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特表2022-508055サイクリン依存性キナーゼ7(CDK7)の阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】サイクリン依存性キナーゼ7(CDK7)の阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6558 20060101AFI20220112BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C07F9/6558 CSP
A61P29/00 ZNA
A61P43/00 105
A61P37/02
A61P31/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/675
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523876
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(85)【翻訳文提出日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 US2019059542
(87)【国際公開番号】W WO2020093011
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/877,189
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/915,983
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/754,398
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/927,469
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517342268
【氏名又は名称】サイロス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マリノー, ジェイソン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】チュアクイ, クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】シブラット, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】カブロ, アンジェリカ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA38
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB31
4C086ZC75
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
4H050AB22
4H050AB28
(57)【要約】
本発明は、式(I)もしくは式(Ia)の化合物、またはそれらの化学種、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、互変異性体、同位体形態および他の特定の形態を含む、様々な組成物を提供する。対象における疾患(例えば、がんなどの増殖性疾患)を処置または予防するための、方法(または使用)、および前記化合物または前記化合物を含有する薬学的に許容される組成物を含むキットも提供される。本明細書に記載されている化合物または医薬組成物の投与は、サイクリン依存性キナーゼ7(CDK7)を阻害し、これにより、対象における腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導することが予想される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I)の化合物:
【化53】
または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体もしくは同位体形態であって、式中、
は、メチルまたはエチルであり、
は、メチルまたはエチルであり、
は、5-メチルピペリジン-3-イル、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル、6-メチルピペルジン-3-イルまたは6,6-ジメチルピペリジン-3-イルであり、Rにおける1個またはそれより多くの水素原子は、重水素により必要に応じて置き換えられており、
は、-CFまたはクロロである、
化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体もしくは同位体形態。
【請求項2】
(i)Rがメチルであり、Rがメチルであるか、または(ii)Rがメチルであり、Rがエチルである、請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体もしくは同位体形態。
【請求項3】
が-CFである、請求項1または請求項2に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体もしくは同位体形態。
【請求項4】
がクロロである、請求項1または請求項2に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体もしくは同位体形態。
【請求項5】
が、5-メチルピペリジン-3-イルであり、Rにおける1個またはそれより多くの水素原子が、重水素により必要に応じて置き換えられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体もしくは同位体形態。
【請求項6】
が、5,5-ジメチルピペリジン-3-イルであり、Rにおける1個またはそれより多くの水素原子が、重水素により必要に応じて置き換えられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体もしくは同位体形態。
【請求項7】
が、6-メチルピペルジン-3-イルであり、Rにおける1個またはそれより多くの水素原子が、重水素により必要に応じて置き換えられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体もしくは同位体形態。
【請求項8】
が、6,6-ジメチルピペリジン-3-イルであり、Rにおける1個またはそれより多くの水素原子が、重水素により必要に応じて置き換えられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体もしくは同位体形態。
【請求項9】
構造式(Ia):
【化54】
または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、互変異性体または同位体形態(式中、Rは、
【化55】
である)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
(i)Rがメチルであり、Rがメチルであるか、または(ii)Rがメチルであり、Rがエチルである、請求項9に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、互変異性体もしくは同位体形態。
【請求項11】
が-CFである、請求項9または請求項10に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、互変異性体もしくは同位体形態。
【請求項12】
がクロロである、請求項9または請求項10に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、互変異性体もしくは同位体形態。
【請求項13】
前記化合物が、
【化56】
であるか、または前記化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体もしくは同位体形態である、請求項9から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物が、
【化57】
または薬学的に許容されるその塩である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
における1個またはそれより多くの水素原子が、重水素で置き換えられている、先行する請求項のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項16】
における前記水素原子のいずれも、重水素で置き換えられていない、先行する請求項のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項17】
先行する請求項のいずれかに記載の化合物の溶媒和物。
【請求項18】
前記溶媒和物が水和物である、請求項17に記載の溶媒和物。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、または請求項17もしくは請求項18に記載の溶媒和物、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物が経口投与向けに製剤化されている、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記組成物が単位剤形で製剤化されている、請求項19または請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
疾患の処置または予防における請求項19から21のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用であって、前記疾患が、それを必要とする対象における、増殖性疾患、炎症性疾患、自己炎症性疾患、自己免疫疾患または感染症である、使用。
【請求項23】
前記疾患が増殖性疾患である、請求項22に記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
前記増殖性疾患が、がん、良性新生物または病理学的血管新生である、請求項23に記載の医薬組成物の使用。
【請求項25】
前記がんが血液がんである、請求項24に記載の医薬組成物の使用。
【請求項26】
前記がんが固形腫瘍の存在により特徴付けられる、請求項24に記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
前記がんが、乳がん、GI管がん、必要に応じて結腸直腸がん、肺がん、必要に応じて小細胞肺がんもしくは非小細胞肺がん、膵臓がん、前立腺がんまたはユーイング肉腫である、請求項26に記載の医薬組成物の使用。
【請求項28】
前記乳がんが、ホルモン受容体ポジティブ(HR+)乳がん、必要に応じてエストロゲン受容体ポジティブ(ER+)またはプロゲステロン受容体ポジティブ(PR+)乳がん、ホルモン受容体ネガティブがん、トリプルネガティブ乳がん(TNBC;ER-/PR-/HER2-)またはトリプルポジティブ乳がんである、請求項27に記載の医薬組成物の使用。
【請求項29】
請求項19から21のいずれか一項に記載の医薬組成物、使用説明書、および必要に応じて、抗増殖剤、抗がん剤、免疫抑制剤および鎮痛剤から選択される第2の薬剤を含む、キット。
【請求項30】
疾患の処置または予防における請求項19から21のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用であって、前記疾患が、以下:CDK7の発現または活性の上昇;高悪性度のがん;ステロイド受容体が過剰発現する細胞表現型;トリプルネガティブ乳がん;および以前に投与された化学療法剤への抵抗性のうちの1つまたは複数を有すると判定された対象における、増殖性疾患、炎症性疾患、自己炎症性疾患、自己免疫疾患または感染症である、使用。
【請求項31】
前記以前に投与された化学療法剤が、CDK阻害剤、好ましくはCDK4/6阻害剤、またはステロイド受容体分解剤である、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記CDK阻害剤がパルボシクリブであり、前記ステロイド受容体分解剤がフルベストラントである、請求項31に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月1日出願の米国仮出願第62/754,398号;2019年7月22日出願の米国仮出願第62/877,189号;2019年10月16日出願の米国仮出願第62/915,983号および2019年10月29日出願の米国仮出願第62/927,469号の出願日の利益を主張する。これらの先願の各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)ファミリーのメンバーは、細胞増殖を調節する際に重要な役割を果たすと考えられている。本明細書に記載されている阻害剤の主要な標的であるCDK7は、サイトゾル内においてヘテロ三量複合体として存在しており、核内においてRNAポリメラーゼ(RNAP)IIのキナーゼコアである基本転写因子複合体も形成する。その複合体内部において、CDK7は、遺伝子転写を開始する際の必要な工程である、RNAP IIのC末端ドメイン(CTD)をリン酸化する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概要
本発明は、本明細書において開示されている式を有する化学的化合物(例えば、式(I)または下位属(subgenus)(例えば、式(Ia))またはその化学種(species))、ならびに様々な実施形態では、薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体または立体異性体の混合物(例えば、ラセミ混合物)、互変異性体および同位体形態(例えば、重水素化形態)である選択的CDK7阻害剤であって、該化合物の様々な構成部分(例えば、式(I)の要素R、R、RおよびR、ならびにそれらの部分可変基)が本明細書に記載されている通りである、選択的CDK7阻害剤を提供する。本発明の化合物は、トリプルネガティブ乳がんの細胞系モデルを含めた細胞系モデルにおいて、CDK2、CDK9およびCDK12の各々よりもCDK7に対する選択性;CDK7/サイクリンH複合体に対する親和性;および抗増殖活性に関して、他の比較化合物よりも驚くほどのおよび予想外の優位性があることを実証する。さらに、本発明の化合物は、ラットモデルにおいて、良好な生体利用率となることを実証する。したがって、第1の実施形態では、本発明は、式(I)もしくは(Ia)の化合物またはそれらの化学種を提供する。第2の実施形態では、本発明は、それらの塩を提供する。第3の実施形態では、本発明は、それらの溶媒和物を提供する。第4の実施形態では、本発明は、それらの立体異性体または立体異性体の混合物(例えば、ラセミ混合物)を提供する。第5の実施形態では、本発明は、それらの互変異性体を提供する。第6の実施形態では、本発明は、それらの同位体形態を提供する。本発明者らは、化合物の「特定の形態」として、該化合物のそれらの形態(すなわち、塩形態、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態を指す)を指すことがある。また、「塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態の属性、特徴または特性の組合せを現す化合物の形態も特定の形態」の意味の範囲内にある。例えば、本発明の方法および使用は、式I、I(a)の化合物もしくはそれらの化学種の立体異性体、互変異性体または同位体形態の、溶媒和されている(例えば、水和されている)塩、または塩を用いて;式I、I(a)の化合物もしくはそれらの化学種の塩、立体異性体、互変異性体または同位体形態を含有する溶媒和物(例えば、水和物)を用いて;式Iの化合物もしくはその化学種の塩もしくは溶媒和物(例えば、水和物)の形態または互変異性体もしくは同位体形態である、式Iの化合物またはその化学種の立体異性体を用いて;式I、I(a)の化合物もしくはそれらの化学種の塩もしくは溶媒和物(例えば、水和物)の形態または立体異性体もしくは同位体形態である、式I、I(a)の化合物もしくはそれらの化学種の互変異性体を用いて;あるいは、式I、I(a)の化合物もしくはそれらの化学種の塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体または互変異性体である、式I、I(a)の化合物もしくはそれらの化学種の同位体形態を用いて行うことができる。これらの特定の形態のいずれも、薬学的に許容され得る、および/または薬学的に許容される組成物内に含まれる(例えば、経口投与向けに製剤化されている)。例えば、化合物の塩は、溶媒和され得る;立体異性体は、溶媒和され得る;互変異性体は、塩形態であり得、かつ/または同位体を含むことができるなどである。したがって、本発明は、特定の形態として、前記化合物の塩それ自体、ならびに前記化合物の立体異性体、互変異性および同位体形態の塩を包含する。同様に、および疑念がある場合、所与の化合物またはその特定の形態のどちらか一方は、溶媒和され得るか、または同位体形態として作製され得る。例えば、本発明は、特定の形態として、前記化合物の溶媒和物それ自体、およびその塩、立体異性体、互変異性または同位体形態の溶媒和物を包含する。本発明は、前記化合物の同位体形態それ自体、およびその塩、溶媒和物、立体異性体または互変異性の同位体形態を包含する。これらの組成物(例えば、化合物、立体異性体、互変異性体または同位体形態の塩;化合物、その立体異性体、互変異性体または同位体形態の溶媒和物;化合物の塩、溶媒和物、立体異性体または異性体の同位体形態など)は、本明細書に記載されている通り有用な本発明の組成物を構成する。したがって、以下にさらに記載されている通りに製剤化されているもののいずれかを含めた、本発明の医薬組成物(例えば、経口投与向け)は、本明細書に記載されている化合物、またはその特定の形態のいずれか1つまたは複数を含むことができる。一実施形態では、本発明は、構造式(I)の化合物:
【化1】
または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体もしくは同位体形態(式中、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル、6-メチルピペルジン-3-イル(6-methylpiperdin-3-yl)または6,6-ジメチルピペリジン-3-イルであり、Rにおける1個またはそれより多くの水素原子は、重水素により必要に応じて置き換えられており、Rは、-CFまたはクロロである)を特徴とする。より詳細には、式(I)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体、同位体形態または他の特定の形態において、(i)Rはメチルであり、Rはメチルであるか、または(ii)Rはメチルであり、Rはエチルである。他の実施形態では、Rはエチルであり、Rはエチルである。これらの実施形態のうちのいずれか1つの一部の態様では、Rは-CFである。これらの実施形態のうちのいずれか1つの他の態様では、Rはクロロである。前記の実施形態のうちのいずれかの様々な態様では、Rは、5-メチルピペリジン-3-イルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イルであり、Rは、6-メチル-ピペルジン-3-イル(6-methyl-piperdin-3-yl)であるか、またはRは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イルであり、Rにおける1個またはそれより多くの水素原子は、重水素により必要に応じて置き換えられている。式(I)の化合物は、構造式(Ia):
【化2】
を有することができ、本発明は、式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)、互変異性体、同位体形態または他の特定の形態を包含し、Rは、
【0004】
【化3】
である。より詳細には、式(Ia)の化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、互変異性体、同位体形態または他の特定の形態において、(i)Rはメチルであり、Rはメチルであるか、または(ii)Rはメチルであり、Rはエチルである。他の実施形態では、Rはエチルであり、Rはエチルである。一部の実施形態では、式(Ia)の化合物またはその特定の形態において、Rは-CFである。他の実施形態では、式(Ia)の化合物またはその特定の形態において、Rはクロロである。一部の実施形態では、式(I)または(Ia)の化合物は、
【化4】
であり、本発明は、上記の3つの化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)、互変異性体、同位体形態または他の特定の形態を包含する。一実施形態では、前記化合物は、
【化5】
または薬学的に許容されるその塩である。本発明はまた、上記の化合物の溶媒和物(例えば、水和物)、互変異性体、同位体形態または他の特定の形態を包含する。同位体形態では、Rにおける1個またはそれより多くの水素原子は、重水素で置き換えられている。他の実施形態では、化合物の水素原子のいずれも(例えば、Rにおける水素原子のいずれも)、重水素で置き換えられていない。他の実施形態では、本発明は、式(I)、式(Ia)の化合物またはそれらの化学種の溶媒和物(例えば、水和物)を特徴とし、要素R、R、RおよびRは、本明細書に記載されている通りである。他の実施形態では、本発明は、式(I)、式(Ia)の化合物またはそれらの化学種の塩の溶媒和物(例えば、水和物);式(I)、式(Ia)の化合物またはそれらの化学種の互変異性体の溶媒和物(例えば、水和物);および式(I)、式(Ia)の化合物またはそれらの化学種の異性体の溶媒和物(例えば、水和物)を特徴とする。これらの実施形態のいずれかにおける溶媒和物は、薬学的に許容され得、また、以下に記載されている通り製剤化されているもののいずれかを含めて、医薬組成物内に組み込まれ得る(例えば、経口投与向け)。
【0005】
別の態様では、本発明は、医薬組成物を特徴とし、本発明者らは、上記の化合物(すなわち、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態(例えば、薬学的に許容される塩))、および薬学的に許容される担体を含めた、医薬製剤と称することもできる。本発明の医薬組成物は、経口投与向けに製剤化され得、そして/または単位剤形(例えば、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの塩を含む)に製剤化され得る。
【0006】
別の態様では、本発明は、疾患の処置または予防における、本明細書に記載されている医薬組成物の方法または「使用」であって、疾患が、それを必要とする対象における、増殖性疾患、炎症性疾患、自己炎症性疾患、自己免疫疾患または感染症(各々は、本明細書に記載されている特定の疾患を包含する;例えば、本明細書において提供される定義を参照されたい)。処置の方法は、医薬組成物を投与する工程を含むことができ、本発明の組成物の「使用」は、医薬の調製におけるものであり得る。一実施形態では、疾患は、増殖性疾患(例えば、がん、良性新生物または病理学的血管新生)である。例えば、がんは、血液がん(例えば、白血病(例えば、AML)またはリンパ腫)であり得る。他の実施形態では、がんは、固形腫瘍(例えば、乳房(例えば、TNBC、HR+または本明細書に記載されている他のタイプの乳がん)、GI管(例えば、CRC)、肺(例えば、NSCLCまたは本明細書に記載されている他のタイプの肺がん)、膵臓または前立腺における)の存在を特徴とする。他の実施形態では、がんは、卵管がん;卵巣がん(例えば、高悪性度漿液性卵巣がん、上皮性卵巣がんまたは明細胞卵巣がん);中枢神経系のがん(例えば、神経膠腫);黒色腫またはユーイング肉腫である。他の実施形態では、がんは、膵臓がん;原発性腹膜がん;前立腺がん;網膜芽細胞腫;または頭頸部の扁平上皮細胞がんである。一実施形態では、本明細書に記載されている様々な方法および使用(例えば、以下に限定されないが、まさに記載されているもの、炎症性疾患、自己炎症性疾患、自己免疫疾患または感染症を含めた増殖性疾患の処置または予防において)は、以下のうちの1つまたは複数:高悪性度のがん(例えば、高悪性度漿液性卵巣がん(HGSOC)または乳がん);ステロイド受容体が存在し、そして/または過剰発現しているか、そうでない場合、異常である細胞表現型;トリプルネガティブ乳がん;および/または以前に投与された化学療法剤(例えば、ベネトクラックスなどのBcl-2阻害剤、BET阻害剤、パルボシクリブまたはリボシクリブなどのCDK4/6阻害剤、アルボシジブなどのCDK9阻害剤、FLT3阻害剤、トラメチニブ、コビメチニブまたはビニメチニブなどのMEK阻害剤(黒色腫を処置する際に、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態との組合せに有用である)、オラパリブまたはニラパリブなどのPARP阻害剤、アルペリシブ、アピトリシブ(GDC-0980)、イデラリシブ、コパンリシブ、デュベリシブ、ピクチリシブまたはカペシタビンなどのPI3K阻害剤(例えば、HR+乳がん、TNBC、リンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫または非ホジキンリンパ腫)または白血病(例えば、CLL)を処置する際に式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態との組合せに有用である)、PI3K/AKT/mTOR経路の阻害剤(例えば、ゲダトリシブ)、シスプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、カルボプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン(JM216)または四硝酸トリプラチンなどの白金をベースとする治療剤(例えば、SCLCなどの肺がんまたはCRCなどのGI管のがんを処置する際に、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態との組合せに有用である)、タモキシフェン、ラロキシフェンまたはトレミフェンなどのSERM、ステロイド受容体分解剤(例えば、フルベストラントなどのSERD)、またはエストロゲンの産生を阻害する薬剤(例えば、アナストロゾール(Arimidex(登録商標)として入手可能)、エキセメスタン(Aromasin(登録商標)として入手可能)およびレトロゾール(Femara(登録商標)として入手可能)などのアロマターゼ阻害剤に対する抵抗性を有すると判定された(例えば、対象から得られた疾患細胞の生体試料において判定される)対象に適用される。これらの薬剤のうちの1つまたは複数を含む併用療法(例えば、合計で2種または3種の投与される薬剤の場合)もまた、本発明の範囲内にあり、本明細書においてさらに論じられる。例えば、一実施形態では、本方法は、パルボシクリブまたはリボシクリブなどのCDK4/6阻害剤による処置に抵抗性のがん(例えば、乳がん(例えば、HR+/ER+乳がん))を処置するための、フルベストラントなどのSERD、またはレトロゾールなどのアロマターゼ阻害剤と組み合わせて、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態の使用またはその投与を包含する。一実施形態では、本方法は、ダブラフェニブ、ベムラフェニブまたはエンコラフェニブとのさらなる組合せに使用され得る、トラメチニブなどのMEK阻害剤と組み合わせた、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態の使用またはその投与を包含する。
