(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】細胞のためのテキスタイル成長マトリクス
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
C12M3/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021528938
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 US2019062621
(87)【国際公開番号】W WO2020106963
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516334709
【氏名又は名称】ザ・セカント・グループ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】ギン,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ,ピーター・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジェレミー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー,アマンダ・ケイ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA08
4B029AA09
4B029AA21
4B029BB01
4B029CC02
4B029CC10
4B029DG08
4B029GB04
4B029GB05
4B029HA02
(57)【要約】
本加工テキスタイル構造体は、テキスタイル細胞成長マトリクスを形成する第1の平均孔径を有する第1のテキスタイルを含み、第1のテキスタイルは織成又は編成構造であり、テキスタイル細胞成長マトリクスは、細胞増殖を促進するのに十分な表面積を有するように構成され、第1の平均孔径は細胞増殖中の空隙の充填を防止するように予め選択される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テキスタイル細胞成長マトリクスを形成する第1の平均孔径を有する第1のテキスタイル;
を含み;
前記第1のテキスタイルは、織成又は編成構造であり;
前記テキスタイル細胞成長マトリクスは、細胞増殖を促進するのに十分な表面積を有するように構成され;
前記第1の平均孔径は細胞増殖中の空隙の充填を防止するように予め選択される、加工テキスタイル構造体。
【請求項2】
前記第1のテキスタイルの繊維が連続又は不連続の吸収性材料でコーティングされている、請求項1に記載のテキスタイル細胞成長マトリクスシステム。
【請求項3】
前記吸収性材料が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)、リシン-ポリ(グリセロールセバケート)(KPGS)、ポリ(グリセロールセバケートウレタン)(PGSU)、アミノ酸組み込みPGS、又はアクリル化ポリ(グリセロールセバケート)(PGSA)の少なくとも1つを含む、請求項2に記載の加工テキスタイル構造体システム。
【請求項4】
前記第1のテキスタイル層が吸収性繊維を含む、請求項2に記載の加工テキスタイル構造体システム。
【請求項5】
前記吸収性繊維が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)、リシンポリ(グリセロールセバケート)(KPGS)、アクリル化ポリ(グリセロールセバケート)(PGSA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリ(ジオキサノン)(PDO)、コラーゲン、フィブリン、アルギネート、又は絹のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の加工テキスタイル構造体システム。
【請求項6】
前記第1のテキスタイルが吸収性繊維から構成される、請求項1に記載の加工テキスタイル構造体システム。
【請求項7】
前記テキスタイル細胞成長マトリクスが5パーセント~75パーセントの空隙率を有する、請求項1に記載の加工テキスタイル構造体システム。
【請求項8】
前記テキスタイル細胞成長マトリクスが40パーセント~75パーセントの空隙率を有する、請求項7に記載の加工テキスタイル構造体システム。
【請求項9】
前記テキスタイル細胞成長マトリクスが5パーセント~40パーセントの空隙率を有する、請求項7に記載の加工テキスタイル構造体システム。
【請求項10】
前記加工テキスタイル構造体に少なくとも1種類の培養可能な細胞型が予め播種されている、請求項1に記載の加工テキスタイル構造体システム。
【請求項11】
前記テキスタイル細胞成長マトリクスが0.01m
2/g~10.0m
2/gの表面積を示す、請求項1に記載の加工テキスタイル構造体システム。
【請求項12】
前記テキスタイル細胞成長マトリクスが0.1m
2/g~3.0m
2/gの表面積を示す、請求項11に記載の加工テキスタイル構造体システム。
【請求項13】
第2の平均孔径を有する第2のテキスタイルを更に含み、前記第2のテキスタイルは織成又は編成構造であり、前記第2の平均孔径は、細胞増殖中の空隙の充填を防止するように予め選択される、請求項1に記載の加工テキスタイル構造体。
【請求項14】
前記第1のテキスタイルの前記第1の平均孔径は、前記第2のテキスタイルの前記第2の平均孔径と異なる、請求項13に記載の加工テキスタイル構造体。
【請求項15】
少なくとも1種類の培養可能な細胞型;
細胞培養培地;及び
請求項1に記載の加工テキスタイル構造体;
を含む容器;
を含む細胞培養システム。
【請求項16】
前記少なくとも1種類の培養可能な細胞型が非自己凝集性細胞型を含む、請求項15に記載の細胞培養システム。
【請求項17】
前記非自己凝集性細胞型が上皮細胞である、請求項16に記載の細胞培養システム。
【請求項18】
前記少なくとも1種類の培養可能な細胞型が自己凝集性細胞型を含む、請求項15に記載の細胞培養システム。
