(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】水素キャリア化合物としてのシリル化誘導体から水素を生成する触媒プロセス
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20220112BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C01B3/04 Z
B01J31/02 102M
B01J31/02 103M
B01J31/02 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527141
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2019079909
(87)【国際公開番号】W WO2020108913
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521211631
【氏名又は名称】イシラブス ソシエテ パル アクシオン サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】ビュルシェ バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】ロメ ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ レミ
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE10A
4G169BE10B
4G169BE15A
4G169BE15B
4G169BE19A
4G169BE19B
4G169BE21A
4G169BE21B
4G169BE33A
4G169BE36A
4G169BE36B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169CB35
4G169CB81
(57)【要約】
本発明は、水素キャリア化合物としてのシリル化誘導体から水素を生成する触媒プロセスに関する。本発明はまた、水素キャリア化合物としてのシリル化誘導体から水素を生成する触媒プロセスで使用される新規の触媒に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のSi-H結合を含む水素キャリア化合物(C)を、水素放出触媒Yと接触させる工程であって且つ任意に水素放出触媒Xとも接触させてもよい前記工程を含む、水素を生成するための方法であって、水素放出触媒Yが、式
【化1】
(式中、Yは、OまたはSであり、
- X1、X2は、それぞれ独立にハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、SiR
6R
7R
8から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2は-CR
aR
bであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環シクロアルキルを形成し、R
a、R
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2はNR
aR
bであり、R
aおよびR
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1は、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、SiR
6R
7R
8から選択され、X2はNR
aR
bであり、R
aおよびR
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2はNR
cであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環ヘテロシクロアルキルを形成し、R
cは、H、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1は-CR
aR
bであり、R
a、R
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、X2はNR
cであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環ヘテロシクロアルキルを形成し、R
cは、H、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよく、
式中、
R
3は、H、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルであり、
R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立にH、OR
3、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルから選択され、
R
9は、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10、NO
2、NR
11R
12、CN、C(=O)R
10、C(=O)OR
10、S(=O)CH
3から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1つまたは複数のハロゲンまたはC1-C10アルキルまたはOR
3で置換されていてもよく、
R
10は、H、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルであり、
R
11、R
12は、それぞれ独立にH、またはC1-C10アルキルから選択される)
から選択され、
水素キャリア化合物(C)のモルに化合物(C)の[Si-H]結合の数を掛けた値に対する、水素放出触媒Yのモルおよび任意に用いられてよい水素放出触媒Xのモルの合計の比が、0.3以下である、かつ/または
水素キャリア化合物(C)の質量に対する、水素放出触媒Yの質量および任意に用いられてよい水素放出触媒Xの質量の合計の比が、0.2以下である、水素を生成するための方法。
【請求項2】
水素キャリア化合物(C)のモルに化合物(C)の[Si-H]結合の数を掛けた値に対する、水素放出触媒Yのモルおよび任意に用いられてよい水素放出触媒Xのモルの合計の比が、0.005~0.3の範囲である、かつ/または
水素キャリア化合物(C)の質量に対する、水素放出触媒Yの質量および任意に用いられてよい水素放出触媒Xの質量の合計の比が、0.01~0.2の間に含まれる、請求項1に記載の水素を生成するための方法。
【請求項3】
水素キャリア化合物(C)のモルに化合物(C)の[Si-H]結合の数を掛けた値に対する、水素放出触媒Yのモルおよび任意に用いられてよい水素放出触媒Xのモルの合計の比が、0.01~0.1の範囲である、かつ/または
水素キャリア化合物(C)の質量に対する、水素放出触媒Yの質量および任意に用いられてよい水素放出触媒Xの質量の合計の比が、0.02~0.07の間に含まれる、請求項2に記載の水素を生成するための方法。
【請求項4】
化合物(C)が、式
【化2】
(式中、
Rは、結合、C1-C6アルキレンまたは(C
1-C
4アルキレン)q-Z-(C
1-C
4アルキレン)rであり、
Zは、O、NR
10、S(O)
y、CR
10=CR
10、C≡C、C6-C10アリーレン、5-10員環ヘテロアリーレン、またはC3-C6シクロアルキレンであり、
R
1、R
2は、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、NR
4R
5、SiR
6R
7R
8から選択され、前記アリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよく、
R
1’、R
2’は、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、NR
4R
5、SiR
6R
7R
8から選択され、前記アリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよく、
R
3は、H、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルであり、
R
4、R
5は、それぞれ独立にH、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルから選択され、
R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立にH、OR
3、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキル、SiH
3から選択され、
R
9は、ハロゲン、C1-C10アルキル、OR
10、NO
2、NR
11R
12、CN、C(=O)R
10、C(=O)OR
10、S(=O)CH
3から選択され、前記アルキル基は、1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよく、
R
10は、H、またはC1-C3アルキルであり、
R
11、R
12は、それぞれ独立にH、またはC1-C10アルキルから選択され、
q、rは、0または1であり、
yは、0、1または2であり、
m、nおよびpは、繰り返し単位の数を表す整数であり、nは1以上であり、pは0または1であり、mは0または1であり、
A、Bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、OSiR
6R
7R
8、NR
4R
5、SiR
6R
7R
8、CR
13R
14R
15から選択され、前記アリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよく、
R
13、R
14、R
15は、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、NR
4R
5、SiR
6R
7R
8から選択される)
の1つまたは複数のモノマー単位を含み、
化合物(C)が、少なくとも1つのSi-H基を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水素を生成するための方法。
【請求項5】
化合物(C)の式において、
p=0であり、m=1である、および/または
R
1がMeまたはHである、および/または
R
1がMeであり、nが1より大きくかつ15,000より小さく、好ましくは1,000より小さく、例えば20~500の間である、請求項4に記載の水素を生成するための方法。
【請求項6】
化合物(C)がポリヒドロメチルシロキサンである、請求項5に記載の水素を生成するための方法。
【請求項7】
化合物(C)が、式
【化3】
(式中、R
1は、Hであり、nは、1より大きい)
の1つまたは複数のモノマー単位を含む、請求項4または5に記載の水素を生成するための方法。
【請求項8】
化合物(C)の式において、A=SiMe
3、MeまたはSiH
3であり、B=OMe、OSiMe
3またはOSiH
3である、請求項4~7のいずれか1項に記載の水素を生成するための方法。