【0007】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されている医薬組成物または医薬製剤、および使用説明書、および必要に応じて、以下に具体的に開示されているもののいずれか1つまたは複数を含めた、抗増殖剤、抗がん剤、免疫抑制剤および鎮痛剤から選択される「第2の」薬剤を含むキットを特徴とする。本キットは、本明細書に記載されている化合物またはその特定の形態(例えば、薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態)、または該化合物、その塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体もしくは同位体形態を含む組成物(例えば、本明細書に記載されている薬学的に許容される組成物または製剤)を含む容器を含むことができる。キットの任意の実施形態では、使用説明書が含まれ得、その使用は、本明細書に記載されている疾患(例えば、血液がん、固形腫瘍(例えば、乳房、GI管(例えば、CRC)、肺(例えば、NSCLC)、膵臓または前立腺における)の存在により特徴付けられるがんまたはユーイング肉腫)の処置における使用であり得る。
【0008】
本発明の薬学的に許容される組成物は、本発明の組成物(例えば、本明細書に記載されている化合物またはその特定の形態(例えば、その薬学的に許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、互変異性体または同位体形態(または、式(I)の化合物の塩の溶媒和物などの別の特定の形態))および薬学的に許容される担体を含む。ある特定の実施形態では、本医薬組成物は、治療有効量または予防的有効量の、式(I)の化合物または下位属(例えば、式(Ia))もしくはその化学種、またはその特定の形態(例えば、薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体、同位体形態または他の特定の形態)を含む。本医薬組成物は、以下にさらに記載されている、増殖性疾患または感染症を処置および/または予防するのに有用であり得る。本発明はまた、CDK7の過剰発現および/または活性異常に関連する疾患の予防および/または処置のための治療剤として、本明細書に記載されている化合物および他の組成物(例えば、特定の形態のいずれか1つ、または本発明の化合物またはその特定の形態を含有する医薬組成物)を作製する方法および使用する方法を提供する。処置に適した疾患は、本明細書に記載されている(例えば定義を参照されたい)増殖性疾患(例えば、がん(例えば、乳がん、白血病または他の血液がん、黒色腫、多発性骨髄腫(MM)、卵巣がん、GI管(例えば、CRC)または肺(例えば、NSCLC)のがん、膵臓がん、前立腺がんまたはユーイング肉腫)、良性新生物および病理学的血管新生)、炎症性疾患、自己炎症性疾患、自己免疫疾患および感染症を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、CDK2、CDK7、CDK9およびCDK12に対する、表示化合物(本発明の3つの化合物および4つの比較物)の阻害定数および解離定数および選択性を示す表である。
【0010】
図2図2は、パルボシクリブ抵抗性HR+BC PDXモデルST1799(以下の実施例においてさらに記載されている)における、経時的(日数)な腫瘍体積(mm)の変化を示す線グラフである。
【0011】
図3図3は、パルボシクリブ抵抗性およびフルベストラント抵抗性HR+BC PDXモデルST941(以下の実施例においてさらに記載されている)における、経時的(日数)な腫瘍体積(mm)の変化を示す線グラフである。
【0012】
図4図4は、TNBC(BR5010;上部)、小細胞肺がん(LU5178;中央部)および卵巣がん(OV15398;下部)のPDXモデルにおける、経時的(日数)な腫瘍体積(mm)の変化を示す3つの線グラフを示すパネルである。動物は、実施例10に記載されている化合物101により処置した。ビヒクル処置(対照)動物から得られたデータは、黒丸(各グラフにおける上側のトレース)により表されている。化合物101をQDで10mg/kgを投与された、TNBCをモデル化した動物からのデータは、黒正方形によって上部のグラフに表されている。BIDで5mg/kgの用量は、三角形により表されている。中央部および下部のグラフ中の三角形はまた、化合物101により処置されたSCLCおよび卵巣がんの動物モデルから得られたデータを表す。
【0013】
図5-1】図5は、各々が実施例11に記載されている通りに生成された、表示されているPDXモデルにおける腫瘍成長を示す線グラフのパネルおよび対応するアイソボログラムである。化合物101は、示されている濃度において、表示されている第2の薬剤と組み合わせて、細胞に適用した。
図5-2】図5は、各々が実施例11に記載されている通りに生成された、表示されているPDXモデルにおける腫瘍成長を示す線グラフのパネルおよび対応するアイソボログラムである。化合物101は、示されている濃度において、表示されている第2の薬剤と組み合わせて、細胞に適用した。
【0014】
図6図6は、実施例12に記載されている化合物101で処置したPDXモデルにおいて収集したデータから生成したグラフのパネルである。正方形を伴う黒色線は、ビヒクル処置動物を表す。灰色線は、化合物101処置動物を表す。エラーバーは、SEMである。BID=1日2回;CNV=コピー数多型;MPK=体重1kgあたりのmg;PO=経口;QD=1日1回;RB=網膜芽細胞腫;SCLC=小細胞肺がん;TNBC=トリプルネガティブ乳がん。グラフ中の点線は、処置の最後の日を表す。
【0015】
図7図7は、実施例12に記載されている通りに研究した、12のPDXモデルのTGI値および遺伝状態を要約した表である。表中のモデルは、研究の終了時における、最低応答に対する最高応答に基づいて分類している。BID、CNV、RB、SCLCおよびTNBCは、図6に関して、および本明細書のどこかに定義されている通りである。疑念がある場合、CCNE1=サイクリンE1;CDKN2A=サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A、EoS=研究の終了、EoT=処置の終了、HGSOC=高悪性度漿液性卵巣がん、OVA=卵巣がん、およびTGI=腫瘍成長阻害。LU5210モデルの場合、組織は、RB経路遺伝学の確認に利用可能ではなかった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
以下の定義は、特に文脈が明白に示さない限り、本明細書に記載されている組成物、方法および使用にあてはまり、必要な場合または望ましい場合、特許請求の範囲が定義の範囲内の文言を含むよう修正されてもよいことを理解すべきである。さらに、この定義は、定義されている用語の言語上および文法上の変化形(例えば、用語の単数形および複数形)にあてはまり、一部の言語上の変化形は、特に、以下に明記されている(例えば、「投与」と「投与すること」および「生物活性な」と「生物活性」)。化学元素は、Periodic Table of the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 75th Edに従って特定される。さらに、有機化学の一般原理は十分に確立されており、当業者は、所望の場合、Organic Chemistry by Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999; Smith and March, March’s Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001; Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989;および Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987を参考にすることができる。
【0017】
値を参照して使用する場合、用語「約」は、明記した値のプラスまたはマイナス10%となる、任意の値または値の範囲(例えば、明記されている値のプラスまたはマイナス1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%の範囲内)を表す。例えば、約10mgの用量は、10mgより10%少ない任意の用量(9mg)、10mgより10%多い任意の用量(11mg)、およびそれらの間の任意の用量または投与量範囲(例えば、9~11mg;9.1~10.9mg;9.2~10.8mgなど)を意味する。明記した値を超えることができない(例えば、100%)場合、「約」は、明記した値よりも最大で10%(これを含む)小さい任意の値または範囲を表す(例えば、約100%の純度は、90%~100%純粋であることを意味する(例えば、95%~100%純粋、96%~100%純粋、97%~100%純粋などである))。値を測定する機器または技法が、10%を超える誤差範囲を有する事象では、所与の値は、それらがそのような機器または技法に関する誤差の範囲内にどちらもある場合、明記されている値とほぼ同じになる。
【0018】
用語「投与」および「投与すること」などのその変化形は、本明細書に記載されている化合物(例えば、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種もしくはそれらの特定の形態(例えば、薬学的に許容されるその塩)または1つもしくは複数の追加剤/第2の薬剤)、または化合物を含む組成物を対象(例えば、ヒト患者)または系(例えば、ex vivoで維持される細胞または組織をベースとする系)に投与することを指す。投与の結果として、前記化合物または該化合物を含有する組成物は、対象または系に導入される。本発明の組成物および併用療法に有用な第2の薬剤に加えて、それらのいずれもが化合物であり得る、ポジティブ対照、ネガティブ対照およびプラセボとして使用される物品もまた、「投与される」ことができる。当業者は、対象または系に投与するために、適切な状況で利用することができる、様々な経路に気付く。例えば、投与経路は、経口であってもよく(すなわち、医薬組成物を嚥下することによる)、または非経口であってもよい。より詳細には、投与経路は、気管支(例えば、気管支点滴による)、口による(すなわち、経口)、皮膚による(これは、真皮への局所適用または皮内、皮下もしくは経皮投与であり得るか、またはこれらを含むことができる)、胃内または腸内(すなわち、それぞれ、胃または腸に直接)、髄内、筋肉内、鼻内、腹腔内、鞘内、腫瘍内、静脈内(または動脈内)、心室内、特定の臓器(例えば、肝内)、粘膜(例えば、口内、直腸、舌下または膣)、皮下、気管(例えば、気管内点滴による)、または眼(例えば、局所、結膜下または硝子体内)への適用または注入によるものであり得る。投与は、断続的投与(すなわち、様々な時間により間隔が設けられた用量)、および/または定期的投与(すなわち、一般的な期間(例えば、多くの時間毎に、毎日(例えば、1日1回の経口投与)、毎週、1週間あたり2回など))により間隔が設けられた用量)を含むことができる。他の実施形態では、投与は、選択した時間の間(例えば、約1~2時間)の連続投与(例えば、灌流)を含むことができる。
【0019】
用語「血管新生」とは、新しい血管の形成および成長を指す。正常な血管新生は、成長中、および創傷治癒の状況では、健常な対象に起こる。しかし、がん、糖尿病(特に、それらに伴う失明への進行)、加齢黄斑変性、関節リウマチおよび乾癬を含めた多数の様々な疾患状態に罹患している患者は、過度なおよび有害な血管新生を起こす。例えば、血管新生が、罹患細胞(例えば、腫瘍細胞)を支持する、正常組織(眼内の組織)を破壊する、または腫瘍転移を促進する血管を生じる場合、血管新生は有害となる。本発明者らは、「病理学的血管新生」として、疾患状態を伴い、そして/またはこれを促進する血管新生を指すことがある。
【0020】
2つの事象、2つの実体、または1つの事象と1つの実体は、第1のものの1つまたは複数の特徴(例えば、その存在、レベルおよび/または形態)が、第2のものの特徴と相関する場合、互いに「関連している」。例えば、第1の実体(例えば、酵素(例えば、CDK7))、遺伝子発現プロファイル、遺伝子シグネチャ(すなわち、遺伝子発現の特異的な特徴パターンを有する、細胞における遺伝子の単一群または複合群)、代謝産物または事象(例えば、骨髄浸潤))は、ある事象(例えば、特定の疾患の発病または進行)の存在、レベルおよび/または形態が、疾患(例えば、本明細書において開示されているがん)の出現率、その重症度および/または感受性と相関する場合、上記の事象と関連する。関連性は、通常、関連集団全体にわたって評価される。2つまたはそれより多くの実体が、直接、または間接的に相互作用する場合、それらは互いに物理的に「関連する」ことになり、その結果、これらの実体は、所与の状況(例えば、生理的条件下に維持されている細胞内(例えば、細胞培養物内)または医薬組成物内)において互いに物理的に近接し、そして/またはそのような状態にある。互いに物理的に関連する実体は、互いに共有結合により連結され得るか、または例えば、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、磁力またはそれらの組合せによる非共有結合により結合され得る。式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態(例えば、薬学的に許容される塩)は、CDK7と非共有結合により結合し得る。
【0021】
用語「自己免疫疾患」とは、身体に通常、存在する物質および組織に対する不適切な免疫応答に起因する疾患を指す。より簡単に述べると、対象の免疫系は、身体のある部分を病原体と間違え、対象自身の細胞を攻撃する。この攻撃は、ある臓器に限定されることがあり(例えば、自己免疫甲状腺炎における)、または様々な場所の特定の組織を含むことがある(例えば、グッドパスチャー病は、肺と腎臓の両方における基底膜に影響を及ぼす)。自己免疫疾患は、以下に限定されないが、ANCA関連脈管炎(例えば、ウェゲナー肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎)、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫甲状腺炎、心筋症、クローン病、皮膚筋炎または多発筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー病、ギラン-バレー病、橋本甲状腺炎、ライム関節炎、リンパ節炎、壊死性血管炎、結節性動脈周囲炎、乾癬、尋常性天疱瘡、乾癬性関節炎、ライター症候群、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症、潰瘍性大腸炎およびぶどう膜炎を含む。ある自己免疫疾患を有する患者はまた、深刻な炎症(例えば、関節リウマチおよびSLE)を起こし、したがって、一部の疾患は、自己免疫疾患または炎症性疾患のどちらか一方と称されるのが適切であり得る。
【0022】
「定期的な発熱症候群」とも称されることがある「自己炎症性疾患」とは、血液検査における再発性(一過性)発熱および全身性炎症の証拠により特徴付けられる疾患を指す(例えば、Ciccarelli et al., Curr. Med. Chem. 21(3):261-269, 2013を参照されたい)。炎症のエピソードは、強く、発疹または関節の腫れを伴う恐れがあり、患者は、アミロイドーシス、すなわち重要な臓器における血液タンパク質の致死に至る可能性がある蓄積のリスクにある。これらの疾患は、自己免疫疾患とは区別され、自己反応性Tリンパ球または自己抗体を含まない。それらは、以下に限定されないが、ベーチェット病、ブラウ症候群、慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)および滑膜炎ざ瘡膿疱症骨化過剰症骨炎(SAPHO)症候群、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)、インターロイキン-1受容体アンタゴニストの欠乏(DIRA)、家族性地中海熱(FMF)、NLRP12関連性自己炎症性障害、新生児期発症多系統炎症性疾患(NOMID)、マジード症候群、メバロン酸キナーゼ欠損症に関連する周期熱(高免疫グロブリンD症候群)、周期熱、口内炎、咽頭炎およびアデノパシー症候群(PFAPA)、化膿性関節炎壊疽性膿皮症ざ瘡(PAPA)症候群、シュニッツィエ症候群、スウィート症候群、全身型若年性特発性関節炎(sJIA)またはスティル病および成人発症スティル病(AOSD)、ならびに腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS)を含む。
【0023】
用語「結合すること」およびその変化形(「結合した」および「結合する」など)は、特に、2つまたはそれより多くの実体を参照して使用される場合、実体(例えば、医薬組成物内の化合物および薬剤、または細胞内の化合物およびその標的(例えば、CDK7))の共有結合性または非共有結合性結合を指す。「直接」結合は、2つの実体が物理的に互いに接触する場合に起こる(例えば、共有結合性または非共有結合性化学結合による)一方、間接結合は、複数の実体の少なくとも1つが1つの中間実体に物理的に接触し、この中間実体が、上記の複数の実体を互いに物理的に近接させる場合(例えば、複合体内で)に起こる。結合は、様々な状況(例えば、実体が完全にまたは一部が単離されるアッセイにおいて、または一層複雑な、天然に存在するまたはモデル系(例えば、組織、臓器または細胞において、in vivoまたはex vivoで))において評価され得る。結合に関するアッセイは、生物活性を評価することができる(例えば、本明細書に記載されている化合物が、標的(例えば、CDK7)の生物活性を阻害する能力)。
【0024】
用語「生体試料」とは、目的の生物学的供給源(例えば、組織または生物(例えば、動物またはヒト患者)または細胞培養物)から取得または誘導される試料を指す。例えば、生体試料は、本発明の方法により診断および/または処置される疾患(または、動物モデルの場合、ヒト患者におけるそのような疾患のシミュレーション)に罹患している個体(例えば、患者または動物モデル)から、または参照もしくは対照(または、その試料が、参照標準または対照集団に寄与する)となる役割を果たすことに役立つ個体から得られる試料であり得る。生体試料は、生物細胞、組織もしくは流体、またはそれらの任意の組合せを含有することができる。例えば、生体試料は、腹水;血液;血液細胞;体液(それらのいずれも、細胞(例えば、腫瘍細胞(例えば、少なくとも血液またはリンパ液管に見出される、血中循環腫瘍細胞(CTC)))を含んでもよく、またはこれを除外してもよい);骨髄またはその構成成分(例えば、造血細胞、骨髄脂肪組織または間質細胞);脳脊髄液(CSF);糞便;フレクチュアル流体(flexural fluid);自由遊走核酸(例えば、循環性腫瘍DNA);婦人科医学的流体;毛髪;免疫浸潤物質;リンパ液;腹膜流体;血漿;唾液;皮膚またはその構成部分(例えば、毛包);痰;外科的に得られた試験体;皮膚または粘膜(例えば、鼻、口または膣内)から掻き取ったまたは拭いとった組織;組織または微細ニードル生検試料;尿;乳管洗浄または気管支肺胞洗浄などの洗液または洗浄液;または他の体液、組織、分泌物および/または排出液であり得るか、またはこれらを含むことができる。生体試料は、脾臓およびリンパ節を含めた、多数の組織および臓器に見出される、NK細胞および/またはマクロファージなどのがん細胞または免疫細胞を含んでもよい。体液(例えば、血液、CSF、リンパ液、血漿または尿)の試料またはこれから得られる試料は、腫瘍細胞(例えば、CTC)および/または自由遊走核酸もしくは細胞不含核酸を含んでもよい。試料中の細胞(例えば、がん細胞)は、処置が意図されている個々の患者から得られてもよい。試料が得られる形態で使用される試料は、「一次」試料と称することができ、さらに操作された試料(例えば、試料の1つまたは複数の構成成分を除去することによる)は、「二次」試料または「処理済み」試料と称されることがある。このような処理済み試料は、特定の細胞タイプ(例えば、腫瘍細胞であり得るCDK7発現細胞)、細胞の構成成分(例えば、膜の画分)または細胞物質(例えば、CDK7、DNA、またはCDK7をコードすることができる、および増幅が施され得るRNA(例えば、mRNA)を含めた1種または複数の細胞タンパク質)を含有するか、またはそれに富むことがある。
【0025】
用語「生物活性な」は、生物学的系またはそのモデル(例えば、ヒト、他の動物、もしくは細胞/組織培養物に維持される系、またはin vitro)において、観察可能な生物学的作用または結果を生じる薬剤(例えば、本明細書に記載されている化合物)を記載する。このような薬剤の「生物活性」は、薬剤と標的(例えば、サイクリン依存性キナーゼ(例えば、CDK7))との間の結合時に現れることができ、生物学的経路、事象または状態(例えば、疾患状態)のモジュレート(例えば、誘発、増強または阻害)をもたらすことができる。例えば、薬剤は、細胞活性(例えば、免疫応答の刺激または相同組換え修復の阻害)、細胞周期のある期において消費される時間(これは、細胞増殖の速度を改変することがある)、または細胞死をもたらすアポトーシスまたは別の経路の活性化の開始(これは、腫瘍退縮をもたらすことがある)をモジュレートすることができる。生物活性、および必要に応じてその程度は、活性または活性に関連する任意の事象(例えば、細胞成長の阻害または腫瘍退縮)の所与の直後または下流の生成物のいずれかを検出するための公知の方法を使用して評価することができる。
【0026】
用語「がん」は、生物細胞が、疾患を有する患者に有害となる程度に細胞増殖の制御を失うことにより特徴付けられる異常な成長表現型を示す疾患を指す。がんは、がんの元々の組織のタイプ(組織学的タイプ)、および/またはがんが最初に発生した身体の原発部位によって分類することができる。組織学的タイプに基づいて、がんは、一般に、6つの主要なカテゴリー:癌腫;肉腫;骨髄腫;白血病;リンパ腫;および複合タイプに分類される。本明細書に記載されている通りに処置されるがんは、これらのタイプのいずれか1つであり得、前がん性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性および/または非転移性の細胞を含むことができる。悪性腫瘍または悪性病変を有する患者は、がんを有する。本開示は、その教示が特に関連し得るある特定のがんを具体的に表し、これらのがんの1つまたは複数は、固形腫瘍によって、または血液がん(例えば、本明細書に記載されているタイプ)としても知られることがある血液学的腫瘍により特徴付けられ得る。すべてのがんが、固形腫瘍として現れるわけではないが、本発明者らは、いかなる悪性細胞も指すよう、用語「がん細胞」および「腫瘍細胞」を互換的に使用することがある。
【0027】
用語「担体」とは、希釈剤、アジュバント、賦形剤または他のビヒクルを指し、これらと共に活性医薬剤(例えば、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態)が投与向けに製剤化される。担体は、医薬組成物に組み込まれる量および方法では、対象に非毒性であり、製剤化される活性成分(例えば、前記化合物または他のその特定の形態)の生物活性を破壊しない。担体は、水(例えば、注射用水)、または天然油もしくは合成油(例えば、石油をベースとする油または鉱物油、動物油または植物油(例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、ゴマ油またはキャノーラ油))などの滅菌液体または滅菌可能な液体であり得る。担体はまた、固体;1つまたは複数の固体構成成分(例えば、塩、例えば「通常の生理食塩水」)を含む液体;固体の混合物;または液体の混合物であり得る。
【0028】
用語「同等」とは、互いに同一ではないが、それらの間で比較することが可能になる程、十分に類似しており、その結果、観察される差異または類似性に基づいて結論が妥当に導き出され得ると当業者が認識する、2つまたはそれより多くの物品(例えば、薬剤、実体、状況、一組の条件など)を指す。一部の実施形態では、同等な一組の条件、状況、個体(例えば、個々の患者または対象)または集団は、複数の実質的に同一の特徴、および様々な特徴の1つまたは少数のものにより特徴付けられる。当業者は、文脈では、任意の所与の状況において、2つまたはそれより多くの物品を同等とみなすために、どの程度の同一性が必要であるかを理解する。例えば、2つの物品が、十分な数および実質的に同一の特徴のタイプを共通して有し、物品を用いて得られた結果またはこれを用いて観察された現象のいかなる差異も、様々なそのような特徴の変化により引き起こされているか、またはそのような変化を示すという合理的に結論付けることが妥当である場合に、2つの物品は互いに同等である。一部の実施形態では、同等な物品は、「対照」として働く。例えば、「対照対象/集団」は、処置される個体/集団と同じ疾患を罹患している未処置(またはプラセボ処置)個体/集団であり得る。
【0029】
用語「併用療法」とは、単一疾患(例えば、がん)を処置するために、対象が、2つまたはそれより多くの治療レジメン(例えば、2種またはそれより多種の治療剤(例えば、3種の薬剤))にさらされるそのような状況を指す。2種またはそれより多種のレジメン/薬剤は、同時にまたは逐次に投与されてもよい。第1の薬剤の用量および第2の薬剤の用量は、同時に投与される場合、ほぼ同じ時間に投与され、こうして、両方の薬剤が同時に患者に対して効果を発揮するか、または第1の薬剤が、期間の重なる間に、第2の薬剤よりも速く、もしくは遅く作用する。第1の薬剤および第2の薬剤の用量が、逐次に投与される場合、それらは、時間内で分けられ、その結果、それらは、患者に同時に効果を発揮することがあるか、または発揮しないことがある。例えば、第1および第2の薬剤は、同じ時間または同日内に投与されてもよく、この場合、第1の薬剤は、第2の薬剤が投与される際に、依然として活性である可能性が高い。代替的に、第1の薬剤と第2の薬剤の投与の間に、かなり一層長い期間が経過することがあり、その結果、第1の薬剤は、第2の薬剤が投与される際にもはや活性でない(例えば、不応性がんを処置する際に行うことができる通り、第1のレジメンの全用量は、投与の同一経路または異なる経路によって、第2のレジメンの任意の用量の投与前に投与される)。明確にするため、併用療法は、個々の薬剤が、単一組成物で一緒に、または同時に投与されることを必要とするものではないが、一部の実施形態では、本発明の化合物および本明細書に記載されている第2の薬剤を含めた、2種またはそれより多種の薬剤が、同一期間内に投与されてもよい(例えば、同じ時間内、同日内、同週内または同月内)。
