(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】非極性炭化水素から極性液体を分離するための吸着性ポリマー構造
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20220112BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220112BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220112BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20220112BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B01J20/26 J
B01J20/28 Z
B01J20/30
C02F1/28 N
C08F292/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530174
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(85)【翻訳文提出日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 US2019056526
(87)【国際公開番号】W WO2020112267
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(71)【出願人】
【識別番号】514250632
【氏名又は名称】キング ファハド ユニバーシティ オブ ペトロリアム アンド ミネラルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルグナイミ、ファハド イブラヒム
(72)【発明者】
【氏名】サレハ、タウフィク エー
【テーマコード(参考)】
4D624
4G066
4J026
【Fターム(参考)】
4D624AA04
4D624AB06
4D624BA17
4D624BC04
4G066AA04C
4G066AA43D
4G066AA47D
4G066AA51D
4G066AB15D
4G066AC14B
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA05
4G066CA51
4G066DA08
4G066FA03
4G066FA08
4J026AC00
4J026BA05
4J026BB01
4J026DB04
4J026DB08
4J026DB14
4J026FA08
4J026GA08
(57)【要約】
吸着性ポリマー構造が記載される。これらの吸着性ポリマー構造は、水などの極性液体から原油またはディーゼル燃料などの非極性炭化水素を分離することができる。吸着性ポリマー構造は、酸グラフト化グラフェンおよび少なくとも1つのスチレンを含み得る。による吸着性ポリマー構造を調製する方法は、少なくとも1つのアルコールの存在下の極性液体中でグラフェンと少なくとも1つの酸触媒とを混合して、エステル化反応を介して酸グラフト化グラフェンを形成することを含み得、酸グラフト化グラフェンおよび少なくとも1つのスチレンモノマーが、開始剤の存在下で水に導入されて、乳化重合反応を介して前述の実施形態のいずれかによる吸着性ポリマー構造を形成する。さらに、吸着性ポリマー構造は、極性液体から少なくとも1つの非極性炭化水素を流体的に分離する方法に組み込まれ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)による吸着性ポリマー構造であって、
【化1】
式中、
R
1が、5個の炭素~15個の炭素を有する脂肪族部分であり、
nが、1~20の範囲の整数であり、
X
1が、20個の炭素~100個の炭素を有するグラフェン含有部分である、吸着性ポリマー構造。
【請求項2】
前記脂肪族部分R
1が、9個の炭素を有する、請求項1に記載の吸着性ポリマー構造。
【請求項3】
nが、5の値を有する整数である、請求項1または2に記載の吸着性ポリマー構造。
【請求項4】
X
1が、25個の炭素~75個の炭素を有するグラフェン含有部分である、請求項1~3のいずれかに記載の吸着性ポリマー構造。
【請求項5】
前記式(I)による吸着性ポリマー構造が、少なくとも250m
2/gのBET表面積を有する、請求項1~4のいずれかに記載の吸着性ポリマー構造。
【請求項6】
前記吸着性ポリマー材料の前記グラフェン含有部分X
1が、一般式(Ia)を有するグラフェン基を含む、請求項1~5のいずれかに記載の吸着性ポリマー構造。
【化2】
【請求項7】
式(I)による吸着性ポリマー構造を調製する方法であって、
【化3】
少なくとも1つのアルコールの存在下の極性液体中でグラフェンと少なくとも1つの酸触媒とを混合して、エステル化を介して酸グラフト化グラフェンを形成することと、
開始剤の存在下で前記酸グラフト化グラフェンおよび少なくとも1つのスチレンモノマーを水に導入して、乳化重合を介して前記式(I)による吸着性ポリマー構造を形成することと、を含み、
前記開始剤が、前記酸グラフト化グラフェンの二重結合を切断して、反応部位を生成し、
前記少なくとも1つのスチレンモノマーが、前記反応部位で重合し、
R
1が、5個の炭素~15個の炭素を有する脂肪族部分であり、
nが、1~20の範囲の整数であり、
X
1が、20個の炭素~100個の炭素を含むグラフェン含有部分である、方法。
【請求項8】
前記開始剤が、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのアルコールが、式C
xH
2x+1Oを有し、xが1~12の範囲の整数である直鎖第一級アルコールを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
