(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】造影剤の製剤およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 49/10 20060101AFI20220112BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61K49/10
A61B5/055 383
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529012
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2019082117
(87)【国際公開番号】W WO2020104602
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(71)【出願人】
【識別番号】514298139
【氏名又は名称】バイエル・ファルマ・アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ホルツシュー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・フレンツェル
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール・ヨースト
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・ロルケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・エーベルト
(72)【発明者】
【氏名】トマス・ブルンビー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ハルフブロット
【テーマコード(参考)】
4C085
4C096
【Fターム(参考)】
4C085HH07
4C085JJ01
4C085KA09
4C085KB12
4C096AA11
4C096AD19
4C096FC14
(57)【要約】
本開示は、薬学的に許容される溶媒中の式(I)(式中、Mは、常磁性金属のイオン、好ましくはGd3+イオンであり、R1、R2、R3、R4およびR5は、請求項に定義される通りである)のDO3A誘導テトラキレートを含む液体医薬製剤に関する。本開示は、前記液体医薬製剤の調製方法、および前記液体医薬製剤が関与するイメージング法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体医薬製剤であって、一般式(I):
【化1】
(式中、
R
1は、
【化2】
および
【化3】
(基中、*は、前記分子の残りの部分との前記基の結合点を表し、
R
2、R
3およびR
4は互いに独立して、水素原子、または
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
R
5は、
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
Xは、C(=O)OH基またはC(=O)O
-基を表し、
Mは、常磁性金属のイオンを表す)
から選択される基を表す)
のDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物を含み、
薬学的に許容される溶媒を含み、
かつ緩衝剤を任意選択で含み、
前記DO3A誘導テトラキレートが、前記常磁性金属の前記イオンがGd
3+ではない態様に関して1~1000mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の前記製剤中の濃度を有し、前記常磁性金属の前記イオンがGd
3+でもあり得る態様に関して60~750mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の前記製剤中の濃度を有する、液体医薬製剤。
【請求項2】
一般式(I)(式中、
R
2は、水素原子またはメチル基を表し、
R
3およびR
4はそれぞれ水素原子を表し、
R
5は、
メチル、エチル、イソプロピル、2-メチルプロピル、ベンジル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチルおよびフェニル
から選択される基を表す)
のDO3A誘導テトラキレートを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
式(I)の前記DO3A誘導テトラキレートが、式(I-a)、(I-b)および(I-c):
【化4】
および
【化5】
のキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
式(I)の前記DO3A誘導テトラキレートが、式(I-a):
【化6】
またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物を含む、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項5】
5ppm(m/v)以下の遊離常磁性金属イオンMの濃度を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる少なくとも1種の化合物をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる前記化合物がCa-BT-DO3A(カルコブトロール)であり、好ましくは、前記製剤中の全常磁性金属イオン濃度に対する割合として測定された0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内のCa-BT-DO3A(カルコブトロール)である、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
4.5~8.5(両端を含む)の範囲内のpHを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
クエン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、炭酸塩、トロメタモール(TRIS、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)、HEPES(2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン]エタンスルホン酸)およびMES(2-モルホリノエタンスルホン酸)ならびにそれらの混合物からなる群から選択される緩衝剤を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記常磁性金属イオンMが、24~29または59~70の原子番号を有する常磁性金属のイオンから選ばれる、請求項1、2、5、6、7、8または9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記常磁性金属イオンMがランタニド金属イオンから選ばれる、請求項1、2、5、6、7、8または9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記常磁性金属イオンMがGd
3+イオンである、請求項1、2、5、6、7、8または9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
a)薬学的に許容される溶媒を提供するステップと、
b)任意選択で、緩衝剤を溶解させ、それによって緩衝溶液を得、かつ、任意選択で、前記溶液のpHを7.6~8.2(両端を含む)の範囲内のpHに調整するステップと、
c)任意選択で、遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる化合物を溶解させるステップと、
d)請求項1に定義される式(I)のDO3A誘導テトラキレートを溶解させるステップであって、前記常磁性金属の前記イオンがGd
3+ではない態様について1~1000mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の式(I)の前記DO3A誘導テトラキレートの濃度を有する製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で、および前記常磁性金属の前記イオンがGd
3+でもあり得る態様について60~750mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の式(I)のDO3A誘導テトラキレートの濃度を有する製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で、前記DO3A誘導テトラキレートを溶解させるステップと、
e)任意選択で、等張化剤を前記溶液に溶解させるステップと、
f)任意選択で、前記溶液の前記pHを4.5~8.5(両端を含む)の範囲内のpHに調整するステップと、
g)任意選択で、追加量の前記薬学的に許容される溶媒の添加により、前記式(I)の前記キレートの前記濃度を調整するステップと、
h)任意選択で、前記溶液を滅菌するステップと
を含む、液体医薬製剤を調製する方法。
【請求項14】
a)薬学的に許容される溶媒を提供するステップと、
b)任意選択で、緩衝剤を溶解させ、それによって緩衝溶液を得、かつ、任意選択で、前記溶液のpHを7.6~8.2(両端を含む)の範囲内のpHに調整するステップと、
c)遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる化合物を溶解させるステップと、
d)請求項1に定義される式(I)のDO3A誘導テトラキレートを溶解させるステップであって、1~1000mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の式(I)の前記DO3A誘導テトラキレートの濃度を有する製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で、前記DO3A誘導テトラキレートを溶解させるステップと、
e)任意選択で、等張化剤を前記溶液に溶解させるステップと、
f)任意選択で、前記溶液の前記pHを4.5~8.5(両端を含む)の範囲内のpHに調整するステップと、
g)任意選択で、追加量の前記薬学的に許容される溶媒の添加により、前記式(I)の前記キレートの前記濃度を調整するステップと、
h)任意選択で、前記溶液を滅菌するステップと
を含む、液体医薬製剤を調製する方法。
【請求項15】
第1の溶液を提供するために、前記製剤中の前記常磁性金属イオンの全濃度に対して0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内の遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる、ある量の前記化合物を、前記薬学的に許容される溶媒または水性緩衝溶液に溶解させるステップと、
請求項1に定義される式(I)の前記DO3A誘導テトラキレートを溶解させるステップであって、1mmol常磁性金属イオン/L~1000mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の式(I)の前記DO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で、前記DO3A誘導テトラキレートを第1の溶液に溶解させるステップと
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1の溶液を提供するために、請求項4に定義される式(I-a)のGd
4-DO3A誘導テトラキレートを前記薬学的に許容される溶媒または水性緩衝液に溶解させるステップであって、式(I-a)の前記Gd
4-DO3A誘導テトラキレートが、60~750mmol Gd
3+/L(両端を含む)の範囲内の式(I-a)の前記Gd
4-DO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を生成するのに十分な量で溶解される、ステップ
を含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項17】
第1の溶液を提供するために、前記製剤中の前記常磁性金属イオンの前記全濃度に対して0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内のある量のCa-BT-DO3Aを前記薬学的に許容される溶媒または水性緩衝溶液に溶解させるステップと、
請求項4に定義される式(I-a)のGd
4-DO3A誘導テトラキレートを溶解させるステップであって、1mmol Gd
3+/L~1000mmol Gd
3+/L(両端を含む)の範囲内の式(I-a)の前記Gd
4-DO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で、前記Gd
4-DO3A誘導テトラキレートを第1の溶液に溶解させるステップと
を含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項18】
前記DO3A誘導テトラキレートが、請求項4に記載の式(I-a)の前記Gd
4-DO3A誘導テトラキレートである、請求項13、14または15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる前記化合物がCa-BT-DO3Aである、請求項13、14または15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
造影溶液のpHを4.5~8.5(両端を含む)の範囲内のpHに調整するステップをさらに含む、請求項13、14、15、16、17、18または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項13から20のいずれか一項に記載の方法にしたがって得られた液体医薬製剤。
【請求項22】
個体の全身または身体の一部をイメージングする方法であって、医用イメージング技術により個体の前記全身または前記身体の一部の1つまたは複数の画像を得るステップであり、前記個体の前記全身または前記身体の前記一部が、請求項1から12のいずれか一項に記載の製剤を含み、1つまたは複数の画像の画像コントラストが、一般式(I)の前記DO3A誘導テトラキレートの存在に関連している、ステップを含む、方法。
【請求項23】
液体医薬製剤であって、一般式(I):
【化7】
(式中、
R
1は、
【化8】
および
【化9】
(基中、*は、前記分子の残りの部分との前記基の結合点を表し、
R
2、R
3およびR
4は互いに独立して、水素原子、または
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
R
5は、
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
XはC(=O)O
-基を表し、
各MはGd
3+イオンを表す)
から選択される基を表す)
のDO3A誘導テトラキレート、もしくはその立体異性体、互変異性体、塩、またはそれらの混合物を含み、
前記液体医薬製剤が、
Gd
3-DO3A誘導キレート、Gd
2-DO3A誘導キレート、Gd-DO3A誘導キレートおよびDO3A誘導テトラ配位子のうちの1種もしくは複数種、もしくはそれらの混合物またはその立体異性体、互変異性体、塩、あるいはそれらのいずれかの混合物から選択される、[全モルGd濃度に対して]0.01~1.25mol%の濃度割合の本明細書に記載される準化学量論的キレートであり、
Gd
3+イオンと錯体を形成していない、前記準化学量論的キレートの1個、2個または3個のDO3A配位子、および前記DO3A誘導テトラ配位子の4個のDO3A配位子がCa
2+イオン、Na
