(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ステロイド耐性の克服および異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患の治療のためのグルタルイミド誘導体の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/454 20060101AFI20220112BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220112BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220112BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220112BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220112BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220112BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20220112BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61K31/454
A61P43/00 111
A61P37/06
A61P37/02
A61P25/00
A61P11/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P11/14
A61P43/00 121
A61K31/56
A61K31/573
A61P21/00
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021528866
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(85)【翻訳文提出日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 RU2019050225
(87)【国際公開番号】W WO2020106191
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521218227
【氏名又は名称】“ケミミューン セラピューティクス” リミテッド ライアビリティー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】’CHEMIMMUNE THERAPEUTICS’ LIMITED LIABILITY COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ネボルシン, ヴラディミル エヴゲニエヴィチ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZA66
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB05
4C086ZB08
4C086ZB15
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、医薬、特に、化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンを投与することによる、異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患、例えば、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデスまたは全身性硬化症の処置、ならびに咳を患っている患者の処置、ステロイド耐性患者における障害、例えば喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスおよび消化管疾患の処置に有効な新しい薬剤に関する。本発明は、ステロイド耐性を克服するための新しい有効な薬剤の創出を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常なインターフェロンガンマシグナル伝達を抑制するための、式:
【化1】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項2】
異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患を治療するための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する前記疾患が、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデスまたは全身性硬化症である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
ステロイド治療に対する耐性の発症を低減するまたは取り除くための、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
ステロイド耐性患者における障害を治療するための、式:
【化2】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項6】
前記障害が、喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、消化管疾患および咳である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
異常なインターフェロンガンマシグナル伝達を抑制するための医薬組成物であって、治療有効量の式:
【化3】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患を治療するための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する前記疾患が、喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、消化管疾患および咳である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
ステロイド治療に対する耐性を予防するための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ステロイド耐性患者における障害を治療するための医薬組成物であって、治療有効量の式:
【化4】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチルピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項12】
異常なインターフェロンガンマシグナル伝達およびステロイド耐性の発達に関連する前記障害が、喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、消化管疾患および咳である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項7に記載の医薬組成物を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項14】
請求項11に記載の医薬組成物を調製するための、請求項5に記載の化合物の使用。
【請求項15】
異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患を治療する方法であって、治療有効量の式:
【化5】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩または請求項7に記載の医薬組成物を身体に投与するステップを含む、方法。
【請求項16】
前記化合物を10~200mg/日の用量で投与する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物を1日当たり1~2回投与する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
ステロイド耐性患者における障害を治療する方法であって、治療有効量の式:
【化6】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩または請求項11に記載の医薬組成物を身体に投与するステップを含む方法。
【請求項19】
前記化合物を10~200mg/日の用量で投与する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物を1日当たり1~2回投与する、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
ステロイド耐性患者における障害を治療するための組み合わせであって、治療有効量の式:
【化7】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩と治療有効量のステロイドとを含む組み合わせ。
【請求項22】
前記ステロイドがコルチコステロイドである、請求項21に記載の組み合わせ。
【請求項23】
前記障害が、喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、消化管疾患および咳である、請求項21に記載の組み合わせ。
【請求項24】
ステロイド耐性患者における障害を治療する方法であって、請求項21に記載の組み合わせを身体に投与するステップを含む方法。
【請求項25】
前記化合物およびステロイドを、同時にまたは別々に投与する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記化合物を10~200mg/日の用量で投与する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物を1日当たり1~2回投与する、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の技術分野]
本発明は、医薬、特に、異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患、例えばシェーグレン症候群、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデスまたは全身性硬化症の治療、ならびに咳を患っている患者の治療、ならびにステロイド耐性患者における障害、例えば喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスおよび消化管疾患の治療に有効な新しい薬剤に関する。
【0002】
[背景]
慢性炎症性疾患を治療する問題は、現代医学の最も実際的で社会的に重要な問題の1つである。慢性炎症性疾患の病原性治療における腫瘍な薬剤は、現在、コルチコステロイド-プレドニゾロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾンなどである[Am J Respir Crit Care Med.2017年8月15日;196(4):414-424]。糖質コルチコステロイド(GCS)は、気管支喘息、慢性糸球体腎炎、間質性腎炎、関節リウマチを治療するための最も有効な薬剤であり、それらは、慢性閉塞性気管支炎、自己免疫性膵炎、および潰瘍性壊死性大腸炎の治療ではあまり使用されていない。それらの治療効果は、強力な抗炎症効果によるものであり、これは、炎症細胞およびこれらの細胞によって産生されるメディエーターに対する阻害作用に関連し、サイトカイン(インターロイキン)および炎症促進性メディエーターの産生、ならびに標的細胞とのそれらの相互作用の阻害を含む[Mediators Inflamm.1998年;7(4):229-37]。