重炭酸ナトリウムを含む少なくとも1つのイオン塩を含む緩衝剤が、乳化重合反応中に添加される、請求項7~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ドデシル硫酸ナトリウムを含む界面活性剤が、乳化重合反応中に添加される、請求項7~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記吸着性ポリマー材料の前記グラフェン含有部分X
1が、一般式(Ia)を有するグラフェン基を含む、請求項7~11のいずれかに記載の方法。
【化4】
【請求項13】
極性液体から少なくとも1つの非極性炭化水素を流体的に分離する方法であって、式(I)による吸着性ポリマー構造を、
【化5】
前記少なくとも1つの非極性炭化水素を含む前記極性液体と接触させることと、
前記少なくとも1つの非極性炭化水素が前記極性液体から流体的に分離されるように、前記少なくとも1つの非極性炭化水素を含む前記極性液体が、前記吸着性ポリマー構造によって少なくとも部分的に吸着されるのを可能にすることと、を含み、
R
1が、5~15個の炭素を有する脂肪族部分であり、
nが、1~20の範囲の整数であり、
X
1が、20個の炭素~100個の炭素を含むグラフェン含有部分である、方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの非極性炭化水素が、原油、ディーゼル燃料、またはそれらの組み合わせを含み、前記少なくとも1つの非極性炭化水素が、20°~60°の範囲のAPI比重を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記式(I)による吸着性ポリマー構造が、少なくとも250m
2/gのBET表面積および100%~300%の範囲の重量増加率を有する、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月26日に申請された米国出願第16/199,833号に対する優先権を主張し、その開示全体が参照によって組み込まれる。
【0002】
本明細書は、一般に、非極性炭化水素からの極性液体の分離を可能にするポリマー吸着性材料に関する。
【背景技術】
【0003】
油溢流および産業有機汚染物質は、世界中の生態系を脅かす広範な水質汚染を引き起こしてきた。さらに、生成水処理および廃水の再利用は、流体の流出仕様および環境規制を満たすために油含有量の低減を必要とする環境に悪い流体を生成することがよくある。これらの脅威から環境を保護するために、水から油を除去することができる様々な材料が開発されてきた。
【0004】
これらの材料は、水から油を除去するのに役立つ疎水性および親油性の両方の特性を示す必要がある。そのような材料は、非極性炭化水素にさらされたときに100%を超える重量増加率の増加によって示され得る高い油吸着容量、ならびに低い水吸着も示す必要がある。しかし、現在の材料および分離方法は、多くの場合、環境に悪影響を引き起こし、乏しい効率を有する。例えば、海綿状グラフェンを利用する典型的な吸着性材料は、安定性が低く、その結果、海綿状グラフェンが凝集して、効率が低減する。
【発明の概要】
【0005】
したがって、水からの油の分離を増強する材料が継続的に必要とされている。本開示の実施形態は、水などの極性液体からの原油などの非極性炭化水素の吸着の増加を示すことによって、この必要性を満たす吸着性ポリマー構造を対象とする。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態によれば、式(I)による吸着性ポリマー構造が開示される。
【化1】
【0007】
式(I)において、X1は、20個の炭素~100個の炭素を有するグラフェン含有部分である。式(I)の下付き文字nは、少なくとも1つのスチレンモノマー置換基の繰り返し単位の数を表す。いくつかの実施形態において、下付き文字nは、1~20の範囲の整数である。式(I)において、R1は、5個の炭素~15個の炭素、または7個~11個の炭素を有する脂肪族部分である。
【0008】
さらなる実施形態によれば、式(I)による吸着性ポリマー構造を調製する方法が提供される。本方法は、少なくとも1つのアルコールの存在下の極性液体中でグラフェンと少なくとも1つの酸触媒とを混合して、エステル化反応を介して酸グラフト化グラフェンを形成することを含む。酸グラフト化グラフェンが形成されると、酸グラフト化グラフェンおよび少なくとも1つのスチレンモノマーが、開始剤の存在下で水に導入されて、乳化重合反応を介して前述の実施形態のいずれかによる吸着性ポリマー構造を形成する。乳化重合反応中に、開始剤は、酸グラフト化グラフェンの二重結合を切断して、反応部位を生成する。次いで、スチレンは、反応部位で重合する。これらの実施形態において、R1は5個の炭素~15個の炭素を有する脂肪族部分であり、nは1~20の範囲の整数であり、X1は20個の炭素~100個の炭素を含むグラフェン含有部分である。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、極性液体から少なくとも1つの非極性炭化水素を流体的に分離する方法は、式(I)による吸着性ポリマー構造を、少なくとも1つの非極性炭化水素を含む極性液体と接触させることと、少なくとも1つの非極性炭化水素が極性液体から流体的に分離されるように、極性液体からの少なくとも1つの非極性炭化水素が吸着性ポリマー構造によって少なくとも部分的に吸着されるのを可能にすることと、を含む。
【0010】
本出願に記載の実施形態の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、かつ一部はその説明から当業者に容易に明らかになるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む本出願に記載の実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0011】
