(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】性能が向上したリチウム金属ポリマー電池用の高分子電解質
(51)【国際特許分類】
C08F 293/00 20060101AFI20220112BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20220112BHJP
C08K 5/15 20060101ALI20220112BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20220112BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20220112BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220112BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220112BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220112BHJP
【FI】
C08F293/00
C08L53/00
C08K5/15
C08F299/00
H01M10/0565
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01M4/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524185
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 FR2019052802
(87)【国際公開番号】W WO2020109711
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513306615
【氏名又は名称】ブルー ソリューション
(71)【出願人】
【識別番号】515353394
【氏名又は名称】インスティテュト ポリテクニック ド グルノーブル
(71)【出願人】
【識別番号】513109429
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス-マルセイユ
(71)【出願人】
【識別番号】514255523
【氏名又は名称】サントレ ナティオナル ド ラ ルシェルシェ シアンティフィク
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デシャン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ルキュイエ,マルゴー
(72)【発明者】
【氏名】ブシェ,レナード
(72)【発明者】
【氏名】パヴレンコ,エカテリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ラザーニュ,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジグメ,ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】フェラン,アデル
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ファン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
4J127
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4J002BP031
4J002CH002
4J002EL016
4J002ER006
4J002FD022
4J002FD026
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4J026HA29
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4J026HE02
4J127AA04
4J127BA151
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4J127CA01
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4J127FA35
5H029AJ06
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM16
5H029DJ08
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5H050AA12
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5H050BA16
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5H050CA08
5H050CA09
5H050DA02
5H050DA09
5H050DA10
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5H050EA10
5H050EA28
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA11
(57)【要約】
本発明は、少なくともポリ(アルキレンオキシド)の繰り返し単位及び少なくともリチウム ポリスチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(PSTFSILi)の繰り返し単位を含む架橋共重合体;並びに、固体高分子電解質、前記架橋共重合体を含む固体高分子電解質、及び電池(例えば、前記固体高分子電解質を含むリチウム金属ポリマー(LMP)電池)の調製のためのその架橋共重合体の使用に関する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、リチウム ポリスチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(PSTFSILi)の繰り返し単位と、ポリ(エチレンオキシド)単位、ポリ(プロピレンオキシド)単位、ポリ(エチレン及びプロピレン)オキシド単位、及びそれらの混合物の1つから選択されるポリ(アルキレンオキシド)の繰り返し単位を少なくとも含むことを特徴とする架橋共重合体であって、
BAB型のトリブロック共重合体を架橋することによって得られる架橋共重合体:
- Aブロックは、以下から得られる架橋可能なポリ(アルキレンオキシド)である:
* エチレングリコール、プロピレングリコール及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマー、又はポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレン及びプロピレン)オキシド及びそれらの混合物の1つから選択される少なくとも1つのポリ(アルキレンオキシド)オリゴマー;
並びに、
* 少なくとも1つの架橋可能なアルケン又はアルキン官能基を含む少なくとも1つの化合物;
-各Bブロックは、スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド リチウム(TFSILi)のアニオンで置換されたアニオン性ポリスチレンであり、以下の式(I)に相当する:
【化1】
(式中、nは各Bブロックのリチウム スチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの数を示す)。
【請求項2】
架橋共重合体の総重量に対して、10~50重量%のPSTFSILiを含むことを特徴とする請求項1に記載の架橋共重合体。
