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特表2022-508047歯科用準備器具におけるロータのための逆流ブレーキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】歯科用準備器具におけるロータのための逆流ブレーキ
(51)【国際特許分類】
   A61C 1/05 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A61C1/05 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021523693
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(85)【翻訳文提出日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019082700
(87)【国際公開番号】W WO2020109368
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】18208524.1
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ゴイサー、シークフリート
(72)【発明者】
【氏名】ゲーベル、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】エルツグルール、メティン
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA11
4C052BB03
4C052CC02
4C052CC12
4C052CC15
4C052CC30
4C052GG09
(57)【要約】
本発明は、タービンハウジング(2)において推進ガス(TG)によって駆動されるタービンホイール(3)を有するロータ(1)と、そのようなロータ(1)を有する歯科用準備器具(20)と、そのような準備器具(20)を動作させるための方法(100)とに関し、推進ガス(TG)の少なくとも一部は、タービンホイール(3)の回転方向(DR)に反してタービンホイール(3)の駆動ブレード(31)のうちの少なくとも1つに衝突した後、戻り流路(6)を通してタービンホイール(3)を半径方向に周回する内壁(21)内のガス流出開口部(51)に逆流し、円弧(KS)内の内壁(21)は、少なくともガス流入開口部(41)からガス流出開口部(51)まで延在する少なくとも1つの戻り流路(6)を備え、これは、推進ガス(TG)の少なくとも一部が、タービンホイール(3)の回転方向(DR)に反して駆動ブレード(31)のうちの少なくとも1つに衝突した後、戻り流路(6)を通ってガス流出開口部(51)に逆流することを可能にし、軸方向(AR)において、タービンハウジング(2)は、戻り流路(6)まで、駆動ブレード(31)と内壁(21)との間に表面の少なくとも1つの断面拡張部(8)を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用準備器具(20)の道具(10)を駆動するためのロータ(1)であって、
-タービンハウジング(2)内に取り付けられ、複数の駆動ブレード(31)を有するタービンホイール(3)と、
-ここにおいて、前記タービンハウジング(2)が、前記タービンホイール(3)を半径方向に周回する内壁(21)と、前記内壁(21)を上下に囲むカバー面とから形成されている、
-前記タービンホイール(3)を駆動するために前記タービンハウジング(2)内に推進ガス(TG)を入れるためのガス流入開口部(41)を有する少なくとも1つのガス流入路(4)と、
-前記タービンホイール(3)が駆動されると、前記タービンハウジング(2)から前記推進ガス(TG)を導出するためのガス流出開口部(51)を有する少なくとも1つのガス流出路(5)と
を備え、
前記ガス流入開口部(41)及び前記ガス流出開口部(51)は、最大180度の円弧(KS)内で前記内壁(21)に配置されており、
前記円弧(KS)内の前記内壁(21)は、前記ガス流入開口部(41)から前記ガス流出開口部(51)まで少なくとも部分的に延在する少なくとも1つの戻り流路(6)を備え、
ここにおいて、前記戻り流路(6)は、前記推進ガス(TG)の少なくとも一部が、前記タービンホイール(3)の回転方向(DR)に反して前記駆動ブレード(31)のうちの少なくとも1つに衝突した後に、前記戻り流路(6)を通って前記ガス流出開口部(51)に逆流することを可能にする、
軸方向(AR)において、前記タービンハウジング(2)は、前記戻り流路(6)まで、駆動ブレード(31)と内壁(21)との間に表面の少なくとも1つの断面拡張部(8)を有する、
ロータ(1)。
【請求項2】
前記断面拡張部(8)が、前記カバー面のうちの一方の凹部によって形成されており、少なくとも戻り推進ガス(TG)の方向に前記ガス流出開口部(51)の外端部まで、少なくとも前記戻り流路(6)内を流れる前記推進ガス(TG)の方向に見て前記戻り流路(6)の領域(22)にわたって延在する、駆動ブレード(31)と前記カバー面との間の軸方向(AR)の第1の距離(D1)と、別の領域(23)において駆動ブレード(31)と前記カバー面との間の軸方向(AR)の少なくとも1つの第2の距離(D2)とを有し、前記第2の距離(D2)が前記第1の距離(D1)よりも短いことを特徴とする、請求項1に記載のロータ(1)。
【請求項3】
前記戻り流路(6)が、前記タービンホイール(3)の回転軸(R)に対して同じ軸方向の高さで前記タービンホイール(3)を周回することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロータ(1)。
【請求項4】
ガス流入開口部(41)及び/又は前記ガス流出開口部が、前記タービンホイール(3)の回転軸(R)の方向に見て、前記戻り流路(6)に対して互いの上又は下に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項5】
