(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】固体圧縮機用セルプレートアセンブリ、固体圧縮機および固体圧縮機の作動方法
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20220112BHJP
C25B 1/02 20060101ALI20220112BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20220112BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20220112BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20220112BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C25B9/00 Z
C25B1/02
C25B9/23
C25B15/00 302A
C25B13/02 302
C25B15/08 302
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529105
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 NL2019050770
(87)【国際公開番号】W WO2020106152
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521220699
【氏名又は名称】エイチワイイーティー ホールディング ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】HYET HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】Westervoortsedijk 71 K,6827 AV ARNHEM,the Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】ライマーカーズ,レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】コニン,ヨンネ
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BC09
4K021CA15
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB49
4K021DB53
4K021DC03
4K021EA05
(57)【要約】
本発明は、固体圧縮機の膜電極アセンブリの陽極側に取り付けるセルプレートアセンブリに関する。セルプレートアセンブリは、それぞれがその中に組み込まれている流路構造を有する隣接する第1および第2のセルプレートを備える。第2セルプレートは、典型的に流路構造がその中に組み込まれて膜電極アセンブリの陽極側に接続する多数の通路を備える。それぞれの流路構造の流路は、第1および第2のセルプレートの接続面で相互接続しており、第2セルプレートに組み込まれた流路が第1セルプレートに組み込まれた流路と所定の角度を有する。本発明はさらに、本発明によるセルプレートアセンブリを備える固体圧縮機およびそのような固体圧縮機の作動方法に関する。
【選択図】
図4a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体圧縮機の膜電極アセンブリの陽極側に取り付けるように構成されたセルプレートアセンブリであって、
前記セルプレートアセンブリは、第1流路構造が組み込まれた第1セルプレートと第2流路構造が組み込まれた第2セルプレートとを備えており、
前記第1流路構造は、前記第1セルプレートの少なくとも一部に延在して前記第1セルプレートの第1面に対して平行に延びる複数の流路を有し、
前記第2セルプレートは前記第1セルプレートの前記第1面と接続する第1面を備えており、前記第2流路構造は、前記第2セルプレートの少なくとも一部に延在して前記第2セルプレートの前記第1面に対して平行に延びる複数の流路を有し、
前記第1流路構造および前記第2流路構造のそれぞれの流路は、前記第1セルプレートと前記第2セルプレートとが接続する面で相互接続しており、
