(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】薬剤送達用生体溶解性医薬ゲル
(51)【国際特許分類】
A61K 31/47 20060101AFI20220111BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20220111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220111BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20220111BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220111BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220111BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220111BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220111BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220111BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220111BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220111BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220111BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220111BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220111BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220111BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220111BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20220111BHJP
A61K 31/4412 20060101ALI20220111BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20220111BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20220111BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20220111BHJP
A61K 31/5025 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61K31/47
A61K31/4439
A61P35/00
A61P27/02
A61P17/00
A61P13/08
A61P15/00
A61K9/06
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/20
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/36
A61K47/32
A61K31/496
A61K31/4412
A61K31/506
A61K31/44
A61K31/404
A61K31/5025
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529404
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(85)【翻訳文提出日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 US2019063044
(87)【国際公開番号】W WO2020112655
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008661
【氏名又は名称】アイビバ バイオファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ディン、シュリン
(72)【発明者】
【氏名】タン-リュー、ダイアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
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4C086ZA81
4C086ZA89
(57)【要約】
本開示は、医薬組成物が哺乳動物の体温付近で液体からゲルへ転移する、任意に活性医薬成分を含む、医薬用生体分解性/生体侵食性水性ゲルシステムに関する。これらの組成物は、メチルセルロ-スなどの可逆ゲル化材料と、クエン酸塩などのレオロジー調整剤を含んでもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆熱ゲル化材料を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が哺乳動物の体温付近で液体からゲルに転移する、医薬組成物。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
活性医薬成分をさらに含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記活性医薬成分が、抗血管新生のために設計されたものである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記活性医薬成分が、マルチキナーゼ阻害剤である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記活性医薬成分には、アキシチニブ、ニンテダニブ、ピルフェニドン、リオシグアト、ソラフェニブ、スニチニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、ポナチニブ、パゾパニブ、またはそれらの組み合わせ、が含まれる、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、約2℃から約8℃の温度で液体である、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が約30℃から約40℃の温度でゲルである、請求項1、2、3、4、5、6、または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ポリマー剤およびゲル化調節剤をさらに含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ポリマー剤に、アルキルセルロースを含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ポリマー剤が、メチルセルロースである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ゲル化調節剤には、リン酸塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ホウ酸塩、ヒスチジン、炭酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、クエン酸酢酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、ギ酸塩、スルファミン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、o-トルイル酸塩、ベンゼンテトラカルボン酸塩、グルタミン酸塩、e-アミノカプロン酸塩、アスパラギン酸塩、グリシン酸塩、アルギン酸塩、リジン酸塩、タウリン酸塩、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセリン、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、コーン油、オリーブ油、ヒマシ油、ビタミンE、リン脂質、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、単糖類、二糖類、ブドウ糖(dextrose)、ショ糖、糖アルコール、マンニトール、ソルビトール、酸化防止剤、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、EDTA、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、など、またはそれらの組み合わせ、が含まれる、請求項9、10、または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記ゲル化調節剤には、リン酸塩、ジメチルスルホキシド、クエン酸塩、またはそれらの組み合わせ、が含まれる、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
活性医薬成分、メチルセルロース、ジメチルスルホキシドおよびクエン酸塩を含む、医薬組成物。
【請求項15】
リン酸塩をさらに含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記メチルセルロースを、約2%(w/w)から約10%(w/w)の濃度で含む、請求項11、14または15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記クエン酸塩を、約25mmol/kgから約200mmole/kgの濃度で含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
pHが約5.0から約9.0である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
pHが約6.0から約8.0である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
