(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】クランプ及びケーブル
(51)【国際特許分類】
A61B 17/92 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A61B17/92
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531183
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(85)【翻訳文提出日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2019071146
(87)【国際公開番号】W WO2020030656
(87)【国際公開日】2020-02-13
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521055851
【氏名又は名称】ブルック オーソペディクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BROOK ORTHOPAEDICS LTD
【住所又は居所原語表記】2 Brooklawn, Knocknacarra Road, Co. Galway,, H91 HP7Y Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】コナー ハーリー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ハーリー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ハーリー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL24
4C160LL26
4C160LL27
4C160LL37
(57)【要約】
骨折した骨の固定又は骨の骨折の防止に使用される骨クランプ(1、200、300)であって、クランプ(1、200、300)が、枢動支点(5)において互いに接合された1対のハンドル(2a、2b)を備え、ハンドル(2a、2b)が各々、弓形顎部(4a、4b)を有し、弓形顎部(4a、4b)が、顎部(4a、4b)の遠位端部(14a、14b)に開口部を有する第2の端部(8a、8b)と連通する、顎部(4a、4b)の近位端部(12a、12b)に開口部を有する第1の端部(7a、7b)を備え、第1の端部(7a、7b)及び第2の端部(8a、8b)が、チャネル(6a、6b)を介して連通し、チャネル(6a、6b)が、ケーブル、ワイヤ、縫合糸、帯、又は他の好適な可撓性材料を収容するように構成され、且つチャネル(6a、6b)が開放チャネルである、骨クランプ(1、200、300)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨折した骨の固定又は骨の骨折の防止に使用される骨クランプ(1、200、300)であって、前記クランプ(1、200、300)が、枢動支点(5)において互いに接合された1対のハンドル(2a、2b)を備え、前記ハンドル(2a、2b)が各々、弓形顎部(4a、4b)を有し、前記弓形顎部(4a、4b)が、前記顎部(4a、4b)の遠位端部(14a、14b)に開口部を有する第2の端部(8a、8b)と連通する、前記顎部(4a、4b)の近位端部(12a、12b)に開口部を有する第1の端部(7a、7b)を備え、前記第1の端部(7a、7b)及び前記第2の端部(8a、8b)が、チャネル(6a、6b)を介して連通し、前記チャネル(6a、6b)が、ケーブル、ワイヤ、縫合糸、帯、又は他の好適な可撓性材料を収容するように構成され、且つ前記チャネル(6a、6b)が、前記弓形顎部(4a、4b)の内面(10a、10b)を貫通して延在する開放チャネルであることを特徴とする、骨クランプ(1、200、300)。
【請求項2】
前記第2の端部(8a、8b)の少なくとも一方がフレア状である、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項3】
前記第2の端部(8a、8b)の一方がフレア状であり、他方の前記第2の端部が、正方形であるか、丸みを帯びているか、傾斜付きであるか、フレア状であるか、又は矩形である、請求項2に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項4】
前記第1の端部(7a、7b)の少なくとも一方がフレア状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項5】
前記第1の端部(7a、7b)の一方がフレア状である場合に、他方の前記第1の端部が、正方形であるか、丸みを帯びているか、傾斜付きであるか、フレア状であるか、又は矩形である、請求項4に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項6】
前記内面(10a、10b)の少なくとも一方が、前記チャネル(6a、6b)に直交して延在する複数の隆起部(12)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項7】
前記弓形顎部(4a、4b)が、11.25°~270°である円弧を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項8】
前記弓形顎部(4a、4b)が、22.5°~225°である円弧を有する、請求項5に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項9】
前記ハンドル(2a、2b)は、前記ハンドル(2a、2b)の中央部(3a、3b)が結合コネクタ(18)とスロット(16)とによって互いに連結される前記枢動支点(5)において同一平面内で互いに対して摺動することができる、請求項1~8のいずれか一項に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項10】
前記ハンドル(2a、2b)が、締付手段をさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項11】
前記骨クランプ(1、200、300)が、ステンレス鋼、チタン、炭素鋼、グラフェン、白金又はこれらの合金から構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項12】
前記チャネル(6a、6b)のいずれか一方又は両方が、それぞれ前記顎部(4a、4b)の前記中心線に対して約0.01°~約45°の角度で傾斜している、請求項1~11のいずれか一項に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項13】
前記チャネル(6a、6b)のいずれか一方又は両方が、それぞれ前記顎部(4a、4b)の前記中心線に対して約5°の角度で傾斜している、請求項10に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項14】
前記チャネル(6a)のみが、前記顎部(4a)の前記中心線に対してある角度で傾斜している、請求項10又は11に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項15】
前記第1の端部(7b)と前記ハンドル(2b)の前記中央部(3b)との間の前記顎部(4b)の内側面(202)から外方に延びる棚部(201)をさらに備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項16】
一方の顎部の前記遠位端部(14b)から他方の顎部の前記遠位端部(14a)に延びる収納式スリーブ(401)をさらに備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項17】
前記収納式スリーブ(401)が、前記顎部(4b)の前記構造内に収納される、請求項14に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項18】
前記収納式スリーブ(401)が、前記顎部(4b)の前記チャネル(6b)内に一体化される、請求項14に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項19】
前記収納式スリーブ(401)が、前記顎部(4b)の前記チャネル(6b)の前記表面(10b)に沿って収容される、請求項16に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項20】
前記枢動支点(5)と前記第1の端部(7b)との間の、前記ハンドル(2b)の前記中央部(3b)が、前記チャネル(6b)の前記中心平面に対して凸面又は凹面のいずれかを有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の骨クランプ(1、200、300)。
【請求項21】