前記第2セルプレートは前記第2セルプレートの前記第1面の反対側に前記第2セルプレートの第2面を有し、前記第2面に前記第2流路構造に接続する多数の通路を備え、
前記第2セルプレートに組み込まれた第2流路構造の流路は前記第1セルプレートに組み込まれた前記第1流路構造の流路と所定の角度をなすことを特徴とするセルプレートアセンブリ。
【請求項2】
前記第2流路構造の流路は、前記第1流路構造の流路に対して実質的に垂直に延びることを特徴とする請求項1に記載のセルプレートアセンブリ。
【請求項3】
前記第1流路構造の流路は、前記第2流路構造の流路の直径を超える直径を有することを特徴とする請求項1または2に記載のセルプレートアセンブリ。
【請求項4】
前記第2流路構造の流路の次に続く流路との間隔は、前記第1流路構造の流路の次に続く流路との間隔よりも小さいことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のセルプレートアセンブリ。
【請求項5】
前記第1セルプレートの前記第1流路構造は、作動流体を前記第1セルプレートの前記第1流路構造の流路に供給する供給ラインに接続されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のセルプレートアセンブリ。
【請求項6】
前記第1セルプレートの前記第1流路構造は、少なくとも2つの別の供給ラインに接続され、前記供給ラインは前記第1セルプレートの流路構造の異なる端部、好ましくは対向する端部に接続されていることを特徴とする請求項5に記載のセルプレートアセンブリ。
【請求項7】
前記第1セルプレートの前記第1流路構造は2つの別の流路システムを備え、それぞれの流路システムは前記2つの別の供給ラインのうちの異なる1つに接続されており、前記2つの別の流路システムのそれぞれの流路は行き止まりとなっていることを特徴とする請求項6に記載のセルプレートアセンブリ。
【請求項8】
前記2つの別の流路システムの流路は互いを囲んでおり、それにより、次の流路が異なる流路システムの一部である交差篏合型流路構造を形成することを特徴とする請求項7に記載のセルプレートアセンブリ。
【請求項9】
前記第1流路構造は単一の連続した流路システムを備え、前記流路システムの流路は反対側の端部で別々の供給ラインに接続されていることを特徴とする請求項7に記載のセルプレートアセンブリ。
【請求項10】
前記第1セルプレートおよび前記第2セルプレートのそれぞれの流路構造は、前記第1セルプレートの前記第1面および前記第2セルプレートの前記第1面に設けられた細長い凹部によって形成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のセルプレートアセンブリ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のセルプレートアセンブリに使用する第1セルプレート。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載のセルプレートアセンブリに使用する第2セルプレート。
【請求項13】
流体を電気化学的に圧縮する固体圧縮機であって、
流体収集プレートと請求項1~10のいずれかに記載のセルプレートアセンブリとの間に囲まれた膜電極アセンブリを備え、前記膜電極アセンブリの陽極側は前記セルプレートアセンブリの前記第2セルプレートの前記第2面の方向に向いており、前記膜電極アセンブリの陰極側は前記流体収集プレートの方向に向いている固体圧縮機。
【請求項14】
請求項13に記載の固体圧縮機の作動方法であって、
A)供給ラインを介して流体を第1セルプレート流路構造の流路へ供給するステップと、
B)第1セルプレート流路構造の流路から第2セルプレート流路構造の流路へ前記流体を通過させるステップと、
C)第2セルプレート流路構造の流路から膜電極アセンブリの陽極側上の通路を介して前記流体を分配するステップと、
D)前記膜電極アセンブリの前記陽極側で前記流体をイオン化するステップと、
E)前記イオン化された流体を前記膜電極アセンブリのプロトン交換膜に通して前記流体を圧縮するステップと、
F)前記圧縮された流体を前記膜電極アセンブリの陰極側で回収するステップと、を含む方法。
【請求項15】
