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特表2022-508089肥料用農場排泄物からのガス排出を削減するための処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】肥料用農場排泄物からのガス排出を削減するための処理方法
(51)【国際特許分類】
   C05C 7/00 20060101AFI20220112BHJP
   C05F 3/00 20060101ALI20220112BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C05C7/00
C05F3/00
C02F11/00 C ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525285
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019080869
(87)【国際公開番号】W WO2020099321
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】102018128173.0
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512117801
【氏名又は名称】アルツヒエム トローストベアク ゲー・エム・べー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AlzChem Trostberg GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Albert-Frank-Str. 32, D-83308 Trostberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】エベル、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】アール、スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】サンズ、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ベズラー、ユルゲン
【テーマコード(参考)】
4D059
4H061
【Fターム(参考)】
4D059AA01
4D059BJ06
4D059BK30
4D059CC01
4D059DA01
4D059DA03
4D059DA04
4D059DA05
4D059DA08
4D059DA38
4D059DA59
4D059DA70
4D059EB11
4H061AA02
4H061BB06
4H061BB12
4H061CC36
(57)【要約】
本発明は、肥料用農場排泄物からその保管中に環境に有害な温室効果ガスのメタン及び/または二酸化炭素の排出を削減するための方法及び組成物の使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保管中の肥料用農場排泄物からのメタン及び/または二酸化炭素の排出を削減するための処理方法であって、前記処理方法は、
a)体積Xを有する前記肥料用農場排泄物のための保管タンクを提供するステップと、
b)前記保管タンクを前記保管タンクの前記体積Xの少なくとも5容量%に等しい量の前記肥料用農場排泄物で充填するステップと、
c)カルシウムシアナミドを含む組成物を前記保管タンクに添加して、前記組成物を前記肥料用農場排泄物に接触させるステップ
である処理ステップを含む、処理方法。
【請求項2】
前記組成物の添加が、肥料用農場排泄物の最初の充填の前、充填中または充填後に行われることを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記組成物の添加が、
i)肥料用農場排泄物の前記保管タンクへの最初の部分量の最初の添加の後または添加中に1回行われるか、または、
ii)複数回に分けて、前記保管タンクへの部分充填のそれぞれの後に行われるか、または、
iii)肥料用農場排泄物の前記保管タンクへの完全な充填の後または充填中に1回行われる
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記肥料用農場排泄物用の前記保管タンクが、開放型保管タンクまたは閉鎖型保管タンクであることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項5】
前記肥料用農場排泄物の保管温度が0~60°Cであることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記組成物が、10~100重量%のカルシウムシアナミドを含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項7】
前記組成物が、前記肥料用農場排泄物に、固体としてまたは懸濁液として添加されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項8】
前記組成物が、前記肥料用農場排泄物に、肥料用農場排泄物1立方メートル当たり0.5~10kgの量で添加されることを特徴とする、請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項9】
保管タンクに保管中の肥料用農場排泄物からのメタン及び/または二酸化炭素の排出を削減するためのカルシウムシアナミドを含む組成物の使用。
【請求項10】
保管タンク内に保管中の、肥料用農場排泄物の嫌気性発酵の発酵停止剤または阻害剤としての、及び/または肥料用農場排泄物中の有機基質の微生物分解の阻害剤としての、カルシウムシアナミドを含む組成物の使用。
【請求項11】
前記組成物が、10~100重量%のカルシウムシアナミドを含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が、
a)25~95重量%のカルシウムシアナミドと、
b)5~40重量%の炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの化合物、またはその混合物と、
c)20重量%までの硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの硝酸塩、またはその混合物と、
d)15重量%までの遊離炭素、木炭または黒鉛と、
e)10重量%までの水
を含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、
a)50~80重量%のカルシウムシアナミドと、
b)5~25重量%の炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの化合物、またはその混合物と、
c)1~15重量%の遊離炭素、木炭または黒鉛と、
d)10重量%までの水
を含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が、
a)35~55重量%のカルシウムシアナミドと、
b)15~35重量%の炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの化合物、またはその混合物と、
c)1~20重量%の硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの硝酸塩、またはその混合物と、
d)1~15重量%の遊離炭素、木炭または黒鉛と、
e)10重量%までの水
を含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の使用。
【請求項15】
前記組成物が、固体または懸濁液の形態で使用されることを特徴とする、先行する請求項9~14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
前記組成物が、肥料用農場排泄物1立方メートル当たり0.5~10kgの量で使用されることを特徴とする、先行する請求項9~15のいずれかに記載の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、保管中の肥料用農場排泄物(または農場肥料)からの環境に有害な温室効果ガスのメタン及び二酸化炭素の排出を削減するための処理方法に関する。さらにまた、本発明は、保管中の肥料用農場排泄物からの環境に有害な温室効果ガスのメタン及び二酸化炭素の排出を抑制するまたは削減する組成物の使用に関する。
【0002】
ドイツ連邦共和国において、肥料用農場排泄物は、法定の要件と基準を満たすべき肥料と考えられている。肥料用農場排泄物の販売のみならず、その使用と適用においては、特に、施肥法、施肥規則及び肥料規則並びにEUガイドラインのそれぞれの現行規定が遵守されなければならない。
【0003】
例えば、現行の施肥規則は、肥料用農場排泄物の適用割合と適用期間を規制する。したがって、肥料用農場排泄物は、土壌と作物の種類によってその年の数ヵ月間が制限期間の対象となり、その期間内は農業分野に適用できないかもしれない。その結果、家畜飼育農場は、液状排泄物、糞尿水、スラリー、固形排泄物等の十分な保管スペースの提供が必要となる。現在の法規制によれば、少なくとも150日間の肥料用農場排泄物の保管が絶対的に必要である。
【背景技術】
【0004】
米国公開公報US2002/0121117A1及びUS2014/0311200A1は、液状排泄物から出る不快な臭気を削減するためのカルシウムシアナミド組成物の使用を記載する。そのような不快な臭気は、例えば、硫黄含有化合物またはアンモニアによって起こる。
【0005】
液状排泄物、糞尿水、スラリー、安定な排泄物等は、肥料用農場排泄物として、農業にとって常に非常に重要である。ただし、畜産場が限られたスペースに集中するため、特に畜舎の場合は、これらの肥料用農場排泄物は、増加し集中する形で蓄積する。
【0006】
