(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】皮膚疾患を検出し観察するデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A61B5/00 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521279
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(85)【翻訳文提出日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 IB2019059735
(87)【国際公開番号】W WO2020104896
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】102018000010536
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506075182
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ トリノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】セッコ、ジャコポ
(72)【発明者】
【氏名】ファリーナ、マルコ
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB11
4C117XE03
4C117XE19
4C117XE42
4C117XE43
4C117XE48
(57)【要約】
本発明は、皮膚疾患を検出し観察するデバイスおよび方法からなり、デバイスは、皮膚疾患に冒された、皮膚の少なくとも1つの部分の医用画像を取得するように構成される画像取得手段(11)と、皮膚の部分の身体的状態、および/または皮膚の部分の周辺の環境状態を検出し、身体的状態および/または環境状態を表す病状データを生成するように構成されたセンサ手段(12)と、データをデジタル形式で格納するメモリ手段(13)と、a)センサ手段(12)により検出された病状データと、画像取得手段(11)により取得された医用画像を読み出し、b)病状データおよび医用画像をメモリ手段(13)に格納するように構成される処理手段(14)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚疾患に冒された、皮膚の少なくとも1つの部分の医用画像を取得するように構成される画像取得手段を備える皮膚疾患観察用デバイスであって、
皮膚の前記部分の身体的状態、および/または皮膚の前記部分の周辺の環境状態を検出し、前記身体的状態および/または前記環境状態を表す病状データを生成するように構成されたセンサ手段と、
データをデジタル形式で格納するメモリ手段と、
前記画像取得手段、前記センサ手段、および前記メモリ手段と通信する処理手段と
をさらに備え、前記処理手段は、
前記センサ手段により検出された前記病状データと、前記画像取得手段により取得された前記医用画像を読み出し、
前記病状データおよび前記医用画像を前記メモリ手段に格納するように構成される、デバイス。
【請求項2】
前記センサ手段は、皮膚の前記部分と、前記デバイスとの間の距離を測定可能である1または複数の距離センサを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記センサ手段は、200から450ナノメートルの範囲の波長を有する光を検出可能な紫外線画像センサと、1または複数の紫外線光源と、を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記センサ手段は、650から1,200ナノメートルの範囲の波長を有する光を検出可能な赤外線画像センサと、1または複数の赤外線光源と、を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記センサ手段は、前記皮膚疾患に冒された皮膚の前記少なくとも1つの部分が発する揮発性化合物の存在を検出するように構成される電子鼻を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記センサ手段は、前記皮膚疾患に冒された皮膚の前記少なくとも1つの部分の表面温度を検知可能な1または複数の熱感知デバイスを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記センサ手段は、前記皮膚疾患に冒された皮膚の前記部分の湿度を検知可能な少なくとも1つの湿度センサを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記メモリ手段は、少なくとも取得データを含み、前記取得データは、前記画像取得手段がどのように前記医用画像を取得すべきか、および/または前記センサ手段がどのように前記身体的状態および/または前記環境状態を検出すべきかを指定し、前記画像取得手段は、前記取得データに基づいて医用画像を取得するように構成され、および/または前記センサ手段は、前記取得データに基づいて、皮膚の前記部分の前記身体的状態、および/または皮膚の前記部分の周囲の前記環境状態を検出するように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
処理装置と通信するための通信手段を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記処理手段は、
通信手段を介して、取得データを受信し、
前記メモリ手段に前記取得データを格納する
ように構成される、請求項8または9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記処理手段は、前記医用画像に基づいて、前記皮膚疾患の類型を定義する類型データを生成するように訓練された第1ニューラルネットワークを実施するコードの第1部分を実行するように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記処理手段は、前記病状データに基づいて、前記皮膚疾患に冒された皮膚の前記部分が感染および/または炎症しているかを定義する、病状ステータスデータを生成するように訓練された第2ニューラルネットワークを実施するコードの第2部分を実行するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記センサ手段は、筋電信号を取得可能な筋電ユニットを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記処理手段は、病状ステータスデータおよび筋電信号に基づいて、前記皮膚疾患に冒された皮膚の前記部分の感染および/または炎症の程度を定義する、症状程度データを生成するように訓練された、第3ニューラルネットワークを実施するコードの第3部分を実行するように構成される、請求項12または13に記載のデバイス。
【請求項15】
請求項9または10に記載のデバイスと、処理装置と、を備えるシステムであって、前記デバイスは、通信手段を介して前記処理装置に前記医用画像を送信するように構成され、前記処理装置は、前記医用画像に基づいて、前記皮膚疾患の類型を定義する類型データを生成するように訓練された第1ニューラルネットワークを実施するコードの第1部分を実行するように構成される、システム。
【請求項16】
請求項9または10に記載のデバイスと、処理装置と、を備えるシステムであって、前記デバイスは、通信手段を介して前記処理装置に前記病状データを送信するように構成され、前記処理装置は、前記病状データに基づいて、前記皮膚疾患に冒された皮膚の前記部分が感染および/または炎症しているかを定義する、病状ステータスデータを生成するように訓練された第2ニューラルネットワークを実施するコードの第2部分を実行するように構成される、システム。
【請求項17】
前記デバイスの前記センサ手段は、筋電信号を取得可能な筋電ユニットを含み、前記処理装置は、前記病状ステータスデータおよび前記筋電信号に基づいて、前記皮膚疾患に冒された皮膚の前記部分の感染および/または炎症の程度を定義する、症状程度データを生成するように訓練された、第3ニューラルネットワークを実施するコードの第3部分を実行するように構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