ステップA)~ステップF)を逆の順序で実行し、それにより前記膜電極アセンブリの前記陽極側の前記流路構造から不純物を除去する、連続するパージのステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体圧縮機の膜電極アセンブリの陽極側に取り付けるセルプレートアセンブリに関する。本発明は、さらに本発明のセルプレートアセンブリに使用するための第1セルプレートおよび第2セルプレートに関する。本発明はまた、本発明のセルプレートアセンブリを備える、流体を電気化学的に圧縮する固体圧縮機に関する。最後に本発明は、そのような固体圧縮機を作動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の機械式圧縮機は、流体を圧縮するためにピストンやロータなどの機械的手段を用いるが、固体圧縮機はイオン輸送機構を利用する膜を介して前記流体を電気化学的に輸送することに基づいている。電気化学的方法で作動流体を圧縮するために、固体圧縮機は、典型的には1または複数の積層された膜電極アセンブリ(MEAとも呼ばれる)で構成される圧縮機セルを備える。MEAの電極は、電極間の電位差を維持するために電源に接続される。この電位差は、膜をまたがって存在する圧力勾配に逆らって、イオン化された作動流体をプロトン交換膜(通称PEM)を通過して電気化学的に移動させるために必要である。電流の方向はここではイオン輸送の方向を決定し、低圧作動流体は正に帯電した陽極でイオン化され、分離された電子とMEAの高圧の陰極側で再結合する。
【0003】
固体圧縮機は、機械式圧縮機に対して多くの著しい利点を有する。すなわち、固体圧縮機は、可動部品がないので一般的にコンパクトな設計である。さらに固体圧縮機は、機械式圧縮機を超える作動効率で1000バール以上の非常に大きな圧力まで流体を圧縮することができる。さらなる利点としては、電気化学的な圧縮は膜がイオン化された作動流体の輸送のみを可能にするので、作動流体の浄化につながる。
【0004】
一般的な固体圧縮機は電気化学的水素圧縮機であり、水素が膜電極アセンブリに供給されてプロトンと電子に酸化される。プロトンはその後、膜を通過し、電子は外部回路を介して転送されて、その後、プロトンと電子は水素分子に還元される。この過程で、水素は低圧領域から高圧領域へ圧力勾配に逆らって移動し、その結果、膜を通過する際に圧力が上昇する。水やアンモニアなどの他の作動流体の圧縮も可能である。
【0005】
膜電極アセンブリの低圧(陽極)側に作動流体を供給するために、作動流体は、典型的には膜電極アセンブリに対して平行に延びる多数の流路を通って輸送される。これらの流路は、一方では作動流体を複数の流路に供給するための供給ラインに接続され、他方では膜を通って輸送されない作動流体の残量(fraction)を放出するための排気ラインに接続されているフローバイ構成(flow-by configuration)に配置されてもよい。このフローバイ構成の考えられる欠点は、排気によって集められた過剰な作動流体を再利用するための再循環プロセスが必要となることである。
【0006】
代替案として、流路を行き止まり構造で配置してもよく、ここでは流路は片側では供給ラインに接続されているが、反対側では前記流路は行き止まりとして設計されている。この流れ場設計は、作動流体の残量が膜をバイパスするのではなくて、作動流体が膜のみを通過するようにしている。この流路構造の利点は、前述の再循環プロセスの必要がなくなることである。しかしながら、この流路構造は、プロトン交換膜がイオン化した作動流体の輸送のみを許容するという浄化機能を持つという事実に関連した欠点を有する。
【0007】
完全に純粋な作動流体の供給流はない。作動流体中に存在する(窒素や液体の水などの)全ての不純物は、不純物が膜を通って移動できないので流路の行き止まりの近傍に蓄積される。蓄積された不純物は、少なくとも部分的に行き止まり方向の作動流体の正味の流れを阻止するので、膜を通る作動流体の輸送量(mass transport)が減少する。このような適切でない作動流体の輸送量は、固体圧縮機の有効性と生産性に直接的に影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従って、膜電極アセンブリの低圧(陽極)側の作動流体の供給を改善すること、または、少なくともその解決策の代替案を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、従って固体圧縮機の膜電極アセンブリの陽極側に取り付けるセルプレートアセンブリを提案する。
