(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】がんを治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220112BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220112BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20220112BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20220112BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220112BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220112BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220112BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220112BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20220112BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/4995 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/50 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/4164 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20220112BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20220112BHJP
A61K 31/255 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/662 20060101ALI20220112BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220112BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20220112BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K45/06
A61P1/00
A61P15/00
A61P13/08
A61P13/12
A61P19/00
A61P7/00
A61P27/02
A61P17/00
A61P35/02
A61K48/00
A61K31/7088
A61K38/43
A61K38/46
A61K31/444
A61K31/4439
A61K31/5377
A61K31/4995
A61K31/50
A61K31/4164
A61K31/4188
A61K33/243
A61K31/255
A61K31/662
A61K39/395 N
A61K41/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021528339
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 US2019062525
(87)【国際公開番号】W WO2020106915
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520281789
【氏名又は名称】フォグホーン セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FOGHORN THERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】セントレ、リチャード シー.
(72)【発明者】
【氏名】シュー、ラン
(72)【発明者】
【氏名】ラー、デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA12
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(57)【要約】
本発明は、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、及び血液癌などのBAF関連障害の治療のための、方法及び組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌の治療を必要とする対象において、それを治療する方法であって、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する有効量の薬剤を、前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌の腫瘍増殖の低減を必要とする対象において、それを低減する方法であって、前記腫瘍におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する有効量の薬剤を、前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
対象における黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌の転移性進行を抑制する方法であって、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する有効量の薬剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
対象における黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌の転移性コロニー形成を抑制する方法であって、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する有効量の薬剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌細胞、または食道癌細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する方法であって、前記細胞を、前記細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する有効量の薬剤と接触させることを含む、前記方法。
【請求項6】
前記細胞が、対象内にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、または血液癌が、転移性である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記有効量の前記薬剤が、基準物質と比較して、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を、少なくとも5%低減する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、前記対象に抗がん療法を投与すること、または前記細胞を前記抗がん療法と接触させることをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗がん療法が、化学療法剤もしくは細胞傷害性剤、免疫療法、手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗がん療法が、手術である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗がん療法が、化学療法剤または細胞傷害性剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記化学療法剤または細胞傷害性剤が、代謝拮抗剤、抗有糸分裂剤、抗腫瘍剤、抗生物質、アスパラギン特異的酵素、ビスホスホネート、抗悪性腫瘍剤、アルキル化剤、DNA修復酵素阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、コルチコステロイド、脱メチル化剤、免疫調節剤、ヤヌス関連キナーゼ阻害剤、ホスフィノシチド3-キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、またはチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の化学療法剤または細胞傷害性剤が、ダカルバジン、テモゾロミド、シスプラチン、トレオスルファン、フォテムスチン、IMCgp100、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ阻害剤、及び/またはプロテインキナーゼC阻害剤である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗がん療法、及び細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する前記薬剤が、互いに28日以内に、かつ各々が共に前記対象を治療するのに有効な量で投与される、請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象またはがんが、BRG1の機能喪失変異を有する、及び/またはそれを有すると同定されている、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象またはがんが、BRMの機能喪失変異を有する、及び/またはそれを有すると同定されている、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌が、1つ以上の化学療法剤または細胞傷害性剤の投与に応答しなかったか、または投与後に進行した、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌が、1つ以上の化学療法剤に対して耐性があるか、または耐性があると予測される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上の化学療法剤または細胞傷害性剤が、ダカルバジン、テモゾロミド、シスプラチン、トレオスルファン、フォテムスチン、IMCgp100、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ阻害剤、及び/またはプロテインキナーゼC阻害剤である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌が、黒色腫である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記黒色腫が、ブドウ膜黒色腫である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記黒色腫が、粘膜黒色腫である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記黒色腫が、皮膚黒色腫である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌が、血液癌である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記血液癌が、多発性骨髄腫、大細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、免疫グロブリンAλ骨髄腫、びまん性混合組織球性リンパ腫及びリンパ球性リンパ腫、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌が、前立腺癌である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌が、乳癌である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記乳癌が、ER陽性乳癌、ER陰性乳癌、三重陽性乳癌、または三重陰性乳癌である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌が、骨癌である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記骨癌が、ユーイング肉腫である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌が、腎細胞癌である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記腎細胞癌が、小眼球症転写因子(MITF)ファミリー転位腎細胞癌である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌が、血液癌である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記血液癌が、多発性骨髄腫、大細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、免疫グロブリンAλ骨髄腫、びまん性混合組織球性リンパ腫及びリンパ球性リンパ腫、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記急性リンパ芽球性白血病が、T細胞性急性リンパ芽球性白血病またはB細胞性急性リンパ芽球性白血病である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌が、食道癌である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記食道癌が、食道腺癌または食道扁平上皮細胞癌である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する前記薬剤が、小分子化合物、抗体、酵素、及び/またはポリヌクレオチドである、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する前記薬剤が、酵素である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記酵素が、クラスター化規則間隔短鎖回文反復(clustered regularly interspaced short palindromic repeats、CRISPR)関連タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(transcription activator-like effector nuclease、TALEN)、またはメガヌクレアーゼである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記CRISPR関連タンパク質が、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)またはCRISPR関連タンパク質12a(Cas12a)である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する前記薬剤が、ポリヌクレオチドである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記ポリヌクレオチドが、アンチセンス核酸、低分子干渉RNA、低分子ヘアピンRNA、マイクロRNA、CRISPR/Cas9ヌクレオチド、またはリボザイムである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する前記薬剤が、小分子化合物である、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記小分子化合物が、小分子BRG1阻害剤及び/または小分子BRM阻害剤である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記小分子BRG1阻害剤及び/または小分子BRM阻害剤が、式Iの化合物である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記小分子BRG1阻害剤及び/または小分子BRM阻害剤が、式IIの化合物である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記小分子BRG1阻害剤及び/または小分子BRM阻害剤が、式IIIの化合物である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記小分子BRG1阻害剤及び/または小分子BRM阻害剤が、化合物1~16のうちのいずれか1つの構造を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記小分子化合物が、式IVの分解剤(degrader)である、請求項45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブドウ膜黒色腫または他のがん(例えば、血液癌)の治療に使用するためのBRG1またはBRM関連因子(BAF)複合体の調節方法に関する。特に、本発明は、BAF複合体の機能に関連する障害を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマチン調節は、遺伝子発現に不可欠であり、ATP依存性クロマチンリモデリングは、かかる遺伝子発現が生じる機序である。ヒトスイッチ/スクロース非発酵性(SWI/SNF)クロマチンリモデリング複合体は、BAF複合体としても知られており、BRG1(Brahma関連遺伝子-1)及びBRM(Brahma)として知られている2つのSWI2様ATPアーゼを有する。転写活性化因子BRG1は、ATP依存性クロマチンリモデラーSMARCA4としても知られ、19番染色体上のSMARCA4遺伝子によってコードされる。BRG1は、一部のがん腫瘍で過剰発現され、がん細胞の増殖に必要である。BRMは、可能性の高いグローバル転写活性化因子SNF2L2及び/またはATP依存性クロマチンリモデラーSMARCA2としても知られており、9番染色体上のSMARCA2遺伝子によってコードされ、BRG1の機能喪失変異を特徴とする細胞における腫瘍細胞の増殖に不可欠であることが示されている。BRG及び/またはBRMの脱活性化は、細胞周期停止及び腫瘍抑制を含む、細胞における下流効果をもたらす。
【0003】
ブドウ膜黒色腫は、虹彩、毛様体、または脈絡膜(まとめてブドウ膜と呼ばれる)を伴う眼のがんである。腫瘍は、眼に色彩を与えるブドウ膜内に存在する色素細胞(メラニン細胞)から生じる。これは、成人において最も一般的な原発性眼内悪性腫瘍であり、米国で記録された全ての黒色腫の約5%を表し、米国及び欧州では100万人当たり約5~6症例である。ブドウ膜黒色腫を有する患者の97~98%は、診断時に転移性疾患の証拠がなく、局所治療の成功率は90%を超えるが、全ての患者の半数は最終的に転移性疾患を発症する。5年生存率は、眼に限定したブドウ膜黒色腫を有する患者では約80%、転移性ブドウ膜黒色腫を有する患者では約15%である。
【0004】
血液癌(hematologic cancers)、別名、血液癌(blood cancers)は、骨髄などの造血組織、または免疫系の細胞において始まるがんである(例えば、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫)。白血病は、血液及び骨髄に見出されるがんであり、異常な白血球の急速な産生によって引き起こされる。リンパ腫は、リンパ系に影響を与えるがんである。骨髄腫は、形質細胞のがんである。ほとんどの血液癌では、異常な種類の血球が未制御に増殖することによって、正常な血球の発生が中断される。異常な血球は、血液がその多くの機能を行うことを妨げる。血液癌は、全ての新規がん診断の約10%を占めている。血液癌の5年相対生存率は、約50%~約90%の範囲である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌を治療する方法を特徴とする(例えば、それを必要とする対象において)。
一態様では、本発明は、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌の治療を必要とする対象において、それを治療する方法を特徴とし、本方法は、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する有効量の薬剤を対象に投与することを含む。
【0006】
別の態様では、本発明は、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌の腫瘍増殖の低減を必要とする対象において、それを低減する方法を特徴とし、本方法は、腫瘍におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する有効量の薬剤を、対象に投与することを含む。
【0007】
別の態様では、本発明は、対象における黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌の転移性進行を抑制する方法を特徴とし、本方法は、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する有効量の薬剤を投与することを含む。
【0008】
別の態様では、本発明は、対象における黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌、または食道癌の転移性コロニー形成を抑制する方法を特徴とし、本方法は、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する有効量の薬剤を投与することを含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血液癌細胞、または食道癌細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する方法を特徴とし、本方法は、細胞を、細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する有効量の薬剤と接触させることを含む。
【0010】
上記の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、血球、または食道細胞は、対象内にある。
上記の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、有効量の薬剤は、基準物質と比較してBRG1のレベル及び/または活性を、少なくとも5%(例えば、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%)低減する。いくつかの実施形態では、基準物質と比較してBRG1のレベル及び/または活性を少なくとも50%(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%)低減する有効量の薬剤。いくつかの実施形態では、BRG1のレベル及び/または活性を少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)低減する有効量の薬剤。
【0011】
いくつかの実施形態では、有効量の薬剤は、基準物質と比較して、BRG1のレベル及び/または活性を、少なくとも5%(例えば、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%)、少なくとも12時間(例えば、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、30時間、36時間、48時間、72時間、またはそれ以上)低減する。いくつかの実施形態では、基準物質と比較して、BRG1のレベル及び/または活性を、少なくとも5%(例えば、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%)、少なくとも4日間(例えば、5日、6日、7日、14日、28日、またはそれ以上)低減する有効量の薬剤。
【0012】
上記の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、有効量の薬剤は、基準物質と比較して、BRMのレベル及び/または活性を、少なくとも5%(例えば、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%)低減する。いくつかの実施形態では、基準物質と比較して、BRMのレベル及び/または活性を、少なくとも50%(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%)低減する有効量の薬剤。いくつかの実施形態では、BRMのレベル及び/または活性を、少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)低減する有効量の薬剤。
【0013】
いくつかの実施形態では、有効量の薬剤は、基準物質と比較して、BRMのレベル及び/または活性を、少なくとも5%(例えば、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%)、少なくとも12時間(例えば、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、30時間、36時間、48時間、72時間、またはそれ以上)低減する。いくつかの実施形態では、基準物質と比較して、BRMのレベル及び/または活性を、少なくとも5%(例えば、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%)、少なくとも4日間(例えば、5日、6日、7日、14日、28日、またはそれ以上)低減する有効量の薬剤。
【0014】
いくつかの実施形態では、対象は、がんを有する。いくつかの実施形態では、がんは、BRG1及び/またはBRMタンパク質を発現し、及び/または細胞または対象は、BRG1及び/またはBRMを発現していると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、BRG1タンパク質を発現し、及び/または細胞または対象は、BRG1を発現していると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、BRMタンパク質を発現し、及び/または細胞または対象は、BRMを発現していると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫(例えば、ブドウ膜黒色腫、粘膜黒色腫、または皮膚黒色腫)である。いくつかの実施形態では、黒色腫は、ブドウ膜黒色腫である。いくつかの実施形態では、がんは、前立腺癌である。いくつかの実施形態では、がんは、血液癌であり、例えば、多発性骨髄腫、大細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、免疫グロブリンAλ骨髄腫、びまん性混合型組織球性リンパ腫及びリンパ球性リンパ腫、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(例えば、T細胞性急性リンパ芽球性白血病またはB細胞性急性リンパ芽球性白血病)、びまん性大細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、がんは、乳癌(例えば、ER陽性乳癌、ER陰性乳癌、三重陽性乳癌、または三重陰性乳癌)である。いくつかの実施形態では、がんは、骨癌(例えば、ユーイング肉腫)である。いくつかの実施形態では、がんは、神経芽腫である。いくつかの実施形態では、がんは、皮膚黒色腫である。いくつかの実施形態では、がんは、ラブドイド腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんは、上部気道消化管癌である。特定の実施形態では、がんは、食道癌(例えば、食道腺癌または食道扁平上皮細胞癌)である。いくつかの実施形態では、がんは、腎細胞癌(例えば、小眼球症転写因子(MITF)ファミリー転移腎細胞癌)である。一部の実施形態では、がんは、転移性である(例えば、がんは、肝臓に広がっている)。転移性癌は、遊走細胞の遊走及び/または浸潤を示す細胞、及び/または内皮動員及び/または血管新生を示す細胞を含み得る。他の実施形態では、遊走癌は、細胞遊走癌である。さらに他の実施形態では、細胞遊走癌は、非転移性の細胞遊走癌である。転移性癌は、腹膜、胸膜、心膜、またはくも膜下の空間の表面を播種することを介して広がるがんであり得る。あるいは、転移性癌は、リンパ系を介して広がるがん、または血行的に広がるがんであり得る。いくつかの実施形態では、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する有効量の薬剤は、肝臓へのがんの転移性コロニー形成を阻害するのに有効な量である。
【0015】
いくつかの実施形態では、がんは、GNAQに変異を有する。いくつかの実施形態では、がんは、GNA11に変異を有する。いくつかの実施形態では、がんは、PLCB4に変異を有する。いくつかの実施形態では、がんは、CYSLTR2に変異を有する。いくつかの実施形態では、がんは、BAP1に変異を有する。いくつかの実施形態では、がんは、SF3B1に変異を有する。いくつかの実施形態では、がんは、EIF1AXに変異を有する。いくつかの実施形態では、がんは、TFE3転移を有する。いくつかの実施形態では、がんは、TFEB転移を有する。いくつかの実施形態では、がんは、MITF転移を有する。いくつかの実施形態では、がんは、EZH2変異を有する。いくつかの実施形態では、がんは、SUZ12変異を有する。いくつかの実施形態では、がんは、EED変異を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象に抗がん療法を投与すること、または細胞を抗がん療法(例えば、化学療法剤もしくは細胞傷害性剤、免疫療法、手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固)と接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗がん療法は、化学療法剤または細胞傷害性剤であり、例えば、代謝拮抗剤、抗有糸分裂剤、抗腫瘍剤、抗生物質、アスパラギン特異的酵素、ビスホスホネート、抗悪性腫瘍剤、アルキル化剤、DNA修復酵素阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、コルチコステロイド、脱メチル化剤、免疫調節剤、ヤヌス関連キナーゼ阻害剤、ホスフィノシチド3-キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、またはチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0017】
いくつかの実施形態では、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、ブドウ膜黒色腫の治療に使用される別の抗がん療法(手術など)、MEK阻害剤、及び/またはPKC阻害剤と組み合わせて使用される。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤の投与の前に、その後に、またはそれと同時に、手術を行うことをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤の投与の前に、その後に、またはそれと同時に、MEK阻害剤及び/またはPKC阻害剤を投与することさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、細胞においてBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する抗がん療法及び薬剤は、互いに28日以内に、かつ各々が共に対象を治療するのに有効な量で投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、対象またはがんは、BRG1機能喪失変異を有する、及び/またはそれを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、対象またはがんは、BRM機能喪失変異を有する、及び/またはそれを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、BRG1のT910M変異を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、がんは、1つ以上の化学療法剤または細胞傷害性剤に耐性がある(例えば、がんは、化学療法剤もしくは細胞傷害性剤に耐性があると判断されているか(遺伝子マーカーによってなど)、または化学療法剤もしくは細胞傷害性剤に耐性がある可能性が高い(化学療法剤もしくは細胞傷害性剤に応答しなかったがんなど))。いくつかの実施形態では、がんは、1つ以上の化学療法剤または細胞傷害性剤に応答しなかった。いくつかの実施形態では、がんは、ダカルバジン、テモゾロミド、シスプラチン、トレオスルファン、フォテムスチン、IMCgp100、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、PD-1阻害剤(例えば、ニボルマブまたはペムブロリズマブ)、PD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブ)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはトラメチニブ)、及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤(例えば、ソトラスタウリンまたはLXS196、別名IDE196)に耐性があるか、または応答しなかった。
