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特表2022-508323ハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサー
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
G01D5/20 110D
G01D5/20 110H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531884
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(85)【翻訳文提出日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 CN2020116882
(87)【国際公開番号】W WO2021057730
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】201910932245.0
(32)【優先日】2019-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521241960
【氏名又は名称】グイリン グアンルー メジャリング インストルメント カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GUILIN GUANGLU MEASURING INSTRUMENT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 27 Chang Feng Road, Ding Jiang Town, Ling Chuan County Guilin, Guangxi 541213 China
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】リュウ チュフイ
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA24
2F077AA46
2F077CC07
2F077NN02
2F077NN05
2F077NN16
2F077PP06
2F077QQ15
2F077TT33
2F077TT71
2F077TT81
2F077TT82
(57)【要約】
本発明の電磁誘導型変位センサーは、経路相対運動を測定可能な受送信板と励起板とからなる。受送信板には、少なくとも1つの放射巻線と、放射巻線の数よりも1つ多い異なるピッチの少なくとも2つの三相受信巻線とが配置されている。各放射巻線はすべて、同方向直列接続方式によって異なるピッチの2つの三相受信巻線を同時に囲み、受信巻線はすべて分散巻線構造を用いる。励起板には、受送信板の三相受信巻線と同数の少なくとも2列の短絡リング形状の励起コイルが配置され、それぞれ対応する三相受信巻線とは整列しており、且つピッチが等しい。伝送遅延を利用して形成する駆動パルスは、放射巻線において、持続時間が極めて短い線形時変電流を励起するとともに、放射巻線により囲まれた2つの三相受信巻線において、経時的に変化しない起電力を誘導し、この三相起電力を合成してフィルタリングし、整形した後、得た方形波のエッジを用いて、加算カウンタのカウント値をキャプチャし、2つの異なるピッチ内での測定対象位置の空間位相又は変位を並列測定し、最後に、ハイブリッド測位又は絶対測位アルゴリズムにより測定対象変位を求める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサーであって、
経路相対運動を測定可能な受送信板(1)と、励起板(2)とを含み、
前記受送信板(1)には、測定回路と、測定経路に沿って展開している少なくとも1つの放射巻線とが配置され、各放射巻線は、略密閉した矩形コイルを同方向に直列接続するように第1のピッチの三相受信巻線と第2のピッチの三相受信巻線を囲み、各三相受信巻線は順次120°の差を持つ同一構造の相巻線を3つ含み、放射巻線と三相受信巻線はすべて前記測定回路に接続され、前記測定回路は中央制御ユニット、インターフェースユニット、及び測定ユニットを含み、中央制御ユニットはマイクロコントローラ(13)を含み、インターフェースユニットはマイクロコントローラ(13)に接続されたキー入力回路、液晶駆動回路、測定インターフェース回路、及び電源変換回路を含み、
前記励起板(2)には、測定経路に沿って展開しており且つ受送信板(1)の三相受信巻線と同数の少なくとも2列の励起コイルが配置され、各列の励起コイルはそれぞれ受送信板(1)の対応する三相受信巻線とはピッチが等しく、中心線が重なり、測定経路における寸法がそれぞれのピッチの半分である、ことを特徴とするハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサー。
【請求項2】
前記測定ユニットは、発振器と、分周回路(3)と、駆動・サンプリングパルス発生回路(4)及び線間電圧走査制御信号発生器(5)からなる信号発生器と、アナログスイッチ群(6)、サンプリングホールドコンデンサ(C、C)、差動アンプ(7)、ローパスフィルタ(8)、及びゼロ交差検出器(9)からなるアナログ信号処理回路と、同期遅延回路、加算カウンタ(10)、ランダムアクセスメモリ(11、12)及び同期キャプチャ回路からなる位相量子化回路と、放射巻線駆動パワートランジスタ(T、T)とを含み、アナログ信号処理回路、ランダムアクセスメモリ及び同期キャプチャ回路は、それぞれ2組設けられて2つの並列処理チャネルを構成し、
発振器は、直接又は分周回路(3)を介して駆動・サンプリングパルス発生回路(4)、線間電圧走査制御信号発生器(5)、ローパスフィルタ(8)、同期キャプチャ回路及び加算カウンタ(10)に入力クロックを提供し、駆動・サンプリングパルス発生回路(4)はアナログスイッチ群(6)に接続されるとともに、直接又は多路スイッチ(S14)を介して放射巻線駆動パワートランジスタ(T、T)に接続され、線間電圧走査制御信号発生器(5)はアナログスイッチ群(6)と同期遅延回路にそれぞれ接続され、アナログスイッチ群(6)、差動アンプ(7)、ローパスフィルタ(8)、ゼロ交差検出器(9)、同期キャプチャ回路は順次接続され、サンプリングホールドコンデンサ(C、C)は差動アンプ(7)の入力端とアナログ信号グランドとの間に接続され、同期遅延回路は同期キャプチャ回路と加算カウンタ(10)にそれぞれ接続され、加算カウンタ(10)と同期キャプチャ回路はまたランダムアクセスメモリ(11、12)に接続され、各放射巻線はそれぞれの駆動パワートランジスタ(T又はT)を介して電源に接続され、各三相受信巻線はすべてスター(Y)で接続され、中性点がアナログ信号グランドに接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサー。
【請求項3】
各放射巻線はほぼ閉鎖した2つのコイルを用いて同方向直列接続方式によりそれぞれ異なるピッチの2つの三相受信巻線を囲み、すべての励起コイルは短絡リングの形状とされ、各相の受信巻線は空間的に順次60°/M移相したM(Mは少なくとも2)個の同一構造のサブ巻線を直列接続して1つの分散巻線を構成し、又は分散巻線を構成する各サブ巻線そのものも分散巻線であり、
同一の放射巻線により囲まれた2つの異なるピッチ内での測定対象位置の空間位相又は変位が毎回並列測定され、
所望の異なるピッチ内での測定対象位置の空間位相又は変位を測定した後、マイクロコントローラ(13)は測定ユニットを無効化してその作動を停止し、ハイブリッド測位又は絶対測位アルゴリズムにより測定対象変位を計算する、ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサー。
【請求項4】
受送信板(1)と励起板(2)は測定軸線に沿って相対移動可能であり、受送信板(1)には、測定軸線に沿って展開している1つの放射巻線(1.3)と異なるピッチの2つの三相受信巻線(1.1、1.2)とが配置され、
放射巻線(1.3)は、ほぼ閉鎖した2つの矩形コイル(1.3.1、1.3.2)を用いて同方向直列接続方式によりそれぞれピッチPの三相受信巻線(1.1)とピッチPの三相受信巻線(1.2)を囲み、
励起板(2)には、測定軸線に沿って展開している2列の励起コイル(2.1、2.2)が配置され、それぞれ受送信板(1)の2つの三相受信巻線(1.1、1.2)とはピッチが等しく、中心線が重なり、励起コイルの形状が角丸矩形短絡リングとされ、
ピッチPとPの空間周波数差を中間ピッチ空間周波数F=1/P-1/Pとし、波長比mの中間ピッチP=1/F=P・P/(P-P)=m・P=(m+1)・Pを得る、ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサー。
【請求項5】
受送信板(1)と励起板(2)は回転軸回りに相対回動可能であり、ピッチが角度で計算され、
受送信板(1)には、同心円弧に沿って展開している1つの放射巻線(1.3)と異なるピッチの2つの三相受信巻線(1.1、1.2)とが配置され、
放射巻線(1.3)は、ほぼ閉鎖した2つの同心円弧形コイル(1.3.1、1.3.2)を用いて同方向直列接続方式によりそれぞれピッチPの三相受信巻線(1.1)とピッチPの三相受信巻線(1.2)を囲み、
励起板(2)には、同心円周に沿って展開している2列の励起コイル(2.1、2.2)が配置され、それぞれ受送信板(1)の2つの三相受信巻線(1.1、1.2)とはピッチが等しく、中心線が重なり、励起コイルの形状が2本の同心円弧と2本の径方向直線により囲まれた短絡リングとされ、
ピッチPとPの空間周波数差を中間ピッチ空間周波数F=1/P-1/Pとし、波長比mの中間ピッチP=1/F=P・P/(P-P)=m・P=(m+1)・Pを得る、ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサー。
【請求項6】
受送信板(1)と励起板(2)は測定軸線に沿って相対移動可能であり、
受送信板(1)には、測定軸線に沿って展開している2つの放射巻線(1.4、1.5)と異なるピッチの3つの三相受信巻線(1.1、1.2、1.3)とが配置され、1番目の放射巻線(1.4)はほぼ閉鎖した2つの矩形コイル(1.4.1、1.4.2)を用いて同方向直列接続方式によりそれぞれピッチPの三相受信巻線(1.1)とピッチPの三相受信巻線(1.2)を囲み、2番目の放射巻線(1.5)はほぼ閉鎖した2つの矩形コイル(1.4.1、1.5.2)を用いて同方向直列接続方式によりそれぞれピッチPの三相受信巻線(1.1)とピッチPの三相受信巻線(1.3)を囲み、
励起板(2)には、測定軸線に沿って展開している3列の励起コイル(2.1、2.2、2.3)が配置され、それぞれ受送信板(1)の3つの三相受信巻線(1.1、1.2、1.3)とはピッチが等しく、中心線が重なり、励起コイルの形状が角丸矩形短絡リングとされ、