【請求項9】
化合物(C)が、式
【化4】
(式中、nは、1~30の間に含まれ、好ましくは2~20の間に含まれる)
の1つまたは複数のモノマー単位を含む、請求項4または5に記載の水素を生成するための方法。
【請求項10】
1つまたは複数のSi-H結合を含む水素キャリア化合物(C)を、水素放出触媒Yと接触させる工程であって且つ任意に水素放出触媒Xとも接触させてもよい前記工程を含む、水素を生成するための方法であって、水素放出触媒Yが、式
【化5】
(式中、YはOまたはSであり、
- X1、X2は、それぞれ独立にハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、SiR
6R
7R
8から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2は-CR
aR
bであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環シクロアルキルを形成し、R
a、R
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2はNR
aR
bであり、R
aおよびR
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1は、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、SiR
6R
7R
8から選択され、X2はNR
aR
bであり、R
aおよびR
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2はNR
cであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環ヘテロシクロアルキルを形成し、R
cは、H、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1は-CR
aR
bであり、R
a、R
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、X2はNR
cであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環ヘテロシクロアルキルを形成し、R
cは、H、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよく、
式中、
R
3は、H、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルであり、
R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立にH、OR
3、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルから選択され、
R
9は、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10、NO
2、NR
11R
12、CN、C(=O)R
10、C(=O)OR
10、S(=O)CH
3から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1つまたは複数のハロゲンまたはC1-C10アルキルまたはOR
3で置換されていてもよく、
R
10は、H、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルであり、
R
11、R
12は、それぞれ独立にH、またはC1-C10アルキルから選択される)
から選択され、
水素キャリア化合物(C)が、式(I)
【化6】
(式中、nは、3以上かつ500以下の整数である)
の1つまたは複数の単位を含むシロキサン水素キャリア化合物の中から選択され、
化合物(C)中の[SiOH
2]モノマー単位に対する{特許請求されている触媒Yおよび触媒X}の合計のモル比が、0.6以下である、水素を生成するための方法。
【請求項11】
化合物(C)中の[SiOH
2]モノマー単位に対する{特許請求されている触媒Yおよび触媒X}の合計のモル比が、0.01~0.5の範囲である、請求項10に記載の水素を生成するための方法。
【請求項12】
触媒の式中、YがOである、請求項1~11のいずれか1項に記載の水素を生成するための方法。
【請求項13】
触媒の式中、X1が-NR
aR
bである、請求項1~12のいずれか1項に記載の水素を生成するための方法。
【請求項14】
触媒の式中、X1およびX2が、どちらも-NRaRbから選択される、請求項1~13のいずれか1項に記載の水素を生成するための方法。
【請求項15】
触媒が、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、テトラメチル尿素、尿素、N,N-ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、またはそれらの混合物から選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載の水素を生成するための方法。
【請求項16】
触媒が担持されている、請求項1~15のいずれか1項に記載の水素を生成するための方法。
【請求項17】
化合物(C)が、式
【化7】
(式中、nは500より小さい)
の1つまたは複数のモノマー単位を含む、請求項1~5または請求項10~16のいずれか1項に記載の水素を生成するための方法。
【請求項18】
化合物(C)が、
【化8】
(式中、nは1以上かつ32以下の整数である)
である、請求項1~5または請求項10~16のいずれか1項に記載の水素を生成するための方法。
【請求項19】
水素キャリア化合物(C)を、特許請求されている水素放出触媒Yと接触させる工程が、触媒Xの非存在下で実行される、請求項1~18のいずれか1項に記載の水素を生成するための方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の水素を生成するための方法に使用できる水素放出触媒Yであって、式
【化9】
(式中、Yは、OまたはSであり、
- X1、X2は、それぞれ独立にハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、SiR
6R
7R
8から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2は-CR
aR
bであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環シクロアルキルを形成し、R
a、R
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2はNR
aR
bであり、R
aおよびR
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1は、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、SiR
6R
7R
8から選択され、X2はNR
aR
bであり、R
aおよびR
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2はNR
cであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環ヘテロシクロアルキルを形成し、R
cは、H、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1は-CR
aR
bであり、R
a、R
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、X2はNR
cであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環ヘテロシクロアルキルを形成し、R
cは、H、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよく、
式中、
R
3は、H、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルであり、
R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立にH、OR
3、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルから選択され、
R
9は、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10、NO
2、NR
11R
12、CN、C(=O)R
10、C(=O)OR
10、S(=O)CH
3から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1つまたは複数のハロゲンまたはC1-C10アルキルまたはOR
3で置換されていてもよく、
R
10は、H、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルであり、
R
11、R
12は、それぞれ独立にH、またはC1-C10アルキルから選択される)
から選択される、水素放出触媒Y。
【請求項21】
Si-H結合切断触媒である、請求項18に記載の水素放出触媒Y。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素キャリア化合物としてのシリル化誘導体から水素を生成する触媒プロセスに関する。本発明はまた、水素キャリア化合物としてのシリル化誘導体から水素を生成する触媒プロセスで使用される新規の水素放出触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を安全で好都合かつ環境にやさしい方法の供給源で貯蔵、輸送、放出する能力、および水素を効率的、経済的かつ安全に生成し貯蔵する能力は、エネルギー媒体としての水素の使用を普及させるために克服すべき主な難題である。
現在、水素は、パイプライン、圧縮ガスとしてチューブトレーラー、またはその液化した形状で特別なタンカーのいずれかによって主に輸送されている。
水素の輸送には、一般に以下の6つの経路がある:水素は、気体としてパイプラインで輸送でき、現場で生成でき、圧縮ガスとしてチューブトレーラーで輸送でき、凝縮液体として低温トラックで輸送でき、固体状態の水素キャリア材料として貯蔵して現場で放出でき、かつ液体状態の水素キャリア材料として貯蔵して現場で放出できる。
水素は、2つの手段によって現場で生成できる。水素は、1つのプロセスによって現場で生成して、他のプロセスで直接消費することができ、これは捕捉水素と定義されている。現場生成の他方の手段は水電解によるものであり、水および電気から水素を生成する。再生可能エネルギーによって電力供給する場合、水電解は環境にやさしい水素生成であると考えられる。
【0003】