セルプレートアセンブリは、第1流路構造が組み込まれた第1セルプレートと第2流路構造が組み込まれた第2セルプレートとを備えており、第1流路構造は、第1セルプレートの少なくとも一部に延在して第1セルプレートの第1面に対して平行に延びる複数の流路を有し、第2セルプレートは第1セルプレートの第1面と接続する第1面を備えており、第2流路構造は、第2セルプレートの少なくとも一部に延在して第2セルプレートの第1面に対して平行に延びる複数の流路を有する。
第1流路構造および第2流路構造のそれぞれの流路は、第1セルプレートと第2セルプレートとが接続する面で相互接続しており、第2セルプレートは第2セルプレートの第1面の反対側に第2セルプレートの第2面を有し、第2面に第2流路構造に接続する多数の通路を備え、第2セルプレートに組み込まれた第2流路構造の流路は第1セルプレートに組み込まれた第1流路構造の流路と所定の角度をなすことを特徴とする。
【0010】
本発明による流路とは、第1面からの第1セルプレートの厚さよりも浅い深さの凹部として理解される。
【0011】
換言すれば、本発明による装置は、長さと厚みとを有し、第1流路構造がその中に組み込まれている第1セルプレートを備える。第1流路構造は、第1セルプレートの少なくとも一部に第1セルプレートの半分以上の長さに亘って延在し、第1セルプレートの第1面に対して平行に延びる複数の流路を有する。これら複数の流路は、第1セルプレートの第1面に平行に延び、第1面からの深さが第1セルプレートの厚みより浅く凹設されている。さらに装置は、長さと厚みとを有する第2セルプレートを備え、第2セルプレートは第1セルプレートの第1面と接続する第1面を有して第2流路構造がその中に組み込まれている。第2流路構造には、第2セルプレートの厚みより浅い深さの複数の流路が凹設されている。この結果、凹設された流路は、第2セルプレートの少なくとも一部に亘って第2セルプレートの第1面に平行に、接続面に沿って延在するように形成されている。
【0012】
作動流体は第2セルプレートの第2面の多数の通路を通過する前に最適な方法で分配されるので、この構成は作動流体分配を最適化する。好ましくは、流路は少なくとも第1セルプレートの半分の長さよりも長い。
【0013】
固体圧縮機の中核は、それぞれが陽極と陰極とを構成する2つの電極の間にプロトン交換膜を挟み込んだ膜電極アセンブリである。前述のセルプレートアセンブリは、膜電極アセンブリの低圧側を構成する陽極側に配置されている。セルプレートアセンブリは、低圧作動流体が第1および第2のセルプレートの流路構造の流路を通って前記陽極側へ供給されることにより、流れ場プレートアセンブリとして機能する。セルプレートアセンブリの第2セルプレートの第2面はここでは膜電極アセンブリに面しており、可能な構成では前記膜電極アセンブリに直接的に接触する。
【0014】
作動流体は、最初に第1セルプレートの流路構造の複数の流路を通過する。これらの流路は、典型的には個々の流路が互いに交差しないように互いに平行に延びている。流路は、セルプレートの第1面に対して平行にセルプレートの少なくとも一部に延在するため、この第1面は膜表面に対して平行に延び、作動流体は、前記流路を通って膜表面に沿った方向に輸送される。第2セルプレートは、その第1面で第1セルプレートの第1面に接続(接触)する。第1および第2のセルプレートの流路構造は、この接続面(接触面)で相互接続しており、作動流体が第2セルプレート流路構造の流路内に流れることを可能にしている。後者の流路構造の流路は、このセルプレートの第1面に対して平行に少なくともセルプレートの一部に延在するため、この第1面も膜表面に対して平行に延び、作動流体は、前記流路を通って膜表面に沿った方向に輸送される。第2セルプレートの流路構造の複数の流路もまた、典型的には個々の流路が互いに交差しないように互いに平行に延びている。
【0015】