+イオン、Zn
2+イオン、Mg
2+イオンもしくはメグルミンイオンとの塩または錯体として、あるいは遊離カルボン酸として存在し得る、準化学量論的キレートと、
薬学的に許容される溶媒と
をさらに含み、
緩衝剤を任意選択で含み、
一般式(I)の前記DO3A誘導テトラキレートが、1mmol Gd
3+/L~1000mmol Gd
3+/L(両端を含む)の範囲内の前記製剤中の濃度を有する、液体医薬製剤。
【請求項24】
式(I)の前記DO3A誘導テトラキレートが、式(I-a):
【化10】
またはその立体異性体、互変異性体、塩、あるいはそれらの混合物を含む、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
式(Gd
3-II-a)
【化11】
のGd
3-DO3A誘導キレート、
式(Gd
2-II-a)
【化12】
のGd
2-DO3A誘導キレート
および
式(Gd-II-a)
【化13】
のGd-DO3A誘導キレート
からなる群から選択される、準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd
3+)を有するDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物。
【請求項26】
磁気共鳴イメージングのための造影剤の製造のための、
式(Gd
3-II-a)
【化14】
のGd
3-DO3A誘導キレート、
式(Gd
2-II-a)
【化15】
のGd
2-DO3A誘導キレート、
式(Gd-II-a)
【化16】
のGd-DO3A誘導キレート
および
式(II-a)
【化17】
のDO3A誘導テトラ配位子
からなる群から選択される、準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd
3+)を有するDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に磁気共鳴イメージングのための、造影剤の製剤、特に常磁性金属イオンキレートの製剤、および前記製剤を得るための工業的に適用可能な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば文書米国特許第4,647,447号明細書に記載されたランタニド(常磁性金属)キレート、特にガドリニウムキレートに基づく様々な造影剤が既知である。これらの生成物はGBCA(ガドリニウム系造影剤)と呼ばれる。いくつかのGBCAは臨床使用が承認されており、市販されている:特に直鎖状Gdキレート、例えばガドペンテト酸ジメグルミン(Magnevist(登録商標)、DTPAに基づく)、ガドジアミド(Omniscan(登録商標)、DTPA-BMAに基づく)、ガドベルセタミド(OptiMARK(登録商標)、DTPA-BMEAに基づく)および特に大環状Gdキレート、ガドテル酸メグルミン(Dotarem(登録商標)、DOTAに基づく)、ガドテリドール(ProHance(登録商標)、HP-DO3Aに基づく)、ガドブトロール(Gadovist(登録商標)、BT-DO3A、ブトロールに基づく)、ガドキセト酸(Primovist(登録商標)、EOB-DTPAに基づく)ならびにガドベン酸ジメグルミン(MultiHance(登録商標)、BOPTAに基づく)。
【0003】
これらの化合物は、本文の残りの部分において、「Gdキレート」または「キレート」と区別なく呼ばれ、それらの配位子は「キレート配位子」と呼ばれる。
【0004】
いくつかのGBCAが、以下の文書米国特許第6,440,956号明細書、米国特許第5,403,572号明細書、欧州特許第0438206号明細書、国際公開第93/011800号パンフレットに記載されている。
【0005】
磁気共鳴イメージング(MRI)用造影剤は、その縦(r1)緩和能および横(r2)緩和能により特徴付けることができる。緩和能とは、造影剤の濃度に規格化された水の縦または横緩和速度定数(それぞれR1=1/T1またはR2=1/T2)を薬剤が向上させることができる度合いである。緩和能は、造影剤の有効性の尺度である(Jacques V.ら、Invest.Radiol.2010 Oct;45(10):613~624)。様々なGBCAは、例えば、磁場強度、温度、および金属キレートの異なる固有因子などの因子に依存するそれらの緩和能が異なる。固有緩和能に影響するパラメータは主に、ガドリニウムと直接結合した水分子(いわゆる内圏水、q)の数、内圏水分子の平均滞留時間(τm)、第2水和圏内の水分子(いわゆる第2圏水)の数および滞留時間ならびに回転拡散(τr)である(Helm L.ら、Future Med.Chem.2010;2:385~396)。その緩和能に関して、市販のGBCAは互いに似ており、4~7L mmol-1s-1の範囲内に入る。
【0006】
GBCAのさらなる特徴は、Gdキレートの錯体安定性である。
【0007】
ある種のGBCAでは、患者への投与後に少量の遊離ガドリニウムイオンが放出されることがあり、または貯蔵/輸送中に脱錯化が起こることがある。これは、患者における耐性の複雑な技術的問題を安全に解決するために遊離金属イオン曝露を制限する技術的解決策の探索につながった。例えば2006年以来、NSF(腎性全身性線維症)として既知の病態は、GBCAの投与およびその後の体内のガドリニウムの存在に少なくとも部分的に関連付けられている。この疾患は、腎機能が低下した患者または腎機能がない患者において使用される特定のGBCAに関する保健当局による警告につながった。別の例は脳内のガドリニウムの蓄積であり、これはある種の直鎖状GBCAの複数回投与後に観察されている。治療処置の有効性を誘導および監視するために患者の処置周期中に造影剤の投与がしばしば繰り返されるので、遊離ガドリニウムイオンへの患者の曝露リスクが増加する。
【0008】
新しいGBCAの耐性の複雑な問題は常に考慮されなければならない。
【0009】
本明細書に記載されるように、より高い有効性を有する新しい高緩和能造影剤の開発は、投与量の著しい減少をもたらすことができ、したがって体内のGd蓄積のリスクを低減する。
【0010】
このリスクを制限するための別の戦略は、可能な限り高い熱力学的安定性および速度論的不活性を有するランタニドキレートの選択である。これは、ランタニドキレートの安定性および不活性度が高いほど、経時的に放出されるランタニドの量が減少するためである。
【0011】
Gdキレート耐性を改善するためのいくつかの戦略は、例えば、米国特許第5,876,695号明細書および国際公開第2009/103744号パンフレットに記載されており、これらは、放出されたあらゆるガドリニウムを錯化することによりガドリニウムの望まれない蓄積を抑制することが意図された、過剰な遊離キレート配位子を含む製剤を開示している。米国特許第5,876,695号明細書は、過剰な直鎖状キレート配位子、特に過剰な遊離DTPAを記載している。この製剤戦略は、Magnevist(登録商標)などの商品に使用されている。国際公開第2009/103744号パンフレットは、遊離キレート配位子の添加、特に遊離DOTAの添加に基づく同様の製剤戦略を記載しており、それによって、放出されたあらゆる金属を錯化する前記遊離キレート配位子をごくわずかに過剰にして、遊離ガドリニウムをゼロ濃度にする。しかし、ある種のキレート配位子は、製剤に添加することができる遊離配位子の量を制限する毒性プロファイルを有することもある。
【0012】
米国特許出願公開第2004/0170566号明細書、欧州特許第0454078号明細書および米国特許第5,876,695号明細書は、対応するGdキレートよりもはるかに低い熱力学的安定性を有する、キレート配位子と遷移金属またはアルカリ土類金属との「弱い」錯体または塩を含む製剤を記載している。これらの「弱い」錯体(例えばCa錯体、Zn錯体、Na錯体またはMg錯体)は、熱力学的により安定であるため、遊離ランタニドの存在下でトランスメタル化を受ける。
【0013】
米国特許出願公開第2016/0101196(A1)号明細書は、PCTA誘導モノGd錯体を含み、かつ1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸のカルシウム錯体(Ca-DOTA)も含む製剤組成物を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,647,447号明細書
【特許文献2】米国特許第6,440,956号明細書
【特許文献3】米国特許第5,403,572号明細書
【特許文献4】欧州特許第0438206号明細書
【特許文献5】国際公開第93/011800号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5,876,695号明細書
【特許文献7】国際公開第2009/103744号パンフレット
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0170566号明細書
【特許文献9】欧州特許第0454078号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2016/0101196(A1)号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Jacques V.ら、Invest.Radiol.2010 Oct;45(10):613~624
【非特許文献2】Helm L.ら、Future Med.Chem.2010;2:385~396
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本出願人は、国際公開第2016/193190号パンフレットおよび国際公開第2018/096082号パンフレットに記載されているようなDO3A誘導テトラキレートの特定の場合について研究を行った。上記の戦略は、単量体Gdキレートについてのみ開発されており、本明細書に記載されるDO3A誘導テトラキレートについては開発されていない。
【0017】
今回、本明細書に記載されるように、本開示の製剤の様々な実施形態が驚くべき有利な特性を有することが見出された。
【0018】
高緩和能ならびに医用イメージング法、例えば磁気共鳴イメージング(MRI)法における造影剤としての使用のための他の有用な特性を示す、国際公開第2016/193190号パンフレットおよび国際公開第2018/096082号パンフレットに開示されたランタノイドイオンのDO3A誘導テトラキレートを含む本明細書に記載される医薬製剤が記載される。
【0019】
1つの実施形態によれば、遊離ランタノイドイオンとの強い錯体を形成するキレート配位子を含む捕捉剤などの少量のランタノイドイオン捕捉剤を含む製剤が記載される。捕捉剤は、遊離形のキレート配位子(すなわち、未錯化形の配位子)、および/あるいはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のイオンなどの弱く結合する金属イオンまたは弱く結合する遷移金属イオンとの錯体としての配位子を含んでもよい。
【0020】
特定の実施形態によれば、本出願人は、Gd4-DO3A誘導テトラキレートなどの本明細書に記載されるDO3A誘導テトラキレートを含む製剤への10-[2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(Ca-BT-DO3A、カルコブトロール)の少量のカルシウム錯体の添加が、医用イメージング法における造影剤としての性能レベルを維持しながら、製剤中、特に注射可能な溶液中の遊離常磁性金属イオンの不在を確実にすることを発見した。
【0021】
他の実施形態によれば、製剤が、1個を超える金属キレート部位を有する、すなわち2~64個の金属キレート部位を有するキレートであるポリキレートを含み、かつ製剤中のあらゆる遊離常磁性金属イオンを結合するのに十分なキレート活性をもたらす準化学量論量(sub-stoichiometric)の常磁性金属イオンとの配位子キレートの量を含むとき、同様の効果が達成され得る。
【0022】
他の実施形態によれば、製剤が、Gd4-DO3A誘導テトラキレートなどのDO3A誘導テトラキレートを含み、かつ製剤中のあらゆる遊離常磁性金属イオンを結合するのに十分なキレート活性をもたらす準化学量論量の常磁性金属イオン(すなわち0個、1個、2個または3個の常磁性金属イオン)との配位子キレートの量を含むとき、同様の効果が達成され得る。他の実施形態において、準化学量論量の常磁性金属イオンとの配位子キレートの量は、本明細書に記載されるように、1~4個の弱く結合する金属イオンの対応する量を含んでもよい。
【0023】
特定の実施形態の医薬製剤は、5ppm(m/v)以下、すなわち0~5ppm(m/v)(両端を含む)の範囲内の、特定の実施形態において2ppm(m/v)以下、すなわち0~2ppm(m/v)(両端を含む)の範囲内の、特定の実施形態において0.5ppm(m/v)以下、すなわち0~0.5ppm(m/v)(両端を含む)の範囲内の遊離常磁性金属の濃度を有する。
【0024】
様々な実施形態によれば、本開示の医薬製剤の粘度は、等張塩化ナトリウム溶液の粘度よりもわずかに高いだけであることが見出された。特定の実施形態によれば、本明細書に記載される医薬製剤は、従来の造影製剤と比べてより低い粘度を有することができる。低粘度は、静脈内ボーラス投与の良好な局所耐性につながり、かつ(必要な圧力がより低い)手動注射中の細長いカテーテルを通じた好都合で再現可能な投与を可能にし、かつ/または動力注射システムによる注射中の造影剤から生理食塩水注射への流体移行中の流体流量変化を回避する。
【0025】
利用可能な市場製品とは対照的に、本開示の医薬製剤のいくつかの実施形態において、製剤は血漿と等張であり、これもまた、市販のイメージング造影製剤の高浸透圧製剤と比較されたとき、注射部位における忍容性を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
そのための本開示の1つの主題は、DO3A誘導テトラキレートを含む液体医薬製剤に関する。
【0027】
本開示の別の主題は、DO3A誘導テトラキレートを含み、かつ遊離常磁性金属イオンMとの錯体を形成することができる化合物と定義されている1種または複数種の捕捉剤をさらに含む液体医薬製剤に関する。
【0028】
本開示の別の主題は、DO3A誘導テトラキレートと、10-[2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(Ca-BT-DO3A、カルコブトロール)のカルシウム錯体とを含む液体医薬製剤に関する。
【0029】
本開示の別の主題は、DO3A誘導テトラキレートと、準化学量論量の常磁性金属イオンとのDO3A誘導テトラキレートとを含む液体医薬製剤に関する。
【0030】
本開示の別の主題は、前記液体医薬製剤を含む、磁気共鳴イメージングなどの医用イメージングのための造影剤に関する。
【0031】
本開示の別の主題は、前記液体医薬製剤を調製する方法に関する。
【0032】
本開示は、磁気共鳴イメージング診断法などの診断法におけるそれらの使用のための前記液体医薬製剤または前記造影剤にも関する。
【0033】
本明細書に記載されるように、一般式(II)のキレート配位子と4個の常磁性金属イオンとの間のキレートである一般式(I)のキレートは「DO3A誘導テトラキレート」と呼ばれる。さらに具体的には、特に記載のない限り、一般式(II)のキレート配位子とガドリニウム(Gd3+)イオンとの間の錯体は「Gd4-DO3A誘導テトラキレート」と呼ばれる。
【0034】
一般式(II)のキレート配位子は遊離配位子(すなわち、錯化金属イオンなし)であり、「DO3A誘導テトラ配位子」と呼ばれる。
【0035】
