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特表2022-507955画像を使用して乳癌リスクを評価するためのシステムと方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】画像を使用して乳癌リスクを評価するためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20220111BHJP
【FI】
G16H50/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529264
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(85)【翻訳文提出日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 US2019062869
(87)【国際公開番号】W WO2020107023
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】62/770,958
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515140325
【氏名又は名称】アイカード インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ICAD,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100119378
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】ホール,パーフランス,レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,ミカエルエミル,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ジャファリ-クーザン,クーロシ
(72)【発明者】
【氏名】ペリアスウォミー,センスィル
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
本発明は、組織の画像及び(任意選択で)他の患者関連因子に基づいて乳癌診断のリスクを評価するためのシステム及び方法を提供する。CAD(又は同様の)システムが画像を分析し、複数の数値的特徴値を生成する。評価モジュールは、患者因子と病歴から入力を受け取り、特徴値及び患者因子と病歴に基づいてリスクを計算する。マスキングモジュールは、患者因子と病歴から入力を受け取り、特徴値及び患者因子と病歴に基づいて癌があるリスクを計算し、その癌はさもなければ検出される確率が低いことを特徴とする。リコールモジュールは、評価モジュールとマスキング評価モジュールから入力を受け取り、患者による臨床フォローアップのコンピュータ支援表示を生成する。評価の結果は、グラフィカルインターフェイスディスプレイを使用して、臨床医及び/又は患者に表示できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の画像及び(任意選択で)他の患者関連因子に基づいて、癌と診断されるリスクを評価するためのシステムであって、
画像を分析して複数の数値的特徴値を生成するCADシステムと、
入力を受け取り、特徴値に基づいてリスクを計算する評価モジュールと、
を含む上記評価するためのシステム。
【請求項2】
前記評価モジュールは、臨床医が治療反応を監視するために、組織の以前の画像からスコアデータを受け取る、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記評価モジュールは、さらに患者関連因子を受け取り、患者因子と病歴を使用してリスクを計算する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記評価モジュールは、臨床医が治療反応を監視するために、組織の以前の画像からスコアデータを受け取る、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
さらに、患者因子と病歴から入力を受け取り、特徴値及び患者因子と履歴に基づいて癌があるリスクを計算するマスキング決定モジュールを含みその癌はさもなければ検出される確率が低いことを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記評価モジュールは、臨床医が治療反応を監視するために、組織の以前の画像からスコアデータを受け取る、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