【0003】
コルチコステロイド薬剤に対する感受性が長期治療中にかなりの割合の患者で低下すること、すなわちステロイドに対する耐性が発現することに留意することが重要である。ステロイド治療に対する低感受性は、顕著な治療効果がない場合に現れ、コルチコステロイド用量の増加を必要とする。しかしながら、ステロイド耐性患者においては、ステロイド用量の増加は、抗炎症効果および治療効果の短時間の上昇しかもたらさない。長期コルチコステロイド治療中の耐性の出現に加えて、この疾患は、ステロイド耐性形態での臨床診療においても遭遇し、これは、病原性治療のための薬剤の選択を非常に複雑にし、これらの患者の治療における主要な問題である[Curr Allergy Asthma Rep.2002年3月;2(2):144-50]。
【0004】
ステロイド耐性は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスおよび腸疾患を含む種々の炎症性および自己免疫性疾患で生じる[Arthritis Res Ther.2016年6月14日;18(1):139、およびClin Rheumatol.2016年5月;35(5):1367-75]。ステロイド耐性は、通常、本質的に局所的であり、すなわち、慢性炎症の領域で観察される。ステロイド耐性の発現の可能性のある主要な機構としては、ホルモン受容体複合体の細胞質から核内への移行の欠陥、「炎症性」サイトカイン(特に、IL-2、IL-4、IL-13)の過剰産生、細胞内の異常なβ受容体の発現上昇、転写因子(例えば、AP-1)への「ホルモン受容体」複合体の結合、ステロイド受容体のp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(p38 MAPK)誘発性リン酸化、およびヒストンデアセチラーゼ活性の低下が挙げられる[J Steroid Biochem Mol Biol.2010年5月31日;120(2-3):76-85]。
【0005】
用いる治療の治療効果を高めるための公知の方法は、細胞増殖抑制薬剤と組み合わせたステロイドの自己免疫性疾患を有する患者への投与である[Kotter I.,Duck H.,Saal J.et al.Therapy of Behcet’s disease//Ger.J.Ophthalmol.1996.第5巻、No.2.p.92-97]。しかしながら、そのような複雑な治療は、既存の副作用(腎毒性、肝毒性および血液毒性)を悪化させ、これは、両方の群の薬剤(コルチコステロイドおよび細胞増殖抑制薬剤の両方)が顕著な副作用を有することに起因する。一般的な副作用は、組み合わせて投与した際に多様性を増加させる。場合によっては、副作用が毒性クライシスの発生まで増強することがあり得る。したがって、臨床診療では、ステロイド耐性を克服することができる薬剤が緊急に必要とされている。
【0006】
喘息および他の慢性閉塞性肺疾患は、就業不能の日数を導く疾患の1つであり、罹患構造における障害の原因であり、かつ死因の中で4番目にランク付けされている[Clin Chest Med.2014年3月;35(1):7-16.,Eur Respir J.2001年5月;17(5):982-94]。吸入糖質コルチコイドの毎日の投与は、喘息の「ゴールドスタンダード」治療のままであり、ほとんどの患者に有効である。しかしながら、重篤な疾患を有する一部の患者は、経口糖質コルチコステロイドの使用を必要とする。それにもかかわらず、一部の患者は、高用量の経口糖質コルチコステロイドが使用されているにもかかわらず、治療に対して非応答性のままである[Lancet.2010年.V.376.P.814-825]。これらのステロイド非感受性患者は、一般的に、好酸球性炎症の徴候を有しない[Froidure Eur Respir J 2016年;47:304-319]。非好酸球性喘息表現型を有する患者は、好酸球性喘息表現型を有する患者よりも吸入コルチコステロイドによる治療に有意に悪い応答を示し、この差は臨床試験において確認され[Thorax.2007年12月;62(12):1043-1049]、これらにより著者らは非好酸球性喘息を疾患の別個のステロイド耐性表現型として同定することができた[Am J Respir Crit Care Med.2009年.V.180.P.388-395]。ステロイド耐性喘息治療の費用は、喘息治療の総医療費の約50%を占めることに留意することが重要である[Curr Drug Targets.2010年8月;11(8):957-70]。
【0007】
蓄積された臨床データは、喘息患者における血球によるインターフェロンガンマ(IFN-γ)およびインターロイキン17A(IL-17A)の産生がステロイド耐性の予測因子であり得ることを実証している。[J Allergy Clin Immunol.2015年9月;136(3):628-637.e4]において、著者らは、ステロイド耐性を決定するためのIFN-γおよびIL-17Aレベルの予測可能性を調査した。この研究は、IFN-γ、IL-17AおよびIFN-+IL-17Aのレベルが、糖質コルチコイド治療(2週間にわたるプレドニゾロン40mg)に対する応答強度と負に相関することを示した。さらに、ステロイド耐性喘息患者の末梢血単核球は、ステロイド感受性喘息患者の血球よりも有意に多くのIFN-γおよびIL-17Aを産生する[J Allergy Clin Immunol.2015年9月;136(3):628-637.e4]。Th1サイトカイン(IL-2、IL-12、IFN-γ)またはTh2サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)のいずれかを産生するOVA特異的細胞の導入によって誘発された喘息のマウスモデルにおいて、ステロイド耐性喘息の発症におけるIFN-γの役割のさらなる確認が得られた。第1の場合において、動物は、肺のコルチコステロイド耐性過剰応答性の発達を示した。しかしながら、Th2モデルは、コルチコステロド治療によく応答する好酸球性炎症を示した[J Immunol.2009年4月15日;182(8):5107-15]。