【0021】
いくつかの実施形態では、がんは、MEK阻害剤またはPKC阻害剤などのブドウ膜黒色腫の治療に使用される、以前に投与された治療薬に耐性があるか、または応答しなかった。例えば、いくつかの実施形態では、がんは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはトラメチニブ)、及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤(例えば、ソトラスタウリンまたはLXS196)に耐性があるか、または応答しなかった。
【0022】
いくつかの実施形態では、細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、小分子化合物、抗体、酵素、及び/またはポリヌクレオチドである。
【0023】
いくつかの実施形態では、細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、酵素であり、例えば、クラスター化規則間隔短鎖回文反復(CRISPR)関連タンパク質(CRISPR関連タンパク質9(Cas9)、CRISPR関連タンパク質12a(Cas12a)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはメガヌクレアーゼなど)である。
【0024】
いくつかの実施形態では、細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、ポリヌクレオチド、例えば、アンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、CRISPR/Cas9ヌクレオチド、またはリボザイムである。
【0025】
いくつかの実施形態では、細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、小分子化合物(例えば、小分子BRG1阻害剤及び/またはBRM阻害剤)である。いくつかの実施形態では、細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、小分子化合物(例えば、小分子BRG1阻害剤)である。いくつかの実施形態では、細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、小分子化合物(例えば、小分子BRM阻害剤または分解剤)である。
【0026】
いくつかの実施形態では、小分子BRG1及び/またはBRM阻害剤は、式Iの構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であり、
【0027】
【0028】
式中、mが、0、1、2、3、または4であり、
X1が、NまたはCHであり、
各R1が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、または任意選択的に置換されたアミノである。
【0029】
いくつかの実施形態では、小分子BRG1及び/またはBRM阻害剤は、式IIの構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であり、
【0030】
【0031】
式中、R2が、ヒドロキシで置換されたフェニル、任意選択的に、独立して、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-C3アルキル、及びC1-C3アルコキシからなる群から選択される1つ以上の基で置換されたフェニルであり、
R3が、-Ra、-O-Ra、-N(Ra)2、-S(O)2Ra、及び-C(O)-N(Ra)2からなる群から選択され、
各Raが、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、3~15員カルボシクリル、及び3~15員ヘテロシクリルからなる群から選択され、各C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、3~15員カルボシクリル、及び3~15員ヘテロシクリルが、任意選択的に、独立して、Rb、オキソ、ハロ、-NO2、-N(Rb)2、-CN、-C(O)-N(Rb)2、-S(O)-N(Rb)2、-S(O)2-N(Rb)2、-O-Rb、-S-Rb、-O-C(O)-Rb、-C(O)-Rb、-C(O)-ORb、-S(O)-Rb、-S(O)2-Rb、-N(Rb)-C(O)-Rb、-N(Rb)-S(O)-Rb、-N(Rb)-C(O)-N(Rb)2、及び-N(Rb)-S(O)2-Rbからなる群から選択される1つ以上の基で置換され、
各Rbが、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、3~15員カルボシクリル、及び3~15員ヘテロシクリルからなる群から選択され、各C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、3~15員カルボシクリル、及び3~15員ヘテロシクリルが、任意選択的に、独立して、Rcから選択される1つ以上の基で置換されるか、または2つのRbが、それらが結合している窒素と一緒になって、ヘテロシクリル(任意選択的に、独立して、オキソ、ハロ、及びC1-3アルキルからなる群から選択される1つ以上の基で置換され、C1-3アルキルが、任意選択的に、独立して、オキソ及びハロからなる群から選択される1つ以上の基で置換される)を形成し、
各Rcが、独立して、オキソ、ハロ、-NO2、-N(Rd)2、-CN、-C(O)-N(Rd)2、-S(O)-N(Rd)2、-S(O)2-N(Rd)2、-S-Rd、-O-C(O)-Rd、-C(O)-Rd、-C(O)-ORd、-S(O)-Rd、-S(O)2Rd、-N(Rd)-C(O)-Rd、-N(Rd)-S(O)-Rd、-N(Rd)-C(O)-N(Rd)2、-N(Rd)-S(O)2-Rd、-C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、3~15員カルボシクリル、及び3~15員ヘテロシクリルからなる群から選択され、任意のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、3~15員カルボシクリル、及び3~15員ヘテロシクリルが、任意選択的に、独立して、Rd、オキソ、ハロ、-NO2、-N(Rd)2、-CN、-C(O)-N(Rd)2、-S(O)-N(Rd)2、-S(O)2-N(Rd)2、-O-Rd、-S-Rd、-O-C(O)-Rd、-C(O)-Rd、-C(O)-Rd、-S(O)-Rd、-S(O)2-Rd、-N(Rd)-C(O)-Rd、-N(Rd)-S(O)-Rd、-N(Rd)-C(O)-N(Rd)2、及び-N(Rd)-S(O)2-Rdからなる群から選択される1つ以上の基で置換され、
各Rdが、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、カルボシクリル、及びカルボシクリル(C1-3アルキル)-からなる群から選択され、
R4が、H、C1-6アルキル、または-C(=O)-C1-6アルキルであり、
R5が、HまたはC1-6アルキルである。
【0032】
式IIの化合物は、当該技術分野で既知の方法、例えば、米国特許公開第2018/0086720号に記載されている方法によって合成することができる(その合成方法は、参照により組み込まれる)。
【0033】
いくつかの実施形態では、小分子BRG1及び/またはBRM阻害剤は、式IIIの構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であり、
【0034】
【0035】
式中、R6が、ハロ(例えば、フルオロまたはクロロ)であり、
R7が、水素、任意選択的に置換されたアミノ、または任意選択的に置換されたC1-6アルキルであり、
R8が、任意選択的に置換されたC6-10アリール、または任意選択的に置換されたC2-9ヘテロアリールである。
【0036】
いくつかの実施形態では、小分子BRG1及び/またはBRM阻害剤は、化合物1~16のうちのいずれか1つの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0037】
【0038】
いくつかの実施形態では、小分子化合物またはその薬学的に許容される塩は、分解剤である。いくつかの実施形態では、分解剤は、式IVの構造を有し、
A-L-B
式IV
式中、Aが、BRG1及び/またはBRMの結合部分であり、Lが、リンカーであり、Bが、分解部分である、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、分解部分は、ユビキチンリガーゼ部分である。いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、セレブロンリガンド、IAP(アポトーシスの阻害剤)リガンド、マウス二重微小2ホモログ(MDM2)、疎水性タグ、もしくはフォン・ヒッペル・リンドウリガンド、またはその誘導体もしくは類似体を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、Aは、式I~IIIのうちのいずれか1つの構造、または化合物1~16のうちのいずれか1つの構造を含む。
いくつかの実施形態では、疎水性タグは、ジフェニルメタン、アダマンチン、またはトリ-Bocアルギニンを含み、すなわち、疎水性タグは、以下の構造を含む。
【0040】
【0041】
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、式Aの構造を含み、
【0042】
【0043】
式中、X1が、CH2、O、S、もしくはNR1であり、R1が、H、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキルであり、X2が、C=O、CH2、もしくは
【0044】
【0045】
であり、R3及びR4が、独立して、H、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキルであり、mが、0、1、2、3、もしくは4であり、各R2が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、もしくは任意選択的に置換されたアミノである、
またはその薬学的に許容される塩である。
【0046】
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、以下の構造を含む、
【0047】
【0048】
あるいはその誘導体もしくは類似体、またはその薬学的に許容される塩である。
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、式Bの構造を含み、
【0049】
【0050】
式中、各R4、R4’、及びR7が、独立して、H、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキルであり、R5が、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC3-C10カルボシクリル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC6-C10アリールであり、R6が、H、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC3-C10カルボシクリル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC6-C10アリールであり、nが、0、1、2、3、もしくは4であり、各R8が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、もしくは任意選択的に置換されたアミノであり、各R9及びR10が、独立して、H、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、もしくは任意選択的に置換されたC6-C10アリールであり、R4’もしくはR5が、リンカーへの結合を含む、またはその薬学的に許容される塩である。
【0051】
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、以下の構造を含む、
【0052】
【0053】
あるいはその誘導体もしくは類似体、またはその薬学的に許容される塩である。
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、式Cの構造を含み、
【0054】
【0055】
式中、各R11、R13、及びR15が、独立して、H、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキルであり、R12が、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC3-C10カルボシクリル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC6-C10アリールであり、R14が、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC3-C10カルボシクリル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC6-C10アリールであり、pが、0、1、2、3、もしくは4であり、各R16が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、もしくは任意選択的に置換されたアミノであり、qが、0、1、2、3、もしくは4であり、各R17が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、もしくは任意選択的に置換されたアミノである、またはその薬学的に許容される塩である。
【0056】
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、以下の構造を含む、
【0057】
【0058】
あるいはその誘導体もしくは類似体、またはその薬学的に許容される塩である。
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、式Dの構造を含み、
【0059】
【0060】
式中、各R18及びR19が、独立して、H、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC3-C10カルボシクリル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC6-C10アリールであり、r1が、0、1、2、3、もしくは4であり、各R20が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、もしくは任意選択的に置換されたアミノであり、r2が、0、1、2、3、もしくは4であり、各R21が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、もしくは任意選択的に置換されたアミノである、またはその薬学的に許容される塩である。
【0061】
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、以下の構造を含む、
【0062】
【0063】
あるいはその誘導体もしくは類似体、またはその薬学的に許容される塩である。
いくつかの実施形態では、リンカーは、式Vの構造を有し、
A1-(B1)f-(C1)g-(B2)h-(D)-(B3)i-(C2)j-(B4)k-A2
式V
式中、A1が、リンカーとAとの間の結合であり、A2が、Bとリンカーとの間の結合であり、B1、B2、B3、及びB4が、各々独立して、任意選択的に置換されたC1-C2アルキル、任意選択的に置換されたC1-C3ヘテロアルキル、O、S、S(O)2、及びNRNから選択され、RNが、水素、任意選択的に置換されたC1-4アルキル、任意選択的に置換されたC2-4アルケニル、任意選択的に置換されたC2-4アルキニル、任意選択的に置換されたC2-6ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-12アリール、もしくは任意選択的に置換されたC1-7ヘテロアルキルであり、C1及びC2が、各々独立して、カルボニル、チオカルボニル、スルホニル、もしくはホスホリルから選択され、f、g、h、i、j、及びkが、各々独立して、0もしくは1であり、Dが、任意選択的に置換されたC1-10アルキル、任意選択的に置換されたC2-10アルケニル、任意選択的に置換されたC2-10アルキニル、任意選択的に置換されたC2-6ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-12アリール、任意選択的に置換されたC2-C10ポリエチレングリコール、もしくは任意選択的に置換されたC1-10ヘテロアルキルであるか、またはA1-(B1)f-(C1)g-(B2)hを-(B3)i-(C2)j-(B4)k-A2と連結する化学結合である。
【0064】
いくつかの実施形態では、Dは、任意選択的に置換されたC2-C10ポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態では、C1及びC2は、各々独立して、カルボニルまたはスルホニルである。いくつかの実施形態では、B1、B2、B3、及びB4は、各々独立して、任意選択的に置換されたC1-C2アルキル、任意選択的に置換されたC1-C3ヘテロアルキル、O、S、S(O)2、及びNRNから選択され、RNは、水素または任意選択的に置換されたC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、B1、B2、B3、及びB4は、各々独立して、任意選択的に置換されたC1-C2アルキル、または任意選択的に置換されたC1-C3ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、jは、0である。いくつかの実施形態では、kは、0である。いくつかの実施形態では、j及びkは、各々独立して、0である。いくつかの実施形態では、f、g、h、及びiは、各々独立して、1である。
【0065】
いくつかの実施形態では、式Vのリンカーは、式Vaの構造を有し、
【0066】
【0067】
式中、A1が、リンカーとAとの間の結合であり、A2が、Bとリンカーとの間の結合である。
いくつかの実施形態では、Dは、任意選択的に置換されたC1-10アルキルである。いくつかの実施形態では、C1及びC2は、各々独立して、カルボニルである。いくつかの実施形態では、B1、B2、B3、及びB4は、各々独立して、任意選択的に置換されたC1-C2アルキル、任意選択的に置換されたC1-C3ヘテロアルキル、O、S、S(O)2、及びNRNから選択され、RNは、水素または任意選択的に置換されたC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、B1、B2、B3、及びB4は、各々独立して、任意選択的に置換されたC1-C2アルキル、O、S、S(O)2、及びNRNから選択され、RNは、水素または任意選択的に置換されたC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、B1及びB4は、各々独立して、任意選択的に置換されたC1-C2アルキルである。いくつかの実施形態では、B1及びB4は、各々独立して、C1アルキルである。いくつかの実施形態では、B2及びB4は、各々独立して、NRNであり、RNは、水素または任意選択的に置換されたC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、B2及びB4は、各々独立して、NHである。いくつかの実施形態では、f、g、h、i、j、及びkは、各々独立して、1である。
【0068】
いくつかの実施形態では、式Vのリンカーは、式Vbの構造を有し、
【0069】
【0070】
式中、A1が、リンカーとAとの間の結合であり、A2が、Bとリンカーとの間の結合である。
化学用語
以下の化学定義のいずれについても、原子記号に続く数字は、特定の化学部分に存在するその元素の原子の総数を示す。理解されるように、水素原子などの他の原子、または本明細書に記載される置換基は、必要な場合、原子の原子価を満たすために存在し得る。例えば、非置換C2アルキル基は、式-CH2CH3を有する。本明細書で定義される基と共に使用される場合、炭素原子の数への言及は、アセタール及びケタール基における二価の炭素を含むが、アシル、エステル、カーボネート、またはカルバメート基におけるカルボニル炭素を含まない。ヘテロアリール基中の酸素、窒素、または硫黄原子の数への言及は、複素環式環の一部を形成するそれらの原子のみを含む。
【0071】
本明細書で使用される場合、「アシル」という用語は、本明細書で定義されるように、カルボニル基を介して親分子基に結合している水素またはアルキル基を表し、ホルミル(すなわち、カルボキシアルデヒド基)、アセチル、トリフルオロアセチル、プロピオニル、及びブタノイルによって例示される。例示的な非置換アシル基は、1~6、1~11、または1~21個の炭素を含む。
【0072】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、1~20個の炭素原子(例えば、1~16個の炭素原子、1~10個の炭素原子、または1~6個の炭素原子)の分岐または直鎖一価飽和脂肪族炭化水素ラジカルを指す。
【0073】
アルキレンは、二価のアルキル基である。本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、単独でまたは他の基と組み合わせて、炭素-炭素二重結合を有し、かつ2~20個の炭素原子(例えば、2~16個の炭素原子、2~10個の炭素原子、2~6個、または2個の炭素原子)を有する直鎖または分岐炭化水素残基を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、単独でまたは他の基と組み合わせて、炭素-炭素三重結合を有し、かつ2~20個の炭素原子(例えば、2~16個の炭素原子、2~10個の炭素原子、2~6個、または2個の炭素原子)を有する直鎖または分岐炭化水素残基を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「アミノ」という用語は、-N(RN1)2を表し、各RN1は、独立して、H、OH、NO2、N(RN2)2、SO2ORN2、SO2RN2、SORN2、N-保護基、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、アシル(例えば、アセチル、トリフルオロアセチル、または本明細書に記載される他のもの)であり、これらの示されるRN1基の各々は、任意選択的に置換され得るか、または2つのRN1は、一緒になってアルキレンもしくはヘテロアルキレンを形成し、各RN2は、独立して、H、アルキル、もしくはアリールである。本明細書に記載の化合物のアミノ基は、非置換アミノ(すなわち、-NH2)または置換アミノ(すなわち、-N(RN1)2)であり得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、少なくとも1つの芳香環を有する6~12個の炭素原子の芳香族単炭素環式または多炭素環式ラジカルを指す。そのような基の例には、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,2-ジヒドロナフチル、インダニル、及び1H-インデニルが挙げられる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「アリールアルキル」という用語は、アリール基で置換されたアルキル基を表す。例示的な非置換アリールアルキル基は、ベンジル及びフェネチルなどの、7~30個の炭素(例えば、C1-C6アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルキルC6-C10アリール、またはC1-C20アルキルC6-C10アリールなどの、7~16個または7~20個の炭素)である。いくつかの実施形態では、アルキル及びアリールはそれぞれ、それぞれの基について本明細書で定義されるように、1、2、3、または4個の置換基でさらに置換され得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、「アジド」という用語は、-N3基を表す。
本明細書で使用される場合、「架橋シクリル」という用語は、1~3個の架橋を含む、5~20個の炭素の架橋多環式基を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「シアノ」という用語は、-CN基を表す。
本明細書で使用される場合、「カルボシクリル」という用語は、環が炭素原子によって形成される非芳香族C3-C12単環式、二環式または三環式の構造を指す。カルボシクリル構造には、シクロアルキル基及び不飽和カルボシクリルラジカルが含まれる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、3~10個、好ましくは3~6個の炭素原子の飽和非芳香族一価単炭素環式または多炭素環式ラジカルを指す。この用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ノルボルニル、及びアダマンチルなどのラジカルによってさらに例示される。
【0081】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」という用語は、フッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)、またはヨウ素(ヨード)ラジカルを意味する。
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」という用語は、構成炭素原子のうちの1つ以上が窒素、酸素、または硫黄で置き換えられている、本明細書で定義されるようなアルキル基を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキル基は、アルキル基について本明細書に記載されるように、1、2、3、または4個の置換基でさらに置換され得る。ヘテロアルキル基の例は、「アルコキシ」であり、それは、本明細書で使用される場合、アルキル-O-(例えば、メトキシ及びエトキシ)を指す。ヘテロアルキレンは、二価のヘテロアルキル基である。本明細書で使用される場合、「ヘテロアルケニル」という用語は、構成炭素原子のうちの1つ以上が窒素、酸素、または硫黄で置き換えられている、本明細書で定義されるようなアルケニル基を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロアルケニル基は、アルケニル基について本明細書に記載されるように、1、2、3、または4個の置換基でさらに置換され得る。ヘテロアルケニル基の例は、「アルケノキシ」であり、それは、本明細書で使用される場合、アルケニル-O-を指す。ヘテロアルケニレンは、二価のヘテロアルケニル基である。本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキニル」という用語は、構成炭素原子のうちの1つ以上が窒素、酸素、または硫黄で置き換えられている、本明細書で定義されるようなアルキニル基を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキニル基は、アルキニル基について本明細書に記載されるように、1、2、3、または4個の置換基でさらに置換され得る。ヘテロアルキニル基の例は、「アルキノキシ」であり、それは、本明細書で使用される場合、アルキニル-O-を指す。ヘテロアルキニレンは、二価のヘテロアルキニル基である。
【0082】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1、2、または3個の環原子を含み、残りの環原子が炭素である、少なくとも1つの芳香環を有する5~12個の原子の芳香族単環式または多環式ラジカルを指す。ヘテロアリール基の1つまたは2つの環炭素原子は、カルボニル基で置き換えられ得る。ヘテロアリール基の例は、ピリジル、ピラゾイル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、イミダゾリル、オキサキソリル、及びチアゾリルである。
【0083】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリールアルキル」という用語は、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基を表す。例示的な非置換ヘテロアリールアルキル基は、7~30個の炭素(例えば、C1-C6アルキルC2-C9ヘテロアリール、C1-C10アルキルC2-C9ヘテロアリール、またはC1-C20アルキルC2-C9ヘテロアリールなどの、7~16個または7~20個の炭素)である。いくつかの実施形態では、アルキル及びヘテロアリールはそれぞれ、それぞれの基について本明細書で定義されるように、1、2、3、または4個の置換基でさらに置換され得る。
【0084】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」という用語は、N、O、またはSから選択される1、2、3、または4個の環原子を含む少なくとも1つの環を有する3~12個の原子を有する単環式または多環式のラジカルを指し、環は芳香族ではない。ヘテロシクリル基の例には、これらに限定されないが、モルホリニル、チオモルホリニル、フリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、及び1,3-ジオキサニルが含まれる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリル基で置換されたアルキル基を表す。例示的な非置換ヘテロシクリルアルキル基は、7~30個の炭素(例えば、C1-C6アルキルC2-C9ヘテロシクリル、C1-C10アルキルC2-C9ヘテロシクリル、またはC1-C20アルキルC2-C9ヘテロシクリルなどの、7~16個または7~20個の炭素)である。いくつかの実施形態では、アルキル及びヘテロシクリルはそれぞれ、それぞれの基について本明細書で定義されるように、1、2、3、または4個の置換基でさらに置換され得る。
【0086】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシアルキル」という用語は、-OH基で置換されたアルキル基を表す。
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシル」という用語は、-OH基を表す。
【0087】
本明細書で使用される場合、「N-保護基」という用語は、合成手順中の望ましくない反応からアミノ基を保護することが意図された基を表す。一般的に使用されているN-保護基は、Greene,“Protective Groups in Organic Synthesis,”3rd Edition(John Wiley & Sons,New York,1999)に開示されている。N-保護基は、これらに限定されないが、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、t-ブチルアセチル、2-クロロアセチル、2-ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタリル、o-ニトロフェノキシアセチル、α-クロロブチリル、ベンゾイル、4-クロロベンゾイル、4-ブロモベンゾイル、4-ニトロベンゾイル、ならびにアラニン、ロイシン、及びフェニルアラニンなどの保護もしくは非保護D、L、またはD、L-アミノ酸などのキラル補助基などのアシル、アリーロイル、またはカルバミル基;ベンゼンスルホニル、及びp-トルエンスルホニルなどのスルホニル含有基;ベンジルオキシカルボニル、p-クロロベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4-20ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、2-ニトロ-4,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5-トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1-(p-ビフェニルイル)-1-メチルエトキシカルボニル、α,α-ジメチル3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t-ブチルオキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2,2,2,-トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4-ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル-9-メトキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、及びフェニルチオカルボニルなどのカルバメート形成基、ベンジル、トリフェニルメチル、及びベンジルオキシメチルなどのアリールアルキル基、ならびにトリメチルシリルなどのシリル基が挙げられる。好ましいN-保護基は、アロック、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、t-ブチルアセチル、アラニル、フェニルスルホニル、ベンジル、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、及びベンジルオキシカルボニル(Cbz)である。