ピッチPとPの空間周波数差を中間ピッチ空間周波数F=1/P-1/Pとし、波長比mの中間ピッチP=1/F=P・P/(P-P)=m・P=(m+1)・Pを得て、ピッチPとPの空間周波数差を粗ピッチ空間周波数F=1/P-1/Pとし、波長比nの粗ピッチP=1/F=P・P/(P-P)=m・n・P=(m・n+1)・Pを得る、ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサー。
【請求項7】
前記駆動・サンプリングパルス発生回路(4)は、カスケード接続された奇数個のインバータと1つのNANDゲート(GNA)とを含み、前記分周回路(3)から出力される1番目のクロック信号(SCLK)が該回路のトリガーパルスとして1番目のインバータの入力端子とNANDゲート(GNA)の1つの入力端子にそれぞれ接続され、カスケード接続された奇数個のインバータの出力はNANDゲート(GNA)の別の入力端子に接続され、トリガーパルス(SCLK)の各立ち上がりエッジで、NANDゲート(GNA)はカスケード接続された奇数個のインバータの総伝送遅延に等しい幅を有する負極性の狭いパルスを出力し、NANDゲート(GNA)の出力(Y)を反転して正極性のサンプリング・ホールド制御信号(SAH)が得られ、NANDゲート(GNA)の出力(Y)を反転緩衝して正極性の駆動信号(TG)が得られ、
前記線間電圧走査制御信号発生器(5)は、4つのD型トリガー(FF11、FF12、FF13、FF14)からなり、前記分周回路(3)から出力される2番目のクロック信号(PCLK)はこの4つのD型トリガーのクロック端子に同時に接続され、前記マイクロコントローラ(13)から出力される初期化信号(INI)はこの4つのD型トリガーをそれぞれ1、0、0、1に予め設定しておき、最初の3つのD型トリガー(FF11、FF12、FF13)は巡回シフトのリングカウンタを構成し、出力する3つの信号(Q、Q、Q)がインタラクションに高レベルとなり、4番目のD型トリガー(FF14)は1番目のD型トリガー(FF11)の出力(Q)をカウントし、前記リングカウンタが巡回するごとにその出力(Q)が1回反転する、ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサー。
【請求項8】
前記アナログスイッチ群(6)は三段スイッチが直列接続された構造となり、入力する三相電圧について相電圧の選択、交換及びサンプリングを順次行い、つまり、一段目のスイッチ(S-S)は{S、S}、{S、S}及び{S、S}の3対とされ、それぞれ相電圧対{u、u}、{u、u}及び{u、u}を選択し、二段目のスイッチ(S-S)は必要に応じて一段目のスイッチにより選択された相電圧対の順を交換し、三段目のスイッチ(S-S10)は二段目のスイッチにより出力された1対の相電圧をサンプリングして、結果をそれぞれ前記サンプリングホールドコンデンサ(C、C)に保存し、
前記差動アンプ(7)は、サンプリングホールドコンデンサ(C、C)に保存された2つの相電圧サンプルについて減算演算と増幅を施して、対応する線間電圧のサンプリング・ゼロ次ホールド信号を得て、前記信号発生器の出力信号による制御下で、A-B、A-C、B-C、B-A、C-A、C-Bの順の線間電圧を順次取得して、走査サンプリングを巡回して行い、入力した前記三相受信巻線が経時的に変化せず(センサーが固定されている場合)、測定対象位置に応じて周期的に変化する三相電圧を1つの離散時間正弦信号(u(n))に合成し、前記三相受信巻線ピッチ内での測定対象位置の空間位相が該離散時間正弦信号(u(n))の初期位相に変換される、ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサー。
【請求項9】
前記同期遅延回路は3つのD型トリガー(FF21、FF22、FF23)からなり、前記線間電圧走査制御信号発生器(5)の最後の出力信号(Q)は1番目のD型トリガー(FF21)のクロック端に接続されて該回路の入力クロックとなり、前記マイクロコントローラ(13)から出力される初期化信号(INI)はこの3つのD型トリガーをそれぞれ1、1、0に予め設定しておき、出力信号(C)を低レベルとし、最初の2つのD型トリガー(FF21、FF22)は2ビット非同期減算カウンタを構成し、入力クロック(Q)の立ち上がりエッジについてカウントダウンを行い、4番目の入力クロック(Q)の立ち上がりエッジが到達すると、出力信号(C)が高レベルにジャンプするようにし、
前記同期遅延回路の出力信号(C)が高レベルにジャンプすると、前記加算カウンタ(10)は0からカウントし始め、前記同期キャプチャ回路はキャプチャブロックを解除し、
前記同期キャプチャ回路は、2つのD型トリガー(FF31、FF32)と1つのANDゲート(AG31)とからなり、前記マイクロコントローラ(13)から出力される初期化信号(INI)は2つのD型トリガー(FF31、FF32)を非同期にクリアし、遅延時間が来るまでに前記加算カウンタ(10)のカウント値へのキャプチャがブロックされ、遅延時間が来ると、前記同期遅延回路の出力信号(C)は高レベルにジャンプし、前記アナログ信号処理回路から出力される方形波信号(U)はそれ以降の1番目の立ち上がりエッジで1番目のD型トリガー(FF31)の出力信号(C)も高レベルにセットし、ANDゲート(AG31)の出力信号(C)はそれ以降、前記方形波信号(U)と同じであり、2番目のD型トリガー(FF32)は、ANDゲート(AG31)の出力信号(C)とシステムクロックの立ち下がりエッジとを同期化した後、前記方形波信号(U)の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジのそれぞれで同期方式により加算カウンタ(10)のカウント値をキャプチャし、それぞれ2つのランダムアクセスメモリ(11、12)に保存し、それにより、該処理チャネルに接続された前記三相受信巻線ピッチ内での測定対象位置の空間位相又は変位の量子化コードが得られる、ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサー。
【請求項10】
放射巻線(1.3)により囲まれた2つの異なるピッチPとP内での測定対象位置の位相量子化コードNとNを並列測定すると、微細変位はx=N(ピッチPを微細ピッチPという)、中間変位はx=m・(N-N)であり、次に、測定した2回の隣接する中間変位増分Δxを累積して総変位x=Σ(Δx)を得て、関係x≒K・P+xから総変位xに含まれる中間ピッチの整数の個数Kを求め、関係x≒K・P+xから中間変位xに含まれる微細ピッチの整数の個数Kを求め、次に、式x=(m・K+K)・P+xにより測定レンジ制限のない測定対象変位xを得て、
中間変位xを半開区間[0,P)にマッピングし、関係x≒K・P+xから中間変位xに含まれる微細ピッチの整数の個数Kを求め、式x=K・P+xにより中間ピッチの範囲で絶対測位する測定対象変位xを得る絶対測位アルゴリズムを使用してもよく、
1番目の放射巻線(1.4)により囲まれた2つの異なるピッチPとP内での測定対象位置の位相量子化コードN11とN12、及び2番目の放射巻線(1.5)により囲まれた2つの異なるピッチPとP内での測定対象位置の位相量子化コードN21とN23を並列測定すると、微細変位はx=N21(ピッチPを微細ピッチPという)、中間変位はx=m・(N12-N11)であり、粗変位はx=m・n・(N23-N21)であり、粗変位xを半開区間[0,P)にマッピングし、関係x≒K・P+xから粗変位xに含まれる中間ピッチPの整数の個数Kを求め、関係x≒K・P+xから中間変位xに含まれる微細ピッチPの整数の個数Kを求め、式x=(m・K+K)・P+xにより粗ピッチ範囲での絶対変位xを得て、測定レンジを拡張しない場合、これは測定対象変位x=xであり、それ以外の場合、測定した2回の隣接する絶対変位増分Δxを累積して、測定レンジ制限のない測定対象変位x=Σ(Δx)を得る、ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導型変位測定の技術に関し、具体的には、ハイブリッド測位方法を用いた電磁誘導型変位センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
汚れや潮湿などに弱いという静電容量式変位センサーの欠陥を解決するために、電磁誘導型変位センサーは開発されている。
【0003】
特許US5804963は、3組の誘導印加巻線を巡回して駆動し、駆動されている誘導印加巻線と等価的に直交する2組の誘導巻線の信号を受信することにより変位の測定を行うインクリメンタル電磁誘導型変位センサーを開示している。特許CN100491896Cでは、US5804963の誘導印加巻線及び誘導巻線の構造について、誘導印加導体(巻線)と誘導導体(巻線)が共用されず個別に設置されるように改良を行うことにより、両方の間の直接結合を減らし、測定方法には変わりがない。インクリメンタル測定は簡単に実現できる反面、変位増分をリアルタイムで累積するために連続作動が必要とされ、このため、作動電流が大きい。
【0004】
特許US5886519は、複数の異なる波長での測定対象位置の空間位相を順次測定することにより測定結果を推定する絶対位置電磁誘導型変位センサーを開示している。ある波長での測定対象位置の空間位相を取得するために、まず、LC発振方式により該波長の放射巻線を励起させ、発振電流がゼロ交差すると、該波長受信巻線信号のサンプリング・ホールド(SAH)制御信号を激活し、サンプリング信号に増幅とアナログ-デジタル変換(ADC)を行い、最後に、アークタンジェント演算を経て所望の位相を求める。特許CN1198111Cでは、US5886519の規構造及び各放射巻線のレイアウトについて改良がなされており、新しい定規には、互いに接続された複数の結合回路が使用されて、受信巻線領域に正、負対称の空間磁場を発生させ、測定方法には変わりがない。この絶対位置電磁誘導型変位センサーは、最低測定頻度について要求がないので、長時間をあけて断続的に作動することが可能であり、平均作動電流が極めて小さく、ただし、測定レンジに限りがあることにより、その適用範囲が制限され、たとえば、通常のキャリパーのスロット幅が約12.5mmしかなく、多くとも2つの改良構造の波長しかレイアウトできず、現在の製造プロセスでは、200mm以上の通常のキャリパーに適用できない。さらに、ボタン電池により給電される手持ち測定器具の場合は、測定方法に使用される高速コンパレータ、アナログ-デジタル変換器、アークタンジェント演算など用の機能性部材の実現が困難であり、この結果、製造コストの高騰を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、本発明の目的は、従来の電磁誘導型変位センサーに存在する技術上の欠点、又は、作動電流が大きかったり、測定レンジが制限されたり、生産コストが高く製造しにくいなどの技術上の欠点を解決するために、断続的な作動を可能としつつ、測定レンジについて制限がなく、実現されやすい、ハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサーを開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に記載の技術的課題を解決するために採用する技術案は以下のとおりである。
