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特表2022-508049代替的に活性化されたマクロファージでのCLEVER-1発現のダウンレギュレーションに使用するためのTLR9アゴニスト
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  • 特表-代替的に活性化されたマクロファージでのCLEVER-1発現のダウンレギュレーションに使用するためのTLR9アゴニスト 図1
  • 特表-代替的に活性化されたマクロファージでのCLEVER-1発現のダウンレギュレーションに使用するためのTLR9アゴニスト 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】代替的に活性化されたマクロファージでのCLEVER-1発現のダウンレギュレーションに使用するためのTLR9アゴニスト
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220112BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K31/7125
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523719
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(85)【翻訳文提出日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 FI2019050778
(87)【国際公開番号】W WO2020089531
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】20185926
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504459559
【氏名又は名称】ファロン ファーマシューティカルズ オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルメン、マイヤ-レーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィータラ、ミロ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB32
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、代替的に活性化された免疫抑制マクロファージでのClever-1の発現をダウンレギュレーションすることによりがんおよび/または慢性感染症を治療するための方法におけるTLR9アゴニストの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体がClever-1発現により特徴付けられる代替的に活性化された免疫抑制マクロファージを有することを特徴とする、該個体におけるがんおよび/または慢性感染症の治療における使用のためのトール様受容体9(TLR9)アゴニストを含む組成物。
【請求項2】
前記個体がClever-1を発現するマクロファージにより特徴付けられる腫瘍を有すると診断されている、請求項1記載のがんの治療における使用のためのトール様受容体9(TLR9)アゴニストを含む組成物。
【請求項3】
前記個体がClever-1を発現するマクロファージにより特徴付けられる潜伏感染による肉芽腫を有すると診断されている、請求項1記載の慢性感染症の治療における使用のためのトール様受容体9(TLR9)アゴニストを含む組成物。
【請求項4】
トール様受容体9(TLR9)アゴニストが非メチル化CPGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のがんおよび/または慢性感染症の治療における使用のためのTLR9アゴニストを含む組成物。
【請求項5】
トール様受容体9(TLR9)アゴニストが医薬的に効果的な量で投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載のがんおよび/または慢性感染症の治療における使用のためのTLR9アゴニストを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常、TLR9アゴニストを用いることによりがんおよび/または慢性感染症を治療するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を説明するために本明細書中において使用される刊行物およびその他の文献、およびとりわけ実施に関する追加的な詳細を提供する症例(cases)は、参考文献として組み込まれる。
【0003】
ヒトClever-1(共通リンパ管内皮および血管内皮受容体-1)は公知であり、特許文献1に開示されている。Clever-1は、スタビリン-1またはFeel-1としても知られる。Clever-1は非特許文献1にも概説されている。Clever-1は、リンパ管内皮細胞、特定の血管内皮細胞において発現されるのみならず、しばしば腫瘍関連マクロファージと呼ばれる免疫抑制マクロファージを代替的に活性化させる。Clever-1特異的抗体によるClever-1の阻害は、悪性腫瘍のサイズおよび/または悪性腫瘍の増殖を減少させるということもすでに特許文献2に示されている。また、例えば、特許文献3において、Clever-1の阻害が代替的に活性化マクロファージを免疫抑制(M2)表現型から炎症性(M1)表現型へと変えるということがすでに表されている。