【請求項3】
Aブロックが、25kDa以下の数平均分子量を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の架橋共重合体。
【請求項4】
Aブロックが、以下の式(II)の官能性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の架橋共重合体:
【化2】
式中、R
1は、少なくとも1つの架橋可能なアルケン又はアルキン官能基を含む置換基である;CoAは、ポリ(エチレンオキシド)鎖、ポリ(プロピレンオキシド)鎖、ポリ(エチレン及びプロピレン)オキシド鎖、及びそれらの混合物の1つから選択されるポリ(アルキレンオキシド)鎖である;pは、10~50である。
【請求項5】
式(II)の官能性ポリマーが、以下の式(II-a)に相当することを特徴とする請求項4に記載の架橋共重合体:
【化3】
式中、yは11~91である。
【請求項6】
アルキレンオキシドのモル数とSTFSILiのモル数の比(AO/Li)が、7~65の範囲であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の架橋共重合体。
【請求項7】
架橋可能なアルケン又はアルキン官能基を含む化合物が、以下の式(IV)の化合物から選択されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の架橋共重合体:
【化4】
式中、R’
1は、少なくとも1つのアルケン又はアルキン官能基を含むアルキル基であり、前記アルキル基は、4~10個の炭素原子を含む;X及びX’は同一又は異なり、ハロゲン、カルボン酸、塩化アシル、エステル及びアルデヒド官能基から、互いに独立して選択される。
【請求項8】
架橋可能なアルケン又はアルキン官能基を含む化合物が、3-クロロ-2-クロロ-1-プロペンであることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の架橋共重合体。
【請求項9】
アルキレンオキシドオリゴマーが、700~4000g/molの範囲のモル質量を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の架橋共重合体。
【請求項10】
固体高分子電解質の調製のための、請求項1~9のいずれか一項で定義された少なくとも1つの架橋共重合体の使用。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項で定義された少なくとも1つの架橋共重合体、及び少なくとも1つの可塑剤を含むことを特徴とする固体高分子電解質。
【請求項12】
可塑剤が、直鎖及び環状カーボネート;フッ素化カーボネート;ニトリル;ラクトン;液体の直鎖又は環状ポリエーテル;フッ素化ポリエーテル;及びそれらの混合物の1つから選択されることを特徴とする請求項11に記載の固体高分子電解質。
【請求項13】
可塑剤が、モル質量10000g・mol
-1以下の液体の直鎖又は環状ポリエーテルであり、以下から選択されることを特徴とする請求項11又は12に記載の固体高分子電解質:
* 式H-[O-CH
2-CH
2]
q-OH(式中、qは1~13である)のポリエチレングリコール;
* 式R
7-[O-CH
2-CH
2]
q’-O-R
7’(式中、q’は1~13であり、R
7とR
7’は同一又は異なり、直鎖、分岐又は環状アルキル基である)のグリコールエーテル;
* 式R
8-[CH
2-O]
q’’-R
8’(式中、q’’は1~13であり、R
8とR
8’は同一又は異なり、直鎖、分岐又は環状アルキル基である)のエーテル;
* 環状エーテル;環状ポリエーテル;及び、
* それらの混合物の1つ。
【請求項14】
固体高分子電解質の総重量に対して、10~40重量%の可塑剤を含むことを特徴とする請求項11~13のいずれか一項に記載の固体高分子電解質。
【請求項15】
- 金属リチウム又は金属リチウムの合金を含む負極;
- 任意に集電体によって支持された正極;及び
- 正極と負極の間に配置された固体高分子電解質;
を含み、
固体高分子電解質が、請求項11~14のいずれか一項で定義されたものであることを特徴とする電池。
【請求項16】
複合正極が、
- 少なくとも1つの正極活物質;
- 少なくとも1つのポリマーバインダー;
- 任意に、少なくとも1つの電子導電剤;及び、
- 任意に、少なくとも1つの可塑剤;
を含み、
ポリマーバインダーが、請求項1で定義されたBABトリブロック共重合体であることを特徴とする請求項15に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともポリ(アルキレンオキシド)の繰り返し単位及び少なくともリチウム ポリスチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(PSTFSILi)の繰り返し単位を含む架橋共重合体;固体高分子電解質、前記架橋共重合体を含む固体高分子電解質、及び電池(例えば、前記固体高分子電解質を含むリチウム金属ポリマー(LMP))の調製のためのその架橋共重合体の使用に関する。
【0002】
本発明は、典型的かつ非排他的に、リチウム金属ポリマー電池の分野、特に電気自動車の製造;及び/又は、太陽光及び/又は風力型の間欠的エネルギーの貯蔵に適用される。
【0003】
現在市販されているリチウム金属ポリマー電池は、数回巻いた薄膜又は数枚積層した薄膜の形状をしている。この巻かれた又は積層された薄膜は、約100マイクロメートルのオーダーの厚さを有し、以下を含む:放電中のリチウムイオンの供給を確実にする負極(アノード);リチウムイオンが挿入されるレセプタクルとして機能する正極(カソード);正極と負極の間に位置するリチウムイオン伝導性固体高分子電解質;及び、電気的接続を確実にするために正極に接続された集電体。
【0004】
負極は通常、金属リチウム又はリチウム合金のシートで構成されている;固体高分子電解質は通常、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)ベースのポリマー、及び少なくとも1つのリチウム塩から構成される;正極は通常、例えば金属酸化物ベース又はLiMPO4型(式中、Mは、Fe、Mn、Co、Ni、Ti、及びこれらのカチオンの組み合わせの1つの群から選択される金属カチオン、並びに、任意に炭素を表す)のリン酸塩ベースの電極活物質を含む;さらに、集電体は通常、金属シートで構成されている。イオン導電性は、PEOにリチウム塩が溶解することによって確保される。
【0005】
しかしながら、PEOは、LMP電池で通常使用される温度(60~80℃)では、粘性のある液体となり、その寸法安定性を失うため、十分な機械的強度を有さない。
【0006】
ポリ(エチレンオキシド-stat-プロピレンオキシド)型(すなわち、PEO-stat-PPO)の統計共重合体;ポリスチレン-b-PEO型(すなわち、PS-b-PEO)のブロック共重合体;特に機械的特性を強化するための、分岐PEOである、アクリレート又はメタクリレート鎖を含む架橋PEO又は共重合体等の他のPEOベースの(共)重合体が記載されている。酸化アルミニウム、酸化チタン又はセルロースナノフィブリルの粒子等の、任意にナノメートルスケールの、PEOベースポリマー無機粒子又は有機粒子を加えることも提案されている。
【0007】
しかしながら、そのようなポリマーをベースとする電解質の60℃でのイオン伝導率は低いままである。低い活物質の基準重量(低い表面容量)及び低電流(<C/15)を有する正極の使用のみが、この温度で容量を回復することを可能にする。したがって、現在、市場にある電池の、想定される用途に応じた性能を得るための作動温度は80℃である。
【0008】