【0007】
ハイブリッド測位電磁誘導型変位センサーであって、
経路相対運動を測定可能な受送信板(1)と、励起板(2)とを含み、
前記受送信板(1)には、測定回路と、測定経路に沿って展開している少なくとも1つの放射巻線と、放射巻線の数よりも1つ多い異なるピッチの少なくとも2つの三相受信巻線とが配置され、各放射巻線は異なるピッチの2つの三相受信巻線の両方を囲み、各三相受信巻線は順次120°の差を持つ同一構造の相巻線を3つ含み、放射巻線と三相受信巻線はすべて前記測定回路に接続され、前記測定回路は中央制御ユニット、インターフェースユニット、及び測定ユニットを含み、中央制御ユニットはマイクロコントローラ(13)を含み、インターフェースユニットはマイクロコントローラ(13)に接続されたキー入力回路、液晶駆動回路、測定インターフェース回路、及び電源変換回路を含み、
前記励起板(2)には、測定経路に沿って展開しており且つ受送信板(1)の三相受信巻線と同数の少なくとも2列の励起コイルが配置され、各列の励起コイルはそれぞれ受送信板(1)の対応する三相受信巻線とはピッチが等しく、中心線が重なり、測定経路における寸法がそれぞれのピッチの半分であることを特徴とする。
【0008】
本発明をさらに限定する技術案は以下を含む。
【0009】
前記測定ユニットは、発振器と、分周回路(3)と、駆動・サンプリングパルス発生回路(4)及び線間電圧走査制御信号発生器(5)からなる信号発生器と、アナログスイッチ群(6)、サンプリングホールドコンデンサ(C、C)、差動アンプ(7)、ローパスフィルタ(8)、及びゼロ交差検出器(9)からなるアナログ信号処理回路と、同期遅延回路、加算カウンタ(10)、ランダムアクセスメモリ(11、12)及び同期キャプチャ回路からなる位相量子化回路と、放射巻線駆動パワートランジスタ(T、T)とを含み、アナログ信号処理回路、ランダムアクセスメモリ及び同期キャプチャ回路は、それぞれ2組設けられて2つの並列処理チャネルを構成し、
発振器は、直接又は分周回路(3)を介して駆動・サンプリングパルス発生回路(4)、線間電圧走査制御信号発生器(5)、ローパスフィルタ(8)、同期キャプチャ回路及び加算カウンタ(10)に入力クロックを提供し、駆動・サンプリングパルス発生回路(4)はアナログスイッチ群(6)に接続されるとともに、直接又は多路スイッチ(S14)を介して放射巻線駆動パワートランジスタ(T、T)に接続され、線間電圧走査制御信号発生器(5)はアナログスイッチ群(6)と同期遅延回路にそれぞれ接続され、アナログスイッチ群(6)、差動アンプ(7)、ローパスフィルタ(8)、ゼロ交差検出器(9)、同期キャプチャ回路は順次接続され、サンプリングホールドコンデンサ(C、C)は差動アンプ(7)の入力端とアナログ信号グランドとの間に接続され、同期遅延回路は同期キャプチャ回路と加算カウンタ(10)にそれぞれ接続され、加算カウンタ(10)と同期キャプチャ回路はまたランダムアクセスメモリ(11、12)に接続され、各放射巻線はそれぞれの駆動パワートランジスタ(T又はT)を介して電源に接続され、各三相受信巻線はすべてスター(Y)で接続され、中性点がアナログ信号グランドに接続される。
【0010】
各放射巻線はほぼ閉鎖した2つのコイルを用いて同方向直列接続方式によりそれぞれ異なるピッチの2つの三相受信巻線を囲み、すべての励起コイルは短絡リングの形状とされ、各相の受信巻線は空間的に順次60°/M移相したM(Mは少なくとも2)個の同一構造のサブ巻線を直列接続して1つの分散巻線を構成し、分散巻線を構成する各サブ巻線そのものも分散巻線であってもよく、
同一の放射巻線により囲まれた2つの異なるピッチ内での測定対象位置の空間位相又は変位が毎回並列測定され、
所望の異なるピッチ内での測定対象位置の空間位相又は変位を測定した後、マイクロコントローラ(13)は測定ユニットを無効化してその作動を停止し、ハイブリッド測位又は絶対測位アルゴリズムにより測定対象変位を計算する。
【0011】
2ピッチ構造を用いてリニア変位を測定する場合、受送信板(1)と励起板(2)は測定軸線に沿って相対移動可能であり、受送信板(1)には、測定軸線に沿って展開している1つの放射巻線(1.3)と異なるピッチの2つの三相受信巻線(1.1、1.2)とが配置され、
放射巻線(1.3)は、ほぼ閉鎖した2つの矩形コイル(1.3.1、1.3.2)を用いて同方向直列接続方式によりそれぞれピッチPの三相受信巻線(1.1)とピッチPの三相受信巻線(1.2)を囲み、
励起板(2)には、測定軸線に沿って展開している2列の励起コイル(2.1、2.2)が配置され、それぞれ受送信板(1)の2つの三相受信巻線(1.1、1.2)とはピッチが等しく、中心線が重なり、励起コイルの形状が角丸矩形短絡リングとされ、
ピッチPとPの空間周波数差を中間ピッチ空間周波数F=1/P-1/Pとし、波長比mの中間ピッチP=1/F=P・P/(P-P)=m・P=(m+1)・Pを得る。
【0012】
2ピッチ構造を用いて角変位を測定する場合、受送信板(1)と励起板(2)は回転軸回りに相対回動可能であり、ピッチが角度で計算され、
受送信板(1)には、同心円弧に沿って展開している1つの放射巻線(1.3)と異なるピッチの2つの三相受信巻線(1.1、1.2)とが配置され、
放射巻線(1.3)は、ほぼ閉鎖した2つの同心円弧形コイル(1.3.1、1.3.2)を用いて同方向直列接続方式によりそれぞれピッチPの三相受信巻線(1.1)とピッチPの三相受信巻線(1.2)を囲み、
励起板(2)には、同心円周に沿って展開している2列の励起コイル(2.1、2.2)が配置され、それぞれ受送信板(1)の2つの三相受信巻線(1.1、1.2)とはピッチが等しく、中心線が重なり、励起コイルの形状が2本の同心円弧と2本の径方向直線により囲まれた短絡リングとされ、
ピッチPとPの空間周波数差を中間ピッチ空間周波数F=1/P-1/Pとし、波長比mの中間ピッチP=1/F=P・P/(P-P)=m・P=(m+1)・Pを得る。
【0013】
3ピッチ構造を用いてリニア変位を測定する場合、受送信板(1)と励起板(2)は測定軸線に沿って相対移動可能であり、
受送信板(1)には、測定軸線に沿って展開している2つの放射巻線(1.4、1.5)と異なるピッチの3つの三相受信巻線(1.1、1.2、1.3)とが配置され、1番目の放射巻線(1.4)はほぼ閉鎖した2つの矩形コイル(1.4.1、1.4.2)を用いて同方向直列接続方式によりそれぞれピッチPの三相受信巻線(1.1)とピッチPの三相受信巻線(1.2)を囲み、2番目の放射巻線(1.5)はほぼ閉鎖した2つの矩形コイル(1.4.1、1.5.2)を用いて同方向直列接続方式によりそれぞれピッチPの三相受信巻線(1.1)とピッチPの三相受信巻線(1.3)を囲み、
励起板(2)には、測定軸線に沿って展開している3列の励起コイル(2.1、2.2、2.3)が配置され、それぞれ受送信板(1)の3つの三相受信巻線(1.1、1.2、1.3)とはピッチが等しく、中心線が重なり、励起コイルの形状が角丸矩形短絡リングとされ、
ピッチPとPの空間周波数差を中間ピッチ空間周波数F=1/P-1/Pとし、波長比mの中間ピッチP=1/F=P・P/(P-P)=m・P=(m+1)・Pを得て、ピッチPとPの空間周波数差を粗ピッチ空間周波数Fc=1/P-1/Pとし、波長比nの粗ピッチP=1/F=P・P/(P-P)=m・n・P=(m・n+1)・Pを得る。
【0014】
前記駆動・サンプリングパルス発生回路(4)は、カスケード接続された奇数個のインバータと1つのNANDゲート(GNA)とを含み、前記分周回路(3)から出力される1番目のクロック信号(SCLK)が該回路のトリガーパルスとして1番目のインバータの入力端子とNANDゲート(GNA)の1つの入力端子にそれぞれ接続され、カスケード接続された奇数個のインバータの出力はNANDゲート(GNA)の別の入力端子に接続され、トリガーパルス(SCLK)の各立ち上がりエッジで、NANDゲート(GNA)はカスケード接続された奇数個のインバータの総伝送遅延に等しい幅を有する負極性の狭いパルスを出力し、NANDゲート(GNA)の出力(Y)を反転して正極性のサンプリング・ホールド制御信号(SAH)が得られ、NANDゲート(GNA)の出力(Y)を反転緩衝して正極性の駆動信号(TG)が得られ、
前記線間電圧走査制御信号発生器(5)は、4つのD型トリガー(FF11、FF12、FF13、FF14)からなり、前記分周回路(3)から出力される2番目のクロック信号(PCLK)はこの4つのD型トリガーのクロック端子に同時に接続され、前記マイクロコントローラ(13)から出力される初期化信号(INI)はこの4つのD型トリガーをそれぞれ1、0、0、1に予め設定しておき、最初の3つのD型トリガー(FF11、FF12、FF13)は巡回シフトのリングカウンタを構成し、出力する3つの信号(Q、Q、Q)がインタラクションに高レベルとなり、4番目のD型トリガー(FF14)は1番目のD型トリガー(FF11)の出力(Q)をカウントし、前記リングカウンタが巡回するごとにその出力(Q)が1回反転する。
【0015】
前記アナログスイッチ群(6)は三段スイッチが直列接続された構造となり、入力する三相電圧について相電圧の選択、交換及びサンプリングを順次行い、つまり、一段目のスイッチ(S-S)は{S、S}、{S、S}及び{S、S}の3対とされ、それぞれ相電圧対{u、u}、{u、u}及び{u、u}を選択し、二段目のスイッチ(S-S)は必要に応じて一段目のスイッチにより選択された相電圧対の順を交換し、三段目のスイッチ(S-S10)は二段目のスイッチにより出力された1対の相電圧をサンプリングして、結果をそれぞれ前記サンプリングホールドコンデンサ(C、C)に保存し、
前記差動アンプ(7)は、サンプリングホールドコンデンサ(C、C)に保存された2つの相電圧サンプルについて減算演算と増幅を施して、対応する線間電圧のサンプリング・ゼロ次ホールド信号を得て、前記信号発生器の出力信号による制御下で、A-B、A-C、B-C、B-A、C-A、C-Bの順の線間電圧を順次取得して、走査サンプリングを巡回して行い、入力した前記三相受信巻線が経時的に変化せず(センサーが固定されている場合)、測定対象位置に応じて周期的に変化する三相電圧を1つの離散時間正弦信号(u(n))に合成し、前記三相受信巻線ピッチ内での測定対象位置の空間位相が該離散時間正弦信号(u(n))の初期位相に変換される。
【0016】
