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特表2022-508071繊維状セルロース材料の加工方法、製品およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】繊維状セルロース材料の加工方法、製品およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C08B 1/00 20060101AFI20220112BHJP
   A23L 17/60 20160101ALI20220112BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20220112BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20220112BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20220112BHJP
   D21H 11/12 20060101ALI20220112BHJP
   D21D 1/34 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C08B1/00
A23L17/60 Z
A23L5/00 Z
C08L1/02
D21H11/18
D21H11/12
D21D1/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525083
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(85)【翻訳文提出日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 GB2019053222
(87)【国際公開番号】W WO2020099872
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】1818498.6
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521195113
【氏名又は名称】ザ コート オブ エディンバラ ネピア ユニヴァーシティ
【氏名又は名称原語表記】THE COURT OF EDINBURGH NAPIER UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク オルーク
(72)【発明者】
【氏名】マーク ドリス
【テーマコード(参考)】
4B019
4B035
4C090
4J002
4L055
【Fターム(参考)】
4B019LE06
4B019LK01
4B019LK15
4B019LP01
4B019LP03
4B019LP04
4B019LP13
4B019LP17
4B035LG38
4B035LG40
4B035LP59
4C090AA04
4C090AA08
4C090BA24
4C090BC04
4C090BD03
4C090BD19
4C090CA01
4C090CA31
4C090DA02
4C090DA08
4C090DA10
4C090DA24
4C090DA26
4C090DA27
4C090DA28
4C090DA32
4J002AB011
4J002GB00
4J002GG02
4J002GH00
4J002GH01
4J002HA07
4L055AA05
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG07
4L055BB03
4L055BB30
4L055CA16
4L055CA40
4L055EA05
4L055EA15
4L055EA16
4L055EA19
4L055EA23
4L055EA25
4L055FA22
(57)【要約】
以下を含む、藻類から繊維状セルロース系材料を加工する方法:(i)前記繊維状セルロース系材料を水に懸濁させて懸濁液を形成すること;および(ii)前記懸濁液を、大きいギャップを有する少なくとも1つのチャンバーに高せん断力で通過させてセルロース系ナノフィブリルを生成すること。また、セルロースナノフィブリルおよびセルロースナノ結晶、生成物、その方法および使用も、記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、藻類から繊維状セルロース材料を加工する方法:
i)前記繊維状セルロース材料を水に懸濁させて懸濁液を形成すること;および
ii)前記懸濁液を、大きいギャップを有する少なくとも1つのチャンバーに高せん断力で通過させてセルロースナノフィブリルを生成すること。
【請求項2】
前記繊維状セルロース材料が、0.5~5重量%の濃度で水に懸濁される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維状セルロース材料が、1~3重量%の濃度で水に懸濁される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのチャンバーが、70ミクロン~250ミクロンのギャップを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁液が、大きいギャップを有する少なくとも1つのチャンバーを高せん断力で単一回通過する、前出請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記懸濁液が、大きいギャップを有する少なくとも1つのチャンバーを高せん断力で7回通過する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記懸濁液が、大きなギャップを有する少なくとも1つのチャンバーを高せん断力で3回通過