【0088】
本明細書で使用される場合、「ニトロ」という用語は、-NO2基を表す。
本明細書で使用される場合、「チオール」という用語は、-SH基を表す。
アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル(例えば、シクロアルキル)、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクリル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。置換されている場合、特に指定のない限り、一般に1~4個の置換基が存在する。置換基には、例えば:アルキル(例えば、非置換及び置換、置換基は本明細書に記載される任意の基、例えば、アリール、ハロ、ヒドロキシルを含む)、アリール(例えば、置換及び非置換フェニル)、カルボシクリル(例えば、置換及び非置換シクロアルキル)、ハロゲン(例えば、フルオロ)、ヒドロキシル、ヘテロアルキル(例えば、置換及び非置換メトキシ、エトキシ、またはチオアルコキシ)、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アミノ(例えば、NH2またはモノもしくはジアルキルアミノ)、アジド、シアノ、ニトロ、またはチオールが含まれる。アリール、カルボシクリル(例えば、シクロアルキル)、ヘテロアリール、及びヘテロシクリル基はまた、アルキル(アリールアルキル(例えば、置換及び非置換ベンジル)などの非置換及び置換)で置換され得る。
【0089】
本明細書に記載される化合物は、1つ以上の不斉炭素原子を有することができ、光学的に純粋なエナンチオマー、例えば、ラセミ体などのエナンチオマーの混合物、光学的に純粋なジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、またはジアステレオマーラセミ体の混合物の形態で存在することができる。光学的に活性な形態は、例えば、ラセミ体の分割により、不斉合成または不斉クロマトグラフィー(キラル吸着剤または溶離剤を用いたクロマトグラフィー)により得ることができる。すなわち、ある特定の開示された化合物は、様々な立体異性体形態で存在し得る。立体異性体は、それらの空間配置のみが異なる化合物である。エナンチオマーは、最も一般的には、それらがキラル中心として機能する非対称に置換された炭素原子を含むため、その鏡像を重ねることができない立体異性体の対である。「エナンチオマー」は、互いの鏡像であり、かつ重ねることができない一対の分子のうちの1つを意味する。ジアステレオマーは、最も一般的には、それらが2つ以上の非対称に置換された炭素原子を含み、かつ1つ以上のキラル炭素原子の周りの置換基の立体配置を表すため、鏡像として関連しない立体異性体である。化合物のエナンチオマーは、例えば、キラルクロマトグラフィー及びそれに基づく分離方法などの1つ以上の周知の技術及び方法を使用して、例えば、ラセミ体からエナンチオマーを分離することによって調製され得る。本明細書に記載の化合物のエナンチオマーをラセミ混合物から分離するための適切な技術及び/または方法は、当業者によって容易に決定することができる。「ラセミ体」または「ラセミ混合物」とは、2つのエナンチオマーを含む化合物を意味し、かかる混合物は、光学活性を示さず、すなわち、それらは偏光面を回転させない。「幾何異性体」とは、炭素-炭素二重結合、シクロアルキル環、または架橋二環式系との関係において置換原子の向きが異なる異性体を意味する。炭素-炭素二重結合の各側の原子(H以外)は、E(置換基は炭素-炭素二重結合の25反対側にある)またはZ(置換基は同じ側に配向されている)立体配置にある。「R」、「S」、「S*」、「R*」、「E」、「Z」、「シス」、及び「トランス」は、コア分子に対する立体配置を示す。ある特定の開示された化合物は、アトロプ異性体形態で存在し得る。アトロプ異性体は、回転に対する立体歪み障壁が配座異性体の単離を可能にするのに十分な高さである、単結合の周りの妨げられた回転から生じる立体異性体である。本明細書に記載の化合物は、異性体特異的合成により、または異性体混合物から分割して、個々の異性体として調製され得る。従来の分割手法は、光学的に活性な酸を使用して異性体対の各異性体の遊離塩基の塩を形成すること(続いて、遊離塩基の分別結晶及び再生成を行う)、光学的に活性なアミンを使用して異性体対の各異性体の酸形態の塩を形成すること(続いて、遊離酸の分別結晶及び再生成を行う)、光学的に純粋な酸、アミン、もしくはアルコールを使用して異性体対の異性体の各々のエステルもしくはアミド35を形成すること(続いて、キラル補助剤のクロマトグラフィー分離及び除去)、または様々な周知のクロマトグラフィー法を使用して出発物質もしくは最終生成物のいずれかの異性体混合物を分割することを含む。開示された化合物の立体化学が構造によって命名または示されている場合、命名されたまたは示された立体異性体は、他の立体異性体に対して少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、または99.9重量%である。単一のエナンチオマーが構造によって命名または示されている場合、示されたまたは命名されたエナンチオマーは、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、または99.9重量%光学的に純粋である。単一のジアステレオマーが構造によって命名または示されている場合、示されたまたは命名されたジアステレオマーは、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、または99.9重量%純粋である。光学純度パーセントは、エナンチオマーの重量、またはエナンチオマーの重量及びその光学異性体の重量に対する比である。重量によるジアステレオマー純度は、1つのジアステレオマーの重量または全てのジアステレオマーの重量に対する比である。開示された化合物の立体化学が構造によって命名または示されている場合、命名されたまたは示された立体異性体は、他の立体異性体に対してモル分率で少なくとも60%、70%、80%、90%、99%、または99.9%純粋である。単一のエナンチオマーが構造によって命名または示されている場合、示されたまたは命名されたエナンチオマーは、モル分率で少なくとも60%、70%、80%、90%、99%、または99.9%純粋である。単一のジアステレオマーが構造によって命名または示されている場合、示されたまたは命名されたジアステレオマーは、モル分率で少なくとも60%、70%、80%、90%、99%、または99.9%純粋である。モル分率による純度パーセントは、エナンチオマーのモル、またはエナンチオマーのモル及びその光学異性体のモルに対する比である。同様に、モル分率による純度パーセントは、ジアステレオマーのモル、またはジアステレオマーのモル及びその異性体のモルに対する比である。開示された化合物が立体化学を示さずに構造によって命名または示され、化合物が少なくとも1つのキラル中心を有する場合、名前または構造は、対応する光学異性体を含まない化合物のエナンチオマー、化合物のラセミ混合物、化合物の混合物、またはその対応する光学異性体に対して1つのエナンチオマーが濃縮されている混合物のいずれかを包含すると理解されるべきである。開示された化合物が立体化学を示さずに構造によって命名または示され、かつ2つ以上のキラル中心を有する場合、名前または構造は、他のジアステレオマーを含まないジアステレオマー、他のジアステレオマー対を含まないいくつかのジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマー対の混合物、他のジアステレオマー(複数可)に対して1つのジアステレオマーが濃縮されているジアステレオマーの混合物、または他のジアステレオマーに対して1つ以上のジアステレオマーが濃縮されているジアステレオマーの混合物を包含すると理解されるべきである。本発明は、これらの形態の全てを包含する。
【0090】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、この発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本開示で使用するための方法及び材料を本明細書で説明する。当該技術分野で既知の他の好適な方法及び材料もまた使用され得る。材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定的であることは意図されない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及び他の参考文献は、それらの全体において参照により組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。
【0091】
定義
この出願では、文脈から特に明記されていない限り、(i)「a」という用語は、「少なくとも1つ」を意味すると理解され得、(ii)「または」という用語は、「及び/または」を意味すると理解され得、(iii)「含むこと(including)」及び「含む(including)」という用語は、それ自体で表されるか、または1つ以上の追加の構成要素もしくはステップと共に表されるかにかかわらず、項目化された構成要素またはステップを包含すると理解され得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、「約」及び「およそ」という用語は、説明されている値の上下10%以内の値を指す。例えば、「約5nM」という用語は、4.5~5.5nMの範囲を示す。
【0093】
本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、対象または系への組成物(例えば、化合物または本明細書に記載されるような化合物を含む製剤)の投与を指す。動物対象への(例えば、ヒトへの)投与は、任意の適切な経路によるものであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、気管支(気管支点滴によるものを含む)、頬側、経腸、皮内(interdermal)、動脈内、皮内(intradermal)、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、くも膜下腔内、腫瘍内、静脈内、脳室内、粘膜、鼻腔、経口、直腸、皮下、舌下、局所、気管(気管内点滴によるものを含む)、経皮、膣、及び硝子体であり得る。
【0094】
本明細書で使用される場合、「BAF複合体」という用語は、ヒト細胞におけるBRG1またはHBRM関連因子複合体を指す。
本明細書で使用される場合、「BRG1の機能喪失変異」という用語は、活性の低減(例えば、BRG1活性の少なくとも1%の低減、例えば、BRG1活性の2%、5%、10%、25%、50%、または100%の低減)を有するタンパク質をもたらすBRG1における変異を指す。例示的なBRG1の機能喪失変異には、これらに限定されないが、BRG1のC末端におけるホモ接合性BRG1の変異及び欠失が含まれる。
【0095】
本明細書で使用される場合、「BRG1の機能喪失障害」という用語は、BRG1活性の低減(例えば、BRG1活性の少なくとも1%の低減、例えば、BRG1活性の2%、5%、10%、25%、50%、または100%の低減)を示す障害(例えば、がん)を指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、「BRMの機能喪失変異」という用語は、活性の低減(例えば、BRM活性の少なくとも1%の低減、例えば、BRM活性の2%、5%、10%、25%、50%、または100%の低減)を有するタンパク質をもたらすBRMにおける変異を指す。例示的なBRMの機能喪失変異には、これらに限定されないが、BRMのC末端でのホモ接合性BRMの変異及び欠失が含まれる。
【0097】
本明細書で使用される場合、「BRMの機能喪失障害」という用語は、BRM活性の低減(例えば、BRM活性の少なくとも1%の低減、例えば、BRG1活性の2%、5%、10%、25%、50%、または100%の低減)を示す障害(例えば、がん)を指す。
【0098】
本明細書で使用される「GBAF複合体」及び「GBAF」という用語は、ヒト細胞におけるSWI/SNF ATPアーゼクロマチンリモデリング複合体を指す。GBAF複合体サブユニットには、これらに限定されないが、ACTB、ACTL6A、ACTL6B、BICRA、BICRAL、BRD9、SMARCA2、SMARCA4、SMARCC1、SMARCD1、SMARCD2、SMARCD3、及びSS18が含まれる。
【0099】
「がん」という用語は、腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病、及びリンパ腫などの悪性腫瘍細胞の増殖によって引き起こされる状態を指す。
本明細書で使用される場合、「併用療法」または「組み合わせて投与される」は、2つ(またはそれ以上)の異なる薬剤または治療が、特定の疾患または状態に対する定義された治療レジメンの一部として対象に投与されることを意味する。治療レジメンは、対象に対する別々の薬剤の効果が重複するように、各薬剤の投与の用量及び周期性を定義する。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤の送達は、同時または併用であり、薬剤は共配合されてもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤は、共配合されておらず、処方されたレジメンの一部として逐次的様式で投与される。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤または組み合わせた治療の投与は、症状、または障害に関連する他のパラメータの低減が、単独でまたは一方の非存在下で送達される1つの薬剤または治療で観察されるものよりも大きいようなものである。2つの治療の効果は、部分的に相加的、完全に相加的、または相加的を超える(例えば、相乗的)であり得る。各治療薬の連続または実質的に同時の投与は、これらに限定されないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を介した直接吸収を含む、任意の適切な経路によって影響され得る。治療薬は、同じ経路によって、または異なる経路によって投与することができる。例えば、組み合わせの第1の治療薬は、静脈内注射によって投与されてもよいが、一方で、組み合わせの第2の治療薬が経口投与されてもよい。
【0100】
本明細書で使用される場合、「BRG1」という用語は、ATP依存性クロマチンリモデラーSMARCA4を指す。BRG1は、BAF複合体、SWI/SNF ATPアーゼクロマチンリモデリング複合体の構成要素である。ヒトBRG1は、19番染色体上のSMARCA4遺伝子によってコードされ、その核酸配列は、配列番号1に示されている。(GenBank受託番号:NM_001128849.1(mRNA);www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NM_001128849.1?report=fasta)
GGCGGGGGAGGCGCCGGGAAGTCGACGGCGCCGGCGGCTCCTGCAGGAGGCCACTGTCTGCAGCTCCCGT
GAAGATGTCCACTCCAGACCCACCCCTGGGCGGAACTCCTCGGCCAGGTCCTTCCCCGGGCCCTGGCCCT
TCCCCTGGAGCCATGCTGGGCCCTAGCCCGGGTCCCTCGCCGGGCTCCGCCCACAGCATGATGGGGCCCA
GCCCAGGGCCGCCCTCAGCAGGACACCCCATCCCCACCCAGGGGCCTGGAGGGTACCCTCAGGACAACAT
GCACCAGATGCACAAGCCCATGGAGTCCATGCATGAGAAGGGCATGTCGGACGACCCGCGCTACAACCAG
ATGAAAGGAATGGGGATGCGGTCAGGGGGCCATGCTGGGATGGGGCCCCCGCCCAGCCCCATGGACCAGC
ACTCCCAAGGTTACCCCTCGCCCCTGGGTGGCTCTGAGCATGCCTCTAGTCCAGTTCCAGCCAGTGGCCC
GTCTTCGGGGCCCCAGATGTCTTCCGGGCCAGGAGGTGCCCCGCTGGATGGTGCTGACCCCCAGGCCTTG
GGGCAGCAGAACCGGGGCCCAACCCCATTTAACCAGAACCAGCTGCACCAGCTCAGAGCTCAGATCATGG
CCTACAAGATGCTGGCCAGGGGGCAGCCCCTCCCCGACCACCTGCAGATGGCGGTGCAGGGCAAGCGGCC
GATGCCCGGGATGCAGCAGCAGATGCCAACGCTACCTCCACCCTCGGTGTCCGCAACAGGACCCGGCCCT
GGCCCTGGCCCTGGCCCCGGCCCGGGTCCCGGCCCGGCACCTCCAAATTACAGCAGGCCTCATGGTATGG
GAGGGCCCAACATGCCTCCCCCAGGACCCTCGGGCGTGCCCCCCGGGATGCCAGGCCAGCCTCCTGGAGG
GCCTCCCAAGCCCTGGCCTGAAGGACCCATGGCGAATGCTGCTGCCCCCACGAGCACCCCTCAGAAGCTG
ATTCCCCCGCAGCCAACGGGCCGCCCTTCCCCCGCGCCCCCTGCCGTCCCACCCGCCGCCTCGCCCGTGA
TGCCACCGCAGACCCAGTCCCCCGGGCAGCCGGCCCAGCCCGCGCCCATGGTGCCACTGCACCAGAAGCA
GAGCCGCATCACCCCCATCCAGAAGCCGCGGGGCCTCGACCCTGTGGAGATCCTGCAGGAGCGCGAGTAC
AGGCTGCAGGCTCGCATCGCACACCGAATTCAGGAACTTGAAAACCTTCCCGGGTCCCTGGCCGGGGATT
TGCGAACCAAAGCGACCATTGAGCTCAAGGCCCTCAGGCTGCTGAACTTCCAGAGGCAGCTGCGCCAGGA
GGTGGTGGTGTGCATGCGGAGGGACACAGCGCTGGAGACAGCCCTCAATGCTAAGGCCTACAAGCGCAGC
AAGCGCCAGTCCCTGCGCGAGGCCCGCATCACTGAGAAGCTGGAGAAGCAGCAGAAGATCGAGCAGGAGC
GCAAGCGCCGGCAGAAGCACCAGGAATACCTCAATAGCATTCTCCAGCATGCCAAGGATTTCAAGGAATA
TCACAGATCCGTCACAGGCAAAATCCAGAAGCTGACCAAGGCAGTGGCCACGTACCATGCCAACACGGAG
CGGGAGCAGAAGAAAGAGAACGAGCGGATCGAGAAGGAGCGCATGCGGAGGCTCATGGCTGAAGATGAGG
AGGGGTACCGCAAGCTCATCGACCAGAAGAAGGACAAGCGCCTGGCCTACCTCTTGCAGCAGACAGACGA
GTACGTGGCTAACCTCACGGAGCTGGTGCGGCAGCACAAGGCTGCCCAGGTCGCCAAGGAGAAAAAGAAG
AAAAAGAAAAAGAAGAAGGCAGAAAATGCAGAAGGACAGACGCCTGCCATTGGGCCGGATGGCGAGCCTC
TGGACGAGACCAGCCAGATGAGCGACCTCCCGGTGAAGGTGATCCACGTGGAGAGTGGGAAGATCCTCAC
AGGCACAGATGCCCCCAAAGCCGGGCAGCTGGAGGCCTGGCTCGAGATGAACCCGGGGTATGAAGTAGCT
CCGAGGTCTGATAGTGAAGAAAGTGGCTCAGAAGAAGAGGAAGAGGAGGAGGAGGAAGAGCAGCCGCAGG
CAGCACAGCCTCCCACCCTGCCCGTGGAGGAGAAGAAGAAGATTCCAGATCCAGACAGCGATGACGTCTC
TGAGGTGGACGCGCGGCACATCATTGAGAATGCCAAGCAAGATGTCGATGATGAATATGGCGTGTCCCAG
GCCCTTGCACGTGGCCTGCAGTCCTACTATGCCGTGGCCCATGCTGTCACTGAGAGAGTGGACAAGCAGT
CAGCGCTTATGGTCAATGGTGTCCTCAAACAGTACCAGATCAAAGGTTTGGAGTGGCTGGTGTCCCTGTA
CAACAACAACCTGAACGGCATCCTGGCCGACGAGATGGGCCTGGGGAAGACCATCCAGACCATCGCGCTC
ATCACGTACCTCATGGAGCACAAACGCATCAATGGGCCCTTCCTCATCATCGTGCCTCTCTCAACGCTGT
CCAACTGGGCGTACGAGTTTGACAAGTGGGCCCCCTCCGTGGTGAAGGTGTCTTACAAGGGATCCCCAGC
AGCAAGACGGGCCTTTGTCCCCCAGCTCCGGAGTGGGAAGTTCAACGTCTTGCTGACGACGTACGAGTAC
ATCATCAAAGACAAGCACATCCTCGCCAAGATCCGTTGGAAGTACATGATTGTGGACGAAGGTCACCGCA
TGAAGAACCACCACTGCAAGCTGACGCAGGTGCTCAACACGCACTATGTGGCACCCCGCCGCCTGCTGCT
GACGGGCACACCGCTGCAGAACAAGCTTCCCGAGCTCTGGGCGCTGCTCAACTTCCTGCTGCCCACCATC
TTCAAGAGCTGCAGCACCTTCGAGCAGTGGTTTAACGCACCCTTTGCCATGACCGGGGAAAAGGTGGACC
TGAATGAGGAGGAAACCATTCTCATCATCCGGCGTCTCCACAAAGTGCTGCGGCCCTTCTTGCTCCGACG
ACTCAAGAAGGAAGTCGAGGCCCAGTTGCCCGAAAAGGTGGAGTACGTCATCAAGTGCGACATGTCTGCG
CTGCAGCGAGTGCTCTACCGCCACATGCAGGCCAAGGGCGTGCTGCTGACTGATGGCTCCGAGAAGGACA
AGAAGGGCAAAGGCGGCACCAAGACCCTGATGAACACCATCATGCAGCTGCGGAAGATCTGCAACCACCC
CTACATGTTCCAGCACATCGAGGAGTCCTTTTCCGAGCACTTGGGGTTCACTGGCGGCATTGTCCAAGGG
CTGGACCTGTACCGAGCCTCGGGTAAATTTGAGCTTCTTGATAGAATTCTTCCCAAACTCCGAGCAACCA
ACCACAAAGTGCTGCTGTTCTGCCAAATGACCTCCCTCATGACCATCATGGAAGATTACTTTGCGTATCG
CGGCTTTAAATACCTCAGGCTTGATGGAACCACGAAGGCGGAGGACCGGGGCATGCTGCTGAAAACCTTC
AACGAGCCCGGCTCTGAGTACTTCATCTTCCTGCTCAGCACCCGGGCTGGGGGGCTCGGCCTGAACCTCC
AGTCGGCAGACACTGTGATCATTTTTGACAGCGACTGGAATCCTCACCAGGACCTGCAAGCGCAGGACCG
AGCCCACCGCATCGGGCAGCAGAACGAGGTGCGTGTGCTCCGCCTCTGCACCGTCAACAGCGTGGAGGAG
AAGATCCTAGCTGCAGCCAAGTACAAGCTCAACGTGGACCAGAAGGTGATCCAGGCCGGCATGTTCGACC
AGAAGTCCTCCAGCCATGAGCGGCGCGCCTTCCTGCAGGCCATCCTGGAGCACGAGGAGCAGGATGAGAG
CAGACACTGCAGCACGGGCAGCGGCAGTGCCAGCTTCGCCCACACTGCCCCTCCGCCAGCGGGCGTCAAC
CCCGACTTGGAGGAGCCACCTCTAAAGGAGGAAGACGAGGTGCCCGACGACGAGACCGTCAACCAGATGA
TCGCCCGGCACGAGGAGGAGTTTGATCTGTTCATGCGCATGGACCTGGACCGCAGGCGCGAGGAGGCCCG
CAACCCCAAGCGGAAGCCGCGCCTCATGGAGGAGGACGAGCTCCCCTCGTGGATCATCAAGGACGACGCG
GAGGTGGAGCGGCTGACCTGTGAGGAGGAGGAGGAGAAGATGTTCGGCCGTGGCTCCCGCCACCGCAAGG
AGGTGGACTACAGCGACTCACTGACGGAGAAGCAGTGGCTCAAGAAAATTACAGGAAAAGATATCCATGA
CACAGCCAGCAGTGTGGCACGTGGGCTACAATTCCAGCGTGGCCTTCAGTTCTGCACACGTGCGTCAAAG
GCCATCGAGGAGGGCACGCTGGAGGAGATCGAAGAGGAGGTCCGGCAGAAGAAATCATCACGGAAGCGCA
AGCGAGACAGCGACGCCGGCTCCTCCACCCCGACCACCAGCACCCGCAGCCGCGACAAGGACGACGAGAG
CAAGAAGCAGAAGAAGCGCGGGCGGCCGCCTGCCGAGAAACTCTCCCCTAACCCACCCAACCTCACCAAG
AAGATGAAGAAGATTGTGGATGCCGTGATCAAGTACAAGGACAGCAGCAGTGGACGTCAGCTCAGCGAGG
TCTTCATCCAGCTGCCCTCGCGAAAGGAGCTGCCCGAGTACTACGAGCTCATCCGCAAGCCCGTGGACTT
CAAGAAGATAAAGGAGCGCATTCGCAACCACAAGTACCGCAGCCTCAACGACCTAGAGAAGGACGTCATG
CTCCTGTGCCAGAACGCACAGACCTTCAACCTGGAGGGCTCCCTGATCTATGAAGACTCCATCGTCTTGC
AGTCGGTCTTCACCAGCGTGCGGCAGAAAATCGAGAAGGAGGATGACAGTGAAGGCGAGGAGAGTGAGGA
GGAGGAAGAGGGCGAGGAGGAAGGCTCCGAATCCGAATCTCGGTCCGTCAAAGTGAAGATCAAGCTTGGC
CGGAAGGAGAAGGCACAGGACCGGCTGAAGGGCGGCCGGCGGCGGCCGAGCCGAGGGTCCCGAGCCAAGC
CGGTCGTGAGTGACGATGACAGTGAGGAGGAACAAGAGGAGGACCGCTCAGGAAGTGGCAGCGAAGAAGA
CTGAGCCCCGACATTCCAGTCTCGACCCCGAGCCCCTCGTTCCAGAGCTGAGATGGCATAGGCCTTAGCA
GTAACGGGTAGCAGCAGATGTAGTTTCAGACTTGGAGTAAAACTGTATAAACAAAAGAATCTTCCATATT
TATACAGCAGAGAAGCTGTAGGACTGTTTGTGACTGGCCCTGTCCTGGCATCAGTAGCATCTGTAACAGC
ATTAACTGTCTTAAAGAGAGAGAGAGAGAATTCCGAATTGGGGAACACACGATACCTGTTTTTCTTTTCC
GTTGCTGGCAGTACTGTTGCGCCGCAGTTTGGAGTCACTGTAGTTAAGTGTGGATGCATGTGCGTCACCG
TCCACTCCTCCTACTGTATTTTATTGGACAGGTCAGACTCGCCGGGGGCCCGGCGAGGGTATGTCAGTGT
CACTGGATGTCAAACAGTAATAAATTAAACCAACAACAAAACGCACAGCCAAAAAAAAA
「BRG1」という用語はまた、配列番号2に示される野生型BRG1のアミノ酸配列と、少なくとも85%の同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%の同一性、またはそれ以上)を有するタンパク質などの、野生型BRG1タンパク質の天然バリアントを指す(UniProt受託番号:P51532;www.uniprot.org/uniprot/P51532.fasta)。
【0101】
配列番号2.
MSTPDPPLGGTPRPGPSPGPGPSPGAMLGPSPGPSPGSAHSMMGPSPGPPSAGHPIPTQG
PGGYPQDNMHQMHKPMESMHEKGMSDDPRYNQMKGMGMRSGGHAGMGPPPSPMDQHSQGY
PSPLGGSEHASSPVPASGPSSGPQMSSGPGGAPLDGADPQALGQQNRGPTPFNQNQLHQL
RAQIMAYKMLARGQPLPDHLQMAVQGKRPMPGMQQQMPTLPPPSVSATGPGPGPGPGPGP
GPGPAPPNYSRPHGMGGPNMPPPGPSGVPPGMPGQPPGGPPKPWPEGPMANAAAPTSTPQ
KLIPPQPTGRPSPAPPAVPPAASPVMPPQTQSPGQPAQPAPMVPLHQKQSRITPIQKPRG
LDPVEILQEREYRLQARIAHRIQELENLPGSLAGDLRTKATIELKALRLLNFQRQLRQEV
VVCMRRDTALETALNAKAYKRSKRQSLREARITEKLEKQQKIEQERKRRQKHQEYLNSIL
QHAKDFKEYHRSVTGKIQKLTKAVATYHANTEREQKKENERIEKERMRRLMAEDEEGYRK
LIDQKKDKRLAYLLQQTDEYVANLTELVRQHKAAQVAKEKKKKKKKKKAENAEGQTPAIG
PDGEPLDETSQMSDLPVKVIHVESGKILTGTDAPKAGQLEAWLEMNPGYEVAPRSDSEES
GSEEEEEEEEEEQPQAAQPPTLPVEEKKKIPDPDSDDVSEVDARHIIENAKQDVDDEYGV
SQALARGLQSYYAVAHAVTERVDKQSALMVNGVLKQYQIKGLEWLVSLYNNNLNGILADE
MGLGKTIQTIALITYLMEHKRINGPFLIIVPLSTLSNWAYEFDKWAPSVVKVSYKGSPAA
RRAFVPQLRSGKFNVLLTTYEYIIKDKHILAKIRWKYMIVDEGHRMKNHHCKLTQVLNTH
YVAPRRLLLTGTPLQNKLPELWALLNFLLPTIFKSCSTFEQWFNAPFAMTGEKVDLNEEE
TILIIRRLHKVLRPFLLRRLKKEVEAQLPEKVEYVIKCDMSALQRVLYRHMQAKGVLLTD
GSEKDKKGKGGTKTLMNTIMQLRKICNHPYMFQHIEESFSEHLGFTGGIVQGLDLYRASG
KFELLDRILPKLRATNHKVLLFCQMTSLMTIMEDYFAYRGFKYLRLDGTTKAEDRGMLLK
TFNEPGSEYFIFLLSTRAGGLGLNLQSADTVIIFDSDWNPHQDLQAQDRAHRIGQQNEVR
VLRLCTVNSVEEKILAAAKYKLNVDQKVIQAGMFDQKSSSHERRAFLQAILEHEEQDESR
HCSTGSGSASFAHTAPPPAGVNPDLEEPPLKEEDEVPDDETVNQMIARHEEEFDLFMRMD
LDRRREEARNPKRKPRLMEEDELPSWIIKDDAEVERLTCEEEEEKMFGRGSRHRKEVDYS
DSLTEKQWLKAIEEGTLEEIEEEVRQKKSSRKRKRDSDAGSSTPTTSTRSRDKDDESKKQ
KKRGRPPAEKLSPNPPNLTKKMKKIVDAVIKYKDSSSGRQLSEVFIQLPSRKELPEYYEL
IRKPVDFKKIKERIRNHKYRSLNDLEKDVMLLCQNAQTFNLEGSLIYEDSIVLQSVFTSV
RQKIEKEDDSEGEESEEEEEGEEEGSESESRSVKVKIKLGRKEKAQDRLKGGRRRPSRGS
RAKPVVSDDDSEEEQEEDRSGSGSEED
本明細書で使用される場合、「BRM」という用語は、可能性の高いグローバル転写活性化因子SNF2L2を指す。BRMは、BAF複合体、SWI/SNF ATPアーゼクロマチンリモデリング複合体の構成要素である。ヒトBRMは、9番染色体上のSMARCA2遺伝子によってコードされ、その核酸配列は、配列番号3に示されている。(GenBank受託番号:NM_003070.4 www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NM_003070.4?report=fasta)
配列番号3.