前記同期遅延回路は3つのD型トリガー(FF21、FF22、FF23)からなり、前記線間電圧走査制御信号発生器(5)の最後の出力信号(Q)は1番目のD型トリガー(FF21)のクロック端に接続されて該回路の入力クロックとなり、前記マイクロコントローラ(13)から出力される初期化信号(INI)はこの3つのD型トリガーをそれぞれ1、1、0に予め設定しておき、出力信号(C)を低レベルとし、最初の2つのD型トリガー(FF21、FF22)は2ビット非同期減算カウンタを構成し、入力クロック(Q)の立ち上がりエッジについてカウントダウンを行い、4番目の入力クロック(Q)の立ち上がりエッジが到達すると、出力信号(C)が高レベルにジャンプするようにし、
前記同期遅延回路の出力信号(C)が高レベルにジャンプすると、前記加算カウンタ(10)は0からカウントし始め、前記同期キャプチャ回路はキャプチャブロックを解除し、
前記同期キャプチャ回路は、2つのD型トリガー(FF31、FF32)と1つのANDゲート(AG31)とからなり、前記マイクロコントローラ(13)から出力される初期化信号(INI)は2つのD型トリガー(FF31、FF32)を非同期にクリアし、遅延時間が来るまでに前記加算カウンタ(10)のカウント値へのキャプチャがブロックされ、遅延時間が来ると、前記同期遅延回路の出力信号(C)は高レベルにジャンプし、前記アナログ信号処理回路から出力される方形波信号(U)はそれ以降の1番目の立ち上がりエッジで1番目のD型トリガー(FF31)の出力信号(C)も高レベルにセットし、ANDゲート(AG31)の出力信号(C)はそれ以降、前記方形波信号(U)と同じであり、2番目のD型トリガー(FF32)は、ANDゲート(AG31)の出力信号(C)とシステムクロックの立ち下がりエッジとを同期化した後、前記方形波信号(U)の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジのそれぞれで同期方式により加算カウンタ(10)のカウント値をキャプチャし、それぞれ2つのランダムアクセスメモリ(11、12)に保存し、それにより、該処理チャネルに接続された前記三相受信巻線ピッチ内での測定対象位置の空間位相又は変位の量子化コードが得られる。
【0017】
2ピッチ構造を用いる場合、放射巻線(1.3)により囲まれた2つの異なるピッチPとP内での測定対象位置の位相量子化コードNとNを並列測定すると、微細変位はx=N(ピッチPを微細ピッチPという)、中間変位はx=m・(N-N)であり、次に、測定した2回の隣接する中間変位増分Δxを累積して総変位x=Σ(Δx)を得て、関係x≒K・P+xから総変位xに含まれる中間ピッチの整数の個数Kを求め、関係x≒K・P+xから中間変位xに含まれる微細ピッチの整数の個数Kを求め、次に、式x=(m・K+K)・P+xにより測定レンジ制限のない測定対象変位xを得て、中間変位xを半開区間[0,P)にマッピングし、関係x≒K・P+xから中間変位xに含まれる微細ピッチの整数の個数Kを求め、式x=K・P+xにより中間ピッチの範囲で絶対測位する測定対象変位xを得る絶対測位アルゴリズムを使用してもよい。
【0018】
3ピッチ構造を用いる場合、1番目の放射巻線(1.4)により囲まれた2つの異なるピッチPとP内での測定対象位置の位相量子化コードN11とN12、及び2番目の放射巻線(1.5)により囲まれた2つの異なるピッチPとP内での測定対象位置の位相量子化コードN21とN23を並列測定すると、微細変位はx=N21(ピッチPを微細ピッチPという)、中間変位はx=m・(N12-N11)であり、粗変位はx=m・n・(N23-N21)であり、粗変位xを半開区間[0,P)にマッピングし、関係x≒K・P+xから粗変位xに含まれる中間ピッチPの整数の個数Kを求め、関係x≒K・P+xから中間変位xに含まれる微細ピッチPの整数の個数Kを求め、式x=(m・K+K)・P+xにより粗ピッチ範囲での絶対変位xを得て、測定レンジを拡張しない場合、これは測定対象変位x=xであり、それ以外の場合、測定した2回の隣接する絶対変位増分Δxを累積して、測定レンジ制限のない測定対象変位x=Σ(Δx)を得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。本発明は、リニア変位測定にも、角変位測定にも適用でき、2ピッチ構造も3ピッチ構造も使用でき、また、ハイブリッド測位アルゴリズムも絶対測位アルゴリズムも使用できる。
【0020】
前記のように、異なるピッチの2つの空間周波数にビート周波数を行うことで、この周波数差に対応するより長い空間周期である中間ピッチ又は粗ピッチが得られ、中間ピッチと粗ピッチ内での測定対象位置の変位はいずれも、測定記歴や過程によらずに、ビート周波数を受ける2つの異なるピッチ内での測定対象位置の空間位相を減算して増幅することで直接求めることができる(絶対測位)。ただし、中間ピッチのスケールに限りがあるので、2ピッチ構造を用いる場合、測定した2回の隣接する中間ピッチの変位増分を累積することにより、測定レンジ制限がないが、ステップが中間ピッチ波長比である総変位を取得することができ、3ピッチ構造を用いる場合、粗ピッチのスケールは、一般には一般的な測定の要件を満たせるが、測定レンジ(粗ピッチ範囲を超える)の大きい適用では、測定した2回の隣接する絶対変位増分を累積することで、測定レンジ制限がなく且つステップが1である測定対象変位を取得することができる。このように既絶対測位と増分累積とを組み合わせたハイブリッド測位方法は、測定回路の断続的な作動を可能とし、センサーの測定レンジへの制限をなくすという目的を達成できる。
【0021】
駆動スイッチ(T又はT)を介して放射巻線を電源の両端に接続し、前記駆動・サンプリングパルス発生回路(4)から出力される駆動パルスは、持続時間が極めて短く(10nsオーダー)、上がり速度が高い(10mA/nsオーダー)線形時変駆動電流を放射巻線で励起させ、該電流により生じた線形時変磁場は、それに結合された励起板(2)の2列の励起コイル内で経時的に直線的に増大する渦電流を誘導し、この2列の励起コイルでの渦電流はそれぞれ、これらと重なる三相受信巻線領域において、それぞれのピッチを周期として測定経路に沿って周期的に変化する線形時変磁場を発生させ、それにより、これらの渦電流と重なる2つの三相受信巻線において、経時的に変化せず(センサーが固定されている場合)、各三相受信巻線ピッチを周期として測定対象位置(受送信板と励起板との相対位置)に応じて周期的に変化する三相起電力を誘導する。直列接続された三段のアナログスイッチ群(6)は、相電圧の選択、交換及びサンプリングを順次行った後、差動アンプ(7)は減算演算を実施して、この放射巻線により囲まれた各三相受信巻線の、経時的に変化しない三相電圧を1つの離散時間正弦信号に合成し、該放射巻線により囲まれた2つの異なるピッチ内での測定対象位置の空間位相はそれぞれ、この2つの離散時間正弦信号の初期位相に変換され、離散時間正弦信号はローパスフィルタ(8)でフィルタリングされた後、サンプリングに付する連続時間正弦信号が復元され、ゼロ交差検出器(9)はこの連続時間正弦信号を方形波に整形し、回路の過渡過程が十分に減衰すると、前記同期遅延回路は加算カウンタ(10)と同期キャプチャ回路へのブロックを解除し、整形により得られた2つの方形波の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジがシステムクロックにより同期化されると、位相セロからカウントし始める同一の加算カウンタ(10)のカウント値をそれぞれキャプチャして、この放射巻線により囲まれた2つの異なるピッチ内での測定対象位置の空間位相又は変位の量子化コード(固定ズレを含む可能性がある)を得る。経時的に変化しない信号のサンプリングの場合は、ほぼタイミングについての要件がなく、サンプリング信号に対する後続の処理にも簡単な回路が使用されるため、本発明では、電子回線への要件が低く、集積が容易であり、低コストの量産が実現されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明において2ピッチ構造を用いてリニア変位を測定する場合のセンサーの構造模式図である。
図2A】本発明をリニア変位測定に用いる場合の各相の集中受信巻線の接続分解図である。
図2B】本発明をリニア変位測定に用いる場合の各相の集中受信巻線の接続模式図である。
図2C】本発明をリニア変位測定に用いる場合の三相の集中受信巻線の接続模式図である。
図3A】本発明をリニア変位測定に用いる場合、オーバーラップ方式により実現された分散受信巻線の接続模式図である。
図3B】本発明をリニア変位測定に用いる場合、タイリング方式により実現された分散受信巻線の接続模式図である。
図3C】本発明をリニア変位測定に用いる場合、ハイブリッド方式により実現された分散受信巻線の接続模式図である。
図4】本発明において2ピッチ構造を用いて角変位を測定する場合のセンサーの構造模式図である。
図5】本発明を角変位測定に用いる場合、ハイブリッド方式により実現された分散受信巻線の接続模式図である。
図6】本発明において2ピッチ構造を用いる場合の測定回路の原理図である。
図7】本発明の測定回路の信号波形図である。
図8】本発明の駆動・サンプリングパルス発生回路の原理図である。
図9】本発明の線間電圧走査制御信号発生器の電気原理図である。
図10】本発明において2ピッチ構造を用いる場合のタイマーの割り込み処理のフローチャートである。
図11】本発明において2ピッチ構造を用いる場合、ハイブリッド測位アルゴリズムによるキャプチャ割り込み処理のフローチャートである。
図12】本発明において2ピッチ構造を用いる場合、絶対測位アルゴリズムによるキャプチャ割り込み処理のフローチャートである。
図13】本発明において3ピッチ構造を用いてリニア変位を測定する場合のセンサーの構造模式図である。
図14】本発明において3ピッチ構造を用いる場合の測定回路の原理図である。
図15】本発明において3ピッチ構造を用いる場合のタイマーの割り込み処理のフローチャートである。
図16】本発明において3ピッチ構造を用いる場合のキャプチャ割り込み処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面及び本発明の好適な特定実施例にて本発明をさらに説明する。
【0024】
本発明に係るハイブリッド測位による電磁誘導型変位センサーは、経路相対運動を測定可能な受送信板1と、励起板2とを含み、図1に示すように、図1は本発明において2ピッチ構造を用いてリニア変位を測定する場合の構造模式図であり、受送信板1には、第1のピッチ三相受信巻線1.1、第2のピッチ三相受信巻線1.2、及び放射巻線1.3が配置されている。
【0025】
