IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オウェンス コーニング インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

特表2022-507967改善された比弾性率を有する高性能ガラス繊維組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】改善された比弾性率を有する高性能ガラス繊維組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 13/00 20060101AFI20220111BHJP
   C03C 13/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C03C13/00
C03C13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529314
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(85)【翻訳文提出日】2021-05-24
(86)【国際出願番号】 US2019061917
(87)【国際公開番号】W WO2020112396
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/771,245
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507220187
【氏名又は名称】オウェンス コーニング インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【弁理士】
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】コーウィン-エドソン ミシェル エル
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA05
4G062BB01
4G062BB06
4G062DB04
4G062DB06
4G062DC01
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA01
4G062EA02
4G062EA03
4G062EB01
4G062EB02
4G062EC01
4G062EC02
4G062ED03
4G062ED04
4G062EE03
4G062EF01
4G062EF02
4G062EG01
4G062FA01
4G062FB01
4G062FB02
4G062FB03
4G062FC01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FF02
4G062FF03
4G062FG01
4G062FG02
4G062FH01
4G062FH02
4G062FH03
4G062FJ01
4G062FJ02
4G062FJ03
4G062FK01
4G062FK02
4G062FK03
4G062FL01
4G062FL02
4G062FL03
4G062GA01
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH06
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062MM01
4G062NN33
(57)【要約】
本発明の組成物から形成されるガラス繊維は、高い剛性を必要とする用途で使用され、34~40MJ/kgの比弾性率を有する。このような用途には、風力タービンブレード及び航空宇宙構造物の形成に使用するための織物類が挙げられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
58.0~68.0質量%の量のSiO2
18.0~23.0質量%の量のAl23
1.0~9.0質量%の量のCaO;
9.0~14.0質量%の量のMgO;
0.0~1.0質量%の量のSrO;
0.0~1.0質量%の量のNa2O;
0.0~1.0未満の質量%の量のK2O;
0.0~4.0質量%の量のLi2O;
0.0~4.0質量%の量のTiO2
0~10.0質量%の量のY23
0~10.0質量%の量のLa23
0~2.5質量%の量のCe23;及び
0~4.0質量%の量のSc23を含むガラス組成物であって、2.1より大きいMgO/(CaO+SrO)比を有し、前記ガラス組成物から形成されるガラス繊維が34.0~40.0MJ/kgの比弾性率を有する、ガラス組成物。
【請求項2】
0~約5.0質量%のTa25
0~約7.0質量%のGa23
0~約5.0質量%のNb25;及び
0~約5.0質量%のV25、を更に含む、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
前記組成物が、1.0~3.5質量%のY23を含む、請求項2に記載のガラス組成物。
【請求項4】
前記MgO及びCaOの組み合わせた量が、12.0~20質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項5】
前記組成物が、18.3~22.0質量%のAl23を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項6】
前記組成物が、B23、F、K2O、及びNa2Oの内の1種又は複数を実質的に含まない、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項7】
前記組成物が、0.1~3.5質量%のLi2Oを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項8】
前記組成物が、0.05質量%未満のSm23+Gd23を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項9】
前記組成物が、少なくとも1質量%のY23、La23、Ce23、及びSc23を組み合わせた量を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項10】
前記組成物が、1,454℃(2,650°F)未満の繊維化温度を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項11】
55.0~68.0質量%の量のSiO2
