(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】光起電力装置用の増強されたペロブスカイト材料
(51)【国際特許分類】
H01L 51/46 20060101AFI20220112BHJP
H01L 51/44 20060101ALI20220112BHJP
H01L 51/40 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H01L31/04 164
H01L31/04 112Z
H01L21/368 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021528882
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(85)【翻訳文提出日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 US2019060410
(87)【国際公開番号】W WO2020106469
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521218526
【氏名又は名称】ハント ペロヴスカイト テクノロジーズ, エル.エル.シー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アーウィン,マイケル,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ホランド,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ニコラス
【テーマコード(参考)】
5F053
5F151
【Fターム(参考)】
5F053AA50
5F053BB09
5F053DD19
5F053DD20
5F053FF00
5F053GG02
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5F053RR07
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5F151DA20
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
(57)【要約】
ペロブスカイト材料は、CxMyXzの一般式を有するペロブスカイト結晶格子と、ペロブスカイト結晶格子の内部または表面に配置された1,4-ジアンモニウムブタンカチオンと、を有し、ここで、x、y、およびzは実数である。Cは、第1族金属、第2族金属、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、およびエテンテトラミンからなる群から選択された、1または2以上のカチオンを有する。Mは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、Zr、およびこれらの組み合わせからなる群から各々選択された、1または2以上の金属を有する。Cは、第1族金属、第2族金属、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、およびエテンテトラミンからなる群から選択された、1または2以上のカチオンを有する。Mは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZr、ならびにこれらの組み合わせからなる群から各々選択される1または2以上の金属を有する。Xは、ハロゲン化物、硫化物、セレン化物、およびこれらの組み合わせからなる群から各々選択された、1または2以上のアニオンを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト材料であって、
C
xM
yX
zの一般式を有するペロブスカイト結晶格子と、
前記ペロブスカイト結晶格子の内部または表面に配置された、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンカチオン種と、
を有し、
ここで、x、y、zは実数であり、
Cは、第1族金属、第2族金属、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、およびエテンテトラミンからなる群から選択された、1または2以上のカチオンを有し、
Mは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、Zr、およびこれらの組み合わせからなる群から各々選択された、1または2以上の金属を有し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、カルコゲニド、およびこれらの組み合わせからなる群から各々選択された、1または2以上のアニオンを有する、ペロブスカイト材料。
【請求項2】
前記1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、当該ペロブスカイト材料において1mol%と20mol%の間の濃度を有する、請求項1に記載のペロブスカイト材料。
【請求項3】
前記1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、当該ペロブスカイト材料において1mol%と5mol%の間の濃度を有する、請求項1に記載のペロブスカイト材料。
【請求項4】
前記1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、当該ペロブスカイト材料において約5mol%の濃度を有する、請求項1に記載のペロブスカイト材料。
【請求項5】
Cは、ホルムアミジニウムを有し、Mは、鉛を有し、Xは、ヨウ化物を有する、請求項1に記載のペロブスカイト材料。
【請求項6】
当該ペロブスカイト材料の結晶格子は、立方晶構造を有する、請求項5に記載のペロブスカイト材料。
【請求項7】
前記1,4-ジアンモニウムブタンカチオンのアンモニウム基は、前記ペロブスカイト結晶格子内のホルムアミジニウムイオンと置換される、請求項5に記載のペロブスカイト材料。
【請求項8】
ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料と、
前記ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料の内部または表面に分散された1,4-ジアンモニウムブタンカチオンと、
を有する、ペロブスカイト材料。
【請求項9】
前記1,4-ジアンモニウムブタンカチオンのアンモニウム基は、前記ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料内のホルムアミジニウムイオンと置換される、請求項8に記載のペロブスカイト材料。
【請求項10】
前記1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、当該ペロブスカイト材料において1mol%と20mol%の間の濃度を有する、請求項8に記載のペロブスカイト材料。
【請求項11】
前記1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、当該ペロブスカイト材料において1mol%と5mol%の間の濃度を有する、請求項8に記載のペロブスカイト材料。
【請求項12】
前記1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、当該ペロブスカイト材料において約5mol%の濃度を有する、請求項8に記載のペロブスカイト材料。
【請求項13】
前記ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料は、立方晶構造を有する、請求項8に記載のペロブスカイト材料。
【請求項14】
ペロブスカイト材料を堆積する方法であって、
基板上に鉛塩前駆体を堆積して、鉛塩薄膜を形成する工程であって、前記鉛塩前駆体は、鉛塩と、1,4-ジアンモニウムブタン塩とを有する、工程と、
前記鉛塩薄膜上に第2の塩前駆体を堆積して、ペロブスカイト前駆体薄膜を形成する工程と、
前記基板およびペロブスカイト前駆体薄膜をアニールして、ペロブスカイト材料を形成する工程と、
を有する、方法。
【請求項15】
前記鉛塩前駆体は、1mol%と20mol%の間の1,4-ジアンモニウムブタン濃度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記鉛塩前駆体は、1mol%と5mol%の間の1,4-ジアンモニウムブタン濃度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記鉛塩前駆体は、約5mol%の1,4-ジアンモニウムブタン濃度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記鉛塩は、ヨウ化鉛(II)、チオシアン酸鉛(II)、塩化鉛(II)、臭化鉛(II)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記鉛塩は、ヨウ化鉛(II)を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の塩前駆体は、ヨウ化ホルムアミジニウム、チオシアン酸ホルムアミジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される塩を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の塩前駆体は、ヨウ化ホルムアミジニウムを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記鉛塩前駆体は、アミノ酸、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩、1,8-ジヨードオクタン、1,8-ジチオオクタン、ハロゲン化ホルムアミジニウム、酢酸、トリフルオロ酢酸、ハロゲン化メチルアンモニウム、水、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された、1または2以上の添加剤を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記鉛塩前駆体は、無水ジメチルホルムアミドに溶解した、90:10のmol比のPbI
2:PbCl
2を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
アニール処理は、50℃以上300℃以下の温度で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
アニール処理は、0g以上のH
2O/m
3空気、20g以下のH
2O/m
3空気の絶対湿度で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
アニール処理は、約4~7gのH
2O/m
3空気の間の絶対湿度で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
ペロブスカイト材料を堆積する方法であって、
基板上に鉛塩前駆体を堆積して、鉛塩薄膜を形成する工程と、
前記鉛塩薄膜上に、1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体を堆積させる工程と、
前記鉛塩薄膜上に第3の塩前駆体を堆積して、ペロブスカイト前駆体薄膜を形成する工程と、
前記基板およびペロブスカイト前駆体薄膜をアニールして、ペロブスカイト材料を形成する工程と、
を有する、方法。
【請求項28】
前記1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体は、1mol%と5mol%の間の1,4-ジアンモニウムブタン濃度を含む溶液を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記鉛塩前駆体は、ヨウ化鉛(II)を有し、
前記第3の塩前駆体は、ヨウ化ホルムアミジニウムを有する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記鉛塩前駆体は、無水ジメチルホルムアミドに溶解した90:10mol比のPbI
2:PbCl
2を有し、
前記鉛塩前駆体は、10mol%のセシウムを有し、
アニール処理は、50℃以上300℃以下の温度で実施される、請求項27記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月21日に出願された、「光起電力装置用の増強されたペロブスカイト材料」という名称の米国仮特許出願第62/770,313号の優先権を主張するものである。本願は、光起電力装置用の増強されたペロブスカイト材料に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーまたは放射線から電力を生成するための太陽光発電(PV)の使用は、例えば、電源、低放射またはゼロ放射、電力グリッドから独立した発電、耐久性のある物理的構造(可動部品なし)、安定した信頼性の高いシステム、モジュール式構造、比較的迅速な導入、安全な製造および使用、ならびに良好な世論および使用の受け入れを含む、多くの利点を提供し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
PVは、光に暴露された際に電力を発生する光活性層として、ペロブスカイト材料の層を組み込むことができる。ある光活性層は、温度、湿度、および酸化を含む環境因子により劣化し得る。従って、ペロブスカイト材料の耐久性および効率の改善が望まれている。
【0004】
本開示の特徴および利点は、当業者には容易に明らかになる。当業者は多くの変更を行い得るが、そのような変更は本発明の思想の範囲内である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の問題を既存の対応策で対処するため、向上されたペロブスカイト材料およびそのような材料を形成する方法が開示される。
【0006】
ある実施態様では、ペロブスカイト材料は、CxMyXzの一般式を有するペロブスカイト結晶格子を有し、ここでx、yおよびzは実数である。バルキーな有機カチオンは、ペロブスカイト結晶格子の表面または粒界近傍に存在する。Cは、第1族金属、第2族金属、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、およびエテンテトラミンからなる群から選択される、1または2以上のカチオンを含む。Mは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZr、ならびにそれらの組み合わせからなる群から各々選択される、1または2以上の金属を含む。Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、カルコゲニド(テルル化物、酸化物、硫化物、およびセレン化物)およびそれらの組み合わせからなる群から各々選択される、1または2以上のアニオンを含む。
【0007】
特定の実施態様では、少なくとも1つのバルキーな有機カチオンのテール(尾部)基は、ペロブスカイト材料の表面または粒界に化学的に接続されていない。
【0008】
特定の実施形態では、バルキーな有機カチオンは、ペロブスカイト材料結晶格子の表面または粒界から、ペロブスカイト材料結晶格子内に50nm未満で存在する。
【0009】
特定の実施形態では、バルキーな有機カチオンは、n―ブチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、ブタン-1,4-ジアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ポリ(ビニルアンモニウム)、フェニルエチルアンモニウム、3-フェニル-1-プロピルアンモニウム、4-フェニル-1-ブチルアンモニウム、1,3-ジメチルブチルアンモニウム、3,3-ジメチルブチルアンモニウム、および1-オクチルアンモニウム、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
特定の実施態様では、バルキーな有機カチオンは、1-ブチルアンモニウムを含む。
【0011】
特定の実施形態では、バルキーな有機カチオンは、1-ヘキシルアンモニウムを含む。
【0012】
特定の実施形態では、バルキーな有機カチオンは、1-オクチルアンモニウムを含む。
【0013】
特定の実施態様では、バルキーな有機カチオンは、ベンジルアンモニウムを含む。
【0014】
特定の実施形態では、ペロブスカイト材料の結晶格子は、立方体構造を有する。
【0015】
ある実施態様では、ペロブスカイト材料は、ヨウ化鉛ホルムアミジニウムペロブスカイト材料を含む。ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料の表面または粒界近傍には、ベンジルアンモニウムカチオンが存在する。
【0016】
特定の実施形態では、ベンジルアンモニウムカチオンの少なくとも1つのベンジル基は、ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料の粒界または表面に化学的に接続されていない。
【0017】
特定の実施態様では、ベンジルアンモニウムカチオンは、ホルムアミジニウム鉛ペロブスカイト材料の表面または粒界から、ホルムアミジニウム鉛ペロブスカイト材料内に50nm未満の位置に存在する。
【0018】
特定の実施態様では、ヨウ化ホルムアミジニウム鉛ペロブスカイト材料は、立方晶構造を有する。
【0019】
ある実施態様では、ペロブスカイト材料を成膜する方法は、鉛塩前駆体を基板上に堆積して鉛塩薄膜を形成するステップと、鉛塩薄膜上にバルキーな有機カチオン溶液を堆積するステップと、鉛塩薄膜上に第2の塩前駆体を堆積してペロブスカイト前駆体薄膜を形成するステップと、基板をアニールしてペロブスカイト材料を形成するステップを有する。
【0020】
特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン溶液は、n-ブチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、ブタン-1,4-ジアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ポリ(ビニルアンモニウム)、フェニルエチルアンモニウム、 3-フェニル-1-プロピルアンモニウム、4-フェニル-1-ブチルアンモニウム、1,3-ジメチルブチルアンモニウム、3,3-ジメチルブチルアンモニウム、1-オクチルアンモニウム、アンモニウム官能化ペリレン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるバルキーな有機カチオンを含む。
【0021】
特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン溶液は、1-ブチルアンモニウムを含む。
【0022】
特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン溶液は、ベンジルアンモニウムを含む。
【0023】
特定の実施態様では、バルキーな有機カチオン溶液は、0.01~0.1Mの間のバルキーな有機カチオン濃度を有する。
【0024】
特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン溶液は、0.03~0.05Mの間のバルキーな有機カチオン濃度を有する。
【0025】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体、第2の塩前駆体、およびバルキーなカチオン溶液は、スピンコーティング、スロットダイ印刷、スパッタリング、PE-CVD、熱蒸着、またはスプレーコーティングにより堆積される。
【0026】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、ヨウ化鉛(II)、チオシアン酸鉛(II)、塩化鉛(II)、臭化鉛(II)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1または2以上の鉛塩を含む。
【0027】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体はヨウ化鉛(II)を含む。
【0028】
特定の実施形態では、第2の塩前駆体は、ヨウ化ホルムアミジニウム、チオシアン酸ホルムアミジニウム、またはチオシアン酸グアニジニウムを含む。
【0029】
特定の実施態様では、第2の塩前駆体は、ヨウ化ホルムアミジニウムを含む。
【0030】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1または2以上の溶媒を含む。
【0031】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、アミノ酸、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩、1,8-ジヨードオクタン、1,8-ジチオオオクタン、ハロゲン化ホルムアミジニウム、酢酸、トリフルオロ酢酸、ハロゲン化メチルアンモニウム、水、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の添加剤を含む。
【0032】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、無水ジメチルホルムアミドに溶解した、90:10のmol比のPbI2:PbCl2を有する。
【0033】
特定の実施形態では、アニールは、周囲空気、制御された湿度環境、純アルゴン、純窒素、純酸素、純水素、純ヘリウム、純ネオン、純クリプトン、純CO2、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された雰囲気中で行われる。
【0034】
特定の実施形態では、アニールは、50℃以上300℃以下の温度で行われる。
【0035】
特定の実施形態では、制御された湿度環境におけるアニールは、0g H2O/m3空気以上、20g H2O/m3空気以下の絶対湿度で行われる。
【0036】
特定の実施形態では、制御された湿度環境でのアニールは、約4~7gのH2O/m3空気の絶対湿度で生じる。
【0037】
ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、CxMyXzの一般式を有するペロブスカイト結晶格子を有し、ここで、x、yおよびzは実数である。1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、ペロブスカイト結晶格子内またはその表面に配置される。Cは、第1族金属、第2族金属、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジウム、およびエテンテトラミンからなる群から選択される1または2以上のカチオンを含み、Mは、各々がBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ga、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZr、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される1または2以上の金属を含み、Xは、各々がハロゲン化物、擬ハロゲン化物、カルコゲニド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1または2以上のアニオンを含む。
【0038】
特定の実施態様では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、ペロブスカイト材料中で1mol%と20mol%の間の濃度を有する。
【0039】
特定の実施態様では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、ペロブスカイト材料中で1mol%~5mol%の濃度を有する。
【0040】
特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、ペロブスカイト材料中で約5mol%の濃度を有する。
【0041】
特定の実施態様では、Cはホルムアミジニウムを含み、Mは鉛を含み、Xはヨウ化物を含む。
【0042】
特定の実施形態では、ペロブスカイト材料の結晶格子は、立方晶構造を有する。
【0043】
特定の実施態様では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンのアンモニウム基は、ペロブスカイト結晶格子内のホルムアミジニウムイオンと置換される。
【0044】
ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料、およびホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料の内部または表面に配置された1,4-ジアンモニウムブタンカチオンを含む。
【0045】
特定の実施態様では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンのアンモニウム基は、ペロブスカイト結晶格子内のホルムアミジニウムイオンを置換する。
【0046】
特定の実施態様では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、ペロブスカイト材料中で1mol%と20mol%の間の濃度を有する。
【0047】
特定の実施態様では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、ペロブスカイト材料中で1mol%~5mol%の濃度を有する。
【0048】
特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、ペロブスカイト材料中で約5mol%の濃度を有する。
【0049】
特定の実施態様では、ヨウ化ホルムアミジニウム鉛ペロブスカイト材料は、立方晶構造を有する。
【0050】
ある実施形態では、ペロブスカイト材料を堆積する方法は、基板上に鉛塩前駆体を堆積して、鉛塩薄膜を形成するステップを有する。鉛塩前駆体は、鉛塩および1,4-ジアンモニウムブタン塩を含む。次に、第2の塩前駆体が鉛塩薄膜上に堆積され、ペロブスカイト前駆体薄膜が形成されてもよい。次に、基板およびペロブスカイト前駆体薄膜は、アニールされ、ペロブスカイト材料が形成されてもよい。
【0051】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、1mol%と20mol%の間の1,4-ジアンモニウムブタン濃度を有する。
【0052】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、1mol%と5mol%の間の1,4-ジアンモニウムブタン濃度を有する。
【0053】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、約5mol%の1,4-ジアンモニウムブタン濃度を有する。
【0054】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、ヨウ化鉛(II)、チオシアン酸鉛(II)、塩化鉛(II)、臭化鉛(II)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1または2以上の鉛塩を含む。
【0055】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体はヨウ化鉛(II)を含む。
【0056】
特定の実施形態では、第2の塩前駆体は、ヨウ化ホルムアミジニウム、チオシアン酸ホルムアミジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される塩を含む。
【0057】
特定の実施態様では、第2の塩前駆体は、ヨウ化ホルムアミジニウムを含む。