さらに、前記評価モジュールと前記マスキング評価モジュールから入力を受け取り、患者による臨床フォローアップのコンピュータ支援表示を生成するリコール決定モジュールを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記評価モジュールは、専門家によって癌を含むことが確認された組織の以前の画像からスコアデータを受け取る、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
前記患者関連因子は、(a)乳房画像、(b)組織密度パーセント、(c)密度の濃さ、(d)画像取得時の年齢、(e)BMI、(1)閉経状況、(g)癌の家族歴、(h)既往歴、(i)生活習慣因子、(j)遺伝的リスク変異体、(k)以前の医療検査からの情報、のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項10】
前記評価モジュールは、特定のサブタイプの癌又は一般化された乳癌を決定する、請求項3に記載のシステム。
【請求項11】
CADシステムによって組織内に特定された病変候補に基づいて特徴が確定される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記リスク評価モジュールは、微小石灰化、腫瘤及び組織密度について各乳房側の間の差異を採用する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記リスク評価モジュールは、組織密度と腫瘤との間の相互作用を採用する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
さらに、リスクとリスク値のスケールのグラフィックディスプレイ出力を提供するユーザインターフェース出力モジュールを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
さらに、マスキングとマスキング値のスケールのグラフィックディスプレイ出力を提供するユーザインターフェース出力モジュールを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項16】
前記ディスプレイ出力は、リコールスコアを提供する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
組織がヒト乳房組織であり、画像はマンモグラフィ画像である、請求項3に記載のシステム。
【請求項18】
組織の画像及び(任意選択で)他の患者関連因子に基づいて癌と診断されるリスクを評価するための方法であって、
CADシステムを使用して画像を分析し、複数の数値的特徴値を生成するステップと、
CADシステムから特徴値を含む入力を受け取り、特徴値に基づいてリスクを計算するステップと、
を有する上記方法。
【請求項19】
前記入力を受け取るステップは、患者関連因子を受け取ることを含み、前記計算するステップは、患者関連因子に基づいてリスクを計算することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
さらに、患者因子と病歴から入力を受け取ることを含むマスキングスコアを決定することと、特徴値及び患者因子と病歴に基づいて癌があるリスクを計算することとを含み、その癌はさもなければ検出される確率が低いことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
さらに、リコールスコアを決定すること、評価モジュールとマスキング評価モジュールから入力を受け取ること、及び患者による臨床フォローアップのコンピュータ支援表示を生成することを含む、請求項20に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房組織及び他の組織の画像に基づいて、(例えば)乳房内の癌性状態が診断されるリスクを決定するためのシステム及び方法に関し、より具体的には遺伝的リスク変異体、遺伝的リスク、既往歴及び/又は生活習慣因子も組み込むことができるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳癌のリスク予測モデルは、生活習慣因子、乳癌の家族歴、マンモグラフィ密度、遺伝的決定因子、又はこれらの因子の任意の組み合わせを使用して、疾患を発症するリスクを予測する。マンモグラフィの密度は、乳癌の最も強力な危険因子の1つであり、マンモグラムのX線撮影で密度の高い線維腺部分で構成されている。乳房の密度が高い女性は、乳癌のリスクが高く、癌がマスクされる(検出されない)確率が高い。乳房に異常な組織変化がある女性は、後で乳癌と診断されるリスクが高くなる。現在、米国の27州でマンモグラフィを受ける女性にマンモグラフィ密度のレベルを報告することが法律で義務付けられているが、乳癌のリスクを報告する義務はない。
