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特表2022-508330迷走神経を刺激するための埋め込み式刺激装置のための制御システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】迷走神経を刺激するための埋め込み式刺激装置のための制御システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20220112BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/05
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532213
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018085485
(87)【国際公開番号】W WO2020125948
(87)【国際公開日】2020-06-25
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】517285068
【氏名又は名称】シナジア メディカル
【氏名又は名称原語表記】Synergia Medical
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ドゲット,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ダウトレバンデ,マリー
(72)【発明者】
【氏名】ボトキン,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】タイバウト,グレゴリー
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC10
4C053JJ21
(57)【要約】
本発明は、埋め込まれた刺激装置による迷走神経への電気パルス又は電磁パルスの送達の制御のためのキット・オブ・パーツ及び方法に関する。キット・オブ・パーツは、(a)埋め込み式刺激装置(10)において、治療される患者の迷走神経(Vn)に結合されるためのカフ電極/オプトロードと、迷走神経結合ユニット(60)から離れた位置において皮下に埋め込まれるのに適し、電気エネルギーパルス又は光エネルギーパルスを送達するためのエネルギーパルス発生器(51s)を封入し、1つ又は複数の導電体(41e)及び/又は光ファイバ(41f)によってカフ電極/オプトロードに結合された封入ユニット(50)と、を備える埋め込み式刺激装置(10)と、(b)外部コントローラ装置(100)において、喉頭領域における喉頭の電気的活動を測定するために患者の喉頭領域(Lx)に結合されるのに適した喉頭電極(161)において、喉頭電極が外部制御ユニット(150)に結合され、外部制御ユニット(150)が、制御エネルギーパルスの制御パルスパラメータを入力するための設定ユニット(151)と、設定ユニットにおいて入力された制御パルスパラメータによって定義された1つ又は複数の制御エネルギーパルスをカフ電極/オプトロードに送達するように埋め込まれたコントローラ(54)に命令する信号を送信するように構成された外部エミッタ(153e)と、喉頭の電気的活動の強度を示す視覚表示(155)又は聴覚表示(157)と、を備える、喉頭電極を備える、外部コントローラ装置(100)と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込まれた刺激装置による迷走神経への電気パルス又は電磁パルスの送達の制御のためのキット・オブ・パーツにおいて、前記キット・オブ・パーツが、
(a)埋め込み式刺激装置(10)において、
●治療される患者の迷走神経(Vn)に直接結合されるのに適したカフを形成する絶縁支持体(64)に取り付けられた電極(61)及び/又はオプトロード(62)を備える迷走神経結合ユニット(60)と、
●前記迷走神経結合ユニット(60)から離れた位置において皮下に埋め込まれるのに適し、ハウジング(50h)を備える封入ユニット(50)において、前記ハウジング(50h)が、
○電気エネルギー又は光エネルギーを含むエネルギーパルスを送達するためのエネルギーパルス発生器(51s)と、
○前記エネルギーパルス発生器(51s)を作動させるための電源(52)と、
○前記迷走神経結合ユニットへエネルギーパルスを送達するように前記エネルギーパルス発生器に命令するように構成された埋め込まれたコントローラ(54)と、
○外部エミッタ(153e)からの信号を受信するための埋め込まれたレシーバ(53r)と、
を封入する、封入ユニット(50)と、
●前記封入ユニットの前記エネルギーパルス発生器(51s)と前記迷走神経結合ユニット(60)との間において電気エネルギー及び/又は光エネルギーを伝達するための1つ又は複数の導電体(41e)及び/又は光ファイバ(41f)を備える、埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)と、
を備える、埋め込み式刺激装置(10)と、
(b)外部コントローラ装置(100)において、
●喉頭領域(Lx)の高さで患者の首の皮膚に結合されるのに適し、前記喉頭領域における喉頭の電気的活動を測定するのに適した喉頭電極(161)を備える喉頭電極ユニット(160)と、
●前記喉頭電極ユニットからの電気信号又は光信号を外部制御ユニット(150)又は前記外部制御ユニット(150)と通信する中間コントローラ(150a)に伝達するための1つ又は複数の導電体又は光ファイバを備える外部エネルギー伝達ユニット(141)において、前記電気信号又は光信号が、前記喉頭領域において測定された喉頭の電気的活動を表す、外部エネルギー伝達ユニット(141)において、
●前記外部制御ユニット(150)が、
○制御エネルギーパルスの制御パルスパラメータを入力するための設定ユニット(151)と、
○前記設定ユニット(151)において入力された前記制御パルスパラメータによって定義された1つ又は複数の制御エネルギーパルスを前記迷走神経結合ユニット(60)へ送達するように前記エネルギーパルス発生器(51s)に命令するように前記埋め込まれたコントローラ(54)に命令する信号を前記埋め込まれたレシーバ(53r)に送信するように構成された外部エミッタ(153e)と、
○前記外部エネルギー伝達ユニットによって伝達された電気信号又は光信号を前記喉頭領域において測定された前記喉頭の電気的活動の強度を示す視覚表示(155)又は聴覚表示(157)に変換する変換器と、
を備える、外部エネルギー伝達ユニット(141)と、
を備える、外部コントローラ装置(100)と、
を備えることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項2】
請求項1に記載のキット・オブ・パーツにおいて、
●前記埋め込まれたコントローラが、前記エネルギーパルス発生器(51s)によって制御エネルギーパルスが送達されたことを通知する信号を前記外部制御ユニット(150)に送信するための埋め込まれたエミッタ(53e)を備え、
●前記外部制御ユニットが、
○制御エネルギーパルスが前記迷走神経に送達された時間tvを表すトリガ時間t0を保存するように構成され、t0が、1つ又は複数の制御エネルギーパルスを送達するために前記外部エミッタ(153e)によって前記埋め込まれたレシーバ(53r)に前記信号が送信された時間であり、
○前記埋め込まれたエミッタ(53e)によって送信された信号を受信し、制御エネルギーパルスが前記迷走神経に送達された送達時間tvを表す送達信号時間tdを保存するための外部レシーバ(153r)を備え、tdが、制御パラメータセットであり、前記エネルギーパルス発生器によって制御エネルギーパルスが送達されたことを通知する、前記埋め込まれたエミッタによって送信された前記信号を前記外部レシーバが受信した時間であることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキット・オブ・パーツにおいて、
●前記迷走神経結合ユニット(60)が、2つの電極(61)間に流れる電流によって、又は前記迷走神経結合ユニット(60)のオプトロード(62)により放出される光によって作動するパルスフィードバックユニット(71)を備え、
●前記埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)が、前記パルスフィードバックユニット(71)からの電気エネルギー又は光エネルギーを前記封入ユニットに封入され、且つ前記埋め込まれたコントローラ(54)に結合されたフィードバックセンサ(171)に伝達するための導電体(41e)又は光ファイバ(41f)を備え、
●前記埋め込まれたコントローラが(54)、前記パルスフィードバックユニットが作動されたことを通知する信号を前記外部制御ユニットに送信するための埋め込まれたエミッタ(53e)に結合され、
●前記外部制御ユニット(150)が、前記埋め込まれたエミッタによって送信された前記信号を受信するための外部レシーバ(153r)を備え、制御エネルギーパルスが前記迷走神経に実際に送達された実際の送達時間tvを表すフィードバック信号時間tfを保存するように構成されることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項4】
請求項3に記載のキット・オブ・パーツにおいて、前記迷走神経結合ユニットが電極(61)を備え、前記パルスフィードバックユニット(71)が、導電体(41e)によって、又は発光ダイオード(LED)(5Ld)に結合された光ファイバ(41f)によって前記フィードバックセンサ(171)に接続されたフィードバック電気回路を備えることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項5】
請求項3に記載のキット・オブ・パーツにおいて、前記迷走神経結合ユニットが少なくともオプトロード(62)を備え、前記パルスフィードバックユニット(71)が前記組織を透過又は散乱した光エネルギーを受信するための集光器(71c)を備え、前記集光器(71c)が光起電力セル(71pv)に結合された導電体(41e)によって、又は直接光ファイバ(41f)によって前記埋め込まれたコントローラに接続されることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のキット・オブ・パーツにおいて、前記迷走神経結合ユニットが、互いに分離されて絶縁シートの内面に露出させた3つの電極(61)を含むトリポーラ電極を備えることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のキット・オブ・パーツにおいて、
●前記外部制御ユニット(150)に結合された、患者の心電図を測定するための装置
を更に備え、
●前記外部制御ユニットが、喉頭の電気的活動(L1、L2)が予期される時間tlxが前記心電図の等電期に対応するように、前記迷走神経結合ユニットに1つ又は複数の制御エネルギーパルスを送達するための前記信号の前記送信を同期させるように構成されることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項8】
患者の迷走神経に結合された埋め込まれた刺激装置のパラメータを調整するための方法において、以下のステップ、すなわち、
(a)請求項1の(a)において定義された埋め込み式刺激装置(10)を身体内に埋め込まれた患者を、前記迷走神経結合ユニット(60)が前記患者の迷走神経(Vn)に結合された状態で準備するステップと、
(b)請求項1の(b)において定義された外部コントローラ装置(100)を準備し、前記喉頭電極ユニット(160)を前記喉頭領域(Lx)において前記患者の皮膚に結合するステップと、
(c)制御エネルギーパルス(V1、V2)を定義する制御パラメータセットを前記設定ユニット(151)に入力するステップと、