GCGTCTTCCGGCGCCCGCGGAGGAGGCGAGGGTGGGACGCTGGGCGGAGCCCGAGTTTAGGAAGAGGAGG
GGACGGCTGTCATCAATGAAGTCATATTCATAATCTAGTCCTCTCTCCCTCTGTTTCTGTACTCTGGGTG
ACTCAGAGAGGGAAGAGATTCAGCCAGCACACTCCTCGCGAGCAAGCATTACTCTACTGACTGGCAGAGA
CAGGAGAGGTAGATGTCCACGCCCACAGACCCTGGTGCGATGCCCCACCCAGGGCCTTCGCCGGGGCCTG
GGCCTTCCCCTGGGCCAATTCTTGGGCCTAGTCCAGGACCAGGACCATCCCCAGGTTCCGTCCACAGCAT
GATGGGGCCAAGTCCTGGACCTCCAAGTGTCTCCCATCCTATGCCGACGATGGGGTCCACAGACTTCCCA
CAGGAAGGCATGCATCAAATGCATAAGCCCATCGATGGTATACATGACAAGGGGATTGTAGAAGACATCC
ATTGTGGATCCATGAAGGGCACTGGTATGCGACCACCTCACCCAGGCATGGGCCCTCCCCAGAGTCCAAT
GGATCAACACAGCCAAGGTTATATGTCACCACACCCATCTCCATTAGGAGCCCCAGAGCACGTCTCCAGC
CCTATGTCTGGAGGAGGCCCAACTCCACCTCAGATGCCACCAAGCCAGCCGGGGGCCCTCATCCCAGGTG
ATCCGCAGGCCATGAGCCAGCCCAACAGAGGTCCCTCACCTTTCAGTCCTGTCCAGCTGCATCAGCTTCG
AGCTCAGATTTTAGCTTATAAAATGCTGGCCCGAGGCCAGCCCCTCCCCGAAACGCTGCAGCTTGCAGTC
CAGGGGAAAAGGACGTTGCCTGGCTTGCAGCAACAACAGCAGCAGCAACAGCAGCAGCAGCAGCAGCAGC
AGCAGCAGCAGCAGCAGCAACAGCAGCCGCAGCAGCAGCCGCCGCAACCACAGACGCAGCAACAACAGCA
GCCGGCCCTTGTTAACTACAACAGACCATCTGGCCCGGGGCCGGAGCTGAGCGGCCCGAGCACCCCGCAG
AAGCTGCCGGTGCCCGCGCCCGGCGGCCGGCCCTCGCCCGCGCCCCCCGCAGCCGCGCAGCCGCCCGCGG
CCGCAGTGCCCGGGCCCTCAGTGCCGCAGCCGGCCCCGGGGCAGCCCTCGCCCGTCCTCCAGCTGCAGCA
GAAGCAGAGCCGCATCAGCCCCATCCAGAAACCGCAAGGCCTGGACCCCGTGGAAATTCTGCAAGAGCGG
GAATACAGACTTCAGGCCCGCATAGCTCATAGGATACAAGAACTGGAAAATCTGCCTGGCTCTTTGCCAC
CAGATTTAAGAACCAAAGCAACCGTGGAACTAAAAGCACTTCGGTTACTCAATTTCCAGCGTCAGCTGAG
ACAGGAGGTGGTGGCCTGCATGCGCAGGGACACGACCCTGGAGACGGCTCTCAACTCCAAAGCATACAAA
CGGAGCAAGCGCCAGACTCTGAGAGAAGCTCGCATGACCGAGAAGCTGGAGAAGCAGCAGAAGATTGAGC
AGGAGAGGAAACGCCGTCAGAAACACCAGGAATACCTGAACAGTATTTTGCAACATGCAAAAGATTTTAA
GGAATATCATCGGTCTGTGGCCGGAAAGATCCAGAAGCTCTCCAAAGCAGTGGCAACTTGGCATGCCAAC
ACTGAAAGAGAGCAGAAGAAGGAGACAGAGCGGATTGAAAAGGAGAGAATGCGGCGACTGATGGCTGAAG
ATGAGGAGGGTTATAGAAAACTGATTGATCAAAAGAAAGACAGGCGTTTAGCTTACCTTTTGCAGCAGAC
CGATGAGTATGTAGCCAATCTGACCAATCTGGTTTGGGAGCACAAGCAAGCCCAGGCAGCCAAAGAGAAG
AAGAAGAGGAGGAGGAGGAAGAAGAAGGCTGAGGAGAATGCAGAGGGTGGGGAGTCTGCCCTGGGACCGG
ATGGAGAGCCCATAGATGAGAGCAGCCAGATGAGTGACCTCCCTGTCAAAGTGACTCACACAGAAACCGG
CAAGGTTCTGTTCGGACCAGAAGCACCCAAAGCAAGTCAGCTGGACGCCTGGCTGGAAATGAATCCTGGT
TATGAAGTTGCCCCTAGATCTGACAGTGAAGAGAGTGATTCTGATTATGAGGAAGAGGATGAGGAAGAAG
AGTCCAGTAGGCAGGAAACCGAAGAGAAAATACTCCTGGATCCAAATAGCGAAGAAGTTTCTGAGAAGGA
TGCTAAGCAGATCATTGAGACAGCTAAGCAAGACGTGGATGATGAATACAGCATGCAGTACAGTGCCAGG
GGCTCCCAGTCCTACTACACCGTGGCTCATGCCATCTCGGAGAGGGTGGAGAAACAGTCTGCCCTCCTAA
TTAATGGGACCCTAAAGCATTACCAGCTCCAGGGCCTGGAATGGATGGTTTCCCTGTATAATAACAACTT
GAACGGAATCTTAGCCGATGAAATGGGGCTTGGAAAGACCATACAGACCATTGCACTCATCACTTATCTG
ATGGAGCACAAAAGACTCAATGGCCCCTATCTCATCATTGTTCCCCTTTCGACTCTATCTAACTGGACAT
ATGAATTTGACAAATGGGCTCCTTCTGTGGTGAAGATTTCTTACAAGGGTACTCCTGCCATGCGTCGCTC
CCTTGTCCCCCAGCTACGGAGTGGCAAATTCAATGTCCTCTTGACTACTTATGAGTATATTATAAAAGAC
AAGCACATTCTTGCAAAGATTCGGTGGAAATACATGATAGTGGACGAAGGCCACCGAATGAAGAATCACC
ACTGCAAGCTGACTCAGGTCTTGAACACTCACTATGTGGCCCCCAGAAGGATCCTCTTGACTGGGACCCC
GCTGCAGAATAAGCTCCCTGAACTCTGGGCCCTCCTCAACTTCCTCCTCCCAACAATTTTTAAGAGCTGC
AGCACATTTGAACAATGGTTCAATGCTCCATTTGCCATGACTGGTGAAAGGGTGGACTTAAATGAAGAAG
AAACTATATTGATCATCAGGCGTCTACATAAGGTGTTAAGACCATTTTTACTAAGGAGACTGAAGAAAGA
AGTTGAATCCCAGCTTCCCGAAAAAGTGGAATATGTGATCAAGTGTGACATGTCAGCTCTGCAGAAGATT
CTGTATCGCCATATGCAAGCCAAGGGGATCCTTCTCACAGATGGTTCTGAGAAAGATAAGAAGGGGAAAG
GAGGTGCTAAGACACTTATGAACACTATTATGCAGTTGAGAAAAATCTGCAACCACCCATATATGTTTCA
GCACATTGAGGAATCCTTTGCTGAACACCTAGGCTATTCAAATGGGGTCATCAATGGGGCTGAACTGTAT
CGGGCCTCAGGGAAGTTTGAGCTGCTTGATCGTATTCTGCCAAAATTGAGAGCGACTAATCACCGAGTGC
TGCTTTTCTGCCAGATGACATCTCTCATGACCATCATGGAGGATTATTTTGCTTTTCGGAACTTCCTTTA
CCTACGCCTTGATGGCACCACCAAGTCTGAAGATCGTGCTGCTTTGCTGAAGAAATTCAATGAACCTGGA
TCCCAGTATTTCATTTTCTTGCTGAGCACAAGAGCTGGTGGCCTGGGCTTAAATCTTCAGGCAGCTGATA
CAGTGGTCATCTTTGACAGCGACTGGAATCCTCATCAGGATCTGCAGGCCCAAGACCGAGCTCACCGCAT
CGGGCAGCAGAACGAGGTCCGGGTACTGAGGCTCTGTACCGTGAACAGCGTGGAGGAAAAGATCCTCGCG
GCCGCAAAATACAAGCTGAACGTGGATCAGAAAGTGATCCAGGCGGGCATGTTTGACCAAAAGTCTTCAA
GCCACGAGCGGAGGGCATTCCTGCAGGCCATCTTGGAGCATGAGGAGGAAAATGAGGAAGAAGATGAAGT
ACCGGACGATGAGACTCTGAACCAAATGATTGCTCGACGAGAAGAAGAATTTGACCTTTTTATGCGGATG
GACATGGACCGGCGGAGGGAAGATGCCCGGAACCCGAAACGGAAGCCCCGTTTAATGGAGGAGGATGAGC
TGCCCTCCTGGATCATTAAGGATGACGCTGAAGTAGAAAGGCTCACCTGTGAAGAAGAGGAGGAGAAAAT
ATTTGGGAGGGGGTCCCGCCAGCGCCGTGACGTGGACTACAGTGACGCCCTCACGGAGAAGCAGTGGCTA
AGGGCCATCGAAGACGGCAATTTGGAGGAAATGGAAGAGGAAGTACGGCTTAAGAAGCGAAAAAGACGAA
GAAATGTGGATAAAGATCCTGCAAAAGAAGATGTGGAAAAAGCTAAGAAGAGAAGAGGCCGCCCTCCCGC
TGAGAAACTGTCACCAAATCCCCCCAAACTGACAAAGCAGATGAACGCTATCATCGATACTGTGATAAAC
TACAAAGATAGGTGTAACGTGGAGAAGGTGCCCAGTAATTCTCAGTTGGAAATAGAAGGAAACAGTTCAG
GGCGACAGCTCAGTGAAGTCTTCATTCAGTTACCTTCAAGGAAAGAATTACCAGAATACTATGAATTAAT
TAGGAAGCCAGTGGATTTCAAAAAAATAAAGGAAAGGATTCGTAATCATAAGTACCGGAGCCTAGGCGAC
CTGGAGAAGGATGTCATGCTTCTCTGTCACAACGCTCAGACGTTCAACCTGGAGGGATCCCAGATCTATG
AAGACTCCATCGTCTTACAGTCAGTGTTTAAGAGTGCCCGGCAGAAAATTGCCAAAGAGGAAGAGAGTGA
GGATGAAAGCAATGAAGAGGAGGAAGAGGAAGATGAAGAAGAGTCAGAGTCCGAGGCAAAATCAGTCAAG
GTGAAAATTAAGCTCAATAAAAAAGATGACAAAGGCCGGGACAAAGGGAAAGGCAAGAAAAGGCCAAATC
GAGGAAAAGCCAAACCTGTAGTGAGCGATTTTGACAGCGATGAGGAGCAGGATGAACGTGAACAGTCAGA
AGGAAGTGGGACGGATGATGAGTGATCAGTATGGACCTTTTTCCTTGGTAGAACTGAATTCCTTCCTCCC
CTGTCTCATTTCTACCCAGTGAGTTCATTTGTCATATAGGCACTGGGTTGTTTCTATATCATCATCGTCT
ATAAACTAGCTTTAGGATAGTGCCAGACAAACATATGATATCATGGTGTAAAAAACACACACATACACAA
ATATTTGTAACATATTGTGACCAAATGGGCCTCAAAGATTCAGATTGAAACAAACAAAAAGCTTTTGATG
GAAAATATGTGGGTGGATAGTATATTTCTATGGGTGGGTCTAATTTGGTAACGGTTTGATTGTGCCTGGT
TTTATCACCTGTTCAGATGAGAAGATTTTTGTCTTTTGTAGCACTGATAACCAGGAGAAGCCATTAAAAG
CCACTGGTTATTTTATTTTTCATCAGGCAATTTTCGAGGTTTTTATTTGTTCGGTATTGTTTTTTTACAC
TGTGGTACATATAAGCAACTTTAATAGGTGATAAATGTACAGTAGTTAGATTTCACCTGCATATACATTT
TTCCATTTTATGCTCTATGATCTGAACAAAAGCTTTTTGAATTGTATAAGATTTATGTCTACTGTAAACA
TTGCTTAATTTTTTTGCTCTTGATTTAAAAAAAAGTTTTGTTGAAAGCGCTATTGAATATTGCAATCTAT
ATAGTGTATTGGATGGCTTCTTTTGTCACCCTGATCTCCTATGTTACCAATGTGTATCGTCTCCTTCTCC
CTAAAGTGTACTTAATCTTTGCTTTCTTTGCACAATGTCTTTGGTTGCAAGTCATAAGCCTGAGGCAAAT
AAAATTCCAGTAATTTCGAAGAATGTGGTGTTGGTGCTTTCCTAATAAAGAAATAATTTAGCTTGACAAA
AAAAAAAAAAAA
「BRM」という用語はまた、配列番号4に示される野生型BRMのアミノ酸配列と、少なくとも85%の同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%の同一性、またはそれ以上)を有するタンパク質などの、野生型BRMタンパク質の天然バリアントを指す。(Uniprot受託番号:P51531;www.uniprot.org/uniprot/P51531.fasta)
配列番号4.
MSTPTDPGAMPHPGPSPGPGPSPGPILGPSPGPGPSPGSVHSMMGPSPGPPSVSHPMPTM
GSTDFPQEGMHQMHKPIDGIHDKGIVEDIHCGSMKGTGMRPPHPGMGPPQSPMDQHSQGY
MSPHPSPLGAPEHVSSPMSGGGPTPPQMPPSQPGALIPGDPQAMSQPNRGPSPFSPVQLH
QLRAQILAYKMLARGQPLPETLQLAVQGKRTLPGLQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQPQ
QQPPQPQTQQQQQPALVNYNRPSGPGPELSGPSTPQKLPVPAPGGRPSPAPPAAAQPPAA
AVPGPSVPQPAPGQPSPVLQLQQKQSRISPIQKPQGLDPVEILQEREYRLQARIAHRIQE
LENLPGSLPPDLRTKATVELKALRLLNFQRQLRQEVVACMRRDTTLETALNSKAYKRSKR
QTLREARMTEKLEKQQKIEQERKRRQKHQEYLNSILQHAKDFKEYHRSVAGKIQKLSKAV
ATWHANTEREQKKETERIEKERMRRLMAEDEEGYRKLIDQKKDRRLAYLLQQTDEYVANL
TNLVWEHKQAQAAKEKKKRRRRKKKAEENAEGGESALGPDGEPIDESSQMSDLPVKVTHT
ETGKVLFGPEAPKASQLDAWLEMNPGYEVAPRSDSEESDSDYEEEDEEEESSRQETEEKI
LLDPNSEEVSEKDAKQIIETAKQDVDDEYSMQYSARGSQSYYTVAHAISERVEKQSALLI
NGTLKHYQLQGLEWMVSLYNNNLNGILADEMGLGKTIQTIALITYLMEHKRLNGPYLIIV
PLSTLSNWTYEFDKWAPSVVKISYKGTPAMRRSLVPQLRSGKFNVLLTTYEYIIKDKHIL
AKIRWKYMIVDEGHRMKNHHCKLTQVLNTHYVAPRRILLTGTPLQNKLPELWALLNFLLP
TIFKSCSTFEQWFNAPFAMTGERVDLNEEETILIIRRLHKVLRPFLLRRLKKEVESQLPE
KVEYVIKCDMSALQKILYRHMQAKGILLTDGSEKDKKGKGGAKTLMNTIMQLRKICNHPY
MFQHIEESFAEHLGYSNGVINGAELYRASGKFELLDRILPKLRATNHRVLLFCQMTSLMT
IMEDYFAFRNFLYLRLDGTTKSEDRAALLKKFNEPGSQYFIFLLSTRAGGLGLNLQAADT
VVIFDSDWNPHQDLQAQDRAHRIGQQNEVRVLRLCTVNSVEEKILAAAKYKLNVDQKVIQ
AGMFDQKSSSHERRAFLQAILEHEEENEEEDEVPDDETLNQMIARREEEFDLFMRMDMDR
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本明細書で使用される場合、「分解剤(degrader)」という用語は、分解部分を含む小分子化合物を指し、化合物は、タンパク質の分解をもたらす(例えば、化合物の結合が、例えば、細胞または対象において、タンパク質のレベルの少なくとも5%の低減をもたらす)方法でタンパク質(例えば、BRG1及び/またはBRM)と相互作用する。
【0102】
本明細書中で使用される場合、「分解部分」という用語は、その結合が、タンパク質(例えば、BRG1及び/またはBRM)の分解をもたらす部分を指す。一例では、部分は、タンパク質(例えば、BRG1及び/またはBRM)を代謝するプロテアーゼまたはユビキチンリガーゼと結合する。
【0103】
「タンパク質のレベルを決定する」とは、直接または間接的のいずれかで、当該技術分野で既知である方法による、タンパク質またはタンパク質をコードするmRNAの検出を意味する。「直接決定すること」とは、物理的実体または値を得るためにプロセスを実行すること(例えば、試料に対してアッセイもしくは試験を実行すること、またはその用語が本明細書で定義されるように「試料を分析すること」)を意味する。「間接的に決定すること」は、別の団体または供給源(例えば、物理的実体または値を直接的に取得した第3者の研究室)から物理的実体または値を受領することを指す。タンパク質レベルを測定する方法には、概して、これらに限定されないが、ウェスタンブロット法、免疫ブロット法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫沈降、免疫蛍光、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、リン光、免疫組織化学分析、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)質量分析法、液体クロマトグラフィー(LC)質量分析法、マイクロサイトメトリー、顕微鏡法、蛍光活性化細胞分類(FACS)、及びフローサイトメトリー、ならびにこれらに限定されないが、酵素活性または他のタンパク質パートナーとの相互作用を含む、タンパク質の性質に基づくアッセイが含まれる。mRNAレベルを測定する方法は、当該技術分野で既知である。
【0104】
「BAF複合体の活性を調節する」とは、BAF複合体(例えば、GBAF)に関連する活性、または関連する下流効果のレベルを変化させることを意味する。BAF複合体の活性レベルは、当該技術分野で既知の任意の方法、例えば、Kadoch et al,Cell 153:71-85(2013)に記載されている方法を使用して測定することができ、その方法は参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
「BRG1及び/またはBRMの活性を低減する」とは、BRG1及び/またはBRMに関連する活性または関連する下流効果のレベルを減少させることを意味する。BRG1及び/またはBRMの活性の阻害の非限定的な例は、細胞におけるBAF複合体(例えば、GBAF)のレベルを減少させることである。BRG1及び/またはBRMの活性レベルは、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して測定され得る。いくつかの実施形態では、BRG1及び/またはBRMの活性を低減する薬剤は、小分子BRG1及び/またはBRM阻害剤である。
【0106】
「BRG1及び/またはBRMのレベルを低減する」とは、細胞または対象におけるBRG1及び/またはBRMのレベルを減少させることを意味する。BRG1及び/またはBRMのレベルは、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して測定され得る。
【0107】
本明細書で使用される場合、「BRG及び/またはBRMを阻害する」という用語は、タンパク質のATPアーゼ触媒結合ドメインまたはブロモドメインのレベルまたは活性を、遮断または低減することを指す。BRG1及び/またはBRMの阻害は、当該技術分野で既知の方法(例えば、BRG及び/またはBRMのATPアーゼアッセイ、Nano DSFアッセイ、あるいはBRG1及び/またはBRMのルシフェラーゼ細胞アッセイ)を使用して決定され得る。
【0108】
「レベル」とは、基準物質と比較して、タンパク質、またはタンパク質をコードするmRNAのレベルを意味する。基準物質は、本明細書で定義されるように、任意の有用な基準物質であり得る。タンパク質の「減少したレベル」または「増加したレベル」とは、基準物質と比較した場合のタンパク質レベルの減少または増加を意味する(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約500%、もしくはそれ以上の減少もしくは増加、基準物質と比較して約10%、約15%、約20%、約50%、約75%、約100%、もしくは約200%超の減少もしくは増加、約0.01倍、約0.02倍、約0.1倍、約0.3倍、約0.5倍、約0.8倍未満、またはそれ未満の減少もしくは増加、または約1.2倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.8倍、約2.0倍、約3.0倍、約3.5倍、約4.5倍、約5.0倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約1000倍超、もしくはそれ以上の増加)。タンパク質のレベルは、質量/体積(例えば、g/dL、mg/mL、μg/mL、ng/mL)または試料中の総タンパク質もしくはmRNAに対する百分率で表され得る。
【0109】
本明細書で使用される場合、「阻害剤」という用語は、タンパク質(例えば、BRG1及び/またはBRM)のレベル及び/または活性を低減する任意の薬剤を指す。阻害剤の非限定的な例には、小分子阻害剤、分解剤、抗体、酵素、またはポリヌクレオチド(例えば、siRNA)が挙げられる。
【0110】
本明細書で使用される場合、「LXS196」という用語は、以下の構造を有するPKC阻害剤、
【0111】
【0112】
またはその薬学的に許容される塩を指す。
本明細書で使用される場合、本明細書に記載されるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性(例えば、細胞または対象における)を低減する薬剤の「有効量」、「治療有効量」、及び「十分な量」という用語は、ヒトを含む対象に投与された場合、臨床結果を含む有益または望ましい結果をもたらすのに十分な量を指し、したがって、「有効量」またはその同義語は、それが適用される文脈に依存する。例えば、がんを治療するという文脈では、それは、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤の投与なしで得られた応答と比較して、治療応答を達成するのに十分なBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤の量である。そのような量に対応するであろう本明細書に記載されるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する所定の薬剤の量は、所与の薬剤、医薬製剤、投与の経路、疾患もしくは障害の種類、対象の識別(例えば、年齢、性別、及び/または重量)、または治療される宿主などの様々な要因に応じて変化するが、それにもかかわらず、当業者によって日常的に決定され得る。また、本明細書で使用される場合、本開示のBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤の「治療有効量」は、対照と比較して、対象において有益または所望の結果をもたらす量である。本明細書で定義されるように、本開示のBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤の治療有効量は、当業者によって、当該技術分野で既知の日常的な方法によって容易に決定され得る。投与量レジメンは、最適治療応答を提供するように調整され得る。
【0113】
「阻害性RNA剤」という用語は、RNA干渉を誘導するために標的RNAに対して十分な配列相補性を有するRNAまたはその類似体を指す。例には、RNAを作製するために使用され得るDNAも含まれる。RNA干渉(RNAi)は、標的分子(例えば、標的遺伝子、タンパク質、またはRNA)が下方制御される配列特異的または選択的プロセスを指す。一般に、干渉RNA(「iRNA」)は、特定のmRNAの触媒分解をもたらす二本鎖の低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、または一本鎖のマイクロRNA(miRNA)であり、遺伝子発現を低下または阻害するためにも使用され得る。
【0114】
「低分子干渉RNA」及び「siRNA」(「低分子干渉RNA」としても知られる)という用語は、約10~50ヌクレオチド長のRNA剤、好ましくは二本鎖剤を指し、鎖は、任意に、例えば、RNA干渉を誘導または媒介することができる、1、2、または3個の突出ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)を含む突出末端を有する。天然発生型siRNAは、細胞のRNAi機構(例えば、ダイサーまたはそのホモログ)によって、より長いdsRNA分子(例えば、>25ヌクレオチド長)から生成される。
【0115】
本明細書で使用される場合、「shRNA」という用語は、相補性配列の第1及び第2の領域を含むステムループ構造を有するRNA剤を指し、相補性の程度及び領域の配向は、塩基対合が領域間で生じるのに十分であり、第1及び第2の領域はループ領域によって結合されており、ループはループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の塩基対合の欠如から生じる。
【0116】
「miRNA」及び「マイクロRNA」という用語は、RNA干渉を誘導または媒介することができる、約10~50ヌクレオチド長、好ましくは約15~25ヌクレオチド長のRNA剤、好ましくは一本鎖剤を指す。天然発生型miRNAは、ダイサーによってステムループ前駆体RNA(すなわち、プレmiRNA)から生成される。本明細書で使用される場合、「ダイサー」という用語は、ダイサーならびにdsRNA構造をsiRNA、miRNA、siRNA様またはmiRNA様分子にプロセシングできる任意のダイサーオルソログまたはホモログを含む。マイクロRNA(「miRNA」)という用語は、天然発生型miRNAが(例えば、発生中に)一時的な様式で発現することが見出されているという事実に基づいて、「小分子RNA」(「stRNA」)と互換的に使用される。
【0117】
本明細書で使用される場合、「アンチセンス」という用語は、内因性遺伝子(例えば、BRG1及び/またはBRM)の発現を干渉するように、遺伝子、一次転写物、またはプロセシングされたmRNAの全てまたは一部と十分に相補的であるポリヌクレオチドを含む核酸を指す。「相補的」ポリヌクレオチドは、標準的なワトソン・クリックの相補性規則に従って塩基対合が可能なものである。具体的には、プリンはピリミジンと塩基対合し、DNAの場合、シトシンと対合したグアニン(G:C)、いずれかのチミンと対合したアデニン(A:T)、またはRNAの場合、ウラシルと対合したアデニン(A:U)の組み合わせを形成する。2つのポリヌクレオチドは、それらが互いに完全に相補的でなくても、各々が互いに実質的に相補的である少なくとも1つの領域を有することを条件として、互いにハイブリダイズし得ることが理解される。
【0118】
「アンチセンス核酸」という用語は、転写されてアンチセンスRNAを生成することができる一本鎖RNAならびに二本鎖DNA発現カセットを含む。「活性」アンチセンス核酸は、標的化ポリペプチド配列(例えば、BRG1及び/またはBRMポリペプチド配列)と、少なくとも80%の配列同一性(例えば、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、またはそれ以上の同一性)を有するポリペプチドをコードする一次転写物またはmRNAと選択的にハイブリダイズすることができるアンチセンスRNA分子である。アンチセンス核酸は、コード鎖全体、またはその一部分のみに相補的であり得る。別の実施形態では、アンチセンス核酸分子は、核酸配列のコード鎖の「コード領域」に対してアンチセンスである。「コード領域」という用語は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域を指す。別の実施形態では、アンチセンス核酸分子は、核酸配列のコード鎖の「非コード領域」に対してアンチセンスである。「非コード領域」という用語は、アミノ酸に翻訳されないコード領域に隣接する5’及び3’配列を指す(すなわち、5’及び3’非翻訳領域とも称される)。アンチセンス核酸分子は、mRNAのコード領域全体に相補的であり得るか、またはmRNAのコード領域もしくは非コード領域の一部のみにアンチセンスであり得る。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、翻訳開始部位を囲む領域に相補的であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50ヌクレオチド長であり得る。
【0119】
参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に対する「配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、必要な場合、ギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成した後、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列における核酸またはアミノ酸と同一である候補配列における核酸またはアミノ酸の割合として定義される。核酸またはアミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、当業者の能力の範囲内である様々な方式で、例えば、BLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者は、比較されている配列の完全長にわたる最大のアラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるために適切なパラメータを決定することができる。例えば、配列同一性パーセント値は、配列比較コンピュータプログラムBLASTを使用して生成され得る。例として、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと対比した、所与の核酸またはアミノ酸配列Aの配列同一性パーセント(代替的に、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと対比したある特定の配列同一性パーセントを有する所与の核酸またはアミノ酸配列Aとして表現され得る)は、次のように計算され:
100×(分数X/Y)
Xは、A及びBのプログラムのアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラム(例えば、BLAST)によって同一の一致としてスコア付けされたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、Yは、Bの核酸の総数である。核酸またはアミノ酸配列Aの長さが、核酸またはアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、AのBに対する配列同一性パーセントは、BのAに対する配列同一性パーセントに等しくないことが理解されるであろう。
【0120】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、本明細書に記載の化合物を含む組成物を表し、薬学的に許容される賦形剤を用いて製剤化され、哺乳動物における疾患の治療のための治療レジメンの一部として政府規制機関の承認を受けて製造または販売される。薬学的組成物は、例えば、単位剤形(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ゲルキャップ、またはシロップ)での経口投与用に、局所投与用に(例えば、クリーム、ゲル、ローション、または軟膏として)、静脈内投与用に(例えば、塞栓粒子状栓子を含まない滅菌溶液として、及び静脈内使用に好適な溶媒系で)、または任意の他の薬学的に許容される製剤で製剤化することができる。
【0121】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」とは、本明細書に記載される化合物以外の(例えば、活性化合物を懸濁または溶解することが可能なビヒクル)、患者において実質的に非毒性及び非炎症性であるという性質を有する任意の成分を指す。賦形剤には、例えば、抗付着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮助剤、崩壊剤、染料(色)、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、フィルム形成剤またはコーティング剤、香味剤、香料、滑剤(流動促進剤)、潤滑剤、防腐剤、印刷インク、吸着剤、懸濁剤または分散剤、甘味料、及び水和水が含まれ得る。例示的な賦形剤としては、これらに限定されないが、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファデンプン、プロピルパラベン、レチニルパルミテート、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、ショ糖、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、及びキシリトールが挙げられる。
【0122】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載される化合物のうちのいずれかの化合物の任意の薬学的に許容される塩を意味する。例えば、本明細書に記載される化合物のうちのいずれかの薬学的に許容される塩は、過度の毒性、刺激性、アレルギー応答を起こさずに、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、健全な医学的判断の範囲内であり、かつ合理的な利益/リスク比と釣り合う塩を含む。薬学的に許容される塩は、当該技術分野で既知である。例えば、薬学的に許容される塩は、Berge et al.,J.Pharmaceutical Sciences 66:1-19,1977及びPharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,(Eds.P.H.Stahl and C.G.Wermuth),Wiley-VCH,2008に記載されている。塩は、本明細書に記載される化合物の最終的な単離及び精製の間にその場で、または遊離塩基基を好適な有機酸と反応させることにより別々に調製することができる。
【0123】
本明細書に記載される化合物は、薬学的に許容される塩として調製することができるように、イオン化可能な基を有し得る。これらの塩は、無機酸もしくは有機酸を含む酸付加塩であってもよく、または塩は、本明細書に記載される化合物の酸性形態の場合、無機もしくは有機塩基から調製されてもよい。しばしば、化合物は、薬学的に許容される酸または塩基の付加生成物として調製される薬学的に許容される塩として調製または使用される。適切な塩を調製するための好適な薬学的に許容される酸及び塩基ならびに方法は、当該技術分野で既知である。塩は、無機酸及び有機酸ならびに塩基を含む薬学的に許容される無毒の酸及び塩基から調製され得る。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、及び吉草酸塩が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ性土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウム、ならびにこれらに限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びエチルアミンを含む、非毒性アンモニウム、4級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。
【0124】
「基準物質」とは、タンパク質またはmRNAレベルを比較するために使用される任意の有用な基準物質を意味する。基準物質は、比較目的で使用される任意の試料、標準、標準曲線、またはレベルであり得る。基準物質は、通常の基準試料または基準標準もしくはレベルであり得る。「基準試料」は、例えば、対照、例えば、「正常対照」などの所定の陰性対照値、または同じ対象から採取された以前の試料;正常な細胞もしくは正常な組織などの正常な健康な対象からの試料;疾患を有していない対象からの試料(例えば、細胞または組織);疾患があると診断されているが、本明細書に記載される化合物でまだ治療されていない対象からの試料;本明細書に記載される化合物によって治療されている対象からの試料;または既知の正常濃度の精製されたタンパク質(例えば、本明細書に記載される任意のもの)の試料であり得る。「基準標準またはレベル」とは、基準試料に由来する値または数を意味する。「正常対照値」は、非疾患状態を示す所定の値、例えば、健康な対照対象で期待される値である。典型的には、正常対照値は、範囲(「XとYとの間」)、高閾値(「X以下」)、または低閾値(「X以上」)として表される。特定のバイオマーカーの正常対照値内の測定値を有する対象は、典型的には、そのバイオマーカーの「正常範囲内」と称される。正常な基準標準またはレベルは、疾患または障害(例えば、がん)を有していない正常な対象;本明細書に記載される化合物で治療されている対象に由来する値または数であり得る。好ましい実施形態では、基準試料、標準、またはレベルは、以下の基準:年齢、体重、性別、病期、及び全体的な健康のうちの少なくとも1つによって、試料対象試料と一致する。正常な基準範囲内の精製されたタンパク質、例えば、本明細書に記載される任意のもののレベルの標準曲線もまた基準として使用することができる。
【0125】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、本発明による組成物が、例えば、実験的、診断的、予防的、及び/または治療的目的のために投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象には、任意の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳動物)が含まれる。対象は、治療を求めている、もしくは必要としている、治療を要求している、治療を受けている、将来治療を受けている、または特定の疾患もしくは状態について訓練を受けた専門家によって治療を受けているヒトもしくは動物であり得る。
【0126】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療した」、または「治療すること」という用語は、治療的処置及び予防的または防止的手段の両方を意味し、目的は、望ましくない生理学的状態、障害、もしくは疾患を予防もしくは減速(軽減)すること、または有益なもしくは所望の臨床結果を得ることである。有益なまたは所望の臨床結果は、これらに限定されないが、検出可能または検出不可能にかかわらず、症状の軽減;状態、疾患、障害、もしくは疾患の程度の減少;状態、障害、もしくは疾患の安定化(すなわち、悪化していない)状態;状態、障害、もしくは疾患の進行の発症の遅延もしくは減速;状態、障害、もしくは疾患状態の改善もしくは寛解(部分的または完全);患者により必ずしも識別可能ではない少なくとも1つの測定可能な身体的パラメータの改善;または状態、障害、もしくは疾患の増強もしくは改善を含む。治療は、過度のレベルの副作用なしに臨床的に有意な応答を誘発することを含む。「治療」はまた、治療を受けていない場合の予測生存期間と比較して、生存期間を延長することを含む。
【0127】
本明細書で使用される場合、「バリアント」及び「誘導体」という用語は互換的に使用され、本明細書に記載される化合物、ペプチド、タンパク質、または他の物質の天然発生型、合成、及び半合成類似体を指す。本明細書に記載される化合物、ペプチド、タンパク質、または他の物質のバリアントまたは誘導体は、元の材料の生物学的活性を保持または改善し得る。
【0128】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に示される。本発明の他の特性、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【
図1】BRG1/BRM阻害剤による、いくつかのがん細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである(化合物17)。
【
図2A】BRG1/BRM阻害剤(化合物17)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)による、ブドウ膜黒色腫細胞株92-1の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図2B】BRG1/BRM阻害剤(化合物17)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)による、ブドウ膜黒色腫細胞株MP41の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図3】BRG1/BRM阻害剤(化合物18)による、いくつかのがん細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図4】BRG1/BRM阻害剤で処理されたがん細胞株の用量応答曲線から計算された曲線下面積(AUC)を示すグラフである。
【
図5】BRG1/BRM阻害剤(化合物18)による、ブドウ膜黒色腫及び非小細胞肺癌細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図6A】BRG1/BRM阻害剤(化合物18)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)による、ブドウ膜黒色腫細胞株92-1の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図6B】BRG1/BRM阻害剤(化合物18)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)による、ブドウ膜黒色腫細胞株MP41の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図7A】PKC阻害剤(LXS196)による、親細胞株及びPKC阻害剤難治性ブドウ膜黒色腫細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図7B】BRG1/BRM阻害剤(化合物18)による、親細胞株及びPKC阻害剤難治性ブドウ膜黒色腫細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図8A】BRG1/BRM阻害剤(化合物19)による、ブドウ膜黒色腫細胞株を移植したマウスにおける腫瘍増殖の阻害を示すグラフである。
【
図8B】ブドウ膜黒色腫細胞株を移植し、BRG1/BRM阻害剤(化合物19)を投与したマウス由来の腫瘍のサイズの図である。
【
図8C】ブドウ膜黒色腫細胞株を移植し、BRG1/BRM阻害剤(化合物19)を投与したマウスの体重変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0130】
本発明者らは、ブドウ膜黒色腫細胞、前立腺癌細胞、または血液癌細胞におけるBRG1及び/またはBRMの枯渇が、癌細胞の増殖の減少をもたらすことを見出した。
したがって、本発明は、例えば、ブドウ膜黒色腫、前立腺癌、または血液癌などのがんの治療のための、BRG1及び/またはBRMの活性の阻害に有用な方法及び組成物を特徴とする。本発明は、例えば、ブドウ膜黒色腫、前立腺癌、または血液癌などのがんの治療のための、例えば、それを必要とする対象における、BRG1及び/またはBRMタンパク質の活性の阻害に有用な方法及び組成物をさらに特徴とする。例示的な方法は、本明細書に記載される。
【0131】
BRG1及び/またはBRM還元剤
細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する本明細書に記載される薬剤は、抗体、タンパク質(酵素など)、ポリヌクレオチド、または小分子化合物であり得る。薬剤は、BRG1及び/またはBRMに関連する活性、もしくは関連する下流効果のレベルを低減するか、または細胞もしくは対象におけるBRG1及び/またはBRMのレベルを低減する。
【0132】
いくつかの実施形態では、細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、酵素、ポリヌクレオチド、または小分子化合物(小分子BRG1及び/またはBRM阻害剤など)である。
【0133】
抗体
BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、抗体またはその抗原結合断片であり得る。例えば、本明細書に記載のBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、BRG1及び/またはBRMへの結合を通してBRG1及び/またはBRMの活性及び/または機能を低減または遮断する抗体である。
【0134】
標的抗原(例えば、BRG1及び/またはBRM)に対する治療抗体の作製及び使用は、当該技術分野で既知である。例えば、上述の本明細書に引用された参考文献、及びZhiqiang An(Editor),Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic.1st Edition.Wiley 2009を参照されたい。また、抗体操作、縮重オリゴヌクレオチドの使用、5’-RACE、ファージディスプレイ、及び変異誘発、抗体の試験及び特徴付け、抗体の薬物動態及び薬力学、抗体の精製及び保存、ならびにスクリーニング及びラベリング技術を含む組換え抗体の作製方法については、Greenfield(Ed.),Antibodies:A Laboratory Manual.(Second edition)Cold Spring Harbor Laboratory Press 2013も参照されたい。
【0135】
ポリヌクレオチド
いくつかの実施形態では、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、RNA干渉(RNAi)経路によって作用する阻害性RNA分子である。阻害性RNA分子は、BRG1及び/またはBRMの発現レベル(例えば、タンパク質レベルまたはmRNAレベル)を低下させ得る。例えば、阻害性RNA分子は、完全長のBRG1及び/またはBRMを標的とする低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、及び/またはマイクロRNA(miRNA)を含む。siRNAは、典型的には、約19~25塩基対の長さを有する二本鎖RNA分子である。shRNAは、ヘアピンターンを含むRNA分子であり、RNAiを介して標的遺伝子の発現を減少させる。マイクロRNAは、典型的には、約22ヌクレオチドの長さを有する非コードRNA分子である。miRNAは、例えば、mRNAの切断、mRNAの不安定化、またはmRNAの翻訳の阻害を引き起こすことによって、mRNA上の標的部位に結合し、mRNAをサイレンシングする。分解は、酵素性のRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって引き起こされる。
【0136】
いくつかの実施形態では、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、アンチセンス核酸である。アンチセンス核酸としては、アンチセンスRNA(asRNA)及びアンチセンスDNA(asDNA)分子(典型的には約10~30ヌクレオチド長)が挙げられ、これらは、標的配列(例えば、BRG1及び/またはBRM)のヌクレオチド塩基との水素結合相互作用を通して、ポリヌクレオチド標的配列または配列部分を認識する。標的配列は、一本鎖もしくは二本鎖RNA、または一本鎖もしくは二本鎖DNAであり得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、機能の負の制御因子または機能の正の制御因子のレベル及び/または活性を低減する。他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、機能の正の制御因子の阻害因子のレベル及び/または活性を低減する。
【0138】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、修飾ヌクレオチド(例えば、2’-フルオロ、2’-o-メチル、2’-デオキシ、糖部開環核酸(unlocked nucleic acid)、2’-ヒドロキシ、ホスホロチオエート、2’-チオウリジン、4’-チオウリジン、2’-デオキシウリジンを含有するように修飾され得る。理論に束縛されるものではないが、特定の修飾は、ヌクレアーゼ耐性及び/または血清内安定性を増加させるか、または免疫原性を低下させることができると考えられている。また、上述のポリヌクレオチドは、リポソーム、マイクロスフィアなどの特殊形態で提供され得るか、または遺伝子療法に適用され得るか、または結合部分と組み合わせて提供され得る。かかる結合部分としては、リン酸骨格の電荷中和剤として作用するポリリジンなどのポリカチオン、または細胞膜との相互作用を増強するか、もしくは核酸の取り込みを増加させる脂質(例えば、リン脂質、コレステロールなど)などの疎水性部分が挙げられる。これらの部分は、3’または5’末端で核酸に結合されてもよく、塩基、糖、または分子内ヌクレオシド結合を介して結合されてもよい。他の部分は、エキソヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼなどのヌクレアーゼによる分解を防止するために、核酸の3’または5’末端に特異的に配置されたキャッピング基であってもよい。かかるキャッピング基としては、当該技術分野で既知のヒドロキシル保護基が挙げられ、ポリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールなどのグリコールを含む。ポリヌクレオチドの阻害作用は、インビボ及びインビトロで本発明の細胞株または動物ベースの遺伝子発現系を使用して試験することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性もしくは機能を低減する。実施形態では、ポリヌクレオチドは、BRG1及び/またはBRMの発現を阻害する。他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、BRG1及び/またはBRMの分解を増加させ、及び/またはBRG1及び/またはBRMの安定性(すなわち、半減期)を減少させる。ポリヌクレオチドは、インビトロで、化学合成または転写され得る。
【0139】
阻害性ポリヌクレオチドは、当該技術分野で周知の方法によって設計することができ、任意のRNAを一意的に分解するのに必要な配列特異性を提供するのに十分な相同性を有するsiRNA、miRNA、shRNA、及びasRNA分子は、これらに限定されないが、Thermo Fisher Scientific、the German Cancer Research Center、及びThe Ohio State University Wexner Medical Centerのウェブサイト上で維持されるものを含む当該技術分野で既知のプログラムを使用して設計することができる。阻害性ポリヌクレオチド配列を最適化するためのいくつかの設計された種類の系統的試験は、当業者によって日常的に行われ得る。干渉ポリヌクレオチドを設計する際の考慮事項としては、これらに限定されないが、生物物理学的、熱力学的、及び構造的な考慮事項、センス鎖の特定の位置における塩基選択性(base preferences)、ならびに相同性が挙げられる。また、リボザイム、リボヌクレアーゼP、siRNA、及びmiRNAなどの非コードRNAに基づく阻害性治療剤の作製及び使用は、当該技術分野で既知であり、例えば、Sioud,RNA Therapeutics:Function,Design,and Delivery(Methods in Molecular Biology).Humana Press 2010に記載されている。本発明の方法で使用するための例示的な阻害性ポリヌクレオチドは、以下の表1に提供されている。いくつかの実施形態では、阻害性ポリヌクレオチドは、表1の阻害性ポリヌクレオチドの核酸配列と、少なくとも50%(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)の配列同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、阻害性ポリヌクレオチドは、表1の阻害性ポリヌクレオチドの核酸配列と、少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、またはそれ以上の同一性)を有する配列を有する。
【0140】
本発明で使用するためのポリヌクレオチドを発現するためのベクターの構築は、当業者への詳細な説明を必要としない従来の技術を使用して達成され得る。効率的な発現ベクターの生成には、ポリヌクレオチドの発現を制御する制御配列を有することが必要である。これらの制御配列は、プロモーター配列及びエンハンサー配列を含み、これらの配列と相互作用する特異的な細胞因子によって影響を受け、当該技術分野で周知である。
【0141】
遺伝子編集
いくつかの実施形態では、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、遺伝子編集システムの構成要素である。例えば、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、BRG1及び/またはBRMにおける改変(例えば、挿入、欠失(例えば、ノックアウト)、転位、逆位、単一点変異、または他の変異)を導入する。いくつかの実施形態では、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、ヌクレアーゼである。例示的な遺伝子編集システムとしては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターベースヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化規則間隔短鎖回文反復(CRISPR)システムが挙げられる。ZFN、TALEN、及びCRISPRベースの方法は、例えば、Gaj et al.,Trends Biotechnol.31(7):397-405(2013)を参照されたい。
【0142】
CRISPRは、クラスター化規則間隔短鎖回文反復のセット(またはセットを含むシステム)を指す。CRISPRシステムは、CRISPR及びCas(CRISPR関連タンパク質)または本明細書に記載の遺伝子をサイレンシングまたは変異するために使用され得る他のヌクレアーゼに由来するシステムを指す。CRISPRシステムは、天然に存在するシステムであり、細菌及び古細菌のゲノムに見出される。CRISPR遺伝子座は、交互に反復する配列とスペーサー配列で構成されている。天然に存在するCRISPRシステムでは、スペーサーは、典型的には、細菌にとって異質の配列(例えば、プラスミドまたはファージ配列)である。CRISPRシステムは、真核生物における遺伝子編集(例えば、特定の遺伝子の変化、サイレンシング、及び/または増強)に使用するために改変されている。例えば、Wiedenheft et al.,Nature 482(7385):331-338(2012)を参照されたい。例えば、システムのかかる改変は、特異的に設計されたCRISPRと、1つ以上の適切なCasタンパク質とを含有するプラスミドを、真核細胞に導入することを含む。CRISPR遺伝子座は、RNAに転写され、Casタンパク質によって、スペーサーに隣接する反復配列を含む低分子RNAにプロセシングされる。RNAは、スペーサー配列に応じて、特定のDNA/RNA配列をサイレンシングするようにCasタンパク質を誘導するためのガイドとして機能する。例えば、Horvath et al.,Science 327(5962):167-170(2010)、Makarova et al.,Biology Direct 1:7(2006)、Pennisi,Science 341(6148):833-836(2013)を参照されたい。いくつかの例では、CRISPRシステムは、DNAの両方の鎖を切断するヌクレアーゼであるCas9タンパク質を含む。例えば、同上の文献を参照されたい。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の使用(例えば、本明細書に記載される1つ以上の方法による使用)のためのCRISPRシステムでは、CRISPRのスペーサーは、標的遺伝子の配列(例えば、BRG1及び/またはBRMの配列)に由来する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の使用(例えば、本明細書に記載される1つ以上の方法による使用)のためのCRISPRシステムでは、CRISPRのスペーサーは、標的遺伝子の配列(例えば、BRG1の配列)に由来する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される使用(例えば、本明細書に記載される1つ以上の方法による使用)のためのCRISPRシステムでは、CRISPRのスペーサーは、標的遺伝子の配列(例えば、BRMの配列)に由来する。
【0144】
いくつかの実施形態では、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、遺伝子編集のためのCRISPRシステムで使用するためのガイドRNA(gRNA)を含む。本発明の方法で使用するための例示的なgRNAは、以下の表1に提供されている。実施形態では、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、BRG1及び/またはBRMの核酸配列(例えば、DNA配列)を標的とする(例えば、切断する)ZFN、またはZFNをコードするmRNAを含む。実施形態では、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、BRG1及び/またはBRMの核酸配列(例えば、DNA配列)を標的とする(例えば、切断する)TALEN、またはTALENをコードするmRNAを含む。実施形態では、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、BRG1の核酸配列(例えば、DNA配列)を標的とする(例えば、切断する)TALEN、またはTALENをコードするmRNAを含む。実施形態では、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、BRMの核酸配列(例えば、DNA配列)を標的とする(例えば、切断する)TALEN、またはTALENをコードするmRNAを含む。
【0145】
例えば、gRNAは、遺伝子(例えば、BRG1及び/またはBRM)の改変を操作するために、CRISPRシステムで使用され得る。他の例では、ZFN及び/またはTALENは、遺伝子(例えば、BRG1及び/またはBRM)の改変を操作するために使用され得る。例示的な改変には、挿入、欠失(例えば、ノックアウト)、転位、逆位、単一点変異、または他の変異が含まれる。改変は、例えば、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで、細胞内の遺伝子に導入することができる。いくつかの実施形態では、改変は、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減し(例えば、ノックダウンする、またはノックアウトする)、例えば、改変は、機能の負の制御因子である。さらに別の例では、改変は、BRG1及び/またはBRMにおける欠陥(例えば、欠陥を引き起こす変異)を修正する。さらに別の例では、改変は、BRG1における欠陥(例えば、欠陥を引き起こす変異)を修正する。さらに別の例では、改変は、BRMにおける欠陥(例えば、欠陥を引き起こす変異)を修正する。
【0146】
ある特定の実施形態では、CRISPRシステムは、標的遺伝子、例えば、BRG1及び/またはBRMを編集する(例えば、塩基対を追加または削除する)ために使用される。他の実施形態では、CRISPRシステムを使用して、中途停止コドンを導入する(例えば、それによって標的遺伝子の発現を減少させる)。さらに他の実施形態では、CRISPRシステムは、例えば、RNA干渉と同様に、可逆的な様式で標的遺伝子をオフにするために使用される。実施形態では、CRISPRシステムは、Casを、標的遺伝子(例えば、BRG1及び/またはBRM)のプロモーターに誘導するために使用され、それによって、RNAポリメラーゼを立体的に遮断する。実施形態では、CRISPRシステムは、Casを、標的遺伝子(例えばBRG1)のプロモーターに誘導するために使用され、それによって、RNAポリメラーゼを立体的に遮断する。実施形態では、CRISPRシステムは、Casを、標的遺伝子(例えば、BRM)のプロモーターに誘導するために使用され、それによって、RNAポリメラーゼを立体的に遮断する。
【0147】
いくつかの実施形態では、CRISPRシステムは、例えば、米国公開第20140068797号、Cong et al .,Science 339(6121):819-823(2013)、Tsai,Nature Biotechnol.,32(6):569-576(2014)、ならびに米国特許第8,871,445号、同第8,865,406号、同第8,795,965号、同第8,771,945号、及び同第8,697,359号に記載されている技術を使用して、BRG1及び/またはBRMを編集するために生成され得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、CRISPR干渉(CRISPRi)技術は、特定の遺伝子(例えばBRG1及び/またはBRMをコードする遺伝子)の転写抑制に使用することができる。CRISPRiでは、操作されたCas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼヌルdCas9、またはdCas9融合タンパク質、例えば、dCas9-KRABまたはdCas9-SID4X融合物)は、配列特異的ガイドRNA(sgRNA)と対合し得る。Cas9-gRNA複合体は、RNAポリメラーゼを遮断し、それによって、転写伸長を妨げることができる。複合体はまた、転写因子の結合を妨げることによって、転写開始を遮断することができる。CRISPRi法は、特異的であり、最小限のオフターゲット効果を有し、多重化可能であり、例えば、(例えば、複数のgRNAを使用して)、同時に、2つ以上の遺伝子を抑制することができる。また、CRISPRi法は、可逆的な遺伝子抑制を可能にする。