【0058】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1または2以上の溶媒を含む。
【0059】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、アミノ酸、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩、1,8-ジヨードオクタン、1,8-ジチオオオクタン、ハロゲン化ホルムアミジニウム、酢酸、トリフルオロ酢酸、ハロゲン化メチルアンモニウム、水、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の添加剤を含む。
【0060】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、無水ジメチルホルムアミドに溶解した、90:10のmol比のPbI2:PbCl2を有する。
【0061】
特定の実施形態では、アニールは、周囲空気、制御された湿度環境、純アルゴン、純窒素、純酸素、純水素、純ヘリウム、純ネオン、純クリプトン、純CO2、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された雰囲気中で行われる。
【0062】
特定の実施形態では、アニールは、50℃以上300℃以下の温度で行われる。
【0063】
特定の実施形態では、制御された湿度環境におけるアニールは、0g H2O/m3空気以上、20g H2O/m3空気以下の絶対湿度で行われる。
【0064】
特定の実施形態では、制御された湿度環境でのアニールは、約4~7gのH2O/m3空気の絶対湿度で行われる。
【0065】
ある実施形態では、ペロブスカイト材料を堆積する方法は、基板上に鉛塩前駆体を堆積させて鉛塩薄膜を形成するステップを有する。次に、1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体が鉛塩薄膜上に堆積される。次に、第3の塩前駆体が鉛塩薄膜上に堆積され、ペロブスカイト前駆体薄膜が形成されてもよい。次に、基板およびペロブスカイト前駆体薄膜がアニールされ、ペロブスカイト材料が形成されてもよい。
【0066】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、1,4-ジアンモニウムブタン濃度が1mol%~5mol%の間である。
【0067】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体はヨウ化鉛(II)を含み、第3の塩前駆体はヨウ化ホルムアミジニウムを含む。
【0068】
特定の実施形態では、鉛塩前駆体は、無水ジメチルホルムアミド中に溶解した90:10のmol比のPbI2:PbCl2を有し、10mol%のセシウムを含む。アニールは、50℃以上300℃以下の温度で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】本開示のある実施形態による、活性層を含む典型的な光起電力セルの概略図である。
【
図2】本開示のある実施形態による、一例としてのPV装置の部材を示した様式化された図である。
【
図3】本開示のある実施形態による、一例としての装置の部材を示した様式化された図である。
【
図4】本開示のある実施形態による、一例としての装置の部材を示した様式化された図である。
【
図5】ルドルスデン-ポッパー(Ruddlesden-Popper)ペロブスカイトの図を示す様式化された図である。
【
図6】本開示のある実施形態による、アルキルアンモニウムカチオンの添加を伴うペロブスカイト材料の図を示した様式化された図である。
【
図7】本開示のある実施形態による、1-ブチルアンモニウム表面層を有するペロブスカイト材料の図を示した様式化された図である。
【
図8】本開示のある実施形態による、複数のバルキーな有機カチオンの表面層を有するペロブスカイト材料の図を示した様式化された図である。
【
図8A】本開示のある実施形態による、複数のバルキーな有機カチオンの表面層を有するペロブスカイト材料の図を示した様式化された図である。
【
図9】本開示のある実施形態による、1-ブチルアンモニウム(「BAI」)表面コーティングの有無により、ペロブスカイト材料を撮影した画像の比較を示した図である。
【
図10】本開示のある実施形態による、1-ブチルアンモニウム(「BAI」)表面コーティングの有無により、ペロブスカイト材料の撮影された画像の比較を示した、様式化された図である。
【
図11A】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料の表面に適用され得る各種ペリレンモノイミドおよびジイミドを示した図である。
【
図11B】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料の表面に適用され得る各種ペリレンモノイミドおよびジイミドを示した図である。
【
図11C】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料の表面に適用され得る各種ペリレンモノイミドおよびジイミドを示した図である。
【
図11D】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料の表面に適用され得る各種ペリレンモノイミドおよびジイミドを示した図である。
【
図12】本開示のある実施形態による、ペリレンモノイミドアンモニウムカチオンの添加を伴うペロブスカイト材料の図を示した様式化された図である。
【
図13】本開示のある実施形態による、ヨウ化鉛ペロブスカイトホルムアミジニウム材料の結晶格子に組み込まれた1,4-ジアンモニウムブタンの図を示した様式化された図である。
【
図14】本開示のある実施形態による、各種濃度の1,4-ジアンモニウムブタンを有するペロブスカイトのX線回折ピーク(XRD)の図である。
【
図15】本開示のある実施形態による、各種濃度の1,4-ジアンモニウムブタンを有するペロブスカイト材料サンプルの経時的な画像である。
【
図16】本開示のある実施形態による、ポリ-アンモニウムアルキルカチオンを示した図である。
【
図16A】本開示のある実施形態による、ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料の結晶格子に組み込まれた、1,8ジアンモニウムオクタンの図を示す様式化された図である。
【
図16B】本開示のある実施形態による、ヨウ化鉛ペロブスカイトホルムアミジニウム材料の結晶格子に組み込まれたビス(4-アミノブチル)-アンモニウムの図を示す様式化された図である。
【
図16C】本開示のある実施形態による、ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料の結晶格子に組み込まれたトリス(4-アミノブチル)-アンモニウムの図を示す様式化された図である。
【
図17】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造を示した図である。
【
図18】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造を示した図である。
【
図19】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造を示した図である。
【
図20】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造を示した図である。
【
図21】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造を示した図である。
【
図22】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造を示した図である。
【
図23】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造を示した図である。
【
図24】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造を示した図である。
【
図25】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造を示した図である。
【
図26】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造を示した図である。
【
図27】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造を示した図である。
【
図28】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造を示した図である。
【
図29】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料のX線回折パターンを示した図である。
【
図30】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料の無機金属ハロゲン化物サブ格子の厚さの様式化された図である。
【
図31】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電力装置の光学的および光ルミネセンス像を示した図である。
【
図32】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電力装置の電力出力曲線を示した図である。
【
図33】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電力装置の電流-電圧(I-V)走査を示した図である。
【
図34】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電力装置の開回路電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、充填率(FF)、および電力変換効率(PCE)のボックスプロットを示した図である。
【
図35】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電力装置の外部量子効率(EQE)曲線を示した図である。
【
図36】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電力装置のアドミットアンス分光プロットを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
有機PV、無機PV、および/またはハイブリッドPVと互換性のあるPV技術の各種態様における改良により、有機PVと他のPVの両方のコストがさらに低下することが期待される。例えば、ペロブスカイト太陽電池のようなある太陽電池では、酸化ニッケル界面層のような、新たなコスト効率がよく高安定性の代替部材を利用することが可能となる。また、各種太陽電池は、有利なことに化学的添加剤および他の材料を含有し、これらの材料は、とりわけ、現在存在する従来のオプションよりも費用効果が高く、耐久性がある。
【0071】
本開示は、一般に、日射から電気エネルギーを生成する際に、光起電力セル内の材料を使用する装置、方法、および物質の組成物に関する。より具体的には、本開示は、光活性物質および他の物質の組成物、ならびにそのような物質の組成物の装置、使用方法、および形成に関する。
【0072】
本開示のある実施形態による材料の一部または全部は、任意の有機または他の電子装置に有意に使用することができ、ある例には、これに限られるものではないが、電池、電界効果トランジスタ(FET)、発光ダイオード(LED)、非線形光学装置、メムリスタ、コンデンサ、整流器、および/または整流アンテナが含まれる。
【0073】
ある実施形態では、本開示により、PVおよび他の類似のデバイス(例えば、電池、ハイブリッドPV電池、マルチ接合PV、FET、LED、X線検出器、ガンマ線検出器、フォトダイオード、CCDなど)が提供される。ある実施形態では、そのようなデバイスは、改良された活性材料、界面層(IFL)、および/または1もしくは2以上のペロブスカイト材料を含んでもよい。ペロブスカイト材料は、PVまたは他のデバイスの1または2以上の各種態様で組み込まれてもよい。ある実施形態によるペロブスカイト材料は、一般式がCMX3であってもよく、ここでCは、1または2以上のカチオン(例えば、アミン、アンモニウム、ホスホニウム、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンまたはカチオン様化合物)を有し、Mは、1または2以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、1または2以上のアニオンを有する。各種実施形態によるペロブスカイト材料は、以降より詳細に議論される。
【0074】
光起電力セルおよび他の電子デバイス
あるPV実施形態は、
図1に示すような太陽電池の例示的な図を参照して説明することができる。ある実施形態による例示的なPVアーキテクチャは、実質的に基板-アノード-IFL-活性層-IFL-カソードの形態であってもよい。ある実施形態の活性層は、光活性であってもよく、および/または光活性材料を含んでもよい。従来から知られるように、他の層および材料を電池内で利用してもよい。さらに、用語「活性層」の使用は、いかなる他の層の特性をも、明示的にまたは暗示的に、制限または他の方法で定義することを意味しないことに留意する必要がある。例えば、ある実施形態では、IFLのいずれかまたは両方が、それらが半導体である場合、活性であってもよい。特に、
図1を参照すると、様式化された一般的なPVセル1000が示されており、PV内のいくつかの層の高い界面特性が示されている。PV1000は、ペロブスカイト材料PV実施形態など、いくつかのPVデバイスに適用可能な、一般的なアーキテクチャを表す。PVセル1000は、透明基板層1010を有し、この透明基板層1010は、ガラス(または太陽放射線に対して同様に透明な材料)であってもよく、これにより、太陽放射線は、層を通って透過できる。ある実施形態の透明層は、スーパーストレートまたは基板(例えば、
図2の基板層3901と同様)とも称され、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリイミド、PMMA、PET、PEN、カプトン、または石英のような、各種硬質または可撓性材料の1または2以上を有してもよい。一般に、基板という用語は、製造中にデバイスが堆積される材料を参照するために使用される。光活性層1040は、電子ドナーまたはp型材料、および/または電子アクセプタまたはn型材料、および/またはp型およびn型の両方の材料特性を示す両極性半導体、および/またはn型またはp型の特性を示さない真性半導体から構成されてもよい。ある実施形態では、光活性層1040は、本明細書に記載されるようなペロブスカイト材料であってもよい。
図1に示されるように、活性層または光活性層1040は、2つの導電性電極層1020および1060の間に挟まれる。
図1において、電極層1020は、スズドープ酸化インジウム(ITO材料)、または本願に記載された他の材料のような透明導電体であってもよい。他の実施形態では、第2の基板1070および第2の電極1060は、透明であってもよい。前述のように、ある実施形態の活性層は、必ずしも光活性である必要はない。ただし、
図1に示すデバイスでは、光活性である。電極層1060は、アルミニウム材料または他の金属、または炭素のような他の導電性材料であってもよい。従来から知られる他の材料を使用してもよい。また、セル1010は、
図1の例に示されるような界面層(IFL)1030を有する。IFLは、電荷分離を支援し得る。他の実施形態では、IFL1030は、多層IFLを有してもよく、これは、以降詳細に議論される。また、電極1060に隣接するIFL1050があってもよい。ある実施形態では、電極1060に隣接するIFL1050は、さらに多層IFLを有し、または代わりに、多層IFLを有してもよい(再度、以降詳細に説明される)。ある実施形態によるIFLは、性質が半導体であってもよく、固有、両極性、p型、またはn型のいずれであってもよく、あるいは性質が誘電体であってもよい。ある実施形態では、デバイスのカソード側のIFL(例えば、
図1に示すようなIFL1050)は、p型であってもよく、デバイスのアノード側のIFL(例えば、
図1に示すようなIFL1030)は、n型であってもよい。しかしながら、他の実施形態では、カソード側IFLは、n型であり、アノード側IFLは、p型であってもよい。セル1010は、電極1060および1020により、ならびにバッテリ、モータ、キャパシタ、電力グリッド、または他の電気負荷のような放電ユニットにより、電気リードに取り付けられてもよい。
【0075】
本開示の各種実施形態では、活性材料(正孔輸送層および/または電子輸送層を含む)、界面層、および全体的なデバイス設計を含む、太陽電池および他のデバイスの各種態様において、改良された材料および/または設計が提供される。
【0076】
界面層
ある実施態様において、本開示では、薄膜コートIFLを含む、PV内の1または2以上の界面層の有利な材料および設計が提供される。薄膜コートIFLは、本願で議論される各種実施形態により、PVの1または2以上のIFLで使用されてもよい。
【0077】
各種実施形態では、デバイスは、必要な場合、任意の他の2つの層および/または材料の間に、界面層を有してもよい。ただし、デバイスは、任意の界面層を含む必要はない。例えば、ペロブスカイト材料デバイスは、0、1、2、3、4、5、またはそれ以上の界面層を有してもよい(例えば、
図2の一例のデバイスは、5つの界面層3903、3905、3907、3909、および3911を有する)。界面層は、2つの層または材料の間の電荷の輸送および/または収集を強化するため、任意の好適な材料を有してもよい。これは、いったん界面層に隣接する材料の1つから電荷が離れるように輸送された際に、電荷再結合の可能性を回避し、または低減することにも役立つ。界面層は、その基板を追加的に物理的および電気的に均質化し、基板の粗さ、誘電率、接着、欠陥の発生、または消失におけるバリエーション(例えば、電荷トラップ、表面状態)が生じてもよい。好適な界面材料は、以下の任意の1または2以上を有してもよい:Ag、Al、Au、B、Bi、Ca、Cd、Ce、Co、Cu、Cu、Fe、Ga、Ge、H、In、Mg、Mn、Mo、Nb、Nt、Sb、Sc、Sn、Ta、Ti、V、W、Y、Zn、Zr;上記金属の任意の炭化物(例えば、SiC、Fe
3 C、WC、VC、MoC、NbC);上記金属の任意のシリサイド(例えば、Mg
2Si、SrSi
2、Sn
2Si);上記金属の任意の酸化物(例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、SnO
2、ZnO、NiO、ZrO
2、HfO
2)であって、インジウムスズ酸化物、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、カドミウム酸化物(CdO)、およびフッ素ドープ酸化スズ(FTO)のような、透明導電性酸化物(「TCO」)を含むもの;上記金属の任意の硫化物(例えば、CdS、MoS
2、SnS
2);上記金属の任意の窒化物(例えば、GaN、Mg
3N
2、TiN、BN、Si
3N
4);上記金属の任意のセレン化物(例えば、CdSe、FeS
2、ZnSe);上記金属の任意のテルル化物(例えば、CdTe、TiTe
2、ZnTe);上記金属の任意のリン化物(例えば、InP、GaP、GaInP);上記金属の任意のヒ素化物(例えば、CoAs
3、GaAs、InGaAs、NiAs);上記金属の任意のアンチモン化物(例えば、AlSb、GaSb、InSb);上記金属の任意のハロゲン化物(例えば、CuCl、CuI、BiI
3);上記金属の任意の疑似ハロゲン化物(例えば、CuSCN、AuCN、Fe(SCN)
2);上記金属の任意の炭酸塩(例えば、CaCO
3、Ce
2(CO
3)
3);官能化または非官能化アルキルシリル基;グラファイト;グラフェン;フラーレン;カーボンナノチューブ;本願の他の箇所で議論される任意のメソポーラス材料および/または界面材料;ならびにこれらの組み合わせ(ある実施形態では、組み合わせ材料のバイレイヤ、トリレイヤ、または多層を含む)。ある実施形態では、界面層は、ペロブスカイト材料を有してもよい。さらに、界面層は、本願に記載される任意の界面材料(例えば、YドープZnO、Nドープ単相壁カーボンナノチューブ)のドープされた実施形態を含んでもよい。また界面層は、前述の材料のうちの3つを有する化合物(例えば、CuTiO
3、Zn
2SnO
4)、または前述の材料のうちの4つを有する化合物(例えば、CoNiZnO)を有してもよい。前述のリスト化された材料は、平面状、メソポーラス、またはその他のナノ構造形態(例えば、ロッド、球、フラワー、ピラミッド)、またはエアロゲル構造として、存在してもよい。
【0078】
第1に、前述のように、1または2以上のIFL(例えば、
図1に示されるようなIFL2626および2627のいずれかまたは両方)は、自己組織化単層(SAM)として、または薄膜として、本開示の光活性有機化合物を含んでもよい。本開示の光活性有機化合物がSAMとして適用される場合、これは、結合基を有し、これを介して、共有結合的にまたは他の方法で、アノードおよびカソードのいずれかまたは両方の表面に結合されてもよい。ある実施態様の結合基は、COOH、SiX
3(式中、Xは、Si(OR)
3およびSiCl
3のような三元ケイ素化合物を形成するのに適した任意の部分であってもよい)、SO
3、PO
4H、OH、CH
2X(式中、Xは、ハロゲン化基17を有してもよい)、およびOのうちの任意の1または2以上を有してもよい。結合基は、電子引き出し部分、電子提供部分、および/またはコア部分に、共有結合的にまたは他の方法で結合されてもよい。結合基は、厚さにおいて単分子(またはある実施形態では、複数の分子)の配向された有機層を形成するように、電極表面に付着してもよい(例えば、複数の光活性有機化合物がアノードおよび/またはカソードに結合される場合)。前述のように、SAMは、共有結合相互作用を介して取り付けられてもよいが、ある実施形態では、これは、イオン性、水素結合性、および/または分散力(すなわち、ファンデルワールス)相互作用を介して取り付けられてもよい。さらに、特定の実施形態では、露光時に、SAMは、双性イオン性励起状態に入り、これにより高分極IFLが形成され、電荷キャリアを活性層から電極(例えば、アノードまたはカソード)に導くことができる。ある実施形態では、この強化された電荷キャリア注入は、活性層の断面を電子的に研磨し、さらにはそれぞれの電極(例えば、正孔から陽極、電子から陰極)に向かう電荷キャリアのドリフト速度を増加させることにより、達成され得る。ある態様のアノード適用のための分子は、調整可能な化合物を有し、これは、コア部分に結合された一次電子ドナー部分を含み、このコア部分は、電子引き出し部分に結合され、これは、結合基に結合されてもよい。ある実施形態によるカソード用途において、IFL分子は、コア部分に結合された電子不足部分を有する調整可能な化合物を有し、このコア部分は、電子ドナー部分に結合され、これは、結合基に結合されてもよい。光活性有機化合物がそのような実施形態によるIFLとして使用される場合、これは、光活性特性を維持してもよい。ただし、一部の実施形態では、光活性である必要はない。
【0079】
金属酸化物は、ある実施形態の薄膜IFLに使用され、NiO、SnO2、WO3、V2O5、またはMoO3のような半導体金属酸化物を有してもよい。第2の(例えば、n型の)活性材料がAl2O3を含む薄膜被覆IFLで被覆されたTiO2を有する実施形態は、例えば、Al(NO3)3・xH2Oのような前駆体材料、またはTiO2上にAl2O3を堆積させるのに適した任意の他の材料で形成することができ、その後、熱アニールおよびダイコーティングが実施される。MoO3コーティングが代わりに使用される例示的な実施形態では、コーティングは、Na2Mo4・2H2Oのような前駆体材料で形成されてもよい。一方、一部の実施形態によるV2O5コーティングは、NaVO3のような前駆体材料で形成されてもよい。一部の実施形態によるWO3コーティングは、NaWO4・H2Oのような前駆体材料で形成されてもよい。前駆体材料(例えば、Al(NO3)3・xH2O)の濃度は、TiO2または他の活性材料上に堆積された最終的な膜(ここではAl2O3)の厚さに影響を及ぼす可能性がある。従って、前駆体材料の濃度を変更することは、最終的な膜の厚さを制御できる方法であり得る。例えば、より大きな膜厚は、より大きな前駆体材料濃度から生じ得る。より大きな膜厚は、金属酸化物コーティングを有するPVデバイスにおいて、必ずしも、より大きなPCEをもたらすとは限らない。従って、ある実施形態の方法は、約0.5~10.0mMの範囲の濃度を有する前駆体材料を用いて、TiO2(または他のメソポーラス)層をコーティングするステップを有してもよい。他の実施形態は、約2.0~6.0mMの範囲の濃度を有する前駆体材料で層をコーティングするステップを有してもよい。または他の実施形態では、約2.5~5.5mMの濃度であってもよい。
【0080】
さらに、本願ではAl2O3および/またはアルミナと称するが、アルミニウムおよび酸素の各種割合がアルミナの形成に使用されてもよいことに留意する必要がある。従って、本願で議論されるある実施形態では、Al2O3と記載されるが、そのような記載は、酸素におけるアルミニウムの必要な比率を定めることを意図するものではない。むしろ、実施形態には、任意の1または2以上のアルミニウム酸化物化合物が含まれ、各々は、AlxOyで表されるアルミニウム酸化物比を有する。ここで、xは、約1から100の間の任意の値、整数または非整数であってもよい。ある実施態様では、xは、約1と3との間であってもよい(ここでもまた、整数である必要はない)。同様に、yは、0.1から100の間の任意の値、整数または非整数であってもよい。ある実施形態では、yは、2~4の間であってもよい(ここでもまた、整数である必要はない)。さらに、各種実施形態において、アルミナのアルファ、ガンマ、および/またはアモルファスの形態のような、AlxOyの各種結晶形態が存在してもよい。
【0081】
同様に、本願ではNiO、MoO3、WO3、およびV2O5と称されるが、そのような化合物は、代わりに、それぞれ、NixOy、MoxOy、WxOy、およびVxOyとして表されてもよい。MoxOyおよびWxOyの各々に関して、xは、約0.5から100の間の任意の値、整数または非整数であってもよい。ある実施形態では、約0.5から1.5の間であってもよい。同様に、yは、約1から100の間の任意の値、整数または非整数であってもよい。ある実施形態では、yは、約1から4の間の任意の値であってもよい。VxOyに関し、xは、約0.5から100の間の任意の値、整数または非整数であってもよく、ある実施形態では、約0.5から1.5の間であってもよい。同様に、yは、約1~100の間の任意の値、整数または非整数であってもよい。特定の実施形態では、約1~10の間の整数または非整数の値であってもよい。ある実施形態では、xおよびyは、非化学量論比となるような値を有してもよい。
【0082】
ある実施形態では、IFLは、チタン酸塩を含んでもよい。ある実施形態では、チタン酸塩は、一般式M’TiO3で表され、ここで、M’は任意の2+カチオンを含む。ある実施形態において、M’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Zn、Cd、Hg、Cu、Pd、Pt、Sn、またはPbのカチオン形態を有し得る。ある態様において、IFLは、チタン酸塩の単一の化学種を有してもよく、他の実施形態では、IFLは、チタン酸塩の2以上の異なる化学種を有してもよい。ある実施形態において、チタン酸塩は、一般式SrTiO3を有する。他の実施形態において、チタン酸塩は、式BaTiO3を有してもよい。さらに別の実施形態では、チタン酸塩は、一般式CaTiO3を有してもよい。
【0083】