【0004】
特許文献1はまた、Clever-1が、単球や顆粒球といったほかの種類の白血球のHEV-様管への結合を媒介するということも開示している。したがって、Clever-1と悪性腫瘍細胞との相互作用をブロックすることにより、Clever-1に結合する悪性腫瘍細胞がリンパ管に取り込まれるのを妨げ、結果、リンパ節への悪性腫瘍の広がりを防止することにより転移を制御することが可能となる。
【0005】
トール様受容体(TLR)は、通常、免疫系の多くの細胞上に存在し、そしてそれらは自然免疫応答に関与することが示されている。トール様受容体9(TLR9)は、トール様受容体(TLR)ファミリーのメンバーである。TLR9は、樹状細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、および他の抗原提示細胞などの免疫系の細胞に発現される重要な受容体である。TLR9は、細菌およびウイルスに存在するDNAに選択的に結合し、炎症性サイトカイン反応につながるシグナル伝達カスケードを引き起こす。がん、感染症、および組織損傷はTLR9の発現と活性化を完全にモジュレートすることができる。TLR9アゴニストは、がんの治療への可能性が示されており、いくつかの研究が多種多様な腫瘍モデルにおける抗腫瘍活性を証明している。がん治療のためのTLR9アゴニストは、例えば、非特許文献2により概説されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第03/057130号
【特許文献2】国際公開第2010/122217号
【特許文献3】国際公開第2017/182706号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kzhyshkowska J. (2010), The Scientific world JOURNAL 10, 2039-2053, "Multifunctional receptor Stabilin-1 in homeostasis and disease"
【非特許文献2】Krieg AM (2008), Oncogene 27, 161-167, "Toll-like receptor 9 (TLR9) agonists in the treatment of cancer"
【発明の概要】
【0008】
ここで、本発明者らは、驚くべきことに、トール様受容体9(TLR9)アゴニストを代替的に活性化されたマクロファージでのClever-1の発現をダウンレギュレートするために使用できるということを発見した。TLR9アゴニストが、急速にClever-1発現を減少させるということが見出された。本発明の知見は、TLR9アゴニストが代替的に活性化されたマクロファージプロファイルを有する疾患または症状を治療する方法においてClever-1阻害剤として使用でき、そこではTLR9アゴニストは上記マクロファージでのClever-1をダウンレギュレートする能力を有するということを示す。代替的に活性化されたマクロファージは、特に腫瘍に多数存在するが、慢性感染症においても多数存在し、したがって、本発明の知見はTLR9アゴニストが、個体におけるがんおよび/または慢性感染症の治療においてClever-1阻害剤として使用できることを示している。
【0009】
本発明の一つの目的は、個体の免疫系に影響を与える方法および免疫系の機能に関連する疾患または症状を治療する方法であって、該個体において代替的に活性化されたマクロファージでのClever-1受容体をダウンレギュレートすることを含む方法を提供することである。特に、本発明の一つの目的は、代替的に活性化されたマクロファージでのClever-1発現をダウンレギュレートすることにより個体においてがんおよび/または慢性感染症を治療する方法を提供することである。
【0010】
とりわけ上記の目的を達成するために、本発明は同じ包袋に入れられた特許請求の範囲の独立請求項に示されているものによって特徴づけられる。本発明のいくつかの好ましい実施態様は他の請求項において説明されている。
【0011】
本明細書に記載される実施態様および利益は、該当する場合には、必ずしも具体的に言及されているわけではないが、本発明の組成物、方法の両方ならびに使用に関連する。
【0012】
本発明は、代替的に活性化された免疫抑制マクロファージの再プログラミングのためにClever-1のダウンレギュレーションのためのトール様受容体9(TLR9)アゴニストを含む組成物の使用に関する。本発明は、代替的に活性化された免疫抑制マクロファージでのClever-1発現をダウンレギュレートすることにより個体においてがんを治療する方法、および/または代替的に活性化された免疫抑制マクロファージでのClever-1発現をダウンレギュレートすることにより個体において慢性感染症を治療する方法における使用のためのTLR9アゴニストを含む組成物に関する。
【0013】