さらに、可塑剤を添加してPEOの導電性を改善するための試験によって、機械的特性が劣化した。
【0009】
最後に、リチウム塩をドープしたPEOなどのポリエーテルポリマーマトリックスに溶解したリチウム塩で構成される固体高分子電解質では、リチウムカチオンとPEO鎖の間の強い相互作用により電気的性能が制限されるため、リチウムイオンによって運ばれる電荷の割合(カチオン輸率とも呼ばれる)が低くなる(0.2のオーダー)。カチオン輸率の値は、カチオンによって輸送される電流量を決定する。
【0010】
低いカチオン輸率により、電池の動作中、電解質の厚みに塩濃度勾配が形成される。この挙動により、電極で塩が枯渇し、電解質の抵抗が増加し、電力性能が低下し、リチウムデンドライトの形成が促進され、ファラデー効率の低下をもたらし、最終的には短絡が発生する。
【0011】
この問題を解決するために、特許文献1は、AB型のジブロック共重合体又はBAB型のトリブロック共重合体を記載している。Aブロックは、100kDa以下の数平均分子量を有する非置換ポリ(エチレンオキシド)鎖である。Bブロックは、ビニルモノマー及び誘導体から選択される1つ以上のモノマーから調製することができるアニオン性ポリマーであり、前記モノマーは、以下の式のリチウムスルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(TFSILi)塩のアニオンで置換されている:
【0012】
【0013】
式中、*は、共有結合又は1~5個の炭素原子を有する直鎖アルキル鎖を介した前記モノマーへの前記塩のアニオンの結合点を表す。しかしながら、前述のPEOベースのAB型のジブロック共重合体又はBAB型のトリブロック共重合体は、輸率が1に等しいにもかかわらず、PEO単独よりも低いイオン伝導度を有する。さらに、それらの機械的強度は最適化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、前述の先行技術の欠点の全部又は一部を克服し、電池、特にLMP電池、特に固体高分子電解質で使用することができるポリマー材料を供給することである。前記ポリマー材料は、特に60℃以上の温度でのイオン伝導性、カチオン輸率、及び機械的強度に関して良好な特性を有する。
【0016】
また、電池、特にLMP電池内の樹枝状成長を低減又は排除し、特にサイクル挙動、ファラデー効率の観点から、良好な電気化学的性能を保証し、前記電池が完全に安全に使用できることが望ましい。
【0017】
これらの目的は、以下に説明する本発明によって達成される。
【0018】
本発明の第1の対象は、少なくとも、リチウム ポリスチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(PSTFSILi)の繰り返し単位と、ポリ(エチレンオキシド)単位、ポリ(プロピレンオキシド)単位、ポリ(エチレン及びプロピレン)オキシド単位、及びそれらの混合物の1つから選択されるポリ(アルキレンオキシド)の繰り返し単位を少なくとも含むことを特徴とする架橋共重合体であり、前記架橋共重合体は、BAB型のトリブロック共重合体を架橋することによって得られる:
【0019】
- Aブロックは、以下から得られる架橋可能なポリ(アルキレンオキシド)である:
* エチレングリコール、プロピレングリコール及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマー、又はポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレン及びプロピレン)オキシド及びそれらの混合物の1つから選択される少なくとも1つのポリ(アルキレンオキシド)オリゴマー;
並びに、
* 少なくとも1つの架橋可能なアルケン又はアルキン官能基を含む少なくとも1つの化合物;
そして、
【0020】
-各Bブロックは、スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド リチウム塩(TFSILi)のアニオンで置換されたアニオン性ポリスチレンであり、以下の式(I)に相当する:
【0021】
【0022】
式中、nは各Bブロックのリチウム スチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド部分の数を示す。
【0023】
ポリ(アルキレンオキシド)の繰り返し単位とリチウム ポリスチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの繰り返し単位の組み合わせ、及び架橋により、前記架橋共重合体は、カチオン輸率、イオン伝導性、及び機械的強度に関して良好な特性を有し、特にLMP電池用の固体高分子電解質及び/又は複合電極に使用できる。
【0024】
本発明によれば、各Bブロックは、好ましくは、リチウム スチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(STFSILi)を4~31部分、さらにより優先的には、STFSILiを5~12部分含む。非常に特に好ましい値は、それぞれのBブロックにSTFSILiが8部分である。
【0025】
Bブロックの数平均分子量は、優先的に1.6~3.8kDaの範囲である。
【0026】
リチウム塩LiTFSIは、ポリスチレンに直接グラフトしているため、Li+カチオン輸率を1にでき、一方、特に架橋と、共重合体中に均一に分布したポリ(アルキレンオキシド)の存在により、優れた機械的強度と優れたイオン伝導性を保証する。
【0027】
架橋共重合体は、架橋共重合体の総重量に対して、約10~50重量%のPSTFSILi、好ましくは約13~28重量%のPSTFSILiを含むことができる。特に好ましい値は、約22重量%のPSTFSILiである。
【0028】
Aブロックの数平均分子量は、優先的に10~50kDaの範囲であり、さらにより優先的には15~30kDaの範囲である。特に好ましい値は20kDaである。
【0029】
Aブロックは、好ましくは、25kDa以下の数平均分子量を有する。
【0030】
本発明によれば、Aブロックは、好ましくは227~1136のアルキレンオキシド部分、さらにより優先的には340~681のアルキレンオキシド部分を含む。特に非常に好ましい値は、454のアルキレンオキシド部分である。
【0031】
Aブロックは、好ましくは、ポリ(エチレンオキシド)又はポリ(エチレン及びプロピレン)オキシドであり、より好ましくは、ポリ(エチレンオキシド)である。
【0032】
Aブロックは、好ましくは、以下の式(II)の官能性ポリマーを含む:
【0033】
【0034】
式中、R1は、少なくとも1つの架橋可能なアルケン又はアルキン官能基を含む置換基である;CoAは、ポリ(エチレンオキシド)鎖、ポリ(プロピレンオキシド)鎖、ポリ(エチレン及びプロピレン)オキシド鎖、及びそれらの混合物の1つから選択されるポリ(アルキレンオキシド)鎖であり、好ましくはポリ(エチレンオキシド)鎖、及びポリ(エチレン及びプロピレン)オキシド鎖から選択され、より好ましくはポリ(エチレンオキシド)鎖から選択される;そして、pは、10~50、好ましくは6~33、より好ましくは12~15である。
【0035】
したがって、Aブロックは、前記Aブロック内に均一に分散された架橋可能な官能基を含む。
【0036】
ポリ(アルキレンオキシド)CoA鎖は、好ましくは直鎖である。
【0037】
置換基R1は、少なくとも1つのアルケン又はアルキン官能基を含むアルキルラジカルから選択することができ、前記置換基R1は、4~10個の炭素原子、好ましくは4~6個の炭素原子を含む。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(II)の官能性ポリマーは、以下の式(II-a)に相当する:
【0039】