18.0~23.0質量%の量のAl23
1~5.5質量%の量のCaO;
9.0~14.0質量%の量のMgO;
0.0~1.0質量%の量のNa2O;
0.0~1.0質量%の量のK2O;
1.0~4.0質量%の量のLi2O;
0.0~4.0質量%の量のTiO2
0~10.0質量%の量のY23
0~10.0質量%の量のLa23
0~2.5質量%の量のCe23;及び
0~4.0質量%の量のSc23を含む組成物から形成されるガラス繊維であって、34.0~40.0MJ/kgの比弾性率及び少なくとも4400MPaのASTM D2343-09による引張強度を有する、ガラス繊維。
【請求項12】
前記ガラス組成物が、1.0~5.0質量%のCaOを含む、請求項11に記載のガラス繊維。
【請求項13】
前記組成物が、B23、F、K2O、及びNa2Oの内の1種又は複数を実質的に含まない、請求項11又は12に記載のガラス繊維。
【請求項14】
前記組成物が、1.5~3.5質量%のLi2Oを含む、請求項11~13のいずれか1項に記載のガラス繊維。
【請求項15】
前記組成物が、少なくとも1質量%のY23、La23、Ce23、及びSc23を組み合わせた量を含む、請求項11~14のいずれか1項に記載のガラス繊維。
【請求項16】
前記組成物が、2.0質量%より多いCeO2+Sc23を含む、請求項11~15のいずれか1項に記載のガラス繊維。
【請求項17】
前記ガラス繊維が、35~36.5MJ/kgの比弾性率を有する、請求項11~16のいずれか1項に記載のガラス繊維。
【請求項18】
連続ガラス繊維を形成する方法であって、
請求項1に記載の融解組成物を用意すること;及び
前記融解組成物を、オリフィスを通して引き、連続ガラス繊維を形成すること、を含む方法。
【請求項19】
強化複合材料製品であって、
ポリマーマトリックス;及び
58.0~68.0質量%の量のSiO2
18.0~23.0質量%の量のAl23
1.0~9.0質量%の量のCaO;
9.0~14.0質量%の量のMgO;
0.0~1.0質量%の量のSrO;
0.0~1.0質量%の量のNa2O;
0.0~1.0未満の質量%の量のK2O;
0.0~4.0質量%の量のLi2O;
0.0~4.0質量%の量のTiO2
0~10.0質量%の量のY23
0~10.0質量%の量のLa23
0~2.5質量%の量のCe23;及び
0~4.0質量%の量のSc23を含むガラス組成物から形成される複数のガラス繊維を含み、前記ガラス組成物が2.1より大きいMgO/(CaO+SrO)比を有し、前記ガラス繊維が34.0~40.0MJ/kgの比弾性率を有する、強化複合材料製品。
【請求項20】
風力タービンブレードの形態である、請求項19に記載の強化複合材料製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年11月26日出願のHIGH PERFORMANCE FIBERGLASS COMPOSITION WITH IMPROVED SPECIFIC MODULUSと題する米国特許仮出願第62/771,245号に対する優先権を主張し、その全開示が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維は、所望の組成を得るために一般に「ガラスバッチ」と呼ばれる特定の比率で組み合わされた種々の原材料から製造される。このガラスバッチは、融解装置中で融解され得、溶融ガラスはブッシングプレート又はオリフィス板を通してフィラメントに引かれる(得られたフィラメントは、連続ガラス繊維とも呼ばれる)。次に、潤滑剤、カップリング剤及び膜形成バインダー樹脂を含むサイジング組成物をフィラメントに適用し得る。サイジング組成物を適用後、繊維を1本又は複数のストランドにギャザリングし、巻き付けて、パッケージにまとめ得る、あるいは、繊維を湿式細断し、集め得る。集めたチョップトストランドはその後、乾燥し、硬化させて乾燥チョップド繊維を形成する、又は湿潤状態で湿潤チョップド繊維としてパッケージできる。
【0003】
ガラスバッチの組成は、それから製造されたガラス繊維と共に、それに含まれる酸化物により表現されることが多く、通常、SiO2、Al23、CaO、MgO、B23、Na2O、K2O、Fe23、TiO2、Li2O、などを含む。種々の量のこれらの酸化物から、又はガラスバッチ中の一部の酸化物を除去することにより、多くの種類のガラスが製造され得る。製造され得るこのようなガラスの例としては、Rガラス、Eガラス、Sガラス、Aガラス、Cガラス、及びECRガラスが挙げられる。ガラス組成物は、ガラスの形成特性及び製品特性を調節する。ガラス組成物の他の特性には、原材料コスト及び環境影響が含まれる。
例えば、Eガラスは、アルミノケイ酸塩ガラスであり、通常、アルカリ不含で、電気用途によく使われる。Eガラスの利点の1つの特徴は、その液相温度により、ガラス繊維を製造するための作業温度を約1038℃(1900°F)~1316℃(2400°F)にすることが可能になることである。プリント回路基板及び航空宇宙用途で使われるEガラス繊維ヤーンのASTM分類は、その組成を、52~56質量%のSiO2、16~25質量%のCaO、12~16質量%のAl23、5~10質量%のB23、0~5質量%のMgO、0~2質量%のNa2O及びK2O、0~0.8質量%のTiO2、0.05~0.4質量%のFe23及び0~1.0質量%のフッ素と定義している。
ホウ素不含繊維は、ADVANTEX(登録商標)の登録商標で販売されている(Owens Corning,Toledo,Ohio,USA)。ホウ素不含繊維は、その全体が本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第5、789,329号明細書で開示され、作業温度の点でホウ素含有Eガラスにまさる大きな改善が提供される。ホウ素不含ガラス繊維は、一般的用途に使用するためのEガラス繊維のASTM定義に含まれる。
Rガラスは、Eガラス繊維より高い機械的強度を有するガラス繊維を生成する化学組成を有する、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、及びカルシウムの酸化物から主に構成されるガラスのファミリーである。Rガラスは、約58~約60質量%のSiO2、約23.5~約25.5質量%のAl23、約14~約17質量%のCaO+MgO、及び約2質量%未満の種々の成分を含む組成を有する。Rガラスは、Eガラスより多くのアルミナ及びシリカを含み、繊維形成中により高い融解温度及び処理温度を必要とする。通常、Rガラスのための融解温度及び処理温度は、Eガラスの温度より高い。この処理温度の上昇は、高コストの白金裏張り溶解装置の使用が必要となる。加えて、Rガラスでの液相温度と形成温度の近接は、1000ポアズ又はその約1000ポアズ近くで通例繊維化されるEガラスより低い粘度でこのガラスが繊維化されることが必要である。通例の1000ポアズ粘度でのRガラスの繊維化は、工程の中断及び生産性の低下を起こし、ガラスの失透を生じるであろう。