【0008】
ステロイド耐性の問題を解決することは、炎症性腸疾患の治療における重要な課題の1つである[Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2013年12月;305(11):G763-85]。消化管組織における慢性炎症の発症は、インターフェロンガンマ産生細胞(主にマクロファージ、T細胞およびNK細胞)の流入をもたらす[Cytokine.2010年4月;50(1):1-14;J Immunol.1996年8月1日;157(3):1261-70]。臨床データにより、IFN-γレベルと糖質コルチコイド治療に対する応答強度との負の相関が確認される。IFN-γに対する抗体の使用は、ステロイド耐性患者における治療に対する応答を完全に回復させないこと[Gut.2006年8月;55(8):1131-7;Inflamm Bowel Dis.2010年2月;16(2):233-42]に留意することが重要であり、これは、炎症性腸疾患におけるステロイド耐性の複雑で多因子性の病因を示している。特に、過剰量のサイトカインIL-17を産生するTh1およびTh17細胞は、ステロイド耐性の発達および異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関与することが示された[Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2013年12月;305(11):G763-85]。
【0009】
したがって、文献データから、臨床診療においてステロイド耐性を克服することができる薬剤が顕著に必要とされているという結論が可能になる。ステロイド耐性の克服は、慢性閉塞性肺疾患の処置、特に非好酸球性(ステロイド耐性)喘息ならびに炎症性腸疾患の処置にとって非常に重要である。
【0010】
新しい治療の開発を必要とする状態の別の群は、異常なIFN-γシグナル伝達に関連する疾患である。この疾患群には、特に、上気道感染症の背景に対して通常発症する咳過敏症候群が含まれる[Allergy Asthma Immunol Res.2017年9月;9(5):394-402;Rev Alerg Mex.2019年4月~6月;66(2):217-231]。気道感染に対する免疫応答は、Tリンパ球の流入および異常なIFN-γ産生をもたらす。IFN-γの過剰産生は慢性咳および咳過敏症候群の発症に関連する[J.Clin Pharm Ther.2011年6月;36(3):416-8]ため、異常なIFN-γシグナル伝達の抑制は、上気道感染症の背景に対して発症する咳過敏症候群を有効に抑制する。
【0011】
IFN-γシグナル伝達障害は、シェーグレン症候群(結合組織に対する全身性自己免疫性損傷)[Proc Natl Acad Sci USA.2012年10月23日;109(43):17609-14]、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎および全身性硬化症[Discov Med.2013年9月;16(87):123-131]などの多数の自己免疫性疾患の特徴である。本発明は、上記課題を解決することを目的とする。
【0012】
[発明の概要]
本発明の目的は、異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患、例えばシェーグレン症候群、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデスまたは全身性硬化症の治療、咳を患っている患者の治療、ならびにステロイド耐性患者における障害、例えば喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスおよび消化管疾患の治療に有効な新しい薬剤を開発することである。
【0013】
本発明の技術的結果は、ステロイド耐性患者におけるコルチコステロイドを用いたベースライン治療の有効性を高めることである。
【0014】
特定の技術的結果は、化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオン
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を使用することによって達成される。
【0015】
化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンは公知であり、国際公開第2014/168522号に記載されている。
【0016】
本発明の一実施形態は、異常なインターフェロンガンマシグナル伝達を抑制するための、式:
【化2】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0017】
本発明の別の実施形態は、異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患を治療するための化合物1の使用を提供する。異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患は、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデスまたは全身性硬化症である。
【0018】
本発明の別の実施形態は、ステロイド治療に対する耐性の発症を遅らせる(delying)または取り除くための化合物1の使用を提供する。
【0019】
本発明のさらなる実施形態は、ステロイド耐性患者における障害を治療するための、式:
【化3】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。障害は、喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、消化管疾患、または咳である。
【0020】
本発明の別の実施形態は、異常なインターフェロンガンマシグナル伝達を抑制するための医薬組成物であって、治療有効量の式:
【化4】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明の別の実施形態は、異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患を治療するための医薬組成物を提供する。異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患は、喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、消化管疾患、または咳である。
【0022】
本発明の別の実施形態は、ステロイド治療に対する耐性を予防するための医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、ステロイド耐性患者における障害を治療するための医薬組成物であって、治療有効量の式:
【化5】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。異常なインターフェロンガンマシグナル伝達およびステロイド耐性の発達に関連する障害は、喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、消化管疾患または咳である。
【0024】
本発明の別の実施形態は、異常なインターフェロンガンマシグナル伝達を抑制するための医薬組成物を調製するための化合物1の使用を提供する。
【0025】
本発明の別の実施形態は、ステロイド耐性患者における障害を処置するための医薬組成物を調製するための化合物1の使用を提供する。
【0026】
本発明の別の実施形態は、異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患を処置する方法であって、治療有効量の式:
【化6】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩、またはそれを含む医薬組成物を生物に投与するステップを含む方法を提供する。本発明の別の実施形態は、化合物1を10~200mg/日、好ましくは100mgの用量で投与する方法を提供する。本発明のさらに別の実施形態は、化合物1を1日当たり1~2回投与する方法を提供する。
【0027】
本発明の別の実施形態は、ステロイド耐性患者における障害を治療する方法であって、治療有効量の式:
【化7】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれを含む医薬組成物を身体に投与するステップを含む方法を提供する。本発明の別の実施形態は、化合物1を10~200mg/日、好ましくは100mgの用量で投与する方法を提供する。本発明のさらに別の実施形態は、化合物1を1日当たり1~2回投与する方法を提供する。
【0028】
本発明の別の実施形態は、ステロイド耐性患者における障害を治療するための組み合わせであって、治療有効量の式:
【化8】
の化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはその薬学的に許容される塩と、治療有効量のステロイドとを含む組み合わせを提供する。ステロイドはコルチコステロイドであり、障害は喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、消化管疾患または咳である。
【0029】
本発明の別の実施形態は、ステロイド耐性患者における障害を治療する方法であって、化合物1とステロイドとの組み合わせを身体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0030】
本発明の別の実施形態は、化合物1およびステロイドを同時にまたは別々に投与する方法である。さらに、特定の化合物を、10~200mg/日、好ましくは100mgの用量で投与する。さらに、化合物を1日当たり1~2回投与する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
[図面の説明]
【
図1】化合物1またはプラセボの投与の背景に対して、吸入糖質コルチコイドによるベースライン治療に応答した患者の数を示す。
【
図2】ベースラインステロイド治療および100mgの用量の化合物1を受けた患者(「ベースラインステロイド治療+化合物1、100mg」と指定)ならびにベースラインステロイド治療およびプラセボを受けた患者(「ベースラインステロイド治療+プラセボ」と指定)における一秒の強制呼気量(FEV1)の絶対的増加(L)(第12週対第0週)に対する試験参加時のIFN-γレベル(pg/ml)の効果を示す。化合物1:各点について、nは、治療の種類およびIFN-γレベルに応じて所与のサブグループに入る患者の数である。
【
図3】参加時のIFN-γレベルに応じた、ベースラインステロイド治療および100mgの用量の化合物1を受けた患者(「ベースラインステロイド治療+化合物1、100mg」と指定)ならびにベースラインステロイド治療およびプラセボを受けた患者(「ベースラインステロイド治療+プラセボ」と指定)における治療に対する応答(FEV1(L)の変化、第12週対第0週)を示す。
【
図4】参加時のIFN-γレベル(第12週と第0週のレベルの差)に応じた、ベースラインステロイド治療と組み合わせた化合物1またはプラセボの投与中の患者の血漿中のインターフェロンガンマ依存性サイトカインCXCL10(インターフェロンガンマ誘導タンパク質IP10)の濃度の変化を示す。