前記戻り流路(6)が、前記タービンホイール(3)の半径方向に対して平行な断面(61)を有する前記タービンハウジング(2)の前記周回する内壁(21)内を、前記断面(61)の少なくとも中心が前記ガス流入開口部(51)及び/又は前記ガス流出開口部(61)よりも前記タービンホイール(3)から半径方向に離れて位置するように、好ましくは、前記戻り流路(6)全体が、前記ガス流入開口部(51)及び/又は前記ガス流出開口部(61)よりも前記タービンホイール(3)から半径方向に離れるようにガイドされることを特徴とする、請求項4に記載のロータ(1)。
【請求項6】
前記断面拡張部(8)が、前記タービンホイール(3)の下に延在することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項7】
前記ガス流入開口部(41)及び前記ガス流出開口部(51)がそれぞれ、前記タービンホイール(3)の回転軸(R)に対して同じ軸方向の高さに配置された中心を有することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項8】
ガス流入開口部(41)及びガス流出開口部(51)を有する円弧(KS)が、前記歯科用準備器具(20)の1つのハンド側(21h)に配置可能であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項9】
前記推進ガス(TG)が、前記駆動ブレード(31)に対する衝突によって、その伝搬方向に90度~175度、好ましくは120度~170度、更により好ましくは150度~165度偏向されるように、ガス流出開口部(51)及び戻り流路(6)が互いに向かって配列され、前記駆動ブレード(31)の輪郭が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項10】
前記カバー面(24)が、前記第1の距離(D1)から前記第2の距離(D2)まで、そして前記タービンホイール(3)まで湾曲した輪郭で延びていることを特徴とする、請求項2乃至9のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項11】
前記ガス流入路(5)が、方向性を持った方法で前記推進ガス(TG)を前記駆動ブレード(31)に向けるために、少なくとも前記ガス流入開口部(51)の領域においてノズルとして成形されており、ここにおいて、好ましくは、前記ノズル(51)が、前記タービンホイール(3)の回転軸(R)に対して90度に等しくない角度、好ましくは80度未満又は100度超の角度で傾斜した推進ガスの流れを強制的に作り出すことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項12】
前記第1の距離(D1)と前記第2の距離(D2)との比が、渦(W)に面する前記駆動ブレード(31)の領域(32)に対して、前記戻り流路(6)を通って戻る前記推進ガス(TG)を方向転換させる前記渦(W)を強制的に作り出すことを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項13】
少なくとも前記渦(W)に面する前記領域(32)は、前記戻り推進ガス(TG)を80度~100度の角度で前記領域(32)に衝突させる配列を有することを特徴とする、請求項12に記載のロータ(1)。
【請求項14】
第2の戻り流路、ここにおいて、ガス流入開口部(41)及びガス流出開口部(51)が、前記タービンホイール(3)の回転軸(R)に対して前記内壁(21)内において周回方向に2つの戻り流路(6)の間に配置されており、
前記タービンハウジング(2)の別のカバー面(24)もまた、前記タービンホイール(3)の軸方向(AR)において前記第2の戻り流路(6)までの断面拡張部(8)を有し、その結果、2つの別個の渦(W)が発生し、それを通って戻る推進ガス(TG)が、いずれの場合も、前記タービンホイール(3)の前記駆動ブレード(31)上に上及び下から偏向される、
ことを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項15】
更なる構成要素、好ましくは光ファイバをガイドするための少なくとも1つの更なる開口部(71)が内壁(21)に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のロータ(1)がヘッド部(30)に配置されている歯科用準備器具(20)であって、それは、ハンド部(40)によって供給される推進ガス(TG)によって、好ましくは交換可能な道具(10)を駆動する、歯科用準備器具(20)。
【請求項17】
タービンハウジング(2)内に取り付けられたタービンホイール(3)を用いて道具(10)を駆動するための、請求項1~15のいずれか一項に記載のロータ(1)がヘッド部(30)に配置されている歯科用準備器具(20)を動作させるための方法(100)であって、前記タービンハウジング(2)は、前記タービンホイール(3)を半径方向に周回する内壁(21)と、前記内壁(21)を上下に囲むカバー面とから形成されており、
-複数の駆動ブレード(31)を用いて前記タービンホイール(3)を駆動するために、前記タービンハウジング(2)内にガス流入路(4)を介してガス流入開口部(41)を通ってハンド部(40)によって供給される推進ガス(TG)を入れるステップ(110)と、
-前記タービンホイール(3)の回転方向(DR)に反して前記駆動ブレード(31)のうちの少なくとも1つに衝突した後に、前記戻り流路(6)を通ってガス流出開口部(51)に前記推進ガス(TG)の少なくとも一部を逆流させるステップ(120)と、ここにおいて、ガス流入開口部(41)及びガス流出開口部(51)は、最大180度の円弧(KS)内で前記タービンハウジング(2)の前記内壁(21)に配置されており、前記戻り流路(6)は、少なくとも部分的に、前記ガス流入開口部(41)から前記円弧(KS)内のガス流出開口部(51)まで延在する、
-軸方向(AR)において、前記戻り流路(6)まで、駆動ブレード(31)と内壁(21)との間に表面の少なくとも1つの断面拡張部(8)を有する前記タービンハウジング(2)によって前記推進ガス(TG)内に渦(W)を発生させるステップ(130)と、