これらの肥料用農場排泄物の保管は、様々な未解決の問題とも関連する。例えば、肥料用農場排泄物の保管中に、肥料用農場排泄物における好気性発酵及び嫌気性発酵の工程と有機物の微生物による分解により、メタン(CH4)や二酸化炭素(CO2)等の環境に有害な温室効果ガスが生成される。
【0007】
例えば、2016年におけるドイツ国内の総メタン排出の59%程度は農業由来である。今年は、肥料用農場排泄物の管理(液状排泄物及び固形排泄物の保管と応用)がドイツ国内農業由来の総メタン排出の19.2%を占めた。肥料用農場排泄物由来のメタンのうち最も多かったのは牛の糞尿由来と、それより程度は小さいが豚の糞尿由来である。対照的に、その他の動物群(例えば、家禽、ロバ、馬)はごくわずかであった(https://www.umweltbundesamt.de/daten/land-forstwirtschaft/beitrag-der-landwirtschaft-zu-den-treibhausgas#textpart-1)。
【0008】
環境破壊ガスの排出に関する類似の作用はバイオガス生成植物から得られた発酵残留物の保管所に観察され得る。これらの発酵残留物は、農場肥料としても使用されるが、開放保管中に環境破壊ガスも排出する。
【0009】
過去には、これらの問題を扱う実験に事欠くことはなかった。例えば、肥料用農場排泄物からの環境破壊ガスの排出削減を可能にする多くの解決策が既に見いだされている。排出を削減する可能性は様々であり、かつ、農業生産の異なる分野において効果的である。完全性の主張はせずに、本明細書中には以下の措置が記載され得る。
・畜舎における措置、例えば、排気浄化、低排出開放型畜舎、衛生的改善。
・タンク内の液状排泄物をわら片、顆粒、浮遊性フィルムで覆うこと。
・土壌への肥料用農場排泄物の直接組み込み等の、肥料用農場排泄物の応用における低排出技術の使用。
・肥料用農場排泄物を固相と液相に分離することによる輸送性の向上。
・低タンパク質多相給餌による最新の改良型給餌手段。
【0010】
肥料用農場排泄物の保管中における、有害なガスの環境への排出は、閉鎖型保管容器、生成したガスの回収及びガスのさらなる処理又は廃棄によってうまく可能になる。ただし、これに必要な機器にはかなりの費用を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、保管中の肥料用農場排泄物からのメタン及び/または二酸化炭素のガス排出を削減するための処理方法を提供するという問題に基づいており、該処理方法は、経済的に使用でき、かつ、さらに、農業用肥料としての肥料用農場排泄物の計画的使用を損なわない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この問題は、請求項1に記載の処理方法と請求項9及び10に記載の使用によって解決される。発明の好ましい実施態様は従属項に示す。
【0013】
よって、第1の実施態様に従えば、保管中の肥料用農場排泄物からのメタン(CH4)及び/または二酸化炭素(CO2)の排出を削減するための方法が、本発明の主題であり、該方法は以下の処理ステップ、即ち、
a)体積Xを有する肥料用農場排泄物のための保管タンクを提供するステップと、
b)保管タンクを保管タンクの体積Xの少なくとも5容量%の量の肥料用農場排泄物で充填するステップと、
c)カルシウムシアナミド(CaNCN)を含む組成物を保管タンクに添加して、組成物を肥料用農場排泄物に接触させるステップを含む。
【0014】
ここでは、シアナミドではなく、カルシウムシアナミドが使用されることが必須である。カルシウムシアナミド(CaNCN、CAS [156-62-7])は、シアナミド(CH2N2、CAS [420-04-2])のカルシウム塩であり、肥料の成分及び活性成分として知られるようになって久しい。例えば、工業的方法によるカルシウムシアナミド(石灰窒素とも呼ばれる)とカルシウムシアナミドを含有する硝酸肥料は、いずれも欧州で肥料として承認されているが、カルシウムシアナミドを必須の主要成分として含んでいる。これらの肥料は、トウモロコシ、ジャガイモ及びコメ等の広範囲の農作物の土壌肥料として使用されている。
【0015】
本発明に従えば、肥料用農場排泄物は、施肥法(2009年1月9日の施肥法(BGBl. I p. 54、136)第2条第(1)項、第(2)項、第(3)項、第(4)項及び第(5)項、2017年5月5日の法律第1条による最終改正(BGBl. I p. 1068))に規定される肥料を意味する。このように、本発明に従う肥料用農場排泄物は肥料であり、該肥料は、
a)動物の糞便として
aa)食糧の生産のための動物の飼育における、または
bb)農業における動物のその他の飼育の場合において、
b)植物の生産の過程におけるまたは農業における植物性物質として、
また互いの混合物においても、または好気性若しくは嫌気性処理の後に、
累積されまたは生成される。
【0016】
よって、用語「肥料用農場排泄物」は、特に、以下のものも含む。
- 固形排泄物:動物の糞便由来の肥料用農場排泄物であって、厩舎の敷物、特にわら、おがくず、泥炭または動物の飼育の過程で添加されるその他の植物材料も含み、または飼料残留物と混合され、その乾物含有量が15%を超えるもの。
- 液状排泄物:動物のあらゆる糞便由来の肥料用農場排泄物であって、少量の厩舎の敷物または飼料残留物も含み、または水が添加され、その乾物含有量が15%を超えないもの。
- 糞尿水またはスラリー:動物の糞便由来の肥料用農場排泄物であって、尿と糞便の浸出された微粒子または厩舎の敷物と水の混合物。糞尿水またはスラリーは、少量の飼料残留物や洗浄水及び雨水を含んでいてもよい。
- バイオガス発酵残留物:バイオガス植物からの植物及び動物の両方に由来する、有機物の発酵により生ずる残留物由来の肥料用農場排泄物。
【0017】
本発明に従う処理方法は、液状肥料用農場排泄物、特に、液状排泄物、糞尿水及び/またはバイオガス発酵残留物からのメタン及び/または二酸化炭素の排出の削減に特に適している。
【0018】
驚いたことに、カルシウムシアナミドを含む組成物が、非常に効果的かつ非常に効率的な方法で、保管中の肥料用農場排泄物からの環境破壊メタン(CH4)及び二酸化炭素(CO2)の排出を削減できることが見いだされた。肥料用農場排泄物1立方メートル当たりカルシウムシアナミドを含む組成物1.38kgの量で、組成物を添加して既に24時間経過後にはメタン及び二酸化炭素の排出を有意に削減できることが示された(実施例参照)。
【0019】
よって、保管タンク内で保管中の肥料用農場排泄物からのメタン及び/または二酸化炭素の排出を削減するためのカルシウムシアナミドを含む組成物の使用もまた、本発明の主題である。
【0020】
メタン及び二酸化炭素は、無臭の気体(ガス)である。環境面の理由により、これらのガスの排出を削減または完全に回避することが望ましい。
【0021】
カルシウムシアナミド含有組成物は、肥料として使用されて久しい。ただし、肥料用農場排泄物の適用は法定の期間に拘束されており、かつ、これらの期間がカルシウムシアナミド含有組成物の推奨適用期間とは異なる期間であったので、これらの肥料の使用は、肥料用農場排泄物の使用とは分離されていた。そのため、今日まで環境破壊ガスの排出の削減は観察されなかった。
【0022】
本発明の基礎となる研究の実施により、カルシウムシアナミドを含有する組成物で処理した肥料用農場排泄物の保管中には、肥料としての使用に短所として評価されるべき残留物の生成がないことも示された。そのため、本発明に従い処理された肥料用農場排泄物がまた、肥料として容易に使用され得る。
【0023】
特に重要なことは、このようにして処理された肥料用農場排泄物も、その窒素含有量の点においては何ら大きな変化を経ていないことである。この応用における使用量を比較することにより、この事実が特に鮮明になる。例えば、欧州で承認されたカルシウムシアナミド含有肥料、即ち、硝酸塩含有カルシウムシアナミドは、通常1ヘクタール(ha)当たり400kgの割合で適用される。この応用では、1ヘクタール当たり79.2kgの総窒素量が緑地または耕作可能な土壌に適用される。
【0024】
肥料用農場排泄物について、緑地または耕作可能な土壌の1ヘクタール当たり30m3までの適用割合が、標準の適用と考えられる。牛の液状排泄物中の総窒素の平均量は、約0.40%(実施例1も参照せよ)であり、これは1ヘクタール当たり30m3の適用割合で、1ヘクタール当たり総窒素120kgとなる。肥料用農場排泄物1立方メートル当たりカルシウムシアナミド2.93kgを含む組成物が、本発明に従う肥料用農場排泄物(実施例1を参照せよ)に添加される場合、処理された肥料用農場排泄物中の総窒素の量は、0.46%に増加するだけである。つまり、肥料用農場排泄物の上述の応用中で添加された窒素の総量は、緑地または耕作可能な土壌の1ヘクタール当たりで18kg多いだけである。
【0025】
このように、1ヘクタール当たりの肥料用農場排泄物の総量は、本質的には変わらないといえる。これは即ち、肥料用農場排泄物の効果プロフィールとは異なる効果プロフィールを有する、肥料用農場排泄物と慣用される窒素肥料が、過剰施肥の心配なく年間を通じて変化しない量で使用され得ることを意味する。このように、本発明に従う、肥料用農場排泄物に組み込まれたカルシウムシアナミド含有組成物の応用は、適用された総窒素の点で、カルシウムシアナミド含有肥料を使用する通常の施肥とは明確に区別もされる。
【0026】
本発明に従う処理方法は、肥料用農場排泄物からのガス放出が、カルシウムシアナミドを含む組成物の保管タンクへの添加と、該組成物を肥料用農場排泄物に接触させることのみにより削減されるという事実によって特徴づけられる。それゆえ、本発明に従えば、処理ステップb)及びc)は、任意の順序から独立して行われてよいことが想定される。それゆえ、処理ステップc)に従う組成物の添加は、保管タンクへの肥料用農場排泄物の最初の充填の前、その実行中またはその後に行われ得る。最初の充填に先立って行われるならば、添加は、肥料用農場排泄物を接触させる前の合理的な時間内で行われるべきである。1日未満の期間が合理的と理解されるであろう。
【0027】