低温で圧縮した水素という現在の輸送解決策に加えて、水素を供給するための代替の解決策が現れており、これが水素キャリアである。水素キャリアは、固体状態または液体状態の材料であり、水素を貯蔵して必要な時に放出する能力を有する。現在の解決策と比較して、水素キャリアは、輸送または貯蔵に利点をもたらす。固体状態のキャリアは、水素の取り込みを可能とする金属類似水素化物を含み、金属粒子に水素を吸着することによって金属水素化物が得られる。それらの中で、水素化マグネシウムは、低圧および標準温度で安定であり、それにより輸送および貯蔵が好都合なものとなっている。必要な時に、この材料を加熱して水素ガスを放出させる。固体状態による解決策は、再生可能エネルギーからエネルギーを貯蔵する同一現場での可逆プロセスにとって、最適なものとして認定されている。しかしながら実際は、固体材料の取扱いは、気体または液体材料の取扱いほど好都合ではない。
【0004】
液体の水素キャリアは、特定の条件下で水素を放出できる任意の液体状態の材料であってもよい。液体有機水素キャリア(LOHC)の類は、液体水素キャリアの中で最も代表的である。触媒反応であり、熱の形でエネルギーを要求する水素化というプロセスの間に、水素は、液体有機キャリアに化学結合する。典型的にキャリアは、不飽和炭化水素またはトルエンなどの芳香族炭化水素であるが、水素と反応してそれに対応する飽和炭化水素を生成し、標準温度および圧力で、液体状態で輸送される。LOHCに貯蔵される水素の量は、水素化プロセスの収率に依存するが、液体キャリアの質量当たりに含有される水素の7.2質量%までである。次いで水素は、脱水素化と称するプロセス(これは触媒反応である)によって飽和炭化水素から放出されるが、これには熱の形態で追加のエネルギーが必要である。必要に応じた水素を生成するために、熱が電力系統から生成されることがあり(その供給源および環境への影響の制御なしで)、または熱は、有機キャリアの一部を燃焼することによって回収されることがある。
特許出願WO第2010070001(A1)号およびEP第2206679(A1)号は、a)1つまたは複数のSi-H基を含む化合物(C)を、フッ素イオン供給源と反応させ、それにより水素および副生成物(C1)を生成する工程と、b)得られた水素を回収する工程を含む、水素を生成するための方法に関する。
【0005】
特許出願WO第2011098614(A1)号は、i)1つまたは複数のSi-H基を含む化合物(C)を、溶媒として水中で、塩基が存在する状態でリン酸ベース触媒と接触させ、それにより水素および副生成物(C1)を生成する工程と、ii)得られた水素を回収する工程を含む、水素を生成するための方法に関する。
特許出願WO第2010094785(A1)号は、i)1つまたは複数のSi-H基を含む化合物(C)を、アルコールまたは水溶液から選択される溶媒中で、アミンベース触媒と接触させ、それにより水素および副生成物(C1)を生成する工程と、ii)得られた水素を回収する工程を含む、水素を生成するための方法に関する。
WO2011098614(A1)とWO2010094785(A1)はどちらも、必要に応じた水素を放出する水素ベースキャリア系の分野における大きな進歩を既に代表しているが、前記技術は、改良された効率性、性能および費用効果によってなお利益が得られる。
【発明の概要】
【0006】
したがって、水素輸送および水素インフラの建設などの様々な用途に向けて、そのようなクリーンエネルギー媒体の効率性、性能、および費用効果をさらに改良する必要性が残されている。輸送すべきより多量の水素と、向上された効率性と、向上された性能とを示し、費用効果的である改良の必要性が残されている。追加のエネルギーを必要とせず、必要に応じて水素を放出でき、環境にやさしい液体状態の水素キャリアの重大な必要性が残されている。さらに、水素キャリアが、貴重な水素供給源として使用されるだけではなく、炭素を含有する反応物を要さずに、および/または炭素を放出せずに生成でき、かつ環境にやさしく、実質的な炭素放出なしに、好ましくは炭素放出しない水素分離の副生成物から再生産できる、統合的でクリーンなプロセスの必要性が残されている。
【0007】
<発明>
現在、新規の触媒を使用することによって、高収率で、非常に短時間および非常に安価な生成費用で、水素を大量に生成できることが発見された。さらに、この方法は、容易にスケールアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】水素キャリア化合物としてのPHMSと触媒の性質に応じた時間の関数としての、系における相対圧力の増加を示す。
【
図2】水素キャリア化合物としてのフェニルシランと触媒の性質に応じた時間の関数としての、系における相対圧力の増加を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<水素を生成するための方法>
したがって、一態様において、本発明は、1つまたは複数のSi-H結合を含む水素キャリア化合物(C)を、水素放出触媒Yおよび(触媒Yとは異なる)任意の水素放出触媒Xと接触させることにある工程を含む、水素を生成するための方法であって、水素放出触媒Yが、式
【化1】
(式中、Yは、OまたはSであり、
- X1、X2は、それぞれ独立にハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、SiR
6R
7R
8から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2は-CR
aR
bであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環シクロアルキルを形成し、R
a、R
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2はNR
aR
bであり、R
aおよびR
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1は、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、SiR
6R
7R
8から選択され、X2はNR
aR
bであり、R
aおよびR
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
【0010】
- X1およびX2はNRcであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR9基で置換されていてもよい3~10員環ヘテロシクロアルキルを形成し、Rcは、H、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR9基で置換されていてもよい、
または
- X1は-CRaRbであり、Ra、Rbは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR10から選択され、X2はNRcであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR9基で置換されていてもよい3~10員環ヘテロシクロアルキルを形成し、Rcは、H、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR9基で置換されていてもよく、
式中、
R3は、H、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルであり、
R6、R7、R8は、それぞれ独立にH、OR3、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルから選択され、
R9は、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR10、NO2、NR11R12、CN、C(=O)R10、C(=O)OR10、S(=O)CH3から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1つまたは複数のハロゲンまたはC1-C10アルキルまたはOR3で置換されていてもよく、
R10はH、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルであり、
R11、R12は、それぞれ独立にH、またはC1-C10アルキルから選択される)
から選択され、
水素キャリア化合物(C)のモルに化合物(C)の[Si-H]結合の数を掛けた値に対する、水素放出触媒Yのモルおよび任意の水素放出触媒Xのモルの合計の比が、0.3以下であり、例えば0.005~0.3の範囲、好ましくは0.01~0.1、より好ましくは0.05より低く、例えば0.03に等しく、かつ/または
水素キャリア化合物(C)の質量に対する、水素放出触媒Yの質量および任意の水素放出触媒Xの質量の合計の比が、0.2以下、好ましくは0.01~0.2の間に含まれ、より好ましくは0.02~0.07の間に含まれる、方法を対象とする。
【0011】
この理論に縛られることは望まないが、出願人らは、水素放出触媒Y(および任意の水素放出触媒X)の量/モルを、特許請求されている比のレベルより低く維持することが重大であると考えており、実際、出願人らは、触媒/化合物(C)の比がこれよりも高い比で使用された場合、水素放出触媒の効果が逆転する恐れがあり、すなわち触媒をある種の阻害剤に変換させる恐れがあることを発見した。
【0012】
本発明の一実施形態において、触媒Yは、上記式
【化2】
(式中、Yは、Oであり、X1およびX2は、上記の通りである)
から選択される。
本発明の一実施形態において、触媒Yは、上記式
【化3】
(式中、X1は、-NR
aR
bであり、X2およびYは、上記の通りであり、Yは、好ましくはOである)
から選択される。
本発明の一実施形態において、触媒Yは、上記式
【化4】
(式中、X1およびX2はどちらも-NR
aR
bから選択され、Yは、OまたはSであり、Yは、好ましくはOである)
から選択される。
【0013】
本発明の特定の実施形態において、触媒Yは、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、テトラメチル尿素、尿素、N,N-ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、またはそれらの混合物から選択され、DMPUおよびテトラメチル尿素が、特に好ましい。
本発明の一実施形態において、触媒Yは担持されており、例えば、無機支持体、または例えば官能性ポリスチレン樹脂、すなわちDOWEX樹脂などのポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)マトリックスなどのポリマー支持体上に、有利には担持されてもよい。
【0014】
<水素放出触媒Y>
本発明の一実施形態において、本発明は、水素放出触媒Yであって、1つまたは複数のSi-H結合を含む水素キャリア化合物(C)が前記触媒と接触する際に、水素を生成するための方法に使用することができ、前記触媒が、式
【0015】
【化5】
(式中、Yは、OまたはSであり、
- X1、X2は、それぞれ独立にハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、SiR
6R
7R
8から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2は-CR
aR
bであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環シクロアルキルを形成し、R
a、R