第2セルプレートに組み込まれた流路が、第1セルプレートに組み込まれた流路と角度を有している場合、前記流路間の作動流体の流れの方向は異なる。角度を有するとは、本明細書では、0度以外の任意の角度であると理解されなければならず、第1および第2のセルプレートの流路構造の流路が交差することを意味する。交差点では、第2セルプレートの流路が第1セルプレートの流路と接続され、それにより、第1セルプレートの流路構造の異なる平行な流路が相互接続される。結果的に、第1セルプレートの個別の流路内の作動流体は、第2セルプレートの流路によって横方向に再分配され、膜表面上の輸送量を均一にする。さらに、作動流体の再分配により、作動流体内に存在する不純物は、第2セルプレートの流路に亘ってより均一に分配される。不純物の蓄積は、従って、膜表面上の作動流体の分配により、わずかな影響を与える。なぜならば、不純物の蓄積が膜表面上の作動流体の分配および、圧縮機に与える影響はより小さく、従って、流路構造の洗浄間隔は長くすることができる。
【0016】
流路構造の洗浄は、作動流体を流路の逆方向に流させるパージによって行う。これは、電流の方向を逆にして電極の極性を変え、膜を介した作動流体の電気化学的輸送を逆にすることで行える。第1セルプレート流路構造の個々の流路を第2セルプレート流路構造の流路によって相互接続するのでパージ効果が向上する。すなわち、相互接続は作動流体中に存在する不純物を捕捉して、相互接続された流路構造の流路内の行き止まりを排除する。行き止まりがなくなる結果、作動流体の逆流とその中の不純物が一方向に流れることができて流路が洗浄される。
【0017】
第2流路構造の流路が第1流路構造の流路に対して実質的に垂直に延びることは可能であり、このことは、第2流路構造の流路と第1流路構造の流路とが約90度の角度を有することを意味する。第1および第2のセルプレート流路構造の流路を約90度の角度で交差させることで、第2プレート流路構造の流路への作動流体のより均一な横方向の再分配へと導く。さらに、流路の直角配置は流路間のオーバーラップを最小量で形成するので、流路の内側と外側との間に存在する大変大きな圧力差に対応できるより強固な構造を導く。すなわち、セルプレートが受ける圧力は、通常、膜電極アセンブリの陰極側で加圧された作動流体の圧力と同等かそれ以上であるのに対して、セルプレートアセンブリの流路内の圧力は低圧作動流体の圧力と等しい。
【0018】
本発明によるセルプレートアセンブリの好ましい実施形態では、第1流路構造の流路は、第2流路構造の流路の直径を超える直径を有する。第1流路構造の粗い流路は、これらの流路がより大きな直径であり、すなわち、作動流体のより大きな流量を可能にし、不純物の蓄積による流路の詰まりを最小化するので、輸送量の観点からは好ましい。第2セルプレートのより微細な流路構造は、他方、圧力差に対応するために必要な荷重耐久力を維持しながら、第2セルプレート上での作動流体のより均一な分配を許容する。第2流路構造の流路の次に続く流路との間隔は、通常、第1流路構造の流路の次に続く流路との間隔よりも小さく選ばれる。第2セルプレート流路構造の流路は、第2セルプレートの第2面に面する流路の面にその長さ方向に沿って穴を有し、これによって第2セルプレート第2面の流路と接続する通路を形成する。これらの穴の間の均一な広がりおよび小さい間隔は、膜表面の陽極上の作動流体の分配を改善する。従って、2つの隣接する流路の穴の間隔は好ましくは可能な限り小さく保たれる。これは、隣接する第2セルプレート流路間の小さな間隔によって達成される。この小さな間隔は、しかしながら、開口間隔に対してセルプレート完全性を保つために、これらの第2セルプレート流路の直径が、より大きな直径の第1流路構造の間隔より小さく保たれる場合に限って可能である。
【0019】
前述したように、第2セルプレート流路構造の流路には、作動流体が第2セルプレートの第2面に拡散するように流路の長さに沿って小さな穴が設けられている。これらの穴が十分小さく、一般的には100マイクロメートルまたはこれ以下の範囲であれば、第2セルプレートは、膜電極アセンブリを直接的に支持することができる。低圧の作動流体と圧縮された作動流体との間の圧力差は、通常は非常に大きいので、膜電極アセンブリの異なる面に同様な大きな圧力差が存在する。膜は、通常、薄いポリマー層で構成されているので、十分に支持する必要がある。第2セルプレート流路内の穴が大きすぎれば、膜は大きな圧力差の影響下で、膜がそれらの穴から押し出されて膜の破裂につながる可能性がある。
【0020】