添付の図面は、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本出願に記載の様々な実施形態を例示し、説明と共に、特許請求される主題の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】様々な非極性炭化水素の実施形態による、吸着性ポリマー構造の重量増加率を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示における、「少なくとも1つ」の構成成分、要素、構成物、化合物、または他の特徴の記述は、「a」または「an」という冠詞の代替使用が単一の構成成分、要素、構成物、化合物、または特徴に限定されるべきであるという推測を作成するために使用されるべきではない。例えば、「アルコール」は、1つのアルコールまたは複数のアルコールを指す場合がある。
【0014】
「エステル化」という用語は、任意の好適なフィッシャーエステル化反応として定義され得る。フィッシャーエステル化は、酸触媒の存在下でカルボン酸およびアルコールを還流することを含むエステル化反応である。そのようなエステル化反応の反応機構は、(1)酸触媒から酸触媒のカルボニル酸素へのプロトン移動によってカルボニル炭素の求電子性が増加することと、(2)次いでカルボニル炭素がアルコールの求核性酸素原子と反応して、オキソニウムイオンを形成することと、(3)オキソニウムイオンからアルコールの第2の分子へのプロトン移動によって活性化された錯体が得られることと、(4)活性化された錯体のヒドロキシル基のうちの1つがプロトン化されると、新しいオキソニウムイオンが得られることと、(5)このオキソニウムイオンからの水の損失およびそれに続く脱プロトン化によって、エステルが生成されることと、を含む。本明細書の実施形態において、酸触媒は9-オクタデセン酸などの不飽和脂肪酸であり得、アルコールはエタノールであり得、カルボン酸はグラフェンであり得る。実施形態において、そのような反応は、酸グラフト化グラフェンを生成する。
【0015】
「乳化重合」という用語は、典型的にはエマルジョン、少なくとも1つのモノマー、および少なくとも1つの開始剤で始まるラジカル重合として定義され得る。最も一般的なタイプの乳化重合は、水中油型乳化であり、ここで、少なくとも1つのモノマーの液滴が、水の連続相において少なくとも1つの界面活性剤で乳化される。実施形態において、少なくとも1つのモノマーはスチレンモノマーであり得、エマルジョンは酸グラフト化グラフェンであり得、開始剤は過硫酸カリウムなどの任意の過硫酸塩であり得る。
【0016】
「グラフト化」という用語は、グラフェンなどの化合物の共有結合したポリマー側鎖として定義され得る。同様に、グラフト化は、表面にポリマー鎖を追加することを指す。
【0017】
「分岐」という用語は、脂肪酸などの脂肪族分子によって定義される線形骨格から延びていると定義され得る。
【0018】
水からの油の除去は、生成水処理、廃水の再利用、ならびに淡水および汽水からの油の除去などの様々な用途で利用されるプロセスである。生成水処理では、流出流体の仕様および環境規制を満たすために、油含有量をほとんど検出できない量に低減する必要がある。ここでは、前に示したように、式(I)による吸着性ポリマー構造が開示される。この超疎水性/親油性構造は、水などの極性液体から原油などの非極性炭化水素を効果的に分離する。ここで、「超疎水性」という用語は、実施形態に従って記載されるものなどの超疎水性材料上の水滴の接触角が150°を超え、滑り角が10°未満であるために濡れにくい表面として定義される。
【0019】
したがって、ここで吸着性ポリマー構造の実施形態について詳細な言及がなされる。吸着性ポリマー構造を生成するための方法、および吸着性ポリマー構造を用いて極性液体から非極性炭化水素を流体的に分離するための方法の実施形態は、後に開示される。
【0020】
ここで、吸着性ポリマー構造について記載される。実施形態による吸着性ポリマー構造は、ポリスチレン分岐酸グラフト化グラフェンを含む。本開示における化学構造の全ての表現において、結合に垂直に引かれた波線は、化学構造と別の化学構造または官能基との接続点を示し、波線によって切断された結合が、表現に示されていない別の原子まで及ぶことを意味することを理解されたい。
【0021】
実施形態において、吸着性ポリマー構造は、一般式(I)による酸グラフト化グラフェンを含み得る。
【化2】
式(I)において、X
1は、20個の炭素~100個の炭素を有するグラフェン含有部分である。式(I)の下付き文字nは、少なくとも1つのスチレンモノマー置換基の繰り返し単位の数を表す。いくつかの実施形態において、下付き文字nは、1~20の範囲の整数である。式(I)において、R
1は、5個の炭素~15個の炭素を有する脂肪族部分である。
【0022】
いくつかの実施形態において、グラフェン含有部分は、20個の炭素~100個の炭素、25個の炭素~100個の炭素、50個の炭素~100個の炭素、75個の炭素~100個の炭素、25個の炭素~75個の炭素、50個の炭素~75個の炭素、25個の炭素~50個の炭素、または25個の炭素~100個の炭素の任意の他の好適な範囲を含む。
【0023】
他の実施形態において、グラフェン含有部分は、500グラム/モル(g/mol)~3,000g/mol、750g/mol~2500g/mol、1,000g/mol~2,000g/molの範囲、または500g/mol~3,000g/molの任意の他の好適な範囲の重量平均分子重量を有する。
【0024】
1つ以上の実施形態において、吸着性ポリマー材料のグラフェン含有部分X
1は、一般式(Ia)を有するグラフェン基から選ばれ得る。
【化3】
【0025】
式(I)を再度参照すると、実施形態において、少なくとも1つのスチレンモノマー置換基の繰り返し単位の数を表す下付き文字nは、1~20、1~15、1~10、1~8、2~15、3~10、4~7、または1~20の任意の他の好適な範囲の整数である。
【0026】