放射巻線1.3は、ほぼ閉鎖した2つの矩形コイル1.3.1及び1.3.2を用いて、同方向直列接続方式によりそれぞれ第1のピッチ三相受信巻線1.1と第2のピッチ三相受信巻線1.2を囲み、したがって、放射巻線1.3が1回駆動されると、放射巻線1.3により囲まれた2つの三相受信巻線1.1と1.2の両方において、位置情報を含む三相起電力を誘導し、この2つの異なるピッチ内での測定対象位置の空間位相又は変位を並列測定することができる。これにより、消費電力の低下に有利であるとともに、センサーの高速移動に対する追跡能力が高まり、さらに、同方向直列接続により放射巻線1.3のインダクタンスが数倍増加し、その駆動電流の上昇率が数倍低下し、消費電力が一定の場合は、その駆動電流の持続時間を50%以上延ばすことができ、これは、センサー信号の安定性や処理に有利である。レイアウトする際に、矩形コイルと三相受信巻線とを対称にし、放射巻線1.3の駆動電流が2つの三相受信巻線領域で生じた磁場が、測定軸線に沿って変化しない二次元磁場に類似するようにするために、測定軸線方向において各受信巻線と十分な間隔を残し、それにより、各受信巻線で直接誘導する起電力は0となる。
【0026】
第1のピッチ三相受信巻線1.1は、A-C-Bの順に空間的に1/6ピッチだけ順次移相するA相巻線1.1.1、B相巻線1.1.3、及び極性が反対のC相巻線1.1.2の同一構造の3つを含み、各相の巻線のピッチはPであり、位相はA-B-Cの順に120°の差を持ち、各ピッチが360°に対応するため、三相受信巻線はA-B-Cの順に空間的に1/3ピッチだけ順次移相してもよい。図2Aは各相の受信巻線の接続分解図であり、巻線はコイルを接続してなり、コイルはミラー対称な上辺と下辺の2本からなる。図には、破線は各コイルのPCB底層(Bottom Layer)にある辺を示し、実線は各コイルのPCB底層よりも上層にある別の辺を示し、後者を上層辺といい、この2層間の厚さが約0.1mmと薄く、コイル全体は1つのピッチにわたり、ただし、2本の辺の中間の平行線分が半分のピッチだけの間隔を有し、PCBの異なる層はビア(Via、図中の黒い点)を介して連通する。三相交流モータのフルピッチ波巻線と同様に、三相巻線は60°の相帯(即ち、各相の巻線が各ハーフピッチで占める空間は60°角度に対応し、つまり、三相巻線によりすべて各半ピッチが等分される)に応じて空間位置を分割し、ピッチ範囲ごとに、相帯はA、Z、B、X、C、Yの順に配列され、ここで、X、Y、ZはそれぞれA、B、C相の負の相帯であり、即ち、半分のピッチ又は180°の差があり、同一相に属するすべての上層辺の平行線段が負の相帯にあるコイルを順次直列接続して1組とし、同一相に属するすべての上層辺の平行線段が正の相帯にあるコイルを順次直列接続して別の組とし、この2組コイルの先端をそれぞれ接続して、末端を接続して閉回路とし、任意の位置で切って2つの端子を引き出すと、該相巻線が得られる。先端と末端をわずかに調整すると、図2Bに示すように、構造がより一致し、対称性がより高い巻線レイアウトが実現され、このように形成される三相受信巻線は図2Cに示される。
【0027】
このように配置される三相受信巻線では、誘導起電力が測定軸線に沿って変化する波形には偶数次高調波が含まず、線間電圧には3、6、9などの3の倍数次の高調波も含まず、高調波の振幅がその次数の上昇に伴い単調減少し、したがって、三相受信巻線の線間電圧における主な高調波成分は、5次及び7次高調波である。このため、図2Bに示すM(Mは少なくとも2)個の集中巻線を空間的に順次60°/M移相し、次に、直列接続して1つの分散巻線とすることができ、このM個のサブ巻線の誘導起電力に含まれる基本波及び各次高調波の振幅はそれぞれ対応して等しく、ただし、基本波の位相は順次60°/Mの差を持ち、ν次高調波の位相は順次ν・60°/Mの差を持ち、したがって、その基本波分布係数(分布係数=合成起電力の振幅/M倍のサブ巻線起電力の振幅)と各高調波分布係数は異なる。このことから、ν次高調波に対する抑制比Rνを推定できる。
【数1】
M=2の場合、R=R=3.73であり、即ち、5次、7次高調波に対する減衰はすべて基本波に対する減衰の3.73倍であり、効果が顕著であることが明らかである。
【0028】
空間的に60°/M移相することは、ピッチPが大きい場合、図3Aに示すように、P/(6M)並進してオーバーラップ方式により実現することができ、ピッチPが小さい場合、オーバーラップ方式では配線ができず、図3Bに示すように、L・P+P/(6M)並進してタイリング方式により実現するしかなく、ここで、L、Mは整数であり、Mは2以上であり、L・Pはサブ巻線の長さよりも大きい。また、図3Cに示すように、同一構造のM個の分散巻線をサブ巻線として空間的に60°/M順次移相し、次に、直列接続してハイブリッド分散巻線としてもよく、それにより、相乗的な高調波抑制比が得られる。図3Cには、オーバーラップ方式で30°移相した2つのサブ集中巻線が接続されてサブ分散巻線となり、このような2つのサブ分散巻線がさらにタイリング方式で30°移相して接続されてハイブリッド分散巻線となり、このようにして、5次、7次高調波への抑制比はすべて3.73×3.73=13.91であり、一方、直接4つのサブ集中巻線が順次15°移相してなる分散巻線については、式(a)により求められた高調波抑制比はR=4.66、R=6.08であり、いずれも前者の半分未満である。図3A、3B、3Cには、上方の単相巻線図において、PCBの異なる層にある、各サブ巻線を直列接続する1対の結線が重なるはずであるが、配線を明瞭にするために、図にはわざとずれて示している。
【0029】
第2のピッチ三相受信巻線1.2は同様に、A-C-Bの順に空間的に1/6ピッチ順次移相するA相巻線1.2.1、B相巻線1.2.3、及び極性が反対のC相巻線1.2.2の同一構造の3つを含み、各相の巻線は、ピッチがすべてPであり、位相がA-B-Cの順に120°の差を持ち、巻線の結線方法は第1のピッチ三相受信巻線1.1と完全に同じである。
【0030】
受送信板1には、放射巻線1.3、処理受信巻線1.1及び1.2のセンサー信号を駆動したり、測定結果を表示したりするための、測定に必要な電子回線も含まれ、受送信板1は一般に4層のPCB板上に作製される。
【0031】
励起板2には、測定軸線に沿って展開している2列の励起コイル2.1及び2.2(明瞭さから、図には、受信巻線の下方にある励起コイルが省略される)が配置され、励起コイル列2.1は、受送信板1の第1のピッチ三相受信巻線1.1とはピッチが等しいだけでなく(P)、中心線が重なり、同様に、励起コイル列2.2は、第2のピッチ三相受信巻線1.2とはピッチが等しく(P)、中心線が重なる。2列の励起コイルの形状は、隣接する磁場による影響を弱めるために、すべて角丸矩形短絡リングとされ、励起コイルは、測定軸線における辺を含める幅がそのピッチの半分に等しい。励起板2は構造が簡単であり、単面PCB板上に作製できる。
【0032】
放射巻線1.3の2つの矩形コイル1.3.1及び1.3.2は、長さ(測定軸線方向におけるスケール)が幅よりもはるかに大きく、しかも長さ方向において各三相受信巻線とは十分な間隔を有するので、放射巻線駆動電流が各受信巻線領域で生じる磁場に対しては、矩形コイルは、長さには限りがないことに相当し、その電流が各受信巻線領域で生じる磁場が測定軸線に沿って変化しない二次元磁場に類似し、したがって、各受信巻線で直接誘導する起電力は0となる。
【0033】
本発明では、2ピッチ構造を用いて角変位を測定する場合、センサーの構造は図4に示すとおりである。センサーは、回転軸A回りに相対回動可能な、受送信板1と励起板2との2つの部分からなる。受送信板1には、同心円弧に沿って展開している第1のピッチ三相受信巻線1.1、第2のピッチ三相受信巻線1.2、及び放射巻線1.3が配置されている。放射巻線1.3は、ほぼ閉鎖した2つの同心円弧形コイル1.3.1及び1.3.2を用いて、同方向直列接続方式によりそれぞれ第1のピッチ三相受信巻線1.1と第2のピッチ三相受信巻線1.2を囲む。三相受信巻線1.1及び1.2はともに分散巻線を用い、ピッチがそれぞれPとPであり、順次120°の差を持つ3つの相巻線からなる。ハイブリッド方式で実現される第1のピッチ分散三相受信巻線の接続模式図を図5に示す。励起板2には、同心円周に沿って展開している2列の励起コイル2.1及び2.2(明瞭さから、図には、受信巻線の下方にある励起コイルは省略した)が配置され、それぞれ受送信板1の2つの三相受信巻線1.1及び1.2とはピッチが等しく、中心線が重なり、2列の励起コイルの形状はともに、2本の同心円弧と2本の径方向直線により囲まれた短絡リングとされ、測定円弧線にわたった角度がそれぞれのピッチの半分に等しい。同心円弧(周)に従って分布し、ピッチが中心角として計算される以外、残りは、リニア変位測定の場合と同様であるので、ここでは重複説明を省略する。
【0034】
電源電圧VCCがオンにさせている駆動スイッチを介して放射巻線1.3の両端に印加されると、ループ時定数(μsオーダー)よりもはるかに小さい期間内で、放射巻線1.3において上がり速度が早い(10mA/nsオーダー)線形時変駆動電流が発生し、該電流により生じる線形時変磁場は、それに結合された励起板2の2列の励起コイルにおいて経時的に線形的に増大する渦電流を誘導し、各列の励起コイルでの渦電流は、これらと重なる三相受信巻線領域において、そのピッチを周期として測定経路に沿って周期的に変化する線形時変磁場を発生させ、それにより、これらの渦電流と重なる三相受信巻線において、経時的に変化せず(センサーが固定されている)、該三相受信巻線のピッチを周期として測定対象位置(受送信板1と励起板2との相対位置)に応じて周期的に変化する三相起電力を誘導する。分散巻線が使用され、三相受信巻線の線間電圧における空間高調波成分がすでに大幅に減衰しているので、線間電圧、相電圧の関係を推定する際に、三相受信巻線の相電圧にも基本波成分のみが含まれていると想定することができ、適切な座標原点を選択することにより、三相受信巻線の相電圧は以下のように設定してもよい。
【数2】
(式中、Eは各相の起電力振幅であり、Pはこの三相受信巻線のピッチであり、xは測定対象変位であり、A、B、C相電圧は順次2π/3ラジアン(120°)遅延する。)
【0035】
以上から、下記下線間電圧関係が得られる。
【数3】
記載された順にπ/3ラジアン遅延することが分かった。6個の線間電圧について記載されたA-B、A-C、B-C、B-A、C-A、C-Bの順に巡回して走査・サンプリングを同じ時間間隔で行うと、以下の離散時間正弦信号が合成され得る。
【数4】
【0036】
以下の連続時間正弦信号について時間間隔T/6(Tは時間周期)でサンプリングした結果であることが明らかである。
【数5】
上記式では、ピッチP内での測定対象位置の空間位相2πx/Pがすでに連続時間正弦信号u(t)の初期位相に変換されている(固定ズレであるπラジアンを含める)。
【0037】
離散時間正弦信号u(n)の各次高調波をフィルタリングにより除去すると、サンプリングした連続時間正弦信号u(t)が復元され、そのゼロ交差点と位相ゼロとの時間差を測定すると、該ピッチ内での測定対象位置の空間位相又は変位が得られる。
