するケイ素鋼などの軟磁性材料または他の軟磁性合金である。歯における高飽和誘導材料の各ラミネーションの厚さは、0.05mmから0.5mmの範囲、ヨーク材料のラミネーションの厚さは、0.15mmから0.5mmの範囲とすることができる。
【0009】
本発明のこの態様のさらなる実施形態では、固定子は、環状のセグメントと、環状のセグメントから半径方向内向きに延在する複数の歯セグメントと、を含んでもよい。歯セグメントは、歯全体、歯の一部、または歯とヨークの一部とを含んでもよい。
【0010】
本明細書において、「高飽和誘導」とは、鉄-コバルト合金を用いて提供され得る、約2~2.4テスラ(T)の飽和磁気誘導(Bsat)を意味する。「ヨーク材料」とは、2~4重量%のケイ素含有鋼または鉄-コバルト合金材を用いて提供され得る、約1.7~2.1テスラ(T)の飽和磁気誘導を有することを特徴とする材料を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上記概要および以下の詳細な説明は、以下の図面と関連させて読むと、よりよく理解できるだろう。
【0012】
図1図1は、既知の形状を有する固定子スタック用の単一ラミネーションの平面図である。
図2図2は、第2の既知の形状を有する固定子スタック用のセグメント化されたラミネーションの平面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に従って製造された固定子スタック用のセグメント化されたラミネーションの概略図である。
図4図4は、本発明の第2の実施形態に従って製造された固定子スタック用の単一ラミネーションの概略図である。
図5A図5Aは、本発明に係る第1工程に従って、ラミネーションの接着およびラミネーションスタックの接合を行う前の、本発明に従って製造された固定子用ラミネーションスタックの模式図である。
図5B図5Bは、ラミネーションの接着および溶接によるスタックの接合後の、図5Aのラミネーションスタックの模式図である。
図6A図6Aは、本発明に係る第2工程に従って、ラミネーションスタックの接合前に、ラミネーションスタックが接着されている、本発明に従って製造された固定子用ラミネーションスタックの模式図である。
図6B図6Bは、溶接によるスタック接合後の、図6Aのラミネーションスタックの模式図である。
図7A図7Aは、本発明に係る第2工程に従って、ラミネーションスタックの接合前に、ラミネーションが接着されている、本発明に従って製造された固定子用ラミネーションスタックの模式図である。
図7B図7Bは、熱伝導性の接着剤によるスタックの接合後の、図7Aのラミネーションスタックの模式図である。
図8図8は、本発明の別の態様に係る異なる軟磁性材料の積層スタックの第1の実施形態の概略図である。
図9図9は、本発明に係る異なる軟磁性材料の積層スタックの第2の実施形態の概略図である。
図10図10は、回転電機用固定子の歯とヨークセグメントの概略図である。
図11A図11Aは、歯部のセグメントとヨーク部のセグメントとの間のインターロック機構を有する本発明に係る固定子組立体の概略図である。
図11B図11Bは、歯部のセグメントとヨーク部のセグメントとの間の別のインターロック機構を有する本発明に係る固定子組立体の一部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る方法は、2種類の異なる軟磁性材料を利用することにより、電気機械の固定子部分を製造し、電気モーターまたは発電機などの回転電機の動作性能を向上させることを目的としている。本発明のこの態様に関連して、本方法を構成するステップは、固定子の形状に基づいて選択される。
【0014】
図3を参照して、固定子10は、歯12と、バック鉄心(ヨーク)部14とを含む。複数のヨーク部14を接合して、固定子10を形成することができる。あるいは、固定子10は、単独のヨーク部(図示せず)で構成されていてもよい。歯12は、図3に示すように、ヨーク部14の中間に配置されてもよいし、要求される形状に応じて、1つ以上の歯12がヨーク部14の任意の位置に配置されてもよい。
【0015】
歯12は、好ましくは、約2~2.4テスラ(T)の高い飽和誘導(saturation induction)(Bsat)を特徴とする軟磁性合金から作られる。適切な磁性合金の例は、炭素、ニッケル、マンガン、シリコン、コバルト、バナジウム、クロム、銅、アルミニウムおよび鉄のいくつかの組み合わせを含んでもよい。市販の利用可能な磁性合金としては、CARTECH(登録商標)HIPERCO(登録商標)50A合金、CARTECH(登録商標)HIPERCO(登録商標)50合金、CARTECH(登録商標)HIPERCO(登録商標)27合金、およびCARTECH(登録商標)HYPOCORE(登録商標)合金などが挙げられる。ヨーク部14は、好ましくは、約1.7~2.1テスラ(T)の飽和磁気誘導を有することを特徴とする磁性合金から作られる。ヨーク部14に適した材料としては、M19などのケイ素鉄が挙げられる。
【0016】
実施形態では、組み立てられた固定子10の歯12は、固定子10の体積の少なくとも約20%を構成してもよい。このような実施形態では、高飽和誘導磁性合金は、固定子10の歯12にのみ使用される。他の実施形態では、歯12は、固定子の体積の50%以上、例えば75%までを構成してもよい。後者の配置では、歯12は、ヨーク部14の一部を含んでもよい。換言すれば、高飽和誘導磁性合金は、歯12に近接するケイ素鉄材料を置き換えることになる。
