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特表2022-508212積層板ガラス及びこれを用いて形成された窓
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】積層板ガラス及びこれを用いて形成された窓
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529422
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 US2019063316
(87)【国際公開番号】W WO2020112820
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/772,733
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】クイヤール,ジェームス グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド,マイケル アーロン
(72)【発明者】
【氏名】リカール,ポール ジョージ
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA03
4G061BA01
4G061CB03
4G061CB19
4G061CB20
4G061CD02
4G061CD18
(57)【要約】
窓用の積層板ガラスは:(1)第1の厚さ及び第1の熱膨張係数(CTE)を有する第1のシート;(2)第2の厚さ及び第2のCTEを有する無機ガラスの第2のシート;並びに(3)第1の弾性率を有する第1のポリマー材料の層と、第2の弾性率を有する第2のポリマー材料の層とを有する、上記第1のシートと上記第2のシートとの間に接着されたポリマー中間層を含み、上記第1のCTEは上記第2のCTEより大きく、上記第2の厚さは1~0.3mmであり、上記第1の弾性率は上記第2の弾性率の20倍より大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明又は半透明の材料の第1のシートであって、前記第1のシートは第1の厚さを有し、前記第1の透明又は半透明の材料は、0~約300℃にわたって測定される第1の熱膨張係数(CTE)を有する、第1のシート;
第2の透明又は半透明の材料の第2のシートであって、前記第2のシートは第2の厚さを有し、前記第2の透明又は半透明の材料は第2の熱膨張係数(CTE)を有する、第2のシート;並びに
前記第1のシートと前記第2のシートとの間に接着された、前記第1のシートと前記第2のシートとの間のポリマー中間層であって、前記ポリマー中間層は、
第1のポリマー材料の第1のポリマー層であって、前記第1のポリマー材料は第1の弾性率を有する、第1のポリマー層;及び
第2のポリマー材料の第2のポリマー層であって、前記第2のポリマー材料は第2の弾性率を有する、第2のポリマー層
を備える、ポリマー中間層
を備える、積層板ガラスであって、
前記CTEは前記CTEより大きく、前記第2の厚さは約1~約0.3mmであり、前記第2の透明又は半透明の材料は無機ガラスであり、前記第1の弾性率は、前記第2の弾性率の約20倍より大きい、積層板ガラス。
【請求項2】
前記第1の透明又は半透明の材料は有機ポリマー材料である、請求項1に記載の積層板ガラス。
【請求項3】
前記第1の透明又は半透明の材料はソーダライムシリケートガラスである、請求項1に記載の積層板ガラス。
【請求項4】
前記第2のCTEは約50×10-7/℃未満であり、かつ0より大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層板ガラス。
【請求項5】
前記第2の透明又は半透明の材料はボロアルミノシリケートガラスである、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層板ガラス。
【請求項6】
前記第2の透明又は半透明の材料はアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス又はアルカリ非含有ボロアルミノシリケートガラスである、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層板ガラス。
【請求項7】
前記第2の厚さは約0.85~約0.4mmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層板ガラス。
【請求項8】
前記第1の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約300~約1000MPaである、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層板ガラス。
【請求項9】
前記第2の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、前記第1の弾性率の1/30未満である、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層板ガラス。
【請求項10】