活性医薬成分、メチルセルロース、ジメチルスルホキシド、およびクエン酸塩を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物は、約37℃において第1貯蔵弾性率(G’)および約5℃において第2G’を有し、前記第1G’は、前記第2G’よりも高い、医薬組成物。
【請求項21】
前記第1G’が、前記第2G’よりも少なくとも約10倍高い、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
約37℃において第1複素粘度および約5℃において第2複素粘度を有し、前記第1複素粘度が、前記第2複素粘度よりも高い、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記第1複素粘度が、前記第2複素粘度よりも少なくとも2倍高い、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
約37℃において第1損失弾性率(G”)および約5℃において第2G”を有し、前記第1G”が、前記第2G”よりも高い、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
約37℃におけるゲル化率が、少なくとも70%である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
約5℃におけるゲル化率が、20%以下である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
リン酸塩をさらに含む、請求項20または26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
疾患を治療する方法であって、請求項26または27に記載の医薬組成物を、前記治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項29】
前記疾患が、随伴血管新生および線維化を伴う慢性炎症を特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患には、皮膚関連疾患、前立腺肥大症関連疾患、眼関連疾患、酒さ関連疾患、子宮筋腫または関連状態、腫瘍性疾患、または癒着関連疾患が含まれる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記医薬組成物が、病巣内注射、病変周辺注射、硝子体内注射、前立腺内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射、組織内注射、または点眼によって、局所的に投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記哺乳動物がヒトである、請求項28、29、30、または31に記載の方法。
【請求項33】
活性医薬成分の送達方法であって、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27に記載の医薬組成物を、前記活性医薬成分を必要としている哺乳動物に投与することを含み、前記組成物は、低減された活性医薬成分の投与頻度で治療効果を提供する、方法。
【請求項34】
前記医薬組成物が、病巣内注射、病変周辺注射、硝子体内注射、前立腺内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射、組織内注射、または点眼によって、局所的に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物がヒトである、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記活性医薬成分の単回投与により、治療上有効な濃度の前記活性医薬成分を、少なくとも5日間、前記哺乳動物に提供する、請求項33、34、または35に記載の方法。
【請求項37】
前記活性医薬成分の単回投与により、治療上有効な濃度の前記医薬活性成分を少なくとも6週間、前記哺乳動物に提供する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ポリマー剤を、ゲル化調節剤および活性医薬成分を含む懸濁液に入れて混合する工程であって、前記混合は約60℃から約80℃の温度で行われる、工程を含み、
前記懸濁液は、前記活性医薬成分を水性液体に入れて沈殿させることと、前記懸濁液に前記ゲル化調節剤を添加することと、を含む方法によって形成される、
逆熱ゲル化特性を有する医薬組成物を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年11月26日に出願された米国仮出願第62/771,529号の利益を主張し、当該仮出願は、その全体が参照により本明細書で援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、薬剤送達のための医薬用生体溶解性/生体侵食性水性ゲルシステムに関する。より詳細には、本開示は、局所的疾患を治療、修正、および/または予防するための生体溶解性水性ゲルシステムに関する。本システムの溶解性、注入性、および薬剤放出速度などの特性は、成分とその濃度によって制御されうる。
【背景技術】
【0003】
薬剤送達システムの開発における一つの重要な課題は、意図した作用部位での生物学的利用能の長期維持である。薬剤の性質や投与経路によっては、例えば、経口投与された薬剤の肝胃腸における初回通過代謝による分解、および/または、投与部位からの薬剤の速やかな排出により、生物学的利用能が最適ではない場合がある。その結果、治療効果を得るために必要以上の投与量と投与頻度が求められる一方で、望ましくない副作用が発生する。このように、副作用を引き起こす傾向を低下させ、かつ、患者の利便性とコンプライアンス向上のために投与頻度を減少させながら、治療効果のある薬剤量の安定した長期的投与の維持を提供する、薬剤利用能の効果的な時間経過を伴う薬剤を投与できることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施形態には、逆熱ゲル化素材を含む医薬組成物が含まれ、当該医薬組成物は、哺乳動物の体温、例えばヒト体温付近で液体からゲルへ転移する。
【0005】
いくつかの実施形態には、活性医薬成分を含む医薬組成物が含まれ、当該医薬組成物は、哺乳動物の体温、より好ましくはヒト体温付近で液体からゲルへ転移する。
【0006】
いくつかの実施形態には、活性医薬成分、メチルセルロースおよびクエン酸塩を含む医薬組成物が含まれる。
【0007】
いくつかの実施形態には、活性医薬成分、メチルセルロース、クエン酸塩およびリン酸塩を含む医薬組成物が含まれる。
【0008】
いくつかの実施形態には、活性医薬成分、メチルセルロースおよびリン酸塩を含む医薬組成物が含まれる。
【0009】
いくつかの実施形態には、活性医薬成分、メチルセルロース、クエン酸塩およびジメチルスルホキシドを含む医薬組成物が含まれる。
【0010】
いくつかの実施形態には、活性医薬成分、メチルセルロース、リン酸塩およびジメチルスルホキシドを含む医薬組成物が含まれる。
【0011】
いくつかの実施形態には、活性医薬成分、メチルセルロース、クエン酸塩、リン酸塩、およびジメチルスルホキシドを含む医薬組成物が含まれる。
【0012】
いくつかの実施形態には、本明細書に記載の医薬組成物を、治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、疾患を治療する方法が含まれる。
【0013】
いくつかの実施形態には、疾患を治療するための薬剤の製造における、本明細書に記載の医薬組成物の使用方法が含まれる。
【0014】
いくつかの実施形態には、本明細書に記載の医薬組成物を、活性医薬成分を必要とする哺乳動物に投与することを含む、活性医薬成分を送達する方法が含まれ、当該方法は、少ない活性医薬成分の投与頻度で治療効果を提供する。能動的医薬投与とは、患者または薬剤を投与する人の側での行為を伴う投与である。例えば、注射、局所組成物の塗布、経口投与剤形の嚥下などが、能動的医薬投与の例である。したがって、活性医薬成分の投与頻度を減らすことは、注射、経口投与、局所的投与などの頻度を減らすことになる。剤形の徐放送達など、いくつかの投与は能動的ではない。
【0015】
いくつかの実施形態には、本明細書に記載の医薬組成物を、活性医薬成分を必要とする哺乳動物に投与することを含む、活性医薬成分を送達する方法が含まれ、活性医薬成分の単一の投与により、活性医薬成分の治療上有効な濃度が、少なくとも5日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、またはそれ以上の期間、哺乳動物に提供される。
【0016】
いくつかの実施形態には、ポリマー剤を、ゲル化調節剤および活性医薬成分を含む懸濁液に入れて混合する工程であって、前記混合は、約60℃から約80℃の温度で行われ、前記懸濁液は、前記活性医薬成分を水性液体に入れて沈殿させることと、前記懸濁液に前記ゲル化調節剤を添加することと、を含む方法によって形成される、
逆熱ゲル化特性を有する医薬組成物を調製する方法、が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】2つの異なるメチルセルロース濃度のメチルセルロースA15LV水溶液の温度掃引流動曲線を示した説明図である。
【
図2】異なる調節剤を有するいくつかの対象組成物の温度掃引流動曲線を示した説明図である。
【
図3】異なるクエン酸緩衝液濃度を有するいくつかの対象組成物の温度掃引流動曲線を示した説明図である。
【
図4】異なるタイプのメチルセルロースを有するいくつかの対象の組成物の温度掃引流動曲線を示した説明図である。
【
図5】いくつかの対象組成物におけるレンバチニブの試験管内での放出を示した説明図である。
【
図6】対象組成物中における1%レンバチニブの単一硝子体内注射後の眼組織中濃度を示した説明図である。
【
図7】対象組成物中における1%レンバチニブの単一硝子体内注射後の眼組織中濃度を示した説明図である。
【
図8】対象組成物中における1%レンバチニブの単一硝子体内注射後の眼組織中濃度を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
局所的に投与される医薬ゲルは、上述の望ましい薬剤送達特質を獲得する可能性があると考えられている。しかし、ほとんどの承認されたゲル製品は、非経口的経路で注入不可能および/または注射不可能であり、また、局所経路での滴下もできない。さらに、市販されている眼用または皮膚用ゲル製品は、溶液、懸濁液、乳液、ローション、クリーム、軟膏などの従来の眼/皮膚用剤形と比較して、投与頻度の低減と長期的な曝露を提供するものではない。非経口的、局所的、および局部的箇所における長期的な放出が必要な場合、人々は、ゲルよりもむしろ多粒子システム、デバイス、インプラント、および/またはインサートでしばしばより良い成功を収めてきた。