【0004】
高性能ガラス繊維は、従来のEガラス繊維に比べて、より高い強度及び剛性を有する。特に、一部の製品では、剛性は造形及び特性にとって重要である。例えば、良好な剛性を有するガラス繊維から作製される風力発電施設の風力タービンブレードなどの複合材料は、ブレードの撓みを許容限度に保ちながら、より長い風力タービンブレードを可能とするであろう。
更に、所望の形成特性(例えば、液相温度及び繊維化温度)を維持しながら、好ましい機械的特性及び物理学的特性(例えば、比弾性率及び引張強度)を有する高性能ガラス組成物が望ましい。弾性率は、繊維剛性の尺度であり、材料に対する印加応力と、同一材料により生成される歪みとの関係を決定する。剛性材料は、高い弾性率を有し、弾性負荷時にほんのわずかに形状が変化する。可撓性材料は、低い弾性率を有し、その形状はかなり変化する。比弾性率は、ガラス繊維材料の質量密度当りの弾性率の尺度である。それは剛性対質量比としても知られ、剛性を犠牲にしない最小質量のガラス繊維を決定するために使用されることが多い。
【発明の概要】
【0005】
本発明概念の種々の例示的実施形態は、58.0~68.0質量%の量のSiO2;18.0~23.0質量%の量のAl23;1.0~9.0質量%の量のCaO;9.0~14.0質量%の量のMgO;0.0~1.0未満の質量%の量のNa2O;0.0~1.0質量%の量のK2O;0.0~4.0質量%の量のLi2O;0.0~4.0質量%の量のTiO2;0~10.0質量%の量のY23;0~10.0質量%の量のLa23;0~2.5質量%の量のCe23;及び0~4.0質量%の量のSc23を含むガラス組成物に関する。
【0006】
いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、2.1より大きい比率のMgO/(CaO+SrO)を含む。
いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物から形成されるガラス繊維は、34~40MJ/kgの比弾性率を有する。
ガラス組成物は、0~5.0質量%のTa25、0~7.0質量%のGa23、0~5.0質量%のNb25、及び0~5.0質量%のV25を更に含み得る。
種々の例示的実施形態では、ガラス組成物は、実質的にB23不含である。
種々の例示的実施形態では、ガラス組成物は、0.1~3.5質量%のLi2Oを含む。
種々の例示的実施形態では、組成物は、少なくとも1質量%のY23、La23、Ce23、及びSc23の1種又は複数を組み合わせた量を含む。
種々の例示的実施形態では、組成物は、0.05質量%のSm23+Gd23を含む。
【0007】
さらなる本発明概念の例示的態様は、55.0~68.0質量%の量のSiO2;18.0~23.0質量%の量のAl23;1.0~9.0質量%の量のCaO;9.0~14.0質量%の量のMgO;0.0~1.0質量%の量のNa2O;0.0~1.0質量%の量のK2O;1.0超~4.0質量%の量のLi2O;0.0~4.0質量%の量のTiO2;0~10.0質量%の量のY23;0~10.0質量%の量のLa23;0~2.5質量%の量のCe23;及び0~4.0質量%の量のSc23を含む組成物から形成されるガラス繊維に関する。ガラス繊維は、34~40MJ/kgの比弾性率を有する。ガラス繊維は、少なくとも4,400MPaのASTM D2343-09による引張強度を更に有する。
種々の例示的実施形態では、組成物は、1.5~3.5質量%のLi2Oを含む。
種々の例示的実施形態では、組成物は、1.0~5.0質量%のCaOを含む。
種々の例示的実施形態では、組成物は、少なくとも1質量%のY23、La23、Ce23、及びSc23の1種又は複数を組み合わせた量を含む。
さらなる例示的実施形態は、35~36.5MJ/kgの比弾性率を有するガラス繊維に関する。
【0008】
またさらなる本発明概念の例示的態様は、溶融ガラス組成物を用意すること;及び融解組成物を、オリフィスを通して引いて連続ガラス繊維を形成することを含む、連続ガラス繊維の形成方法に関する。
またさらなる本発明概念の例示的態様は、ポリマーマトリックス;及び58.0~68.0質量%の量のSiO2;18.0~23.0質量%の量のAl23;1.0~9.0質量%の量のCaO;9.0~14.0質量%の量のMgO;0.0~1.0質量%の量のNa2O;0.0~1.0質量%の量のK2O;0.0~4.0質量%の量のLi2O;0.0~4.0質量%の量のTiO2;0~10.0質量%の量のY23;0~10.0質量%の量のLa23;0~2.5質量%の量のCe23;及び0~4.0質量%の量のSc23を含むガラス組成物から形成される複数のガラス繊維を含む強化複合材料製品に関する。
【0009】
種々の例示的実施形態では、ガラス組成物は、2.1より大きい比率のMgO/(CaO+SrO)を含む。
ガラス繊維は、34~40MJ/kgの比弾性率を有する。
いくつかの例示的実施形態では、強化複合材料製品は、風力タービンブレードの形態である。
本発明の前出及び他の目的、特徴、及び利点は、次の詳細な説明を考慮することにより以降で更に完全に明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
別に定めのない限り、本明細書で使われる全ての技術と科学用語は、これらの例示的実施形態が属する技術分野の当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、例示的実施形態のみを説明する目的のためであり、例示的実施形態を制限することを意図していない。従って、一般的発明概念は、本明細書で説明される特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。本明細書に記載されているものと類似又は同等の他の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することが可能であるが、好ましい方法及び材料が本明細書で記載される。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈により別義が明示されない限り、複数形も同様に包含することが意図されている。