(d)前記外部エミッタ(153e)によって、前記制御パラメータセットによって定義された1つ又は複数の制御エネルギーパルス(V1、V2)を前記迷走神経結合ユニット(60)に送達するように前記エネルギーパルス発生器(51s)に命令する信号を前記埋め込まれたレシーバ(53r)に送信するステップと、
(e)制御エネルギーパルスが前記迷走神経に送達された時間tvを表すトリガ時間t0を定義するステップにおいて、t0が、1つ又は複数の制御エネルギーパルスを送達するために前記外部エミッタ(153e)によって前記埋め込まれたレシーバ(53r)に前記信号が送信された前記時間として定義される、ステップと、
(f)事前定義された制御時間範囲Δt±δt(ただしδt<Δt)だけ前記トリガ時間から遅延した喉頭の電気的活動(L1、L2)を前記喉頭電極ユニットが記録するか否かを制御するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記エネルギーパルス(V1)に起因する喉頭の電気的活動(L1)が前記伝播時間範囲Δt±δt内に記録されない場合、第2の制御エネルギーパルス(V2)を定義する第2の制御パラメータセットを前記設定ユニット(51)に入力し、第2の制御パラメータセットを用いてステップ(d)~(f)を繰り返すことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の方法において、喉頭の電気的活動(L1、L2)が前記伝播時間範囲Δt±δt内で記録された場合、前記喉頭の電気的活動を事前定義された満足度の基準と比較し、
●このようにして記録された前記喉頭の電気的活動(L1、L2)が前記事前定義された基準を満たさない場合、新しい制御エネルギーパルスを定義する新しい制御パラメータセットを前記設定ユニット(151)に入力し、前記新しいパラメータセットを用いてステップ(d)~(f)を繰り返し、
●このようにして記録された前記喉頭の電気的活動(L1、L2)が前記事前定義された基準を満たす場合、前記制御エネルギーパルスの前記対応する制御パラメータセットを、これをエネルギーパルスの良好な制御パラメータセットとして保存するための前記埋め込まれたコントローラ(54)に送信し、前記良好な制御パラメータセットに基づいて治療用のパラメータセットを定義することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7乃至9の何れか1項に記載の方法において、前記制御パラメータセットが、パルス周波数、パルス振幅、パルス持続時間、パルス間隔、パルス数のうちの1つ又は複数を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7乃至10の何れか1項に記載の方法において、ステップ(c)の後、所与の制御パラメータセットがメモリに保存されて、保存された制御パラメータセットを形成し、ステップ(d)が順次数回繰り返されて、前記保存された制御パラメータセットによって定義される制御エネルギーパルス(V1、V2)を、前記迷走神経結合ユニット(60)に送達するように前記エネルギーパルス発生器(51s)に命令し得ることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項7乃至11の何れか1項に記載の方法において、ステップ(d)が順次N回繰り返され、所与の制御パラメータセットによって定義された1つ又は複数の制御エネルギーパルス(V1、V2)を前記迷走神経結合ユニットに送達するように前記エネルギーパルス発生器(51s)に命令し、前記喉頭電極ユニットによって記録された前記喉頭の電気的活動(L1、L2)がステップ(f)のN回の繰り返しにわたって平均され、Nは1より大きい自然数であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項7乃至12の何れか1項に記載の方法において、前記患者の心電図が測定され、前記迷走神経結合ユニット(60)への1つ又は複数の制御エネルギーパルスの前記送達が、喉頭の電気的活動(L1、L2)が予期される時間tlxが前記患者の心周期の等電期に対応するように同期されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封入ユニットに封入されたエネルギーパルス発生器と迷走神経との間における電気パルス又は光パルス(=エネルギーパルス)の送信を伴う治療に使用するための能動埋め込み式医療機器(AIMD)の分野に関する。より詳細には、本発明は、エネルギーパルスの良好な制御パラメータセットを決定して、そのようなエネルギーパルスによって迷走神経を効果的に活性化させることを確実にするためのキット・オブ・パーツ及び方法に関する。良好な制御パラメータセットが決定されると、良好な制御パラメータセットから治療用のパラメータセットを導出することができる。本発明は、埋め込まれた医療機器と通信可能な外部コントローラ装置を備え、外部コントローラ装置は、制御刺激パルスを迷走神経に送出した後の喉頭領域の電気的活動を記録可能な喉頭電極ユニットを備える。
【背景技術】
【0002】
能動埋め込み式医療機器(AIMD)は数十年にわたっていくつかの疾患、特に神経疾患の治療に使用されている。あるタイプのAIMDは、てんかん、クローン病、肥満、パーキンソン病、更には鬱などのいくつかの神経疾患を治療するために、迷走神経などの神経に電気パルスを送達する神経刺激装置を備える。迷走神経を刺激するためのAIMDは、一般に、電極(61)又はオプトロード(62)を迷走神経に結合するために適合される迷走神経結合ユニットを備える。エネルギーパルスの送達には、電源から電力を供給され、埋め込まれたコントローラによって制御されるエネルギーパルス発生器を必要とする。迷走神経結合位置に近接してこれらのコンポーネントすべてを埋め込むことは、それらの大きさのために一般に不可能である。このため、刺激する埋め込み機器は概して2つの別個のコンポーネントに分割され、一方は、迷走神経結合ユニット(60)に含まれ、埋め込まれて迷走神経に直接結合される電極又はオプトロードであり、他方は、迷走神経から距離を置いて、多くの場合鎖骨下領域に埋め込まれ得るハウジング(50h)に封入されたエネルギー(電気又は光)パルス発生器(51s)である。エネルギーパルス発生器と迷走神経結合ユニットとの間のエネルギーの伝達は、電気エネルギーを伝導するための導電体(41e)によって、又は光エネルギーを輸送するための光ファイバ(41f)によって確保される。
【0003】
神経は、通常、神経線維の束から構成されている。神経は、その神経線維のうちの少なくとも1本が神経線維の長さ沿いに伝播する活動電位を誘発させると、刺激パルスによって活性化される。活動電位は、神経線維の膜の局所的脱分極によって誘発される。膜電位が急激に上昇及び下降して、隣接する位置を同様に脱分極させる。そして、この脱分極は神経線維に沿って伝播する。いくつかの神経線維が活性化されるとき、神経内を伝播するこれらすべての活動電位の和が複合活動電位と呼ばれる。
【0004】
活性化閾値が刺激パルスを定義するパラメータ値セットとして定義され、上記セットのうちの任意のパラメータの値が、対応するパラメータの閾値以上である場合に神経は活性化され、上記セットのうちの任意のパラメータの値が対応するパラメータの閾値未満である場合は、神経は活性化されない。
【0005】
図1に示すように、本発明は、
●電源(52)、埋め込まれたコントローラ(54)と呼ばれる任意のアナログ及び/又はデジタル回路、並びに電流若しくは電圧の何れかによって制御される電気パルス又は光のパルスを発生させるための光のエネルギーパルス発生器(51s)を封入するハウジング(50h)を備える封入ユニット(50)と、
●迷走神経上に埋め込まれ直接結合されるのに適した1つ又は複数の電極及び/又はオプトロードを備える迷走神経結合ユニット(60)と、
●封入ユニットと迷走神経結合ユニットとの間においてエネルギーパルスを伝達するための1つ又は複数の導電体(41e)及び/又は光ファイバ(41f)を備える埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)と、
を備える、AIMDに関する。
【0006】
最も単純な形では、エネルギーパルスを迷走神経結合ユニット(60)に送達するための封入ユニット(50)は、一般に、バッテリなどの電源(52)によって給電されるエネルギーパルス発生器(51s)と、限定されないが、送達の強度(I1、I2)、持続時間(d1、d2)、数(N)、周波数(f1、f2)、パルスの形状などを含む、エネルギーパルス発生器によって送達されるエネルギーパルスのパラメータセットを制御するための埋め込まれたコントローラ(54)を備える。上記の要素はハウジング(50h)に格納される(図2(a)及び図2(b)を参照)。
【0007】
迷走神経結合ユニット(60)は、一般に、迷走神経(Vn)の一部分に巻き付く円筒状の体カフのような形状の絶縁支持シートを備える、カフ電極又はオプトロードの形態をしている。互いに分離された2つの電極(61)を円筒状のカフの内面に配置して、絶縁支持シートが迷走神経に巻き付けられたときに、迷走神経と共に電気回路を形成することができる。迷走電流を抑制し、カフ電極が巻き付いた迷走神経の部分内に電流を集中させるために、第3の電極を設けることもできる。
【0008】
近年、光エネルギーによる組織の治療は、光遺伝学の分野をサポートするための、又は直接赤外光を使用する疾患の治療に有望な可能性を示している。このような組織の光治療には、いわゆるオプトロード(62)が使用され得る。オプトロードは、組織の詳細な領域に光線を集束させる発光体である場合もあれば、発光体から放出された光線の反射、透過、又は散乱を検知する光センサである場合もある。発光体は、上述の電極と同様に、電流によって給電され得る。オプトロードは、カフオプトロードを迷走神経に巻き付けたときに迷走神経との光学的接触を可能にする開口部に面する絶縁支持シートに結合され得る。
【0009】
AIMDの埋め込みは以下のステップを含む。外科医が迷走神経を含む領域を切開し、迷走神経結合ユニットを迷走神経に結合させる。迷走神経結合ユニットは、一般に、迷走神経結合ユニットを迷走神経に埋め込む前に、1つ又は複数の導電体及び/又は光ファイバを含む埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)の遠位端に電気的又は光学的に結合される。埋め込まれたエネルギー伝達ユニットの近位端は、鎖骨下領域などの封入ユニットの埋め込み位置に押しやられる。封入ユニットは、任意の順序で埋め込まれ、埋め込まれたエネルギー伝達ユニットに結合され得る。
【0010】
迷走神経刺激によっててんかんの治療を受けた患者の約3分の1が治療に反応しない。しかしながら、この3分の1の患者の中で、迷走神経は活性化されたが望ましい治療効果が得られない患者と、AIMDデバイスに欠陥があること、埋め込み手術が最適ではないこと、パラメータセットが活性化閾値未満であること、又は迷走神経が障害されていることにより迷走神経が活性化されていない患者とを区別する必要がある。
【0011】
埋め込まれた後は、埋め込まれたAIMDによって発生され、迷走神経に輸送されるエネルギーパルスが、所望の治療計画に従って迷走神経を活性化させることを確実にしなければならない。例えば、埋め込み条件によっては、第1の強度のエネルギーパルス(V1)は、迷走神経を十分に活性化させるには低すぎる場合がある。したがって、第1の強度のエネルギーパルス(V1)を送達するようにプログラムされた埋め込まれたAIMDを有する患者は十分な治療を受けることができず、AIMDの埋め込みに要した侵襲的な手術が無駄になる。また、迷走神経が損傷していたり障害されていたりするために、迷走神経にエネルギーパルスが正常に送達されたにもかかわらず、迷走神経が活性化しない場合がある。
【0012】