処理ステップc)に従う組成物の添加は、完全に空の保管タンク内または完全に空ではない、即ち残留内容物が充填された、保管タンク内で行われ得る。保管タンクが、その容量の少なくとも5容量%が肥料用農場排泄物で充填されているまたは充填されることが必須である。こうして、組成物を肥料用農場排泄物と十分に混合することで組成物の効果を確実にし得る。
【0028】
もし、保管タンク内の肥料用農場排泄物へのカルシウムシアナミド含有組成物の添加中または添加後に、特にプロペラミキサーまたは撹拌ポンプで保管タンクの内容物を循環させることによってカルシウムシアナミド含有組成物と肥料用農場排泄物が混合されるならば、有利であると考えられる。その際、カルシウムシアナミド含有組成物は、肥料用農場排泄物の少なくとも5容量%を含む保管タンクに添加されてかき混ぜられる。その後、肥料用農場排泄物がさらに添加されてもよい。この添加の完了後、肥料用農場排泄物が保管タンク内で再循環される。保管タンクは、部分的に充填されていても完全に充填されていてもよい。
【0029】
トラクタまたは電気モーターで駆動されるプロペラミキサーが、保管タンク内で肥料用農場排泄物を循環させるのに適している。水中モーターを有して保管タンク壁に恒久的に備え付けられた、プロペラ攪拌器または一体型ミキサーが特に適していることが証明されているが、これは、保管タンク内の肥料用農場排泄物に埋没した、備え付けのトラクタによりタンク内で揺れ動く、連結されたタワー式のプロペラミキサーを有することによる。さらにまた、供給ポンプに取り付けた攪拌器ノズルが保管タンク内で肥料用農場排泄物を循環させるのに適しているが、特に、電気モーターまたはトラクタによって駆動される、破砕機付きの攪拌器ノズルまたは回転ポンプを有するシャフトの長い攪拌器ポンプが適している。
【0030】
本処理方法の好ましい実施態様に従えば、処理ステップc)に従う組成物の添加は、一度に行われてもよく、または分割して行ってもよい。特に好ましくは、組成物の添加は、
i)肥料用農場排泄物の保管タンクへの最初の部分量の最初の添加の後または添加中に1回行われるか、または
ii)複数回に分けて、保管タンクへの部分充填のそれぞれの後に行われるか、または
iii)肥料用農場排泄物の保管タンクへの完全な充填の後または充填中に1回行われ得る。
【0031】
このように、保管タンクの部分的または完全な充填中または充填後に、カルシウムシアナミドを含む組成物の添加を行うことは可能である。ここでも、保管タンクの内容物が、カルシウムシアナミドを含む組成物の添加中及び添加後に、特に、プロペラミキサーまたは攪拌器ポンプで循環されるならば有利であることが証明されている。
【0032】
大抵の場合、肥料用農場排泄物は家畜の飼育によって連続的に生成されて保管タンク内に集められ、少なくとも5容量%で充填される。ここでも、肥料用農場排泄物での連続的充填前、充填中または充填後にカルシウムシアナミドを含む組成物を添加することは可能である。保管タンク内の肥料用農場排泄物が、カルシウムシアナミドを含む組成物の添加中及び添加後に循環されるならば、ここでもまた、有利であることが証明される。
【0033】
また、カルシウムシアナミドを含む組成物の添加が、保管タンクへの肥料用農場排泄物の連続的または一部ずつの充填前、充填中及び充填後に行われるならば、有利であると考えられる。ここでも再び、保管タンク内の肥料用農場排泄物が、カルシウムシアナミドを含む組成物の添加中及び添加後に循環されるならば有利であることが見いだされた。
【0034】
カルシウムシアナミドを含む組成物の添加は、肥料用農場排泄物の入った開放型保管タンク及び閉鎖型保管タンクにおいて行われる。閉鎖型保管タンクは、例えば、テント屋根またはコンクリート天井を有するタンクまたは容器である。開放型保管タンクまたは容器には、構造的覆いがない。
【0035】
ここで強調すべきは、本発明に従う処理は、限定されない様々な保管タンクにおいて行われ得ることである。保管タンクの大きさは、決定的要素ではない。それゆえ、体積Xは、任意の合理的な大きさであり得る。特に、Xとは、立方メートル(m3)で測定した体積を意味し、特に、0.001m3≦X≦20,000m3の範囲であり、好ましくは0.1m3≦X≦10,000m3の範囲であり、より好ましくは1m3≦X≦10,000m3の範囲、特に好ましくは10m3≦X≦10,000m3の範囲である。
【0036】
本方法は、カルシウムシアナミドを含む組成物の添加が、肥料用農場排泄物が入った保管タンク内であって、肥料用農場排泄物の温度が0°C~60°Cの範囲である保管タンク内で行われることにより、さらに特徴づけられる。処理は、冬季及び真夏の条件下で適用可能であるとともに、発酵処理から直接派生する肥料用農場排泄物またはバイオガス処理後の二次発酵容器またはタンク内の肥料用農場排泄物に適用可能である。
【0037】
本発明に従えば、カルシウムシアナミドを含む組成物は、保管中の肥料用農場排泄物からのメタン及び/または二酸化炭素の排出を削減するための処理方法において使用される。
【0038】
本発明に従えば、メタン及び/または二酸化炭素の排出を削減するためのカルシウムシアナミドを含む組成物の肥料用農場排泄物への処理時間は、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは30日間より多く、さらにより好ましくは40日間より多く、特に、50日間より多い。ただし、保管時間もまた、これよりずっと長くてもよく、例えば、150日間まで、または所望であれば150日間を超えてもよい。
【0039】
本発明に従えば、カルシウムシアナミドを含む組成物の添加は、特に、肥料用農場排泄物からのメタン及び/または二酸化炭素排出を(未処理の肥料用農場排泄物と比較して)少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、及び、特に好ましくは少なくとも80%を削減し得る。
【0040】
したがって、保管タンク内に保管中の肥料用農場排泄物からのメタン及び/または二酸化炭素の排出を削減するためのカルシウムシアナミドを含む組成物の使用もまた、本発明の主題である。
【0041】
さらにまた、試験により、カルシウムシアナミド含有組成物の添加が、保管中の任意の時点で行われ得ることが示された(実施例を参照せよ)。つまり、肥料用農場排泄物の数週間の保管後の添加によっても、メタン及び二酸化炭素の排出の削減が可能であることが示された。このように、保管タンク内に保管中の、肥料用農場排泄物の嫌気性発酵の発酵停止剤または阻害剤としての、及び/または肥料用農場排泄物中の有機基質の微生物分解の阻害剤としての、カルシウムシアナミドを含む組成物の使用もまた、本発明の主題である。
【0042】
好ましくは、10~100重量%のカルシウムシアナミド(組成物に基づく重量%)を含む組成物が、本発明に従う使用または処理方法に適用され得る。この点に関して特に好ましいものが、少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも35重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、及び100重量%までの、特に95重量%までの、特に80重量%までの、特に55重量%までのカルシウムシアナミド(組成物に基づく)を含む組成物である。
【0043】
本発明の文脈において、重量%による表示は、合計で100重量%となる組成物の成分の組成に基づく1成分の重量または成分の群の重量を示すものとして理解すべきものである。
【0044】
本発明のさらなる実施態様に従えば、カルシウムシアナミドは、基質に適用されてもよい。この基質は、農業目的には不活性の物質、農業目的または肥料として承認されたアジュバントであってもよい。本発明に従えば、炭酸カルシウム及び/または関連物質または無機質肥料が基質として特に好ましい。これらの基質は、商業的方法から得られるものであってもよく、また、ある量の遊離炭素、木炭または黒鉛を含んでいてもよい。それと同時にまたは別個独立に、カルシウムシアナミドがさらなる成分と混合して使用されることが提供されてもよい。
【0045】
したがって、本発明に従う使用または処理方法において、特に好ましく適用され得る組成物は、
a)カルシウムシアナミドと、
b)炭酸塩、酸化物及び水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物と、
c)より好ましくは、任意に遊離炭素、木炭または黒鉛
を含む組成物である。
【0046】
その他の成分または基質の割合は様々であり得る。好ましくは、組成物は、炭酸塩、酸化物または水酸化物の群、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物を含んでいてもよく、炭酸塩、酸化物及び水酸化物の群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物の量は、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%であり、かつ、同時に50重量%以下、特に40重量%以下、特に35重量%以下、特に25重量%以下である(組成物に基づく重量%)。
【0047】
組成物中の遊離炭素、木炭または黒鉛の量は、15重量%までであり得る(組成物に基づく)。
【0048】
さらにまた、組成物は、生産ベースで、10重量%までの水を含んでいてもよい(組成物に基づく)。
【0049】
本発明に従う使用または処理方法において、特に好ましく、それゆえ使用され得る組成物は、
a)25~95重量%のカルシウムシアナミドと、
b)5~40重量%の炭酸塩、酸化物または水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物
を含む組成物である(組成物に基づく)。
【0050】
したがって、本発明に従う使用または処理方法において、より好ましくは、組成物は、
a)25~95重量%のカルシウムシアナミドと、
b)5~40重量%の炭酸塩、酸化物及び水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物と、
c)15重量%までの遊離炭素、木炭または黒鉛と、
d)10重量%までの水
を含んで使用され得る(組成物に基づく)。
【0051】
本発明に従う使用または処理方法のより好ましい実施態様に従い、組成物は、