前記ポリマー中間層は更に、前記第1のポリマー材料の第3のポリマー層を備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層板ガラス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本開示は、米国特許法第119条の下で、2018年11月29日出願の米国仮特許出願第62/772,733号の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は、その全体が参照により本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は一般に、少なくとも1つの薄いガラス層とポリマー中間層とを有する積層板ガラスに関し、上記中間層は、弾性率が大幅に異なる少なくとも2つの異なるポリマーを含む。本開示は一般に、安全性の向上、又は特に(例えばハリケーン・ウインドウ(hurricane window)で使用するための)衝撃と圧力との組み合わせのサイクルに対する耐性のために、1つ以上の上述の積層板ガラスを採用した、窓にも関する。
【背景技術】
【0003】
いわゆるハリケーン・ウインドウは典型的には、補強済みフレーム及びスペーサー部品と、2つのガラスシート及び高い弾性率(又は十分に迅速な変形下での高い弾性率)を有するポリマー中間層を備えた内側板ガラス内側積層板ガラスとを採用する。図5(従来技術)は、ハリケーン・ウインドウとして設計されたこのような窓200(又はこのような窓のためのIGU(断熱ガラスユニット)200)の一例を示す。
【0004】
図5で確認できるように、窓200は、外側板ガラス10及び内側積層板ガラス12を含む。外側板ガラス10は典型的には単一のガラスのシート50の形態であり、シート50の表面は、窓200の外側の又は第1の表面S1及び第2の表面S2(内側)に対応する。積層板ガラス12は、第1のガラスのシート20及び第2のガラスのシート70を備え、ポリマー中間層40が第1のシート20と第2のシート70との間に接着されている。ポリマー中間層は高い弾性率(又は十分に迅速な変形下での高い弾性率)を有し、これは例えば、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約300~1000MPa、あるいは約400~600MPaである。ポリマー中間層は高い弾性率(又は十分に迅速な変形下での高い弾性率)を有し、これは例えば、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約1~300MPa、あるいは約2~100MPaである。第1のシート20の内側を向いた面と、第2のシート70の外側を向いた面とは、窓200の第3の表面S3(内側)及び内側の又は第4の表面S4(住居内側)に対応する。補強済みスペーサー60及び補強済みフレーム(図示せず)も採用される。
【0005】
ハリケーンの間、風で飛ばされた飛翔体が十分な力で表面S1に衝突した場合、衝撃によってシート50、第1のシート20、及び第2のシート70の全てが破壊される可能性があるが、窓200が意図したとおりに動作すれば、ポリマー中間層40は無傷のまま残り、窓フレーム内に封止されたままとなり、これにより、シート50、第1のシート20、及び第2のシート70が破壊された後であっても、風及び風で運ばれた水が窓200を通って住居に入るのが防止される。ポリマー中間層40がこのような衝撃に耐えられるようにするために、積層板ガラス12の第1のシート20及び第2のシート70を熱強化する。即ちこれらを調質に供して、一般に約24~約52MPa(約3,500~約7,500psi)の表面圧縮を生成する。(シート50も一般に熱強化される。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、第1のシート20及び第2のシート70が熱強化されていない場合、これらは衝撃を受けたときに破壊されて、大型かつ鋭利な断片を形成する傾向があり、上記断片は中間層40に、裂け、穿孔、又はその他の損傷を形成する場合があり、これによって中間層40は所望の封止を維持できなくなる。第1のシート20及び第2のシート70に提供される表面圧縮が大きすぎる場合、これらは安全ガラスと同様に、破壊されて小片となる傾向があり、上記小片はフレームから取り除かれる傾向があり、ポリマー中間層40に対するフレームの把持を弱めるため、暴風によって引き起こされる衝撃後の圧力サイクルによって、ポリマー中間層40がスペーサー60及びフレーム(図示せず)から分離される可能性がある。よって第1のシート20及び第2のシート70に適用される熱強化には特定の範囲がある。小さすぎたり大きすぎたりすると、窓のシールは、衝撃のみによって、又は衝撃とその後の圧力サイクルとによって破損することになる。
【0007】
現在、ハリケーン耐久性(hurricane resistant)窓200の各シートは、ある程度の熱強化を必要とする。例えば窓の他の特性を依然として保存しながら、又は改善さえしながら、不要な熱強化を回避することによって、製造プロセスコストが低いハリケーン耐久性窓を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、第1の透明又は半透明の材料の第1のシートを含む少なくとも1つの積層板ガラスを提供し、上記第1のシートは第1の厚さを有し、上記第1の透明又は半透明の材料は、0~約300℃にわたって測定される第1の熱膨張係数(CTE)を有する。上記積層板ガラスは更に、第2の透明又は半透明の材料の第2のシートを含み、上記第2のシートは第2の厚さを有し、上記第2の透明又は半透明の材料は第2のCTEを有する。上記積層板ガラスは更に、上記第1のシートと上記第2のシートとの間に接着された、上記第1のシートと上記第2のシートとの間のポリマー中間層を含む。上記ポリマー中間層は、第1のポリマー材料の第1のポリマー層を含み、上記第1のポリマー材料は第1の弾性率を有する。上記ポリマー中間層は更に、第2のポリマー材料の第2のポリマー層を含み、上記第2のポリマー材料は第2の弾性率を有する。上記第1のCTEは、上記第2のCTEより大きい。上記第2の厚さは約1~約0.3mmである。上記第2の透明又は半透明の材料は無機ガラスである。また上記第1の弾性率は、上記第2の弾性率の約20倍より大きく、あるいは上記第2の弾性率の約100倍より大きい。