【0030】
用語「化合物」は、化学的化合物(例えば、本明細書において図示されている構造式によって表される化合物、その下位属(例えば、式(Ia))、またはその化学種、およびその任意の特定の形態)を意味する。任意の所与の本明細書に記載されている化合物は、生物活性(例えば、CDK7の阻害剤)であり得、治療的使用および予防的使用を含めた、本明細書に記載されている目的で利用することができる(例えば、治療的有効量または予防有効量で医薬組成物に含まれている場合、患者に投与される場合、医薬もしくはキットに組み込まれる場合、またはそうではない場合、本明細書に記載されている通り使用される場合)。同一分子式を有するが、それらの原子の空間での配列が異なる2つの化合物は、「立体異性体」と呼ばれる。任意の参照されている構造または図示されている構造の立体異性体は、鏡像異性体であり得、これは、互いに重なり合わない鏡像、または互いに鏡像ではないジアステレオマー(例えば、シス/トランス異性体および立体構造異性体)である。これらは、各不斉中心に対してRおよびS立体配置、ZおよびE二重結合異性体、ならびにZおよびE立体構造異性体を含む。単一のタイプ立体化学異性体、ならびに前記化合物の鏡像異性体、ジアステレオマー異性体および幾何(または立体構造)異性体混合物を含有する組成物が、本発明の範囲内にある。鏡像異性体は、その不斉中心の絶対配置により特徴付けることができ、CahnおよびPrelogのRおよびS配列規則によって、または分子が、右旋性または左旋性(すなわち、それぞれ、(+)または(-)-異性体)と表される偏光面を回転するという様式によって記載される。キラルな化合物は、個々の鏡像異性体のいずれかとして、またはその混合物として存在することができる。鏡像異性体の等量割合を含有する混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0031】
用語「剤形」、「製剤」および「調製物」は、本発明の化合物またはその塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体、同位体形態もしくは他の特定の形態を含有する組成物、または本明細書に記載されている使用に好適な他の生物学的活性成分または治療活性成分(例えば、本明細書に記載されている併用療法に有用な追加剤/第2の薬剤のうちの1種または複数)を指す。用語「単位剤形」とは、本発明の化合物またはその塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体、同位体形態または他の特定の形態の、またはこれらを含有する物理的に個別の単位を指し、これらのいずれも、薬学的に許容され得る。1つまたは複数の追加剤/第2の薬剤はまた、単位剤形で、製剤化することができる、投与することができる、または本明細書に記載されている通り使用することができる。このような単位はそれぞれ、所定量の活性成分を含有することができ、この所定量は、単回用量(すなわち、治療的レジメンまたは予防的レジメンの部分として投与される場合、所望の転帰と相関することが予想される量)またはその分割量(例えば、単位剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤)は、単位用量の場合に処方される量の2分の1を含有することができ、この場合、患者は、2個の単位剤形(すなわち、2個の錠剤または2個のカプセル剤)を服用する)の場合に処方される量であり得る。当業者は、特定の対象に投与される組成物または薬剤の総量は、1名または複数の主治医により決定され、複数の単位剤形(例えば、本明細書に記載されている)の投与を含んでもよいことを認識する。
【0032】
用語「投与レジメン」とは、対象に投与される、または対象向けに処方される単位剤形を指し、通常、ある期間によって間隔が設けられた1回より多くの用量(例えば、本明細書に記載されている)を含む。投与レジメン内に投与される剤形は、同じ単位用量の量または異なる量であり得る。例えば、投与レジメンは、第1の投与量での第1の用量と、その後の第1の投与量と同じまたはこれと異なる第2の投与量での1つまたは複数の追加の用量を含む。
【0033】
「有効量」とは、そのために投与される所望の効果を生じる薬剤(例えば、本発明の化合物または「第2の」薬剤に関わりなく、本明細書に記載されている化合物)の量を指す。一部の実施形態では、この用語は、疾患を処置するため、治療的投与レジメンに準拠し、疾患に罹患しているまたは疾患に罹患しやすい集団に投与する際の十分な量を指し、この場合、有効量は、「治療有効量」とも称されることもある。当業者は、治療有効量は、任意の特定の個体(すなわち、任意の所与の個々の患者において)において処置の成功を実現しないことがあることを理解する。むしろ、治療有効量は、このような処置を必要とする患者の集団に投与した場合、多数のまたはある程度の数の対象における所望の薬理学的応答を実現する。薬剤が予防のために投与される場合、「予防有効量」は、疾患の兆候および/または症状を示さない集団における、多数のまたはある程度の数の対象における所望の結果(すなわち、疾患の1つもしくは複数の兆候または症状の発病の遅延)を実現する。有効量を述べる場合、投与される薬剤の量、または投与後の1つまたは複数の特定の組織(例えば、疾患により罹患している組織)または流体(例えば、血液、唾液、尿など)において測定される量が述べられる。
【0034】
用語「水和物」とは、水と一緒になった化合物またはその特定の形態を指す。当分野において理解されている通り、水和物は、溶媒が水である場合の溶媒和物である。水和物中に含まれる水の量は、水分子の数と化合物分子の数との比として表すことができる。したがって、化合物の水和物は、R・xHOなどの一般式によって表すことができ、Rは化合物であり、xは、0より大きな数である。例えば、xが1である場合、水和物は一水和物である。xが0.5である場合、水和物は半水和物である、xが2である場合、水和物は二水和物である。xが6である場合、水和物は六水和物である。
【0035】
「改善する」、「増大する」または「低減する/低下する」(および「改善した」または「改善すること」などの明白なその変化形)は、値が変化する、または参照値に対して変化した様子を特徴付けるために使用される用語である。例えば、処置前に患者から得られた測定値(または、それから得られる生体試料)は、同一患者、対照患者、患者集団(平均値)、またはそれらから得た生体試料における処置の間またはその後に得られた場合の測定値に対して、増大または低減/低下し得る。この値は、増大または低下が陽性となる治療的転帰に関連するかどうかに応じて、いずれかの事象において改善され得る。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「炎症性疾患」とは、炎症により引き起こされる、炎症に起因するまたは炎症をもたらす疾患、または異常な組織損傷および/もしくは細胞死をもたらす、マクロファージ、顆粒球および/またはT-リンパ球による過剰な応答を引き起こす調節不全な炎症反応を指す。炎症性疾患は、急性または慢性のどちらか一方であり得、感染性因子または非感染性原因に起因し得る。炎症性疾患には、非限定的に、急性アナフィラキシー、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、アレルギー、同種移植拒絶、強直性脊椎炎、盲腸炎、動脈硬化、動脈炎(例えば、巨細胞性心筋炎)、石綿症、アテローム性動脈硬化、喘息、関節炎(例えば、痛風性関節炎、退行性関節炎、炎症性関節炎および関節リウマチ)、関節炎、自己免疫疾患、ベリリウム肺、眼瞼炎、気管支拡張症、細気管支炎、気管支炎(例えば、慢性気管支炎)、滑液包炎、細胞間質性肺炎、蜂窩織炎、子宮頸管炎、胆管炎、絨毛膜羊膜炎、結膜炎、慢性胆嚢炎、クローン病、嚢胞性線維症、膀胱炎、涙腺炎、遅延型過敏反応(例えば、ツタウルシ皮膚炎)、皮膚筋炎、剥離性間質性肺炎、糖尿病(例えば、I型)、脳炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、小腸結腸炎、上顆炎、精巣上体炎、外因性アレルギー性肺胞炎、筋膜炎、結合織炎、胃炎、胃腸炎、巨細胞間質性肺炎、歯ぎん炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、花粉熱、肝炎、宿主対移植片拒絶、回腸炎、即時型過敏反応、炎症性腸疾患(IBD)、炎症性皮膚病、虹彩炎、虚血(虚血性損傷)、喉頭炎、リンパ性間質性肺炎、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、脊髄炎、心筋炎、壊死性腸炎、腎炎、臍炎、卵巣炎、精巣炎、骨炎、骨髄炎、視神経炎、耳炎、膵臓炎、耳下腺炎、類天疱瘡、天疱瘡、心膜炎、悪性貧血、咽頭炎、静脈炎、胸膜炎、塵肺、肺炎、肺臓炎、リウマチ性多発筋痛症(PMR)、多発筋炎、直腸炎、進行性全身性硬化性胆管炎、前立腺炎、乾癬、腎盂腎炎、再灌流損傷、気道の炎症、リウマチ熱、鼻炎、卵管炎、サルコイドーシス、硬化症(強皮症)、ケイ肺症、副鼻腔炎、シェーグレン症候群、口内炎、滑膜炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、タルコシス、側頭動脈炎、腱炎、精巣炎、扁桃炎、横断性脊髄炎、壊死性筋膜炎、潰瘍性大腸炎、尿道炎、嚢胞性膀胱炎、通常型間質性肺炎(UIP)、ぶどう膜炎(uvetis)、膣炎、脈管炎、外陰炎、外陰膣炎およびウェゲナー肉芽腫症、ならびに血管炎の関連形態(側頭動脈炎および結節性多発動脈炎)が含まれる。
【0037】
用語「阻害剤」とは、本明細書に記載されている化合物またはその特定の形態を含む薬剤であって、その存在(例えば、ある特定のレベルでまたはある特定の形態において)が、別の薬剤の発現または活性の低下(すなわち、阻害される薬剤または標的)、または事象の発生の低下(例えば、細胞増殖、腫瘍進行、または転移、炎症、感染、または自己免疫性)と相関する薬剤を指す。一部の実施形態では、阻害剤は、標的に直接または間接的に結合することによって、共有結合性結合または非共有結合性結合によって、標的に対するその影響を発揮する。阻害は、in silico、in vitro(例えば、細胞、組織または臓器培養物または系において)、またはin vivo(例えば、患者または動物モデルにおいて)で評価することができる。
【0038】
用語「同位体形態」は、少なくとも1つの同位体置換;原子の同位体のその原子の別の同位体による置き換えを含む化合物を説明するために使用される。例えば、この置換は、Hの場合、H(重水素)またはH(トリチウム)であり得る。したがって、本発明者らは、その核内に単一プロトンを有する水素の天然に存在する形態を指す、用語「H」、「H」または「水素原子」を使用することがある。同位体形態中の他の置換は、12Cの場合、11C、13Cまたは14C;14Nの場合、13Nまたは15N;16Oの場合、17Oまたは18O;35Cの場合、36Cl;19Fの場合、18F;127Iの場合、131Iなどを含む。このような化合物は、例えば、分析用ツールとして、生物学的アッセイにおけるプローブとして、および/または本発明による使用のための治療剤もしくは予防剤として使用される。特に、水素の代わりの重水素(H)の同位体置換は、代謝を減速することがあり、化合物上の他の部位に代謝をシフトすることがあり、ラセミ化を減速することがあり、そして/または有益であり得る(例えば、治療的利益)化合物の薬物動態に及ぼす他の影響を有することがある。
【0039】
用語「新生物」および「腫瘍」は、本明細書において互換的に使用され、組織の異常な塊の成長が正常組織の成長を上回り、正常組織の成長と調和しない、組織の異常な塊を指す。新生物または腫瘍は、以下の特徴:細胞分化の程度(幾何形状および機能を含む)、成長速度、局所侵襲および転移に応じて、「良性」または「悪性」であり得る。「良性新生物」は、一般に、十分に区別され、悪性新生物よりも遅い成長速度を有し、元々の部位に局在したままである(すなわち、浸潤、侵襲または遠位部位に転移する能力を有さない)。良性新生物は、以下に限定されないが、尖端線維性軟肬、腺腫、軟骨腫、上皮内新生物、黒子、脂肪腫、皮脂性肥厚、紅斑性扁平上皮皮膚疾患および老人性血管腫を含む。良性新生物はまた、結節性硬化症または結節性硬化症複合(TSC)または結節性硬化(「てんかん、知能低下、皮脂腺腫」に由来する)とすることもできる。良性新生物は、後に、悪性新生物を生じ(腫瘍の新生物細胞の部分集団における、遺伝的変化の結果として起こると考えられている)、このような新生物は、「前悪性新生物」と称される。例示的な前悪性新生物は、奇形腫である。対照的に、「悪性新生物」は、一般に、分化が不十分(退形成)であり、周辺組織の進行性浸潤、侵襲および破壊を伴って迅速に成長する。悪性新生物はまた、一般に、遠位部位に転移する能力を有する。
【0040】
用語「患者」および「対象」は、例えば、実験、予防的および/または治療的目的で、本明細書に記載されている化合物またはその特定の形態が本発明により投与される、任意の生物を指す。典型的な対象は、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類およびヒトなどの哺乳動物;イヌおよびネコなどの家畜動物;および家禽、または農業的価値もしくは商業的価値のある任意の他の動物)を含む。一部の実施形態では、対象は、本明細書に記載されている疾患(例えば、がんなどの増殖性疾患)に罹患している。
【0041】
本発明者らが「医薬製剤」または「薬学的に許容される製剤」と称することがある「医薬組成物」または「薬学的に許容される組成物」は、活性剤(例えば、医薬品有効成分(例えば、化合物、その塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態))が、1種または複数の薬学的に許容される担体と一緒に製剤化されている、組成物/製剤である。活性剤/成分は、関連集団に投与すると、所定の治療効果を実現する統計学的に有意な確率を示す、治療レジメンで投与するのに適した単位用量となる量で存在することができる。本医薬組成物は、経口または非経口投与するために作製されたこのような形態を含めた、固体形態または液体形態で投与するために特別に製剤化されていてもよい。経口投与の場合、本医薬組成物は、例えば、水溶液剤もしくは非水溶液剤もしくは懸濁液剤として、または錠剤もしくはカプセル剤として製剤化され得る。口による全身性吸収の場合、本組成物は、口内投与、舌下投与向けに、または舌に適用するためのペースト剤として製剤化され得る。非経口投与の場合、本組成物は、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、腫瘍内または硬膜外注射向けの滅菌溶液剤または懸濁液剤として製剤化され得る。活性剤/成分(例えば、本明細書に記載されている化合物またはその特定の形態)を含む医薬組成物はまた、持続放出製剤として、またはクリーム剤、軟膏剤、制御放出パッチ剤、もしくは局所適用向けのスプレー剤として製剤化され得る。クリーム剤、軟膏剤、発泡体剤、ゲル剤およびペースト剤もまた、鼻、口、膣および直腸を内張りする粘膜に適用することができる。本明細書において記載されている化合物のいずれも、およびこのような化合物を含有するいずれの医薬組成物もまた、「医薬」と称されることがある。
【0042】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書において開示されている組成物(例えば、医薬組成物)を製剤化するために使用される担体に適用される場合、組成物の他の成分と適合可能であり、かつ患者に有害ではない(例えば、必要量および/または投与量(例えば、単位剤形中)において非毒性である)担体を意味する。
【0043】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書に記載されている化合物の塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態に適用した場合、許容できない毒性、刺激、アレルギー反応などなしに、妥当な医療的判断の範囲内で、ヒト(例えば、患者)および下等動物(以下に限定されないが、実験研究に使用されるマウスおよびラットを含む)の組織に接触して使用するのに好適であり、かつ妥当な利益/リスク比に見合うように使用され得る、塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態を指す。多数の薬学的に許容される塩が、当分野で周知である(例えば、Berge et al., J. Pharm. Sci. 66:1-19, 1977を参照されたい)。前記化合物の薬学的に許容されない塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態もまた、本発明の範囲内にあり、例えば、化学プロセスおよび合成において、ならびにin vitroで行われる実験において有用である。薬学的に許容されない組成物において、化合物、その塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態は、患者への投与のため、濃度が高すぎる量または低すぎる量で存在してもよい。
【0044】
「ポリペプチド」とは、長さ、起源または翻訳後修飾に関わらず、アミノ酸残基のポリマーのことである。ポリペプチドは、以下に限定されないが、完全長の天然に存在するタンパク質を包含する。ポリペプチドが、本明細書に記載されている組成物により結合している場合(例えば、特異的に結合している)、またはそうではない場合、上記の組成物と相互作用する場合、本発明者らは、そのようなポリペプチドを組成物の「標的」として称することがある。
【0045】
用語「予防する」、「予防(prevention)」、「予防(prophylaxis)/予防的」などが、疾患(例えば、がんなどの増殖性疾患)の発生と関連して使用される場合、疾患を発症するリスクの低減、および/またはその兆候もしくは症状の発病の遅延を指す。発病が予め規定した期間、遅延すると、予防が完了したとみなすことができる。
【0046】
「増殖性疾患」は、細胞の過度の増殖により特徴付けられる疾患である。増殖性疾患は、(1)正常に休眠しているまたは正常に増殖している細胞の病理的な増殖;(2)細胞のその正常位置からの病理的移動(例えば、新生物細胞の転移);(3)細胞マトリックスの望ましくないターンオーバーをもたらす恐れのある、マトリックスメタロプロテイナーゼ(例えば、コラーゲナーゼ、ゼラチナーゼおよびエラスターゼ)などのタンパク質分解性酵素の病理的な発現;ならびに/または(4)増殖性網膜症および腫瘍転移に起こるような、病理的な血管新生を伴う。例示的な増殖性疾患は、疾患状態(病理学的血管新生として上で定義されている)を伴う、およびこれを促進するがん、良性新生物および血管新生を含む。
【0047】
用語「参照」は、比較が行われる、標準品または対照を説明する。例えば、目的の薬剤、動物(例えば、対象(例えば、実験研究に使用される動物))、細胞(単数または複数)、個体(例えば、個々の患者)、集団、試料(例えば、生体試料)、配列または値は、それぞれ、参照物または対照の薬剤、動物(例えば、対象(例えば、実験研究に使用される動物))、細胞(単数または複数)、個体(例えば、個々の患者)、集団、試料、配列または値と比較される。一部の実施形態では、参照物または対照は、目的の試験または判定と実質的に同時に、試験および/または判定される。他の実施形態では、参照物または対照は、過去の参照物または対照であり、必要に応じて、有形媒体中に統合される。通常、当業者によって理解される通り、参照物または対照は、評価下にある条件と同等の条件下で判定されるか、または特徴付けられ、当業者は、十分な類似性が存在する場合に、特定の考えられる参照または対照への信頼性および/または比較を妥当とみなすことを理解する。
【0048】
処置に関する用語「応答」とは、処置の結果として起こる、または処置と相関する対象または患者の状態における任意の有益な変化を指すことができる。このような変化は、状態の安定化(例えば、処置の非存在下で起こると思われる悪化の予防(例えば、安定疾患))、状態の症状の改善、および/または状態の治癒に対する見込みの改善(例えば、腫瘍退縮)などを含むことができる。応答は、細胞応答(例えば、腫瘍の応答)であり得、当分野で公知の臨床的診断基準および客観的診断基準を含めた、幅広い診断基準を使用して測定することができる。応答を評価するための技法は、以下に限定されないが、アッセイ評価、臨床検査、ポジトロン放出断層法、X線、CTスキャン、MRI、超音波、内視鏡検査、腹腔鏡検査、対象から得た試料中の腫瘍マーカーの存在またはレベルの評価、細胞学および/または組織学を含む。腫瘍応答の測定に関すると、処置への応答を評価するための方法およびガイドラインは、Therasseら(J. Natl. Cancer Inst., 92(3):205-216, 2000)で論じられている。正確な応答診断基準は、任意の適切な方法で当業者によって選択することができるが、但し、がんおよび/または患者の群と比較する場合、比較される上記の群は、奏効率を決定するための同一または同等な診断基準に基づいて評価されることを条件とする。
【0049】
用語「溶媒和物」とは、溶質の分子と溶媒の分子との組合せによって形成される化合物を指す。溶媒和物を形成するために使用することができる溶媒は、水、メタノール、エタノール、酢酸、DMSO(ジメチルスルホキシド)、THF(テトラヒドロフラン)、ジエチルエーテルなどを含む。溶媒が水である溶媒和物は「水和物」と呼ばれる。化合物は、液体として、または例えば結晶性溶媒和物として固体溶媒和物形態として調製することができる。溶媒和物は、薬学的に許容され得、化学量論量または非化学量論量の溶媒和物のどちらか一方であり得る。ある特定の例の場合、例えば、1つまたは複数の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれている場合、溶媒和物は単離することができる。「溶媒和物」は、液相溶媒和物および分離可能な溶媒和物の両方を包含し、代表的な溶媒和物は、水和物、エタノレートおよびメタノレートを含む。
【0050】
用語「特異的な」とは、活性(例えば、標的の阻害)を有する薬剤(例えば、化合物)を参照して本明細書で使用する場合、この薬剤が、潜在的標的実体または状況の間で区別することを意味する。例えば、ある薬剤が、1つまたは複数の代替的な標的の存在下で、その標的に優先的に結合する、またはそうでない場合、その発現もしくは活性を阻害する場合、この薬剤はその所期の標的に「特異的に」結合する(または、他にはその標的を特異的に阻害する)。本発明は、それほど限定されないが、特異的および直接的な相互作用は、標的の特定の構造的特徴(例えば、エピトープ、裂隙または結合部位)の認識に依存し得る。特異性は、絶対的であることを必要としない。特異性の程度は、許容されない副作用なしに、有効な処置をもたらすのに十分なものしか必要としない。薬剤の特異性は、所期の標的または状態に及ぼす薬剤の作用と別の標的または状態に及ぼすその作用とを比較することによって評価することができる。所期の標的および個別の標的に及ぼす作用をそれぞれ決定することができるか、または所期の標的に及ぼす作用を決定して、早期時点で発生する参照標準と比較することができる(例えば、参照物の特異的結合剤または参照物の非特異的結合剤)。一部の実施形態では、薬剤は、それがその所期の標的に検出可能に(および、好ましくは有意に)結合する条件下で、競合する別の標的に検出可能に結合せず、そして/または、それが、その所期の標的の発現もしくは活性を検出可能に(および、好ましくは有意に)阻害する条件下で、競合標的の発現または活性を検出可能に阻害しない。本発明の化合物、またはその塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体もしくは同位体形態は、その標的に関して、競合する別の標的と比較して、より大きな結合速度、より小さな解離速度、親和性の増大、解離の低下および/または安定性の増大を示すことができ、これらのパラメーターのいずれも、本発明の方法において評価され得る。
【0051】
用語「実質的に」とは、目的の特徴または特性を完全なもしくはほぼ完全な範囲または程度に示す定性的状態を指す。当業者は、生物学的および化学的現象が、仮にあるとしても、完了しない、かつ/または完全には進行しない、または絶対的な結果を実現しない、または絶対的な結果を避けられないことを理解する。したがって、用語「実質的に」は、本多数の生物学的および化学的現象において内在する完全性の潜在的欠如を捕捉するため、明細書において使用されている。例えば、化学反応は、収率が100%を十分に下回る場合でさえも、実質的に完了したと特徴付けることができる。ある特定の特徴はまた、それらがほぼ同じであり、かつ/またはほぼ同じ活性を示す場合、「実質的に同一である」とみなされ得る。例えば、事象(例えば、細胞増殖)に対してほぼ同じ作用を生じるほぼ同じ2つの化合物は、実質的に類似していると記載することができる。化合物または組成物の純度に関すると、「実質的に純粋な」とは、以下に定義されている。
【0052】
疾患(例えば、がん)に「罹患しやすい」個体(例えば、個々の対象または患者)は、疾患を発症するリスクの平均よりも高いリスクを有する。このような個体は、疾患の任意の症状を示さないことがあり、疾患の診断を受けていないことがあるが、例えば、疾患の発症に関連する条件への曝露(例えば、発がん性物質への曝露)のためにリスクがあるとみなされる。疾患を発症するリスクは、集団に基づくことができる。
【0053】
特定の疾患の1つもしくは複数の客観的な兆候または主観的な症状の大きさ(例えば、強度、重症度など)および/または頻度が低下した場合、「兆候または症状は軽減されている」。特定の兆候または症状の発病の遅延は、そのような兆候または症状の頻度が低下する1つの形態である。兆候または症状の軽減は、例えば、「治療的に活性な」化合物によって実現され得る。
【0054】
用語「実質的に純粋な」とは、本明細書に記載されている化合物またはその特定の形態を指すために使用される場合、化合物またはその特定の形態の調製が、約85%(w/w)を超える化合物またはその特定の形態(例えば、約90%、95%、97%、98%、99%または99.9%を超える化合物または塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または異性体)であることを意味する。