【請求項19】
前記自己凝集性細胞型が、神経幹細胞、間葉系幹細胞、腫瘍細胞、間葉系幹細胞、膵島細胞、及び人工多能性幹細胞、肝細胞、並びにそれらの組合せからなるリストから選択される、請求項18に記載の細胞培養システム。
【請求項20】
前記加工テキスタイル構造体が、吸収性材料でコーティングされたポリエチレンテレフタレート繊維を含む、請求項15に記載の細胞培養システム。
【請求項21】
前記加工テキスタイル構造体が、第1のテキスタイルと積層された第2の平均空隙率を有する第2のテキスタイルを更に含む、請求項15に記載の細胞培養システム。
【請求項22】
前記加工テキスタイル構造体の少なくとも1つのテキスタイル層に、少なくとも1種類の培養可能な細胞型が予め播種されている、請求項15に記載の細胞培養システム。
【請求項23】
前記加工テキスタイル構造体が、0.01m
2/g~10.0m
2/gの表面積を示す、請求項16に記載の細胞培養システム。
【請求項24】
前記加工テキスタイル構造体が、0.1m
2/g~3.0m
2/gの表面積を示す、請求項23に記載の細胞培養システム。
【請求項25】
第1の平均孔径を有する織成又は編成テキスタイル;
を含み;
前記第1の平均孔径は、コロニー形成中の空隙の充填を防止するために予め選択されており;
空隙率は約40パーセント~約70パーセントであり;
前記テキスタイルは吸収性材料を含み;そして
前記テキスタイルに、少なくとも1種類の培養可能な細胞型で予め播種されている、移植可能な器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、平成30年11月21日に出願された米国特許出願第62/770,509号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の利益及びそれに対する優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、細胞ベースのバイオプロセッシング用途に使用するためのテキスタイルベースの細胞成長マトリクス構造体に関する。より詳細には、本出願は、均一な孔径を有する織成及び編成細胞成長マトリクスに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]細胞支持体としてバイオリアクターにおいて使用される従来の構造は、不織シートに基づく。不織シートは、異なるタイプの細胞のための支持体を提供するための万能のアプローチを提供するが、このアプローチに起因する多くの制限に悩まされる。
【0004】
[0004]不織支持体の不規則構造は、空隙構造の非均質性のために、全体を通して細胞応答及び成長の変動をもたらし、最適でない細胞成長をもたらす可能性がある。更に、典型的な不織テキスタイルベースの構造は、細胞増殖、それらの処理、又は細胞の収集の間に断片化/脱落する傾向がある。これらの断片は、細胞ベースの治療用途のために細胞を患者に戻す前に除去する必要があり、又は採取されたウイルス、抗体、又は他の生物学的製剤の純度を改善するために単離する必要がある。
【0005】
[0005]例えば、従来のディスク構造は、大きなポリプロピレン(PP)フィラメントで裏打ちされた不織ポリエチレンテレフタレート(PET)メッシュである。ディスクは、それらの不織構造のために断片化する傾向がある。折り畳まれた非ディスク型ポリエステル不織布は別の典型的な構造であるが、不織布ディスクと同じ制限を有する。また、不織構造体の空隙は、通常は細胞が基材上で増殖するにつれて充填される。現在の技術によって説明されている構造体の密度により、流れの大部分が構造体を貫通してそれを通って流れるのではなくその周囲で起こるので、それを通る栄養物の流れが既に厳しく制限される。増殖している細胞は空隙率を減少させ続けるだけであり、これにより細胞増殖が更に制限される。
【0006】
[0006]更に、媒体へのアクセスは不規則な空隙構造及び/又は細胞が増殖することにつれてより小さい空隙の充填につながるそれらの平坦な性質のために、従来の不織テキスタイル支持体において不均一となる可能性がある。細胞増殖中の空隙の閉鎖は、細胞培地の流動力学を変化させ、支持体の内部の増殖細胞への栄養素のアクセスを制限する。細胞プロセシングの過程にわたるこの制限は、細胞成長/増殖のための栄養素への最適でないアクセス、又は細胞分化、表現型、及び生存率を制御する可溶性因子への一貫しないアクセスをもたらす。
【発明の概要】
【0007】
[0007]一実施形態においては、加工テキスタイル構造体は、テキスタイル細胞成長マトリクスを形成する第1の平均孔径を有する第1のテキスタイルを含む。第1のテキスタイルは織成又は編成構造であり、テキスタイル細胞成長マトリクスは、細胞増殖を促進するのに十分な表面積を有するように構成され、第1の平均孔径は細胞増殖中の空隙の充填を防止するように予め選択される。
【0008】
[0008]別の実施形態においては、細胞培養システムは、少なくとも1つの培養可能な細胞型及び細胞培養培地と組み合わさった本明細書に記載される加工テキスタイル構造体を含む容器を含む。
【0009】
[0009]本発明の特徴及び利点は、本発明の原理を例として示す添付の図面と組み合わせて解釈して、以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】[0010]
図1は、一実施形態によるテキスタイル構造体を示す。
【
図2】[0011]
図2は、一実施形態によるテキスタイル構造体を示す。
【
図3】[0012]
図3は、一実施形態によるテキスタイル構造体を示す。
【
図4】[0013]
図4は、一実施形態によるテキスタイル構造体を示す。
【
図5】[0014]
図5は、一実施形態によるテキスタイル構造体を示す。
【
図6】[0015]
図6は、一実施形態によるテキスタイル構造体を示す。
【
図7】[0016]
図7は、一実施形態によるテキスタイル構造体を示す。
【
図8】[0017]
図8は、一実施形態によるテキスタイル構造体を示す。
【
図9】[0018]
図9は、一実施形態によるテキスタイル構造体を示す。
【
図10】[0019]
図10は、一実施形態によるテキスタイル構造体を示す。