する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記懸濁液が、前記少なくとも1つのチャンバーを低圧で通過する、前出請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記懸濁液が、前記少なくとも1つのチャンバーを200MPaまでの圧力で通過する、前出請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水が、前記セルロースナノフィブリルを含む懸濁液から除去されて乾燥形態のセルロースナノフィブリルを生成する、前出請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、高せん断ホモジナイザー中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記セルロースナノフィブリルを酸加水分解に供してセルロースナノ結晶を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記酸加水分解が、塩酸を使用する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記セルロースナノフィブリルまたはセルロースナノ結晶が表面改質を受ける、前出請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
40~100nmの幅および50超のアスペクト比を有する、セルロースナノフィブリル。
【請求項16】
実質的に均一な生成物である、請求項15に記載のセルロースナノフィブリル。
【請求項17】
100超のアスペクト比を有する、請求項15または16に記載のセルロースナノフィルブリル。
【請求項18】
5000%超の保水率を有する、請求項15~17のいずれか一項に記載のセルロースナノフィブリル。
【請求項19】
請求項12または13に記載の方法によって形成された、セルロースナノ結晶。
【請求項20】
請求項15~18のいずれか一項に記載のセルロースナノフィブリルおよび請求項19に記載のセルロースナノ結晶の少なくとも1つを含む、レオロジー改質剤。
【請求項21】
請求項15~18のいずれか一項に記載のセルロースナノフィブリルおよび請求項19に記載のセルロースナノ結晶の少なくとも1つを含む、医療用コンポジット。
【請求項22】
請求項15~18のいずれか一項に記載のセルロースナノフィブリルおよび請求項19に記載のセルロースナノ結晶の少なくとも1つを含む、使い捨てプラスチック代替製品。
【請求項23】
請求項15~18のいずれか一項に記載のセルロースナノフィブリルおよび請求項19に記載のセルロースナノ結晶の少なくとも1つを含む、医療用インプラントまたは医療用メッシュ。
【請求項24】
請求項15~18のいずれか一項に記載のセルロースナノフィブリルおよび請求項19に記載のセルロースナノ結晶の少なくとも1つの3-D印刷を含む医療用インプラントまたは医療用メッシュの製造方法。
【請求項25】
請求項15~18のいずれか一項に記載のセルロースナノフィブリルの、コンポジット、油およびガス、塗料、化粧品、食品、コーティングまたはフィルムにおける使用。
【請求項26】
請求項19に記載のセルロースナノ結晶の、コンポジット、油およびガス、塗料、化粧品、食品、コーティングまたはフィルムにおける使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、繊維セルロース材料、セルロースナノフィブリルおよびそのような方法から得られるセルロースナノ結晶を加工する方法、ならびに得られるナノセルロース材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
1ミクロン未満、典型的には500nm未満の範囲の少なくとも1つの寸法からなるセルロース材料は、ナノセルロースとして知られている。
【0003】
ナノセルロースの例としては、図1に示すように、微結晶セルロース(MMC;図1A)、セルロースミクロフィブリル(CMF;図1B)、ミクロフィブリル化セルロース(MFC;図1CおよびNFC;図1D)、セルロースナノフィブリル(CNF;図1E)およびセルロースナノ結晶(CNC;図1F)が挙げられる。本発明は繊維状セルロース材料を、未だフィブリル状態にあるセルロースの最小タイプであるセルロースナノフィブリルの加工方法、および利用可能なセルロースの最小タイプ(典型的には100~1000ナノメートル)であり、かつ高度に結晶性で剛性のナノ粒子であるセルロースナノ結晶に関する。CNFは高アスペクト比(長さ対幅)を有し、典型的な幅は5~20ナノメートルであり、幅広い長さ、典型的には数ΜM程度である。
【0004】
セルロース供給原料の供給源としては、細菌、藻類および高等植物、すなわち植物を通して水および鉱物を輸送するための木化組織を有する陸生植物が挙げられる。
【0005】
ナノセルロースの商業的製造は、しばしば製紙産業の副産物として、木材パルプから誘導される。特に、機械的方法は、パルプを高せん断力に曝すことによって、木材ベースの繊維からナノセルロース繊維を単離するために使用される。典型的には、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、グラインダーまたはマイクロフルイダイザーが使用され、これらはナノセルロースを抽出するために、木材パルプ中の細胞壁を剥離する。このような方法は、出発セルロース濃度が0.5重量%未満、典型的には約0.2重量%であることが必要とされ、従って最終製品に関して比較的高価であるので、低い製品収率のために高いエネルギー消費を有する。
【0006】