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2はNR
aR
bであり、R
aおよびR
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1は、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、SiR
6R
7R
8から選択され、X2はNR
aR
bであり、R
aおよびR
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1およびX2はNR
cであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環ヘテロシクロアルキルを形成し、R
cは、H、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよい、
または
- X1は-CR
aR
bであり、R
a、R
bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、X2はNR
cであり、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1~3個のR
9基で置換されていてもよい3~10員環ヘテロシクロアルキルを形成し、R
cは、H、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよく、
式中、
R
3は、H、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルであり、
R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立にH、OR
3、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルから選択され、
R
9は、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
10、NO
2、NR
11R
12、CN、C(=O)R
10、C(=O)OR
10、S(=O)CH
3から選択され、前記アルキルおよびアリール基は、1つまたは複数のハロゲンまたはC1-C10アルキルまたはOR
3で置換されていてもよく、
R
10は、H、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルであり、
R
11、R
12は、それぞれ独立にH、またはC1-C10アルキルから選択される)
から選択される、水素放出触媒Yを対象とする。
【0016】
本発明の一実施形態において、水素放出触媒Yは、上記式
【化6】
(式中、Yは、Oであり、X1およびX2は、上記の通りである)
から選択される。
本発明の一実施形態において、水素放出触媒Yは、上記式
【化7】
(式中、X1は、-NR
aR
bであり、X2およびYは、上記の通りであり、Yは、好ましくはOである)
から選択される。
【0017】
本発明の一実施形態において、水素放出触媒Yは、上記式
【化8】
(式中、X1およびX2は、どちらも-NR
aR
bから選択され、Yは、OまたはSであり、Yは、好ましくはOである)
から選択される。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、水素放出触媒Yは、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、テトラメチル尿素、N,N-ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、またはそれらの混合物から選択され、DMPUおよびテトラメチル尿素が、特に好ましい。
本発明の一実施形態において、水素放出触媒Yは担持されており、例えば無機支持体、または例えば官能性ポリスチレン樹脂、すなわちDOWEX樹脂などの、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)マトリックスなどのポリマー支持体上に、有利には担持されてもよい。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、特許請求されている水素放出触媒Yは、水素を生成するための方法で使用される際、1つまたは複数のSi-H結合を含む水素キャリア化合物(C)と接触する間に、Si-H結合の切断を支援するので、前記触媒は、好ましくは水素放出およびSi-H結合切断触媒である。
【0020】
本発明の一実施形態において、特許請求されている水素放出触媒Yは、求核剤であり、例えば、前記求核剤は、化合物(C)のその(または1つの)Si原子に配位し、その(1つの)Si-H結合が弱い五配位中間体を形成して、それによってよりプロトン供給源と反応しやすくなってH2断片を遊離する。
本発明の一実施形態において、特許請求されている水素放出触媒Yは、相間移動剤であり、例えば、触媒は、親油性化合物(C)と、例えば水素放出開始剤を含有する水相との接触を支援する。
本発明の好ましい実施形態において、特許請求されている水素放出触媒Yは、求核剤でありかつ相間移動剤である。
<1つまたは複数のSi-H結合を含む水素キャリア化合物(C)>
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、少なくとも1つのSi-H結合を含む、例えば少なくとも2つのSi-H結合を含む。
【0021】
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、式
【化9】
(式中、
Rは、結合、C
1-C
6アルキレンまたは(C
1-C
4アルキレン)q-Z-(C
1-C
4アルキレン)rであり、
Zは、O、NR
10、S(O)
y、CR
10=CR
10、C≡C、C6-C10アリーレン、5~10員環ヘテロアリーレン、またはC3-C6シクロアルキレンであり、
R
1、R
2は、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、NR
4R
5、SiR
6R
7R
8から選択され、前記アリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよく、
R
1’、R
2’は、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、NR
4R
5、SiR
6R
7R
8から選択され、前記アリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよく、
R
3は、H、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルであり、
R
4、R
5は、それぞれ独立にH、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキルから選択され、
R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立にH、OR
3、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、C6-C12アラルキル、SiH
3から選択され、
R
9は、ハロゲン、C1-C10アルキル、OR
10、NO
2、NR
11R
12、CN、C(=O)R
10、C(=O)OR
10、S(=O)CH
3から選択され、前記アルキル基は、1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよく、
R
10は、H、またはC1-C3アルキルであり、
R
11、R
12は、それぞれ独立にH、またはC1-C10アルキルから選択され、
q、rは、0または1であり、
yは、0、1または2であり、
m、nおよびpは、繰り返し単位の数を表す整数であり、nは1以上であり、pは0または1であり、mは0または1であり、
A、Bは、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、OSiR
6R
7R
8、NR
4R
5、SiR
6R
7R
8、CR
13R
14R
15から選択され、前記アリール基は、1~3個のR
9基で置換されていてもよく、
R
13、R
14、R
15は、それぞれ独立にH、ハロゲン、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、C6-C12アラルキル、5~10員環ヘテロアリール、OR
3、NR
4R
5、SiR
6R
7R
8から選択される)
の1つまたは複数のモノマー単位を含み、
化合物(C)は、少なくとも1つのSi-H結合を含む、例えば少なくとも2つのSi-H結合を含む。
【0022】
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、上記式
【化10】
(式中、p=0であり、m=1である)
の1つまたは複数のモノマー単位を含む。
【0023】
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、上記式
【化11】
(式中、R
1=Me(メチル基)またはHであり、R
1’はHであり、好ましくは式中、p=0であり、m=1である)
の1つまたは複数のモノマー単位を含む。
【0024】
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、上記式
【化12】
(式中、R
1はMeであり、nは1より大きく15,000より小さく、好ましくは1,000より小さく、例えば20~500の間である。好ましい実施形態において、A=SiMe
3、MeまたはSiH
3であり、B=OMe、OSiMe
3またはOSiH
3である)
の1つまたは複数のモノマー単位を含む。
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、ポリヒドロメチルシロキサンである。
【0025】
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、式
【化13】
(式中、好ましくは、R
1はHであり、nは1より大きい。本発明の対応する好ましい実施形態において、nは1以上であり、R
1はHであり、A=SiMe
3、MeまたはSiH
3であり、B=OMe、OSiMe
3またはOSiH
3である)
の1つまたは複数のモノマー単位を含む。
【0026】
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、式
【化14】
(式中、nは、好ましくは500より小さい)
の1つまたは複数のモノマー単位を含む。
【0027】
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、上記式
【化15】
(式中、m=p=0であり、R
1およびR
1’はHであり、nは1より大きくかつ1,000より小さく、好ましくは100より小さく、例えば1~20の間である。好ましい実施形態において、A=B=SiMe
3、MeまたはSiH
3であり
、好ましくはSiH
3である)
の1つまたは複数のモノマー単位を含む。
【0028】