a)60~95重量%のカルシウムシアナミドと、
b)5~25重量%の炭酸塩、酸化物または水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物と、
c)15重量%までの遊離炭素、木炭または黒鉛と、
d)10重量%までの水
を含んで使用され得る(組成物に基づく)。
【0052】
本発明の基礎をなす試験において、特に、カルシウムシアナミドを含む組成物と、炭酸塩、酸化物または水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物が、肥料用農場排泄物からのメタン及び二酸化炭素の排出削減にかなりの好成績を示した。この事実は、例えば、炭酸カルシウム単独ではこの効果に対する影響を示さず、また、水酸化カルシウム単独ではこれらのガスの排出に追加の効果を示すので、まさに驚きである(実施例5を参照せよ)。
【0053】
したがって、特に好ましく、それゆえ使用にも特に好ましい、
a)カルシウムシアナミドと、
b)炭酸塩、酸化物または水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物
を含む、保管タンク内に保管中の肥料用農場排泄物からのメタン及び/または二酸化炭素の排出を削減するための組成物が、本発明の主題である。
【0054】
特に好ましいのは、少なくとも150日間の保管期間に渡って肥料用農場排泄物1キログラム当たりのメタン及び/または二酸化炭素が少なくとも4.0リットル(l)の肥料用農場排泄物からのメタン及び/または二酸化炭素の排出を削減するための削減可能性を有する組成物の使用である。
【0055】
さらにまた、これらの試験において、長時間持続するメタンの削減が提供できるためには、炭酸塩、酸化物または水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物の最少量が存在すべきであることが見いだされた。それゆえ、メタンの排出の長時間持続する削減が提供できるためには、炭酸塩、酸化物または水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの化合物、またはその混合物が、少なくとも5重量%を最少量として組成物に含有されるべきことが示された。この最小値が維持されない場合は、メタン排出の増加が約100日後に観察され得る(実施例5参照)。
【0056】
したがって、本発明に従う使用または処理方法のさらに好ましい実施態様に従い、組成物は、
a)60~95重量%のカルシウムシアナミドと、
b)5~25重量%の炭酸塩、酸化物または水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物と、
c)15重量%までの遊離炭素、木炭または黒鉛と、
d)10重量%までの水
を含んで使用され得る(組成物に基づく)。
【0057】
そのような組成物を使用すると、メタン及び/または二酸化炭素の排出は、非常に効果的に削減またはほぼ抑制され得る。それゆえ、本発明に従う使用または処理方法のさらに好ましい実施態様に従い、組成物は、
a)60~95重量%のカルシウムシアナミドと、
b)10~25重量%の炭酸塩、酸化物または水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物と、
c)15重量%までの遊離炭素、木炭または黒鉛と、
d)10重量%までの水
を含んで使用され得る(組成物に基づく)。
【0058】
さらに好ましくは、組成物は、特に、いずれも肥料として承認されていない、その他の化合物を含まずに提供されてもよい。より特に好ましくは、組成物は、尿素を含んだり含有したりしない。尿素は、46.6重量%の窒素含有量であり、それゆえ、肥料用農場排泄物において窒素含有量を有意に上昇させることにつながり得るが、これは本発明が設定する問題と逆である。
【0059】
さらに好ましい実施態様に従い、組成物は、硝酸塩の群からの、特に硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムの群からの少なくとも1つの塩、またはその混合物をさらに含んで提供されてもよい。
【0060】
したがって、本発明に従う使用または処理方法において、組成物は、
a)カルシウムシアナミドと、
b)炭酸塩、酸化物及び水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物と、
c)硝酸塩の群からの、特に硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムの群からの少なくとも1つの塩、またはその混合物と、
d)さらに好ましくは、遊離炭素、木炭または黒鉛
を含んで使用され得る(組成物に基づく)。
【0061】
硝酸塩の量は様々であってもよく、また、組成物は、20重量%までの硝酸塩を含んでいてもよい。好ましくは、組成物は、硝酸塩からなる群、特に、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの塩、またはその混合物を含んでいてもよく、硝酸塩の量は、20重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、及びより好ましくは少なくとも1重量%である(組成物に基づく)。
【0062】
したがって、本発明に従う使用または処理方法において、特に好ましくは、組成物は、
a)25~95重量%のカルシウムシアナミドと、
b)5~40重量%の炭酸塩、酸化物または水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物と、
c)20重量%まで の硝酸塩の群からの、特に硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムの群からの少なくとも1つの塩、またはその混合物と、
d)15重量%までの遊離炭素、木炭または黒鉛と、
e)10重量%までの水
を含んで使用され得る(組成物に基づく)。
【0063】
本発明に従う使用または処理方法の特に好ましい実施態様に従い、組成物は、
a)50~80重量%のカルシウムシアナミドと、
b)5~25重量%の炭酸塩、酸化物または水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物と、
c)1~15重量%の遊離炭素、木炭または黒鉛と、
d)10重量%までの水
を含んで使用され得る(組成物に基づく)。
【0064】
本発明に従う使用または処理方法の代替的に好ましい実施態様に従い、組成物は、
a)35~55重量%のカルシウムシアナミドと、
b)15~35重量%の炭酸塩、酸化物または水酸化物の群からの、特に、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの群からの少なくとも1つの化合物、またはその混合物と、
c)1~20重量%の、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの硝酸塩、またはその混合物、
d)1~15重量%の遊離炭素、木炭または黒鉛と、
e)10重量%までの水
を含んで使用され得る(組成物に基づく)。
【0065】
より特に好ましくは、カルシウムシアナミドが、及び、さらに好ましくは、肥料に関する2003年10月13日の欧州議会・理事会肥料に関する規則(EC)No.2003/2003に従うカルシウムシアナミドまたは硝酸塩含有カルシウムシアナミドが、本発明に従う処理方法及び使用においてカルシウムシアナミドを含む組成物として使用され得る。
【0066】
本発明に従う組成物は、本発明に従う使用において、及び本発明に従う処理方法において、異なる適用形態で使用され得、かつ、ユーザーの要求に適応され得る。それゆえ、本明細書中に記載する組成物は、固体の形態で、特に、粉末や顆粒の形態、または懸濁液の形態、特に、これらの固体の懸濁液の形態で使用され得る。
【0067】
適用されるカルシウムシアナミドを含む組成物の総量も、本発明に従う使用及び本発明に従う処理方法の両方における比較的広い限界の範囲内で、様々であり得る。それゆえ、組成物は、肥料用農場排泄物1立方メートル当たり0.5~10kg、特に、肥料用農場排泄物1立方メートル当たり1.0~10kg、特に、肥料用農場排泄物1立方メートル当たり1.0~8kg、特に好ましくは、肥料用農場排泄物1立方メートル当たり1.0~6kg、そして最も好ましくは、肥料用農場排泄物1立方メートル当たり1.0~5kgの量で使用され得ることが示された。組成物は、特に、本明細書中に記載した量でカルシウムシアナミドを含むことが必須である。したがって、組成物は、さらに好ましくは、上述の組成物の任意のものを含んでいてもよい。それとは独立に、組成物は、それゆえ、他の成分もまた含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1図1は、実施例1からのメタン及びCO2排出のチャートである。
図2図2は、実施例2からのメタン及びCO2排出のチャートである。
図3図3は、比較例3からのメタン及びCO2排出のチャートである。
図4図4は、実施例4からのメタン及びCO2排出のチャートである。
図5図5は、実施例5からのメタン及びCO2排出のチャートである。
図6図6は、実施例5からのメタン及びCO2排出のチャートである。
図7図7は、実施例5からのメタン及びCO2排出のチャートである。
図8図8は、実施例5からのメタン及びCO2排出のチャートである。
図9図9は、実施例5からのメタン及びCO2排出のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
実施例
実施例1
牛の液状排泄物からのメタン及びCO2排出の削減
1.1 成分:
新鮮な牛の液状排泄物(= 肥料用農場排泄物):
- 乳牛畜舎由来(バイエルン州オビング地域)
- すすぎ水、洗浄水または類似の水による希釈なし
- 厩舎の敷物なし
- スラリーピットの方向に排出チャネルの予備チャンバから採取
- 分析:総窒素: 0.40重量%
アンモニウム(NH4):0.13重量%(0.10%NH4の窒素に相当).