本発明は、がんおよび/または慢性感染症の治療方法における使用のためのトール様受容体9(TLR9)アゴニストを含む組成物であって、個体がClever-1発現により特徴付けられる代替的に活性化された免疫抑制マクロファージを有する、組成物に関する。一実施態様によれば、本発明は、Clever-1を発現するマクロファージにより特徴付けられる腫瘍を有すると診断されている個体でのがんの治療における使用のためのトール様受容体9(TLR9)アゴニストを含む組成物に関する。別の実施態様においては、本発明は、Clever-1を発現するマクロファージにより特徴付けられる潜伏感染による肉芽腫を有すると診断されている個体での慢性感染症の治療における使用のためのトール様受容体9(TLR9)アゴニストを含む組成物に関する。
【0014】
本発明による組成物は、一つまたは複数のTLR9アゴニストを含むことができる。特に、CpG ODNを含むTLR9アゴニストが代替的に活性化された免疫抑制マクロファージでのClever-1発現をダウンレギュレートすることが観察されている。
【0015】
本発明は、患者に一つまたは複数のTLR9アゴニストを投与することを含むがんおよび/または慢性感染症に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0016】
Clever-1特異的抗体により腫瘍関連マクロファージのClever-1をブロックすることが、転移を予防し;および/または悪性腫瘍の大きさを減少させ;および/または悪性腫瘍の成長を減少させることが以前に特許文献2に示されている。したがって、本発明の知見はまた、Clever-1をダウンレギュレートすることにより、転移を予防し;および/または悪性腫瘍の大きさを減少させ;および/または悪性腫瘍の成長を減少させることも想定される。
【0017】
一つの側面によれば、本発明は、がんまたは慢性感染症の患者を治療する方法であって、代替的に活性化された免疫抑制マクロファージでのClever-1発現のダウンレギュレーションを含む方法に関する。一つの側面によれば、本発明は、がん患者を治療する方法に関し、その方法においては、腫瘍中のClever-1陽性マクロファージおよび/または血中のClever-1陽性単球について、治療の成功率を向上させるために治療前に患者からスクリーニングされ、その後、一つまたは複数のTRL9アゴニストを含む組成物がClever-1発現により特徴づけられる上記マクロファージおよび/または単球を有すると診断されている上記患者に投与される。
【0018】
いくつかの実施態様において、がんの治療のための一つまたは複数のTLR9アゴニストの使用は、さらに例えばClever-1特異的抗体またはその断片などの一つまたは複数のさらなる抗がん剤を投与することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】マクロファージでのClever-1発現が、分極されたマクロファージが種々のTLRリガンドで刺激された後に分析された実施例の結果を示す図である。
図2】種々の癌腫における組織マイクロアレイ(TMA)スポットについて、Clever-1とCD163またはCD68陽性マクロファージの比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
用語「治療(treatment)」または「治療する(treating)」は、疾患または障害の完全な治癒ならびに該疾患または障害の改善または軽減を含むと理解されるものとする。
【0021】
用語「治療的に効果的な量」は、所望の治療結果をもたらすのに十分な、本発明による組成物の任意の量を含むことを意味する。
【0022】
用語「TLR9アゴニスト」または「TLR標的リガンド」は、通常、TLR9受容体に結合し、そしてTLR9により介在される免疫刺激を増強、誘導またはモジュレートすることのできるオリゴヌクレオチドに基づく化合物を意味する。
【0023】
マクロファージは、伝統的にM1マクロファージおよびM2マクロファージの2つの異なる表現型に分類される。M1マクロファージは、古典的な炎症性マクロファージであり、大量の炎症性サイトカインおよび共刺激分子を産生し、そして非常に効率的にT細胞応答を活性化する。対照的に、M2マクロファージは、免疫抑制細胞であり、抗-炎症性サイトカインを合成し、制御性T細胞を誘導し、したがって抗原駆動(antigen-driven)T細胞活性化を大いに抑制する。腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、それらが腫瘍環境内でM2マクロファージ(腫瘍促進マクロファージ)に成熟し、抗-腫瘍免疫応答を抑制し、血管新生スイッチ、すなわちがん増殖における決定的な段階を媒介するため有害であるとみなされている。本明細書において、用語「代替的に活性化された免疫抑制マクロファージ」または「代替的に活性化されたマクロファージ」は、免疫抑制(M2)表現型を提示するマクロファージを示すために使用されるものであり、すなわち、M2マクロファージとも呼ばれる。代替的に活性化されたマクロファージは、多くの感染症に反応して増加される。代替的に活性化されたマクロファージは、腫瘍関連マクロファージ(TAM)とも呼ばれ、腫瘍において多数存在する。
【0024】