前記ケーブル(100)が本体(101)と先端(102)とを備え、前記先端(102)が補剛され且つ面取り端点(102a)を有することを特徴とし、前記先端(102)が湾曲しており、並びに前記先端(102)が、同様の断面形状を有する請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)の前記チャネル(6a、6b)と係合するようになされた断面形状を有する、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用されるケーブル(100)。
【請求項22】
前記面取り端点(102a)が、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)の前記開口部7b、8aの断面形状と一致するようになされた縁部(202a、202b)及び側面(202c、202d)をさらに備える、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項21に記載のケーブル(100)。
【請求項23】
前記先端(102)が、前記ケーブル本体(101)と前記先端(102)との間に非湾曲部分(102b)をさらに備え、且つ前記先端(102)が、前記非湾曲部分(102b)と前記面取り端点(102a)との間で湾曲している、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項21又は22に記載のケーブル(100)。
【請求項24】
前記先端(102)の前記非湾曲部分(102b)と前記面取り端点(102a)との間の前記湾曲部分が、請求項1に記載のクランプ(1、200、300)の前記弓形顎部(4a、4b)の円弧のそれと一致する円弧を有する、請求項1の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項23に記載のケーブル(100)。
【請求項25】
前記先端(102)が、11.25°~270°である円弧を有する、前記骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項24に記載のケーブル(100)。
【請求項26】
前記先端(102)が、22.5°~225°である円弧を有する、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項25に記載のケーブル(100)。
【請求項27】
前記先端(102)の曲率径が、クランプされる骨の直径よりも僅かに大きいか、前記骨の前記直径と略等しいか、又は前記骨の前記直径よりも50%以下小さい、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項21~26のいずれか一項に記載のケーブル(100)。
【請求項28】
前記ケーブル(100)が本体(101)と先端(102)とを備え、前記先端(102)が補剛され且つ湾曲していることを特徴とする、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用されるケーブル(100)。
【請求項29】
前記ケーブル本体(101)と前記先端(102)との間に非湾曲部分(102b)をさらに備え、前記先端(102)が、前記非湾曲部分(102b)に後続して湾曲している、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項28に記載のケーブル(100)。
【請求項30】
前記先端(102)が、同様の断面形状を有する請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)の前記チャネル(6a、6b)と係合するようになされた断面形状を有する、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項28又は29に記載の使用のためのケーブル(100)。
【請求項31】
前記ケーブル(100)の前記先端(102)が、面取り端点(102a)をさらに備える、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項27~29のいずれか一項に記載の使用のためのケーブル(100)。
【請求項32】
前記先端(102)の前記面取り端点(102a)が、請求項1に記載のクランプ(1、200、300)の前記弓形顎部(4a、4b)の円弧のそれと一致する円弧を有する、請求項1の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項30に記載のケーブル(100)。
【請求項33】
前記面取り端点(102a)が、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)の前記開口部7b、8aの断面形状と一致するようになされた縁部(202a、202b)及び側面(202c、202d)をさらに備える、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項31又は32に記載のケーブル(100)。
【請求項34】
前記先端(102)が、前記非湾曲部分(102b)と前記面取り端点(102a)との間で湾曲している、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項29~33のいずれか一項に記載のケーブル(100)。
【請求項35】
前記先端(102)の前記非湾曲部分(102b)と前記面取り端点(102a)との間の前記湾曲部分が、請求項1に記載のクランプ(1、200、300)の前記弓形顎部(4a、4b)の円弧のそれと一致する円弧を有する、請求項1の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項28~34のいずれか一項に記載のケーブル(100)。
【請求項36】
前記先端(102)が、11.25°~270°である円弧を有する、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項35に記載のケーブル(100)。
【請求項37】
前記先端(102)が、22.5°~225°である円弧を有する、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項36に記載のケーブル(100)。
【請求項38】
前記先端(102)の前記曲率径が、クランプされる骨の直径と略等しいか又は前記骨の前記直径よりも50%以下小さい、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項21~37のいずれか一項に記載のケーブル(100)。
【請求項39】
前記先端(102)が、溶着、接着、スナップ嵌め、螺合、又は雄雌連結によって、前記ケーブル(100)の前記本体(101)に固定される、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項21~38のいずれか一項に記載のケーブル(100)。
【請求項40】
前記ケーブル(100)が、ステンレス鋼、チタン、コバルト-クロム-モリブデン合金、炭素鋼、グラフェン、白金、生体適合性ポリマー、及びこれらの合金、又はこれらの組み合わせなどの医療グレード材料から作られる、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項21~39のいずれか一項に記載のケーブル(100)。
【請求項41】
前記先端(102)が、正方形、矩形、三角形、楕円、五角形、六角形、七角形、八角形、星形、略平坦、長円形、丸みを帯びた縁部を備えた平坦状、又はこれらの組み合わせから選択される断面形状を有する、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と共に使用される請求項21~40のいずれか一項に記載のケーブル(100)。
【請求項42】
骨折した骨の内固定又は骨の骨折の防止に使用されるキットであって、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)と、請求項21又は28に記載のケーブル(100)とを備えるキット。
【請求項43】