他の実施形態において、式(I)の脂肪族部分R1は、5個の炭素~25個の炭素、7個の炭素~25個の炭素、9個の炭素~25個の炭素、5個の炭素~15個の炭素、7個の炭素~15個の炭素、9個の炭素~15個の炭素、5個の炭素~13個の炭素、7個の炭素~13個の炭素、9個の炭素~13個の炭素、5個の炭素~11個の炭素、7個の炭素~11個の炭素、9個の炭素~11個の炭素、5個の炭素~9個の炭素、7個の炭素~9個の炭素、または5個の炭素~25個の炭素の任意の他の好適な範囲を含む。特定の実施形態において、脂肪族部分は、9個の炭素を有する。
【0027】
式(I)の吸着性ポリマー構造は、実施形態において、少なくとも50平方メートル/グラム(m2/g)のブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を有する。より大きなBET表面積は、固体表面上へのガス分子の物理吸着の改善と相関する。したがって、BET表面積表面積は、非極性炭化水素を吸着するための式(I)の吸着性ポリマー構造の表面上の利用可能な部位の数を予測するために使用され得る。さらなる実施形態において、式(I)の吸着性ポリマー構造は、少なくとも75m2/g、少なくとも100m2/g、少なくとも150m2/g、少なくとも200m2/g、少なくとも250m2/g、または少なくとも300m2/gのBET表面積を有する。いくつかの実施形態において、式(I)の吸着性ポリマー構造は50m2/g~300m2/g、75m2/g~300m2/g、100m2/g~300m2/g、150m2/g~300m2/g、200m2/g~300m2/g、250m2/g~300m2/g、または50m2/g~300m2/gの任意の他の好適な範囲のBET表面積を有する。
【0028】
例示的な実施形態において、吸着性ポリマー構造は、一般式(II)による酸グラフト化グラフェンを含み得る。
【化4】
【0029】
前述の実施形態のいずれかによる吸着性ポリマー構造は、任意の好適な化学反応または一連の反応によって調製され得る。合成アプローチでは、グラフェンおよび少なくとも1つの酸触媒が、少なくとも1つのアルコールの存在下の極性液体中で混合されて、エステル化反応を介して酸グラフト化グラフェンを形成する。酸グラフト化グラフェンが形成されると、酸グラフト化グラフェンおよび少なくとも1つのスチレンモノマーが、開始剤の存在下で水に導入されて、乳化重合反応を介して前述の実施形態のいずれかによる吸着性ポリマー構造を形成する。乳化重合反応中に、開始剤は、二重結合を切断し、それによって酸グラフト化グラフェンの反応部位を生成する。次いで、スチレンは、反応部位で重合する。これらの実施形態において、R1は5個の炭素~15個の炭素を有する脂肪族部分であり、nは1~20の範囲の整数であり、X1は20個の炭素~100個の炭素を含むグラフェン含有部分である。
【0030】
実施形態において、グラフェンは、少なくとも1つの酸触媒でエステル化されて、酸グラフト化グラフェンを得る。具体的には、少なくとも1つの酸触媒のヒドロキシル基は、エステル化を介してグラフェンのカルボキシル基と相互作用する。次いで、少なくとも1つのスチレンモノマー置換基の乳化重合は、酸グラフト化グラフェン上で行われ、ポリスチレン分岐酸グラフト化グラフェンを生成する。
【0031】
グラフェンは、実施形態によれば、吸着性ポリマー構造の表面積を改善し、また、少なくとも1つの酸触媒と相互作用するときに、疎水性分岐の成長のための基質として機能する。酸グラフト化グラフェンは、その場での乳化重合を介して、その二重結合によって少なくとも1つのスチレンで官能化される。重量で(スチレンに対して)酸グラフト化グラフェンの比率が増加した吸着性ポリマー構造は、非極性炭化水素の取り込みが改善されていることを示し、それによって油および水の効率的な分離を示す。
【0032】
一般式(II)に従って酸グラフト化グラフェンを生成するための反応機構は、次のように示される。
【化5】
【化6】
【0033】
反応1において、一般式(III)として示されるグラフェンを、一般式(IV)として示される酸触媒(すなわち、9-オクタデセン酸)でエステル化して、一般式(V)。より具体的には、反応1において、グラフェンは、水とエタノールとの混合物に分散され、摂氏25度(℃)の周囲温度で攪拌する。続いて、ある量のアンモニアが添加され、混合物は再び撹拌される。酸グラフト化グラフェンを分離するために、得られた混合物を遠心分離して、次いでこれを乾燥させる。
【0034】
次いで、反応2において、一般式(VI)として示される少なくとも1つのスチレンモノマー置換基の乳化重合が酸グラフト化グラフェン上で行われて、一般式(II)として示される吸着性ポリマー構造を生成する。より具体的には、反応2において、重炭酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が、攪拌条件下で、酸素を除去するために、不活性環境で水に添加される。次いで、酸グラフト化グラフェンおよびスチレンモノマーが、混合物に添加される。次いで、まだ不活性環境下にある間に、酸グラフト化グラフェンの酸触媒上でスチレンの重合を開始するために、開始剤(すなわち、過硫酸カリウム)が添加される。次いで、混合物は、80℃に加熱され、還流条件下で撹拌される。次いで、酸グラフト化グラフェン上の任意の酸化部位を部分的に低減するために、無機水和物が添加される。次いで、混合物は周囲温度に冷却され、遠心分離で分離され、水で洗浄され、乾燥されて、一般式(II)として示される吸着性ポリマー構造を生成する。
【0035】
前の実施形態のいずれかによる酸グラフト化グラフェンを調製する方法をさらに参照すると、少なくとも1つの酸触媒は、任意の好適なオメガ脂肪酸を含む。好適なオメガ脂肪酸の例には、オメガ-3脂肪酸、オメガ-5脂肪酸、オメガ-6脂肪酸、オメガ-7脂肪酸、オメガ-9脂肪酸、またはそれらの組み合わせなどの不飽和オメガ脂肪酸オメガ脂肪酸が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの脂肪酸は、9-オクタデセン酸などのオメガ-9脂肪酸を含む。
【0036】