【0040】
式中、yは11~91、好ましくは17~75、より好ましくは23~45である。そして、pは本発明で定義された通りである。
【0041】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、Aブロックは、以下の式(II-b)に相当する:
【0042】
【0043】
式中、y及びpは、本発明で定義された通りである;Mは、Bブロックのリチウム スチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミドモノマーの重合を開始することができ、そしてAブロックとBブロックとの間の共有結合の形成を可能にすることができるラジカルイニシエータを含む置換基である。
【0044】
置換基Mのラジカルイニシエータは、アルコキシアミン、及びニトロキシド媒介ラジカルイニシエータから選択することができる。
【0045】
例えば、アルコキシアミン型のラジカルイニシエータにより、リチウム スチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミドモノマーの重合が制御された方法で確実になり、したがって、Bブロックを形成する一方で、それをAブロックと結合することが可能になる。
【0046】
置換基Mは、アルコキシアミンから選択することができる。C-Oアルコキシアミン結合は、温度の作用下でホモリシスに開裂し、重合反応のメディエータとして機能するニトロキシドと、モノマーに付加する開始ラジカルを生成することができる。
【0047】
特に、置換基Mは、以下の式(III)に相当する:
【0048】
【0049】
式中、*は、式(II-b)のAブロックの末端酸素へのMの結合点を示し、SG1は以下の式のニトロキシドラジカルを示す:
【0050】
【0051】
式中、**は、式(III)のMの-CH-ラジカルへのSG1の結合点を示す。
【0052】
本発明による架橋共重合体において、アルキレンオキシドのモル数とSTFSILiのモル数の比(AO/Li)[エチレンオキシドのモル数とSTFSILiのモル数の比(EO/Li)]は、好ましくは7~65の範囲、より好ましくは10~50の範囲、そして非常に特に好ましくは15~25の範囲である。
【0053】
架橋可能なアルケン又はアルキン官能基を含む化合物は、以下の式(IV)の化合物から選択することができる:
【0054】
【0055】
式中、R’1は、少なくとも1つのアルケン又はアルキン官能基を含むアルキル基であり、前記アルキル基は、4~10個の炭素原子、好ましくは4~6個の炭素原子を含む;X及びX’は同一又は異なり、ハロゲン、カルボン酸、塩化アシル、エステル及びアルデヒド官能基から、互いに独立して選択される。
【0056】
XとX’は、好ましくは同一である。
【0057】
特に好ましい実施形態によれば、X及びX’はハロゲンであり、より好ましくは塩素原子である。
【0058】
例として、架橋可能なアルケン又はアルキン官能基を含む化合物は、3-クロロ-2-クロロ-1-プロペンである。
【0059】
Aブロックは、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマー、又はポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレン及びプロピレン)オキシド、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのポリ(アルキレンオキシド)オリゴマー、及び好ましくは重縮合による、少なくとも1つの架橋可能なアルケン又はアルキン官能基を含む少なくとも1つの化合物から出発して得ることができる。
【0060】
ポリ(アルキレンオキシド)オリゴマーは、ヒドロキシル(-OH)、チオール(-SH)、第一級アミン(-NH2)又は第二級アミン(-NHR2,R2=-CH3又は-C2H5)、好ましくはヒドロキシル又は第一級アミン型の末端基を含むことができる。
【0061】
アルキレンオキシドオリゴマーは、約5000g/mol以下、好ましくは約700~4000g/molの範囲、さらにより好ましくは約1000~2000g/molの範囲のモル質量を有することができる。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、アルキレンオキシドオリゴマーは、以下の式のオリゴマーから選択される:
* H-[O-(CH2)x]y’-OH(式中、2≦x≦4、好ましくはx=2;10≦y’≦91、好ましくは17≦y’≦75、より好ましくは23≦y’≦45);
* H-[O-CH2-CHR3]y’’-OH(式中、R3は1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、好ましくはメチル基である;7≦y’’≦69、好ましくは10≦y’’≦34、より好ましくは17≦y’’≦27);
【0063】
* H-[O-(CH2)z-O-(CH2-CHR4)u]w-OH(式中、1≦z≦4、好ましくはz=1又は2;1≦u≦2、好ましくはu=1;wは、約700~4000g/mol、好ましくは約1000~2000g/molの範囲のオリゴマーの分子量であり、より好ましくは2≦w≦23;R4は、水素原子又は1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である;-(CH2)z-と-(CH2-CHR3)u-は、脂肪族鎖が異なると理解される);
【0064】
* NH2-CHR5-CH2-[O-CH2-CHR5]w’-NH2(式中、R5は1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、好ましくはメチル基である;5≦w’≦69、好ましくは12≦w’≦52、より好ましくは17≦w’≦35;これらのオリゴマーは、R5がメチルである場合、広範囲のwにおいてJeffamines(商標)の名前で販売されうる);並びに、
【0065】
* NH2-CHR6-CH2-O-[CH2-CH2-O]w’’-CH2-CHR6-NH2(式中、R6は1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、好ましくはメチル基である;7≦w’’≦91、好ましくは17≦w’’≦68、より好ましくは23≦w’’≦45)。
【0066】
アルキレンオキシドオリゴマーは、好ましくは、本発明で定義された式H-[O-(CH2-CH2)]y’-OHのオリゴマーから選択される。
【0067】
アルキレンオキシドオリゴマーは、好ましくはエチレンオキシドオリゴマーであり、特に約750~4000g/molの範囲のモル質量、より好ましくは約1000~2000gg/molの範囲のモル質量を有する。
【0068】
本発明による架橋共重合体は、以下のステップを含む方法によって調製することができる:
i)本発明で定義された架橋可能なポリ(アルキレンオキシド)を調製するステップ;及び、
ii)ステップi)の架橋可能なポリ(アルキレンオキシド)をリチウム スチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミドモノマー(STFSILi)と共重合させるステップ。
【0069】
ステップi)は、特に以下のサブステップを含む:
i-a)本発明で定義されたアルキレンオキシドオリゴマーを、本発明で定義された架橋可能なアルケン又はアルキン官能基を含む少なくとも1つの化合物と重縮合させるサブステップ;及び、
i-b)サブステップi-a)で得られた架橋可能なポリ(アルキレンオキシド)を、上記で定義された置換基Mで官能化するサブステップ。