特に明示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、化学的及び分子的特性、反応条件などを表す数値はすべて、あらゆる場合において、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。従って、そうでない旨の指示がない限り、本明細書及び添付の範囲特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、本例示的実施形態によって得ようとする望ましい特性に応じて変更可能な近似値である。控えめに言っても、各数値パラメーターは、有効数字の数及び通常の丸め手法を適用して解釈すべきである。
例示的実施形態の広範な範囲を記載する数値範囲及びパラメーターは近似値であるが、特定の実施例で記載される数値は可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も、それらのそれぞれの試験測定で認められる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含む。本明細書及び特許請求の範囲を通して与えられる全ての数値範囲は、このようなより広い数値範囲に含まれる全てのより狭い数値的範囲を、あたかもこのようなより狭い数値的範囲が全て本明細書に明確に記載されるかのように含む。更に、実施例で報告されるいずれの数値も、本明細書で開示のより広い組成範囲の上端点又は下端点を決定するために使用し得る。
【0011】
本開示は、改善された比弾性率を有する高性能ガラス組成物に関する。このようなガラス組成物は、より多くのエネルギーを生成するためのより長いブレードを必要としている風力タービンなどの風力製品の分野で特に関心を集めている。より長いブレードは、それらに加えられた力に破壊することなく、また過剰な追加の質量を付加することなく耐えるために、より高い比弾性率を有する材料を必要とする。対象のガラス組成物にはリチウム及び、任意選択で希土類元素酸化物を含む。更に、対象のガラス組成物は、この領域の他のガラス組成物より高レベルのマグネシウム及びアルミナを含む。
本明細書で開示のガラス組成物は、ガラス強化繊維の製造で広く使用されている従来の商業的に入手できる耐火物内張ガラス炉による融解に好適する。
【0012】
ガラス組成物は、溶解装置中でガラス組成物の成分を融解して得られる融解形態であり得る。ガラス組成物は、低い繊維化温度を示し、この温度は、ASTM C965-96(2007)により測定して、約1000ポアズの融解粘度に相当する温度と定義される。繊維化温度の低下は、ガラス繊維の製造コストを削減し得る。理由は、それがより長いブッシング寿命を可能とし、及びガラス組成物の成分の融解に必要なエネルギーの使用の低減を可能とするためである。従って、排出されるエネルギーは通常、多くの商業的に入手できるガラス配合物を融解するために必要なエネルギーより少ない。このようなより低いエネルギー要件はまた、ガラス組成物に関連する全体製造コストも下げ得る。
例えば、下段繊維化温度では、ブッシングはより低い温度で動作し、従って、通常認められる場合ほどは早く「サグ」しない。「サグ」は、ブッシングが高温で長時間保持されて確定した安定性を失う場合に起こる現象である。従って、繊維化温度を低下させることにより、ブッシングのサグ速度が低減され得、ブッシング寿命が最大化できる。
いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、1,427℃(2,600°F)以下、1,399℃(2,550°F)以下、1371℃(2,500°F)以下、1,354℃(2,470°F)以下、1,327℃(2,420°F)以下、1,321℃(2,410°F)以下、1,318℃(2,405°F)以下、1,316℃(2,400°F)以下、及び1,310℃(2,390°F)以下、及び1,307(2,385°F)以下の繊維化温度を含む、1,454℃(2,650°F)未満の繊維化温度を有する。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、1,371℃(2,500°F)以下、及び1,204℃(2,200°F)以下などの1,260℃(2,300°F)以下の繊維化温度を有する。
【0013】
ガラス組成物の別の繊維化特性は、液相温度である。液相温度は、液体ガラスとその一次結晶相との間で平衡が存在する最も高い温度と定義される。いくつかの事例では、液相温度は、ガラス組成物を白金合金ボート中で温度勾配に16時間曝露することにより測定し得る(ASTM C829-81(2005))。液相温度を超える全ての温度で、ガラスは完全に融解し、すなわち、結晶を含まなくなる。液相温度より低い温度では、結晶が形成され得る。
いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、1,315℃(2,400°F)以下、1,302℃(2,375°F)以下、1,288℃(2,350°F)以下、1,274℃(2,325°F)以下、1,263℃(2,305°F)以下、1,260℃(2,300°F)以下、1,254℃(2,290°F)以下、1,232℃(2,250°F)以下、1,218℃(2,225°F)以下、及び1,213℃(2,215°F)以下の液相温度を含む、1,427℃(2,600°F)未満の液相温度を有する。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、1,177℃~1,366℃(2,150°F~2,490°F)、1,199℃~1,343℃(2,190°F~2,450°F)、及び1,232℃~1,343℃(2,250°F~2,450°F)を含む、1,121℃~1399℃(2,050°F~2,550°F)の液相温度を有する。
【0014】
第3の繊維化特性は、「ΔT」である。これは、繊維化温度と液相温度との間の差として定義される。ΔTが小さすぎると、溶融ガラスは繊維化装置内で結晶化し、製造工程中に破断を生ずる可能性がある。ΔTは、所与の形成粘度に対し、可能な限り大きいのが望ましい。理由は、それが、繊維化の間により大きな程度の柔軟性を与え、ガラス供給システム及び繊維化装置中の両方で失透を回避するのに役立つためである。更に、大きなΔTは、より長いブッシング寿命及びより影響され難い成形工程を可能にすることによりガラス繊維の製造コストを低減する。
いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、少なくとも-29℃(-20°F)を含む、少なくとも4.4℃(40°F)を含む、及び少なくとも27℃(80°F)を含む、少なくとも37.8℃(100°F)を含む、少なくとも43.3℃(110°F)、少なくとも48.9℃(120°F)、少なくとも57.2℃(135°F)、少なくとも65.6℃(150°F)、及び少なくとも76.7℃(170°F)を含む、少なくとも-51℃(-60°F)のΔTを有する。種々の例示的実施形態では、ガラス組成物は、48.9℃~93.3℃(120°F~200°F)、及び65.6℃~102℃(150°F~215°F)を含む37.8℃~121℃(100°F~250°F)のΔTを有する。
【0015】
ガラス組成物は、約55.0~約68.0質量%のSiO2、約18.0~約23.0質量%のAl23、約9.0~約14.0質量%のMgO、0~約9.0質量%のCaO、0.0~約1.0質量%のNa2O、0~約1.0質量%のK2O、0~約4.0質量%のTiO2、0~約0.8質量%のFe23、及び約0.0~約4.0質量%のLi2Oを含み得る。ガラス組成物は、0~約10.0質量%のY23、0~約10.0質量%のLa23、0~約2.5質量%のCe23;及び0~約4.0質量%のSc23を更に含み得る。ガラス組成物は、0~約5.0質量%のTa25、0~約7.0質量%のGa23、0~約5.0質量%のNb25、及び0~約5.0質量%のV25を更に含み得る。
いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約59.0~約65.0質量%のSiO2、約18.3~約22.0質量%のAl23、約9.3~約12.0質量%のMgO、約1.0~約8.5質量%のCaO、約0.01~約0.5質量%のNa2O、約0.01~約0.5質量%のK2O、約0.01~約3.5質量%のTiO2、約0.01~約0.6質量%のFe23、及び約0.1~約3.5質量%のLi2Oを含み得る。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、ZrO2不含である。ガラス組成物は、約0.01~約7.0質量%のY23、約0.01~約4.0質量%のLa23、約0.01~約2.0質量%のCe23、及び約0.01~約3.5質量%のSc23を更に含み得る。ガラス組成物は、約0.01~約4.0質量%のTa25、約0.01~約6.0質量%のGa23、約0.01~約4.0質量%のNb25及び約0.01~約4.0質量%のV25を更に含み得る。
【0016】
ガラス組成物は、少なくとも50質量%で、約75質量%以下のSiO2を含む。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、少なくとも57質量%、少なくとも58質量%、少なくとも58.5質量%、及び少なくとも59質量%を含む、少なくとも約55質量%のSiO2を含む。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、68質量%以下、65.5質量%以下、63質量%、61質量%以下、及び60.5質量%以下を含む、約70質量%以下のSiO2を含む。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約59質量%~約68質量%、又は約60質量%~約65質量%のSiO2を含む。
所望の機械的な特性及び繊維化特性の両方を達成するために、ガラス組成物の1つの重要な態様は、少なくとも約16.0質量%で、約25質量%以下のAl23濃度を有することである。約25質量%を超えるAl23の含有は、ガラスの液相線を、繊維化温度を超えるレベルまで上昇させ、これは、負のΔTをもたらす。17質量%未満のAl23の含有は、好ましくない低い弾性率のガラス繊維を形成する。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、少なくとも18.0質量%、少なくとも19.0質量%、少なくとも19.5質量%、及び少なくとも20.0質量%を含む、少なくとも約17.0質量%のAl23を含む。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約18.8~約22質量%のAl23を含む、約18.3~約23質量%のAl23を含む。
【0017】
ガラス組成物は、有利には、少なくとも約8.0質量%で、約15質量%以下のMgOを更に含む。約15質量%を超えるMgOの含有は、液相温度を高め、これは、ガラスの結晶化の傾向を高めることにもなる。約8.0質量%未満の含有は、CaOに置換されると、好ましくない低い弾性率のガラス繊維を形成し、SiO2により置換されると粘度の好ましくない上昇が伴う。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、少なくとも9.2質量%、少なくとも9.5質量%、少なくとも10質量%、少なくとも11質量%、少なくとも11.25質量%、少なくとも12.5質量%、及び少なくとも13質量%のMgOを含む、少なくとも約9.0質量%のMgOを含む。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約9.3質量%~約14質量%、又は約9.6質量%~約12質量%のMgO濃度を含む。
ガラス組成物は、最大約10.0質量%までの濃度のCaOを任意に含んでもよい。約10質量%を超えるCaOの含有は、所望より低い弾性率のガラスを形成する。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、少なくとも0.5~8.8質量%、1.0~8.5質量%、1.5~8.0質量%、及び2.0~5.5質量%を含む、0~約9質量%のCaOを含む。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、1.0質量%~5.5質量%のCaO濃度を含む。
いくつかの例示的実施形態では、MgO及びCaOの合計濃度は、12.0質量%~20質量%、及び14質量%~19.5質量%を含む、少なくとも約10質量%で、約22質量%以下である。