硝酸態窒素: < 20mg/kg
乾物: 11.93重量%
pH値: 7,4(13°C)
伝導性: 19.5mS/cm(13°C)
【0070】
カルシウムシアナミドを含む組成物(組成物1):
- カルシウムシアナミド: 44.0重量%
- 硝酸カルシウム: 11.1重量%
- 水酸化カルシウム: 13.4重量%
- 炭酸カルシウム: 10.0重量%
- 遊離炭素: 10.0重量%
- 炭酸マグネシウム: 2.3重量%
- 水: 9.2重量%
【0071】
2003年10月13日の欧州議会・理事会肥料に関する規則(EC)No.2003/2003のA.1.窒素肥料第3(b)に記載の肥料「硝酸塩含有カルシウムシアナミド」。
【0072】
1.2 実験手順:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成(1.1を参照せよ)の3024mL(2953gに対応)の牛の液状排泄物が提供された。その後、8.86gの組成物1(2.93kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり16.1molのカルシウムシアナミドに対応)を添加してからかき混ぜた。かき混ぜた後、混合物におけるpH値と伝導性を測定してから、ワイドネック容器を直ちに密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この構造により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。これにより、大気由来のCO2による測定結果の歪曲を防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど156日間保存した。一定時間ごとに、一杯になった保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0073】
かき混ぜた後の測定値:
pH値:7.5(22°C)
伝導性:19.8mS/cm(22°C)
【0074】
基準実験:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成(1.1を参照せよ)の3018mL(2947gに対応)の牛の液状排泄物を添加した。次いで、ワイドネック容器を密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この構造により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど156日間保存した。一定時間ごとに、一杯になった保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0075】
実験期間中は、ガス保存袋を3、16、59、73、86、99、108、115、122、128、135、142、149及び156日後に交換し、回収したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0076】
1.3 結果:
こうして得られたメタン及び二酸化炭素のガス体積を下記の表1に示す(図1-実施例1からのメタン及びCO2排出のチャートも参照)。これらの結果は、異なる試験1件ごとに1,000kgの牛の液状排泄物を参照する。
【0077】
【表1】
【0078】
表の値は期間を示し、括弧内の値は、全試験期間を通して累積された値である。チャートを図1として示す。
【0079】
1.4 結果のまとめ:
メタン排出:
156日間の保管後、1,000kgの牛の液状排泄物に関連して7871mLのメタンガスが、基準実験(サンプル1)において放出された。8.86gのカルシウムシアナミドをカルシウムシアナミドを含む組成物1(サンプル2)の形態で添加することにより、なお、これは、2.93kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり16.1molのカルシウムシアナミドの物質量濃度に対応するが、これらの排出は23mLのメタンガスまで99.7%削減し得る。
CO2排出:
同様の状況がここでも現れる。156日間の保管後、1,000kgのスラリーに関連して1853mLのCO2ガスが、基準実験(サンプル1)において放出された。8.86gのカルシウムシアナミドをカルシウムシアナミドを含む組成物1(サンプル2)の形態で添加することにより、なお、これは、2.93kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり16.1molのカルシウムシアナミドの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、39mLのCO2ガスまで97.9%削減し得る。
【0080】
実施例2
牛の液状排泄物からのメタン及びCO2排出の削減
2.1 成分:
新鮮な牛の液状排泄物(= 肥料用農場排泄物):
- 乳牛畜舎由来(バイエルン州オビング地域)
- すすぎ水、洗浄水または類似の水による希釈なし
- 厩舎の敷物なし
- スラリーピットの方向に排出チャネルの予備チャンバから採取
- 分析:総窒素: 0.48重量%
アンモニウム(NH4): 0.22重量%(0.17%NH4の窒素に相当)
硝酸態窒素: < 20mg/kg
乾物: 10.30重量%
pH値: 6.8(24°C)
伝導性: 18.5mS/cm(24°C)
【0081】
カルシウムシアナミドを含む組成物(組成物2):
- カルシウムシアナミド: 67.7重量%
- 酸化カルシウム: 13.2重量%
- 水酸化カルシウム: 3.2重量%
- 遊離炭素: 13.3重量%
- 水 2.6重量%
【0082】
2003年10月13日の欧州議会・理事会肥料に関する規則(EC)No.2003/2003のA.1.窒素肥料第3(a)に記載の肥料「カルシウムシアナミド」。
【0083】
2.2 実験手順:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成(2.1を参照せよ)の3090mL(3032gに対応)の牛の液状排泄物を添加した。その後、4.25gの組成物2(1.38kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり11.6molのカルシウムシアナミドに対応)を添加してからかき混ぜた。かき混ぜた後、混合物におけるpH値と伝導性を測定してから、ワイドネック容器を直ちに密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この構造により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。これにより、大気由来のCO2による測定結果の歪曲を防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど156日間保存した。一定時間ごとに、一杯になった保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0084】
かき混ぜた後の測定値:
pH値:7.5(24°C)
伝導性:18.9mS/cm(24°C)
【0085】
基準実験:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成(2.1を参照せよ)の3038mL(2981gに対応)の牛の液状排泄物を添加した。次いで、ワイドネック容器を密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この構造により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど156日間保存した。一定時間ごとに、一杯になった保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0086】
実験期間中は、ガス保存袋を7、44、57、70、79、89、96、103、110、117、127、141及び156日後に交換し、回収したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0087】
2.3 結果:
こうして得られたメタン及び二酸化炭素のガス体積を下記の表2に示す(図2-実施例2からのメタン及びCO2排出のチャートも参照)。これらの結果は、異なる試験1件ごとに1,000kgの牛の液状排泄物を参照する。
【0088】
【表2】
【0089】
表の値は期間を示し、括弧内の値は、全試験期間を通して累積された値である。チャートを図2として示す。
【0090】
2.4 結果のまとめ:
メタン排出:
156日間の保管後、1,000kgの牛の液状排泄物に関連して4416mLのメタンガスが、基準実験(サンプル1)において放出された。4.25gのカルシウムシアナミドをカルシウムシアナミドを含む組成物2(サンプル2)の形態で添加することにより、なお、これは、1.38kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり11.6molのカルシウムシアナミドの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、25mLのメタンガスまで99.4%削減し得る。
CO2排出:
同様の状況がここでも現れる。156日間の保管後、1,000kgの牛のスラリーに関連して1043mLのCO2ガスが、基準実験(サンプル1)において放出された。4.25gのカルシウムシアナミドをカルシウムシアナミドを含む組成物2(サンプル2)の形態で添加することにより、なお、これは、1.38kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり11.6molのカルシウムシアナミドの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、30mLのCO2ガスまで97.1%削減し得る。
【0091】
実施例3-ハイドロゲンシアナミド溶液との比較例
牛の液状排泄物からのメタン及びCO2排出の削減
3.1 成分:
新鮮な牛の液状排泄物(= 肥料用農場排泄物):
- 乳牛畜舎由来(バイエルン州オビング地域)
- すすぎ水、洗浄水または類似の水による希釈なし
- 厩舎の敷物なし
- スラリーピットの方向に排出チャネルの予備チャンバから採取
- 分析:総窒素: 0.42重量%
アンモニウム(NH4): 0.23重量%(0.18%NH4の窒素に相当)
硝酸態窒素: < 20mg/kg
乾物: 9.69重量%
pH値: 7.5(23°C)
伝導性: 18.0mS/cm(23°C)
【0092】
ハイドロゲンシアナミドを含む組成物(組成物3):
- ハイドロゲンシアナミド: 50.2重量%
- 水: 49.8重量%
【0093】
3.2 実験手順:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成(3.1を参照せよ)の3030mL(2979gに対応)の牛の液状排泄物を添加した。その後、2.98gの組成物3(0.983kgのハイドロゲンシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり12.2molのハイドロゲンシアナミドに対応)を添加してからかき混ぜた。かき混ぜた後、混合物におけるpH値と伝導性を測定してから、ワイドネック容器を直ちに密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この構造により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。これにより、大気由来のCO2による測定結果の歪曲を防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど150日間保存した。一定時間ごとに、一杯になった保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0094】
かき混ぜた後の測定値:
pH値:7.5(23°C)