【
図5】参加時のIFN-γレベル(第12週と第0週のレベルの差)に応じた、ベースラインステロイドと組み合わせた化合物1またはプラセボの投与中の患者の血漿中のインターフェロン-γ濃度の変化を示す。
【0032】
[発明の詳細な開示]
本発明の主題である化合物1および多数の他の化合物の調製は、国際公開第2014/168522号に記載されている。本特許出願は、抗ウイルス作用を有するグルタルイミド誘導体、鼻洞炎および他の上気道疾患の治療のためのその使用を記載する。
【0033】
国際公開第2015/072893号は、好酸球性喘息を含む、好酸球性炎症の発症に関連する疾患の処置のための化合物1の使用を記載している。しかしながら、好酸球性炎症の発症は主にステロイド感受性型喘息に特徴的であり、一方、高用量の全身コルチコステロイドによる治療を受けた治療耐性患者における気管支肺胞洗浄(BAL)は多数の好中球を示した、すなわち、ステロイド耐性患者は主に好中球性炎症を有していた[Turato G.,Baraldo S.,Zuin R.The laws of attraction:chemokines,neutrophils and eosinophils in severe exacerbations of asthma.Thorax.2007年;62(6):465-466]。
【0034】
本発明の主題である化合物1の活性の臨床試験において、予想外なことに、化合物1の治療的使用が、標準的なコルチコステロイド治療に対する応答者の数を有効に増加させ、また、異常なインターフェロンガンマシグナル伝達も抑制することが見出された。コルチコステロイド耐性の克服は、化合物1の抗ウイルス効果を発揮する能力または好酸球性炎症を抑制する能力によって予測または説明することができない。
【0035】
したがって、化合物1は、異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に対する効果に関連するこれまで知られていない薬理学的活性を有し、コルチコステロイド治療に対する患者の応答を上昇させ、このことは、異常なインターフェロンガンマシグナル伝達に関連する疾患、例えばシェーグレン症候群、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデスまたは全身性硬化症の治療、咳を有する患者の治療、ならびにステロイド耐性患者における障害、例えば喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスおよび消化管疾患の治療のための化合物1の潜在的な適用可能性を示している。
【0036】
用語および定義
用語「糖質コルチコステロイド」または「糖質コルチコイド」は、コルチコステロイドおよび/またはそれらの合成類似体のサブクラスからのステロイドホルモンを意味する。
【0037】
用語「コルチコステロイド」は、ステロイドホルモンおよび/またはその合成類似体のサブクラスを含む。
【0038】
用語「化合物1」は、構造式:
【化9】
によっても表される化合物1-(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル)ピペリジン-2,6-ジオンを指す。
【0039】
用語「ステロイド耐性」は、原則として前記疾患を有する患者の処置に有効であるステロイド治療が無効である疾患状態を意味する。ステロイド耐性患者には、応答定期パラメータにしたがって全身または経口コルチコステロイドによる治療に応答しないか、または応答が不良もしくは不十分な患者が含まれるが、これに限定されない。
【0040】
用語「薬学的に許容される塩」または「塩」は、比較的非毒性の酸とともに調製された活性化合物の塩を含む。薬学的に許容される非毒性塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸もしくはマロン酸などの有機酸により形成される塩、またはこの分野で使用される他の方法によって調製される塩が挙げられる。他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ヘミフマル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。
【0041】
用語「処置」および「治療」は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける病理学的状態の処置を包含し、疾患の進行をa)低減させること、b)阻止する(停止させる)こと、c)疾患重症度を緩和すること、すなわち疾患の退縮を誘発すること、d)本用語が適用される疾患もしくは状態、またはこの疾患もしくは状態の1つ以上の症候を逆転させることを含む。
【0042】
用語「予防(prophylaxis)」および「予防(prevention)」は、疾患の臨床段階の発症の可能性を低下させることを目的とした、哺乳動物、好ましくはヒトにおける危険因子の排除および疾患の不顕性段階の予防的処置を包含する。予防的治療のための患者の選択は、一般集団と比較して、疾患の臨床段階に進行する危険性の増加に関連することが知られている因子に基づく。予防的治療には、a)一次予防およびb)二次予防が含まれる。一次予防は、臨床段階に達していない疾患を有する患者の予防的処置として定義される。二次予防は、疾患の同一または類似の臨床状態の再発の予防である。
【0043】
化合物の治療的使用のための方法
本発明の主題はまた、適切な処置を必要とする対象に治療有効量の本発明による化合物を投与することを含む。治療有効量は、患者に投与または送達された際に、治療(予防)に対する患者の所望の応答を提供する可能性が最も高い化合物の量を意味する。必要とされる正確な量は、患者の年齢、体重および全身状態、疾患の重症度、薬剤投与方法、他の薬剤との組み合わせ使用などに応じて、対象ごとに異なり得る。