画像取得手段により、皮膚疾患に冒された皮膚の少なくとも1つの部分の医用画像が取得される、画像取得段階を備える皮膚疾患を観察する方法であって、
センサ手段により、皮膚の前記部分の身体的状態および/または皮膚の前記部分の周辺の環境状態が検出され、前記身体的状態および/または前記環境状態を表す病状データが生成される、身体的/環境データ取得段階と、
前記センサ手段により検出された前記病状データと、前記画像取得手段により取得された前記医用画像とが、処理手段により読み出され、前記病状データおよび前記医用画像がメモリ手段に格納される、格納段階と
をさらに備える方法。
【請求項19】
前記画像取得段階および/または前記身体的/環境データ取得段階において、皮膚の前記部分の前記医用画像および/または前記身体的状態および/または皮膚の前記部分の周辺の前記環境状態は、前記画像取得手段がどのように前記医用画像を取得すべきか、および/または前記センサ手段がどのように前記身体的状態および/または前記環境状態を検出すべきかを指定する取得データに基づいて取得される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
電子コンピュータのメモリにロード可能なコンピュータプログラム製品であって、請求項18または19に記載の方法の段階を実行するためのソフトウェアコードの部分を備える、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば潰瘍、紅斑等の皮膚疾患を検出するデバイスおよび方法に関する。具体的には、本発明は、皮膚疾患の検出と、その状態を評価とを可能とする。状態とは例えば、炎症の程度、および/またはバクテリアまたはウイルス感染の程度である。
【0002】
公知のように、皮膚は人体が外部環境に対して自己防衛を行うための第1のバリアである。
【0003】
同じ体勢で長い時間過ごさざるを得ない人(例えば、多くの時間ベッドで過ごすこと、または車いすの使用を余儀なくされる、歩行できないという問題を持つ、身体障害者、または高齢者)、または地球の僻地で過ごす人(例えば、兵隊、部族で生活する人々、人道機関で働くボランティア等)は、皮膚疾患に罹ることが多い(例えば、褥瘡性潰瘍、アレルギーまたは真菌症による紅斑、虫刺されまたは動物咬傷による創傷)。当該疾患は、皮膚の弾力性低下(例えば、過度な血行不全または栄養失調による)、または動物、菌胞子、または触れると、適切な医療/皮膚科学的処置が求められる皮膚疾患に至るまで悪化し得る皮膚反応を生じるような植物と接せざるを得ない環境に生活していることによるものであり得る。
【0004】
しかし、これら人々にとって、そのような処置を受けるのは容易ではない。実際、皮膚科医の入念な診断がなければ、皮膚を治療しても問題の解決にならず、単にその影響を緩和するのみとなる(例えば、アレルギー反応による急性蕁麻疹に対して、アレルギー誘発物質を知ることなく、単純にコルチゾン系クリームを使用するような場合)、または患者の皮膚を損傷してしまう(例えば、真菌症治療にコルチゾン系クリームを使用した場合)虞がある。
【0005】
したがって、皮膚科の専門家による高品質の診断がなければ、上述の人々は、慢性的な皮膚疾患に苦しむことになる。このような問題は、例えば、患者の命を救うために、手足の切断が必要となり得る、深い潰瘍の形成のような、極めて深刻な症状にまで悪化し得る。
【0006】
本発明は、これらおよびその他問題を、皮膚疾患を検出するデバイスを提供することで解決することを目的とする。
【0007】
さらに、本発明は、これらおよびその他問題を、皮膚疾患を検出する方法を提供することで解決することを目的とする。
【0008】
本発明の基本的思想は、画像取得手段により、皮膚疾患に冒された皮膚の少なくとも1つの部分の医用画像(即ち、特定の手順により取得された画像)を取得し、センサ手段により、上記部分の皮膚の身体的状態(例えば、皮膚の温度等)、および/または皮膚の上記部分の周囲の環境状態(例えば、環境空気の温度および/または湿度)を検出することで、上記身体的状態および/または上記環境状態を表す病状データを生成することである。
【0009】
このようにして、医用画像および病状データが皮膚科医に利用可能となり、医用画像のみを調べた場合よりもより正確な診断が可能となる。即ち、専門家がさらに、皮膚疾患の状態を推定できるようになる。実際、皮膚の部分の身体的状態、および/またはその周囲の環境状態を把握すれば、実際に患者を訪ねる必要なく、皮膚科医はより高い精度で疾患(1つまたは複数)を特定し、上記疾患の状態をより正確に評価できる。
【0010】
皮膚紅斑を生じる皮膚疾患は、患者の周囲の環境の温度および/または湿度、または患者の肌の色の種類等に応じて、発現が異なり得ることを理解されたい。したがって、医用画像と共に追加の病状データを使用することで、皮膚科医は、患者の臨床状況をより良く理解し、最も適した治療を特定できる。例えば、熱帯気候においては、高温度および湿度値により促進されるバクテリア繁殖を抑えるために、抗生物質を含むクリームを使用した治療がより好ましい。本発明のさらに有利な特徴が、添付の特許請求の範囲に述べられている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
あくまで非限定的な例として供される添付された図面に示されているように、これらの特徴ならびに本発明のさらなる利点が、本明細書の一実施形態の以下の説明からより明らかになるであろう。
【
図1】本発明に係る、皮膚疾患を検出する装置のブロック図を示す。
【
図2】本発明に係る、皮膚疾患を検出する方法のフローチャートを示す。
【
図3】本発明の少なくとも1つの実施形態において実施されるニューラルネットワークの概略図を示す。
【
図4】本発明の少なくとも1つの実施形態において実施されるニューラルネットワークの概略図を示す。
【
図5】本発明の少なくとも1つの実施形態において実施されるニューラルネットワークの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書における「一実施形態(an embodiment)」への任意の参照は、特定の構成、構造、または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に備えられていることを示すであろう。従って、本明細書の種々の部分に存在し得る「一実施形態において(in an embodiment)」等という表現、および他の類似表現は、必ずしも全てが同一の実施形態には関連していないであろう。さらに、任意の特定の構成、構造、または特徴は、1または複数の実施形態において、適切と見なされる任意の方法で組み合わせられてよい。従って、以下の参照は、簡潔さのためだけに用いられており、様々な実施形態の保護範囲または拡張を限定しない。
【0013】
図1を参照に、本発明に係る皮膚疾患観察用デバイス1の実施形態を以下に説明する。上記デバイスは以下の構成要素を備える。
・皮膚疾患に冒された、皮膚の少なくとも1つの部分の医用画像を取得するように構成される画像取得手段11(例えば、好ましくは既知の焦点曲線、および/またはオートフォーカス機能、および/または自動絞り調整機能、および/または自動露光調整機能を有するCMOS画像取得センサ)。当該取得手段は、マクロ画像の撮影、および/または波長フィルタリングを可能とする光学レンズを備えることが好ましい。これについては、さらに後述する。当該レンズは、取得手段11の光学系およびセンサに対して、固定的にまたは移動可能に結合され得る。
・皮膚の部分の身体的状態(例えばサーマルカメラ、電子鼻、湿度センサ、等)、および/または皮膚の上記部分の周辺の環境状態(例えば、気温および/または湿度を測定する温度計および/または湿度計)を検出し、上記身体的状態および/または上記環境状態を表す病状データを生成するように構成されたセンサ手段12。
・例えば病状データおよび/または本発明に係る皮膚疾患を観察する方法を実施する一組の指示であるデータを、デジタル形式で格納するメモリ手段13(例えばRAM、SSD、HDDメモリ等)。
・画像取得手段11、センサ手段12、およびメモリ手段13と通信する処理手段14(例えばCPU、GPU、マイクロコントローラ、FPGA等)。