伝導性:18.0mS/cm(23°C)
【0095】
基準実験:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成(3.1を参照せよ)の3075mL(3023gに対応)の牛の液状排泄物を添加した。次いで、ワイドネック容器を密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この構造により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど150日間保存した。一定時間ごとに、一杯になった保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0096】
実験期間中は、ガス保存袋を11、57、66、78、88、95、106、120、137及び150日後に交換し、回収したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0097】
3.3 結果:
こうして得られたメタン及び二酸化炭素のガス体積を下記の表3に示す(図3-比較例3からのメタン及びCO2排出のチャートも参照)。これらの結果は、異なる試験1件ごとに1,000kgの牛の液状排泄物を参照する。
【0098】
【表3】
【0099】
表の値は期間を示し、括弧内の値は、全試験期間を通して累積された値である。チャートを図3として示す。
【0100】
3.4 結果のまとめ:
メタン排出:
150日間の保管後、1,000kgの牛の液状排泄物に関連して1931mLのメタンガスが、基準実験(サンプル1)において放出された。2.98gのハイドロゲンシアナミドを組成物3(サンプル2)の形態で添加することにより、なお、これは、0.983kgのハイドロゲンシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり12.2molのハイドロゲンシアナミドの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、330mLまでの82.9%しか削減され得ない。また、かなりの量のメタン形成が、78日間の保管後に既に測定され得る。
CO 2 排出:
150日間の保管後、1,000kgの牛の液状排泄物に関連して330mLのCO2ガスが、基準実験(サンプル1)において放出された。2.98gのハイドロゲンシアナミドを組成物3(サンプル2)の形態で添加することにより、なお、これは、0.983kgのハイドロゲンシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり12.2molのハイドロゲンシアナミドの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、72mLまでの78.2%しか削減され得ない。
【0101】
類似の物質濃度が、カルシウムシアナミドを含む組成物として添加された実施例2と比較して、比較例におけるガス排出は、メタン及びCO2の両方で、絶対量において非常に高い値である。さらにまた、ガス排出は、実施例3では非常に短い時間をおいて再び開始し、78日間の保管後、かなりの量のメタン排出が計測され得るが、実施例2では有意なガス排出は、156日間の保管後に検出できなかった。
【0102】
実施例4
保管中の牛の液状排泄物の嫌気性発酵の発酵停止剤または阻害剤としての及び肥料用農場排泄物における有機物の微生物分解の阻害剤としてのカルシウムシアナミドを含む組成物の使用
【0103】
4.1 成分:
新鮮な牛の液状排泄物(= 肥料用農場排泄物):
- 乳牛畜舎由来(バイエルン州オビング地域)
- すすぎ水、洗浄水または類似の水による希釈なし
- 厩舎の敷物なし
- スラリーピットの方向に排出チャネルの予備チャンバから採取
- 分析:総窒素: 0.48重量%
アンモニウム(NH4): 0.22重量%(0.17%NH4の窒素に相当).
硝酸態窒素: < 20mg/kg
乾物: 10.30重量%
pH値: 6.8(24°C)
伝導性: 18.5mS/cm(24°C)
【0104】
カルシウムシアナミドを含む組成物(組成物1):
- カルシウムシアナミド: 44.0重量%
- 硝酸カルシウム: 11.1重量%
- 水酸化カルシウム: 13.4重量%
- 炭酸カルシウム: 10.0重量%
- 遊離炭素: 10.0重量%
- 炭酸マグネシウム: 2.3重量%
- 水: 9.2重量%
【0105】
2003年10月13日の欧州議会・理事会肥料に関する規則(EC)No.2003/2003のA.1.窒素肥料第3(b)に記載の肥料「硝酸塩含有カルシウムシアナミド」。
【0106】
4.2 実験手順:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成物(4.1を参照せよ)の3058mL(3001gに対応)の牛の液状排泄物を添加した。次いで、ワイドネック容器を密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この構造により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。これにより、大気由来のCO2による測定結果の歪曲を防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど110日間保存した。実験期間中は、ガス保存袋を7、44、57、70、79、89、96、103及び110日後に交換し、回収したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0107】
実験の110日目に、容器をグローブボックスとしても知られる箱の中に入れてから、グローブボックス内が0.1体積%の酸素になるまでその中に窒素を流し込んだ。容器の蓋のネジを開けて、6.60gの組成物1(2.16kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり11.9molのカルシウムシアナミドに対応)を添加してからかき混ぜた。その後、容器の蓋のネジを直ちに戻して締めてから、ワイドネック容器を密閉し、ガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、さらに保存した。
【0108】
さらに7、17、31及び46日後(全期間では117、127、141及び156日後に対応)に、ガス保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0109】
基準実験:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成物(4.1を参照せよ)の3038mL(2981gに対応)の牛の液状排泄物を添加した。次いで、ワイドネック容器を密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この構造により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど156日間保存した。一定時間ごとに、一杯になった保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0110】
実験期間中は、ガス保存袋を7、44、57、70、79、89、96、103、110、117、127、141及び156日後に交換し、回収したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0111】
4.3 結果:
こうして得られたメタン及び二酸化炭素のガス体積を下記の表4に示す(図4-実施例4からのメタン及びCO2排出のチャートも参照)。これらの結果は、異なる試験1件ごとに1,000kgの牛の液状排泄物を参照する。
【0112】
【表4】
【0113】
表の値は期間を示し、括弧内の値は、全試験期間を通して累積された値である。チャートを図4として示す。
【0114】
4.4 結果のまとめ:
メタン排出:
156日間の保管後、基準実験(サンプル1)において1,000kgの牛の液状排泄物に対して、4416mLのメタンガスが放出された。サンプル2におけるメタン放出の経過は、110日目までサンプル1に類似していた。110日目に、6.60gのカルシウムシアナミドをカルシウムシアナミドを含む組成物1の形態でサンプル2に添加することにより、なお、これは、2.16kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり11.9molのカルシウムシアナミドの物質量濃度に対応するが、メタン放出が直ちに、かつ、連続する実験期間中、恒久的に停止した。組成物1の形態のカルシウムシアナミドの添加後46日以内に2mLのメタンが放出されたのみである。
CO2排出:
同様の状況がここでも現れる。156日間の保管後、1,000kgの牛の液状排泄物に関連して1043mLのCO2ガスが、基準実験(サンプル1)において放出された。サンプル2におけるCO2放出の経過は、110日目までサンプル1に類似していた。110日目に、6.60gのカルシウムシアナミドをカルシウムシアナミドを含む組成物1の形態でサンプル2に添加することにより、なお、これは、2.16kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛のスラリー1立方メートル当たり11.9molのカルシウムシアナミドの物質量濃度に対応するが、CO2放出が直ちに、かつ、連続する実験期間中、恒久的に停止した。組成物1の形態のカルシウムシアナミドの添加後46日以内に3mLのCO2が放出されたのみである。
【0115】
実施例1~4の結果のまとめ
牛の液状排泄物1立方メートル当たり2.93kgのカルシウムシアナミドを組成物1の形態で添加して接触させることにより、基準実験と比較して、156日間保管後のメタン放出は99.7%、CO2放出は97.9%削減された。類似の手順及び保管期間で牛の液状排泄物1立方メートル当たり1.38kgのカルシウムシアナミドを組成物2の形態で添加した場合にも、非常によく似た結果が得られた。メタン放出は99.4%、CO2放出は97.1%削減された。対照的に、牛の液状排泄物1立方メートル当たり0.983kgのハイドロゲンシアナミド溶液を組成物3の形態で添加した場合は、実施例2及び4と比較して非常によく似た物質濃度であるのに、基準実験と比較して150日間の保管後のメタン放出は82.9%、CO2放出は78.2%の削減にすぎない。さらにまた、牛の液状排泄物がメタン及びCO2を大規模に放出する場合には、牛の液状排泄物1立方メートル当たり2.16kgのカルシウムシアナミドを組成物1の形態で一度に添加して接触させることにより、この放出がほぼ停止することが示される。こうして、基準実験における1,000kgの牛の液状排泄物当たり1872mLのメタンと372mLのCO2の放出と比較して、添加時からその後46日間において1,000kgの牛の液状排泄物当たり2mLのメタンと3mLのCO2しか放出されない。
【0116】
肥料用農場排泄物からのメタン及び二酸化炭素等の放出可能ガスの絶対量は、いくつかの要因に依存する:
- 肥料用農場排泄物の種類と由来
- 回収チャネル内で除去されるまでの保有時間、温度及び肥料用農場排泄物への新鮮な空気の形態の酸素供給
- 農場で飼育される動物のための飼料組成物の結果としての動物の糞便における栄養素の含有量
【0117】
このことは、実施例1~4から明らかである。これらの実施例全てに、同じ種類かつ同じ由来の新しく回収された肥料用農場排泄物が使用されたが、放出されたメタン及び二酸化炭素の量は、参照されたものの間で様々であった。
【0118】
実施例5
牛の液状排泄物からのメタン及びCO2排出の削減
5.1 成分:
新鮮な牛の液状排泄物(= 肥料用農場排泄物):
- 乳牛畜舎由来(バイエルン州オビング地域)
- すすぎ水、洗浄水または類似の水による希釈なし
- 厩舎の敷物なし
- スラリーピットの方向に排出チャネルの予備チャンバから採取
- 分析:総窒素: 0.43重量%
アンモニウム(NH4):0.17重量%(0.13%NH4の窒素に相当).