ガラス組成物は、最大約5.0質量%までのTiO2を含み得る。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.01質量%~約3.5質量%及び約0.1~約0.75質量%を含む、0質量%~約4.0質量%のTiO2を含む。
ガラス組成物は、最大約1.0質量%までのFe23を含み得る。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.01質量%~約0.6質量%及び約0.1~約0.35質量%を含む、0質量%~約0.8質量%のFe23を含む。
ガラス組成物は、最大約5.0質量%までのLi2Oを含み得る。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.1質量%~約3.5質量%及び約0.5~約3.0質量%を含む、約0.0質量%~約4.0質量%のLi2Oを含む。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約1.0~約4.0質量%のLi2O、又は約1.5~約3.8質量%のLi2Oを含む。
【0018】
いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、0~約1.5質量%、0.05~0.75質量%、及び0.1~0.3質量%を含む、約2.0未満の質量%のアルカリ金属酸化物Na2O及びK2Oを含む。ガラス組成物は、各酸化物が約0.01質量%をそれぞれ超える量のNa2O及びK2Oの両方を含み得る。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.01~約0.5質量%、約0.03~約0.3質量%、及び0.04~約0.15質量%を含む、約0~約1質量%のNa2Oを含む。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.01~約0.5質量%、約0.03~約0.3質量%、及び0.04~約0.15質量%を含む、約0~約1質量%のK2Oを含む。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、0.75質量%未満、又は0.50質量%未満などの1.0質量%未満のK2Oを含む。
【0019】
ガラス組成物は、最大約1.5質量%までのZrO2を含み得る。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.05質量%~約0.8質量%及び約0.1~約0.5質量%を含む、約0.01質量%~約1.0質量%のZrO2を含む。
いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、0~10.0質量%、又は1.0~7.0質量%を含む、最大約10.0質量%の希土類元素酸化物Y23、La23、Ce23、及びSc23(「R23」」を含む。ガラス組成物は、約0.01質量%を超える量のいずれかのR23酸化物を含み得る。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.01~約7.0質量%、約0.05~約4.0質量%、及び0.8~約3.5質量%を含む、約0~約10質量%のY23を含む。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.01~約4.0質量%、約0.05~約3.5質量%、及び0.1~約3.0質量%を含む、約0~約10質量%のLa23を含む。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.01~約2.0質量%、約0.05~約1.8質量%、及び0.1~約1.5質量%を含む、約0~約2.5質量%のCe23を含む。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.01~約3.5質量%、約0.05~約3.2質量%、及び0.1~約3.0質量%を含む、約0~約4質量%のSc23を含む。
いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、少なくとも1.5質量%、少なくとも1.75質量%、少なくとも2.0質量%、少なくとも2.1質量%、少なくとも2.2質量%、及び少なくとも2.5質量%を含む、少なくとも1.0質量%であるCeO2+Sc23の合計濃度を含む。
【0020】
ガラス組成物は、最大約5.0質量%までのTa25を含み得る。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.05質量%~約3.5質量%及び約0.1~約3.0質量%を含む、約0.01質量%~約4.0質量%のTa25を含む。
ガラス組成物は、最大約7.0質量%までのGa23を含み得る。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.05質量%~約5.5質量%及び約0.1~約5.0質量%を含む、約0.01質量%~約6.0質量%のGa23を含む。
ガラス組成物は、最大約5.0質量%までのNb25を含み得る。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.05質量%~約3.5質量%及び約0.1~約3.0質量%を含む、約0.01質量%~約4.0質量%のNb25を含む。
ガラス組成物は、最大約5.0質量%までのV25を含み得る。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.05質量%~約3.5質量%及び約0.1~約3.0質量%を含む、約0.01質量%~約4.0質量%のV25を含む。
ガラス組成物は、最大約1.0質量%までのSm23及び/又はGd23を含み得る。しかし、種々の例示的実施形態は、Sm23及びGd23の合計濃度を0.1質量%未満、及び0.05質量%未満などの0.5質量%未満に制限する。
ガラス組成物は、最大約5.0質量%までのZnOを含み得る。いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、約0.01質量%~約2.0質量%及び約0.1~約1.0質量%を含む、0質量%~約2.5質量%のZnOを含む。
【0021】