説明のためであり、いかなる限定も意図しないが、チタン酸塩は、ペロブスカイト結晶構造を有し、ペロブスカイト材料(例えば、ヨウ化メチルアンモニウム鉛(MAPbI3)、およびヨウ化ホルムアミジニウム鉛(FAPbI3))の成長変換プロセスを強くシードする。一般に、チタン酸塩は、強誘電体挙動、十分な電荷キャリア移動度、光透過性、整合エネルギーレベル、および高誘電率のような、他のIFL要求も充足する。
【0084】
他の実施形態では、IFLはジルコン酸塩を含んでもよい。ある実施形態では、ジルコン酸塩は、一般式M’ZrO3で表されてもよく、ここで、M’は任意の2+カチオンを有する。ある実施形態では、M’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Zn、Cd、Hg、Cu、Pd、Pt、Sn、またはPbのカチオン形態を有してもよい。ある実施形態では、IFLは、ジルコン酸塩の単一の化学種を有し、他の実施形態では、IFLは、ジルコン酸塩の2以上の異なる化学種を有してもよい。ある実施形態では、ジルコン酸塩は、一般式SrZrO3を有する。別の実施形態では、ジルコン酸塩は、一般式BaZrO3を有してもよい。さらに別の実施形態では、ジルコン酸塩は、一般式CaZrO3を有してもよい。
【0085】
説明のためであり、いかなる限定も意図しないが、ジルコン酸塩は、ペロブスカイト結晶構造を有し、ペロブスカイト材料(例えば、MAPbI3、FAPbI3)成長変換プロセスを強力にシードする。また一般に、ジルコン酸塩は、強誘電体挙動、十分な電荷キャリア移動度、光透過性、整合エネルギーレベル、および高誘電率のような、他のIFL要求も充足する。
【0086】
別の実施形態では、IFLは、スズ酸塩を有してもよい。ある実施形態によるスズ酸塩は、一般式M’SnO3、またはM’2 SnO4で表されてもよく、ここで、M’は任意の2+カチオンを有する。ある実施形態では、M’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Zn、Cd、Hg、Cu、Pd、Pt、Sn、またはPbのカチオン形態を有してもよい。ある実施形態では、IFLは、スズ酸塩の単一の化学種を有し、別の実施形態では、IFLは、スズ酸塩の2以上の異なる化学種を有してもよい。ある実施形態では、スズ酸塩は、一般式SrSnO3を有する。別の実施形態では、スズ酸塩は、一般式BaSnO3を有してもよい。さらに別の実施形態では、スズ酸塩は、一般式CaSnO3を有してもよい。
【0087】
説明のためであり、いかなる限定も意図しないが、スズ酸塩は、ペロブスカイト結晶構造を有し、ペロブスカイト材料(例えば、MAPbI3、FAPbI3)成長変換プロセスを強力にシードする。また一般に、スズ酸塩は、強誘電体挙動、十分な電荷キャリア移動度、光透過性、整合エネルギーレベル、および高誘電率のような、他のIFL要求も充足する。
【0088】
別の実施形態では、IFLは、鉛酸塩を有してもよい。ある実施形態による鉛酸塩は、一般式M’PbO3であってもよく、ここで、M’は任意の2+カチオンを含む。ある実施形態では、M’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Zn、Cd、Hg、Cu、Pd、Pt、Sn、またはPbのカチオン形態を有してもよい。ある実施形態では、IFLは、単一の化学種の鉛酸塩を有し、別の実施形態では、IFLは、2以上の異なる種類の鉛酸塩を有してもよい。一実施形態では、鉛酸塩は、一般式SrPbO3を有する。別の実施形態では、鉛酸塩は、一般式BaPbO3を有してもよい。さらに別の実施形態では、鉛酸塩は、一般式CaPbO3を有してもよい。さらに別の実施形態では、鉛酸塩は、一般式PbIIPbIVO3を有してもよい。
【0089】
説明のためであり、いかなる限定も意図しないが、鉛酸塩は、ペロブスカイト結晶構造を有し、ペロブスカイト材料(例えば、MAPbI3、FAPbI3)の成長変換プロセスを強力にシードする。また一般に、鉛酸塩は、強誘電体挙動、十分な電荷キャリア移動度、光透過性、整合エネルギーレベル、および高誘電率のような、他のIFL要求も充足する。
【0090】
さらに、別の実施形態では、IFLは、一般式M’[ZrxTi1-x]O3におけるジルコン酸塩およびチタン酸塩の組合せを有し、ここで、Xは0より大きいが1より小さく、M’は任意の2+カチオンを含む。ある実施形態では、M’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Zn、Cd、Hg、Cu、Pd、Pt、Sn、またはPbのカチオン形態を有し得る。ある実施形態では、IFLは、ジルコン酸塩の単一の化学種を有し、別の実施形態では、IFLは、ジルコン酸塩の2以上の異なる化学種を有してもよい。一実施形態において、ジルコン酸塩/チタン酸塩の組合せは、一般式Pb[ZrxTi1-x]O3を有する。別の実施形態では、ジルコン酸塩/チタン酸塩の組合せは、一般式Pb[Zr0.52Ti0.48]O3を有する。
【0091】
説明のためであり、いかなる限定も意図しないが、ジルコン酸塩/チタン酸塩の組み合わせは、ペロブスカイト結晶構造を有し、ペロブスカイト材料(例えば、MAPbI3、FAPbI3)の成長変換プロセスを強力にシードする。また一般に、ジルコン酸塩/チタン酸塩の組み合わせは、強誘電体挙動、十分な電荷キャリア移動度、光透過性、整合エネルギーレベル、および高誘電率のような、他のIFL要求も充足する。
【0092】
他の実施形態では、IFLはニオブ酸塩を有してもよい。ある実施形態では、ニオブ酸塩は、一般式M’NbO3で表されてもよく、ここで、M’は任意の1+カチオンを有する。ある実施形態では、M’は、Li、Na、K、Rb、Cs、Cu、Ag、Au、Tl、アンモニウム、またはHのカチオン形態を有してもよい。ある実施形態では、IFLは、ニオブ酸塩の単一の化学種を有し、別の実施形態では、IFLは、ニオブ酸塩の2以上の異なる化学種を有してもよい。ある実施形態では、ニオブ酸塩は、一般式LiNbO3を有する。別の実施形態では、ニオブ酸塩は、一般式NaNbO3を有してもよい。さらに別の実施形態では、ニオブ酸塩は、一般式AgNbO3を有してもよい。
【0093】
説明のためであり、いかなる限定も意図しないが、一般に、ニオブ酸塩は、圧電挙動、非線形光学分極性、光弾性、強誘電性、ポッケルス効果、十分な電荷キャリア移動度、光透過性、整合エネルギーレベル、および高誘電率のような、IFL要件を充足する。
【0094】
ある実施形態では、ペロブスカイト材料デバイスは、SrTiO3被覆ITO基板上にPbI2をキャスティングすることにより形成される。PbI2は、浸漬プロセスにより、MAPbI3に変換されてもよい。このプロセスについては、以降より詳細に説明する。この得られたPbI2のMAPbI3への変換は、SrTiO3を含まない基板の調製と比較して、(光学分光法によって観察されるように)より完全である。
【0095】
本願に記載の界面材料は、さらに、ドープされた組成物を有してもよい。界面材料の特性(例えば、電気的、光学的、機械的)を改質するため、化学量論的または非化学量論的な材料が、1ppb%から50mol%の範囲の量で、1または2以上の元素(例えば、Na、Y、Mg、N、P)によりドープされてもよい。界面材料のいくつかの例は、NiO、TiO2、SrTiO3、Al2O3、ZrO2、WO3、V2O5、MO3、ZnO、グラフェン、およびカーボンブラックを有する。これらの界面材料用の可能なドーパントの例には、Li、Na、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Nb、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Sn、In、B、N、P、C、S、As、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物(例えば、シアン化物、シアン酸塩、イソシアネート、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノンメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミドおよびトリシアノメタニド)、および酸化状態が任意のAlが含まれる。ここで、ドープされた界面材料に対する言及は、界面材料化合物中の成分の比率を限定することを意図するものではない。
【0096】
ある実施形態では、異なる材料から作製された複数のIFLが、互いに隣接して配置され、複合体IFLが形成されてもよい。この構成では、2つの異なるIFL、3つの異なるIFL、またはさらに多くの異なるIFLを含むことができる。得られる多層IFLまたは複合体IFLは、単一材料IFLの代わりに使用することができる。例えば、複合体IFLは、IFL3903、IFL3905、IFL3907、IFL3909、またはIFL3911のような、
図2の例に示された任意のIFLを使用してもよい。複合体IFLは、単一材料のIFLとは異なるが、多層IFLを有するペロブスカイト材料PVセルのアセンブリは、単一材料のIFLのみを有するペロブスカイト材料PVセルのアセンブリと実質的に異ならない。
【0097】
一般に、複合体IFLは、本願に示すIFLに適した任意の材料を用いて作製できる。ある実施形態では、IFLは、Al2O3の層およびZnOまたはM:ZnOの層(ドープZnO、例えば、Be:ZnO、Mg:ZnO、Ca:ZnO、Sr:ZnO、Ba:ZnO、Sc:ZnO、Y:ZnO、Nb:ZnO)を有する。ある実施形態では、IFLは、ZrO2の層およびZnOまたはM:ZnOの層を有する。特定の実施形態では、IFLは、複数の層を有する。ある実施形態では、多層IFLは、一般に、導体層、誘電体層および半導体層を有する。特定の実施形態では、層は、例えば、導体層、誘電体層、半導体層、誘電体層、および半導体層を繰り返してもよい。多層IFLの例には、ITO層、Al2O3層、ZnO層、および第2のAl2O3層を有するIFL;ITO層、Al2O3層、ZnO層、第2のAl2O3層、および第2のZnO層を有するIFL;ITO層、Al2O3層、ZnO層、第2のAl2O3層、第2のZnO層、および第3のAl2O3層を有するIFL;ならびに所望の性能特性を達成するために必要な数の層を有するIFLが含まれる。前述のように、特定の化学量論比に対する言及は、各種実施形態によるIFL層における構成成分の割合を限定することを意図するものではない。
【0098】
複合体IFLとして2以上の隣接するIFLを配置した場合、ペロブスカイト材料PVセルにおける単一のIFLを上回る可能性があり、各IFL材料からの寄与が単一のIFLに活用され得る。例えば、ITO層、Al2O3層、およびZnO層を有するアーキテクチャにおいて、ITOは導電性電極であり、Al2O3は誘電体材料であり、ZnOはn型半導体であり、ZnOは、良好な電子輸送特性(例えば、移動度)を有する電子受容体として作用する。またAl2O3は、物理的にロバストな材料であり、ITOに良好に接着し、表面欠陥(例えば、電荷トラップ)をキャッピングすることにより表面が均質化され、暗電流の抑制によりデバイスダイオードの特性が改善される。
【0099】
また、あるペロブスカイト材料PVセルは、2以上のペロブスカイト光活性層を有する、いわゆる「タンデム」PVセルを有してもよい。例えば、
図2の光活性材料3908および3906の両方は、ペロブスカイト材料であってもよい。そのようなタンデムPVセルでは、
図2のIFL3907のような、2つの光活性層の間の界面層は、多層または複合体IFLを有してもよい。ある実施形態では、タンデムPVデバイスの2つの光活性層の間に挟まれた層は、電極層を含んでもよい。
【0100】
タンデムPVデバイスは、上から下の順、または下から上の順で、以下の層を含んでもよい:第1の基板、第1の電極、第1の界面層、第1のペロブスカイト材料、第2の界面層、第2の電極、第3の界面層、第2のペロブスカイト材料、第4の界面層、および第3の電極。ある実施形態では、第1および第3の界面層は、正孔輸送界面層であり、第2および第4の界面層は、電子輸送界面層であってもよい。別の実施形態では、第1および第3の界面層は、電子輸送界面層であり、第2および第4の界面層は、正孔輸送界面層であってもよい。さらに別の実施形態では、第1および第4の界面層は正孔輸送界面層であり、第2および第3の界面層は、電子輸送界面層であってもよい。別の実施形態では、第1および第4の界面層は、電子輸送界面層であり、第2および第3の界面層は、正孔輸送界面層であってもよい。タンデムPVデバイスにおいて、第1および第2のペロブスカイト材料は、異なるバンドギャップを有してもよい。ある実施形態では、第1のペロブスカイト材料は、臭化ホルムアミジニウム鉛(FAPbBr3)であり、第2のペロブスカイト材料は、ヨウ化ホルムアミジニウム鉛(FAPbI3)であってもよい。他の実施形態では、第1のペロブスカイト材料は、臭化メチルアンモニウム鉛(MAPbBr3)であり、第2のペロブスカイト材料は、ヨウ化鉛ホルムアミジニウム(FaPbI3)であってもよい。他の実施形態では、第1のペロブスカイト材料は、臭化メチルアンモニウム鉛(MAPbBr3)であり、第2のペロブスカイト材料は、ヨウ化メチルアンモニウム鉛(MAPbI3)であってもよい。
【0101】
ペロブスカイト材料
ペロブスカイト材料は、PVまたは他のデバイスの1または2以上の態様に組み込まれてもよい。ある実施形態によるペロブスカイト材料は、一般式CwMyXzで表されてもよく、ここでCは、1または2以上のカチオン(例えば、アミン、アンモニウム、ホスホニウム、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンまたはカチオン的化合物)を含み、Mは、1または2以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを有する)を含み、Xは、1または2以上のアニオンを含み、w、y、およびzは、1~20の実数を表す。ある実施形態では、Cは、1または2以上の有機カチオンを有してもよい。ある実施形態では、各有機カチオンCは、各金属Mよりも大きくてもよく、各アニオンXは、カチオンCおよび金属Mの両方と結合可能であってもよい。特定の実施形態において、ペロブスカイト材料は、一般式がCMX3であってもよい。
【0102】
ある実施形態では、Cは、アンモニウム、一般式[NR4]+の有機カチオンを有してもよく、ここで、R基は、同一であっても、異なる基であってもよい。適当なR基には、これに限られるものではないが、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基またはその異性体;任意のアルカン、アルケン、またはアルキンCxHy、ここでx=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖、または直鎖;アルキルハライド、CxHyXz、x=1~20、y=0~42、z=1~42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族基(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素が含まれる環状錯体(例えば、ピリジン、ピロール、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロキノリン);任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン含有基(リン酸塩);任意のボロン含有基(例えば、ボロン酸);任意の有機酸(例えば、酢酸、プロパン酸);およびそのエステルまたはアミド誘導体;α、β、γおよびより大きな誘導体を有する任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);ならびに任意のアルコキシ基または反応基-OCxHy、ここでx=0~20、y=1~42;が含まれる。
【0103】
ある実施形態では、Cは、ホルムアミジニウム、一般式[R2NCRNR2]+の有機カチオンが含まれ、ここで、R基は、同一のまたは異なる基であってもよい。適当なR基には、これに限られるものではないが、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基またはその異性体;任意のアルカン、アルケン、またはアルキンCxHy、ここでx=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖、または直鎖;アルキルハライド、CxHyXz、x=1~20、y=0~42、z=1=42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素が含まれる環状錯体(例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピリミジン、(アゾリジニリデンメチル)ピロリジン、トリアゾール);任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン含有基(リン酸塩);任意のボロン含有基(例えば、ボロン酸);任意の有機酸(酢酸、プロパン酸)およびそのエステルまたはアミド誘導体;α、β、γおよびより大きな誘導体を有する任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);ならびに任意のアルコキシ基または反応基-OCxHy、ここでx=0~20、y=1~42;が含まれる。
【0104】
【化1】
化学式1は、上記のような、[R
2NCRNR
2]
+の一般式を有するホルムアミジニウムカチオンの構造を示す。化学式2には、いくつかのホルムアミジニウムカチオンの構造の例を示す。これは、ペロブスカイト材料中のカチオン「C」として機能してもよい。
【0105】
【化2】
ある実施形態では、Cは、グアニジウム、一般式[(R
2N)
2C=NR
2]
+の有機カチオンを有し、ここで、R基は、同一のまたは異なる基であってもよい。適当なR基には、これに限られるものではないが、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基またはその異性体;任意のアルカン、アルケン、またはアルキンC
xH
y(x=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖、または直鎖);アルキルハライド、C
xH
yX
z、x=1~20、y=0~42、z=1~42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族基(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素が含まれる環状錯体(例えば、オクタヒドロピリミド[1,2-a]ピリミジン、ピリミド[1,2-a]ピリミジン、ヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]イミダゾール、ヘキサヒドロピリミジン-2-イミン);任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン含有基(リン酸塩);任意のボロン含有基(例えば、ボロン酸);任意の有機酸(酢酸、プロパン酸)、およびそのエステルまたはアミド誘導体;α、β、ガンマおよびより大きな誘導体を有する任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);ならびに任意のアルコキシ基または反応基-OC
xH
y、ここでx=0~20、y=1~42;が含まれる。
【0106】
【化3】
化学式3は、前述のように、[(R
2N)
2C=NR
2]
+の一般式を有するグアニジウムカチオンの構造を示す。化学式4には、いくつかのグアニジウムカチオンの構造の例を示す。これは、ペロブスカイト材料中のカチオン「C」として機能してもよい。
【0107】
【化4】
ある実施形態では、Cは、エテンテトラミンカチオン、一般式[(R
2N)
2C=C(NR
2)
2]
+の有機カチオンを有してもよく、ここで、R基は、同一のまたは異なる反応基であってもよい。適当なR基には、これに限られるものではないが、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基またはその異性体;任意のアルカン、アルケン、またはアルキンC
xH
y(x=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖、または直鎖);アルキルハライド、C
xH
yX
z、x=1~20、y=0~42、z=1~42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族基(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素が含まれる環状錯体(例えば、2-ヘキサヒドロピリミジン-2-イリデンヘキサヒドロピリミジン、オクタヒドロピラジン[2,3-b]ピラジン、ピラジノ[2,3-b]ピラジン、キノキサリノ[2,3-b]キノキサリン);任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン含有基(リン酸塩);任意のボロン含有基(例えば、ホウ酸);任意の有機酸(例えば、酢酸、プロパン酸)およびそのエステルまたはアミド誘導体;α、β、γおよびより大きな誘導体を有する任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);ならびに任意のアルコキシ基または反応基、-OCxHy、ここでx=0~20、y=1~42;が含まれる。
【0108】
【化5】
化学式5は、前述のように、[(R
2N)
2C=C(NR
2)
2]
+の一般式を有するエテンテトラミンカチオンの構造を示す。化学式6には、いくつかのエテンテトラミンイオンの構造の例を示す。これは、ペロブスカイト材料中のカチオン「C」として機能してもよい。
【0109】
【化6】
ある実施形態では、Cは、イミダゾリウムカチオン、一般式[CRNRCRNRCR]
+の芳香族環状有機カチオンを有してもよい。ここで、R基は、同一のまたは異なる基であってもよい。適当なR基には、これに限られるものではないが、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基またはその異性体;アルカン、アルケンまたはアルキンC
xH
y(x=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖または直鎖);ハロゲン化アルキル、C
xH
yX
z、x=1~20、y=0~42、z=1~42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族基(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素が含まれる環状複合体(例えば、2-ヘキサヒドロピリミジン-2-イリデンヘキサヒドロピリミジン、オクタヒドロピラジン[2,3-b]ピラジン、ピラジノ[2,3-b]ピラジン、キノキサリノ[2,3-b]キノキサリン);任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン含有基(リン酸塩);任意のホウ素含有基(例えば、ホウ酸);任意の有機酸(酢酸、プロパン酸)およびエステルまたはアミド誘導体;α、β、γおよびより大きな誘導体を有する任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);ならびに任意のアルコキシまたは反応基、-OCxHy、ここでx=0~20、y=1~42。
【0110】
【化7】
ある実施形態では、Xは、1または2以上のハロゲン化物を含んでもよい。ある実施形態では、その代わりにまたはこれに加えて、Xは、第16族アニオンを含んでもよい。ある実施形態では、第16族アニオンは、酸化物、硫化物、セレン化物、またはテルル化物であってもよい。ある実施形態では、その代わりにまたはこれに加えて、Xは、1または2以上の擬ハロゲン化物(例えば、シアン化物、シアン酸塩、イソシアネート、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、およびトリシアノメタニド)を含んでもよい。
【0111】
ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、経験式CMX3を有してもよい。ここで、Cは、前述の1または2以上のカチオン、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンもしくはカチオン的化合物を有し、Mは、1または2以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、前述の1または2以上のアニオンを有する。
【0112】
別の実施形態では、ペロブスカイト材料は、経験式C’M2X6を有してもよい。ここでC’は、2+電荷を有するカチオンを有し、これには、前述の1または2以上のカチオン、ジアンモニウムブタン、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンもしくはカチオン的化合物が含まれる。Mは、1または2以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、前述の1または2以上のアニオンを有する。
【0113】
ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、経験式C3M2X9を有してもよい。ここで、Cは、前述の1または2以上のカチオン、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンもしくはカチオン的化合物を含み、Mは、1または2以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、前述の1または2以上のアニオンを有する。
【0114】
ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、経験式CM2X7を有してもよい。ここで、Cは、前述の1または2以上のカチオン、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンもしくはカチオン的化合物を有し、Mは、1または2以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、前述の1または2以上のアニオンを有する。
【0115】
ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、経験式C2MX4を有してもよい。ここで、Cは、前述の1または2以上のカチオン、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンもしくはカチオン的化合物を含み、Mは、1または2以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、前述の1または2以上のアニオンを有する。
【0116】
またペロブスカイト材料は、C、MまたはXが2以上の化学種を有する、混合イオン形成物を有し、例えば、Cs0.1FA0.9Pb(I0.9Cl0.1)3;Rb0.1FA0.9Pb(Cl0.1)3、Cs0.1FA0.9PbI3;FAPb0.5Sn0.5I3;FA0.83Cs0.17Pb(I0.6Br0.4)3;FA0.83Cs0.12Rb0.05Pb(I0.6Br0.4)3およびFA0.85MA0.15Pb(I0.85Br0.15)
3を有してもよい。
【0117】
複合ペロブスカイト材料デバイス設計
ある実施形態では、本開示により、1または2以上のペロブスカイト材料を有する、PVおよび他の同様のデバイス(例えば、電池、ハイブリッドPV電池、FET、LED、非線形光学系(NLO)、導波路など)の複合設計が提供されてもよい。例えば、1または2以上のペロブスカイト材料は、ある実施形態の第1および第2の活性材料(例えば、