硝酸態窒素: < 20mg/kg
乾物: 9.87重量%
pH値: 7.0(15°C)
伝導性: 20.1mS/cm(15°C)
【0119】
カルシウムシアナミドを含む組成物(組成物1):
- カルシウムシアナミド: 44.0重量%
- 硝酸カルシウム: 11.1重量%
- 水酸化カルシウム: 13.4重量%
- 炭酸カルシウム: 10.0重量%
- 遊離炭素: 10.0重量%
- 炭酸マグネシウム: 2.3重量%
- 水: 9.2重量%
【0120】
2003年10月13日の欧州議会・理事会肥料に関する規則(EC)No.2003/2003のA.1.窒素肥料第3(b)に記載の肥料「硝酸塩含有カルシウムシアナミド」。
【0121】
カルシウムシアナミドを含む組成物(組成物2):
- カルシウムシアナミド: 67.7重量%
- 酸化カルシウム: 13.2重量%
- 水酸化カルシウム: 3.2重量%
- 遊離炭素: 13.3重量%
- 水 2.6重量%
【0122】
2003年10月13日の欧州議会・理事会肥料に関する規則(EC)No.2003/2003のA.1.窒素肥料第3(a)に記載の肥料「カルシウムシアナミド」。
【0123】
カルシウムシアナミドを含む組成物(組成物4):
- カルシウムシアナミド: 97.2重量%
- 酸化カルシウム: 2.3重量%
- 炭酸カルシウム: 0.4重量%
- 水: 0.1重量%
【0124】
水酸化カルシウムを含む組成物(組成物5):
- 水酸化カルシウム: 99.8重量%
- 水: 0.2重量%
【0125】
炭酸カルシウムを含む組成物(組成物6):
- 炭酸カルシウム: 99.9重量%
- 水: 0.1重量%
【0126】
5.2 実験手順:
組成物1:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成(5.1を参照せよ)の3008mL(2976gに対応)の牛の液状排泄物を添加した。その後、6.55gの組成物1(2.18kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり12.0molのカルシウムシアナミドに対応)を添加してから丁寧にかき混ぜた。かき混ぜた後、混合物におけるpH値と伝導性を測定してから、ワイドネック容器を直ちに密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この構造により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。これにより、大気由来のCO2による測定結果の歪曲を防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど170日間保存した。一定時間ごとに、一杯になった保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0127】
かき混ぜた後の測定値:
pH値:7.1(22°C)
伝導性:20.4mS/cm(22°C)
【0128】
組成物2:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成(5.1を参照せよ)の2995mL(2963gに対応)の牛の液状排泄物を添加した。その後、4.15gの組成物2(1.39kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり11.7molのカルシウムシアナミドに対応)を添加してから丁寧にかき混ぜた。かき混ぜた後、混合物におけるpH値と伝導性を測定してから、ワイドネック容器を直ちに密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この構造により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。これにより、大気由来のCO2による測定結果の歪曲を防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど170日間保存した。一定時間ごとに、一杯になった保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0129】
かき混ぜた後の測定値:
pH値:7.3(22°C)
伝導性:20.5mS/cm(22°C)
【0130】
組成物4:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成(5.1を参照せよ)の3033mL(3001gに対応)の牛の液状排泄物を添加した。その後、3.00gの組成物4(0.99kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり12.0molのカルシウムシアナミドに対応)を添加してから丁寧にかき混ぜた。かき混ぜた後、混合物におけるpH値と伝導性を測定してから、ワイドネック容器を直ちに密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この構造により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。これにより、大気由来のCO2による測定結果の歪曲を防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど170日間保存した。一定時間ごとに、一杯になった保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0131】
かき混ぜた後の測定値:
pH値:7.1(22°C)
伝導性:20.2mS/cm(22°C)
【0132】
組成物5:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成(5.1を参照せよ)の3044mL(3012gに対応)の牛の液状排泄物を添加した。その後、1.51gの組成物5(0.50kgの水酸化カルシウムを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり6.7molの水酸化カルシウムに対応)を添加してから丁寧にかき混ぜた。かき混ぜた後、混合物におけるpH値と伝導性を測定してから、ワイドネック容器を直ちに密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この構造により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。これにより、大気由来のCO2による測定結果の歪曲を防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど170日間保存した。一定時間ごとに、一杯になった保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0133】
かき混ぜた後の測定値:
pH値:7.3(22°C)
伝導性:20.2mS/cm(22°C)
【0134】
組成物6:
密閉蓋付のポリエチレン(PE)製6リットルのワイドネック容器内に、上述の組成(5.1を参照せよ)の2997mL(2965gに対応)の牛の液状排泄物を添加した。その後、1.48gの組成物6(0.49kgの炭酸カルシウムを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり4.9molの炭酸カルシウムに対応)を添加してから丁寧にかき混ぜた。かき混ぜた後、混合物におけるpH値と伝導性を測定してから、ワイドネック容器を直ちに密閉した。ワイドネック容器の蓋にドリルで開口を作り、その中に密閉したガス保存袋(呼び容積5.6リットル)を接続して、その中に放出されたガス量を回収した。この設計により大気中の酸素がワイドネック容器に侵入するのを防いだ。これにより、大気由来のCO2による測定結果の歪曲を防いだ。かき混ぜたり撹拌したりせずに、温度23±1°C、気圧960~980hPa、及び標準海面から493mの標高(NHN)で、混合物をちょうど170日間保存した。一定時間ごとに、一杯になった保存袋を交換し、保存したガスの体積を体積測定で決定して、ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0135】
かき混ぜた後の測定値:
pH値:7.1(22°C)
伝導性:20.2mS/cm(22°C)
【0136】
5.3 結果:
こうして得られたメタン及び二酸化炭素のガス体積を下記の表5~表10に示す(図5図10-実施例5からのメタン及びCO2排出のチャートも参照)。これらの結果は、異なる試験1件ごとに1,000kgの牛の液状排泄物を参照する。
【0137】
【表5】
【0138】
表の値は期間を示し、括弧内の値は、全試験期間を通して累積された値である。(図5を参照)。
【0139】
【表6】
【0140】
表の値は期間を示し、括弧内の値は、全試験期間を通して累積された値である。(図6を参照)。
【0141】
【表7】
【0142】
表の値は期間を示し、括弧内の値は、全試験期間を通して累積された値である。(図7を参照)。
【0143】
【表8】
【0144】
表の値は期間を示し、括弧内の値は、全試験期間を通して累積された値である。(図8を参照)。
【0145】
【表9】
【0146】
表の値は期間を示し、括弧内の値は、全試験期間を通して累積された値である。(図9を参照)。
【0147】
5.4 結果のまとめ:
メタン排出:
170日間の保管後、1,000kgの牛の液状排泄物に関連して4933mLのメタンガスが、基準実験(サンプル1)において放出された。