少なくとも1つのアルコールは、式CxH2x+1Oを有する直鎖第一級アルコールであり得る。これらの実施形態において、xは、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~5、1~4、1~3、1~2、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3の範囲、または1~12の任意の他の好適な範囲の整数である。特定の実施形態において、少なくとも1つのアルコールは、エタノールなどの式C2H6Oを有する直鎖第一級アルコールを含む。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、官能化を増強するために、エステル化反応中に少なくとも1つの無機アミンが添加される。好適な無機アミンには、アンモニア、アンモニアボラン、クロラミン、ジクロラミン、ヒドロキシルアミン、三臭化窒素、三塩化窒素、三フッ化窒素、三ヨウ化窒素、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、少なくとも1つの無機アミンは、アンモニアを含む。
【0038】
実施形態において、エステル化反応中にグラフェンおよび少なくとも1つの酸触媒が混合される極性液体は、極性物質を含む任意の液体を含む。極性物質は、分子の一端に正電荷を有し、分子の他端に負電荷を有する分子を含み得る。好適な極性液体の例には、水、メタノール、エタノール、アンモニア、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、極性液体は水を含む。いくつかの実施形態において、極性液体は、5~10、6~9、6~8の範囲のpH、または約7のpHを有する。
【0039】
酸グラフト化グラフェンが前述の実施形態のいずれかによる方法から形成されると、酸グラフト化グラフェンおよび少なくとも1つのスチレンモノマーは、開始剤の存在下で水に導入されて、乳化重合を介して式(II)による吸着性ポリマー構造を形成する。
【0040】
乳化重合反応において、開始剤は、酸グラフト化グラフェンの二重結合を切断することによって重合を開始する(図については、反応2の二重結合を参照されたい)。この反応部位は、結合が切断されるとグラフェンに連結する少なくとも1つの酸触媒の脂肪族鎖上に存在するようになり、その結果、炭素が帯電し、したがって反応性になる。二重結合を切断して、反応部位を形成すると、少なくとも1つのスチレンモノマーが反応部位で重合する。特定の実施形態において、界面活性剤は、乳化重合反応中、水中で酸グラフト化グラフェンの配向を維持する。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、開始剤は、1つ以上の硫黄原子に連結した過酸化物単位を含む任意のオキシアニオンまたはその関連塩を含む。好適な開始剤は、乳化重合を開始するために使用され得る任意の酸化剤を含む。好適な過硫酸塩の例には、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、開始剤は、過硫酸カリウムを含む。
【0042】
1つ以上の実施形態によれば、反応のpHを維持するために、乳化重合反応中に緩衝剤が添加される。好適な緩衝剤には、重炭酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、またはそれらの組み合わせなどの少なくとも1つのイオン塩が含まれる。特定の実施形態において、緩衝剤は、重炭酸ナトリウムを含む。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、反応中の水の表面張力を低減するために、乳化重合反応中に界面活性剤が添加される。好適な界面活性剤には、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ラウリル硫酸アンモニウム、ペルフルオロノナン酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、マイレス硫酸ナトリウム、パレス硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせなどの陰イオン性界面活性剤が含まれる。特定の実施形態において、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムを含む。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、酸グラフト化グラフェン上の任意の未反応部位を部分的に低減するために、乳化重合反応中に無機水和物が添加される。無機水和物は、任意の無機塩含有水分子を含む。好適な無機水和物には、半水和物、一水和物、セスキ水和物、二水和物、三水和物、四水和物、五水和物、六水和物、七水和物、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、少なくとも1つの無機水和物は、ヒドラジン水和物を含む。
【0045】
ある量の少なくともスチレンモノマーおよびある量の酸グラフト化グラフェンは、乳化重合反応中に一定の比率で添加され得る。酸グラフト化グラフェンの量の比率が増加すると、吸着性ポリマー構造の表面積も増加する。そのような表面積の増加は、吸着特性の増加をもたらし得る。実施形態において、酸グラフト化グラフェン対少なくともスチレンモノマーの体積比は、少なくとも2.5:1、少なくとも5:1、少なくとも7.5:1、または少なくとも10:1である。他の実施形態において、酸グラフト化グラフェン対少なくともスチレンモノマーの体積比は、2.5:1~10:1、2.5:1~7.5:1、5:1~10:1、5:1~7.5:1、7.5:1~10:1の範囲、または2.5:1~10:1の任意の他の好適な範囲である。
【0046】
したがって、吸着性ポリマー構造を調製する方法の様々な実施形態が記載されてきた。記載される構成成分のすべては、Sigma Aldrich(St.Louis,Missouri)から調達され得る。
【0047】