【0019】
逆熱ゲル化系、例えば、温度低下に伴い流動性が増加する系は、投与後の薬剤の維持と放出を調整するのに有効である。これらの系を治療に使用できるようにするために、克服すべきいくつかの課題には、投与の簡便性、投与量の安定性、局所的および全身的な毒性が含まれる。
【0020】
一般に、本開示は、特定のレオロジー特性を有する医薬組成物(任意に活性医薬成分を含む)に関する。本明細書記載の医薬組成物は、一般的に「対象組成物(subject composition)」と言及される。対象組成物は、特定の特性を有する可逆ゲル化組成物である。例えば、対象組成物は、哺乳動物の体温付近、例えばヒトの体温付近、例えば約0℃から約40℃の間で、液体からゲルへと転移してもよい。例えば、対象組成物は、約2-8℃、例えば7℃では液体であり、より高い温度、例えば約30-40℃、例えば37℃では固体であってもよい。対象組成物は、任意の投与経路で使用できるが、対象組成物の特性は、対象組成物の意図された目的のために現在使用されている他の投与剤形(インサート、インプラント、経皮/局所パッチなど)よりも、非経口的および局所的経路における利点を与える場合がある。
【0021】
対象組成物は、3次元ネットワークを形成する、ゲル化材料を含んでもよい。
【0022】
対象組成物は、以下のような既存のゲル技術の限界を克服しうる多くの潜在的利点を有する。
【0023】
1)体温付近で半固体となるゲル組成物は、投与に必要な細い針や長いカテーテルを通過できない場合がある。この課題に対処するために、対象組成物は、投与前や投与中に適切な粘性および弾性にかかる特性を有する。
【0024】
2)体温付近で半固体となるゲル組成物は、ゲル化速度が遅すぎたり速すぎたりすると、体、組織、体腔内への投与後、生体内で適時に相転移しない場合がある。いくつかの対象組成物は、意図した目安(indication)での適時のゲル形成を確実にするために、速度論的に好ましい、例えば十分に速いゲル-ゾル転移、を有する。
【0025】
3)生体内でゲルを形成した場合、形成されたゲルは脆弱で、有効な薬剤放出効果を発揮するのに十分な期間持続しないことがある。一方、過度に耐久性のあるゲルは、ゲルからすべての薬物が放出された後も長く残存し、体内に空のゲル塊が残る可能性があるため、望ましくない場合がある。いくつかの対象組成物は、投与後の適切な形成を可能にする適切な弾性と粘性を有しており、ゲルは、薬剤放出の速度と、対応および匹敵する速度で溶解する。
【0026】
対象組成物の粘弾性特性は、対象組成物が、細い針、カテーテルおよび/またはデバイスを介して投与され、投与後にゲルを形成し、治療効果に必要な望ましい滞留時間を与える適切な溶解性を有するように調節することができる。
【0027】
対象組成物は、全身への薬剤投与より好ましい、局所組織への標的化薬剤送達を可能にする。標的化薬剤送達は、局所的薬剤曝露を最大化し、全身性副作用を最小化するために、採用されてきた。しかし、局所的薬剤送達を成功されるには、いくつかの特徴、例えば、投与の簡便さ、適切な局所耐性および安全性、標的組織に対する適切な容量および用量での送達、および効果的な疾患管理などの獲得が必要とされることがある。頻繁な注射などの頻繁な投与の必要性を減らすために、薬剤の適切な期間での放出が望ましい場合がある。標識組織での滞留時間の増加は、度重なる投与頻度を減らすことができ、局所的治療方法を改善することができる。また、いくつかの局所的薬剤送達の望ましさおよび効果を向上させるために、対象組成物などの医薬組成物の投与の簡便性を向上させることが望ましい。
【0028】
驚くべきことに、多くの対象組成物は、注射可能な水溶液、懸濁液および局所剤形などの従来の製剤と比較して、局所的投与により標的組織に十分な量での活性剤の、長期の、または調節された「滞留時間」を提供する。対象組成物の中には、従来の注射器や針を使って患者に投与できるものもあり、カテーテルやアプリケータを使って投与できるものもある。
【0029】
別段の記載がない限り、活性医薬成分などの化合物、またはいかなるその他の製剤成分への言及には、薬学的に許容される塩、酸形態、塩基形態、プロドラッグ、多形体、溶媒和物、水和物、互変異性体などの代替固体形態、または本明細書に記載されている化合物が使用される条件下で本明細書に記載されている化合物に急速に変換される可能性のあるその他の化学種が含まれる。
【0030】
上述したように、対象組成物の中には、逆熱ゲル化材料、例えば逆熱ゲル化ポリマーなど、例えば水または水溶液に溶解または分散した逆熱ゲル化ポリマーなど、に活性医薬成分を含むものもある。
【0031】
逆熱ゲル化性を有する任意の適切なポリマーを、対象組成物に使用してもよい。参照により本明細書に組み込まれるUS4474752、US4478822、およびCA1072413には、対象組成物に逆熱ゲル化特性を与え得るポリマーの例が記載されている。また、BASF Wyandotte Corporationの「Tetronic(登録商標)」ポリオールおよびPluronic(登録商標)ポロキサマーポリマーも、逆熱ゲル化特性を提供するために使用してもよい
【0032】
いくつかの実施形態において、対象組成物は、少なくとも1つのポリマー剤を含む。好ましくは、ポリマー剤は、アルキルセルロース、例えば、メチルセルロース、エチルセルロースなどを含む(C1-6アルキル)セルロース、を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、対象組成物は、(C1-6アルキル)セルロースを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、対象組成物は、エチルセルロースを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、対象組成物は、メチルセルロースを含む。いくつかの実施形態において、メチルセルロースは、約1,000-2,000mPas、約1,400-1,600mPas、または約1,500mPasの粘度を有する。
【0036】
メチルセルロース(メチルセルロースA15LVなど)を含む対象組成物において、例えば、約0.1-20%(w/w)、約2-10%(w/w)、約3-4%(w/w)、約4-5%(w/w)、約5-6%(w/w)、約6-7%(w/w)、約7-8%(w/w)、約8-9%(w/w)、約4-6%(w/w)、約6-8%(w/w)、約8-10%(w/w)、約4.6-4.8%(w/w)、約4.8-5%(w/w)、約5-5.2%(w/w)、約5.2-5.4%(w/w)、約5.4-5.6%(w/w)、約5.6-5.8%(w/w)、約6.6-6.8%(w/w)、約6.8-7%(w/w)、7-7.2%(w/w)、約7.2-7.4%(w/w)、約7.4-7.6%(w/w)、約7.6-7.8%(w/w)、約4.5-5.5%(w/w)、約4.8-5.2%(w/w)、約6.8-7.2%(w/w)、約6.5-7.5%(w/w)、約3-9%(w/w)、または3-12%(w/w)などの、任意の適切な濃度のメチルセルロースを使用してもよい。
【0037】
メチルセルロースを含む対象組成物において、メチルセルロースのメトキシル化度は、約10-50%、約10-15%、約15-20%、約20-25%、約25-30%、約30-35%、約35-40%、約40-45%、約45-50%、約20-22%、約22-24%、約24-26%、約26-28%、約28-30%、約30-32%、約32-34%、約34-36%、約36-38%、約38-40%、または約20-35%など、であってもよい。
【0038】
メチルセルロース溶液は、逆熱ゲル化特性を有する。しかし、メチルセルロース溶液の中は、ゲル化温度が体温の範囲外のものもある。加えて、メチルセルロース溶液の中には、その粘弾性特性が、大規模な医薬品製造および臨床現場での患者への投与には適さない場合がよくある。
【0039】
対象組成物は、少なくとも1つのゲル化調節剤を含んでいてもよい。ゲル化調節剤は、ゲル化開始温度、ゲル化速度、ゲル化温度、温度関数としての弾性プロファイルなどの特性を変更してもよい。ゲル化調節剤は、塩、緩衝剤、溶媒、界面活性剤、別の物質、またはそれらの組み合わせなどの物質であってもよい。いくつかの実施形態においては、活性医薬剤を実現可能に送達することができる製剤を製造するために、複数のゲル化調節剤(2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上など)を、1つの製剤中に使用することができる。
【0040】
適切なゲル化調節剤の例には、リン酸塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ホウ酸塩、ヒスチジン、炭酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、クエン酸酢酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、ギ酸塩、スルファミン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、o-トルイル酸塩、ベンゼンテトラカルボン酸塩、グルタミン酸塩、e-アミノカプロン酸塩、アスパラギン酸塩、グリシン酸塩、アルギン酸塩、リジン酸塩、タウリン酸塩、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセリン、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、コーン油、オリーブ油、ヒマシ油、ビタミンE、リン脂質、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、単糖類、二糖類、ブドウ糖(dextrose)、ショ糖、糖アルコール、マンニトール、ソルビトール、酸化防止剤、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、EDTA、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、など、またはそれらの組み合わせ、を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ゲル化調節剤は、リン酸塩を含む。いくつかの実施形態において、ゲル化調節剤は、ジメチルスルホキシドを含む。いくつかの実施形態では、ゲル化調節剤は、クエン酸塩を含む。