・処理手段14、メモリ手段13、センサ手段12、および画像取得手段11の間で、有線モード(例えばUSBを介する)および/または無線モード(例えば、Wi-Fi(登録商標)またはBluetooth(登録商標)を介する)で、データのやり取りを可能とする通信バス18。
【0014】
通信バス18の代わりに、処理手段14、メモリ手段13、センサ手段12、および画像取得手段11は、スターアーキテクチャにより接続され得る。
【0015】
最も一般的な実施形態において、処理手段14は(延いては、デバイス1全体も)、以下の段階を実行するように構成される。
・センサ手段12により検出された病状データと、画像取得手段11により取得された医用画像を読み出す段階と、
・上記病状データおよび上記医用画像を上記メモリ手段13に格納する段階。
【0016】
これにより、皮膚科医または非専門医は、医用画像および病状データを使用して、医用画像のみを調べた場合よりも正確な診断を行うことができる。
【0017】
より具体的には、デバイス1は、皮膚科医が診断のために必要な病状データを収集するための2つの個別の好ましい実施形態で実施されることが好ましい。
【0018】
デバイス1のいずれの実施形態も、本発明に係る、皮膚の病状検出方法を実行する。
【0019】
さらに
図2を参照すると、本発明に係る方法は以下の段階を含む。
・画像取得手段11により、皮膚疾患に冒された皮膚の少なくとも1つの部分の医用画像が取得される、画像取得段階P1、
・センサ手段12により、皮膚の上記部分の身体的状態(例えば生理的データ)および/または皮膚の上記部分の周辺の環境状態が検出され、上記身体的状態および/または上記環境状態を表す病状データが生成される、身体的/環境データ取得段階P2、
・センサ手段12により検出された病状データと、画像取得手段11により取得された医用画像が、処理手段により読み出され、上記病状データおよび上記医用画像がメモリ手段13に格納される、格納段階P3。
【0020】
これにより、医師は、医用画像とともに病状データを使用して、医用画像のみを調べた場合よりも正確な診断を行うことができる。
【0021】
自立型構成とも称する、デバイス12の第1構成は、好ましくは、クラウンを有するプリント回路基板を備える。クラウンは、好ましくは2から5cmの範囲の半径を有し、好ましくはクラウンの外周に沿って等間隔に配置された少なくとも3つの白色LED照明を有し、上記画像取得手段11が上記クラウンの中心に位置する。本実施形態において、センサ手段は好ましくは、病変の距離および三次元形状を測定するための、以下の要素の構成を少なくとも1つの有することが好ましい。これらは、後述の基準で、そしてデバイスの創傷および周囲(即ち、創傷周辺の皮膚領域)からの距離を検出可能な任意の態様および数で配置される。
a)画像取得手段11に対する規則的または対照的配列で配置可能である、1または複数の光学(例えば赤外線またはレーザ-光センサ)および/または音響(例えば超音波、PING超音波センサとしても知られる)距離センサ。当該センサは、上記画像取得手段11内、または上記画像取得手段11から5cm以内で離れて配置されるべきである。
b)画像取得手段11に近接して配置される少なくとも1つのDLPマイクロミラーセンサ。このセンサは、フェージング効果により画素輝度の差を検出可能にし、当該差に基づいて、処理手段は画像取得手段11と、疾患に冒された皮膚の部分との間の距離を計算できる。
c)画像取得手段11に近接して配置された、対応するセンサ付きの、少なくとも1つのストラクチャードライトエミッタ。これにより、処理手段は上記ストラクチャードライトにより照らされた皮膚の部分の画像(画像取得手段11により取得)に基づいて、皮膚病変の深度を推定可能である。
d)自動焦点(オートフォーカス)機能を有する第2画像取得手段(例えば、可変光学系を有するCMOSセンサ)。上記第2画像取得手段は、第1手段11に近接した配置される。これにより、処理手段は、画像取得手段11の焦点距離を変えることなく、第2画像取得手段の焦点距離に基づいて、距離を推定するように構成可能である。
【0022】
言い換えると、センサ手段12は、皮膚の上記部分と、上記デバイスとの間の距離を測定可能である1または複数の距離センサを含む。これにより、皮膚科医は、医用画像に示された皮膚科学的病状をより良く評価できる。したがって、医用画像のみを評価した場合よりも高品質な診断が可能である。
【0023】
デバイス1はさらに、内蔵または取り外し可能なバッテリを備えることが好ましい。バッテリは、上述の構成要素に電力供給可能である。さらに、上記デバイス1は、ケーブルを介して外部電源により、および/または十分に高い可変磁場が流れた場合(電磁誘導電力供給方法)、デバイス1に対する十分な電流を生成可能なコイルにより電力供給され得る。
【0024】
上記に加え、デバイス1は、メモリ手段13と通信するインタフェース手段(例えば、USB、Bluetooth、IEEE1394インタフェース等)を備え得る。これにより、外部コンピュータ(例えば、皮膚科医が報告用途に利用するパーソナルコンピュータ)が、画像および病状データにアクセス可能となる。したがって、皮膚科医は適宜画像を見て(好ましくは、医療用の色を適切に再生可能な報告用モニタ上で)、適切なソフトウェアアプリケーションパッケージを利用して、病状データを分析できる。
【0025】
具体的には、インタフェース手段は、デバイス1内か、上記デバイス1の外部に備えられ得る、スクリーン(好ましくは、アクティブマトリクスディスプレイ)に接続される、ビデオインタフェース(例えばVGA、DVI、HDMI(登録商標)等)を備え得る。これにより、皮膚科医は、専用報告用ワークステーションがなくても、医用画像および病状データを見ることができる。
【0026】
上記に代えて、または組み合わせて、デバイス1は、例えばIEEE802.11(WiFi)、IEEE802.16(WiMAX)、IEEE802.15(Bluetooth)インタフェース等の通信手段を備え得る。さらに、処理手段14は、取得した医用画像および病状データを、上記通信手段を介して、送信するように構成され得る。これにより、デバイス1または上記デバイス1のメモリ手段13を皮膚科医に送る必要がなくなり、皮膚科医は自身の位置に関わらず診断が可能となる。例えば、皮膚科医は、適任のオペレータ(例えば、看護師または非専門医)の、または自身でデバイス1を使用して画像および病状データを取得する患者の位置から、数千キロ離れ得る。したがって、皮膚科医は、インタラクティブにも(例えばビデオ会議で)診断を行い、適任のオペレータまたは患者に、どのようにデバイス1を使用すべきかを提案し得る。
【0027】
上記に加え、デバイス1の処理手段14はまた、デバイス1がどのように画像および/または病状データを取得するべきかを指定する、メモリ手段13に格納された取得データに基づいて、上記画像取得手段11および/または上記センサ手段12を介して、画像および/または病状データを取得するようにも構成され得る。例えば、取得データは、画像取得手段11が利用する露光時間および/または絞り、あるいはオートフォーカス機能および/または露光時間を自動に調整する露光適合機能を利用するか、あるいはセンサ手段12を通じて皮膚病変を照らすのに使用する光の波長等を指定し得る。
【0028】
言い換えると、メモリ手段13は、少なくとも取得データを含み得る。取得データは、(画像取得段階P1および/または身体的/環境データ取得段階P2において)上記画像取得手段11がどのように画像を取得すべきか、および/または上記センサ手段12がどのように身体的状態および/または環境状態を検出すべきかを指定する。画像取得手段11は、好ましくは処理手段14を介して、上記取得データに基づいて医用画像を取得するように構成され、および/またはセンサ手段12は、好ましくは処理手段14を介して、上記取得データに基づいて、皮膚の上記部分の身体的状態、および/または皮膚の上記部分の周囲の環境状態を検出するように構成される。
【0029】
さらに、取得データは、適切なアプリケーションを利用して、皮膚科医により遠隔で生成され、通信手段を介してデバイス1により受信されることが好ましくなり得る。
【0030】
これにより、デバイス1の誤った使用により、皮膚科医によるエラーが生じるリスクが低減する。したがって、画像の誤った取得によるエラーのリスクが低減しているため、皮膚科医はより正確な診断が可能となる。実際、言語の問題(例えば、デバイス1のユーザが、皮膚科医と同じ言語を話さないため)、および/または文化の違い(例えば、デバイス1のユーザが、皮膚科医が何を言っているかわからない、および/またはデバイス1を設定できないため)で皮膚科医が患者またはオペレータと意思疎通できない場合、適切な取得データを送信することで、適切な動作が保証されるように、デバイス1を設定可能となる。