【
図11】[0020]
図11は、一実施形態による細胞培養のためのシステムを示す。
【
図12】[0021]
図12は、一実施形態による単回使用バイオリアクターシステムにおけるテキスタイル構造体を示す。
【
図13】[0022]
図13は、一実施形態による単回使用バイオリアクターシステムにおける織物構テキスタイル構造体を示す。
【
図14】[0023]
図14は、一実施形態による単回使用バイオリアクターからの細胞の回収を示す。
【
図15】[0024]
図15は、一実施形態による積層されたテキスタイル構造体を示す。
【
図16】[0025]
図16は、一実施形態によるテキスタイル細胞成長マトリクス上でのヒト心臓線維芽細胞の培養を示す。
【
図17】[0026]
図17は、細胞増殖中の経時的なグルコース及びラクテート濃度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0027]可能な限り、同じ参照番号は図面全体において同じ部品を表すために使用される。
[0028]当技術分野におけるこれらの欠点に対処するために、細胞増殖、微生物培養、又はウイルス産生の間の収量を増加させるための高表面積基材としてのバイオプロセッシング用途のための調整可能な空隙率を有する細胞のための成長マトリクスを提供する、織成、編成、又は編組された加工テキスタイルが提供される。加工テキスタイルは、現在の市販製品と比較して改善された細胞の仕上がりをもたらす特定の細胞型に合わせて調整された構造特性又はコーティング特性を与える。これとしては、付着、増殖、及び機能を増強するための、マトリクス又はコーティングの剛性、及びテキスタイル成長マトリクス又は細胞型特異的コーティングの表面化学性質のような生理化学的特性の改変を挙げることができる。
【0012】
[0029]輪郭ガイダンスは、組織が増殖するにつれて成長する組織細胞が表面の輪郭特徴に従う自然な傾向である。バイオリアクター細胞成長の間、組織は増殖して成長プロセスの一部として細胞成長マトリクスにコロニーを形成する。足場又はテンプレートとして作用し得る、細胞成長マトリクスのようなテキスタイル構造体中へのコロニー形成は、テキスタイルの組織への結合機構の形態である。マトリクス構造の選択は、細胞型に基づいて細胞成長及びコロニー形成を最適化するようにカスタマイズすることができる。
【0013】
[0030]成長マトリクスは、織成、編成、及び編組されたテキスタイル構造体を組み込んで、充填床バイオリアクター中で多数の細胞を培養する場合に、より良好な結果を生じるように操作され得る、より秩序化された構造を生成する。特定の用途は、従来の不織繊維技術からの無秩序構造によっては生成することができないこれらのテキスタイル技術で製造することができる特定の構造に対する細胞による応答から生じる。
【0014】
[0031]細胞成長マトリクスは、ダブルニードルバー編み、平織り、綾織り、畝織り(例えば、経畝又は緯畝)、サテン織り、模沙織り、及び/又は杉綾織りなどの種々の織成、編成、又は編組構造から形成することができる。幾つかの実施形態においては、細胞成長マトリクスは、平織り、絡織り、又は編成構造から形成される。一実施形態においては、細胞成長マトリクスは絡織り構造から形成される。一実施形態においては、細胞成長マトリクスはダブルニードルバー(DNB)編成構造から形成される。幾つかの実施形態においては、細胞成長マトリクスは複数の上記構造から形成される。
【0015】
[0032]一実施形態においては、織成、編成、又は編組構造としては、異なる繊維断面を有するフィラメント、繊維、又はヤーンを挙げることができる。幾つかの実施形態においては、断面としては、円形、楕円形、多葉(例えば、三葉、四葉)形、三角形、ライ豆形、小葉形、平坦、及び/又はドッグボーン形の断面を挙げることができる。幾つかの実施形態においては、断面は更に鋸歯状であってもよい。幾つかの実施形態においては、繊維及び/又はヤーンは、連続フィラメント及び/又はマルチフィラメントの繊維又はヤーンであってもよい。幾つかの実施形態においては、テキスタイル成長マトリクスはモノフィラメントヤーンを使用して形成することができる。幾つかの実施形態においては、テキスタイル成長マトリクスはマルチフィラメントヤーンを使用して形成することができる。幾つかの実施形態においては、テキスタイル成長マトリクスはプライヤーンの複数の構造を使用して形成することができる。幾つかの実施形態においては、細胞成長マトリクスはフラクタル繊維デザイン(米国特許出願公開第2011/0076771号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載)、シースコア、又は海島型断面を有する繊維を含み得る。
【0016】
[0033]細胞成長マトリクスは、単層又は多層のテキスタイルであってよい。織成、編成、及び編組構造は、不織成長マトリクスに対して個々のヤーン又はフィラメントをより良好に組織化する。このような加工テキスタイル構造体は、より少ない遊端部を有する。
【0017】
[0034]多層織成テキスタイル構造体は更に、撹拌又は灌流バイオリアクター内の高い溶液剪断効果から細胞が部分的に保護され得る構造内の「ポケット」を提供する。また、多層構造又は積層構造は、従来使用されている平坦な平面2次元(2-D)構造とは対照的な3次元(3-D)における細胞成長を支持するので、現行技術を超える利点を提供する。
【0018】
[0035]テキスタイル構造の空隙率は、材料の選択及び構築プロセス中に制御されてもよい。調整可能な空隙率は、細胞への栄養素のアクセスを改善し、したがって、バイオリアクター培養における増殖速度及び細胞の健康を改善する。成長マトリクスの空隙率は、バイオリアクター中で成長される細胞の型に基づいて選択され得る。幾つかの実施形態においては、テキスタイル構造体は、栄養素への曝露の前に培養可能な細胞型で更に予備播種されてもよい。
【0019】
