(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】リチウム金属負極、その製造方法およびこれを用いたリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20220112BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20220112BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20220112BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/40
H01M4/1395
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525225
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(85)【翻訳文提出日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2019008436
(87)【国際公開番号】W WO2020096164
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】10-2018-0136753
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ペ、 ホンユル
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジン ホン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 シファ
(72)【発明者】
【氏名】ペ、 ウォン ス
(72)【発明者】
【氏名】イ、 サン ラグ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050CB12
5H050DA09
5H050EA11
5H050EA15
5H050EA22
5H050FA04
5H050FA08
5H050FA10
5H050GA18
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA12
5H050HA17
5H050HA20
(57)【要約】
リチウム金属負極、その製造方法およびこれを用いたリチウム二次電池に関し、平坦な構造の集電体;および集電体上に位置するリチウム金属を含む負極活物質層;を含み、リチウム金属は、凹凸構造であり、リチウム金属の表面に樹枝状(Dendrite)が存在しないリチウム金属負極が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な構造の集電体;および
前記集電体上に位置するリチウム金属を含む負極活物質層;を含み、
前記リチウム金属は、凹凸構造であり、
前記リチウム金属の表面に樹枝状(Dendrite)が存在しない、リチウム金属負極。
(ただし、前記樹枝状は、粒子の長さが長い一方向の長さとそれに垂直な方向の長さとの比が3以上である粒子を意味する。)
【請求項2】
前記リチウム金属の平面投影面積を基準として、
全体面積に対して5~30%の気孔を有する、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項3】
前記凹凸の厚さ方向の深さは、
全体リチウム金属の厚さに対して20~100%である、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項4】
前記リチウム金属において、
少なくとも1つの凹凸の深さは、全体リチウム金属の厚さに対して20~50%である、請求項3に記載のリチウム金属負極。
【請求項5】
前記リチウム金属において、
前記凹凸の間隔は、5~100μmである、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項6】
前記リチウム金属の厚さは、1~100μmである、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項7】
前記負極活物質層の表面に位置する被膜をさらに含む、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項8】
前記被膜は、Li-N-C-H-O系イオン性化合物、Li-P-C-H-O系イオン性化合物、LiFまたはこれらの組み合わせである、請求項7に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項9】
電解液内に含浸された、集電体およびこれに対向するリチウム供給源を用意する段階;および