本発明によれば、一つまたは複数のTLR9アゴニストを含む化合物は、がんおよび/または慢性感染症の治療のために、代替的に活性化された免疫抑制マクロファージでのClever-1発現をダウンレギュレートするために使用される。好ましくは、一つまたは複数のTLR9アゴニストを含む化合物は、高濃度のClever-1陽性組織結合マクロファージまたは循環単球を有することがスクリーニングされているがんおよび/または慢性感染症の治療のために、代替的に活性化された免疫抑制マクロファージでのClever-1発現をダウンレギュレートするために使用される。本発明の一実施態様によれば、TLR9アゴニストは、一つまたは複数のオリゴヌクレオチドに基づくTLR9のアゴニストを含む。
【0025】
オリゴヌクレオチドに基づくTLR9アゴニストは、CpGモチーフを含有する人工DNAオリゴヌクレオチドであってもよい。トール様受容体9(TLR9)は、CpGモチーフ(CpG ODN)を含有する合成オリゴヌクレオチドによって模倣することのできる非メチル化CpGジヌクレオチド、すなわち微生物DNAの証を感知する。したがって、TLR9アゴニストは、TLR9に結合することのできる非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチド、またはそのアナログもしくは誘導体であってもよい。CpGオリゴデオキシヌクレオチド(またはCpG ODN)は、特定の配列関係における非メチル化CpGジヌクレオチドを含む短い一本鎖合成DNA分子(CpGモチーフ)である。CpG ODNは、シトシン三リン酸デオキシヌクレオチド(「C」)と、続くグアニン三リン酸デオキシヌクレオチド(「G])を有する。「p」は、連続したヌクレオチド間のホスホジエステルリンクを意味する。CpG ODNは、ゲノムの細菌DNAにみられる天然のホスホジエステル(PO)骨格とは対照的に、部分的にまたは完全にホスホロチオエート化された(PS)骨格を有する。本発明の一つの実施態様によれば、TLR9アゴニストは、シトシン-ホスフェート-グアノシン(CpG)モチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドを含む(CpG ODN)。
【0026】
本発明の一つの実施態様によれば、組成物の医薬製剤は、活性化合物の医薬的に使用できる製剤への加工を容易にする賦形剤および助剤を含む好適な薬学的に許容され得る担体も含む。
【0027】
本発明で患者を治療する方法は、本発明の組成物の投与を含む。がんおよび/または慢性感染症への免疫応答を誘導する本発明の方法は、一つまたは複数のTLR9アゴニストを含む組成物を患者に投与することを含む。
【0028】
本発明の一つの実施態様によれば、一つまたは複数のTLR9アゴニストは、代替的に活性化された免疫抑制マクロファージおよび/または腫瘍関連マクロファージでのClever-1発現を阻害するためにがん患者に投与される。特に、TLR9アゴニスト治療は、Clever-1発現により特徴づけられる腫瘍を有すると診断されているがん患者に有益であり得る。すべての腫瘍がClever-1陽性なわけではなく、言い換えればすべての腫瘍が、Clever-1を発現する代替的に活性化された免疫抑制マクロファージおよび/または腫瘍関連マクロファージを含むわけではなく、その発現レベルが顕著に異なり得るということが確認されている。したがって、良好な治療応答を提供するために治療の前にClever-1陽性について患者をスクリーニングすることが有益である。本発明の好ましい実施態様によれば、TLR9アゴニストを含む化合物は、Clever-1を発現する代替的に活性化された免疫抑制マクロファージを含む腫瘍の治療において使用することができる。
【0029】
悪性腫瘍の大きさを減少させることによる;悪性腫瘍の成長を減少させることによる;および/またはがん細胞移動および転移形成を阻害することによる本発明のがんを治療または予防する方法は、すべてのがんの形態に適用可能である。特に、本発明の知見は、Clever-1陽性マクロファージにより特徴付けられるすべての種類のがんを標的とすることが推定される。用語「がん」は、一般に、特に制限なく、異常なまたは制御されていない細胞増殖および/または分裂により引き起こされる任意の悪性新生物または腫瘍を意味する。がんは、不特定の個体に生じ得、そして任意かつすべての組織に起こり得る。
【0030】
本発明の別の実施態様によれば、一つまたは複数のTLR9アゴニストは、代替的に活性化されたマクロファージでのClever-1発現を阻害するために慢性感染症を患う患者に、特に、個体がClever-1を発現するマクロファージにより特徴付けられる潜伏感染による肉芽腫を有すると診断されている場合に投与される。
【0031】
治療の成功率を向上させるために、治療方法は、まず、腫瘍、慢性潜伏感染症の肉芽腫中のClever-1陽性マクロファージ、および/または末梢血試料由来の循環Clever-1陽性単球をスクリーニングして特徴付けることを含んでもよく、それから一つまたは複数のTLR9アゴニストを含む組成物がClever-1発現によって特徴づけられる上記マクロファージおよび/または循環単球を有する患者に投与される。スクリーニングは、例えば、Clever-1発現を決定するために患者由来の生検試料を分析することにより行ってもよい。