骨折部を固定するか又は骨の骨折を防止するための方法であって、骨折を整復するか又は骨折を防止するために、請求項1に記載の骨クランプ(1、200、300)を骨に取り付けることと、請求項21又は28に記載のケーブル(100)を前記骨クランプ(1、200、300)の前記チャネル(6a、6b)に通すことと、圧着具を前記ケーブル(100)に適用することと、ケーブル締付手段によって前記ケーブル(100)を締め付けることと、前記ケーブル(100)を適所に締結するために前記圧着具を圧着させることとを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折部の固定又は骨折の防止のためにケーブル又はワイヤを骨の周囲に通す器具に関する。より具体的には、本発明は、ケーブル(又は縫合糸、ワイヤ、装置など)を骨の周囲に通すための一体型のケーブル通し具を備えた骨整復用クランプ、及び骨整復用クランプと共に使用されるケーブル又はワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル通し具を含む、締結具は、他の整形外科手術の中でも、例えば、大腿骨骨折、股関節骨折、下腿骨折、腕骨折、前腕骨折、手骨折、足骨折、鎖骨骨折、脊椎骨折、膝蓋骨骨折を治療するときに使用される。従来技術におけるケーブル通し具の大部分は、骨幹を部分的に取り囲むような曲率を有するように設計され、硬質材料から形成され、且つ大きくて扱いにくい医療器具である。挿入中及び/又は挿入の準備中に、ケーブル通し具及び他のトンネル装置は、軟部組織を骨から引き離し、且つ/又は外科医がケーブル通し具を挿入するのに役立つ梃子作用及び他の動きを通じて切開部を大きく広げることがある。ケーブル通し具はまた、使用時に動脈絞扼(大腿動脈を含む)のリスクを高め、不要なリスクを引き起こす可能性がある。ケーブル通し具は、患者に過剰な組織損傷(例えば、骨から離れる方向への軟部組織の剥離及び/又は切開部の大幅な広がり)をもたらし、追加の手術時間と創傷組織の失活とを生じさせる可能性がある。締結用トンネル装置と呼ばれる別個のツールは、組織を剥ぎ取ってケーブル通し具用の明確な経路を作成するために時として相前後して使用される。
【0003】
また、骨折を防止するために、締結ケーブル又はワイヤが予防的に使用され、いくつかは、伝播を防止するために時として骨切り術(制御された切除部が骨に作成される外科的骨折)の修復時の修正手術で骨折部とは別の場所に位置決めされる。
【0004】
標準的なケーブル通し具に関する別の問題は、低侵襲手術を可能にしないことと、外科医がクランプ及び別個のケーブル通し具を使用する余地を与える目的で大きな切開部を広げた状態に保つために、多くの場合、開創器又は自己保持装置と呼ばれる別個の器具の使用を必要とすることである。また、そのような開創器の使用には、開創器が追加の器具であり、創傷に近接して、ケーブル通し具又はクランプのような他の器具の使用を妨げる可能性があるという問題がある。また、組織が過剰に広げられ、組織の過剰に広がった箇所が長時間維持された場合、皮膚が損傷する可能性がある。
【0005】
数多くの学術的情報源は、深部大腿動脈とその穿通枝が最も損傷を受けやすいこと、人工股関節再置換術中に、大腿骨鋼線締結後の貫通動脈遮断(重篤になる可能性のある重大な合併症)の発生が23.6%であると報告されていることを強調して、ケーブル通し具のリスクを報告している。
【0006】
さらに、手術時間は価値の高いものになりつつある。いかなる手術においても複雑で危険なステップの除外は、歓迎すべきことであるが、時間を節約して効率を改善できる場合には特にそうである。
【0007】
これらの問題を解決するために、米国特許出願公開第2007043377号明細書で説明されている締結具などの、試みがなされており、この締結具は2つの部材を備え、各部材が、ハンドルと、中央部と、J字状チューブとを有する。両部材の中央部が互いに強固に結合されたときに、両方のJ字状チューブが合わさって連続したチューブとなり、このチューブを通して、ワイヤ、ケーブル、帯、又は縫合糸を送給することができる。米国特許出願公開第2007043377号明細書のツールに関する問題は、折れた骨片を最初に位置合わせするために別個の骨保持用クランプが必要となることである。これによって、理想的な位置へのケーブルの位置決めが損なわれる。また、これによって、使用者にとって仕事量が増え、したがって、手術に費やされる時間が長くなる。
【0008】
中国実用新案第2836737号明細書は、クランプの顎部がケーブル用の通路を有することを特徴とする、骨折修復作業に使用される骨クランプ装置を開示しているように思われる。この装置は閉鎖通路を有する。それゆえ、この装置は、クランプとして最初に骨を整復するのに有用であり得るが、その後、ケーブルが骨に接触できるように解除されなければならない。この装置の解除は、整復の喪失につながる。
【0009】
中国特許出願公開第103932768号明細書は、枢動可能に連結された1対のハンドルを備える骨クランプであって、各ハンドルが、近位端部における第1の開口部と、第2の開口部遠位端部とを提供する弓形顎部を提供し、開放チャネルが開口部と開口部の間に延び、チャネルが、ケーブル又はワイヤを受け入れるように構成され意図される、骨クランプを開示している。しかしながら、この配置では、使用者は、骨の周囲に締結する前に、チャネルからケーブル又はワイヤを引き抜く追加のステップを実行しなければならない。これによって、使用者にとって仕事量が増え、したがって、手術に費やされる時間が長くなる。
【0010】
また、これによって、理想的な位置へのケーブルの位置決めが損なわれる。
【0011】
締結ワイヤ(又はケーブル)は、典型的には、モノフィラメントワイヤ又はマルチフィラメントケーブルである。これらは、様々な整形外科用途で使用される(例えば、米国特許第6045909号明細書を参照)。ケーブル及びワイヤは、典型的には、高い引張強度及び疲労強度を有する、ステンレス鋼、チタン、又はコバルト-クロム合金で作られる。別の問題は、骨クランプが既に邪魔になっている場合、骨クランプが固定のために最適な位置を占めるので、これらのケーブルを最適な固定位置に位置決めできないことである。ケーブルは、骨クランプに対して別個のケーブル通し具を使用することを考慮して設計されており、追加の組織剥離を必要とする追加のステップを生じさせる。
【0012】
本発明の課題は、上述の問題の少なくとも1つを克服することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、骨の手術の準備を整える目的で、又は折れた若しくは骨折した骨が適所で治癒するのを補助する目的で、ケーブル、ワイヤ、縫合糸、帯、又は他の装置を骨の周囲に位置決めして骨を適所にしっかりと固定するのを補助するために使用できる骨クランプに関する。
【0014】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載されているように、骨折した骨の固定又は骨の骨折の防止に使用される骨クランプ(1、200、300)であって、クランプ(1、200、300)が、枢動支点(5)において互いに接合された1対のハンドル(2a、2b)を備え、ハンドル(2a、2b)が各々、弓形顎部(4a、4b)を有し、弓形顎部(4a、4b)が、顎部(4a、4b)の各々の近位端部(12a、12b)に開口部を有する第1の端部(7a、7b)と、顎部(4a、4b)の遠位端部(14a、14b)に開口部を有する第2の端部(8a、8b)とを備え、第1の端部(7a、7b)及び第2の端部(8a、8b)が、チャネル(6a、6b)を介して連通し、チャネル(6a、6b)が、ケーブル、ワイヤ、帯、縫合糸、又は他の装置を収容するように構成され、且つチャネル(6a、6b)が開放チャネルであることを特徴とする、骨クランプ(1、200、300)が提供される。
【0015】
骨折した骨の固定又は骨の骨折の防止に使用される骨クランプ(1、200、300)であって、クランプ(1、200、300)が、枢動支点(5)において互いに接合された1対のハンドル(2a、2b)を備え、ハンドル(2a、2b)が各々、弓形顎部(4a、4b)を有し、弓形顎部(4a、4b)が各々、顎部(4a、4b)の遠位端部(14a、14b)に開口部を有する第2の端部(8a、8b)と連通する、顎部(4a、4b)の各々の近位端部(12a、12b)に開口部を有する第1の端部(7a、7b)を備え、第1の端部(7a、7b)及び第2の端部(8a、8b)が、チャネル(6a、6b)を介して連通し、チャネル(6a、6b)が、ケーブル、ワイヤ、帯、縫合糸、又は他の好適な装置を収容するように構成され、且つチャネル(6a、6b)が、両方の弓形顎部(4a、4b)の内面(10a、10b)をそれぞれ貫通して延在する開放チャネルであることを特徴とする、骨クランプ(1、200、300)も提供される。
【0016】
好ましくは、第1の端部(7a、7b)の少なくとも一方はフレア状である。理想的には、第1の端部(7a、7b)の一方がフレア状である場合、他方の端部は、正方形であるか、丸みを帯びているか、傾斜しているか、フレア状であるか、又は矩形である。
【0017】
好ましくは、第2の端部(8a、8b)の少なくとも一方はフレア状である。理想的には、端部(8a、8b)の一方がフレア状である場合、他方の端部は、正方形であるか、丸みを帯びているか、傾斜しているか、フレア状であるか、又は矩形である。
【0018】
好ましくは、チャネル(6a、6b)は、弓形顎部(4a、4b)の内面(10a、10b)を貫通して延在する。理想的には、内面(10a、10b)の少なくとも一方は、チャネル(6a、6b)に直交して延在する複数の隆起部(12)を備える。
【0019】
好ましくは、弓形顎部(4a、4b)は、11.25°~270°である円弧を有する。理想的には、弓形顎部(4a、4b)は、22.5°~225°である円弧を有する。
【0020】