-前記戻り流路(6)に沿って戻る前記推進ガス(TG)の少なくとも一部によって、前記タービンホイール(3)に対して回転速度依存の制動力を発生させるステップ(140)と、ここで、ガスが、前記タービンホイール(3)の前記回転方向(DR)に反して、前記駆動ブレード(31)上に前記渦(W)によって偏向される、
-前記戻り推進ガス(TG)を、前記ガス流出開口部(51)を介して少なくとも1つのガス流出路(5)を通して導出するステップ(150)と
を備える方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータと、そのようなロータを有する歯科用準備器具と、そのような歯科用準備器具を動作させるための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用タービンとも呼ばれるタービンドライブを有する既知の歯科用準備器具では、加圧空気を使用してロータ(タービンホイールと周囲)を駆動する。この空気の運動エネルギーは、運動量交換によってロータのブレードに力の衝撃を与える。この力の衝撃によりロータにおいてトルクが形成され、設定される回転速度は、初めは、空転時にノズルから出る空気の速度に依存する。アイドリング回転速度、すなわち無負荷時のロータの動作、トルク、そして使用可能な出力はゼロであるが、最大出力はアイドリング回転速度の半分に特徴的に設定される。しかしながら、最大出力を増加させるためにアイドリング回転速度を上げることは、取付け具の寿命及び歯科用タービンの騒音挙動に悪影響を与える。従って、例えば刊行物である独国特許出願公開第102012212483号明細書に記載されているように、より高さのあるタービンハウジングによってロータの回転速度に影響を与える試みが行われている。
【0003】
刊行物である独国特許発明第4320532号明細書には、ホイールの回転部分においてホイールとホイールハウジングとの間の流出空気の流路内でタービン回転速度を調節するための調整装置が配置されており、この調整装置は、回転速度が上がると有効断面積が減少し回転速度が下がると増大するように、回転時に遠心力によりその形状及び/又は位置を変化させる、歯科用タービンが開示されている。調整装置は、角度形成エッジがホイールの凹部においてホイールに面して配置されているポット状のスプリングディスクであり得る。しかしながら、この解決策は、タービン回転速度を調節するための追加の構成要素を必要とし、歯科用タービンの構成を複雑にして、製造コストを増加させる。ここでの調整装置のような追加の構成要素もまた、歯科用タービンの堅牢性を低下させ、最も単純で最もコンパクトな設計の妨げとなる。
【0004】
複雑でない構成を有し、堅牢であり、コンパクトな設計でかつ低い製造コストで製造することができる、長寿命で騒音が低減された歯科用準備器具を利用可能にすることが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の目的は、複雑でない構成を有し、堅牢であり、コンパクトな設計でかつ低い製造コストで製造することができる、長寿命で騒音が低減された歯科用準備器具を利用可能にすることである。
【0006】
この目的は、以下を有する、歯科用準備器具の道具を駆動するためのロータによって達成される:
-タービンハウジング内に取り付けられ、複数の駆動ブレードを有するタービンホイール、
-ここにおいて、タービンハウジングが、タービンホイールを半径方向に周回する内壁と、内壁を上下に囲むカバー面とから形成されている、
-タービンホイールを駆動するためにタービンハウジング内に推進ガスを入れるためのガス流入開口部を有する少なくとも1つのガス流入路、及び
-タービンホイールが駆動されると、タービンハウジングから推進ガスを導出するためのガス流出開口部を有する少なくとも1つのガス流出路、
ガス流入開口部及びガス流出開口部は、最大180度の円弧内で内壁に配置されており、
円弧内の内壁は、ガス流入開口部からガス流出開口部まで少なくとも部分的に延在する少なくとも1つの戻り流路を備え、
ここにおいて、戻り流路は、推進ガスの少なくとも一部が、タービンホイールの回転方向に反して駆動ブレードのうちの少なくとも1つに衝突した後に、戻り流路を通ってガス流出開口部に逆流することを可能にする、
軸方向において、タービンハウジングは、戻り流路まで、駆動ブレードと内壁との間に表面の少なくとも1つの断面拡張部を有する。
【0007】
タービンハウジングは、タービンホイールが間で回転する2つのカバー面と、タービンホイールを半径方向に周回する内壁とによって形成され、一般に円筒形である。上側のカバー面はカバーとも呼ばれ、下側カバー面はベースとも呼ばれ得る。本発明では、タービンハウジングのカバー面ではなく、歯科用準備器具において歯科用準備器具のハンド部から遠く離れたカバー面の間の内壁の一部が、タービンハウジングの端面として表される。これに対応して、タービンハウジングの端面とは反対側の内壁の面は、ハンド部に面する側又はハンド側と表される。駆動ブレードと内壁との間の表面は、駆動ブレードと内壁との間の空間の半径方向の断面である。
【0008】
本発明では、「半径方向に」という用語が、円の中心から外側に向かう方向を意味するのに対して、「半径方向に周回する」という用語は、構成要素の周りの円軌道を意味する。対照的に、タービンホイールの回転軸に対して平行な方向は、軸方向として表される。
【0009】
その際には、断面拡張部は、カバー面のうちの一方の凹部によって形成されており、少なくとも戻り推進ガスの方向にガス流出開口部の外端部まで、少なくとも戻り流路内を流れる推進ガスの方向に見て戻り流路の領域にわたって延在する、駆動ブレードとカバー面との間の軸方向における第1の距離と、別の領域において駆動ブレードとカバー面との間の軸方向における少なくとも1つの第2の距離とを有し、第2の距離が第1の距離よりも短い。ガス流出開口部の外端部は、戻りガスの方向に見てガス流出開口部の後端部である。それにもかかわらず、そうすることで、断面拡張部は、駆動ブレードと内壁との間に延在する。従って、軸方向に拡大された関連する断面は、タービンホイールの駆動ブレードと内壁との間に半径方向に位置する。対照的に、断面拡張部は、タービンハウジングのカバー面とタービンホイールの駆動ブレードとの間で駆動ブレードの上又は下にある軸方向のリテーニングリング内の可能な流路を表すものではない。