対照的に、迷走神経の活性化閾値を過度に上回る強度のエネルギーパルスを送達するようにAIMDがプログラムされている場合、過剰なエネルギーが消費されるため、埋め込まれたバッテリの寿命が短くなるだけでなく、神経を障害させるリスクが高まる。
【0013】
例えば、米国特許第6266558号明細書は、AIMDによって電気的に刺激された神経の活性化を判定するために、刺激に応じて神経又はこの神経が支配する筋肉からの少なくとも2つの連続する誘発信号を検出することを提案している。
【0014】
米国特許第7561918号明細書は、迷走神経上に検知電極を埋め込んで、2つの刺激電極間にある迷走神経に電気エネルギーパルスを送達した後に迷走神経の電気的活動を検出することを提案している。しかしながら、刺激フィードバックは、迷走神経結合ユニットのすぐ近くに配置された迷走神経の部分に制限される。
【0015】
米国特許出願公開第2008058874号明細書及び米国特許出願公開第2010324628号明細書は、AIMDによる迷走神経の神経刺激を、この神経刺激によって誘発される喉頭活動を記録することによって間接的にモニタリングする方法を説明している。喉頭活動は、喉頭の振動の大きさ及び周波数を含み、神経刺激によって迷走神経が活性化されているか否かの指標を与える。喉頭活動の記録は加速度計を用いて行うことができる。
【0016】
本発明は、埋め込まれた刺激装置による電気パルス又は電磁パルスの送達によって迷走神経を刺激したときに、迷走神経の活性化をモニタリングするための装置及び方法を提案する。本発明の装置及び方法により、良好な制御パラメータセットを決定することができる。この良好な制御パラメータセットから、所与の患者の治療計画を実施するための治療用のパラメータセットを定義することができる。本発明の装置及び方法は実施が容易であり、その結果は高い信頼性及び再現性を有する。これらの利点及び他の利点については、次のセクションでより詳しく説明する。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、添付の独立請求項において定義される。好ましい実施形態は、従属請求項において定義される。特に、本発明は、埋め込まれた刺激装置による迷走神経への電気パルス又は電磁パルスの送達の制御のためのキット・オブ・パーツに関し、上記キット・オブ・パーツが、
(a)埋め込み式刺激装置において、
●治療される患者の迷走神経に直接結合されるのに適した管状カフを形成する絶縁支持体に取り付けられた電極(61)及び/又はオプトロードを備える迷走神経結合ユニットと、
●迷走神経結合ユニットから離れた位置において皮下に埋め込まれるのに適し、ハウジングを備える封入ユニットにおいて、ハウジングが、
○電気エネルギー又は光エネルギーを含むエネルギーパルスを送達するためのエネルギーパルス発生器と、
○エネルギーパルス発生器を作動させるための電源と、
○迷走神経結合ユニットへエネルギーパルスを送達するように外部制御ユニットに命令するように構成された埋め込まれたコントローラと、
○外部エミッタからの信号を受信するための埋め込まれたレシーバと、
を封入する、封入ユニットと、
●封入ユニットのエネルギーパルス発生器と迷走神経結合ユニットとの間において電気エネルギー及び/又は光エネルギーを伝達するための1つ又は複数の導電体及び/又は光ファイバを備える埋め込まれたエネルギー伝達ユニットと、
を備える、埋め込み式刺激装置と、
(b)外部コントローラ装置において、
●喉頭領域の高さで患者の首の皮膚に結合されるのに適し、喉頭領域における喉頭の電気的活動を測定するのに適した喉頭電極を備える喉頭電極ユニットと、
●喉頭電極ユニットからの電気信号又は光信号を外部制御ユニット又は外部制御ユニットと通信する中間コントローラに伝達するための1つ又は複数の導電体又は光ファイバを備える外部エネルギー伝達ユニットにおいて、上記電気信号又は光信号が、喉頭領域において測定された喉頭の電気的活動を表す、外部エネルギー伝達ユニットにおいて、
●外部制御ユニットが、
○制御エネルギーパルスの制御パルスパラメータを入力するための設定ユニットと、
○設定ユニットにおいて入力された制御パルスパラメータによって定義された1つ又は複数の制御エネルギーパルスを迷走神経結合ユニットへ送達するようにエネルギーパルス発生器に命令するように埋め込まれたコントローラに命令する信号を埋め込まれたレシーバに送信するように構成された外部エミッタと、
○外部エネルギー伝達ユニットによって伝達された電気信号又は光信号を電気信号又は光信号の強度を示す視覚表示又は聴覚表示に変換する変換器と、
を備える、外部エネルギー伝達ユニットと、
を備える、外部コントローラ装置と、
を備える。
【0018】
埋め込まれたコントローラは、エネルギーパルス発生器によって制御エネルギーパルスが送達されたことを通知する信号を外部制御ユニットに送信するための埋め込まれたエミッタを備えることが好ましい。外部制御ユニットは、
●制御エネルギーパルスが迷走神経に送達された時間tvを表すトリガ時間t0を保存するように構成され、t0は、1つ又は複数の制御エネルギーパルスを送達するために外部エミッタから埋め込まれたレシーバに信号が送信された時間であり、
●埋め込まれたエミッタによって送信された信号を受信するため、且つ制御エネルギーパルスが迷走神経に送達された送達時間tvを表す送達信号時間tdを保存するための外部レシーバを備え、tdは、埋め込まれたエミッタによって送信された信号を外部レシーバが受信した時間であることが好ましい。
【0019】
好ましい実施形態では、迷走神経結合ユニットは、2つの電極間に流れる電流によって、又は迷走神経結合ユニットのオプトロードにより放出される光によって作動するパルスフィードバックユニットを備える。埋め込まれたエネルギー伝達ユニットは、パルスフィードバックユニットからの電気エネルギー又は光エネルギーを封入ユニットに封入され、且つ埋め込まれたコントローラに結合されたフィードバックセンサに伝達するための導電体又は光ファイバを備え得る。埋め込まれたコントローラは、パルスフィードバックユニットが作動されたことを通知する信号を外部制御ユニットに送信するための埋め込まれたエミッタに結合され得る。最後に、外部制御ユニットは、埋め込まれたエミッタによって送信された信号を受信するための外部レシーバを備えることができ、制御エネルギーパルスが迷走神経に実際に送達された実際の送達時間tvを表す送達信号時間tdを保存するように構成され得る。
【0020】
上述の実施形態の実現のための好ましい例では、迷走神経結合ユニットが電極を備え、パルスフィードバックユニットが、導電体によって、又は発光ダイオード(LED)に結合された光ファイバによってフィードバックセンサに接続されたフィードバック電気回路を備える。
【0021】
実現のための別の例では、迷走神経結合ユニットは少なくとも1つのオプトロードを備え、パルスフィードバックユニットが、組織を透過又は散乱した光エネルギーを受信するための集光器を備える。集光器は、光起電力セルに結合された導電体によって、又は直接光ファイバによって、埋め込まれたコントローラに接続される。
【0022】
迷走神経結合ユニットは、互いに分離されて絶縁シートの内面に露出させた2つの電極を備えるバイポーラ電極、又は好ましくは3つの電極を備えるトリポーラ電極を備え得る。
【0023】
本発明のキット・オブ・パーツは、外部制御ユニットに結合された、患者の心電図を測定するための装置を更に備え得る。外部制御ユニットは、喉頭の電気的活動(L1、L2)が予期される時間tlxが心電図の等電期に対応するように、迷走神経結合ユニットに1つ又は複数の制御エネルギーパルスを送達するための信号の送信を同期させるように構成され得る。
【0024】
本発明はまた、患者の迷走神経に結合された埋め込まれた刺激装置のパラメータを調整するための方法において、以下のステップ、すなわち、
(a)上で定義された埋め込み式刺激装置(10)を身体内に埋め込まれた患者を、迷走神経結合ユニットが患者の迷走神経に結合された状態で準備するステップと、
(b)上で定義された外部コントローラ装置を準備し、喉頭電極ユニットを喉頭領域において患者の皮膚に結合するステップと、
(c)制御エネルギーパルスを定義する制御パラメータセットを設定ユニットに入力するステップと、
(d)外部エミッタによって、制御パラメータセットによって定義された1つ又は複数の制御エネルギーパルスを迷走神経結合ユニットへ送達するようにエネルギーパルス発生器に命令する信号を埋め込まれたレシーバに送信するステップと、
(e)制御エネルギーパルスが迷走神経に送達された時間を表すトリガ時間t0を定義するステップにおいて、t0が、1つ又は複数の制御エネルギーパルスを送達するために外部エミッタによって埋め込まれたレシーバに信号が送信された時間として定義される、ステップと、
(f)事前定義された制御時間範囲Δt±δt(ただしδt<Δt)だけトリガ時間から遅延した喉頭の電気的活動を喉頭電極ユニットが記録するか否かを制御するステップと、
を含む方法に関する。
【0025】
エネルギーパルスに起因する喉頭の電気的活動が伝播時間範囲Δt±δt内に記録されない場合、第2の制御エネルギーパルスを定義する第2の制御パラメータセットを設定ユニットに入力することができ、第2の制御パラメータセットを用いてステップ(d)~(f)を繰り返すことができる。
【0026】
一方、喉頭の電気的活動が伝播時間範囲Δt±δt内で記録された場合、上記喉頭の電気的活動が事前定義された満足度の基準と比較され得る。
●このようにして記録された喉頭の電気的活動が事前定義された基準を満たさない場合、新しい制御エネルギーパルスを定義する新しい制御パラメータセットを設定ユニットに入力することができ、新しいパラメータセットを用いてステップ(d)~(f)を繰り返すことができる。
●このようにして記録された喉頭の電気的活動が事前定義された基準を満たす場合、制御エネルギーパルスの対応する制御パラメータセットが、これをエネルギーパルスの良好な制御パラメータセットとして保存するために埋め込まれたコントローラに送信され得る。この良好な制御パラメータセットに基づいて、事前定義された治療計画を実施するための治療用のパラメータセットが定義され得る。
【0027】
制御パラメータセットは、パルス周波数、パルス振幅、パルス持続時間、パルス間隔、パルス数のうち1つ又は複数を含み得る。
【0028】
ステップ(c)の後、所与の制御パラメータセットがメモリに保存されて、保存された制御パラメータセットを形成することができ、ステップ(d)は順次数回繰り返されて、保存された制御パラメータセットによって定義される制御エネルギーパルスを迷走神経結合ユニット(60)に送達するようにエネルギーパルス発生器に命令し得る。
【0029】
ステップ(d)は順次N回繰り返されて、所与の制御パラメータセットによって定義された1つ又は複数の制御エネルギーパルスを迷走神経結合ユニットへ送達するようにエネルギーパルス発生器に命令し得る。喉頭電極ユニットによって記録された喉頭の電気的活動は、信号対雑音比を高めるために、ステップ(f)のN回の繰り返しにわたって平均することができ、Nは1より大きい自然数である。
【0030】
好ましい実施形態では、患者の心電図が測定され、迷走神経結合ユニット(60)への1つ又は複数の制御エネルギーパルスの送達が、患者の心周期の等電期に対応するように同期される。
【0031】
本発明の性質をより十分に理解するために、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1a図1(a)は、本発明に適したAIMDを示す図である。
図1b図1(b)は、本発明に適した外部コントローラ装置を示す図である。
図2a図2(a)は、本発明に適した封入ユニットを示す図である。
図2b図2(b)は、エネルギーパルス発生器によって発生されたエネルギーパルスの例を示すグラフである。
図3a図3(a)は、本発明に適したトリポーラセルフサイジングカフ電極の一実施形態の概略図である。