【0031】
上記に代えて、または組み合わせて、センサ手段は、患者の生理的パラメータを検出可能な少なくとも1つのセンサを備え得る。当該センサは、適切なコネクタにより基板(したがって、処理手段14にも)接続され得るか、プリント回路に直接(例えば半田付けにより)一体化され得る。これらセンサは以下の種類を含む。
・200から450ナノメートルの範囲の波長を有する光を検出可能な紫外線画像センサと、1または複数の紫外線光源(例えば、UVランプとしても知られているウッズランプ)。これにより、一部のバクテリアまたはウイルス主の蛍光を検出可能となる。上記センサは、信号クロストーク現象を一切なくするため、波長が480nm未満の光のみを透過可能とするように、光をフィルタリングするため、画像取得手段11に偏光光学系(固定または取り外し可能フレームを有する)を適用することでも実施され得る。これにより、皮膚科医は、より高品質の診断が可能となる。
・650から1,200ナノメートルの範囲の波長を有する光を検出可能な、例えば、NIR CMOSカメラのような赤外線画像センサと、好ましくは650から1,200ナノメートルの範囲の波長の光線を発することが可能な、「近」赤外線タイプ(NIRS)の1または複数の赤外線光源。上記赤外線画像センサは、少なくとも100Hzのサンプリング周波数で動作することが好ましくなり得、同波長(650から1,200ナノメートル)用に較正された、偏光光学系(固定または取り外し可能フレームを有する)を備えることが好ましい。これにより信号クロストーク現象が一切生じないので、皮膚科医はより高品質の診断が可能となる。
・皮膚疾患に冒された皮膚の上記部分が発する揮発性化合物(例えば、典型的に潰瘍の存在を示すアンモニアの存在、および/またはさらに後述するような、特定のバクテリア種が存在すると発せられるその他揮発性化合物)を認識するように構成された、少なくとも1つの電子鼻。これにより、皮膚科医はより高品質な診断ができる。即ち、上記電子鼻は、皮膚科医が患者に直に会って、その皮膚を検査できる、皮膚科来院時にも人間の鼻ではほとんど検出できないような物質の存在を(遠隔)検出可能とする。
・温度センサとも呼ばれ、皮膚疾患に冒された皮膚の部分の表面温度を検知可能に配置された、1または複数の熱感知デバイス(例えば、赤外線温度計、サーマルカメラ等)
・少なくとも1つの電子環境湿度および温度センサ、および/または皮膚疾患に冒された皮膚の上記部分の湿度を検知可能な皮膚湿度センサ。これにより、皮膚科医は画像のみを評価した場合よりも、皮膚疾患の見た目と状態をより良く評価でき、したがってより高品質な診断ができる。
【0032】
上記に代えて、または組み合わせて、デバイス1は、処理手段14と通信し得、患者データ(例えば、患者の皮膚の写真版、患者の性別、年齢、体重等)を取得し、それをメモリ手段13に格納するように構成され得る、データ入力インタフェース(例えば、キーボード、キーボードを表示可能なタッチスクリーン、マイク等)を備える。
【0033】
これにより、皮膚科医は、より大量のデータを利用可能となるので、当該医師は、より高品質な診断ができる。
【0034】
上記に代えて、または組み合わせて、センサ手段は、以下の要素を備える筋電ユニットを含み得る。
・好ましくは、0.5mm2以上の表面を有する、ドライディスクまたは塩化銀(AgCl)型の、電気的表面生体信号を収集する一対の皮膚電極。
・50μA以下の強度、または患者が心臓カテーテル、埋め込み型ペースメーカー、または心臓除細動器(ICDとしても知られている)を使用している場合、一切のマイクロショックのリスクを有効に避けるため、10μA以下の強さを有する電流を有効に生成するように、40ボルトのピークピーク値(Vpp)の最大値まで調整可能で、最大周波数が1Hzの、好ましくは正弦または矩形波を有する、交流電気信号を生成するように構成された信号発生器。
・一対の電極を通じて流れる電流により生成された、筋電信号(例えば、強さ、電圧、段階、および/または周波数等その1または複数の特徴を検知することによる)を取得し、好ましくはデジタル形式の上記筋電信号を処理手段14に送信可能な、例えば電流計、および/または電圧計のような測定手段。
【0035】
これにより、特定の皮膚疾患の存在により、その動作が影響され得る、周辺神経系の状態について、意義のある情報を提供可能な、筋電信号が利用できるため、皮膚科医はより高品質な診断ができる。当然、上述の例に対して、数多くの変形が可能である。
【0036】
本発明に係るデバイスの第2実施形態を以下に説明する。簡潔性のため、以下の説明では、本実施形態とそれに続く変形を、上述の主要実施形態と区別する部分のみに集中する。
【0037】
本発明に係るデバイスの第2実施形態は、例えば上述の画像取得手段およびセンサ手段が、入出力手段(例えば、USB、Bluetooth等を介して)、を介して接続可能なモバイル端末(例えばスマートフォン等)、タブレット、ノートパソコン、パーソナルコンピュータ等の汎用デバイスである。上記デバイスは、本発明に係る皮膚疾患を観察する方法を実施する一組の指示を実行するように構成される。
【0038】
さらに
図3を参照すると、第1ニューラルネットワークRPにより、好ましくは皮膚疾患に冒された損傷皮膚の第1部分P2と、損傷部分P2を囲む第2部分P3(「周囲」としても知られている)を示す画像Pが分析可能である。第1ニューラルネットワークRPは、処理手段14、または好ましくは上記ニューラルネットワークRPを実施する、一組の指示を実行する、その他処理手段(例えば、サーバ、皮膚科医のパーソナルコンピュータ等内に含まれる)により実施される、フィードフォワード型であることが好ましい。このニューラルネットワークRPは、取得された(上記ネットワークに入力された)画像に基づいて、皮膚疾患の類型を定義する類型データを出力するように訓練されている。したがって、この類型データを使用することで、皮膚科医は診断処理の迅速化を図ることができる。即ち、当該データにより、皮膚科医は、患者に実施され得るその他推測的な種類の検査を省き、短期間で検査範囲を絞ることが可能となるためである。したがって、より早く診断(そしてその結果の治療)が行われる。これは本発明のデバイス1の利用という文脈に適している。即ち、皮膚科医は、現場で異なるデバイス1により収集された画像および病状データを分析する必要があり得るので、可能な限り早く診断を出す必要があるためである。
【0039】
ニューラルネットワークRPは好ましくは2層の計算ノードSp1、Sp2を有する(以下では、「シナプスs」Sp1_1、...、Sp1_nおよびSp2_1、...、Sp2_nとも称し、その数は、分析された画像が該当し得る、病変類型の数に応じる)。なお、層Sp1およびSp2それぞれにおける、シナプスSp1_1、...、Sp1_nおよびSp2_1、...、Sp2_nの数は同じである必要があることが理解されたい。各層Sp1およびSp2のシナプスは、それぞれが好ましくは256個のシナプスを含む、3つのベクトル(第1層Sp1に対するspr_1、spg_1、spb_1および第2層Sp2に対するspr_2、spg_2、spb_2)にそれぞれ接続される。
【0040】
ニューラルネットワークRPが存在しない場合、ユーザがインタフェース手段を介して病変類型を入力する必要があることが強調される。
【0041】
図4および
図5をさらに参照すると、使用については後述するセンサ手段12により検出されたデータは、第2ニューラルネットワークR1および第3ニューラルネットワークR2を利用して処理され得る。当該ネットワークはそれぞれ、デバイス1の処理手段14、またはその他処理手段(例えば、サーバ内、皮膚科医のパーソナルコンピュータ内等に含まれる)を通じて実施可能である(第1ニューラルネットワークRPと完全同様)。
【0042】
第2ニューラルネットワークR1の機能は、直接センサ手段12が収集したデータを処理するものである。これにより、疾患により生じ得た病変の炎症および/または感染状態を得る。一方、第3ニューラルネットワークR2は、感染および/または炎症の程度を計算するために、R1により生成されたデータを処理するように設計されたネットワークであり、生成されたデータを読み出し、解釈することを希望する場合に、デバイスまたはシステムに追加され得る。