前記集電体および前記リチウム供給源に電流を印加して、前記集電体の表面にリチウム金属を電着させる段階;を含み、
前記集電体および前記リチウム供給源に電流を印加して、前記集電体の表面にリチウム金属を電着させる段階;で、
電流の印加は、2段階により行われ、
1次電流の印加における電流密度よりも2次電流の印加における電流密度が高い値を有する、リチウム金属負極の製造方法。
【請求項10】
前記1次電流の印加における電流密度は、0.2~0.8mA/cm
2である、請求項9に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項11】
前記2次電流の印加における電流密度は、1~4mA/cm
2である、請求項9に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項12】
前記1次電流の印加時間よりも2次電流の印加時間がより長い時間である、請求項9に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項13】
前記1次電流の印加時間は、1~4時間である、請求項12に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項14】
前記2次電流の印加時間は、1~24時間である、請求項12に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項15】
正極;負極;および前記正極および前記負極の間に位置する電解質を含み、
前記負極は、請求項1に記載の負極であるリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム金属負極、その製造方法およびこれを用いたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の低価格化および高エネルギー密度の向上のために、リチウム二次電池の負極としてリチウム金属電極を用いることが提案されている。
リチウム金属を負極材として用いる場合、充放電過程中に樹枝状が形成されて電気的短絡が誘発されることもあり、負極材の収縮および膨張の繰り返しにより機械的応力を受けてクラックが発生すると電池寿命が短縮される問題がある。
このような問題を克服するために、充放電過程でリチウムの成長を収容できる空間(Free space)を確保し、樹枝状の成長を抑制すべく、3次元構造を有するリチウム負極材を実現しようとする試みが提案されてきている。
【0003】
KR10-2010-0114321では、パターン化されたシリコン基板を用いて3次元負極材構造を形成し、窪み空間にのみリチウムを成長させることによって樹枝状の成長を抑制しようとしている。しかし、このような工法は、半導体工法に基づく現象、エッチング、エッチングなどの高度な工程技術と費用が要求されるので、効率性が極めて低く、経済性を有することが難しい。
【0004】
KR10-2016-0085954では、リチウム金属表面に物理的な力を加えてリチウム金属を変形させることによって3次元凹凸構造を形成している。しかし、物理的な加圧により得られる3次元凹凸構造は、凹凸部の間隔が数十~数百μm程度と広いだけでなく、凸部の深さも数十~数百μm程度と深く形成されるので、3次元構造の実現による収容空間の確保は非常に局部的になる。これによる表面積の増加もわずかで電流密度の減少の効果も大きくなくて、高電流で主に誘発されるリチウム樹枝状の生成を抑制するのに効果的でない。
【0005】
特に、所望の効果を得るためには凸部が深く掘られなければならないため、数百μm以上のリチウム金属の場合には、このような凹凸部の形成が可能であるが、実際に高エネルギー密度のためのリチウム金属電池で用いるリチウムは、10~50μm水準の薄い厚さが要求されるため、薄膜のリチウムを対象にすればこのような凹凸部の形成が容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の問題を克服するためには、結局、単純かつ効率的な工法により薄膜リチウムの全体電極領域にわたって非常に微細な大きさの凹凸を生成できなければならない。
このために、電気化学的工法によりリチウムが集電体上に電着の過程で形成される場合に、別途の追加工程なしに自然に気孔を有する3次元構造を形成しようとする。
電着により形成されるリチウムの厚さ、気孔度、粒子の大きさは、電着電流の大きさおよび時間の調節により任意に調整可能なため、数μmの薄膜から数十μmの厚膜のリチウム金属を容易に得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、平坦な構造の集電体;および前記集電体上に位置するリチウム金属を含む負極活物質層;を含み、前記リチウム金属は、凹凸構造であり、前記リチウム金属の表面に樹枝状(Dendrite)が存在しないリチウム金属負極を提供する。