図3の活性材料3906aおよび3908a)のいずれかまたは両方として機能してもよい。より一般的には、本開示のある実施形態では、1または2以上のペロブスカイト材料を含む活性層を有するPVまたは他のデバイスが提供される。そのような実施形態では、ペロブスカイト材料(すなわち、任意の1または2以上のペロブスカイト材料を有する材料)は、各種アーキテクチャの活性層に使用されてもよい。また、ペロブスカイト材料は、活性層の任意の1または2以上の部材(例えば、電荷輸送材料、メソポーラス材料、光活性材料、および/または界面材料、これらの各々は、以下により詳細に議論される)の機能を果たすことができる。ある実施形態では、同じペロブスカイト材料が、複数のそのような機能に寄与することができる。ただし、他の実施形態では、複数のペロブスカイト材料がデバイスに含有され、各ペロブスカイト材料が、1または2以上のそのような機能を果してもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料がどのような役割を果たす場合でも、それは、各種状態でデバイス中に調製されおよび/または提供されてもよい。例えば、ある実施形態では、これは実質的に固体であってもよい。デバイス内(例えば、メソポーラス層、界面層、電荷輸送層、光活性層、または他の層、および/または電極のような、デバイスの別の部材上)に、溶液または懸濁液がコーティングされ、またはその他の方法で堆積されてもよい。ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、デバイスの別の構成要素の表面上に、in-situで形成されてもよい(例えば、薄膜固体としての気相成膜により)。ペロブスカイト材料を有する層を形成する、任意の他の適切な手段が使用されてもよい。
【0118】
一般に、ペロブスカイト材料デバイスは、第1の電極と、第2の電極と、ペロブスカイト材料を有する活性層とを有し、活性層は、第1の電極と第2の電極との間の少なくとも一部に配置される。ある実施形態では、第1の電極は、アノードおよびカソードの一方であってもよく、第2の電極は、アノードおよびカソードの他方であってもよい。特定の実施形態による活性層は、任意の1または2以上の活性層部材を有し、これには、電荷輸送材料、液体電解質、メソポーラス材料、光活性材料(例えば、ダイ、シリコン、テルル化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、銅インジウムガリウムセレン化物、ヒ素化ガリウム、リン化ゲルマニウムインジウム、半導体ポリマー、他の光活性材料)、および界面材料が含まれ得る。これらの活性層成分の1または2以上は、1または2以上のペロブスカイト材料を有してもよい。ある実施形態では、活性層成分の一部または全部は、全体的にまたは部分的に、サブ層に配置されてもよい。例えば、活性層は、界面材料を有する界面層、メソポーラス材料を有するメソポーラス層、および電荷輸送材料を有する電荷輸送層のうちの、任意の1または2以上を含んでもよい。さらに、ある実施形態では、界面層は、活性層の任意の2つ以上の他の層の間、および/または活性層部材と電極との間に含まれてもよい。本願において、層の言及は、最終配置(例えば、デバイス内で別々に定義可能な各材料の実質的に離れた部分)を含み、および/または層の言及は、各層における材料のその後の相互混合の可能性があっても、デバイスの構築中の配置を意味し得る。ある実施形態では、層は、離散的であって、実質的に隣接する材料を有してもよい(例えば、層は、
図2に様式的に示されているようなものであってもよい)。
【0119】
ある実施形態では、ペロブスカイト材料デバイスは、電界効果トランジスタ(FET)であってもよい。FETペロブスカイト材料デバイスは、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、誘電体層、および半導体層を有してもよい。ある実施形態では、FETペロブスカイト材料デバイスの半導体層は、ペロブスカイト材料であってもよい。
【0120】
ある実施形態によるペロブスカイト材料デバイスは、必要な場合、1または2以上の基板を含んでもよい。一部の実施形態では、第1および第2の電極のいずれかまたは両方が、基板上にコーティングされ、またはその他の方法で堆積され、電極は、実質的に基板と活性層との間に配置されてもよい。各種実施形態において、デバイスの組成物(例えば、基板、電極、活性層および/または活性層部材)の材料は、全体的にまたは部分的に、剛性または可撓性のいずれかであってもよい。ある実施形態では、電極は、基板として機能し、これにより、別の基板の必要性がなくなってもよい。
【0121】
また、特定の実施形態では、ペロブスカイト材料デバイスは、必要な場合、抗反射層または抗反射コーティング(ARC)を含んでもよい。また、ペロブスカイト材料デバイスは、本開示のある実施形態に関して示された添加剤の任意の1または2以上のような、任意の1または2以上の添加剤を含んでもよい。
【0122】
ペロブスカイト材料デバイスに含まれ得る各種材料の一部の記載は、部分的に
図2を参照して行われる。
図2は、ある実施形態によるペロブスカイト材料デバイス3900の様式化された図である。装置3900の各種部材は、隣接する材料を有する別個の層として図示されているが、
図2は、様式化された図であることが理解される。従って、それに従う実施形態では、そのような別個の層、および/または実質的に相互混合された非隣接層を含んでもよく、これは、前述した「層」の使用と一致する。デバイス3900は、第1および第2の基板3901および3913を有する。第1の電極3902は、第1の基板3901の内表面に配置され、第2の電極3912は、第2の基板3913の内表面に配置される。活性層3950は、2つの電極3902および3912の間に挟まれる。活性層3950は、メソポーラス層3904、第1および第2の光活性材料3906、3908、電荷輸送層3910、およびいくつかの界面層を有する。さらに、
図2には、実施形態による例示的なデバイス3900が示されており、活性層3950のサブ層は、界面層により分離され、さらに界面層は、各電極3902および3912の上に配置される。特に、第2、第3、および第4の界面層3905、3907、および3909は、それぞれ、メソポーラス層3904、第1の光活性材料3906、第2の光活性材料3908、および電荷輸送層3910のそれぞれの間に配置される。第1および第5の界面層3903および3911は、それぞれ、(i)第1の電極3902とメソポーラス層3904の間、(ii)電荷輸送層3910と第2の電極3912との間、配置される。従って、
図2に示す例示的なデバイスのアーキテクチャは、基板-電極-活性層-電極-基板として特徴付けられる。活性層3950のアーキテクチャは、界面層-メソポーラス層-界面層-光活性材料-界面層-光活性材料-界面層-電荷輸送層-界面層として特徴付けられる。前述のように、ある実施形態では、界面層は存在しなくてもよく、あるいは1または2以上の界面層は、全てではなく一部が、特定の活性層の部材および/またはデバイスの部材の間にのみ、含まれてもよい。
【0123】
第1および第2の基板3901、3913のいずれかまたは両方のような基板は、可撓性であっても、剛性であってもよい。2つの基板が含まれる場合、少なくとも1つは、電磁(EM)放射線(例えば、紫外線、可視光、または赤外線)に対して透明または半透明である必要がある。1つの基板が含まれる場合、これは、同様に透明または半透明であってもよい。ただし、EM放射が活性層3950に接触することをデバイスの一部が許容する限り、これは必要ではない。好適な基板材料には、ガラス、サファイア、酸化マグネシウム(MgO)、マイカ、ポリマー(例えば、PEN、PET、PEG、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、PMMA、ポリアミド、ビニルカプトンなど)、セラミックス、カーボン、複合材料(例えば、ガラス繊維、ケブラー、炭素繊維)、ファブリクス(例えば、綿、ナイロン、絹、羊毛)、木材、ドライウォール、タイル(例えば、セラミック、複合材料、または粘土)、金属、銀、金、アルミニウム、マグネシウム、コンクリート、ならびにこれらの組み合わせの、任意の1または2以上が含まれる。
【0124】
前述のように、電極(例えば、
図2の電極3902および3912のうちの1つ)は、陽極または陰極のいずれであってもよい。ある実施形態では、一つの電極は、陰極として機能し、他方は、陽極として機能してもよい。電極3902および3912の一方または両方は、リード、ケーブル、ワイヤ、または他の手段に結合され、デバイス3900への、および/またはデバイス3900からの電荷輸送が可能となってもよい。電極は、任意の導電性材料で構成され、少なくとも1つの電極は、EM放射線に対して透明または半透明であり、および/またはEM放射線が活性層3950の少なくとも一部と接触することを許容するように配置される必要がある。好適な電極材料は、インジウムスズ酸化物またはスズドープ酸化インジウム(ITO);フッ素ドープ酸化スズ(FTO);カドミウム酸化物(CdO);亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO);アルミニウム亜鉛酸化物(AZO);アルミニウム(Al);金(Au);銀(Ag);カルシウム(Ca);クロム(Cr);マグネシウム(Mg);チタン(Ti);鋼;炭素(およびそれらの同素体);ドープ炭素(例えば、窒素ドープ);コア-シェル配置のナノ粒子(例えば、シリコン-炭素コア-シェル構造);およびこれらの組み合わせの任意の1または2以上を含んでもよい。
【0125】
メソポーラス材料(例えば、
図2のメソポーラス層3904に含まれる材料)は、任意のポア含有材料を含んでもよい。ある実施形態では、ポアは、約1~約100nmの範囲の直径を有してもよい。別の実施形態では、ポア直径は、約2~約50nmの範囲であってもよい。好適なメソポーラス材料は、本願の他の箇所で議論される任意の界面材料および/またはメソポーラス材料;アルミニウム(Al);ビスマス(Bi);セリウム(Ce);ハフニウム(Hf);インジウム(In);モリブデン(Mo);ニオブ(Nb);ニッケル(Ni);シリコン(Si);チタン(Ti);バナジウム(V);亜鉛(Zn);ジルコニウム(Zr);上記金属の任意の1または2以上の酸化物(例えば、アルミナ、セリア、チタニア、酸化亜鉛、ジルコニアなど);上記金属の任意の1または2以上の硫化物;上記金属のうちの任意の1または2以上の窒化物;およびこれらの組み合わせの任意の1または2以上を有する。ある実施形態では、IFLとして本願に記載の任意の材料は、メソポーラス材料であってもよい。別の実施形態では、
図2に示すデバイスは、メソポーラス材料層を含まず、メソポーラスではない薄膜または「コンパクト」なIFLのみを有してもよい。
【0126】
光活性材料(例えば、
図2の第1または第2の光活性材料3906、3908)は、任意の光活性化合物を有してもよく、例えば、シリコン(例えば、多結晶シリコン、単結晶シリコン、またはアモルファスシリコン)、テルル化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、銅インジウムガリウムセレン化物、セレン化銅インジウム、硫化銅亜鉛、ヒ化ガリウム、ゲルマニウム、リン化ゲルマニウムインジウム、リン化インジウム、1または2以上の半導体ポリマー(例えば、ポリチオフェン(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))およびその誘導体、またはP3HT);ポリヘプタデカニルカルボゾールジチエルベンゾチアジアゾール、およびその誘導体(例えば、PCDTBT)のようなカルバゾール系コポリマー;ポリシクロペンタジチオフェン-ベンゾチアジアゾールおよびその誘導体(例えば、PCPDTBT)、ポリベンゾジチオフェニル-チエノチオフェンジイルおよびその誘導体(例えば、PTB6、PTB7、PTB7-th、PCE-10)のような他のコポリマー;ポリ(トリアリールアミン)化合物およびその誘導体(例えば、PTAA);ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体(例えば、MDMO-PPV、MEH-PPV)、およびこれらの組み合わせの1または2以上であってもよい。
【0127】
ある実施形態では、その代わりにまたはこれに加えて、光活性材料は、色素(例えば、N719、N3、他のルテニウム系の色素)を含んでもよい。ある実施形態では、(何らかの組成の)色素は、別の層(例えば、メソポーラス層および/または界面層)上にコーティングされてもよい。ある実施形態では、光活性材料は、1または2以上のペロブスカイト材料を含んでもよい。ペロブスカイト材料含有光活性物質は、固体形態であってもよく、またはある実施形態では、ペロブスカイト材料を有する懸濁液または溶液を有する色素の形態であってもよい。そのような溶液または懸濁液は、他の色素と同様の方法で、他のデバイス部材上にコーティングされてもよい。ある実施形態では、固体ペロブスカイト含有材料は、任意の適切な手段(例えば、気相成膜、溶液堆積、固体材料の直接配置など)により堆積されてもよい。各種実施形態によるデバイスは、1、2、3、またはそれ以上の光活性化合物(例えば、1、2、3、またはそれ以上のペロブスカイト材料、色素、またはこれらの組み合わせ)を含んでもよい。複数の色素または他の光活性材料を有するある実施形態では、2以上の色素または他の光活性材料の各々は、1または2以上の界面層により、分離されてもよい。ある実施形態では、複数の色素および/または光活性化合物は、少なくとも一部が相互混合されてもよい。
【0128】
電荷輸送材料(例えば、
図2の電荷輸送層3910の電荷輸送材料)は、固体状態の電荷輸送材料(すなわち、口語表現ではラベル化された固体電解質)を含んでもよく、または液体電解質および/またはイオン性液体を含んでもよい。液体電解質、イオン性液体、および固体電荷輸送材料はいずれも、電荷輸送材料と称され得る。本願で使用される「電荷輸送材料」とは、電荷キャリアを収集し、および/または電荷キャリアを輸送することができる任意の材料、固体、液体、またはその他を意味する。例えば、ある実施形態によるPVデバイスでは、電荷輸送材料は、電荷キャリアを電極に輸送可能であってもよい。電荷キャリアは、ホール(その輸送により、適切にラベル化された「ホール輸送材料」のように、電荷輸送材料を形成できる)、および電子を有してもよい。正孔はアノードに向かって、電子はカソード陰極に向かって輸送され、電荷輸送材料の配置に依存して、PVまたは他のデバイスにおけるカソードおよびアノードのいずれかに関連して輸送される。ある実施形態による電荷輸送材料の適切な例には、以下の1または2以上が含まれてもよい:ペロブスカイト材料;I
-/I
3-;Co錯体;ポリチオフェン(例えば、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)およびその誘導体、またはP3HT);ポリヘプタデカニルカルバゾールジチエニルベンゾチアジアゾールのような、カルバゾール系コポリマー、およびその誘導体(例えば、PCDTBT);ポリシクロペンタジチオフェン-ベンゾチアジアゾールおよびその誘導体(例えば、PCPDTBT)ポリベンゾジチオフェニル-チエノチオフェンジイルおよびその誘導体(例えば、PTB6、PTB7、PTB7-th、PCE-10);ポリ(トリアリールアミン)化合物およびその誘導体(例えば、PTAA);スピロ-OMeTADポリフェニレンビニレンおよびその誘導体(例えば、MDMO-PPV、MEH-PPV);フラーレンおよび/またはフラーレン誘導体(例えば、C60、PCBM);カーボンナノチューブ;グラファイト;グラフェン;カーボンブラック;アモルファスカーボン;グラッシーカーボン;およびこれらの組み合わせ。ある実施形態では、電荷輸送材料は、電荷キャリア(電子または正孔)を収集することができ、および/または電荷キャリアを輸送することが可能な、固体または液体の任意の材料を有する、従って、ある実施形態の電荷輸送材料は、n型またはp型活性、両極性、および/または真性半導体材料であってもよい。電荷輸送材料は、デバイスの電極の1つに近接して配置されてもよい。ある実施形態では、それは、電極に隣接して配置されてもよい。ただし、他の実施形態では、界面層は、電荷輸送材料と電極(例えば、
図2に示されるように、第5の界面層3911を有する)との間に配置されてもよい。特定の実施形態では、電荷輸送材料のタイプは、それが近接する電極に基づいて選択されてもよい。例えば、電荷輸送材料が正孔を収集および/または輸送する場合、これは、アノードに近接して、アノードに正孔を輸送してもよい。ただし、電荷輸送材料は、代わりに、カソードに近接して配置され、電子をカソードに輸送するように選択または構成されてもよい。
【0129】
前述のように、各種実施形態によるデバイスは、必要な場合、任意の他の2つの層および/または材料の間に、界面層を有してもよい。ただし、ある実施形態によるデバイスは、任意の界面層を有する必要はない。従って、例えば、ペロブスカイト材料デバイスは、0、1、2、3、4、5、またはそれ以上の界面層を含んでもよい(例えば、
図2の例示的デバイスは、5つの界面層3903、3905、3907、3909、および3911を有する)。界面層は、前述の実施形態による薄膜コーティング界面層を有してもよい(例えば、アルミナおよび/または他の金属酸化物粒子、および/または酸化チタン/金属酸化物バイレイヤ、および/または他の箇所で説明した薄膜コーティング界面層による他の化合物を有する)。ある実施形態による界面層は、任意の適切な材料を有し、2つの層または材料の間の電荷輸送および/または収集が強化されてもよい。また、これは、いったん電荷が界面層に隣接する材料の1つから輸送された際に、電荷再結合の可能性を回避しまたは低減することを支援してもよい。好適な界面材料は、以下の任意の1または2以上を有してもよい:他の箇所で議論される任意のメソポーラス材料および/または界面材料;Ag;Al;Au;B;Bi;Ca;Cd;Ce;Co;Cu;Fe;Ga;Ge;H;In;Mg;Mn;Mo;Nb;Ni;Pt;Sb;Sc;Si;Sn;Ta;Ti;V;W;Y;Zn;Zr;前述の任意の金属の炭化物(例えばSiC、Fe
3C、WC);前述の任意の金属のシリサイド(例えばMg
2Si、SrSi
2、Sn
2Si);前述の任意の金属の酸化物(例えばアルミナ、シリカ、チタニア、SnO
2、ZnO);前述の任意の金属の硫化物(例えば、CdS、MoS
2、SnS
2);前述の任意の金属の窒化物(例えば、Mg
3N
2、TiN、BN、Si
3N
4);前述の任意の金属のセレン化物(例えば、CdSe、FeS
2、ZnSe);前述の任意の金属のテルル化物(例えば、CdTe、TiTe
2、ZnTe);前述の任意の金属のリン化物(例えば、InP、GaP);前述の任意の金属のヒ素化物(例えば、CoAs
3、GaAs、InGaAs、NiAs);前述の任意の金属のアンチモン化物(例えば、AlSb、GaSb、InSb)前述の任意の金属のハロゲン化物(例えば、CuCl、CuI、BiI
3);前述の任意の金属の擬ハロゲン化物(例えば、CuSCN、AuCN
2);前述の任意の金属の炭酸塩(例えば、CaCO
3、Ce
2(CO
3)
3);官能化または非官能化アルキルシリル基;グラファイト;グラフェン;フラーレン;カーボンナノチューブ;他の箇所で議論される任意のメソポーラス材料および/または界面材料;ならびにこれらの組み合わせ(ある実施形態では、組み合わせ材料のバイレイヤ、トリレイヤ、またはマルチレイヤを含む)。ある実施例では、界面層は、ペロブスカイト材料を有してもよい。また、界面層は、前述の任意の界面材料(例えば、YドープZnO、Nドープ単層壁カーボンナノチューブ)のドープされた実施形態を有してもよい。また、界面層は、前述の3つを有する化合物(例えば、CuTiO
3、Zn
2SnO
4)、または前述の4つを有する化合物(例えば、CoNiZnO)を有してもよい。
【0130】
一例として、
図3には、
図2に示したペロブスカイト材料デバイス3900と同様の構造を有する、ペロブスカイト材料デバイス3900aの実施形態を示す。
図3は、ある実施形態によるペロブスカイト材料デバイス3900aの様式化された図である。デバイス3900aの各種部材は、隣接する材料を有する別個の層として示されているが、
図3は、様式化された図であることに留意する必要がある。従って、この実施形態は、そのような別個の層、および/または実質的に相互混合された非隣接層を有し、これは、前述の「層」の使用と一致してもよい。
図3は、活性層3906aおよび3908aを有する。ある実施形態では、活性層3906aおよび3908aの一方または両方は、
図2に関して示した任意のペロブスカイト光活性材料を含んでもよい。他の実施形態では、活性層3906aおよび3908aの一方または両方は、本願の任意の光活性材料を有し、例えば、薄膜半導体(例えば、CdTe、CZTS、CIGS)、光活性ポリマー、色素増感光活性材料、フラーレン、小さな分子光活性材料、および結晶質および多結晶半導体材料(例えば、シリコン、GaAs、InP、Ge)を含んでもよい。さらに他の実施形態では、活性層3906aおよび3908aの一方または両方は、発光ダイオード(LED)、電界効果トランジスタ(FET)、薄膜電池層、またはこれらの組み合わせを有してもよい。実施形態において、活性層3906aおよび3908aの一方は、光活性材料を有してもよく、他方は、発光ダイオード(LED)、電界効果トランジスタ(FET)、薄膜電池層、またはこれらの組み合わせを有してもよい。例えば、活性層3908aは、ペロブスカイト材料光活性層を含んでもよく、活性層3906bは、電界効果トランジスタ層を含んでもよい。層3901a、3902a、3903a、3904a、3905a、3907a、3909a、3910a、3911a、3912a、および3913aのような、
図3に示される他の層は、
図2に関して記載されたような対応する層と同様であってもよい。
【0131】
また、ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、3以上の活性層を有してもよい。一例として、
図4には、
図2に示すペロブスカイト材料デバイス3900と同様の構造を有する、ペロブスカイト材料デバイス3900bの実施形態を示す。
図3は、ある実施形態によるペロブスカイト材料デバイス3900bの様式化された図である。装置3900bの各種部材は、隣接する材料を有する別個の層として示されているが、
図4は、様式化された図であることに留意する必要がある。従って、この実施形態は、そのような別個の層、および/または実質的に相互混合された非隣接層を有し、これは前述の「層」の使用と一致してもよい。
図4は、活性層3904b、3906b、および3908bを有する。ある実施形態では、活性層3904b、3906b、および3908bの1または2以上は、
図2に関して示した任意のペロブスカイト光活性材料を有してもよい。他の実施形態では、活性層3904b、3906b、および3908bのうちの1または2以上は、本願に記載の任意の光活性材料を有し、例えば、薄膜半導体(例えば、CdTe、CZTS、CIGS)、光活性ポリマー、色素増感光活性材料、フラーレン、小さな分子光活性材料、ならびに結晶質および多結晶の半導体材料(例えば、シリコン、GaAs、InP、Ge)を有してもよい。さらに他の実施形態では、活性層3904b、3906b、および3908bの1または2以上は、発光ダイオード(LED)、電界効果トランジスタ(FET)、薄膜電池層、またはこれらの組み合わせを有してもよい。実施形態において、活性層3904b、3906b、および3908bの活性層の1または2以上は、光活性材料を有し、他方は、発光ダイオード(LED)、電界効果トランジスタ(FET)、薄膜電池層、またはこれらの組み合わせを有してもよい。例えば、活性層3908aおよび3906bは、いずれもペロブスカイト材料光活性層を有し、活性層3904bは、電界効果トランジスタ層を有してもよい。層3901b、3902b、3903b、3904b、3905b、3907b、3909b、3910b、3911b、3912b、および3913bのような、
図3に示される他の層は、
図2に関して記載されたような対応する層と同様であってもよい。
【0132】
ペロブスカイトデバイスの追加のより具体的な例示的実施形態は、一例としてのデバイスのさらに様式化された記述に関して議論される。
図1乃至4のこれらの記述の様式化された性質は、同様に、装置のタイプを限定することを意図するものではない。ある実施形態では、これは、
図1乃至4の1または2以上により、構成されてもよい。すなわち、
図1乃至4に記載のアーキテクチャは、(本願の他の箇所で明示的に示されているもの、およびこの開示の利益を享受する当業者には明らかな他の好適な手段の両方を含む)任意の適切な手段により、BHJ、電池、FET、ハイブリッドPV電池、シリアルマルチセルPV、パラレルマルチセルPV、および本開示の他の実施形態の他の同様の装置を提供するように適合されてもよい。
【0133】
ペロブスカイト材料活性層の形成
前述のように、ある実施形態では、活性層中のペロブスカイト材料は、一般式CMX3-yX’y(0≧y≧3)を有し、ここで、Cは、1または2以上のカチオン(例えば、アミン、アンモニウム、第1族金属、第2族金属、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、エテンテトラミン、ホスホニウム、イミダゾリウム、および/または他のカチオンまたはカチオン状化合物)を有し、Mは、1または2以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZr)を有し、XおよびX’は、1または2以上のアニオンを有する。ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、CPbI3-yClyを有してもよい。ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、以降に記載の工程を用いて、例えば、ドロップキャスティング、スピンキャスティング、スロット-ダイ印刷、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷により、基板層上にPVデバイスの活性層として堆積されてもよい。
【0134】
まず、鉛ハロゲン化物前駆体インクが形成される。管理された雰囲気環境(例えば、グローブ含有ポートホールを有する制御された雰囲気ボックスでは、空気フリー環境での物質の操作が可能になる)において、ある量のハロゲン化鉛が清浄な乾燥した容器中で集合されてもよい。好適なハロゲン化鉛には、これに限られるものではないが、ヨウ化鉛(II)、臭化鉛(II)、塩化鉛(II)、フッ化鉛(II)が含まれる。ハロゲン化鉛は、ハロゲン化鉛の単一種を有し、またはハロゲン化鉛混合物を正確な比率で有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛混合物は、ヨウ化物、臭化物、塩化物、またはフッ化物の0.001~100モル%の任意の2元、3元、または4元比を有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛混合物は、約10mol:90molの比で、塩化鉛(II)およびヨウ化鉛(II)を有してもよい。別の実施形態では、ハロゲン化鉛混合物は、約5:95、約7.5:92.5、または約15 mol:85molの比で、塩化鉛(II)およびヨウ化鉛(II)を有してもよい。
【0135】
あるいは、ハロゲン化鉛塩とともに、またはその代わりに、他の鉛塩前駆体を使用して、前駆体インクを形成してもよい。好適な前駆体塩は、鉛(II)または鉛(IV)と、以下のアニオンとの任意の組み合わせを有してもよい:硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸、アセトニルアセトネート、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラ(パーフルオロフェニル)ホウ酸塩、ヒドリド、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン酸塩、シアン化物、イソシアネート、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、トリシアノメタニド、アミド、および過マンガン酸塩。
【0136】