【0043】
第2ネットワークR1は、好ましくはパーセプトロン型のニューラルネットワークであり、ディープラーニング動作を実行するように設計される。上記ネットワークR1は、計算ノードまたはシナプスを含む、少なくとも5つのベクトルSR1を含む。中央ベクトルS0は、ニューラルネットワークSR1に入力された、をベクトルZの値z1、...、zn0を受信するタスクを実行する。当該値は、デバイスの構成に含まれた、上述のセンサ手段12からのものである。層S0のシナプスの数は、デバイスに含まれたセンサ手段12の類型に基づいて定義される。具体的には、シナプスの数は以下の方式に基づいて選択されることが好ましく成り得る(デバイス1に含まれる各センサ手段12に対応付け可能なシナプスの数を可算していく)。
・センサ手段12がUV光源を備える場合、ニューラルネットワークSR1が有するシナプスの数は、1から6の範囲であり得る。
・センサ手段12が赤外線光源を備える場合、ニューラルネットワークSR1が有するシナプスの数は、少なくとも1つであり得る。
・センサ手段12が電子鼻を備える場合、ニューラルネットワークSR1が有するシナプスの数は1からxの範囲であり得る。ここでxは、電子鼻により認識可能な揮発性化合物の数である。
・センサ手段12が上記1または複数の温度センサを備える場合、ニューラルネットワークSR1が有するシナプスの数は少なくとも1つであり得る。
・センサ手段12が上記1または複数の電子湿度センサを備える場合、ニューラルネットワークSR1が有するシナプスの数は少なくとも1つであり得る。
【0044】
層S0は、ファーストライン層S1-i、S1-hと呼ばれる少なくとも2つのその他シナプスの層に接続される。第1ファーストライン層S1-iは、好ましくは、感染状態の検出専用であることが好ましく、一方第2ファーストライン層S1-hは、炎症状態の検出専用であることが好ましく、それぞれ層S0と同じ数のシナプスを有する。層S1-iおよびS1-hはそれぞれ、セコンドライン層と呼ばれる、少なくとも1つの更なる層S2-iおよびS2-hに接続される。セコンドライン層S2-i、S2-hのシナプスの数は、層S0のシナプスの数、したがってファーストライン層S1-i、S1-hのシナプスの数に依存する。各ファーストライン層のシナプスの数N1に等しいS0におけるシナプスの数N0を考えると、各セコンドライン層S2-iのシナプスの数N2はN1(N1-1)となる。セコンドラインのものに続く任意のその他層にも同じルールが適用される。SXを、シナプスの数NXを計算する必要のある層のラインとして考えると、以下の関係式が成立する。NX=NX-1(NX-1-1)
【0045】
層S0およびS1のシナプス間の接続は単純である。即ち、層S0の各シナプスは、層S1の1つのシナプスのみに接続される。前の層の各シナプスが、当該層の全てのその他計算ノードと、次の層において共通の接続となるように、層S1およびS2のシナプス間が接続される。セコンドラインのものに続くその他任意の層に関して、それらのシナプスと、前の層のシナプスとの間の接続は、前の層と同じロジックに従う必要がある。ネットワークの各層は、動作出力OX-i、...、O0、...、Oy-hを生成する。
【0046】
したがって、病変感染状態、病変炎症状態またはその両方を検証するため読み出される、少なくとも5つの値が生成される。
【0047】
言い換えると、処理手段14または外部処理手段は、上記病状データに基づいて、上記皮膚疾患に冒された皮膚の上記部分が感染および/または炎症しているかを定義する、病状ステータスデータを生成するように訓練された第2ニューラルネットワークR1を実施するコードの一部を実行するように構成され得る。これにより、皮膚科医は同じ時間で、より高品質な診断ができる。これは、診断の必要がある(おそらくいくつかの医学書も参考にしながら)度にセンサ手段12からのデータを再解釈する必要がなく、この処理の一部を、好ましくは自身が監督して、後に皮膚科医が解釈する必要のある1または複数のあり得る解を提供するように訓練した第2ニューラルネットワークに代わりに実行させることができるからである。
【0048】
その後、第2ニューラルネットワークR1の出力値が、上述のように、検査中の病変の炎症または感染状態の程度を評価する機能を持つ第3ニューラルネットワークR2により読み出される。ニューラルネットワークR2は、ネットワークR1により提供された値を、筋電ユニットにより生成された筋電信号E、またはデータ入力インタフェースを介して取得された患者データに関連付ける。
【0049】
言い換えると、処理手段14は、病状ステータスデータ(第2ニューラルネットワークR1により生成された)および上記筋電信号E(筋電ユニットにより生成された)に基づいて、上記皮膚疾患に冒された皮膚の上記部分の感染および/または炎症の程度を定義する、症状程度データを生成するように訓練された、第3ニューラルネットワークR2を実施するコードの一部を実行するように構成され得る。
【0050】
これにより、皮膚科医は同じ時間で、より高品質な診断ができる。これは、診断の必要がある度にセンサ手段12からのデータを再解釈する必要がなく、この処理の一部を、好ましくは自身が監督して、後に皮膚科医が解釈する必要のある1または複数のあり得る解を提供するように訓練した第3ニューラルネットワークに代わりに実行させることができるからである。
【0051】
第3ニューラルネットワークR2は、少なくとも5つのシナプスsr-1、...、sr-qと、追加のシナプスseにより形成された単一層フィードフォワードネットワークsrとして設計されることが好ましい。第2ニューラルネットワークR1の各動作出力Oは、シナプスsr-1、...、sr-qの1つに、個別に入力される。したがって、ニューラルネットワークR1の層の数を増やす場合、第3ニューラルネットワークR2のシナプスsr-1、...、sr-qの数も同じだけ増やす必要がある。各シナプスsr-1、...、sr-qはそれぞれ2つのノードSS1、SS2に接続される。シナプスseが接続される第1ノードSS1はアダーノードである。一方、第2ノードSS2はリレーションノードである。その動作は後述する。
【0052】
本明細書に記載のデバイス1の、その両方の実施形態における目的は、病変の類型(ニューラルネットワークRpが存在する場合)と、皮膚病変のあり得る炎症および/または感染状態の両方を検出することである。その際、任意でその程度もさらに判定する。これは、画像取得手段11により得られた画像と、センサ手段12により取得され、その後ネットワークR1さらに任意でR2により処理されたデータとを使用して実行される。これらそれぞれには先ず、関与するネットワークに応じて、画像取得手段11および/またはセンサ手段12により生成された同じデータを使用した訓練段階が実施される。この段階により、ニューラルネットワークRP、R1、およびR2を構成する全ての層のシナプスに関連付けられた値が較正される。訓練段階が完了すると、ネットワークは動作段階に移行可能である。この段階では、ネットワークは、画像取得手段11およびセンサ手段12により収集されたデータを自律的に処理可能である。この段階では、シナプスに関連付けられた値は不変である。例えば、ネットワーク層にシナプスが追加される度に、またはネットワークR1に層が追加される度に、複数の訓練段階が実施され得る。ネットワークの処理感度または敏感さが適切なレベルに至っていないと考えられる場合に、新たな訓練段階が開始され得る。なお、システムにネットワークRPが存在しない場合、オペレータがデバイスのデータ入力インタフェースを介して、検査中の病変の類型を入力する必要があることが理解されたい。
【0053】
デバイス1が動作状態にあると、上記デバイスは、関連する身体領域の平面に平行な病変に向けられている。好ましくはこの状態は、オペレータによる適切な皮膚病変の範囲特定に寄与し得る、画像取得手段の利用により実現されることが好ましい。この後、参照用に使用される、病変と周辺皮膚部分の少なくとも1つの写真が画像取得手段11により取得される。これは、クラウンLEDのうちの少なくとも1つにより生成された光を利用して行われることが好ましい。この写真が撮られたあと、取得された画像は、収集され、デバイス1のメモリ手段13に格納される必要がある。同時に、または写真が撮られた後、センサ手段12により、病変の生理的データも収集される。当該データは、ネットワークR1により読み出されるためにデジタル化されなければならないことが好ましい。上記生理的データのそれぞれは、ネットワークR1への入力zとみなされる。各入力は、それを受信する層S0の1つのノードに関連付けられる。