好ましくは、ハンドル(2a、2b)は、ハンドル(2a、2b)の中央部(3a、3b)が結合コネクタ(18)とスロット(16)とによって互いに連結される枢動支点(5)において同一平面内で互いに対して摺動することができる。
【0021】
好ましくは、ハンドル(2a、2b)は、締付手段をさらに含む。
【0022】
好ましくは、骨クランプ(1、200、300)は、ステンレス鋼、チタン、炭素鋼、グラフェン、白金又はこれらの合金から構成される。
【0023】
一態様では、いずれか一方又は両方のチャネル(6a、6b)は、それぞれ顎部(4a、4b)の中心線に対して約0.01°~約45°の角度で傾斜している。理想的には、いずれか一方又は両方のチャネル(6a、6b)は、それぞれ顎部(4a、4b)の中心線に対して約5°の角度で傾斜している。一態様では、チャネル(6a)のみが、顎部(4a)の中心線に対してある角度で傾斜している。一態様では、チャネル(6a、6b)のいずれも、それぞれ顎部(4a、4b)の中心線に対して約0.01°~約45°の角度で傾斜していない。
【0024】
好ましくは、骨クランプ(1、200、300)は、第1の端部(7b)とハンドル(2b)の中央部(3b)との間の顎部(4b)の内側面(202)から外方に延びる棚部(201)をさらに備える。
【0025】
好ましくは、骨クランプ(1、200、300)は、一方の顎部の遠位端部(14b)から他方の顎部の遠位端部(14a)に延びる収納式スリーブ(401)をさらに備える。理想的には、収納式スリーブ(401)は、顎部(4b)の構造内に収納される。理想的には、収納式スリーブ(401)は、顎部(4b)の上部に沿って一体化される。理想的には、収納式スリーブ(401)は、顎部(4b)のチャネル(6b)内に一体化される。理想的には、収納式スリーブ(401)は、顎部(4b)のチャネル(6b)の(10b)の表面に沿って収容される。
【0026】
好ましくは、骨クランプ(1、200、300)は、枢動支点(5)と第1の端部(7b)との間に、ハンドル(2b)の中央部(3b)をさらに備え、チャネル(6b)の中心平面に対して凸面又は凹面のいずれかを有する。
【0027】
好ましくは、骨クランプ(1、200、300)は、顎部(4a)の外壁(19a)から外方に延びる棚(460)をさらに備える。
【0028】
添付の特許請求の範囲に記載されているように、上で説明した骨クランプ(1、200、300)と共に使用されるケーブル(100)であって、ケーブル(100)が本体(101)と先端(102)とを備え、先端(102)が補剛され且つケーブル本体(101)と先端(102)との間に非湾曲部分(102b)を有することを特徴とする、ケーブル(100)も提供される。
【0029】
一態様では、ケーブル(100)の先端(102)は、面取り端点(102a)をさらに備える。好ましくは、先端(102)は、非湾曲部分(102b)と面取り端点(102a)との間で湾曲している。一態様では、先端(102)の面取り端点(102a)は、上で説明したクランプ(1、200、300)の弓形顎部(4a、4b)の円弧のそれと一致する円弧を有する。一態様では、面取り端点(102a)は、上で説明した骨クランプ(1、200、300)の開口部7b、8aの断面形状と一致するようになされた縁部(202a、202b)及び側面(202c、202d)をさらに備える。
【0030】
上で説明した骨クランプ(1、200、300)と共に使用されるケーブル(100)であって、ケーブル(100)が本体(101)と先端(102)とを備え、先端(102)が補剛され且つケーブル本体(101)と先端(102)との間に非湾曲部分(102b)を有することを特徴とし、先端(102)が、非湾曲部分(102b)と面取り端点(102a)との間で湾曲している、ケーブル(100)も提供される。
【0031】
一態様では、先端(102)の面取り端点(102a)は、上で説明したクランプ(1、200、300)の弓形顎部(4a、4b)の円弧のそれと一致する円弧を有する。一態様では、面取り端点(102a)は、上で説明した骨クランプ(1、200、300)の開口部7b、8aの断面形状と一致するようになされた縁部(202a、202b)及び側面(202c、202d)をさらに備える。
【0032】
上で説明した骨クランプ(1、200、300)と共に使用されるケーブル(100)であって、ケーブル(100)が本体(101)と先端(102)とを備え、先端(102)が補剛され且つケーブル本体(101)と先端(102)との間の非湾曲部分(102b)と面取り端点(102a)とを有することを特徴とし、先端(102)が、非湾曲部分(102b)と面取り端点(102a)との間で湾曲しており、並びに先端(102)が、同様の断面形状を有する上で説明した骨クランプ(1、200、300)のチャネル(6a、6b)と係合するようになされた断面形状を有する、ケーブル(100)も提供される。
【0033】
一態様では、面取り端点(102a)は、上で説明した骨クランプ(1、200、300)の開口部7b、8aの断面形状と一致するようになされた縁部(202a、202b)及び側面(202c、202d)をさらに備える。
【0034】
一態様では、断面形状は、4辺形又は略円形である。好ましくは、4辺形の断面形状は、丸みを帯びた縁部を有する。
【0035】
好ましくは、先端(102)の非湾曲部分(102b)と面取り端点(102a)との間の湾曲部分は、上で説明したクランプ(1、200、300)の弓形顎部(4a、4b)の円弧のそれと一致する円弧を有する。
【0036】
一態様では、先端(102)は、11.25°~270°である円弧を有する。理想的には、先端(102)は、22.5°~225°である円弧を有する。
【0037】
好ましくは、先端(102)は、溶着、接着、スナップ嵌め、螺合、又は雄雌連結によって、ケーブル(100)の本体(101)に固定される。
【0038】
好ましくは、ケーブル(100)は、ステンレス鋼、チタン、コバルト-クロム-モリブデン合金(ビタリウム(登録商標))、炭素鋼、グラフェン、白金、生体適合性ポリマー、及びこれらの合金、又はこれらの組み合わせなどの医療グレード材料から作られる。
【0039】
好ましくは、先端(102)は、正方形、矩形、三角形、楕円、五角形、六角形、七角形、八角形、星形、略平坦、長円形、丸みを帯びた縁部、又はこれらの組み合わせから選択される断面形状を有する。
【0040】
骨折した骨の内固定又は骨の骨折の防止に使用されるキットであって、上で説明した骨クランプ(1、200、300)及びケーブル(100)を備えるキットも提供される。
【0041】
骨折部を固定するか又は骨の骨折を防止するための方法であって、骨折を整復するか又は骨折を防止するために、本明細書で説明した骨クランプ(1、200、300)を骨に取り付けることと、本明細書で説明したケーブル(100)を骨クランプ(1、200、300)のチャネル(6a、6b)に通すことと、圧着具をケーブル(100)に適用することと、ケーブル締付手段によってケーブル(100)を締め付けることと、ケーブル(100)を適所に締結するために圧着具を圧着させることとを含む方法も提供される。
【0042】
好ましくは、骨クランプ(1、200、300)は、ケーブルが締め付けられた時点で若しくは圧着具が圧着される前に取り外されるか、又は圧着具が圧着された後に取り外される。
【0043】
定義
本明細書では、「締結ワイヤ」、「ワイヤ」又は「ケーブル」という用語は、骨折した骨片を適所に近接させて保持するように位置決めされた又は骨の骨折を防止するように位置決めされたあらゆる種類の整形外科用固定/固定化材料(ケーブル、ワイヤ、縫合糸、帯、又は他の好適な可撓性材料など)を意味するものと理解されるべきである。これらの用語は交換可能に使用され得る。
【0044】
本明細書では、「骨クランプ」という用語は、(a)折れた骨を整復し/再整合させ、(b)骨折部を適所にクランプし、且つ(c)(整形外科用)ワイヤ、(整形外科用)ケーブル、帯、縫合糸、又は好適な可撓性材料を骨クランプに及び骨折部の固定のために骨の周囲に通すための整形外科用器具を意味するものとして理解されるべきである。
【0045】
本明細書では、「長骨骨折」という用語は、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、橈骨及び尺骨などの、長骨に対する骨折を意味するものと理解されるべきである。長骨とは、鎖骨、中手骨、及び中足骨を指すこともある。
【0046】
本明細書では、「長斜骨骨折」という用語は、骨の長軸に対して鋭角をなす長い部分を含む骨折を意味するものと理解されるべきである。この結果、骨折部が長くなる。
【0047】
本明細書では、「短斜骨骨折」という用語は、骨の長軸に対して傾斜が少ない/より大きな鈍角を有する骨折を意味するものと理解されるべきである。この結果、骨折部がより短くなる。
【0048】
本明細書では、「鉗子状の」という用語は、2つのハンドルと、枢軸を中心に作用する2つの把持用顎部であって、骨などの、対象となる標的を把持するために使用される把持用顎部とを有するツールを意味するものと理解されるべきである。
【0049】