ただし、前記樹枝状は、粒子の長さが長い一方向の長さとそれに垂直な方向の長さとの比が3以上である粒子を意味する。
後述する電着工程の条件の制御により樹枝状が形成されないように制御することができる。
【0008】
前記リチウム金属の平面投影面積を基準として、全体面積に対して5~30%の気孔を有することができる。前記気孔は、リチウム金属を平面からみたとき、凹凸部位の深さに形成された凹み部分を意味する。
物理的な方法ではない、電着条件の制御によりこのような凹凸を形成させることができ、気孔度を制御することができる。
【0009】
前記凹凸の厚さ方向の深さは、全体リチウム金属の厚さに対して20~100%であってもよい。また、少なくとも1つの凹凸の深さは、全体リチウム金属の厚さに対して20~50%であってもよい。
つまり、集電体の基底面までリチウム金属が全く電着されない凹凸部内の凹部が存在してもよいし、基底面から一部のリチウム金属が電着された形態の凹部が存在してもよい。
前記リチウム金属において、前記凹凸の間隔は、5~100μmであってもよい。間隔も電着時の工程条件で制御可能な因子である。これに関する説明は具体的な実施例で後述する。
【0010】
前記リチウム金属の厚さは、1~100μmであってもよい。リチウム金属が厚すぎると、電池の厚さ増加に対比して十分な充電効果を奏しにくく、剥離の問題が発生することがある。薄すぎる場合、電池特性が低下する恐れがある。
【0011】
前記負極活物質層の表面に位置する被膜をさらに含むことができる。
前記被膜は、前記負極の製造過程において、電着されたリチウム金属と電解液との間の反応などで形成されるもので、使用する電解液の組成および電着工程の条件を調節して被膜の厚さおよび組成、特性などを制御することができる。
【0012】
前記被膜の厚さは、例えば、2nm~2μm、より具体的には、10nm~500nmの範囲であってもよい。
負極の表面に位置する前記被膜の厚さが厚すぎると、リチウムイオン伝導度が低くなり、界面抵抗が増加して、電池への適用時、充放電特性が低下することがある。また、被膜の厚さが薄すぎると、実施例による負極を電池に適用する過程で被膜が流失しやすくなる。
したがって、前記被膜は、前記厚さ範囲を満足する範囲で、薄い厚さに、負極の表面全体に均一かつ緻密に形成されることが好ましい。
【0013】
前記被膜は、Li-N-C-H-O系イオン性化合物、Li-P-C-H-O系イオン性化合物、LiFまたはこれらの組み合わせであってもよい。前述のように、被膜の組成は、電解液の添加剤および電解液の組成で制御できる。
具体例としては、前記被膜は、Li-N-C-H-O系イオン性化合物を含む。
【0014】
本実施例では、電着(Electroplating)工程で負極を全リチウム化する過程で、メッキ液の組成および含有量を調節することによって、前記Li-N-C-H-O系イオン性化合物を含む被膜を形成することができる。
前記Li-N-C-H-O系イオン性化合物は、Li-O、C-N、C-O、およびC-H結合を含むことができる。
【0015】
より具体的には、前記Li-N-C-H-O系イオン性化合物は、下記の化学式1~2のいずれか1つで表される化合物を含むことができる。
【0016】
【0017】
【0018】
より具体的には、例えば、窒素系化合物として硝酸リチウム(Lithium nitrate、LiNO3)を使用し、これをエーテル(Ether)系溶媒(Solvent)に適正な含有量で添加したメッキ液を用いて全リチウム化工程により負極を全リチウム化する場合、負極の表面に前記化学式1または2で表される化合物を含む被膜が形成される。
一方、前記被膜は、Li-N-C-H-O系イオン性化合物のほか、LiFをさらに含むことができる。
【0019】
集電体は、電池内における電気的連結のためのものである。
集電体は、薄膜(Foil)の形態を有することができるが、これに限定されるものではなく、例えば、メッシュ(mesh)、フォーム(Foam)、棒材(rod)、線材(wire)、および線材(wire、fiber)を製織した薄板(sheet)の形態を有してもよい。
【0020】
集電体の素材としては、電気伝導性を有し、リチウムとの反応が制限的な素材を使用することができる。集電体の素材としては、例えば、銅、ニッケル、チタン、ステレンス鋼、金、白金、銀、タンタル、ルテニウム、およびこれらの合金、炭素、導電性ポリマー、非導電性ポリマー上に導電層がコーティングされた複合繊維のうちのいずれか1つ、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0021】
集電体の厚さが厚ければ、電池の重量が増加して電池のエネルギー密度が低くなり、集電体の厚さが薄くなると、高電流作動時に過熱破損の危険があり、電池製造工程中の張力によって破損しうる。したがって、集電体の厚さは、1μm~50μmの範囲であってもよい。