酵素的もしくは機械的、またはカルボキシメチル化もしくはTEMPO媒介酸化による荷電種の導入のような前処理は、エネルギー消費を、したがってコストを低減するために提案されている。しかし、このような追加のステップは手順にさらなるコストを追加し、これは、低減されたエネルギー消費から生じる任意のコスト節約を低減または排除し得る。
【0007】
あるいはナノセルロースがバクテリアセルロースから誘導されてもよく、これは高価値の最終製品を生成するが、高コストの加工を含み、したがって、主に、生物医学的用途等の高価値の最終用途を対象とする。
【0008】
ナノセルロース結晶は、典型的には硫酸または塩酸での酸加水分解による天然フィブリルのさらなる加工によって形成される。特に、ナノフィブリルは加水分解され、続いてCNCは遠心分離および洗浄によって酸溶液から抽出される。しかしながら、木材に由来するCNFは、そのような酸加水分解技術に容易に従わず、30%未満の典型的な収率をもたらす。したがって、このような方法は、低価値の最終製品が望まれる場合には経済的に実行可能であるとは考えられない。
【0009】
ナノセルロースは、複合材料、油およびガス、塗料、化粧品、食品、被膜およびフィルムを含む広範囲の用途を有する。ナノセルロースの性質に依存して、その使用は、より低い値のレオロジー改質剤から高い値の医療用複合体までの範囲である。CMF、CNFおよびCNCは、典型的にはほとんどの用途のためのセルロース加工における所望の最終生成物である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
高エネルギー消費プロセスまたは付加的な加工工程を使用する必要性を否定する、ナノセルロースを製造するためのよりコスト効率の良い方法を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明の第1の態様では、以下を含む、藻類から繊維状セルロース材料を加工する方法が、提供される:
i.前記繊維状セルロース材料を水に懸濁させて懸濁液を形成すること;および
ii.前記懸濁液を、大きいギャップを有する少なくとも1つのチャンバーに高せん断力で通過させてセルロースナノフィブリルを生成すること。
【0012】
繊維状材料がチャンバーを閉塞し、鋼構成要素に過度の摩耗を引き起こす可能性があるため、高せん断均質化を介して繊維状セルロース材料を水中で単独で加工することは、以前には可能ではなかった。しかしながら、本発明者らは驚くべきことに、より攻撃的でない取扱い条件と加工条件、すなわち、1回以上の通過のためのより大きなギャップを有する少なくとも1つのチャンバーを通る、より強力でない条件での水中での加工との組み合わせが、繊維状セルロース材料をナノセルロースに加工するための簡略化された手順を可能にすることを見出した。例えば、比較的低圧で200ミクロンのギャップを有するチャンバーを単一回通過させると、幅が40~100nmでアスペクト比が50を超える離散セルロースナノフィブリルが生成されることが見出されている。得られたセルロースナノフィブリルは、高品質の純粋な生成物(典型的には99.9%収率)である。
【0013】
この単一高せん断加工工程は、他の高せん断ナノセルロース加工方法と比較して、エネルギーコスト及びCO放出を劇的に低減する。さらに、単一加工工程は、既存の海藻抽出加工へのモジュール式ボルトオン技術を可能にする。
【0014】
さらに、本発明の方法は、典型的には99.9%のナノセルロース収率が達成されるので、有意な廃水蒸気を生成しない。この方法は水のみを使用し、危険物質を使用しないので、特別な訓練または個人的な保護具を必要としない。
【0015】
さらに、高せん断加工のための低圧パスの使用は多くの高圧パスを必要とする可能性のある、より高い植物由来の高せん断ナノセルロース加工のための典型的なキャビテーション効果及び機械的摩耗の低下のために、加工におけるダウンタイムをかなり低下させる。
【0016】
得られるセルロースナノフィブリルは非常に耐久性があり、高せん断で大きなギャップを有する少なくとも1つのチャンバーをパス数にかかわらず、いかなる劣化も受けない。さらに、得られたセルロースナノフィブリルは、木材パルプ等の他の供給源から誘導されたセルロースナノフィブリルよりも、酸加水分解を受けてセルロースナノ結晶を形成し(以下でさらに詳細に議論するように)、表面改質を受け易い。
【0017】
特に、本発明は、藻類に由来する繊維状セルロース材料を使用する。藻類は、低セルロース含量(典型的には約10重量%)および当該技術分野で公知の方法の高コストのために商業的に実行可能であるとは考えられないので、ナノセルロース製造のための一般的な供給原料ではない。したがって、本発明は藻類由来の繊維状セルロース材料をより低コストで加工することを可能にし、したがって、藻類由来のナノセルロース製造を商業的に実行可能な選択肢とする。
【0018】
用語「藻類」は微細藻類および海藻類を含むがこれらに限定されない、全ての繊維状セルロース含有藻類を含むことが意図される。1つ以上の実施形態では、藻類が海藻、例えば、褐色、赤色および緑色の大型藻類であってもよい。
【0019】
繊維状セルロース材料は海藻の加工、例えば、アルギン酸塩を形成するための褐色海藻の加工における副産物である。このような物質は様々な量で存在し、分解を困難にし得る他のフラグメントに結合されず、したがって、本発明の方法による抽出を可能にする。
【0020】
褐藻類は典型的には比較的高いセルロース含量を有し、例えば、Laminaria hyperboreaは、アルギン酸塩の抽出の副産物中に存在する10~12%のセルロースを含む。褐色海藻のセルロース含量は、他の藻類よりも高く、従って、本発明のための適切な出発物質を提供し得る。しかしながら、繊維状セルロース材料は代わりに、褐色海藻に対してより少ない程度でセルロースを含む赤藻であってもよいことが認識される。
【0021】