さらに、前駆体インクは、前記アニオンの塩として、以下の金属イオンに対して、モル比で0~100%の鉛(II)または鉛(IV)塩を有してもよい:Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZr。
【0137】
次に、溶媒が容器に添加され、鉛固体が溶解され、ハロゲン化鉛前駆体インクが形成されてもよい。好適な溶媒には、これに限られるものではないが、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせが含まれ得る。ある実施形態において、鉛固体は、乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解される。鉛固体は、約20~約150℃の間の温度で溶解されてもよい。一実施形態では、鉛固体は約85℃で溶解される。鉛固体は、溶液を形成するために必要な場合、溶解され、これは、最大約72時間の期間にわたって行われてもよい。得られた溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクのベースを形成する。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約0.001M~約10Mのハロゲン化鉛濃度を有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約1Mのハロゲン化鉛濃度を有する。
【0138】
必要な場合、特定の添加剤をハロゲン化鉛前駆体インクに添加して、最終的なペロブスカイトの結晶性および安定性に影響を与えてもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、さらに、アミノ酸(例えば、5-アミノ吉草酸、ヒスチジン、グリシン、リジン)、アミノ酸水素ハロゲン化物(例えば、5-アミノ吉草酸塩酸塩)、IFL表面改質(SAM)剤(例えば、明細書において前述したようなもの)、またはこれらの組み合わせを有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクに、塩化ホルムアミジニウムを添加してもよい。他の実施形態では、本願の前述の任意のカチオンのハロゲン化物を使用してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクに、添加剤の組合せを添加してもよく、これには、例えば、塩化ホルムアミジニウムおよび5-アミノ吉草酸塩酸塩の組み合わせが含まれる。
【0139】
説明のためであり、いかなる特定の機構の理論に対する議論に限定することも意図しないが、塩化ホルムアミジニウムおよび5-アミノ吉草酸は、ワンステップペロブスカイトデバイスの製造において、添加剤またはカウンターカチオンとして使用される場合、ペロブスカイトPVデバイスの安定性を改善することが認められている。また、PbCl2の形態において、塩化物は、2ステップ法において、PbI2前駆体溶液に加えると、ペロブスカイトPVデバイスの性能を改善することが認められている。2ステップペロブスカイト薄膜堆積プロセスは、塩化ホルムアミジニウムおよび/または5-アミノ吉草酸塩酸塩をハロゲン化鉛前駆体溶液(例えば、PbI2)に直接添加することにより改善され、両方の利点を単一材料で利用することができることが認められている。同様に、他のペロブスカイト成膜プロセスも、ハロゲン化鉛前駆体溶液に塩化ホルムアミジニウム、5-アミノ吉草酸塩酸塩、またはPbCl2を添加することにより改善され得る。
【0140】
得られるペロブスカイト材料の所望の特性に応じて、各種濃度で、塩化ホルムアミジニウムおよび/または5-アミノ吉草酸塩酸塩を有する添加剤が、ハロゲン化鉛前駆体インクに添加されてもよい。ある実施形態では、添加剤は、約1nMから約1Mの濃度で添加されてもよい。別の実施形態では、添加剤は、約1μMから約1Mの濃度で添加されてもよい。別の実施形態では、添加剤は、約1μMから約1mMの濃度で添加されてもよい。
【0141】
ある実施形態では、必要な場合、ハロゲン化鉛前駆体インクに水が添加されてもよい。説明のためであり、いかなる特定の機構の理論に対する議論に限定することも意図しないが、水の存在は、ペロブスカイト薄膜結晶成長に影響を及ぼす。通常の環境下では、水は、空気から蒸気として吸収され得る。しかしながら、特定の濃度のハロゲン化鉛前駆体インクに水を直接添加することにより、ペロブスカイトPVの結晶化度を制御することが可能である。好適な水には、蒸留水、脱イオン水、または実質的に汚染物質(ミネラルを含む)を含まない他の水源が含まれる。光I-V掃引に基づき、ペロブスカイトPV光-電力変換効率は、水の添加により、完全に乾燥した装置と比較して、ほぼ3倍になることが認められている。
【0142】
得られたペロブスカイト材料の所望の特性に応じて、ハロゲン化鉛前駆体インクに各種濃度で水が添加されてもよい。ある実施形態において、水は、約1nL/mLから約1mL/mLの濃度で添加されてもよい。別の実施形態では、水は、約1μL/mLから約0.1mL/mLの濃度で添加されてもよい。別の実施形態では、水は、約1μL/mLから約20μL/mLの濃度で添加されてもよい。
【0143】
次に、所望の基板上に、ハロゲン化鉛前駆体インクが堆積されてもよい。好適な基板層は、本開示の前に同定された任意の基板層を有してもよい。前述のように、ハロゲン化鉛前駆体インクは、各種手段を介して堆積され、これには、これに限られるものではないが、ドロップキャスティング、スピンキャスティング、スロットダイ印刷、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷が含まれる。特定の実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約5秒から約600秒の期間、約500rpmから約10,000rpmの速度で、基板上にスピンコートされてもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約3000rpmで約30秒間、基板上に堆積されてもよい。ハロゲン化鉛前駆体インクは、約0%の相対湿度から約50%の相対湿度の湿度範囲における周囲雰囲気で、基板上に堆積されてもよい。その後、ハロゲン化鉛前駆体インクは、実質的に水を含まない雰囲気、すなわち相対湿度が30%未満の雰囲気中で乾燥され、薄膜が形成されてもよい。
【0144】
次に、薄膜は、約20℃から約300℃の温度で、最大約24時間の期間、熱アニールされてもよい。ある実施形態では、薄膜は、約50℃の温度で約10分間、熱アニールされてもよい。その後、ペロブスカイト材料活性層は、従来のプロセスで完成されてもよい。この場合、前駆体フィルムは、溶媒もしくは溶媒の混合物(例えば、DMF、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、クロロホルムクロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、水)、および0.001Mから10Mの間の濃度の塩(例えば、メチルアンモニウムヨウ化物、ホルムアミジニウムヨウ化物、グアニジニウムヨウ化物、1,2,2-トリアミノビニルアンモニウムヨウ化物、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩)を含む溶液中に浸漬され、またはリンスされる。また、ある実施形態では、薄膜は、本段落の第1行目と同じ方法で、熱的にポストアニールされてもよい。
【0145】
ある実施形態では、鉛塩前駆体が基板上に堆積され、鉛塩薄膜が形成されてもよい。基板は、周囲温度にほぼ等しい温度を有してもよく、または0℃から500℃の間に制御された温度を有してもよい。鉛塩前駆体は、従来の各種方法により堆積され、これには、これに限られるものではないが、スピンコーティング、スロットダイ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、スパッタリング、PE-CVD、熱蒸着、またはスプレーコーティングが含まれる。鉛塩前駆体の設置は、大気圧(例えば、高度および大気条件に応じて、約1気圧)、または大気圧よりも低い圧力(例えば、1mTorrから500mTorr)の、各種雰囲気中で実施されてもよい。設置雰囲気は、周囲空気、制御された湿度環境(例えば、ガスの0~100gのH2O/m3)、純アルゴン、純窒素、純酸素、純水素、純ヘリウム、純ネオン、純クリプトン、純CO2、または前述の任意のガスの組み合わせを含んでもよい。制御された湿度環境は、絶対湿度もしくは%相対湿度が固定値に保持される、または絶対湿度もしくは%相対湿度が所定の設定点もしくは所定の機能により変化する環境を有してもよい。特定の実施形態では、設置は、0%以上50%以下の%相対湿度を有する制御された湿度環境において行われてもよい。他の実施形態では、設置は、0g H2O/m3ガス以上、20g H2O/m3ガス以下の制御された湿度環境において行われてもよい。
【0146】
鉛塩前駆体は、液体、気体、固体、または溶液、懸濁液、コロイド、フォーム、ゲル、またはエーロゾルのような、これらの状態の組み合わせであってもよい。ある実施形態では、鉛塩前駆体は、1または2以上の溶媒を含有する溶液であってもよい。例えば、鉛塩前駆体は、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせの1または2以上を有してもよい。鉛塩前駆体は、単一の鉛塩(例えば、ヨウ化鉛(II)、チオシアン酸鉛(II))、または本願に開示の任意の組み合わせ(例えば、PbI2+PbCl2;PbI2+Pb(SCN)2)を含んでもよい。また、鉛塩前駆体は、アミノ酸(例えば、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩)、1,8-ジヨードオクタン(diiodooctane)、1,8-ジチオオクタン、ハロゲン化ホルムアミジニウム、酢酸、トリフルオロ酢酸、ハロゲン化メチルアンモニウム、または水のような、1または2以上の添加剤を有してもよい。ハロゲン化鉛前駆体インクは、実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満の雰囲気中で乾燥され、薄膜が形成される。次に、薄膜は、約20℃から約300℃の温度で、最大約24時間の期間、熱アニールされてもよい。アニールは、周囲圧力(例えば、高度および大気条件に応じて、約1気圧)、または大気圧もしくは周囲よりも低い圧力(例えば、1mTorrから500mTorr)において、各種雰囲気で行われてもよい。アニール雰囲気は、周囲空気、制御された湿度環境(例えば、ガスの0~100gのH2O/m3)、純アルゴン、純窒素、純酸素、純水素、純ヘリウム、純ネオン、純クリプトン、純CO2、または前述のガスの任意の組み合わせを有してもよい。制御された湿度環境は、絶対湿度もしくは%相対湿度が一定値に保持され、または絶対湿度もしくは%相対湿度が所定の設定値もしくは所定の機能により変化するような環境を有してもよい。特定の実施形態では、アニールは、0%以上50%以下の%相対湿度を有する制御された湿度環境において行われてもよい。他の実施形態では、アニールは、
0g H2O/m3以上のガス、および20g H2O/m3以下のガスを有する制御された湿度環境で行われてもよい。
【0147】
鉛塩前駆体が設置された後、鉛塩薄膜上には、第2の塩前駆体(例えば、ヨウ化ホルムアミジニウム、チオシアン酸ホルムアミジニウム、またはチオシアン酸グアニジニウム)が堆積されてもよい。ここで、鉛塩薄膜は、周囲温度とほぼ等しい温度、または0℃から500℃の間の制御された温度を有してもよい。ある実施形態では、第2の塩前駆体は、周囲温度で、または約25℃から125℃の間の高温で堆積されてもよい。第2の塩前駆体は、従来の各種方法で堆積されてもよく、これには、これに限られるものではないが、スピンコーティング、スロットダイ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、スパッタリング、PE-CVD、熱蒸着、またはスプレーコーティングが含まれ得る。第2の塩前駆体の設置は、周囲圧力(例えば、高度および大気条件に応じて、約1気圧)、または大気圧もしくは周囲圧力よりも低い圧力(例えば、1mTorrから500mTorr)において、各種雰囲気で実施されてもよい。堆積雰囲気は、周囲空気、制御された湿度環境(例えば、ガスの0~100gのH2O/m3)、純アルゴン、純窒素、純酸素、純水素、純ヘリウム、純ネオン、純クリプトン、純CO2、または前述のガスの任意の組み合わせを含んでもよい。制御された湿度環境は、絶対湿度または%相対湿度が一定値に保持され、または絶対湿度もしくは%相対湿度が所定の設定点もしくは所定の機能により変化する環境を含んでもよい。特定の実施形態では、堆積は、0%以上、50%以下の%相対湿度を有する制御された湿度環境において行われてもよい。他の実施形態では、堆積は、0g H2O/m3以上、20g H2O/m3以下のガスを有する制御された湿度環境において行われてもよい。
【0148】
ある実施形態では、第2の塩前駆体は、1または2以上の溶媒を含有する溶液であってもよい。例えば、第2の塩前駆体は、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせの1または2以上を含有してもよい。
【0149】
鉛塩前駆体および第2の塩前駆体の堆積後、基板は、アニールされてもよい。基板をアニールすることにより、鉛塩前駆体および第2の塩前駆体が、ペロブスカイト材料(例えば、FAPbI3、GAPb(SCN) 3、FASnI3)に変換してもよい。アニールは、周囲圧力(例えば、高度および大気条件に応じて、約1気圧)、または大気圧もしくは周囲圧力よりも低い圧力(例えば、1mTorrから500mTorr)において、各種雰囲気で行われてもよい。アニール雰囲気は、周囲空気、制御された湿度環境(例えば、ガスの0~100gのH2O/m3)、純アルゴン、純窒素、純酸素、純水素、純ヘリウム、純ネオン、純クリプトン、純CO2、または前述のガスの任意の組み合わせを有してもよい。制御された湿度環境は、絶対湿度もしくは%相対湿度が一定値に保持され、または絶対湿度もしくは%相対湿度が所定の設定点もしくは所定の機能により変化する環境を含んでもよい。特定の実施形態では、アニールは、0%以上50%以下の相対湿度を有する制御された湿度環境において行われてもよい。他の実施形態では、アニールは、0g H2O/m3以上、20g H2O/m3以下のガスを有する制御された湿度環境において行われてもよい。ある実施形態では、アニールは、50℃以上300℃以下の温度で行われてもよい。別段の記載がない限り、本願に記載される任意のアニールステップまたは堆積ステップは、前述の条件下で実施されてもよい。
【0150】
例えば、特定の実施形態では、FAPbI3ペロブスカイト材料は、以下のプロセスにより形成されてもよい。まず、無水DMF中に溶解されたPbI2対PbCl2のモル比が約90:10であるハロゲン化鉛(II)前駆体が、スピンコーティングまたはスロットダイ印刷により、基板上に堆積されてもよい。ハロゲン化鉛前駆体インクは、実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満の雰囲気中で、約1時間(±15分)乾燥され、薄膜が形成されてもよい。次に、薄膜は、約50℃(±10℃)の温度で約10分間、熱アニールされてもよい。他の実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体は、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、スパッタリング、PE-CVD、原子層堆積、熱蒸着、またはスプレーコーティングにより、堆積されてもよい。次にスピンコーティングまたはスロットダイ印刷により、無水イソプロピルアルコールに溶解した25~60mg/mL濃度のホルムアミジニウムヨウ化物を有するホルムアミジニウムヨウ化物前駆体が、ハロゲン化鉛薄膜上に堆積されてもよい。他の実施形態では、ヨウ化ホルムアミジニウム前駆体は、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、スパッタリング、PE-CVD、原子層堆積、熱蒸着、またはスプレーコーティングにより、堆積されてもよい。ハロゲン化鉛前駆体およびヨウ化ホルムアミジニウム前駆体を堆積した後、約25%の相対湿度(約4~7gのH2O/m3空気)および約125℃から200℃の間で、基板がアニールされ、ヨウ化ホルムアミジニウム鉛(FAPbI3)ペロブスカイト材料が形成されてもよい。
【0151】
別の実施形態では、ペロブスカイト材料は、C’CPbX3を有してもよく、ここでC’は、1または2以上の第1族金属(すなわち、Li、Na、K、Rb、Cs)である。特定の実施形態では、M’はセシウム(Cs)であってもよい。別の実施形態では、C’は、ルビジウム(Rb)であってもよい。別の実施形態では、C’は、ナトリウム(Na)であってもよい。別の実施形態では、C’はカリウム(K)であってもよい。さらに他の実施形態では、ペロブスカイト材料は、C’v CwPbyXzを有してもよく、ここで、C’は、1または2以上の第1族金属であり、v、w、y、およびzは、1から20の間の実数を表す。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料は、例えば、ドロップキャスティング、スピンキャスティング、グラビアコーティング、ブレードコーティング、リバースグラビアコーティング、スロットダイ印刷、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷により、以下に記載のステップを用いて、基板層上に活性層として堆積されてもよい。
【0152】
まず、ハロゲン化鉛溶液が形成される。制御された雰囲気中で、ある量のハロゲン化鉛が、清浄な乾燥容器内に収容される。好適なハロゲン化鉛には、これに限られるものではないが、ヨウ化鉛(II)、臭化鉛(II)、塩化鉛(II)、フッ化鉛(II)が含まれる。ハロゲン化鉛は、ハロゲン化鉛の単一種を含んでもよく、またはハロゲン化鉛混合物を正確な比率で含んでもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛は、ヨウ化鉛(II)を有してもよい。特定の実施形態では、ハロゲン化鉛混合物は、ヨウ化物、臭化物、塩化物、またはフッ化物の0.001~100モル%の任意の2元、3元、または4元比を有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛混合物は、約10:90mol比で塩化鉛(II)およびヨウ化鉛(II)を有してもよい。別の実施形態では、ハロゲン化鉛混合物は、約5:95、約7.5:92.5、または約15:85のmol比で、塩化鉛(II)およびヨウ化鉛(II)を有してもよい。
【0153】
あるいは、ハロゲン化鉛塩とともに、またはその代わりに、別の鉛塩前駆体が使用され、鉛塩溶液が形成されてもよい。好適な前駆体鉛塩は、鉛(II)または鉛(IV)と、以下のアニオンとの任意の組み合わせを有してもよい:硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸、ギ酸塩、シュウ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラ(パーフルオロフェニル)ホウ酸塩、水素化物、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、ヨウ酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン化物、シアン酸塩、シアン化物、イソシアネート、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアノメタニド、トリシアノメタニド、アミド、および過マンガン酸塩。
【0154】
鉛塩溶液は、上記アニオンの塩として、さらに、以下の金属イオンBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrに対して、0~100%のモル比で、鉛(II)塩または鉛(IV)塩を有してもよい。
【0155】
次に、容器に溶媒が添加され、ハロゲン化鉛固体が溶解され、ハロゲン化鉛溶液が形成されてもよい。好適な溶媒には、これに限られるものではないが、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせが含まれる。ある実施形態において、鉛固体は、乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解される。ハロゲン化鉛固体は、約20℃から約150℃の温度で溶解されてもよい。ある実施形態において、ハロゲン化鉛固体は、約85℃で溶解される。ハロゲン化鉛固体は、溶液を形成するために必要な場合、溶解されてもよく、これは、最大約72時間の期間にわたって行われてもよい。得られた溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクのベースを形成する。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約0.001Mから約10Mのハロゲン化鉛濃度を有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約1Mのハロゲン化鉛濃度を有する。ある実施形態では、ハロゲン化鉛溶液は、さらに、アミノ酸(例えば、5-アミノ吉草酸、ヒスチジン、グリシン、リジン)、アミノ酸ハロゲン化水素(例えば、5-アミノ吉草酸塩酸塩)、IFL表面活性(SAM)剤(例えば、明細書の記載のもの)、またはこれらの組み合わせを有してもよい。
【0156】
次に、第1族の金属ハロゲン化物溶液が形成される。清浄な乾燥容器の制御された雰囲気環境において、第1族金属ハロゲン化物のある量が収容される。好適な第1族金属ハロゲン化物には、これに限られるものではないが、ヨウ化セシウム、臭化セシウム、塩化セシウム、フッ化セシウム、ヨウ化ルビジウム、臭化ルビジウム、塩化ルビジウム、フッ化ルビジウム、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、フッ化カリウムを含んでもよい。第1族の金属ハロゲン化物は、第1族の金属ハロゲン化物の単一種を含み、または第1族の金属ハロゲン化物の混合物を正確な比率で含んでもよい。ある実施形態では、第1族金属ハロゲン化物は、ヨウ化セシウムを有してもよい。別の実施形態では、第1族金属ハロゲン化物は、ヨウ化ルビジウムを有してもよい。別の実施形態では、第1族金属ハロゲン化物は、ヨウ化ナトリウムを有してもよい。別の実施形態では、第1族金属ハロゲン化物は、ヨウ化カリウムを有してもよい。
【0157】
あるいは、第1族金属ハロゲン化物塩とともに、またはその代わりに、他の第1族金属塩前駆体を用いて、第1族金属塩溶液を形成してもよい。好適な前駆体1族金属塩は、第1族金属と、以下のアニオンの任意の組み合わせを有してもよい:硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ホスフェート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラ(パーフルオロフェニル)ホウ酸塩、水素化物、酸化物、過酸化物、ヒドロキシド、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン酸塩、シアン化物、イソシアネート、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアノンメタニド、トリシアノメタニド、アミド、および過マンガン酸塩の任意の組み合わせ。
【0158】
次に、容器に溶媒が添加され、第1族金属ハロゲン化物固体が溶解し、第1族金属ハロゲン化物溶液が形成されてもよい。好適な溶媒には、これに限られるものではないが、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせが含まれる。ある実施形態では、鉛固体は、乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解される。第1族金属ハロゲン化物固体は、約20から約150℃の間の温度で溶解されてもよい。ある実施形態では、第1族金属ハロゲン化物固体は、室温(すなわち、約25℃)で溶解される。第1族金属ハロゲン化物固体は、溶液を形成するために必要な場合、溶解されてもよく、これは、最大約72時間の期間にわたって行われてもよい。得られた溶液は、第1族金属ハロゲン化物溶液を形成する。ある実施形態では、第1族金属ハロゲン化物溶液は、約0.001Mから約10Mの間の第1族金属ハロゲン化物濃度を有してもよい。ある実施形態では、第1族金属ハロゲン化物溶液は、約1Mの第1族金属ハロゲン化物濃度を有する。いくつかの態様において、第1族金属ハロゲン化物溶液は、さらに、アミノ酸(例えば、5-アミノ吉草酸、ヒスチジン、グリシン、リジン)、アミノ酸ハロゲン化水素酸(例えば、5-アミノ吉草酸塩酸塩)、IFL表面改質(SAM)剤(例えば、明細書に記載のもの)、またはこれらの組み合わせを含有してもよい。
【0159】
次に、ハロゲン化鉛溶液と第1族金属ハロゲン化物溶液が混合され、薄膜前駆体インクが形成される。ハロゲン化鉛溶液および第1族金属ハロゲン化物溶液は、得られた薄膜前駆体インクが、ハロゲン化鉛のモル濃度の0%から25%の間の第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有するような比率で、混合されてもよい。特定の実施形態において、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の1%である第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態において、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の5%である第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態において、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の10%である第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態において、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の15%である第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態において、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の20%である第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態において、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の25%である第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛溶液および第1族金属ハロゲン化物溶液は、混合中または混合後に、撹拌されてもよい。
【0160】
次に、所望の基板上に、薄膜前駆体インクが堆積されてもよい。好適な基板層は、前述のように同定された任意の基板層を含んでもよい。前述のように、薄膜前駆体インクは、各種手段を介して堆積されてもよく、これには、これに限られるものではないが、ドロップキャスティング、スピンキャスティング、グラビアコーティング、ブレードコーティング、リバースグラビアコーティング、スロットダイ印刷、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷が含まれる。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、約5秒から約600秒の時間、約500rpmから約10,000rpmの速度で、基板上にスピンコートされてもよい。一実施形態では、薄膜前駆体インクは、約3000rpmで約30秒間、基板上にスピンコートされてもよい。薄膜前駆体インクは、約0%相対湿度から約50%相対湿度の湿度範囲の周囲雰囲気において、基板上に堆積されてもよい。次に、薄膜前駆体インクは、実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満、または7g H2O/m3未満で乾燥され、薄膜が形成されてもよい。