【0009】
本開示の別の態様では、上記第1の透明又は半透明の材料は有機ポリマー材料である。あるいは、更に別の態様によると、上記第1の透明又は半透明の材料はソーダライムシリケートガラスである。
【0010】
単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2のCTEは約50×10-7/℃未満であり、かつ0より大きい。単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2のCTEは約35×10-7/℃未満であり、かつ0より大きい。
【0011】
単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2の透明又は半透明の材料はボロアルミノシリケートガラスである。あるいは、単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2の透明又は半透明の材料はアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス又はアルカリ非含有ボロアルミノシリケートガラスである。
【0012】
単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2の厚さは約0.85~約0.4mmである。あるいは、上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2の厚さは約0.8~約0.45mmである。
【0013】
単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第1の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約300~約1000MPaである。あるいは、上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第1の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約400~約600MPaである。あるいは、上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第1の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約1~約300MPaであり、又は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約2~約100MPaである。
【0014】
単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、上記第1の弾性率の約1/30未満、あるいは約1/40未満、あるいは約1/50未満、又は約1/100未満である。
【0015】
単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記ポリマー中間層は更に、上記第1のポリマー材料の第3のポリマー層を備える。
【0016】
本開示の更に別の態様は、上述の態様のうちのいずれによる板ガラスを備える、窓である。
【0017】
以下で更に詳細に説明されるように、本開示のこれらの態様は、単独で、又は様々な組み合わせにおいて、上記積層板ガラスの上記第2のシートの熱強化を必要とせず、また上記積層板ガラスを過度に歪ませることなく、上記積層板ガラスの上記第2のシートとして低CTEガラスを採用できる、ハリケーン耐久性窓、又はハリケーン耐久性窓のハリケーン耐久性板ガラスを提供できる。
【0018】
本開示の更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、その一部はその記載から当業者には容易に明らかとなるか、又は以下の「発明を実施するための形態」、請求項及び添付の図面を含む本明細書に記載の方法を実践することにより、認識される。
【0019】
以上の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」はいずれも、本開示の様々な実施形態を提示し、またこれらは請求項の性質及び特徴を理解するための概観及び枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、本開示の更なる理解を提供するために含まれており、これらは本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これらの図面は、本開示の様々な実施形態を例示し、本記載と共に本開示の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【0020】
以下の「発明を実施するための形態」は、以下の図面と併せて読むと更に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の態様による積層板ガラスの断面図
図2】本開示の態様による窓又はIGUの断面図
図3】本開示による積層板ガラスの様々な態様の拡大断面図
図4】本開示による積層板ガラスの様々な態様の拡大断面図
図5】(従来技術)従来技術のハリケーン耐久性窓の断面立面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
これより、積層板ガラス、及びこのような板ガラスを採用した窓、並びにこれらの構成部品、特徴、又は特性を図示する図1~4を参照して、本開示の様々な態様を説明する。以下の概説は、請求対象のデバイスの概観を提供することを意図したものであり、本開示全体を通して、図示されている非限定的な態様を参照しながら様々な態様を比較的具体的に説明する。これらの態様は総じて、本開示の文脈内で相互交換可能である。