現在のコンピュータ支援検出(CAD)ソフトウェアアプリケーション/システムは、早期乳癌の診断において放射線科医がマンモグラフィ検査ユニットを使用するのをサポートするように設計されている。これらのシステム及び/又はソフトウェアのタイプは、疑わしい微小石灰化及び腫瘤を示している確率がある。そのようなシステムの1つは、2014年2月10日に発行された同一出願人による「放射線画像における微小石灰化検出分類」と題する米国特許第8,855,388号に記載されており、その教示内容は参照により有用な背景情報として明示的に本明細書に組み込まれる。簡単に言えば、このシステムは、入力デジタル化された入力情報、(例えば)乳房のマンモグラフィ画像データを操作し、デジタル化された画像は第1の畳み込まれた画像を形成するよう繰り返し畳み込まれる。第1の畳み込まれた画像は、再び畳み込まれて第2の畳み込まれた画像を形成する。各第1の畳み込まれた画像と、関連する第2の畳み込まれた画像はそれぞれステージを表し、各ステージは異常の異なるスケール又はサイズを表す。一例として、ガウシアンコンボルバ(Gaussian convolver)を使用することができ、第2の畳み込みはラプラシアンコンボルバ(Laplacian convlover)を使用することができるが、他のコンボルバも使用できる。導出後、現ステージからの第2の畳み込まれた画像と、前ステージからの第1の畳み込まれた画像が使用されて、ピーク検出器によって現ステージからの第2の畳み込まれた画像から決定される近傍中央値でピーク、又はそうした特定のスケールの異常候補を検出する。
エリクソンらによる研究(有用な背景情報として参照により本明細書に組み込まれる)は、CAD検出システムを使用して、後で乳癌と診断されるための危険因子として微小石灰化と腫瘤を含めることによってリスクモデルを拡張できる可能性を示している。ミカエル・エリクソン、カミラ・ツェネ、ユディ・パウィタン、カリン・レイフランド、ハテフ・ダラビ及びパー・ホール著『乳癌の短期的なリスクを識別するための臨床モデル』(乳癌研究(2017年)19:29(スウェーデン・ストックホルムのカロリンスカ研究所との共同研究)と題する添付の付録参照。この研究でマンモグラフィの密度が最も高い女性を密度が最も低い女性と比較した結果、乳癌のリスクが5倍高くなった。微小石灰化と腫瘤を伴う疑わしい病変をモデルに追加すると、ハイリスクの高い女性はリスクが最も低い女性よりも乳癌のリスクがほぼ9倍高かった。HRTの使用、乳癌の家族歴、及び閉経状況を考慮に入れた完全なモデルでは、曲線下面積(AUC)は0.71に達した。特に、この研究は、リスクを決定する際に乳房画像データを考慮に入れている。この場合、乳房の密度と触感に関連する画像データが採用される。より具体的には、左乳房と右乳房に存在する微小石灰化の数が評価において考慮される。診断画像の前の画像は、乳房のリスクのある病変を特定するために使用される。
乳癌リスクを決定するための他のモデル、例えばTyrer-Cuzickモデル、BOADICEAモデル、及びGailモデルが存在する。これらのモデルは、リスクのある病変の乳房画像を考慮していない。乳癌検診のリスクスコアの決定を改善するために、高解像度の乳房画像情報の可用性を活用することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、健康管理システムに実質的なコスト又は労力を追加することなく、微小石灰化などの組織内の構造の検出に基づくことができる、個別化された乳癌スクリーニングのための容易に実施可能な予測ツールを提供することによって、先行技術の欠点を克服する。そのような微小石灰化は、(例えば)リスクのある病変の検出に基づくことができる。これらの検出された構造の特徴は、マンモグラフィ密度、遺伝的リスク変異体、遺伝的リスク、併存症、ホルモン因子及び生活習慣の因子を含むがこれらに限定されないリスク因子と任意に組み合わせることができる。採用されるプロセスは、深層学習、AI、ニューラルネットワーク、及び/又は取得した画像から高精度の特徴を生成できる同様のコンピューティング/データ処理構成に基づくCAD(又は同様に構成され機能する)コンピューティングシステムを含む。特に、既存の状態を診断するためにCADを使用する、より伝統的な用途に加えて、疾患(例えば乳癌)発症のリスクの予測を強化及び促進するためにリスクのある病変に対するCADシステムを採用する。より具体的には、取得された乳房画像データは、追加の画像特徴を提供することができ、これらはまた以前に採用された微小石灰化及び密度(腫瘤)の測定値よりも有益な予測リスクスコアモデルを導出するために使用される。