【0022】
本発明の他の実施形態では、電解液内に含浸された、集電体およびこれに対向するリチウム供給源を用意する段階;および前記集電体およびリチウム供給源に電流を印加して、前記集電体の表面にリチウム金属を電着させる段階;を含み、前記集電体およびリチウム供給源に電流を印加して、前記集電体の表面にリチウム金属を電着させる段階;で、電流の印加は、2段階により行われ、1次電流の印加における電流密度よりも2次電流の印加における電流密度が高い値を有するリチウム金属負極の製造方法を提供する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態によるリチウム金属負極のための装置の概略図である。
図1のように、集電体およびリチウム供給源をすべて電解液に含浸させた後、電流を印加して集電体上にリチウム金属を電着させることができる。
【0024】
この時、2回にわたって印加する電流を制御することができる。これから凹凸構造のリチウム金属を製造することができる。これに関する具体的な実験的根拠は後述する。
より具体的には、前記1次電流の印加における電流密度は、0.2~0.8mA/cm2であってもよい。
前記2次電流の印加における電流密度は、1~4mA/cm2であってもよい。
【0025】
前記1次電流の印加時間よりも2次電流の印加時間がより長い時間であってもよい。
前記1次電流の印加時間は、1~4時間であってもよいし、前記2次電流の印加時間は、1~24時間であってもよい。
このような電流密度および電流の印加時間は、目的とするリチウム金属の凹凸構造により制御できる。
【0026】
電着時に使用するリチウムの供給源として、リチウム金属だけでなく、リチウム塩が溶解した電解液を使用することも可能である。
前記電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解して製造することができる。
【0027】
リチウム塩は、より具体的には、LiCl、LiBr、LiI、LiCO3、LiNO3、LiFSI、LiTFSI、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiN(SO2CF3)2、LiBOB、またはこれらの組み合わせであってもよい。前記リチウム塩の濃度は、全電解液を基準として0.1~3.0Mであってもよい。
【0028】
より具体的には、本実施例において、電解液は、前記リチウム塩および非水系溶媒のうちの少なくとも1つとして窒素系化合物を含むことを特徴とする。
【0029】
前記窒素系化合物は、例えば、硝酸リチウム(Lithium nitrate)、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(Lithium bis fluorosulfonyl imide)、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(Lithium bis trifluoromethane sulfonimide)、カプロラクタム(e-Caprolactam)、メチルカプロラクタム(N-methyl-e-caprolactam)、トリエチルアミン(Triethylamine)およびトリブチルアミン(Tributylamin)からなる群より選択された1つ以上を含むことができる。
【0030】
前記窒素系化合物のうち、硝酸リチウム(Lithium nitrate)、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(Lithium bis fluorosulfonyl i mide)およびリチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(Lithium bis trifluoromethane sulfonimide)のうちの少なくとも1つは、リチウム塩として使用できる。
【0031】
前記窒素系化合物のうち、カプロラクタム(e-Caprolactam)、メチルカプロラクタム(N-methyl-e-caprolactam)、トリエチルアミン(Triethylamine)およびトリブチルアミン(Tributylamin)のうちの少なくとも1つは、非水系溶媒として使用できる。
【0032】
一方、前記電解液は、メッキ液の粘性(Viscosity)などを考慮して、一般的な非水系溶媒を溶媒として追加することができる。電解液の粘性が高すぎると、リチウムイオンの移動度(Mobility)が低下して電解液のイオン伝導度が低下するので、全リチウム化工程にかかる時間が増加して生産性が減少するからである。
【0033】