【0010】
従って、断面拡張部(カバー面の段差)は、ガス流出開口部に直接配置されているか、又は断面開口部とタービンホイールの回転軸とガス流出開口部の外端部との間に、数度、好ましくは5度未満の角度だけ伸びて配置されている。ガス流出開口部における断面拡張部のこの密接な配置によって、断面拡張部によって発生する渦は、ガス流出開口部に直接接するか又はガス流出開口部に位置している。
【0011】
ガス流出開口部の領域における駆動ブレードと周回する内壁との間の軸方向における断面拡張部(断面の拡張部)は、ガス流出開口部の前方のタービンホイールの回転方向において、カバー面からタービンホイールまでの距離が第2の距離から第1の距離に増加する地点で、タービンホイールで運ばれる推進ガスに渦を巻かせる。一方では、そこに形成されるこの実質的に静止した渦は、駆動ブレードからはね返る(recoil)推進ガスを引き寄せ、戻り流路を通る推進ガスの逆流を強化し、更に、戻り流路を通ってガス流出開口部に逆流する推進ガスの少なくとも一部を、回転方向に向けられた駆動ブレードの側面に対して向け、その結果、衝突によりタービンホイールを減速させる。この効果は、駆動ブレードに衝突する戻りガスと駆動ブレードの速度との間の速度差がタービンホイールの回転速度とともに増加するため、タービンホイールの回転速度が高まるにつれて強化され、それによって、結果として生じる回転速度依存の制動効果は、回転速度とともに著しく増加する。歯科用準備器具のロータの最大出力はアイドリング回転速度の半分で達成されるため、これらの比較的低い回転速度での電力損失はかなり低いのに対して、高い回転速度では、制動効果は所望の明確な電力損失をもたらし、これは、歯科用準備器具の騒音挙動を改善し、タービンホイールの取付け具の寿命にとって好適である。推進ガスは、例えば圧縮空気であり得る。断面拡張部はガス流出開口部の近傍に又はガス流出開口部に直接配置され得るため、制動に使用される推進ガスの一部は、駆動ブレードの反対側の前側に対する衝突が起きた後、制動パワーひいては制動力を減少させることなく、ガス流出開口部を通って直接タービンハウジングから漏出することができる。これにより、タービンハウジング内のガス経路は最小限に抑えられ、それに対応して、タービンハウジングは、よりコンパクトに設計される。一実施形態では、戻り流路は、ガス流入開口部の内壁においてガス流出開口部まで延在する。
【0012】
その際、隣接して配置されたガス流入開口部及びガス流出開口部は、互いに直接当接して配置されておらず、代わりに、ガス流入開口部とガス流出開口部との間には周回する内壁の領域が存在し、この内壁の領域は、ガス流入開口部及びガス流出開口部が実際に内壁のハンド側に位置するような、タービンホイールを周回する方向への大幅な拡大を有さない。歯科用準備器具の後方のハンド部に面する内壁の全ての領域が同じ側で表され、それによって、ロータの回転軸上に張られた、ガス流入開口部とガス流出開口部との間の角度は、180度未満である。更なる実施形態では、ガス流入開口部及びガス流出開口部を有する円弧は、歯科用準備器具の1つのハンド側に配置可能である。
【0013】
本発明によるロータの利点は、最大トルク又は最大出力を何らかの関連する程度まで減少させることなくアイドリング回転速度を減少させることであり、それによって、使用される取付け具は、低メンテナンス及び低摩耗を兼ね備える。更に、本発明による達成は、ロータ又は歯科用準備器具内の追加の設置空間も追加の構成要素も必要としない。結果として、タービンハウジングは、少なくとも軸方向に、よりコンパクトに設計され得、追加されるのが戻り流路だけであることによる製造上の理由から、製造が容易である。更に、タービンハウジングの本発明による設計によってここでの所望の効果を達成するために、タービンホイール又は駆動ブレードに知られているロータを変更する必要はない。
【0014】
戻り流路と組み合わせて、第2の距離から第1の距離まで増加するタービンホイールとカバー面との間の距離を使用して、戻り流路までの駆動ブレードと内壁との間の表面の断面拡張部によって、上述の利点が達成され、それによって、ターゲット方法で、タービンホイールにおいて渦が発生し、その渦を通して、推進ガスがタービンホイールの回転方向に反して戻り流路を通って流れ、ターゲット方法で、タービンホイールの駆動ブレードに対して偏向され、その結果、減速する。その際、制動効果は、回転速度に著しく依存し、これがアイドリング回転速度の半分で達成されるため、最大出力にほとんど影響を与えない。その結果、ロータの直径を更に小さくすることができる。
【0015】
従って、本発明によるロータは、複雑でない構成を有し、堅牢であり、コンパクトな設計でかつ低い製造コストで製造することができる、長い寿命を有する歯科用準備器具を可能にする。
【0016】
一実施形態では、戻り流路は、タービンホイールの回転軸に対して同じ軸方向の高さでタービンホイールを周回する。その結果、ガス流入開口部からガス流出開口部までの連続的な戻り流路が提供され、これは、ガス流入開口部及びガス流出開口部を配置するための幾何学的自由空間を特に制限するものではない。従って、戻り推進ガスは、最短経路で渦に到達し、所望の制動効果のための収容駆動ブレードに到達する。例えば、戻り流路の下側が底面によって提供されるか、又は戻り流路の上側がタービンハウジングのカバー面によって提供される。
【0017】
更なる実施形態では、ガス流入開口部及び/又はガス流出開口部は、タービンホイールの回転軸の方向に見て、戻り流路に対して互いの上又は下に配置されている。ここで、ガス流入開口部及び/又はガス流出開口部が戻り流路の上に配置され得るか、又は戻り流路がガス流入開口部及び/又はガス流出開口部の上に配置され得る。ガス流入開口部及び/又はガス流出開口部が戻り流路に対してオフセットして配置されているため、戻り流路はタービンハウジングの内壁に入ることができ、従ってガス流入及び/又はガス流出を乱さない。更に、戻り流路は、大きな流路断面が提供され得る。戻り流路がガス流入開口部及びガス流出開口部の上に配置されているか下に配置されているかに応じて、戻り推進ガスは、駆動ブレードの上部領域(上側)又は下部領域(下側)に衝突する。