【0017】
別の配置として、図4に示すように、固定子40は、ヨーク部44から半径方向内向きに延在する歯部42を有する。歯部42は、同じくヨーク部44から半径方向内向きに延在するステム43と、ステム43に係合して近接するキャップ部45とからなる。キャップ部45は、好ましくは、図3に関連して上述したように、飽和誘導(Bsat)が約2~2.4テスラ(T)であることを特徴とする軟磁性合金から作られている。一方、ヨーク部44およびステム43は、飽和誘導が1.7~2テスラの範囲にある材料から作られている。図3および図4に示すような本発明に係る固定子40のセグメント化された構造は、固定子の歯の幅(t)がヨークの環状幅(d)よりも小さい場合、すなわち、t<dの場合に有効であることがわかった。例えば、図10を参照。
【0018】
一実施形態において、本発明の固定子10は、好ましくは以下のプロセスステップに従って製造される。最初のステップでは、歯12セグメント用の複数のラミネーションは、高飽和誘導を有するシート状またはストリップ状(または帯状)の軟磁性合金からスタンプ(またはプレス加工)または切断される。次に、ヨーク部14用の複数のラミネーションは、より低い飽和誘導を有するシート状/ストリップ状の材料からスタンプまたは切断される。ヨーク部14のラミネーションは、完全なリングとして形成されてもよいし、リングセグメント(ring segments)として形成されてもよい。次に、ヨーク部14の複数のラミネーションを積み重ねてヨーク部を形成する。図3に示すように、積み重ねられたヨーク部14のラミネーションを含むヨーク部は、リングセグメントとして形成されてもよい。
【0019】
歯12セグメントの複数のラミネーションを積み重ねて歯部を形成した後、熱処理を行い、磁気特性と機械特性の所望の組み合わせを得る。歯12セグメントの複数のラミネーショは、エポキシなどの接着材料で一体に接着され、接着材料を所定の方法で硬化させる。例えば、いくつかの接着剤の硬化は、硬化させたいデバイスをヒーターで加熱したり、接着剤に特定の波長の光を照射することで実現できる。
【0020】
固定子に使用されるスタックラミネーション(または、積み重ねられた複数のラミネーション)を接着するための接着剤の例として、レミゾールEB-548(Remisol EB-548)がある。接着剤および/または接合材料の選択は、少なくともその接着強度、熱安定性、耐水性および耐薬品性、電気絶縁性、磁気特性、制振性、および耐衝撃性を含む多くの要素を考慮して行われる。ヨーク部の複数のラミネーションは、エポキシなどの適切な接着材料で一体に接着される。代替構成では、ヨーク部の複数のラミネーションを噛み合わせてもよい。複数の歯セグメントおよびヨークセグメント(または複数のヨークセグメント)は、組み立てられて、接着、溶接、プレスフィット(press fitted)、リベット(riveted)または拡散(diffused, 拡散接合)される。
【0021】
任意の適切な接着材料を利用して、固定子組立体を形成してもよい。あるいは、軟磁性粒子充填エポキシまたは接着剤を使用して、歯12セグメントとヨークセグメントとの間の磁束の流れを改善してもよい。軟磁性粒子充填エポキシは、球状、回転楕円状、フレーク状の軟磁性粒子を20~70体積%含んでもよい。さらに、接着材料は、熱伝導性を有するが、電気絶縁性であり、熱伝導率は0.5~5W/mKの範囲であってもよい。接着材料を用いて歯とヨークセグメントを組み立てた後、組み立てたセグメントを所定の方法で熱処理して接着材料を硬化させる。
【0022】
次に、歯セグメントをヨークリングに、またはヨークリングセグメントに組み付けて接着するための1つの技術について、図5Aおよび図5Bを参照して説明する。図5Aに示すように、第1のステップでは、複数の歯セグメントラミネーション51と複数のヨークリングラミネーション52とを積み重ねる。代替の実施形態では、複数の歯セグメントラミネーション51と複数のヨークリングラミネーション52とを噛み合わせて、それぞれ歯スタック(tooth stack)53およびヨークリングスタック(yoke ring stack)54を形成してもよい。歯スタック53は、図5Aに楕円55で示される、2つのスタックの外側に面したエッジに沿って、好ましくは溶接または他の適切な接合方法によって、ヨークリングスタック54に接合する。接合したスタック53および54は、熱処理されて、所望の磁気特性および機械特性が得られる。複数の歯セグメントラミネーション51は、組立前にスタックをコーティングしない場合、電気絶縁層、例えば酸化膜でコーティングしてもよい。最後に、各スタック内の複数のラミネーションは、毛細管(capillary)または真空含浸(vacuum impregnation)によって適用される適切な接着材料を用いて一体に接着される。
【0023】