【0055】
「互変異性体」は、水素原子および電子の位置が変わることによる、様々な特定の化合物の構造の相互変換可能な形態である。したがって、2つの化学構造が、π個の電子および原子(通常、H)の移動により平衡であり得る。例えば、エノールおよびケトンは、それらが、酸または塩基のどちらかによる処理によって迅速に相互変換するので、互変異性体である。互変異性の別の例は、酸または塩基による処理によって同様に形成される、フェニルニトロメタンのaci形態およびニトロ形態である。互変異性体を使用して、目的の化合物の化学反応性および生物活性を最適化することができる。
【0056】
「治療レジメン」は、関連集団全体に投与される場合、所望の治療的転帰と相関する投与レジメンを指す。
【0057】
用語「処置」、ならびに「処置する」および「処置すること」などのその言語的な変化形は、部分的または実質的に完全に、特定の疾患(例えば、がんなどの増殖性疾患)の1つまたは複数の兆候または症状を、緩和し、改善し、軽減し、阻害し、それらの重症度を低下させ、そして/またはその出現率を低下させる、医薬組成物の任意の使用または治療法の投与を指す。処置される対象(または、処置の候補として特定された対象(例えば、「新たに診断された」患者))は、疾患の早期兆候もしくは症状しか示さないことがあり、あるいは疾患の1つもしくは複数の確立されたまたは進行した兆候または症状を示すことがある。「処置」は、「予防」(以下に定義されている)と区別される。その場合、対象は、疾患の兆候および/または症状を示さず、そして/または関連疾患の発症のリスクの増大と統計学的に相関する、1つまたは複数の感受性因子を有することが知られていることがある。しかし、一旦、患者が疾患の兆候または症状を示し、処置されると、処置を継続して、疾患の進行を遅延させる(例えば、局所がんの事象では、処置は腫瘍進行(すなわち、成長)または転移を遅延させることができる)か、または再発(例えば、腫瘍の再出現)を遅延もしくは予防することができる。
【0058】
本出願人は、本明細書において、構造式(I)を有する本発明の化合物:
【化6】
または、薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、互変異性体または同位体形態を記載する。式(I)中、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル、6-メチルピペルジン-3-イルまたは6,6-ジメチルピペリジン-3-イルであり、Rは、-CFまたはクロロである。一部の実施形態では、構造式(I)の化合物またはその特定の形態(例えば、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体または互変異性体)では、1個または複数の原子(例えば、例えば単環式または二環式環構造内の1個または複数の炭素原子および/または水素原子、R、R、Rおよび/またはR)は、元々存在する原子の同位体で置き換えられている(例えば、元々存在している12Cは、13Cまたは14Cで置き換えられており、そして/または元々存在するHは、HまたはHで置き換えられている)。すなわち、本発明は、構造式(I)の化合物の同位体形態、およびその塩、溶媒和物、立体異性体または互変異性体の同位体形態を包含する。留意される通り、構造式(I)の化合物は、溶媒和物(例えば、水和物)の形態であり得、本発明は、構造式(I)の化合物の溶媒和物(例えば、水和物)、および式(I)の化合物の塩、立体異性体、互変異性体または同位体形態の溶媒和物を包含する。留意される通り、構造式(I)の化合物は、塩の形態であり得、本発明は、前記化合物が別の特定の形態(例えば、本発明は、式(I)の化合物の溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態の塩を包含する)である場合、式(I)の化合物の塩を包含する。一部の実施形態では、前記化合物は、まさに明記した特定の形態を特徴とするものを含めて、構造式(Ia):
【化7】
を有するか、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、互変異性体、同位体形態または他の特定の形態(例えば、薬学的に許容されるその塩(例えば、同位体形態の塩))である。R、RおよびRは、構造式(I)に関して定義されている通りであり、Rは、
【化8】
である。式(I)に関して上に示されている通り、式(Ia)のいずれかの化合物、またはその任意の塩、溶媒和物もしくは互変異性体は、同位体形態(例えば、単環式または二環式環構造における1個または複数の炭素原子および/または水素原子、R、R、Rおよび/またはRが、その同位体(例えば、Hの場合、重水素)により置き換えられている)であり得る。
【0059】
本明細書において開示されている構造式(例えば、式(I)または式(Ia))の一部の実施形態では、RおよびRはそれぞれ、独立して、メチル、-CD、エチル、-CDCD、-CHCDまたは-CHCDであり、「D」は、重水素を表す。
【0060】
一部の実施形態では、式(I)または式(Ia)の化合物は、
【化9】
である。他の実施形態では、本発明は、上記の3つの化合物のいずれかの薬学的に許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)、互変異性体または同位体形態を特徴とする。他の実施形態では、本発明は、上記の3つの化合物のいずれかの別の特定の形態を特徴とする。例えば、本発明は、上記の3つの化合物のいずれかの溶媒和物(例えば、水和物)、互変異性体または同位体形態の薬学的に許容される塩を包含する。
一部の実施形態では、前記化合物は、
【化10】
または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)もしくは互変異性体(例えば、薬学的に許容されるその塩)、または該化合物の同位体変形体、またはその前述の特定の形態のいずれかである。同位体変形体は、上で特に記載されている通り(例えば、1個またはそれより多くの水素原子(例えば、置換基
【化11】
中)が重水素により置き換えられている)であり得る。構造式(I)または式I(a)の一部の実施形態では、Rは、(5S)-5-メチルピペリジン-3-イル
【化12】
、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル
【化13】
、(6S)-6-メチルピペルジン-3-イル
【化14】
、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル
【化15】
、(5S)-5-トリジュウテロメチルピペリジン-3-イル
【化16】
、5,5-ジ-トリジュウテロメチルピペリジン-3-イル
【化17】
、(6S)-6-トリジュウテロメチル-ピペルジン-3-イル
【化18】
または6,6-ジ-トリジュウテロメチルピペリジン-3-イル
【化19】
である。構造式(I)または式(Ia)の一部の実施形態では、Rは、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル
【化20】

(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル
【化21】
、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル
【化22】
、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イル
【化23】
、(3S,5S)-5-トリジュウテロメチルピペリジン-3-イル
【化24】
、(3S)-5,5-ジ-トリジュウテロメチルピペリジン-3-イル
【化25】
、(3S,6S)-6-トリジュウテロメチル-ピペルジン-3-イル
【化26】
または(3S)-6,6-ジ-トリジュウテロメチルピペリジン-3-イル
【化27】
である。Rが上記の通りである場合、Rは、メチルまたはエチルであり得、Rは、メチルまたはエチルであり得、Rは、-CFまたはクロロであり得る。例えば、Rが上記の通りである場合、Rは、メチルであり得、Rは、メチルであり得、Rは、-CFであり得る。Rの結合位置に関する立体化学のR/S表示(例えば、上記の置換ピペリジンの例における3位)は、上記の例において、R基が式(I)または(Ia)のコアに結合しており、これにより「1」となるR/S優先度をコアに与えることに基づくことにやはり留意されるべきである。
【0061】
構造式(I)、(Ia)、その化学種またはその特定の形態の様々な独立した実施形態において、Rは、メチルまたはエチルである、Rは、メチルまたはエチルである、Rは、メチルであり、Rは、エチルである、RおよびRは、同時にメチルであるか、またはRおよびRは、同時にエチルである。様々な実施形態では、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,5S)-6-メチルピペルジン-3-イル)または6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6,6,ジメチルピペリジン-3-イル)である、Rは、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イルである、Rは、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イルである、Rは、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イルであるか、またはRは、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イルである。より特定の実施形態では、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)である;Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)である;Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル)である;またはRは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)である。より特定の実施形態では、Rは、メチルであり、Rは、エチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)である;Rは、メチルであり、Rは、エチルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)である;Rは、メチルであり、Rは、エチルであり、Rは、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル)である;またはRは、メチルであり、Rは、エチルであり、Rは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)である。より特定の実施形態では、RおよびRは、同時にメチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)である;RおよびRは、同時にメチルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)である;RおよびRは、同時にメチルであり、Rは、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル)である;またはRおよびRは、同時にメチルであり、Rは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)である。より特定の実施形態では、RおよびRは、同時にエチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)である;RおよびRは、同時にエチルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)である;RおよびRは、同時にエチルであり、Rは、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル)である;またはRおよびRは、同時にエチルであり、Rは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)である。
【0062】
構造式(I)または式(Ia)の一部の実施形態では、Rは-CFである。より特定の実施形態では、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、-CFである;Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、-CFである;Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル)であり、Rは、-CFである;またはRは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、-CFである。より特定の実施形態では、Rは、メチルであり、Rは、エチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、-CFである;Rは、メチルであり、Rは、エチルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、-CFである;Rは、メチルであり、Rは、エチルであり、Rは、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル)であり、Rは、-CFである;またはRは、メチルであり、Rは、エチルであり、Rは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、-CFである。より特定の実施形態では、RおよびRは、同時にメチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル(例えば、(3,S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、-CFである;RおよびRは、同時にメチルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、-CFである;RおよびRは、同時にメチルであり、Rは、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル)であり、Rは、-CFである;またはRおよびRは、同時にメチルであり、Rは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、-CFである。より特定の実施形態では、RおよびRは、同時にエチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、-CFである;RおよびRは、同時にエチルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、-CFであり;RおよびRは、同時にエチルであり、Rは、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル)であり、Rは、-CFである;またはRおよびRは、同時にエチルであり、Rは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、-CFである。
【0063】
構造式(I)または式(Ia)の一部の実施形態では、Rはクロロである。より特定の実施形態では、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、クロロである;Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、クロロである;Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル)であり、Rは、クロロである;またはRは、メチルまたはエチルであり、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、クロロである。より特定の実施形態では、Rは、メチルであり、Rは、エチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、クロロである;Rは、メチルであり、Rは、メチルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、クロロである;Rは、メチルであり、Rは、エチルであり、Rは、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル)であり、Rは、クロロである;またはRは、メチルであり、Rは、エチルであり、Rは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、クロロである。より特定の実施形態では、RおよびRは、同時にメチルであり、Rは、5-メチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、クロロである;RおよびRは、同時にメチルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、クロロであり;RおよびRは、同時にメチルであり、Rは、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル)であり、Rは、クロロである;またはRおよびRは、同時にメチルであり、Rは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、クロロである。より特定の実施形態では、RおよびRは、同時にエチルであり、Rは、5-メチルピペリジン(例えば、(3S,5S)-5-メチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、クロロである;RおよびRは、同時にエチルであり、Rは、5,5-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、クロロである;RおよびRは、同時にエチルであり、Rは、6-メチルピペルジン-3-イル(例えば、(3S,6S)-6-メチルピペルジン-3-イル)であり、Rは、クロロである;またはRおよびRは、同時にエチルであり、Rは、6,6-ジメチルピペリジン-3-イル(例えば、(3S)-6.6-ジメチルピペリジン-3-イル)であり、Rは、クロロである。
【0064】
本明細書に記載されている化合物の薬学的に許容される塩、またはこの塩の溶媒和物、立体異性体、互変異性体もしくは同位体形態(または、本明細書に記載されている任意の他の特定の形態)は、好適な無機酸および有機酸、ならびに無機塩基および有機塩基から誘導されるものを含む。すなわち、本発明は、構造式(I)、I(a)の化合物、またはその化学種の塩形態、ならびにその溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態の塩形態を包含する。薬学的に許容される酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸と共に形成される、またはイオン交換などの当分野において公知の他の方法を使用することにより形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタン-プロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩および吉草酸塩が含まれる。
【0065】
本明細書に記載されている任意の化合物の塩はまた、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびN(C1~4アルキル)塩を含めた、適切な塩基から誘導することができる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムが含まれる。他の薬学的に許容される塩には、適切な場合、アンモニウム、四級アンモニウム、およびハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、低級アルキルスルホン酸イオンおよびアリールスルホン酸イオンなどの対イオンを使用して形成されるアミン陽イオンが含まれる。
【0066】
本発明の化合物、または本明細書に記載されている特定の形態(例えば、薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または等方性形態(isotropic form))は、1つまたは複数の以下の特性を有することができる:(1)Kに関する酵素アッセイにおける、CDK2、CDK9およびCDK12の各々に対してよりも、CDK7に対して、少なくともまたは約25倍(例えば、少なくともまたは約50倍、100倍、200倍、300倍または400倍)大きな特異性がある;(2)IC50に関する酵素アッセイにおける、CDK2、CDK9およびCDK12の各々に対してよりも、CDK7に対して、少なくともまたは約200倍(例えば、少なくともまたは約300倍、400倍または500倍)大きな特異性がある;(3)表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定すると、CDK7/サイクリンH複合体へのK結合が150pM未満(例えば、120pM、110pMまたは100pM未満)である;および(4)EC50が、HCC70細胞を使用する抗増殖アッセイにおいて、10nM未満(例えば、5nM、4nM、3nM、2nMまたは1nM未満)である。これらの特性により、化合物またはその特定の形態は、CDK7以外のCDK、特にCDK2、CDK9およびCDK12の同時に起こる阻害なしに、CDK7の強力かつ特異的な阻害を必要とする治療法に特に有用となる。
【0067】
医薬組成物およびキット:本発明は、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種または本明細書に記載されている特定の形態(例えば、薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、互変異性体または同位体形態)、および必要に応じて薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本医薬組成物は、式(I)もしくは式(Ia)の化合物、またはそれらの化学種または薬学的に許容されるその塩;溶媒和物(例えば、水和物)の形態の式(I)もしくは式(Ia)の化合物、またはそれらの化学種;立体異性体またはその混合物での式(I)もしくは式(Ia)の化合物、またはそれらの化学種(例えば、立体異性体は、鏡像異性体またはそのラセミ混合物である);互変異性体の形態の式(I)もしくは式(Ia)の化合物、またはそれらの化学種;または同位体形態の前述のいずれかを含む。留意される通り、医薬組成物は、1種または複数の薬学的に許容される担体を含むことができ、活性剤/成分(すなわち、形態に関わらない化合物)は、その中に有効量(例えば、治療有効量または予防有効量)で提供され得る。何らかの疑念がある場合、式(I)、式(Ia)の化合物、またはそれらの化学種の特定の形態のいずれも、本発明の医薬組成物に含まれ得る。
【0068】
本発明の医薬組成物は、薬理学の分野において公知の関連方法によって調製され得る。一般に、このような調製方法は、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態(例えば、薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態)を含む本明細書に記載されている化合物を担体および/または1つもしくは複数の他の活性成分(例えば、1つまたは複数の本明細書に記載されている第2の薬剤)および/もしくは副成分と混合するステップ、次に、必要な場合および/または所望の場合、この生成物を所望の単回用量単位または多回用量単位(例えば、経口投与向け)に成形および/または包装するステップを含む。副成分は、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態の生体利用率を改善することがあり、その代謝を低減および/または改変することがあり、その排出を阻害することがあり、そして/または身体内でのその分布を改変する(例えば、罹患組織(例えば、腫瘍)を標的とすることによる)ことがある。本医薬組成物は、バルク容器中を含めた様々な方法で、単回単位用量(例えば、個別の所定量の活性剤を含有する)またはその複数物として包装され得、このような包装されたもしくは分割された剤形のいずれも、本発明の範囲内にある。活性成分の量は、単位投与量、または例えば、用量の2分の1または3分の1などの投与量の都合のよい割合を構成する量と同じにすることができる。
【0069】
本発明の医薬組成物中の活性剤/成分、薬学的に許容される担体および/または任意の追加の成分の相対量は、これらが何であるか、サイズおよび/または処置される対象の状態に応じて、ならびにさらには組成物が投与される経路および処置される疾患に応じて様々になり得る。例として、本組成物は、約0.1%~99.9%(w/wまたはw/v)の間の活性剤/成分を含むことができる。
【0070】
本明細書に記載されている医薬組成物の製造に有用な薬学的に許容される担体は、医薬製剤の分野で周知であり、不活性希釈剤、分散剤および/もしくは造粒剤、表面活性剤および/もしくは乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝化剤、滑沢剤、ならびに/または油を含む。本明細書に記載されている医薬組成物の製造に有用な薬学的に許容される担体には、以下に限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩など)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースをベースとする物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれる。
【0071】
本発明の医薬組成物は経口投与されてもよく、経口用製剤は、本発明の範囲内にある。このような経口許容される投与量形態は、固体(例えば、カプセル剤、錠剤、サシェ剤、散剤、顆粒剤および経口分散性フィルム剤)または液体(例えば、アンプル、半固体、シロップ剤、懸濁液剤または溶液剤(例えば、水性懸濁液剤または分散液剤および溶液剤))であり得る。錠剤の場合、一般に使用される担体には、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も含まれ得る。カプセル剤の場合、有用な希釈剤は、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンを含む。水性懸濁液が製剤化される場合、活性剤/成分は、乳化剤および懸濁化剤と一緒にされ得る。任意の経口用製剤では、甘味剤、着香料または着色剤も添加されてもよい。本明細書に記載されている様々な実施形態のいずれかにおいて、経口用製剤は、即時放出または持続放出/遅延放出するよう製剤化され得、コーティングされていてもよく、またはコーティングされていなくてもよい。提供される組成物は、マイクロカプセル封入形態とすることもできる。