前記溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(Ethylene carbonate)、プロピレンカーボネート(Propylene carbonate)、ジメチルカーボネート(Dimethyl carbonate)、エチルメチルカーボネート(Ethyl methyl carbonate)、ジエチルカーボネート(Diethyl carbonate)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-Dimethoxyethane)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(Diethylene glycol dimethyl ether)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(Tetraethylene glycol dimethyl ether)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)、1,3-ジオキソラン(1,3-Dioxolane)、1,4-ジオキサン(1,4-Dioxane)および1,3,5-トリオキサン(1,3,5-Trioxane)からなるグループより選択された1種以上を含むことができる。
【0034】
本発明の他の実施形態では、正極;負極;および前記正極および前記負極の間に位置する電解質を含み、前記負極は、前述した本発明の一実施形態による負極であるリチウム二次電池を提供する。
リチウム二次電池の正極、負極、電解質に関する説明は、現在通常用いられる電池の構成がすべて通用できるので、具体的な説明を省略する。
【発明の効果】
【0035】
電気化学的工法によりリチウムが集電体上に電着の過程で形成される場合に、別途の追加工程なしに自然に気孔を有する3次元構造のリチウム金属負極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態によるリチウム金属負極のための装置の概略図である。
【
図2】実施例1、2、および3により制御されたリチウム金属表面の微細構造の形状を示す図である。
【
図3】実施例4によって形成された100μmの厚さを有するリチウム金属表面および断面の微細構造を示す図である。
【
図4】比較例1によって形成されたリチウム金属表面の写真である。
【
図5】比較例2によって形成されたリチウム金属表面の写真である。
【
図6】気孔度分析のための実施例2の表面に対するイメージ分析写真である。
【
図7】電着工程によって生成された凹凸の深さ、つまり、電着リチウムの表面から厚さ方向の距離を測定する方法に関する図である。
【
図8】電着工程によって生成された凹凸の間隔を測定した方法に関する図である。
【
図9】電着工程によって生成された凹凸の間隔を測定した方法に関する図である。
【
図10】凹凸の間隔に対する測定値を散点図および箱ひげ図で示す図である。
【
図11】実施例1、2、3、4および比較例1、2によって製造されたリチウム金属負極を適用したリチウム二次電池の充放電性能評価の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。ただし、これは例として提示されるもので、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する請求項の範疇によってのみ定義される。
高エネルギー密度の実現のために薄膜リチウム金属負極を形成するにあたり、構造的に3次元凹凸構造を有するようにすることで、充電過程で空いている空間にリチウムが充電されるようにして充放電体積の変化を最小化しようとする。
【0038】
これによれば、充放電過程中に体積の変化による応力発生を防止可能なため、最終的には、充放電によるリチウム負極材のクラックの発生を防止可能になる。
それだけでなく、数μm以内の微細な3次元凹凸を形成してリチウム負極の表面積が最大化されるようにすることで、充放電時に印加される実質的な電流密度を低くして高電流で発生するリチウム樹枝状の生成を抑制しようとする。
【0039】
また、従来は、3次元構造を形成するために、集電体のCu箔を別途に予め凹凸を形成するか、メッシュまたはフォームの形態を用いたのに対し、本発明では、集電体に別途の加工をせずに平らなCu箔の形態そのまま用いることによって、経済性の側面で価格競争力を有するだけでなく、空き空間に樹枝状が形成される問題も防止可能で、電池の実現時に優れた充放電性能を有するようにする。
【0040】
電着時には、必要に応じて、負極集電体の一面に3次元リチウム金属を形成することも可能であり、負極集電体の両面に同時に3次元リチウム金属を形成することも可能である。
電着されるリチウムの厚さ、粒子の大きさおよび気孔度を調節するために、電着電流の大きさ、印加時間、電流の印加方式などを調整することによって、所望の形態の3次元構造を得ることができる。