本発明の方法を受ける前に、セルロース系繊維材料は、藻類からアルギン酸塩と一緒に抽出され、続いてアルギン酸塩から分離されて、単離されたセルロース系繊維状出発原料を提供することができる。分離は、水中の可溶性アルギン酸塩からの不溶性セルロース繊維材料のろ過によって達成され得る。
【0022】
セルロース繊維材料は木材パルプ等からの公知のセルロースナノフィブリル製造において必要とされるように、水中に懸濁させる前に膨潤剤、加水分解剤または酸化剤による処理等のセルロースナノフィブリルの抽出を助けるためのいかなる前処理にも供されない。しかしながら、これは、セルロース上に表面電荷を導入するために使用される事前酸化の可能性を排除しない。
【0023】
本発明の方法は、より高濃度の繊維状セルロース材料を加工することを可能にする。例えば、繊維セルロース材料は、5重量%までの濃度で水中に懸濁されてもよい。理解されるように、材料の固有のレオロジー特性は水中の濃度に対する制限因子であり、したがって、濃度は、得られる懸濁液が過度に粘稠でないことを確実にするように選択され得る。例えば、0.5~5重量%の範囲の濃度を使用することができる。あるいは、0.5~4重量%または1~3重量%の濃度を使用してもよい。もちろん、0.5重量%未満の濃度も可能であり、例えば、0.1重量%および0.2重量%の非常に低い濃度が、いくつかの木材由来セルロース材料を含めて、このように加工されてもよい。しかしながら、この方法は、このような低濃度では商業的に実行可能ではないかもしれない。
【0024】
少なくとも1つのチャンバーは好適な形態であってもよく、例えば、補助チャンバーと同様に、ZまたはY形状または直線状であってもよい。例えば、少なくとも1つのチャンバーは、相互作用チャンバーおよび/または補助チャンバーであってもよい。
【0025】
懸濁液は少なくとも1つのギャップを通過して、少なくとも1つのチャンバー内に入り、チャンバー内で加工される。少なくとも1つのギャップは70ミクロン以上、例えば、70ミクロン~250ミクロンであってもよい。より小さいサイズのギャップ(すなわち、100ミクロンまで)を有する少なくとも1つのチャンバーが使用される場合、懸濁液は高度に均一な生成物を達成するために、チャンバーを複数回通過すること(例えば、7回まで)を必要とされ得る。しかしながら、200ミクロンのギャップを有する少なくとも1つのチャンバーが使用される場合、同様に純粋な生成物が、チャンバーを1回通過することによって達成され得る。したがって、ギャップサイズはそれに応じて選択されてもよいが、より小さいサイズのギャップが閉塞のために使用される場合、加工停止時間が増加されてもよいことが理解される。1つまたは複数の実施形態では、単一ギャップを組み込んだ少なくとも1つのチャンバーを使用することができる。
【0026】
懸濁液は、大きなギャップを有する少なくとも1つのチャンバーを単一回通過することができる。あるいは、懸濁液が大きなギャップを有する少なくとも1つのチャンバーを複数回通過してもよい。パスの数は20パス未満、例えば、10パス未満、または7パスまでであってもよい。いくつかの実施形態では、パスの数が5パスまで、または3パスまでであってもよい。
【0027】
懸濁液は、既知の高せん断ナノセルロース加工と比較して比較的低い圧力で少なくとも1つのチャンバーを通過させることができる。本発明の方法の第2の工程で使用される典型的な圧力は、200MPaまでであり得る。例えば、最大140MPaの圧力は200ミクロンのギャップを有する室に使用されてもよいが、最大200MPaの圧力は70~100ミクロンのギャップを有する室に使用されてもよい。
【0028】
セルロース繊維材料のナノフィブリルへの加工は、上記の工程のみからなる本発明の方法を介して達成され得る。実際、高収率での高品質セルロースナノフィブリルは、上記のように単一のチャンバーのみで容易に達成され得る。しかしながら、いくつかの状況では、複数のチャンバーを使用することができる。
【0029】
続いて、水を、セルロースナノフィブリルを含む懸濁液から除去して、乾燥形態のセルロースナノフィブリルを生成することができる。これは、当技術分野における任意の好適な手段、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、超臨界乾燥によって、または第1の工程におけるアセトンまたはtert-ブタノールへの溶媒交換によるエバポレーションによって達成することができる。しかしながら、熱オーブン中での空気乾燥のような、凝集を導くいかなる方法も避けるべきである。
【0030】
本発明の方法は、高せん断ホモジナイザー中で実施することができる。任意の市販の高せん断ホモジナイザーを、本発明の方法を実施するために適合させることができる。
【0031】
本発明の方法は、セルロースナノフィブリルを酸加水分解に供してセルロースナノ結晶を形成することをさらに含んでもよい。
【0032】
酸加水分解は、セルロースナノ結晶を形成するための当該技術分野における標準的な技術である。しかしながら、本発明によって形成されたセルロースナノフィブリルは、他の供給源からのCNFよりも酸加水分解を受けやすいことが見出された。その結果、セルロースナノ結晶の得られる収率は木材由来セルロースよりもはるかに高く、例えば、収率が少なくとも2倍増加する。さらに、得られるナノ結晶はサイズおよび形態においてバクテリア合成セルロースナノ結晶に匹敵する高品質の最終生成物であるが、はるかに低いコストである。対照的に、木材パルプに由来するセルロースナノ結晶は、はるかに小さく、品質が劣る。
【0033】
セルロースナノフィブリルと同様に、得られるナノ結晶は容易にセパラブルフラスコ形態であり、広範囲の用途に使用する準備ができている。
【0034】