【0072】
口内投与または舌下投与に好適な組成物は、錠剤、ロゼンジ剤およびパステル剤を含む。皮下、静脈内、筋肉内、眼内、硝子体内、関節内、滑膜内、胸骨内、鞘内、肝内、腹腔内、病巣内向け、および頭蓋内注射または注入技法による製剤もまた調製され得る。好ましくは、本組成物は、経口、皮下、腹腔内または静脈内に投与される。本発明の組成物の滅菌注射剤形態は、水性または油性懸濁液剤であり得る。これらの懸濁液剤は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、当分野で公知の技法に従い、製剤化することができる。滅菌注射用製剤はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液剤として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の注射用滅菌溶液剤または懸濁液剤とすることもできる。使用することができる、許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌不揮発油が、溶媒または懸濁媒体として、慣用的に使用される。
【0073】
本明細書において提供される医薬組成物の説明は、ヒトへの投与に好適な医薬組成物を原理的に対象としているが、このような組成物は、一般に、すべての種類の動物への投与に好適であることが当業者によって理解される。組成物を様々な動物への投与に好適にするための、ヒトへの投与に好適な医薬組成物の改変が十分に理解され、当分野の獣医学の薬理学者は、このような改変を設計および/または実施することができる。
【0074】
本明細書に記載されている化合物は、投与を容易にするためおよび投与量を均質とするために、投与単位形態、例えば単一単位剤形で通常、製剤化される。任意の特定の対象または生物に対する具体的な治療的または予防的有効用量レベルは、処置される疾患および障害の重症度、使用される具体的な活性成分の活性、使用される具体的な組成物、対象の年齢、体重、一般的な健康、性別および食事、投与時間、投与経路ならびに使用される具体的な活性成分の排出速度、処置期間、使用される具体的な活性成分と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、ならびに医療技術において周知の同様の因子を含めた様々な因子に依存する。
【0075】
有効量を達成するために必要な化合物の正確な量は、例えば、対象の人種、年齢および一般状態、副作用の重症度、処置される疾患、投与される特定の化合物が何であるか、投与様式などに応じて、対象毎に様々であり得る。所望の投与量は、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、3日毎、毎週、2週間毎、3週間毎または4週間毎に送達され得る。ある特定の実施形態では、所望の投与量は、多回投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回またはそれより多くの投与)を使用して送達することができる。
【0076】
ある特定の実施形態では、70kgの成人ヒトに1日1回または複数回(例えば、1回)投与する化合物の有効量は、約1~100mg、約1~50mg、約1~35mg(例えば、約1~5、1~10、1~15、1~20、1~25または1~30mg)、約2~20mg、約3~15mgまたは約10~30mg(例えば、10~20または10~25mg)を含むことができる。この場合およびどの範囲が参照されようとも、端点が含まれる。本開示において提示される投与量は、様々な体重または身体の表面をしている患者に対してスケールを調節することができ、患者の身体表面1mあたりで表すことができる。
【0077】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、1日1回、投与されてもよい。式Iの化合物または下位属またはそれらの化学種またはそれらの特定の形態(例えば、それらの塩)の投与量は、約1~100mg、約1~50mg、約1~25mg、約2~20mg、約5~15mg、約10~15mgまたは約13~14mgであり得る。
【0078】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、1日2回、投与されてもよい。一部の実施形態では、各投与のための式Iの化合物または下位属またはそれらの化学種の投与量は、約0.5mg~約50mg、約0.5mg~約25mg、約0.5mg~約1mg、約1mg~約10mg、約1mg~約5mg、約3mg~約5mgまたは約4mg~約5mgである。
【0079】
本明細書に記載されている用量範囲は、提供されている医薬組成物を成人に投与するためのガイダンスを提供する。例えば、子供または青年に投与される量は、当業者によって決定され得、成人に投与される量より少ない、または同じであり得る。
【0080】
本明細書に記載されている化合物または他の組成物(例えば、医薬組成物)は、併用療法(例えば、本明細書において定義されており、さらに記載されている)で投与され得る。併用療法に使用される追加剤/第2の薬剤(および、存在する場合、第3の薬剤)は、同じ障害(例えば、同じがん)に対して所望の効果を実現する可能性が最も高いが、患者を補助する効果とは異なる効果を実現することがある。したがって、本発明は、治療的効果量の式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態(例えば、薬学的に許容される塩)、本明細書に記載されている任意の追加剤/第2の薬剤のいずれかを含めた1種または複数の追加剤、および薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を特徴とする。第2の薬剤/追加剤は、各々が治療有効量の、ベネトクラックスなどのBcl-2阻害剤、オラパリブまたはニラパリブなどのPARP阻害剤、カルボプラチン、シスプラチンまたはオキサリプラチンなどの白金をベースとする抗がん剤、ドセタキセルまたはパクリタキセル(またはタンパク質結合パクリタキセル(Abraxane(登録商標)として入手可能))などのタキサン、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブまたはトリラシクリブなどのCDK4/6阻害剤、タモキシフェン(Nolvadex(商標)およびSoltamox(商標)という商標名で入手可能)、ラロキシフェン(Evista(商標)という商標名で入手可能)およびトレミフェン(Fareston(商標)として入手可能)などの選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、およびフルベストラント(Faslodex(商標)として入手可能)などの選択的エストロゲン受容体ディグレーダー(selective estrogen receptor degrader)から選択され得る。
【0081】
処置および使用方法:式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態(例えば、その塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態)および本明細書に記載されている他の組成物(例えば、単位剤形で製剤化されているものを含めた医薬組成物)は、研究現場および/または臨床現場(例えば、予防的方法または治療的方法)におけるものを含めて、様々な使用を有する。一部の実施形態では、前記化合物および本明細書に記載されている他の組成物(例えば、医薬組成物およびキット)が構成されて、それを必要とする患者において、増殖性疾患(例えば、がん、良性新生物または病理学的血管新生)を予防または処置する際に使用される。がんは、本明細書において開示されているもの(例えば、血液がん、乳房、GI管(例えば、CRC)、肺(例えば、NSCLC)、膵臓もしくは前立腺における固形腫瘍の存在により特徴付けられるがん、またはユーイング肉腫)の中から選択することができる。本発明の方法のいずれの実施形態においても、患者に罹患しているがんのタイプまたは悪性度を特徴付ける検査を実施する、またはその結果を入手することによって情報を得ることができる。例えば、本明細書に記載されている方法および使用は、「高悪性度」がん(例えば、高悪性度漿液性卵巣がん)を有すると判定された、ある特定の表現型を示す腫瘍細胞を有する(例えば、エストロゲン受容体ポジティブ(ER+)または「トリプルネガティブ」である乳がん細胞を有する)と判定され、そして/または以前に投与された治療剤(例えば、別のCDK阻害剤(例えば、パルボシクリブ)または受容体分解剤(例えば、フルベストラント)などの化学療法剤)による処置に抵抗性となったと判定された患者に適用することができる。本明細書に記載されている方法および使用は、まさに言及した判定を行うステップ、患者が高悪性度がん、特定の表現型の腫瘍細胞を有するか、または以前に投与された治療剤に対して抵抗性を発現しているかどうかを判定するステップを含むことができる。処置の方法は、それを必要とする患者に治療有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、疾患の兆候または症状を低減するための、薬学的に許容される組成物中の、本明細書における特定の形態(例えば、塩または鏡像異性体の混合物として)である式Iに図示されている構造を有する化合物または下位属またはそれらの化学種)の投与を必要とする。
【0082】
式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態、または本明細書に記載されている他の組成物(例えば、医薬組成物)を使用し、患者に前記化合物または組成物を投与することを含む治療的方法または予防的方法はそれぞれ、「使用」に関して表現されてもよく、その反対であってもよい。例えば、本発明は、本明細書に記載されている疾患(例えば、がん(例えば、本明細書に記載されているいずれかの血液/血液学的がん、または例えば、乳房、GI管(例えば、CRC)、肺(例えば、NSCLC)、脾臓または前立腺における固形腫瘍)などの増殖性疾患)を処置するため、これらのタイプの疾患の定義の範囲内にある本明細書において説明されている特定の疾患のいずれか1つまたは複数を含めた、炎症性疾患、自己免疫疾患または自己炎症性疾患を処置するため、本明細書に記載されている疾患(例えば、がんなどの増殖性疾患、または炎症性疾患、自己免疫疾患または自己炎症性疾患)を処置する医薬の調製のための、任意の特定の形態の本明細書に記載されている化合物の使用、または本明細書に記載されている組成物の使用を包含する。
【0083】
本明細書に記載されている疾患(例えば、がん(例えば、血液がん、乳がん、GI管のがん(例えば、CRC)、肺がん(例えば、NSCLC)、膵臓がん、前立腺がんまたはユーイング肉腫などの増殖性疾患))の処置に関する本発明の方法は、本明細書に記載されている疾患(例えば、がんのいずれか1つまたは複数のタイプ)のいずれか1つまたは複数のタイプを具体的に除外してもよい。例えば、本発明は、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態を投与することによりがんを処置する方法を特徴とするが、但し、がんは乳がんではないこと、但し、がんは乳がんまたは血液がん(例えば、白血病)ではないこと、但し、がんは、乳がん、血液がん(例えば、白血病)または卵巣がんではないことなどを条件とし、除外物は、本明細書において列挙されている疾患/がんのタイプのいずれかから選択され、本発明の他の態様および実施形態に関連する要素の一覧表示から変数を除外する(例えば、本明細書に記載される化合物の化学置換基またはキットおよび医薬組成物の構成成分)という同じ概念を伴う。したがって、要素が一覧表示として提示されている場合(例えば、マーカッシュ群形式で)、それらの要素の考えられる限りの部分群も開示されており、いずれの要素もこの群から取り除かれ得る。
【0084】
様々な実施形態では、処置される対象は、哺乳動物;ヒト;イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジまたはヤギなどの家畜動物またはコンパニオン動物;動物園動物;げっ歯類、イヌ、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルまたはアカゲザル)または非ヒトトランスジェニック動物(トランスジェニックマウスまたはトランスジェニックブタなど)などの研究用動物である。患者がヒトである場合、ヒトは、男性、女性、または任意の年齢群(例えば、小児患者(例えば、幼児、子供または青年)のトランスジェンダーのヒト、または成人患者(例えば、若い成人、中年または老人))であり得る。同様に、患者が、非ヒト動物(例えば、哺乳動物)である場合、患者は、任意の年齢もしくは発育段階にある男性または女性であり得る。トリ、特に商業的に価値を有するものもまた、好適な患者である。
【0085】
式Iの化合物または下位属または任意の特定の形態であるその化学種を使用して処置または予防される増殖性疾患は、CDK7の活性異常に関連し得る。CDK7の活性異常は、CDK7の上昇、および/または不適切な(例えば、異常な)活性であり得る。ある特定の実施形態では、CDK7は過剰発現されず、CDK7の活性は上昇し、そして/または不適切である(例えば、CDK7は、野性型CDK7と比較すると、増大した活性、さらなる望ましくない活性、天然の活性モジュレートへの抵抗性、分解に対する抵抗性などを有するCDK7変異体である)。ある特定の他の実施形態では、CDK7は、過剰発現され(mRNAおよび/またはタンパク質レベルにおいて)、CDK7の活性は上昇し、そして/または不適切である。式(I)、式(Ia)の化合物または下位属またはそれらの化学種、および本明細書に記載されている薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体、同位体形態、および組成物(すなわち、上述の1つまたは複数を含有する組成物)は、CDK7の活性を阻害することがあり、本明細書に記載されているものを含めた、増殖性疾患を処置および/または予防する際に有用であり得る。
【0086】
増殖性疾患はまた、生体試料または対象における細胞のアポトーシスの阻害に関係していることがある。本発明は、いかなる根本的な作用機序によっても限定されないが、CDK7の活性阻害は、アポトーシスの誘導により、細胞毒性を引き起こすことが予想される。本発明の組成物はアポトーシスを誘導し、したがって、増殖性疾患、特にCDK7が過剰発現される、または過度に活性となる増殖性疾患を処置および/または予防するのに有用であり得る。
【0087】
留意される通り、ある特定の実施形態では、本発明の組成物を使用して処置または予防される増殖性疾患はがんである。本明細書において開示されている、または当分野で公知のすべてのタイプのがんであるが、特にCDK7活性に関連することが知られているもの(例えば、過活性、過剰発現または誤発現)が、本発明の範囲内にあるものとして企図されている。
【0088】
ある特定の実施形態では、増殖性疾患は、血液がんであり、これは、造血組織がんもしくは血液学的がんまたは悪性腫瘍とも称され得る。より詳細には、および様々な実施形態では、血液がんは、急性リンパ性白血病(ALL;例えば、B細胞ALLまたはT細胞ALL)、急性骨髄性白血病(AML;例えば、B細胞AMLまたはT細胞AML)、慢性骨髄性白血病(CML;例えば、B細胞CMLまたはT細胞CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL;例えば、B細胞CLL(例えば、有毛細胞白血病)またはT細胞CLL)、慢性好中球性白血病(CNL)または慢性骨髄単球性白血病(CMML)などの白血病であり得る。血液がんはまた、ホジキンリンパ腫(HL;例えば、B細胞HLまたはT細胞HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL、これは侵襲性とみなすことができる;例えば、B細胞NHLまたはT細胞NHL)、濾胞性リンパ腫(FL)、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、B細胞リンパ腫(例えば、脾辺縁帯B細胞リンパ腫)、原発性縦隔B細胞リンパ腫(例えば、脾辺縁帯B細胞リンパ腫)、原発性縦隔B細胞リンパ腫などの辺縁帯リンパ腫(MZL)、バーキットリンパ腫(BL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(すなわち、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫または原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫などのリンパ腫とすることもできる。B細胞NHLは、びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL;例えば、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL;例えば、胚中心B細胞様(GCB)DLBCLまたは活性化B細胞様(ABC)DLBCL))であり得、T細胞NHLは、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫または末梢T細胞リンパ腫(PTCL)であり得る。次に、PTCLは、菌状息肉腫またはセザリー症候群などの皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、結節外ナチュラルキラーT細胞リンパ腫、腸管症T型細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫または未分化大細胞型リンパ腫であり得る。本発明は、いずれか特定の原因または症状を有する血液がんを処置または予防することに限定されないが、骨髄内の幹細胞が増殖することがあり、これにより、骨髄、および本明細書に記載されている化合物に対する標的内の主な細胞タイプになる。白血病細胞は、リンパ節、脾臓、肝臓および腎臓などの血液および浸潤臓器に蓄積し得る。一部の実施形態では、本開示の化合物またはその特定の形態は、白血病またはリンパ腫の処置または予防に有用である。
【0089】
他の実施形態では、増殖性疾患は、その原発部位または転移性のどちらかと考えられる固形腫瘍により特徴付けられる。例えば、様々な実施形態では、本明細書に記載されている通りに処置もしくは予防されるがんまたは腫瘍は、聴神経鞘腫;腺癌;副腎がん;肛門がん;血管肉腫(例えば、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangio-endotheliosarcoma)、血管肉腫);虫垂がん;良性単クローンガンマグロブリン血症(意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)としても知られている);胆道がん(例えば、胆管細胞癌);膀胱がん;乳がん(例えば、乳房の腺癌、乳房の乳頭状癌、乳腺がん、乳房の髄様癌(これらのいずれも、HR+(ER+またはPR+)、HER2+、HR-(エストロゲン受容体もプロゲステロン受容体も有していない)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC;ER-/PR-/HER2-)またはトリプルポジティブ乳がん(ER+/PR+/HER2+)などの特定のプロファイルを有する対象に存在することがある));脳がん(例えば、髄膜腫、神経膠芽腫、神経膠腫(例えば、星状細胞腫、乏突起神経膠腫)、髄芽腫);気管支がん;カルチノイド腫瘍(これは、良性の場合もある);子宮頸がん(例えば、子宮頸部腺癌);絨毛癌;脊索腫;頭蓋咽頭腫;結腸直腸がん(CRC、例えば、結腸がん、直腸がんまたは結腸直腸腺癌)などの大腸に存在するがん;結合組織がん;上皮性癌;上衣腫;内皮肉腫(endothelio-sarcoma)(例えば、カポジ肉腫または多発性特発性出血性肉腫);子宮内膜がん(例えば、子宮がん、子宮肉腫);食道がん(例えば、食道の腺癌、バレット腺癌);ユーイング肉腫(または胎児性横紋筋肉腫または胞巣型横紋筋肉腫などの他の小児肉腫);眼がん(例えば、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫);家族性好酸球増加症;胆嚢がん;胃がん(例えば、胃腺癌);胃腸管間質腫瘍(GIST);胚細胞がん;頭頸部がん(例えば、頭頸部扁平上皮癌、口腔がん(例えば、口腔扁平上皮癌)、喉頭がん(例えば、喉頭がん、咽頭がん、鼻咽腔がん、中咽頭がん));下咽頭がん;炎症性筋線維芽細胞性腫瘍;免疫球性アミロイドーシス;腎臓がん(例えば、腎芽腫、別名ウィルムス腫瘍、腎細胞癌);肝臓がん(例えば、肝細胞がん(HCC)、悪性肝細胞がん);肺がん(例えば、気管支原性癌、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、腺癌、扁平上皮癌または肺の大細胞癌);平滑筋肉腫(LMS);平滑筋肉腫(例えば、全身性肥満細胞症);口腔がん;筋肉がん;骨髄異形成症候群(MDS);中皮腫;骨髄増殖性障害(MPD)(例えば、真性多血症(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(AMM)、別名、骨髄線維症(MF)、慢性特発性骨髄線維症、好酸球増多症候群(HES));神経芽細胞腫;神経線維腫(例えば、1型または2型神経線維腫症(NF)、神経鞘腫症);神経内分泌がん(例えば、胃腸膵臓神経内分泌腫瘍(GEP-NET)、カルチノイド腫瘍);骨肉腫(例えば、骨がん);卵巣がん(例えば、嚢胞腺癌、卵巣胎児性癌、卵巣腺癌、HGSOC、LGSOC、上皮性卵巣がん(例えば、卵巣明細胞癌または粘液性カルシノア)、性索間質性腫瘍(顆粒膜細胞)および子宮内膜腫瘍);乳頭腺癌;膵臓がん(外分泌腫瘍(例えば、膵臓腺癌、膵管腺癌(PDAC)であるかどうかを問わず))、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)または神経内分泌腫瘍(例えば、PNETまたは膵島細胞腫瘍);陰茎がん(例えば、陰茎と陰嚢のパジェット病);松果体腫;原発性腹膜がん、原始神経外胚葉性腫瘍(PNT);形質細胞新形成;腫瘍随伴症候群;前立腺がん(これは、去勢抵抗性(例えば、前立腺腺癌)であってもよい);横紋筋肉腫;唾液腺がん;皮膚がん(例えば、扁平上皮癌(SCC)、角化棘細胞腫(KA)、黒色腫、基底細胞性癌(BCC));小腸(small bowel)がんまたは小腸(small intestine)がん;軟組織肉腫(例えば、悪性線維性組織球腫(MFH)、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)、軟骨肉腫、線維肉腫、粘液肉腫);脂腺癌;汗腺癌;滑膜腫;精巣がん(例えば、精上皮腫、精巣胎児性癌);甲状腺がん(例えば、甲状腺の乳頭状癌、甲状腺乳頭癌(PTC)、甲状腺髄様がん);尿道がん;膣がん;および外陰がん(例えば、外陰部のパジェット病)である。本発明者らは、口腔、咽頭、食道、胃、大腸または小腸、直腸および肛門のがんを含めた、GI管のどこかに存在するがんを指すために用語「胃腸(GI)管がん」を使用する。一部の実施形態では、増殖性疾患は、病理学的血管新生に関連し、本発明の方法および本明細書に記載されている化合物(またはその任意の特定の形態)の使用は、がん(例えば、血液がんまたは固形腫瘍)の処置の文脈において、病理学的血管新生の阻害を包含する。上記の通り、がんは、神経内分泌がんであり得、このような腫瘍は、それらが存在する臓器に関わりなく、本明細書に記載されている通りに処置され得る。
【0090】
ある特定の実施形態では、増殖性疾患は炎症性疾患である。本明細書において開示されている(上記の定義を参照されたい)または当分野で公知のすべてのタイプの炎症性疾患が、本発明の範囲内にあると企図されている。ある特定の実施形態では、炎症性疾患は関節リウマチである。一部の実施形態では、増殖性疾患は自己炎症性疾患である。本明細書において開示されている(上記の定義を参照されたい)または当分野で公知のすべてのタイプの自己炎症性疾患が、本発明の範囲内にあると企図されている。一部の実施形態では、疾患は、自己免疫疾患(上記の自己免疫疾患の定義を参照されたい)である。本明細書において開示されているまたは当分野で公知のすべてのタイプの自己免疫疾患が、本発明の範囲内にあると企図されている。
【0091】
本明細書に記載されている治療的方法または予防的方法、および「使用」は、1つまたは複数の追加の治療活性剤(すなわち、化合物または本発明の他の組成物(例えば、本明細書に記載されている化合物の特定の形態)とは区別される「第2の」薬剤)を本発明の組成物(例えば、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種、または薬学的に許容されるそれらの塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体もしくは同位体形態、またはこのような化合物もしくはその特定の形態(例えば、必要に応じて異性体である薬学的に許容されるその塩)を含有する組成物)と組み合わせて投与するステップを含むことができる。本発明者らは、このような方法および使用を「併用療法」と称することがあり、本発明者らは、本明細書に記載されているいずれの化合物またはいずれのその特定の形態も、投与される、または併用療法での使用における「第1の」治療活性剤であり得ることを繰り返し述べている。「第1の」および「第2の」という表示は、第1の薬剤および第2の薬剤が投与される順序または方法を限定しないで、2つの異なる薬剤を指す都合のよい方法を提供する。したがって、患者は、本発明の化合物を服用する前に、本明細書に記載されている1種または複数の第2の薬剤を服用してもよい。実際に、および留意される通り、患者は、本発明の化合物の投与前に、第2の薬剤に対して不応性になったがんを有することがある。例えば、本発明の化合物または医薬組成物は、CDK4/6阻害剤を単独で、またはアロマターゼ阻害剤、選択的エストロゲン受容体モジュレーターまたは選択的エストロゲン受容体ディグレーダー(selective estrogen receptor degrader)のうちの1つまたは複数と組み合わせて使用した処置に抵抗性となった、または抵抗性となるリスクにある患者を処置するために使用または投与することができる。
【0092】