【0041】
また、電着電解液の組成および添加剤を調整することによって、電気化学的方法でリチウムが形成されるにあたり、高電流の印加によって発生しうる樹枝状の生成を抑制する。このようなリチウム金属に対する微細構造的な制御は、従来の方法では得られない構造であって、気孔の構造を有しながらも樹枝状のないリチウム金属を平らな集電体上に形成できるようにする。
【0042】
上記から得られたリチウム金属および集電体を負極として電池を実現する場合、3次元気孔構造は、充放電過程でリチウムの成長を収容できる空間(Free space)を確保することによって、樹枝状の成長による正極との短絡の問題を解決することができる。それだけでなく、負極材の体積の変化を収容できるため、負極材のリチウム金属が充放電過程中に収縮および膨張が繰り返されてもこれによる機械的応力を解消できるようにして、負極材におけるクラックの発生を防止して、結果的に電池の寿命を向上させることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0044】
「実施例および比較例」
(実施例1)電着工程を用いた気孔性リチウム金属の製造(電着プロファイルの調整)
図1のような方法で電着工程を用いて薄膜のリチウム金属を製造した。
メッキ液は、LiFSIと硝酸リチウムをメッキ液100%重量対比それぞれ40%と10%を投入し、フッ素系化合物のFECをメッキ液100%の重量対比19%を投入して製造した。リチウム供給源としては、純度99.9%である500μmの厚さのリチウム金属板を銅集電板(Cu plate)に圧着して用い、集電体は、両面が平坦な10μmの厚さの銅箔板(Cu foil)を使用した。
【0045】
メッキ液内にリチウム供給源と集電体とを電気的に絶縁した状態で、電源供給装置を用いてリチウム供給源と集電体をそれぞれ(+)と(-)電極とし、電流を印加して集電体の表面にリチウム金属層を形成した。
電流印加の方法は、2段階に分けて印加され、第一の段階では0.8mA/cm2の電流密度で1時間印加し、第2の段階では4mA/cm2の電流密度で1時間印加した。上記のような方法で約20μmの厚さのリチウム薄膜が製造された。
【0046】
(実施例2)電着プロファイルの調整による気孔度制御
実施例1と同様の方法でリチウム金属を製造した。
この時、印加される電流の大きさ、時間などを調整することによって、製作されるリチウム金属の気孔およびこれによる凹凸構造を変化させようとした。
【0047】
電流印加の方法は、2段階に分けて印加され、第一の段階では0.4mA/cm2の電流密度で2時間印加し、第2の段階では2mA/cm2の電流密度で1時間印加した。上記のような方法で約20μmの厚さのリチウム薄膜が製造された。
【0048】
(実施例3)電着プロファイルの調整による気孔度制御
実施例1と同様の方法でリチウム金属を製造した。
この時、印加される電流の大きさ、時間などを調整することによって、製作されるリチウム金属の気孔およびこれによる凹凸構造を変化させようとした。
【0049】
電流印加の方法は、2段階に分けて印加され、第一の段階では0.2mA/cm2の電流密度で4時間印加し、第2の段階では1mA/cm2の電流密度で4時間印加した。上記のような方法で約20μmの厚さのリチウム薄膜が製造された。
【0050】
(実施例4)電着プロファイルの調整による厚さ制御
実施例1と同様の方法でリチウム金属を製造した。
この時、印加される電流の大きさ、時間などを調整することによって、製作されるリチウム金属の気孔、凹凸構造および厚さを変化させようとした。
【0051】
電流印加の方法は、2段階に分けて印加され、第一の段階では0.2mA/cm2の電流密度で1時間印加し、第2の段階では1mA/cm2の電流密度で24時間印加した。上記のような方法で約100μmの厚さのリチウム薄膜が製造された。
【0052】
(比較例1)電着プロファイルの調整による気孔度および厚さの影響
実施例1と同様の方法でリチウム金属を製造した。
この時、印加される電流の大きさ、時間などを調整することによって、製作されるリチウム金属の気孔、凹凸構造および厚さを変化させようとした。
【0053】
電流印加の方法は、2mA/cm2の電流密度で0.6時間印加し、約5μmの厚さのリチウム薄膜が製造された。
【0054】
(比較例2)電着プロファイルの調整による気孔度の影響
実施例1と同様の方法でリチウム金属を製造した。
この時、印加される電流の大きさ、時間などを調整することによって、製作されるリチウム金属の気孔およびこれによる凹凸構造を変化させようとした。
【0055】
電流印加の方法は、0.2mA/cm2の電流密度で24時間印加し、約20μmの厚さのリチウム薄膜が製造された。
【0056】