本発明のガラス組成物は、B23及びフッ素を不含、又は実質的に不含であり得るが、いずれかを少量添加して、繊維化及び完成品ガラス特性を調節してもよく、以下のいくつかのパーセントが維持される場合、特性に悪影響を与えないであろう。本明細書で使用される場合、「実質的にB23及びフッ素不含」は、存在するB23及びフッ素の合計が、組成物の1.0質量%未満であることを意味する。存在するB23及びフッ素の合計が、組成物の、約0.2質量%未満、約0.1質量%未満、及び約0.05質量%未満を含む、約0.5質量%未満であってもよい。
ガラス組成物は、ガラス又は繊維に悪影響を及ぼすことなく、不純物及び/又は微量の材料を更に含み得る。これらの不純物は、ガラス中に原材料不純物として入り得、又は溶融ガラスと炉成分との化学反応により形成された生成物であり得る。微量材料の非限定的例には、ストロンチウム、バリウム、及びこれらの組み合わせが含まれる。微量材料は、それらの酸化物形態中にも存在し得、また、フッ素及び/又は塩素を更に含み得る。いくつかの例示的実施形態では、本発明のガラス組成物は、0.5質量%未満、0.2質量%未満、及び0.1質量%未満を含む、約1.0質量%以下のBaO、SrO、P25、及びSO3をそれぞれ含む。特に、少しでも存在する場合は、約5.0質量%未満のBaO、SrO、P25、及び/又はSO3の組み合わせを含み得、ガラス組成物は、各BaO、SrO、P25、及びSO3は、1.0質量%未満の量で存在する。
いくつかの例示的実施形態では、ガラス組成物は、少なくとも1.7、少なくとも2.0、少なくとも2.1、少なくとも2.2、少なくとも2.3を含む、少なくとも1.5の比率のMgO/(CaO+SrO)を含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、「質量パーセント(weight percent)」、「質量%(% by weight)」、「wt.%(wt.%)」及び「質量%(percent by weight)」という用語は、同じ意味で用いられ、総組成物を基準にした質量パーセント(weight percent)(又は質量パーセント(percent by weight))を表すことを意味する。
上記で示したように、本発明のガラス組成物は、意外にも、最適化された比弾性率を示し、同時に、所望の形成特性を維持することを示す。
【0023】
繊維引張強度は、本明細書では単に「強度」とも呼ばれる。いくつかの例示的実施形態では、引張強度は、ASTM D2343-09に準拠して、インストロン引張試験装置を用いて、初期の状態の繊維(すなわち、サイジングされていない、無傷の研究室作製繊維)で測定される。上記発明のガラス組成物から形成した例示的ガラス繊維は、少なくとも4,000MPa、少なくとも4,400MPa、少なくとも4,500MPa、少なくとも4,800MPa、少なくとも4,900MPa、少なくとも4,950MPa、少なくとも5,000MPaを含む、少なくとも5,100MPa、少なくとも5,150MPa、及び少なくとも5,200MPaを含む、少なくとも約3,500MPaの繊維引張強度を有し得る。いくつかの例示的実施形態では、上記の組成物から形成したガラス繊維は、約4,000MPa~約5,350MPa、約4,600MPa~約5,315MPaを含む、約3,500MPa~約5,500MPaの繊維引張強度を有する。有利には、本明細書で開示の組成パラメーターの組み合わせは、少なくとも4,900MPa、及び少なくとも5,000MPaを含む、少なくとも約4,800MPaの引張強度を有するガラス繊維を作製することを可能にする。このような強度は、所望の繊維化特性を有するガラス組成物の先行技術によりまだ達成されたことがない。
【0024】
ガラス繊維の弾性率は、報告書「Glass Fiber Drawing and Measuring Facilities at the U.S.Naval Ordnance Laboratory」報告書番号NOLTR65-87、1965年6月23日、に概要が記載されている音響測定法により測定された5本の単一ガラス繊維に対する平均測定値を取得することにより決定され得る。
本発明のガラス組成物から形成される例示的ガラス繊維は、少なくとも約88GPa、少なくとも約88.5GPa、少なくとも約89GPa、及び少なくとも約89.5GPaを含む、少なくとも約85GPaの弾性率を有し得る。いくつかの例示的実施形態では、本発明のガラス組成物から形成される例示的ガラス繊維は、約87GPa~約100GPa及び約88GPa~約98GPaを含む、約85GPa~約115GPaの弾性率を有する。
弾性率は、その後、比弾性率を決定するために使用し得る。最終製品に剛性を付与する軽量複合材料を得るために可能な限り高い比弾性率を有することが望ましい。比弾性率は、風力エネルギー及び航空宇宙用途などの製品の剛性が重要なパラメーターである用途では、重要である。本明細書で使用される場合、比弾性率は次の式により計算される:
比弾性率(MJ/kg)=弾性率(GPa)/密度(kg/立方メートル)
本発明のガラス組成物から形成される例示的ガラス繊維は、約34.5MJ/kg~約37MJ/kg、及び約35.8MJ/kg~約36.5MJ/kgを含む、約33.0MJ/kg~約40.0MJ/kgの比弾性率を有する。
【0025】
密度は、当該技術分野において既知の、一般に認められている任意の方法、例えば、未アニールバルクガラスを用いたアルキメデス法(ASTM C693-93(2008))などにより測定され得る。ガラス繊維は、約2.0~約3.0g/ccの密度を有する。他の代表的実施形態では、ガラス繊維は、約2.4~約2.78g/cc、及び約2.49~約2.75g/ccを含む、約2.3~約2.8g/ccの密度を有する。
いくつかの代表的実施形態では、上記ガラス組成物からガラス繊維を作製する方法が提供される。ガラス繊維は、当該技術分野において既知で、従来から使用されているいずれかの手段で形成し得る。いくつかの例示的実施形態では、ガラス繊維は、原料成分を入手し、適切な量の成分を混合して、所望の質量%の最終組成物を得ることにより形成される。方法は、融解形態の本発明のガラス組成物を用意し、その融解組成物をブッシング中のオリフィスを通して引いてガラス繊維を形成することを更に含む。
ガラス組成物の成分は、限定されないが、SiO2の場合は砂又は葉蝋石、CaOの場合は石灰岩、生石灰、ウォラストナイト、又はドロマイト、Al23の場合はカオリン、アルミナ又は葉蝋石、MgOの場合はドロマイト、軽焼ドロマイト、水滑石、エンスタタイト、滑石、焼きマグネサイト、又はマグネサイト、及びNa2Oの場合は炭酸ナトリウム、ナトリウム長石又は硫酸ナトリウムを含む好適な成分又は原材料から得られ得る。いくつかの例示的実施形態では、粉砕ガラス屑を用いて、1種又は複数の必要な酸化物を供給し得る。