【0070】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、サブステップi-a)は、以下の式の架橋可能なポリ(アルキレンオキシド)を形成するために、3-クロロ-2-クロロ-1-プロペンと、本発明で定義された式H-[O-(CH2)x]y’-OHのオリゴマーとを利用する。3-クロロ-2-クロロ-1-プロペンはオリゴマーに対して不足している。
【0071】
【0072】
式中、y及びpは本発明で定義された通りである。
【0073】
重縮合は、通常、水酸化カリウムなどの強塩基の存在下で、THFなどの溶媒中で実施される。
【0074】
サブステップi-b)は、特にTHFなどの溶媒中で、過剰のトリエチルアミン塩化物及びアクリロイルの存在下で、末端ヒドロキシル官能基をアクリレート官能基で置き換えることを含むことができる;続いて、以下の式のMAMA-SG1アルコキシアミンを、特にエタノールなどの溶媒中でラジカル付加する。
【0075】
【0076】
したがって、サブステップi-b)は、本発明で定義された式(II-b)の架橋可能なポリ(アルキレンオキシド)の形成を可能にすることができる。
【0077】
共重合のステップii)は、媒介ラジカル重合、特にNMP(ニトロキシド媒介ラジカル重合)によって実施することができる。
【0078】
ステップii)は、好ましくは、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、又は水などの極性溶媒中で、特に90~120℃の範囲の温度で、特に2~20時間の間、実施される。
【0079】
本発明の第2の対象は、特にリチウム電池、及び特にリチウム金属電池における固体高分子電解質の調製のための、本発明の第1の対象で定義された少なくとも1つの架橋共重合体の使用である。
【0080】
特にリチウム金属電池において、固体高分子電解質を調製するための本発明による架橋共重合体の使用は、特にリチウムイオン輸率が1のオーダーであり、そして60℃のイオン伝導率が10-5S.cm-1以上である優れた低温性能(約60℃)を有するエネルギー貯蔵装置をもたらす。
【0081】
高い輸率は、放電中(又は、充電中)の電解液中の濃度勾配の形成を制限することを可能にし、電力性能(又は、充電速度)を向上させることができる。また、この架橋共重合体の使用は、リチウムの樹枝状成長を制限することを可能にし、したがって、迅速で信頼性の高い再充電を想定している。実際、リチウム金属電池技術の問題は、再充電中にリチウム(デンドライトを含む)の不均一な電着物が形成されることである。これにより、サイクル能力が低下し、短絡が発生する可能性がある。
【0082】
また、本発明による架橋共重合体は、良好な機械的強度、高い熱安定性(それを含むエネルギー貯蔵装置の安全性を保証する)、及び改善された電圧安定性(例えば、最大4.5V vs Li+/Liの安定性)を有する。
【0083】
本発明の第3の対象は、第1の対象で定義された少なくとも1つの架橋共重合体、及び少なくとも1つの可塑剤を含むことを特徴とする固体高分子電解質である。
【0084】
本発明の固体高分子電解質は、最適化された機械的強度を有し、特にその利用及び取り扱いを容易にする。さらに、カチオン輸率が1に等しく、イオン伝導性が良好であるため、樹枝状成長に対する良好な耐性をもたらす。
【0085】
可塑剤は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート又はジメチルカーボネートなどの直鎖及び環状カーボネート;フルオロエチレンカーボネートなどのフッ素化カーボネート;スクシノニトリルなどのニトリル;γ-ブチロラクトンなどのラクトン;液体の直鎖又は環状ポリエーテル;フッ素化ポリエーテル;及びそれらの混合物の1つから選択することができる。
【0086】
実際、本発明の架橋共重合体は可塑剤を吸収することができ、一方で、良好な機械的強度を保持し、固体のままである。さらに可塑剤の存在は、改善されたイオン伝導率(例えば、60℃で少なくとも1x10-5S/cmの伝導率)を有する固体高分子電解質を得ることを可能にする。
【0087】
液体の直鎖又は環状ポリエーテルは、好ましくは約10000g・mol-1以下、好ましくは約2000g・mol-1以下、より好ましくは約600g・mol-1以下のモル質量を有する。
【0088】
液体の直鎖又は環状ポリエーテルは、以下から選択できる:
* 式H-[O-CH2-CH2]q-OH(式中、qは1~13である)のポリエチレングリコール;
* 式R7-[O-CH2-CH2]q’-O-R7’(式中、q’は1~13であり、R7とR7’は同一又は異なり、直鎖、分岐又は環状アルキル基であり、1~10個の炭素原子を含むことができる)のグリコールエーテル;
【0089】
* 式R8-[CH2-O]q’’-R8’(式中、q’’は1~13であり、R8とR8’は同一又は異なり、直鎖、分岐又は環状アルキル基であり、1~10個の炭素原子及び任意にヘテロ原子を含むことができる)のエーテル;
* 2~20個の炭素原子を含むことができる環状エーテル、3~40個の炭素原子を含むことができる環状ポリエーテル;及び、
* それらの混合物の1つ。
【0090】
本発明の電解質に使用されるポリエーテルは、リチウムに関して特に安定である。
【0091】
好ましい実施形態では、可塑剤は液体の直鎖又は環状ポリエーテルであり、式CH3O-(CH2-CH2)4-OCH3(すなわち、R7,R7’=CH3及びq’=4)のテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、又は、式H-(O-CH2-CH2)4-OH(すなわちq=4)のテトラエチレングリコール(TEG)から優先的に選択される。
【0092】
本発明による固体高分子電解質は、特に、任意の適切な形態、例えば、シート、フィルム、又は膜の形状で提供することができる。本発明による固体高分子電解質は、例えばコーティング又は押出しなど、当業者に知られている任意の技術によって調製することができる。
【0093】
本発明による固体高分子電解質は、固体高分子電解質の総重量に対して、約60~90重量%の架橋共重合体、好ましくは約75~85重量%の架橋共重合体を含むことができる。
【0094】
本発明による固体高分子電解質は、固体高分子電解質の総重量に対して、約10~40重量%の可塑剤、好ましくは約15~25重量%の可塑剤を含むことができる。これにより、最適なイオン伝導度で、このような電解質を利用したLMP電池の動作を保証することができる。
【0095】
最後に、本発明の第4の対象は、電池、特にLMP電池であり、以下を含み:
- 金属リチウム又は金属リチウムの合金を含む負極;
- 任意に集電体によって支持された正極;及び
- 正極と負極の間に配置された固体高分子電解質;
固体高分子電解質が本発明の第3の対象で定義された通りであることを特徴とする。
【0096】
複合正極は、以下を含むことができる:
- 少なくとも1つの正極活物質;
- 少なくとも1つのポリマーバインダー;
- 任意に、少なくとも1つの電子導電剤;及び、
- 任意に、少なくとも1つの可塑剤。
【0097】
複合正極は、前記複合正極の総重量に対して、少なくとも約50重量%の正極活物質、好ましくは約55~85重量%の正極活物質を含むことができる。
【0098】
正極活物質は、リン酸リチウム、特に、LiFePO4、Li3V2(PO4)3、LiCoPO4、LiMnPO4、LiNiPO4;酸化リチウム、例えば、LiNiO2、LiCoO2、及びLiMn2O4並びにそれらの混合物などから選択することができる。
【0099】
これらの正極活物質の中で、LiFePO4が特に好ましい。
【0100】
特定の実施形態によれば、複合正極は、複合正極の総重量に対して、約10~40重量%のポリマーバインダー、好ましくは約13~20重量%のポリマーバインダーを含む。
【0101】