ここで、極性液体から非極性炭化水素を流体的に分離するための方法の実施形態が記載される。本方法は、前述の実施形態のいずれかによる1つまたは2つ以上の吸着性ポリマー構造を含み得る。
【0048】
前述の実施形態のいずれかによる吸着性ポリマー構造は、極性液体から少なくとも1つの非極性炭化水素を流体的に分離する方法に組み込まれ得る。実施形態において、式(I)による吸着性ポリマー構造は、少なくとも1つの非極性炭化水素を含む極性液体と接触させられる。次いで、少なくとも1つの非極性炭化水素を含む極性液体は、少なくとも1つの非極性炭化水素が極性液体から流体的に分離されるように、吸着性ポリマー構造によって少なくとも部分的に吸着されることが可能である。特定の実施形態において、極性液体は、水を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの非極性炭化水素は、原油、ディーゼル燃料、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの非極性炭化水素のAPIは、20°~60°、24°~60°、28°~60°、32°~60°、36°~60°、40°~60°、44°~60°、48°~60°、20°~52°、24°~52°、28°~52°、32°~52°、36°~52°、40°~52°、44°~52°、20°~52°、20°~52°、20°~40°、24°~40°、28°~40°、32°~40°、36°~40°、24°~40°、20°~33°、22°~33°、24°~33°、26°~33°、28°~33°、30°~33°、20°~32°、22°~32°、24°~32°、26°~32°、28°~32°、30°~32°の範囲、または20°~60°の任意の他の好適な範囲であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、式(I)の吸着性ポリマー構造は、100%~300%の範囲の重量増加率を有する。この比率は、式(I)の吸着性ポリマー構造が非極性炭化水素と接触した後に計算され、構造の吸着容量を示す。そのような重量増加率は、式(I)の吸着性ポリマー構造が非極性炭化水素の吸着のための効率的な材料であることを示す。特定の実施形態において、式(I)の吸着性ポリマー構造の重量増加率は、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、少なくとも200%、少なくとも210%、少なくとも220%、少なくとも230%、少なくとも240%、少なくとも250%、少なくとも260%、または少なくとも270%である。
【実施例】
【0051】
以下の実施例は、前述の本開示の1つ以上の追加の特性を例示する。
【0052】
I以下の実施例において、様々な吸着性ポリマー構造を調製し、水から非極性炭化水素を流体的に分離するそれらの適合性について試験した。
【0053】
一般的に、グラフェンを湿式化学処理プロセスによって廃黒鉛から合成した。グラフェンを、20グラム(g)の廃黒鉛および6gの硝酸ナトリウムを氷浴で攪拌しながら、1リットル(L)の丸底フラスコ内の200ミリリットル(mL)の硫酸と200mLの硝酸との混合物に導入することによって調製した。次いで、10gの過硫酸ナトリウムを、連続的に攪拌しながら、連続的な間隔で丸底フラスコに導入した。混合物を撹拌しながら8時間反応させたら、200mLの蒸留水を丸底フラスコに滴下した。次いで、混合物を90℃で24時間維持した。混合物を冷却した後、混合物の色が暗黄色になるまで過酸化水素(30%)を滴下した。丸底フラスコの内容物を室温でさらに3時間撹拌した。攪拌後、次いで丸底フラスコの内容物を10,000rpmで遠心分離して、酸化グラフェンを得た。
【0054】
次いで、酸化グラフェンを3:1の重量の水とエタノールとの混合物に分散した。次いで、5mLのオレイン酸を室温で2時間激しく撹拌しながら混合物に添加した。5mLの1モル濃度(M)アンモニアを混合物に添加して、撹拌下でさらに12時間保った。混合物を再び10,000回転/分(rpm)で遠心分離して、酸グラフト化グラフェンを得た。
【0055】
酸グラフト化グラフェンが得られたら、0.2gの重炭酸ナトリウム、0.2gのドデシル硫酸ナトリウム、および150mLの水を、窒素の不活性環境中で6時間撹拌しながら口付きフラスコに添加した。次いで、エタノールに溶解した酸グラフト化グラフェンおよび10mLのスチレンモノマーを口付きフラスコに導入した。窒素の不活性環境下で、0.4gの過硫酸カリウムを滴下して、酸グラフト化グラフェンの鎖上でスチレンの重合を開始した。混合物を還流下で80℃、6時間撹拌下に保った。攪拌が完了した後、5mLのヒドラジン水和物を口付きフラスコに滴下して、未反応のグラフェン部位を部分的に低減した。口付きフラスコの内容物をさらに6時間還流下で撹拌した。混合物を冷却し、得られた吸着性ポリマー構造を分離し、洗浄、乾燥させた。
【0056】
前述の方法に従って、3つの吸着性ポリマー構造を作成した。第1の吸着性ポリマー構造(「構造1」)を、25mgの酸グラフト化グラフェンを使用して合成した。第2の吸着性ポリマー構造(「構造2」)を、50mgの酸グラフト化グラフェンを使用して合成した。第3の吸着性ポリマー構造(「構造3」)を、75mgの酸グラフト化グラフェンを使用して合成した。
【0057】
T3つの構造をN2物理吸着ブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積分析装置によって特徴づけた。構造1は、79m2/gのBET表面積を有することが判明し、構造2は、225m2/gのBET表面積を有することが判明し、構造3は、288m2/gのBET表面積を有することが判明した。
【0058】