第1セルプレート流路構造は、通常、作動流体を前記流路構造の流路に供給する供給ラインに接続されている。この供給ラインは、前記供給ラインの1以上の細分化された部分を介して流路構造の個別の流路に接続してもよい。典型的には、供給ラインは、前記第1セルプレート流路のそれぞれに作動流体を供給するために十分な容量を有するために、第1セルプレート流路構造の流路よりも大きな直径を有する。供給容量を増加させる別の方法としては、第1セルプレート流路構造は、少なくとも2つの別の供給ラインに接続されてもよい。また、供給ラインは第1セルプレート流路構造の異なる端部、好ましくは対向する端部に接続されてもよい。第1セルプレート流路構造にその複数の端部で供給する別の利点は、作動流体のより良い輸送量が流路構造の流路に亘って達成できることである。
【0021】
セルプレートアセンブリの可能な実施形態では、第1プレート流路構造は2つの別の流路システムを備え、それぞれの流路システムは2つの別の供給ラインのうちの異なる1つに接続されており、2つの別の流路システムの流路は行き止まりとなっている。流路システムのこの行き止まり構造では、第1セルプレートの流路内の作動流体は、第2セルプレート流路構造の流路へ向かって単一供給ラインから単一方向に流れるので、作動流体の処理量向上に役立つ。複数の流路システムを使用することにより、各流路システムは単一の流路ラインにのみ接続したままでも、作動流体の供給は複数の供給ラインに分散させることができる。
【0022】
第2セルプレートの流路構造が作動流体中に存在する不純物を再分配しない限り、前記不純物は流路の行き止まりの近傍に少なくとも部分的に蓄積される。供給ラインに向かう不純物の拡散速度が行き止まりに向かう作動流体の流れに少なくとも部分的に対抗する。その結果、行き止まりに向かう流路の長さに亘って作動流体の濃度が低下する。不純物の蓄積の問題を再分配するために、異なる流路システムの流路は互いを囲んでもよく、それにより、次の流路が異なる流路システムの一部である交差篏合型(interdigitated)流路構造を形成してもよい。この流路システムの交差篏合型行き止まり構造によって、蓄積された不純物の存在にも拘わらず、膜上の作動流体のより均一な分配を達成することができる。
【0023】
代替的に、流路構造は、単一の連続した流路システムを備え、そのシステムの流路は対向する端部で別々の供給ラインに接続されてもよい。この流路構造(流路構成)は、前述の行き止まり構造に特有の行き止まりがないので、不純物が第1セルプレート流路内で局部的に蓄積されない。不純物は従って、前述の行き止まり構造の場合と同様に、膜上の作動流体の分配に影響を与えることがない。また、供給ラインの1つを排気として機能させることで、流路を効果的にフローバイ構成で配置することも可能である。
【0024】
第1および第2のセルプレートの流路構造は、第1および第2のセルプレートの第1面内に設けられた細長い凹部によって形成されてもよい。この細長い凹部はセルプレート内に、例えばフライス加工などで、セルプレート材料の本来の強度や耐荷重性能を損なうことなく容易に形成される。第1および第2のセルプレートのそれぞれの第1面に凹部を互いに直接的に配置することで、それぞれのセルプレートの凹部が交差する点で互いに接触する閉じた流路が形成される。
【0025】
本発明はまた、本発明によるセルプレートアセンブリ用の第1セルプレートに関する。本発明はさらに本発明によるセルプレートアセンブリ用の第2セルプレートに関する。そのような第1セルプレートおよび第2セルプレートを固体圧縮機の膜電極アセンブリの陽極側に取り付けて使用する利点、およびこれらのセルプレートの可能な特徴づけはセルプレートアセンブリに関連して既に述べている。
【0026】
本発明は、さらに、流体を電気化学的に圧縮する固体圧縮機に関する。固体圧縮機は、本発明によるセルプレートアセンブリと流体収集プレートとの間に囲まれた膜電極アセンブリを備える。膜電極アセンブリの陽極側はセルプレートアセンブリの第2セルプレートの第2面の方に面する。膜電極アセンブリの陰極側は流体収集プレートの方に面する。流体収集プレートはここでは、圧縮機セルから圧縮された流体を収集して圧縮機セルから離れるように搬送するように機能する。固体圧縮機は、陽極側が膜電極アセンブリの底面側を構成し、セルプレートアセンブリが同様に膜電極アセンブリの底面側を構成するように方向付けられてもよい。しかしながら、固体圧縮機は、陽極側が膜電極アセンブリの上面を構成するように方向づけられてもよい。固体圧縮機は、電気化学水素圧縮機であってもよいが、水やアンモニアなどの他の作動流体を圧縮するように構成されてもよい。これらの固体圧縮機の動作原理は、作動流体を膜電極アセンブリに通過させることで作動流体を圧縮するということで同じである。