- 6.55gのカルシウムシアナミドをカルシウムシアナミドを含む組成物1の形態で添加することにより、なお、これは、2.18kgのカルシウムシアナミドを含む組成物1または牛の液状排泄物1立方メートル当たり12.0molのカルシウムシアナミドの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、16mLのメタンガスまで99.7%削減し得る。
- 4.15gのカルシウムシアナミドをカルシウムシアナミドを含む組成物2の形態で添加することにより、なお、これは、1.39kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり11.7molのカルシウムシアナミドの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、11mLのメタンガスまで99.8%削減し得る。
- 3.00gのカルシウムシアナミドをカルシウムシアナミドを含む組成物4の形態で添加することにより、なお、これは、0.99kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり12.0molのカルシウムシアナミドの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、2311mLのメタンガスまで53.2%削減し得る。これにより97日間の保管後、この時点で2245mLまたは97.1%のメタンガス削減に対応する67mLのメタンだけが放出された。メタンガスの大部分は、その後の保管期間中に放出された。
- 1.51gの水酸化カルシウムを水酸化カルシウムを含む組成物5の形態で添加することにより、なお、これは、0.50kgの水酸化カルシウムを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり6.7molのモル濃度の水酸化カルシウムに対応するが、排出を37.7%増加させてメタンガスを6791mLにする。
- 1.48gの炭酸カルシウムを組成物6の形態で添加することにより、なお、これは、0.49kgの炭酸カルシウムを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり4.9molの炭酸カルシウムの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、4613mLのメタンガスまで6.5%削減し得る。
【0148】
CO2排出:
同様の状況がここでも現れる。170日間の保管後、1,000kgの牛の液状排泄物に関連して1067mLのCO2ガスが、基準実験(サンプル1)において放出された。
- 6.55gのカルシウムシアナミドカルシウムシアナミドを含む組成物1の形態で添加することにより、なお、これは、2.18kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり12.0molのカルシウムシアナミドの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、41mLのCO2ガスまで96.2%削減し得る。
- 4.15gのカルシウムシアナミドカルシウムシアナミドを含む組成物2の形態で添加することにより、なお、これは、1.39kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり11.7molのカルシウムシアナミドの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、30mLのCO2ガスまで97.2%削減し得る。
- 3.00gのカルシウムシアナミドをカルシウムシアナミドを含む組成物4の形態で添加することにより、なお、これは、0.99kgのカルシウムシアナミドを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり12.0molのカルシウムシアナミドの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、249mLのCO2ガスまで76.7%削減し得る。
- 1.51gの水酸化カルシウムを水酸化カルシウムを含む組成物5の形態で添加することにより、なお、これは、0.50kgの水酸化カルシウムを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり6.7molのモル濃度の水酸化カルシウムに対応するが、排出を27.6%増加させてCO2ガスを1361mLにする。
- 1.48gの炭酸カルシウムを組成物6の形態で添加することにより、なお、これは、0.49kgの炭酸カルシウムを含む組成物または牛の液状排泄物1立方メートル当たり4.9molの炭酸カルシウムの物質量濃度に対応するが、これらの排出は、902mLのCO2ガスまで15.5%削減し得る。
【0149】
実施例1~5からの結果のまとめ
肥料用農場排泄物からのメタン及び二酸化炭素等の放出可能ガスの絶対量は、いくつかの要因に依存する:
- 肥料用農場排泄物の種類と由来
- 回収チャネル内で除去されるまでの保有時間、温度及び肥料用農場排泄物への新鮮な空気の形態の酸素供給
- 農場で飼育される動物のための飼料組成物の結果としての動物の糞便における栄養素の含有量。
【0150】
このことは、実施例1~5から明らかである。これらの実施例全てに、同じ種類かつ同じ由来の新しく回収された肥料用農場排泄物が使用されたが、放出されたメタン及び二酸化炭素の量は、参照されたものの間で様々であった。
【0151】
牛の液状排泄物1立方メートル当たり2.93kgのカルシウムシアナミドを組成物1の形態で添加して実施例1において接触させることにより、基準実験と比較して、156日間保管後のメタン放出は99.7%、CO2放出は97.9%削減された。類似の手順及び保管期間で牛の液状排泄物1立方メートル当たり1.38kgのカルシウムシアナミドを組成物2の形態で、実施例2において添加した場合にも、非常によく似た結果が得られたメタン放出は99.4%、CO2放出は97.1%削減された。
【0152】
これらの結果は、実施例5における、より長い保管時間でも確認された。牛の液状排泄物1立方メートル当たり2.18kgのカルシウムシアナミドを組成物1の形態で添加して接触させることにより、基準実験と比較して、170日間保管後のメタン放出は99.7%、CO2放出は96.2%削減された。牛の液状排泄物1立方メートル当たり1.39kgのカルシウムシアナミドを組成物2の形態で添加してから接触させることにより、170日間の保管後、メタン放出は99.8%、CO2放出は97.2%削減される。
【0153】
対照的に、牛の液状排泄物1立方メートル当たり0.983kgのハイドロゲンシアナミド溶液を組成物3の形態で添加した場合は、実施例2、4及び5と比較して非常によく似た物質濃度であるのに、基準実験と比較して150日間の保管後のメタン放出は82.9%、CO2放出は78.2%の削減にすぎない。
【0154】
さらにまた、牛の液状排泄物がメタン及びCO2を大規模に放出する場合には、牛の液状排泄物1立方メートル当たり2.16kgのカルシウムシアナミドを組成物1の形態で一度に添加して接触させることにより、この放出がほぼ停止することが示される。こうして、基準実験における1,000kgの牛の液状排泄物当たり1872mLのメタンと372mLのCO2の放出と比較して、添加時からその後46日間において1,000kgの牛の液状排泄物当たり2mLのメタンと3mLのCO2しか放出されない。
【0155】
ただし、カルシウムシアナミドの添加された物質量濃度は、実施例5における組成物1及び2についてと同じであるのに、低比率で酸化カルシウム(2.3重量%)と炭酸カルシウム(0.4重量%)を含む組成物4の形態の、牛の液状排泄物1立方メートル当たり0.99kgのカルシウムシアナミドを添加してから接触させることで、削減されたメタンとCO2の放出について有意に短い期間を示した。
【0156】
同様に、実施例5は、牛の液状排泄物1立方メートル当たり0.50kgの水酸化カルシウムを組成物5の形態で添加後接触させることが、170日間の保管後に、基準実験と比較してメタンとCO2の放出を実際に増加させることを示す。一方で、類似の設定で行った牛の液状排泄物1立方メートル当たり0.49kgの炭酸カルシウムの組成物6の形態での添加は、メタンとCO2の放出を僅かに削減しただけである。さらに驚くことには、効果的なメタンとCO2の放出の削減が、それぞれ、カルシウムシアナミド及び酸化カルシウム/水酸化カルシウム及び/または炭酸カルシウムの組合せを含む、組成物1または2の添加により、156日間及び170日間持続することである。
【0157】
実施例1~5からの基準実験の放出されたガスの体積は、牛の液状排泄物の150~170日間の保管後、CO2よりもメタンの体積が4.2~5.9倍多く放出されることを示す。モル体積(Vm)を考慮すれば、メタンはCO2よりも質量で1.5~2.1倍多く放出される。100年を基準とするIPCC/AR5によれば、メタンは地球温暖化係数(IPCCのAR5)が28である。これは、放出から最初の100年以内に、1キログラムのメタンが1キロのCO2の温室効果に対して28倍寄与することを意味する(出典:Wikipedia)。したがって、本発明に従えば、肥料用農場排泄物において窒素含有量を有意に増加させることなく、温暖化ガスの排出削減に有意な貢献がされる。
図1
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【国際調査報告】