本発明の他の実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、式
【化16】
(式中、nは、1~30の間に含まれ、好ましくは2~20の間に含まれる)
の1つまたは複数のモノマー単位を含む。
【0029】
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、上記式
【化17】
(式中、m=p=0であり、R
1およびR
1’は-SiR
3であり、RはHまたはSiH
3であり、nは1より大きくかつ1,000より小さく、好ましくは100より小さく、例えば1~10の間である。好ましい実施形態において、A=B=SiMe
3、MeまたはSiH
3であり、好ましくはSiH
3である)
の1つまたは複数のモノマー単位を含む。
本発明の他の実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、式
【化18】
(式中、nは、2~10の間に含まれ、好ましくは2~4の間に含まれる)
の1つまたは複数のモノマー単位を含む。
【0030】
本発明のさらなる実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、環式である。前記実施形態において、nは、2以上であり、好ましくは3以上であり、例えばポリシランまたはポリシロキサンなどの、例えば4以上であり、この繰り返し単位の数nは、通常500以下であり、対応する好ましい実施形態において、nは、4以上かつ32以下の整数である。
本発明の他の実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、先に定義したシランおよび/またはシロキサン水素キャリア化合物のいずれかの2つ以上の混合物、すなわち直鎖状化合物の混合物、環式化合物の混合物および/または直鎖状および環式化合物の配合物からなる。
【0031】
先に既に指摘したように、出願人らは、水素放出触媒Y(および任意の水素放出触媒X)の量/モルを、上記の特許請求されている比のレベルより低く維持することが重要であると考えている。水素キャリア化合物(C)の繰り返しSi単位(例えばH2SiまたはH2SiO)の数が4以上である場合、すなわち対応する水素キャリア化合物(C)がポリマーとしてみなされ得る場合、本発明はまた、当業者にこの後説明する代替の計算を提供する。実際に、水素キャリア化合物(C)が4つ以上の繰り返しSi単位を示すポリマーである場合に特に適用可能な他の代替の実施形態において、上記の比は、{ポリマーの繰り返しSi単位のモルに繰り返し単位あたりのSi-H結合の数を掛けた値、および鎖末端のモルにその対応する鎖末端のSi-H結合の数を掛けた値の}合計に対する、上記と同一の{水素放出触媒Yのモルおよび任意の水素放出触媒Xのモルの}合計、である他の比によって置き換えることができ、前記比は0.005~0.3の範囲であり、好ましくは0.01~0.1である。
【0032】
例えば、構造がA-(X)
η-Aであり、平均分子量が(Mn)g/molであるポリマーでは、計算は、[ポリマー]×(2xy+ηxz)=(m
ポリマー/Mn)×(2xy+ηxz)であり、[ポリマー]は、ポリマー鎖のモルの量であり、yは、鎖末端あたりのSi-H結合の数であり、zは、繰り返し単位あたりのSi-H結合の数であり、ηは、ポリマー鎖あたりの繰り返し単位の平均数である。
したがって、本発明の他の態様において、1つまたは複数のSi-H結合を含む水素キャリア化合物(C)を、水素放出触媒Yおよび(触媒Yとは異なる)任意の水素放出触媒Xと接触させることにある工程を含み、水素放出触媒Yが、式
【化19】
(式中、Y、X1およびX2は、先に定義した通りである)
から選択され、{ポリマーの繰り返し単位のモルに繰り返し単位あたりのSi-H結合の数を掛けた値、および鎖末端のモルにその対応する鎖末端のSi-H結合の数を掛けた値の}合計に対する、{水素放出触媒Yのモルおよび任意の水素放出触媒Xのモルの}合計の比が、0.005~0.3の範囲であり、好ましくは0.01~0.1である、水素を生成するための方法が提供される。
【0033】
<シロキサン水素キャリア化合物>
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、式(I)
【化20】
(式中、nは、1以上の(繰り返し単位の数を表す)整数であり、好ましくは2以上であり、例えば3以上、または4以上である。本発明の一実施形態において、nは、500以下であり、例えば50以下である。本発明の一実施形態において、nは、4以上かつ32以下である)
の1つまたは複数の単位を含むシロキサン水素キャリア化合物である。
本発明による一実施形態において、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物は、環式または直鎖状の化学構造を示す。
【0034】
本発明の一実施形態において、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物は、直鎖状化合物であり、例えば式ROH2nSinOnR’の直鎖状化合物であり、nは、1以上の整数であり、好ましくは2以上であり、例えば3以上、または4以上であり、RおよびR’は、先に定義した通りAおよびBの中から有利に選択することができ、H、Me、Et、Pr、iPr、Bu、tBu、Ph、SiH3、SiMe3、SiMe2H、SiMeH2、SiEt3、およびSiPh3であり、好ましくはMe、SiMe3またはSiH3である。本発明の一実施形態において、nは、500以下であり、例えば20以下である。
【0035】
本発明による一実施形態において、水素キャリア化合物(C)(例えばシロキサン水素キャリア化合物)は、炭素原子を含有しない。しかし、本発明および添付の特許請求の範囲のために、かつ本発明の範囲を不都合に制限することを避けるため、出願人らは、“実質的な炭素放出なしに”という表現を使用して、若干の炭素放出を許容した。例えば、本発明の水素キャリア化合物(C)は、前記化合物(C)の対応する炭素含有量が、25質量%より低い限りにおいて、炭素を含んでもよい。前記炭素含有量は、水素キャリア化合物(C)に含有されるすべての炭素原子の分子量(g/mol)と水素キャリア化合物(C)の合計分子量(g/mol)の比を実行することによって計算できる。本発明による一実施形態において、炭素含有量は、10質量%より低く、好ましくは5質量%より低く、例えば2質量%より低く、またはより好ましくは0質量%に等しい。
【0036】
本発明による1つの好ましい実施形態において、
- 水素キャリア化合物(C)(例えば上記のシランおよび/またはシロキサン水素キャリア化合物)が炭素を含有しない場合、炭素は放出されず、
- 水素キャリア化合物(C)(例えば上記のシランおよび/またはシロキサン水素キャリア化合物)が炭素を含有する場合、対応する炭素放出は、生成および/または再利用化合物(C)(例えば上記のシランおよび/またはシロキサン水素キャリア化合物)1kgあたり、0.924kg未満のCO2であり、好ましくは0.462未満、より好ましくは0.231未満であり、例えば0.1未満または0.05kg未満のCO2である。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、水素キャリア化合物(C)(例えば上記のシランおよび/または式(I)のシロキサン水素キャリア化合物)は、環式化合物であり、例えば式H2nSinまたはH2nSinOnの環式化合物であり、nは、2以上の整数であり、例えば3以上、または4以上である。本発明の一実施形態において、nは、500以下であり、例えば32以下である。本発明の一実施形態において、nは、4以上かつ32以下である。
本発明のさらなる実施形態において、式(I)の水素キャリア化合物(C)は、環式である。
【0038】
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)は、下記式(II)
【化21】
(式中、nは、1以上の整数(繰り返し単位の数を表す)であり、好ましくは2以上、例えば3以上、または4以上である。本発明の一実施形態において、式(II)において、nは、32以下、例えば17以下である。本発明の一実施形態において、式(II)において、nは、2以上かつ17以下である)
によって表される。
本発明の一実施形態において、シロキサン水素キャリア化合物(C)は、先に定義した式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物のうちの1つからなる。
本発明の他の実施形態において、シロキサン水素キャリア化合物(C)は、先に定義した式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物のいずれかの、2つ以上の混合物からなる。
【0039】
一実施形態において、混合物は、
- 先に定義した式(I)または式(II)の環式シロキサン水素キャリア化合物のいずれか、または
- 先に定義した式(I)の直鎖状シロキサン水素キャリア化合物のいずれか
の2つ以上の混合物からなる。
一実施形態において、混合物は、1つまたは複数の先に定義した式(I)および/または式(II)の環式シロキサン水素キャリア化合物と、1つまたは複数の先に定義した式(I)の直鎖状シロキサン水素キャリア化合物との配合物からなる。この配合物の“混合物”の実施形態において、式(I)の直鎖状シロキサン水素キャリア化合物が、混合物の質量において主な種を表す場合(すなわち50質量パーセント超を表す)、環式シロキサン水素キャリア化合物の量を、20質量パーセント未満に制限することが有利であり、例えば混合物において10質量パーセント未満であり、一実施形態において、0.01質量パーセント超、または0.1質量パーセント超の環式シロキサン水素キャリア化合物が、前記混合物において有利に存在できる。
【0040】
この配合物の“混合物”の実施形態において、環式シロキサン水素キャリア化合物が、混合物の質量において主な種を表す(すなわち50質量パーセント超を表す)場合、式(I)の直鎖状シロキサン水素キャリア化合物の量を、20質量パーセント未満に制限することが有利であり、例えば混合物において10質量パーセント未満であり、0.01質量パーセント、または0.1質量パーセントの式(I)の直鎖状シロキサン水素キャリア化合物が、前記混合物において有利に存在できる。
【0041】
本発明による一実施形態において、水素キャリア化合物(C)(例えば式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物)は、20℃の温度および1.01325×105Paの圧力下で、0.1~10,000mPa.sの間の動的粘性率を示す。本発明による一実施形態において、化合物(C)(例えば式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物)は、20℃の温度および1.01325×105Paの圧力下で、0.2~50mPa.sの間の動的粘性率を示す。化合物(C)(例えば式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物)の20℃の温度および1.01325×105Paの圧力下での動的粘性率は、任意の適切な方法によって計測でき、例えば、ISO 1628-1の規準によって測定できる。