【0041】
適切な緩衝剤(ゲル化調整剤としての使用、またはゲル化調整とは無関係の緩衝目的での使用)には、リン酸塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩、トリス-(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ホウ酸塩、ヒスチジン、炭酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、ギ酸塩、スルファミン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、o-トルイル酸塩、ベンゼンテトラカルボン酸塩、グルタミン酸塩、e-アミノカプロン酸塩、アスパラギン酸塩、グリシン酸塩、アルギン酸塩、リジン酸塩、タウリン酸塩など、またはそれらの組み合わせ、を含んでもよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、クエン酸、任意のクエン酸の塩、またはそれらの組み合わせを含む、クエン酸塩を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、リン酸、任意のリン酸の塩、またはそれらの組み合わせを含む、リン酸塩を含む。いくつかの実施形態において、複数の緩衝剤を、単一の製剤中で組み合わせて使用することができる。
【0042】
クエン酸塩を含む医薬組成物について、例えば、1-200mmole/kg、約25-200mmole/kg、約50-100mmole/kg、約100-150mmole/kg、約80-100mmole/kg、約100-120mmole/kg、約120-140mmole/kg、約96-98mmole/kg、約98-100mmole/kg、約100-102mmole/kg、約102-104mmole/kg、約104-110mmole/kg、約110-112mmole/kg、約112-114mmole/kg、約114-116mmole/kg、約116-118mmole/kg、約118-120mmole/kg、約120-122mmole/kg、約97-99mmole/kg。約99-101mmole/kg、約101-103mmole/kg、約103-108mmole/kg、約108-113mmole/kg、約113-115mmole/kg、約115-117mmole/kg、約117-119mmole/kg、約90-110mmole/kg、または約110-130mmole/kgなど、の任意の適切なクエン酸塩濃度(クエン酸、クエン酸の塩、クエン酸の塩の組み合わせ、または1つまたは複数のクエン酸の塩およびクエン酸の組み合わせを含む)としてもよい。
【0043】
リン酸塩を含む医薬組成物について、例えば、1-200mmole/kg、約50-100mmole/kg、約100-150mmole/kg、約80-100mmole/kg、約100-120mmole/kg、約120-140mmole/kg、約96-98mmole/kg、約98-100mmole/kg、約100-102mmole/kg、約102-104mmole/kg、約110-112mmole/kg、約112-114mmole/kg、約114-116mmole/kg、約116-118mmole/kg、約118-120mmole/kg、約120-122mmole/kg、約97-99mmole/kg、約99-101mmole/kg、約101-103mmole/kg、約113-115mmole/kg、約115-117mmole/kg、約117-119mmole/kg、約90-110mmole/kg、または約110-130mmole/kgなど、の任意の適切な濃度のリン酸塩を使用してもよい。
【0044】
親水性溶媒または疎水性溶媒も、ゲル化調整剤として、またはその他の目的で使用してもよい。適切な親水性溶媒には、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセリン、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールがある。適切な疎水性溶媒には、植物油(コーン油、オリーブ油、ヒマシ油など)、ビタミンE、およびリン脂質がある。
【0045】
ジメチルスルホキシドを含む医薬組成物については、例えば、約0.1-50%(w/w)、約0.1-20%(w/w)、約0.1-10%(w/w)、約0.1-1%(w/w)、約1-10%(w/w)、約10-20%(w/w)、約20-30%(w/w)、約30-40%(w/w)、約40-50%(w/w)、約0.1-8%(w/w)、約1-2%(w/w)、約2-3%(w/w)、約3-4%(w/w)、約4-5%(w/w)、約5-6%(w/w)、約6-7%(w/w)、約4-6%(w/w)、約6-8%(w/w)、約8-9%(w/w)、約9-10%(w/w)、約10-12%(w/w)、約4.8-5%(w/w)、約5-5.2%(w/w)、約5.2-5.4%(w/w)、約4.5-5.5%(w/w)、約4.8-5.2%(w/w)、約3-9%(w/w)、約9-11%(w/w)、または約3-12%(w/w)など、の任意の適切な濃度のジメチルスルホキシドを使用してもよい。
【0046】
ゲル化調整剤として用いてもよい他の材料には、界面活性剤(ポリソルベート20、40、60、80、およびリン脂質など)、単糖類または二糖類(ブドウ糖、ショ糖など)、糖アルコール(マンニトール、ソルビトールなど)などが挙げられる)、酸化防止剤(ビタミンE、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウムなど)、EDTAなどのキレート剤、懸濁剤(カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウムなど)、および粘度向上剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー、ヒアルロン酸塩など)、がある。
【0047】
医薬組成物は、例えば、約4-9、約5-9、約6-8、約6-7、約7-8、約7-7.3、約7.3-7.6、約7.6-7.9、約7.2-7.6、または約7.4など、の任意の適切なpHとしてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、組成物は、20%未満、10%未満、5%未満、または0.5%未満のポリエチレングリコールを含んでいてもよく、あるいはポリエチレングリコールを実質的に含まない、または完全に含まないものであってもよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、組成物は、20%未満、10%未満、5%未満、2.5%未満、または0.5%未満のジメチルスルホキシドを含んでいてもよく、あるいはジメチルスルホキシドを実質的に含まない、または完全に含まないものであってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、組成物は、20%未満、10%未満、5%未満、2.5%未満、または0.5%未満のグリセリンを含んでいてもよく、あるいは、グリセリンを実質的に含まない、または完全に含まないものであってもよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、組成物は、20%未満、10%未満、5%未満、2.5%未満、または0.5%未満のショ糖を含んでいてもよく、あるいはショ糖を実質的に含まない、または完全に含まないものであってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、組成物は、20%未満、10%未満、5%未満、2.5%未満、または0.5%未満のポリソルベート80を含んでいてもよく、あるいはポリソルベート80を実質的に含まない、または完全に含まないものであってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、組成物は、20%未満、10%未満、5%未満、2.5%未満、または0.5%未満のポリソルベート60を含んでいてもよく、あるいはポリソルベート60を実質的に含まない、または完全に含まないものであってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、組成物は、20%未満、10%未満、5%未満、2.5%未満、または0.5%未満のポリソルベート40を含んでいてもよく、あるいは、ポリソルベート40を実質的に含まない、または完全に含まないものであってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、組成物は、20%未満、10%未満、5%未満、2.5%未満、または0.5%未満のポリソルベート20を含んでいてもよく、あるいはポリソルベート20を実質的に含まない、または完全に含まないものであってもよい。また、NaCl、KCl、Na2SO3、MgCl2、FeCl3、Na3PO4などの塩も、ゲル化調節剤として、または他の目的のために用いてもよい。
【0056】
対象組成物は、塩化ナトリウム、グリセリン、マンニトール、ブドウ糖、塩化カリウムなどの等張化剤をさらに含むことができる。
【0057】
対象組成物は、任意の望ましい活性医薬成分または薬剤、例えば、抗血管新生剤、抗生剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、生物学的製剤、血圧降下剤、泌尿器系製剤、ホルモン剤、またはステロイド剤、あるいは、皮膚科用、胃腸科用、鼻腔用、腫瘍用、眼科用、耳鼻科用、鎮痛用、呼吸器用、泌尿器用の薬剤が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0058】
対象組成物は、水不溶性薬剤と比較して、利点を提供する場合がある。この目的のために、対象組成物は、水不溶性薬剤の分散した固体粒子を含んでもよい。固体粒子は、薬剤そのもの、活性医薬成分のマイクロスフェアまたはマイクロカプセル、活性医薬成分のナノ粒子、または共有結合またはイオン結合を介してポリマーに結合/会合した薬剤とすることができる。対象組成物は、追加で、または代替として、水不溶性薬剤が溶解している疎水性溶媒の分散球を含んでもよい。対象組成物に使用することから利点を受ける水不溶性薬剤には、ステロイド、NSAID、チロシンキナーゼ阻害剤、抗がん剤、抗生剤、プロスタグランジン、免疫調節剤、ホルモン(および、そのアゴニストおよびアンタゴニスト)などがある。