【0161】
次に、約20℃から約300℃の温度で、最大約24時間の期間、薄膜が熱アニールされ得る。ある実施形態では、薄膜は、約50℃の温度で約10分間熱アニールされてもよい。次に、変換プロセスにより、ペロブスカイト材料活性層が完成される。この場合、前駆体フィルムは、溶媒、または溶媒の混合物(例えば、DMF、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、クロロホルムクロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、水)と、0.001Mから10Mの間の濃度の塩(例えば、ヨウ化メチルアンモニウム、ヨウ化ホルムアミジニウム、ヨウ化グアニジニウム、1,2,2-トリアミノビニルアンモニウムヨウ化物、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩)とを含む塩溶液に浸漬され、またはリンスされる。また、ある実施形態では、ペロブスカイト材料薄膜は、本段落の第1行目と同じ方法で、熱的にポストアニールされてもよい。
【0162】
ある実施形態では、清潔な乾燥した容器の制御された環境雰囲気において、塩を収集することにより、塩溶液が調製されてもよい。好適な塩には、これに限られるものではないが、メチルアンモニウムヨウ化物、ホルムアミジニウムヨウ化物、グアニジニウムヨウ化物、イミダゾリウムヨウ化物、エテンテトラミンヨヨウ化物、1,2,2-トリアミノビニルアンモニウムヨウ化物、および5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩が含まれる。他の好適な塩は、「ペロブスカイト材料」という章に記載された任意の有機カチオンを有してもよい。この塩は、単一種の塩を有し、または正確な比率の塩混合物を有してもよい。ある実施形態では、塩は、ヨウ化メチルアンモニウムを有してもよい。別の実施形態では、塩は、ヨウ化ホルムアミジニウムを含んでもよい。次に、溶媒が容器に添加され、塩固体が溶解され、塩溶液が形成されてもよい。好適な溶媒には、これに限られるものではないが、DMF、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、クロロホルムクロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、水、およびこれらの組み合わせが含まれる。ある実施形態では、イソプロパノールに、ヨウ化ホルムアミジニウム塩固体が溶解される。塩固体は、約20から約150℃の間の温度で溶解されてもよい。一実施形態では、塩固体を室温(すなわち、約25℃)で溶解される。塩固体は、溶液を形成するために必要な場合、溶解されてもよく、これは、最大約72時間の期間にわたって行われてもよい。得られた溶液は、塩溶液を形成する。ある実施形態では、塩溶液は、約0.001Mから約10Mの塩濃度を有してもよい。ある実施形態において、塩溶液は、約1Mの塩濃度を有する。
【0163】
例えば、前述の方法を用い、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化セシウム溶液、およびヨウ化メチルアンモニウム(MA)塩溶液を用いて、CsiMAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは0と1の間の数字に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化ルビジウム溶液、およびヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液を用い、一般式Rbi FAPbI3を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1の間の数字に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化セシウム溶液、およびヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液を用いて、Csi FAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化カリウム溶液、およびヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液を用いて、一般式KiFAPbI3を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化ナトリウム溶液、およびヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液を用いて、NaiFAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)鉛-塩化物(II)混合溶液、ヨウ化セシウム溶液、およびヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液を用いて、CsiFAPbI3-yClyの一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0から1の間の数字であり、yは、0から3の間の数字を表す。
【0164】
特定の実施形態において、前述のハロゲン化鉛溶液は、モル比で、PbI2対PbCl2が90:10の比を有してもよい。前記方法により、ハロゲン化鉛溶液にヨウ化セシウム(CsI)溶液を添加して、10mol%のCsIを有する薄膜前駆体インクを形成してもよい。FAPbI3ペロブスカイト材料は、前述の方法により、この薄膜前駆体溶液を用いて製造されてもよい。前述のように、CsI溶液を介してセシウムイオンを添加すると、塩化物アニオンおよびセシウム原子がFAPbI3結晶格子に組み込まれる。この場合、前述のような、塩化物イオンを添加せずに、セシウムまたはルビジウムイオンを添加した場合と比べて、格子収縮の程度が大きくなり得る。下記の表1には、10mol%のルビジウムおよび20mol%の塩化物(例えば、10mol%のPbCl2)、10mol%のセシウムを有するFAPbI3ペロブスカイト材料、ならびに20mol%の塩化物を有する10mol%のセシウムの格子パラメータを示す。ここで、mol%濃度は、ハロゲン化鉛溶液中の鉛原子に対する添加剤の濃度を表す。表1に見られるように、セシウムおよび塩化物を添加したFAPbI3ペロブスカイト材料は、他の2つのペロブスカイト材料サンプルよりも小さな格子パラメータを有する。
【0165】
【表1】
また、データは、ルビジウム、セシウムおよび/または塩化物を添加したFAPbI
3ペロブスカイト材料がPm3-m立方構造を有することを示した。10mol%のRbおよび10mol%のCl、もしくは10mol%のCs、または10mol%のCsおよび10mol%のClを有するFAPbI
3ペロブスカイトは、立方晶Pm3-m立方晶構造を維持することが観察された。
図29には、表1に示された各サンプルに対応するX線回折パターンを示す。表2~4には、表1に示した3つのペロブスカイト材料のX線回折ピークおよび強度を示す。データは、走査速度1.5゜2θ/分でのCuKα放射線源を用いた、リガクミニフレックス600において、周囲条件で採取した。
【0166】
【0167】
【0168】
【表4】
Cu-Kα放射線下での格子定数=6.3375オングストロームを有する立方晶Pm3-m材料の幾何学的に予測されるX線回折パターンを表5に示す。データから分かるように、10mol%のRbと10mol%のCl、10mol%のCs、ならびに10%のCsと10%のClで製造されたペロブスカイト材料の各々は、立方晶のPm3-mペロブスカイト材料に対して予想されるパターンと一致する回折パターンを有する。
【0169】
【表5】
(強化ペロブスカイト)
いわゆる「層状」2Dペロブスカイトは、ペロブスカイトが、前述のメチルアンモニウムカチオンおよびホルムアミジニウムカチオンよりも長いアルキル鎖を有する有機カチオンで形成される場合に、形成されることが知られている。層状2Dペロブスカイトは、ルドルスデン-ポッパー相、ディオン-ヤコブソン(Dion-Jacobson)相、およびオーリビリウス(Aurivillius)相等の構造を有する。例えば、メチルアンモニウムまたは前述の他のカチオンの代わりに、1-ブチルアンモニウムを置換することにより、「1ステップ」法(本願には記載されていない)において、ペロブスカイトの形成中に、ルドルスデン-ポッパー2Dペロブスカイトが生じる。そのようなペロブスカイトでは、1-ブチルアンモニウムは、ペロブスカイトが完全な結晶格子を形成することを妨げ、代わりに、ペロブスカイトは、単結晶構造の厚さを有するペロブスカイトの「シート」中に形成される。
図5には、ルドルスデン-ポッパーの構造5500を示す。これは、1-ブチルアンモニウムカチオン5510を有する。
図5からわかるように、ブチルアンモニウムカチオンの「尾部」により、ペロブスカイト材料の鉛およびヨウ化物の部分、他の鉛とヨウ化物構造の間に、分離が生じ、2Dペロブスカイトの「シート」が得られる。従って、ペロブスカイト材料の形成中の1-ブチルアンモニウムまたはベンジルアンモニウムのような、「バルキー」な有機カチオンの導入は、ペロブスカイトのルドルスデン-ポッパー形態が望まれない場合、好ましくない。
【0170】
しかしながら、ペロブスカイト材料をアニールする前に、希釈した量の1-ブチルアンモニウム溶液を添加すると、
図6に示すようにペロブスカイトが形成され得る。
図6には、表面不動態化のため、アルキルアンモニウムカチオンが添加された、ペロブスカイト材料2000の実施形態を示す。示された実施形態では、ホルムアミジニウムヨウ化鉛(FAPbI
3)ペロブスカイト材料2010の表面は、表面に1-ブチルアンモニウムカチオン2020を有するように示されている。ある実施形態では、1-ブチルアンモニウムカチオン、または他の「バルキーな」有機カチオンは、ペロブスカイト材料の結晶格子の表面近くのペロブスカイト材料中に拡散してもよい。特定の実施形態では、1-ブチルアンモニウムカチオン、または本願に記載の他の「バルキーな」有機カチオンは、結晶格子表面または結晶粒界から、ペロブスカイト材料中に50nm以下の位置に存在してもよい。ペロブスカイト材料の表面または近傍に、1-ブチルアンモニウムのような「バルキーな」有機カチオンが含まれることにより、本願に記載のペロブスカイト材料の「理想的な」化学量論から逸脱した、ペロブスカイト材料の一般式が得られる。例えば、そのような有機カチオンの含有により、ペロブスカイト材料は、本願に記載されたCMX
3式に関して、準化学量論的または超化学量論的のいずれかである一般式を有してもよい。この場合、ペロブスカイト材料の一般式は、C
xM
yX
zで表されてもよい。ここで、x、yおよびzは実数である。ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、一般式C’
2C
n-1M
nX
3n-1を有してもよい。ここで、nは整数である。例えば、n=1の場合、ペロブスカイト材料は、一般式C’
2MX
4を有し、n=2の場合、ペロブスカイト材料は、一般式C’
2CM
2X
7を有し、n=3の場合、ペロブスカイト材料は式C’
2C
2M
3X
10を有し、n=4の場合、ペロブスカイト材料は、一般式C’
2C
3M
4X
13を有し、以下同様である。
図30に示すように、n値は、ペロブスカイト材料の無機金属ハロゲン化物サブ格子の厚さを示す。一般式C’
2C
n-1M
nX
3n-1を有するペロブスカイト材料の相は、バルキーな有機カチオンがペロブスカイト材料の結晶格子中に拡散し、または導入された領域に、形成され得る。例えば、そのような相は、本願に記載のバルキーな有機カチオンを有するペロブスカイト材料の結晶格子表面(例えば、表面または粒界)から、50ナノメートル以内に存在してもよい。
【0171】
1-ブチルアンモニウムイオンの炭素「尾部」は、表面から他の分子を効果的に離しておくことにより、ペロブスカイトの表面に保護特性を提供し得る。ある実施形態では、1-ブチルアンモニウムイオンのアルキル基「尾部」は、ペロブスカイト材料の表面から離れて、またはペロブスカイト材料の表面と平行に、配向されてもよい。特に、1-ブチルアンモニウムの「尾部」は、疎水性特性を有し、これにより、水分子がペロブスカイトの表面に接触することが妨げられ、ペロブスカイト材料2010の表面が環境中の水分から保護されてもよい。また、1-ブチルアンモニウムカチオンは、ペロブスカイト材料2010が有する表面および粒界または欠陥を不動態化するように作用してもよい。不動態化とは、ペロブスカイト材料2010の表面または粒界における電荷の蓄積、または「トラップ状態」を妨げる電気的特性を表す。ペロブスカイト材料2010の一部を不動態化するように作用させることにより、1-ブチルアンモニウムにおいて、ペロブスカイト材料2010への、またはからの電荷移動が改善され、光活性層の電気特性を改善することができる。
【0172】
ある実施形態では、他の有機カチオンは、1-ブチルアンモニウムの代わりに、またはこれと組み合わせて適用されてもよい。表面不動態化ペロブスカイト材料に作用し得る他の「バルキーな」有機カチオンの例には、これに限られるものではないが、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、n-ブチルアンモニウム;ペリレンn-ブチルアミン-イミド;ブタン-1,4-ジアンモニウム;1-ペンチルアンモニウム;1-ヘキシルアンモニウム;ポリ(ビニルアンモニウム);フェニルエチルアンモニウム;3-フェニル-1-プロピルアンモニウム;4-フェニル-1-ブチルアンモニウム;1,3-ジメチルブチルアンモニウム;3,3-ジメチルブチルアンモニウム;1-ヘプチルアンモニウム;1-オクチルアンモニウム;1-ノニルアンモニウム;1-デシルアンモニウム;および1-イコサニルアンモニウムが含まれる。また、カチオン種に加えて1または2以上のヘテロ原子を含む尾部を有するバルキーな有機カチオンでは、ヘテロ原子は、ペロブスカイト材料結晶格子と配位し、結合し、または統合されてもよい。ヘテロ原子は、窒素、硫黄、酸素、またはリンを含む、水素または炭素ではない尾部における任意の原子であってもよい。
【0173】
「バルキーな」有機カチオンの他の例には、アンモニウム基、ホスホニウム基、またはペロブスカイト物質の表面Cサイトに統合される他のカチオン基、で官能化された以下の分子が含まれ得る:ベンゼン、ピリジン、ナフタレン、アントラセン、キサンテン、フェナトレン、テトラセンクリセン、テトラフェン、ベンゾ[c]フェナトレン、トリフェニレン、ピレン、ペリレン、コロネン、置換ジカルボン酸イミド、アニリン、N-(2-アミノエチル)-2-イソインドール-1,3-ジオン、2-(1-アミノエチル)ナフタレン、2-トリフェニレン-O-エチルアミン、ベンジルアミン、ベンジルアンモニウム塩、N-n-ブチル-N’-4-アミノブチルペリレン-3,4,9,10-ビス(ジカルボキシイミド)、1-(4-アルキルフェニル)メタンアミン、1-(4-アルキル-2-フェニル)メタンアミン、1-(4-アルキルフェニル)メタンアミン、1-(3-アルキル-5-アルキルフェニル)メタンアミン、1-(3-アルキル-5-アルキル-2-フェニル)エタンアミン、1-(4-アルキル-2-フェニル)エタンアミン、2-エチルアミン-7-アルキル-ナフタレン、2-エチルアミン-6-アルキル-ナフタレン、1-エチルアミン-7-アルキル-ナフタレン、1-エチルアミン-6-アルキル-ナフタレン、N-n-アミノアルキル-N’-4-アミノブチルペリレン-3,4,9,10-ビス(ジカルボキシイミド)、1-(3-ブチル-5-メトキシブチルフェニル)メタンアミン、1-(4-ペンチルフェニル)メタンアミン、1-[4-(2-メチルペンチル)-2-フェニル]エタンアミン、1-(3-ブチル-5-ペンチル-2-フェニル)エタンアミン、2-(5-[4-メチルペンチル]-2-ナフチル)エタンアミン、N-7-トリデシル-N’-4-アミノブチルペリレン-3,4,9,10ビス(ジカルボキシイミド)、N-n-ヘプチル-N’-4-アミノブチルペリレン-3,4,9,10-ビス(ジカルボキシイミド)、2-(6-[3-メトキシルプロピル]-2-ナフチル)エタンアミン。
図17乃至28には、特定の実施形態による、これらの有機分子の構造を示す。
図17および
図18に関して、各「R基」R
xは、=H、R’、Me、Et、Pr、Ph、Bz、F、Cl、Br、I、NO
2、OR’、NR’
2、SCN、CN、N
3、SR’のいずれであってもよく、ここで、R’は、任意のアルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖であってもよい。また、示されたR
x基の少なくとも1つは、(CH
2)
nEX
yまたは(CH
2)
nC(EX
y)
2であってもよく、ここで、nおよびy=0,1,2、またはそれ以上であり、nおよびyは、等しくても異なっていてもよい。さらに、
図19に関し、示された分子は、各示されたアミンの任意のハロゲン化水素酸塩、例えばベンジルアンモニウム塩を有してもよく、ここで、示されたX基は、F、Cl、Br、I、SCN、CN、または任意の他の擬ハライドであってもよい。他の非ハロゲン化物許容アニオンには、硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸塩、アセトニルアセトネート、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラ(パーフルオロフェニル)ホウ酸塩、ヒドリド、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン化物、シアン酸塩、イソシアネート、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノンメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアノンメタニド、トリシアノメタニド、アミド、および過マンガン酸塩が含まれる。また、好適なR基には、これに限られるものではないが、以下が含まれる:水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基またはその異性体;アルカン、アルケンまたはアルキンCxHy、ここでx=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖または直鎖状;ハロゲン化アルキル、CxHyXz、x=1~20、y=0~42、z=1~42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族基(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素が含まれる環状錯体(例えば、ピリジン、ピロール、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロキノリン);任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン含有基(例えば、ボロン酸);任意の有機酸(例えば、酢酸、プロパン酸);およびそのエステルまたはアミド誘導体;α、β、γおよびより大きな誘導体を有する任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);ならびに任意のアルコキシまたは-OCxHy基、ここでx=0~20、y=1~42である。
【0174】
また、ある実施形態では、バルキーな有機カチオンは、ペロブスカイト材料中の粒界および表面欠陥を不動態化してもよい。
図7には、ペロブスカイト材料層3000の実施例を示す。1-ブチルアンモニウム3020は、疎水層を形成し、これは、水および他の極性種と反発し、そのような化学種がペロブスカイト材料の表面に到達することを妨げてもよい。
図7に示すように、バルキーな有機カチオンの「尾部」は、ペロブスカイト材料層3000の表面または粒界3015に、化学的に結合(例えば、共有結合またはイオン結合)されていなくてもよい。例えば、1-ブチルアンモニウムの尾部は、ブチル基であり、ベンジルアンモニウムの尾部は、ベンジル基である。
【0175】
バルキーな有機カチオンの尾部は、ペロブスカイト材料の表面または粒界に関して他の配置を仮定してもよい。一般に、バルキーな有機カチオンのカチオン性「ヘッド」は、ペロブスカイト材料の表面または粒界にわたって50ナノメートルを超えて拡散しない。尾部は、ペロブスカイト材料と弱く相互作用し、ペロブスカイト材料結晶粒表面から離れて配向される。尾部は、ペロブスカイト材料結晶粒表面と分子間相互作用(例えば、双極子-双極子または水素結合)を示してもよく、その結果、尾部がペロブスカイト材料結晶粒表面に向かって配向される構成が得られる。ある実施形態では、ペロブスカイト材料中に存在するあるのバルキーな有機カチオンの尾部は、ペロブスカイト材料の表面または粒界と相互作用しなくてもよく、ペロブスカイト材料中の他のバルキーな有機カチオンの尾部は、ペロブスカイト材料の表面または粒界と相互作用してもよい。尾部は、少なくとも1つの電子孤立対を有する、ヘテロ原子またはアニオン(すなわち、双性イオン)を有し、これは、ペロブスカイト材料中に存在する金属原子(例えば、Pb、Sn、Ge、In、Bi、Cu、Ag、Au)を介してペロブスカイト材料結晶粒表面と共有結合的に相互作用してもよい(すなわち、配位共有結合)。また、尾部は、本願に記載のジアンモニウムブタンのようなカチオン種を有し、これは、少なくとも2つの「C」カチオンサイト(例えばホルムアミジニウム)上で置換することにより、ペロブスカイト材料に組み込まれてもよい。また、カチオン種を有する尾部は、2Dペロブスカイト材料の2つの層を架橋し、ペロブスカイト材料の結晶粒表面を横断して傾斜し、または非イオン性尾部に関して記載されたものと同様の方法で、ペロブスカイト材料の結晶粒表面から離れるように配向されてもよい。別の実施形態では、イミダゾリウムカチオンのような十分に大きな尾部を有するバルキーな有機カチオンは、ペロブスカイト材料中に拡散されず、単にペロブスカイト表面または粒界上に存在してもよい。
【0176】
また、他の実施形態では、長さまたはサイズが変化する尾部基を有するバルキーな有機カチオンをペロブスカイトに適用して、ペロブスカイト材料中の粒界および表面欠陥を不動態化してもよい。
図8には、ペロブスカイト材料層4000の例示的な実施形態を示す。1-ブチルアンモニウム4020、1-ノニルアンモニウム4021、1-ヘプチルアンモニウム4022、および1-ヘキシルアンモニウム4023の組み合わせにより、バルクペロブスカイト材料4010の表面および粒界4015の両方が不動態化される。特定の実施形態では、前述の同定されたアルキルアンモニウム化合物の任意の混合物が、本願に記載のペロブスカイト材料に適用されてもよい。
図8には、ペロブスカイト材料層4000の例示的な実施形態を示す。1-ブチルアンモニウム4020、1-ノニルアンモニウム4021、1-ヘプチルアンモニウム4022、および1-ヘキシルアンモニウム4023の組み合わせにより、バルクペロブスカイト材料4010の表面および粒界4015の両方が不動態化される。特定の実施形態では、前述の同定されたアルキルアンモニウム化合物の任意の混合物が、本願に記載のペロブスカイト材料に適用されてもよい。ある実施形態では、バルキーな有機カチオンは、ベンジル基を有してもよい。
図8Aには、ペロブスカイト材料層4500の一例としての実施形態を示す。ベンジル基を有する各種バルキーな有機カチオンにより、バルクペロブスカイト材料4510の表面および粒界4515の両方が不動態化される。
【0177】
前述のように、ペロブスカイト材料に1-ブチルアンモニウム表面コーティングを加えると、湿潤環境におけるペロブスカイトの高温耐久性が増加することが示されている。
図9には、1-ブチルアンモニウム(「BAI」)表面コーティングの有無による、48日間にわたるペロブスカイト材料の画像の比較を示す。両ペロブスカイト材料は、同じ組成を有し、85℃の温度環境おいて、55%の相対湿度で48日間曝露された。写真からわかるように、1-ブチルアンモニウム表面コーティングを有しないペロブスカイト材料は、環境に対する曝露の1日後に著しく色が薄くなり、ペロブスカイト材料が大きく劣化したことが示されている。1-ブチルアンモニウム表面コーティングを有するペロブスカイト材料は、48日間にわたって、色が徐々に明るくなり、48日後も部分的に暗い部分が残存する。これは、1‐ブチルアンモニウム表面被覆を有するペロブスカイト材料は、高温環境での長期曝露の間、1‐ブチルアンモニウム表面被覆を有さないペロブスカイト材料よりもロバストであることを示す。
【0178】
図10には、1-ブチルアンモニウム(「BAI」)表面コーティングの有無による、7日間にわたるペロブスカイト材料の画像の比較を示す。両ペロブスカイト材料は、同じ組成を有し、0%相対湿度で85℃の温度環境に7日間曝露された。写真からわかるように、1-ブチルアンモニウム表面コーティングを有しないペロブスカイト材料は、環境への曝露の1日後に著しく色が薄くなり、ペロブスカイト材料が大きく劣化したことが示されている。1-ブチルアンモニウム表面コーティングを有するペロブスカイト材料は、7日後も、ほとんど色変化を示さない。これは、1-ブチルアンモニウム表面被覆を有するペロブスカイト材料では、高温高湿環境への長期曝露の間、完全には破損されなかったことを示すものである。
【0179】
別の実施形態では、1-ブチルアンモニウムに関して前述したように、ペリレンn-ブチルアミン-イミドがペロブスカイト材料の表面に適用されてもよい。
図11A~Dには、本開示によるペロブスカイト材料の表面に適用され得る各種ペリレンモノイミドおよびジイミドを示す。
図12には、表面不動態化のため、アルキルアンモニウムカチオンが添加された、ペロブスカイト材料2500の実施形態を示す。示された実施形態では、ヨウ化ホルムアミニウム鉛(FAPbI
3)ペロブスカイト材料2510の表面に、表面ペリレンn-ブチルアミン-イミド2520を有することが示されている。
図6に示されている1-ブチルアンモニウムと同様、ペリレンn-ブチルアミン-イミドイオンの炭素「尾部」では、表面から他の分子を効果的に離すことにより、ペロブスカイトの表面に保護特性が影響されてもよい。特に、ペリレンn-ブチルアミン-イミド「尾部」は、疎水特性を有し、これにより、水分子がペロブスカイトの表面に接触することが妨げられ、ペロブスカイト材料2510の表面が環境中の水分から保護される。また、ペリレンn-ブチルアミン-イミドカチオンは、ペロブスカイト材料2510を有する表面および任意の粒界または欠陥を不動態化するように作用してもよい。ペロブスカイト材料2510の一部を不動態化するように作用することにより、ペリレンn-ブチルアミン-イミドは、ペロブスカイト材料2510への、またはからの電荷移動を改善し、光活性層の電気特性が改善されてもよい。
【0180】
以下、ペロブスカイト材料をアニールする前に、1-ブチルアンモニウムを堆積する方法について説明する。
【0181】
まず、鉛ハロゲン化物前駆体インクが形成される。制御された雰囲気環境(例えば、手袋含有ポートホールを有する制御された雰囲気ボックスにより、空気のない環境において物質の操作が可能となる)において、清潔で乾燥した容器に、ある量のハロゲン化鉛が収集されてもよい。好適なハロゲン化鉛には、これに限られるものではないが、ヨウ化鉛(II)、臭化鉛(II)、塩化鉛(II)、およびフッ化鉛(II)が含まれる。ハロゲン化鉛は、ハロゲン化鉛の単一種を有してもよく、またはハロゲン化鉛混合物を正確な比率で含んでもよい。特定の実施形態では、ハロゲン化鉛混合物は、ヨウ化物、臭化物、塩化物、またはフッ化物の0.001~100モル%の任意の二元、三元、または四元比を有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛混合物は、約10:90mol:mol比の塩化鉛(II)およびヨウ化鉛(II)を有してもよい。別の実施形態では、ハロゲン化鉛混合物は、約5:95、約7.5:92.5、または約15:85mol:mol比で、塩化鉛(II)およびヨウ化鉛(II)を有してもよい。