本発明による一実施形態において、環式水素キャリア化合物(C)(例えば式(I)または式(II)の環式シロキサン水素キャリア化合物)の分子量は、130~1480g/molの範囲であってもよい。化合物(C)(例えば式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物)の分子量は、任意の適切な方法によって計測でき、例えば、Agilent GC/MSD 5975C装置で実行するGC-MS分析などのGC-MSによって測定できる。
【0042】
本発明による一実施形態において、直鎖状水素キャリア化合物(C)(例えば式(I)の直鎖状シロキサン水素キャリア化合物)の数平均分子量(Mn)および/または分子量分布(D)は、それぞれ64~1,000,000g/molおよび1.1~50の範囲であってもよい。化合物(C)(例えば式(I)の直鎖状シロキサン水素キャリア化合物)の平均分子量および分子量分布は、任意の適切な方法によって計測でき、例えば、ISO 16014の規準によって測定できる。
本発明による一実施形態において、環式水素キャリア化合物(C)(例えば式(I)または式(II)の環式シロキサン水素キャリア化合物)は、FT-IRで分析する場合、SiH2単位に対応する800~1,000cm-1の間に、強く鋭い特性吸収帯を示す。本発明による一実施形態において、環式化合物(C)(例えば式(I)または式(II)の環式シロキサン水素キャリア化合物)は、850~950cm-1の間に、強く鋭い特性吸収帯を示す。
【0043】
本発明による一実施形態において、環式水素キャリア化合物(C)(例えば式(I)または式(II)の環式シロキサン水素キャリア化合物)は、CDCl3中、25℃で1H NMRによって分析する場合、SiH2O単位に対応する4.5~4.9ppmの間に、特性共鳴を示す。1H NMR分析は、例えば400MHz Bruker分光計などの、任意の適切な分光計で実行することができる。
本発明による一実施形態において、環式水素キャリア化合物(C)(例えば式(I)または式(II)の環式シロキサン水素キャリア化合物)は、CDCl3中、25℃で29Si NMRによって分析する場合、SiH2O単位に対応する-45~-50ppmの間に、特性共鳴を示す。29Si NMR分析は、例えば400MHz Bruker分光計などの、任意の適切な分光計で実行することができる。
【0044】
本発明による一実施形態において、水素キャリア化合物(C)(例えば式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物)は、20℃の温度および589nmの波長で、1~2の間の屈折率を示す。本発明による一実施形態において、化合物(C)(例えば式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物)は、20℃の温度および589nmの波長で、1.2~1.5の間の屈折率を示す。化合物(C)(例えば式(I)のシロキサン水素キャリア化合物)の屈折率は、任意の適切な方法によって計測でき、例えば、ASTM D1218の規準によって測定できる。
本発明による一実施形態において、水素キャリア化合物(C)(例えば式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物)は、1.01325×105Paの圧力下で、50~500℃の間の沸点を示し、例えば沸点は、50~150℃の間の沸点に含まれる。化合物(C)(例えば式(I)のシロキサン水素キャリア化合物)の沸点は、任意の適切な方法によって計測でき、例えば、ISO 918の規準によって測定できる。
【0045】
本発明による一実施形態において、水素キャリア化合物(C)(例えば式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物)は、50~500℃の間の引火点を示す。化合物(C)(例えば式(I)のシロキサン水素キャリア化合物)の引火点は、任意の適切な方法によって計測でき、例えば、ISO 3679の規準によって測定できる。
本発明による一実施形態において、水素キャリア化合物(C)(例えば式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物)は、(20℃の温度および1.01325×105Paの絶対圧で)液体である。
【0046】
本発明のさらなる実施形態において、水素キャリア化合物(C)(例えば液体シランおよび/またはシロキサン水素キャリア化合物)は、炭素を含有する反応物を要さず、かつ/または実質的な炭素放出なしに、好ましくは炭素放出なしに、シリカ化合物および/またはシリケート化合物から生成できることが発見された。
本発明によるシリカ化合物は、シリカを含有する化合物、および/または2つ以上の前記シリカを含有する化合物の混合物として定義できる。
本発明による一実施形態において、シリカ化合物は、
- 一般式SiO2,xH2Oのシリカ化合物、
- [SiO2]n(式中、nは2以上である)、または
- 前記シリカ化合物の2つ以上の混合物
から選択される。
本発明によるシリケート化合物は、シリケートを含有する化合物、および/または2つ以上の前記シリケートを含有する化合物の混合物として定義できる。
【0047】
本発明による一実施形態において、シリケート化合物は、
- 一般式Na2xSiO2+xまたはK2xSiO2+x(式中、xは、0~2の間に含まれる整数である)のケイ酸ナトリウム化合物またはケイ酸カリウム化合物、または
- 一般式[SiOx(OH)4-x]x-(式中、xは、0~4の間に含まれる整数である)のシリケート化合物、または一般式[SiOx(OH)4-2x]n(n=1の場合、x=0または1であり、n=2の場合、x=1/2または3/2である)のシリケート化合物、または
- (Si2O7)6-の構造の二ケイ酸イオン、または、一般式[SiO3
2-]n、[Si4O11
6-]nもしくは[Si2O5
2-]n(式中、nは2以上である)のマクロアニオンなどのポリマー構造を有するシリケート化合物、または
- 2つ以上の前記シリケート化合物の混合物
から選択される。
水素キャリア化合物(C)は、炭素を含有する反応物を要さず、かつ/または実質的な炭素放出なしに、好ましくは炭素放出なしに再生させることができることも発見された。
本発明の特定の生成/再生プロセスの最も重要な利点は、プロセスを継続的に適用できる可能性にあり、そのような継続的プロセスは、後に説明する通り、原材料を投入することを要さず、かつ/または副生成物を放出せずに操作することもできる。
【0048】
いくつかの水素キャリア化合物(C)を使用することによって、
- 大量に、高収率で、非常に短時間かつ非常に安価な生成費用で、放出されるエネルギーを投入せずに水素を生成できること、および
- エネルギーを貯蔵すること、および水素生成で発する副生成物を再利用することによって、実質的な炭素放出なしに、好ましくは炭素放出なしに、前記水素キャリア化合物(C)を生成できること
も発見された。
【0049】
<水>
本発明の一実施形態において、1つまたは複数のSi-H結合(すなわち水素キャリア化合物)を含む水素キャリア化合物(C)を、特許請求されている水素放出触媒Yと(任意の触媒Xとともに)接触させることにある工程を含む、特許請求されている水素を生成するための方法は、接触させる工程が、水が存在する状態で実行されることを特徴とする。したがって、本発明はまた、水素キャリア化合物(C)および水の混合物を含む水素キャリア反応混合物に関する。水は、例えば真水、流水、水道水、塩水、脱イオン化水および/または蒸留水などの、様々な供給源から有利に選択できる。
本発明の一実施形態において、化合物(C)および水の前記混合物は、0.05以上である、化合物(C)のモルに化合物(C)の[Si-H]結合の数を掛けた値に対する水のモルの比によって特徴づけられ、前記比は、好ましくは1~2.5の間に含まれる。
【0050】
化合物(C)が、繰り返しSi単位を示すポリマーである場合に特に適用可能な他の実施形態において、上記の比は、{ポリマーの繰り返し単位のモルに繰り返し単位あたりSi-H結合の数を掛けた値、および鎖末端のモルにその対応する鎖末端のSi-H結合の数を掛けた値の}合計に対する、上記と同一の水のモルである他の比に置き換わり、前記比は、0.05以上であり、好ましくは1~2.5の間に含まれる。
例えば、構造が、A-(X)η-Aであり、および平均分子量が、(Mn)g/molであるポリマーでは、計算は、[ポリマー]×(2xy+ηxz)=(mポリマー/Mn)×(2xy+ηxz)であり、[ポリマー]は、ポリマー鎖のモルの量であり、yは、鎖末端あたりのSi-H結合の数であり、zは、繰り返し単位あたりのSi-H結合の数であり、ηは、ポリマー鎖あたりの繰り返し単位の平均数である。
例えば、フェニルシラン(Ph-SiH3)では、3個のSi-H結合が化合物中に存在し、したがって対応する水/[Si-H]結合フェニルシラン混合物は、比H2O/[Si-H]結合フェニルシラン=nH2O/(3×nフェニルシラン)=(mH2O/MH2O)/(3×mフェニルシラン/Mフェニルシラン)=(mH2O/18)/(3×mフェニルシラン/108,22)として計算されるモル比の値によって特徴づけられ、mは、グラム単位での化合物の質量であり、Mは、グラム毎モルでの分子量である。
【0051】
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)が、上記の式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物である場合、前記化合物(C)および水の対応する混合物は、0.1以上である水/[SiOH2]単位のモル比によって特徴づけられる。本発明の一実施形態において、前記化合物(C)および水の前記混合物は、2~5の間に含まれ、例えば2~2.5の間に含まれる水/[SiOH2]単位のモル比によって特徴づけられる。
例えば、ポリヒドロシロキサン“PHS”では、対応する水/PHSの混合物は、比H2O/PHS=(mH2O/MH2O)/(mPHS/MSiH2O)=(mH2O/18)/(mPHS/46.11)として計算されるモル比の値によって特徴づけられる。
【0052】
<水素放出開始剤>
本発明の一実施形態において、1つまたは複数のSi-H結合を含む水素キャリア化合物(C)を、特許請求されている水素放出触媒Y(および任意の触媒X)と接触させることにある工程を含む、特許請求されている水素を生成するための方法は、接触させる工程が、少なくとも1つの(特許請求されている水素放出触媒Yとは異なる)水素放出開始剤および任意で、好ましくは水が存在する状態で実行されることを特徴とする。したがって、本発明はまた、化合物(C)と、少なくとも1つの水素放出開始剤と、任意で水との混合物を含む水素キャリア反応混合物に関する。本発明によって使用できる水素放出開始剤の種類に関して、水素放出開始剤が、化合物(C)のSi-H結合の切断を支援する限りにおいて制限はない(例えば水素キャリア化合物(C)の[例えば式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の]加水分解性の酸化であり、したがってシラン/シロキサン反応によって対応する水素が放出される)。例えば、Si-H結合の切断を支援する任意の化合物が、水素放出開始剤として有利に使用できる。