【0027】
最後に、本発明は、本発明による固体圧縮機の作動方法に関する。本方法は以下のステップを含む。A)供給ラインを介して流体を第1セルプレート流路構造の流路へ供給するステップと、B)第1セルプレート流路構造の流路から第2セルプレート流路構造の流路へ流体を通過させるステップと、C)第2セルプレート流路構造の流路から膜電極アセンブリの陽極側上の通路を介して流体を分配するステップと、D)膜電極アセンブリの陽極側で流体をイオン化するステップと、E)イオン化された流体を膜電極アセンブリのプロトン交換膜に通して流体を圧縮するステップと、F)圧縮された流体を膜電極アセンブリの陰極側で回収するステップと、を含む。固体圧縮機のこの作動方法および膜電極アセンブリの陽極側へ作動流体を供給する方法の利点は、本発明によるセルプレートアセンブリの異なる可能な実施形態に関してすでに詳細に説明している。
【0028】
本方法は、ステップA)~ステップF)を逆の順序で実行し、それにより膜電極アセンブリの陽極側の流路構造から不純物を除去する、連続するパージのステップを含んでもよい。セルプレートアセンブリの種々の実施形態での説明で既に述べたように、第2セルプレート流路構造の流路によって第1セルプレート流路構造の個別の流路を相互接続することでパージ効果が向上する。すなわち、相互接続は作動流体中に存在する不純物を捕捉して、相互接続された流路構造の流路内の行き止まりを排除する。行き止まりがない結果、パージにより達成される作動流体の逆流は入口供給(パージの際は排気として働く)に向かって一方向に流れることができ、これにより、膜電極アセンブリの陽極側の流路に蓄積されたあらゆる不純物を一緒に取り込むことができる。
【0029】
本発明は、以下の図面に示す例示的な実施形態に基づいて更に明瞭にされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明によるセルプレートアセンブリの第1セルプレートの第1面上の透視図である。
【
図2】本発明によるセルプレートアセンブリの第2セルプレートの第1面上の透視図である。
【
図3】本発明によるセルプレートアセンブリのセルプレート第1面および第2面に対して垂直な断面図である。
【
図4a】本発明によるセルプレートアセンブリのセルプレートとして提供される異なる可能な流路構造構成を表す概略図である。
【
図4b】本発明によるセルプレートアセンブリのセルプレートとして提供される異なる可能な流路構造構成を表す概略図である。
【
図4c】本発明によるセルプレートアセンブリのセルプレートとして提供される異なる可能な流路構造構成を表す概略図である。
【0031】
図は、本発明の特定の例示的な実施形態を示しており、いかなる方法または形態においても本発明を限定的に考えるべきではない。本明細書および図面では、対応する要素に対しては対応する参照番号が使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明による固体圧縮機は、圧縮機セルを形成するために、本発明によるセルプレートアセンブリと流体収集プレートとの間に囲まれた膜電極アセンブリを備える。セルプレートアセンブリは第1セルプレートと第2セルプレートとを備えており、第2セルプレートは膜電極アセンブリの陽極側に取り付ける。圧縮機セルは、第1セルプレートと流体収集プレートにそれぞれインターフェイスする2つの集電プレートに囲まれている。集電プレートは、電極を電源に電気的に接続するための通路として機能する。圧縮機セルは反対側の面がセルスタック上に圧力をかける筐体の間にクランプされている。筐体はボルトとナットによって形成されたボルト締結ジョイントの配列によって周縁部近傍で相互に接続された2つのフランジを備える。
【0033】
図1に、本発明によるセルプレートアセンブリの第1セルプレート20の第1面21上の透視図を示す。第1セルプレート20は、各々が圧縮機ハウジングのフレーム部分の周囲を包むことが出来る凹部23を有する複数の突起22を備えている。これにより、第1セルプレート20を圧縮機セルの第2セルプレート(