図3b図3(b)は、本発明に適したトリポーラセルフサイジングカフ電極の一実施形態の斜視図である。
図3c図3(c)は、本発明に適したトリポーラセルフサイジングカフ電極の一実施形態の上面図である。
図4a図4(a)は、外部制御ユニットへの電気的フィードバックを伴う、本発明による喉頭電極ユニットの実施形態を示す図である。
図4b図4(b)は、光学的フィードバックを伴う、本発明による喉頭電極ユニットの実施形態を示す図である。
図5a図5(a)は、迷走神経結合ユニットを迷走神経に結合した状態で埋め込まれたAIMD、及び本発明による外部コントローラ装置の一実施形態を示す図である。
図5b図5(b)は、迷走神経結合ユニットを迷走神経に結合した状態で埋め込まれたAIMD、及び本発明による外部コントローラ装置の別の実施形態を示す図である。
図5c図5(c)は、迷走神経結合ユニットを迷走神経に結合した状態で埋め込まれたAIMD、及び本発明による外部コントローラ装置の更に別の実施形態を示す図である。
図6図6は、エネルギーパルスV1及びV2(実線)によるエネルギー刺激後の喉頭の電気的活動(点線)を示すグラフである。喉頭の電気的活動L1は雑音と区別することができないが、喉頭の電気的活動L2は期間Δtの後に明確に区別され得る。
図7(a)】図7(a)は、カフ電極に関連するフィードバックユニットの実施形態を示す図である。
図7(b)】図7(b)は、カフ電極に関連するフィードバックユニットの実施形態を示す図である。
図7(c)】図7(c)は、カフオプトロードに関連するフィードバックユニットの実施形態を示す図である。
図7(d)】図7(d)は、カフオプトロードに関連するフィードバックユニットの実施形態を示す図である。
図8図8は、治療計画に従って患者の迷走神経に送達される治療用エネルギーパルスを定義する良好な制御パラメータセットを決定するためのステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のキット・オブ・パーツは、
●患者に埋め込まれ、迷走神経に結合されるための能動埋め込み式刺激装置(AIMD)(10)と、
●AIMDによって送達されたエネルギーパルスが迷走神経を活性化させたか否かを評価するためのAIMDと通信する外部コントローラ(100)と、
を備える。
【0034】
図1(a)は、
●患者の迷走神経(Vn)に直接結合されるのに適したカフを形成する絶縁シート(64)に取り付けられた電極(61)及び/又はオプトロード(62)を備える迷走神経結合ユニット(60)と、
●迷走神経結合ユニット(60)から離れた位置において皮下に埋め込まれるのに適し、且つ電気エネルギー又は光エネルギーを含むエネルギーパルスを送達するためのエネルギーパルス発生器(51s)を封入する、封入ユニット(50)と、
●封入ユニットのエネルギーパルス発生器(51s)と迷走神経結合ユニット(60)との間において電気エネルギー及び/又は光エネルギーを伝達するための1つ又は複数の導電体(41e)(例えば、導線)及び/又は光ファイバ(41f)を備える埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)と、
を備える能動埋め込み式医療機器(AIMD)を示している。
【0035】
図1(b)は、
●喉頭領域(Lx)の高さで患者の首の皮膚に結合されるのに適し、喉頭領域における喉頭の電気的活動を測定するのに適した喉頭電極(161)を備える喉頭電極ユニット(160)と、
●喉頭電極ユニットに結合された外部制御ユニット(150)と、
●喉頭電極ユニットからの電気信号又は光信号を外部制御ユニット(150)に伝達するための1つ又は複数の導電体又は光ファイバを備える外部エネルギー伝達ユニット(141)と、
を備える外部コントローラ装置(100)を示している。
【0036】
AIMD:AIMDの封入ユニット
図2(a)に示すように、封入ユニット(50)は、エネルギーパルス発生器(51s)を封入する内部空間を画定するハウジング(50h)によって形成される。エネルギーパルス発生器は、電気パルス又は光パルス、好ましくは波長が350~1650nmである光パルスを発生させることができる。エネルギーパルスは任意の(例えば、図2(b)に示すような)形状を有することができ、一連の繰り返される個々のエネルギーパルスを含むこともできる。エネルギーパルスは、強度(I1、I2)、周波数(f1、f2)、持続時間(d1、d2)、数(N)、及び形状などを含むパラメータセットによって特徴付けられる。迷走神経の電気刺激のための典型的なパラメータセットとしては、強度(I1、I2)が3.5mA以下であり、周波数(f1、f2)が1~30Hzの範囲にあり、持続時間(d1、d2)が100~1000μsの範囲にあるものが挙げられる。パルスは、5秒~5分の範囲にある一連の持続時間で発生され得る。2つの一連のパルスは、0.1~60分のオフ期間によって隔てられて得る。これらの値は例示に過ぎず、施術者が他の値を決めることができる。
【0037】
図2(b)から分かるように、エネルギーパルス発生器(51s)によって発生された各電気刺激パルス(S)の後には、通常、刺激パルス(S)と同じエネルギー(同じ曲線下面積)を有し、刺激パルス(S)とは反対の符号を有し、強度活性化閾値よりも(絶対値で)低い強度の回復パルス(R)が続く。回復パルス(R)により、電気刺激パルス(S)の後に組織内に蓄積した電荷を中和することができる。本発明は、上述のパラメータの何れか1つに限定されるものではなく、所与のパラメータセットによって定義されたエネルギーパルスが迷走神経の良好な活性化をもたらすか否かを評価することができる。本発明はまた、所与のAIMDが埋め込まれ迷走神経に結合されている所与の患者に対する所与の治療計画に合うように治療用のパラメータセットを決定することを可能にする。
【0038】
ハウジング(50h)はまた、電源(52)を封入する。電源は、好ましくはバッテリの形態であり、好ましくは充電式バッテリである。埋め込み式医療機器のハウジングに封入された充電式バッテリを充電するためのシステムの一例が欧州特許第3265173号明細書に説明されている。電源は、エネルギーパルス発生器(51s)に結合され、エネルギーパルスの送達に必要な電力を供給する。電源はまた、埋め込まれたコントローラ(54)に電力を供給する。
【0039】
AIMD:埋め込まれたコントローラ(54)
埋め込まれたコントローラ(54)は複数の機能を有する。第1に、埋め込まれたコントローラは、所与のパラメータセットに従って迷走神経結合ユニットにエネルギーパルスを送達するためのエネルギーパルス発生器を制御する。所与のパラメータセットは、封入ユニットを埋め込む前に、埋め込まれたコントローラに事前にプログラムされ得る。ただし、本発明によれば、埋め込まれたコントローラは、外部エミッタ(153e)からの信号を受信するための埋め込まれたレシーバ(53r)によって外部と通信することができる。
【0040】
埋め込まれたコントローラは、埋め込まれたエミッタ(53e)によって外部レシーバ(153r)に情報を発信することもできることが好ましい。埋め込まれたエミッタ(53e)及びレシーバ(53r)は、2つの別々のユニットとすることもできるし、情報を送信及び受信し得る単一の送受信機に統合することもできる。このようにして、埋め込まれたコントローラは、所与のパラメータセットに従ってエネルギーパルスを送達するようにエネルギーパルス発生器(51s)に指示するために、外部エミッタから命令され得る。エネルギーパルスは、AIMDが良好に機能していることを評価するための制御エネルギーパルスとすることもできるし、てんかん、クローン病、鬱、及び肥満などのような病気を治療するための治療用エネルギーパルスとすることもできる。同様に、埋め込まれたコントローラ(54)は、例えば所与のパルスが送達されたことや迷走神経結合ユニット(60)からフィードバック信号が受信されたことを含むフィードバック情報を外部レシーバに発信し得る。埋め込まれたエミッタ/レシーバと外部レシーバ/エミッタとの間の通信は、赤外線、可視光線、若しくは紫外線、又は高周波を含む電磁波の送信によって行われ得る。高周波は、患者の組織、脂肪、及び皮膚を通ることができる。光は、患者の組織、脂肪、及び皮膚を透過できるが、ただし、横断する組織が厚すぎないことを条件とする(例えば、厚さ10mm未満、好ましくは厚さ5mm未満)。
【0041】
上述のように、好ましい実施形態では、埋め込まれたコントローラは、所与のパラメータセットによって定義された制御パルスを送達するために外部エミッタから信号を受信し得る。埋め込まれたコントローラはまた、エネルギーパルス発生器(51s)によってパルスが送達されたという信号を外部レシーバに発信することもできる。図6(実線)を参照すると、制御エネルギーパルス(V1、V2)が迷走神経結合ユニット(60)に送達され得る。図6には、ピーク状の信号が示されている。エネルギーパルスは任意の(例えば、図2(b)に示すような)形状を有することができ、一連の繰り返される個々のエネルギーパルスを含むこともできる。
【0042】
図6に示すように、トリガ時間t0は、迷走神経結合ユニット(60)へ制御エネルギーパルスを送達するための命令が外部エミッタによって埋め込まれたコントローラに送信される時間として定義され得る。送達時間tvは、制御エネルギーパルスが迷走神経に実際に送達された時間として定義される。一連のいくつかのパルスの場合、送達時間tvは、最初のパルスが送達された時間である。送達時間tvを十分な精度で直接測定することはできない。対照的に、トリガ時間t0は、正確に定義され、トリガ遅延δt0を推定することによって送達時間の値を間接的に決定するために使用され得る。トリガ時間と実際の送達時間との間におけるトリガ遅延δt0=tv-t0は、命令が、外部制御ユニット(150)から外部エミッタ(153e)を介して内部制御ユニット(54)に到着するのに要する時間、命令を処理してエネルギーパルス発生器(51s)に転送するために埋め込まれた制御ユニット(54)によって必要とされる時間、及び制御エネルギーパルスが迷走神経結合ユニット(60)に到達するための時間を考慮する。送達時間tvの判定は、喉頭の電気的活動が予期される喉頭信号時間tlxを推定するのに重要である。喉頭信号時間tlx=tv+Δtpであり、Δtpは、迷走神経結合ユニットから迷走神経に沿って、喉頭神経Lnを介して喉頭領域Lxに伝播する活動電位の伝播時間である。健康な神経におけるΔtpの値はかなり正確に推定され得る。
【0043】
埋め込まれたコントローラ(54)はまた、埋め込まれたエミッタ(53e)を介して、エネルギーパルス発生器(51s)がエネルギーパルスを送達したという信号を外部レシーバ(153r)に送信し得る。この信号が外部レシーバを介して外部制御ユニット(150)によって受信される時間が送達信号時間tdと定義される。トリガ時間と実際の送達時間との間の送達信号遅延δtd=td-tvは、電子機器による処理時間及び信号伝達時間を考慮する。
【0044】
埋め込まれたAIMDに直接アクセスできないため、送達時間tvの正確な値を評価することは極めて難しい。同様に、遅延δt0及びδtdは主に電子機器の処理速度に依存するため評価が難しく、機器ごとに異なり得る。しかしながら、遅延δt0及びδtdは、約1~10msなどのミリ秒単位であり、正確に見積もることができる。トリガ時間t0と送達時間tdとを横断することにより、(a)制御エネルギーパルスが発生したことを確保し、(b)t0~tdの範囲にある送達時間tvの実際の値を推定することができる。
【0045】