【0018】
一実施形態では、戻り流路は、タービンホイールの半径方向に対して平行な断面を有するタービンハウジングの周回する内壁内を、断面の少なくとも中心(表面の幾何学的焦点)がガス流入開口部及び/又はガス流出開口部よりもタービンホイールから半径方向に離れて位置するように、好ましくは、戻り流路全体が、ガス流入開口部及び/又はガス流出開口部よりもタービンホイールから半径方向に離れるようにガイドされる。結果として、タービンハウジングはまた、半径方向に更にコンパクトに設計され得、製造の観点で製造がより一層容易になる。一実施形態では、断面拡張部は、タービンホイールの下まで延在する。
【0019】
更なる実施形態では、ガス流入開口部及びガス流出開口部はそれぞれ、タービンホイールの回転軸に対して同じ軸方向の高さに配置された中心(幾何学的焦点)を有する。この幾何学的配置では、戻り流路は、最大の幾何学的自由度で設計され得る。
【0020】
更なる実施形態では、推進ガスが、駆動ブレードに対する衝突によって、その伝搬方向に90度~175度、好ましくは120度~170度、更により好ましくは150度~165度偏向されるように、ガス流出開口部及び戻り流路が互いに向かって配列され、駆動ブレードの輪郭が形成されている。推進ガスから駆動ブレードへの動力伝達は、より大きな角度で最大となるが、この理想的な角度である180度では、戻り推進ガスが、駆動ブレードに逆流する推進ガスのガス流を乱すこととなり、タービンホイールの駆動に悪影響を及ぼすこととなる。この点において、180度未満の角度でのガス流の偏向が有利である。角度が小さいほど、2つのガス流の乱れが少なくなる。しかしながら、角度が減少するにつれて駆動ブレード上の動力伝達は減少し、その結果、偏向角度が90度未満のロータは最適に駆動することができない。
【0021】
更なる実施形態では、カバー面は、第1の距離から第2の距離に、そしてタービンホイールまで湾曲した輪郭で延びている。湾曲した輪郭とは、鋭いエッジを有していない、3次元で設計された輪郭を表す。湾曲した輪郭は、戻り推進ガスが、駆動ブレードの方向に益々偏向されるようにする(又は構成要素の配置が逆の場合には、徐々に偏向されないようにする)ために、ターゲット方法で、渦に偏向されることを可能にする。例えば、直角のエッジは、それどころか、推進ガスの少なくとも一部を駆動ブレードではなくカバー表面からそびえる壁に衝突させるため、戻り流の一部は、制動力を発生させるために所望通りに使用されない可能性がある。
【0022】
別の実施形態では、ガス流入路は、方向性を持った方法で推進ガスを駆動ブレードに偏向するために、少なくともガス流入開口部の領域においてノズルとして成形されている。ノズル形状により、駆動ブレードに向かって流れる推進ガスと、駆動ブレードに衝突した後に逆流する推進ガスとの間の偏向角を正確に設定することができ、その結果、両方のガス流が引き起こす乱れは最小限となる。好ましくは、その際に、ノズルは推進ガスの流れを強制的に作り出し、回転軸上のその突起は、回転軸に対して90度に等しくない角度で傾斜し、好ましくはこの角度は80度未満又は100度超であり、それにより、2つのガス流(駆動ブレードへ流れ、駆動ブレードに衝突した後に駆動ブレードから離れるように流れる推進ガス)が互いに十分に分離されるようにする。
【0023】
タービンホイールの駆動ブレードの輪郭は、自由な形状を有することができ、駆動ブレードの前側及び後側の輪郭は、半径方向において更に異なっても、同じであってもよい。更に半径方向内向きにおいて、前側と後側との間の輪郭は、同様に、いくつかの実施例では、互いに異なってもよい。例えば、半径方向に見て、駆動ブレードは、少なくとも回転方向に見て前側に、非対称の輪郭、V字形の輪郭、又は波形の輪郭を有することができ、駆動ブレードの側面は、タービンホイールの回転方向において後方を向いている。側面の輪郭の設計は、(回転方向に見て)駆動ブレードの前側に戻り推進ガスが衝突することにより、定義された最適化可能な制動効果を達成することを可能にする。別の実施形態では、タービンホイール自体も同様にカバー面及び/又は底面を有することができる。しかしながら、これらのカバー面及び底面は、タービンハウジングのカバー面と混同されるべきではなく、代わりに追加の設計を構成する。タービンホイールのカバー面及び/又は底面が部分的に凹部を備えることができるか、又は駆動ブレードが部分的に天井面及び/又は底面から除外される。
【0024】
更なる実施形態では、第1の距離と第2の距離との比は、渦(W)に面する駆動ブレードの領域に対して、戻り流路を通って戻る推進ガスを方向転換させる渦を強制的に作り出す。それによって、ガス流は、最大の制動効果が達成されるように設計される。
【0025】
更なる実施形態では、渦に面する駆動ブレードの領域は、戻り推進ガスを80度~100度の角度で領域に衝突させる配列を有する。駆動ブレードにかかる最大制動力は、駆動ブレードの反対側の領域に対する戻り推進ガスの実質的に垂直な衝突によって与えられる。
【0026】
更なる実施形態では、ロータは、第2の戻り流路を備え、ここにおいて、ガス流入開口部及びガス流出開口部が、タービンホイールの回転軸に対して内壁内において周回方向に2つの戻り流路の間に配置されており、タービンハウジングの別のカバー面もまた、タービンホイールの軸方向において第2の戻り流路までの断面拡張部を有し、その結果、2つの別個の渦が発生し、それを通って戻る推進ガスは、いずれの場合も、タービンホイールの駆動ブレード上に上及び下から偏向される。結果として、制動効果を駆動ブレードに対称的に与えることができ、これは、一方では制動力を増大させ、他方ではタービンホイールひいては取付け具の対称的な荷重を提供する。
【0027】