[0036]多孔性織成テキスタイル構造体は、細胞の栄養素へのアクセスを調整するために、ピック数及び端部間隔の変更によって改変される。織成テキスタイルにおいて細胞が経験する局所的な整列は、リブ付け、撚り、及び他の織成技術によって変更される。空隙率は、ほとんど無空隙から高空隙率の構造までの範囲であり得る。一般に、多孔性の成長マトリクスは、三次元(3D)クラスターを形成する自己凝集細胞と共に最もよく使用される。自己凝集細胞コロニーは一般に、低接着性基質上に、又は単層を越えて細胞が蓄積することによって形成される。多孔性の成長マトリクスは、細胞の単一層が下にあるテキスタイル成長マトリクスにコロニーを形成すると、凝集体が形成するための空間を提供することができる。別の実施形態においては、3D印刷によって3D空隙性構造体を生成することができる。
【0020】
[0037]幾つかの実施形態において、自己凝集細胞は、神経幹細胞、間葉系幹細胞(MSC)、肝細胞、膵島細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、脂肪由来幹細胞(ASC)、ヒト胚性腎臓(HEK293)、及び胚様体を含む。さらに他の態様において、自己凝集細胞は、ヒト乳腺癌細胞株(MCF-7)、肝臓肝細胞癌(HepG2)、Y79網膜芽細胞腫細胞を含む、腫瘍細胞、癌細胞、及び肉腫細胞を含む。幾つかの実施形態において、非ヒト自己凝集細胞は、COS-7サル細胞、Sf9昆虫細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、及びマウス3T3線維芽細胞株を含む。幾つかの実施形態において、自己凝集細胞は、ハイブリドーマを含む。
【0021】
[0038]幾つかの実施形態においては、層及び/又はテキスタイル成長マトリクス全体の空隙率は、少なくとも5パーセント、少なくとも10パーセント、少なくとも15パーセント、少なくとも20パーセント、少なくとも25パーセント、少なくとも30パーセント、少なくとも35パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも45パーセント、75パーセント未満、70パーセント未満、65パーセント未満、60パーセント未満、55パーセント未満、50パーセント未満、並びにそれらの範囲及び下位範囲の組み合わせであってよい。
【0022】
[0039]細胞成長マトリクスは、細胞増殖を支持するのに十分な範囲の表面積を有して形成され得る。一般に、より多孔性のテキスタイル構造体は増加した表面積を有する。幾つかの実施形態において、層及び/又はテキスタイル成長マトリクス全体の表面積は、1g当たり少なくとも0.01平方メートル(m2/g)、少なくとも0.1m2/g、少なくとも0.5m2/g、少なくとも1.0m2/g、少なくとも1.5m2/g、10.0m2/g未満、8.0m2/g未満、6.0m2/g未満、5.0m2/g未満、4.0m2/g未満、3.0m2/g未満、2.5m2/g未満、2.0m2/g未満、並びにその範囲及び下位範囲内であってよい。
【0023】
[0040]幾つかの実施形態において、平均孔径は、0μm~2mm、2μm~1mm、5μm~800mm、10μm~600mm、15μm~500mm、20μm~400mm、30μm~350mm、40μm~300mm、50μm~250mm、60μm~200mm、70μm~170mm、80μm~150mm、90μm~130mm、100μm~120mm,並びにその間の範囲及び下位範囲内であってよい。多層成長マトリクスの層の平均孔径は、同じであっても異なっていてもよい。
【0024】
[0041]孔径は、形成される細胞コロニーに基づいて選択することができる。大きな孔径は、栄養素が成長マトリクス構造体全体に容易に流れることを可能にし、細胞が増殖するための大きな開放領域を提供する。自己凝集性細胞培養は、多孔性の環境において高収率を産生し得る。より低い空隙率のテキスタイル成長マトリクスは、上皮細胞のような非自己凝集性細胞型の培養を促進し得る。幾つかの実施形態において、約30マイクロメートル~約350マイクロメートルの平均孔径は、種々の細胞型の効率的な培養を可能にし得る。孔径はmmの範囲内であり得るが、このような大きな孔径は一般に、細胞増殖に利用可能な表面積の減少をもたらす。
【0025】
[0042]編成空隙率は、ヤーンデニール及びループサイズの選択によって制御することができる。編成構造の大きな空隙率は、増殖が進行するにつれて細胞が凝集体を形成することを可能にし、そして細胞数は、コンフルエントな単層のレベルを超えて蓄積する。幾つかの実施形態においては、編成成長マトリクスは、神経幹細胞、間葉幹細胞、癌細胞などの腫瘍細胞、間葉幹細胞、膵島細胞、及び人工多能性幹細胞、並びに他の自己凝集性細胞型の成長の結果物のような細胞スフェロイドの形成に使用される。
【0026】
[0043]幾つかの実施形態において、織成、編成、又は編組成長マトリクスのヤーンデニールは、少なくとも5デニール、少なくとも7デニール、少なくとも10デニール、少なくとも12デニール、少なくとも15デニール、少なくとも20デニール、少なくとも30デニール、少なくとも50デニール、少なくとも80デニール、1000デニール未満、750デニール未満、500デニール未満、250デニール未満、200デニール未満、100デニール未満、及びそれらの範囲内及び下位範囲内である。
【0027】
[0044]幾つかの実施形態において、平均ニットループサイズは、少なくとも150マイクロメートル、少なくとも200マイクロメートル、少なくとも250マイクロメートル、少なくとも300マイクロメートル、少なくとも350マイクロメートル、少なくとも400マイクロメートル、550マイクロメートル未満、500マイクロメートル未満、450マイクロメートル未満、並びにそれらの範囲及び下位範囲内である。
【0028】
[0045]幾つかの実施形態においては、テキスタイル成長マトリクスは、構造体全体にわたって形状一貫性を有する。形状一貫性とは、テキスタイル構造体全体にわたって実質的に均一な孔径を意味する。形状一貫性は、細胞が付着するテキスタイル構造体の一貫性及び制御を改善し、その結果、細胞成長速度の均一性が改善される。
【0029】