酸加水分解は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等を使用することができる。1つ以上の実施形態において、酸加水分解は塩酸を使用する。塩酸の使用は、本発明の方法から形成されたセルロースナノフィブリルに由来するセルロースナノ結晶の収率の少なくとも2.3倍の増加をもたらすことが見出された。
【0035】
この方法は、セルロースナノフィブリルまたはセルロースナノ結晶が特定の用途に適合される1つ以上の工程をさらに含み得る。例えば、セルロースナノフィブリルまたはセルロースナノ結晶は所望の機能を付与するために、例えば、酸化剤および/または酸との反応によって表面電荷を導入するために、表面化学の変化もたらされる条件に供され得る。1つのこのような工程において、セルロースナノフィブリルまたはセルロースナノ結晶は、それらの製造の後または前のいずれかに表面改質を受け得る。このような工程は他の供給源に由来するCNFおよびCNCについて知られており、本発明の方法による加工の前または後に、本発明の生成物に容易に適用することができる。
【0036】
当技術分野で知られているように、酸化剤または酸(酸化剤であってもよい)はセルロースナノフィブリルのアモルファス領域を分解し、セルロースナノ結晶を残す。反応時間は、最終製品を決定する:短い反応時間が使用される場合、表面改質CNFの結果;長い反応時間が使用される場合、使用される酸/酸化剤に依存して、CNCまたは改質CNCの結果;酸化が終了に達することが可能である場合、CNCが糖結晶に分解されるかどうか。特に、塩酸または硫酸のような強酸が使用される場合、反応は速く、例えば1~4時間で完全な加水分解に到達する。したがって、表面改質CNFを達成するためには、数分間のオーダーの反応時間が必要である。さらに、過硫酸アンモニウムは、典型的には1時間の反応時間で、最も速く最も安価な酸化CNFの方法を提供することができる。しかしながら、CNFのより制御された表面改質のためには、典型的には12時間の反応時間を有し得るCNCの有意な量なしに、クエン酸、酢酸、硝酸またはリン酸等のより弱い酸を使用することが好ましい場合がある。さらなる制御は、繊維状セルロース材料のCNFへの加工の前または後のいずれかで表面改質を行うことによって達成され得る。例えば、粗い繊維状セルロース材料上での酸化は得られるCNF上での酸化よりも効果的ではないかもしれないが、望ましくない加水分解をCNCに制限するかもしれない。したがって、当業者は、所望の生成物および選択された酸/酸化剤、ならびに繊維状セルロース材料のセルロースナノフィブリルへの加工の前または後に反応が完了するかどうかに応じて、反応時間を容易に選択することができる。
【0037】
本発明の第2の態様では、40~100nmの幅および50超のアスペクト比を有するセルロースナノフィブリルが、提供される。
【0038】
セルロースナノフィブリルとして記載される市販の材料は、典型的には異なるサイズのフィブリルと、ナノフィブリル範囲の平均サイズを有する粒子との混合物を含む。本発明の第1の態様の方法によって形成されたセルロースナノフィブリルは、ナノ範囲内ではるかに狭いサイズ分布を有する、より高品質の均一な生成物である。
【0039】
例えば、セルロースナノフィブリルは、実質的に均一な生成物である。実質的に均一な生成物として、セルロースナノフィブリルの少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、場合によっては、少なくとも99%が各々がナノ範囲の二次元を有する別個の実体として存在する。
【0040】
1以上の実施形態では、セルロースナノフィブリルは、100超のアスペクト比を有し得る。
【0041】
本発明の第1のアスペクトpfの方法から得られる未変性セルロースナノフィブリルは、5000%を超える、例えば6000%を超える、または7000%を超える保水率を有する可能性がある。5000%の保水性は、該物質が水中でそれ自体の重量の50倍、6000%の手段がそれ自体の重量の60倍、および7000%の手段が水中でそれ自体の重量の70倍を吸収することを手段する。クエン酸、酢酸、硝酸またはリン酸によって任意に酸化されたCNFは25,000%を超える保水率を有することができ、これは、物質が水中でそれ自重の250倍を吸収することを手段する。保水性は、セルロースナノフィブリルが保湿剤、バリヤクリーム、プラスター、充填剤および創傷ケア製品のような、より長い間残存するウェッターが望ましい用途においてレオロジー改質剤として使用される場合に特に望ましい。特に、非常に高い保水値、例えば25000%を超える保水値を有する酸化CNFは、パーソナルケアおよび医薬用途のための増粘剤、安定剤および乳化剤として工業的に使用される化石燃料由来の超吸収性ポリマーと直接比較する。
【0042】
本発明の第3の態様では、本発明の方法によって形成されたセルロースナノ結晶が提供される。
【0043】
本発明の第4の態様では、本発明の第2の態様のセルロースナノフィブリルおよび本発明の第3の態様のセルロースナノクリスタルの少なくとも一方を含むレオロジー調整剤を提供する。
【0044】
本発明の第5の態様では、本発明の第2の態様のセルロースナノフィブリルおよび本発明の第3の態様のセルロースナノクリスタルの少なくとも一方を含む医療用複合体を提供する。
【0045】
本発明の第6の態様では、本発明の第2の態様のセルロースナノフィブリルおよび本発明の第3の態様のセルロースナノクリスタルの少なくとも一方を含む、単回使用のプラスチック代替製品が提供される。
【0046】
使い捨てプラスチックは、フィルム、マイクロビーズ、ストローまたは先端等であってもよい。
【0047】
本発明の第7の態様では、本発明の第2の態様のセルロースナノフィブリルおよび本発明の第3の態様のセルロースナノクリスタルの少なくとも1つを含む医療用インプラントまたは医療用メッシュを提供する。
【0048】