準化学量論量の常磁性金属イオンとのDO3A誘導テトラキレートは、DO3A誘導テトラキレートを含み、かつ一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子と、1個、2個または3個の常磁性金属イオンなどの準化学量論量の常磁性金属イオンとの間の1個または複数のキレートをさらに含み、かつ/または一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子、あるいはそれらの混合物を含む組成物である。様々な実施形態において、準化学量論量の常磁性金属イオンを含むDO3A誘導テトラ配位子は、準化学量論量の1個または複数の弱結合金属イオンを含んでもよい。本明細書で使用される場合、「弱結合金属イオン」という用語は、DO3A誘導テトラキレートとランタニド金属イオンとの結合親和性よりも低いDO3A誘導テトラキレートに対する結合親和性を有するアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属の金属イオンを含む。様々な実施形態において、弱結合金属イオンは、リチウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、カリウムイオンまたはマグネシウムイオンを含んでもよい。
【0036】
準化学量論量の常磁性ガドリニウムイオンとのGd4-DO3A誘導テトラキレートは、Gd4-DO3A誘導テトラキレートを含み、かつ一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子と、1個、2個または3個のGd3+イオンとの間のキレートをさらに含み、かつ/または遊離配位子としての一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子、あるいはそれらの混合物を含む組成物である。様々な実施形態において、準化学量論量の常磁性ガドリニウムイオンおよび/または遊離DO3A誘導テトラ配位子を含むGd4-DO3A誘導テトラ配位子は、ガドリニウムのない配位部位にそれぞれ準化学量論量または化学量論量の1個または複数の弱結合金属イオンを含んでもよい。
【0037】
一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子と3個の常磁性金属イオンとの間の準化学量論的キレートは「M3-DO3A誘導キレート」と呼ばれる。一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子と2個の常磁性金属イオンとの間の準化学量論的キレートは「M2-DO3A誘導キレート」と呼ばれる。一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子と1個の常磁性金属イオンとの間の準化学量論的キレートは「M-DO3A誘導キレート」と呼ばれる。様々な実施形態によれば、これらの準化学量論的キレートならびに同じく準化学量論的キレートである一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子は、製剤中に存在することができる。
【0038】
さらに具体的には、特に記載のない限り、一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子と3個のGd3+イオンとの間の準化学量論的キレートは「Gd3-DO3A誘導キレート」と呼ばれ、一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子と2個のGd3+イオンとの間の準化学量論的キレートは「Gd2-DO3A誘導キレート」と呼ばれ、一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子と1個のGd3+イオンとの間の準化学量論的キレートは「Gd-DO3A誘導キレート」と呼ばれる。
【0039】
一般に、本開示の1つの態様は、2~64個の金属キレート部位などの2個以上の金属キレート部位を有する、ランタニド金属イオンなどの常磁性金属イオンの多配位子の医薬製剤を含み、金属キレート部位のそれぞれは、それに結合された常磁性金属イオンを有し、この製剤は、それに結合された準化学量論量の常磁性金属イオンを有する多配位子の量をさらに含む。
【0040】
これらの実施形態によれば、準化学量論量の常磁性金属イオンを有する多配位子のキレート部位は空いていてもよく(すなわち、結合された金属なし)、またはそれに結合された弱い金属イオンを有してもよい。さらに、これらの実施形態によれば、準化学量論量の常磁性金属イオンを有する多配位子のキレート部位のうちの1つまたは複数は空いていてもよく(すなわち、結合された金属なし)、またはそれに結合された弱い金属イオンを有してもよい。これらのような医薬製剤は、貯蔵、輸送中、または注射プロトコール中に放出され得る放出されたあらゆる常磁性金属イオンに結合することができ、それによって患者の血流または器官への常磁性金属イオンの放出を防ぐ金属捕捉部分をその中に組み込むことになる。
【0041】
カルコブトロールとして既知である10-[2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(ブトロール)とカルシウムイオンとの間の錯体は「Ca-BT-DO3A」と呼ばれる。
【0042】
第1の態様によれば、本開示は、液体医薬製剤であって、一般式(I):
【化1】
(式中、
R
1は、
【化2】
および
【化3】
(基中、*は、分子の残りの部分との前記基の結合点を表し、
R
2、R
3およびR
4は互いに独立して、水素原子、または
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
R
5は、
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
Xは、C(=O)OH基またはC(=O)O
-基を表し、
Mは、常磁性金属のイオンを表す)
から選択される基を表す)
のDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物を含み、
薬学的に許容される溶媒を含み、
かつ緩衝剤を任意選択で含み、
DO3A誘導テトラキレートが、常磁性金属のイオンがGd
3+ではない1~1000mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、および常磁性金属のイオンがGd
3+でもあり得る60~750mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の製剤中の濃度を有する、液体医薬製剤を網羅する。
【0043】
定義
特に記載のない限り、本開示の様々な造影製剤に関連するすべての濃度または投与量の言及は、常磁性金属イオンの濃度を指す。これは、四量体錯体が分子当たり4個の常磁性金属イオンを持つので重要である。したがって、1mmol/L濃度の配位子/金属キレートを有するGd4-DO3A誘導テトラキレートを含む製剤は、4mmol/Lの濃度のGd3+イオンを有するであろう。
【0044】
「製剤」および「医薬製剤」という用語は、本開示によれば、「薬学的に許容される溶媒」中に少なくとも上記の式(I)のDO3A誘導テトラキレートを含む溶液を意味し、ここで、「薬学的に許容される溶媒」という用語は、非経口投与に適している溶媒、すなわち、水、水性溶液、またはDO3A誘導テトラキレートを実質的に可溶化することができる、本明細書の溶媒のリストから選択される1種もしくは複数種の化合物を意味することが意図され、この溶液は、さらなる1種または複数種の薬学的に適した添加剤を任意選択で含む。
【0045】
薬学的に適した添加剤は、とりわけ、
・溶媒(例えば水、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、
・緩衝剤、酸および/または塩基(例えばリン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、トロメタモール(TRIS、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)、トリエタノールアミン、HEPES(2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン]エタンスルホン酸)、MES(2-モルホリノエタンスルホン酸)を含む緩衝剤、および水酸化ナトリウム、および塩酸)、
・等張化剤(例えばグルコース、塩化ナトリウム、d-マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロースおよびプロピレングリコール)、
・安定剤(例えば、例えばアスコルビン酸、アスコルビルパルミテートおよびアスコルビン酸ナトリウムなどの抗酸化剤)、
・保存剤(例えばソルビン酸)
を含む。
【0046】
「緩衝溶液」という用語は、本開示によれば、緩衝剤を含む薬学的に許容される溶媒中の溶液を意味し、この緩衝剤は、クエン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、炭酸塩、トロメタモール(TRIS、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)、HEPES(2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン]エタンスルホン酸)およびMES(2-モルホリノエタンスルホン酸)ならびにそれらのいずれかの混合物から選ばれる。
【0047】
「置換される」という用語は、現状で指定された原子の通常の原子価を超えないという条件で、指定された原子上または基上の1個または複数の水素原子が、示された基から選択されたもので置き換えられることを意味する。置換基および/または変数の組合せは許容される。
【0048】
「任意選択で置換される」という用語は、置換基の数がゼロと等しくても、異なっていてもよいことを意味する。特に記載のない限り、任意選択で置換される基は、任意の利用可能な炭素原子上で任意の水素原子を非水素置換基で置き換えることにより収容され得る数と同数の任意選択の置換基で置換されることが可能である。
【0049】
1つを超える部分から複合置換基が構成される、例えば(C1~C2-アルコキシ)-(C2~C3-アルキル)-の場合、所与の部分が前記複合置換基の任意の適した位置で結合されることが可能であり、例えばC1~C2-アルコキシ部分が前記(C1~C2-アルコキシ)-(C2~C3-アルキル)-基のC2~C3-アルキル部分の任意の適した炭素原子に結合されることが可能である。このような複合置換基の最初または最後のハイフンは、分子の残りの部分との前記複合置換基の結合点を示す。
【0050】
「を含む」という用語は、本明細書において使用される場合、「から本質的になる」および「からなる」を含む。
本明細書において言及される用語は、以下の意味を有する。
【0051】
「ハロゲン原子」という用語は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、特にフッ素原子、塩素原子または臭素原子を意味する。
【0052】
「C1~C6-アルキル」という用語は、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価の飽和炭化水素基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、ネオ-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基もしくは1,3-ジメチルブチル基、またはそれらの異性体を意味する。特に、前記基は、1個、2個、3個または4個の炭素原子を有し(「C1~C4-アルキル」)(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基またはtert-ブチル基)、とりわけ1個、2個または3個の炭素原子を有する(「C1~C3-アルキル」)(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基またはイソプロピル基)。
【0053】
「C1~C3-アルキル」という用語は、1個、2個または3個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価の飽和炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基を意味する。
【0054】
「C2~C3-アルキル」という用語は、2個または3個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価の飽和炭化水素基、例えば、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基を意味する。
【0055】
「C1~C2-アルキル」という用語は、1個または2個の炭素原子を有する直鎖の一価の飽和炭化水素基、例えば、メチル基またはエチル基を意味する。
【0056】
「C3~C6-シクロアルキル」という用語は、3個、4個、5個または6個の炭素原子を含む一価の飽和単環式炭化水素環を意味する。前記C3~C6-シクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基またはシクロヘキシル基である。
【0057】
「C1~C3-ハロアルキル」という用語は、「C1~C3-アルキル」という用語が上記に定義される通りであり、かつ水素原子のうちの1個または複数が、上記に定義されるハロゲン原子で同一にまたは異なって置き換えられている直鎖または分岐鎖の一価の飽和炭化水素基を意味する。特に、前記ハロゲン原子はフッ素原子である。前記C1~C3-ハロアルキル基は、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピルまたは1,3-ジフルオロプロパン-2-イルである。
【0058】
「C1~C3-アルコキシ」という用語は、「C1~C3-アルキル」という用語が上記に定義される通りである式(C1~C3-アルキル)-O-の直鎖または分岐鎖の一価の飽和基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基またはイソプロポキシ基を意味する。
【0059】
「C1~C2-アルコキシ」という用語は、「C1~C2-アルキル」という用語が上記に定義される通りである式(C1~C2-アルキル)-O-の直鎖の一価の飽和基、例えば、メトキシ基またはエトキシ基を意味する。
【0060】
値の範囲が与えられる場合、前記範囲は、各末端値および前記範囲内の任意の部分範囲を包含する。
【0061】
例えば:
「C1~C6」は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C1~C6、C1~C5、C1~C4、C1~C3、C1~C2、C2~C6、C2~C5、C2~C4、C2~C3、C3~C6、C3~C5、C3~C4、C4~C6、C4~C5およびC5~C6を包含し、
「C1~C4」は、C1、C2、C3、C4、C1~C4、C1~C3、C1~C2、C2~C4、C2~C3およびC3~C4を包含し、
「C1~C3」は、C1、C2、C3、C1~C3、C1~C2およびC2~C3を包含し、
「C3~C6」は、C3、C4、C5、C6、C3~C5、C3~C6、C3~C4、C4~C5、C4~C6およびC5~C6を包含する。
【0062】
一般式(I)および(II)の化合物は同位体変種として存在することが可能である。そのための本開示は、1個または複数の1H原子が2H原子で置き換えられた、一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-c)、(II)、(II-a)、(II-b)および(II-c)の化合物、ならびに一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-c)、(II)、(II-a)、(II-b)および(II-c)の重水素含有化合物などの本明細書に記載される準化学量論量の常磁性金属イオンを有する化合物のいずれか、ならびに本明細書に記載される準化学量論量の常磁性金属イオンを有する化合物のいずれかの1種または複数種の同位体変種も含んでもよい。