下記表1は、上記実施例および比較例の電着条件およびその結果をまとめたものである。
【0057】
【0058】
「実験例」
図2は、実施例1、2、および3によって制御されたリチウム金属表面の微細構造の形状を示す図である。同一の20μm水準の厚さを有するリチウム金属薄膜において、気孔度およびこれによる凹凸の形状が異なる微細構造が形成されることを示す。
【0059】
図3は、実施例4によって形成された100μmの厚さを有するリチウム金属箔の表面および断面の微細構造を示す図である。リチウム金属の厚さが厚くなっても、電着工程の電流および時間因子の調整により樹枝状が生成されないながらも3次元の気孔性構造が形成されていることを示す。
【0060】
一方、
図4は、比較例1として、電着によるリチウム金属の形成が不十分で全体面積においてリチウム金属が形成されていない部分が広くて、気孔の分率が過度に高い場合を示す。また、粒子の端部分では樹枝状が多数生成されていることが分かる。
【0061】
図5は、比較例2として、全領域にわたってリチウムが完全に電着されて微細構造上気孔が全く現れず、これによって表面の凹凸も形成されない構造を示す。
図6は、気孔度分析のために、実施例2の表面に対するイメージ分析写真である。
【0062】
より具体的には、電着工程によって生成された気孔およびこれによる凹凸の状態を比較するために、
図6のようにそれぞれの表面の微細構造の写真をイメージ分析して、全体面積に占める気孔の分率を測定した。
その値は下記表2の通りである。
【0063】
【0064】
*電着工程によって製作された実施例と比較例に対して、平面投影面積を基準とした気孔の分率を示したものである
【0065】
図7は、電着工程によって生成された凹凸の深さ、つまり、電着リチウムの表面から厚さ方向の距離を測定する方法に関する図である。電着されたリチウムの断面を観察した写真から、全体リチウムの厚さを100%と仮定して、平坦面の状態を0%、凹凸の凹み部分が全体リチウムの半分まで到達した状態を50%、凹凸の凹み部分が銅集電体まで到達した状態を100%で示したものである。
【0066】
下記表3は、電着工程によって製作された実施例と比較例に対して、平坦面を除いた凹凸の深さに対する最小値と最大値を示す図である。
実施例1~4では、気孔によって生成された凹凸の最小深さが全体リチウムの厚さ対比20~50%水準であり、凹凸の最大深さは100%で凹凸の凹み部分が銅集電体まで到達している。
【0067】
比較例1で凹凸の最大深さは100%であるのに対し、全体面積においてリチウム金属が形成されない部分が広すぎて、平坦面を除いた残りの部分では凹凸の最小深さの測定が不可である。
比較例2では、断面が非常に緻密で気孔によって生成された凹凸の数が非常に少ないだけでなく、凹凸の深さも最大10%未満の水準である。
【0068】
【0069】
図8と
図9は、電着工程によって生成された凹凸の間隔を測定した方法に関する図である。凹凸の間隔は、断面模式図の
図8にて、d1、d2、d3などで定義された長さをいい、これを測定するために、
図9のような表面の微細構造の写真における気孔と気孔との間の粒子間の距離を測定した。
【0070】
下記表4は、電着工程によって製作された実施例と比較例に対して、凹凸の間隔に対する最小、最大、平均および中央値をまとめたものである。また、
図10は、凹凸の間隔に対する測定値を散点図および箱ひげ図で示す図である。
【0071】
生成された凹凸の間隔は、物理的な力を加えて3次元構造を形成する従来の方式の場合は、数百μmのリチウム金属を変形させて、数十~数百μm程度の広い間隔が形成されるのに対し、本発明の実施例1~4では、20~100μmの厚さのリチウム薄膜を形成しながらも、約10~100μmの微細な凹凸間隔を形成することができる。これは、3次元構造形成の根本的な目的である微細空間の確保および表面積拡大の目標によく符合する。
【0072】
同一の厚さである実施例1、2、3を比較すれば、実施例1から実施例3へいくほど気孔面積は次第に減少し、凹凸間の間隔が次第に増加する傾向を示している。一方、比較例2の場合には、緻密度が非常に高くて、凹凸間の間隔の測定が不可である。
【0073】
【0074】
図11は、実施例1、2、3、4および比較例1、2によって製造されたリチウム金属負極を適用したリチウム二次電池の充放電性能評価の結果である。
【0075】
また、下記表5では、初期放電容量対比80%を基準として充放電寿命を評価した結果を示した。
図11および表5を参照すれば、気孔および凹凸構造を有する実施例の場合、充放電性能が大きく向上することを確認できる。これは、本発明によって形成された構造が充放電過程中にてリチウムの樹枝状の生成を抑制する効果および充放電ストレスによるリチウム電極のクラックの発生を抑制する効果を示すことが分かる。
【0076】