ポリマーバインダーは、本発明で定義されたBAB型のトリブロック共重合体(すなわち、架橋を有さない)、又は下記から選択される材料であってもよい:エチレンホモポリマー及び共重合体;プロピレンホモポリマー及び共重合体;エチレンオキシドホモポリマー及び共重合体(例えば、PEO、PEO共重合体)、メチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、及びそれらの混合物;塩化ビニルホモポリマー及び共重合体、フッ化ビニリデン(PVdF)、塩化ビニリデン、四フッ化エチレン、又はクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-co-HFP)又はそれらの混合物などのハロゲン化ポリマー;ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(グルタミン酸)、アルギン酸塩、ペクチン、ゼラチン又はそれらの混合物などのアニオン型の非電子導電性ポリマー;ポリエチレンイミン(PEI)、エメラルジン塩(ES)型のポリアニリン、四級化ポリ(N-ビニルイミダゾール)、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(AMAC)又はそれらの混合物などのカチオン型のポリマー;ポリアクリレート;及びそれらの混合物の1つ。
【0102】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、ポリマーバインダーは、本発明で定義された(すなわち、架橋を有さない)BAB型のトリブロック共重合体である。複合正極に存在する本発明で定義されたBAB型のトリブロック共重合体によって、サイクル中の正極の厚さの濃度勾配の形成を低減又は排除することさえでき、その結果、電池の電力性能の改善、又は正極の基準重量を増加させる可能性がもたらされる。
【0103】
複合正極は、複合正極の総重量に対して、約0.05~10重量%の電子導電性発生剤、好ましくは約0.2~5重量%の電子導電性発生剤を含むことができる。
【0104】
本発明に適した電子導電性発生剤は、好ましくは、カーボンブラック、カーボンsp、アセチレンブラック、カーボンファイバー及びナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、金属粒子及びファイバー、並びにそれらの混合物の1つから選択される。
【0105】
電子導電性発生剤は、好ましくはカーボンブラックである。
【0106】
好ましくは、電子導電性発生剤は、特に複合正極に垂直な方向(すなわち、その厚さの方向)に導電性を促進するために、球状粒子の形状(すなわち、ビーズの形状)であり、それにより、電極内の電気化学的プロセスを促進する。実際、電子導電性発生剤の球状粒子は、三次元導電性マトリックスを形成する傾向がある。
【0107】
カーボンブラックの例として、以下の参照の下で販売されているカーボンブラックが挙げられる:Ketjenblack 600JD(商標)、Ketjenblack 700JD(商標)、及びTimcal Ensaco 350G(商標)。
【0108】
複合正極はまた、少なくとも1つの可塑剤を含むことができ、前記可塑剤は、本発明で定義された通りであってもよい。正極の可塑剤は、好ましくは、本発明で定義された液体の直鎖又は環状ポリエーテル、又は本発明で定義された直鎖、環状又はフッ素化カーボネートである。
【0109】
複合正極は、複合正極の総重量に対して、約2~10重量%の可塑剤、好ましくは約3~5重量%の可塑剤を含むことができる。
【0110】
複合正極の総重量は、活物質の重量、ポリマーバインダーの重量、それらが存在する場合は、任意に電子導電性発生剤の重量、及び任意に可塑剤の重量を含むことに留意すべきである。
【0111】
本発明の好ましい実施形態によれば、正極の基準重量(すなわち、正極活物質の量/cm2/面)は、1~3mAh/cm2の範囲である。
【0112】
複合正極は以下の通り作製することができる:
a)正極活物質をポリマーバインダー、任意に電子導電性発生剤、任意に可塑剤、及び任意に前記ポリマーバインダーの少なくとも1つの溶媒と混合して電極ペーストを得る;
b)少なくとも1つの支持体に前記電極ペーストを塗布する;
c)前記電極ペーストを乾燥させて、支持されたフィルムの形状の複合正極を得る。
【0113】
ステップa)は、押し出し又は粉砕によって実施することができる。
【0114】
押し出しは、溶媒をほとんど使用することなく、低多孔度の電極を簡単に得ることができるため、非常に有利である。またそれは、電極の構造に変形をもたらし、電子導電性発生剤の粒子の効果的なコーティングを損ない、それによりサイクル中の電極の構造破損を引き起こす可能性がある乾燥電極をプレスする工程を回避することを可能にする。最終的に、プレス工程は、電極を得るための工程数を増加させ、それによりその製造コストを増加させるという欠点を有する。
【0115】
ステップa)のポリマーバインダーの溶媒は、前記ポリマーバインダーを可溶化することを可能にする。
【0116】
それが存在する場合、前記溶媒は、好ましくは、正極活物質、ポリマーバインダー、任意に電子導電性発生剤、及び任意に可塑剤の混合物の総重量の約50重量%未満である。
【0117】
複合正極の製造中にポリマーバインダーの少量の溶媒を使用することにより、低多孔度(すなわち、≦約10体積%)の正極を得ることが可能になる。この低い多孔性は、複合正極に存在する活物質の量を制御及び最適化することを可能にし、これにより最適な体積エネルギー密度を達成することを可能にする。
【0118】
ステップa)の溶媒は以下から選択することができる:水、N-メチルピロリドン;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、又はメチル及びエチルカーボネートなどのカーボネート;アセトン;メタノール、エタノール、又はプロパノールなどのアルコール;及びそれらの混合物の1つ。
【0119】
ステップb)は、カレンダー加工又はコーティングによって実行できる。
【0120】
支持体は、集電体及び/又は支持フィルムであってもよい。
【0121】
集電体の例として、炭素のベース層(防錆層)で覆われたアルミニウムから作られた集電体を挙げることができる。
【0122】
支持フィルムの例として、シリコーン処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)型のプラスチックフィルムを挙げることができる。
【0123】
ステップc)の終わりに得られる正極支持フィルムは、約2~100μm、好ましくは約10~60μmの範囲の厚さを有することができる。
【0124】
ステップc)は、ステップa)の溶媒を除去するのに十分な温度で実施することができる。
【0125】
電池の作動温度は約60~100℃である。
【0126】
少なくとも固体高分子電解質において、本発明による架橋共重合体を使用することにより、電池の作動温度を低下させることができる。
【0127】
60℃での本発明の電池の性能は、動作温度が80℃である市場で入手可能な電池の性能よりも、高いレジーム(例えば、(>C/2))では良好であり、低いレジーム(例えば、(C/10))では同様である。すなわち、同等以上の性能のとき20℃節約できる。
【0128】
本発明は、以下の実施形態によって説明されるが、これらは非限定的である。
【0129】
添付の図面は、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【
図1】
図1は、本発明による、及び本発明によらない材料のPSTFSILiの重量パーセントの関数としてのヤング率(MPa)を示す。
【
図2】
図2は、1000/Tの比の関数としてのイオン伝導率(S/cm)の変化を示す。Tは、本発明による、及び本発明によらない材料のケルビン単位の温度である。