【0063】
化合物の「同位体変種」という用語は、このような化合物を構成する同位体のうちの1種または複数種の不自然な比を示す化合物と定義される。
【0064】
「一般式(I)の化合物の同位体変種」という用語は、このような化合物を構成する同位体のうちの1種または複数種の不自然な比を示す一般式(I)の化合物と定義される。
【0065】
「不自然な比」という表現は、その自然存在比よりも高いこのような同位体の比を意味する。この文脈において適用される同位体の自然存在比は「Isotopic Compositions of the Elements 1997」、Pure Appl.Chem.、70(1)、217~235、1998に記載されている。
【0066】
一般式(I)の化合物は立体化学変種として存在することが可能である。そのための本開示は、一般式(I)、(I-a)、(II)および(II-a)の化合物ならびに本明細書に記載される準化学量論量の常磁性金属イオンを有する化合物のいずれかなどの本明細書に記載される1個または複数のキラル中心を持つ化合物のすべての立体化学変種または組合せも網羅する。「立体化学変種」という用語は、化合物内の任意のキラル炭素中心がRまたはS立体化学型のいずれかで存在し得ること、およびキラル中心が各キラル炭素中心においてRまたはS立体化学のいずれかを有する任意の組合せであり得るエナンチオマーおよびジアステレオマーの任意の組合せとして1個を超えるキラル炭素中心を有する化合物が存在し得ることを意味する。一般式(I)、(I-a)、(II)および(II-a)の化合物、ならびに本明細書に記載される準化学量論量の常磁性金属イオンを有する化合物、すなわち一般式(Gd3-II-a)、(Gd2-II-a)、(Gd-II-a)の化合物は、エナンチオ異性的またはジアステレオ異性的に純粋な形態で存在してもよく、エナンチオマーの混合物(エナンチオマーのラセミ混合物、または一方のエナンチオマーの量において他方のエナンチオマーに比べてエナンチオマーに富む混合物など)でもよく、ジアステレオマーの混合物(2種以上のジアステレオ異性体のランダムな混合物、または混合物中の1種もしくは複数種の他のジアステレオ異性体の量に比べて1種もしくは複数種のジアステレオ異性体の量に富む、2種以上のジアステレオ異性体の混合物など)でもよい。
【0067】
「準化学量論量(sub-stoichiometric amount)」という用語は化学量論量未満を意味する。ある金属イオンに対して1個または複数のキレート部位を有するキレートに関して使用される場合、ある金属イオンの準化学量論量は、ある金属イオンとキレート化することができる利用可能なキレート部位のモル量未満である金属イオンのモル量を意味する。
【0068】
「準化学量論的キレート(sub-stoichiometric chelate)」という用語は、配位子と、準化学量論数の常磁性金属のイオンとの間のキレート、すなわちテトラ配位子と、0個、1個、2個または3個の常磁性金属のイオンとの間のキレートを意味する。
【0069】
第1の態様の第2の実施形態によれば、本開示は、上記の一般式(I)(式中、
R2は、水素原子またはメチル基を表し、
R3およびR4はそれぞれ水素原子を表し、
R5は、
メチル、エチル、イソプロピル、2-メチルプロピル、ベンジル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチルおよびフェニル
から選択される基を表す)
のDO3A誘導テトラキレートを含む上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0070】
第1の態様の第3の実施形態によれば、本開示は、式(I)のDO3A誘導テトラキレートが、以下の構造を有する式(I-a)、(I-b)および(I-c):
【化4】
および
【化5】
のキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物から選択される、上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0071】
第1の態様の第4の実施形態によれば、本開示は、式(I)のDO3A誘導テトラキレートが、以下の式(I-a):
【化6】
またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物を含む、上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0072】
第1の態様の第5の実施形態によれば、本開示による製剤は、60~750mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の上記の一般式(I)のGd4-DO3A誘導テトラキレートの濃度を有する。
【0073】
第1の態様の第6の実施形態によれば、本開示は、一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートが、
一般式(II):
【化7】
(式中、
R
1’は、
【化8】
および
【化9】
(基中、*は、分子の残りの部分との前記基の結合点を表し、
R
2、R
3およびR
4は互いに独立して、水素原子、または
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
R
5は、
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
Xは、C(=O)OH基またはC(=O)O
-基を表す)
から選択される基を表す)
のDO3A誘導テトラ配位子、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物と、
常磁性金属のイオンMと
の間の錯体であることを特徴とする上記の一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートを含む上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0074】
第1の態様の第7の実施形態によれば、本開示は、一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートが、
一般式(II):
【化10】
(式中、
R
1’は、
【化11】
および
【化12】
(基中、*は、分子の残りの部分との前記基の結合点を表し、
R
2、R
3およびR
4は互いに独立して、水素原子、または
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
R
5は、
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
Xは、C(=O)OH基またはC(=O)O
-基を表す)
から選択される基を表す)
のDO3A誘導テトラ配位子、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物と、
1個、2個または3個の常磁性金属のイオンMと
の間の錯体であることを特徴とする上記の一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートを含む上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0075】
第1の態様の第8の実施形態によれば、本開示は、一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートが、
一般式(II):
【化13】
(式中、
R
1’は、
【化14】
および
【化15】
(基中、*は、分子の残りの部分との前記基の結合点を表し、
R
2、R
3およびR
4は互いに独立して、水素原子、または
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
R
5は、
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
Xは、C(=O)OH基またはC(=O)O
-基を表す)
から選択される基を表す)
のDO3A誘導テトラ配位子、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物と、
1個、2個または3個のGd
3+イオンと
の間の錯体であることを特徴とする上記の一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートを含む上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0076】
第1の態様の第9の実施形態によれば、本開示は、式(I)のDO3A誘導テトラキレートが、
以下の構造を有する式(II-a)、(II-b)または(II-c):
【化16】
および
【化17】
のDO3A誘導テトラ配位子、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物と
常磁性金属のイオンMと
の間の錯体から選択されることを特徴とする上記の式(I)のDO3A誘導テトラキレートを含む上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0077】
常磁性金属イオンMは、24~29または59~70の原子番号を有する常磁性金属のイオン、すなわち、クロム(Cr)イオン、マンガン(Mn)イオン、鉄(Fe)イオン、コバルト(Co)イオン、ニッケル(Ni)イオンもしくは銅(Cu)イオンまたはプラセオジム(Pr)イオン、ネオジム(Nd)イオン、プロメチウム(Pm)イオン、サマリウム(Sm)イオン、ユウロピウム(Eu)イオン、ガドリニウム(Gd)イオン、テルビウム(Tb)イオン、ジスプロシウム(Dy)イオン、ホルミウム(Ho)イオン、エルビウム(Er)イオン、ツリウム(Tm)イオンもしくはイッテルビウム(Yb)イオンから選ばれる。金属の本リストは、常磁性を示す金属イオンのすべての一般的な酸化状態を含むことが意図され、例えば、金属が鉄である場合、第一鉄(Fe2+)イオンおよび第二鉄(Fe3+)イオンが範囲内に含まれるであろう。常磁性金属イオンMは、マンガンイオン、鉄イオンおよびランタノイドイオンから特に選ばれ、とりわけイオンMn2+、Fe3+およびGd3+から選ばれ、さらにとりわけ常磁性金属イオンMはGd3+である。
【0078】
第1の態様の第10の実施形態によれば、本開示は、常磁性金属イオンMが、24~29または59~70の原子番号を有する常磁性金属のイオンから選ばれる、上記の一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートを含む上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0079】
第1の態様の第11の実施形態によれば、本開示は、常磁性金属イオンMがランタニド金属イオンから選ばれる、上記の一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートを含む上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0080】
第1の態様の第12の実施形態によれば、本開示は、常磁性金属イオンMが、イオンMn2+、Fe3+およびGd3+から選ばれ、さらにとりわけ常磁性金属イオンMがGd3+イオンである、上記の一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートを含む上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0081】
本開示の液体医薬製剤は、上記の一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートに加えて、対応するM3-DO3A誘導キレート、対応するM2-DO3A誘導キレート、対応するM-DO3A誘導キレートおよび一般式(II)の対応するDO3A誘導テトラ配位子、ならびにその立体異性体、互変異性体もしくは塩、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0082】
本開示の液体医薬製剤は、上記の一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートに加えて、対応するM3-DO3A誘導キレート、対応するM2-DO3A誘導キレート、対応するM-DO3A誘導キレートおよび一般式(II)の対応するDO3A誘導テトラ配位子のうちの1種または複数種、ならびにその立体異性体、互変異性体もしくは塩、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0083】
第1の態様の第13の実施形態によれば、本開示は、上記の一般式(I)のDO3A誘導テトラキレート、対応するM3-DO3A誘導キレート、対応するM2-DO3A誘導キレート、対応するM-DO3A誘導キレートおよび一般式(II)の対応するDO3A誘導テトラ配位子、ならびにその立体異性体、互変異性体もしくは塩、またはそれらの混合物を含む上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0084】
第1の態様の第14の実施形態によれば、本開示は、上記の一般式(I)のGd4-DO3A誘導テトラキレート、対応するGd3-DO3A誘導キレート、対応するGd2-DO3A誘導キレート、対応するGd-DO3A誘導キレートおよび一般式(II)の対応するDO3A誘導テトラ配位子、ならびにその立体異性体、互変異性体もしくは塩、またはそれらの混合物を含む上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0085】
第1の態様の第15の実施形態によれば、本開示は、上記の一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートと、対応するM3-DO3A誘導キレート、対応するM2-DO3A誘導キレート、対応するM-DO3A誘導キレートおよび一般式(II)の対応するDO3A誘導テトラ配位子のうちの1種または複数種、ならびにその立体異性体、互変異性体もしくは塩、またはそれらの混合物を含む上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0086】
第1の態様の第16の実施形態によれば、本開示は、上記の一般式(I)のGd4-DO3A誘導テトラキレートと、対応するGd3-DO3A誘導キレート、対応するGd2-DO3A誘導キレート、対応するGd-DO3A誘導キレートおよび一般式(II)の対応するDO3A誘導テトラ配位子のうちの1種または複数種、ならびにその立体異性体、互変異性体もしくは塩、またはそれらの混合物を含む上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0087】