【0044】
本発明による化合物または前記化合物を含む医薬組成物は、疾患の治療または予防に有効な任意の量(好ましくは、活性物質の1日用量は、患者あたり1日当たり最大0.2gであり、最も好ましくは、1日用量は、10~200mg/日であり、好ましくは、100mgである)および任意の投与経路(好ましくは経口投与経路)によって患者に投与し得る。
【0045】
薬剤を特定の適切な薬学的に許容される担体と所望の投与量で混合した後、本発明による組成物をヒトまたは他の動物に経口、非経口、局所などで投与し得る。
【0046】
投与は、1日、1週間(または任意の他の時間間隔)に1回および数回の両方、または時々行うことができる。さらに、化合物は、特定の期間(例えば、2~10日)にわたって毎日患者に投与し得、その後、投与しない期間(例えば、1~30日)が続き得る。
【0047】
本発明による化合物を組み合わせ治療の一部として使用する場合、組み合わせ治療の各成分の用量を、所望の治療期間にわたって投与する。組み合わせ治療の化合物は、全ての成分を含有する投与量の形態および成分の個々の投与量の形態の両方で同時に患者の身体に投与し得る。
【0048】
組み合わせ治療における化合物1の使用
本発明による化合物1は、個々の活性医薬品として投与することができるが、1つ以上の他の剤と組み合わせて使用することもでき、特に、他の薬剤は、糖質コルチコイド、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、気管支拡張薬、モノクローナル抗体などであり得る。治療剤は、組み合わせて投与する場合、異なる剤形で同時にまたは異なる時間に逐次投与することができ、または治療剤は単一剤形で組み合わせることができる。
【0049】
他の医薬品と組み合わせて使用する本発明の化合物に関する「組み合わせ治療」という語句は、薬剤組み合わせの有益な効果が任意の方法で提供されるような、全ての剤の同時投与または逐次投与を意味する。共投与は、特に共送達、例えば、活性物質の固定比を有する1つの錠剤、カプセル剤、注射または別の形態での共送達、ならびにそれぞれ、各化合物についてのいくつかの別個の剤形の同時送達を意味する。
【0050】
したがって、本発明の化合物1は、当業者に公知のさらなる治療と組み合わせて、対応する疾患の予防および治療に投与することができ、これには抗菌性、細胞増殖抑制性および細胞傷害性薬剤、症候または前記薬剤の副作用を抑制するための医薬製剤の使用が含まれる。
【0051】
剤形が固定用量である場合、そのような組み合わせは、許容される投与量範囲内の本発明による化合物を含む。本発明の化合物1は、これらの薬剤の組み合わせが可能でない場合、他の剤とともに逐次的に患者に投与し得る。本発明は、特定の投与順序に限定されず、本発明の化合物は、他の薬剤の投与と同時に、または投与前後の任意の時点で患者に投与し得る。
【実施例】
【0052】
本発明による化合物の調製
本発明の主題である化合物1および多数の他の化合物の調製は、国際公開第2014/168522号に記載されている。本特許出願は、抗ウイルス作用を有するグルタルイミド誘導体、鼻洞炎および他の上気道疾患の治療のためのそれらの使用を記載する。
【0053】
本発明による化合物の生物学的活性の特性評価
本発明の主題である化合物1の生物学的活性は、大規模な前臨床試験および気管支喘息を有する患者の12週間にわたる治療の多施設二重盲検無作為化第II相臨床試験で試験されている。化合物1の治療的使用は、吸入コルチコステロイドを用いた標準治療に対する応答者の数を有効に増加させることが示されている。吸入コルチコステロイドに対する耐性の克服は、化合物1の抗ウイルス効果を発揮する能力または好酸球性炎症を抑制する能力によって予測または説明することができない。
【0054】
実施例1.臨床試験における化合物1の活性の試験
気管支喘息を有する患者の12週間にわたる治療におけるプラセボに対する種々の用量の化合物1の有効性および安全性の評価に関する多施設二重盲検無作為化並行群の第II相臨床試験研究(PULM-XC8-02、NCT03450434)において、化合物1の治療的使用は、予想外なことに、吸入コルチコステロイドを用いた標準治療に対する応答者の数を有効に増加させることが見出された。したがって、化合物1は、ステロイド耐性の発達に関連する疾患の治療、特にステロイド耐性喘息の処置に潜在的に有用である。
【0055】
臨床試験において、適格患者を1:1:1:1で4つの群の1つに無作為化した:
1日当たり2mgの用量の化合物1;
1日当たり10mgの用量の化合物1;
1日当たり100mgの用量の化合物1;および
プラセボ。
【0056】
試験治療段階の間、患者は、低用量の吸入コルチコステロイドを用いたベースラインステロイド治療の背景に対して12週間、化合物1またはプラセボを投与された。化合物1またはプラセボを1日1回、朝食の30分前に経口投与した。
【0057】
1日当たり100mgの化合物1の用量において、臨床的に有意な効果が得られた。
【0058】
気管支喘息を有する患者における臨床試験の結果の調査分析により、化合物1が標準治療に対する応答者の数を有効に増加させることが示された。例えば、ベースラインステロイド治療およびプラセボの使用は、29名の患者中13名においてのみFEV1の100ml以上の上昇をもたらしたが、ベースラインステロイド治療および化合物1の使用は、29名中20名の患者において応答をもたらし、したがって、ベースラインステロイド治療に対する応答を有する患者数の有意な増加を可能にした(
図1)。したがって、化合物1の使用の効果の1つは、臨床試験に登録された患者のベースライン治療の骨格であるコルチコステロイドに対する耐性の克服である。
【0059】