更なる実施形態では、更なる構成要素、好ましくは光ファイバをガイドするための更なる開口部が内壁に配置されている。ガス流入開口部とガス流出開口部及び戻り流路の本発明による配置により、タービンハウジングの内壁には更なる流路を提供するのに十分に自由な空間が残されているため、戻り流路又は準備器具における推進ガス供給及び推進ガス除去に加えて更なる構成要素を困難なく統合することができる。例として、道具を照明するためにタービンハウジング内に光ファイバがガイドされ得る。
【0028】
本発明はまた、本発明によるロータがヘッド部に配置されている歯科用準備器具に関し、これは、ハンド部によって供給される推進ガスによって、好ましくは交換可能な道具を駆動する。ロータは、ヘッド部の対応する取付け具に取り付けられ、環境の影響から切り離されている。ヘッド部はまた、道具、例えばドリルビット又は異なる歯科道具をガイドする。歯科用準備器具は、ハンド部を使用して歯科医によってガイドされる。典型的には、圧縮空気が推進ガスとして使用される。圧縮空気を発生させるためのコンプレッサは、歯科用準備器具の外側に配置されており、圧縮空気を供給するために適切な方法で歯科用準備器具に接続される。従って、本発明による歯科用準備器具は、複雑でない構成を有し、堅牢であり、コンパクトな設計でかつ低い製造コストで製造することができる、長寿命で騒音が低減された器具を構成する。
【0029】
本発明は更に、タービンハウジング内に取り付けられたタービンホイールを用いて道具を駆動するための、本発明によるロータがヘッド部に配置されている歯科用準備器具を動作させるための方法であって、タービンハウジングは、タービンホイールを半径方向に周回する内壁と、内壁を上下に囲むカバー面とから形成されており、以下のステップを備える方法に関する:
複数の駆動ブレードを用いてタービンホイールを駆動するために、タービンハウジング内にガス流入路を介してガス流入開口部を通ってハンド部によって供給される推進ガスを入れるステップ、
タービンホイールの回転方向に反して駆動ブレードのうちの少なくとも1つに衝突した後に、戻り流路を通ってガス流出開口部に推進ガスの少なくとも一部を逆流させるステップと、ここにおいて、ガス流入開口部及びガス流出開口部は、最大180度の円弧内でタービンハウジングの内壁に配置されており、戻り流路は、少なくとも部分的に、ガス流入開口部から円弧内のガス流出開口部まで延在する、
軸方向において、戻り流路まで、駆動ブレードと内壁との間に表面の少なくとも1つの断面拡張部を有するタービンハウジングによって推進ガス内に渦を発生させるステップ、
戻り流路に沿って戻る推進ガスの少なくとも一部によって、タービンホイールに対して回転速度依存の制動力を発生させるステップ、ここで、ガスが、タービンホイールの回転方向に反して、駆動ブレード上に渦によって偏向される、及び
戻り推進ガスを、ガス流出開口部を介して少なくとも1つのガス流出路を通して導出するステップ。
【0030】
従って、歯科用準備器具を動作させるための本発明による方法は、複雑でない構成を有し、堅牢であり、コンパクトな設計でかつ低い製造コストで製造することができると同時に、長寿命で騒音が低減された方法で歯科用準備器具を動作させることができる方法を構成する。
【0031】
上述の実施形態は、本発明によるデバイス及び本発明による方法を設計するために、個々に又は互いに任意に組み合わせて使用され得る。
【0032】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下のように図で詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1a】内壁にガス流入開口部及びガス流出開口部のみを有する、タービンハウジングの内壁を通る断面の本発明によるロータの実施形態の斜視図である。
図1b】内壁にガス流入開口部及びガス流出開口部に加え、更に内壁に更なる開口部を有する、タービンハウジングの内壁を通る断面の本発明によるロータの実施形態の斜視図である。
図2】タービンホイールを駆動するための推進ガスの流れを概略的に表した、タービンホイールの回転軸に沿った、本発明によるロータ又は本発明による歯科用準備器具の実施形態のタービンハウジングを通る側断面図である。
図3】タービンホイールを減速するための推進ガスの流れを概略的に表した、タービンホイールの回転軸に沿った、本発明によるロータ又は本発明による歯科用準備器具の実施形態のタービンハウジングを通る側断面図である。
図4】本発明による歯科用準備器具の実施形態の概略図である。
図5】歯科用準備器具を動作させるための本発明による方法の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、(a)内壁21にガス流入開口部41及びガス流出開口部51のみを有する場合と、(b)更に内壁21に更なる開口部71を有する場合のタービンハウジング2の内壁21を通る断面の本発明によるロータ1の実施形態の斜視図を示す。道具10を駆動するためのロータ1は、タービンハウジング2内に取り付けられたタービンホイール3を備え、タービンホイール3は、複数の駆動ブレード31(図2及び図3参照)を有するが、明確さのためにここでは示されていない。その際、タービンハウジング2は、タービンホイール3を半径方向に周回する内壁21と、内壁21を上下に囲むカバー面24とから形成されている。更に、タービンハウジング2は、タービンホイール3を駆動するためにタービンハウジング2内に推進ガスTGを入れるためのガス流入開口部41を有する少なくとも1つのガス流入路4と、タービンホイール3が駆動されると、タービンハウジング2から推進ガスTGを導出するためのガス流出開口部51を有する少なくとも1つのガス流出路5とを備える。ガス流入開口部41及びガス流出開口部51は、最大180度の円弧KS内でタービンハウジング2の内壁21に配置されており、円弧KS内の周回する内壁21は、少なくともガス流入開口部41からガス流出開口部51まで延在する少なくとも1つの戻り流路6を備える。外端部の各々は、隣接する開口部から離れて面する端部に位置するそれぞれの開口部の側面を表す。