3つの構造の疎水性性能を、様々な非極性炭化水素およびメチレン着色水のエマルジョンを使用して評価した。0.5mLの非極性炭化水素を4.5mLのメチレン着色水に混合することによって、異なるエマルジョンを調製した。試験した非極性炭化水素は、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびヘキサデカンであった。様々なエマルジョンを調製するために、1つの非極性炭化水素およびメチレン着色水を試験管に導入し、激しく振とうした。十分に混合した後、前述の実施形態のいずれかによる吸着性ポリマー構造を試験管に添加した。メチレン着色水から非極性炭化水素を吸着する吸着性ポリマー構造の能力を、1分、5分、45分、および60分で評価した。
【0059】
構造1の吸着能力は、試験した非極性炭化水素の吸着に好適であることが判明した。しかし、構造2の吸着能力は、構造内に存在するグラフト化グラフェンの増加量によって大幅に改善した。例えば、構造2は、5分以内に試験管内に存在するヘプタンのすべてを吸着することができた。さらに、構造3は、1分未満で試験管内に存在するヘプタンのすべてを吸着できたため、構造2を上回る増強された効率を示した。構造内に存在するグラフト化グラフェンの量を増加すると、構造の吸着能力が増加することは明白である。
【0060】
非極性炭化水素の長さが吸着性ポリマー構造の吸着特性に対して有する影響について洞察を得るために、様々な量の構造3を様々な非極性炭化水素エマルジョンで試験した。これらのエマルジョンを調製するために、0.5mLの非極性炭化水素を4.5mLのメチレン着色水に試験管内で添加した。次いで、様々な量の構造3を試験管に添加した。具体的には、0.05gの構造3、0.1gの構造3、0.2gの構造3、および0.3gの構造3を異なるエマルジョンに添加した。結果は、試験管に添加される構造3の量が増加すると、構造3が非極性炭化水素を吸着するのにかかった時間が減少することを示した。0.3gの構造3の量は、攪拌の2~10分以内にヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびヘキサデカンを完全に吸着するのに十分であった。さらに、構造3が膨潤し始めたことも試験から明らかであり、これは、非極性炭化水素がポリマー構造に吸着したことを示す。
【0061】
重量増加率による様々な非極性炭化水素の吸着容量について、構造3をさらに試験した。構造3は、様々な非極性炭化水素に対して優れた吸着能力を示した。具体的には、構造3の材料重量増加率は、ヘキサンの111%~ヘキサデカンの271%の範囲であることが判明した。これらの結果は
図1に見ることができ、これは、カーボンアルカン試験が大きいほど、吸着が大きいことを示している。そのため、構造3は、様々な非極性炭化水素の複数の吸着に使用され得る。
【0062】
これらの結果から、本出願の実施形態による吸着性ポリマー構造が非極性炭化水素の効率的な吸着を実証することは明白である。吸着性ポリマー構造を形成するために使用される少なくとも1つの酸触媒は、酸グラフト化グラフェンとポリスチレンとの間の両方のリンカーとして機能し、その長鎖は、構造の疎水性を増加する。さらに、少なくとも1つの酸触媒は、ポリスチレンの分岐間のスペーサーとして機能する。吸着性ポリマー構造の酸グラフト化グラフェンの濃度を増加することによって、より反応性の高い部位および分岐が生成され、それによって増加した表面積が提供されて、非極性炭化水素の吸着を助ける。
【0063】
本開示の第1の態様によれば、本開示に記載されるような式(I)による吸着性ポリマー構造が開示される。この態様において、X1は、20個の炭素~100個の炭素を有するグラフェン含有部分である。式(I)の下付き文字nは、少なくとも1つのスチレンモノマー置換基の繰り返し単位の数を表す。いくつかの実施形態において、下付き文字nは、1~20の範囲の整数である。式(I)において、R1は、5個の炭素~15個の炭素、または7個~11個の炭素を有する脂肪族部分である。
【0064】
本開示の第2の態様は、第1の態様を含み得、ここで、脂肪族部分R1は、9個の炭素を有する。
【0065】
本開示の第3の態様は、第1の態様または第2の態様を含み得、ここで、nは、5の値を有する整数である。
【0066】
本開示の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれかを含み得、ここで、X1は、25個の炭素~75個の炭素を有するグラフェン含有部分である。
【0067】
本開示の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれかを含み得、ここで、式(I)による吸着性ポリマー構造は、少なくとも250m2/gのBET表面積を有する。
【0068】
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれかを含み得、ここで、ここで、本開示に記載されるように、吸着性ポリマー材料のグラフェン含有部分X1は、一般式(Ia)を有するグラフェン基を含む。
【0069】
本開示の第7の態様によれば、本開示に記載されるように、式(I)による吸着性ポリマー構造を調製する方法は、少なくとも1つのアルコールの存在下の極性液体中でグラフェンと少なくとも1つの酸触媒とを混合して、エステル化を介して酸グラフト化グラフェンを形成することと、本開示に記載されるように、開始剤の存在下で酸グラフト化グラフェンおよび少なくとも1つのスチレンモノマーを水に導入して、乳化重合を介して式(I)による吸着性ポリマー構造を形成することと、を含む。この実施形態において、開始剤は酸グラフト化グラフェンの二重結合を切断して、反応部位を生成し、少なくとも1つのスチレンモノマーは反応部位で重合し、R1は5個の炭素~15個の炭素を有する脂肪族部分であり、nは1~20の範囲の整数であり、X1は20個の炭素~100個の炭素を含むグラフェン含有部分である。
【0070】
本開示の第8の態様は、第7の態様を含み得、ここで、開始剤は、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、またはそれらの組み合わせを含む。
【0071】
本開示の第9の態様は、第7の態様または第8の態様を含み得、ここで、少なくとも1つのアルコールは、式CxH2x+1Oを有し、xが1~12の範囲の整数である直鎖第一級アルコールを含む。