第2の薬剤には、以下に限定されないが、抗増殖剤、抗がん剤、抗糖尿病剤、抗炎症剤、免疫抑制剤および鎮痛剤が含まれる。第2の薬剤は、必ずしもではないが、生体試料または対象における本発明の化合物または組成物(すなわち、「第1の」薬剤)により誘導されるCDK7の阻害を相乗的に増強することがある。第1および第2の薬剤の組合せ物は、第1の薬剤なしに第2の薬剤を使用する処置に抵抗性の増殖性疾患を処置する際に有用であり得る。この事象では、および上で明記した通り、本発明の化合物またはその特定の形態、または本発明の組成物(例えば、本明細書に記載されている医薬組成物)は、患者が以前に投与された治療剤に抵抗性となったと判定された後に投与され得る。医療技術の当業者は、患者のがんが処置の最初または処置の間のどちらかにおいて処置に応答しない抵抗性がんの現象を理解する。抵抗性がんは、不応性と呼ばれることもあり、本明細書に記載されているいずれの処置法または使用も、抵抗性または不応性がん(例えば、上記のタイプのいずれかを含む血液がん、または上に列挙したものから選択されるいずれかのがんを含めた固形腫瘍により特徴付けられる増殖性疾患(例えば、聴神経鞘腫、腺癌、副腎がんなど、および何らかの疑念がある場合、乳房、腸、肺、膵臓、前立腺のがんおよびユーイング肉腫を含む))に施用され得る。したがって、本明細書に記載されている患者を処置する方法は、追加剤/第2の薬剤として本明細書に記載されているもののいずれかを含めた、以前の治療剤による処置に抵抗性または不溶性であるがんを有する患者を特定または選別するステップを含むことができ、本発明の化合物、その任意の特定の形態、およびこのような化合物またはその任意の特定の形態を含有する医薬組成物は、このような患者を処置する際に有用である/使用される。CDK7過剰発現は、ホルモン受容体ポジティブ乳がん(HR乳がん)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、急性骨髄性白血病(AML)、小細胞肺がん(SCLC、例えば、神経内分泌SCLC(NE SCLC))、食道扁平上皮癌、神経芽細胞腫、高悪性度神経膠腫、卵巣がん、固形腫瘍および他の血液悪性腫瘍に関連している。したがって、本明細書に記載されている処置の方法では、患者は、これらのタイプのがんのいずれかを有することができ、本発明の化合物、その任意の特定の形態、およびそれらを含有する医薬組成物は、このような患者を処置する際に、有用である/使用される。
【0093】
本発明の併用療法では、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種または本明細書に記載されている特定の形態(例えば、薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体または同位体形態)は、1種または複数の追加の(すなわち、別の)治療剤と同時に、その前にまたはその後に投与することができる。追加の治療剤はそれぞれ、ある用量で、および/またはそのような特定の薬剤に関して決定された投与レジメンに従い、投与され得る(例えば、商業的に供給される薬剤に付随する製品インサートにおいて説明され得る、規制当局(例えば、米国食品医薬品局(FDA)または他の国における類似の目的の機関)により承認されたある用量または投与レジメン)。追加の治療剤はまた、互いに、および/または単回用量で本明細書に記載されている化合物または組成物と一緒に投与されてもよく、または様々な用量で個別に投与されてもよい。レジメンに使用するための特定の組合せ物は、本発明の化合物と追加/第2の治療薬剤のうちの1種または複数との適合性、ならびに/または実現するための所望の治療効果および/もしくは予防効果を考慮する。一般に、組み合わせて利用される追加/第2の治療薬剤は、それらが個々に利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが予想される。したがって、一部の実施形態では、組合せ物に利用されるレベルは、個々に利用されるものよりも少ない。
【0094】
第2の薬剤は、以下に限定されないが、抗増殖剤、抗がん剤、抗糖尿病剤、抗炎症剤、免疫抑制剤または鎮痛剤であり得る。このような治療剤は、薬物化合物(例えば、FDAまたは欧州医薬品庁により承認を受けた化合物)、ポリペプチド(核タンパク質、ムコタンパク質、グリコタンパク質、リポタンパク質および任意の標的結合性構造からなる抗体を含み、ポリペプチドは、合成であるかまたは天然に存在する)、炭水化物(例えば、単糖、オリゴ糖および多糖)、タンパク質、ステロイド、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよび核酸に連結した低分子(例えば、DNAおよびRNAであり、長さに関わらず、RNAiのために構成された任意のRNAを含む(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはshRNA))、脂質、ビタミンおよび細胞(例えば、遺伝子組換えされた細胞(例えば、CAR-T治療法に好適な遺伝子操作された免疫細胞)、または同種異系造血細胞移植(HCT)として投与される細胞)などの有機小分子を含む。
【0095】
ある特定の実施形態では、追加/第2の治療薬剤は、APG-1252、APG-2575、BP1002(プレキシゲベルセン)、オブリメルセン(G3139)として知られているアンチセンスオリゴヌクレオチド、S55746/BCL201またはベネトクラックス(例えば、Venclexta(登録商標)として上市されているベネトクラックス錠剤)などのBcl-2阻害剤;アルボシジブ/DSP-2033/フラボピリドール、AT7519、AZD5576、BAY1251152、BAY1143572、CYC065、ナノフラボピリドール、NVP2、セリシクリブ(CYC202)、TG02、TP-1287、VS2-370またはボルシクリブ(以前のP1446A-05)などのCDK9阻害剤;フルベストラント(例えば、Faslodex(登録商標)および他のものとして上市されている)などのホルモン受容体(例えば、エストロゲン受容体)分解剤;CDX-301、CG’806、CT053PTSA、クレノラニブ(例えば、ベシル酸クレノラニブ)、ENMD-2076、FF-10101-01、FLYSYN、ギルテリチニブ(ASP2215)、HM43239、レスタウチニブ、ポナチニブ(例えば、Iclusig(登録商標)として上市されている。以前のAP24534)、NMS-088、ソラフェニブ(例えば、Nexavar(登録商標)として上市されている)、スニチニブ、パクリチニブ、ペキシダルチニブ/PLX3397、クイザルチニブ、ミドスタウリン(例えば、Rydapt(登録商標)として上市されている)、SEL24、SKI-G-801またはSKLB1028などのFlt3(FMS様チロシンキナーゼ3)阻害剤;オラパリブ(例えば、Lynparza(登録商標)として上市されている)、ルカパリブ(例えば、Rubraca(登録商標)として上市されている)、タラゾパリブ(例えば、Talzenna(登録商標)として上市されている)、ベリパリブ(ABT-888)またはニラパリブ(例えば、Zejula(登録商標)として上市されている)などのPARP阻害剤;ABBV-075、BAY-299、BAY-1238097、BMS-986158、CPI-0610、CPI-203、FT-1101、GS-5829、GSK-2820151、GSK-525762、I-BET151、I-BET762、INCB054329、JQ1、MS436、OTX015、PFI-1、PLX51107、RVX2135、TEN-010、ZEN-3694またはその全体が参照により本明細書に組み込まれている米国出願第12/810,564号(現在は米国特許第8,476,260号)に開示されている化合物などのBET阻害剤;シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、Eloxatin(登録商標)として上市されている)、ネダプラチン、カルボプラチン(例えば、Paraplatin(登録商標)として上市されている)、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン(JM216)または四硝酸トリプラチンなどの白金をベースとする治療剤;BPI-1178、G1T38、パルボシクリブ(例えば、Ibrance(登録商標)として上市されている)、リボシクリブ(例えば、Kisqali(登録商標)として上市されている)、ON123300、トリラシクリブまたはアベマシクリブ(例えば、Verzenio(登録商標)として上市されている)などのCDK4/6阻害剤;トラメチニブ(例えば、Mekinist(登録商標)として上市されている)、コビメチニブまたはビネメチニブなどのMEK阻害剤;PI3K/AKT/mTOR経路の阻害(例えば、ゲダトリシブ)剤;または必要に応じてクラスI(例えば、クラスIA)の、および/もしくは必要に応じて特定のPI3Kアイソフォームを指向するホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3キナーゼ)阻害剤である。PI3K阻害剤は、アピトリシブ(GDC-0980)、イデラリシブ(例えば、Zydelig(登録商標)として上市されている)、コパンリシブ(例えば、Aliqopa(登録商標)として上市されている)、デュベリシブ(例えば、Copiktra(登録商標)として上市されている)、ピクチリシブ、アルペリシブ(例えば、Piqray(登録商標)として上市されている)またはカペシタビンであり得る。
【0096】
他の実施形態では、追加剤/第2の薬剤は、カペシタビン(例えば、Xeloda(登録商標)として上市されている)であり得る。他の実施形態では、追加剤/第2の薬剤は、ゲムシタビン(例えば、TNBC、CRC、SCLCまたは膵臓がん(例えば、PDAC)を処置するために本発明の化合物と組み合わされる)であり得る。他の実施形態では、追加剤/第2の薬剤は、ピリミジンアナログである5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤であり得、これは、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態、およびロイコボリン、メトトレキセートまたはオキサリプラチンのうちの1つもしくは複数のものと組み合わせて使用することができる。他の実施形態では、追加剤/第2の薬剤は、エキセメスタンまたはアナストラソールなどのアロマターゼ阻害剤であり得る。
【0097】
APG-1252は、SCLCまたは別の固形腫瘍を有する患者に、28日間のサイクルで、3週間、毎週2回、静脈内に10~400mgの間(例えば、160mg)を投与すると、早期臨床試験において有望であることを示したデュアルBcl-2/Bcl-xL阻害剤である(Lakhani et al., J. Clin. Oncol. 36:15_suppl, 2594およびClinicalTrials.gov識別番号NCT03080311を参照されたい)。APG-2575は、イブルチニブと組み合わせたFLおよびDLBCLの前臨床研究において有望であることを示したBcl-2選択的阻害剤であり(Fang et al., AACR Annual Meeting 2019, Cancer Res. 79(13 Suppl):Abstract No. 2058を参照されたい)、血液がんを有する患者に対して単剤処置として臨床試験が開始された。用量漸増研究では、患者は、1サイクルとして4週間連続して、経口により1日1回、20mgの投与を受けている。MTDを特定するため、50、100、200、400、600および800mgの漸増が計画され(ClinicalTrials.gov識別番号NCT03537482を参照されたい)。BP1002は、他のアンチセンスアナログほど有害作用を有さないことがあるBcl-2 mRNAを標的とする非電荷P-エトキシアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドであり、4日間、BP1002と共にインキュベートしたヒトリンパ腫細胞系、およびSCIDマウスに埋め込まれたCJ細胞(形質変換FL細胞)の成長を阻害するのに有望であることを示した(Ashizawa et al., AACR Annual Meeting 2017, Cancer Res. 77(13 Suppl):Abstract No. 5091を参照されたい)。BP1002もまた、AMLを有する患者にシタラビン(LDAC)と組み合わせて投与されている(ClinicalTrials.gov識別番号NCT04072458を参照されたい)。S55746/BCL201は、経口利用可能な選択的Bcl-2阻害剤であり、マウスでは、2つの血液がん異種移植片モデルにおいて抗腫瘍効力があることを実証した(Casara et al., Oncotarget 9(28):20075-88, 2018)。CLLまたはB細胞NHL(FL、MCL、DLBCL、SLL、MZLおよびMMを含む)を有する患者への、最大で1500mgの用量で、50または100mgのS55746を含有するフィルムコート錠剤を投与する第I相用量漸増研究を設計した(ClinicalTrials.gov識別番号NCT02920697を参照されたい)。ベネトクラックス錠剤は、CLLまたはSLLを有する成人患者を処置するため、および少なくとも75歳であるか、または強力な誘導化学療法の使用不可能にする共存症を有する患者において、新たに診断されたAMLを処置するため、アザシチジンまたはデシタビンまたは低用量のシタラビンと組み合わせて承認されている。CLL/SLLの投与は、5週間の強化スケジュールの後に行うことができ、AMLの投与は、4日間の強化スケジュールの後に行うことができ、どちらも、他の適切な情報と共に製品インサートに記載されている(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,546,399号;同第9,174,982号;および同第9,539,251号も参照されたい)。アルボシジブは、AMLを有する患者において、シタラビン/ミトキサントロンまたはシタラビン/ダウノルビシンと組み合わせて研究が行われ、投与の詳細は、識別番号NCT03563560を有するClinicalTrials.govにおいて入手可能である(Yeh et al., Oncotarget 6(5):2667-2679, 2015, Morales et al., Cell Cycle 15(4):519-527, 2016およびZeidner et al., Haematologica 100(9):1172-1179, 2015も参照されたい)。AT7519は、不応性固形腫瘍を有する適格患者への用量漸増形式で投与されている。臨床活性の証拠がいくらか存在するが、QTc長期化が見られたので、Mahadevanらにより記載されている用量スケジュールでのさらなる開発は行われなかった(J. Clin. Oncol. ASCO Abstract No. 3533;MMにおいてAT7519の前臨床活性を説明する、Santo et al., Oncogene 29:2325-2336, 2010も参照されたい)。AZD5576は、ナノモル濃度レベルで、乳がんおよび肺がん細胞系におけるアポトーシスを誘導し(Li et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 27(15):3231-3237, 2017を参照されたい)、NHLの処置の場合、単独で、およびアカラブルチニブと組み合わせて試験されている(AACR 2017 Abstract No. 4295を参照されたい)。BAY1251152は、進行性血液がんを有する患者において、MTDを特徴付ける第I相臨床試験の対象であった。この薬剤は21日間のサイクルで毎週、注入された(ClinicalTrials.gov識別番号NCT02745743を参照されたい;Luecking et al., AACR 2017 Abstract No. 984もやはり参照されたい)。ボルシクリブは、MCL-1を抑制し、BCL2阻害剤に対する高いリスクのDLBCLを感作する、臨床段階にある経口CDK9阻害剤である。Deyら(Scientific Reports 7:18007, 2017)は、ボルシクリブおよびベネトクラックスを組み合わせると、高いリスクにあるDLBCL患者の小集団に有望であることを示唆している(ClinicalTrials.gov識別番号NCT03547115もまた参照されたい)。フルベストラントは、進行性ホルモン受容体(HR)-ポジティブ乳がん、HER2-ネガティブ乳がんを有する閉経後女性、他の抗エストロゲン治療法による処置、およびパルボシクリブ(Ibrance(登録商標))と組み合わせた処置の後にその疾患が進行したHRポジティブ転移性乳がんを有する閉経後女性への投与に承認されている。フルベストラントは、1日目、15日目および29日目、およびこれ以降毎月1回、500mgまたは250mg(中度の肝障害を有する患者の場合、一層少ない用量が推奨される)で筋肉内注射することにより投与される(追加情報に関しては、製品インサートを参照されたい;それらの各々の全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,744,122号;同第7,456,160号;同第8,329,680号;および同第8,466,139号も参照されたい)。ポナチニブは、臨床試験において、CMLまたはALL(ClinicalTrials.gov識別番号NCT0066092072、NCT012074401973、NCT02467270、NCT03709017、NCT02448095、NCT03678454およびNCT02398825を参照されたい)、ならびに胆道がんおよびNSCLCなどの固形腫瘍(NCT02265341、NCT02272998、NCT01813734、NCT02265341、NCT02272998、NCT01813734、NCT02265341、NCT02272998、NCT01813734、NCT01935336、NCT03171389およびNCT03704688;Tan et al., Onco. Targets Ther. 12:635-645, 2019による総説も参照されたい)を有する患者に投与されている。投与レジメンに関する追加情報は、製品インサートに見出すことができる。それらの各々の全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,114,874号;同第9,029,533号;および同第9,493,470号も参照されたい。ソラフェニブは、腎臓および肝臓がん、AML、および放射活性ヨウ素抵抗性の進行性甲状腺がんを処置するために承認されており、デスモイド型線維腫症を有する患者において、臨床試験が開始された(ClinicalTrials.gov識別番号NCT02066181を参照されたい)。投与量に関する情報は、製品インサートに見出すことができ、このインサートは、400mgの錠剤2個を1日2回、投与するよう助言している。それらの各々の全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,235,576号;同第7,351,834号;同第7,897,623号;同第8,124,630号;同第8,618,141号;同第8,841,330号;同第8,877,933号;および同第9,737,488号も参照されたい。ミドスタウリンは、AML、MDSまたは全身性肥満細胞症を有する患者に投与されており、慣用的な誘導治療法および地固め療法と組み合わせた場合、FLT3変異AML患者の生存を有意に延ばすことを見出されている(Stone et al., ASH 57th Annual Meeting, 2015およびGallogly et al., Ther. Adv. Hematol. 8(9):245-251, 2017を参照されたい;臨床は、製品インサート、ClinicalTrials.gov識別番号NCT03512197、およびそれらのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,973,031号;同第8,222,244号;および同第8,575,146号も参照されたい)。アルペリシブは、内分泌に基づくレジメン時またはその後に、進行後のFDA承認された検査によって検出すると、HR+/HER2-/PIK3CA変異した、進行性または転移性乳がんを有する閉経後女性および男性を処置するために、フルベストラントと組み合わせるよう表示されているキナーゼ阻害剤である。推奨用量は、食事と共に1日1回、経口摂取される300mg(2個の150mg錠剤)であり、これは、すべての化学療法剤について、有害反応を管理するため、中断されることがあり、減量されることがあり、または中止されることがある。パクリタキセルは、静脈注入の前に、好適な非経口流体を用いて希釈するよう意図されている非水溶液剤として供給されている。Taxol(登録商標)という商標名では、30mg、100mgおよび300mgのバイアルで供給され、本明細書に記載されている併用療法に使用されて、膀胱、乳房、食道、卵管または卵巣、肺、皮膚(黒色腫)および前立腺のがんを含めた、様々ながんを処置することができる。パルボシクリブは、HR+/HER2-進行性または転移性乳がんにおいて、経口により1日125mgを推奨用量での使用の承認を受けている。パルボシクリブは、単独で、またはアロマターゼ阻害剤またはフルベストラントと組み合わせてのどちらか一方で、本発明の化合物と共に使用され得る。ここで提示されている、および公表されている情報を使用して、本発明の方法および使用を実践することができる。疑念がある場合、本発明は、本発明の化合物またはその特定の形態、およびいずれか1つまたは複数の追加剤/第2の薬剤を必要とする併用療法を包含し、これは、単一使用に現在承認されている投与量(例えば、上記の通り)でまたはそれ未満で本明細書に記載されている患者に投与され得る。3つの組合せ物は、式(I)、式(Ia)の化合物、それらの化学種またはそれらの特定の形態とアルペリシブおよびフルベストラントまたはアルペリシブおよびタキサンとを含む(例えば、NSCLCを処置するため)。
【0098】
一実施形態では、処置の方法は、肉腫(例えば、骨肉腫、横紋筋肉腫またはユーイング肉腫)に罹患している患者に、本明細書に記載されている化合物(例えば、式Iまたは式(Ia)の化合物(例えば、化合物100、101または102))またはその特定の形態、および治療有効量のPARP阻害剤(例えば、オラパリブ(例えば、Lynparza(登録商標)として上市されている)、ルカパリブ(例えば、Rubraca(登録商標)として上市されている)、タラゾパリブ(例えば、Talzenna(登録商標)として上市されている)、ベリパリブ(ABT-888)またはニラパリブ(例えば、Zejula(登録商標)として上市されている))を投与するステップを含む。このような「使用」も本発明の範囲内にある。
【0099】
キットも、本発明によって包含される(例えば、医薬パック)。本キットは、本明細書において説明されている疾患のいずれかを予防および/または処置するために使用することができる。提供されるキットは、前記化合物または組成物を保管、再構成および/または投与するための、本発明の医薬組成物または化合物および容器(例えば、バイアル、アンプル、ボトル、シリンジおよび/またはディスペンサーパッケージまたは他の好適な容器)を含んでもよい。一部の実施形態では、提供されるキットは、本発明の医薬組成物もしくは化合物を希釈または懸濁するための医薬品用賦形剤を含む第2の容器を必要に応じてさらに含んでもよい。一部の実施形態では、容器および第2の容器中で提供される本医薬組成物または前記化合物が一緒にされて、一単位剤形を形成する。一部の実施形態では、提供されるキットは、本発明の医薬組成物または化合物と組み合わせて投与される追加の治療剤を含む第2および第3の容器を必要に応じてさらに含んでもよい。本キットは、その中(例えば、チューブ、シリンジ、ニードル、滅菌包帯、テープなど)に入れられた活性剤を投与するのに有用な任意のタイプの身の回り品も含むことができる。ある特定の実施形態では、本キットは、対象において、増殖性疾患を予防および/または処置するのに有用である。ある特定の実施形態では、本キットは、増殖性疾患を予防および/または処置するため、前記化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、同位体により標識されている誘導体、またはそれらの医薬組成物を対象に投与するための指示書をさらに含む。
【0100】
さらに別の態様では、本発明は、対象において、増殖性疾患の処置に使用するための、式Iまたは式Iaの化合物、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩、溶媒和物および水和物を提供する。ある特定の実施形態では、対象において、増殖性疾患の処置に使用するための、本明細書において記載されている化合物、ならびに薬学的に許容されるその塩および組成物が本発明により提供される。ある特定の実施形態では、対象において、細胞成長の阻害に使用するための、本明細書において記載されている化合物、ならびに薬学的に許容されるその塩および組成物が本発明により提供される。ある特定の実施形態では、細胞において、アポトーシスの誘導に使用するための、本明細書において記載されている化合物、ならびに薬学的に許容されるその塩および組成物が本発明により提供される。ある特定の実施形態では、転写の阻害に使用するための、本明細書において記載されている化合物、ならびに薬学的に許容されるその塩および組成物が本発明により提供される。
【実施例
【0101】
本明細書において記載されている化合物は、以下に記載されている合成プロトコルに従い、容易に入手可能な出発原料から調製することができる。代替的に、当業者は、開示されたプロトコルを容易に修正することができる。例えば、工程条件(例えば、反応温度、反応時間、反応剤のモル比、溶媒、圧力など)が示されている場合、他の工程条件も使用され得ることが理解される。
【0102】
さらに、当業者には明白であるが、ある官能基が望ましくない反応を受けるのを防止するため、保護基が使用されてもよい。特定の官能基に好適な保護基、ならびに保護および脱保護の好適な条件の選択は、当分野で周知である。例えば、様々な保護基、ならびにその導入および除去に関するガイダンスは、Greeneら(Protecting Groups in Organic Synthesis, Second Edition, Wiley, New York, 1991、およびそれらに引用されている参照文献)により開示されている。
【0103】
(実施例1)
ベンジル(2R,5R)-5-アミノ-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシレートおよびベンジル(2S,5S)-5-アミノ-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシレートの合成