【0004】
例示的な実施形態では、組織の画像及び(任意選択で)他の患者関連因子に基づいて、癌と診断されるリスクを評価するためのシステム及び方法が提供される。CAD(又は同様に構成された)システムは、画像を分析し、複数の数値的特徴値を生成する。評価モジュールは(任意選択で)患者因子と病歴から入力を受け取り、特徴値及び患者因子と病歴に基づいてリスクを計算する。マスキング決定モジュールは、患者関連因子から入力を受け取り、特徴値及び患者因子と病歴に基づいて癌があるリスクを計算するが、その癌はさもなければ検出される確率が低いことを特徴とする。リコール決定モジュールは、評価モジュール及びマスキング評価モジュールから入力を受け取り、患者による臨床フォローアップのコンピュータ支援表示を生成する。評価モジュールは、臨床医が治療反応を監視するために、組織の以前の画像からスコアデータを受け取ることもできる。評価の結果は、グラフィカルインターフェイスディスプレイを使用して、臨床医及び/又は患者に表示できる。例示的に、評価モジュールは、専門家によって癌を含むことが確認された組織の以前の画像からスコアデータを受け取る。評価モジュールはまた、臨床医が治療反応を監視するために、組織の以前の画像からスコアデータを受け取る。患者関連因子には、(a)乳房画像、(b)組織密度パーセント、(c)密度の濃さ、(d)画像取得時の年齢、(e)BMI、(f)閉経状況、(g)癌の家族歴、(h)既往歴、(i)生活習慣、(j)遺伝的変異体、及び(k)以前の医療検査からの情報、の少なくとも1つを含む。また、評価モジュールは、特定のサブタイプの癌又は一般化された乳癌を決定するように調整できる。特徴は、CADシステムによって組織内に特定された病変候補に基づいて確定される。さらに、リスク評価モジュールは、微小石灰化、腫瘤、及び組織密度について乳房側の違いを採用することができ、及び/又は組織密度と腫瘤との間の相互作用を採用することができる。ユーザインターフェース出力モジュールは、リスクとリスク値のスケール、マスキングとマスキング値のスケール、及び/又はリコールスコアのグラフィックディスプレイ出力を提供できる。様々な実施形態において、組織はヒト乳房組織であり、画像はマンモグラフィ画像である。
【0005】
以下の発明の説明は、添付の図面を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本明細書のシステム及び方法に従ってリスク評価を実行し、結果をユーザ/臨床医に表示するために、乳房画像データをプロセッサへ送ることに関連するプロセスを示す図である。
【0007】
図1A図1の配置を使用してデータ及び画像を入力するための全体的な実行時手順の流れ図である。
【0008】
図1B図1の全体的な実行時手順のより詳細な流れ図である。
【0009】
図2】実行時リスク評価プロセスで使用するための、患者のマンモグラフィデータから校正された分類子の生成/トレーニングを示す流れ図である。
【0010】
図2A】システム及び方法に従うリスク評価及びトレーニングに使用するための、単一の時点での患者の癌リスクと年齢範囲にわたる集団有病率を示す例示的なグラフである。
【0011】
図2B】システム及び方法に従うリスク評価及びトレーニングで使用するための、経時的な患者の癌リスクと年齢範囲にわたる集団有病率を示す例示的なグラフである。
【0012】
図3】システム及び方法に従うCADシステムによる実行時分析のための乳房の例示的な取得/入力画像である。
【0013】
図3A図3によるCADシステムへの入力のための左乳房と右乳房の画像の例示的なセットである。
【0014】
図4】CADシステムによる追加的な分析のための組織内の病変候補の識別及び位置を示す、図3による乳房の例示的な画像である。
【0015】
図5図4によるCADシステムによる病変候補の識別及び位置に基づく特徴値の計算を示す、図3による乳房の例示的な画像である。
【0016】
図6】システム及び方法によってユーザに提示される例示的なディスプレイであり、リスク及びリコールスコアをグラフでパーセンテージ値として示す。
図7】システム及び方法によってユーザに提示される例示的なディスプレイであり、リスク及びリコールスコアをグラフでパーセンテージ値として示す。
図8】システム及び方法によってユーザに提示される例示的なディスプレイであり、リスク及びリコールスコアをグラフでパーセンテージ値として示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