【
図3】
図3は、本発明による、及び本発明によらない材料のPSTFSILiの重量パーセントの関数としてのガラス転移温度(℃)を示す。
【
図4】
図4は、本発明による、及び本発明によらない材料のPSTFSILiの重量パーセントの関数としての溶融温度(℃)を示す。
【
図5】
図5は、60℃における様々なレジーム(D/9.4~D/0.9)での放電容量(mAh)の関数としての本発明による複合正極の電圧(ボルト)を示す。負荷は、常にC/9.4である。
【
図6】
図6は、60℃における様々な放電レジーム(D/9.4~D/0.9)でのサイクル数の関数としての放電容量(mAh)とクーロン効率(%)の曲線を示す。負荷は常にC/9.4である。
【
図7】
図7は、本発明による、及び本発明によらない2つのLMP電池の電力性能を表す。
【実施例】
【0131】
実施例で使用された材料を以下に示す:
- カーボンブラック、Ketjenblack EC600JD、AkzoNobel;
- LiFePO4、Pulead;
- PVDF-co-HFP、Solvay;
- ホモ-PEO、住友精化;
- LiTFSI、Solvay;
- カーボンの層で覆われたアルミニウム製の集電体、Armor;
- 金属リチウムのシート、Blue Solutions;
- PEOオリゴマー、PEG2000、Sigma-Aldrich;
- 3-クロロ-2-クロロ-1-プロペン;
- TEGDME、Sigma-Aldrich;
- 水酸化カリウム(KOH);
- テトラヒドロフラン(THF);
- ジエチルエーテル;
- アセトニトリル;
- 水;
- 塩化アクリロイル;
- トリエチルアミン;
- ジメチルホルムアミド(DMF);
- 2-ヒドロキシ-4′-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン:光開始剤 Irgacure 2959;
- 以下の式のニトロキシドSG1及びアルコキシアミンMAMA-SG1:
【0132】
【0133】
特に明記しない限り、全ての材料は製造元から受け取った状態で使用した。
【0134】
実施例1:本発明の第1の対象による架橋共重合体の調製
Aブロックの架橋可能なポリ(エチレンオキシド)前駆体の調製
架橋可能なポリ(エチレンオキシド)の調製:本発明で定義されたサブステップi-a)
【0135】
【0136】
127.6gの1.5kDaのPEOオリゴマーと、9.5gのKOHを40℃で200mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。溶液が均一になったら、20mlのTHFに溶解した10gの3-クロロ-2-クロロ-1-プロペンを、予め調製したPEOオリゴマーの溶液に加える。重縮合反応を40℃で3日間行った。3-クロロ-2-クロロ-1-プロペンが不足しているため、得られた架橋可能なポリ(エチレンオキシド)はヒドロキシル官能基が末端となる。
【0137】
次に、反応媒体を冷却し、遠心分離し、次いで上澄みをジエチルエーテル中で沈殿させた。遠心分離工程で除去されなかった低分子量ポリマー及び塩を除去するために、限外濾過によって精製を完了する。回転蒸発乾固により水を除去し、生成物を真空下で乾燥させる。
【0138】
架橋可能なポリ(エチレンオキシド)の調製:本発明で定義されたサブステップi-b)
【0139】
【0140】
予め調製した26.5gの架橋性ポリ(エチレンオキシド)を、200mlのテトラヒドロフラン中の8gのトリエチルアミンの存在下で7.4gの塩化アクリロイルと周囲温度で15時間反応させた。これにより、末端のヒドロキシル官能基は、アクリレート官能基によって官能化された。得られた残留物をジエチルエーテル中で沈殿させ、濾過し、次いで真空下で乾燥させた。
【0141】
次に、不活性雰囲気下で、2gの式MAMA-SG1のアルコキシアミンを、予め入手した80℃の50mlのエタノール中のジアクリレートに添加した。4時間の反応後、得られた生成物をジエチルエーテル中で沈殿させ、濾過し、次いで真空下で乾燥させた。
【0142】
BABトリブロック共重合体を形成するための、Aブロックの前駆体である架橋性ポリ(エチレンオキシド)とリチウム スチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(STFSILi)の共重合:本発明で定義されたステップii)
【0143】
【0144】
30mlのDMF中の予め調製した開始剤を含む5gの架橋性ポリ(エチレンオキシド)を、120℃の不活性雰囲気下で1gのリチウム スチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(STFSILi)及び7mgのニトロキシドSG1と反応させた。16時間の反応の終わりに、モノマーSTFSILiの約80%が反応した。
【0145】
リチウム スチレン-スルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(STFSILi)は、国際特許出願WO 2013/034848 A1に記載の通り調製することができる。
【0146】
得られた共重合体をジエチルエーテル中で沈殿させ、次に水中での透析(3kg.mol-1のカットオフ値)によって精製した後、凍結乾燥により乾燥した。
【0147】
共重合体の総重量に対して13.1重量%のPSTFSILiを含む、本発明によるBABトリブロック共重合体CP-1が得られた。この共重合体のEO/Li比は48.4である。
【0148】
共重合体の架橋と成形
予め調製した100mgの共重合体を、5mlのアセトニトリル/水混合液(体積で、5/1)の溶液に入れた。0.9mgのUV光開始剤(2-ヒドロキシ-4′-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン)を溶液に入れた。次に、得られた溶液を、平らな表面に置かれたポリプロピレンのペトリ皿(直径6cm)に注いだ。溶媒の大部分を40℃のオーブンで24時間蒸発させ、次に60℃で12時間蒸発させた。次いで、得られたポリマーフィルムを、Fusion UV System IncがP300 MT Power supplyの商品名で販売する水銀UVランプの下で、15mW/cm2で、30秒間、周囲雰囲気下で架橋させた。得られたフィルムをグローブボックス内で乾燥させて、共重合体の総重量に対して13.1重量%のPSTFSILiを含み、EO/Liの比が48.4である本発明による架橋共重合体CPr-1を形成した。
【0149】
他の共重合体の入手
STFSILiモノマーの量を変更することによって、他の共重合体である架橋CPr-2及びCPr-3;並びに、非架橋のCP-2及びCP-3が得られた。
【0150】
以下の表1に、得られた共重合体の組成を示す:
【0151】
【0152】
実施例2:本発明の第3の対象による固体高分子電解質の調製
フィルムの形状の架橋ポリマーCPr-1、CPr-2及びCPr-3を、乾燥室(露点:-45℃)で、可塑剤としてのTEGDME中で1時間クエンチした後、得られたフィルムを回収し、過剰の可塑剤をKimtechティッシュペーパーで取り除いた。可塑剤の吸収の前後にフィルムの重量を測定したのでフィルム中の可塑剤の割合を推測することができる。フィルムの平均厚さは30~60μmの範囲である。
【0153】
以下の表2は、得られた固体高分子電解質の組成を示す:
【0154】
【0155】
実施例3:物理化学的特性
ヤング率
ヤング率(弾性率)は、TA Instruments社がDynamic Mechanical Analyzer DMA Q800の商品名で販売する動的機械分析装置を用いて、50℃で、乾燥した空気流で得られた引張応力・伸び曲線に基づいて算出した。
【0156】