準化学量論量の常磁性金属イオンとのDO3A誘導テトラキレートは、DO3A誘導テトラキレートを含み、かつ一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子と、1個、2個または3個の常磁性金属イオンなどの準化学量論量の常磁性金属イオンとの間のキレートをさらに含み、かつ/または一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子、あるいはそれらの混合物を含む組成物である。様々な実施形態において、準化学量論量の常磁性金属イオンを含むDO3A誘導テトラ配位子は、準化学量論量の1個または複数の弱結合金属イオンを含んでもよい。本明細書で使用される場合、「弱結合金属イオン」という用語は、DO3A誘導テトラキレートとランタニド金属イオンとの結合親和性よりも低いDO3A誘導テトラキレートに対する結合親和性を有するアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属の金属イオンを含む。様々な実施形態において、弱結合金属イオンは、リチウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、カリウムイオンまたはマグネシウムイオンを含んでもよい。様々な実施形態によれば、準化学量論量の常磁性金属イオンとのDO3A誘導テトラキレートは、1.000モルの一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子に対して3.95~3.9996モルの常磁性金属イオンを含んでもよい。この結果、(常磁性金属の全濃度に対して)0.01~1.25%mol/molの常磁性金属捕捉容量になる。
【0088】
いかなる理論にも拘束されることを意図するものではないが、DO3A誘導テトラキレートに含まれる準化学量論量の常磁性金属イオンを有する準化学量論的キレートは、配位部位内の弱結合金属イオンとのトランスメタル化交換反応中に放出された常磁性金属イオンに結合することにより、または金属のない配位部位内に常磁性金属イオンを結合し、それによって遊離常磁性金属イオンを溶液から除去することにより、DO3A誘導テトラキレートから脱錯化または放出され得るあらゆる常磁性金属イオンに結合する捕捉剤として作用し得ると考えられる。様々な実施形態によれば、DO3A誘導テトラキレートと、準化学量論量の常磁性金属イオンとのDO3A誘導テトラ配位子とを含む医薬製剤は、0.01%~1.25%mol/mol(両端を含む)の範囲内の、例えば0.02%~1%mol/mol(両端を含む)の範囲内の、とりわけ0.025%~0.5%mol/mol(両端を含む)の範囲内の準化学量論量の常磁性金属イオンとのDO3A誘導テトラ配位子の濃度を有してもよく、この割合は、製剤中の常磁性金属イオンの全濃度に対する割合である。
【0089】
特定の実施形態において、準化学量論量の常磁性金属イオンとのDO3A誘導テトラキレートは、準化学量論量の常磁性ガドリニウムイオンとのGd4-DO3A誘導テトラキレートのように準化学量論的常磁性ガドリニウムイオン(Gd3+)を含んでもよい。これらの実施形態によれば、Gd4-DO3A誘導テトラキレートを含む医薬製剤は、一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子と、1個、2個または3個のGd3+イオンとの間のキレートをさらに含み、かつ/または遊離配位子としての一般式(II)のDO3A誘導テトラ配位子、あるいはそれらの混合物を含む。様々な実施形態において、準化学量論量の常磁性ガドリニウムイオンおよび/または遊離DO3A誘導テトラ配位子を含むGd4-DO3A誘導テトラ配位子は、ガドリニウムのない配位部位に結合されたそれぞれ準化学量論量または化学量論量の1個または複数の弱結合金属イオンを含んでもよい。
【0090】
さらに具体的には、式(II-a)
【化18】
のDO3A誘導テトラ配位子と、3個のGd
3+イオンとの間の準化学量論的キレートは、式(Gd
3-II-a)
【化19】
のGd
3-DO3A誘導キレートであり、式(II-a)のDO3A誘導テトラ配位子と、2個のGd
3+イオンとの間の準化学量論的キレートは、式(Gd
2-II-a)
【化20】
のGd
2-DO3A誘導キレートであり、式(II-a)のDO3A誘導テトラ配位子と、1個のGd
3+イオンとの間の準化学量論的キレートは、式(Gd-II-a)
【化21】
のGd-DO3A誘導キレートである。
【0091】
特定の実施形態において、準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd3+)とのDO3A誘導テトラキレートは、式(Gd3-II-a)のGd3-DO3A誘導キレート、式(Gd2-II-a)のGd2-DO3A誘導キレート、式(Gd-II-a)のGd-DO3A誘導キレートもしくは式(II-a)のDO3A誘導テトラ配位子またはそれらの混合物である。
【0092】
さらに具体的には、式(II-b)
【化22】
のDO3A誘導テトラ配位子と、3個のGd
3+イオンとの間の準化学量論的キレートは、式(Gd
3-II-b)
【化23】
のGd
3-DO3A誘導キレートであり、式(II-b)のDO3A誘導テトラ配位子と、2個のGd
3+イオンとの間の準化学量論的キレートは、式(Gd
2-II-b)
【化24】
のGd
2-DO3A誘導キレートであり、式(II-b)のDO3A誘導テトラ配位子と、1個のGd
3+イオンとの間の準化学量論的キレートは、式(Gd-II-b)
【化25】
のGd-DO3A誘導キレートである。
【0093】
特定の実施形態において、準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd3+)とのDO3A誘導テトラキレートは、式(Gd3-II-b)のGd3-DO3A誘導キレート、式(Gd2-II-b)のGd2-DO3A誘導キレート、式(Gd-II-b)のGd-DO3A誘導キレートもしくは式(II-b)のDO3A誘導テトラ配位子またはそれらの混合物である。
【0094】
さらに具体的には、式(II-c)
【化26】
のDO3A誘導テトラ配位子と、3個のGd
3+イオンとの間の準化学量論的キレートは、式(Gd
3-II-c)
【化27】
のGd
3-DO3A誘導キレートであり、式(II-c)のDO3A誘導テトラ配位子と、2個のGd
3+イオンとの間の準化学量論的キレートは、式(Gd
2-II-c)
【化28】
のGd
2-DO3A誘導キレートであり、式(II-c)のDO3A誘導テトラ配位子と、1個のGd
3+イオンとの間の準化学量論的キレートは、式(Gd-II-c)
【化29】
のGd-DO3A誘導キレートである。
【0095】
特定の実施形態において、準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd3+)とのDO3A誘導テトラキレートは、式(Gd3-II-c)のGd3-DO3A誘導キレート、式(Gd2-II-c)のGd2-DO3A誘導キレート、式(Gd-II-c)のGd-DO3A誘導キレートもしくは式(II-c)のDO3A誘導テトラ配位子またはそれらの混合物である。
【0096】
本開示による製剤は、遊離常磁性金属イオンの濃度が本質的にゼロ(高感度分析法の検出限界未満)のままであるような経時的安定性を示す。様々な実施形態において、遊離常磁性金属イオンMの濃度は、25℃および40℃で少なくとも6カ月にわたり2ppm(m/v)以下、すなわち0~2ppm(m/v)(両端を含む)の範囲内のままである。加速貯蔵条件(40℃で6カ月)は、医薬造影製剤の加速ストレス条件に十分な条件と考えられる。
【0097】
第1の態様の第17の実施形態によれば、本開示は、5ppm(m/v)以下、すなわち0~5ppm(m/v)(両端を含む)の範囲内の、特に2ppm(m/v)以下、すなわち0~2ppm(m/v)(両端を含む)の範囲内の、とりわけ0.5ppm(m/v)以下、すなわち0~0.5ppm(m/v)(両端を含む)の範囲内の遊離常磁性金属イオンMの濃度を有することを特徴とする上記の液体医薬製剤を網羅する。
【0098】
第1の態様の第18の実施形態によれば、本開示は、式(I)の組成物に含まれる遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする上記の液体医薬製剤を網羅する。「金属捕捉化合物」とも呼ばれるこのような化合物は本明細書に詳細に記載されている。様々な実施形態によれば、遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる化合物は、製剤中のGd3+濃度などの全常磁性金属イオンに対する割合として測定された0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内の、特に0.01%~1%mol/mol(両端を含む)の範囲内の、とりわけ0.05%~0.5%mol/mol(両端を含む)の範囲内の製剤中の濃度を有してもよい。
【0099】
第1の態様の第19の実施形態によれば、本開示は、遊離常磁性金属イオンMとの錯体を形成することができる1種または複数種の化合物を含むことを特徴とする上記の液体医薬製剤を網羅し、この化合物は、Ca-BT-DO3A(カルコブトロール)、Ca-DOTA、Ca-HP-DO3AおよびCa-DTPAから、あるいはそれぞれの遊離キレート配位子、またはアルカリ金属、アルカリ土類金属、弱結合遷移金属もしくは有機塩基とのそれらの塩から選択されてもよい。
【0100】
第1の態様の第20の実施形態によれば、本開示は、遊離常磁性金属イオンMとの錯体を形成することができる化合物を含むことを特徴とする上記の液体医薬製剤を網羅し、この化合物はCa-BT-DO3A(カルコブトロール)である。
【0101】
第1の態様の第21の実施形態によれば、本開示は、遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる化合物を含むことを特徴とする上記の液体医薬製剤を網羅し、この化合物はCa-BT-DO3A(カルコブトロール)であり、好ましくは、製剤中のGd3+濃度などの全常磁性金属イオン濃度に対する割合として測定された0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内のCa-BT-DO3A(カルコブトロール)である。
【0102】
第1の態様の第22の実施形態によれば、Ca-BT-DO3Aの割合は、0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内の、例えば0.002%~1%mol/mol(両端を含む)の範囲内の、特に0.01%~1%mol/mol(両端を含む)の範囲内の、とりわけ0.05%~0.5%mol/mol(両端を含む)の範囲内であり、この割合は、前記製剤中のGd3+などの全常磁性金属イオン濃度に対する割合である。
【0103】
第1の態様の第23の実施形態によれば、本開示は、遊離常磁性金属イオンMとの錯体を形成することができる化合物を含むことを特徴とする上記の液体医薬製剤を網羅し、この化合物は、上記に定義される準化学量論量の常磁性金属イオンとのDO3A誘導テトラキレート、またはCa2+イオン、Na+イオン、Zn2+イオン、Mg2+イオンおよび/もしくはメグルミンイオンとのその塩である。
【0104】
第1の態様の第24の実施形態によれば、本開示は、遊離常磁性金属イオンMとの錯体を形成することができる化合物を含むことを特徴とする上記の液体医薬製剤を網羅し、この化合物は、上記に定義される準化学量論量のGd3+イオンとのDO3A誘導テトラキレート、またはCa2+イオン、Na+イオン、Zn2+イオン、Mg2+イオンおよび/もしくはメグルミンイオンとのその塩である。
【0105】
第1の態様の第25の実施形態によれば、準化学量論量のGd3+イオンとのDO3A誘導テトラキレートの割合は、[全モルGd濃度に対して]0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内である。
【0106】
第1の態様の第26の実施形態によれば、本開示は、遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる化合物を含むことを特徴とする上記の液体医薬製剤を網羅し、この化合物は、好ましくは[全モルGd濃度に対して]0.01~1.25mol%の範囲内の、
式(Gd
3-II-a)
【化30】
のGd
3-DO3A誘導キレート、
式(Gd
2-II-a)
【化31】
のGd
2-DO3A誘導キレート、
式(Gd-II-a)
【化32】
のGd-DO3A誘導キレート
および
式(II-a)
【化33】
のDO3A誘導テトラ配位子
から選択される準化学量論量のGd
3+イオンとのDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物である。
【0107】
第1の態様の第27の実施形態によれば、本開示は、遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる化合物を含むことを特徴とする上記の液体医薬製剤を網羅し、この化合物は、好ましくは[全モルGd濃度に対して]0.01~1.25mol%の範囲内の、
式(Gd
3-II-b)
【化34】
のGd
3-DO3A誘導キレート、
式(Gd
2-II-b)
【化35】
のGd
2-DO3A誘導キレート、
式(Gd-II-b)
【化36】
のGd-DO3A誘導キレート
および
式(II-b)
【化37】
のDO3A誘導テトラ配位子
から選択される準化学量論量のGd
3+イオンとのDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物である。
【0108】
第1の態様の第28の実施形態によれば、本開示は、遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる化合物を含むことを特徴とする上記の液体医薬製剤を網羅し、この化合物は、好ましくは[全モルGd濃度に対して]0.01~1.25mol%の範囲内の、
式(Gd
3-II-c)
【化38】
のGd
3-DO3A誘導キレート、
式(Gd
2-II-c)
【化39】
のGd
2-DO3A誘導キレート、
式(Gd-II-c)
【化40】
のGd-DO3A誘導キレート
および
式(II-c)
【化41】
のDO3A誘導テトラ配位子
から選択される準化学量論量のGd
3+イオンとのDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物である。
【0109】
第1の態様の第29の実施形態によれば、本開示は、液体医薬製剤であって、一般式(I):
【化42】
(式中、
R
1は、
【化43】
および
【化44】
(基中、*は、分子の残りの部分との前記基の結合点を表し、
R
2、R
3およびR
4は互いに独立して、水素原子、または
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
R
5は、
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
XはC(=O)O
-基を表し、
Mは、常磁性金属のイオンを表す)
から選択される基を表す)
のDO3A誘導テトラキレート、もしくはその立体異性体、互変異性体、塩、またはそれらの混合物を含み、
M
3-DO3A誘導キレート、M
2-DO3A誘導キレート、M-DO3A誘導キレートおよびDO3A誘導テトラ配位子のうちの1種もしくは複数種、もしくはそれらの混合物またはその立体異性体、互変異性体、塩、あるいはそれらのいずれかの混合物から選択される[常磁性金属の全モル濃度に対して]0.01~1.25mol%の濃度割合の本明細書に記載される準化学量論的キレートであり、
常磁性金属のイオンと錯体を形成していない、前記準化学量論的キレートの1個、2個または3個のDO3A配位子、およびDO3A誘導テトラ配位子の4個のDO3A配位子が、錯体またはCa
2+イオン、Na
+イオン、Zn
2+イオン、Mg
2+イオンもしくはメグルミンイオンとの塩として、あるいは遊離カルボン酸として存在し得る、準化学量論的キレートと、
薬学的に許容される溶媒と
をさらに含み、
緩衝剤を任意選択で含み、
一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートが、1mmol常磁性金属イオン/L~1000mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に60~750mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の製剤中の濃度を有する、液体医薬製剤を網羅する。