好ましい実施形態では、迷走神経結合ユニット(60)は、以下により詳細に説明されるパルスフィードバックユニット(71)を備えることができ、電気信号又は光信号を、埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)を介して、封入ユニットに封入され、且つ埋め込まれたコントローラ(54)に結合されたフィードバックセンサ(171)に伝達するように構成される。電気信号又は光信号は、エネルギーパルスが迷走神経結合ユニット(60)に到達したことを示す。このようにして通知されて、埋め込まれたコントローラは、エネルギーパルスが迷走神経結合ユニットに到達したという信号を埋め込まれたエミッタを介して発信し得る。この情報が外部制御ユニット(150)によって受信される時間は、図6に示すフィードバック時間tfと定義され得る。フィードバック遅延δtf=tf-tvはまた、電子処理の速度及び情報伝達の速度、並びに埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)を介したエネルギーパルスの伝播速度にも依存する。フィードバック遅延は、適切な較正により正確に判定され得る。フィードバック時間tfに関連する情報は、エネルギーパルスが迷走神経結合ユニット(60)に到達したことを確保することから、非常に重要である。
【0046】
AIMD:エネルギーパルス発生器(51S)
エネルギーパルス発生器(51s)は、電気パルス又は光パルス、好ましくは波長が350~1650nmである光パルスを発生させることができる。電気パルス発生器は当技術分野において周知であり、本発明は、上述のように迷走神経の刺激に適したパラメータセットに従って電気パルスを発生し得る限り、いかなる特定のモデルにも限定されない。電気パルス発生器(51s)によって発生された電気パルスは、導線などの1つ又は複数の導電体(41e)を備える埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)を介して迷走神経結合ユニット(60)に輸送され得る。導線は、電極(61)又はオプトロード(62)の光源(5Ld)に供給するために電気エネルギーパルスを迷走神経結合ユニット(60)に輸送し得る。この技術は十分に確立されており、当業者には周知の長所及び短所がある。導電体(41e)の欠点としてよく知られているのは、空港及び警備された建物におけるセキュリティポータル、並びに医療用磁気共鳴イメージング(MRI)で遭遇するような磁場への曝露に不適合であるということである。
【0047】
AIMDをセキュリティポータル及びMRIに適合させるための解決策として光パルス発生器が最近導入されている。電気パルスの代わりに、光パルス発生器が光パルスを発生させる。光パルス発生器は、典型的には発光ダイオード(LED)又は垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)である1つ又は複数の発光源と、場合により微小光学部品(例えば、レンズ)とを備える。このようにして発生された光エネルギーの輸送は、1つ又は複数の光ファイバ(41f)を備える埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)を介して迷走神経結合ユニットに輸送され得る。ハウジング(50h)の内部を密閉するために、光パルス発生器(51s)は、放出される光の波長に対して透明な窓によって光ファイバ(41f)から分離され得る。本発明に適した封入ユニットの一例が国際公開第2018068807号パンフレットにおいて説明されている。このようにして迷走神経結合ユニット(60)に輸送された光パルスは、迷走神経上に導かれてオプトロード(62)を形成することもできるし、電極(61)に結合された光起電力セルによって電気エネルギーパルスに変換させることもできる。
【0048】
本発明は、電気パルス発生器及び光パルス発生器の両方で実施され得る。
【0049】
AIMD:迷走神経結合ユニット(60)
図3に示すように、迷走神経結合ユニット(60)は、内面(64d)と外面(64u)とを備え、内径Dcの管状カフ構造の形態で電気的に非導電性の支持シートによって形成された絶縁支持体(64)を備える。迷走神経結合ユニットはまた、少なくとも第1の電極(61)を備えることができ、一般に、図7(a)及び図7(b)に示すように、カフの内面に露出した2つの電極が互いに分離されてバイポーラ電極を形成している。好ましい実施形態では、迷走神経結合ユニットは、図3(a)に示すように、カフの内面に露出し、互いに分離され、トリポーラ電極を形成する3つの電極を備え、図3(a)において電極の存在は記号((+)、(-))によって示されている。迷走神経結合ユニット(60)が迷走神経(Vn)に結合されると、図3(a)、図7(a)、及び図7(b)に示すように、電極(61)が迷走神経の一部に接触し、一緒に電気刺激回路を形成する。
【0050】
代替的又は追加的に、図7(c)及び図7(d)に示すように、管状カフ構造は、カフの内面に露出した少なくとも第1の光学接点(62)、好ましくは2つ以上の光学接点を備える。
【0051】
内径Dcは、カフを巻き付ける迷走神経の寸法に依存する。また、内径Dcは、3~5mm±1mmの範囲にあることが好ましい。セルフカーリングカフ及び螺旋カフ電極/オプトロードの内径Dcは、一般に、迷走神経の直径の80~95%の範囲にある。分割円筒体カフ電極/オプトロードでは、内径Dcは一般に迷走神経の直径に等しいかわずかに大きい。例えば、Dcは迷走神経の直径の100~110%の範囲にあり得る。
【0052】
絶縁支持体(64)
上述のように、カフの3つの主要なファミリーが市販されている。
●セルフカーリングカフ(図3(a)~図3(c)を参照)。電気絶縁支持体が、迷走神経の周りにおいて自発的に巻き上がるように付勢された弾性材料から作られる。セルフカーリングカフ電極は、それらの管腔内径が、特定の患者の迷走神経の直径に応じて、又は迷走神経の直径の変動に応じて変化し、例えば術後の炎症などに適合することができるため、特に有利である。セルフカーリングカフ電極は、例えば米国特許第4602624号明細書において説明されている。
●分割円筒体カフ。電気絶縁支持体が、円筒形の組織上におけるその挿入を許容する開放スリットを伴って円筒体を形成している。その後、スリットは閉鎖される。カフ電極はセルフロック手段が提供される、又はカフ電極は結紮などにより外部手段によって閉鎖され得る。フラップによりスリットを覆う場合もある。スリット円筒体カフ電極の1つの欠点は、スリットが閉鎖されると、その内径がもはや変化することができない、という点にある。スリット円筒体カフ電極の例は、例えば米国特許第8155757号明細書において見出すことができる。
●螺旋カフ。電気絶縁支持体が迷走神経の周りにおいて巻き付けられる螺旋体を形成する。この幾何学的形状は非常に汎用性が高く、いくつかの短い螺旋カフを異なる距離に並べて配置することが可能であり、その内径は組織直径の変動に適合することができる。螺旋カフ電極の例は、例えば米国特許第5964702号明細書又は米国特許第8478428号明細書において見出すことが可能である。
【0053】
絶縁支持体(64)は、非導電性の材料、好ましくはポリマーから作られる。例えば、セルフカーリングカフ電極の場合のように(図3(a)~図3(c)を参照)、また場合により螺旋カフ電極の場合のように、絶縁材料が、埋め込みの際に、また任意の身体の動きに対応するために変形しなければならない場合には、これは、シリコーン、ポリイミド、若しくはポリウレタンエラストマ、又は任意の生体適合性エラストマなどのエラストマポリマーから作られることが好ましい。
【0054】
セルフカーリングカフでは、図3に示すように、絶縁支持体は、単一層から作られるシート材料によって形成されてもよいし、直接的に互いに接着されて2層ラミネートを形成する、又は1つ若しくは複数のコア層に直接接着されて3層以上の多層ラミネートを形成する、内面(64d)を有する内側シート及び外面(64u)を有する外側シートを備えるラミネートから構成されてもよい。セルフカーリングカフ電極は、絶縁シート材料が管状カフ構造を形成するように自発的に巻き上がるように、付勢されなければならない。このことは、少なくとも2つの層を備えるラミネートによって、外面を有する伸張されていない外側層に接着する前に又は接着する際に、内面を有する内側層を管状カフの軸を横断する軸に沿って事前に伸張することによって、実現することができる。ラミネートが形成される際には、内側層を事前に伸張する力が解放され、内側層は、横断方向軸に沿ってその均衡寸法に収縮して戻り、これにより、シートは管状カフに巻き上がる。
【0055】
材料の横断方向対軸方向の歪比率である、すべての材料に固有のポアソン比に起因して、横断方向軸に沿って内側シートを伸張させることにより、内側シートは、横断方向の伸張のレベルと、シート材料のポアソン比の値とに応じた程度まで長手方向軸Zに沿って収縮する。横断方向軸に沿ってその均衡構成に収縮して戻ることを許容するように、内側シート上の応力を解放すると、内側シートは、管状カフの軸に沿っても膨張し、これによりトランペット形状のカフエッジを形成し得る。トランペット形状のカフエッジは、迷走神経(Vn)と電極接点(61)との間の良好な接触にとって有害であり、且つカフ電極の有効性にとって有害である電流損失の原因となり得る。絶縁支持体が管状カフを形成するように巻き上がるのに伴ってトランペットエッジが形成されるのを防止するには、この場合も、材料のポアソン比と横断方向軸に沿った内側シートの事前伸張レベルの積に対応する量だけ、管状カフの軸に沿って内側シートを事前に伸張すればよい。ある程度のレベルのトランペット形状のエッジが望ましい場合には、この代わりに、管状カフの軸に沿った上述の事前の伸張の一部のみを適用することができる。
【0056】
セルフカーリング管状カフは、1~3.5、好ましくは1.5~3.0、更に好ましくは2.2~2.8の範囲にあるN個のループを伴って迷走神経を取り囲むことが好ましい。図3(b)及び図3(c)では、N≒2.7個のループを伴って巻かれたセルフカーリングカフ電極が示されている。図3(c)の挿入図に示すように、管状カフの軸に沿って延びる支持シートの内側エッジは、第1のループが終了し、第2のループが始まる移行ゾーンを平滑化するように面取りされ得、これによりまっすぐなエッジによって形成される急激な段差を除去し、迷走神経が損傷しないように保護している。
【0057】
螺旋カフでは、各螺旋ユニットによって形成されるコイルの数Nは、1~5、好ましくは、1.5~3、更に好ましくは、2~2.5の範囲にあり得る。分割円筒体カフでは、ループの数Nは、0.7~1.2、好ましくは0.8~1.0の範囲にあり得る。N<1である場合、埋め込み後に残っている開放スリットを覆うためにフラップが一般に設けられる。
【0058】
電極(61)
本発明の迷走神経結合ユニット(60)は、少なくとも第1の電極(61)と、一般に少なくとも第2の電極と、好ましい実施形態では少なくとも第3の電極とを更に備え、各電極は、AIMDが埋め込まれたときに迷走神経と電気的に接触するなどのために、絶縁支持体の内面(64d)に露出している。電極はまた、カフの外側を形成する外面からも離れている。少なくとも1つの電極は、第1の電極と第2の電極との間に含まれる組織のセクション内に電流を閉じ込め、カフ電極の境界を越えて迷走する電流損失を最小化するために、絶縁支持体の自由端から分離されている。
【0059】
図3(a)に示すように、本発明によるカフ電極は、トリポーラであり得る、すなわち3つの電極を備え得る(図3(a)では、電極の存在を記号(+)、(-)で示す)。トリポーラカフ電極は、電流がカフ内に閉じ込められるため、周囲の組織及び流体における電流損失を減らすという点で、バイポーラカフ電極(すなわち、2つの電極を備える)よりも有利である。
【0060】
電極(61)は、導電性の材料で作られ、生体適合性があり、生理学的環境下で長期的に安定している必要がある。典型的には、電極の接点には、金、白金、イリジウム、及びそれらの合金が使用され得る。電極は、迷走神経の周囲の一部又は全体を囲む連続したストライプ状とすることができる。金属ストライプは、カフの内面(64d)に接着若しくは溶接できる、又は2層の絶縁材料間に挟むことができ、内面(64d)を備える内側層には内面において金属ストライプを露出させる窓が設けられる。電極はまた、絶縁支持体の内面(64d)上に印刷又は他の方法で(例えば、物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)により)堆積させることができる。