【0023】
図1を参照すると、ここで開示されているのは、第1の透明又は半透明の材料の第1のシート20を含む積層板ガラス12であり、第1のシート20は第1の厚さを有し、上記第1の透明又は半透明の材料は、0~約300℃にわたって測定される第1の熱膨張係数(「CTE」)を有する。積層板ガラス12は更に、第2の透明又は半透明の材料の第2のシート30を含み、第2のシート30は第2の厚さを有し、上記第2の透明又は半透明の材料は第2のCTEを有する。
【0024】
積層板ガラス12は更に、第1のシート20と第2のシート30との間に接着された、第1のシート20と第2のシート30との間のポリマー中間層40を含む。ポリマー中間層40は、拡大された挿入図(即ち「拡大(close‐up)」断面図)で確認されるように、第1の弾性率を有する第1のポリマー材料の第1のポリマー層41、及び第2の弾性率を有する第2のポリマー材料の第2のポリマー層42を含む。
【0025】
積層板ガラス12に関して、(第1のシート20の)第1のCTEは、(第2のシート30の)第2のCTEより大きく、上記第2の厚さ(第2のシート30の厚さ)は約1~約0.3mmであり、上記第2の透明又は半透明の材料は無機ガラスであり、上記第1の弾性率(第1のポリマー層41のポリマーの弾性率)は、上記第2の弾性率(第2のポリマー層42のポリマーの弾性率)の約20倍より大きく、例えば約100倍より大きい。
【0026】
積層板ガラス12は、ハリケーン耐久性を示すために必要な衝突‐圧力サイクル試験に合格するために熱強化を必要としない1つのシート(積層板ガラス40の第2のシート30)を有する、ハリケーン耐久性窓に使用するためのハリケーン耐久性板ガラスを構成する。理論によって束縛されることを望むものではないが、これは、薄いガラスシート(第2のシート30)の破壊パターンによるものであると考えられ、上記パターンは、衝突‐圧力サイクル試験において、ポリマー中間層40、又はスペーサー60及び窓フレーム(図示せず)によるポリマー中間層40のシールに対する損傷をもたらさない。従って、第2のシート30は熱強化を必要とせず、加工コストの少なくとも1つの項目が削減される。
【0027】
更に、積層板ガラス12は、上記積層板ガラスを過度に歪ませることなく、上記積層板ガラスの第2のシート30として低CTEガラスを採用する(採用できる)。これも理論によって束縛されることを望むものではないが、これは、第2のポリマー層42の存在、及び第2のポリマー層42の極めて低い弾性率によるものであると考えられ、この極めて低い弾性率は、第1のシート20と第2のシート30との間のCTEの差によって、ポリマー中間層40の硬化に使用される温度からの冷却時に、積層中に生成される応力を緩和できる。低CTEガラスシートを採用できることは重要である。というのは、高品質の薄いガラスは、比較的大型のシートとしては、(コスト節約を考えると)主に低CTEガラス組成物で、又は(最大サイズにおいては)低CTEガラス組成物のみで市販されているためである。更に、異なるCTE値によって生じる応力を緩和できることにより、過度な屈曲のない積層板ガラス42を製造できる。
【0028】
本開示の少なくとも1つの態様によると、上記第1の透明又は半透明の材料(第1のシート20の材料)は有機ポリマー材料である。あるいは、別の現時点で好ましい態様によると、上記第1の透明又は半透明の材料(第1のシート20の材料)はソーダライムシリケートガラスである。
【0029】
単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2のCTE(第2のシート30の材料のCTE)は、約50×10-7/℃未満であり、かつゼロより大きい。単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2のCTEは約35×10-7/℃未満であり、かつ0より大きい。
【0030】
単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2の透明又は半透明の材料(第2のシート30の材料)はボロアルミノシリケートガラスである。あるいは、単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2の透明又は半透明の材料は、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス又はアルカリ非含有ボロアルミノシリケートガラスである。例示的な市販のガラス製品としては、限定するものではないが、Corning(登録商標)EAGLE XG(登録商標)、及びLotus(商標)NXTガラスが挙げられる。いくつかの実施形態では、上記第2のシートは、フロート又はフュージョンドロー製造プロセスで製造できる。ソーダライムガラスのCTEはおよそ90×10-7/℃である。比較すると、Corning EAGLE XGガラスのCTEはおよそ31.7×10-7/℃であり、これはソーダライムガラスのCTEのおよそ1/3である。
【0031】
単独であるか又は上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、本開示の別の態様によると、上記第2の厚さ(第2のシート30の厚さ)は約0.85~約0.4mmである。あるいは、上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2の厚さは約0.8~約0.45mmである。更に別の態様によると、上記第1の厚さ(第1のシート20の厚さ)は、約2~約20mm、あるいは約3~約12mm、あるいは約3~約6mmであってよい。
【0032】