【0110】
第1の態様の第30の実施形態によれば、本開示は、液体医薬製剤であって、一般式(I):
【化45】
(式中、
R
1は、
【化46】
および
【化47】
(基中、*は、分子の残りの部分との前記基の結合点を表し、
R
2、R
3およびR
4は互いに独立して、水素原子、または
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
R
5は、
C
1~C
6-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、(C
1~C
2-アルコキシ)-(C
2~C
3-アルキル)-およびフェニル
から選択される基を表し、
前記C
1~C
6-アルキル基は、フェニル置換基で同一にまたは異なって任意選択で置換されており、このフェニル置換基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
前記フェニル基は、ハロゲン原子、または
C
1~C
3-アルキル、C
1~C
3-ハロアルキルおよびC
1~C
3-アルコキシ
から選択される基で同一にまたは異なって1回、2回または3回、任意選択で置換されており、
XはC(=O)O
-基を表し、
各MはGd
3+イオンを表す)
から選択される基を表す)
のDO3A誘導テトラキレート、もしくはその立体異性体、互変異性体、塩、またはそれらの混合物を含み、
Gd
3-DO3A誘導キレート、Gd
2-DO3A誘導キレート、Gd-DO3A誘導キレートおよびDO3A誘導テトラ配位子のうちの1種もしくは複数種、もしくはそれらの混合物またはその立体異性体、互変異性体、塩、あるいはそれらのいずれかの混合物から選択される[全モルGd濃度に対して]0.01~1.25mol%の濃度割合の本明細書に記載される準化学量論的キレートであり、
Gd
3+イオンと錯体を形成していない、前記準化学量論的キレートの1個、2個または3個のDO3A配位子、およびDO3A誘導テトラ配位子の4個のDO3A配位子が、錯体またはCa
2+イオン、Na
+イオン、Zn
2+イオン、Mg
2+イオンもしくはメグルミンイオンとの塩として、あるいは遊離カルボン酸として存在し得る、準化学量論的キレートと、
薬学的に許容される溶媒と
をさらに含み、
緩衝剤を任意選択で含み、
一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートが、1mmol Gd
3+/L~1000mmol Gd
3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に60~750mmol Gd
3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol Gd
3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol Gd
3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol Gd
3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol Gd
3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol Gd
3+/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol Gd
3+/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol Gd
3+/L(両端を含む)の範囲内の製剤中の濃度を有する、液体医薬製剤を網羅する。
特にBT-DO3A(ブトロール)またはDOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)およびHP-DO3A(2-ヒドロキシプロピル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン三酢酸)などの他の任意の遊離配位子による遊離常磁性金属の結合のために、特定の実施形態によれば、本開示の様々な実施形態のうちの1つまたは複数の主題である製剤はまた、特に0.002%~0.5%mol/mol(両端を含む)の範囲内の、特に0.01%~0.5%mol/mol(両端を含む)の範囲内のメグルミンまたは他のカチオン性薬剤を任意選択で含む、BT-DO3Aまたは他の任意の遊離配位子と弱結合金属との間の錯体を含んでもよく、この割合は、前記製剤中のGd
3+濃度などの全常磁性金属イオン濃度に対する割合である。特に、BT-DO3Aまたは他の任意の遊離配位子と常磁性金属イオンとの間の錯体は常磁性金属キレートである。BT-DO3Aまたは他の任意の遊離配位子によりキレート化された金属の性質は、式(I)の錯体のキレート配位子によりキレート化された常磁性金属の性質とほぼ同じである。しかし、本開示の様々な実施形態による製剤は、少量の遊離BT-DO3Aならびに/またはBT-DO3Aと、式(I)の錯体のキレート配位子によりキレート化された金属以外の金属との間の錯体も含んでもよい。したがって、製剤は、容器から、例えば製剤が調製および/または貯蔵されるガラス、プラスチックもしくは金属の反応容器または貯蔵容器の表面から抽出され得る任意の金属のイオン、例えば鉄イオン、銅イオンおよび/またはマグネシウムイオンとBT-DO3Aとの間の錯体を含むこともできる。
【0111】
上記に定義される一般式(I)のGd4-DO3A誘導テトラキレートを含む液体医薬製剤は、MRIイメージング法における効率の尺度である高緩和能および改善された全体的な効率(工業生産コスト)を示す。様々な実施形態によれば、製剤は、10~14L mmol-1s-1Gd-1(1.41T、ヒト血漿)の範囲内のr1の緩和能値を示し得る。観察された緩和能は、従来のMRI造影剤、特にガドブトロールおよびガドペンテト酸ジメグルミンを含む製剤に関連する緩和能よりも2~3倍高い範囲であり得る。一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートは高磁場イメージング(例えば3テスラの磁場)に非常に適している。Gd4-DO3A誘導テトラキレートを含む医薬製剤で観察される高緩和能は、より少ない投与量の常磁性金属濃度で画質の改善を可能にし得る。さらに、特定の実施形態において、造影剤のより少ない投与量は、薬学的に許容される溶媒中の造影剤のモル濃度が低い製剤を可能にし得る。これらの実施形態によれば、造影剤のモル濃度が低い製剤は、造影剤のモル濃度がより高い従来のMRI造影剤製剤と比べて低い粘度を示し得る。粘度が低い製剤は、例えば高粘度造影剤製剤の注射からより低粘度の生理食塩水溶液の注射に移行するとき、共投与される生理食塩水溶液とのより良い混合特性を有しながら、著しい流体流変動なく、等量の常磁性金属イオンのより容易な投与を可能にし得る。
一般式(I)のGd4-DO3A誘導テトラキレートは、単独または任意の組合せで特に顕著ないくつかの機能的特徴を示す。
【0112】
特に、本開示の様々な実施形態による前記DO3A誘導テトラキレートは、以下のうちの1つまたは複数を示すことが見出された:
・高緩和能
・好都合な薬物動態プロファイル
・速く完全な排泄
・高い安定性
・高い溶解度
・著しい投与量減少の可能性および全身イメージングの可能性。
【0113】
欧州特許第1931673(B1)号明細書およびFries P.ら、Invest.Radiol.、2015 Dec;50(12):835~42に記載された化合物は、1を上回る平均水和数(q>1)を有する。内圏水分子の数の増加は、緩和能を向上させることが既知であるが、Gdキレートの安定性を低下させることも既知である(Caravan P.、Chem.Soc.Rev.、2006、35、512~523;Raymondら、Bioconjugate Chem.、2005、16、3~8)。
【0114】
本開示の様々な実施形態による化合物は、錯体内のガドリニウムに直接配位した水分子を1個のみ有し、非常に高い安定性(q=1)を有する。
【0115】
本開示の様々な実施形態の製剤の粘度は、塩化ナトリウム溶液の粘度よりもわずかに高いだけであることが見出された。本開示の特定の実施形態において、製剤の重量オスモル濃度は、等張塩化ナトリウム溶液または血漿(275~295mOsm/kg、Pediatr.Nephrol.2018 Sep 13)と同様、すなわち200~400mOsm/kg(両端を含む)の範囲内、特に250~350mOsm/kg(両端を含む)の範囲内であり得、他の従来のMRI造影剤と比べて低いと考えられる。造影剤の静脈内投与のための等張製剤は、低張溶液または高張溶液などの非等張溶液と比べて、細胞内空間と細胞外空間との間の水の分布に対して著しい効果を有さないことにより有利であり得る。本製剤の実施形態および他の従来のMRI造影剤の粘度および重量オスモル濃度の比較が表1に示されている。本開示の製剤の様々な実施形態の低粘度および血液との等張性の組合せは、静脈内ボーラス投与の良好な局所耐性につながり、かつ(必要な圧力がより低い)手動注射中の細長いカテーテルを通じた好都合で再現可能な投与を可能にし、より一貫した流れプロファイルを例えば造影剤と生理食塩水との間の流体流移行中に可能にする。
【0116】
【0117】
第1の態様の第31の実施形態によれば、製剤のpHは、4.5~8.5(両端を含む)の範囲内、特に6.6~8.0(両端を含む)の範囲内、とりわけ6.9~7.9(両端を含む)の範囲内、とりわけ7.2~7.6の範囲内でもよく、とりわけこのpHは7.4である。これらの範囲内のpHを有する製剤は、in vivo条件(pH 7.4)と比較して等水溶液を有することを特に可能にする。
【0118】
第1の態様の第32の実施形態によれば、本開示の様々な実施形態による製剤は緩衝されてもよく、すなわち4.5~8.5(両端を含む)のpH範囲について確立された緩衝剤から選ばれる少なくとも1種の緩衝剤を含み、この緩衝剤は、クエン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、炭酸塩、トロメタモール(TRIS、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)、HEPES(2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン]エタンスルホン酸)およびMES(2-モルホリノエタンスルホン酸)ならびにそれらの混合物から選ばれ、特にこの緩衝剤はトロメタモールである。
【0119】
造影剤の医薬製剤を調製する方法
第2の態様によれば、本開示は、本開示による液体医薬製剤を調製する方法を網羅し、この方法は、
a)薬学的に許容される溶媒を提供するステップと、
b)緩衝剤を任意選択で溶解させ、それによって緩衝溶液を得、かつ溶液のpHを7.6~8.2(両端を含む)の範囲内のpHに任意選択で調整するステップと、
c)あらゆる遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる化合物を任意選択で溶解させるステップと、
d)上記に定義される式(I)のDO3A誘導テトラキレートを、常磁性金属のイオンがGd3+ではない1~1000mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の式(I)のDO3A誘導テトラキレートの濃度を有する製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で、および常磁性金属のイオンがGd3+でもあり得る60~750mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の式(I)のDO3A誘導テトラキレートの濃度を有する製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で溶解させるステップと、
e)等張化剤を溶液に任意選択で溶解させるステップと、
f)溶液のpHを4.5~8.5(両端を含む)の範囲内のpHに任意選択で調整するステップと、
g)追加量の薬学的に許容される溶媒の添加により、前記式(I)の前記キレートの濃度を任意選択で調整するステップと、
h)溶液を任意選択で滅菌するステップと
を含む。
【0120】
第2の態様の第2の実施形態によれば、本開示は、本開示の様々な実施形態による製剤を調製する方法を網羅し、この方法は、
a)薬学的に許容される溶媒を提供するステップと、
b)緩衝剤を任意選択で溶解させ、それによって緩衝溶液を得、かつ溶液のpHを7.6~8.2(両端を含む)の範囲内のpHに任意選択で調整するステップと、
c)あらゆる遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる化合物を溶解させるステップと、
d)上記に定義される式(I)のDO3A誘導テトラキレートを、1~1000mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に60~750mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の式(I)のDO3A誘導テトラキレートの濃度を有する製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で溶解させるステップと、
e)等張化剤を溶液に任意選択で溶解させるステップと、
f)溶液のpHを4.5~8.5(両端を含む)の範囲内のpHに任意選択で調整するステップと、
g)追加量の薬学的に許容される溶媒の添加により、前記式(I)の前記キレートの濃度を任意選択で調整するステップと、
h)溶液を任意選択で滅菌するステップと
を含む。
【0121】
様々な実施形態によれば、ステップb)、c)、d)およびe)の順序は交換可能である。すなわち、本方法を実施するとき、文字が記された識別子(すなわち、a)、b)、c)など)は、本方法のステップを実施する特定の順序を示すことが意図されない。
【0122】
様々な実施形態によれば、ステップf)およびg)の順序は交換可能である。
【0123】
「薬学的に許容される溶媒」という用語は、非経口投与、すなわち静脈内注射に適している溶媒を含むことが意図される。特に、この溶媒は、注射用水または生理食塩水溶液、とりわけ注射用水でもよい。
【0124】
「緩衝溶液」という用語は、pH範囲4.5~8.5(両端を含む)、特に6.6~8.0(両端を含む)の範囲、とりわけ6.9~7.9(両端を含む)の範囲、とりわけ7.2~7.6の範囲について確立された緩衝剤を含む薬学的に許容される溶媒中の溶液を意味することが意図される。さらにとりわけ、pHは、7.4の値に調整される。ステップb)において使用される緩衝剤は、クエン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、炭酸塩、トロメタモール(TRIS、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)、HEPES(2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン]エタンスルホン酸)およびMES(2-モルホリノエタンスルホン酸)ならびにそれらの混合物から選ばれ、特にこの緩衝剤はトロメタモールである。
【0125】
pHの調整、例えばステップb)におけるpHの調整は、上述の緩衝剤のうちの1種を添加することにより、かつ/または塩基(例えば、水酸化ナトリウムまたはメグルミン)の水性溶液を添加することによってpHを高くすることにより、もしくは酸(例えば、塩酸)の水性溶液を添加することによってpHを低くすることにより行われてもよい。
【0126】