[0046]編組、織成、又は編成成長マトリクスは、バイオリアクターにおける所望の細胞型成長に依存する厚さを示し得る。幾つかの実施形態においては、成長マトリクスの厚さは、テキスタイルの面にわたって実質的に均一である。幾つかの実施形態においては、テキスタイルの厚さは、少なくとも35マイクロメートル、少なくとも40マイクロメートル、少なくとも42マイクロメートル、少なくとも45マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、少なくとも70マイクロメートル、少なくとも100マイクロメートル、少なくとも120マイクロメートル、少なくとも150マイクロメートル、少なくとも200マイクロメートル、少なくとも1000マイクロメートル未満、900マイクロメートル未満、800マイクロメートル未満、700マイクロメートル未満、650マイクロメートル未満、600マイクロメートル未満、550マイクロメートル未満、500マイクロメートル未満、450マイクロメートル未満、400マイクロメートル未満、350マイクロメートル未満、300マイクロメートル未満、250マイクロメートル未満、及びそれらの範囲及び下位範囲内であってよい。
【0030】
[0047]幾つかの実施形態においては、テキスタイル成長マトリクスは複数のテキスタイル層を含み得る。幾つかの実施形態においては、多層成長マトリクスの層の厚さは、少なくとも35マイクロメートル、少なくとも40マイクロメートル、少なくとも42マイクロメートル、少なくとも45マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、少なくとも70マイクロメートル、少なくとも100マイクロメートル、少なくとも120マイクロメートル、少なくとも150マイクロメートル、350マイクロメートル未満、300マイクロメートル未満、250マイクロメートル未満、及びそれらの組み合わせであってよい。
【0031】
[0048]編組、織成、又は編成成長マトリクスは、いずれかの吸収性材料、非吸収性材料、又はテキスタイル形成に適した材料の組み合わせから形成されてもよい。適切な非吸収性材料としてはポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、コラーゲン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。適切な吸収性材料としては、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)、リシンポリ(グリセロールセバケート)(KPGS)、アクリル化ポリ(グリセロールセバケート)(PGSA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリ(ジオキサノン)(PDO)、コラーゲン、フィブリン、アルギネート、絹、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、成長マトリクスはポリエチレンテレフタレート(PET)を含み得る。一実施形態においては、成長マトリクスはポリエチレンテレフタレート(PET)から形成されていてよい。一実施形態においては、成長マトリクスは、1デニール当たり7グラム(7g/デニール)を超えるテナシティを有するPET繊維を含む。一実施形態においては、成長マトリクスは丸い輪郭を有するPET繊維を含む。
【0032】
[0049]幾つかの実施形態においては、成長マトリクスの繊維又はヤーンにコーティングを施してもよい。幾つかの実施形態においては、コーティングはテキスタイルの形成前に繊維又はヤーンに適用されてもよい。幾つかの実施形態においては、コーティングはテキスタイル構造体の形成後に適用されてもよい。幾つかの実施形態においては、コーティングは再吸収性材料から形成されてもよい。吸収性材料は、組織の内因性再生を増強し得る。適切な吸収性材料としては、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)、リシンポリ(グリセロールセバケート)(KPGS)、ポリ(グリセロールセバケートウレタン)(PGSU)、アミノ酸組み込みPGS、アクリル化ポリ(グリセロールセバケート)(PGSA)、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、コーティングは、噴霧若しくは浸漬コーティング、又は積層によって適用されてもよい。コーティングは成長マトリクスへの細胞付着を改善し、残留するテキスタイル断片形成の危険性を低減することができる。吸収性材料はさらに、トリプシン処理プロセス中にコーティングが剥離した場合に、細胞と共に患者に注入され得る生分解性基質を提供する。別のアミノ酸官能化PGS組成物、ウレタン結合などの別の架橋モチーフを利用するPGS組成物でのコーティングを含む、PGSの他の改変体も使用することができる。
【0033】
[0050]一実施形態においては、細胞成長マトリクスは、培養細胞が損傷した組織又は器官系の再生機能を提供することが意図される、in vivo細胞ベースの治療用途に使用されてもよい。本明細書に記載されるような幾つかの実施形態の細胞成長マトリクスの生体吸収性及び生体適合性の性質のために、成長マトリクスは、細胞ペイロードに特異的な解剖学的部位での細胞拡張後に移植され得る。例えば、インスリン産生細胞から構成されるテキスタイル成長マトリクスは損なわれた膵臓のインスリン産生能力の再生を促進するために、膵臓内又は膵臓に隣接して移植される。例えば、心筋細胞又は前駆細胞を含有するテキスタイル成長マトリクスを、心筋梗塞の部位又はその近傍に移植して、天然の心臓組織を再生することができる。
【0034】
[0051]一実施形態においては、テクスチャ及び表面特徴が製造後処理によってテキスタイルに追加されてもよい。テキスタイルの形成後、テキスタイルは、レーザーアブレーション、レーザーエッチング、化学エッチング、コロナ処理、又はプラズマ処理のような追加の処理を受けてもよい。製造後処理は、マイクロビアスルーホール構造、表面テクスチャ(例えば表面粗さ)の改質、及び/又はパターン化を含む種々の特徴を付加してもよい。テキスタイル成長マトリクスは、繊維端部を一緒に固定(溶融)するために、縁部に沿って任意に追加的にレーザー切断又は加熱されてもよい。テキスタイル成長マトリクスはまた、熱収縮特性を有する繊維を使用して、しわ付き又は他の3Dテキスタイル構造を製造することによって製造されてもよい。