上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第1の弾性率(第1のポリマー層41のポリマーの弾性率)は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約300~約1000MPaである。あるいは、上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第1の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約400~約600MPaである。上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第1の弾性率(第1のポリマー層41のポリマーの弾性率)は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約1~約300MPaである。あるいは、上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第1の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約2~約100MPaである。上記第1のポリマーは、例えばDuPont又は様々な代理店から入手可能なSentryGlas(登録商標)等の、ハリケーン耐久性又は耐侵入性(intrusion‐resistant)窓で典型的に使用される中間層ポリマーから選択してよい。
【0033】
上述の態様のうちのいずれと組み合わされる、更に別の態様によると、上記第2の弾性率(第2のポリマー層42のポリマーの弾性率)は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、上記第1の弾性率の約1/30未満、あるいは約1/40未満、あるいは約1/50未満、あるいは約1/100未満でさえある。上記第2のポリマーは、例えば熱可塑性ウレタンといった、様々な低弾性率ポリマーから選択してよい。
【0034】
本開示の別の態様として、図2は、図1に関して説明した積層板ガラス12を有する窓100の断面図を示す。
【0035】
更に別の態様によると、図3の拡大断面図に示されているように、ポリマー中間層40は更に、上記第1のポリマー材料の第3のポリマー層43を含むことができる。その理由は特に、ポリマー中間層40の損傷耐性を改善するために、高弾性率ポリマーの複数の層を使用するのは一般的であるからである。更に別の態様によると、図4の拡大断面図に示されているように、ポリマー中間層40は更に、上記第2のポリマー材料の第4のポリマー層44、及び上記第1のポリマー材料の第5のポリマー層を含むことができ、応力緩和を提供して過度の屈曲を防止するために、2つの低弾性率層(第2及び第4の層)が設けられる。当然のことながら、図2の窓100は、図1、3、及び4に示されているポリマー中間層40のうちのいずれ、又は図示されていない他の組み合わせを用いることもできる。
【0036】
第1の例では、本出願の少なくとも1つの実施形態に従って、積層体を製造した。上記積層体は、約989mmの高さ、及び約1256mmの幅を有していた。上記積層体は、厚さ約2.1mmのソーダライムガラスで構成された第1のシート、及び厚さ約0.7mmのCorning EAGLE XGガラスの第2のシートを有していた。これら2つのガラスシートは、これらの間に、厚さ約0.81mmの多層ポリビニルブチレート(PVB)で構成されたポリマー層を有していた。上記ポリマー層は、PVBの内側コア層より高い弾性率を有する2つのPVBの外層で構成されていた。上記2つのPVBの外層は、約0.34mmの厚さを有し、上記PVBの内層は約0.13mmの厚さを有し、従ってポリマー全体の厚さは約0.81mmであった。高弾性率PVBの弾性率は、低弾性率PVBの弾性率の少なくとも約20倍大きかった。
【0037】
標準積層体を比較のために製造した。上記標準積層体は、約989mmの高さ、及び約1256mmの幅を有していた。上記積層体は、厚さ約2.1mmのソーダライムガラスで構成された第1のシート、及び厚さ約0.7mmのCorning EAGLE XGガラスの第2のシートを有していた。これら2つのガラスシートは、これらの間に、厚さ約0.76mmの標準的な単層ポリビニルブチレート(PVB)で構成されたポリマー層を有していた。上記ポリマー層は、低弾性率PVBの少なくとも約20倍大きな弾性率を有するPVBで構成されていた。なお、これら2つの積層体のポリマー層間の厚さの微小な差は、結果として得られる屈曲の差を生み出すものではないと予想される。
【0038】
両方の試料を、以下のようにEN12150に従って屈曲に関して試験した:積層体を垂直位置に配置し、1/4の点において、その長辺を2つの荷重担持ブロックで支持した。次に変形を、直線状の金属定規又は引っ張られたワイヤーとガラスの凹面との間の最大距離として、対角線に沿って測定した。屈曲に関する値は、mmを単位とする変形の絶対値として表される。
【0039】
標準積層体は、(対角線にわたる最大値-最小値として測定された)およそ4.52mmの屈曲を生成した。本出願の一実施形態による積層体は(対角線にわたる最大値-最小値として測定された)およそ2.78mmの屈曲を生成した。これは即ち、本発明の積層体に関して、屈曲が約38%低減されたということである。
【0040】