【0038】
以上のことを実現する具体的な回路を図6に示し、回路は全体として1つの3Vリチウム電池により給電され、機能別に中央制御ユニット、インターフェースユニット、及び測定ユニットの3つのユニットに分けられる。中央制御ユニットは低消費電力のマイクロコントローラ13だけを含む。インターフェースユニットは、キー入力回路、液晶(LCD)駆動回路、測定インターフェース回路、及び電源変換回路を含む。キー入力回路及び液晶駆動回路はユーザとのインタラクションに用いられ、測定インターフェースは、測定イベントに対する応答及び処理に用いられ、電源変換回路は、マイクロコントローラ13に給電し、電源電圧の半分のVCC/2を発生させてアナログ信号グランドAGNDとすることに用いられる。残りの回路は測定ユニットであり、測定ユニットは、発振器と、分周回路3と、駆動・サンプリングパルス発生回路4及び線間電圧走査制御信号発生器5からなる信号発生器と、アナログスイッチ群6(S-S10)、サンプリングホールドコンデンサCとC、差動アンプ7、ローパスフィルタ8、及びゼロ交差検出器9からなるアナログ信号処理回路と、同期遅延回路(D型トリガーFF21、FF22、FF23からなる)、加算カウンタ10、ランダムアクセスメモリ11と12、及び同期キャプチャ回路(D型トリガーFF31、FF32、ANDゲートAG31からなる)からなる位相量子化回路と、放射巻線駆動パワートランジスタTとを含み、アナログ信号処理回路、ランダムアクセスメモリ、及び同期キャプチャ回路は、それぞれ2組設けられて2つの並列処理チャネルを構成し、発振器は、周波数fのシステムクロックを発生させて、分周回路3、スイッチトキャパシタローパスフィルタ8、12Kキャリー加算カウンタ10、D型トリガーFF32に入力クロックを提供し、分周回路3は2つの出力を発生させ、K分周(Kの値は所望の細分化数により決まる)のSCLKは駆動・サンプリングパルス発生回路4のトリガークロックとして機能し、2K分周のPCLKは線間電圧走査制御信号発生器5の入力クロックとして機能し、駆動・サンプリングパルス発生回路4は、放射巻線駆動パワートランジスタTとアナログスイッチ群6にそれぞれ接続され、線間電圧走査制御信号発生器5は、アナログスイッチ群6と同期遅延回路にそれぞれ接続され、アナログスイッチ群6、差動アンプ7、ローパスフィルタ8、ゼロ交差検出器9、同期キャプチャ回路は順次接続され、サンプリングホールドコンデンサC及びCは、それぞれ差動アンプ7の2つの入力端とアナログ信号グランドとの間に接続され、同期遅延回路は、同期キャプチャ回路と12Kキャリー加算カウンタ10にそれぞれ接続され、12Kキャリー加算カウンタ10と同期キャプチャ回路はまた、ランダムアクセスメモリ11及び12に同時に接続され、消費電力を減らすために、測定ユニットは有効化(Enable)と無効化(Disable)にさせてもよく、無効化方法としては、単に電源を切るか、又はシステムクロックを停止するとともにアナログ回路等をシャットダウンする(Shutdown)ことができる。
【0039】
受送信板1の三相受信巻線1.1及び1.2はともに、スター(Y)で接続され、2つの中性点がすべてアナログ信号グランドAGNDに接続され、放射巻線1.3は、駆動スイッチ(NMOSパワートランジスタT)を介して電源の両端に接続される。
【0040】
測定するたびに、マイクロコントローラ13は、まず、測定ユニットを有効にして、初期化信号INIをクリアし(Clear)、次に、1にセットして(Set)測定ユニットを作動させ、測定終了後、マイクロコントローラ13は、測定ユニットを無効化してその作動を停止し、このように断続的に作動することにより、回路の消費電力を減らす。
【0041】
放射巻線1.3は、インダクタンスが極めて小さく(1μH未満)、電源電圧VCCが印加されると、巻線中の電流が急に上昇し(上昇率は10mA/nsオーダー)、したがって、パワートランジスタTのオン時間を正確に制御する必要があり、パワートランジスタのスイッチ特性及びサンプリング回路の過渡過程を考慮して、その駆動信号TGのパルス幅は好ましくは30ns程度である。
【0042】
駆動・サンプリングパルス発生回路4は、放射巻線1.3の駆動スイッチであるNMOSパワートランジスタTのゲート駆動信号TGと、アナログスイッチS及びS10(及び第2のピッチ三相受信巻線1.2の処理チャネルにおける2つの対応するスイッチ)のサンプリング・ホールド制御信号SAHとを発生させる。パワートランジスタTの入力容量が大きいため(100pFオーダー)、駆動信号TGは、駆動能力を高めるにはバッファを通じて出力する必要がある。抵抗-静電容量遅延を微調整しないと、これほど短く且つ精度が要求される狭いパルスの実現が困難であり、加えて、電源電圧、温度などの因素による影響が顕著であり、インバータ伝送遅延を利用してバッチ分散性が低く、持続時間が短く、微調整を必要としない駆動・サンプリングパルスを形成することは最適な形態であり、具体的な回路を図8に示す。入力信号(トリガークロック)SCLKが低レベルである場合、NANDゲートGNAの入力端2は低レベル、入力端1は高レベル(奇数回反転するため)、GNAの出力Yは高レベルであり、トリガークロックSCLKの立ち上がりエッジでは、NANDゲートGNAの入力端2は高レベルにジャンプし、入力端1は高レベル(伝送遅延が存在するため)に維持され、GNAの出力Yジャンプは低レベルであり、各段のインバータの伝送遅延をtpd(nsオーダー)とし、使用する奇数個のインバータの個数を(2N+1)で表すと、(2N+1)tpdの遅延後、NANDゲートGNAの入力端1は低レベル(奇数回反転するため)にジャンプし、出力Yは高レベルにジャンプし、再度のSCLKの立ち上がりエッジまで維持する(SCLKが低レベルになったときにも、GNAは高レベルを出力するため)。したがって、入力信号SCLKの各立ち上がりエッジは、NANDゲートGNAによるパルス幅(2N+1)tpdの負極性の狭いパルスの出力をトリガーする。NANDゲートGNAの出力Yを反転して正極性のサンプリング・ホールド制御信号SAHが得られ、GNAの出力Yを反転して緩衝すると、パワートランジスタTのゲート駆動信号TGが得られる。
【0043】
放射巻線1.3が駆動されるごとに、三相受信巻線1.1及び1.2において三相起電力が誘導され、このため、2つの三相受信巻線の出力信号を同じ回路で並列処理することができるので、以下、第1のピッチ三相受信巻線1.1のみについて検討する。
【0044】
アナログスイッチ群6(S-S10)、サンプリングホールドコンデンサC及びC、差動アンプ7は、共同で、第1のピッチ三相受信巻線1.1の線間電圧に対する巡回走査サンプリング及び増幅を行い、式(d)で示される離散時間正弦信号u(n)を合成する。制御信号QはアナログスイッチSとSを導通してu1A-u1B(又はその反転u1B-u1A)を発生させ、制御信号QはアナログスイッチSとSを導通してu1A-u1C(又はその反転u1C-u1A)を発生させ、制御信号QはアナログスイッチSとSを導通してu1B-u1C(又はその反転u1C-u1B)を発生させ、制御信号Qは単極双投アナログスイッチSとSのチャネル切り替えを制御して、反転か否かを判定し、制御信号SAHはアナログスイッチSとS10を導通して、入力した2つの相電圧をサンプリングして結果をそれぞれサンプリングホールドコンデンサCとCに保存し、最後に、差動アンプ7は、減算演算と増幅を実施して、線間電圧のサンプリング・ゼロ次ホールド信号を得る。以上から分かるように、アナログスイッチ群6の10個のアナログスイッチを1つの三段スイッチが直列接続された構造として、相電圧に対する選択、交換及びサンプリングを順次行うことによって、制御信号に対するデコーディングが不要となり、回線が大幅に簡素化する。制御信号Q、Q、Qが順次高レベルとなり、Q、Q、Qに対するQの巡回ごとに反転すると、A-B、A-C、B-C、B-A、C-A、C-Bの順の線間電圧の巡回走査サンプルが得られ、式(d)で示される離散時間正弦信号u(n)が得られる。
【0045】
上記Q、Q、Q及びQ信号を発生させる線間電圧走査制御信号発生器5を実現する回路を図9に示し、各信号の波形を図7に示す。D型トリガーFF11、FF12、FF13は巡回シフトのリングカウンタを構成し、初期化信号INIによって1、0、0に予め設定されておき、このため、これらのうち、常に1つのみは高レベルであり、D型トリガーFF14はQの立ち上がりエッジをカウントするので、Q、Q、Qの巡回ごとに出力Qが1回反転し、クロック信号PCLKは分周回路3からなるものであり、トリガークロックSCLKを2分周した出力であり、駆動・サンプリングパルス発生回路4は、トリガークロックSCLKの各立ち上がりエッジで1つの駆動パルスと1つのサンプリングパルスを出力し、したがって、各線間電圧が連続して2回サンプリングされ、これにより、センサーが相対運動するときに離散時間正弦信号u(n)のサンプル数が増える。PCLKは周波数fのシステムクロック2Kを分周し、各巡回走査周期(即ちQ周期)は、合計6個のビートがあり、2K×6=12K個のシステムクロック周期を含み、対応する線間電圧が1つのピッチ内で一周変化し、したがって、各ピッチ又は空間2πラジアンはさらに12K等分する。
【0046】
特許CN101949682Bは、絶対位置静電容量式変位センサーを開示しており、離散時間正弦信号に対してローパスフィルタリングとゼロ交差検出をした後、加算カウンタを用いて、各波長内での測定対象位置の変位及び絶対測位による測定対象変位を測定する方法を含み、その関連内容はここに引用されている。
【0047】
差動アンプ7により合成した離散時間正弦信号u(n)は、スイッチトキャパシタ(集積しやすい)ローパスフィルタ8でフィルタリングされた後、式(e)で示されるような連続時間正弦信号u(t)に復元され、このとき、ピッチP内での測定対象変位xの空間位相2πx/Pはすでにu(t)の初期位相に変換され、ゼロ交差検出器9は、連続時間正弦信号u(t)を方形波信号Uに整形し、この方形波信号Uの立ち上がりエッジに対応するu(t)は負から正へゼロ交差し、立ち下がりエッジに対応するu(t)が正から負へゼロ交差し、両者の位相には180°の差があり、センサーが固定されているときに、両者の時間には12K/2=6K個の周波数fのシステムクロック周期ほどの差があり、したがって、両者はともに空間位相又は変位の測定に利用でき、連続時間正弦信号u(t)のゼロ交差点の、位相ゼロに対する時間差とピッチP内での測定対象位置の空間位相(固定ズレを含む可能性がある)とは比例し、このため、位相ゼロからカウントし始め、システムクロックをカウントパルスとする加算カウンタのカウント値を、方形波信号Uの立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジを利用してキャプチャし、ピッチP内での測定対象位置の空間位相又は変位の量子化コード(固定ズレを含む可能性がある)を得ることができる。測定回路が断続的に作動するために、カウントをキャプチャするまでに、回路の過渡過程を十分に減衰させるのに十分な時間だけ持たなければならず、このため、D型トリガーFF21、FF22、FF23からなる同期遅延回路とD型トリガーFF31、FF32、ANDゲートAG31からなる同期キャプチャ回路とを設置し、その信号波形を図7に示す。同期遅延回路、同期キャプチャ回路、12Kキャリー(各ピッチはさらに12K等分するため)加算カウンタ10、ランダムアクセスメモリ11及び12は共同で位相量子化を行う。