本発明の第8の態様では、本発明の第2の態様のセルロースナノフィブリルおよび本発明の第3の態様のセルロースナノクリスタルの少なくとも一方を3-D印刷してなる医療用インプラントまたは医療用メッシュの製造方法を提供する。
【0049】
3-D印刷は、当技術分野で知られている任意の適切な方法によって達成することができる。
【0050】
本発明の第9の態様において、本発明の第2の態様のセルロースナノフィブリルの、複合材料、油およびガス、塗料、化粧品、食品、コーティングまたはフィルムにおける使用が提供される。
【0051】
本発明の第10の態様では、複合材料、油およびガス、塗料、化粧品、食品、コーティングまたはフィルムにおける本発明の第3の態様のセルロースナノ結晶の使用が提供される。
【0052】
本発明の態様の1つの特徴は、本発明の他の態様に準用される。
【0053】
(詳細説明)
次に、本発明の実施形態を、以下の非限定的な実施例および図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1は、異なるタイプのナノセルロースのSEM画像を示す。
図2図2は、本発明の実施形態に従って加工された、異なる起点から収穫された繊維セルロース材料の貯蔵弾性率の比較をグラフで示す。
図3図3は、異なる起点から採取された加工された繊維状セルロース材料のSEM画像を示す。
図4図4は、異なる起点から収穫された加工された繊維セルロース材料のFTIR分析を示す。
図5図5は、本発明の第1の実施形態による方法による加工の開始および終了時のナノセルロースのSEM画像を示す。
図6図6は、第1の実施形態の方法から得られたセルロースナノフィブリルと、木材パルプから得られたセルロースナノフィブリルとの比較SEM画像を示す。
図7図7は、本発明の第2の実施形態による方法によって形成されたセルロースナノ結晶のSEM画像を示す。
図8図8は、藻類以外のナノセルロース源に由来するセルロースナノ結晶のSEM画像を示す。
図9図9は、セルロースナノ結晶の再分散可能な安定な懸濁液を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の第1の態様の一実施形態に従って、褐藻類から抽出された粗いセルロースからナノフィブリル化セルロース(CNF)を製造するための工程を以下に記載する。特に、本実施形態の方法で加工された繊維状セルロース材料は、褐色海藻種Laminaria hyperboreaに由来する。
【0056】
(繊維状セルロース材料の供給源)
繊維状セルロース系材料は3つのLaminaria hyperboreaの供給源から得た:最初の2つの供給源がMarine Biopolymers Ltdから得たアルギン酸塩産製造の副産物であり、これは、スコットランド(Ayr)およびアイスランドから収穫された海藻からアルギン酸塩を用いて繊維状セルロース系材料を抽出し、次いで2つの産物を分離した;そして第3の供給源はEdinburgh Napier University(ENU)によってスコットランドのAyrビーチから直接Lhyperboreaを収穫し、そして以下の手順に従って実験室で粗いセルロースを抽出することによって得た。
【0057】
(海藻抽出手順)
1. Laminaria hyperborea茎を小片に切断する;
2. 0.2M HClに一晩浸漬する;
3. NaOHでpH7に中和し、次いで遠心分離機で洗浄する;
4. 得られた材料を2%重炭酸ナトリウムに4時間30分間浸漬する;および
5. 遠心分離してアリジネートを除去する。
【0058】
各供給源からの抽出された繊維セルロース材料を、以下にさらに詳細に記載される実施形態に従って本発明の方法に供し、ナノフィブリル化セルロース(CNF)を生成した。
【0059】
得られたCNFのレオロジー(貯蔵弾性率)および走査型電子顕微鏡(SEM)分析と、上記供給源から採取した抽出繊維状セルロース材料のフーリエ変換赤外線(FTIR)分析との比較を行った。種々の分析方法は、繊維セルロース材料の供給源および抽出方法が本発明の方法に従って、出発材料の性質およびその後のCNFへの加工に影響を及ぼすかどうかを確立することを意図した。
【0060】
貯蔵弾性率は材料の弾性応答の尺度であり、その中の蓄積エネルギーを指す。繊維状セルロース材料の異なる供給源から得られたCNFについての結果を、以下の表1および図2aに示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1および図2aの結果から、海藻由来のCNFの3つの試料すべてが、大きなギャップを有するチャンバーを通る各パスにおいて有意差のない類似のプロファイルを示すことが明らかである。
【0063】
モルホリン中で膨潤させた後に加工した木材由来セルロースと比較すると、海藻由来CNFと木材由来CNFとの間の差は図2bに示すように、木材由来材料を用いた5パスの貯蔵弾性率の2~3倍の海藻材料の単一パスで明らかである。
【0064】
グラフの形状は本発明のこの実施形態においてセルロースを加工するのに典型的であり、貯蔵弾性率の増加は3回の通過後に最も明白であり、5回の通過後に平坦化する。貯蔵弾性率は、繊維間および繊維内の水素結合によって支持された繊維の絡み合いと共に増加する。繊維がはるかに長く、したがって絡み合いが大きいので、海藻由来材料では値がはるかに高い。5回通過した後、繊維間の水素結合はより容易に破壊され、貯蔵弾性率はそれ以上大きくは増加しない。藻類CNFのパス数と共に貯蔵弾性率は増加するが、わずかに高い貯蔵弾性率の利点はパス数の増加におけるエネルギーコストを上回らないかもしれない。
【0065】
1パス後のCNF材料の走査型電子顕微鏡画像(走査型電子顕微鏡)を図3に示し、図3aはMBL抽出からのアイスランド誘導LHCNFを示し、図3bはMBL抽出からのスコットランド誘導CNFを示し、図3cは、上述のENU抽出からのスコットランド誘導CNFを示す。これらの画像から、試料間に識別可能な差異がないことが明らかである。