工程1:ベンジル5-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシレート
【化28】
【0104】
テトラヒドロフラン(THF;50mL)およびHO(50mL)中に市販のラセミのトランスtert-ブチルN-(6-メチル-3-ピペリジル)カルバメート(5g、23.33mmol、1当量)およびNaHCO(13.72g、163.32mmol、7当量)を含有する溶液に、本発明者らは、0℃でCbzCl(5.97g、35.00mmol、4.98mL、1.5当量)を滴下して加えた。この混合物を15℃で2時間、撹拌し、次に水(50mL)に注ぎ入れて、酢酸エチル(EtOAc;50mL×3)により抽出した。合わせた有機層をブライン(50mL×3)により洗浄し、NaSOで乾燥させて濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、残留物を中圧液体クロマトグラフィー(MPLC;SiO、PE:EtOAc=5:1~1:1)によって精製すると、表題化合物(9.7g、18.04mmol、77.32%収率、64.8%純度)が黄色固体として得られた。
工程2:ベンジル(2R,5R)-5-アミノ-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシレートおよびベンジル(2S,5S)-5-アミノ-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシレート:
【化29】
【0105】
EtOAc(100mL)中のラセミのトランスベンジル5-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシレート(9.7g、27.84mmol、1当量)の混合物に、本発明者らはHCl/EtOAc(15mL、4M)を加え、この混合物を15℃で1時間、撹拌した。次に、本発明者らはこの混合物を濾過して、フィルターケーキを採集した。この固体をメタノール(MeOH;15mL)に溶解させ、pHを強酸性陽イオン交換樹脂(ここでは、AMBERLYST(登録商標)A21)を使用して9に調節した後、この混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残留物を超臨界流体クロマトグラフィー(SFC;カラム:ダイセルによりCHIRALCEL(登録商標)として販売されている(クロマトグラフィーにおいて使用するための化学品)ODH(250mm×30mm、5μm);移動相:[0.1%NH3.O MeOH];B%:28%~28%、16分間)により分離すると、表題化合物1(1.9g、SFC:Rt=2.264分、93.2% ee、ピーク1)および表題化合物2(1.9g、SFC:Rt=2.593分、98.6%ee、ピーク2)がどちらも明黄色固体として得られた。ピーク1は構造3である。ピーク2は構造4である。
【0106】
(実施例2)
7-ジメチルホスホリル-3-[2-[[(3S,6S)-6-メチル-3-ピペリジル]アミノ]-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]-1H-インドール-6-カルボニトリル(化合物100)の合成
工程1:ベンジル(2S,5S)-5-[[4-(7-クロロ-6-シアノ-1H-インドール-3-イル)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシレート
【化30】
【0107】
本発明者らは、N-メチル-2-ピロリドン(NMP;8mL)中、140℃で1時間、7-クロロ-3-[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]-1H-インドール-6-カルボニトリル(0.81g、2.27mmol、1当量)、ベンジル(2S,5S)-5-アミノ-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシレート(732.20mg、2.95mmol、1.3当量)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEAまたはDIPEA;879.41mg、6.80mmol、1.19mL、3当量)からなる混合物を撹拌した。この反応混合物をHO(100mL)により希釈し、EtOAc(50mL×2)により抽出した。合わせた有機層をブライン(100mL×2)により洗浄し、NaSOで乾燥させて濾過し、減圧下で濃縮すると残留物が得られ、これをカラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル=10:1~4:1)により精製すると、表題化合物(1.1g)が黄色固体として得られた。
【0108】
工程2:ベンジル(2S,5S)-5-[[4-(6-シアノ-7-ジメチルホスホリル-1H-インドール-3-イル)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシレート
【化31】
【0109】
本発明者らは、マイクロ波封管中で、ベンジル(2S,5S)-5-[[4-(7-クロロ-6-シアノ-1H-インドール-3-イル)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシレート(1.05g、1.85mmol、1当量)、メチルホスホノイルメタン(720.17mg、9.23mmol、5当量)、KPO(783.45mg、3.69mmol、2当量)、Pd(OAc)(41.43mg、184.54μmol、0.1当量)、xantphos(C3932OP;106.78mg、184.54μmol、0.1当量)およびジメチルホルムアミド(DMF;10mL)からなる混合物を調製し、それを脱気して、これにNをパージした(×3)。次に、この混合物をマイクロ波中、150℃で1時間、撹拌した。この反応混合物をHO(100mL)により希釈し、酢酸エチル(EtOAc;50mL×3)により抽出した。合わせた有機層をブライン(150mL×2)により洗浄し、NaSOで乾燥させて濾過して、減圧下で濃縮すると残留物が得られ、本発明者は、カラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル=10:1~1:1)により精製し、表題化合物(490mg)を黄色油状物として得た。
【0110】
工程3:7-ジメチルホスホリル-3-[2-[[(3S,6S)-6-メチル-3-ピペリジル]アミノ]-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]-1H-インドール-6-カルボニトリル
【化32】
【0111】
ベンジル(2S,5S)-5-[[4-(6-シアノ-7-ジメチルホスホリル-1H-インドール-3-イル)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシレート(440mg、720.64μmol、1当量)のEtOAc(5mL)溶液に、本発明者らは、N下でPd/C(200mg、10%純度)を加えた。本発明者らは、真空下で上記の懸濁液を脱気し、ここにHを数回、パージし、次に、H(15psi)下、20℃でこの混合物を3時間、撹拌した後、これを濾過した。この濾液を濃縮すると、残留物が得られ、本発明者らは、分取HPLC(高速液体クロマトグラフィー;中性条件)によって精製し、表題化合物(142.2mg)を白色固体として得た。
【0112】
液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)により精製するため、この反応物を50mgスケールでの別の反応物と一緒にした。LCMS:ET6034-1492-P1C:(M+H):2.572において477.1(HO中の10~80%ACN(アセトニトリル)、4.5分間)。1H NMR (400 MHz, DMSO (ジメチルスルホキシド)-d6) δ 8.74 (br d, J = 7.89 Hz, 1H), 8.65-8.44 (m, 2H), 8.17 (br d, J = 15.35 Hz, 1H), 7.84 (br t, J = 8.11 Hz, 1H), 7.67 (br t, J = 7.02 Hz, 1H), 3.81 (br s, 1H), 3.10 (br d, J =11.40 Hz, 1H), 2.45-2.38 (m, 1H), 2.02 (d, J = 13.59 Hz, 8H), 1.64 (br d, J = 11.40 Hz, 1H), 1.49-1.34 (m, 1H), 1.11 (br d, J = 10.96 Hz, 1H), 0.97 (br d, J = 5.70 Hz, 3H)
【0113】
(実施例3)
(S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-アミンの合成
【化33】
【0114】
本発明者らは、(S)-tert-ブチル(6-オキソピペリジン-3-イル)カルバメート(1.00g、4.67mmol)(Tetrahedron Letters, 36:8205, 1995)をTHF(47mL)に溶解させ、この溶液を-10℃まで冷却した。塩化ジルコニウム(IV)(2.61g、11.22mmol)を加え、この混合物をこの温度で30分間、撹拌した。臭化メチルマグネシウム溶液(エーテル中の3M、20.25mL、60.75mmol)を加え、この反応混合物を室温までゆっくりと温め、この温度で一晩、撹拌した。この溶液を30%水性NaOHによりクエンチし、EtOAcで希釈して濾過し、次にEtOAcにより3回、抽出した。有機物を一緒にして、硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過して、真空で濃縮すると、粗生成物が黄色油状物として得られ、これを精製することなく使用した。油状物をジクロロメタン(DCM;47mL)に溶解させ、トリフルオロ酢酸(TFA;3.58mL、46.73mmol)を加えた。本発明者らは、この反応混合物を室温で16時間、撹拌し、これを真空で濃縮し、これをDCMと共に数回、共蒸発させると、粗製表題化合物が褐色油状物として得られ、本発明者らはこれをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0115】
(実施例4)
(S)-7-(ジメチルホスホリル)-3-(2-((6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-6-カルボニトリル(化合物101)の合成
工程1:7-ブロモ-1H-インドール-6-カルボン酸
【化34】
【0116】
本発明者らは、臭化ビニルマグネシウム(THF中1.0M(159mL、159mmol))の溶液を-78℃で撹拌し、これにTHF(159mL)中の2-ブロモ-3-ニトロ安息香酸(10.0g、39.8mmol)の溶液を1時間かけて滴下して加えた。この反応混合物を室温に到達させて、その温度で一晩、撹拌した。次に、この反応混合物を飽和水性塩化アンモニウム(150mL)に注ぎ入れて、水性1M HClを使用してpH2へと酸性にした。本発明者らは、EtOAc(3×200mL)により粗生成物を抽出し、この抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、これを濾過してこれを真空で濃縮した。次に、この残留物をDCM(100mL)中で粉末にし、空気流を用いて一晩、乾燥すると表題化合物(7.58g、31.58mmol、79%収率)が明褐色固体として得られた。
工程2:7-ブロモ-1H-インドール-6-カルボキサミド
【化35】
【0117】
本発明者らは、7-ブロモ-1H-インドール-6-カルボン酸(6.58g、27.4mmol)のDMF(54.8mL)溶液を0℃で撹拌し、ここに1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI;8.89g、54.8mmol)を小分けにして加えた。この混合物を5分間、撹拌し、この中間体をLCMSにより観察した。次に、本発明者らは0℃でNHOH(39.5mL、274mmol)を加え、この溶液を5分間、撹拌した。この反応を飽和水性塩化アンモニウム(25mL)および飽和水性塩化ナトリウム(25mL)でクエンチし、次に、2-メチルテトラヒドロフラン(MeTHF;50mL)により希釈した。本発明者らは相を分離し、有機層を再度、飽和水性塩化アンモニウム(25mL)および飽和水性塩化ナトリウム(25mL)により洗浄した。次に、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して真空で濃縮すると、表題化合物が得られ、定量的収率とみなして、これを次の工程に持ち越した。
工程3:7-ブロモ-1H-インドール-6-カルボニトリル
【化36】
【0118】
本発明者らは、0℃でDCM(315mL)中の7-ブロモ-1H-インドール-6-カルボキサミド(7.53g、31.5mmol)の懸濁液にEtN(トリエチルアミン;44.1mL、315mmol)を加え、得られたオレンジ色溶液を本発明者らが均一溶液を得るまでその温度で撹拌した。次に、MsCl(12.2mL、157mmol)を滴下して加え、この溶液を0℃で5分間、撹拌した。本発明者らは、この混合物を酢酸エチルで希釈して、これを飽和水性炭酸水素ナトリウムにより洗浄した後に、水層をさらに酢酸エチルで2回、抽出した。有機層を合わせて、ブラインにより洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過し、真空で濃縮した。残留物をシリカのパッドにより濾過することによって精製すると(酢酸エチルで溶出)、表題化合物(5.80g、26.24mmol、83%収率)が褐色固体として得られた。
工程4:7-ブロモ-3-(2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-6-カルボニトリル
【化37】
【0119】
本発明者らは、2,4-ジクロロ-5-トリフルオロメチルピリミジン(3.66mL、27.2mmol)の1,2-ジクロロエタン(DCE;36.2mL)溶液にAlCl(1.83g、13.6mmol)を加え、得られた懸濁液を80℃で30分間、撹拌した。本発明者らは、この混合物に7-ブロモ-1H-インドール-6-カルボニトリル(2.00g、9.05mmol)を加え、完全に変換するまで(4時間)、得られた赤色溶液を80℃で撹拌した。次に、この反応混合物をMeTHF(100mL)により希釈して水(100mL)で洗浄した。水層を2-MeTHF(100mL)により抽出し、有機抽出物を一緒にして硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過して、真空で濃縮した。2つの可能な位置異性体の形成が、3:1(所望/非所望)の比で観察された。本発明者らは、残留物をC18上の逆相クロマトグラフィー(水中のMeCN(アセトニトリル)、15~80%グラジエント)によって精製すると、表題化合物(1.51g、3.76mmol、42%収率)がベージュ色固体として得られた。1H NMR (500 MHz, DMSO) δ 13.00 (brs, 1H), 9.17 (s, 1H), 8.35 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 8.16 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.71 (d, J = 8.4 Hz, 1H).
工程5:(S)-7-ブロモ-3-(2-((6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-6-カルボニトリル
【化38】
【0120】
本発明者らは、7-ブロモ-3-(2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-6-カルボニトリル(200mg、0.498mmol)、(S)-6,6-ジメチルピペリジン-3-アミン(95.8mg、0.747mmol)およびDIPEA(174μL、0.996mmol)をNMP(4mL)に溶解させ、次に、完全に変換するまで(3時間)、油浴中、130℃でこの反応混合物を撹拌した。この混合物を室温まで冷却し、C18カラムに直接、ロードし、逆相クロマトグラフィー(0.1%FA(ギ酸)を含有する水中の、やはり0.1%FAを含むMeCN、0~100%のグラジエント)によって精製した。表題化合物(245mg、0.497mmol、定量的収率)がベージュ色固体として得られた。
工程6:(S)-7-(ジメチルホスホリル)-3-(2-((6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)-ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-6-カルボニトリル
【化39】
【0121】
本発明者らは、窒素下で、(S)-7-ブロモ-3-(2-((6,6-ジメチルピペリジン-3-イル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)-ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-6-カルボニトリル(180.0mg、0.365mmol)、Xantphos(21.5mg、36.5μmol)、酢酸パラジウム(II)(4.14mg、18.2μmol)およびKPO(85.2mg、0.401mmol)を2.5mLのマイクロ波用バイアル中で一緒にした。ジメチルホスフィンオキシド(73mg、0.912mmol)を無水DMF(1mL)に溶解させ、この溶液を脱気した後、マイクロ波用バイアル中で他の反応剤と一緒にした。次に、反応混合物を含む密封したバイアルをマイクロ波用反応器中、150℃で45分間、加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、C18カラムに直接、ロードし、逆相クロマトグラフィー(10mMの水性ギ酸アンモニウム中のMeCN、pH3.8、15~35%のグラジエント)によって精製した。表題化合物(76mg、0.155mmol、42%収率)がオフホワイト色の固体として得られた。
【0122】
(実施例5)
(3S)-1-ベンジル-5,5-ジメチル-ピペリジン-3-アミンの合成
工程1:メチル(2S)-5-オキソピロリジン-2-カルボキシレート
【化40】
【0123】
本発明者らは、(2S)-5-オキソピロリジン-2-カルボン酸(117g、906.18mmol、1当量)のMeOH(500mL)溶液に0℃でSOCl(215.62g、1.81mol、131.47mL、2当量)を加えた。この混合物を18℃で1時間、撹拌した後、この反応混合物を濃縮した。本発明者らは、残留物をEtOAc(1000mL)およびTEA(トリエチルアミン;150mL)で希釈し、形成した固体を濾過した。この濾液を溶媒蒸発させると、さらなる精製を何ら行うことなく次の工程に直接、使用される表題化合物(147g、粗製)が明黄色油状物として得られた。
工程2:(S)-1-tert-ブチル2-メチル5-オキソピロリジン-1,2-ジカルボキシレート
【化41】
【0124】
本発明者らは、メチル(2S)-5-オキソピロリジン-2-カルボキシレート(147g、1.03mol、1当量)、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン;15.06g、123.24mmol、0.12当量)およびTEA(259.80g、2.57mol、357.35mL、2.5当量)のEtOAc(500mL)溶液に、0℃でtert-ブトキシカルボニルtert-ブチルカーボネート(291.37g、1.34mol、306.71mL、1.3当量)を滴下して加えた。次に、この混合物を20℃で16時間、撹拌した。本発明者らは、次に、この反応混合物をHCl(0.5M、1000mL)、飽和NaHCO(1000mL)、ブライン(1500mL)により洗浄し、これをNaSOで乾燥させて濾過し、これを減圧下で濃縮すると、残留物が得られ、次に、これをメチルtert-ブチルエーテル(MTBE;250mL)から再結晶することにより精製した。この反応混合物を濾過して溶媒蒸発させると、表題化合物が白色固体として得られた(2つの回分を得た;回分1:108g、100%HPLC純度;回分2:53g、90% H NMR純度)。
工程3:(S)-1-tert-ブチル2-メチル4,4-ジメチル-5-オキソピロリジン-1,2-ジカルボキシレート
【化42】
【0125】
本発明者らは、(S)-1-tert-ブチル2-メチル5-オキソピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(20g、82.22mmol、1当量)のTHF(500mL)溶液に、N雰囲気下、-78℃でLiHMDS(リチウムヘキサメチルジシラジド;1M、172.66mL、2.1当量)を滴下して加えた。添加後、この混合物をこの温度で30分間、撹拌した後、本発明者らは、N雰囲気下、-78℃でCHI(35.01g、246.65mmol、15.36mL、3当量)を滴下して加えた。得られた混合物を20℃で2.5時間、撹拌した。この反応混合物を飽和水性NHCl(1000mL)により希釈し、EtOAc(300mL×3)により抽出した。合わせた有機層をブライン(500mL)により洗浄し、NaSOで乾燥させて濾過して、減圧下で濃縮すると残留物が得られ、これをMPLC(SiO、PE:EtOAc=4:1~3:1)により精製すると、表題化合物(8g、25.95mmol、31.56%収率、88%純度)が明黄色固体物として得られた。
工程4:tert-ブチルN-[(1S)-4-ヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)-3,3-ジメチル-ブチル]カルバメート
【化43】
【0126】
本発明者らは、(S)-1-tert-ブチル2-メチル4,4-ジメチル-5-オキソピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(4.3g、15.85mmol、1当量)のTHF(35mL)溶液に、N下、0℃でNaBH(1.80g、47.55mmol、3当量)を少しずつ加えた。添加後、EtOH(エタノール;8.25g、179.09mmol、10.47mL、11.3当量)を0℃で滴下して加えた。得られた混合物を20℃で16時間、撹拌し、次に、飽和水性NHCl(250mL)に注ぎ入れて、EtOAc(100mL×3)により抽出した。合わせた有機層をブライン(250mL)により洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過して減圧下で濃縮すると、表題化合物(3.67g、粗製)が無色油状物として得られ、これをさらなる精製を何ら行うことなく次の工程に直接、使用した。
工程5:[(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-4,4-ジメチル-5-メチルスルホニルオキシ-ペンチル]メタンスルホネート
【化44】
【0127】
本発明者らは、tert-ブチルN-[(1S)-4-ヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)-3,3-ジメチル-ブチル]カルバメート(3.67g、14.84mmol、1当量)およびTEA(6.01g、59.35mmol、8.26mL、4当量)のEtOAc(25mL)溶液に、0℃で塩化メタンスルホニル(5.10g、44.52mmol、3.45mL、3当量)を滴下して加えた。得られた混合物を20℃で12時間、撹拌し、次に、HO(200mL)に注ぎ入れた。EtOAc(50mL×3)を使用して生成物を抽出した。有機層をブライン(30mL)により洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過して溶媒蒸発させると、表題化合物(6.06g、粗製)が無色油状物として得られ、これをさらなる精製を何ら行うことなく次の工程に直接、使用した。
工程6:tert-ブチルN-[(3S)-1-ベンジル-5,5-ジメチル-3-ピペリジル]カルバメート
【化45】
【0128】
フラスコに[(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-4,4-ジメチル-5-メチル-スルホニルオキシペンチル]メタンスルホネート(6.06g、15.02mmol、1当量)、フェニルメタンアミン(5.15g、48.06mmol、5.24mL、3.2当量)およびジメトキシエタン(DME;50mL)を備えた 。本発明者らは、反応混合物を16時間、70℃まで加熱し、次に、これをHO(40mL)に注ぎ入れた。DCM(40mL×3)を使用して生成物を抽出した。有機層をブライン(30mL)により洗浄し、NaSOで乾燥させて濾過し、溶媒蒸発させると粗生成物が得られ、これをMPLC(SiO、PE:EtOAc=20:1~10:1)により2回、精製すると、表題化合物(580mg、1.49mmol、9.91%収率、81.7%純度)が無色油状物として得られた。
工程7:(3S)-1-ベンジル-5,5-ジメチル-ピペリジン-3-アミン
【化46】
【0129】
フラスコにHCl/EtOAc(15mL)中、tert-ブチルN-[(3S)-1-ベンジル-5,5-ジメチル-3-ピペリジル]カルバメート(300mg、942.05μmol、1当量)を備えた。この混合物を25℃で1時間、撹拌し、この後にいくらかの白色沈殿が形成した。本発明者らは、この混合物を濾過し、ケーキをEtOAc(5mL)により洗浄して採集し、真空で乾燥させると、次の工程に直接使用される白色固体として、表題化合物(220mg、738.23μmol、78.36%収率、85.5%純度、HCl)が白色固体として得られた。
【0130】
(実施例6)
(S)-7-(ジメチルホスホリル)-3-(2-((5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-6-カルボニトリル(化合物102)の合成
工程1:(S)-3-(2-((1-ベンジル-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)-7-ブロモ-1H-インドール-6-カルボニトリル
【化47】
本発明者らは、7-ブロモ-3-(2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-6-カルボニトリル(168mg、0.418mmol)、(S)-1-ベンジル-5,5-ジメチルピペリジン-3-アミン(128mg、0.585mmol)およびDIPEA(221μL、1.26mmol)をNMP(2mL)に溶解させた。本発明者らは、完全な変換(4時間)まで、油浴中、130℃で反応混合物を撹拌した。この混合物を室温まで冷却してEtOAcにより希釈し、飽和水性LiClにより洗浄した。有機層を分離して、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して真空で濃縮すると、粗製表題化合物(240mg、0.411mmol、定量的収率)が得られ、これをさらに精製することなく、次の工程に使用した。