【0059】
いくつかの実施形態において、活性医薬成分は、例えば、アキシチニブ、ニンテダニブ、ピルフェニドン、リオシグアト、ソラフェニブ、スニチニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、ポナチニブ、パゾパニブなど、のマルチキナーゼ阻害剤を含む。
【0060】
対象組成物は、温度依存型レオロジー特性を有する場合がある。対象組成物およびレオグラムの例を、実施例1-17および
図1-4に示す。温度関数としての位相角δの記録は、ゲル化速度を記述し、ゲル化開始温度および温度上昇に伴うゲル化速度を示す。位相シフトδは、特定の温度におけるゲル化率に反比例しており、特定温度におけるゲル化率決定に用いられる。硝子体内注射の場合、緩やかなゲル化を伴う早期のゲル化開始よりも、突発的で迅速なゲル化を伴う遅延性ゲル化開始がより望ましい。貯蔵弾性率(G’)の記録は、温度上昇に伴う固体特性(弾性)の増加を示す。体温付近でのG’値は、ゲル強度を反映し、ゲル強度はゲル耐久性に関連している。体温付近でのG’値が高い組成物ほど、ゲル耐久性が高くなる。
【0061】
G’切片の記録は、注入性を示唆する。約0.1に近いかそれ未満の切片値、例えば、約0.05-0.07、約0.07-0.1、約0.1-0.3、または約0.3-0.5など、は、細い針を必要とする投与に、より好ましい。同様の原理が、温度関数としての複素粘度の記録に適用される、すなわち、約0.1に近いかそれ未満の切片値、例えば、約0.05-0.07、約0.07-0.1、約0.1-0.3、または約0.3-0.5など、は、細い針を必要とする投与に、より好ましい。
【0062】
温度関数としてのG’の傾きの記録は、組成物の凝固傾向を示唆する。冷たい温度範囲での負の傾きは、長いカテーテルの使用を必要とする投与(indication)に、より好ましい。いくつかの実施形態において、G’は、約2-8℃、約5-15℃、約5-20℃、または約5-25℃において、約-0.001-0.003、約-0.003-0.007、約-0.007-0.01、約-0.01-0.015、または約-0.012-0.02の傾きを有する。
【0063】
いくつかの実施形態において、対象組成物は、約37℃で第1貯蔵弾性率(G’)および約5℃で第2G’を有し、第1G’は、第2G’よりも、例えば、少なくとも約5倍高く、少なくとも約8倍高く、少なくとも約10倍高く、少なくとも約20倍高く、少なくとも約50倍高く、少なくとも約100倍高く、少なくとも約500倍高く、または少なくとも約1000倍、高い。
【0064】
いくつかの実施形態において、対象組成物は、約37℃で第1複素粘度および約5℃で第2複素粘度を有し、第1複素粘度は、第2複素粘度より、例えば、少なくとも約1.5倍高く、少なくとも約2倍高く、少なくとも約5倍高く、少なくとも約10倍高く、少なくとも約20倍高く、少なくとも約50倍高く、または少なくとも約100倍、高い。
【0065】
いくつかの実施形態において、対象組成物は、約37℃における第1損失弾性率(G”)および約5℃における第2G”を有し、第1G”は第2G”よりも高い。
【0066】
いくつかの実施形態において、対象組成物は、約37℃におけるゲル化率が、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%である。
【0067】
いくつかの実施形態において、対象組成物は、約30℃から40℃の間のゲル化率が、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%である。
【0068】
いくつかの実施形態において、対象組成物は、約2℃と約8℃の間のゲル化率が、約20%以下、約10%以下、約5%以下、約3%以下、または約1%以下である。
【0069】
対象組成物は、活性医薬成分を哺乳動物に送達させるために、かかる活性医薬成分を必要としている哺乳動物に投与してもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、活性医薬成分の投与頻度を減少させる場合がある。いくつかの実施形態において、活性医薬成分の単回投与により、活性医薬成分の治療上有効な濃度が、少なくとも5日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、またはそれ以上の期間、哺乳動物においてもたらされる。かかる投与は、局所投与、病巣内注射、病変周辺注射、前立腺内注射、硝子体内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射、組織内注射、または点眼を含む、任意の投与経路によって行われてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、対象組成物は、適切な分子量および粘度のメチルセルロースを、緩衝剤および/または等張化剤と混合することにより、得られる。すべてのメチルセルロースが、医薬品製造に最も望ましい粘弾性特性や、臨床現場での患者への投与に最も適した特性を有しているわけではない。
図4は、2種類のメチルセルロース(A15LVおよびA15C)の5%における温度掃引レオグラムである。A15Cは、A15LVよりも分子量が大きい。この温度掃引レオグラムは、5%濃度のA15LVが、非経口製剤への配合に適した粘弾性特性を有すると認められることを示す。さらに、メチルセルロースA15Cは、5%では粘弾性が高すぎてシリンジや注射での注入ができない可能性がある。
【0071】
さらに、体温付近でゲル-ゾル相転移をさせるためには、3%を超えるメチルセルロースA15LV濃度が必要となることがある。
【0072】
いくつかのゲル化調節剤は、他のものよりも効果的であることが発見された(
図2および3)。116mmole/kgのクエン酸緩衝液は、驚くべきことに、37℃でのゲル弾性の大幅な向上を可能とすることがわかった。結果として、生体内でのゲル溶解性が大幅に低下する(すなわち、ゲルの滞留時間が長くなる)ことが予想される。さらに、116mmole/kgのクエン酸緩衝液は、驚くべきことに、クエン酸緩衝液なし、または75mmole/kgのみの弾性プロファイルと比較して、5℃から25℃の温度範囲における、弾性プロファイルの傾きを正から負に変化させることができることがわかった(
図3)。5℃から25℃の温度範囲での負の傾きは、116mmole/kgのクエン酸塩を含む製剤が、針やカテーテルを通して投与される際の凝固リスクを低減させるであろうことを示唆する。
【0073】
いくつかの対象組成物において、難水溶性薬剤の望ましい粒径は、望ましいゲル化温度、pHおよび浸透張力を有するメチルセルロース溶液に分散させる前の制御された沈殿過程を介して、生成/制御/影響される。沈殿は、pH、溶解度、浸透張力、または温度の変化によって引き起こされてもよい。沈殿物は、市販の原料とは異なる結晶化性質を有し、その結果、薬剤放出速度が異なることがある。表3は、水不溶性薬剤を対象組成物に組み込む4つの方法を示す。ゲル強度と制御された沈殿が試験管内での薬剤放出速度に与える影響を
図5に示す。
【0074】
いくつかの対象組成物において、メチルセルロース溶液は、意図した医薬用途に適したpH値や浸透張力を有することができるように、適切な緩衝剤や等張化剤が配合されている。
【0075】
望ましいゲル化温度、pH、および浸透張力を有するメチルセルロース溶液を含む対象組成物であって、その中に1つまたは複数の活性医薬品成分が分散されている対象組成物は、局所疾患の治療/予防/管理のために、硝子体内、乳房内、筋肉内、皮下、または皮内注射によって患者に投与されてもよい。
【0076】
対象組成物は、目(眼球表面、眼球前区および眼球後区)、前立腺、膀胱、子宮、膣、皮膚、舌、歯茎、口腔、鼻、副鼻腔、関節などの標的組織、および様々な固形腫瘍に、局所的に(針を用いた注射やアプリケータを介して)投与され得る。1つまたは複数の薬剤と配合された場合、対象組成物は、前述の標的組織における局所疾患を治療するための活性剤を輸送することができる。薬剤は、水溶性または水不溶性とすることができる。ゲル組成物は、低温または室温では液体であり、かつ、体温まで温め、特に好適である状態となると半固体に相転移できるように、比較的広い条件で設計することができる。
【0077】
対象組成物は、滴下、点滴または注射の際に流動性があるため、滴下や注入可能な製品として使用する際に利点を有すると共に、体に触れる時はゲルである。また、対象組成物は、活性医薬成分および/または診断薬剤を局所組織へ制御して送達することができる点でも利点を有する。
【0078】
いくつかの対象組成物は、随伴血管新生および線維化を伴う、慢性炎症を特徴とする疾患または障害の予防または治療に使用してもよい。いくつかの実施形態において、疾患または障害には、皮膚関連障害、良性前立腺肥大症関連障害、眼関連障害、酒さ関連障害、子宮筋腫および関連疾患、腫瘍性疾患および癒着関連障害がある。いくつかの実施形態において、医薬用生体溶解性/生体分解性水性ゲルシステムは、分散された少なくとも1つの活性医薬成分、例えばアキシチニブ、ニンテダニブ、ピルフェニドン、リオシグアト、ソラフェニブ、スニチニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、ポナチニブ、またはパゾパニブなどの、マルチキナーゼ阻害剤を含む、抗血管新生のために設計された活性医薬成分などを含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、アキシチニブ、ニンテダニブ、ピルフェニドン、リオシグアト、ソラフェニブ、スニチニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、ポナチニブ、またはパゾパニブなどのマルチキナーゼ阻害剤は、対象組成物中に、約0.01-5%(wt/wt)、約0.1-1%(wt/wt)、約1-2%(wt/wt)、約2-3%(wt/wt)、約3-4%(wt/wt)、約4-5%(wt/wt)、約0.01-0.5%(wt/wt)、約0.5-1%(wt/wt)、約1-1.5%(wt/wt)、約1.5-2%(wt/wt)、約2-2.5%(wt/wt)、約2.5-3%(wt/wt)、約3-3.5%(wt/wt)、約3.5-4%(wt/wt)、約4-4.5%(wt/wt)、約4.5-5%(wt/wt)、0.01-0.1%(wt/wt)、約0.1-0.2%(wt/wt)、約0.2-0.3%(wt/wt)、約0.3-0.4%(wt/wt)、約0.4-0.5%(wt/wt)、約0.5-0.6%(wt/wt)、約0.6-0.7%(wt/wt)、約0.7-0.8%(wt/wt)、約0.8-0.9%(wt/wt)、約0.9-1%(wt/wt)、約1-1.1%(wt/wt)、約1.1-1.2%(wt/wt)、約1.2-1.3%(wt/wt)、約1.3-1.4%(wt/wt)、約1.4-1.5%(wt/wt)、約1.5-1.6%(wt/wt)、約1.6-1.7%(wt/wt)、約1.7-1.8%(wt/wt)、約1.8-1.9%(wt/wt)、約1.9-2%(wt/wt)、約2-2.2%(wt/wt)、約2.2-2.4%(wt/wt)、約2.4-2.6%(wt/wt)、約2.6-2.8%(wt/wt)、約2.8-3%(wt/wt)、約3-3.3%(wt/wt)、約3.3-3.6%(wt/wt)、約3.6-3.9%(wt/wt)、約3.9-4.3%(wt/wt)、約4.3-4.7%(wt/wt)、約4.7-5.1%(wt/wt)、約0.9-1.1%(wt/w)、または約1%(wt/wt)、の濃度で存在する。