ステップc)において添加される、あらゆる遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができる化合物は、Ca-BT-DO3A(カルコブトロール)、Ca-DOTA、Ca-HP-DO3AおよびCa-DTPAから、あるいはそれぞれの遊離配位子、またはアルカリ金属、アルカリ土類金属、弱く結合された遷移金属もしくは有機塩基とのそれらの塩から選ばれる。特に、あらゆる遊離常磁性金属イオンMとの錯体を形成することができる化合物はCa-BT-DO3A(カルコブトロール)であり、好ましくは、製剤中の全Gd濃度に対する割合として測定された0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内のCa-BT-DO3A(カルコブトロール)である。
【0127】
Ca-BT-DO3Aの添加のステップc)は、15~60℃(両端を含む)、好ましくは15~40℃(両端を含む)の温度範囲で有利に行われる。
【0128】
ステップd)において添加される式(I)のDO3A誘導テトラキレートは、好ましくは、上記に定義される式(I-a)、(I-b)および(I-c)のキレートから特に選択されるGd4-DO3A誘導テトラキレートであり、とりわけ式(I)のDO3A誘導テトラキレートは、上記に定義される式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートである。
【0129】
常磁性金属イオンがGd3+ではない、またはあらゆる遊離常磁性金属イオンMとの錯体を形成することができる化合物がステップc)において添加されるとき常磁性金属イオンがGd3+であり得る1~1000mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の式(I)のDO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で、および常磁性金属イオンがGd3+でもあり得る60~750mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の式(I)のDO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で15~60℃(両端を含む)、特に15~40℃(両端を含む)の温度範囲でステップd)において式(I)のDO3A誘導テトラキレートは添加される。
【0130】
混合ステップd)が加熱なしで実施され得ることは、潜在的に有毒な生成物が生じるであろう化学反応/分解が回避されるので有利である。
【0131】
ステップe)において添加される等張化剤は特に塩化ナトリウムである。
【0132】
ステップe)において添加される塩化ナトリウムの量は、好ましくは血漿と等張である製剤を生成するために添加される。
【0133】
ステップf)における溶液のpHは、pH 4.5~8.5(両端を含む)の範囲内の、特に6.6~8.0(両端を含む)の範囲内の、とりわけ6.9~7.9(両端を含む)の範囲内の、とりわけ7.2~7.6の範囲内のpHに調整される。さらにとりわけ、pHは、7.4の値に調整される。
【0134】
pHの調整のステップf)は、上述の緩衝剤のうちの1種を添加することにより、かつ/または塩基(例えば水酸化ナトリウムまたはメグルミン)の水性溶液もしくは酸(例えば塩酸)の水性溶液を添加することにより特に行われる。
【0135】
前記式(I)の前記キレートの濃度の調整のステップg)は、製剤の密度の測定後に、薬学的に許容される溶媒の添加により特に行われる。製剤中の式(I)のキレートの目標濃度は、常磁性金属のイオンがGd3+ではない、またはあらゆる遊離常磁性金属イオンMとの錯体を形成することができる化合物がステップc)において添加されるとき常磁性金属イオンがGd3+であり得る1~1000mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内であり、および常磁性金属のイオンがGd3+でもあり得る60~750mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の式(I)のDO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量である。
【0136】
上記に定義される式(I)のキレートの濃度の調整のステップg)は、特に、1.0~1.3g・cm-3(両端を含む)の範囲内の、特に1.0~1.2g・cm-3の範囲内の密度に、とりわけ1.075~1.125g・cm-3の範囲内の密度に液体製剤の密度を調整するように薬学的に許容される溶媒を添加することによる体積の調整のステップである。
【0137】
製剤の滅菌のステップh)は、当業者に既知の方法にしたがって行われる。
【0138】
第2の態様の第3の実施形態によれば、本開示は、式(I)のDO3A誘導テトラキレートを溶解させるステップが、
第1の溶液を提供するために、上記に定義される式(I)のDO3A誘導テトラキレートを薬学的に許容される溶媒または水性緩衝液に溶解させるステップであって、式(I)のDO3A誘導テトラキレートが、常磁性金属のイオンがGd3+ではない1~1000mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、および常磁性金属のイオンがGd3+でもあり得る60~750mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の式(I)のDO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を生成するのに十分な量で溶解される、ステップ
を含む、液体医薬製剤を調製する方法を網羅する。
【0139】
第2の態様の第4の実施形態によれば、本開示は、
第1の溶液を提供するために、製剤中の常磁性金属イオンの全濃度に対して0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内の遊離常磁性金属イオンMとキレートを形成することができるある量の化合物を薬学的に許容される溶媒または水性緩衝溶液に溶解させるステップと、
上記に定義される式(I)のDO3A誘導テトラキレートを、1mmol常磁性金属イオン/L~1000mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に60~750mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol常磁性金属イオン/L(両端を含む)の範囲内の式(I)のDO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で第1の溶液に溶解させるステップと
を含む、本開示による製剤を調製する方法を網羅する。
【0140】
第2の態様の第5の実施形態によれば、本開示は、式(I)のDO3A誘導テトラキレートを溶解させるステップが、
第1の溶液を提供するために、上記に定義される式(I)のGd4-DO3A誘導テトラキレートを薬学的に許容される溶媒または水性緩衝液に溶解させるステップであって、式(I)のGd4-DO3A誘導テトラキレートが、60~750mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の式(I)のGd4-DO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を生成するのに十分な量で溶解される、ステップ
を含む、液体医薬製剤を調製する方法を網羅する。
【0141】
第2の態様の第6の実施形態によれば、本開示は、
第1の溶液を提供するために、製剤中の常磁性金属イオンの全濃度に対して0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内の遊離常磁性金属イオンMとの錯体を形成することができるある量の化合物を薬学的に許容される溶媒または水性緩衝溶液に溶解させるステップと、
1mmol Gd3+/L~1000mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に60~750mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の式(I)のDO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で上記に定義される式(I)のGd4-DO3A誘導テトラキレートを溶解させるステップと
を含む、本開示による製剤を調製する方法を網羅する。
【0142】
第2の態様の第7の実施形態によれば、本開示は、
第1の溶液を提供するために、製剤中の常磁性金属イオンの全濃度に対して0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内のある量のCa-BT-DO3Aを薬学的に許容される溶媒または水性緩衝溶液に溶解させるステップと、
1mmol Gd3+/L~1000mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に60~750mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の式(I)のGd4-DO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で上記に定義される式(I)のGd4-DO3A誘導テトラキレートを溶解させるステップと
を含む、本開示による製剤を調製する方法を網羅する。
【0143】
第2の態様の第8の実施形態によれば、本開示は、式(I)のDO3A誘導テトラキレートを溶解させるステップが、
第1の溶液を提供するために、上記に定義される式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートを薬学的に許容される溶媒または水性緩衝液に溶解させるステップであって、式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートが、60~750mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を生成するのに十分な量で溶解される、ステップを含む、液体医薬製剤を調製する方法を網羅する。
【0144】
第2の態様の第9の実施形態によれば、本開示は、
第1の溶液を提供するために、製剤中の常磁性金属イオンの全濃度に対して0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内の遊離常磁性金属イオンMとの錯体を形成することができるある量の化合物を薬学的に許容される溶媒または水性緩衝溶液に溶解させるステップと、
上記に定義される式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートを、1mmol Gd3+/L~1000mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に60~750mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で第1の溶液に溶解させるステップと
を含む、本開示による製剤を調製する方法を網羅する。
【0145】
第2の態様の第10の実施形態によれば、本開示は、
第1の溶液を提供するために、製剤中の常磁性金属イオンの全濃度に対して0.002%~5%mol/mol(両端を含む)の範囲内のある量のCa-BT-DO3Aを薬学的に許容される溶媒または水性緩衝溶液に溶解させるステップと、
上記に定義される式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートを、1mmol Gd3+/L~1000mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に60~750mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に70~700mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に80~650mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に90~600mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に100~500mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、特に150~450mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、とりわけ200~400mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の、さらにとりわけ250~350mmol Gd3+/L(両端を含む)の範囲内の式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートの濃度を有する液体医薬製剤を含む最終溶液を生成するのに十分な量で第1の溶液に溶解させるステップと
を含む、本開示による製剤を調製する方法を網羅する。
【0146】
第2の態様の第11の実施形態によれば、本開示は、
4.5~8.5(両端を含む)の範囲内の、特に6.6~8.0(両端を含む)の範囲内の、とりわけ6.9~7.9(両端を含む)の範囲内の、とりわけ7.2~7.6の範囲内のpHに造影溶液のpHを調整する、とりわけこのpHを7.4に調整するステップ
をさらに含む、本開示による製剤を調製する方法を網羅する。
【0147】
第2の態様の第12の実施形態によれば、本方法は、ステップa)およびd)、ならびに任意選択でステップb)、c)、e)、f)、g)およびh)のいずれかまたはそれらの組合せを含み、前記ステップは、先に定義される通りである。
【0148】
第3の態様によれば、本開示は、本開示の様々な実施形態による製剤を調製する方法にしたがって得られた液体医薬製剤を網羅する。
【0149】
製剤および造影剤の使用
第4の態様によれば、本開示は、上記の薬学的に許容される量の医薬製剤の投与を含む、医用イメージングのための、または治療処置の有効性の診断監視のための本開示による製剤の使用を網羅する。
【0150】
したがって、本開示の実施形態は、このような液体医薬製剤を含む、医用イメージングのための造影剤に関する。
【0151】
第4の態様の第2の実施形態によれば、本開示は、すべての身体領域の造影MRIシーケンスのための、本開示による製剤または先に記載された造影剤の使用を網羅する。本開示による製剤の用途には、異なる身体領域の心血管性、腫瘍性および炎症性の兆候が含まれる。
【0152】
第4の態様の第3の実施形態によれば、本開示は、MR血管造影におけるCNS病変、肝臓および腹部の病変、腎臓および骨盤の病変の検出および特徴付けのための、ならびに他の器官/領域(すなわち舌、頭頸部、心血管系、乳房、胸部、四肢、関節)における兆候のための本開示による製剤または先に記載された造影剤の使用を網羅する。
【0153】
第4の態様の第4の実施形態によれば、本開示は、疾患、特に癌性疾患、炎症性疾患、神経性疾患または血管性疾患の診断における、先に記載された製剤または造影剤の使用を網羅する。
【0154】
本開示の様々な実施形態は、イメージング法、特に以下に記載される方法におけるそれらの使用のための、先に記載された前記製剤または前記造影剤にも関する。
【0155】
第5の態様によれば、本開示は、個体の全身または身体の一部をイメージングする方法であって、医用イメージング技術により個体の全身または身体の一部の1つまたは複数の画像を得るステップであり、個体の全身または身体の一部が、上記の製剤を含み、1つまたは複数の画像の画像コントラストが、一般式(I)のDO3A誘導テトラキレートの存在に関連している、ステップを含む、方法に関する。
【0156】
別の実施形態によれば、本開示によるイメージング法は、個体への造影剤の製剤の注射または投与の先行ステップ、好ましくは非経口投与、好ましくは静脈内注射、動脈内注射または関節内注射を含む。