【0149】
いくつかの実施形態では、CRISPR媒介遺伝子活性化(CRISPRa)は、例えば、本明細書に記載の1つ以上の遺伝子(例えば、BRG1及び/またはBRMを阻害する遺伝子)の転写活性化のために使用され得る。CRISPRa技術では、dCas9融合タンパク質は、転写活性化因子を動員する。例えば、dCas9を使用して、VP64またはp65活性化ドメイン(p65D)などのポリペプチド(例えば、活性化ドメイン)を動員し、sgRNA(例えば、単一のsgRNAまたは複数のsgRNA)と共に使用して、1つ以上の遺伝子、例えば、内因性遺伝子(複数可)を活性化することができる。複数の活性化剤は、複数のsgRNAを使用することによって動員することができ、これは、活性化効率を増加させることができる。様々な活性化ドメイン及び単一または複数の活性化ドメインを使用することができる。dCas9を操作して活性化因子を動員することに加えて、sgRNAを操作して、活性化因子を動員することもできる。例えば、RNAアプタマーをsgRNAに組み込んで、VP64などのタンパク質(例えば、活性化ドメイン)を動員することができる。いくつかの例では、相乗的活性化メディエーター(SAM)システムは、転写活性化に使用することができる。SAMでは、MS2アプタマーがsgRNAに付加される。MS2は、p65AD及び熱ショック因子1(HSF1)に融合しされたMS2コートタンパク質(MCP)を動員する。CRISPRi及びCRISPRa技術は、例えば、Dominguez et al.,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.17(1):5-15(2016)により詳細に記載されている(参照により本明細書に組み込まれる)。
【0150】
小分子化合物
本発明のいくつかの実施形態では、細胞におけるBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、小分子化合物である。いくつかの実施形態では、小分子化合物は、式I~IIIの構造である。
【0151】
いくつかの実施形態では、小分子BRG1及び/またはBRM阻害剤は、式Iの構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であり、
【0152】
【0153】
式中、mが、0、1、2、3、または4であり、
X1が、NまたはCHであり、
各R1が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、または任意選択的に置換されたアミノである。
【0154】
いくつかの実施形態では、小分子BRG1及び/またはBRM阻害剤は、式IIの構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であり、
【0155】
【0156】
式中、R2が、ヒドロキシで置換されたフェニル、任意選択的に、独立して、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-C3アルキル、及びC1-C3アルコキシからなる群から選択される1つ以上の基で置換されたフェニルであり、
R3が、-Ra、-O-Ra、-N(Ra)2、-S(O)2Ra、及び-C(O)-N(Ra)2からなる群から選択され、
各Raが、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、3~15員カルボシクリル、及び3~15員ヘテロシクリルからなる群から選択され、各C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、3~15員カルボシクリル、及び3~15員ヘテロシクリルが、任意選択的に、独立して、Rb、オキソ、ハロ、-NO2、-N(Rb)2、-CN、-C(O)-N(Rb)2、-S(O)-N(Rb)2、-S(O)2-N(Rb)2、-O-Rb、-S-Rb、-O-C(O)-Rb、-C(O)-Rb、-C(O)-ORb、-S(O)-Rb、-S(O)2-Rb、-N(Rb)-C(O)-Rb、-N(Rb)-S(O)-Rb、-N(Rb)-C(O)-N(Rb)2、及び-N(Rb)-S(O)2-Rbからなる群から選択される1つ以上の基で置換され、
各Rbが、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、3~15員カルボシクリル、及び3~15員ヘテロシクリルからなる群から選択され、各C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、3~15員カルボシクリル、及び3~15員ヘテロシクリルが、任意選択的に、独立して、Rcから選択される1つ以上の基で置換されるか、または2つのRbが、それらが結合している窒素と一緒になって、ヘテロシクリル(任意選択的に、独立して、オキソ、ハロ、及びC1-3アルキルからなる群から選択される1つ以上の基で置換され、C1-3アルキルが、任意選択的に、独立して、オキソ及びハロからなる群から選択される1つ以上の基で置換される)を形成し、
各Rcが、独立して、オキソ、ハロ、-NO2、-N(Rd)2、-CN、-C(O)-N(Rd)2、-S(O)-N(Rd)2、-S(O)2-N(Rd)2、-S-Rd、-O-C(O)-Rd、-C(O)-Rd、-C(O)-ORd、-S(O)-Rd、-S(O)2Rd、-N(Rd)-C(O)-Rd、-N(Rd)-S(O)-Rd、-N(Rd)-C(O)-N(Rd)2、-N(Rd)-S(O)2-Rd、-C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、3~15員カルボシクリル、及び3~15員ヘテロシクリルからなる群から選択され、任意のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、3~15員カルボシクリル、及び3~15員ヘテロシクリルが、任意選択的に、独立して、Rd、オキソ、ハロ、-NO2、-N(Rd)2、-CN、-C(O)-N(Rd)2、-S(O)-N(Rd)2、-S(O)2-N(Rd)2、-O-Rd、-S-Rd、-O-C(O)-Rd、-C(O)-Rd、-C(O)-Rd、-S(O)-Rd、-S(O)2-Rd、-N(Rd)-C(O)-Rd、-N(Rd)-S(O)-Rd、-N(Rd)-C(O)-N(Rd)2、及び-N(Rd)-S(O)2-Rdからなる群から選択される1つ以上の基で置換され、
各Rdが、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、カルボシクリル、及びカルボシクリル(C1-3アルキル)-からなる群から選択され、
R4が、H、C1-6アルキル、または-C(=O)-C1-6アルキルであり、
R5が、HまたはC1-6アルキルである。
【0157】
式IIの化合物は、当該技術分野で既知の方法、例えば、米国特許公開第2018/0086720号に記載されている方法によって合成することができる(その合成方法は、参照により組み込まれる)。
【0158】
いくつかの実施形態では、小分子BRG1及び/またはBRM阻害剤は、式IIIの構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であり、
【0159】
【0160】
式中、R6が、ハロ(例えば、フルオロまたはクロロ)であり、
R7が、水素、任意選択的に置換されたアミノ、または任意選択的に置換されたC1-6アルキルであり、
R8が、任意選択的に置換されたC6-10アリール、または任意選択的に置換されたC2-9ヘテロアリールである。
【0161】
いくつかの実施形態では、小分子BRG1及び/またはBRM阻害剤は、化合物1~16のうちのいずれか1つの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩であり、
【0162】
【0163】
いくつかの実施形態では、小分子化合物またはその薬学的に許容される塩は、分解剤である。いくつかの実施形態では、分解剤は、式IVの構造を有し、
A-L-B
式IV
式中、Aが、BRG1及び/またはBRMの結合部分であり、Lが、リンカーであり、Bが、分解部分である、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、分解部分は、ユビキチンリガーゼ部分である。いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、セレブロンリガンド、IAP(アポトーシスの阻害剤)リガンド、マウス二重微小2ホモログ(MDM2)、疎水性タグ、もしくはフォン・ヒッペル・リンドウリガンド、またはその誘導体もしくは類似体を含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、Aは、BRG1結合部分である。いくつかの実施形態では、Aは、BRM結合部分である。いくつかの実施形態では、Aは、式I~IIIのうちのいずれか1つの構造、または化合物1~16のうちのいずれか1つの構造を含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、疎水性タグは、ジフェニルメタン、アダマンチン、またはトリ-Bocアルギニンを含み、すなわち、疎水性タグは、以下の構造を含む。
【0166】
【0167】
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、式Aの構造を含み、
【0168】
【0169】
式中、X1が、CH2、O、S、もしくはNR1であり、R1が、H、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキルであり、X2が、C=O、CH2、もしくは
【0170】
【0171】
であり、R3及びR4が、独立して、H、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキルであり、mが、0、1、2、3、もしくは4であり、各R2が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、もしくは任意選択的に置換されたアミノである、
またはその薬学的に許容される塩である。
【0172】
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、以下の構造を含む、
【0173】
【0174】
あるいはその誘導体もしくは類似体、またはその薬学的に許容される塩である。
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、式Bの構造を含み、
【0175】
【0176】
式中、各R4、R4’、及びR7が、独立して、H、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキルであり、R5が、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC3-C10カルボシクリル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC6-C10アリールであり、R6が、H、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC3-C10カルボシクリル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC6-C10アリールであり、nが、0、1、2、3、もしくは4であり、各R8が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、もしくは任意選択的に置換されたアミノであり、各R9及びR10が、独立して、H、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、もしくは任意選択的に置換されたC6-C10アリールであり、R4’もしくはR5が、リンカーへの結合を含む、またはその薬学的に許容される塩である。
【0177】
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、以下の構造を含む、
【0178】
【0179】
あるいはその誘導体もしくは類似体、またはその薬学的に許容される塩である。
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、式Cの構造を含み、
【0180】
【0181】
式中、各R11、R13、及びR15が、独立して、H、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキルであり、R12が、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC3-C10カルボシクリル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC6-C10アリールであり、R14が、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC3-C10カルボシクリル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC6-C10アリールであり、pが、0、1、2、3、もしくは4であり、各R16が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、もしくは任意選択的に置換されたアミノであり、qが、0、1、2、3、もしくは4であり、各R17が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、もしくは任意選択的に置換されたアミノである、またはその薬学的に許容される塩である。
【0182】
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、以下の構造を含む、
【0183】
【0184】
あるいはその誘導体もしくは類似体、またはその薬学的に許容される塩である。
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、式Dの構造を含み、
【0185】
【0186】
式中、各R18及びR19が、独立して、H、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC3-C10カルボシクリル、もしくは任意選択的に置換されたC1-C6アルキルC6-C10アリールであり、r1が、0、1、2、3、もしくは4であり、各R20が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、もしくは任意選択的に置換されたアミノであり、r2が、0、1、2、3、もしくは4であり、各R21が、独立して、ハロゲン、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC3-C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-C10アリール、任意選択的に置換されたC2-C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、ヒドロキシ、チオール、もしくは任意選択的に置換されたアミノである、またはその薬学的に許容される塩である。
【0187】
いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼ結合部分は、以下の構造を含む、
【0188】
【0189】
あるいはその誘導体もしくは類似体、またはその薬学的に許容される塩である。
いくつかの実施形態では、リンカーは、式Vの構造を有し、
A1-(B1)f-(C1)g-(B2)h-(D)-(B3)i-(C2)j-(B4)k-A2
式V
式中、A1が、リンカーとAとの間の結合であり、A2が、Bとリンカーとの間の結合であり、B1、B2、B3、及びB4が、各々独立して、任意選択的に置換されたC1-C2アルキル、任意選択的に置換されたC1-C3ヘテロアルキル、O、S、S(O)2、及びNRNから選択され、RNが、水素、任意選択的に置換されたC1-4アルキル、任意選択的に置換されたC2-4アルケニル、任意選択的に置換されたC2-4アルキニル、任意選択的に置換されたC2-6ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-12アリール、もしくは任意選択的に置換されたC1-7ヘテロアルキルであり、C1及びC2が、各々独立して、カルボニル、チオカルボニル、スルホニル、もしくはホスホリルから選択され、f、g、h、i、j、及びkが、各々独立して、0もしくは1であり、Dが、任意選択的に置換されたC1-10アルキル、任意選択的に置換されたC2-10アルケニル、任意選択的に置換されたC2-10アルキニル、任意選択的に置換されたC2-6ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6-12アリール、任意選択的に置換されたC2-C10ポリエチレングリコール、もしくは任意選択的に置換されたC1-10ヘテロアルキルであるか、またはA1-(B1)f-(C1)g-(B2)hを-(B3)i-(C2)j-(B4)k-A2と連結する化学結合である。
【0190】
いくつかの実施形態では、Dは、任意選択的に置換されたC2-C10ポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態では、C1及びC2は、各々独立して、カルボニルまたはスルホニルである。いくつかの実施形態では、B1、B2、B3、及びB4は、各々独立して、任意選択的に置換されたC1-C2アルキル、任意選択的に置換されたC1-C3ヘテロアルキル、O、S、S(O)2、及びNRNから選択され、RNは、水素または任意選択的に置換されたC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、B1、B2、B3、及びB4は、各々独立して、任意選択的に置換されたC1-C2アルキル、または任意選択的に置換されたC1-C3ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、jは、0である。いくつかの実施形態では、kは、0である。いくつかの実施形態では、j及びkは、各々独立して、0である。いくつかの実施形態では、f、g、h、及びiは、各々独立して、1である。
【0191】
いくつかの実施形態では、式Vのリンカーは、式Vaの構造を有し、
【0192】
【0193】
式中、A1が、リンカーとAとの間の結合であり、A2が、Bとリンカーとの間の結合である。
いくつかの実施形態では、Dは、任意選択的に置換されたC1-10アルキルである。いくつかの実施形態では、C1及びC2は、各々独立して、カルボニルである。いくつかの実施形態では、B1、B2、B3、及びB4は、各々独立して、任意選択的に置換されたC1-C2アルキル、任意選択的に置換されたC1-C3ヘテロアルキル、O、S、S(O)2、及びNRNから選択され、RNは、水素または任意選択的に置換されたC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、B1、B2、B3、及びB4は、各々独立して、任意選択的に置換されたC1-C2アルキル、O、S、S(O)2、及びNRNから選択され、RNは、水素または任意選択的に置換されたC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、B1及びB4は、各々独立して、任意選択的に置換されたC1-C2アルキルである。いくつかの実施形態では、B1及びB4は、各々独立して、C1アルキルである。いくつかの実施形態では、B2及びB4は、各々独立して、NRNであり、RNは、水素または任意選択的に置換されたC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、B2及びB4は、各々独立して、NHである。いくつかの実施形態では、f、g、h、i、j、及びkは、各々独立して、1である。
【0194】
いくつかの実施形態では、式Vのリンカーは、式Vbの構造を有し、
【0195】
【0196】
式中、A1が、リンカーとAとの間の結合であり、A2が、Bとリンカーとの間の結合である。
薬学的使用
本明細書に記載の化合物は、本発明の方法において有用であり、理論に束縛されるものではないが、BAF複合体のレベル、状態、及び/または活性を調節するそれらの能力を通して、例えば、哺乳動物におけるBAF複合体内の細胞内のBRG1及び/またはBRMタンパク質の活性またはレベルを阻害することによって、それらの望ましい効果を発揮すると考えられている。
【0197】
本発明の一態様は、がんなどのBRG1及び/またはBRMに関連する障害の治療を必要とする対象において、それを治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、化合物は、以下のうちの1つ(またはそれ以上、例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上)をもたらすのに効果的な量及び時間で投与される:(a)腫瘍サイズの低減、(b)腫瘍増殖率の低減、(c)腫瘍細胞死の増加、(d)腫瘍進行の低減、(e)転移数の低減、(f)転移率の低減、(g)腫瘍再発の低減、(h)対象の生存率の増加、及び(i)対象の無増悪生存率の増加。
【0198】
がんの治療により、腫瘍のサイズまたは体積の低減がもたらされ得る。例えば、治療後、腫瘍サイズは、治療前のそのサイズに対して5%以上(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)低減される。腫瘍のサイズは、任意の再現性のある測定手段で測定され得る。例えば、腫瘍のサイズは、腫瘍の直径として測定され得る。
【0199】
がんの治療は、腫瘍の数の減少をさらにもたらし得る。例えば、治療後、腫瘍数は、治療前の数に対して5%以上(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)低減される。腫瘍の数は、任意の再現性のある測定手段で測定され得、例えば、腫瘍の数は、肉眼で見えるか、または特定の倍率(例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または50倍)で見える腫瘍をカウントすることによって測定され得る。
【0200】
がんの治療により、原発腫瘍部位から離れた他の組織または器官の転移性結節の数の減少がもたらされ得る。例えば、治療後、転移性結節の数は、治療前の数に対して5%以上(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)低減される。転移性結節の数は、任意の再現性のある測定手段で測定され得る。例えば、転移性結節の数は、肉眼で見えるか、または特定の倍率(例えば、2倍、10倍、または50倍)で見える転移性結節をカウントすることによって測定され得る。
【0201】
がんの治療により、がんの転移性進行の阻害または減速がもたらされ得る。例えば、患者は、身体の他の部分へのがんの転移を阻害するのに有効なBRG1及び/またはBRMの活性またはレベルを低減する量の薬剤を投与され得る(例えば、転移した(例えば、肝臓に転移した)ブドウ膜黒色腫を有する患者)。薬剤は、術前または術後の状況で(がんの外科的切除の前または後など)投与され得、がんの転移の発生率の減少をもたらす。
【0202】
がんを治療することにより、未治療の対象の集団と比較して、本発明に従って治療された対象の集団の平均生存時間の増加がもたらされ得る。例えば、平均生存期間が30日超(60日、90日、または120日超)増加される。集団の平均生存期間の増加は、任意の再現可能な手段で測定され得る。集団の平均生存時間の増加は、例えば、集団について、本明細書に記載される化合物による治療の開始後の平均生存期間の長さを計算することにより測定され得る。集団の平均生存時間の増加はまた、例えば、集団について、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される塩による治療の最初のラウンドの完了後の平均生存期間の長さを計算することによって測定され得る。
【0203】
がんを治療することにより、未治療の集団と比較して、治療された対象の集団の死亡率の減少もまたもたらされ得る。例えば、死亡率は、2%超(例えば、5%、10%、または25%超)減少される。治療された対象の集団の死亡率の減少は、任意の再現可能な手段で、例えば、集団について、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される塩による治療の開始後の単位時間当たりの疾患関連死の平均数を計算することによって測定され得る。集団の死亡率の減少はまた、例えば、集団について、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される塩による治療の最初のラウンドの完了後の単位時間当たりの疾患関連死の平均数を計算することによって測定され得る。
【0204】
併用療法
本発明の方法は、単独で、あるいは追加の治療薬、例えば、がんもしくはそれに関連する症状を治療する他の薬剤と組み合わせて、またはがんを治療するための他の種類の療法と組み合わせて使用することができる。併用治療では、1つ以上の治療用化合物の投与量は、単独で投与した場合の標準的な投与量から低減され得る。例えば、用量は、薬物の組み合わせ及び順列から経験的に決定され得るか、またはアイソボログム分析(例えば、Black et al.,Neurology 65:S3-S6(2005))によって推定され得る。この場合、組み合わせたときの化合物の投与量は、治療効果を提供するはずである。
【0205】
いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、化学療法剤(例えば、細胞傷害性剤またはがんの治療に有用な他の化合物)である。これらには、アルキル化剤、代謝拮抗剤、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体及び関連阻害剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、L-アスパラギナーゼ、トポイソメラーゼ阻害剤、インターフェロン、白金配位錯体、アントラセンジオン置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、アドレノコルチカン抑制剤、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、ならびに性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体が含まれる。5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン(LV)、イレノテカン、オキサリプラチン、カペシタビン、パクリタキセル、及びドキセタキセルもまた含まれる。化学療法剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド、スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン、アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ、エチレンイミン及びメチルアメラミン、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホラミド、及びトリメチローロメラミン、アセトゲニン(具体的には、ブラタシン及びブラタシノン)、カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む)、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びバイゼレシン合成類似体を含む)、クリプトフィシン(具体的には、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8)、ドラスタチン、デュオカルマイシン(合成類似体KW-2189及びCB1-TM1を含む)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチイン、スポンギスタチン、ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、及びウラシルマスタード、ニトロソウレア、例えば、カムルスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン、抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、具体的には、カリケアマイシンガンマll及びカリケアマイシンオメガll(例えば、Agnew,Chem.Intl.Ed Engl.33:183-186(1994)を参照されたい);ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連色素タンパク質エネジイン抗生物質発色団)などの抗生物質、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む、ドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルホミチン(elfomithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン、マイタンシン及びアンサミトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンノール(mopidanmol)、ニトラエリン、ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene,OR)、ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)(パクリタキセル;Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton,NJ)、ABRAXANE(登録商標)、発色団不含の、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(AmericanPharmaceuticalPartners、Schaumberg,IL)、及びTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhone-PoulencRorer、Antony,France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなどの白金配位錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。本明細書に記載される第1の治療薬と組み合わせて投与されるカクテルにおいて、2つ以上の化学療法剤を使用することができる。併用化学療法の好適な投薬レジメンは、当該技術分野で既知であり、例えば、Saltz et al.,Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.18:233a(1999)、及びDouillard et al.,Lancet355(9209):1041-1047(2000)に記載されている。