【0053】
本発明による一実施形態において、水素放出開始剤は、下記のリストの1つまたは複数の化合物の中から選択される。
- 無機塩基。例えば、無機塩基は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムなどの、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物でもよく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
- シロキサン水素キャリア化合物の加水分解性酸化を実行することができる求核剤を放出できる化合物であり、例えば、式RR’R’’R’’’ZYの化合物(式中、Zは、NまたはPであり、Yは、OH、F、ClまたはBrであり、R、R’、R’’およびR’’’は、C1-C15アルキルまたはC6-C10アリールから有利に選択でき、R、R’、R’’、R’’’は同一または異なる)。
- 強酸であり、例えば純粋な酸性溶液(例えばH2SO4)または例えば塩酸水溶液などの無機酸水溶液。
本発明の一実施形態において、水素キャリア化合物(C)(例えばシランまたはシロキサン)、水素放出開始剤、特許請求されている水素放出触媒Yおよび任意の触媒X、および好ましくは水を含む水素放出反応混合物は、0.005以上、好ましくは0.02~0.5の間に含まれる、水素キャリア化合物(C)のモルに化合物(C)の[Si-H]結合の数を掛けた値に対する水素放出開始剤のモルの比によって特徴づけられる。
【0054】
本発明の他の実施形態において、水素キャリア化合物(C)が、上記の式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物である場合、前記シロキサン水素キャリア化合物、水素放出開始剤、特許請求されている水素放出触媒Yおよび任意の触媒X、および好ましくは水を含む水素放出反応混合物は、0.01以上である、水素放出開始剤/[SiOH2]単位のモル比によって特徴づけられる。本発明の一実施形態において、前記水素放出反応混合物は、0.05~1の間に含まれる、水素放出開始剤/[SiOH2]単位のモル比によって特徴づけられる。
【0055】
<任意の水素放出触媒X>
本発明の一実施形態において、1つまたは複数のSi-H結合を含む水素キャリア化合物(C)を、特許請求されている水素放出触媒Yと接触させることにある工程を含む特許請求されている水素を生成するための方法は、接触させる工程が、(特許請求されている水素放出触媒Yとは異なる)追加の水素放出触媒X、および任意で、好ましくは、少なくとも1つの水素放出開始剤および/または水が存在する状態で実行されることを特徴とする。したがって、本発明はまた、水素キャリア化合物(C)(例えば上記のシランおよび/または式(I)のシロキサン水素キャリア化合物)と(好ましくは後に定義する通りの)追加の水素放出触媒Xと、任意で、好ましくは、水および/または先に定義した通りの水素放出開始剤の混合物とを含む水素キャリア反応混合物に関する。本発明によって使用できる触媒Xの種類に関して、触媒Xが、Si-H結合の切断(例えば上記のシランおよび/または式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の加水分解性の酸化)の速度論(すなわち水素が放出される速度)をさらに増加させる限りにおいて制限はなく、したがって水/シロキサン/水素放出開始剤/特許請求されている水素放出触媒Y/触媒Xの反応によって、対応する水素が放出される。例えば、シラン/シロキサンの加水分解性の酸化の速度論を大幅に増加させる任意の化合物が、触媒Xとして有利に使用できる。
本発明による一実施形態において、追加の触媒Xは、下記のリストの1つまたは複数の化合物の中から選択される。
- リン酸ベース触媒(例えば1つまたは複数のリン酸基を担うポリマー担持触媒)。
- アミンベース触媒(例えば1つまたは複数のアミン基を担うポリマー担持触媒)、またはアンモニウム塩、例えばRR’R’’R’’’NOH(式中、R、R’、R’’、R’’’は、C1-C15アルキルまたはC6-C10アリールであり、R、R’、R’’、R’’’は、同一または異なる);および
- ヘキサメチルリン酸アミド(“HMPA”)。
【0056】
本発明の一実施形態において、1つまたは複数のSi-H結合を含む水素キャリア化合物(C)を、特許請求されている水素放出触媒Yと接触させることにある工程を含む、特許請求されている水素を生成するための方法は、接触させる工程が、触媒Xの非存在下で実行されることを特徴とする。
【0057】
本発明の他の実施形態において、水素キャリア化合物(C)が、上記の式(I)または式(II)のシロキサン水素キャリア化合物である場合、前記シロキサン水素キャリア化合物と、特許請求されている水素放出触媒Yおよび触媒Xと、好ましくは水および/または水素放出開始剤とを含む水素放出反応混合物は、0.6以下であり、好ましくは0.01~0.6の範囲であり、例えば0.01~0.5である、化合物(C)の[SiOH2]モノマー単位に対する{特許請求されている触媒Yおよび触媒X}の合計のモル比によって特徴づけられる。好ましくは、化合物(C)の[SiOH2]モノマー単位に対する{特許請求されている触媒Yおよび触媒X}の合計のモル比は、0.02~0.2の範囲であり、例えば0.02~0.1である。より好ましくは、化合物(C)の[SiOH2]モノマー単位に対する{特許請求されている触媒Yおよび触媒X}の合計のモル比は、0.1より低く、例えば0.06以下である。
開始剤および触媒Xの、[Si-H]結合または[SiOH2]単位に対するモル比の上記の計算のためには、選択された化合物が同時に水素放出開始剤の定義および触媒Xの定義に分類される場合、両方の比の計算に使用されるのはそれらの合計の量である。
【0058】
本発明の一実施形態において、前記水素放出反応混合物は、0.02~0.5の範囲である、水素放出開始剤(例えば水酸化ナトリウム)に対する{特許請求されている触媒Yおよび触媒X}の合計のモル比によって特徴づけられ、好ましくは、水素放出開始剤に対する{特許請求されている触媒Yおよび触媒X}の合計のモル比は、0.10~0.25の範囲である。より好ましくは、水素放出開始剤に対する{特許請求されている触媒Yおよび触媒X}の合計のモル比は、0.20より低く、例えば0.15に等しい。
【0059】
<水素生成>
本発明の一実施形態において、本発明による水素を生成するための方法に使用できる方法に関して、水素放出が追加のエネルギーを要さず、水素産業の要求を満たす限りにおいて制限はない。
本発明による一実施形態において、特許請求されている水素放出触媒Yが存在する状態で、1つまたは複数のSi-H結合を含む化合物(C)から水素を生成するための方法の温度は、広範囲にわたって変わってもよく、特に0~200℃の範囲であってもよい。より好ましくは、温度は、15~30℃の範囲である。
本発明による一実施形態において、特許請求されている水素放出触媒Yが存在する状態で、1つまたは複数のSi-H結合を含む化合物(C)から水素を生成するための方法の圧力は、広範囲にわたって変わってもよく、特に1×105Pa~500×105Paの範囲であってもよい。
【0060】
本発明による一実施形態において、特許請求されている水素放出触媒Yが存在する状態で、1つまたは複数のSi-H結合を含む化合物(C)から水素を生成するための方法は、溶媒の存在を許容することができる。水素生成方法に使用できる溶媒の種類に関しては、化合物(C)からの水素放出が、水素産業の要求を満たす限りにおいて制限はない。本発明による一実施形態において、前記溶媒は、アルコール(例えばメタノール)、水性溶媒、有機溶媒および/または前記溶媒の2つ以上の混合物から選択される。
本発明による一実施形態において、化合物(C)から水素を生成するための方法は、下記の工程、a)任意で溶媒が存在する状態で、1つまたは複数のSi-H結合を含む化合物(C)を、特許請求されている水素放出触媒Yと接触させて、化合物(C)/触媒混合物を形成する工程、およびb)任意で追加の触媒Xが存在する状態で、工程(a)の混合物を、水素放出開始剤の水溶液と組み合わせて、水素を生成する工程、を含む。工程a)およびb)は、連続して、または同時に行われてもよい。
【0061】
本発明による一実施形態において、化合物(C)から水素を生成するための方法で使用される反応混合物は、
- 1つまたは複数のSi-H結合を含む化合物(C)、
- 対応するシリケート型副生成物、
- 水素、
- 任意の水、
- 任意の水素放出開始剤、
- 特許請求されている水素放出触媒Y、
- 任意の触媒X、および
- 任意の溶媒
を特徴とし、
前記反応混合物の少なくとも90質量パーセント、好ましくは少なくとも95質量パーセント、例えば少なくとも99質量パーセント、例えば100質量%を表す。
【0062】
一実施形態において、本発明はまた、上記の方法による水素を生成するための装置に関し、前記装置は、
- 反応混合物入口であって、前記混合物は化合物(C)および任意の溶媒を含む、反応混合物入口、
- 水素出口、
- 任意の副生成物収集器、および
- 前記混合物と接触するための、上記のポリマー担持触媒Yで被覆した任意の表面
を含む反応チャンバを含む。
本明細書に含まれる以下の用語および表現は、以下のように定義される。
- 水素キャリアは、水素原子を含有し、必要な時に二水素分子(H2)として直ちに放出できる、固体状態または液体状態の材料である。
【0063】
本発明は、特許請求されている本発明の出願の領域を逸脱せずに、他の様々な特定の形態で実施形態を可能にすることは、当業者にとって明らかである。したがって、本実施形態は、実例としてみなされるべきであるが、定義された領域内で、添付された特許請求の範囲によって改変されてもよく、本発明は、上記で与えられた詳細に限定されるべきではない。
【実施例】
【0064】
ポリヒドロメチルシロキサン(PHMS)、チオ尿素、テトラメチル尿素、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、ジエチルエーテル、アセトン、1,3-ジフェニル尿素、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、テトラメチルチオ尿素およびフェニルシランは、以下の例で使用される。
実験の設備の説明
60mLのPETプリフォームを、水素ガス排出用の出口ノズルと、ステンレスストップコックを備えるステンレスニードルが、反応物を注入するために押し合わされている雌ねじとを備える耐圧性のボールロックカプラに(ねじ留めによって)接続した。水素ガス出口ノズルを、T字型コネクタを介して、一方を水素放出の速度論をモニターするために圧力記録計に接続し、もう一方を、生成された水素ガスの容積を計測するために、水で満たして逆さまにした2Lの計測シリンダに接続した。計測シリンダへの水素放出は、ボールバルブによって引き起こされ、水素の流れは、ニードルバルブによって制御した。
(比較例1-C1)