別の例では、本出願の更なる一実施形態に従って、積層体を製造した。上記積層体は、約3フィート(91.44cm)の高さ、及び約5フィート(152.4cm)の幅を有していた。上記積層体は、厚さ約6mmのソーダライムガラスで構成された第1のシート、及び厚さ約0.7mmのCorning EAGLE XGガラスの第2のシートを有していた。これら2つのガラスシートは、これらの間に、厚さ約0.81mmの多層ポリビニルブチレート(PVB)で構成されたポリマー層を有していた。上記ポリマー層は、PVBの内側コア層より高い弾性率を有する2つのPVBの外層で構成されていた。上記2つのPVBの外層は、約0.34mmの厚さを有し、上記PVBの内層は約0.13mmの厚さを有し、従ってポリマー全体の厚さは約0.81mmであった。高弾性率PVBの弾性率は、低弾性率PVBの弾性率の少なくとも約20倍大きかった。
【0041】
標準積層体を比較のために製造した。上記標準積層体は、約3フィート(91.44cm)の高さ、及び約5フィート(152.4cm)の幅を有していた。上記第1の積層体は、厚さ約6mmのソーダライムガラスで構成された第1のシート、及び厚さ約0.7mmのCorning EAGLE XGガラスの第2のシートを有していた。これら2つのガラスシートは、これらの間に、厚さ約0.76mmの標準的な単層ポリビニルブチレート(PVB)で構成されたポリマー層を有していた。上記ポリマー層は、低弾性率PVBの少なくとも約20倍大きな弾性率を有するPVBで構成されていた。なお、これら2つの積層体のポリマー層間の厚さの微小な差は、結果として得られる屈曲の差を生み出すものではないと予想される。
【0042】
両方の試料を、以下のようにEN12150に従って屈曲に関して試験した:積層体を垂直位置に配置し、1/4の点において、その長辺を2つの荷重担持ブロックで支持した。次に変形を、直線状の金属定規又は引っ張られたワイヤーとガラスの凹面との間の最大距離として、対角線に沿って測定した。屈曲に関する値は、mmを単位とする変形の絶対値として表される。
【0043】
標準積層体は、(対角線にわたる最大値-最小値として測定された)およそ5.01mmの屈曲を生成した。本出願の一実施形態による積層体は(対角線にわたる最大値-最小値として測定された)およそ2.88mmの屈曲を生成した。これは即ち、本発明の積層体に関して、屈曲が約43%低減されたということである。
【0044】
本開示の様々な実施形態は、当該特定の実施形態に関連して記載されている特定の特徴、要素又はステップを伴い得ることが理解されるだろう。また、ある特定の特徴、要素又はステップは、ある特定の実施形態に関連して記載されていても、例示されていない組み合わせ又は順列で、相互交換できる、又は代替実施形態と組み合わせることができることが理解されるだろう。
【0045】
また本明細書中で使用される場合、用語「上記(the)」、「ある(a又はan)」は「少なくとも1つの(at least one)」を意味し、そうでないことが明示されていない限り、「唯一の(only one)」に限定されてはならないことも理解されたい。従って例えば「ある構成部品(a component)」に関する言及は、文脈によってそうでないことが明示されていない限り、1つのこのような「構成部品」又は2つ以上のこのような「構成部品」を有する例を含む。同様に「複数の(plurality)」又は「アレイ(array)」は、2つ以上を指すことを意図したものであり、従って「構成部品のアレイ(array of components)」又は「複数の構成部品(plurality of components)」は、2つ以上のこのような構成部品を指す。
【0046】
本明細書において、範囲は、「約(about)」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表現され得る。このような範囲が表現されている場合、その例は、上記ある特定の値から、及び/又は上記別の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を用いることにより、値が概数として表現されている場合、上記特定の値は別の態様を形成することが理解されるだろう。更に、各範囲の端点は、他方の端点との関連でも、他方の端点とは独立しても、重要であることが理解されるだろう。
【0047】
本明細書中で表現される全ての数値は、そうでないことが明示されていない限り、そのように述べたかどうかにかかわらず、「約」を含むものとして解釈される。しかしながら、記載されている各数値は、「約」当該値として表されているかにかかわらず、正確なものとして考慮されることが、更に理解される。従って、「100nm未満の寸法(a dimension less than 100 nm)」及び「約100nm未満の寸法(a dimension less than about 100 nm)」は両方とも、「約100nm未満の寸法」及び「100nm未満の寸法」の実施形態を含む。
【0048】
そうでないことが言明されていない限り、本明細書に記載のいずれの方法が、そのステップを特定の順序で実施することを必要とするものとして解釈されることは、全く意図されていない。従って、ある方法クレームが、そのステップが従うべき順序を実際に列挙していない場合、又はステップをある特定の順序に限定するべきであることが、特許請求の範囲若しくは説明中で具体的に言明されていない場合、いずれの特定の順序が推定されることは全く意図されていない。
【0049】
特定の実施形態の様々な特徴、要素又はステップが、移行句「…を含む/備える(comprising)」を用いて開示される場合があるが、移行句「…からなる(consisting of)」又は「…から本質的になる(consisting essentially of)」を用いて記載され得るものを含む代替実施形態も含意されていることを理解されたい。従って例えば、A+B+Cを含むデバイスに対して含意されている代替実施形態は、デバイスがA+B+Cからなる実施形態、及びデバイスがA+B+Cから本質的になる実施形態を含む。
【0050】