一方、実施例4における充放電性能が非常に優れて現れたのは、実施例1、2、3の場合、リチウム金属の厚さが20μmであるのに対し、実施例4では、リチウム金属の厚さが100μmと厚いため、本発明の効果に過剰なリチウム供給による効果も併せて現れるからである。
【0077】
【0078】
本発明によって形成された気孔性の3次元凹凸構造を有するリチウム金属を負極としてリチウム二次電池を構成する場合、充電過程で空いている空間にリチウムが充電されて充放電過程での体積の変化を最小化することによって、体積の変化による応力発生を防止し、最終的に、充放電時にリチウム負極材のクラックの発生を防止することができる。
【0079】
また、3次元構造は、リチウム負極の表面積を拡大させることによって、充放電時に印加される実質的な電流密度を低くするので、高電流充電時に発生しうるリチウム樹枝状の生成を抑制する効果がある。
【0080】
特に、本発明の場合、従来の3次元構造の形成のために別途の予備工程を用いて集電体を加工していたのとは異なり、平らな集電体をそのまま用いることによって、工程の単純化による優れた経済的効果を図ることができる。
【0081】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
【手続補正書】
【提出日】2021-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な構造の集電体;および
前記集電体上に位置するリチウム金属を含む負極活物質層;を含み、
前記リチウム金属は、凹凸構造であり、
前記リチウム金属の表面に樹枝状(Dendrite)が存在しない、リチウム金属負極。
(ただし、前記樹枝状は、粒子の長さが長い一方向の長さとそれに垂直な方向の長さとの比が3以上である粒子を意味する。)
【請求項2】
前記リチウム金属の平面投影面積を基準として、
全体面積に対して5~30%の気孔を有する、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項3】
前記凹凸の厚さ方向の深さは、
全体リチウム金属の厚さに対して20~100%である、請求項1
または2に記載のリチウム金属負極。
【請求項4】
前記リチウム金属において、
少なくとも1つの凹凸の深さは、全体リチウム金属の厚さに対して20~50%である、請求項3に記載のリチウム金属負極。
【請求項5】
前記リチウム金属において、
前記凹凸の間隔は、5~100μmである、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項6】
前記リチウム金属の厚さは、1~100μmである、請求項1
から5のいずれか1項に記載のリチウム金属負極。
【請求項7】
前記負極活物質層の表面に位置する被膜をさらに含む、請求項1
から6のいずれか1項に記載のリチウム金属負極。
【請求項8】
前記被膜は、Li-N-C-H-O系イオン性化合物、Li-P-C-H-O系イオン性化合物、LiFまたはこれらの組み合わせである、請求項7に記載のリチウム
金属負極。
【請求項9】
電解液内に含浸された、集電体およびこれに対向するリチウム供給源を用意する段階;および
前記集電体および前記リチウム供給源に電流を印加して、前記集電体の表面にリチウム金属を電着させる段階;を含み、
前記集電体および前記リチウム供給源に電流を印加して、前記集電体の表面にリチウム金属を電着させる段階;で、
電流の印加は、2段階により行われ、
1次電流の印加における電流密度よりも2次電流の印加における電流密度が高い値を有する、リチウム金属負極の製造方法。
【請求項10】
前記1次電流の印加における電流密度は、0.2~0.8mA/cm
2である、請求項9に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項11】
前記2次電流の印加における電流密度は、1~4mA/cm
2である、請求項9
または10に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項12】
前記1次電流の印加時間よりも2次電流の印加時間がより長い時間である、請求項9
から11のいずれか1項に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項13】
前記1次電流の印加時間は、1~4時間である、請求項12に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項14】
前記2次電流の印加時間は、1~24時間である、請求項12に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項15】
正極;負極;および前記正極および前記負極の間に位置する電解質を含み、
前記負極は、請求項1
から8のいずれか1項に記載の負極であるリチウム二次電池。
【国際調査報告】