【0072】
本開示の第10の態様は、第7~第9の態様のいずれかを含み得、ここで、少なくとも1つのアルコールは、エタノールを含む。
【0073】
本開示の第11の態様は、第7~第10の態様のいずれかを含み得、ここで、乳化重合反応中に少なくとも1つのイオン塩を含む緩衝剤が添加される。
【0074】
本開示の第12の態様は、第7~第11の態様のいずれかを含み得、ここで、少なくとも1つのイオン塩は、重炭酸ナトリウムを含む。
【0075】
本開示の第13の態様は、第7~第12の態様のいずれかを含み得、ここで、乳化重合反応中に界面活性剤が添加される。
【0076】
本開示の第14の態様は、第7~第13の態様のいずれかを含み得、ここで、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムを含む。
【0077】
本開示の第15の態様は、第7~第14の態様のいずれかを含み得、ここで、極性液体は、水を含む。
【0078】
本開示の第16の態様は、第7~第15の態様のいずれかを含み得、ここで、X1は、25個の炭素~75個の炭素を有するグラフェン含有部分である。
【0079】
本開示の第17の態様は、第7~第16の態様のいずれかを含み得、ここで、式(I)による吸着性ポリマー構造は、少なくとも250m2/gのBET表面積を有する。
【0080】
本開示の第18の態様は、第7~第17の態様のいずれかを含み得、ここで、本開示に記載されるように、吸着性ポリマー材料のグラフェン含有部分X1は、一般式(Ia)を有するグラフェン基を含む。
【0081】
本開示の第19の態様によれば、極性液体から少なくとも1つの非極性炭化水素を流体的に分離する方法は、本開示に記載されるように、式(I)による吸着性ポリマー構造を、少なくとも1つの非極性炭化水素を含む極性液体と接触させることと、少なくとも1つの非極性炭化水素が極性液体から流体的に分離されるように、少なくとも1つの非極性炭化水素を含む極性液体が、吸着性ポリマー構造によって少なくとも部分的に吸着されるのを可能にすることと、を含む。この態様において、R1は5~15個の炭素を有する脂肪族部分であり、nは1~20の範囲の整数であり、X1は20個の炭素~100個の炭素を含むグラフェン含有部分である。
【0082】
本開示の第20の態様は、第19の態様を含み得、ここで、少なくとも1つの非極性炭化水素は、原油、ディーゼル燃料、またはそれらの組み合わせを含む。
【0083】
本開示の第21の態様は、第19の態様または第20の態様を含み得、ここで、少なくとも1つの非極性炭化水素は、20°~60°の範囲のAPI比重を有する。
【0084】
本開示の第22の態様は、第19の態様~第21の態様のいずれかを含み得、ここで、極性液体は、水を含む。
【0085】
本開示の第23の態様は、第19の態様~第22の態様のいずれかを含み得、ここで、式(I)による吸着性ポリマー構造は、少なくとも250m2/gのBET表面積を有する。
【0086】
本開示の第24の態様は、第19の態様~第23の態様のいずれかを含み得、ここで、式(I)による吸着性ポリマー構造は、100%~300%の範囲の重量増加率を有する。
【0087】
本開示の第25の態様は、第19の態様~第24の態様のいずれかを含み得、ここで、X1は、25個の炭素~75個の炭素を有するグラフェン含有部分である。
【0088】
記載された本主題を記載および定義する目的で、パラメータ、変数、または他の特性「の関数」である本開示の主題の特性への本出願における言及は、その特性が列挙されたパラメータ、変数、または特性の関数のみであると示すことを意図しないことに留意されたい。むしろ、列挙されたパラメータまたは変数の「関数」である特性への本出願における言及は、その特性が単一のパラメータもしくは変数、または複数のパラメータもしくは変数の関数であり得るように非限定的であることを意図する。
【0089】
「典型的に」という用語は、本出願で利用される場合、特許請求された主題の範囲を制限するため、または特定の特徴が特許請求された主題の構造もしくは機能にとって重大、本質的、もしくはさらに重要であることを示唆するために利用されないことに留意されたい。むしろ、「典型的に」という用語は、本開示の実施形態の特定の態様を特定すること、または本開示の特定の実施形態で利用されてもされなくてもよい代替もしくは追加の特徴を強調することを単に意図する。
【0090】
以下の特許請求の範囲のうちの1つ以上は、「ここで(in which)」という用語を移行句として利用することに留意されたい。本技術を定義する目的で、この用語は、構造の一連の特性の記述を導入するために使用される非限定型の移行句として、特許請求の範囲に導入され、より一般的に使用される非限定型の「ここで(wherein)」という用語と同様に解釈されるべきであることに留意されたい。
【0091】
本主題を記載および定義する目的で、「約」という用語が、本出願において、いずれの数量的な比較、値、測定、または他の表現にも起因し得る本質的な不確実性の程度を表すために利用されることに留意されたい。「約」という用語は、本開示において、数量的な表現が問題になっている主題の基本機能における変化をもたらさずに、表示基準と異なり得る程度を表すためにも利用される。
【0092】
本開示の主題を詳細に、かつその特定の実施形態を言及することによって記載してきたが、本出願に開示される様々な詳細は、本明細書に添付する図面の各々に特定の要素が例示されている場合でも、これらの詳細が本出願に記載の様々な実施形態の本質的構成成分である要素に関するということを示唆すると取られるべきではないことに留意されたい。また、添付の特許請求の範囲で定義された実施形態を含むがそれに限定されるわけではない、本開示の範囲を逸脱しない限り、修正形態および変形形態があり得ることが明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様が本出願において特に有利であると特定されるが、本開示は必ずしもこれらの態様に限定されないことが企図される。
【国際調査報告】