【0206】
いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、がん治療で使用されるサイトカイン(例えば、インターフェロンまたはインターロイキン(例えば、IL-2))などの生物学的製剤である治療薬である。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、抗VEGF剤、例えば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))などの抗血管新生剤である。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、免疫グロブリンベースの生物学的製剤、例えば、標的を刺激して抗がん応答を刺激するか、またはがんにとって重要な抗原に拮抗するモノクローナル抗体(例えば、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、Fc融合タンパク質、またはその機能的断片)である。そのような薬剤には、RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)、ZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)、SIMULECT(登録商標)(バシリキシマブ)、SYNAGIS(登録商標)(パリビズマブ)、REMICADE(登録商標)(インフリキシマブ)、HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)、MYLOTARG(登録商標)(ゲムツズマブオゾガミシン)、CAMPATH(登録商標)(アレムツズマブ)、ZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン)、HUMIRA(登録商標)(アダリムマブ)、XOLAIR(登録商標)(オマリズマブ)、BEXXAR(登録商標)(トシツモマブ-I-131)、RAPTIVA(登録商標)(エファリズマブ)、ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)、AVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)、TYSABRI(登録商標)(ナタリズマブ)、ACTEMRA(登録商標)(トシリズマブ)、VECTIBIX(登録商標)(パニツムマブ)、LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)、SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)、CIMZIA(登録商標)(セルトリズマブペゴル)、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)、ILARIS(登録商標)(カナキヌマブ)、STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)、ARZERRA(登録商標)(オファツムマブ)、PROLIA(登録商標)(デノスマブ)、NUMAX(登録商標)(モタビズマブ)、ABTHRAX(登録商標)(ラキシバクマブ)、BENLYSTA(登録商標)(ベリムマブ)、YERVOY(登録商標)(イピリムマブ)、ADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)、PERJETA(登録商標)(ペルツズマブ)、KADCYLA(登録商標)(ado-トラスツズマブエンタンシン)、及びGAZYVA(登録商標)(オビヌツズマブ)が含まれる。抗体-薬物複合体もまた含まれる。
【0207】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、ダカルバジン、テモゾロミド、シスプラチン、トレオスルファン、フォテムスチン、IMCgp100、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、PD-1阻害剤(例えば、ニボルマブまたはペムブロリズマブ)、PD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブ)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはトラメチニブ)、及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤(例えば、ソトラスタウリンまたはLXS196)である。
【0208】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはトラメチニブ)及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤(例えば、ソトラスタウリンまたはLXS196)である。
【0209】
第2の薬剤は、非薬物治療である治療薬であり得る。例えば、第2の治療剤は、腫瘍の放射線療法、温熱療法、光凝固、凍結療法、ハイパーサーミア及び/または外科的切除である。
【0210】
第2の薬剤は、チェックポイント阻害剤であり得る。一実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、阻害抗体(例えば、モノクローナル抗体などの単一特異性抗体)である。抗体は、例えば、ヒト化または完全にヒトであり得る。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、融合タンパク質、例えば、Fc受容体融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、チェックポイントタンパク質と相互作用する、抗体などの薬剤である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、チェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する、抗体などの薬剤である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、CTLA-4(例えば、イピリムマブ/YERVOY(登録商標)またはトレメリムマブなどの抗CTLA4抗体または融合タンパク質)の阻害剤(例えば、阻害抗体または小分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、PD-1(例えば、ニボルマブ/OPDIVO(登録商標)、ペムブロリズマブ/KEYTRUDA(登録商標)、ピディリズマブ/CT-011)の阻害剤(例えば、阻害抗体または小分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、PDL1(例えば、MPDL3280A/RG7446、MEDI4736、MSB0010718C、BMS936559)の阻害剤(例えば、阻害抗体または小分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、PDL2(例えば、AMP 224などのPDL2/Ig融合タンパク質)の阻害剤(例えば、阻害抗体またはFc融合もしくは小分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、B7-H3(例えば、MGA271)、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、またはこれらの組み合わせの阻害剤(例えば、阻害抗体または小分子阻害剤)である。
【0211】
いくつかの実施形態では、抗がん療法は、T細胞養子移入(ACT)療法である。いくつかの実施形態では、T細胞は、活性化T細胞である。T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように修飾され得る。CAR修飾T(CAR-T)細胞は、当該技術分野で既知の任意の方法によって生成され得る。例えば、CAR-T細胞は、CARをコードする好適な発現ベクターを、T細胞に導入することによって生成され得る。T細胞の増殖及び遺伝子修飾前に、T細胞源が対象から得られる。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含むいくつかの源から得ることができる。本発明のある特定の実施形態では、当該技術分野で利用可能な任意の数のT細胞株が使用され得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、自己T細胞である。望ましいタンパク質(例えば、CAR)を発現するT細胞の遺伝子修飾の前または後にかかわらず、T細胞は、一般に、例えば、米国特許第6,352,694号、第6,534,055号、第6,905,680号、第6,692,964号、第5,858,358号、第6,887,466号、第6,905,681号、第7,144,575号、第7,067,318号、第7,172,869号、第7,232,566号、第7,175,843号、第5,883,223号、第6,905,874号、第6,797,514号、第6,867,041号、及び米国特許出願公開第20060121005号に記載されている方法を使用して活性化及び増殖され得る。
【0212】
本明細書に記載される組み合わせの実施形態のいずれにおいても、第1及び第2の治療薬は、同時にまたは逐次的に、いずれかの順序で投与される。第1の治療薬は、第2治療薬の直前、直後、最大1時間、最大2時間、最大3時間、最大4時間、最大5時間、最大6時間、最大7時間、最大8時間、最大9時間、最大10時間、最大11時間、最大12時間、最大13時間、14時間、最大16時間、最大17時間、最大18時間、最大19時間、最大20時間、最大21時間、最大22時間、最大23時間、最大24時間、または最大1~7、1~14、1~21、もしくは1~30日前または後に投与され得る。
【0213】
抗BRG1及び/またはBRM剤の送達
ウイルス法及び非ウイルス法を含む、抗BRG1及び/またはBRM剤を対象に送達するための様々な方法が利用可能である。
【0214】
ウイルス送達方法
いくつかの実施形態では、BRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤は、ウイルスベクター(例えば、抗BRG1及び/またはBRM剤を発現するウイルスベクター)によって送達される。ウイルスゲノムは、哺乳動物細胞への外因性遺伝子の効率的な送達に使用することができる豊富な供給源のベクターを提供する。ウイルスゲノムは遺伝子送達に特に有用なベクターであり、それは、かかるゲノム内に含まれるポリヌクレオチドが、典型的には、一般または特殊形質導入によって、哺乳動物細胞の核ゲノムに組み込まれるからである。これらのプロセスは、天然のウイルス複製サイクルの一部として生じ、遺伝子の組み込みを誘導するために追加のタンパク質または試薬を必要としない。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス(例えば、レトロウイルス科のウイルスベクター)、アデノウイルス(例えば、Ad5、Ad26、Ad34、Ad35、及びAd48)、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス(オルトミキソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス及び水疱瘡口内炎ウイルス)、パラミキソウイルス(例えば、麻疹ウイルス及び仙台ウイルス)など)、プラス鎖RNAウイルス(ピコルナウイルス及びアルファウイルスなど)、ならびに二本鎖DNAウイルス(アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型及び2型、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、複製欠損ヘルペスウイルス)、及びポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニア・アンカラ(MVA)、鶏痘ウイルス及びカナリアポックスウイルス)を含む)が挙げられる。他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒト泡沫状ウイルス、及び肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血病肉腫ウイルス、鳥類C型ウイルス、哺乳類C型、B型、D型ウイルス、オンコレトロウイルス、HTLV-BLV群のウイルス、レンチウイルス、アルファレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、スプーマウイルスが挙げられる(Coffin,J.M.,Retroviridae:The viruses and their replication,Virology(Third Edition)Lippincott-Raven,Philadelphia,1996)。他の例としては、マウス白血病ウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒヒ内因性ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、メイソン・ファイザーサルウイルス、サル免疫不全ウイルス、サル肉腫ウイルス、ラウス肉腫ウイルス及びレンチウイルスが挙げられる。ベクターの他の例は、例えば、米国特許第5,801,030号に記載されており、その教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0215】
例示的なウイルスベクターには、レンチウイルスベクター、AAVベクター、及びレトロウイルスベクターが含まれる。レンチウイルスベクター及びAAVベクターは、細胞分裂なしでゲノムに組み込むことができ、両方のタイプは、前臨床動物試験で試験されている。AAVを調製するための方法は、当該技術分野において、例えば、US5,677,158、US6,309,634、及びUS6,683,058に記載されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。レンチウイルスの調製及びインビボ投与のための方法は、US20020037281(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。好ましくは、レンチウイルスベクターは、複製欠損レンチウイルス粒子である。そのようなレンチウイルス粒子は、5’レンチウイルスLTR、tRNA結合部位、パッケージシグナル、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドシグナルに作動可能に連結されたプロモーター、第2の鎖DNA合成の開始点、及び3’レンチウイルスLTRを含むレンチウイルスベクターから産生され得る。
【0216】
レトロウイルスは、7~8kbを有するため、ヒト臨床試験で最も一般的に使用され、細胞に感染し、それらの遺伝物質を高い効率で宿主細胞に安定的に組み込む能力を有する(例えば、WO95/30761、WO95/24929を参照されたい、それらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる)。好ましくは、レトロウイルスベクターは、複製欠損である。これにより、標的組織での感染性レトロウイルス粒子のさらなる生成が防止される。したがって、複製欠損ウイルスは、標的細胞ゲノムに安定的に組み込まれた「捕らわれた」導入遺伝子になる。これは、典型的には、gag、env、及びpolの遺伝子(ウイルスゲノムの残りのほとんどと共に)を欠失させることによって達成される。欠失したウイルス遺伝子の代わりに、異種核酸が挿入される。異種遺伝子は、内因性異種プロモーター、標的細胞で活性な別の異種プロモーター、またはレトロウイルス5’LTR(ウイルスLTRは、多様な組織中で活性である)の制御下にあり得る。
【0217】
本明細書に記載のこれらの送達ベクターは、例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質(例えば、標的細胞受容体に対する抗体)を結合することによって、標的特異的にすることができる。
【0218】
可逆的送達発現系も使用され得る。Cre-loxPまたはFLP/FRT系及び他の同様の系を、上に記載の核酸のうちの1つ以上の可逆的送達発現に使用することができる。WO2005/112620、WO2005/039643、US20050130919、US20030022375、US20020022018、US20030027335、及びUS20040216178を参照されたい。具体的には、US20100284990に記載の可逆的送達発現システムを使用して、選択的または緊急的な遮断を提供することができる。
【0219】
非ウイルス性の送達方法
抗BRG1及び/またはBRM剤の送達には、当該技術分野で既知の高分子、生分解性微粒子、またはマイクロカプセル送達デバイスを含む、いくつかの非ウイルス性の方法が存在する。例えば、本明細書に記載の抗BRG1及び/またはBRM剤の標的化送達のために、コロイド分散系が使用され得る。コロイド分散系には、巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフィア、ビーズ、及び脂質ベースの系、例えば、水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームが含まれる。リポソームは、インビトロ及びインビボでの送達ビヒクルとして有用な人工膜小胞である。サイズが0.2~4.0μmの範囲である大きな単層小胞(LUV)が、大きな巨大分子を含有する水性緩衝液を、かなりの割合カプセル化できることが示されている。
【0220】
リポソームの組成物は、通常、リン脂質の組み合わせであり、通常、ステロイド(特に、コレステロール)と組み合わされる。他のリン脂質または他の脂質も使用され得る。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、及び二価カチオンの存在に依存する。
【0221】
リポソームの生成に有用な脂質としては、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、及びガングリオシドが挙げられる。例示的なリン脂質としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及びジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。リポソームの標的化は、例えば、器官特異性、細胞特異性、及びオルガネラ特異性に基づくことも可能であり、当該技術分野で既知である。リポソーム標的化送達系の場合、脂質基は、標的リガンドをリポソーム二重層と安定した会合で維持するために、リポソームの脂質二重層に組み込まれ得る。脂質鎖を標的化リガンドに連結するには、様々な連結基が使用され得る。追加の方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許出願公開第20060058255号に記載されている。
【0222】
薬学的組成物
本明細書に記載される薬学的組成物は、好ましくは、インビボでの投与に好適な生物学的に適合した形態でヒト対象に投与するための薬学的組成物に製剤化される。
【0223】
本明細書に記載される化合物は、遊離塩基の形態で、塩、溶媒和物の形態で、及びプロドラッグとして使用され得る。全ての形態は、本明細書で説明される方法の範囲内である。当業者によって理解されるように、本発明の方法に従って、記載される化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグは、選択された投与経路に応じて様々な形態で患者に投与され得る。本明細書に記載の化合物は、例えば、経口、非経口、口腔内、舌下、鼻腔、直腸、パッチ、ポンプ、腫瘍内、または経皮投与により投与され得、薬学的組成物はそれに応じて製剤化される。非経口投与には、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、鼻腔、肺内、くも膜下腔内、直腸、及び局所様式の投与が含まれる。非経口投与は、選択された期間にわたる連続注入によるものであり得る。
【0224】
本明細書に記載される化合物は、例えば、不活性希釈剤もしくは同化性可食担体と共に経口投与することができるか、または硬質もしくは軟質シェルゼラチンカプセルに封入することができるか、または錠剤に圧縮することができるか、または食事の食べ物と共に直接組み込むことができる。経口治療投与のために、本明細書に記載される化合物は、賦形剤と共に組み込まれてもよく、消化可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、及びウエハースの形態で使用されてもよい。本明細書に記載される化合物はまた、非経口的に投与され得る。本明細書に記載される化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水中で調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、DMSO、及びそれらの混合物中にアルコールありまたはなしで、ならびに油中に調製することができる。これらの調製物は、通常の保存条件及び使用条件下で、微生物の成長を防止するための防腐剤を含み得る。好適な製剤の選択及び調製のための従来の手順及び成分は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(2012,22nd ed.)、及びThe United States Pharmacopeia:The National Formulary(USP 41 NF36),published in 2018に記載されている。注射可能用途に好適な薬学的形態には、注射可能な滅菌溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液及び滅菌粉末が含まれる。全ての場合で、形態は減菌でなければならず、シリンジを介して容易に投与され得る程度に流体でなければならない。鼻腔投与用の組成物は、エアロゾル、ドロップ、ゲル、及び粉末として好都合に製剤化され得る。エアロゾル製剤は、典型的には、生理学的に許容される水性または非水性溶媒中の活性物質の溶液または微細懸濁液を含み、通常、噴霧装置と共に使用するためカートリッジまたはリフィルの形態をとることができる密閉容器内に滅菌形態で、単回または複数回投与量で提供される。あるいは、密閉容器は、使用後の廃棄を意図した、計量弁が取り付けられた単回用量の鼻腔吸入器またはエアロゾルディスペンサーなどの単一分配装置であり得る。剤形がエアロゾルディスペンサーを含む場合、それは、圧縮空気などの圧縮ガスまたはフルオロクロロ炭化水素などの有機推進剤であり得る推進剤を含む。エアロゾル剤形は、ポンプ噴霧器の形態をとることもできる。頬側または舌下投与に好適な組成物には、有効成分が、糖、アカシア、トラガカント、ゼラチン、及びグリセリンなどの担体と共に製剤化される、錠剤、ロゼンジ、及びトローチが含まれる。直腸投与用の組成物は、好都合に、カカオバターなどの従来の坐剤基剤を含む坐剤の形態である。本明細書に記載される化合物は、例えば、腫瘍内注射として腫瘍内に投与され得る。腫瘍内注射は、腫瘍血管への直接注射であり、個別の固形の接近可能な腫瘍に対して特に企図される。局所、領域、または全身投与も適切であり得る。本明細書に記載される化合物は、例えば、約1cm間隔で間隔をあけて、腫瘍に注射または複数回注射を投与することにより有利に接触させることができる。外科的介入の場合、本発明は、手術不能の腫瘍を切除に供するためなど、手術前に使用することができる。連続投与はまた、適切な場合、例えば、カテーテルを腫瘍または腫瘍血管に埋め込むことにより適用され得る。
【0225】
本明細書に記載される化合物は、本明細書に記述されるように、動物、例えば、ヒトに、単独でまたは薬学的に許容される担体と組み合わせて投与され得、その比率は、化合物の溶解度及び化学的性質、選択された投与経路、ならびに標準的な薬学的実務によって決定される。
【0226】
投与量
本明細書に記載の化合物、及び/または本明細書に記載の化合物を含む組成物の投与量は、化合物の薬力学的特性;投与の様式;レシピエントの年齢、健康、及び体重;症状の性質及び程度;治療の頻度、及びもしあれば併用治療の種類;ならびに治療される動物における化合物のクリアランス率などの多くの要因に応じて変化し得る。当業者は、上記の要因に基づいて適切な投与量を決定することができる。本明細書に記載される化合物は、臨床応答に応じて、必要な場合に調整され得る好適な投与量で最初に投与され得る。一般に、本明細書に記載される化合物が、例えば、0.05mg~3000mg(固体形態として測定)の1日投与量でヒトに投与される場合、満足な結果を得ることができる。用量範囲は、例えば、10~1000mg(例えば、50~800mg)を含む。いくつかの実施形態では、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000mgの化合物が投与される。
【0227】
あるいは、患者の体重を使用して投与量を計算することができる。例えば、患者に投与される化合物またはその薬学的組成物の用量は、0.1~50mg/kg(例えば、0.25~25mg/kg)の範囲であり得る。例示的な非限定的な実施形態では、用量は、0.5~5.0mg/kg(例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、または5.0mg/kg)または5.0~20mg/kg(例えば、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20mg/kg)の範囲であり得る。
【0228】
キット
本発明はまた、(a)本明細書に記載される、細胞または対象においてBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤を含む薬学的組成物、ならびに(b)本明細書に記載される方法のうちのいずれか行うための説明を伴う添付文書を含むキットを特徴とする。いくつかの実施形態では、キットは、(a)本明細書に記載される、細胞または対象においてBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低減する薬剤を含む薬学的組成物、(b)追加の治療薬(例えば、抗がん剤)、ならびに(c)本明細書に記載される方法のうちのいずれかを行うための説明を伴う添付文書を含む。
【実施例】
【0229】
実施例1.化合物17
化合物17の合成:BRG1/BRM阻害剤である化合物17は、以下の構造を有する。
【0230】
【0231】
化合物17を、以下のスキーム1に示されるように合成した。
【0232】
【0233】
ステップ1:2-ブロモ-1-(3-ブロモフェニル)エテノン(中間体B)の調製
【0234】
【0235】
CHCl3(250mL)中の1-(3-ブロモフェニル)エタノン(132.45mL、1.00mol)の溶液に、N2(g)下、Br2(77.70mL、1.51mol)を20℃で滴加した。その後、反応混合物を、80℃で撹拌した。1時間後、混合物を室温に冷却し、濃縮して、中間体B(279.27g)を黄色油として得、これを次のステップに直接使用した。
【0236】
ステップ2:4-(3-ブロモフェニル)チアゾール-2-アミン(中間体C)の調製
【0237】
【0238】
EtOH(1.5L)中のチオ尿素(229.23g、3.01mol)の溶液に、中間体B(279g、1.00mol)を添加した。反応混合物を、85℃で撹拌した。2時間後、混合物を室温に冷却し、真空中で濃縮して、油を得た。油を、NaHCO3(2L)飽和水溶液中に、慎重に注いだ。得られた塩基性(pH約8)溶液を、酢酸エチル(3×2L)で抽出した。組み合わせた有機層を、ブライン(4L)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、油を得た。油を、カラムクロマトグラフィー(SiO2.PE:EA=5:1)によって精製して、中間体C(130.00g、494.40mmol、収率49.25%)を黄色の固体として得た。LCMS (ESI) m/z:[M+H]+= 257.0。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 7.98 (m, 1H), 7.79 (d, J=8.0 Hz, 1H), 7.44 - 7.42 (m, 1H), 7.33 - 7.29 (m, 1H), 7.14(s, 1H), 7.09 (s, 2H)。
【0239】
ステップ3:4-[3-(4-ピリジル)フェニル]チアゾール-2-アミン(中間体E)の調製
【0240】
【0241】
中間体C(20.00g、78.40mmol)、4-ピリジルボロン酸(28.9g、239.18mmol)、ジクロロ[1,1’-ビス(ジ-t-ブチルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)(2.56g、3.92mmol)及びK3PO4(66.56g、313.56mmol)を1,4-ジオキサン(240mL)及び水(24mL)に希釈した。混合物をN2(g)で3回パージし、次いで、80℃で撹拌した。7時間後、反応混合物を室温に冷却し、水(800mL)を添加した。得られた混合物を、EtOAc(3×800mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、ブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。得られた油を、ジクロロメタン(30mL)及びMTBE(100mL)の混合物上で撹拌した。5分間撹拌した後、沈殿物を濾過し、MTBE(10mL)で洗浄して、中間体E(16.20g、61.17mmol、収率78.03%)を黄色固体として得た。LCMS (ESI) m/z:[M+H]+= 254.0。
【0242】
ステップ4:調製(S)-4-(メチルチオ)-1-オキソ-1-((4-(3-(ピリジン-4-イル)フェニル)チアゾール-2-イル)アミノ)ブタン-2-アミニウムクロリド(中間体G)
【0243】
【0244】
ジクロロメタン(900mL)中の中間体E(12.60g、49.74mmol)及び(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-4-メチルスルファニル-ブタン酸(18.60g、74.61mmol)の混合物に、EEDQ(24.60g、99.48mmol)を添加した。室温で2時間撹拌した後、反応混合物を、真空中で濃縮した。残渣を、ジクロロメタン(100mL)、続いてMeOH(200mL)を用いて粉砕して、中間体G(11.70g、23.73mmol、収率47.71%、ee%=99.44%)を白色固体として得た。LCMS (ESI) m/z:[M+H]+= 485.1。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 12.39 (s, 1H), 8.68-8.66 (m, 2H), 8.30 (s, 1H), 8.02-7.99 (m, 1H), 7.83 (s, 1H), 7.76-7.74 (m, 3H), 7.61-7.57 (m, 1H), 7.28 (d, J=7.6 Hz, 1H), 4.31-4.30 (m, 1H), 2.65-2.44 (m, 2 H), 2.06 (s, 3H) 2.01-1.85 (m, 2H), 1.38 (s, 9H)。
【0245】
ステップ5:(S)-4-(メチルチオ)-1-オキソ-1-((4-(3-(ピリジン-4-イル)フェニル)チアゾール-2-イル)アミノ)ブタン-2-アミニウムクロリド(中間体H)の調製