本明細書では、「弓形」という用語は、湾曲形状を有することを意味するものと理解されるべきである。
【0050】
本明細書では、「フレア状」という用語は、基部よりも上部がより幅広である、すなわち、一方の端部が他方の端部よりも幅広である形状を意味するものと理解されるべきである。
【0051】
本明細書では、「補剛」又は「剛性」という用語は、本発明のケーブルの先端が、ケーブル本体のヤング率(硬い本体の剛性の尺度)の値の最大1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50倍である剛性(ヤング率の値)を有することを意味するものと理解されるべきである。本発明のケーブルの先端はまた、ケーブルの剛性とケーブルが作られる材料とに部分的に基づく剛性を有し得る。さらに、先端の剛性は、先端の直径又は断面積を変化させることによって増加又は減少させてもよい。補剛先端は、例えば、補剛先端をある特定の領域において選択的に多かれ少なかれ屈曲可能にするために、その特性が長さに沿って変化するように配置され得ることに留意されたい。このことは、よりきつい曲げ部を形成できるように、例えば、先端又は先端付近を熱処理するか、圧着させるか、これに孔を配置するか、テーパ状にするか、平坦化するか、又はこれに切り込みを入れることによって達成され得る。
【0052】
本明細書では、「先端」という用語は、本発明のケーブルの先端に関して使用される場合、最初に骨クランプに通される略円形又は管状ケーブルの先端部が、正方形、矩形、三角形、楕円、五角形、六角形、七角形、八角形、星形、略平坦(丸みを帯びた縁部を備えた)、長円形などから選択される断面形状を有する先端を有することを意味するものと理解されるべきである。好ましくは、先端は、撚り線ではない。
【0053】
ケーブルの先端の最適な円弧長さは、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30mmの(典型的な大腿骨中央骨幹)曲率径を使用する場合には約5mm~100mmである。最適な円弧長さは、おそらく約10mm~約70mm、好ましくは約15mm~65mm、理想的には約20mm~55mm、又はより具体的には、約21mm、22mm、23mm、24mm、25mm、26mm、27mm、28mm、29mm、30mm、31mm、32mm、33mm、34mm、35mm、36mm、37mm、38mm、39mm、40mm、41mm、42mm、43mm、44mm、45mm、46mm、47mm、48mm、49mm、50mm、51mm、52mm、53mm、54mm、及び55mmである。
【0054】
チャネル6aの平面は、顎部4aの中心線に対して約0.01°、0.05°、0.1°、0.5°、1°、1.5°、2°、2.5°、3°、3.5°、4°、4.5°、5°、5.5°、6°、6.5°、7°、7.5°、8°、8.5°、9°、9.5°、10°、10.5°、11°、11.15°、12°、12.5°、13°、13.5°、14°、14.5°、15°、15.5°、16°、16.5°、17°、17.5°、18°、18.5°、19°、19.5°、20°、20.5°、20°、20.5°、30°、30.5°、40°又は約45°の間だけ顎部4aの表面の中心から外れて位置することができる。チャネル6bの平面もまた、顎部4bの中心線に対して約.01°、0.05°、0.1°、0.5°、1°、1.5°、2°、2.5°、3°、3.5°、4°、4.5°、5°、5.5°、6°、6.5°、7°、7.5°、8°、8.5°、9°、9.5°、10°、10.5°、11°、11.15°、12°、12.5°、13°、13.5°、14°、14.5°、15°、15.5°、16°、16.5°、17°、17.5°、18°、18.5°、19°、19.5°、20°、20.5°、20°、20.5°、30°、30.5°、40°又は約45°の間だけ顎部4bの表面の中心から外れて位置することができる。
【0055】
ケーブルの先端の曲率(内)径(すなわち、骨に対するケーブルの内表面において測定された直径)は、手術を受ける骨の直径と略等しいか又は骨の直径よりも50%以下小さい。好ましくは、ケーブルの先端の曲率(内)径は、手術を受ける骨の直径の1~25%未満である。一態様では、ケーブルの先端の曲率(内)径は、クランプされる/手術を受ける骨の直径よりも僅かに大きい、すなわち10%以下大きい。ケーブルの先端の曲率内径は、ケーブル先端の内表面からの測定値である。
【0056】
本明細書中では、「略等しい」という用語は、手術を受ける骨の直径の±2%以内であること、±1%以内であること、又はその骨の直径と全く等しいことを意味するものと理解されるべきである。
【0057】
本明細書では、「隆起部」という用語は、骨クランプの顎部に関して使用される場合、鋭利な若しくは丸みを帯びた山と谷、又はこれらの組み合わせを有する、波形形状を意味するものと理解されるべきである。
【0058】
本明細書では、「生体適合性ポリマー」という用語は、体内の組織又は体液とは全く反応せず且つ非発がん性、非毒性、非アレルギー性、非炎症性、及び血液適合性である合成又は天然ポリマーを意味するものと理解されるべきである。好適な生体適合性ポリマーの例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PS)、ポリエチレンが挙げられる。
【0059】
本明細書では、「複合材料」という用語は、体内の組織又は体液とは全く反応せず且つ非発がん性、非毒性、非アレルギー性、非炎症性、及び血液適合性である生体適合性複合材料を意味するものと理解されるべきである。好適な複合材料の例としては、ナイロンを含む白金、連続炭素繊維で強化されたポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ポリマー、ヒドロキシアパタイトと組み合わされた連続炭素繊維で強化されたポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ポリマー、カーボンナノチューブ(CNT)ポリマー複合材、Kevlar(登録商標)、セラミックマトリックス複合材などが挙げられる。
【0060】
本明細書では、「ケーブルを締め付ける」という用語は、ケーブルに張力を付与するか又は張力を加えることを意味するものと理解されるべきである。
【0061】
本発明は、添付の図面を参照して、単なる例として与えられる、本発明の実施形態の以下の説明からより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1A】
図1Aは、骨を把持する本発明の骨クランプの斜視図を図示する。
【
図1B】
図1Bは、骨を把持する本発明の骨クランプの顎部のさらなる斜視図を図示する。
【
図1C】
図1Cは、一方の顎部のチャネルが他方の顎部のチャネルの平面に対して中心に位置しない、本発明の骨クランプの一方の顎部の平面図を図示する。
【
図2】
図2は、
図1のクランプの顎部を通るケーブルを図示する。
【
図3】
図3は、本発明の骨クランプのさらなる実施形態を図示する。
【
図4】
図4は、本発明の骨クランプのさらなる実施形態を図示する。
【
図5A】
図5Aは、本発明の骨クランプのさらなる実施形態の側面図を図示する。
【
図5B】
図5Bは、本発明の骨クランプのさらなる実施形態の側面図を図示する。
【
図6】
図6は、本発明の骨クランプのさらなる実施形態を図示する。
【
図7】
図7は、本発明のケーブルの斜視図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0063】
材料
本発明の骨クランプは、典型的には、ステンレス鋼、チタン、炭素鋼、グラフェン、白金、生体適合性ポリマー、セラミック、複合材料、及びこれらの合金などの医療グレード材料で構築される。
【0064】
本発明のケーブルは、典型的には、ステンレス鋼、チタン、ビタリウム(登録商標)(コバルトを65%、クロムを30%、モリブデンを5%含む合金)、炭素鋼、グラフェン、白金、生体適合性ポリマー、及びこれらの合金などの医療グレード材料から作られる。
【0065】
ケーブルの製造方法
ケーブルは、典型的には、当業者に知られている標準的な方法(例えば、欧州特許第0916315号明細書に開示されている方法を参照)によって製造される。ケーブルの端部における先端は、ケーブル本体よりも硬い。先端は、当業者に知られている方法によってケーブルに取り付けられる。例えば、補剛先端は、溶着、螺合、接着、スナップ嵌め連結、雄雌連結などによって、ケーブル本体に取り付けられる。
【0066】
使用方法
クランプとケーブル通し具とを使用した従来の方法には、概して、以下のステップが含まれていた。
1.骨折部にアクセスするために、皮膚及び軟部組織が切開される。
2.任意:さらなる露出及び器具の挿入を可能にするために、自己保持装置(開創器)が挿入される。
3.クランプを使用して骨折が整復される。
4.ケーブル通し具の通過を可能にするために、軟部組織が剥離される。
5.ケーブル通し具がクランプとは別の位置で使用され、その結果、より多くの軟部組織が剥離される。