【0061】
まっすぐな金属ストライプは伸張させることができず、これにより迷走神経のサイズの変化に適応するというセルフカーリング及び螺旋カフ電極の利点が損なわれるため、図7(a)及び図7(b)に示すようなまっすぐなストライプの代わりに、図3(b)の電極(61)に示すように蛇行を形成するストライプを使用することが有利である。
【0062】
オプトロード(62)
図7(c)及び図7(d)に示すように、電極(61)の代わりに、又はこれに加えて、絶縁支持シートには、1つ又は複数の光学接点(62)を設けることができる。本明細書において定義されている光学接点は、光エミッタ若しくは光センサ、又はこれらの両方とすることができる。いくつかの用途においては、光の放出による組織の刺激は、主には、組織の局所的な加熱に起因すると考えられる。このような用途の場合には、光学接点によって導かれた光が、赤外線範囲内である、好ましくは750~3000nm、更に好ましくは1200~1800nmの範囲にあることが好ましい。ただし、本発明のカフオプトロードは、任意の波長の光ビームと共に使用することができる。
【0063】
光学接点は光ファイバの端部とすることができ、光ファイバの端部は、光線を迷走神経の詳細な領域に向けて集束させるために、面取りされているか、レンズ、ミラー、若しくは他の微小光学部品に結合されている。光ファイバは、図7(d)に示すように、ハウジング(50h)と、ハウジング(50h)内に収容されたエネルギーパルス発生器(51s)とに直接結合され得る。或いは、図7(c)に示すように、カフの外面に配置された発光素子(5Ld)が、ハウジング内に配置された電気パルスを発生するエネルギーパルス発生器によって給電され得る。エネルギーパルス発生器は、導電体(41e)(例えば、導線)によって発光素子に電気的に結合され得る。発光素子(5Ld)は、迷走神経に向けて光を導くために、光ファイバ(41f)又は1つ若しくは複数のレンズに結合され得る。発光素子(5Ld)は、カフが巻かれている組織と直接光学的に接触するなどのために絶縁シートに取り付けられたLED、VCSEL、又は他のレーザダイオードとすることができる。絶縁シートが、光学接点によって放出される光の波長に対して透明である場合、光は、光学接点を絶縁シートの内面(64d)から隔てる絶縁シートの厚さを透過し得る。絶縁シートが光エネルギーの効率的な伝達のために十分に透明ではない場合、絶縁シートの内面に窓を設けて光学接点を露出させることができる。
【0064】
フィードバックユニット(71)
図7に示す好ましい実施形態では、迷走神経結合ユニット(60)が、2つの電極(61)間に流れる電流によって、又は迷走神経結合ユニット(60)のオプトロード(62)により放出される光によって作動するパルスフィードバックユニット(71)を備える。埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)は、パルスフィードバックユニット(71)からの電気エネルギー又は光エネルギーを封入ユニットに封入され、且つ埋め込まれたコントローラ(54)に結合されたフィードバックセンサ(171)に伝達するための導電体(41e)又は光ファイバ(41f)を備える。埋め込まれたコントローラが(54)、パルスフィードバックユニットが作動されたことを通知するフィードバック信号を外部制御ユニットに結合された外部レシーバ(153r)に送信するための埋め込まれたエミッタ(53e)に結合される。外部制御ユニット(150)は、制御エネルギーパルスが迷走神経に実際に送達された実際の送達時間tvを表す送達信号時間tdを保存するように構成される。検出信号時間tdは、埋め込まれたエミッタ(53e)からのフィードバック信号を外部レシーバによって、及び外部制御ユニットによって受信される時間として定義される。送達信号時間tdは図6に示されている。
【0065】
図7(a)及び図7(b)に示す迷走神経結合ユニット(60)は、結合されている迷走神経と共に刺激電気回路を形成する第1及び第2の電極(61)を少なくとも備える。パルスフィードバックユニット(71)は、刺激電気回路と並列に、フィードバックセンサ(171)とエネルギー連通するフィードバック電気回路を備える。図7(a)は、刺激電気回路に流れる電流によって給電されると光を放出するLEDなどの光源(5Ld)を示している。光源(5Ld)は、光センサであるフィードバックセンサ(171)と光ファイバ(41f)を介して光学的に接触している。図7(b)は、フィードバック電気回路が、導電体(41e)を介してフィードバックセンサ(171)に電気的に結合されていることを示している。
【0066】
図7(c)及び図7(d)に示す別の実施形態では、迷走神経結合ユニット(60)は少なくとも1つのオプトロード(62)を備え、パルスフィードバックユニット(71)は、迷走神経を透過又は散乱した光エネルギーを受信するための集光器(71c)を備える。集光器(71c)は、このようにして受信した光を集束させる1つ又は複数のレンズとすることができ、埋め込まれたコントローラのフィードバックセンサ(171)に結合される。図7(c)は、集光器が光ファイバ(41f)(破線で表す)を介して、光センサであるフィードバックセンサ(171)と光学的に連通している状態を示している。図7(d)は、集光器(71c)が、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光起電力セル(5pv)に結合され、電気エネルギーが導線などの導電体(41e)を介してフィードバックセンサ(171)に輸送される実施形態を示している。
【0067】
パルスフィードバックユニット(71)をフィードバックセンサ(171)に結合する光ファイバ(41f)及び/又は電気導線(41e)は、エネルギーパルス発生器(51s)を迷走神経結合ユニット(60)に結合する光ファイバ(41f)及び/又は導電体(41e)と一緒にシース内に封入されていることが好ましく、これにより、埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)が形成される。
【0068】
AIMD:埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)
埋め込まれたエネルギー伝達ユニットの性質は、使用されるエネルギーパルス発生器(51s)のタイプ、及び迷走神経結合ユニット(60)が電極、オプトロード、又はその両方の何れを備えているかに依存する。
【0069】
図7(b)及び図7(c)は、電気パルスを発生させるエネルギーパルス発生器(51s)を示しており、電気パルスは導電体(41e)によって迷走神経結合ユニット(60)に輸送される。本発明では、用途に応じて、当技術分野で知られている任意の標準的な導電体が使用され得る。図7(b)に示すように、迷走神経結合ユニット(60)が電極(61)を備える場合、導電体(41e)が電極に直接結合されて、迷走神経と共に電気回路を形成し得る。一方、図7(c)の場合のように迷走神経結合ユニット(60)がオプトロード(62)を備える場合、導電体(41e)が発光素子(5Ld)に電気的に結合されて、迷走神経の表面上に向けた光パルスを発生させるように給電し得る。
【0070】
図7(a)及び図7(d)は、光パルスを発生させるエネルギーパルス発生器(51s)を示しており、光パルスは1つ又は複数の光ファイバ(41f)によって迷走神経結合ユニット(60)に輸送される。図7(d)に示すように、迷走神経結合ユニット(60)がオプトロード(62)を備える場合、1つ又は複数の光ファイバ(41f)が迷走神経の表面に直接光学的に結合され得る。一方、図7(a)の場合のように迷走神経結合ユニット(60)が電極(61)を備える場合、1つ又は複数の光ファイバ(41e)が、光パルスエネルギーを電気パルスエネルギーに変換するための光起電力セル(5pv)に光学的に結合されて、電気パルスエネルギーを電極(61)に供給し、迷走神経(Vn)を含む電気回路を形成し得る。
【0071】
外部コントローラ装置(ECD)(100)
外部コントローラ装置は、迷走神経(Vn)の活性化の非侵襲的なモニタリングを可能にするため、本発明の要部である。外部コントローラ装置は、喉頭電極ユニット(160)と、外部エネルギー伝達ユニット(141)と、外部制御ユニット(150)とを備える。外部コントローラユニットは、埋め込まれたAIMDの機能をテストするため、及びエネルギーパルスの許容可能なパラメータセットを決定するためにのみ使用される。
【0072】
ECD:喉頭電極ユニット(160)
喉頭電極ユニット(160)の実施形態が図4に示されている。喉頭電極ユニット(160)は、電気的に絶縁性であり、患者の喉頭領域(Lx)の形態に適合するように好ましくは可撓性を有する支持シート(164)を備え得る。図4(a)に示す支持シートは、突出した喉頭を包み込むための陥凹部を備える周縁部を有し、図4(b)の支持シートは2つの別個のパッチに分割されている。或いは、喉頭領域において電極を支持するのに適した任意の他の幾何学的形状が適用され得る。例えば、心電図などに一般に使用されているような多くのEEG電極及びECG電極が喉頭電極ユニット(160)での使用に適している。支持シートは、織物、編物、又は不織布のファイバ、好ましくはポリマーファイバの布地で作られてもよいし、可撓性のポリマー材料、好ましくはシリコーン又はポリウレタンエラストマなどのエラストマで作られてもよい。
【0073】
支持シート(164)は、2つの電極(161)(又はそれ以上)を支持する内面を備える。図5に示すように、喉頭電極ユニット(160)は、2つ以上の喉頭電極(161)が、喉頭神経(Ln)又は喉頭筋、好ましくは内喉頭筋、例えば輪状甲状筋、輪状披裂筋(後輪状披裂筋又は外側輪状披裂筋)、甲状披裂筋、又は披裂筋(斜披裂筋又は横披裂筋)の上で患者の皮膚に接触するように喉頭領域(Lx)に配置される。(輪状甲状筋を除く)すべての内喉頭筋は、迷走神経(Vn)の枝である反回喉頭神経の終末枝である下喉頭神経によって支配されている。輪状甲状筋は、これも同様に迷走神経から生じている上喉頭神経の外枝によって支配されている。喉頭電極(161)は喉頭筋を伝播する電気信号を記録する。
【0074】
図5に示すように、1つ又は複数の導電体又は光ファイバを備える外部エネルギー伝達ユニット(141)は、喉頭電極によって記録された喉頭の電気的活動を表す電気信号又は光信号を、外部制御ユニット(150)又は外部制御ユニット(150)と通信する中間コントローラ(150a)に確実に伝達する。中間コントローラ(150a)と外部制御ユニットとの間の通信は、配線(導電体又は光ファイバ)を介して行うこともできるし、好ましくはRF及びBluetoothなどの無線送信手段によって行うこともできる。図4(a)に示すように、増幅器(A)が信号の強度を高めるために使用され得る。フィルタも適用され得る。図3(b)は、外部エネルギー伝達ユニット(141)が光ファイバを備える実施形態を示している。喉頭電極は、光信号を伝達するために光ファイバと光学的に接触しているLEDに結合され得る。ここでも同様に、増幅器(A)(図示せず)が光信号を強化するために使用され得る。
【0075】
喉頭領域(Lx)において喉頭電極(161)を安定させるため、また喉頭領域との最適な接触を確保するために、支持シート(164)の内面には、支持シートの周縁部の少なくとも一部に沿って延びる、又は内面の領域の一部若しくは全部にわたって延びる接着剤層(166)が設けられ得る。接着剤は、感圧性接着剤(PSA)又は医療用の粘着テープ若しくは絆創膏に使用される任意の接着剤とすることができる。
【0076】
ECD:外部制御ユニット(150)