【0035】
[0052]幾つかの実施形態においては、製造後プロセシングによって細胞付着及びタンパク質吸着を増強し得る。幾つかの実施形態においては、テキスタイル成長マトリクスは、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、-RGD(アミノ酸配列:アルギニン-グリシン-アスパラギン酸)含有ペプチド、-IKVAV(アミノ酸配列:イソロイシン-リシン-バリン-アラニン-バリン)含有ペプチド、及び-YIGSR(アミノ酸配列:チロシン-イソロイシン-グリシン-セリン-アルギニン)含有ペプチドなどの細胞結合タンパク質でコーティングされる。幾つかの実施形態においては、テキスタイル成長マトリクスは、ポリリシンなどの正に帯電した材料でコーティングされる。幾つかの実施形態においては、ヘパリンなどの可溶性因子封鎖分子が、テキスタイル成長マトリクス表面に結合される。幾つかの実施形態においては、グリコサミノグリカン(GAG)又はヒアルロン酸などの多糖が、テキスタイル成長マトリクスの表面上に組み込まれる。
【0036】
[0053]移植されたテキスタイルの表面にトポグラフィー(例えば、パターン化及び/又はテクスチャー化)を組み込むことによって、発達した表面は、コロニー形成細胞が従うための統合誘導構造を提供する。これは、テキスタイルへの高度の組織の内方成長によって、より確実な組織へのテキスタイルの結合関係を作り出す。
【0037】
[0054]編組、織成、及び/又は編成細胞成長マトリクスの使用は、抽出された細胞を用いる更なる処理工程の必要性を排除する。もはや、従来の成長マトリクス材料の使用で必要とされるように、抽出された細胞から分離される必要がある断片的な材料は存在しない。FibraCel(登録商標)ディスク又はBioNOCIIキャリアなどの従来の製品は、著しく異なるサイズの2つの異なる繊維材料から構成される。幾つかの実施形態においては、テキスタイル成長マトリクスは、細胞に有利で一貫した成長環境を提供する単一の材料タイプから構成される。
【実施例】
【0038】
[0055]様々な例示的な実施形態が図に示されている。
図1~
図4の例では、図示された成長マトリクスはコーティングされていない。試料を直径約6mmのディスクに切断した。
図1は、ダブルニードルバー(DNB)編成構造100を示す。
図2は、多層織成構造200を示す。
図3は、多孔性の模沙織構造300を示す。
図4は、テクスチャー加工されたダブルニードルバー(DNB)編成構造400を示す。図示された実施例は、繊維材料としてPETを使用する。上記の繊維材料のいずれも、成長マトリクスの形成において、単独で、又は組み合わせて使用することもできる。
【0039】
[0056]
図5~10の例は、種々の実施形態の走査型電子顕微鏡像を提供する。
図5は、低空隙率を有するコーティングされていない直交織り構造500である。
図6は、低空隙率を有するPGSコーティング直交織り構造600である。
図7は、高い多孔性を有するコーティングされていないダブルニードルバー(DNB)編成構造700である。
図8は、高い多孔性を有するPGSコーティングダブルニードルバー(DNB)編成構造800である。
図9は、適度な多孔性を有するコーティングされていない模沙織構造900である。
図10は、適度な多孔性を有するPGSコーティング模沙織構造1000である。
【0040】
[0057]不織布の無秩序な構造は空隙構造の不均質性のために、成長マトリクス全体にわたる細胞応答及び成長の小さな変動をもたらし得、最適でない成長条件をもたらす。空隙構造を調整することにより、これらの変動を除去することができる。加工された織成、編成、及び編組テキスタイルを使用することから生じる空隙構造に対する制御は、テキスタイル成長マトリクス特性を調整するために使用され得る細胞培養培地流動力学の改善されたモデリングを可能にする。3D印刷のような他の技術は3D多孔性構造を生成することができるが、これらは低い表面積対体積比でのより大きな孔径に向かって限定される。
【0041】
[0058]更に、従来の不織構造は二次繊維支持構造によって支持されない限り、機械的に弱いという点で制限される。これは、成長マトリクスを生成するための追加の処理をもたらし、支持体繊維が層間剥離した場合、成長マトリクスの著しい劣化が起こり、バイオリアクターからの除去を必要とする可能性がある。例示されたテキスタイル成長マトリクスは、主要培養構造上に融合される二次成長マトリクスを必要とせず、成長マトリクス破壊の道を提供し得る成分を減少させる。
【0042】
[0059]加工テキスタイルを通る細胞媒体の流れは、制御された空隙構造の使用を介して改善される。適切な構造の例には、
図9及び
図10に示すように、細胞が増殖する際に細胞が空隙を覆うのを防ぐのに十分な大きさの、大きく制御された大きさの空隙を提供する模沙織構造が含まれる。
【0043】
[0060]例示的な実施形態は、細胞が増殖する際の充填を防止するのに十分な大きさの孔径を有する織成テキスタイル構造の使用を含む。細胞増殖の間に空隙が満たされる構造は、培養培地内に含まれる栄養素の輸送の減少をもたらし得、その結果、細胞増殖効率の減少をもたらし得る。この実施形態は主成長マトリクス構造に追加の構造的支持を提供するために二次繊維を必要としないように、機械的に十分に堅牢である。この実施形態は細胞付着を改善し、処理及び使用中の基質脱落のリスクをさらに低減するために、リシンPGS(KPGS)でさらにコーティングされる。大きな孔径を有する模沙織バイオリアクター成長マトリクスの例を
図4に示す。
【0044】