6.ケーブルがケーブル通し具に通される。
7.ケーブル通し具が取り外される。
8.圧着具がケーブルに適用される。
9.ケーブル締付具が適用され、ケーブルが締め付けられる。
10.ケーブルを適所に締結するために圧着具が「圧着される」。
11.クランプが取り外される。
【0067】
特許請求される本発明の骨クランプを使用した方法は、以下の通りである。
1.骨折部にアクセスするために、皮膚及び軟部組織が切開される。
2.任意:さらなる露出を可能にするために、自己保持装置が挿入される。
3.クランプを使用して骨折が整復される。
4.ケーブルがクランプに通される。
5.圧着具がケーブルに適用される。
6.ケーブル締付具が適用され、ケーブルが締め付けられる。
7.ケーブルを適所に締結するために圧着具が「圧着される」。
8.クランプが取り外される。
【0068】
上で述べた両方法を比較することによって、特許請求される本発明では使用されるステップ及び器具がより少ないことが分かる。
【0069】
説明
本発明は、骨クランプと、骨クランプと共に使用されるケーブルとを提供する。骨クランプは、別個の骨クランプ及び/又はケーブル通し具を必要としないように構成され、したがって、使用中に動脈を破裂させ且つ骨から組織を剥ぎ取るリスクを低減する。
【0070】
ここで図を参照すると、
図1A~
図1Bは、本発明の骨クランプの一般的な実施形態を図示している。具体的には、
図1Aは、全体として参照符号1で参照される、本発明の骨クランプの斜視図を図示している。図示の実施形態の骨クランプ1は、1対のハンドル2a、2bを備え、各ハンドル2a、2bは、それぞれ中央部3a、3bと顎部4a、4bとを有する。中央部3a、3bは、鉗子状の頭部配置20を形成するように枢動支点5において互いに固定される。枢動支点5は、顎部4a、4bが同一平面内で移動する箇所である。顎部4a、4bは、それぞれチャネル6a、6bを備え、チャネル6a、6bは、顎部4a、4bの近位端部12a、12bにそれぞれ第1の開放端部7a、7bを、顎部4a、4bの遠位端部14a、14bにそれぞれ第2の開放端部8a、8bを有する。チャネル6a、6bは、ケーブル、紐又は縫合糸を収容するように構成される。この特徴部の組み合わせは、まとめて骨クランプ1の頭部20と呼ぶことができる。
【0071】
顎部4a、4bの外壁19a、19bは、それぞれ開放端部8a、8bに向かう内向きテーパ状とすることができる。本質的に、テーパ状にするとは、組織障害を最小限に抑えるとともに、使用時の侵襲性を最小限に抑えるために、頭部20に細い輪郭を提供することである。そのようなテーパは、頭部20の断面積を最大60%減少させる。
【0072】
典型的には、チャネル6aは、チャネル6bと同一平面内にあり、すなわち、顎部4aの側面に平行である。チャネル6bの平面は、典型的には、顎部4b内の中心に位置する。一実施形態では、
図1Cに示すように、チャネル6aは、チャネル6bと同一平面内になく、すなわち、顎部4aの側面に平行ではない。チャネル6aの平面は、ここでは、顎部4aの表面の中心から外れて位置するように示されており、ケーブルが外に出るときに骨クランプ1の頭部20の中心から離れる方向にケーブルを案内する。この実施形態におけるチャネル6aは、顎部4aの中心線から0.01°~45°である。この利点は、ケーブルの先端がハンドル2b又は骨クランプ1の他の部分に引っ掛かるリスクをチャネル6aが低減することである。チャネル6aはまた、ケーブルの後部(チャネル6a内に入っている)がケーブルの先端の出口を塞ぐリスクも低減する。チャネル6aは、使用者がケーブルの受け入れ端部(先端)を把持する/握ることをより容易にする。チャネル6bの平面は、顎部4bの表面の中心から外れて位置することができ、ケーブルがクランプ内に入るときに骨クランプ1の頭部20の中心に向けてケーブルを案内することにも留意すべきである。この配置は、チャネル6aが、説明したように中心から外れて位置する場合、又はチャネル6aが中心から外れて位置しておらず、したがって、チャネル6bのみが中心から外れて位置する状態となる場合に存在することができる。クランプ1はまた、チャネル6a、6bがそれぞれ顎部4a、4bに対して傾斜しないように配置することもできる。
【0073】
ハンドル2a、2bは、結合コネクタ18によって枢動支点5においてしっかりと固定される(
図2も参照)。ハンドル2b上の結合コネクタ18は、ハンドル2a上のスロット16と係合する(コネクタ18とスロット16とを逆にすることもでき且つコネクタ18及びスロット16がそれぞれハンドル2a及び2b上に位置することができることに留意すべきである)。コネクタ18は、コネクタ18がスロット16の範囲内を自由に移動できるようにスロット16内に収容される。これによって、使用者が同一平面内でハンドル2a、2bを互いに対して、顎部4a、4bが標的とする骨にしっかりとつかまる好ましい位置に移動させることが可能となる。ハンドル2a、2bの顎部4a、4bが好ましい位置に位置した時点で、使用者は、ハンドル2a、2b上の締付手段(図示せず)を締め付けて、ハンドル2a、2bが互いに対して移動するのを防ぐ。換言すれば、ハンドル2a、2bは適所に固定される。
【0074】
ここで
図2に移ると、骨クランプ1の顎部4a、4bのより詳細な図が図示されている。図示のように、顎部4bは、内面10bをさらに備え、この内面10bは、顎部4bの幅を横断する一連の隆起部12をさらに備える(
図1A及び
図1Bも参照)。隆起部12は、骨クランプ1が使用中であるときに治療すべき骨を把持するのを補助する。顎部4bは、典型的には、弓形形状を有し、この形状もまた、使用中であるときに骨を把持するのを補助する。チャネル6bの遠位端部14bにおける開口部8bは、チャネル6bの側面と概ね平行であり、且つ略矩形断面形状を有する。しかしながら、開口部8bの形状は、丸みを帯びた形状、四角形、傾斜付き、フレア状、三角形、隅肉付き角部を有する形状、漏斗状、円錐状、半球状などとすることもできる。平行な側面を有する開口部8bの利点は、ケーブルの先端がチャネル6bを出てチャネル6a内に入るときに、平行な側面を有するケーブルの先端の回転/トグルを開口部8bが制御及び/又は抑制することである。
【0075】
顎部4aは内面10aをさらに備え、この内面10aは、内面10bに面するが一連の隆起部を有しても有しなくてもよい。チャネル6aの遠位端部14aにおける開口部8aはフレア状であり、このことは、チャネル6aが顎部4aの近位端部から顎部4aの遠位端部に移行するにつれて開口部8aがチャネルの遠位端部14aにおいて徐々に幅広となることを意味する。フレア状開口部8aは、ケーブルが一方の顎部4aから他方の顎部4bへ通過する(又はその逆も然りである)時のケーブルの先端に対するより広い受け入れ案内領域を作り出す利点をもたらし、したがって、チャネル6aの正しい平面に戻るようにケーブルを案内することによってケーブルの何らかの「トグル」又は横方向への動きを補正するのに役立つ。開口部8aは、「左/右」方向と上下方向の両方向においてフレア状であり、漏斗作用をもたらす。開口部8aの漏斗作用は、ケーブルの「引き込み」をもたらして、骨クランプ1の頭部20内への、続いて、対象となる骨幹の周囲へのケーブルの正確な位置決めを補助するために、チャネル6aの中心に向けてケーブルを案内する。
【0076】
チャネル6bの近位端部12bの開口部7bはフレア状であり、このことは、チャネル6bが顎部4bの遠位端部14bから顎部4bの近位端部12bに移行するにつれて開口部7bがチャネルの近位端部12bにおいてより幅広となることを意味する。フレア状開口部7bは、ケーブルが顎部4b及びチャネル6b内に入るときのケーブルの先端に対するより広い受け入れ案内領域を作り出す利点をもたらし、したがって、チャネル6bの正しい平面に戻るようにケーブルを案内することによってケーブルの何らかの「トグル」又は横方向への動きを補正するのに役立つ。開口部7bは、「左/右」方向と上下方向の両方向においてフレア状であり、漏斗作用をもたらす。開口部7bの漏斗作用は、ケーブルの「引き込み」をもたらして、骨クランプ1の頭部20内への、続いて、対象となる骨幹の周囲へのケーブルの正確な位置決めを補助するために、チャネル6bの中心に向けてケーブルを案内する。
【0077】
開口部7a、8b及び端部14aもフレア状とすることができ、したがって、開口部8a、7b及び端部12b、14bについて上記したのと同一の利点をもたらすことも理解されるべきである。このことは、最初にケーブル(又は別の好適な紐)を、最初に開口部7bに挿通するのではなく、開口部7aに挿通することによってクランプ1を使用することを望む場合にも有利である。
【0078】
チャネル6a、6bは、チャネル6a、6bの長さに沿って開放しており、すなわち、チャネル6a、6bは、露出されており、内面10a、10bの表面によって覆われていない。チャネル6a、6bは、典型的には、エッチングされていない表面を有し、顎部4a又は4b(若しくは両方)の内面10a又は10b(若しくは両方)を任意に横断する同一の隆起部12を有しない。開放チャネル6a、6bを有する利点は、骨クランプ1を取り外す必要なしに、ケーブルをクランプされた骨に取り付けることができることである。したがって、骨クランプと併せて別個のケーブル通し具を使用する要求は、実際的価値がない。