60mLのPETプリフォームに、1.022g(17.00mmol、1.0当量)のPHMSを投入し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.212当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、1200秒の期間、圧力が増加するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、10mL(2.5%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
【0065】
(例2)
60mLのPETプリフォームに、1.001g(16.65mmol、1.0当量)のPHMSおよび0.062g(0.484mmol、0.029当量)のDMPUを投入した。溶液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.216当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、6.5秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、300mL(75%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
【0066】
(例3)
60mLのPETプリフォームに、1.002g(16.66mmol、1.0当量)のPHMSおよび0.053g(0.456mmol、0.027当量)のテトラメチル尿素を投入した。溶液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.216当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、10秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、270mL(68%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
【0067】
(例4)
60mLのPETプリフォームに、1.007g(16.75mmol、1.0当量)のPHMSおよび0.109g(0.514mmol、0.031当量)のジフェニル尿素を投入した。懸濁液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.215当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、720秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、10mL(2.5%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
【0068】
(例5)
60mLのPETプリフォームに、1.017g(16.91mmol、1.0当量)のPHMSおよび0.036g(0.413mmol、0.024当量)のN,N-ジメチルアセトアミドを投入した。溶液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.216当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、500秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、270mL(68%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
(例6)
60mLのPETプリフォームに、1.022g(17.00mmol、1.0当量)のPHMSおよび0.068g(0.781mmol、0.046当量)のN,N-ジメチルアセトアミドを投入した。溶液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.212当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、30秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、310mL(78%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
【0069】
(例7)
60mLのPETプリフォームに、1.003g(16.68mmol、1.0当量)のPHMSおよび0.036g(0.493mmol、0.030当量)のN,N-ジメチルホルムアミドを投入した。溶液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.216当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、1300秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、120mL(30%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
【0070】
(例8)
60mLのPETプリフォームに、1.003g(16.68mmol、1.0当量)のPHMSおよび0.045g(0.591mmol、0.035当量)のチオ尿素を投入した。懸濁液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.216当量)を1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、400秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、10mL(2.5%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
【0071】
(例9)
60mLのPETプリフォームに、1.000g(16.63mmol、1.0当量)のPHMSおよび0.066g(0.499mmol、0.030当量)のテトラメチルチオ尿素を投入した。懸濁液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.216当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、700秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、40mL(10%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
【0072】
(例10)
60mLのPETプリフォームに、0.063g(0.476mmol、0.028当量)のテトラメチルチオ尿素および0.707g(9.54mmol、0.567当量)のジエチルエーテルを投入した。懸濁液を、固体が溶解するまで力強く撹拌した。1.012g(16.83mmol、1.00当量)のPHMSを、次いでPETプリフォームに添加した。溶液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.216当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、1500秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、320mL(80%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
【0073】
(例11)
60mLのPETプリフォームに、1.007g(16.75mmol、1.0当量)のPHMSおよび0.056g(0.571mmol、0.034当量)のシクロヘキサノンを投入した。溶液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.215当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、600秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、260mL(65%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
【0074】
(例12)
60mLのPETプリフォームに、0.993g(16.51mmol、1.0当量)のPHMSおよび0.029g(0.499mmol、0.0302当量)のアセトンを投入した。溶液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.218当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、1400秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、80mL(20%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
(比較例C13)
60mLのPETプリフォームに、0.599g(5.55mmol、1.0当量)のフェニルシランを投入し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.649当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、反応を130秒の期間継続させてから、放出オン/オフバルブを開放し、5mL(0.8%収率)のH2を、計測シリンダで収集した。
【0075】
(例14)
60mLのPETプリフォームに、0.602g(5.56mmol、1.0当量)のフェニルシランおよび0.028g(0.218mmol、0.039当量)のDMPUを投入した。溶液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.647当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、90秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、310mL(78%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
【0076】
(例15)
60mLのPETプリフォームに、0.605g(5.59mmol、1.0当量)のフェニルシランおよび0.055g(0.473mmol、0.085当量)のテトラメチル尿素を投入した。溶液を、数秒間室温で撹拌し、0.6mLのNaOH(水中20質量%)(3.6mmol、0.644当量)を、1mLのシリンジで注入ニードルを介して、力強く撹拌しながら反応媒体に迅速に添加した。ストップコックを閉じて、130秒の期間、圧力が増加するとともに、白色の膨張した固体が形成するのを観察した。圧力の増加が停止した際、放出オン/オフバルブを開放し、340mL(85%収率)の水素ガスを計測シリンダで収集した。
【0077】
表1は、PHMSからH2を生成するために、例2~12でそれぞれ使用された触媒の性能の一覧を示す。
【表1】
【0078】
表2は、フェニルシランからH
2を生成するための、DMPUおよびテトラメチル尿素の触媒としての性能の一覧を示す。
【表2】
【国際調査報告】