添付の
図1は、架橋共重合体中のPSTFSILiの重量パーセント(%)の関数としての(白丸の曲線:共重合体CP
r-1、CP
r-2、及びCP
r-3)、非架橋共重合体中のPSTFSILiの重量パーセント(%)の関数としての(黒丸の曲線:共重合体CP-1、CP-2及びCP-3)、及び架橋共重合体とTEGDME可塑剤の混合物のPSTFSILiの重量パーセント(%)の関数としての(黒四角の曲線:電解質E-1b、E-2b及びE-3b)ヤング率(MPa)を示す。
【0157】
第1に、
図1は、BABトリブロック共重合体のAブロックの架橋は、全く同じ重量パーセントのPSTFSILiで3~5倍の増加が得られるため、ヤング率に大きな影響を与えることを示す。(例えば、28.4重量%のPSTFSILiを含む共重合体では、0.46MPa~1.7MPa)。さらに、この架橋により、本発明による架橋共重合体を可塑剤と組み合わせることを可能にする十分な機械的強度を得ることが可能になる。特に、可塑化によりイオン伝導性が向上し、完全に許容できるヤング率が保証される。
【0158】
したがって、固体高分子電解質E-1b、E-2b、及びE-3bの場合、50℃で良好なイオン伝導性/機械的強度の妥協点が得られる。最終的に、架橋共重合体中のPSTFSILiの重量パーセントの関数として共重合体の機械的強度を調整することが可能である。
【0159】
イオン伝導度
イオン伝導度は、以下の式に従って算出した:
【0160】
【0161】
式中、S及びlは、それぞれ、固体高分子電解質又は共重合体の表面積及び厚さである。Relは、Li/固体高分子電解質又は共重合体/Li対称セルにおいてインピーダンス分光法(VMP300、Bio-Logic)によって高周波で測定された固体高分子電解質又は共重合体の抵抗である。温度は、気候エンクロージャーによって10~80℃に設定される。
【0162】
添付の
図2は、非架橋共重合体CP-2(黒丸の曲線)及びCP-3(黒三角の曲線)、架橋共重合体CP
r-2(白丸の曲線)及びCP
r-3(白三角の曲線)、並びに固体高分子電解質E-2c(黒四角の曲線)及びE-3c(白四角の曲線)の1000/T比の関数としてのイオン伝導率(S/cm)の変化を示す。Tはケルビン単位の温度である。
【0163】
図2は、可塑剤を含まない共重合体は、導電率が60℃で4~8*10
-6S/cmであることを示す。これは、特に高いレジームで正極の基準重量が高い場合(例えば、>0.8mAh/cm
2)、電池で使用するには低すぎる。少量の可塑剤で可塑化することにより、架橋共重合体の機械的安定性を損なうことなく、1,3*10
-5S/cmの導電率を達成することができる。
【0164】
図3及び
図4は、架橋共重合体(白丸の曲線;共重合体CP
r-1、CP
r-2及びCP
r-3)、非架橋共重合体(黒丸の曲線;共重合体CP-1、CP-2及びCP-3)、並びに固体高分子電解質(黒四角の曲線;電解質E-1a、E-2a及びE-3a)のガラス転移温度(℃)(
図3)及び溶融温度(℃)(
図4)を、PSTFSILiの重量パーセントの関数としてそれぞれ示す。
【0165】
ガラス転移及び溶融温度は、Mettler-Toledoが商品名DSC3で販売する装置を使用してDSCによって熱力学的特性を測定することによって得た。測定は以下のパラメータで実行した:-110℃と130℃の間で10℃/分。
【0166】
図3と
図4は、固体高分子電解質のガラス転移温度と溶融温度が、架橋共重合体と非架橋共重合体のものに比べて、それぞれ顕著に低下していることを示す。この温度は、低温で良好なイオン伝導を有する(ポリマーの結晶性が低い)電解質を得るために適合しており、より低い温度で電池に実装することが可能である。
【0167】
実施例4:電気化学的特性評価
4.1複合正極の作製
フィルムの形状の複合正極を以下の通り作製した:46.3gのLiFePO4、1.2gのカーボンブラック、17.5gの共重合体CP-3、及び6.5gの脱イオン水の混合物を、Brabender Plastographに導入した。混合は、60℃で、80rpmで行った。
【0168】
次に、こうして得られたペーストを、炭素で被覆されたアルミニウムで作製した集電体上で、60℃でカレンダー加工した。得られたフィルムを使用前に100℃で10分間乾燥した。
【0169】
得られた複合正極は、71.2重量%のLFP活物質、26.9重量%の共重合体CP-3、及び1.9重量%のカーボンブラックを含む。厚さは約45μmである。得られた基準重量は1.37mAh/cm2である。
【0170】
LMPアキュムレータは、制御された雰囲気(露点-50℃)で、以下の組み立てによって作製した:
- 予め作製した、厚さ58.8μmの固体高分子電解質E-3dのフィルム;
- 厚さ約50μmの金属リチウムのシート;及び
- 予め作製した正極。
【0171】
この目的のために、リチウムのシートと固体高分子電解質フィルムを70℃、5バールでカレンダー加工して良好なLi/電解質の接触を確保し、次いで、最後に複合正極をリチウム/電解質アセンブリ上でカレンダー加工してアキュムレータを形成する。電解質フィルムは、金属リチウムフィルムと複合正極フィルムの間に配置される。導線はリチウムに接続され、別の導線は複合正極の集電体に接続される。
【0172】
得られたサンドイッチ型の構造を有するアキュムレータは、真空下でポーチ(「コーヒーバッグ」として知られている)に封入され、制御されていない雰囲気下で試験される。
【0173】
圧力1バール、表面積2.8cm2のアキュムレータが得られた。
【0174】
アキュムレータの動作中、固体高分子電解質に含まれるTEGDMEは、少なくとも部分的に複合正極に移動する(特に、一方では複合正極において、他方では固体高分子電解質において、TEGDMEの量の間で平衡に達するまで)。
【0175】
図5は、60℃での様々なレジーム(D/9.4~D/0.9)における放電容量(mAh)の関数としての複合正極の電圧をボルトで示す。負荷は常にC/9.4である。DはmAhで公称容量を表し、D/nは、n時間で容量Dを得ることに対応する放電電流である。分極は印加した電流密度に比例しており、これはイオンの輸送が移動のみで確保されている単一イオンポリマーで一般的である。したがって、得られる容量値は、低電圧遮断端子に大きく依存する。
【0176】
図6は、60℃での様々な放電レジーム(D/9.4~D/0.9)について、放電容量(mAh)とクーロン効率(%)の曲線をサイクル数の関数として示したものある。充電は常にC/9.4である。60サイクルを超えると非常に優れたサイクル強度が得られ、ファラディック収率は98.4%となった。
【0177】
図7は、2つのLMP電池の電力性能の比較を示す:
・ 固体高分子電解質E-3dと上記で定義された複合正極を含む60℃で動作する第1のLMP電池(白ひし形の曲線);及び、
【0178】
・ 48重量%のホモPEO、12重量%のLiTFSiリチウム塩、40重量%のPVdF-co-HFPを含む固体高分子電解質と、68重量%のLFP活物質、24重量%のホモPEO、6重量%のLiTFSiリチウム塩、2重量%のカーボンブラックを含む正極を備え、厚さが約60μm、基準重量が1.5mAh/cm2であり、80℃で動作する、現在産業界で使用されている第2のLMP電池(黒丸の曲線)。
【0179】
図7は、前記電池の放電レジーム(D/n)の関数として、公称容量(D/D
0)で正規化された放電容量を示す。
【0180】
最初は可塑化されていない複合正極について、固体高分子電解質の厚さ(58.8μm)、非常に高い電極の基準重量(1.37mAh/cm2)を考慮すると、得られた結果は注目に値する。それらは、本発明の固体高分子電解質が、高レジームで市販の電解質よりも優れた性能を有し、低サイクルレジームでは同等であることを示す。
【国際調査報告】