[0061]例示的な実施形態においては、模沙織バイオリアクター成長マトリクスは、KPGSがTHF中に可溶化された後にリシンポリ(グリセロールセバケート)(KPGS)でスプレーコーティングされたマルチフィラメントポリエチレンテレフタレート(PET)ヤーンから構成される、約500マイクロメートルの厚さを有する直径6ミリメートルのディスクである。次に、コーティングを10torrの真空オーブン中で120℃で24時間熱硬化させる。使用中、KPGSは細胞培養の過程で分解し、個々のヤーン繊維間の間隔を最初に満たしながら、下にあるテキスタイル構造上での細胞成長を可能にする。KPGSのコーティングは、下にあるテキスタイル構造が目に見えるように十分に薄く、したがって、ヤーン構造に由来する細胞付着に利用可能な追加の表面積を維持する。ディスク形状は、レーザー切断又は金型を使用した機械的切断を介して調製される。コーティングされた繊維を有する模沙織バイオリアクター成長マトリクスの例を
図10に示す。本明細書に記載の実施形態によるテキスタイル成長マトリクスはまた、正方形、楕円形、管形、及び他の形状などの他の幾何学的形状で提供されてもよい。本明細書に記載される実施形態によるテキスタイル成長マトリクスはまた、単一片又は複数の大きな片としてバイオリアクターデバイスにおいて使用され得る大きなシートに作製され得る。
【0045】
[0062]テキスタイル構造は、充填床バイオリアクターにおける非移植可能な細胞培養成長マトリクスとして使用され得る。これは、一緒に自由にパックされたディスクの形態の実施形態、又は使い捨てバイオリアクターバッグに入れられるより大きなシートとしての実施形態を含む。これらのディスクはPGSコーティングの添加によって改変されるべき断片化の発生率及び柔軟性を減少させて、細胞培養のためのより均一な環境を提供するために、高度に操作された構造を有する。テキスタイル細胞成長マトリクスを構成するヤーン又は繊維はより多くの多孔性を生じるようにテクスチャー化され得、そして細胞培養のためのバイオリアクターにおける潜在的な容積をより良好に利用するために、構造にさらなる三次元性を付加する。
【0046】
[0063]
図11は、テキスタイル細胞成長マトリクス1120及び細胞成長培地1130を含むバイオリアクター1110を有する細胞培養システム1100を示す。細胞コロニー1140は、培養可能な細胞1150の増殖によってテキスタイル細胞成長マトリクス1120上に形成され得る。
【0047】
[0064]幾つかの実施形態において、テキスタイル細胞成長マトリクスの層は細胞培養に利用可能な表面積を増加させるために、又はテキスタイル層間の別個の細胞集団を単離するために、単回使用バイオリアクター内に配置される。実施例を
図12に示す。
図12の例では、バイオリアクターシステム1200が細胞コロニー1240が増殖し得る複数の区別可能なテキスタイル細胞成長マトリクス1230をさらに含有する栄養豊富な培地1220を含有するバイオリアクター1210を含む。
図12の例では、バイオリアクター1210は、テキスタイル細胞成長マトリクス1230を通る栄養豊富な培地1220の流体流を補助するために、揺動運動を受けてもよい。
【0048】
[0065]別の実施形態においては、テキスタイル成長マトリクスは、
図13に示すような3D編成構造の例示的な実施形態のような、単回使用バイオリアクターで利用可能な空間内の連続相であってよい。
図13の例では、バイオリアクターシステム1300が細胞コロニー1340が増殖し得る連続的なテキスタイル細胞成長マトリクス1330をさらに含む栄養豊富な培地1320を含むバイオリアクター1310を含む。
図13の例では、バイオリアクター1310が連続テキスタイル細胞成長マトリクス1330を通る栄養豊富な培地1320の流体の流れを補助するために揺動運動を受け得る。
【0049】
[0066]
図14を参照すると、変形可能なバイオリアクター1410を含むバイオリアクターシステム1400はコロニー形成後にテキスタイル細胞成長マトリクス1420から細胞1440を抽出するために、ローラー1430などを用いて機械的に変形させることができるテキスタイル細胞成長マトリクス1420と共に使用される。テキスタイル細胞成長マトリクス1420上の細胞は細胞1440の放出及び収集を補助するために、ローラー1430との接触の前にトリプシン処理され得る。幾つかの実施形態においては、超音波エネルギーによるものを含む機械的振動をテキスタイル細胞成長マトリクス1420に向けて、テキスタイル細胞成長マトリクス1420からの細胞1440の放出をさらに助けることができる。例えば、ローラ1430は振動し、又は、圧延中に超音波エネルギーを導入するように構成されてもよい。
【0050】
[0067]
図15は、多孔性の勾配を有する多層テキスタイル細胞成長マトリクス1500を示す。示される多層テキスタイル細胞成長マトリクス1500は対称的な構造であり、個々の成長マトリクスを積み重ねることによって、又は連続織成若しくは編成の複数の層として構築され得る。
【0051】
[0068]
図15の実施形態においては、外層1520は第1の空隙1521の最大平均孔径を示す。外層1520に隣接する第2の層1530は、第1の空隙1521の平均孔径よりも小さい第2の空隙1531の平均孔径を示す。第2の層1530に隣接する第3の層1540は、第2の空隙1531の平均孔径よりも小さい第3の空隙1541の平均孔径を示す。第3の層1540に隣接する中央層1550は、第3の空隙1541の平均孔径よりも小さい第4の空隙1551の平均孔径を示す。細胞1560は、多層テキスタイル細胞成長マトリクス1500の層の幾つか又は全てにコロニー形成するか、又は捕捉され得る。幾つかの実施形態においては、成長マトリクスの外側テキスタイル層が成長マトリクスのコアへの細胞浸透を改善するために、より大きな孔径を含む。
【0052】
[0069]
図16は、栄養豊富な培地1630中にテキスタイル細胞成長マトリクス1620を含むバイオリアクター1610を含む潅流バイオリアクターシステム1600を示す。
図16の例では、ヒト心臓線維芽細胞(図示せず)をテキスタイルディスク成長マトリクス1620上で培養した。4.0ml/分の高培地潅流速度で6日間培養物を維持した。
【0053】
[0070]
図17はグルコースの消費及び細胞によるラクテートの産生を示すデータによって示されるように、テキスタイルディスク成長マトリクス上の細胞増殖を示す、培養培地グルコース及びラクテートレベルの毎日の測定値をグラフで表すグラフ1700である。データは、