I.システムの概要
【0018】
一般化された配置100を示す図1を参照すると、画像データ110は、撮像デバイス112又は取得された画像、例えば、(例えば)マンモグラフィに基づく患者114のスキャンから取得された画像のストアに由来する。画像データ110は、プロセッサ及び関連する分析プロセス120に提供される。プロセス(プロセッサ)120は、画像及び下層組織内で検出された構造の重要性の評価に使用するためのスコアを導出するために、ニューラルネットワーク又は同様の学習構成/データ構造(例えばAIベースのシステム)を構築及び/又は採用する深層学習コンピュータ支援検出(CAD)システム130の一部である。本明細書で使用される「CAD」という用語は、コンピュータ支援検出プロセスを実行し、(任意選択で)コンピュータ支援分析プロセスを当業者に明らかな方法で実行することもできるコンピューティングシステム(ハードウェア、ソフトウェア及び/又はファームウェア)を指すことができることに留意されたい。さらに、「CAD」という用語は、当業者に明らかな方法及び/又はカスタマイズされた方法でリスク予測のために最適化されたコンピューティングシステムを含むと解釈することができる。プロセス(プロセッサ)は、ディスプレイ及び/又はタッチスクリーン142、キーボード144、及びマウス146を含むデバイス140によって例示されるように、任意の許容可能なコンピューティングデバイス又は環境(例えばラップトップ、PC、サーバー、クラウドなど)でインスタンス化することができる。
【0019】
プロセス(プロセッサ)120は、様々な因子150を備えており、その一部はユーザが適切なインターフェースを使用してデバイス140を介して入力する。これらの因子は、重要なことに、乳房/組織の密度が含むことができる。そのような密度及び関連するデータは、撮像デバイス112を介して、又は以前のマンモグラフィデータ又はモデルマンモグラフィデータを含む別のソース152を介して送信されたマンモグラフィから導出することができる。他のデータは、年齢、癌の以前の病歴、(例えば)アルコール消費、食事、喫煙、薬物使用、睡眠パターン、家族性遺伝、多遺伝子因子を含む生活習慣などに基づくことができる。プロセッサ120はまた画像データにおいて、(例えば)微小石灰化の存在を決定する。これらの要素は、深層学習計算の一部であるCADスコアを採用するリスク評価プロセス(プロセッサ)124に適用される。
【0020】
図1Aは、図1の配置100によって、及びこれに関連して実行される一般化された実行時手順160を示す。また、図1Bは、手順160のグラフ表示170を示す。図示されているように、手順160はステップ162において、患者から1以上のタイプのマンモグラフィ画像172、例えば2DFFDM画像、3Dトモシンセシスボリューム、及び/又は2D合成画像を入力する。システムはこの画像データを使用して、一連のCAD特徴(以下に説明する数値)174を計算する。システムは、a)患者の年齢、(b)生活習慣の家族性因子、(c)多遺伝子性(DNAベース)の危険因子/スコア(例えば上記のカロリンスカ研究に記載されている)、及び/又は(d)乳房密度を含むがこれに限らない患者に関係する任意選択のデータ176を(例えばインターフェース152を介して)入力することができる。
【0021】
本明細書のシステム及び方法は、全体的手順160のステップ164において、ステップ162からの入力情報を使用して、正確な短期及び長期リスクスコア178(以下に説明する)を計算する。次に、全体的手順160はステップ166において、ステップ164での計算に基づいて短期及び長期リスクスコアと関連する結果を生成し、(例えば)1台のインターフェースデバイス140上でエンドユーザー(例えば臨床医、患者など)に示し、(任意選択で保存)する。ディスプレイは、様々なフォーマット及び提示スタイル、例えばメーター、棒グラフ、曲線、及び/又は色分けされたフィールドを具体化することができる。例えばリスクスコア「メーター」表示180は、悪性腫瘍を発症する2年リスク(「低」、「平均」、「高」の間)のグラフ表示とパーセンテージ表示の両方を提供する。このディスプレイ180はリストされた「マスキングスコア」も含んでおり、これについては以下に説明する。
【0022】
II.スコアと分類子の生成
【0023】
CADで生成されたスコアは、より具体的には、以下の事項を考慮して採用される。
●乳房密度は患者リスクの主要な因子である。
●乳房密度とCAD特徴はマンモグラムから導出できる。
●CAD特徴は、次のような複数の画像特徴を考慮に入れる。
〇患者の疑わしい所見(病変)の数
〇これらの病変が腫瘤又は微小石灰化である確率
〇腫瘤又は微小石灰化が悪性である確率