図3参照)および他の部分と固定された位置で保持できる。第1セルプレート20は、さらに作動流体供給ライン用の出口24を備えている。出口24は各々が供給ラインの細分化として機能する多数の流路25に接続されている。これらの細分化された流路25は、第1セルプレート20の流路構造27を形成する複数の平行な流路26に移る。流路26の各々は、ここでは、第1セルプレート20の第1面21内に設けられた細長い凹部によって形成されている。図示された形状では、流路構造27は、それぞれが異なる作動流体供給ライン出口24に接続されている2つの別の交差篏合型流路システム28、29を備えている。とはいえ、
図4a-4cに更なる詳細を示すように別の流路構造構成もまた可能である。
【0034】
図2に、本発明によるセルプレートアセンブリの第2セルプレート30の第1面31上の透視図を示す。第1セルプレート20と同様に、第2セルプレート30は、各々が圧縮機ハウジングのフレーム部分の周囲を包むことが出来る凹部33を有する複数の突起32を備えている。第2セルプレート30は、さらに、供給ラインの通過用の穴34を備えている。第2セルプレート30は、また、一緒に第2セルプレート30の流路構造36を作る複数の平行な流路35を備えている。流路35の各々はここでは第2セルプレート30の第1面31内に設けられた細長い凹部によって形成されている。第2セルプレート流路構造36の引き続く流路35の相互の間隔は、第1セルプレート流路構造27の引き続く流路26の相互の間隔よりも小さい。加えて、第2セルプレート流路構造36内の流路35の数は、第1セルプレート流路構造27内の流路26の数よりも多い。
【0035】
図3に、本発明のセルプレートアセンブリ40のセルプレート第1面および第2面に垂直な断面を示す。セルプレートアセンブリ40は、第2セルプレート41と第1セルプレート42とを備えており、セルプレート41および42の各々は、それら自身の流路構造43、44を有する。第2セルプレート流路構造43の流路45は、第1セルプレート流路構造44の流路46に対して垂直に延びている。双方の流路構造43、44の流路45、46は、ここでは、それぞれのセルプレート41、42の平面内に延びている。
双方の流路構造43、44の流路45、46は、膜電極アセンブリに供給される作動流体用の連続的な流路を作りだすためにそれらの交点47で相互接続されている。第2セルプレート41は、さらに、流路構造43と膜に取り付けられる第2セルプレート41の第2面49とを接続する多数の通路48を備える。また、膜電極アセンブリに隣接する陰極側に配置された流体収集プレート50が示されている。流体収集プレート50は、圧縮された作動流体を圧縮機セルから離れて輸送するための穴51を備える。
【0036】
図4a―4cに、本発明によるセルプレートアセンブリのセルプレートとして提供される異なる可能な流路構造構成を表す概略図を示す。
図4aは、
図1に示したセルプレートと同様に、互いに取り囲む2つの流路システム61、62を備える第1セルプレートの流路構造60を示しており、これにより、交差篏合型流路構造60を形成する。ここで、次の流路63は、別の流体供給部64に接続されている異なる流路システム61、62の一部である。流路63の各々は、ここでは行き止まりである。しかしながら、第2セルプレート流路構造66の流路65が、第1セルプレート流路構造60の別々の流路63を、第1セルプレート流路構造60の別々の流路63の両端部で交互に相互接続しているので、浄化中にセミフローバイ構成が得られる。
第1セルプレート流路構造68の行き止まり流路67を有する別の構成を、
図4bに示す。このとき、全ての流路67は、単一流体供給部69に接続された単一流路システムの一部を形成している。しかしながら、
図4bに示す構造を有して、第2セルプレート流路構造71の流路70は、第1セルプレート流路構造68の別の流路67に内部接続している。最終的に、
図4cは、第1セルプレート流路構造72が単一の連続した流路システムを有し、その流路73は、その対向する端部で別々の供給ライン74に接続している流路構造を示す。第1セルプレート流路構造72は、ここでは、フローバイ構成を形成する。繰り返すが、第1セルプレート流路構造72の流路73は、第2セルプレート流路構造76の流路75に相互接続されている。
【国際調査報告】