【0182】
あるいは、他の鉛塩前駆体を、ハロゲン化鉛塩とともに、またはその代わりに使用して、前駆体インクを形成してもよい。好適な前駆体塩は、鉛(II)または鉛(IV)と、以下のアニオンとの任意の組み合わせを有してもよい:硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸、アセトニルアセトネート、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラ(パーフルオロフェニル)ホウ酸塩、ヒドリド、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン化物、シアン酸塩、イソシアネート、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、トリシアノメタニド、アミド、および過マンガン酸塩。
【0183】
前駆体インクは、さらに、上記アニオンの塩として、以下の金属イオンに対し、モル比0~100%の鉛(II)または鉛(IV)の塩を有してもよい:Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZr。
【0184】
次に、溶媒が添加され、鉛固体が溶解され、ハロゲン化鉛前駆体インクが形成されてもよい。好適な溶媒は、これに限られるものではないが、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせが含まれる。ある実施形態では、鉛固体は、乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解される。鉛固体は、約20~約150℃の温度で溶解され得る。一実施形態では、鉛固体は、約85℃で溶解する。鉛固体は、溶液を形成するため、必要なだけ溶解することができ、これは、最大約72時間にわたって行われてもよい。得られた溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクのベースを形成する。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約0.001M~約10Mのハロゲン化鉛濃度を有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約1Mのハロゲン化鉛濃度を有する。
【0185】
必要な場合、ハロゲン化鉛前駆体インクにある添加剤を添加して、最終的なペロブスカイトの結晶性および安定性に影響を与えてもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、さらに、アミノ酸(例えば、5-アミノ吉草酸、ヒスチジン、グリシン、リジン)、アミノ酸ハロゲン化水素(例えば、5-アミノ吉草酸塩酸塩)、IFL表面改質(SAM)剤(例えば、明細書において前述したもの)、またはこれらの組み合わせを有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクに塩化ホルムアミジニウムが添加されてもよい。他の実施形態では、本願の前述のいずれかのカチオンのハロゲン化物が使用されてもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクに、例えば、塩化ホルムアミジニウムおよび5-アミノ吉草酸塩酸塩の組合せを有する添加剤が添加されてもよい。
【0186】
ハロゲン化鉛前駆体インクには、得られるペロブスカイト材料の所望の特性に応じた各種濃度で、塩化ホルムアミジニウムおよび/または5-アミノ吉草酸塩酸塩を含む添加剤が添加されてもよい。ある実施形態では、添加剤は、約1nM~約1Mの濃度で添加されてもよい。別の実施形態では、添加剤は、約1μM~約1Mの濃度で添加されてもよい。別の実施形態では、添加剤は、約1μM~約1mMの濃度で添加されてもよい。
【0187】
ある実施形態では、第1族金属のハロゲン化物溶液が形成され、ハロゲン化鉛前駆体インクに添加される。ある量の第1族の金属ハロゲン化物が、清浄なお乾燥容器中で、制御された雰囲気環境下で収集される。好適な第1族金属ハロゲン化物には、これに限られるものではないが、ヨウ化セシウム、臭化セシウム、塩化セシウム、フッ化セシウム、ヨウ化ルビジウム、臭化ルビジウム、塩化ルビジウム、フッ化ルビジウム、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、フッ化カリウムが含まれる。第1族の金属ハロゲン化物は、第1族の金属ハロゲン化物の単一種を有してもよく、または第1族の金属ハロゲン化物の混合物を正確な比率で有してもよい。ある実施形態では、第1族金属のハロゲン化物は、ヨウ化セシウムを有してもよい。別の実施形態では、第1族金属のハロゲン化物は、ヨウ化ルビジウムを有してもよい。別の実施形態では、第1族金属のハロゲン化物は、ヨウ化ナトリウムを有してもよい。別の実施形態では、第1族金属のハロゲン化物は、ヨウ化カリウムを含んでもよい。
【0188】
あるいは、他の第1族金属塩前駆体を、第1族金属ハロゲン化物塩とともに、またはその代わりに使用して、第1族金属塩溶液を形成してもよい。好適な前駆体第1族金属塩は、任意の第1族金属と、以下のアニオンの組み合わせを有してもよい:硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ホスフェート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラ(パーフルオロフェニル)ホウ酸塩、ヒドリド、酸化物、過酸化物、ヒドロキシド、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン化物、シアン酸塩、イソシアネート、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアノンメタニド、トリシアノメタニド、アミド、および過マンガン酸塩。
【0189】
次に、容器に溶媒が添加され、第1族金属ハロゲン化物固体が溶解し、第1族金属ハロゲン化物溶液が形成されてもよい。好適な溶媒には、これに限られるものではないが、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせが含まれる。ある実施形態では、鉛固体は、乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解される。第1族金属ハロゲン化物固体は、約20~約150℃の温度で溶解されてもよい。ある実施形態では、第1族金属ハロゲン化物固体は、室温(すなわち、約25℃)で溶解される。第1族金属ハロゲン化物固体は、溶液を形成するために必要な場合、最大約72時間にわたって溶解されてもよい。得られた溶液は、第1族金属ハロゲン化物溶液を形成する。ある実施形態では、第1族金属ハロゲン化物溶液は、約0.001M~約10Mの間の第1族金属ハロゲン化物濃度を有してもよい。ある実施形態では、第1族金属ハロゲン化物溶液は、約1Mの第1族金属ハロゲン化物濃度を有する。ある態様において、第1族金属ハロゲン化物溶液は、さらに、アミノ酸(例えば、5-アミノ吉草酸、ヒスチジン、グリシン、リジン)、アミノ酸ハロゲン化水素酸(例えば、5-アミノ吉草酸塩酸塩)、IFL表面改質(SAM)剤(例えば、明細書において前述したもの)、またはこれらの組み合わせを有してもよい。
【0190】
次に、ハロゲン化鉛溶液と第1族金属ハロゲン化物溶液が混合され、薄膜前駆体インクが形成される。ハロゲン化鉛溶液および第1族金属ハロゲン化物溶液は、得られる薄膜前駆体インクがハロゲン化鉛のモル濃度の0%~25%の間の第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有するような比率で、混合されてもよい。特定の実施形態において、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の1%に当たる、第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態において、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の5%に当たる、第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態において、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の10%に当たる、第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態において、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の15%に当たる、第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態において、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の20%に当たる、第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態において、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の25%に当たる、第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛溶液および第1族金属ハロゲン化物溶液は、混合中または混合後に、撹拌されてもよい。
【0191】
ある実施形態では、必要な場合、ハロゲン化鉛前駆体インクに水を添加してもよい。説明のためであって、特定の理論または機構に開示を限定するものではないが、水の存在は、ペロブスカイト薄膜結晶成長に影響を及ぼす。通常の環境下では、水は、空気から蒸気として吸収され得る。しかしながら、特定の濃度において、ハロゲン化鉛前駆体インクに水を直接添加することにより、ペロブスカイトPVの結晶化度を制御することができる。好適な水には、蒸留水、脱イオン水、または実質的に(鉱物を含む)汚染物質を含まない、任意の他の水源が含まれる。光I-V走査に基づき、ペロブスカイトPVの光-電力変換効率は、水の添加により、完全に乾燥した装置と比べてほぼ3倍になることが認められている。
【0192】
水は、得られるペロブスカイト材料の所望の特性に応じて、各種濃度でハロゲン化鉛前駆体インクに添加されてもよい。ある実施形態において、水は、約1nL/mL~約1mL/mLの濃度で添加されてもよい。別の実施形態では、水は、約1μL/mL~約0.1mL/mLの濃度で添加されてもよい。別の実施形態では、水は、約1μL/mL~約20μL/mLの濃度で添加されてもよい。
【0193】
次に、ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクが、所望の基板上に堆積されてもよい。好適な基板層は、本開示の前に知られている任意の基板層を有してもよい。前述のように、ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクは、これに限られるものではないが、以下を介した各種手段で堆積されてもよい:ドロップキャスティング、スピンキャスティング、スロットダイ印刷、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷。特定の実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクは、約5秒~約600秒の期間にわたって、約500rpm~約10000rpmの速度で、基板上にスピンコートされてもよい。一実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクは、約30秒間、約3000rpmで、基板上にスピンコートされてもよい。ある実施形態では、前駆体インクの複数の後続の成膜が行われ、薄膜層が形成されてもよい。ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクは、約0%の相対湿度から約50%の相対湿度範囲の周囲雰囲気で、基板上に堆積されてもよい。次に、ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクは、実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満の雰囲気中で乾燥され、薄膜が形成されてもよい。
【0194】
ハロゲン化鉛前駆体または薄膜前駆体の堆積後、前述のバルキーな有機カチオン(例えば、ベンジルアンモニウム、フェニルエチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、n-ブチルアンモニウム;ブタン-1,4-ジアンモニウム;1-ペンチルアンモニウム;1-ヘキシルアンモニウム;ポリ(ビニルアンモニウム);フェニルエチルアンモニウム;3-フェニル-1-プロピルアンモニウム;4-フェニル-1-ブチルアンモニウム;1,3-ジメチルブチルアンモニウム;3,3-ジメチルブチルアンモニウム;1-ヘプチルアンモニウム;1-オクチルアンモニウム;1-ノニルアンモニウム;1-デシルアンモニウム;1-イコサニルアンモニウム;または本願に記載されもしくは
図17乃至28に示されている、任意の他のバルキーなカチオン)の塩溶液が、薄膜に設置され、鉛塩前駆体および第2の塩前駆体の堆積が生じてもよい。バルキーな有機塩には、ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸塩、アセトニルアセトネート、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラ(パーフルオロフェニル)ホウ酸塩、ヒドリド、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、ヒ素化物、ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン化物、シアン酸塩、イソシアネート、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノンメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、トリシアノメタニド、アミド、および/または前述のカチオンの任意の過マンガン酸塩が含まれ得る。バルキーな有機カチオン塩溶液は、アルコール、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせのような溶媒中に、バルキーな有機カチオン塩を溶解することにより、形成されてもよい。特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩は、イソプロピルアルコールに溶解されてもよい。特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、0.0001M~1.0Mの濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。別の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、0.01M~0.1Mの濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、0.02~0.05Mの濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、約0.05Mの濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。バルキーな有機カチオン塩溶液は、溶液堆積に関して本願に記載された任意の方法により、ペロブスカイト材料前駆体薄膜の上に堆積されてもよい。これらの方法には、スプレーコーティング、ドロップキャスティング、スピンキャスティング、スロットダイ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、またはインクジェット印刷が含まれてもよい。ある実施形態において、バルキーな有機カチオン塩は、1-ブチルアンモニウムヨウ化物であってもよい。別の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩は、ヨウ化ベンジルアンモニウムであってもよい。さらに別の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩は、フェニルエチルアンモニウムヨウ化物であってもよい。
【0195】
次に、薄膜は、約20℃~約300℃の温度で、最大約24時間、熱アニールされてもよい。ある実施形態では、薄膜は、約50℃の温度で約10分間熱アニールされてもよい。次に、変換プロセスにより、ペロブスカイト材料活性層が完成されてもよい。変換プロセスでは、溶媒または溶媒の混合物(例えば、DMF、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、クロロホルムクロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、水)と、0.001M~10Mの濃度の塩(例えば、メチルアンモニウムヨウ化物、ホルムアミジニウムヨウ化物、グアニジニウムヨウ化物、1,2,2-トリアミノビニルアンモニウムヨウ化物、5-アミノ吉草酸塩酸塩)とを含む溶液を用いて、前駆体フィルムが浸漬またはリンスされる。また、ある実施形態では、薄膜は、本段落の第1行と同じ方法で熱的にポストアニール処理されてもよい。
【0196】
ある実施形態では、薄膜が堆積され、アニールされた後、第2の塩前駆体(例えば、ヨウ化ホルムアミジニウム、チオシアン酸ホルムアミジニウム、またはチオシアン酸グアニジニウム)が、鉛塩薄膜上に堆積されてもよい。ここで、薄膜は、周囲温度とほぼ等しい温度を有してもよく、または0℃から500℃の間の制御された温度を有してもよい。第2の塩前駆体は、周囲温度または約25℃~125℃に加熱された温度で堆積されてもよい。第2の塩前駆体は、従来の知られた各種方法で、成膜されてもよい。この方法には、これに限られるものではないが、スピンコーティング、スロットダイ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、スパッタリング、PE-CVD、熱蒸着、またはスプレーコーティングが含まれる。ある実施形態では、第2の塩溶液の複数の後続の堆積が実施され、薄膜層が形成されてもよい。ある実施形態では、第2の塩前駆体は、1または2以上の溶媒を含む溶液であってもよい。例えば、第2の塩前駆体は、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせの1または2以上を有してもよい。
【0197】
ある実施形態では、本願に記載の任意のバルキーな有機カチオン塩は、第2の塩溶液の堆積前に第2の塩溶液と組み合わされてもよい。ある実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液が前述のように調製され、第2の塩溶液の堆積前に第2の塩溶液と混合されてもよい。例えば、バルキーな有機カチオン塩溶液は、0.0001M~1.0Mの濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。別の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、0.01M~0.1Mの濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。ある実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、0.02~0.05Mの濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、約0.05Mの濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。他の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクの堆積後に形成されるハロゲン化鉛薄膜上に堆積されてもよい。別の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、第2の塩溶液の堆積後に、ペロブスカイト前駆体薄膜上に堆積されてもよい。
【0198】
最後に、ペロブスカイト材料前駆体薄膜を有する基板は、アニールされてもよい。基板をアニールすることにより、鉛塩前駆体および第2の塩前駆体が、バルキーな有機カチオンの表面不動態化層を有するペロブスカイト材料(例えば、FAPbI3、GAPb(SCN)3、FASnI3)に変換されてもよい。アニール処理は、周囲圧力の各種雰囲気(例えば、高度および大気条件に応じて、約1気圧(760Torr))、または大気または周囲圧力未満の圧力(例えば、1mTorr~500mTorr)において、実施されてもよい。アニール雰囲気は、周囲空気、制御された湿度環境(例えば、ガスの0~100gのH2O/m3)、純アルゴン、純窒素、純酸素、純水素、純ヘリウム、純ネオン、純クリプトン、純CO2、または前述のガスの任意の組み合わせを有してもよい。制御された湿度環境は、絶対湿度または%相対湿度が固定値に保持される環境、あるいは絶対湿度または%相対湿度が所定の設定点もしくは所定の機能によって変化する、環境を有してもよい。特定の実施形態では、アニール処理は、0%以上50%以下の相対湿度を有する制御された湿度環境において実施されてもよい。他の実施形態では、アニール処理は、0g H2O/m3以上、20g H2O/m3以下のガスを含む、制御された湿度環境において実施されてもよい。ある実施形態では、アニール処理は、50℃以上300℃以下の温度で実施されてもよい。
【0199】
例えば、特定の実施形態では、FAPbI3ペロブスカイト材料は、以下のプロセスで形成されてもよい。まず、スピンコーティング、ブレードコーティング、またはスロットダイ印刷により、無水DMF中に溶解した約90:10のモル比のPbI2対PbCl2を含むハロゲン化鉛(II)前駆体が基板上に堆積される。実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満またはH2O/m3が17g未満の雰囲気において、ハロゲン化鉛前駆体インクが約1時間(±15分)、乾燥され、薄膜が形成される。次に、約50℃(±10℃)の温度において、薄膜は、約10分間熱アニールされてもよい。他の実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体は、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、スパッタリング、PE-CVD、原子層堆積、熱蒸着、またはスプレーコーティングにより、堆積されてもよい。次に、ハロゲン化鉛薄膜上に、イソプロピルアルコール中に0.05Mの濃度を有する1-ブチルアンモニウム塩溶液が、堆積されてもよい。次に、スピンコーティングまたはブレードコーティングにより、ハロゲン化鉛薄膜上に、無水イソプロピルアルコールに溶解した15~100mg/mL濃度のホルムアミジニウムヨウ化物を有するホルムアミジニウムヨウ化物前駆体が、堆積されてもよい。他の実施形態では、ヨウ化ホルムアミジニウム前駆体は、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、スロットダイ印刷、スパッタリング、PE-CVD、原子層堆積、熱蒸着、またはスプレーコーティングにより、堆積されてもよい。次に、約25%の相対湿度(約4~7gのH2O/m3ガス)、および約100~200℃の間で基板がアニールされ、1-ブチルアンモニウムの表面層を有する、ヨウ化ホルムアミジニウム鉛(FAPbI3)ペロブスカイト材料が形成される。別の実施形態では、1-ブチルアンモニウム塩溶液は、ヨウ化ホルムアミジニウム前駆体の堆積後に形成された薄膜上に堆積されてもよい。別の実施形態では、1-ブチルアンモニウム塩溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクの堆積の前に、ハロゲン化鉛前駆体インクと組み合わされてもよい。さらに別の実施形態では、1-ブチルアンモニウム塩溶液は、ホルムアミジニウムヨウ化物前駆体の堆積の前に、ホルムアミジニウムヨウ化物前駆体と組み合わされてもよい。さらに別の実施形態では、1-ブチルアンモニウム塩溶液は、ヨウ化ホルムアミジニウム前駆体の堆積後であって、薄膜および基板をアニールする前に、薄膜上に堆積されてもよい。さらに別の実施形態では、1-ブチルアンモニウム塩溶液は、薄膜および基板をアニールした後に、薄膜上に堆積されてもよい。
【0200】
他の実施形態では、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化セシウム溶液、ヨウ化メチルアンモニウム(MA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を用い、前述の方法により、CsiMAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0から1の間の数字に等しく、表面層は、1-ブチルアンモニウムである。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化ルビジウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を使用して、RbiFAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しく、表面層は、1-ブチルアンモニウム層である。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化セシウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を用い、前述の方法により、CsiFAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しく、表面層は、1-ブチルアンモニウム層である。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化カリウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を使用して、KiFAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しく、表面層は、1-ブチルアンモニウム層である。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化ナトリウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を使用して、NaiFAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しく、表面層は、1-ブチルアンモニウム層である。別の例として、ヨウ化鉛(II)鉛-塩化物(II)混合液、ヨウ化セシウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を使用して、CsiFAPbI3-yClyの一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しく、yは、0から3の間の数字を表し、表面層は、1-ブチルアンモニウム層である。
【0201】