工程2:(S)-3-(2-((1-ベンジル-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)-7-(ジメチルホスホリル)-1H-インドール-6-カルボニトリル
【化48】
【0131】
本発明者らは、窒素下で、(S)-3-(2-((1-ベンジル-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)アミノ)-5-(トリフルオロ-メチル)ピリミジン-4-イル)-7-ブロモ-1H-インドール-6-カルボニトリル(240mg、0.411mmol)、Xantphos(24.3mg、41.1μmol)、酢酸パラジウム(II)(4.66mg、20.6μmol)およびKPO(96.0mg、0.452mmol)を2.5mLのマイクロ波用バイアル中で一緒にした。ジメチルホスフィンオキシド(39.2mg、0.494mmol)を無水DMF(1mL)に溶解させ、この溶液を脱気した後、マイクロ波用バイアル中で他の反応剤と一緒にした。次に、反応混合物を含む密封したバイアルをマイクロ波用反応器中、145℃で45分間、加熱した。次に、反応混合物を室温まで冷却し、2-MeTHFで希釈し、飽和水性NaHCOおよびブラインで洗浄した。有機層を分離して硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して真空で濃縮した後、残留物をC18上の逆相クロマトグラフィー(水性10mMのギ酸アンモニウム中のMeCN、pH3.8、0~100%のグラジエント)により精製した。表題化合物(58.0mg、0.10mmol、24%収率)が淡褐色油状物として得られた。
工程3:(S)-7-(ジメチルホスホリル)-3-(2-((5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-6-カルボニトリル
【化49】
【0132】
本発明者らは、窒素雰囲気下、撹拌した(S)-3-(2-((1-ベンジル-5,5-ジメチルピペリジン-3-イル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)-7-(ジメチルホスホリル)-1H-インドール-6-カルボニトリル(58.0mg、0.10mmol)のEtOH(12.5mL)溶液に、Pd/C 10%w/w(1.1mg、0.01mmol)およびBocO(ジ-t-ブチルジカーボネート;65.5mg、0.30mmol)を加えた。この反応混合物から排気して、窒素(×3)を逆充填した後、水素を充填した。次に、この反応混合物を水素雰囲気下、室温で一晩、撹拌した。16時間後、本発明者らは、変換が不完全であることを観察し、したがって、CELITE(登録商標)のパッドにこの反応混合物を濾過して、これを減圧下で濃縮した。次に、この反応を上記の残留物を用いて繰り返した。出発原料がほとんど完全に消費した後(48時間)、この反応混合物をCELITE(登録商標)のパッドにより濾過し、真空で濃縮すると粗生成物が得られ、これを次の工程に使用した。こうして、得られた油状物をDCM(5mL)に再度溶解させ、TFA(0.23mL、3.0mmol)を加えた。この反応混合物を室温で一晩、撹拌した。次に、この混合物を真空で濃縮し、残留物をC18上の逆相クロマトグラフィー(水性10mMギ酸アンモニウム中のMeCN、pH3.8、0~100%のグラジエント)により精製すると、表題化合物(11.11mg、0.023mmol、2工程通算で23%収率)が白色固体として得られた。
【0133】
(実施例7)
CDKキナーゼ活性の阻害。本発明者らは、キャリパー/LabChip EZリーダー(Perkin Elmer、Waltham、MA)を用いて開発した各CDKに関するキナーゼアッセイを使用して、Biortus Biosciences(Jiangyin、Jiangsu Province、P.R.of China)においてCDK7、CDK9、CDK12およびCDK2活性の阻害に関して、いくつかの化合物をアッセイした。これらのアッセイは、以下の構成成分:以下の緩衝液:2-(N-モルホリノ)エタンスルホネート(MES緩衝液、20mM)、pH6.75、0.01%(v/v)Tween(登録商標)20洗剤、0.05mg/mLウシ血清アルブミン(BSA)および2% DMSO中での試験化合物(3倍段階希釈シリーズで10μMから0.508nMまで低下させた様々な濃度)、活性CDKタンパク質(各CDKについて以下に列挙した、表示されているサイクリンを含む)、ATP(各CDK/サイクリンについて以下に列挙したK濃度または2mMのどちらか)および基質ペプチド(以下に列挙)を用いて、27℃でのインキュベート期間の後の、全ペプチドの割合として生じたリン酸化ペプチド基質の量を測定する。
【0134】
具体的には、CDK7阻害アッセイは、上で列挙した緩衝液組成物中の6mM MgClを含む、CDK7/サイクリンH/MAT1複合体(6nM)および「5-FAM-CDK7tide」ペプチド基質(2μM、配列5-FAM-YSPTSPSYSPTSPSYSPTSPSKKKK(配列番号1)を有する合成フルオロフォア標識ペプチドであり、「5-FAM」は、5-カルボキシフルオレセインである)を使用し、この場合、これらの条件下でのCDK7/サイクリンH/MAT1に関する見かけのATP Kは、50μMである。CDK9阻害アッセイは、上で列挙した緩衝液組成物中に10mM MgClを含む、CDK9/サイクリンT1複合体(8nM)および「5-FAM-CDK9tide」ペプチド基質(2μM、配列:5-FAM-GSRTPMY-NH(配列番号2)有する合成フルオロフォア標識ペプチドであり、5-FAMは上で定義されており、NHはC末端アミドを表す)を使用した。CDK12阻害アッセイは、上記の緩衝液組成物中、2mM MgClを含む、CDK12(aa686-1082)/サイクリンK複合体(50nM)および上で定義した「5-FAM-CDK9tide」(2μM)を使用した。CDK2阻害アッセイは、上で列挙した緩衝液組成物中、2mM MgClを含む、CDK2/サイクリンE1複合体(0.5nM)および上で定義した「5-FAM-CDK7tide」(2μM)を使用した。
【0135】
各CDK阻害アッセイについて、27℃でのインキュベート期間は、全ペプチド濃度に対する、各アッセイにおいて生成するリン酸化ペプチド生成物の割合が、非阻害キナーゼに関して約20%(±5%)となるよう選択した(CDK7の場合、35分間、CDK2の場合、35分間、CDK12の場合、3時間、CDK9の場合、15分間)。化合物の滴定を試験し、ペプチド生成物の形成が阻害された場合、これらのデータをあてはめて、最良適合IC50値を生成した。酵素濃度による阻害剤枯渇に関する補正項(Copeland, "Evaluation of Enzyme Inhibitors in Drug Disclover: A Guide for Medicinal Chemists and Pharmacologists," Second Edition, March, 2013; ISBN: 978-1-118-48813-3)を用いて、ATP基質競合的阻害に関するCheng-Prusoff関係(Cheng and Prusoff, Biochem. Pharmacol., 22(23)3099-3108, 1973)により、キナーゼ活性阻害アッセイから、CDK7/サイクリンH/MAT1を除く、各CDK/サイクリンに関するK ATPにおける最良適合IC50値を使用してK値、または各CDK/サイクリンに対する各阻害剤の見かけの親和性を計算した:
【化50】
【0136】
各阻害剤の見かけのK値を計算する代わりに、強結合阻害およびCDK7/サイクリンH/MAT1アッセイの限界値のため、K、または直接的な化合物の結合親和性を、以下に記載する表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して測定した。
【0137】
(実施例8)
CDK7/サイクリンH表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ法。
本発明者らは、Biacore T200表面プラズモン共鳴(SPR)機器(GE Healthcare)を使用して、CDK7/サイクリンH二量体に対する選択化合物の結合速度および親和性を測定した。二量体を10μL/分の流速で、12.5μg/mLの濃度において、10mM MES緩衝液中、pH6.5においてCM5センサーチップにアミン結合させた。標的タンパク質を、12~16秒間、2つのフローセルに固定化し、200~400応答単位となる固定化タンパク質レベルを達成した。
【0138】
150mM NaCl、0.05%界面活性剤P20および0.0002% DMSOを含む、10mM HEPES緩衝液(pH7.5)中、9段階の2倍段階希釈で0.08~20nMまで化合物を滴定した。各化合物の濃度サイクルは、70秒間の接触時間、300秒間の解離時間、10mMグリシン(pH9.5)による60秒間の再生成時間、および400秒間の安定化時間を用い、100μL/分で行った。各化合物に関して、0nMの化合物対照および参照フローセル結合を差し引いて、バックグラウンドを除去し、データを正規化した。キネティックモードを使用するBiacore T200評価ソフトウェア(GE Healthcare)によって、化合物滴定値を全体的に適合させた。CDK7/サイクリンHに関する化合物の結合速度(kon)および解離速度(koff)に関する最良適合値を決定し、これらの値を使用して、以下の式:
【化51】
を用いてCDK7/サイクリンHに対する化合物親和性(K)を算出した。
【0139】
CDK2、CDK9またはCDK12に対するCDK7の化合物選択性は、
【化52】
によるSPRによって測定したCDK7の直接的な化合物結合Kに対する、標的外CDKのK値の比に基づいて決定した。CDK2、CDK7、CDK9およびCDK12に対する、表示化合物(本発明の3つの化合物および4つの比較物)の阻害性および解離定数および選択性を、図1の表に示す。分かる通り、本発明の化合物はそれぞれ、試験した他のCDKに対するよりもCDK7に対して少なくとも1300倍および最大で40,000倍、特異性が高い。
【0140】
(実施例9)
細胞増殖の阻害(化合物100~102)。
HCC70細胞系は、ヒトTNBCから誘導し、本発明者らは、それらの細胞の増殖を阻害する能力に関して、様々な濃度(4μMから126.4pMまで、0.5log段階希釈)において、代表的な本発明の化合物を試験した。より詳細には、本発明者らは、CDK7選択性に関して上で試験したものと同じ化合物(その構造は、図1に示されている)を試験し、本発明者らは、公知のCDK阻害剤であるジナシクリブ(またはN-((1S,3R)-3-((5-クロロ-4-(1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)シクロヘキシル)-5-((E)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エナミド)ピコリンアミド)、およびポジティブ対照としてトリプトライドを使用した。細胞は、5%COの存在下、加湿チャンバ中、37℃において10%ウシ胎児血清(FBS)を補給した、ATCC配合済みRPMI-1640培地(ATCC30-2001)中で成長させた。本発明者らは、製造業者の指示書に準拠し、およびキットと一緒に供給されている試薬を利用して、CyQUANT(登録商標)直接細胞増殖アッセイ(Life Technologies、Chicago、IL、USA)を使用して72時間の期間にわたり増殖アッセイを行った。アッセイの結果が、以下の表に示されている。
【表1】
【0141】
(実施例10)
患者由来の異種移植片(PDX)モデルにおける腫瘍成長阻害。
腫瘍成長阻害を、in vivoにおいて、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブ(ST1799、n=1)に対する抵抗性、またはパルボシクリブおよびフルベストラント(ST941、n=1)の両方に対する抵抗性に関して選択したエストロゲン受容体ポジティブ乳がん(ER+BC)PDXモデルにおいて評価した。腫瘍が100~200mmとなると、投与を開始した。化合物101、QD(6mg/kg、1日1回、経口);フルベストラント、SC(2.5mg/kg、毎週1回の投与、皮下注射);パルボシクリブ、QD(50mpk、1日1回、経口)のいずれか、または化合物101(6mg/kg、1日1回、経口)とフルベストラント(2.5mg/kg、毎週1回、皮下注射)と組み合わせて、28日間の経過にわたりマウスを処置し、その後に21日間、観察した。腫瘍成長阻害(TGI)は、以下の式:TGI=(Vc1-Vt1)/(Vc0-Vt0)(式中、Vc1およびVt1は、腫瘍抽出時における、対照および処置群の平均体積である一方、Vc0およびVt0は、投与開始時における同じ群である)を使用して、投与の最後の日に計算した。
【0142】
パルボシクリブ抵抗性ER+BC PDX(ST1799)モデルでは、化合物101およびフルベストラントの組合せ物は、投与の停止後、最大で21日間、腫瘍再成長の証拠なしに有意なTGI(89%)を誘導し、観察された効果を単剤として投与した場合の化合物101(83%)、フルベストラント(60%)またはパルボシクリブ(21%)と違いがあった。さらに、化合物101とフルベストラントとの組合せ物は、パルボシクリブ(palbociblib)およびフルベストラント(75%)の標準治療(SOC)組合せ物より優れていた。パルボシクリブおよびフルベストラント二重抵抗性ER+BC PDXモデル(ST941)では、単剤として投与した化合物101は、33%のTGIをもたらし、単剤としてのフルベストラントおよびパルボシクリブ、またはフルベストラントおよびパルボシクリブの組合せ物は活性を有さなかった。対照的に、化合物101およびフルベストラントの組合せ物は、大きなTGIとなることを実証し(68%;単剤としてのフルベストラントに対してp<0.0001)、フルベストラントに対する再感作があることを示唆している。
図2は、パルボシクリブ抵抗性HR+BC PDXモデルST1799からのTGI結果を例示しており、図3は、パルボシクリブおよびフルベストラント抵抗性HR+BC PDXモデルST941からのTGI結果を例示している。本発明者らはまた、4つの追加のPDXモデル;BR5010(TNBCのモデル)、LU5178(小細胞肺がん(SCLC)のモデル)、OV15398(高悪性度漿液性卵巣がん(HGSOC)のモデル)およびST390(膵管腺癌(PDAC)のモデル)においてTGIを観察した。TNBCモデルでは、化合物101を、21日間、10mg/kg QDまたは5mg/kg BIDにおいて、腫瘍を有するNOD/SCIDマウスに経口投与した。SCLCおよびHGSOCモデルでは、化合物101を、21日間、3mg/kg BIDで、腫瘍を有するNOD/SCIDマウスに経口投与した。PDACモデルでは、化合物101を、6mg/kg QDにおいて、腫瘍を有するNOD/SCIDマウスに経口投与した。TNBC、SCLCおよびHGSOCモデルでは、処置期間の間、および処置を終えた後さらに21日間、腫瘍体積を測定した。処置の終了時(21日目)に観察した%TGIは、以下の通り計算した:1-[(EOT時における平均TV化合物101-0日目における平均TV化合物101)/(EOT時における平均TVビヒクル-0日目における平均TVビヒクル)]×100。%退縮は以下の通り計算した:(EOTにおける平均TV化合物101)/(0日目における平均TV化合物101)×100。同じ計算を研究の終了時(42日目)に使用した。これらの結果が図4に示されている。これらの結果は、様々な腫瘍タイプにおいて、十分に耐容された用量において、退縮を含めた強い持続性のTGIとなることを実証している。異種移植片組織における用量依存的な転写応答が、投与して4時間以内に観察され、24時間、持続された。TNBC PDXモデルにおいて、同じ合計用量をQDまたはBIDのどちらか一方で投与した場合、類似したTGIが観察され、その効果は、AUCまたはCmin推進性であることを示唆している。さらに、SCLCにおいて(LU5178 PDXモデルにおいて)観察されたTGIは、共有結合性CDK7阻害剤を用いたこれまでの研究では観察されなかった(データは図示せず)。PDACのモデルに関すると、本発明者らは、化合物101は、MTDより十分に少ない用量において、試験期間(約28日間)にわたり、100%TGIを誘導することを見出した:腫瘍体積は、ビヒクル処置したマウスでは、21日目に約1,250mmであったが、化合物1処置マウス(6mg/kg QD、PO)では、わずか約250mmしかなかった。化合物101は、試験したPDAC PDX腫瘍では、MTD用量未満において100%TGIを実現することができたが、共有結合性CDK7阻害剤は、そのMTDにおいてわずか中程度のTGIしか実現しなかった(40mg/kg BIW、IV投与による。明確な体重減少(8.4%)および注射部位での壊死を伴った;データは図示せず)。
【0143】
当業者であれば、型通りの実験のみを使用して、本明細書に記載されている特定の実施形態に対する多くの等価物を理解するか、または突き止めることができる。本明細書において詳細に記載されている実施形態は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者であれば、以下の特許請求の範囲において定義されている、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、記載されている実施形態への様々な変更および改変を行うことができることを認識する。
(実施例11)
様々な第2の薬剤と組み合わせた化合物101のin vitro研究
ここに記載した研究において、HR+乳がん(細胞系はT47D;PIK3CA p.H1047R、MCF7;PIK3CA p.E545K)、SCLC、(NCI-H1048)およびCRC(細胞系RKO;BRAF p.V600E、SW480;KRAS p.G12V)に由来するがん細胞系を、製造業者の推奨に基づいて優先される培地中で70%の集密度まで成長させた。SCLC細胞系(NCI-H1048)では、化合物101を、SOC化学療法剤であるゲムシタビン(DNA合成阻害剤)とカルボプラチン(DNA損傷剤)と組み合わせて試験した。CRC細胞系(RKO;BRAF p.V600E)では、化合物101は、SOC化学療法剤オキサリプラチン(DNA損傷剤)と組み合わせて試験した。さらに、CRCでは、化合物101をMAPK経路の変化を内包する2つのCRC細胞系;RKO(BRAF p.V600E変異体)およびSW480(KRAS p.G12V変異体)において、選択的MAPK経路阻害剤であるトラメチニブと組み合わせて試験した。化合物101をHR+MCF-7細胞において、SOC剤であるカペシタビン(代謝拮抗剤)と組み合わせて試験した。PIK3CAキナーゼにおいて活性変異を有するHR+細胞系MCF7およびT47Dでは、化合物101をPIK3CA選択的阻害剤であるアルペリシブと組み合わせて試験した。
アッセイの当日に、細胞を持ち上げて、Countess II FL(Life Technologies)を使用して計数した。自動分注器(この場合、Multidrop(商標)Combi試薬分注器)を使用して、20,000~50,000細胞/mlを含有する好ましい細胞培地50μLを黒色384ウェルNuncプレート(Thermo)に分配し、化合物の添加前に一晩、接着させた。HP D300eデジタル式分注器(HP)を備えるSynergy Plateフォーマットを使用して384ウェルのアッセイ用プレートに化合物アレイを分配した。化合物101および他のTEST剤をDMSOに溶解させて、一層正確な分注を可能にする保存溶液を作製した。しかし、溶解度および反応性のために、白金剤は、0.03%Tween(登録商標)-20を添加した水に溶解させて、デジタルプリンタを用いる分注が可能であった。化合物を384ウェルプレートの各四分円に四連でプレート培養した。各四分円は、SY-1365およびカルボプラチンまたはオキサリプラチン(TEST/試験剤)と組み合わせる試験用ウェル、および単剤用の列およびビヒクル用ウェルを含んだ。
左から右に、縦に化合物101を高濃度から低濃度(8列)までプレート培養し、様々な濃度のカルボプラチンまたはオキサリプラチン(TEST)を上から下に(7列)相乗作用用のウェルでプレート培養した。濃度は、単剤の活性に基づいて、活性の全アイソボログラムに及ぶよう選択した。単剤は、2列で用量でプレート培養し、3番目の別の列をまさにDMSO/ビヒクル処置ウェルにした。各細胞系用の個別のプレートに播種して、分化細胞分裂停止作用対細胞傷害作用を解析するため、「時間0」/「0日目」の細胞数を決定できるようにした。化合物を添加したその日に、時間0のプレートの生存率を決定して、細胞死滅作用からの成長阻害を特定した。化合物を添加した後、細胞プレートを37℃のインキュベーター中、5日間、インキュベートした。製造業者のプロトコルに従い、細胞生存率をCellTiter-Glo(登録商標)2.0(Promega)を使用して評価した。Chou-Talalayにより提示された中央値効果の原理を利用してCalcuSynでデータを解析し、GraphPad Prismソフトウェアを使用して可視化した。評価した重要なパラメーターは、併用指数および用量減量指数とした。
【0144】
本発明者らは、化合物101とSOC化学療法(SCLCではゲムシタビンまたはカルボプラチン、CRCではオキサリプラチン、またはHR+乳がんではカペシタビン)との組合せ物は、いずれか一方の薬剤単独よりも優れていることを見出した。化合物101と標的薬剤であるトラメチニブ(BRAF p.V600E変異体黒色腫およびNSCLCを処置するために承認された選択的MAPK経路阻害剤)との組合せ物は、MAPK経路内に様々な変異を内包するBRAF p.V600E変異体CRCおよびKRAS p.G12V変異体CRCにおいて有意な相乗作用があることを示している。化合物101と標的化薬剤アルペリシブ(PIK3CA変異体HR+BCの処置に承認された選択的PIK3CA阻害剤)との組合せ物は、PIK3CAの2つの最も一般的な活性変異(p.E545Kおよびp.H1047R)を呈するHR+細胞系の両方において有意な相乗作用を示した。Chou-Talalayにより提示された中央値効果の原理を利用するCalcuSynを使用してすべての相乗作用を決定し、GraphPad Prismソフトウェアを使用して可視化した。組合せ効果は、カルボプラチンまたはオキサリプラチンを添加した化合物101のIC50のシフトにより反映されるか、またはより少ない量のどちらか一方の単剤を用いて、抗増殖性効果が増大する。これは、図5のアイソボログラムにおいて可視化されており、この場合、斜線より下側の点は、相乗作用を反映している。
(実施例12)
TNBC、HGSOCおよびSCLC PDXモデルにおける化合物101に対する強力かつ持続的応答
本発明者らは、SCLC(n=5;LU5180、LU5178、LU5192、LU5173、LU5210)、TNBC(n=4;BR5010、BR1458、BR5399、BR10014)およびHGSOC(n=3;OV15398、OV5392、OV15631)を呈するPDXを用いる様々な腫瘍兆候における12の様々なPDXモデル(Crown Biosciences)においてTGIを評価した。腫瘍が150~300mmとなると、投与を開始した。21日間の経過にわたり、化合物101、QD(6または10mg/kg、1日1回、経口)またはBID(3または5mg/kg 1日2回、経口)のいずれかでマウスを処置し、その後21日間、観察した。TGIは、以下の式:TGI=(Vc1-Vt1)/(Vc0-Vt0)(式中、Vc1およびVt1は、腫瘍抽出時における、対照および処置群の平均体積である一方、Vc0およびVt0は、投与開始時における同じ群である)を使用して、投与の最後の日に計算した。
全エクソームシーケンシング(WES)を実施するため、本発明者らは、製造業者のプロトコルにより、DNeasy(登録商標)血液および組織キットを使用して継代の一致した腫瘍からDNAを単離し、これをAgilent’s SureSelectXT Human All Exon V6キットを使用するWESを行うためにWuxi Aptecに送付した。試料は、約300×の深さまで配列決定した。読取り値をトリミングして、Skewer(v0.2.1)によりアダプタ配列を除去した。次に、読取り値をマッピングし、Sentieonツール:BWA、DeDup、RealignerおよびQualCal(v201808.03)を使用してさらに処理した。SentieonのHaplotyperツールを使用してバリアントを呼び出し、EnsemblのVariant Effect Predictor(VEP、release_96.2)を使用して最初の注釈を行った。FATHMM-MLKも使用して、バリアント効果に注釈を付けた。以下の要件を満たしたバリアントを試料の特徴付けに含ませた:(1)バリアントは、タンパク質をコードする遺伝子に局在する;(2)バリアントは、タンパク質配列に影響を及ぼすか、またはフレームシフトをもたらす;(3)ミスセンス変異は、SIFT、PolyPhenまたはFATHMM-MLK(≧0.75)によって損傷を受けるとして分類される;(4)バリアントアレル頻度は≧10%である。CNVkit(v0.9.1)を使用して、捕捉領域全体にわたるコピー数(CN)多型を呼び出し、その捕捉領域全体の平均CNを使用することによって個々の遺伝子に対するCNを計算した。モデルLU5210に関しては、変異/CNVデータは、PDX供給業者(Crown Biosciences Inc.)により提供されたWESデータから入手可能になった。
【0145】
これらの用量では、化合物101は、すべてのモデルにおいて、21日間の投与期間の終了時に、少なくとも50%のTGIを誘導した。モデルのサブセット(58%、7/12)では、化合物101の応答は強力であり(>95%TGIまたは退縮)、かつ持続し、処置の中止後21日間、腫瘍が再成長した証拠はなかった(図6を参照されたい)。化合物101は十分に耐容され、試験した1日1回の用量のすべてにおいて体重減少の証拠はなく、MTDは、腫瘍を有するマウスにおいて、1日1回の10mg/kgより上であることを示した。強力かつ持続的応答が、試験した各症状において観察された。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
【配列表】
2022508055000001.app
【国際調査報告】