外部制御ユニットは、
●制御エネルギーパルスの制御パルスパラメータを入力するための設定ユニット(151)と、
●埋め込まれたレシーバ(53r)に信号を送信するように構成された外部エミッタ(153e)と、
●外部エネルギー伝達ユニット(141)によって伝達された電気信号又は光信号を視覚表示(155)又は聴覚表示(157)に変換する変換器と、
を備える。
【0077】
外部制御ユニット(150)はまた、埋め込まれたエミッタ(53e)からの信号を受信するための外部レシーバ(153r)を備え得る。
【0078】
設定ユニット(151)は、図5(a)及び図5(c)に示すようなパーソナルコンピュータ又はラップトップなどに統合されてもよいし、図5(b)に示すようなタブレット又はスマートフォンに統合されてもよい。設定ユニットは、図2(b)に定義されているように、強度(I1、I2)、持続時間(d1、d2)、数(N)、送達の周波数(f1、f2)、パルスの形状などのうちの1つ又は複数を含む制御パルスパラメータセットを入力し、記憶するように構成される。制御パルスパラメータセットは、その目的が治療ではなく単に制御である点で、治療用のパルスパラメータセットとは異なる。特に、制御パルスパラメータセットは、埋め込まれたAIMDが機能しているか否か、そして迷走神経にエネルギーパルスを供給するために適切に結合されているか否かを評価するために使用される。また、活性化閾値強度を決定するためにも使用することができる。活性化閾値強度を下回ると、検出可能な複合活動電位が迷走神経に沿って伝播されない。例えば、治療用のパルスパラメータセットが、所与の持続時間(d1、d2)及び所与の形状の連続する一連のN個のパルスを含み得る場合、制御パルスパラメータセットは、一般に単一のパルス、又は単一の一連のn個のパルス(n<N)を含む。
【0079】
治療用のパルスパラメータセットが、患者に対する治療効果を持ち、事前定義された治療計画に従わなければならないとき、制御パラメータセットは、治療計画に従う必要はなく、治療効果もない。制御パラメータセットは、活動電位が迷走神経に沿って、且つ喉頭神経に沿って伝播するように迷走神経を活性化すればよい。すべての制御パラメータが対応する閾値を上回る場合、AIMDが機能していることを表す電気信号が喉頭領域Lxにおいて測定され得る。
【0080】
外部エミッタ(153e)は、設定ユニット(151)に結合され、設定ユニット(151)において入力された制御パルスパラメータによって定義された1つ又は複数の制御エネルギーパルスをエネルギーパルス発生器(51s)によって迷走神経結合ユニット(60)へ送達することをトリガするように埋め込まれたコントローラ(54)に命令する信号を埋め込まれたレシーバ(53r)に送信するように構成される。外部エミッタによって送信された信号は、電磁信号、好ましくはRF信号又は350~1600nmの波長範囲にある光信号である。外部エミッタ(153e)と埋め込まれたレシーバ(53r)との間の光信号については、埋め込まれたレシーバ(53r)を患者の皮膚にできるだけ近づけて配置することが好ましく、患者の皮膚の外面からの距離が20mm以下、好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下であることが望ましい。
【0081】
変換器は、外部エネルギー伝達ユニット(141)によって喉頭結合ユニット(60)から外部制御ユニット(150)に(直接又は中間コントローラ(150a)を介して)伝達された電気信号又は光信号を喉頭の電気的活動の強度を示す視覚表示(155)又は聴覚表示(157)に変換するように構成される(図5を参照)。そのような信号の視覚表示の一例が図6に示されており、制御パルス(V1、V2)(=実線)及び喉頭電極(161)によって検出された対応する電気信号(L1、L2)(=破線)の2つの例を示している。制御パルス(V1)では、制御パルス(V1)の伝播に対応する検出可能な喉頭ピーク(L1)は得られなかった。対照的に、制御パルス(V2)では、喉頭電気信号に明確なピーク(L2)が得られた。このように表示されたピークの大きさは、喉頭電極によって記録された電気信号の大きさに比例する。
【0082】
好ましい実施形態では、埋め込まれたコントローラが、エネルギーパルス発生器(51s)によって制御エネルギーパルスが送達されたことを通知する信号を外部制御ユニット(150)に送信するための埋め込まれたエミッタ(53e)を備える。外部コントローラは、対応する送達信号時間tdを保存し得る。埋め込まれたエミッタはまた、上述のパルスフィードバックユニット(71)によって評価されたように制御エネルギーパルスが迷走神経結合ユニット(60)に到達したことを通知する信号を外部制御ユニット(150)に送信し得る。外部制御ユニットは、埋め込まれたエミッタ(53e)によって送信された信号を受信するための外部レシーバ(153r)を備え、外部制御ユニットは、トリガ時間t0、送達信号時間td、及びフィードバック時間tfを保存するように構成され得る。トリガ時間t0及び送達信号時間tdは両方とも制御エネルギーパルスが迷走神経に送達された時刻tvを表す。図6に示すように、
●トリガ時間t0は、1つ又は複数の制御エネルギーパルスを送達するように信号が命令する外部エミッタ(153e)によって埋め込まれたレシーバ(53r)に送信された時間であり、
●送達信号時間tdは、エネルギーパルス発生器(51s)によってエネルギーパルスが送達されたことを通知する埋め込まれたエミッタ(53e)からの信号が外部レシーバ(153r)によって受信された時間である。
●フィードバック時間tfは、エネルギーパルスが迷走神経結合ユニット(60)に到達したことを通知する埋め込まれたエミッタ(53e)からの信号が外部レシーバ(153r)によって受信された時間である。この情報は、図7に関連して上述したパルスフィードバックユニット(71)及びフィードバックセンサ(171)を介して生成されている。
【0083】
トリガ時間t0を把握することにより、エネルギーパルスが迷走神経結合ユニット(60)に送達された送達時間tvを(トリガ遅延δt0の判定により)高い精度内で判定することができる(図6を参照)。トリガ時間遅延t0は、設定ユニット(151)と埋め込まれたコントローラ(54)との間の通信速度、並びにエネルギーパルス発生器にエネルギーパルスを送達するよう命令するための埋め込まれたコントローラ(54)の処理時間、及び埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)に沿った伝播速度に依存する。
【0084】
送達信号時間tdを把握することにより、(a)エネルギーパルス発生器(51s)によって制御エネルギーパルス(V1、V2)が送達されたことを確認し、(b)送達信号時間遅延δtdの判定により送達時間tvの判定の精度を高める。送達信号時間遅延δtdは、パルスフィードバックユニット(71)とフィードバックセンサ(171)との間のエネルギー伝達速度、及び埋め込まれたコントローラ(54)と外部コントローラ(150)との間の通信時間に依存する。一般に、δt0及びδtdはどちらもミリ秒単位である。
【0085】
心電図
心臓活動は必然的に喉頭電極(161)によって記録される。心電図の信号は喉頭活動の信号をマスクすることがある。この理由から、本キット・オブ・パーツは、外部制御ユニット(150)に結合された、患者の心電図を測定するための装置を更に備え得る。本装置は、心電図を測定するための別個の装置においてもよい、又は好ましくは喉頭電極(161)によって形成される。或いは、本装置は、迷走神経結合ユニット(60)に関連して封入ユニットに収容されてもよい。本装置は外部制御ユニットに接続され、外部制御ユニットは、喉頭の電気的活動(L1、L2)が検出される喉頭信号時間tlxが心電図の等電期に対応するように、迷走神経結合ユニット(60)に1つ又は複数の制御エネルギーパルスを送達するための信号を送信するためのトリガ時間t0を同期させるように構成され得る。心電図における等電期は秒単位であるが、トリガ時間t0と喉頭信号の検出時間tlxとの間の時間遅延Δtは、ミリ秒単位、長くてもセンチ秒単位である。トリガ時間t0又は喉頭信号時間tlxの同期を実現するのは容易である。等電期は、S波の終わりからT波の始まりまでの期間STと、T波の終わりからP波の始まりまでの期間TPとの両方で定義される、つまり、電気的な力が異なる方向に作用して互いに中和されるため、電位が記録されない時である。
【0086】
迷走神経に結合されたAIMDのパラメータを調整するための方法
本発明はまた、患者の迷走神経に結合された埋め込まれた刺激装置のパラメータを調整するための方法に関する。本方法は、図8のフローチャートに示されている以下のステップを含む。
(a)上で定義された埋め込み式刺激装置(10)を身体内に埋め込まれた患者を、迷走神経結合ユニット(60)が患者の迷走神経(Vn)に結合された状態で準備するステップ、
(b)上で定義された外部コントローラ装置(100)を準備し、喉頭電極ユニット(160)を喉頭領域(Lx)において患者の皮膚に結合するステップ、
(c)制御エネルギーパルス(V1、V2)を定義するパラメータセットを設定ユニット(151)に入力するステップ、
(d)外部エミッタ(153e)によって、パラメータセットによって定義された1つ又は複数の制御エネルギーパルス(V1、V2)を迷走神経結合ユニット(60)に送達するようにエネルギーパルス発生器(51s)に命令する信号を埋め込まれたレシーバ(53r)に送信するステップ、
(e)制御エネルギーパルスが迷走神経に送達された送達時間tvを表すトリガ時間t0を定義するステップにおいて、t0が、1つ又は複数の制御エネルギーパルスを送達するために外部エミッタ(153e)によって埋め込まれたレシーバ(53r)に信号が送信された時間として定義される、ステップ、
(f)事前定義された制御時間範囲Δt±δt(ただしδt<Δt)だけトリガ時間t0から遅延した喉頭の電気的活動(L1、L2)を喉頭電極ユニット(141)が記録するか否かを制御するステップ。
【0087】
トリガ時間t0と喉頭信号時間tlxとの間の遅延Δtは、一方では、エミッタとレシーバとの間の情報伝達速度、コントローラの処理速度、及び埋め込まれたエネルギー伝達ユニットに沿ったエネルギーパルスの伝達速度を含むAIMD関連の問題に起因し、他方では、迷走神経及び分岐した喉頭神経に沿った複合活動電位の伝播速度を含む生理学的な理由に起因する。図6では、この生理学的遅延(場合により潜時と呼ばれる)をΔtpと呼ぶ。
【0088】
生理学的遅延時間Δtpは、重要な臨床的意義を有する重要な測定値である。所与の生理学的遅延値は、実際に、迷走神経結合ユニット(60)を喉頭領域Lxから隔てる神経の長さに応じて、健康な神経から実際に予期される。予期される値よりも長い生理学的遅延は、神経が健康な状態ではなく、多かれ少なかれ脱髄していることを示す。予期される値よりも短い生理学的遅延は、喉頭電気信号が制御エネルギーパルスの送達に由来するものではない可能性を示し得る。
【0089】
本方法は、
●埋め込まれたAIMDが適切に機能し、正しく埋め込まれているか否か、またそのとき、
●エネルギーパルス発生器(51s)によって良好な制御パラメータセットのエネルギーパルス(V1、V2)が迷走神経結合ユニット(60)に送達されているか否か、
●エネルギーパルスが複合活動電位を発生させ、複合活動電位が迷走神経及び喉頭神経に沿って喉頭領域Lxに伝播しているか否か
を評価することを可能にする。
【0090】