【0080】
いくつかの実施形態において、投与は、局所製剤、病巣内注射、病変周辺注射、点眼、または組織内注射による。
【0081】
「治療する」または「治療」という用語には、ヒトまたは他の哺乳動物の疾患の診断、治癒、緩和、または予防を含むあらゆる種類の治療活動、またはヒトまたは他の哺乳動物の身体の構造または任意の機能に影響を与えるあらゆる他の活動が、広く含まれる。
【0082】
薬剤および活性医薬成分という用語は、同じ意味で使われる場合がある。
【0083】
薬剤を含まない対象組成物/ゲル製剤は、以下のようにして調製されうる。本方法は一例であり、当業者がうまく改変してもよい。
【0084】
1.メチルセルロース以外の成分(緩衝剤、塩、溶媒など)の所与の量を、製剤組成に応じた適量の水中で混合する。一定に混合しながら、混合物を約60-80℃、好ましくは67-70℃に加熱する。
【0085】
2.適量のメチルセルロースを正確に計量し、一定に混合しながら、高温の混合物に粉末を加える。セルロースが十分に分散されたら、熱源を取り除き、水でバッチを目標重量にし、分散液が常温に冷えるまで混合を続ける。セルロースを完全に水和させるために分散液を一晩冷やし、適切な/望ましい逆熱ゲル化特性を示す、薬剤を含まない、最終的な対象組成物/ゲル製剤を生成する。
【0086】
3.冷やしたバルクゲル製剤は、1型ガラス製血清バイアルに充填され、シリコンコートされたストッパーとアルミニウム製圧着蓋で密封される。充填および密封されたバイアルは、最終的に滅菌される。
【0087】
水不溶性薬物を含む対象組成物は、以下のようにして調製されうる。本方法は一例であり、当業者がうまく改変してもよい。
【0088】
1.適切な溶媒を用いた高濃度薬剤原液の調製
正確な量の薬剤と適切な溶媒を混合し、高濃度薬剤原液を新たに調製する。溶媒に薬剤を溶解した後、生成溶液は、使用前に滅菌済フィルターでろ過してもよい。
【0089】
2.制御された沈殿によるフェーズ1薬剤懸濁液の調製
正確な量の薬剤原液を、製剤組成に応じた適切かつ正確な量の水に、一定の混合を行いながら滴下して、薬剤を沈殿させる。得られた懸濁液を、ホモジナイザーで適切な時間、適切な速度で均質化する。
【0090】
3.薬剤を含む最終対象組成物/ゲル製剤の調製
適量のフェーズ1薬剤懸濁液を正確に計量し、それを、適量のメチルセルロース以外の溶媒、緩衝剤、塩などと混合する。一定に混合しながら、混合物を約60-80℃、好ましくは67-70℃に加熱する。適量のメチルセルロースを正確に計量し、一定に混合しながら、高温懸濁液に粉末を加える。セルロースが十分に分散したら、熱源を取り除き、水でバッチを目標重量にし、分散液が常温に冷えるまで混合を続ける。セルロースを完全に水和させるために分散液を一晩冷やし、適切な/望ましい逆熱ゲル化特性を示す最終的な薬剤を含む対象組成物/ゲル製剤を製造する。
【0091】
4.充填および最終的な殺菌
冷やした薬剤を含むバルクゲル製剤は、1型ガラス製血清バイアルに充填され、シリコーンコートされたストッパーとアルミニウム製圧着蓋で密封される。充填および密封されたバイアルは最終的に滅菌される。
【0092】
(実施例1-20)
組成例1-17は、以下の表1から6に示す配合で、上述のように調製した。
【0093】
付表1:クエン酸塩を含む一重ゲル化調整剤製剤系
【表1】
【0094】
付表2:二重ゲル化調整剤製剤系、三重ゲル化調整剤製剤系
【表2】
注:実施例3と4は、製剤組成は同じだが、活性医薬成分(API)の懸濁液を組成する方法が異なる。
【0095】
付表3:ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む単一ゲル化調整剤製剤系
【表3】
【0096】
実施例9、10、11、12および13は、本明細書に記載されている薬剤を含まない最終バルクゲル製剤プロセスに従って調製し、次いで37℃でのゲル化について試験を行った。この試験では、実施例8、9、10、11および12の1mLを2mLガラスバイアルに入れ、キャップをして、37℃の水槽に置いた。0.5時間、1時間、2時間後にバイアルを水槽から取り出し、倒立フローテスト法を用いてゲルの形成を確認した。本試験では、バイアルを水槽から取り出し、5-6秒間倒立させた。溶液が流れずに反転したままであれば、「ゲル」形成を示す「ゲル」という用語を使用し、流れた場合は、ゲル形成/ゲル化がないことを示す「なし」という用語を使用した。表4は、検討した3つのすべてのDMSO濃度(2.5%、5%、および10%)において、DMSOがメチルセルロースのゲル化調整剤として機能することを示す。
【0097】
付表4:新たに調整された実施例の倒立フローテスト法による37℃でのゲル形成結果
【表4】
【0098】
付表5:活性医薬成分を含む組成物の実施例
【表5】
【0099】
実施例14-16は、本明細書に記載された方法で調製した。実施例14は、37℃で、ゲルを形成し、流動性がなかった。実施例15および16は、37℃で、ゲルを形成せず、流動性があった。
【0100】
付表6:アキシチニブを活性医薬成分として含む組成物の実施例
【表6】
【0101】
実施例17は、活性医薬成分としてアキシチニブを含み、実施例3-8で使用したものと同様の方法で調製した。実施例17は、37℃で、ゲルを形成し、流動性がなかった。
【0102】
実施例18
最終的に滅菌された実施例5の特性を、実施例18に示す。以下の表7に示すのは、最終的に滅菌された実施例5の物理的な外観、再懸濁性、流動性、注入性およびアッセイデータ、および試験管内薬剤放出データである。
図5は、表2に記載のいくつかの異なるレンバチニブ製剤の試験管内薬剤放出を示す。
【0103】
付表7:最終的に滅菌された実施例5
【表7】
注:米国薬局法 装置2を使用(パドル法)
【0104】
実施例19
3種類のゲル製剤中のレンバチニブの滞留時間を評価するため、ウサギを用いた試験を実施した。各グループのウサギ(実施例3、6、4として記載された製剤を、それぞれ第1グループ、第2グループ、第3グループに対して)に、1%レンバチニブゲル製剤を片眼0.5mgずつ眼球内注射により両眼に1回投与した。
【0105】
全てのグループにおいて、予想通り、時間の経過とともに、最高濃度のレンバチニブが、硝子体液、網膜、脈絡膜で検出された。第1グループおよび第3グループの硝子体液、網膜および脈絡膜におけるレンバチニブ濃度は、次第に低下したが、第2グループでは、眼球内投与後20週間経過後も、比較的安定していた。第1グループの眼組織におけるレンバチニブの濃度は、12週までにレンバチニブの定量不可能なレベルにまで低下した。第2グループの測定した全ての眼組織におけるレンバチニブ濃度は、20週目まで概ね安定していた。第3グループの眼組織におけるレンバチニブ濃度は、12週目まで概ね安定していたが、20週目までには定量可能な濃度は、散発的であった。
【0106】
付表8:ダッチベルテッドウサギにおけるレンバチニブ1%ゲルの単回眼球内注射後の血漿中濃度
【表8】
注:定量下限=0.2ng/mL
【0107】
硝子体液が律速部であることから、血漿中濃度は、眼組織中の濃度と類似していると思われたが、その濃度ははるかに低かった。血漿中のレンバチニブ濃度は、第1グループでは6週目まで、第2グループでは20週目までずっと定量可能であり、第3グループでは12週目においては定量可能であったが、20週目においては定量不可能であった(表8)。
【0108】
付表9:硝子体液における単回IVT注入後のレンバチニブの滞留時間および残存率
【表9】
【0109】
表9は、異なる製剤の単回IVT注射後の硝子体液中に残存するレンバチニブ量の回収率を示す。第1グループにおけるレンバチニブ回収率は、2週目においては約28%であり、その後20週目までにはわずかな割合まで減少した。第2グループにおけるレンバチニブ回収率は、2週目においては約58%であったが、20週目までには約8%に減少した。第2グループに投与された製剤は、硝子体液中での滞留時間が最も長かった。第3グループの硝子体液中でのレンバチニブ回収率は、2週目においては約36%であったが、20週目までにはわずかな割合まで減少した。
【0110】
0日目(投与後)、3日目、7日目、14日目、28日目、42日目、84日目、140日目に、各眼に対して製剤分散の眼底画像を連続して撮影した。眼底画像と眼組織濃度の結果は、互いに類似していた。第1グループおよび第3グループは、第2グループに比べ、速やかに薬剤を放出した。第2グループは、20週間の試験期間を通してレンバチニブを徐放的に放出し、眼組織および血漿中のレンバチニブ濃度が、経時的に安定していることが示された(
図6-8)。
【0111】
(実施例20)
ラットでの試験は、単回前立腺内注射後のレンバチニブゲルの滞留時間を評価するために実施された。
【0112】
各グループ(第1、第2、第3グループ)の12匹のラットに、3種類の異なる1%レンバチニブゲル製剤(実施例3、4、6)を、2つの用量(0.2mgおよび2mg)で投与した。投与後3日目、7日目、14日目、21日目、28日目、42日目、60日目の試験日に血漿サンプルを採取した。60日目の試験終了後、これらのラットから前立腺を採取した。
【0113】
レンバチニブ0.2mgの単回投与後、第1、第2、第3グループの動物における平均最大血漿中濃度はそれぞれ9.15、12.0、5.24ng/mLであった。最大投与濃度は、3日目であった。血漿中のレンバチニブ濃度は、第1、第2、第3グループにおいて、それぞれ投与後14日目、42日目、60日目まで検出可能であった。定量下限は、0.100ng/mLであった(表10)