歯セグメントをヨークリングにまたはヨークリングセグメントに組み付けて接着するための別の技術について、図6Aおよび図6Bを参照して説明する。この技術では、複数の歯ラミネーションおよび複数のヨークラミネーションを、積み重ねる前に熱処理して絶縁被覆する。複数の歯ラミネーション61を積み重ねて一体に接着して、歯セグメント62を形成する。複数のヨークラミネーション63を積み重ねて一体に接着して、ヨークセグメント64を形成する。複数のラミネーションの向かい合った表面に接着材料を適用(または、塗布)することによって、複数の歯ラミネーション61および複数のヨークラミネーション63を接着する。図6Bにおいて楕円65で示される、2つのスタックの外側に面したエッジに沿って、溶接または他の任意の適切な接合方法を行う。接着材料は、スプレー、ローラーコーティング、または積み重ねられた複数のラミネーションを浸漬して、毛細管現象により接着剤を浸透させることにより適用することができる。続いて、接着剤製造業者が規定する既知の方法で接着剤を硬化する。好ましくは溶接または第1の技術で説明した他の方法によって、歯セグメントスタック62をヨークスタック64に接合する。
【0024】
接合ステップの第1の代替方法では、各スタック内の個々のラミネーションを接着するための同じ接着剤を用いて、歯セグメントスタック62をヨークスタック64に接合する。図7Aおよび図7Bに示すさらなる代替方法として、熱伝導性で電気絶縁性のエポキシから成ってもよい接着剤75を用いて、歯スタック72をヨークスタック74に接着する。さらに、磁性粒子を充填した熱伝導性のエポキシ接着剤を用いて、歯セグメントスタック72をヨークセグメントスタック(複数可)74に接着してもよい。
【0025】
追加の実施形態では、図11Aおよび図11Bに示すように、歯セグメントとヨークセグメントは、スタンプまたは切断されて、積み重ねおよび接着後に、オスとメスのラッチを形成する延出部が形成されてもよい。延出部は、マルチマテリアル固定子にさらなる機械的完全性を提供する。ここで、図11Aを参照すると、本発明に係る固定子組立体110が示されている。固定子組立体110は、複数の歯セグメント112と、歯セグメントに隣接し、歯セグメントを取り囲む複数のヨークリングセグメント114とを含む。歯セグメント112は、上述したように、高飽和誘導を有する軟磁性合金で形成されており、ヨークリングセグメントは、歯セグメントよりも低い飽和誘導を有する軟磁性合金で形成されている。図11Aのこの実施形態では、4つの歯セグメント112と4つのヨークリングセグメント114がある。しかし、固定子のサイズおよび設計要求に応じて、より多くまたはより少ない歯および/またはヨークリングセグメントを用いてもよい。歯セグメント112の各々は、その上に形成され、ヨークリングセグメント114に向かって半径方向外向きに延在するキーまたはリブ116を有する。隣接するヨークリングセグメント114の間には、キー溝またはリブスロット118が形成されている。歯リングセグメント112のキー/リブ116は、歯セグメントがヨークリングセグメントと組み合わされたときに、対応するキー溝/スロット118と係合する。この構造は、歯セグメント112とヨークリングセグメント114との間の相対的な回転運動を防止するラッチング配置を提供する。
【0026】
図11Bは、図11Aに示したものに対する代替的なラッチ配置を示す。固定子組立体120は、ヨークリングセグメント124に組み付けられた歯セグメント121および122を含む。上述したように、歯セグメントは、高飽和誘導を有する軟磁性合金で形成され、ヨークリングセグメントは、低い飽和誘導を有する軟磁性合金で形成される。ヨークリングセグメントは、その上に形成されたキーまたはリブ126を有し、このリブは、ヨークリング124に最も近い歯セグメントの端部において、歯セグメント121および122の間に形成されたキー溝またはノッチ128の中に半径方向に延在する。
【0027】
本発明に係る別のマルチマテリアルのアプローチは、固定子の歯の領域とヨークの領域の両方で高い誘導/磁束密度が発生するようなセグメント化された固定子の設計に有用であろう。このような状況は、歯の幅が環状ヨークの寸法の幅と同様またはそれ以上(t≧d)である場合に生じ得る。図10を参照。この実施形態は、異なる材料のラミネーションを交互に接着することを含む。本発明の態様では、交互の層は、実質的に同じ厚さを有する異なる磁性材料の交互のラミネーションを含んでもよく、例えば、図8に示すように、高飽和誘導の軟磁性合金の0.35mm厚ラミネーション81と、ケイ素鉄の0.35mm厚ラミネーション82とを含んでもよい。別の配置では、異なる磁性合金を異なる体積比および/または厚さで積層してもよく、例えば、図9に示すように、高飽和誘導の軟磁性合金の2枚または3枚の0.2mm厚シート91と、ケイ素鉄の1枚の0.2mm厚シート92とを交互に積層してもよい。交互に配置された層の厚さは、特定の性能ニーズに合わせて選択される。それぞれの層の厚さを変えることで、固定子の誘導と損失を制御し、モーターの性能とコストを最適化することができる。
【0028】
本明細書中で使用されている用語や表現は、説明のためのものであり、限定のためのものではない。このような用語や表現の使用には、示され説明された特徴またはその一部の等価物を除外する意図はない。本明細書に記載され請求された本発明の範囲内で様々な変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
【国際調査報告】