その際、戻り流路6は、推進ガスTGの少なくとも一部が、タービンホイール3の回転方向DRに反して駆動ブレード31のうちの少なくとも1つに衝突した後に戻り流路6を通ってガス流出開口部51に逆流することを可能にする(この点については図2及び図3を参照)ように設計されており、軸方向ARにおいて、タービンハウジング2の下側カバー面24は、戻り流路6まで断面拡張部8を有する。断面拡張部8は、下側カバー面24の凹部によって形成されており、少なくとも戻り推進ガスTGの方向にガス流出開口部51の外端部まで、少なくとも戻り流路6内を流れる推進ガスTGの方向に見て戻り流路6の領域22にわたって延在する、駆動ブレード31とカバー面24との間の軸方向ARにおける第1の距離D1を有しており、別の領域23において駆動ブレード31とカバー面24との間の軸方向ARにおける少なくとも1つの第2の距離D2を有しており、第2の距離D2が第1の距離D1よりも短い。第2の距離は、略ゼロであってもよい。ここで、断面拡張部8は、ガス流出開口部51のすぐ前にタービンホイール3の回転方向DRに配置されており、断面拡張部8と、タービンホイール3の回転軸Rと、ガス流出開口部51の外端部51aとの間に伸びている角度Qは、好ましくはわずか数度、好ましくは5度未満、又は0度である。ガス流出開口部51における断面拡張部8のこの密接な配置によって、断面拡張部8によって発生する渦Wは、ガス流出開口部51に直接接するか又はガス流出開口部51にある。
【0035】
ここで、戻り流路6は、ガス流入開口部41及びガス流出開口部51の下で、タービンホイール3の回転軸Rに対して同じ軸方向の高さでタービンホイール3を周回する。従って、タービンホイール3の回転軸Rの方向に見て、ガス流入開口部41及びガス流出開口部51は両方とも、戻り流路6の上に配置されている。戻り流路6は、タービンホイール3の半径方向に断面61を有するタービンハウジング2の周回する内壁21内を、断面61の少なくとも幾何学的焦点がガス流入開口部41及びガス流出開口部51よりもタービンホイール3から半径方向RRに離れて位置するようにガイドされる。ここで、更に、ガス流入開口部41及びガス流出開口部51はそれぞれ、タービンホイール3の回転軸Rに対して同じ軸方向の高さに配置された中心(幾何学的焦点)を有する。一実施形態では、断面拡張部8は、タービンホイール3の下まで延在する。更に、カバー面24は、少なくともガス流出開口部51の領域において、第1の距離D1から第2の距離D2に、そしてタービンホイール3まで湾曲した輪郭で延びている。これは、ガス流入開口部41の領域においても当てはまる。示されない更なる実施形態では、タービンハウジング2は、追加の第2の戻り流路6を備えることができ、ガス流入開口部41及びガス流出開口部51は、タービンホイール3の回転軸Rに対して内壁21内において軸方向ARに2つの戻り流路6の間に配置されており、その結果、2つの別個の渦Wが発生し、それを通って戻る推進ガスTGは、いずれの場合も、タービンホイール3の駆動ブレード31上に上及び下から偏向される。図1bの実施形態では、更なる構成要素、好ましくは光ファイバをガイドするための更なる開口部71が、ガス流入開口部41とガス流出開口部51との間で内壁21に更に配置されている。
【0036】
図2は、タービンホイール3を駆動するための推進ガスTGの流れを概略的に表した、タービンホイール3の回転軸Rに沿った、本発明によるロータ1又は本発明による歯科用準備器具20の実施形態のタービンハウジング2を通る側断面図を示す。ロータ1に加えて、それに接続されている歯科用準備器具20のハンド部40の一部が示されている。ここで、推進ガスTGが、回転軸Rを有するタービンホイール3の回転方向DRへの駆動ブレード31に対する衝突によって、その伝搬方向に約130度偏向されるように、ガス流出開口部51(明示的に示されていない)及び戻り流路6が互いに向かって配列され、駆動ブレード31の輪郭が形成されている。ガス流入路4は、ガス流入開口部41の領域においてノズルとして成形されており、このノズルは、方向性を持った方法で駆動ブレード31上に推進ガスを押しつける。ノズルは、白矢印TGによって示されるように、流入する推進ガスTGが逆流する推進ガスTGによって乱されないようにするために、回転平面に対して平行なガス流入又は平行なガス流入に対して、タービンホイール3の回転軸Rに対して角度をなす方向に下向きの推進ガスの流れを発生させる。次に、戻り推進ガスTGは、タービンハウジング2のカバー面24に沿ってカバー面24に対して平行に流れ、第3の矢印TGに沿った流れ方向をもたらす。ここで、戻り流路6は、タービンホイール3の半径方向RRに断面61を有するタービンハウジング2の周回する内壁21内を、戻り流路6全体が、少なくともガス流出開口部51よりも半径方向RRにタービンホイール3から離れて位置するようにガイドされる。断面61は、それぞれガス流入開口部41及びその後方に位置するガス流入路4の下方に位置しており、また下側カバー面24の凹部を通ってタービンホイール3の下に位置している。タービンハウジング2の端面21s及びハンド側21hは、ここでは例示を目的として明確に示されている。断面拡張部8(ここでは上面図の側断面図で示されている)は、下側カバー面24の凹部によって形成されており、カバー面24は、駆動ブレード31とカバー面24との間の軸方向ARにおける第2の距離D2から、駆動ブレード31とカバー面24との間の軸方向ARにおける第1の距離D1にはね返り、第2の距離D2は第1の距離D1よりも短い。
【0037】