〇乳房の触感
〇強度分布
●癌の検出に使用されるCAD特徴は、リスク予測の入力機能として採用できる(プロセス(プロセッサ)124)
●これらのCAD特徴は、診断前又は診断マンモグラムで悪性病変を検出するようにCADシステムをトレーニングすることから導出される。
●CAD特徴は、次のような患者情報と共にリスクスコアの予測に使用される。
〇生活習慣因子
〇乳癌の家族歴及び発症年齢
〇遺伝的変異体、例えば多遺伝子リスクスコア
〇年齢
〇体重指数
〇閉経状況
〇乳房組織の異常の既往歴
〇以前の健康診断からの情報
〇アルコールとタバコの使用に関する情報
【0024】
CAD特徴は、以下のような患者情報(上記の因子150)と共に、本明細書のシステム及び方法に従ってリスクスコアの予測に使用される。
【0025】
ここで、図2の手順200を参照すると、上記の情報はリスク評価モジュール/プロセス134によって使用されて、リスクスコアを導出する。ステップ210において、患者に一連のマンモグラムと以前のマンモグラムが提供される。データは、現在のマンモグラムに癌が含まれているか否かに関する知識を含む。ステップ220において、画像上で計算されたCAD特徴を含む既知の特徴を有する以前のマンモグラムも手順200に提供される。手順200はステップ230において、現在及び以前のマンモグラムデータに基づいて、同じ患者の現在のマンモグラムが癌を含んでいるか否かを予測するための分類子を設計/生成する。次にステップ240で、リスクスコアを導出するために分類子スコアを集団有病率に基づいて校正する。
【0026】
ここで図2A及び2Bを参照すると、図示されたそれぞれのグラフ260及び270は、所与の年齢範囲における一般集団のリスクに対する乳癌を発症する患者の年齢関連リスクをプロット262及び272に示す。これらの例における集団有病率の曲線は、10%(264、274)、平均(266、276)、及び90%(268、278)のリスクを表している。患者リスクのプロット272は、グラフ270で20年以上延長されている。
【0027】
別の背景情報として、CADは、(例えば)乳房組織内で発生する微小石灰化や腫瘤などの悪性病変を検出するように設計されている。現在のシステム及び方法では、このプロセスの一部として計算される特徴は、(a)患者の疑わしい所見(病変)の数、(b)これらの病変が腫瘤又は微小石灰化である確率、(c)これらの腫瘤と微小石灰化が悪性である確率、(d)左右の乳房における相対的分布、(e)乳房組織の相対的触感、及び(f)取得した画像内の相対的強度分布を考慮に入れている。これらの特徴は、各検出イベントに対するそれぞれの数値にマッピングされる。一例では、CAD特徴は約65個の浮動小数点値で特徴付けることができる。したがって、多数の可変特徴を提供することにより、計算された短期及び長期リスクモデルの全体的精度を先行技術よりも大幅に向上させることができる。
【0028】
図3図5を参照すると、特徴値を計算するためのプロセスが、乳房の入力画像300(図3)を考慮して表現されている。図3Aに示す例示的な実施形態では、画像は、それぞれの左乳房及び右乳房の頭尾方向(CC)320及び322と、中外斜位方向(MLO)330及び332の両方の表示を含むことができる。CADシステムは、市販/既知の技術を使用して画像300を分析(ブロック420)し、潜在的な悪性病変の位置410を含むリストを生成する。CADシステムは、潜在的な病変410を特定した後で再び利用可能な既知の技術を使用して、これらの病変の各々について特徴数値520を生成する(図5のブロック510)。
【0029】
ステップ250において、校正された分類子は、新しい患者に使用するための後続の実行時プロセスに提供され得ることに留意されたい。そのため、新しい患者に関係するマンモグラフィ画像は、関連患者情報/因子と共にリスク評価プロセスに入力される。次にこの情報は、予測されたリスクスコアを出力するために使用される。
【0030】
III.結果の提示
【0031】
プロセス(プロセッサ)120(図1)は、ユーザインターフェース及び/又はGUI駆動コンポーネント126を含む。これを用いて、提供された情報から計算されたリスクを視覚化するために、臨床医又は他の人が使用するディスプレイを生成する。したがって、上記の手順及び計算の結果は、患者への助言及びフォローアップ訪問及び治療の指導に使用するために、ユーザ及び/又は臨床医に表示することができる。例示的なディスプレイのいくつかの例が、図6図8に示されている。図6のディスプレイ600では、患者の2年リスクスコア(例えば18パーセントの乳癌発症率)が、垂直の(例えば色又は強度コード化された)棒グラフ630に関連付けられたポインタ620を用いて示されている。図7の例示的なディスプレイ700は、2年リスクスコア(例えば28%)に対するポインタ720、また2年リコールスコアポインタ730(例えば18%)を提示する。ディスプレイ800では、リコールスコアはポインタ820として提示されているのに対し、2年リコールスコア830は英数字で表示されているのみである。