【0114】
付表10:1%レンバチニブの異なる製剤のラットへの単回前立腺内注射後の平均血漿中濃度
【表10】
定量下限=0.1ng/mL
【0115】
ラットへのレンバチニブ2mg送達後、60日後におけるレンバチニブの最大前立腺濃度は、第3グループにあり、腹葉で最も高い平均濃度(494,000ng/g)であった。背側葉では平均濃度が127,000ng/gであった。0.2mg/動物を投与した第3グループでは、腹葉の平均濃度が13,500ng/g、背側葉の平均濃度が2450ng/gであった。第1グループおよび第2グループの組織濃度は、第3グループの動物と比較すると、60日後において基本的に定量不可能か、非常に低かった。前立腺の概要データを表11に示す。
【0116】
付表11:1%レンバチニブの異なる製剤のSDラットへの単回前立腺内注射後60日目におけるレンバチニブの平均前立腺濃度
【表11】
定量下限=0.2ng/mLまたは0.8ng/g、
VP:腹部前立腺、DLP:背側部前立腺
【0117】
3つの各製剤において、血漿中濃度時間プロファイルには、投与量依存性が認められた(表10)。3つのすべての製剤において、投与部位である前立腺から血漿コンパートメントへの薬剤徐放放出が認められ、3日目にCmaxが認められた。薬剤放出の「半減期」は、第1、第2、第3グループでそれぞれ約6日、8日、43日であった。第1および第2グループにおいては、第3グループよりも高いCmaxが認められたが、第3グループにおいては、第1グループおよび第2グループよりもはるかに長い血漿中濃度の維持が認められた。
【0118】
表11は、前立腺における制御された薬剤徐放送達システムを示す。つまり、表11の第3グループは、60日目における前立腺に残存する割合量が最も高く、0.2mgと2mgの投与量グループで、それぞれ約2.7%と12.7%であった。
【0119】
具体的には、以下のような実施形態が考えられる。
【0120】
(実施形態)
(実施形態1)
逆熱ゲル化材料を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物は、哺乳動物の体温付近で液体からゲルへと転移する、医薬組成物。
【0121】
(実施形態2)
前記哺乳動物がヒトである、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0122】
(実施形態3)
少なくとも1つの活性医薬成分をさらに含む、実施形態2に記載の医薬組成物。
【0123】
(実施形態4)
前記医薬組成物が、約5℃で液体である、実施形態2または3に記載の医薬組成物。
【0124】
(実施形態5)
前記医薬組成物が、約35℃から40℃の間においてゲルである、実施形態1、2、3、または4に記載の医薬組成物。
【0125】
(実施形態6)
メチルセルロース、ジメチルスルホキシド、およびクエン酸塩をさらに含む、実施形態1、2、3、4、または5に記載の医薬組成物。
【0126】
(実施形態7)
活性医薬成分、メチルセルロース、ジメチルスルホキシドおよびクエン酸塩を含む、医薬組成物。
【0127】
(実施形態8)
前記メチルセルロースを、約2%(w/w)から約10%(w/w)の濃度で含む、実施形態6または7に記載の医薬組成物。
【0128】
(実施形態9)
前記クエン酸塩を、約25mmole/kgから約200mmole/kgの濃度で含む、実施形態6、7、または8に記載の医薬組成物。
【0129】
(実施形態10)
pHが約5.0から約9.0である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、または9に記載の医薬組成物。
【0130】
(実施形態11)
約37℃において第1貯蔵弾性率(G’)および約5℃において第2G’を有し、前記第1G’が、前記第2G’よりも高い、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に記載の医薬組成物。
【0131】
(実施形態12)
前記第1G’が、前記第2G’よりも少なくとも約10倍高い、実施形態11に記載の医薬組成物。
【0132】
(実施形態13)
約37℃において第1複素粘度および約5℃において第2複素粘度を有し、前記第1複素粘度が、前記第2複素粘度よりも高い、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12に記載の医薬組成物。
【0133】
(実施形態14)
前記第1複素粘度が、前記第2複素粘度よりも少なくとも2倍高い、実施形態13に記載の医薬組成物。
【0134】
(実施形態15)
約37℃において第1損失弾性率(G”)および約5℃において第2のG”を有し、前記第1G”が、前記第2G”よりも高い、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14に記載の医薬組成物。
【0135】
(実施形態16)
約37℃において、ゲル化率が少なくとも70%である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15に記載の医薬組成物。
【0136】
(実施形態17)
約5℃において、ゲル化率が10%以下である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16に記載の医薬組成物。
【0137】
(実施形態18)
疾患を治療する方法であって、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17に記載の医薬組成物を、前記医薬組成物を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法。
【0138】
(実施形態19)
前記哺乳動物がヒトである、実施形態18に記載の方法。
【0139】
(実施形態20)
疾患を治療するための医薬品の製造における、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17の医薬組成物の使用方法。
【0140】
(付記)
(付記1)
逆熱ゲル化材料を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が哺乳動物の体温付近で液体からゲルに転移する、医薬組成物。
【0141】
(付記2)
前記哺乳動物がヒトである、付記1に記載の医薬組成物。
【0142】
(付記3)
活性医薬成分をさらに含む、付記1または2に記載の医薬組成物。
【0143】
(付記4)
前記活性医薬成分が、抗血管新生のために設計されたものである、付記3に記載の医薬組成物。
【0144】
(付記5)
前記活性医薬成分が、マルチキナーゼ阻害剤である、付記3に記載の医薬組成物。
【0145】
(付記6)
前記活性医薬成分には、アキシチニブ、ニンテダニブ、ピルフェニドン、リオシグアト、ソラフェニブ、スニチニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、ポナチニブ、パゾパニブ、またはそれらの組み合わせ、が含まれる、付記3に記載の医薬組成物。
【0146】
(付記7)
前記医薬組成物が、約2℃から約8℃の温度で液体である、付記1、2、3、4、5、または6に記載の医薬組成物。
【0147】
(付記8)
前記医薬組成物が約30℃から約40℃の温度でゲルである、付記1、2、3、4、5、6、または7に記載の医薬組成物。
【0148】
(付記9)
ポリマー剤およびゲル化調節剤をさらに含む、付記1、2、3、4、5、6、7、または8に記載の医薬組成物。
【0149】
(付記10)
前記ポリマー剤に、アルキルセルロースを含む、付記1、2、3、4、5、6、7、8、または9に記載の医薬組成物。
【0150】
(付記11)
前記ポリマー剤が、メチルセルロースである、付記10に記載の医薬組成物。
【0151】
(付記12)
前記ゲル化調節剤には、リン酸塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ホウ酸塩、ヒスチジン、炭酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、クエン酸酢酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、ギ酸塩、スルファミン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、o-トルイル酸塩、ベンゼンテトラカルボン酸塩、グルタミン酸塩、e-アミノカプロン酸塩、アスパラギン酸塩、グリシン酸塩、アルギン酸塩、リジン酸塩、タウリン酸塩、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセリン、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、コーン油、オリーブ油、ヒマシ油、ビタミンE、リン脂質、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、単糖類、二糖類、ブドウ糖(dextrose)、ショ糖、糖アルコール、マンニトール、ソルビトール、酸化防止剤、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、EDTA、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、など、またはそれらの組み合わせ、が含まれる、付記9、10、または11に記載の医薬組成物。
【0152】
(付記13)
前記ゲル化調節剤には、リン酸塩、ジメチルスルホキシド、クエン酸塩、またはそれらの組み合わせ、が含まれる、付記12に記載の医薬組成物。
【0153】
(付記14)
活性医薬成分、メチルセルロース、ジメチルスルホキシドおよびクエン酸塩を含む、医薬組成物。
【0154】
(付記15)
リン酸塩をさらに含む、付記14に記載の医薬組成物。
【0155】
(付記16)
前記メチルセルロースを、約2%(w/w)から約10%(w/w)の濃度で含む、付記11、14または15に記載の医薬組成物。
【0156】
(付記17)
前記クエン酸塩を、約25mmol/kgから約200mmole/kgの濃度で含む、付記16に記載の医薬組成物。
【0157】
(付記18)
pHが約5.0から約9.0である、付記17に記載の医薬組成物。
【0158】
(付記19)