【0066】
図4aに示され、図4bに定量化された、3つの試料全てから収穫された繊維状セルロース材料についてのFTIR(フーリエ変換赤外線)トレースは非常に類似しており、海藻由来セルロースから予想されるパターンを示している。ENUおよびアイスランディック試料は最も類似しているように見えるが、いずれの試料間にも有意差はなく、すなわち、既知のピークは予想外のピークを伴わずに、それらが予想される場所である。従って、異なる供給源から収穫され、異なる方法(アルギン酸塩産製造の副産物として、またはENU法を介して)によって抽出された繊維セルロースは、本質的に同一である。
【0067】
総合すると、レオロジー分析、SEM画像化分析、およびFTIR分析からの結果は、各パスでの3つのCNF試料のいずれか、または3つの繊維状セルロース材料試料、すなわち粗い前加工された形態のもの間で有意差を示さない。したがって、藻類からの繊維状セルロース材料の供給源および抽出方法は、本発明の方法によるその後のCNF加工に有意ではないことが明らかである。
【0068】
後続の例で使用される繊維状セルロース材料出発原料は、スコットランドから収穫され、アルギン酸生産の副産物として抽出されたMBLから得られるものである。
【0069】
(セルロースナノファイバー(CNF)およびセルロースナノ結晶(CNC)の製造方法)
繊維状セルロース出発物質のSEM像を図5aに示すが、これはミリメートルサイズレンジ、すなわち、標的フィブリルよりも10オーダー大きいセルロース粒子を示す。脱イオン水中の繊維セルロース原料1%/wの500gサスペンションを構成した。
【0070】
この例では、200ミクロンの補助チャンバーを有する高せん断ミキサーを使用した。特に、100ミクロンの相互作用チャンバーが除去されたM110EH-30(Microfluidics)高せん断ミキサーを使用した。
【0071】
繊維状セルロース材料懸濁液を高せん断ミキサーのリザーバに添加し、混合して安定な懸濁液を維持した。混合は撹拌子またはローターステーターミキサー、例えば、IKA T25ウルトラターラックス高速ホモジナイザーを用いて手動で行うことができる。
【0072】
次いで、高せん断ミキサーを作動させ、繊維状セルロース材料懸濁液を補助チャンバーに1回通し、生成物を収集した。本例では、流量は約8~10L/hrであり、生成物は約3~5分で回収された。室内の初期設定圧力は9Kpsi(約62MPa)であった。
【0073】
繊維セルロース系材料の安定した懸濁液のための得られた生成物は、以下に詳述するように、高品質のセルロース系ナノフィブリルである。得られたセルロースナノフィブリルのSEM画像は、ナノ範囲内の幅を有する細長いフィブリルを明確に示す図5bに提供される。
【0074】
得られたセルロースナノフィブリルの保水値(%)を調べた。保水値は、フィブリルが水を吸収し、膨潤する能力、したがってレオロジー調整剤として作用する能力の指標を提供する。しかしながら、材料のフィブリル化の程度の指標であることも報告されている(「Microemulsion Systems for Fiber Deconstruction into Cellulose Nanofibrils」、Carrilloら、ACS Applied Materials and Interfaces 6、22622-22627、2014)。
【0075】
保水値は、以下の手順で測定した:
1. 乾燥CNF粉末の場合:
1.1. 0.5gの乾燥粉末を使い捨てプラスチック瓶に秤量する
1.2. 瓶に純水49.5gを加える
1.3. 任意の公知の方法によって、例えば、ローターステーターミキサー、超音波処理、または高せん断ホモジナイザーのさらなる通過を使用して、試料を再分散させる。
1.4. 懸濁液を50mlのファルコン管に入れる
2. 水以外の溶媒中で決して乾燥されないセルロース系材料、例えば、表面改質を受けたCNFの場合:
2.1. 複数の、例えば4~7の遠心分離工程を介して、サンプルを水に溶媒交換する。
2.2. ローター-ステーターミキサーを使用して洗浄した試料を均質化し、洗浄工程による凝集または凝集を排除する
2.3. 洗浄した懸濁液の固形分を水分バランスにより測定し、水中1%懸濁液を調製する。水分バランスは、乾燥減量(LOD)方法を使用する。具体的には、液体または固体試料を試料パンに入れ、統合バランスで最初の試料を秤量し、次に発熱体で水を蒸発させる。最終読み取り値は最初の試料中の固形分パーセントであり、これは、必要な濃度のためにどのくらいの量の試料を希釈すべきかを示す。
2.4. 懸濁液を50mlのファルコン管に入れる
3. ファルコン管を遠心分離機に入れた。Sorvall(商標)RC 6 Plus遠心分離機(Thermo Scientific)を、この例では使用した。試料を900gで30分間遠心分離した。
4. 遠心分離後、ファルコンチューブを取り出し、上部液相を、下部液相を破壊することなく注ぎ出し、チューブの上部に自由流動液体がないことを確認した
5. 3つのアルミトレーを作成し、その重量をWempty panとして記録した
6. ファルコン管中の残りの物質を3つのトレイに分割し、トレイを秤量し、Wempty pan+wet sampleとして記録した
7. トレイを105℃のオーブンに一晩置いた
8. トレイを再度計量し、Wempty pan+dry sampleとして記録した
9. 次に、WRV(%)の結果を、以下の式を用いて計算した:
【数1】
【0076】
この方法によって形成されたセルロースナノフィブリルと、樹木からの木材パルプに由来し、バクテリアから操作されたセルロースナノフィブリルとの比較を、以下の表2に提供する。
【0077】
【表2】
【0078】