【0032】
実際に表示されるリスク値と範囲は、例示的な実装において非常に変動し得ることに留意されたい。例えば全体スケールは0~100のスケールの代わりに、約0%~2%(又は別の比較的低い最大パーセンテージ)である。このような例では、表示された「LOW」リスク値は約0.15%で終了することがあり、「AVERAGE」リスクは約0.6%で終了することがあり、表示された「HIGH」のリスクは約1.6%で終了することがあり、表示された「HIGH+」(非常に高い)は1.6%を超えて最大2パーセント又はそれ以上に延びることがある。全体スケール及び各レベルに対して選択された値は、本明細書に記載する様々な因子に基づいて計算できる。そのような計算でリスクレベルをスケーリングするために使用する所定の閾値が存在する場合がある。
【0033】
リスク評価プロセス124は、例示的なディスプレイ600及び800では英数字で表示され(640及び840)、ディスプレイ700ではポインタ740で表示されるマスキングスコアを計算できることが想定されている。マスキングスコアは、患者が腫瘍の確率が高く、現在の検査でその腫瘍が検出される確率が低い状況でのリスクを定量化する特定のメトリックを計算する。マスキングスコアは、リスクスコアの決定因子を使用して乳癌の症例でトレーニングされ、さらに検出モード(中間期癌とスクリーニング検出癌)でトレーニングされる。スコアは、中間期癌とスクリーニング検出癌との間で異なる特定の画像特徴及び患者の特徴を識別する。予測される高いマスキングスコアは、通常、中間期癌の確率が高いことにつながる。より一般的に、システムのリスク評価モジュールは、臨床医による治療反応の監視を可能にするために、患者の組織の以前の画像からスコアデータを受け取ることができる。
【0034】
臨床医は、治療に対する患者の反応に起因するリスクスコア及びマスキングスコアの変化について、所定の間隔で患者を監視することが望ましいことに留意されたい。このようにして、臨床医は当該患者のための個別プログラムの適切な変更を提案できる。
【0035】
リスク評価プロセス124は、「リコール」スコアを計算することができ、これも例示的なディスプレイ600及び800では英数字で表示され(630及び820)、ディスプレイ700ではポインタ730で表示されている。リコールスコアとは、患者に個別の健康管理プログラムを勧奨するためのコンピュータ支援指標である。
【0036】
例として、英国NICEガイドライン(https://www.nice.org.uk/guidance/cg164)を参照する。以下に、乳癌のリスクが高い女性のためのNICEガイドライン健康管理プログラム(例)の抜粋を掲げる。

16.2. 乳癌のリスクが中等度又は高い女性に対して定期的に超音波検査を提供しないが、以下の場合は考慮する。
●通常はMR1検査を提供するが、(例えば閉所恐怖症のため)適切ではない。
●マンモグラフィ又はMRIの結果を解釈するのが難しい。
16.3. 以下の女性には毎年マンモグラフィ検査を提供する。
●乳癌のリスクが中等度である40~49歳の女性
●乳癌のリスクが高いがBRCA又はTP53キャリアである確率は30%以下である40~59歳の女性
●遺伝子検査を受けていないが、BRCAキャリアである確率が30%を超える40~59歳の女性
●既知のBRCA1又はBRCA2変異を有する40~69歳の女性。

参照
https://www.nice.org.uk/guidance/cgl64/chapter/Reeommendations#siirveiiance-and-straiegies-for-early-detection-of-breast-cancer
【0037】
リコールスコアの特徴付けは、リスクスコア及びマスキングスコアに基づいている。リスクスコアが高いほど、患者は乳癌と診断されるリスクが高いことを示す。マスキングスコアが高いほど、患者のリスクは高く、モダリティ(例えばデジタルマンモグラフィ)の結果は解釈が困難であることを示す。さらにリコールスコアが高いほど、患者はリスクが高く、及び/又はマスキング確率が高いことを示す。リコールスコアは、リスクスコアとマスキングスコアに基づく統計的構成概念である。リコールスコアの範囲は0%~100%の間で定義され、スケールのカットオフはカテゴリを定義する。カテゴリは、女性に個別の健康管理プログラムの勧奨を示すために使用される。勧奨の例として、感度を高めたモダリティを使用する現在の検査のフォローアップ、癌の疑いのフォローアップ、乳癌のリスク又はマスキングを減らすプログラムへの参加、より集中的なスクリーニング又はより少ない頻度のスクリーニングがある。