図3は、タービンホイール3を減速させるための推進ガスTGの流れを概略的に表した、タービンホイール3の回転軸Rに沿った、本発明によるロータ1又は本発明による歯科用準備器具20の実施形態のタービンハウジング2を通る側断面図を示す。ロータ1に加えて、それに接続されている歯科用準備器具20のハンド部40の一部が示されている。半径方向RRに見て、駆動ブレード31は、少なくとも回転方向DRに見て前側に波形の輪郭を有し、両方の領域(側面)32は、タービンホイール3の回転方向において後向きに輪郭を向ける。ここで、第1の距離D1と第2の距離D2との間の比は、はね返るカバー面24の断面拡張部8で生じる渦W(白丸で概略的に示されている)が、渦Wに面する駆動ブレード31の領域32(ここでは下部領域又は側面)に対して戻り流路6を通って戻る推進ガスTGを偏向させるような大きさに設定されるように選択される。ここで、渦Wに面する領域32は、戻り推進ガスTG(白矢印によって概略的に示されている)が80度~100度の角度で領域32に衝突するように配列される。タービンハウジング2のカバー面24は、駆動ブレード31の上及び下に位置する。タービンハウジング2の端面21sは、右ハンド側に位置している。更なる実施形態(ここでは明示的に示されていない)では、ロータ1のタービンハウジング2は、第2の戻り流路を備え、ガス流入開口部41及びガス流出開口部51は、タービンホイール3の回転軸Rに対して内壁21内において軸方向ARに2つの戻り流路6の間に配置されており、タービンハウジング2の他方のカバー面24もまた、タービンホイール2の軸方向ARに第2の戻り流路6までの断面拡張部8を有し、その結果、2つの別個の渦W(タービンホイール2の下側カバー面24の近傍に示される渦Wと、ここでは示されていない、タービンホイール2の上側カバー面24の近傍にある別の渦W)が発生し、それを通って戻る推進ガスTGは、いずれの場合も、タービンホイール3の駆動ブレード31上に上及び下から偏向される。
【0038】
図4は、本発明によるロータ1がヘッド部30に配置されている本発明による歯科用準備器具20の実施形態の概略図を示し、これは、ハンド部40によって供給される推進ガスTGによって好ましくは交換可能な道具10を駆動する。ガス流入路及びガス流出路は、ここでは詳細に示されていない。追加的に、歯科用準備器具20は、少なくとも1つの更なる開口部71(図1b参照)によってタービンハウジング内にガイドされる1つ又は複数の更なる流路を備え得る。追加の流路は、例えば、更なる開口部71を通ってタービンハウジング内に導出される(conchanneled)光ファイバを収容することができる。
【0039】
図5は、タービンハウジング2内に取り付けられたタービンホイール3を用いて道具10を駆動するための本発明によるロータ1がヘッド部30に配置されている歯科用準備器具20を動作させるための本発明による方法100の実施形態の概略図を示し、タービンハウジング2は、タービンホイール3を半径方向に周回する内壁21と、内壁21を上下に囲むカバー面24とから形成されており、この方法は、複数の駆動ブレード31を用いてタービンホイール3を駆動するために、タービンハウジング2内にガス流入路4を介してガス流入開口部41を通ってハンド部40によって供給される推進ガスTGを入れるステップ110と、タービンホイール3の回転方向DRに反して駆動ブレード31のうちの少なくとも1つに衝突した後に、戻り流路6を通ってガス流出開口部51に推進ガスTGの少なくとも一部を逆流させるステップ120と、ここにおいて、ガス流入開口部41及びガス流出開口部51は、最大180度の円弧KS内でタービンハウジング2の内壁21に配置されており、戻り流路6は、少なくとも部分的に、ガス流入開口部41から円弧KS内のガス流出開口部51まで延在する、軸方向ARにおいて、戻り流路6まで、駆動ブレード31と内壁21との間に表面の少なくとも1つの断面拡張部8を有するタービンハウジング2によって推進ガスTG内に渦Wを発生させるステップ130と、戻り流路6に沿って戻る推進ガスTGの少なくとも一部によって、タービンホイール3に対して回転速度依存の制動力を発生させるステップ140と、ここで、ガスが、タービンホイール3の回転方向DRに反して、駆動ブレード31上に渦Wによって偏向される、戻り推進ガスTGを、ガス流出開口部51を介して少なくとも1つのガス流出路5を通して導出するステップ150とを備える。
【0040】
ここに示された実施形態は、本発明の単なる例を構成するものであり、従って、限定的であると理解されるべきではない。当業者によって考慮される代替的な実施形態は、本発明の保護範囲によってカバーされる。
【0041】
[参照番号のリスト]
1 : 本発明によるロータ
2 : タービンハウジング
21 : タービンヘッドの内壁
21h : 内壁のハンド側
21s : 内壁の端面
22 : タービンホイールとカバー面との間に第1の距離を有する領域
23 : タービンホイールとカバー面との間に第2の距離を有する領域
24 : カバー面(上側及び下側)
3 : タービンホイール
31 : 駆動ブレード
32 : 戻り推進ガスが衝突する駆動ブレードの領域
4 : ガス流入路
41 : ガス流入開口部
5 : ガス流出路
51 : ガス流出開口部
51a : 戻り推進ガスの方向に見たガス流出開口部の外端部
6 : 戻り流路
61 : 半径方向における戻り流路の断面
71 : タービンハウジングの内壁における更なる開口部
8 : 断面拡張部
10 : 道具
20 : 本発明による歯科用準備器具
30 : 準備器具のヘッド部
40 : 準備器具のハンド部
100 : 本発明による方法
110 : タービンホイールを駆動するために、タービンハウジング内に推進ガスを入れる
120 : 戻り流路を通ってガス流出開口部に、タービンホイールの回転方向に反して推進ガスの少なくとも一部を逆流させる
130 : 軸方向における駆動ブレード間の表面で断面拡張部によって推進ガスに渦を発生させる
140 : 渦によって駆動ブレード上で偏向された戻り推進ガスによってタービンホイールに対して回転速度依存の制動力の発生させる
150 : ガス流出開口部を介して戻り推進ガスを導出する
AR : タービンホイールの回転軸に対して平行な軸方向
D1 : 内壁とタービンホイールとの間の第1の距離
D2 : 内壁とタービンホイールとの間の第2の距離
DR : タービンホイールの回転方向
KS : 戻り流路が位置している円弧
Q : 戻り推進ガスの方向に見た、断面拡張部とタービンホイールの回転軸とガス流出開口部の端部との間の角度
R : タービンホイールの回転軸
RR : タービンホイールの回転軸から見た半径方向
TG : 推進ガス
W : 渦
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】