混合バッチは、その後、炉中で又は溶解装置中で融解され、得られた溶融ガラスはフォアハースに沿って通され、フォアハースの底部に配置されたブッシングのオリフィスを通して引かれて、個別のガラスフィラメントが形成される。いくつかの例示的実施形態では、炉又は溶解装置は従来の耐熱性溶解装置である。耐熱性ブロックから形成された耐熱性タンクを利用することにより、本発明の組成物により製造されるガラス繊維の製造に関連する製造コストが削減され得る。いくつかの例示的実施形態では、ブッシングは白金合金系のブッシングである。その後、個別のフィラメントを一緒に集めることによりガラス繊維のストランドが形成され得る。繊維ストランドは、巻き取られ、目的の用途に好適する従来の方式で更に処理され得る。
【0026】
溶解装置、フォアハース、及びブッシング中のガラスの作業温度は、ガラスの粘度を適切に調節するように選択され、制御装置などの好適な方法を用いて維持され得る。溶解装置の前端部の温度は自動的に制御され、失透を減らす、又は除去され得る。溶融ガラスはその後、ブッシングの底部又は先端プレートの孔又はオリフィスを通して引かれ、ガラス繊維が形成され得る。いくつかの例示的実施形態では、ブッシングオリフィスを通して流れ出る絶え間なく続く溶融ガラスは、複数の個別のフィラメントから形成されたストランドを巻線機の回転可能コレット上に取り付けられた巻管に巻き取ることにより、フィラメントに対し減速される、又は適応速度で細断される。本発明のガラス繊維は、本明細書記載のいずれかの方法により、又はガラス繊維形成のための任意の既知の方法により、得ることができる。
【0027】
繊維は、目的の用途に好適する従来の方式で更に処理され得る。例えば、いくつかの例示的実施形態では、ガラス繊維は当業者に既知のサイジング組成物でサイジングされる。サイジング組成物は、全く限定されたものではなく、ガラス繊維への適用に好適する任意のサイジング組成物でよい。サイジングされた繊維は、製品の最終用途が高強度及び剛性及び軽量を必要とする種々のプラスチックなどの基材の強化に使用し得る。このような用途には、限定されないが、風力タービンブレード;強化コンクリート、橋、などの社会基盤構造物;及び航空宇宙構造物の形成に使用するための織物類が挙げられる。
これに関して、本発明のいくつかの例示的実施形態としては、硬化性マトリックス材料と組み合わせた、上述の本発明のガラス繊維を組み込んだ複合材料が挙げられる。これは、本明細書においては、強化複合材料製品とも呼ばれる。マトリックス材料は、限定されないが、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、及びポリブチレンなどの熱可塑性樹脂;及びエポキシ樹脂類、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、ビニルエステル、及びエラストマーなどの熱硬化性樹脂などの当業者に既知の任意の好適な熱可塑性又は熱硬化性樹脂であり得る。これらの樹脂は、単独又は組み合わせて使用し得る。強化複合材料製品は、風力タービン、鉄筋、パイプ、フィラメントワインディング、マフラー充填剤、吸音材、などに使用し得る。
さらなる例示的実施形態では、本発明は、上述の複合材料製品の作製方法を提供する。方法は、少なくとも1種のポリマーマトリックス材料を複数のガラス繊維と組み合わせることを含み得る。ポリマーマトリックス材料及びガラス繊維の両方は、上述の通りであり得る。
【0028】
実施例
本発明による例示的ガラス組成物を、下表1~8に記載の酸化物質量%を有する最終ガラス組成を達成するように合わせた量のバッチ成分を混合することにより作製した。
原材料を電気加熱炉中の白金るつぼで、1,650℃で3時間融解した。
繊維化温度を「Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point」と題するASTM C965-96(2007)に記載のようにして、回転シリンダー法で測定した。このASTMの内容は参照により本明細書に組み込まれる。液相温度は、「Standard Practices for Measurement of Liquidus Temperature of Glass」と題するASTM C829-81(2005)で定義のようにして、ガラスを白金合金ボート中で温度勾配に16時間曝露することにより測定した。このASTMの内容は参照により本明細書に組み込まれる。密度は、「Standard Test Method for Density of Glass Buoyancy」と題するASTM C693-93(2008)に詳述のようにして、アルキメデス法により測定した。このASTMの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
比弾性率は、GPa単位の測定した弾性率を、kg/m3の単位の密度で除算することにより計算した。
強度は、「Standard Test Method for Tensile Properties of Glass Fiber Strands,Yarns,and Rovings Used in Reinforced Plastics」と題するASTM D2343-09に従って、初期の状態の繊維を用いて、インストロン引張試験装置で測定した。このASTMの内容は参照により本明細書に組み込まれる。

【表1】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表4-1】
【表4-2】
【表5-1】
【表5-2】
【表6-1】
【表6-2】
【表7-1】
【表7-2】
【表8-1】
【表8-2】
【0030】
表1~8は、本発明のガラスが市販の高性能ガラス(比較例)に比較して改善された比弾性率を有することを示す。比較例は、33.5MJ/kgの比弾性率を示し、これは、本発明のいずれの組成物で認められる最小比弾性率より低い。有益なことに、本発明の組成物のそれぞれは、少なくとも34MJ/kgの比弾性率、更には、少なくとも35MJ/kgの比弾性率を示す。
【0031】
本出願の発明を一般的及び特定の実施形態の両方に関して記述してきた。本発明は、好ましい実施形態と考えられるものについて記載してきたが、一般的開示の範囲内で当業者に既知の多種多様の代替物を選択可能である。本発明は、以降で記載される特許請求の範囲の詳細説明を除き、限定されるものではない。
【国際調査報告】