【0038】
IV.性能
【0039】
次の表は、感度と特異性の曲線について、カロリンスカ研究で提案されたリスクモデルにCAD検出特徴を組み込んだシステム及び方法(モデル1)でAUCが少なくとも7%改善されたことを示している。比較のため、精度をさらに向上させる他のモデルと従来のリスクモデルも示されている。

識別性能AUC(95%CI)
他のリスクモデルとの比較:
PRS(BCAC) 0.65(0.62-0.67)
Tyrer-Cuzick 0.63(0.61-0.65)
Gail 0.55(0.53-0.57)

受信者動作曲線の曲線下面積(AUC)及び95%信頼区間を使用した識別性能
リコールスコアは、偶発的な乳癌の症例と、リスクスコアとマスキングスコアを予測因子として使用した対照群とを対比させた。リスクスコアとマスキングスコアは、リスク予測とマスキング予測からそれぞれ時間枠を使用して完全なコホートで予測された。
含まれる生活習慣と家族危険因子は、BMI、閉経状況、HRTの現在の使用、タバコ、アルコール、及び乳癌の家族歴であった。
リコールモデル1、2及び3に対するHosmer-Lemeshow モデルフィットテスト統計量は0.22、0.16及び0.24であった。
【0040】
V.結論
【0041】
患者情報及び従来の因子(乳房密度)と組み合わせた画像データのCAD分析に基づいてリスクをモデル化するための上記のシステム及び方法が、結果の精度の大幅な向上を達成することは明らかであろう。このアプローチにより、CADベースの計算環境(例えば深層学習、ニューラルネットワーク、AI)を通して、既存の画像データをプログレッシブに更新することによって全体的モデルを改善するよう学習することが可能となる。結果は、ユーザと患者の理解を一層容易にする様々なグラフィック形式で表示することができる。
【0042】
以上、本発明の例示的な実施形態を詳細に説明した。本発明の精神と範囲を逸脱することなく種々の改変及び追加を行うことができる。上述した種々の実施形態の各々の特徴は、関連する新しい実施形態において多数の特徴の組み合わせを提供するために、適切であれば別の記載された実施形態の特徴と組み合わせることができる。さらに、上で本発明の装置と方法の複数の別個の実施形態を説明したが、本明細書に記載されたものは本発明の原理の適用を例示したものにすぎない。例えば本明細書中で使用される「プロセス」及び/又は「プロセッサ」という言葉は電子ハードウェア及び/又はソフトウェアをベースとする多様な機能及びコンポーネント(或いは機能的「モジュール」又は「エレメント」と呼ぶことがある)を含むように広く解釈すべきである。さらに、表示されたプロセス又はプロセッサは他のプロセス及び/又はプロセッサと組み合わせ、又は種々のサブプロセス又はサブプロセッサに分割されてよい。そのようなサブプロセス及び/又はサブプロセッサは、本明細書に記載された実施形態に従って多様に組み合わせることができる。同様に、本明細書中の何らかの機能、プロセス及び/又はプロセッサは、プログラム命令の非一時的コンピュータ可読媒体からなる電子ハードウェア、ソフトウェア、或いはハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いて実施できることが明確に想定されている。加えて、本明細書で使用される様々な方向及び/又は配置を表わす用語(及びそれらの文法的変化)、例えば「垂直」、「水平」、「上」、「下」、「底部」、「頂部」、「側部」、「前部」、「後部」、「左」、「右」、及びこれに類するものは、相対的な表現法としてのみ用いられ、重力の作用方向など固定した座標空間に対する絶対的な方向/配置としては用いられない。さらに、所与の測定、値又は特徴に関して「実質的に」又は「近似的に」という言葉が用いられる場合、それは所期の結果を達成するための通常の動作範囲内にあるが、システムに許容された誤差の範囲内の固有の不正確さや誤りに起因するある程度のばらつき(例えば1~5パーセント)を含む量を指している。したがって、この説明は例としてのみ解釈されることを意図しており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0043】
以下に特許請求の範囲を記載する。
図1
図1A
図1B
図2
図2A
図2B
図3
図3A
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】