【0054】
上述のように、センサ手段12の各類型により収集された生理的データの利用のいくつかの例を、上記生理的データを取得する関連した方法とともに以下に正確に記述する。
【0055】
センサ手段12が、紫外線画像センサと、上記1または複数の紫外線光源とを含む場合、いくつかのバクテリアまたはウイルス種の存在および量を検出可能にする画像を取得できる(好ましくは、光学フィルタを利用する)。以下に、紫外線光を反映して、特定の色の光を生成する皮膚病変を生じる皮膚疾患の一部を列挙する。
頭部白癬(真菌感染)、青色/緑色光を発光、
癜風(真菌感染)、黄色/緑色/オレンジ光を発光、
紅色陰癬(バクテリア感染)、赤色光を発光、
白斑(細胞死)、白色光を発光、
晩発性皮膚ポルフィリン症(遺伝性または特定の環境状態に起因する病状)、赤色/ピンク光を発光、
緑膿感染症(バクテリア感染)、緑色光を発光、
にきび(バクテリア感染)、オレンジ/赤色光を発光、
コリネバクテリウム・ミヌティシマム(バクテリア感染)、赤色光を発光。
【0056】
取得された画像は、好ましくは、RGBコードを使用してコード化され、病変と、それに隣接する(周囲の)小皮膚領域を含む画像の部分を考慮して画素単位で分析される。色(黄色、緑色、青色、赤色、オレンジ、ピンクの合計6色)のそれぞれの検出は、特定の入力ベクトルZに関連付けられる。これにより、上述のように、システムが検出および計算するように設計された色の数に応じて、UV光源に関連付けられたシナプスは最大6であり得る。各値について、その特定の色を有する画像の画素と、検査中の画像部分の全画素との間の比率が計算される。比率が閾値(好ましくは調整可能で、最小が好ましくは0.5%である)を超えると、その色に関連付けられたzは1となり、超えなければ0となる。
【0057】
センサ手段12が赤外線画像センサと、上記1または複数の赤外線または「近」赤外線(NIRS)光源を含む場合、脱酸素化ヘモグロビンに対する、酸素化ヘモグロビンの量を検出可能である。この値は、病変を含む身体領域の生理的活性を示すため、その可能性のある炎症状態を示す。IRまたはNIRダイオードの照射は、最小距離1cmから起動可能である。病変の領域と周囲を、760nm(脱酸素化ヘモグロビンによる最大吸光値)から900nm(酸素化ヘモグロビンによる最大吸光値)の範囲の波長のIRまたはNIR光により照射することで、そしてNIR CMOSカメラにより出力信号を検出することで、皮膚の、760nm波長を吸収する部分と、900nm波長を吸収する部分を表す点の数を数えることが可能である。したがって、関心領域内のそれら両方それぞれの数量を認識できる。ランベルト・ベールの法則により、各波長について計算されたIRまたはNIR光の吸収(A)は以下のとおりであることが理解されたい。A=log(Iinc/Iril)式中、Iinc=入射光、Iril=検出光である。
【0058】
(A900nm-A760nm)/A760nmが、下限が0.1%に設定されることが好ましい、所与の調整可能閾値以上であれば、層S0の有効シナプスへの入力は1となる。
【0059】
センサ手段12が上記少なくとも1つの電子鼻を含む場合、デバイス1は以下のような1または複数の揮発性化合物の存在を検出できる。
a.アンモニウム、
b.イソプレン、
c.酢酸、
d.エタノール、
e.ジメチルジスルフィド、
f.硫酸水素塩(硫酸)、
g.アセトン、
h.アセトアルデヒド、
i.チオシアン酸メチル、
j.シアン化水素、
k.ホルムアルデヒド、
l.ブタノール。
【0060】
これら揮発性化合物は、皮膚病変の領域内に確認され得る、様々なウイルス種由来である。このような種としては、大腸菌、緑膿菌、およびブドウ球菌等が挙げられる。揮発性化合物検出により発見され得るバクテリアおよびウイルス叢は極めて大きい。そして、生成される、したがって電子鼻で検出可能な揮発性化合物の範囲についても同様であることが確認されている。本システムに含まれる電子鼻(1つまたは複数)は、バクテリアまたはウイルス要素に科学的に関連付けられ得る、揮発性化合物の少なくとも1つの存在を検出するように構成される必要がある。各揮発性化合物の存在は、第2ニューラルネットワークR1の層S0の特定のシナプスにより読み出される入力zに関連付けられる。電子鼻(1つまたは複数)がそれに対応するように構成された各化合物に対して、調整可能な閾値が設定される。当該特定の化合物の検出が上記閾値を超えると、それぞれ得られたzの値は1となり、超えなければ0となる。
【0061】
センサ手段12が上記1または複数の熱感知デバイスを含む場合、病変の領域内、および隣接する領域内の温度を検出可能である。病変の領域内温度が周辺領域の温度よりも高いことは、炎症状態の存在を示唆する。TFを損傷領域の平均温度とし、TPを創傷周辺の領域内の平均温度として、比率(TF-TP)/TPが、最小限度が好ましくは0.1%に設定された調整可能な閾値を超えると、熱感知デバイスに関連付けられた第2ニューラルネットワークR1の層S0の特定のシナプスに関連付けられた入力zは好ましくは値が1となり、超えなければ値は0となる。
【0062】
センサ手段12が、病変の領域内の滲出物の存在および量を検知可能な電子湿度センサを含む場合、湿度センサが返した値が調整可な閾値(最小限度は0を超える)を超えるか検出可能である。そして、好ましくは湿度値が上記閾値を超える場合は値1として、または超えない場合は値0が入力Zとして、第2ニューラルネットワークR1の層S0の特定のシナプスに送られる。
【0063】
上述のように、センサ手段12からネットワークR1に送られる入力Zの数は、デバイス1またはシステムの所与の構成に含まれる上記センサ手段12の数、類型、および構成に依存する。入力zの数は、ネットワークR1の層S0内のシナプスの数に一致する必要がある。検出の度、入力zベクトルが生成され、第2ニューラルネットワークR1の層S0に送られるZとして指定される。センサ手段12の構成によっては、各zは常に同じシナプスに送られる。
【0064】
病状データを収集する方法と、その結果としてのベクトルZの生成は、ニューラルネットワークR1およびR2が訓練段階にあるか、動作段階にあるかに依存しないことが理解されたい。画像収集方法についても同様である。即ち、第1ニューラルネットワークRPが訓練段階にあるか、動作段階にあるかに応じて変化しない。
【0065】
上記ネットワークRPが訓練段階にある場合の、第1ニューラルネットワークRPの動作を以下に説明する。上述のように、ネットワークは2つのシナプスの層(Sp1およびSp2)を含む。各層のシナプスの数Sp1_1、...、Sp1_nおよびSp2_1、...、Sp2_nは、訓練後にネットワークRPが認識する必要のある病変の類型の数に応じる。
【0066】
それぞれのシナプスは、3つのシナプスベクトルspr_1、spg_1、spb_1およびspr_2、spg_2、spb_2に接続される。1から256の範囲のインデクスから成るベクトル位置値が、両層Sp1およびSp2の各ベクトルの各シナプスベクトルspr_1、spg_1、spb_1およびspr_2、spg_2、spb_2に関連付けられる。ネットワークに訓練段階が実施されるのが初めてであれば、全てのノードの全てのシナプスspr_1、spg_1、spb_1およびspr_2、spg_2、spb_2は0の値に初期化される。
【0067】
写真が撮られると、好ましくはデータ入力インタフェースを介して、ユーザは画像上に閉鎖線を描く必要がある。すなわち、描かれる線は、撮影画像における、病変の縁を表す画素に重なる。計算の観点から、ユーザは関心領域(ROIとも称される)、即ち病変と周囲の部分を含む画像部分を選択し得る。そのような場合、ネットワークRPは、ROIを撮像画像と見做して訓練される。この前または後に、好ましくは、ユーザはデータ入力インタフェースをさらに利用して、ネットワークが認識するように訓練された病変類型のリストから、検査中の病変の類型を選択しなければならないことが好ましい。各選択可能病変類型は、一対のシナプスに関連付けられる。線が描かれると、輪郭内の画素(px1と称する)の全てと、選択された輪郭外の画像の画素の全て(px2と称する)は、それぞれのR、G、Bの値を読み出すことで分析される。各画素のR、G、Bの値は、0から255の範囲内となる必要がある。