本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を本開示に対して実施できることは、当業者には理解されるだろう。本開示の精神及び内容を組み込んだ、本開示の実施形態の修正、組み合わせ、部分的組み合わせ及び変形が、当業者には想起され得るため、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある全てを含むものとして解釈されるものとする。
【0051】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0052】
実施形態1
第1の透明又は半透明の材料の第1のシートであって、上記第1のシートは第1の厚さを有し、上記第1の透明又は半透明の材料は、0~約300℃にわたって測定される第1の熱膨張係数(CTE)を有する、第1のシート;
第2の透明又は半透明の材料の第2のシートであって、上記第2のシートは第2の厚さを有し、上記第2の透明又は半透明の材料は第2の熱膨張係数(CTE)を有する、第2のシート;並びに
上記第1のシートと上記第2のシートとの間に接着された、上記第1のシートと上記第2のシートとの間のポリマー中間層であって、上記ポリマー中間層は、
第1のポリマー材料の第1のポリマー層であって、上記第1のポリマー材料は第1の弾性率を有する、第1のポリマー層;及び
第2のポリマー材料の第2のポリマー層であって、上記第2のポリマー材料は第2の弾性率を有する、第2のポリマー層
を備える、ポリマー中間層
を備える、積層板ガラスであって、
上記CTEは上記CTEより大きく、上記第2の厚さは約1~約0.3mmであり、上記第2の透明又は半透明の材料は無機ガラスであり、上記第1の弾性率は、上記第2の弾性率の約20倍より大きい、積層板ガラス。
【0053】
実施形態2
上記第1の透明又は半透明の材料は有機ポリマー材料である、実施形態1に記載の積層板ガラス。
【0054】
実施形態3
上記第1の透明又は半透明の材料はソーダライムシリケートガラスである、実施形態1に記載の積層板ガラス。
【0055】
実施形態4
上記第2のCTEは約50×10-7/℃未満であり、かつ0より大きい、実施形態1~3のいずれか1つに記載の積層板ガラス。
【0056】
実施形態5
上記第2のCTEは約35×10-7/℃未満であり、かつ0より大きい、実施形態1~4のいずれか1つに記載の積層板ガラス。
【0057】
実施形態6
上記第2の透明又は半透明の材料はボロアルミノシリケートガラスである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の積層板ガラス。
【0058】
実施形態7
上記第2の透明又は半透明の材料はアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス又はアルカリ非含有ボロアルミノシリケートガラスである、実施形態1~6のいずれか1つに記載の積層板ガラス。
【0059】
実施形態8
上記第2の厚さは約0.85~約0.4mmである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の積層板ガラス。
【0060】
実施形態9
上記第2の厚さは約0.8~約0.45mmである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の積層板ガラス。
【0061】
実施形態10
上記第1の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約300~約1000MPaである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の積層板ガラス。
【0062】
実施形態11
上記第1の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、約400~約600MPaである、実施形態1~10のいずれか1つに記載の積層板ガラス。
【0063】
実施形態12
上記第2の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、上記第1の弾性率の1/30未満である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の積層板ガラス。
【0064】
実施形態13
上記第2の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、上記第1の弾性率の1/40未満である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の積層板ガラス。
【0065】
実施形態14
上記第2の弾性率は、30℃において伸長速度10mm/分で測定した場合に、上記第1の弾性率の約1/100未満である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の積層板ガラス。
【0066】
実施形態15
上記ポリマー中間層は更に、上記第1のポリマー材料の第3のポリマー層を備える、実施形態1~14のいずれか1つに記載の積層板ガラス。
【0067】
実施形態16
実施形態1~15のいずれか1つに記載の板ガラスを備える、窓。
【符号の説明】
【0068】
10 外側板ガラス
12 内側積層板ガラス
20 第1のシート
30、70 第2のシート
40 ポリマー中間層
41 第1のポリマー層
42 第2のポリマー層
43 第3のポリマー層
44 第4のポリマー層
50 シート
60 スペーサー
100 窓
200 窓、又はIGU
S1 窓200の第1の表面
S2 窓200の第2の表面
S3 窓200の第3の表面
S4 窓200の第4の表面
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】