図16に示すヒト心臓線維芽細胞培養物に対応する。グラフ1700によって表される例において、曲線1710は低プロファイル織物成長マトリクス上で成長した培養物についてのグルコース濃度を表し、曲線1720は模沙織成長マトリクス上で成長した培養物についてのグルコース濃度を表し、曲線1730は、ダブルニードルバー編物成長マトリクス上で成長した培養物についてのグルコース濃度を表す。グラフ1700によって表される例では曲線1740は低プロファイル織物成長マトリクス上で成長させた培養物についてのラクテート濃度を表し、曲線1750は模沙織成長マトリクス上で成長させた培養物についてのラクテート濃度を表し、曲線1760はダブルニードルバー編物成長マトリクス上で成長させた培養物についてのラクテート濃度を表す。
【0054】
[0071]幾つかの実施形態においては、模沙織構造が、多孔性及び全体的な溶液特性の制御を提供するために好ましい場合がある。幾つかの実施形態においては、成長マトリクスは100~150μmの範囲の孔径を有する。これは、充填層バイオリアクターにおいて使用される成長マトリクスの全てを通して均一な細胞培養培地の流れを促進するのに十分である。さらに、孔径は細胞が膨張し、それら自身の細胞外マトリクスを分泌する際に細胞によって覆われることを回避するのに十分に大きく、成長マトリクスの寿命の間、一定の溶液流のために多孔性が維持されることを確実にする。
【0055】
[0072]成長マトリクス密度はサイズに依存し得るが、6mmディスクサイズの成長マトリクスは反応器あたり1リットルあたり30,000成長マトリクスまでの密度で使用され得る。十分なレベルの細胞増殖(又はウイルス若しくは抗体のような他の副産物の産生)の際に、細胞は、次の使用工程の前に成長マトリクスから除去される。成長マトリクスの孔径は100~150μmでトリプシン処理された細胞が成長マトリクスを通ってより容易に流れることを可能にすることによって培養プロセスが完了した際の細胞の除去を容易にするために十分に大きい。幾つかの実施形態において、成長マトリクスは、単一セットの細胞産生のために使用され、次いで、細胞の除去後に処分される。
【0056】
[0073]細胞が充填床構造内のより深くに位置する大型バイオリアクターは培地中に含まれる成長栄養素へのアクセスが制限されており、より大きな多孔性を有するテキスタイルディスクを使用して、充填床全体にわたってより良好な培地流動を促進することができる。これにより、テキスタイルディスクを、現在可能であるよりも大きな反応器で使用することが可能になる。ディスクに使用されるテキスタイルの配向の特定の設計及び制御は、骨格筋細胞又は神経細胞のような、整列のための局所解剖学的手がかりに応答する細胞の改善された成長を促進することができる。
【0057】
[0074]高レベルの栄養素曝露を促進するために使用することができる高剪断溶液用途では、層状織物を使用して、細胞が成長し、高い溶液剪断力の結果として基材から分離することから遮蔽することができる「ポケット」を提供することができる。幾つかの実施形態においては、層状織りは成長マトリクス構造内の空隙率の変動をもたらすことができる。一実施形態においては、多孔性が成長マトリクスの表面及び/又は縁部と比較した場合、成長マトリクスの中心付近でより少ない。一実施形態においては、空隙率の変化を有する成長マトリクスが模沙織構造として形成される。
【0058】
[0075]多層成長マトリクスは、高剪断溶液用途にも使用することができる。多層成長マトリクスは、複数の編成又は織成成長マトリクス層を含むことができる。多層成長マトリクスは、全体的な成長マトリクス内に可変の多孔性をもたらすように構成されてもよい。一実施形態においては、多孔性が成長マトリクスの表面及び/又は縁部と比較した場合、成長マトリクスの中心付近でより少ない。一実施形態においては、減少した多孔性を有する成長マトリクスの部分は模沙織構造を含む。
【0059】
[0076]本明細書に記載の実施形態による成長マトリクスは人工皮膚、創傷ケア用途、軟骨修復及び再成長のためのテンプレートとして使用することができ、放出制御システムとして使用するための薬物を装填し、他の用途の中でもとりわけ生体濾過用途に使用することができる。成長マトリクスはまた、患者自身の細胞が増殖され、その後、成長マトリクスから分離されるか、又は成長マトリクスと共に患者に再導入される、細胞ベースの治療適用のために使用され得る。
【0060】
[0077]本明細書中に記載される実施形態による成長マトリクスはまた、細胞材料以外の生物学的材料を培養するために使用され得る。幾つかの実施形態において、成長マトリクスは、ウイルスを産生するために使用される細胞の培養のために使用され得る。幾つかの実施形態において、成長マトリクスは、治療用タンパク質又は他の生物学的製剤を産生するために使用される細胞の培養のために使用され得る。さらなる実施形態において、成長マトリクスは、細菌及び古細菌の産生のために使用され得る。さらに、幾つかの実施形態において、成長マトリクスは遺伝子細胞に基づく治療のためのベクターへの暴露のための一時的永続性(temporary permanence)のために、成長マトリクスの材料表面に細胞を吸着するために使用され得ることが理解される。
【0061】
[0078]本発明を1つ又は複数の実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素の代わりに均等物を使用することができることが当業者には理解されよう。加えて、その本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に対して適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は本発明を実施するために企図されるベストモードとして開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲内にあるすべての実施形態を含むことが意図される。さらに、詳細な説明において特定される全ての数値は、あたかも正確な値及び近似値が両方とも明確に特定されるかのように解釈されるべきである。
【国際調査報告】