【0068】
分析画素が、画素px1の群に属し、そのR、G、Bの値をそれぞれr、g、bとすると、ユーザにより選択された病変に対応する層S
p1のシナプスS
p1_1、...、S
p1_nの、位置r+1におけるシナプスS
pr_1、位置g+1におけるS
pg_1、位置b+1におけるS
pb_1は1単位増加される。分析画素が、画素px2の群に属し、そのR、G、Bの値をそれぞれr、g、bとするとユーザにより選択された病変に対応する層S
p2のシナプスS
p2_1、...、S
p2_nの、位置r+1におけるシナプスS
pr_2、位置g+1におけるS
pg_2、位置b+1におけるS
pb_1は1単位増加される。全ての画像が分析されると、以下のルールに従って、シナプスs
pr_1、s
pg_1、s
pb_1およびs
pr_2、s
pg_2、s
pb_2が正規化される。
【数1】
【0069】
ニューラルネットワークRPは、それが認識するように訓練された病変類型に対して、両層Sp1およびSp2内に存在する全てのシナプスSp1_1、...、Sp1_nおよびSp2_1、...、Sp2_nの合計以上の数の画像が分析されると、訓練済みとみなされ得る。
【0070】
ニューラルネットワークRPが訓練されると、画像取得手段11が取得した画像が画素単位で分析される。分析開始前に、奇数である必要のある、隣接値vをプログラミングする必要がある。隣接値vは、1から、検査中の画像の総画素数の間の範囲の値を取り得る。分析された画素は、v2画素により形成された構造格子内に配置される。格子の残りの要素は、分析中の画素の周りの画素で埋められる。格子内の各画素について、R(=r)、G(=g)、およびB(=b)の各値が分析される。この時点で、層S
p1および層S
p2の両方における病変に対応する一対のシナプスの、位置r+1におけるS
pr_1およびS
pr_2、位置g+1におけるS
pg_1およびS
pg_2、および位置b+1におけるS
pb_1およびS
pb_2の値が比較され、以下の式により値Fが計算される(1は、層S
p1およびS
p2における所与の病変類型に対応する画素spを示す)。
【数2】
【0071】
各病変類型に対応する各シナプスSp1_1、...、Sp1_nおよびSp2_1、...、Sp2_nについて、格子内の各画素に対して、各画素の値Fが計算される。その後、所与の病変類型についての格子内の全画素の全値Fが合計される。所与の病変類型について負の値が取得されると、当該病変について、更新内の中央画素は健全と分類される。正の値が取得された場合には、格子内の中央画素は、当該所与の病変に関して陽性であると分類される。
【0072】
各病変類型について、陽性となった画素は合計され、当該所与の病変類型の拡張が取得される。拡張値は、上記1または複数の光学および/または音響距離センサにより検出された病変から、デバイス1までの距離に基づいて、メートル法に変換できる。このように取得された距離値を、CMOSカメラの焦点曲線と比較することで、画像の単一の画素で網羅される領域が取得できる。当該値を、所与の病変類型に属する画素で乗算することで、皮膚病変の範囲が取得される。
【0073】
この説明から、ニューラルネットワークRPは、皮膚科医の診断業務を代わりに実行することはできないが、画像取得手段11により取得された画像に示され得る様々な皮膚疾患を、医師に対して強調することで、業務をサポートすることはできることが明らかである。これは、皮膚科医による、(より短期間での)より高品質の診断に寄与する。
【0074】
第3ニューラルネットワークR2に対する訓練段階を以下に説明する。このために、上記ネットワークR1はシナプスの層S0およびx層Sj-i(jは1からxの範囲である)およびシナプスのy層Sk-h(kは1からyの範囲である)により形成されることを理解されたい。シナプスの層iはこの段階で、センサ手段12からのデータから、病変の感染状態の存在を計算するように「訓練」される。一方、シナプスhは炎症状態の存在を計算するのに使用される。S0におけるシナプスの数は、一般的に、上述のように、デバイス1の特定の構成内に設けられた(または接続された)センサ手段12の数と類型に依存する、数N0に等しい。上述のように層iおよびkのシナプスは、層S0およびその他層におけるものに接続される。ネットワークの全てのシナプスは、修正可能なステップと呼ばれる多数の中間値に離散化される、0から1の値を取り得る。所与の層のシナプスがとり得るステップの数は、当該層に存在するシナプスの数より少なくはなり得ない。第3ニューラルネットワークR2の訓練の最初に、全シナプスの値は、それが属する層に関わらず、0の値に設定される。シナプスの層と、その次との間で、0から1の値に調整可能な閾値θが設定される。本明細書で考慮されるネットワークにおいて、x閾値θj-i(jは1からxの範囲である)およびy閾値θk-h(kは1からyの範囲である)が設定されている。同じ値である必要のあるθ1-iおよびθ1-hを除いて、全ての閾値θは互いに異なり得る。
【0075】
各取得について、ベクトルZが生成され、N
0個の入力zから構成され、これはそれぞれ、層S
0のN
0個のシナプスの特定のものに入力されることが理解されたい。また、各取得について、ユーザU(好ましくは皮膚科医である)は、好ましくはデータ入力手段を介して、所望出力(o
iおよびo
h)とも称される、2つの所望の値を設定する。これら2つの値は、病変の感染状態、または上記病変の炎症状態が存在する場合、それぞれ1に設定する必要がある。感染または炎症の存在は、訓練段階においてオペレータにより求められる。層S
0の各シナプスに対して、取得の度に、重みw
0が以下のとおりに計算される。
【数3】
【0076】
式中、n
0は1からN
0の範囲の整数である。層S
0において取得された重みを合計することで、計算出力値Σ
0、が取得される。これにより、その後、以下の何れかの式から、安定値Δ
1が計算される。
【数4】
【0077】
式中、Θはヘヴィサイド関数である。ヘヴィサイド関数Θ(x)は、負のxに対して無効値を返し、正のxに対して単一値を返す。Δ1が0を超える場合、層S0のシナプスの重みは変化しない。Δ1が0以下であれば、Θ(oi+oh)が1に等しい場合は、1に等しい入力を持つシナプスの重みは1つ上がる。一方、Θ(oi+oh)が0に等しい場合は、1に等しい入力を持つシナプスの重みは1ステップ下がった値を取る。
【0078】
Δ
1が0を超える場合、入力値zは、2つのファーストライン層S
1-iおよびS
1-hに送信される。すでに層S
0に適用されたのと同じ方法により、これら2つの層が訓練される。S
1-iについて、重みは以下のように計算される。
【数5】
層S
1-hについては以下のとおりである。
【数6】
式中、n1はシナプスの識別値であり、上述のように、N
1はN
0に等しいと考えると、1からN
1の範囲の整数であり得る。安定値Δ
2-iおよびΔ
2-hはそれぞれ以下のように計算される。
【数7】
【0079】
Σ1-iおよびΣ1-hの計算出力値は、それぞれΔ2-iおよびΔ2-hの値の合計に等しい。一方で、各層のシナプスの値は、層S0のシナプスに適用されたのと同じ方法で修正される。
【0080】
ファーストラインのものに続いて、層に対して同様に訓練方法が繰り返される。一般的に、各シナプスの重みは以下のように計算される。
【数8】
式中、z
aは個別のシナプスへの入力であり、s
aは個別のシナプスの値であり、N
bはb番目の層内に存在するシナプスの数である。各層について、計算値は個別の層のシナプスの重みの合計に等しい。安定値は以下の式により計算される。
【数9】
【0081】
ただし、各シナプスへの入力は可変であることが理解されたい。層S1-iおよびS1-hに続く層の各シナプスは、直前の層の少なくとも2つのシナプスに接続される。層Suの一般的シナプスと、それに接続される、前の層S1(u-1)およびS2(u-1)の2つのシナプスを考慮すると、入力zuはΘ((w1(u-1)+w2(u-1))-1)に等しい。2つの値w1(u-1)およびw2(u-1)は、前の層の2つのシナプスそれぞれの重みである。安定値が0より大きいと、前の層から次に送られる入力値が生成される。そうでなければ、次の層に送られる入力の全てが無効とみなされる必要がある。
【0082】
上記第2ネットワークR1に含まれるシナプスの総数に少なくとも等しい数の入力ベクトルZが層S0に送信されると、ネットワークR1が訓練済みとみなされ得る。