喘息を有する患者におけるIFN-γベースラインレベルの効果を試験するために、臨床試験で得られた結果をさらに分析し、試験参加時の血液中のIFN-γベースラインレベルに応じて、治療に対する患者の応答を試験(Bio-Plex Pro Human Chemokine Panel Assay(Bio-Rad)によって決定)した。
【0060】
ベースラインステロイド治療およびプラセボの群におけるベースライン治療に対する患者の応答は、IFN-γベースラインレベルの上昇とともに低下した(
図2)。100pg/mlを超えるIFN-γレベルを有する患者におけるベースラインステロイド治療の使用は、FEV1の変化(少なくとも0.1Lの観察された低下、
図2)によって決定されるような、呼吸機能の正の変化をもたらさなかった、すなわち、これらの患者は、ステロイド治療に対する耐性を示した(治療に対する正の応答の欠如)。ベースラインステロイド治療の背景に対して投与される1日当たり100mgの用量での化合物1の使用は、患者、特に100pg/mlを超えるIFN-γレベルを有する患者において、治療に対して有意に大きく、かつ臨床的に有意な応答をもたらした(
図3)。このことは、とりわけ異常なIFN-γシグナル伝達によって引き起こされ得るステロイド耐性の克服を示している。
【0061】
さらに、臨床試験において、化合物1をIFN-γシグナル伝達に対するその効果についても分析した。ベースラインステロイド治療の背景に対して投与された化合物1は、100pg/mlを超えるIFN-γベースラインレベルを有する患者においてインターフェロンガンマ依存性サイトカインCXCL10(インターフェロンガンマ誘導タンパク質IP10)の濃度を抑制したが、一方、ベースラインステロイド治療の背景に対してプラセボを投与された患者群は、CXCL10のレベルのわずかな上昇を有したことが示された(
図4)。さらに、ベースライン治療の背景に対する化合物1の治療的使用はまた、参加時のIFN-γレベルにかかわらず、ベースライン治療およびプラセボのみの使用と比較して、患者の血漿中のIFN-γ濃度の負の動態をもたらした(
図5)。したがって、化合物1の使用によって誘発されるステロイド耐性の抑制は、IFN-γの異常な活性(シグナル伝達)に対する影響と潜在的に関連し得る。
【0062】
実施例2.急性オキサゾロン誘発腸炎症モデルにおける化合物1の活性の試験
急性オキサゾロン誘導性潰瘍性大腸炎のモデルにおける化合物1の活性を、標準的な方法を用いて試験した[Immunity.2002年.P.629-638]。
【0063】
この試験では、雌のbalb/cマウス(6~8週齢)を使用した。化合物Iを、オキサゾロンの直腸投与の1時間後、25時間後および49時間後の3回胃内投与した。動物の体重を、オキサゾロンの投与前ならびに投与の24、48および72時間後に測定した。腸壁損傷を、以下のスコアスケールにしたがって、オキサゾロン投与の72時間後に顕微鏡下で評価した:
0=損傷なし、
1=充血、潰瘍なし、
2=充血、腸壁の肥厚、潰瘍なし、
3=腸壁の肥厚を伴わない1つの潰瘍、
4=2つ以上の潰瘍形成または炎症部位、
5=2つ以上の重篤な潰瘍形成および炎症部位、または結腸の長さに沿って1cmを超えて延在する1つの潰瘍形成/炎症部位、
6~10=損傷は結腸の長さに沿って2cmを超えてカバーし、スコアは1cmの関与ごとに1ずつ増加する。
【0064】
全てのデータを記述統計学:算術平均(M)および算術平均の標準誤差(m)によって分析した。シャピロウィルク検定を使用して、得られた試験データの分布の正規性を確認した。正規分布を(ダネットの事後分析を用いた)一元配置ANOVAで分析し、群間差を評価した。非正規分布を(テューキーの事後分析を用いた)一元配置ANOVAで分析し、いくつかの群を比較した。差を5%の信頼水準で決定した。試験結果を表1および表2に示す。
【0065】
【0066】
【0067】
試験の結果は、化合物Iは胃内投与された場合、結腸壁の損傷の程度を減少させ、動物の体重減少を予防することを示した。したがって、化合物Iは、潰瘍性大腸炎のマウスモデルにおいて治療効果を有した。化合物1は、作用強度がプレドニゾロンに劣っていなかった。
【0068】
実施例3.クエン酸およびIFN-γの吸入によって誘発された咳のモルモットモデルにおける化合物1の活性の試験
クエン酸およびIFN-γの吸入によって誘発されたモルモットの咳モデルにおける化合物Iの活性を、[Am J Respir Crit Care Med.2018年.V.198(7).P.868-879]の方法にしたがって試験した。
【0069】
試験では、Aguti系統のモルモットを使用した。全ての実験動物に、生理食塩水中で調製したクエン酸溶液(0.3M)を8分間吸入させた。病理対照群および治療を受けている群は、クエン酸塩の吸入の7時間前にIFN-γ(10μg/kg)を3分間吸入した。化合物1を、IFN-γの吸入の直後、すなわちクエン酸溶液の吸入の7時間前に1回胃内投与した。クエン酸の吸入開始から8分以内の咳発作の数をカウントすることにより、鎮咳活性を評価した。全てのデータを記述統計学:算術平均(M)および算術平均の標準誤差(m)によって分析した。シャピロウィルク検定を使用して、得られた試験データの分布の正規性を確認した。正規分布を(ダネットの事後分析を用いた)一元配置ANOVAで分析し、群間差を評価した。非正規分布を(テューキーの事後分析を用いた)一元配置ANOVAで分析し、いくつかの群を比較した。差を5%の信頼水準で決定した。試験結果を表1および表2に示す。
【0070】
試験の結果を表3に示す。
【0071】
試験の結果は、化合物1は、胃内投与した場合、咳運動の数を減少させることを示した。したがって、化合物Iは、クエン酸およびIFN-γの吸入によって誘発される急性および亜急性のウイルス性咳のモルモットモデルにおいて治療効果を有した。表3.クエン酸およびIFN-γの吸入によって誘発されたウイルス性咳のモルモットモデルにおける咳運動の数に対する化合物Iの効果(M±m、n=5)。
【0072】
【国際調査報告】