【0079】
典型的には、顎部4a、4bの円弧長さは、顎部4a、4bが骨に係合されたときに顎部4aの遠位端部14aと顎部4bの遠位端部14bとが決して触れないような長さである。この利点の1つは、この円弧長さによって、締付手段の作動を通じて骨の周囲への本発明の骨クランプの締め付けを調整し、使用者の両手を完全に自由にして他のツールを使用するか又は本明細書で説明したケーブルを別の手で取り上げることが可能となることである。また、この利点によって、様々な骨の直径でクランプを使用することが可能となる。
【0080】
図3を参照すると、先述の実施形態を参照して説明した部分又はステップに同一の符号が付与されている、本発明の骨クランプのさらなる実施形態が図示されている。この実施形態では、骨クランプ200は、第1の開放端部7bとハンドル2bの中央部3bとの間(すなわち、ケーブルがチャネル6b内に入る入口付近の領域)の顎部4bの内側面202から外方に延びる棚部201をさらに備える。棚部201は、ケーブルが骨クランプ200の開放端部7bに挿入されているときに、ケーブルの進入面を受け入れて案内するように構成される。棚部201は、ケーブルが第1の開放端部7bに「非常に低く」入るのを防止し、そのように低く入ることによって、ケーブルの先端の遠位端部が非常に高く外れて対象とする骨から離れる方向に進む可能性がある。棚部201はまた、ケーブルの遠位端部が正しい角度で入ることを確実にする。
【0081】
ここで
図4に移ると、先述の実施形態を参照して説明した部分又はステップに同一の符号が付与されている、本発明の骨クランプのさらなる実施形態が図示されている。図示の実施形態の骨クランプ300は、1対のハンドル2a、2bを備え、各ハンドル2a、2bは、それぞれ中央部3a、3bと顎部4a、4bとを有する。中央部3a、3bは、鉗子状の頭部配置を形成するように枢動支点5において互いに固定される。顎部4bは、第1の開放端部7bが顎部4bの近位端部12bにある状態で示されている。実施形態では、骨クランプ300は、中央部3bを備え、この中央部3bは、チャネル6bの中心平面に対して凹面又は凸面のいずれかを有することができる。中央部3bの凸面又は凹面は、クランプ300がまだ適所にある間に圧着装置又は他のツールを使用する際に、使用者に対してより広い空間を作り出す。
【0082】
一実施形態では、本発明の骨クランプ1、200、300の顎部4a、4bの一方又は両方は、収納式スリーブ401をさらに備える。収納式スリーブ401は、対象となる骨に骨クランプ1、200、300が設置された後に、一方の顎部4bの遠位端部14bから他方の顎部の遠位端部14aに向かって延びる。これによって、ケーブルが1つの顎部から別の顎部へ通過するときに、対象となる骨の周囲にケーブル用の案内路が確保される。この実施形態は、先述の実施形態を参照して説明した部分又はステップに同一の符号が付与されている、
図5A及び
図5Bに図示されている。スリーブ401は、典型的には、顎部4b内に収納された開放チャネルである。スリーブ401はまた、顎部構造の外表面などの、顎部の構造の一部を、顎部の上表面などに、形成してもよい。スリーブ401はまた、それぞれチャネル6a、6b内に収納されてもよい。
【0083】
スリーブ401は、チャネル6bの延長部となるように設計され、典型的には、スリーブ401が取り囲む骨と一致する曲率半径を有する。骨をクランプして締付手段を作動させた後に、顎部4bの遠位端部14bから出て顎部4aの遠位端部14aと連通するようにスリーブ401に作用するレバー402を作動させる。遠位端部14aとの連通は、使用者にとって典型的な死角にある顎部4aと4bとの間の隙間を部分的又は完全に埋めて、骨の周囲へのケーブル先端の安全な通過を確保するのに役立つ。上で説明したスリーブ401も顎部4a内に収納され且つ顎部4bの遠位端部と連通し得ることに留意すべきである。
【0084】
ここで
図6に移ると、先述の実施形態を参照して説明した部分又はステップに同一の符号が付与されている、本発明の骨クランプのさらなる実施形態が図示されている。図示の実施形態の骨クランプ1、200、300は、中央部3a、3b及び顎部4a、4bを示している。中央部3a、3bは、鉗子状の頭部配置20を形成するように枢動支点5において互いに固定される。枢動支点5は、顎部4a、4bが同一平面内で移動する箇所である。顎部4a、4bは、それぞれチャネル6a、6bを備え、チャネル6a、6bは、顎部4a、4bの近位端部12a、12bにそれぞれ第1の開放端部7a、7bを、顎部4a、4bの遠位端部14a、14bにそれぞれ第2の開放端部8a、8bを有する。チャネル6a、6bは、ケーブル、紐又は縫合糸を収容するように構成される。
図6は、緊張具及び圧着具などの、他のツールを最適な位置に案内するのに役立つように使用され得る棚部201を備えた顎部4bを示している。棚部201は、
図3において上で説明したように、顎部4bの内側面202から外方に延びる。棚部201は、典型的には、使用中にテンショナ又はケーブルを収容するような形状とされる浅溝204を有する。低侵襲技術では、外科医は、クランプを直視しない場合があり、手術中に骨折の感触とX線映像とを通じてクランプを用いて最初の整復を行う。結果として、ケーブル及び圧着具を挿入した後に、小さな切開部を通してテンショナ及び圧着装置を適用しなければならない。棚部201を使用することは、テンショナが圧着具に直接張力を加えることと、圧着装置が正しく圧着具に(直視せずに)適用されることを確実にするための手段である。
【0085】
代替的に、又は加えて、顎部4aは、圧着装置を収容するように構成された棚460をさらに備える。棚460は、第1の開放端部7aの基端側の、顎部4aの外壁19aから外方に延びる。
【0086】
ここで、本発明のケーブルの一般的な実施形態を図示する、
図7A及び
図7Bに移る。具体的には、
図7Aは、全体として参照符号100で参照される、本発明のケーブルの斜視図を図示している。ケーブル100はまた
図2にも示されており、ケーブル100は、本体101と補剛先端102とを備える。補剛先端102は、連続したものとするか、又はケーブル100の本体101の一端部に取り付けることができる。任意に、先端102は、本体101の両端部に位置することができる。ケーブル本体は、異なる断面積を有する補剛先端へのより良好な溶着又は連結を可能にする帯状溶着仕上げを有し得る。この帯状溶着仕上げは、補剛先端と連結/溶着/接着するように良好に一致する合わせ表面形状及び領域を提供するような手法でテーパ状とされるか又は成形されてもよい。この帯状溶着部はまた、複数の個々の素線を連結すべき1つの編組されていない固体表面にしっかりと固定する。先端102は、溶着、接着又は当業者に知られている他の方法によってケーブル本体101に取り付けることができる。先端102は、湾曲しており、典型的には、ケーブル本体101の円形(又は非円形)輪郭と比べて平坦な又は薄い輪郭を有する。しかしながら、先端102の断面形状は、典型的には丸みを帯びた縁部を有する断面を備えた、正方形、矩形、三角形、楕円、五角形、六角形、七角形、八角形、星形、略平坦形状、長円形などの形状とすることができる。湾曲した先端102の形状は、ケーブル100の自然な案内部としての役割を果たす、骨クランプ1のチャネル6a、6b内に収容されるように構成される。換言すれば、(端部ではなく)先端102に沿った断面形状は、チャネル6a、6bの断面形状と一致する。さらに、先端102の曲率は、先端102が取り囲む骨の半径にだけでなく、チャネル6a、6b及び顎部4a、4bの曲率にも類似している。このことは、ケーブル100及び先端102が骨に直接接触したままであり、軟部組織損傷の増大を防止して、動脈損傷のリスクを低下させることを意味する。先端102は、先端102がチャネル6a、6b内に収まり且つ本発明の骨クランプ1及びケーブル100に使用時にケーブル100の回転を制御する機械的特性を与え、これによって、望ましくない平面内でのケーブル100のトグルの可能性を低下させるとともに、使用中の動脈穿孔及び/又は組織損傷のリスクを低減するという点において有益である。先端102の半径の利点の1つは、この半径が対象となる骨の半径と略一致するか又は対象となる骨の半径よりも僅かに小さいことであり、先端102が骨の湾曲部にしっかりと取り付いた状態となり、周囲の組織に入り込まないことを意味する。対象となる骨と略一致するか又は対象となる骨よりも僅かに小さい先端102の半径の別の利点は、この半径によってケーブル先端102の遠位端部が開放端部8a内に、続いて、チャネル6a内に入ることが確実になされることである。別の利点は、先端102の長さによって、先端102の及びケーブル100の近位端部などの後端要素がチャネル6a、6b内に拘束された状態に保たれたまま、先端102の遠位端部が頭部20の一方の顎部から頭部20の他方の顎部へ通過して開口部7aから出ることが可能となることである。したがって、これによって、先端102が頭部20内の一方のチャネルから他方のチャネルへ通過するときに、先端102の回転面が制限される。ケーブル先端102は、骨の曲率と一致するように予め輪郭形成される。