【0083】
動作段階の最中、第2ニューラルネットワークR1は、前の訓練段階時に取得された重みを有するシナプスから成る。この段階の間、当該値もネットワーク構造も変わらない。ただし、θ1-iとθ1-hの値が等しくなるようにプログラミングされている場合、各層についての閾値θをプログラミングし直すことが可能である。
【0084】
この段階において、個別の層に送られる入力値は、訓練段階中と同じように取得される。デバイス1のセンサ手段12を介した病状データの取得の際、ユーザはo
iおよびo
hの値を定めない。センサ手段12により生成された病状データは、層S
0に入力される。訓練段階と同様、各層に対して、シナプスの重みの値は、以下のように計算される。
【数10】
一方で、各層の計算出力は、当該層の全重みの合計に等しい。前段階と異なり、各層について、動作出力が計算される。b番目の層の動作出力は以下のように定義される。
【数11】
【0085】
Obが0を超える場合、次の層に対する入力は、訓練段階と同様にして生成される。超えなければ、次の層に送られる全入力は無効となる。新たな取得が行われると、ネットワークR1は、O1-iが0を超える場合、病変が感染であると確認し、O1-hが0を超える場合、炎症が存在すると確認可能となる。
【0086】
第3ニューラルネットワークR2に対する訓練段階を以下に説明する。上述のように、ニューラルネットワークR2の目的は、人間の皮膚の回路モデルにより、病変の感染および/または炎症の程度を評価することである。これは電気的観点からは、これはメモリスタと同様である。即ち、磁束
【数12】
と、電荷
【数13】
に基づいて、自己状態を変化させる非線形動的電気抵抗である。このような関係性により、人間の皮膚をメモリスタに結び付ける関係式は以下のようになり得る。
【数14】
【0087】
上述の関係式において、Rは検査中の皮膚の部分の電気抵抗(皮膚の平均抵抗と、検査中の部分の大きさに比例する)であり、Dは皮膚の深さで、c0は定数である。値αは、電位に関連し、皮膚の表面の穴内のイオンの存在に関連したもので、τは皮膚の形態的特徴に依存する。炎症または感染状態の存在は、これら条件を変更し得るため、第3ニューラルネットワークR2により、感染および炎症(ネットワークR1により確認される)をαに結び付けることができる。ネットワークR2に対する訓練段階は、動作段階のネットワークR1を利用してのみ実施可能である。
【0088】
上述のように、ネットワークR2は単一の層Srから成る。同層は、ネットワークR1を構成する層の数から1を引いた数のシナプスから構成される。層S0の動作出力値は、ネットワークに入力されないためである。nr個の層により形成されるネットワークR1を考えると、ノードに送信される入力は、動作出力値Oqから成り、qは1からnr-1の範囲の整数である。ネットワークR2の層Srの各シナプスは、-1から1の範囲の実数をとり得る。ネットワークはさらに、追加シナプスを含む。これは、訓練段階において、筋電信号に基づいて計算される、または経験的に決定される値に関連付けられ得る。前者の場合、取得の度、好ましくは、検査中の病変の両側で、最大距離5cmに配置されたドライディスク電極により上述の仕様(患者に対するあらゆる身にショックを防ぐため)に則した電気信号が適用されることが好ましい。印加される電圧磁束と、電極により検出される電流の電荷がその後計算される。その後、皮膚と同等のメモリスタの回路モデルにより、αの値が取得され、当該取得に対するシナプスseに割り当てられる。シナプスseの値が経験的に求められ、インタフェース手段を介して入力されると、ノードseは、0から10の範囲のユーザが決定した値をとり得る。ユーザは感染および/または炎症の程度が増すと、この値を増加させる。
【0089】
訓練段階において、ノードseの値に、電気信号の取得により取得されたαの値が割り当てられる場合、その基本値α0を事前に求めることが必要となる。これは、病変が炎症でも感染でもない場合に、ニューラルネットワークR2を構成するノードsrの数以上の数の電気信号取得を通じて取得されたαの値の平均を取ることで取得され得る。seの値への割り当てが経験的に行われる場合、基本値は0に設定される。
【0090】
信号取得方法によりα
0の値が求められると、第2ニューラルネットワークR1の層からの動作出力値によるネットワークの訓練に移行できる。層S
rのシナプスは全て、シナプスs
eも接続されている、アダーシナプスSs
1に接続される。第1訓練段階の第1の取得時、全てのシナプスs
r-1、...、s
r-qは1の値に設定され、その際にそれら値は変化しない。各取得、各シナプスについて重みは以下のように計算される。
【数15】
その後ここから計算出力Σ
rが計算される。これは取得された重みの合計に等しい。第2の取得以降は、取得された各Σ
rが前回の取得で取得されたΣ
rと比較される。同じ比較が、取得されたαと前回のものとの間でも行われ、取得された全てのOの値と前回のものとの間でも行われる。後者の場合、増加または減少のパーセンテージが計算される。層S
rのシナプスの値は、以下のルールに則り変更される。
1.αおよびΣrの両方が前回の取得と比較して増加していれば、非無効動作出力値が入力された全てのシナプスが、前回の取得の同じ動作出力と比較して取得された増加または減少のパーセントに正比例して、増加または減少する。
2.αが前回の取得で取得されたものと比較して増加している一方、Σ
rが前回の取得で取得されたものと比較して減少していれば、またはその逆であれば、非無効動作出力値が入力された全てのシナプスが、前回の取得の同じ動作出力と比較して取得された増加または減少のパーセントに反比例して、増加または減少する。
【0091】
シナプスseの値への割り当てが経験的に行われる場合(即ち、皮膚科医Uによる)、新たな取得の度に、そのシナプスに対して、観察された病変の感染および/または炎症の程度に比例する値を割り当てる必要がある。この場合にも、訓練段階の始めには、層Srの全てのシナプスは1の値を有する。訓練と、シナプスsrの値を変更する方法は、前回の方法と変わらない。
【0092】
層Srのシナプスの数と等しい数の取得が少なくとも行われた場合、ネットワークR2の訓練が完了したと考えられ得る。
【0093】
ネットワークR2が動作段階にあると、層Srのシナプスの値は、上述の訓練段階から取得されたもので、動作中に変化しない。この段階では、筋電ユニットによる電気信号Eの取得がなく、またはシナプスseに対する経験的な値αの割り当てもない。ここでは、既に実行された取得後のネットワークR1から取得された出力データの処理のみが提供されるためである。動作段階中には、メモリスタモデルは完全に較正済みとみなされ、それ以上の調整は不要であるため、これが可能となる。
【0094】
訓練段階同様、第2ニューラルネットワークR1の動作出力値の取得の度に、同ネットワークの層S
0から取得されたものを除いて、層S
rの各シナプスに入力される。この段階でも、シナプスの重みが以下のように取得される。
【数16】
そしてここから、層s
rのシナプスの全てが接続されるリレーションシナプスs
s2において、動作出力Σ
r2が計算される。その後、値Σ
r2が以下の関係式に入力される。
【数17】
【0095】
q(t)の値は、1Hzの周波数で、ピークピーク値が40ボルトの、シミュレーションされた正弦電圧波信号から取得された流れΦ(t)により計算される。その後、そこから得られた曲線が描かれる。上記曲線に基づいて、その形状から、検査中の病変の感染または炎症の程度が得られる。このために、処理手段14は、流れΦ(t)に基づいて、病変の感染または炎症の程度が求められるように構成され得る。あるいは、デバイス1のビデオインタフェースに接続された、皮膚科医の端末、および/または視覚化手段(例えば、アクティブマトリクスディスプレイ、3Dガラス等)上に、流れΦ(t)が表示され得る。
【0096】
本明細書は、考えられる変形例のいくつかに取り組んできたが、他の実施形態が実装されてもよいことが、当業者にとって明らかであろう。いくつかの要素は、他の技術的に同等の要素と置き換えられてよい。本発明は、従って、本明細書で説明されている例示的な例に限定されないが、以下の特許請求の範囲で述べられている基本的な発明の概念から逸脱することなく、同等の部分および要素の多くの修正、改善、または置換の対象となり得る。
【国際調査報告】