【0032】
本発明の医薬組成物は、それらの意図した目的を達成する任意の手段により投与することができる。例えば、投与は、静脈内、関節内、腫瘍内、肉芽腫内または皮下とすることができる。選択される用量は、治療される疾患に関して治療的に有効なものとしなければならない。本発明の一つの実施態様によれば、TLR9アゴニストは、医薬的に効果的な量で投与される。
【0033】
いくつかの実施態様において、がんの治療のためのTLR9アゴニストの使用は、さらに一つまたは複数の追加的な抗がん剤を投与することを含む。
【実施例
【0034】
以下の実施例は、本発明の原理を説明するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。次の実施例1は、TLR9アゴニスト(CpG ODN)がClever-1をダウンレギュレートするということを示す。実施例2は、種々のヒト腫瘍におけるマクロファージでのClever-1発現を示す。
【0035】
実施例1:マクロファージTLR刺激アッセイ
野生型C57BL/6Nマウス(n=4)を犠牲死させ、それらの大腿骨および脛骨を30Gニードルを用いてPBSで洗浄した。骨髄細胞を数え、マクロファージ培地(20ng/ml M-CSFを補充した完全IMDM(10%ウシ胎仔血清およびペニシリン/ストレプトマイシン)(315-02、ペプロテック社))に1.0×106細胞/mlで再懸濁させ、非組織培養処理プレートにおいて37℃で一週間培養した。培地の半分を、4日目に新鮮なマクロファージ培地で置き換えた。分化したBMDMをPBS中10mM EDTAで分離させ、96ウェルU-底プレートに1.0×105細胞/ウェルの密度で固定した(plate)。その後、細胞を10nMデキサメタゾンで24時間分極し、おおよそ80%のマクロファージにおいてClever-1発現を誘導した。分極したマクロファージは、種々のTLRリガンドで次のように、指摘した時点について刺激した:10μg/mLのポリ(I:C)(インビトロジェン社);100ng/mLのLPS(シグマ);5マイクロMのCpG ODN(インビトロジェン社);10μg/mLの2’,3’-cGAMP(インビトロジェン社)。マクロファージでのClever-1発現は、自家製のアロフィコシアニン(APC)に直接結合された9-11抗-Clever-1抗体を用いて透過性細胞からフローサイトメトリーにより分析された。Clever-1-APCシグナルは、無関係な同位体対照(ラットIgG2a-APC)に対して正規化され、Clever-1陽性細胞のパーセンテージとして示した。
【0036】
図1に示されるように、代替的に活性化されたマクロファージの非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチド(TLR9アゴニスト)による刺激が、マクロファージによるClever-1発現の迅速なダウンレギュレーションを誘導した。同様の反応がTLR3(ポリ(I:C))、TLR4(LPS)、またはSTING(2’,3’-cGAMP)アゴニストでは見られなかった。
【0037】
実施例2:ヒト腫瘍におけるマクロファージでのClever-1発現
種々のヒト腫瘍におけるマクロファージでのClever-1発現を調べた。
【0038】
Clever-1発現は、共通マクロファージマーカーCD68(マウス抗-ヒトCD68;ダコ社)およびM2マクロファージマーカーCD163(マウス抗-ヒトCD163;サーモ フィッシャー社)に対して評価し、加えてClever-1染色の強度も評価した。各マーカー(CD68、CD163およびClever-1)に対する陽性細胞の数は、組織マイクロアレイ(TMA)スポットから定量した。種々のヒト癌腫;神経膠腫、乳癌、大腸癌、胃癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌および外陰癌由来の組織マイクロアレイ(TMA)試料(ホルマリン固定パラフィン包埋外科的原発腫瘍検査サンプル)は、Auria Biobank(ツルク、フィンランド共和国)から得た。
【0039】
Clever-1高/低とCD163またはCD68高/低との間の比率を比較すると、がんの種類間のTMAスポットの有意な変動が図2に示されるように観察された。図2は、種々の癌腫におけるTMAスポットに対してClever-1陽性マクロファージとCD163またはCD68陽性マクロファージとの比を示す。左の棒は、CD163との比(例えば、Cle/CD163)を示し、右の棒は、CD68との比(例えば、Cle/CD68)を示す。Clever-1の分類:低=0~100および高>100陽性細胞、およびCD163/CD68染色の分類:低=0~200および高>200陽性細胞。Clever-1の最も豊富な発現は、大腸がん、外陰がん、膵臓がん、胃がん、乳がんおよびグリオーマ由来の試料において観察されたが、これらの癌腫においてさえ、Clever-1陽性である細胞がすべてではなかった。一方、前立腺がんは、Clever-1陽性腫瘍関連マクロファージが極端に低いが、個体差が生じ得る。したがって、Clever-1陽性に対する治療前の患者のスクリーニングは、本発明のClever-1陽性マクロファージを標的とする治療方法に好適な患者を選択することを可能とし、治療応答を改善し得る。
図1
図2
【国際調査報告】