別の実施形態では、FAPbI3ペロブスカイト材料は、以下の方法により形成されてもよい。まず、スピンコーティング、ブレードコーティング、またはスロットダイ印刷により、無水DMF中に溶解したPbCl2に対するPbI2が約90:10のモル比のハロゲン化鉛前駆体インクが基板上に堆積されてもよい。ハロゲン化鉛前駆体インクは、実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満、または17g未満のH2O/m3雰囲気において、約1時間(±15分)乾燥され、薄膜が形成されてもよい。次に、薄膜は、約50℃(±10℃)の温度で約10分間、熱アニールされてもよい。他の実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体は、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、スパッタリング、PE-CVD、原子層堆積、熱蒸着、またはスプレーコーティングにより、堆積されてもよい。次に、スピンコーティングまたはブレードコーティングにより、無水イソプロピルアルコールに溶解した15~60mg/mL濃度のホルムアミジニウムヨウ化物を有するホルムアミジニウムヨウ化物前駆体が、ハロゲン化鉛薄膜上に堆積されてもよい。他の実施形態では、ヨウ化ホルムアミジニウム前駆体は、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、スロットダイ印刷、スパッタリング、PE-CVD、原子層堆積、熱蒸着、またはスプレーコーティングにより、堆積されてもよい。ハロゲン化鉛前駆体およびヨウ化ホルムアミジニウム前駆体を堆積した後、ペロブスカイト材料前駆体薄膜上に、イソプロピルアルコール中に0.04Mの濃度を有するベンジルアンモニウム塩溶液が堆積されてもよい。次に、基板は、約25%の相対湿度(約4~7gのH2O/m3ガス)、および約100~200℃の間でアニール処理され、ベンジルアンモニウムの表面層とともに、ヨウ化ホルムアミジニウム鉛(FAPbI3)ペロブスカイト材料が形成されてもよい。特定の実施形態では、ベンジルアンモニウム塩溶液は、ヨウ化ホルムアミジニウム前駆体の堆積の前に、ハロゲン化鉛薄膜上に堆積されてもよい。別の実施形態では、ベンジルアンモニウム塩溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクの堆積の前に、ハロゲン化鉛前駆体インクと組み合わされてもよい。さらに別の実施形態では、ベンジルアンモニウム塩溶液は、ホルムアミジニウムヨウ化物前駆体の堆積の前に、ホルムアミジニウムヨウ化物前駆体と組み合わされてもよい。ある実施形態では、得られたペロブスカイト材料は、表面から離れたバルク材料中に、立方晶構造を有してもよい。ペロブスカイト材料の表面近傍にバルキーな有機カチオンが存在する場合、ペロブスカイト材料の表面近傍に非立方晶の構造が生じてもよい。
【0202】
他の実施形態では、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化セシウム溶液、ヨウ化メチルアンモニウム(MA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を用いて、前述のプロセスにより、CsiMAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しく、表面層は、ベンジルアンモニウム層である。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化ルビジウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、およびベンジルアンモニウム塩溶液を用いて、前述のプロセスにより、RbiFAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しく、表面層は、ベンジルアンモニウム層である。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化セシウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、およびベンジルアンモニウム塩溶液を用いて、前述のプロセスにより、CsiFAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しく、表面層は、ベンジルアンモニウム層である。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化カリウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、およびベンジルアンモニウム塩溶液を用いて、前述のプロセスにより、KiFAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しく、表面層は、ベンジルアンモニウム層である。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化ナトリウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、およびベンジルアンモニウム塩溶液を用いて、前述のプロセスにより、NaiFAPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しく、表面層は、ベンジルアンモニウム層である。別の例として、ヨウ化鉛(II)-塩化鉛(II)混合液、ヨウ化セシウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、およびベンジルアンモニウム塩溶液を用いて、前述のプロセスにより、CsiFAPbI3-yClyの式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数字に等しく、yは、0~3の間の数字を表し、表面層は、ベンジルアンモニウム層である。
【0203】
以下、ベンジルアンモニウムを用いてペロブスカイト材料を製造する方法について説明する。まず、PbI2、PbCl2、およびヨウ化セシウム(CsI)をDMFおよびDMSO溶媒の混合物中に溶解することにより、ヨウ化鉛前駆体インクが調製される。ヨウ化鉛前駆体を調製するため、CsIをDMSO中に溶解することにより、1.5MのCsI/DMSO溶液が調製される。特定の実施形態では、CsI/DMSO溶液は、室温で1時間~2.5時間、1.5mmolのCsI/1.0mLの無水DMSOの比率で、DMSO中でCsIを撹拌することにより、調製されてもよい。次に、前述のCsI溶液がPbI2、PbCl2、および無水DMF溶媒の溶液に添加され、1.28MのPb2+溶液が形成される。Pbに対するCsの比は、1:10であり、Clに対するIの比は、9:1である。ある実施形態では、1.28MのPb2+溶液は、CsI溶液の各93.8μLに対して、1.26mmolのPbI2、0.14mmolのPbCl2、および1.0mLの無水DMF溶媒を有する容器にCsI溶液を添加することにより、調製されてもよい。Pb2+溶液は、冷却前に50℃~100℃の温度で1.5時間~2.5時間混合され、ヨウ化鉛前駆体インクが形成される。特定の実施形態では、Pb2+溶液は、85℃で2時間撹拌された後、室温環境で1時間撹拌することにより、冷却されてもよい。ある態様では、ヨウ化鉛前駆体インクは、ヨウ化鉛前駆体インクの堆積の前に濾過されてもよい。特定の実施形態では、ヨウ化鉛前駆体インクの濾過に、0.2μmのフィルタが使用されてもよい。
【0204】
無水イソプロパノール(IPA)にホルムアミジニウムヨウ化物(FAI)およびベンジルアンモニウムヨウ化物(BzAI)塩を溶解することにより、ホルムアミジニウムヨウ化物(FAI)およびベンジルアンモニウムヨウ化物(BzAI)溶液が調製され、それぞれ、0.2MのFAI溶液および0.05MのBzAI溶液が形成される。特定の実施形態では、FAIおよびBzAI溶液の両方は、以下のコーティングプロセスの間、75℃に保持されてもよい。
【0205】
次に、ヨウ化鉛前駆体インクが基板上に堆積され、その後アニールされ、ヨウ化鉛膜が形成される。特定の実施形態では、45℃に保持されたヨウ化鉛前駆体インクは、酸化ニッケル(NiO)薄膜層で被覆された基板上にブレードコートされ、続いて50℃で10分間アニールされ、ヨウ化鉛膜が形成されてもよい。
【0206】
次に、ペロブスカイト材料層を形成するため、最初に、ヨウ化鉛フィルムがBzAI溶液の1コートで下塗りされ、続いてFAI溶液の3コートで下塗りされる。BzAI溶液およびFAI溶液の各被覆の堆積に続いて、コーティングは、乾燥され、以下のコーティングが堆積される。特定の実施形態では、BzAIおよびFAI溶液の両方は、各それぞれのコーティングの堆積中に45℃に保持されてもよい。第3のFAIコーティングが堆積された後、基板およびコーティングがアニール処理され、ペロブスカイト材料層が形成されてもよい。特定の実施形態では、第3のFAIが堆積された後、基板は、直ちに157℃で5分間加熱され、ペロブスカイト材料層がアニールされる。
【0207】
前述の方法は、いくつかの利点を有し得る。例えば、FAI溶液の堆積前にBzAI溶液をヨウ化鉛フィルム上に堆積させることにより、2Dのペロブスカイト材料の形成による3DのFAPbI
3ペロブスカイト材料の成長のための中間テンプレートが提供され得る。BzAIは、ヨウ化鉛薄膜と反応して、中間の2Dペロブスカイト材料相が形成されてもよい。FAI溶液の蒸着後にFAIと反応すると、2D相中のBzA
+カチオンは、FA
+カチオンと完全に、または部分的に置換され、3DのFAPbI
3フレームワークが形成される。また、BzAIは、3DのFAPbI
3ペロブスカイト材料内の結晶欠陥を不動態化してもよい。前述のプロセスにより形成されたFAPbI
3薄膜のフォトルミネセンス強度は、BzAIを含まないプロセスにより形成されたFAbI
3薄膜に比べて、より明るい(高い)。
図31には、BzAIを追加せずに形成されたペロブスカイト材料光起電力装置3105と、前述のBzAIを用いて形成されたペロブスカイト材料光起電力装置3110の両方の光学(吸光度)画像およびフォトルミネセンス画像を示す。
図31には、ペロブスカイト材料光起電力装置3110の光学画像はより暗く、より高い光吸光度が示唆されること、およびペロブスカイト材料光起電力装置3110のフォトルミネセンス画像は、ペロブスカイト材料光起電力装置3105より明るいことが示されている。また、電力出力は、BzAIを組み込んだペロブスカイト材料光起電力装置からの方が大きいことが観測されている。
図32には、光起電力装置3105のような、BzAIを含まない光起電力装置に対応する電力出力曲線3205、および本願に記載の光起電力装置3110のような、BzAIを有する光起電力装置に対応する電力出力曲線3210が示されている。
図32に示された電力出力測定値は、定常状態の特性を示すため、30秒間の暗状態測定を介在させた、180秒間の100mW/cm
2AM1.5G照明下の最大電力点で測定される。
図32からわかるように、製造中にBzAIを組み込んだ光起電力デバイスは、BzAIを含まない光起電力デバイス(15.0mW/cm
2、770mV、および19.5mA/cm
2)に比べて、単位面積当たりの電力(16.0mW/cm
2)、電圧(785mV)、および単位面積当たりの電流(20.3mA/cm
2)が大きくなる。
図33には、サンプル「5r」線としてラベル化された、BzAIを含まずに製造されたペロブスカイト材料光起電力装置、およびサンプル「10r」線としてラベル化された、BzAIを有するように製造されたペロブスカイト材料光起電力装置の電流-電圧(I-V)走査3320を示す。
図33からわかるように、BzAIを用いて製造されたペロブスカイト材料光起電力装置は、BzAIを用いずに製造されたペロブスカイト材料光起電力装置よりも、ある範囲のバイアス電圧にわたって、nより大きな電流を形成する。さらに、
図34には、BzAIを用いずに製造された6つのペロブスカイト材料光起電力装置(サンプル5、r=リバーススキャン、f=フォワードスキャン、およびs=定常状態測定)と、BzAIを用いて製造された6つのペロブスカイト材料光起電力装置(サンプル10)とにおける、開回路電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、充填率(FF)、および電力変換効率(PCE)に関するボックスプロットを示す。
図35には、BzAIなしで製造された6つのペロブスカイト材料光起電力装置(プロット3505)と、BzAIありで製造された6つのペロブスカイト材料光起電力装置(プロット3510)との外部量子効率(EQE)を示す。
図35の各EQE曲線は、統合され、mA/cm
2単位でのJscが推定される。BzAIありで製造されたペロブスカイト材料デバイスは、BzAIなしで製造されたペロブスカイト材料デバイスよりも高いJsc(EQE曲線下の面積)を示すことが示されている。最後に、
図36には、BzAIなしで製造されたペロブスカイト材料光起電性デバイスのアドミタンス分光プロット3605、およびBzAIありで製造されたペロブスカイト材料光起電性デバイスのアドミタンス分光プロット3610が示されている。アドミタンス分光プロット3610には、ベンジルアンモニウムを含まないサンプル装置のアドミタンス分光プロット3605と比較した場合の、ベンジルアンモニウムを有するサンプル装置の抑制されたイオン移動が示されている。過度なイオン移動は、ペロブスカイト材料デバイスの特性および耐久性に有害な影響を及ぼすことが知られており、ペロブスカイト材料光起電力装置にベンジルアンモニウムを含有させると、装置特性および耐久性が向上する可能性があるこが示唆される。
【0208】
(ジアンモニウムブタンカチオン強化ペロブスカイト)
ペロブスカイト材料の結晶構造への1,4-ジアンモニウムブタン、または後述する他のポリアンモニウム有機化合物の導入により、その材料の特性が改善されてもよい。ある実施形態では、以下に記載するような、1,4-ジアンモニウムブタンのFAPbI3ペロブスカイトへの添加により、有利な特性を有するペロブスカイト材料が提供されてもよい。ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタンは、前述のプロセスにおいて、バルキーな有機カチオン塩の代わりに、1,4-ジアンモニウムブタン塩を用いて、ペロブスカイト材料に導入されてもよく、1,4-ジアンモニウムブタン塩(または本願に記載の他の有機ポリアンモニウム塩)の添加は、前述のバルキーな有機カチオン塩の添加が行われるペロブスカイトの製造方法の任意の段階で行われてもよい。1,4-ジアンモニウムブタンのような有機カチオンをペロブスカイト材料の結晶構造に含有させることにより、本願に開示のペロブスカイト材料の「理想的な」化学量論比から逸脱した、ペロブスカイト材料の一般式が得られる。例えば、そのような有機カチオンの含有により、ペロブスカイト材料は、一般式FAPbI3で表される、化学量論的または超化学量論的な一般式を有してもよい。この場合、ペロブスカイト材料の一般式は、CxMyXzで表されてもよい。ここで、x、yおよびzは、実数である。
【0209】
ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩溶液は、堆積前にハロゲン化鉛前駆体インク溶液に添加されてもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、0.001mol%~50mol%の濃度で、ハロゲン化鉛前駆体インク溶液に添加されてもよい。ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、0.1mol%~20mol%の濃度で、ハロゲン化鉛前駆体インク溶液に添加されてもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、1mol%~10mol%の濃度で、ハロゲン化鉛前駆体インク溶液に添加されてもよい。
【0210】
別の実施形態では、前述のように、ホルムアミジニウム塩溶液をハロゲン化鉛前駆体薄膜と接触させる前に、1,4-ジアンモニウムブタン塩をホルムアミジニウム塩溶液に添加してもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、0.001mol%~50mol%の濃度でヨウ化ホルムアミジニウム塩溶液に添加されてもよい。ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、0.1mol%~20mol%の濃度でヨウ化ホルムアミジニウム塩溶液に添加されてもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、1mol%~10mol%の濃度でヨウ化ホルムアミジニウム塩溶液に添加されてもよい。
【0211】
他の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクの堆積後に形成されたハロゲン化鉛薄膜上に堆積され、またはホルムアミジニウム塩溶液の堆積後にペロブスカイト前駆体薄膜上に堆積されてもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体溶液は、0.001mol%~50mol%の濃度を有してもよい。ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体溶液は、0.1mol%~20mol%の濃度を有してもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体溶液は、1mol%~10mol%の濃度を有してもよい。
【0212】
1,4-ジアンモニウムブタンを有するペロブスカイト材料を堆積させる例示的な方法は、基板に鉛塩前駆体を堆積させて鉛塩薄膜を形成するステップと、第1の有機カチオン塩を有する有機カチオン塩前駆体を前記鉛塩薄膜に堆積させ、ペロブスカイト前駆体薄膜を形成するステップと、を有する。鉛塩前駆体または有機カチオン塩前駆体は、1,4-ジアンモニウムブタン塩を含んでもよく、または1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体を、鉛塩薄膜またはペロブスカイト前駆体薄膜上に堆積させてもよい。最後に、基板およびペロブスカイト前駆体薄膜がアニール処理され、1,4-ジアンモニウムブタンを有するペロブスカイト材料が形成されてもよい。鉛塩前駆体および有機カチオン塩前駆体は、ペロブスカイト薄膜を形成するために使用される、本願に記載の任意の溶液を有してもよい。
【0213】
1,4-ジアンモニウムブタンは、そのアンモニウム基同士の間の長さが、ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料の結晶格子におけるホルムアミジニウムカチオン同士の間で発生するものとほぼ同じで長さである。従って、1,4-ジアンモニウムブタンは、FAPbI3材料の形成中に、2つのホルムアミジニウムイオンを置換してもよい。別の実施形態では、ペロブスカイト材料の形成中に、ハロゲン化鉛前駆体インクに他のアルキルポリアンモニウム塩を添加してもよい。例えば、1,8ジアンモニウムオクタン、ビス(4-アミノブチル)アミン、およびトリス(4-アミノブチル)アミンを添加してもよい。また、1,4-ジアンモニウムブタンを有するポリアンモニウムポリカチオンは、バルキーな有機カチオンに関して前述したものと同様の機構により、前述のバルキーな有機カチオンと同じ利点を提供してもよい。
【0214】
図13は、ペロブスカイト材料を製造するプロセス中の1,4-ジアンモニウムブタン塩の添加が、得られるペロブスカイト7000に及ぼす効果を示す、図式化された図である。
図13に示すように、1,4-ジアンモニウムブタンカチオン7020は、ペロブスカイト材料結晶格子において2つのホルムアミジニウムカチオン7010を置換してもよい。FAPbI
3ペロブスカイトでは、ホルムアミジニウムカチオン間の間隔は、約6.35Åである。1,4-ジアンモニウムブタンカチオンの長さは、約6.28Åであり、差はわずか0.07Åである。従って、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、ペロブスカイト結晶格子の特性または構造をあまり変化させずに、ペロブスカイト結晶格子に置換してもよい。ある実施形態では、ペロブスカイト材料への1,4-ジアンモニウムブタンカチオンの添加により、ペロブスカイト材料の特性および安定性が高められてもよい。1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、ペロブスカイト材料内の剛性構造として作用し、その構造的および化学的耐久性が上昇する。例えば、ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンを添加したペロブスカイト材料は、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンを添加しないペロブスカイト材料に比べて、優れた乾燥熱安定性を示してもよい。また、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンを添加したペロブスカイト材料は、ペロブスカイト材料の発光スペクトルにおいて、青色のシフトを示してもよい。ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、0~20mol%の濃度でホルムアミジニウム塩溶液に添加されてもよい。別の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、1~5mol%の濃度でホルムアミジニウム塩溶液に添加されてもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、5mol%の濃度でホルムアミジニウム塩溶液に添加された。
【0215】
ペロブスカイト材料に対して最大20%まで1,4-ジアンモニウムブタンを添加した場合、格子パラメータがあまりシフトしないという、実験的証拠が示されている。
図14には、0mol%、5mol%、10mol%および20mol%の1,4-ジアンモニウムブタン(「DABI」)を有するペロブスカイトのX線回折ピーク(XRD)を示す。各濃度において、主なピークは同じ点で生じ、これは、ペロブスカイト材料の格子パラメータは、0mol%と20mol%の間の濃度の1,4-ジアンモニウムブタンの添加により、あまり変化しないことを示唆している。1,4-ジアンモニウムブタンの添加は、Cu-Kα放射線で13°未満の2θ位置に、小強度の回折を形成し、これは、少量の2Dまたは層状ペロブスカイト相を表している。
【0216】
図15には、0%の相対湿度で85℃の温度に7日間曝露された、0mol%、1mol%、2.5mol%および5mol%のペロブスカイトサンプルの画像を示す。0mol%のDABIを有するペロブスカイト材料は、1日後に顕著に明るい色を示し、7日後にはさらに顕著な黄色を示した。これは、0mol%のDABIを有するペロブスカイト材料は、試験条件に曝露された1日後に、大きく劣化したことを示す。1mol%、2.5mol%および5mol%を有するペロブスカイト材料のサンプルは、全て7日後にも暗いままであり、これは、1mol%の少量のDABIの添加でも、ペロブスカイト材料のいわゆる「乾燥熱」安定性が大きく上昇することを示唆するものである。
【0217】
また、ペロブスカイト材料に対する1,4-ジアンモニウムブタンの添加の結果、1,4-ジアンモニウムブタンを含まないペロブスカイト材料と比べた際に、ペロブスカイト材料から認められる、フォトルミネセンスのわずかな青色シフトが生じてもよい。この青色シフトは、1,4-ジアンモニウムブタンの添加により生じる、ペロブスカイト材料内のトラップ状態の不動態化により得られる。この青色シフトは、ペロブスカイト材料に対する1,4-ジアンモニウムブタンの添加により、ペロブスカイト材料の結晶構造に変化が生じずに、ペロブスカイト材料の結晶格子の欠陥密度が低下することを示す。例えば、1,4-ジアンモニウムブタンを含まないFAPbI3ペロブスカイト材料と比較して、20mol%の1,4-ジアンモニウムブタンを添加したFAPbI3ペロブスカイト材料において認められる青色シフトは、1,4-ジアンモニウムブタンを含まない場合の1.538 eVから、20mol%の1,4-ジアンモニウムブタンを有する1.552eVまで、0.014eV変化することが観測されている。
【0218】
別の実施形態では、ペロブスカイト材料の形成の間、他のアンモニウム錯体を添加してもよい。例えば、
図16には、3つのアンモニウム化合物、1,8-ジアンモニウムオクタン、ビス(4-アミノブチル)-アンモニウム、およびトリス(4-アミノブチル)-アンモニウムを示す。これらは、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンに関して前述したものと同じ方法で、ペロブスカイト材料に添加されてもよい。1,8-ジアンモニウムオクタンは、前述のペロブスカイト材料の形成中に導入された場合、FAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子の2つのホルムアミジニウムカチオン(「Aサイト」)の空間を占有してもよい。ビス(4-アミノブチル)-アンモニウムは、前述のペロブスカイト材料の形成中に導入された場合、FAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子の3つのAサイトの空間を占めてもよい。トリス(4-アミノブチル)-アンモニウムは、前述のペロブスカイト材料の形成中に導入された場合、FAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子の4つのAサイトの空間を占めてもよい。
図16A乃至
図16Cには、
図16に示した3つのアンモニウム化合物のFAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子への導入の様式化された図を示す。
図16Aは、FAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子7100に対する1,8-ジアンモニウムオクタンの導入の様式化された図である。
図16Aに示すように、1,8-ジアンモニウムオクタンカチオン7120は、ペロブスカイト材料結晶格子内の2つのホルムアミジニウムカチオン7110を置換してもよい。
図16Bは、FAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子7200に対するビス(4-アミノブチル)-アンモニウムの導入の様式化された図である。
図16Bに示すように、ビス(4-アミノブチル)-アンモニウムカチオン7220は、ペロブスカイト材料結晶格子内の3つのホルムアミジニウムカチオン7210を置換してもよい。
図16Cは、FAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子7300に対するトリス(4-アミノブチル)-アンモニウムの導入の様式化された図である。
図16cに示すように、トリス(4-アミノブチル)-アンモニウムカチオン7320は、ペロブスカイト材料結晶格子内の4つのホルムアミジニウムカチオン7310を置換してもよい。他の実施形態では、2~20個の間の炭素原子の炭素鎖を有するアルキルジアンモニウム錯体が、ペロブスカイト材料に添加されてもよい。ある実施形態では、アンモニウム錯体の組合せがペロブスカイト材料に添加されてもよい。
【0219】
従って、本発明は、言及された目的および利点、ならびに本発明に固有の目的および利点を達成するために好適に適合される。前述の特定の実施形態は、例示的なものに過ぎず、本発明は、本願の教示の利点を有する当業者に明らかである、異なる等価な方法で修正され、実施されてもよい。さらに、添付の特許請求の範囲を除いて、記載された構成または設計の細部は、限定を意図するものではない。従って、開示された特定の例示的な実施形態は、変更または修正することができ、全てのそのような変更は、本発明の範囲および思想の範囲内であると見なされることは明らかである。特に、本願に開示された任意の範囲の値(「約aから約b」、または等価な「約aからb」、または等価な「約a~b」)は、それぞれの値の範囲のべき乗集合(すべてのサブセットの集合)を参照するものとして理解され、値のより広い範囲内に包含される全ての範囲が記載される。また、請求項中の用語は、特許権者による特段の明示的かつ明確な定義がない限り、明白な通常の意味を有する。
【国際調査報告】