【0048】
初期化信号INIはD型トリガーFF21、FF22、FF23を1、1、0に予め設定しておき、FF23から出力される低レベルCは12Kキャリー加算カウンタ10を非同期にクリアして、それによるカウントを停止し、D型トリガーFF21、FF22は、線間電圧走査制御信号発生器5の出力信号Qからの立ち上がりエッジをカウントダウンする2ビット非同期減算カウンタを構成し、Qの4番目の立ち上がりエッジが到達すると、D型トリガーFF22の出力信号Wはポジティブ遷移を発生させてFF23の出力信号Cから1にセットし、12Kキャリー加算カウンタ10は0からカウントし始め、同期キャプチャ回路はキャプチャブロックを解除し、したがって、この同期遅延回路は、4つのQ周期だけの遅延を発生させ、位相ゼロをQの立ち上がりエッジに設定する。
【0049】
初期化信号INIはD型トリガーFF31とFF32を非同期にクリアし、遅延時間が切るまでに、同期遅延回路から出力される低レベルCは、D型トリガーFF31が常に低レベルのCを出力し、ANDゲートAG31が低レベルのCを出力し、D型トリガーFF32が低レベルの「P立ち上がりエッジキャプチャ」と高レベルの「P立ち下がりエッジキャプチャ」信号を出力するようにし、これにより、12Kキャリー加算カウンタ10のカウント値へのキャプチャがブロックされ、遅延時間が切れると、回路の出力信号Cは高レベルにセットされ、方形波信号Uはそれ以降の1番目の立ち上がりエッジでD型トリガーFF31の出力信号Cも高レベルにセットし、ANDゲートAG31の出力信号Cはそれ以降、方形波信号Uと同じである。12Kキャリー加算カウンタ10がカウントしないシステムクロックの立ち下がりエッジでは、D型トリガーFF32はANDゲートAG31の出力信号Cを同期化した後、同位相の「P立ち上がりエッジキャプチャ」と逆位相の「P立ち下がりエッジキャプチャ」信号を出力し、方形波信号Uの立ち上がりエッジと立ち下がりエッジのそれぞれで同期方式により12Kキャリー加算カウンタ10のカウント値をキャプチャし、それぞれランダムアクセスメモリ11と12に保存しながら、キャプチャイベントが発生した旨をマイクロコントローラ13に通知し、マイクロコントローラ13は、それにより、該キャプチャ値を読み取って測定完了か否かを判断する。図7の波形図から明らかなように、立ち上がりエッジでは、先にキャプチャが発生し、立ち下がりエッジでは、一定の時間遅延してからキャプチャが発生し、このため、立ち上がりエッジのキャプチャ値N1rと立ち下がりエッジのキャプチャ値N1fから、センサーが運動しているか否か、及びその運動方向を推定できる。
【0050】
2つのピッチの立ち上がりエッジと立ち下がりエッジともにキャプチャが完了した後、マイクロコントローラ13は測定ユニットを無効化してその作動を停止シ、次に、ソフトウェアにより測定対象変位を計算する。
【0051】
ピッチPに対応する空間周波数はF=1/Pであり、ピッチPに対応する空間周波数はF=1/Pであり、その周波数差F=F-Fはより大きな空間周期としての中間ピッチPに対応する。
【数6】
=m・P(式中、mは整数であり、中間ピッチ波長比と呼ばれる)としようとする場合、
【数7】
量産を容易にするために、本発明では、好ましくは、小さい波長比m=15を使用し、トリガークロックSCLKの分周数をK=2=32とし、この場合、各ピッチは12K=384の部分に細分化され、リニア変位の解像度が10μmである場合、P=3.84mm、P=3.6mm、P=15P=16P=57.6mmである。
【0052】
測定対象位置の変位をx、ピッチP、P内での測定対象位置の位相量子化コードをそれぞれNとN(量子化コードは立ち上がりエッジキャプチャ値、立ち下がりエッジキャプチャ値又は両者の中点値から算出できる)とすると、以下のようになる。
【数8】
(式中、λはスケールファクタであり、modはモジュラス演算である。)
【0053】
スケールファクタλを適切に選択してP・λ/(2π)=1とすると、ピッチP内での測定対象位置の変位はx=x mod P=Nであり、そのステップが1であり、以下、微細変位x(ピッチPを微細ピッチPという)といい、中間ピッチP内での測定対象位置の変位はx=x mod P=m・(N-N)であり、そのステップが測定レンジ一とともにm倍拡大し、このため、中間変位xといい、中間変位xは2つの異なるピッチの位相量子化コードを減算して増幅した結果であり、このように非累積方式で変位を決定する方法は絶対測位と呼ばれ、中間ピッチPがm倍だけ拡大し、スケールが限られるので、測定した2回の隣接する中間変位増分Δxを累積して、測定レンジ制限のないステップmの総変位x=Σ(Δx)を取得し、中間変位xが2つの異なるピッチの絶対測位により得られ、総変位xが中間変位増分の累積に取得されるため、この測定方法はハイブリッド測位と呼ばれる。中間変位増分Δxを計算するに際して、その結果が運動方向と一致し、即ち、順方向運動の場合正の増分、逆方向運動の場合負の増分を発生させるために、センサーの運動方向を考慮する必要があり、したがって、必要に応じて差m・(ΔN-ΔN)に中間ピッチP(単位換算要、下同)を加算又は減算する修正が必要であり、これは、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとの両方を用いてキャプチャする主な原因である。
【0054】
以下の関係から、
【数9】
(式中、Kは中間ピッチの個数、Kは微細ピッチの個数であり、両者ともに整数である)
総変位xに含まれる中間ピッチの整数の個数K、中間変位xに含まれる微細ピッチの整数の個数K及びステップ1の測定対象変位xを求める。
【数10】
本ハイブリッド測位アルゴリズムによれば、中間変位増分を絶えずに累積する必要がなく、2回の測定間のセンサー変位が1つの中間ピッチだけの範囲を超えてはならず、このため、最低測定頻度が要求される。たとえば、P=57.6mmの場合、2.5m/sの測定速度を取得するには、44回/秒以上の測定頻度が必要であり、このため、本発明では、50回/秒の測定頻度が好ましく、6回測定するごとに測定結果(1秒あたり約8回表示)が1回表示され、移動開始時の速度が低いことを考慮して、消費電力をさらに減らすために、センサー静止や待機(静止し表示を停止する)時の測定頻度を半分の25回/秒に低下してもよい。測定ごとに、5個の巡回走査周期(Q周期、4つは遅延用)、合計384×5=1920個の周波数fのシステムクロック周期が必要であり、周波数f=1MHzでは、測定には約2msの時間がかかり、したがって、測定回路の断続的作動のデューティサイクルは、センサー移動では2/20=0.1、静止や待機では2/40=0.05である。
【0055】
2ピッチ構造を用いたセンサーをダイヤルゲージ、小型キャリパーなどの短測定レンジの測定器具に用いる場合、中間変位xと微細変位xのみを用いて、中間ピッチの範囲で測定対象変位xを決定することができ、中間変位増分Δxを累積して測定レンジを拡大して絶対測位による誘導式変位センサーとせずに済む。既存の絶対位置誘導式変位センサーに比べて、以下の利点がある。
【0056】
1.放射巻線が2つの異なるピッチの三相受信巻線を同時に囲むため、1回駆動されると、2組のピッチの異なるセンサー信号が得られ、これにより、2つの異なるピッチ内での測定対象位置の変位の並列測定が可能になる。このようにすると、1組の駆動回路と放射巻線の1回の駆動にかかる消費電力を節約するだけではなく、センサーの高速移動への追跡能力を高める。
【0057】
2.分散受信巻線は、空間高調波への抑制能が高いので、占有面積が大きく、形状が複雑な正弦形巻線を使用しなくてもよく、これにより、受信巻線の配線密度が増え、コイル数が増え、受信信号が高まる。
【0058】
3.励起コイルには簡単な短絡リング形状が使用されており、相互接続されたマルチカップリングループ構造よりも、経路が短く、ループの抵抗が減少し、誘導する渦電流が増大し、受信信号が高まり、一方、矩形銅箔構造よりも、隣接する磁場の干渉が低減し、精度が高まる。
【0059】
4.伝送遅延を利用して形成する駆動パルスは、放射巻線において、持続時間が極めて短い線形時変電流を励起し、各受信巻線において、経時的に変化しない(センサーが固定されている場合)起電力を誘導し、このように、サンプリング回路のタイミングへの要求を大幅に低下させ、三段の直列接続アナログスイッチと差動アンプを通じてセンサー信号を離散時間正弦信号に合成した後、ローパスフィルタリング回路、ゼロ交差検出回路、加算カウント回路など、簡単な回路によって、2つの異なるピッチ内での測定対象位置の空間位相又は変位測定を行い、したがって、測定回路の実現や集積が容易である。
【0060】
中間ピッチの範囲で測定対象変位xの絶対測位をする場合にのみ、中間変位x=m・(N-N)を半開区間[0,P)にマッピングして微細変位x∈[0,P)とマッチングさせる必要があり、即ち、xが負の場合、xに中間ピッチPを加算して正のものにし、次に、関係式(j)から中間変位xに含まれる微細ピッチの整数の個数Kを求め、最後に、下記式により測定対象変位xを計算する。
【数11】
前記のように、本発明は、センサーの構造や測定回路についていかなる変動もしないで、ソフトウェアアルゴリズムだけによって、絶対測位とハイブリッド測位との2つの測定方法を実現することができ、2ピッチ構造を用いる場合、絶対測位には消費電力が低いものの、測定レンジが短く(中間ピッチの範囲に制限)、一方、ハイブリッド測位には測定レンジへの制限がない半面、最低測定頻度が要求される。
【0061】
測定消費電力を減らすために、マイクロコントローラ13は割り込み駆動モードを用い、つまり、割り込んで戻った直後に休眠に入り、新しい割り込みがあると、再度ウェイクする。測定完了までには、タイマー割り込みとキャプチャ割り込みとの2つの割り込みベクターが必要である。タイマー割り込みは測定を開始させ、キャプチャ割り込みはキャプチャイベントとして、「P立ち上がりエッジキャプチャ」、「P立ち下がりエッジキャプチャ」、「P立ち上がりエッジキャプチャ」、及び「P立ち下がりエッジキャプチャ」の4つの外部割り込み要求に応答することに用いられる。以上の内容に基づいて、2ピッチ構造を用いたハイブリッド測位と絶対測位の2つのアルゴリズムの割り込み処理の手順を以下に記載する。