【0087】
ケーブル先端102は、先端102の遠位端部が頭部20の受け入れ顎部に入った瞬間に、先端102の後部分が依然として頭部20の他方の顎部内で横方向(及び一方向)に拘束されるように十分に長い。先端102の最適な円弧長さは、20mm~30mmの骨の(典型的な大腿骨中央骨幹)曲率径を使用する場合には約5mm~100mmである。最適な円弧長さは15mm~55mmである。
【0088】
先端102は、端点102aをさらに備える。端点102aは、典型的には、面取り縁部202a、202bと側面202c、202dとを有する(
図7Bを参照)。端点102aの形状は、通過中にチャネル6a、6b内に引っ掛かるのを防止するとともに通過中に骨に引っ掛かるのを防止することを目的とする。端点102aの面取り縁部202a、202b及び側面202c、202dの形状は、先端102をチャネル6a、6bの中心に案内する漏斗のような作用をもたらすように、開口部7b、8aの断面形状と一致する。
【0089】
先端102は、ケーブル本体101と先端102との間に位置する、非湾曲部分102bをさらに備える。非湾曲部分102bによって、使用者がケーブル100を骨の側方空間内で安全に操作するために使用できるケーブルの補剛要素を有することが可能となる。非湾曲部分102bの長さは、一方の顎部4a、4bから他方の顎部4a、4bに完全に通すのに十分に長い補剛部分が存在するように十分に長い。非湾曲部分102bは、その長さに沿って様々な剛性を有し得る。先端102は、非湾曲部分102bの端部と面取り端点102aの先端との間で湾曲している。
【0090】
ケーブル本体101は、175ksi(キロポンド/平方インチ)~280ksiの引張強度を有する。先端102に使用される材料は、先端102の所望の剛性に部分的に基づいて選択されてもよい。例えば、好適な材料は、焼鈍されたステンレス鋼又は外科用グレードの可鍛性チタン、コバルト-クロムなどのより可鍛性の低い材料、又は必要に応じて別の生体適合性材料若しくは合金であってもよい。補剛先端102の直径又は断面積も先端102の剛性に影響を及ぼし、断面積の増加によって、より硬い先端102が得られる。
【0091】
使用時に、ケーブル100の先端102は、先端102が開口部8b内に入り開口部8aから出るようにチャネル6bを通して、開口部7bに挿入される。そして、ケーブル100が、チャネル6aを通して送給されて開口部7aから出る。次に、圧着具が適用される。ケーブル100が開口部8a内に入り開口部8bから出るようにケーブル100がチャネル6aを通して、開口部7aに挿入されるという逆のことも起こり得ることが理解されるべきである。次いで、ケーブル100の先端102は、チャネル6bを通して送給されて開口部7bから出る。その後、圧着具が適用される。
【0092】
次に、ケーブルテンショナが通常の方式で使用され、すなわち、次に、骨に適用されたケーブルの自由端部(又は複数の自由端部)が、ケーブルテンショナに通される。次いで、このテンショナは、骨及び骨折部に巻き付けられたケーブルに張力を加える。ケーブル100は、骨クランプ1、200、300を取り外さずに容易に取り付けることができる。所望の張力が達成された時点で、(典型的には20kg~50kgであるが、ある特定の状況(例えば骨粗鬆症)ではそれよりも大きい又は小さい場合がある)、圧着具は、骨クランプ1、200、300が依然としてその場にある状態で圧着される(係止される)。代替的に、テンショナは、その場に残すことができ、骨クランプ1、200、300が取り外され、その後、圧着が行われる。ケーブル100が切断され、骨クランプ1、200、300が取り外され、ケーブル100/圧着具が、骨折を整復された状態に保ったまま骨に留まる。
【0093】
ケーブル100は、挿入の深さを示すマークを有し得る。この利点は、チャネル6aから出たケーブル先端102を受け入れるべきであった箇所を使用者に示し、ケーブル100の後部を押すのを止めてケーブル先端102の位置を調べるように使用者に警告し得ることである。
【0094】
ケーブルのさらなる実施形態は、湾曲先端もマルチフィラメントケーブルである、取り囲む骨の直径よりも僅かに小さい曲率を有する湾曲先端部分を有するマルチフィラメントケーブルを含む。この実施形態における非湾曲ケーブルと湾曲ケーブルとの間の移行部は、編組によって連続していてもよく、又は上で説明した移行領域(接着、溶着、ねじ山、スナップ嵌めなど)によって分離されてもよい。
【0095】
骨クランプ1、200、300、ケーブル100、テンショナ、圧着装置及び圧着具は全て、単一の平面内において適用される。これによって低侵襲手術が可能となる。これによって、より良好な無駄のない動きでの使用者による操作がより集中してなされる。これによって、開創器などの、切開部を広げる別個の器具を使用する必要性が排除され得る。
【0096】
本発明の骨クランプ1、200、300の利点のいくつかは、骨クランプ1、200、300が、大腿骨の後ろから危険な部位又は死角への、すなわち、大腿動脈を含む、多数の大血管が位置する、使用者には視認できない大腿部の内側の部位への別の経路の必要性を排除するので、大腿動脈へのリスクが少ないことである。クランプ1、200、300の顎部4a、4bの構成は、他のケーブル通し具を使用するとき及び他のケーブル通し具の使用の準備をするときに見られる骨からの軟部組織の剥離を防止するので、組織の損傷がより少ない。
【0097】
本明細書で説明する骨クランプ1、200、300を使用する場合、ケーブル通し具の必要性を省くことによって、使用される手術ステップ及び手術ツールが少なくなる。クランプとケーブル通し具とを別々に使用する必要なしに、本明細書で説明する骨クランプ1、200、300は、従来技術のクランプ及びケーブル通し方法と比較して、安定性の向上と整復の容易さとをもたらす。このことは、手術室内での時間の短縮に相当し、したがって、外科医の時間節約と手術室資源の節約をもたらす。骨クランプ1、200、300の顎部4a、4bの構成は、外科医に機械的に有利な固定位置を提供して、特に短骨折/斜骨折において、ケーブル100の理想的な位置決めを可能にする。
【0098】
従来技術の方法のクランプ及びケーブル通し具の使用に関する問題は、クランプが既に邪魔になっている場合、ケーブルを最適な固定位置に位置決めできないことである。クランプは、固定のために最適な位置を占める。問題は、クランプとは別個である締結用通し具を考慮してこれらのケーブルが設計されていることである。ケーブル100の利点のいくつかは、固定のために骨を最適な箇所に保持している骨クランプ1、200、300を移動させる必要なしにケーブル100を最適な位置に位置決めできることである。ケーブル100の別の利点は、ケーブル100を骨クランプ1、200、300と共に使用して/骨クランプ1、200、300と組み合わせて別個のケーブル通し具を不要にできることである。別個のケーブル通し手段がないということは、骨からの組織の剥離が少なくて済むことを意味する。通し具(及びクランプ)の断面積が大きいほど、骨の周囲でより多くの組織の剥離が必要となる。骨の周囲に通す必要があるツールの数が多いほど、骨の周囲でより多くの組織の剥離が必要となる。したがって、別個のケーブル通し具が除外される場合、ケーブル通し具及びクランプが同一又は同様の断面積を有するので、組織剥離が50%少なくなると予想される。
【0099】
典型的なケーブル通し具の典型的な曲率半径は、概して、ケーブル通し具が使用される骨の曲率半径の2倍であるが、それに対して、特許請求されるケーブルの先端の曲率半径は、クランプされる骨の曲率半径と同様である。ケーブル又はケーブル通し具の顎部の曲率半径が一致しないので、補剛された湾曲先端を備えた特許請求されるケーブルは、典型的には、標準的なケーブル通し具と共に使用可能ではない。その結果、この不一致によって、ケーブルの先端が一般的なケーブル通し具内に嵌って動けなくなる。したがって、特許請求されるケーブルは、特許請求されるクランプと共に使用されるのにのみ好適である。
【0100】
本明細書では、「備える(comprise)、備える(comprises)、備えていた(comprised)、備えている(comprising)」という用語又はその任意の変形例、及び「含む(include)、含む(includes)、含んでいた(included)、含んでいる(including)」という用語又はその任意の変形例は、完全に交換可能であるとみなされ、それらの全てに、できるだけ広い解釈が与えられるべきであり、その逆も同様である。
【0101】
本発明は、右利き用又は左利き用に限定されるものではない。顎部4aのチャネル6aは、中央部3aの右側又は左側に位置することができる。顎部4bのチャネル6bは、中央部3bの右側又は左側に位置することができる。
【0102】
本発明は、本明細書で説明した実施形態に限定されるものではなく、構造と細部の両方において変更され得る。
【国際調査報告】