示されるように、得られたセルロースナノフィブリルは、高コストのバクテリアプロセスに由来するCNFにより類似し、したがって、はるかに低い製造コストで、および供給源から最終製品までのはるかに短い時間枠で、高品質の製品を提供する。さらに、海藻由来のCNFは、木材パルプまたはバクテリアプロセスのいずれかに由来するCNFについて達成されるよりもはるかに大きな水保持性を提供する。
【0079】
さらに、海藻からのCNFの収率は、木材パルプまたはバクテリアの収率よりも有意に高く、100%に近い。
【0080】
図6は、海藻由来のセルロースナノフィブリル(左側)を、木材パルプ由来のセルロースナノフィブリル(右側)と比較したSEM画像を示す。これらの画像から、海藻由来CNFは木材パルプ由来CNFよりもはるかに高いアスペクト比を有し、従って、はるかに高い品質の最終製品を提供することが容易に明らかである。
【0081】
本発明のさらなる実施形態において、上記の方法から得られるセルロースナノフィブリルは、セルロースナノ結晶を生成するためにさらに加工され得る。
【0082】
セルロースナノフィブリルは塩酸または強酸化剤を使用して酸加水分解に供されてセルロースナノ結晶を生成し、続いて遠心分離および洗浄によって酸溶液から抽出される。
【0083】
特に、未改質CNC、酸化CNCおよび硫酸化CNCを、当技術分野で公知の方法に従って、塩酸、過硫酸アンモニウムおよび硫酸を使用して製造した。反応を、改質または未改質のCNCを得るのに十分な時間放置したが、完全な加水分解が起こる前に停止させた。
【0084】
得られる材料セルロースナノ結晶の収率は、木材パルプ由来セルロースナノフィブリルの酸加水分解について達成される30%未満の収率と比較して、約70%である。セルロースナノ結晶は、細菌源に由来するセルロースナノ結晶に匹敵する高品質の最終製品である。図7および8から分かるように、本発明の方法によって形成されたナノ結晶(図7)は、バクテリア合成ナノセルロース(図8d)とサイズおよび形態が類似した大きな結晶である。木材(図8a)、綿(図8b)および竹(図8c)に由来するセルロースナノ結晶は品質が劣るはるかに小さい結晶であり、微細藻類合成(図8e)およびチューニケート(図8f)を介して緑藻類に由来するセルロースナノ結晶は、より大きい結晶である。細菌由来のCNC合成のコストが高く、緑膿菌藻類およびチューニケートを培養する際のコストが高く、困難であるために、このようなプロセスは高価値の市販最終製品にのみ適しているが、本発明の方法に由来するCNCはより市販に実行可能な製品である。したがって、結果として得られるCNCはいかなるコスト制限もなしに、様々な用途に使用することができる。
【0085】
本発明の方法によって藻類由来のセルロースナノフィブリルの酸加水分解によって達成されるセルロースナノ結晶の高収率および高品質のために、CNCのさらなる加工は効率的かつ有効であり、そのような加工を経済的に実行可能な選択肢にする。例えば、下記の表3および図9に示すように、本発明の方法を介して海藻由来のセルロースナノフィブリルの酸加水分解(塩酸を用いる)から4時間の反応時間に由来するCNC、すなわち未改質CNCは、表面改質を有さず、ゼータ電位が低い。その後の過硫酸アンモニウムによるCNCの酸化は、カルボキシル基表面改質およびより高いゼータ電位を有する酸化CNCを提供する。
あるいは、セルロースナノフィブリルが硫酸を用いて2時間の反応時間にわたって酸加水分解を受ける場合、有意に高いゼータ電位を有する硫酸エステル基修飾を有する硫酸化CNCが生成される。
【0086】
【表3】
【0087】
ゼータ電位は電気泳動光散乱を用いたゼータ電位測定から直接得られ、表面電荷部分はFTIRによって確認された。
【0088】
したがって、本発明のセルロースナノフィブリルは酸加水分解を受けて、セルロースナノ結晶を形成し、その後、当技術分野で公知の技術によって表面改質することができる。さらに、このような製品は、細菌由来のCNCに匹敵し、したがって、はるかに低いコストで高品質の製品を提供する。
【0089】
本発明の方法によって製造されたナノセルロース(CNFおよびCNC)は、当然、荷電されていないが、要件に容易に修正することができ、極性および非極性環境のための用途に柔軟性を与える。例えば、電荷は、当技術分野で公知であり、上記でさらに詳細に議論されるように、穏和な酸化反応を介してCNFに適用され得る。CNCと同様に、本発明の方法に由来するCNFは、他の供給源(例えば、木材パルプ)に由来するCNFよりも化学修飾を受けやすく、したがって、このような修飾反応は、同等の生成物を達成するのに必要な酸化剤が少なく、反応時間がはるかに短く、したがって、より経済的に実行可能な方法を提供する。
【0090】
本発明の方法は、既存の高等植物又はバクテリア由来セルロース加工よりも速く、より清潔で、はるかに安価である。特に、供給源からCNFまでの時間枠は、3日程度で、方法がスケールアップされる日未満であり得る。さらに、この方法は、既存の藻類加工およびアルギン酸抽出施設へのボルトオンモジュール技術によるスケールアップの容易さを可能にする一段階高せん断プロセスであってもよい。さらに、過酷な化学物質は必要とされず、海藻セルロースは、現在、アルギン酸塩製造からの副産物である。このように、生産に必要なエネルギーは、既存のどのプロセスよりも少なくとも1桁低い。
【0091】
製造されたCNFは既存の方法論よりも均一であり、特定の望ましい特性、すなわち、高アスペクト比、高吸収性繊維を示す。最初の特徴付けは、この生成物が現在入手可能な他のCNF生成物よりも、全ての標準的な測定基準によって、より高い品質であることを示す。
図1A)】
図1B)】
図1C)】
図1D)】
図1E)】
図1F)】
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】