【0062】
I、ハイブリッド測位
タイマーは20msごとに1回の割り込みを発生させ、最高頻度50回/秒の測定を開始させ、センサー静止や待機の場合、測定頻度を半分に減らし、キャプチャイベントにタイムリーに応答するために、「P立ち上がりエッジキャプチャ」、「P立ち下がりエッジキャプチャ」、「P立ち上がりエッジキャプチャ」、及び「P立ち下がりエッジキャプチャ」の4つの外部割り込み要求も有効化し(Enable)、その処理手順を図10に示す。
【0063】
キャプチャ割り込みサービスプログラムは測定過程やデータを処理する。繰り返し割り込みを避けるために、該割り込みソースのキャプチャ値を読み取ると該キャプチャの割り込み要求を無効化し(Disable)、測定が完了すると(4つのキャプチャ割り込み要求はすべて無効化)、測定ユニットを無効化してその作動を停止し、中間変位x=m・(N-N)を計算し、センサーが運動しているか否かを判断し、状態フラグを設置してタイマー割り込みとともに動的/静的状態での可変周波数測定を実現し、中間変位増分Δxを累積して、測定レンジ制限のない総変位x=Σ(Δx)を得る。測定結果を表示する場合(前回の表示から6回目の測定)、関係式(i)により総変位xに含まれる中間ピッチの整数の個数Kを求め、関係式(j)により中間変位xに含まれる微細ピッチの整数の個数Kを求め、式(k)により測定対象変位xを計算し、ユーザからの要求に従って測定結果を表示する。そのフローチャートを図11に示す。
【0064】
II、絶対測位
タイマーは、125msごとに1回の割り込みを発生させ、最高頻度が8回/秒の測定を開始させ、センサー静止や待機の場合、同様に測定頻度を半分に減らし、したがって、その処理手順はハイブリッド測位と完全に同様であり、図10に示す。
【0065】
図12に示すように、測定対象変位を決定する方法が異なり、測定ごとに測定結果を表示する以外、キャプチャ割り込みの処理手順はハイブリッド測位の場合と同様である。該割り込みソースのキャプチャ値を読み取り、該キャプチャの割り込み要求を無効化し、測定が完了すると、測定ユニットを無効化して、中間変位x=m・(N-N)を計算し、センサーが運動しているか否かを判断して状態フラグを設置し、中間変位xを半開区間[0,P)にマッピングし、関係式(j)により中間変位xに含まれる微細ピッチの整数の個数Kを求め、式(l))により測定対象変位xを計算し、ユーザからの要求に従って測定結果を表示する。
【0066】
空間的に可能である場合、本発明は3ピッチ構造を用いてもよく、リニア変位を測定する場合、センサーの構造を図13に示す。このようなセンサーは、測定軸線に沿って相対移動可能な受送信板1と励起板2との2つの部分からなる。
【0067】
受送信板1には、異なるピッチの3つの三相受信巻線1.1、1.2、1.3と2つの放射巻線1.4、1.5とが配置されている。放射巻線1.4は、ほぼ閉鎖した2つの矩形コイル1.4.1と1.4.2を用いて、同方向直列接続方式によりそれぞれ第1のピッチ三相受信巻線1.1と第2のピッチ三相受信巻線1.2を含み、放射巻線1.5は、ほぼ閉鎖した2つの矩形コイル1.4.1と1.5.2を用いて、同方向直列接続方式によりそれぞれ第1のピッチ三相受信巻線1.1と第3のピッチ三相受信巻線1.3を含む。三相受信巻線1.1、1.2、及び1.3はすべて分散巻線を用い、これらのピッチがそれぞれP、P及びPであり、順次120°の差を持つ3つの相巻線からなる。
【0068】
励起板2には、測定軸線に沿って展開している3列の励起コイル2.1、2.2、及び2.3(明瞭さから、図には、受信巻線の下方にある励起コイルは省略)が配置され、それぞれ受送信板1の3つの三相受信巻線1.1、1.2及び1.3とはピッチが等しく、中心線が重なり、3列の励起コイルは、角丸矩形短絡リングの形状とされ、測定軸線に沿って辺を含める幅がそれぞれのピッチの半分である。
【0069】
放射巻線1.4と、放射巻線1.4により囲まれた第1のピッチ三相受信巻線1.1及び第2のピッチ三相受信巻線1.2とは、以上で詳述した、2ピッチ構造を用いた受送信板の部分の一方を構成し、中間ピッチ内の変位測定に用い、放射巻線1.5と、放射巻線1.5により囲まれた第1のピッチ三相受信巻線1.1及び第3のピッチ三相受信巻線1.3とは、2ピッチ構造を用いた受送信板の部分の他方を構成し、中間ピッチのステップと範囲よりも大きい粗ピッチ内の変位測定に用い、2ピッチを用いた構造は、矩形コイル1.4.1と、矩形コイル1.4.1により囲まれた三相受信巻線1.1を共用し、このため、したが3ピッチ構造は、2つの2ピッチ構造の組み合わせに相当し、その受送信板1と励起板2はすべて、2ピッチ構造を用いたリニア変位センサーから拡張したものであり、設計方法は完全に同じであるので、ここでは重複説明を省略する。
【0070】
中間ピッチPの導出過程と同様に、式(f)に類似する粗ピッチPが得られる。
【数12】
=n・P=m・n・P(式中、nは整数であり、粗ピッチ波長比と呼ばれる)としようとする場合、
【数13】
【0071】
本発明では、2ピッチ構造の好ましいパラメータを使用する上に、粗ピッチ波長比n=m=15を用いる場合、3ピッチ構造を用いたセンサーのパラメータは、P=3.84mm、P=3.6mm、P=3.823mm、P=15P=57.6mm、P=225P=864mmである。
【0072】
1番目の2ピッチ構造の2つの異なるピッチP、P内での測定対象位置の位相量子化コードN11、N12と、2番目の2ピッチ構造の2つの異なるピッチP、P内での測定対象位置の位相量子化コードN21、N23とを段階的に測定できれば、式(h)の導出過程と類似しており、ピッチP内での測定対象位置の変位x=x mod P=N21(ピッチP、Pが遠いので、N21の精度がN11よりも高い)は、ステップが1であり、以下、微細変位x(ピッチPを微細ピッチPという)といい、中間ピッチP内での測定対象位置の変位x=x mod P=m・(N12-N11)は、ステップがmであり、以下、中間変位xといい、粗ピッチP内での測定対象位置の変位x=x mod P=m・n・(N23-N21)は、ステップがm・nであり、以下、粗変位xという。粗、中間、微細変位x、x及びxが得られると、以下のステップにより測定対象変位xを計算する。粗変位xを半開区間[0,P)にマッピングして微細変位x∈[0,P)とマッチングさせ、総変位xを粗変位xに変更して、関係式(i)により粗変位xに含まれる中間ピッチの整数の個数Kを求め、関係式(j)により中間変位xに含まれる微細ピッチの整数の個数Kを求め、式(k)により粗ピッチP内での測定対象位置の絶対変位xを計算する。一般的な適用では、該絶対変位は求めるべき測定対象変位x=xであるが、測定レンジ(粗ピッチPの範囲を超える)が大きい適用では、測定した2回の隣接する絶対変位増分Δxを累積して測定レンジ制限のない測定対象変位x=Σ(Δx)を得る。粗ピッチの値が大きいので、絶対変位増分を累積しても、測定頻度を向上させる必要がない。
【0073】
以上の段階的な測定を実現する具体的な回路を図14に示し、この回路では、図6に示す2ピッチ構造を用いた測定回路に1つのNMOSパワートランジスタTと4つのマルチチャンネルアナログスイッチS11-S14(制御信号「ピッチ選択」を含む)だけが増設されているので、作動原理が完全に同様である。マイクロコントローラ13は、測定ユニットを有効化した後、低レベルの「ピッチ選択」信号を出力し、すなわち、駆動信号TGの出力端子を駆動パワートランジスタTのゲートに接続し、放射巻線1.4(コイル1.4.1と1.4.2からなる)が駆動されるようにし、第2のピッチ三相受信巻線1.2の出力端子を第2の処理チャネルに接続し、次に、初期化信号INIをクリアして1にセットし、1回目の測定を開始させ、第1のピッチPと第2のピッチP内での測定対象位置の位相量子化コードN11とN12を並列測定し、続いて、マイクロコントローラ13は、高レベルの「ピッチ選択」信号を出力し、すなわち、駆動信号TGの出力端子を駆動パワートランジスタTのゲートに接続し、放射巻線1.5(コイル1.4.1と1.5.2からなる)が駆動されるようにし、第3のピッチ三相受信巻線1.3の出力端子を第2の処理チャネルに接続し、さらに初期化信号INIをクリアして1にセットし、2回目の測定を開始させ、第1のピッチPと第3のピッチP内での測定対象位置の位相量子化コードN21とN23を並列測定し、その後、マイクロコントローラは測定ユニットを無効化し、絶対測位アルゴリズムによって、粗ピッチ内での測定対象位置の絶対変位xを計算し、必要に応じて、測定した2回の隣接する絶対変位増分Δxを累積して測定レンジを拡大する。
【0074】
2ピッチ構造を用いた場合と同様に、マイクロコントローラ13は割り込み駆動モードを用い、測定には、タイマー割り込みとキャプチャ割り込みとの2つの割り込みベクターが使用される。
【0075】
タイマーは、125msごとに1回の割り込みを発生させ、最高頻度が8回/秒の測定を発生させ、センサー静止や待機の場合、測定頻度を半分に減らし、その処理手順は、図15に示すように、2ピッチ構造を用いた場合よりも、「「ピッチ選択」信号クリア」のステップを有する。
【0076】
キャプチャ割り込みの処理手順を図16に示す。該割り込みソースのキャプチャ値を読み取り、該キャプチャの割り込み要求を無効化し、1回目の測定が完了する場合、「ピッチ選択」信号を1にセットし、初期化信号INIをクリアして、各キャプチャ割り込み要求のフラグを除去し、各キャプチャ割り込み要求を再度有効化し、初期化信号INIを1にセットした後、2回目の測定を開始させ、2回目の測定が完了する場合、測定ユニットを無効化して、中間変位x=m・(N12-N11)を計算し、センサーが移動しているか否かを判断し、状態フラグを設置し、粗変位x=m・n・(N23-N21)を計算し、粗変位xを半開区間[0,P)にマッピングして、総変位xを粗変位xに変更し、関係式(i)により粗変位xに含まれる中間ピッチの整数の個数Kを求め、関係式(j)により中間変位xに含まれる微細ピッチの整数の個数Kを求め、式(k)により粗ピッチP内での測定対象位置の絶対変位xを計算し、測定レンジを拡大する必要がある場合、絶対変位増分Δxを累積し、最後に、ユーザからの要求に従って測定結果を表示する。
【0077】
3ピッチ構造を用いて角変位を測定してもよいが、角変位の場合は、360°の範囲内で絶対測位をすればよいため、一般には、2ピッチ構造だけで要求を満たすことができ、ここでは再度言及しない。
【0078】
上述の実施例は、本発明の目的、技術案、及び有益な効果をさらに詳細に説明する具体例に過ぎず、本発明はこれらに限定するものではない。本発明で開示された範囲を逸脱することなく行われる修正、等同置換や改良などであれば、本発明の特許範囲に含まれるものとする。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】