【0246】
【0247】
MeOH(50mL)中の中間体G(11.50g、23.73mmol)の混合物に、1,4-ジオキサン(100mL)中の4MのHClの溶液を添加した。室温で1時間撹拌した後、混合物を、MTBE(1000mL)に注いだ。得られた沈殿物を濾過して、中間体H(9.99g、23.73mmol、収率100.00%、HCl塩)を黄色固体として得た。LCMS (ESI) m/z:[M+H]+ = 385.0
ステップ6:4-アミノ-N-[(1S)-3-メチルスルファニル-1-[[4-[3-(4-ピリジル)フェニル]チアゾール-2-イル]カルバモイル]プロピル]ベンズアミド(化合物17)の調製
【0248】
【0249】
DMF(40mL)中の中間体H(4.00g、9.50mmol)及び4-アミノ安息香酸(1.30g、9.50mmol)の混合物に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(6.62mL、38.01mmol)、EDCI(2.73g、14.25mmol)及びHOBt(1.93g、14.25mmol)を順次添加した。溶液を、25℃で14時間撹拌し、その後、水(200mL)に注いだ。得られた沈殿物を、濾過によって収集した。固体をMeOH(200mL)中で粉砕し、濾過した。固体をカラムクロマトグラフィー(SiO2、DCM:MeOH=80:1~20:1)によってさらに精製して、化合物17(2.13g、4.19mmol、収率44.11%、ee%=99.28%)を白色固体として得た。LCMS (ESI) m/z:[M+H]+ = 504.0。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 12.40 (s, 1H), 8.68-8.66 (m, 2H), 8.31-8.30 (m, 1H), 8.22 (d, J =7.2 Hz, 1H), 8.02-7.99 (m, 1H), 7.82 (s, 1H), 7.76-7.74 (m, 3H), 7.67-7.63 (m, 2H), 7.61-7.57 (m, 1H), 6.58-6.54 (m, 2H), 5.67 (s, 2H), 4.72-4.67 (m, 1 H), 2.65-2.54 (m, 2 H), 2.12-2.06 (m, 5 H)。
【0250】
化合物17のATPアーゼ活性:化合物17の存在下でのBRMまたはBRG-1のATPアーゼ触媒活性を、ADP-Glo(商標)(Promega,V9102)を使用したインビトロ生化学アッセイによって測定した。反応が完了したら、ADP-Glo(商標)キナーゼアッセイを2ステップで行う。最初のステップは、反応中に消費されていないATPを枯渇させることである。第2のステップは、反応生成物であるADPをATPに変換することであり、これは、ルシフェラーゼによって発光を生成するために利用され、Envisionなどの発光リーダーによって検出される。
【0251】
アッセイ反応混合物(10μL)は、20mMのTris(pH8)、20mMのMgCl2、50mMのNaCl、0.1%のTween-20、及び1mMの新鮮なDTT(Pierce(商標)DTT(ジチオスレイトール)、カタログ番号20290)から構成される、ATPアーゼアッセイ緩衝液中に、30nMのBRMまたはBRG1、20nMのサケ精子DNA(Invitrogen、UltraPure(商標)サケ精子DNA溶液、カタログ番号15632011から)、及び400μMのATPを含有する。反応は、少量白色Proxiplate-384プラスプレート(Perkin Elmer、カタログ番号6008280)上で、2.5μLのATPアーゼ溶液を、2.5μLのATP/DNA溶液に添加することによって開始し、室温で1時間インキュベートする。次いで、キットに提供される5μLのADP-Glo(商標)試薬を添加した後、反応物を、室温で40分間インキュベートする。次いで、キットに提供される10μLのキナーゼ検出試薬を添加して、ADPをATPに変換し、反応物を、室温で60分間インキュベートする。最終的には、発光測定値を、Envisionなどのプレートリーディングルミノメーターで収集する。
【0252】
BRM及びBRG1は、上位5つの昆虫細胞株から、90%超の純度で合成した。化合物17は、アッセイで、BRMに対して10.4nM、BRG1に対して19.3nMのIP50を有することが見出された。
【0253】
実施例2.ブドウ膜黒色腫細胞株及び血液癌細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPアーゼの阻害の効果
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株(92-1、MP41、MP38、MP46)、前立腺癌細胞株(LNCAP)、肺癌細胞株(NCIH1299)、及び不死化胚性腎臓株(HEK293T)を、増殖培地を含む96ウェルプレートに播種した(表1を参照)。BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤である化合物17を、DMSOに溶解し、プレーティング時、0~10μMの濃度勾配で、細胞に添加した。細胞を、37℃で3日間インキュベートした。3日間の処理の後、培地を細胞から除去し、30μLのTrypLE(Gibco)を、細胞に10分間添加した。細胞を、プレートから剥離し、170μLの増殖培地を添加して、再懸濁した。2つのDMSOで処理された対照ウェルから、細胞をカウントし、実験の開始時にプレーティングされた初期の細胞数を、37℃でさらに4日間、新鮮な化合物を含有するプレートに再プレーティングした。7日目に、細胞を、上に記載のように採取した。
【0254】
3日目及び7日目に、Cell-titer glo(Promega)を添加することによって、相対細胞増殖を測定し、発光を、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で測定した。各細胞株の増殖が50%阻害される化合物17の濃度(GI
50)は、Graphpad Prismを使用して計算され、
図1にプロットされている。
【0255】
多発性骨髄腫細胞株(OPM2、MM1S、LP1)、ALL細胞株(TALL1、JURKAT、RS411)、DLBCL細胞株(SUDHL6、SUDHL4、DB、WSUDLCL2、PFEIFFER)、AML細胞株(OCIAML5)、MDS細胞株(SKM1)、卵巣癌細胞株(OV7、TYKNU)、食道癌細胞株(KYSE150)、ラブドイド腫瘍株(RD、G402、G401、HS729、A204)、肝臓癌細胞株(HLF、HLE、PLCRPF5)、及び肺癌細胞株(SW1573、NCIH2444)について、上記の方法を、以下の変更を用いて行った。細胞を96ウェルプレートに播種し、翌日、BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤である化合物17を、DMSOに溶解し、0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。3日目及び7日目の細胞を分ける時点で、細胞を新しい96ウェルプレートに分け、新鮮な化合物を再プレーティングの4時間後に添加した。
【0256】
表1に、試験した細胞株及び使用した増殖培地を列挙する。
【0257】
【0258】
結果:
図1に示されるように、ブドウ膜黒色腫細胞株及び血液癌細胞株は、他の試験された細胞株よりも、BRG1/BRM阻害に対して感受性が高かった。ブドウ膜黒色腫細胞株及び血液癌細胞株の阻害は、7日目まで維持された。
【0259】
実施例3.ブドウ膜黒色腫細胞株におけるBRG1/BRM阻害剤と臨床PKC及びMEK阻害剤との比較
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株、92-1またはMP41を、増殖培地の存在下、96ウェルプレートに播種した(表1を参照)。BAF ATPアーゼ阻害剤(化合物17)、PKC阻害剤(LXS196;MedChemExpress)、及びMEK阻害剤(セルメチニブ;Selleck Chemicals)をDMSOに溶解し、プレーティング時に、0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。細胞を、37℃で3日間インキュベートした。3日間の処理の後、細胞増殖を、Cell-titer glow(Promega)で測定し、発光を、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
【0260】
結果:
図2A及び
図2Bに示されるように、化合物17は、臨床PKC阻害剤及び臨床MEK阻害剤と同等の、ブドウ膜黒色腫の増殖阻害を示した。さらに、化合物17は、臨床PKC阻害剤及び臨床MEK阻害剤よりも早い阻害の開始をもたらすことが見出された。
【0261】
実施例4.化合物18の合成
BRG1/BRM阻害剤である化合物18は、以下の構造を有する。
【0262】
【0263】
化合物18を、以下のスキーム2に示されるように合成した。
【0264】
【0265】
ステップ1:(S)-1-(メチルスルホニル)-N-(4-(メチルチオ)-1-オキソ-1-((4-(3-(ピリジン-4-イル)フェニル)チアゾール-2-イル)アミノ)ブタン-2-イル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド(化合物18)の調製
【0266】
【0267】
DMF(20mL)中の(S)-4-(メチルチオ)-1-オキソ-1-((4-(3-(ピリジン-4-イル)フェニル)チアゾール-2-イル)アミノ)ブタン-2-アミニウムクロリド(2.00g、4.75mmol)及び1-メチルスルホニルピロール-3-カルボン酸(0.899g、4.75mmol)の混合物に、EDCI(1.37g、7.13mmol)、HOBt(0.963g、7.13mmol)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.31mL、19.00mmol)を添加した。3時間撹拌した後、混合物を水(100mL)に注ぎ、得られた沈殿物を濾過した。固体を、MeOH(20mL)中で粉砕し、沈殿物を濾過によって収集した。固体をDMSO(10mL)に再溶解し、MeOH(50mL)中に注いだ。沈殿物を濾過し、凍結乾燥して、化合物18(2.05g、3.66mmol、収率77.01%)を白色固体として得た。LCMS (ESI) m/z [M+H]+ = 555.9。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 12.49 (s, 1H), 8.68-8.66 (m, 2H), 8.46 (d, J =7.2 Hz, 1H), 8.31-8.30 (m, 1H), 8.02-8.00 (m, 1H), 7.94-7.96 (m, 1H), 7.83 (s, 1H), 7.73-7.74 (m, 3H), 7.61-7.57 (m, 1H), 7.31-7.29 (m, 1H), 6.79-6.77 (m, 1H), 4.74-4.69 (m, 1H), 3.57 (s, 3H), 2.67-2.53 (m, 2H), 2.13-2.01 (m, 5H)。SFC: AS-3-MeOH(DEA)-40-3mL-35T.lcm、t=0.932分、ee%=100%。
【0268】
実施例5.ブドウ膜黒色腫細胞株、血液癌細胞株、前立腺癌細胞株、乳癌細胞株、及びユーイング肉腫細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPアーゼの阻害の効果
手順:また、実施例2での上に記載の全ての細胞株を、上に記載のように、化合物18を用いて試験した。加えて、以下の細胞株も、以下のように試験した。簡潔には、ユーイング肉腫細胞株(CADOES1、RDES、SKES1)、網膜芽腫細胞株(WERIRB1)、ALL細胞株(REH)、AML細胞株(KASUMI1)、前立腺癌細胞株(PC3、DU145、22RV1)、黒色腫細胞株(SH4、SKMEL28、WM115、COLO829、SKMEL3、A375)、乳癌細胞株(MDAMB415、CAMA1、MCF7、BT474、HCC1419、DU4475、BT549)、B-ALL細胞株(SUPB15)、CML細胞株(K562、MEG01)、バーキットリンパ腫細胞株(RAMOS2G64C10、DAUDI)、マントル細胞リンパ腫細胞株(JEKO1、REC1)、膀胱癌細胞株(HT1197)、及び肺癌細胞株(SBC5)について、上記の方法を、以下の変更を用いて行った:細胞を96ウェルプレートに播種し、翌日、BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤である化合物18を、DMSOに溶解し、0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。3日目及び7日目の細胞を分ける時点で、細胞を新しい96ウェルプレートに分け、新鮮な化合物を再プレーティングの4時間後に添加した。
【0269】
表2に、試験した細胞株及び使用した増殖培地を列挙する。
【0270】
【0271】
結果:
図3に示されるように、ブドウ膜黒色腫細胞株、血液癌細胞株、前立腺癌細胞株、乳癌細胞株、及びユーイング肉腫細胞株は、他の試験された細胞株よりもBRG1/BRM阻害に対して感受性が高かった。ブドウ膜黒色腫細胞株、血液癌細胞株、前立腺癌細胞株、乳癌細胞株、及びユーイング肉腫細胞株の阻害は、7日目まで維持された。
【0272】
実施例6.がん細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPアーゼの阻害の効果。
手順:前述のように(“High-throughput identification of genotype-specific cancer vulnerabilities in mixtures of barcoded tumor cell lines”,Yu et al,Nature Biotechnology 34,419-423,2016)、PRISM(混合物中の相対阻害の同時プロファイリング)を使用してプールされた細胞生存率アッセイを、以下の改変を用いて行った。細胞株を、がん細胞株エンサイクロペディア(CCLE)収集物から入手し、独自の感染及びプーリングのプロトコルを、かかる細胞株の大きな一覧に適用するために、10%の非動化ウシ胎児血清(FBS)を補充したフェノールレッド不含RPMI-1640培地に順応させた。ブラストサイジンを選択マーカーとして使用して、全ての細胞株に対して推定感染多重度(MOI)が1で、レンチウイルスのスピン感染プロトコルを実行して、24ヌクレオチドのバーコードを各細胞株に導入した。次いで、安定してバーコード化された750超のPRISMがん細胞株を、倍加時間に従って、25個のプールに一緒にプールした。スクリーニングの実行のために、前述のように各ウェルに25種類の細胞株のプールを播種する代わりに(Yu et al.)、全ての付着細胞株または全ての浮遊細胞株のプールを、それぞれ、T25フラスコ(100,000細胞/フラスコ)または6ウェルプレート(50,000細胞/ウェル)を使用して一緒に播種した。細胞を、10μMの最高濃度から開始して、8測定点、3倍毎の用量応答を3重で、DMSOまたは化合物のいずれかで処理した。アッセイの堅牢性のための対照として、2.5μM及び0.039μMの最高濃度を使用して、細胞を、それぞれ、先の検証された2つの化合物、汎Raf阻害剤であるAZ-628、及びプロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブを用いて、並行して処理した。
【0273】
化合物による3日間の処理の後、細胞を溶解し、ゲノムDNAを抽出し、バーコードをPCRによって増幅し、次世代配列決定で検出した。細胞生存率は、処理試料中の細胞株特異的バーコードのカウントを、DMSO対照及び0日目対照中のものと比較することによって決定した。用量応答曲線を細胞株ごとに適合させ、対応する曲線下面積(AUC)を計算し、全ての細胞株のAUCの中央値と比較した(
図4)。中央値未満のAUCを有する細胞株は、最も感受性が高いと考えられた。
【0274】
実施例7.ブドウ膜黒色腫細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤の効果。
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株(92-1、MP41、MP38、MP46)及び非小細胞肺癌細胞(NCI-H1299)を、増殖培地を含む96ウェルプレートに播種した(表1を参照されたい)。BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤である化合物18を、DMSOに溶解し、プレーティング時、0~10μMの濃度勾配で、細胞に添加した。細胞を、37℃で3日間インキュベートした。3日間の処置の後、細胞増殖を、Cell-titer glow(Promega)で測定し、発光を、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
【0275】
結果:
図5に示されるように、化合物18は、ブドウ膜黒色腫細胞株における強力な増殖阻害をもたらした。
実施例8.ブドウ膜黒色腫細胞株におけるBRG1/BRM阻害剤と臨床PKC及びMEK阻害剤との比較
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株、92-1またはMP41を、増殖培地の存在下、96ウェルプレートに播種した(表1を参照)。BAF ATPアーゼ阻害剤(化合物18)、PKC阻害剤(LXS196;MedChemExpress)、及びMEK阻害剤(セルメチニブ;Selleck Chemicals)をDMSOに溶解し、プレーティング時に、0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。細胞を、37℃で3日間インキュベートした。3日間の処置の後、細胞増殖を、Cell-titer glow(Promega)で測定し、発光を、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
【0276】
結果:
図6A及び
図6Bに示されるように、化合物18は、臨床PKC阻害剤及び臨床MEK阻害剤と比較して、ブドウ膜黒色腫細胞の増殖阻害に対するより強力な効果を示した。さらに、化合物18は、臨床PKC阻害剤及び臨床MEK阻害剤よりも早い増殖阻害の開始をもたらすことが見出された。
【0277】
実施例9.BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤は、PKC阻害剤耐性細胞の増殖を阻害するのに有効である。
手順:MP41ブドウ膜黒色腫細胞を、最大1μMの漸増濃度の化合物を含有する増殖培地で長期培養することによって、PKC阻害剤(LXS196、MedChemExpress)に対して耐性にした(表1を参照)。3ヶ月後、PKC阻害剤(LXS196)またはBRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤(化合物18)に対する親MP41細胞及びPKC阻害剤(PKCi)耐性細胞の感受性を、実施例2に記載されるように、7日間の増殖阻害アッセイで試験した。
【0278】
結果:PKCi耐性細胞は、親MP41細胞株よりも高い濃度のLXS196で増殖に耐え得るが(
図7A)、BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤(化合物18)は、依然として、PKCi耐性細胞株及び親細胞株の両方の強力な増殖阻害をもたらした(
図7B)。PKCi耐性細胞は、親MP41細胞よりも、化合物18に対してより感受性であった(
図7B)。
【0279】
実施例10.化合物19の合成
BRG1/BRM阻害剤である化合物19は、以下の構造を有する。
【0280】
【0281】
化合物19を、以下のスキーム3に示されるように合成した。
【0282】
【0283】
ステップ1:6-フルオロピリジン-2-カルボニルクロリド(中間体L)の調製
【0284】
【0285】
ジクロロメタン(500mL)及びN,N-ジメチルホルムアミド(0.26mL、3.54mmol)中の6-フルオロピリジン-2-カルボン酸(50.00g、354.36mmol)の冷却(0℃)した溶液に、塩化オキサリル(155.10mL、1.77mol)を添加した。塩化オキサリルを完全に添加した後、反応混合物を室温に加温し、さらに0.5時間撹拌した。その後、混合物を真空中で濃縮して、中間体L(56.50g)を白色固体として得て、それをさらに精製することなく次のステップに使用した。
【0286】
ステップ2:2-クロロ-1-(6-フルオロ-2-ピリジル)エテノン(中間体M)の調製
【0287】
【0288】
1,4-ジオキサン(800mL)中の中間体L(56.00g、351.00mmol)の冷却(0℃)した混合物に、ヘキサン(351mL)中の2Mのトリメチルシリルジアゾメタンの溶液を滴加した。得られた反応混合物を、25℃で10時間撹拌した。その後、反応混合物を、1,4-ジオキサン(500mL)中の4MのHClの溶液でクエンチした。2時間撹拌した後、反応溶液を真空中で濃縮して、油を得た。残渣を、NaHCO3飽和水溶液(500mL)で希釈し、EtOAc(3×200mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、ブライン(2×300mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、中間体M(35.50g)を白色固体として得て、それを次のステップに直接使用した。LCMS (ESI) m/z:[M+H]+ = 173.8。
【0289】
ステップ3:4-(6-フルオロ-2-ピリジル)チアゾール-2-アミン(中間体O)の調製
【0290】
【0291】
室温で、MeOH(250mL)と水(250mL)の混合物中の中間体M(35.50g、204.53mmol)及びチオ尿素(14.01g、184.07mmol)の溶液に、NaF(3.56g、84.82mmol)を添加した。30分間撹拌した後、反応混合物を、真空中で部分的に濃縮して、MeOHを除去した。得られた溶液を、2MのHCl水溶液でpH約3に酸性化し、EtOAc(3×200mL)で抽出した。組み合わせた有機層を廃棄し、水相をNaHCO3飽和水溶液(500mL)で塩基性化した。30分間撹拌した後、水相を、EtOAc(3×325mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、ブライン(3×225mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。固体を、石油エーテル(300mL)を用いて粉砕し、25℃で10分間撹拌し、濾過した。固体を、真空下で乾燥させて、中間体O(28.00g、143.43mmol、収率70.13%、純度100%)を白色固体として得た。LCMS (ESI) m/z:[M+H]+ = 195.8.;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.00-7.96 (m, 1H), 7.72 (d, J =7.2 Hz, 1H), 7.24 (s, 1H), 7.16 (s, 2H), 7.02 (d, J =8.0 Hz, 1H)。
【0292】
ステップ4:tert-ブチル N-[2-[[4-(6-フルオロ-2-ピリジル)チアゾール-2-イル]アミノ]-2-オキソ-エチル]カルバメート(中間体P)の調製
【0293】
【0294】
ジクロロメタン(100mL)中のN-Boc-グリシン(5.92g、33.81mmol)、HATU(12.86g、33.81mmol)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(21.41mL、122.94mmol)の溶液に、中間体O(6.00g、30.74mmol)を添加した。2時間撹拌した後、反応混合物を濃縮した。得られた油を、水(100mL)で希釈し、その後、EtOAc(4×60mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、ブライン(2×100mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、固体を得た。固体を、石油エーテルとMeOH(40mL)の1:1混合物を用いて粉砕した。25℃で20分間撹拌した後、懸濁液を濾過し、濾過ケーキをMTBE(20mL)で洗浄した。固体を真空中で乾燥させて、中間体P(7.70g、21.63mmol、収率70.4%、純度99.0%)を白色固体として得た。LCMS (ESI) m/z:[M+H]+ = 353.1。
【0295】
ステップ5:2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-2-オキソエタン-1-アミニウムクロリド(中間体Q)の調製
【0296】
【0297】
1,4-ジオキサン(35mL)中の4MのHCl中の中間体P(5.40g、15.32mmol)の溶液を、25℃で1.5時間撹拌した。その後、反応混合物を、真空下で濃縮して、中間体Q(4.42g)を白色固体として得て、それをさらに精製することなく次のステップに直接使用した。LCMS (ESI) m/z:[M+H]+ = 252.9。
【0298】
ステップ6:1-tert-ブチル-N-[2-[[4-(6-フルオロ-2-ピリジル)チアゾール-2-イル]アミノ]-2-オキソ-エチル]ピロール-3-カルボキサミド(中間体S)の調製
【0299】
【0300】
ジクロロメタン(40mL)中の中間体Q(3.00g、10.39mmol)、1-tert-ブチルピロール-3-カルボン酸(1.74g、10.39mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(9.05mL、51.95mmol)の溶液に、HOBt(1.68g、12.47mmol)及びEDCI(2.39g、12.47mmol)を順次添加した。4時間撹拌した後、混合物を、真空中で濃縮した。残渣を、水(250mL)で希釈し、EtOAc(3×200mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、ブライン(3×300mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた固体を、MTBE/EtOAc(400mL)の1:1混合物を用いて粉砕し、30分間撹拌した後、懸濁液を濾過した。固体を、MTBE(3×85mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、中間体S(3.10g、7.64mmol、収率73.6%、純度99.0%)を白色の固体として得た。LCMS (ESI) m/z:[M+H]+ = 402.3.;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.40 (s, 1H), 8.18 - 8.15 (m, 1H), 8.09-8.08 (m, 1H), 7.87-7.83 (m, 2H), 7.52 (s, 1H), 7.11 (d, J=8.0 Hz, 1H), 6.97 (m, 1H), 6.47 (s, 1H), 4.10 (d, J=5.6 Hz, 2H), 1.49 (s, 9H)。
【0301】
ステップ7:1-(tert-ブチル)-N-(2-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-2-オキソエチル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド(化合物19)の調製
【0302】
【0303】
DMSO(1mL)中の中間体S(0.100g、0.249mmol)の溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.130mL、0.747mmol)及びシス-2,6-ジメチルモルホリン(0.057g、0.498mmol)を添加した。得られた反応混合物を、120℃で撹拌した。12時間後、溶液を、室温に冷却し、MeOH(3mL)で希釈し、その後、真空中で濃縮した。得られた油を、分取HPLCで精製した(0.1%のTFA、カラム:Luna C18 150*25 5u、移動相:[水(0.075%のTFA)-ACN]、B%:30%~60%、2分)。適切な画分を収集し、凍結乾燥して、化合物19(0.079g、0.129mmol、収率51.94%、純度100%)を白色固体として得た。LCMS (ESI) m/z:[M+H]+ = 497.5.;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.27 (s, 1H), 8.17 - 8.14 (m, 1H), 7.75 (s, 1H), 7.63 - 7.59 (m, 1H), 7.51 (s, 1H),7.25 (d, J =7.2 Hz, 1H), 6.96 (s, 1H), 6.79 (d, J =8.8 Hz, 1H), 6.47 (s, 1H), 4.24 (d, J =12.4 Hz, 2H), 4.08 (d, J =5.6 Hz, 2H), 3.64 - 3.61 (m, 2H), 2.44 - 2.38 (m, 2H), 1.49 (s, 9H), 1.18 (d, J =5.6 Hz, 6H)。
【0304】
実施例11.BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤は、インビボでブドウ膜黒色腫の腫瘍増殖の阻害を引き起こす。
手順:ヌードマウス(Envigo)の腋窩領域に、50%のMatrigel中の5×106個の92-1ブドウ膜黒色腫細胞を皮下移植した。腫瘍を、平均約200mm3まで増殖させ、この時点で、マウスをグループ化し、投薬を開始した。マウスに、ビヒクル(20%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)または漸増用量の化合物19を強制経口投与によって、1日1回投与した。腫瘍量及び体重を、3週間にわたって測定し、用量を体重によって調整して、適切な用量をmg/kgとして得た。この時点で、動物を安楽殺し、腫瘍を解剖し、画像化した。
【0305】
結果:化合物19を用いた処置は、最高(50mg/kg)用量で観察された用量依存的な様式での腫瘍退縮を伴う腫瘍増殖阻害をもたらした。(
図8A及び
図8B)。全ての処置は、観察された体重変化%に基づいて、十分に許容された(
図8C)。
【0306】
他の実施形態
この明細書に記述される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、その全体において参照により組み込まれることが明確かつ個別に示されているのと同程度に、それらの全体において参照により本明細書に組み込まれる。本出願における用語が、参照により本明細書に組み込まれる文書において異なるように定義されることが見出される場合、本明細書に提供される定義が、その用語の定義として機能することとなる。
【0307】
本発明を、その特定の実施形態に関連して説明してきたが、本発明は、さらなる修正が可能であり、この出願は、一般に、本発明の原理に従い、かつ本発明が関連する当該技術分野内の既知または慣例的実践の範囲内である本開示からのそのような逸脱を含む本発明の任意の変形例、用途、または適合を包含することを目的としており、上に記載される本質的な特徴に適用され得、特許請求の範囲内にある通りであることが理解されるであろう。
【0308】
他の実施形態は、特許請求の範囲にある。
【国際調査報告】