pHが約6.0から約8.0である、付記17に記載の医薬組成物。
【0159】
(付記20)
活性医薬成分、メチルセルロース、ジメチルスルホキシド、およびクエン酸塩を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物は、約37℃において第1貯蔵弾性率(G’)および約5℃において第2G’を有し、前記第1G’は、前記第2G’よりも高い、医薬組成物。
【0160】
(付記21)
前記第1G’が、前記第2G’よりも少なくとも約10倍高い、付記20に記載の医薬組成物。
【0161】
(付記22)
約37℃において第1複素粘度および約5℃において第2複素粘度を有し、前記第1複素粘度が、前記第2複素粘度よりも高い、付記21に記載の医薬組成物。
【0162】
(付記23)
前記第1複素粘度が、前記第2複素粘度よりも少なくとも2倍高い、付記22に記載の医薬組成物。
【0163】
(付記24)
約37℃において第1損失弾性率(G”)および約5℃において第2G”を有し、前記第1G”が、前記第2G”よりも高い、付記23に記載の医薬組成物。
【0164】
(付記25)
約37℃におけるゲル化率が、少なくとも70%である、付記24に記載の医薬組成物。
【0165】
(付記26)
約5℃におけるゲル化率が、20%以下である、付記25に記載の医薬組成物。
【0166】
(付記27)
リン酸塩をさらに含む、付記20または26に記載の医薬組成物。
【0167】
(付記28)
疾患を治療する方法であって、付記26または27に記載の医薬組成物を、前記治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法。
【0168】
(付記29)
前記疾患が、随伴血管新生および線維化を伴う慢性炎症を特徴とする、付記28に記載の方法。
【0169】
(付記30)
前記疾患には、皮膚関連疾患、前立腺肥大症関連疾患、眼関連疾患、酒さ関連疾患、子宮筋腫または関連状態、腫瘍性疾患、または癒着関連疾患が含まれる、付記28に記載の方法。
【0170】
(付記31)
前記医薬組成物が、病巣内注射、病変周辺注射、硝子体内注射、前立腺内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射、組織内注射、または点眼によって、局所的に投与される、付記30に記載の方法。
【0171】
(付記32)
前記哺乳動物がヒトである、付記28、29、30、または31に記載の方法。
【0172】
(付記33)
活性医薬成分の送達方法であって、付記1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27に記載の医薬組成物を、前記活性医薬成分を必要としている哺乳動物に投与することを含み、前記組成物は、低減された活性医薬成分の投与頻度で治療効果を提供する、方法。
【0173】
(付記34)
前記医薬組成物が、病巣内注射、病変周辺注射、硝子体内注射、前立腺内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射、組織内注射、または点眼によって、局所的に投与される、付記33に記載の方法。
【0174】
(付記35)
前記哺乳動物がヒトである、付記33または34に記載の方法。
【0175】
(付記36)
前記活性医薬成分の単回投与により、治療上有効な濃度の前記活性医薬成分を、少なくとも5日間、前記哺乳動物に提供する、付記33、34、または35に記載の方法。
【0176】
(付記37)
前記活性医薬成分の単回投与により、治療上有効な濃度の前記医薬活性成分を少なくとも6週間、前記哺乳動物に提供する、付記36に記載の方法。
【0177】
(付記38)
ポリマー剤を、ゲル化調節剤および活性医薬成分を含む懸濁液に入れて混合する工程であって、前記混合は約60℃から約80℃の温度で行われる、工程を含み、
前記懸濁液は、前記活性医薬成分を水性液体に入れて沈殿させることと、前記懸濁液に前記ゲル化調節剤を添加することと、を含む方法によって形成される、
逆熱ゲル化特性を有する医薬組成物を調製する方法。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆熱ゲル化材料を含む医薬組成物であって、
前記医薬組成物が哺乳動物の体温付近で液体からゲルに転移
し、
前記医薬組成物がさらに抗血管新生のために設計された活性医薬成分を含む、
医薬組成物。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記活性医薬成分には、アキシチニブ、ニンテダニブ、ピルフェニドン、リオシグアト、ソラフェニブ、スニチニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、ポナチニブ、パゾパニブ、またはそれらの組み合わせ、が含まれる、請求項
1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、約2℃から約8℃の温度で液体であ
り、
前記医薬組成物が、約30℃から約40℃の温度でゲルである、
請求項1、2
または3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ポリマー剤およびゲル化調節剤をさらに含
み、
前記ポリマー剤が、メチルセルロースである、
請求項1、2、3
または4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ゲル化調節剤には、リン酸塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ホウ酸塩、ヒスチジン、炭酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、クエン酸酢酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、ギ酸塩、スルファミン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、o-トルイル酸塩、ベンゼンテトラカルボン酸塩、グルタミン酸塩、e-アミノカプロン酸塩、アスパラギン酸塩、グリシン酸塩、アルギン酸塩、リジン酸塩、タウリン酸塩、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセリン、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、コーン油、オリーブ油、ヒマシ油、ビタミンE、リン脂質、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、単糖類、二糖類、ブドウ糖(dextrose)、ショ糖、糖アルコール、マンニトール、ソルビトール、酸化防止剤、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、EDTA、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、など、またはそれらの組み合わせ、が含まれる、請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
活性医薬成分、メチルセルロース、ジメチルスルホキシドおよびクエン酸塩を含
み、
前記メチルセルロースを、約2%(w/w)から約10%(w/w)の濃度で含み、
前記クエン酸塩を、約25mmol/kgから約200mmole/kgの濃度で含む、
医薬組成物。
【請求項8】
リン酸塩をさらに含む、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
pHが約5.0から約9.0である、請求項
1、2、3、4、5、6、7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
約37℃において第1貯蔵弾性率(G’)および約5℃において第2G’を有し、
前記第1G’は、前記第2G’よりも
少なくとも約10倍高い、
請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
約37℃において第1複素粘度および約5℃において第2複素粘度を有し、
前記第1複素粘度が、前記第2複素粘度よりも
少なくとも2倍高い、
請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
約37℃において第1損失弾性率(G”)および約5℃において第2G”を有し、
前記第1G”が、前記第2G”よりも高い、
請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
約37℃におけるゲル化率が、少なくとも70%であ
り、
約5℃におけるゲル化率が、20%以下である、
請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
随伴血管新生および線維化を伴う慢性炎症を特徴とする疾患を治療する
薬剤であって、
前記薬剤は、請求項
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に記載の医薬組成物を
含み、
前記薬剤は、前記治療を必要とする
ヒトに投与される、
薬剤。
【請求項15】
前記疾患には、皮膚関連疾患、前立腺肥大症関連疾患、眼関連疾患、酒さ関連疾患、子宮筋腫または関連状態、腫瘍性疾患、または癒着関連疾患が含まれる、請求項
14に記載の
薬剤。
【請求項16】
前記医薬組成物が、病巣内注射、病変周辺注射、硝子体内注射、前立腺内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射、組織内注射、または点眼によって、局所的に投与される、請求項
14または15に記載の
薬剤。
【請求項17】
前記
医薬組成物は、低減された活性医薬成分の投与頻度で治療効果を提供する、
請求項14、15または16に記載の薬剤。
【請求項18】
前記
医薬組成物の単回投与により、治療上有効な濃度の前記活性医薬成分を、少なくとも5日間、前記
ヒトに提供する、請求項
16または17に記載の
薬剤。
【請求項19】
ポリマー剤を、ゲル化調節剤および活性医薬成分を含む懸濁液に入れて混合する工程であって、前記混合は約60℃から約80℃の温度で行われる、工程を含み、
前記懸濁液は、前記活性医薬成分を水性液体に入れて沈殿させることと、前記懸濁液に前記ゲル化調節剤を添加することと、を含む方法によって形成される、
逆熱ゲル化特性を有する医薬組成物を調製する方法。
【国際調査報告】