【0157】
上記で定義される医用イメージング法において、画像は、好ましくは磁気共鳴イメージング(MRI)により得られる。
【0158】
MRIによる診断については、注射による静脈内投与は、0.01~0.3mmol Gd/kg体重(両端を含む)の範囲内の投与量で典型的に行われる。薬学的に許容される投与量は投与経路に依存するであろうし、患者、特に研究される障害の性質にも依存するであろう。
【0159】
静脈内注射およびMRIによる観察については、製剤の濃度は、典型的には1~1000mmol Gd/L(両端を含む)の範囲内であり、患者の体重にしたがって患者に投与される投与量は、適宜、0.01~0.3mmol Gd/kg体重(両端を含む)の範囲内、好ましくは0.01~0.1mmol Gd/kg体重の範囲内になる。
【0160】
有利な診断兆候の中で、既に臨床的に使用された兆候、および造影剤の使用により診断結果が改善される兆候が挙げられる。
【0161】
第6の態様によれば、本開示は、
式(Gd
3-II-a)
【化48】
のGd
3-DO3A誘導キレート、
式(Gd
2-II-a)
【化49】
のGd
2-DO3A誘導キレート
および
式(Gd-II-a)
【化50】
のGd-DO3A誘導キレート
からなる群から選択される、準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd
3+)とのDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物を網羅する。
【0162】
第6の態様の第2の実施形態によれば、本開示は、
式(Gd
2-II-a)
【化51】
のGd
2-DO3A誘導キレート
および
式(Gd-II-a)
【化52】
のGd-DO3A誘導キレート
からなる群から選択される、準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd
3+)とのDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物を網羅する。
【0163】
第6の態様の変形例によれば、本開示は、
式(Gd
3-II-b)
【化53】
のGd
3-DO3A誘導キレート、
式(Gd
2-II-b)
【化54】
のGd
2-DO3A誘導キレート、
式(Gd-II-b)
【化55】
のGd-DO3A誘導キレート
および
式(II-b)
【化56】
のGd DO3A誘導テトラ配位子
からなる群から選択される、準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd
3+)とのDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物を網羅する。
【0164】
第6の態様の別の変形例によれば、本開示は、
式(Gd
3-II-c)
【化57】
のGd
3-DO3A誘導キレート、
式(Gd
2-II-c)
【化58】
のGd
2-DO3A誘導キレート、
式(Gd-II-c)
【化59】
のGd-DO3A誘導キレート
および
式(II-c)
【化60】
のDO3A誘導テトラ配位子
からなる群から選択される、準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd
3+)とのDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物を網羅する。
【0165】
第7の態様によれば、本開示は、磁気共鳴イメージングのための造影剤の製造のための、
式(Gd
3-II-a)
【化61】
のGd
3-DO3A誘導キレート、
式(Gd
2-II-a)
【化62】
のGd
2-DO3A誘導キレート、
式(Gd-II-a)
【化63】
のGd-DO3A誘導キレート
および
式(II-a)
【化64】
のDO3A誘導テトラ配位子
からなる群から選択される準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd
3+)とのDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物の使用を網羅する。
【0166】
第7の態様の第2の実施形態によれば、本開示は、磁気共鳴イメージングのための造影剤の製造のための、
式(Gd
2-II-a)
【化65】
のGd
2-DO3A誘導キレート、
式(Gd-II-a)
【化66】
のGd-DO3A誘導キレート
および
式(II-a)
【化67】
のDO3A誘導テトラ配位子
からなる群から選択される準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd
3+)とのDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物の使用を網羅する。
【0167】
第7の態様の変形例によれば、本開示は、磁気共鳴イメージングのための造影剤の製造のための、
式(Gd
3-II-b)
【化68】
のGd
3-DO3A誘導キレート、
式(Gd
2-II-b)
【化69】
のGd
2-DO3A誘導キレート、
式(Gd-II-b)
【化70】
のGd-DO3A誘導キレート
および
式(II-b)
【化71】
のGd DO3A誘導テトラ配位子
からなる群から選択される準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd
3+)とのDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物の使用を網羅する。
【0168】
第7の態様の別の変形例によれば、本開示は、磁気共鳴イメージングのための造影剤の製造のための、
式(Gd
3-II-c)
【化72】
のGd
3-DO3A誘導キレート、
式(Gd
2-II-c)
【化73】
のGd
2-DO3A誘導キレート、
式(Gd-II-c)
【化74】
のGd-DO3A誘導キレート
および
式(II-c)
【化75】
のDO3A誘導テトラ配位子
からなる群から選択される準化学量論量のガドリニウムイオン(Gd
3+)とのDO3A誘導テトラキレート、またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩、あるいはそれらの混合物の使用を網羅する。
【0169】
本開示の様々な実施形態が以下の非限定的な例により説明される。
【0170】
実験の部
実施例1-式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートとCa-BT-DO3A(カルコブトロール)とを含む液体医薬製剤の生成
液体医薬製剤を生成する方法を以下のステップにしたがって行った:
a)製造容器に注射用水720.5gを入れ、撹拌しながらトロメタモール1.217gを溶解した。0.1N塩酸溶液を添加することによってpHを下げることにより、ステップa)において得られた溶液のpHを7.6~8.2のpHに調整した。
b)0.147g[すなわち全Gd濃度に対して0.1%mol/mol]のCa-BT-DO3Aを添加し、撹拌しながら溶解した。
c)ステップb)において得られた溶液に193.4g(すなわち0.075M)の式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートを添加し、撹拌しながら溶解した。
d)ステップc)において得られた溶液に4.4gの塩化ナトリウムを添加し、撹拌しながら溶解した。
e)0.1N塩酸溶液を添加することによってpHを下げることにより、ステップd)において得られた溶液のpHを7.2~7.6のpHに調整した。水を添加することにより、溶液の密度を1.0998g/mLの目標値に調整した。次いで、溶液を孔径0.2μmの滅菌フィルターに通して濾過し、容器に入れ、これを121℃で少なくとも15分間滅菌して、液体医薬製剤を得た。
上記の手順により、以下の製剤を得た:
【0171】
【0172】
キシレノールオレンジを用いた比色法により、遊離ガドリニウムの分析を行った。キシレノールオレンジは遊離ガドリニウムと共に特定の吸光度を有する有色錯体を形成する(Bargeら、Contrast Media&Molecular Imaging、2006;1;184)。2ppm(m/v)のガドリニウムを含む硫酸ガドリニウムの溶液と比較して試験を実施した。最終製剤は、2ppm(m/v)以下の遊離ガドリニウムを含んでいた。
【0173】
実施例2-安定性および重量オスモル濃度
実施例1に記載されているように得られた製剤を用いて安定性研究および重量オスモル濃度の測定を行った。
式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートの濃度、遊離ガドリニウムおよび重量オスモル濃度の経時的な測定を行った。
【0174】
【0175】
式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートの定量を外部標準溶液に対してHPLC-UVにより実施した。自動蒸気圧オスモメーターを使用して重量オスモル濃度を決定した。
キシレノールオレンジを用いた比色法により、遊離ガドリニウムの分析を行った。キシレノールオレンジは遊離ガドリニウムと共に特定の吸光度を有する有色錯体を形成する(Bargeら、Contrast Media&Molecular Imaging、2006;1;184)。2ppm(m/v)のガドリニウムを含む硫酸ガドリニウムの溶液と比較して試験を実施した。
25℃で6カ月(長期安定性)後ならびに40℃で6カ月(加速貯蔵条件)後、式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレートの量は安定なままであった。遊離ガドリニウムは製剤中2ppm(m/v)以下であった。製剤は血漿と等張であった。
【0176】
実施例3-粘度
実施例1に記載されているように得られた製剤を用いて20℃および37℃で粘度測定を行った。
【0177】
【0178】
マイクロ流体粘度計(m-VROC(登録商標)、RheoSense)を使用して粘度を決定した。粘度は、等張塩化ナトリウム溶液の粘度よりもわずかに高いだけであったが、Gadovist(登録商標)1.0よりも大幅に低かった。粘度は低いと考えることができる。
【0179】
実施例4-式(II-a)のDO3A誘導テトラ配位子、Gd-DO3A誘導キレート(Gd-II-a)、Gd
2-DO3A誘導キレート(Gd
2-II-a)の合成
[4,10-ビス(カルボキシラトメチル)-7-{3,6,12,15-テトラオキソ-16-[4,7,10-トリス(カルボキシラトメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]-9,9-ビス({[({2-[4,7,10-トリス(カルボキシラトメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]プロパノイル}アミノ)アセチル]アミノ}メチル)-4,7,11,14-テトラアザヘプタデカン-2-イル}-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]酢酸(II-a)
【化76】
【化77】
水(470mL)中の式(I-a)のGd
4-DO3A誘導テトラキレート、テトラガドリニウム[4,10-ビス(カルボキシラトメチル)-7-{3,6,12,15-テトラオキソ-16-[4,7,10-トリス(カルボキシラトメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]-9,9-ビス({[({2-[4,7,10-トリス(カルボキシラトメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]プロパノイル}アミノ)アセチル]アミノ}メチル)-4,7,11,14-テトラアザヘプタデカン-2-イル}-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]アセテート(国際公開第2016193190号パンフレット、実施例3;1.00eq.、5.60g、2.12mmol)の溶液をシュウ酸二水和物(16.0eq.、4.29g、34.0mmol)で処理し、100℃で6時間撹拌した。冷却された反応混合物を濾過(Microfilter PTFE 1.2μm)し、凍結乾燥した。得られた粗材料を水(200mL)に溶解し、水性水酸化ナトリウム溶液(2M)の添加によりpHを4.5に調整した。得られた溶液を1kDa膜を使用して水(18×100mL)で限外濾過し、最終濃縮水を凍結乾燥して固体白色粉末2.98gを得、これを
1H-NMRおよびHPLCを使用して分析した。
【0180】
1H-NMR:
(400 MHz,D2O):δ[ppm]:1.18-1.20(m,12H),2.60-2.75(m,7H),2.87-3.54(m,85H),3.67-3.95(m,31H),4.03(q,5H).
【0181】
HPLC:
機器:Agilent 1290 HPLC-ESI-MS G6130;カラム:Hypercarb(商標)(Thermo)5μm、100×4.6mm;溶離液A:水+0.1%ギ酸、溶離液B:アセトニトリル+0.1%ギ酸;勾配:0~7分 0~50%B、7~8分 100%B;流量1mL/分;温度:60℃;注入:20μL;DADスキャン:200~300nm;ESI-MS。
【0182】
【0183】
MSにより、調製物が表題化合物(II-a)ならびに式(Gd-II-a)のGd-DO3A誘導キレートおよび式(Gd2-II-a)のGd2-DO3A誘導キレートを200nmにおける相対ピーク面積に基づいて(II-a):(Gd-II-a):(Gd2-II-a)=59.6:31.3:9.1の比で含んでいたことが明らかになった。
%ピーク面積(%PA)および化合物の全重量(w)から各構成成分の量を計算した:%PA*w。
各構成成分について、四量体当たりのGdイオンのそれらの数(nGd)、それらの量(a)および分子量(mw)に基づいて化合物内のGdのないDO3A部分の全モル量を計算した:(4-nGd)*a/mw。
【0184】
実施例5-実施例4の化合物の混合物を使用した、(準化学量論的キレート内に存在する)定義された過剰な遊離DO3A部分を含む式(I-a)のDO3A誘導テトラキレートの注射用製剤の調製。
29.8gの式(I-a)のGd4-DO3A誘導テトラキレート(水分4.5% w/w)を注射用水中の10mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.4)115mLに溶解した。希薄水性水酸化ナトリウム溶液および塩酸を使用して、溶液のpHを7.4に調整した。ICP-OESを用いて濃度を測定した:334mmol Gd/L。秤量し、溶液の密度(1.10g/mL)を考慮して溶液の体積を決定した:132mL。溶液はGd 44.1mmolを含む。
0.044mmolの遊離DO3A部分に相当する実施例4に記載された化合物の混合物0.018gを添加した(0.018g*6.96mmol/2.98g=0.044mmol)。Tris-HCL緩衝液(pH 7.4)を用いて体積を176mLに調整した。
製剤の重量オスモル濃度を測定し、適量の塩化ナトリウムを添加して、ヒト血液と等張である312mOsm/kgを得た。
最後に、溶液を0.22μmに通して濾過してガラス瓶に入れ、これを密封し、高圧蒸気滅菌した。Gd濃度の最終測定により、252mmol Gd/Lが確認された。
結果として、Gdの全濃度および遊離DO3A部分に基づいて252mmol Gd/Lおよび過剰な0.1mol %の遊離配位子を含む等張注射剤を調製した(0.044mmol/44.1mmol=0.1mol%)。
回転球粘度計(Paar)を用いて37℃で決定されたこの注射剤の粘度は1.2mPasであった。
【国際調査報告】