図8に示すように、ステップ(f)→Nのとき、エネルギーパルス(V1)に起因する喉頭の電気的活動(L1)が伝播時間範囲Δt±δt内に記録されない場合、本方法は、第2の制御エネルギーパルス(V2)を定義する第2のパラメータセットを設定ユニット(151)に入力する更なるステップを含み、第2のパラメータセットを用いてステップ(d)~(f)を繰り返す。図6は、エネルギーパルスV1、V2の送達の結果として得られる喉頭の電気的活動L1、L2の2つの表示を示しており、エネルギーパルスの2つの異なる強度値で互いに異なる2つの制御パラメータセットによって特徴付けられている。エネルギーパルスV1は、エネルギーパルスV1に起因する喉頭の電気的活動L1が伝播時間範囲Δt±δt内で記録され得ないような強度を有する。これにはいくつかの理由があり得る。例えば、第1の理由として、エネルギーパルスV1が本質的に強度閾値を下回る強度値を有することが挙げられる。第2に、迷走神経結合ユニットと迷走神経との間の接触が最適でないために強度活性化閾値の値が増加する場合がある。第3に、患者の迷走神経が障害されている場合がある。第4に、エネルギーパルス発生器(51s)によってエネルギーパルスが送達されていないか、エネルギーパルスが迷走神経結合ユニット(60)に到達していないことである。
【0091】
図8に示すように、(f)→Yであり且つ(g)において、喉頭の電気的活動(L1、L2)が伝播時間範囲Δt±δt内で記録された場合、本方法は、上記喉頭の電気的活動を事前定義された満足度の基準と比較する更なるステップを含む。
【0092】
図8に示すように、(g)→Nのとき、このようにして記録された喉頭の電気的活動(L1、L2)が事前定義された基準を満たさない場合、本方法は、新しい制御エネルギーパルスを定義する新しいパラメータセットを設定ユニット(151)に入力し、新しいパラメータセットを用いてステップ(d)~(f)を繰り返すステップを含む。これらの操作は、事前定義された基準を満たす喉頭の電気的活動(L1、L2)が検出されるまで繰り返される。
【0093】
図8に示すように、(g)→Yであり且つ(h)において、このようにして記録された喉頭の電気的活動(L1、L2)が事前定義された基準を満たす場合、本方法は、制御エネルギーパルスの対応するパラメータセットを、これを良好な制御パラメータセットとして保存するために埋め込まれたコントローラ(54)に送信し、良好な制御パラメータセットに基づいて治療用のパラメータセットが治療計画に適合するように定義され得るステップを含む。
【0094】
パラメータセットは、パルス周波数、パルス振幅、パルス持続時間、パルス間隔、パルス数のうち1つ又は複数を含み得る。ステップ(c)において入力された所与のパラメータセットは保存されたパラメータセットを形成するためにメモリに保存され得る。ステップ(d)において、エネルギーパルス発生器(51s)は、保存されたパラメータセットによって定義されるように、迷走神経結合ユニット(60)に制御エネルギーパルス(V1、V2)を順次複数回送達するように命令され得る。
【0095】
所与のパラメータセットによって定義された1つ又は複数の制御エネルギーパルス(V1、V2)を迷走神経結合ユニットに送達するようにエネルギーパルス発生器(51s)に順次N回命令することによって、また喉頭電極ユニット(160)によって喉頭の電気的活動(L1、L2)を記録することによって、喉頭の電気的活動(L1、L2)がステップ(f)のN回の繰り返しにわたって平均され得、Nは1より大きい自然数である。このようにして、信号対雑音比を大幅に高めることができる。
【0096】
上述のように、また心臓活動が喉頭電気信号(L1、L2)と干渉するのを防ぐために、患者の心電図が測定され、外部制御ユニット(150)又は埋め込まれたコントローラ(54)に伝達され得る。次いで、外部制御ユニット(150)又は埋め込まれたコントローラ(54)は、迷走神経結合ユニット(60)への1つ又は複数の制御エネルギーパルスの送達を、患者の心周期の等電期に対応するように同期し得る。外部制御ユニット(150)によって同期が制御されている場合は、それに応じてトリガ時間t0が設定される。換言すれば、外部制御ユニット(150)は、オペレータが命令を送信した瞬間に対して、埋め込まれたコントローラ(54)への命令の発信を、信号の送達が患者の心電図と同期され得るまで遅延させることを決定し得る。一方、同期が埋め込まれたコントローラ(54)によって制御される場合、トリガ時間t0が明確に設定され、オペレータが命令を送信するとすぐに埋め込まれたコントローラ(54)に命令が出されるが、埋め込まれたコントローラ(54)は、対応する喉頭電気信号が心電図と干渉しないことを確実にするために、エネルギーパルスの送達を遅延させることを決定し得る。
【0097】
患者の心電図に対してエネルギーパルスの送達を同期させることにより、トリガ時間遅延δt0(図6を参照)の変動が発生する。このような状況では、送達信号時間tdを外部制御ユニット(150)に通知するのに適したパルスフィードバックユニット(71)は、送達時間tv、ひいては喉頭電気信号(L1、L2)が予期される期間tlx±δをより良く定義するのに有利である。
【0098】
概要及び利点
本発明は、迷走神経の刺激による様々な疾患の治療に関連するいくつかの明確な問題に対して、簡素且つ確実な解決策を提供する。このような治療が成功するためには、いくつかの条件が組み合わされて満たされる必要がある。1つ欠けても全体が乱れることになる。AIMDは身体内に埋め込まれ、アクセスできないため、不具合の原因を特定することは困難である。刺激された神経は、いくつかの原因で活性化しない場合がある。
●エネルギーパルス発生器(51s)に欠陥がある場合もあれば、バッテリの残量が少ない場合もある、又は
●迷走神経結合ユニット(60)へのエネルギーパルスの伝達が妨げられている場合もある。
●次に、AIMDが完璧に機能していても、迷走神経結合ユニット(60)が迷走神経(Vn)とエネルギーパルスを迷走神経に伝達するのに最適に結合していない場合がある。管状カフは、例えば、緩すぎる場合もあれば逆に折りたたまれている場合もある。
●制御刺激パルスを特徴付ける1つ又は複数の制御パラメータの値が、上記パラメータの活性化閾値を下回っている場合がある。活性化閾値は、実際には患者ごとに、また同じ患者でも時間と共に変化し得る。迷走神経結合ユニットが上述のように多かれ少なかれ緩く埋め込まれ得るという事実によって、患者ごとの活性化閾値のばらつきが大きくなり、迷走神経の生理学的な活性化閾値に加えなければならない。したがって、活性化強度未満で治療を行った場合、治療全体が無駄になる。
●最後に、迷走神経が、安全範囲内の強度のエネルギーパルスに反応しなくなる(すなわち、活性化閾値が安全範囲よりも高い)点まで障害されている場合がある。この状況はAIMDとは全く関係ないが、それでもこの治療全体が無駄になる。
【0099】
本発明により、埋め込まれたAIMDが良好に機能していること及び神経の健康状態を定期的に評価することが可能になる。上記のような不具合が現れた場合、本発明により不具合の原因を判別することが可能になる。本発明はまた、治療計画の実施に適した治療用のパラメータセットを決定することもできる。
【0100】
本発明により、埋め込まれたAIMDが作動状態にあるか否かを評価することができる。外部制御ユニット(150)から命令を受信すると、埋め込まれたコントローラ(54)は、エネルギーパルス発生器(51s)によってエネルギーパルスが送出されたことを外部コントローラに通知することができる。これにより、封入ユニット(50)内に問題があるか否かを判定することができる。
【0101】
パルスフィードバックユニット(71)は、封入ユニットのハウジング(50h)に収容されたエネルギーパルス発生器(51s)から送達されたエネルギーパルスが迷走神経結合ユニット(60)に到達したことを通知することができる。これにより、埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)及び/又は迷走神経結合ユニット(60)内に問題があるか否かを判定することができる。
【0102】
エネルギーパルス(V1、V2)の送達に対応する喉頭電気信号(L1、L2)が検出されることは、迷走神経結合ユニットの迷走神経への結合が良好であること、及び迷走神経がエネルギーパルスに反応していることをオペレータに知らせる。
【0103】
また、本発明の大きな利点として、オペレータが制御パルスの送達時間tvを制御し、喉頭信号(L1、L2)がtlx±δの範囲で予期される時を把握するという事実が挙げられる。喉頭信号がこの範囲を大幅に逸脱して検出された場合、そのことは、問題があることを表している、又は制御パルスの送達とは別の原因があると判断できる。対照的に、多くの従来技術の装置は、埋め込まれたコントローラにプログラムされた治療用のパラメータセットに従って治療用パルスを送達することに依拠し、これに対してオペレータが直接制御することはできない。したがって、オペレータは、喉頭信号時間tlx±δは言うまでもなく、送達時間tvについても正確に把握できない。
【0104】
最後に、記録された喉頭の電気的活動(L1、L2)を事前定義された満足度の基準と比較することによって、良好な制御パラメータセットを定義することができ、このパラメータは、施術者によって確立された治療計画を実施するための治療用のパラメータセットを定義するために使用され得る。
【0105】
喉頭電極ユニット(160)は極めて小型且つ軽量であり、喉頭領域(Lx)との結合は容易であり、患者にとって非常に快適である。受信した信号は、信頼性が高く、定量的で、治療用のパラメータセットの決定を可能にする。
【符号の説明】
【0106】
5Ld 光源(LED)
5pv 光起電力セル
10 AIMD
41 埋め込まれたエネルギー伝達ユニット
41e 導電体
41f 光ファイバ
50 封入ユニット
50h ハウジング
51s エネルギーパルス発生器
52 電源
53e 埋め込まれたエミッタ
53r 埋め込まれたレシーバ
54 埋め込まれたコントローラ
60 迷走神経結合ユニット
61 電極
62 オプトロード
64 絶縁支持体
64d 内面
64u 外面
71 パルスフィードバックユニット
71c 集光器
100 外部コントローラ装置
141 外部エネルギー伝達ユニット
150 外部制御ユニット
150a 中間コントローラ
151 設定ユニット
153e 外部エミッタ
153r 外部レシーバ
155 視覚表示
157 聴覚表示
160 喉頭電極ユニット
161 喉頭電極
164 支持シート
166 接着剤
171 フィードバックセンサ
A 増幅器
d1、d2 エネルギーエネルギーパルスの持続時間
Dc 管状カフの内径
f1、f2 エネルギーパルス周波数
I1、I2 エネルギーパルス強度
L 管の軸に沿ったカフ長さ
L1、L2 喉頭電気信号
Ln 喉頭神経
Lx 喉頭領域
N 管状カフの折れ曲がりの数
R 回復パルス
S 刺激パルス
t0 トリガ時間
td 送達信号時間
tf フィードバック信号時間
tlx 喉頭信号時間
tv 送達時間
V1、V2 エネルギーパルス
Vn 迷走神経
δ 喉頭電気信号の記録の予期される期間の半区間
δt0 トリガ時間遅延、tv-t0
δtd 送達時間遅延、td-tv
δtf フィードバック時間遅延、tf-tv
Δt トリガ時間と喉頭信号時間との間の遅延、tlx-t0
Δtp 生理学的遅延、tlx-tv
図1(a)】
図1(b)】
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図7(d)】
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込まれた刺激装置による迷走神経への電気パルス又は電磁パルスの送達の制御のためのキット・オブ・パーツにおいて、前記キット・オブ・パーツが、
(a)埋め込み式刺激装置(10)において、
●治療される患者の迷走神経(Vn)に直接結合されるのに適したカフを形成する絶縁支持体(64)に取り付けられた電極(61)及び/又はオプトロード(62)を備える迷走神経結合ユニット(60)と、
●前記迷走神経結合ユニット(60)から離れた位置において皮下に埋め込まれるのに適し、ハウジング(50h)を備える封入ユニット(50)において、前記ハウジング(50h)が、
○電気エネルギー又は光エネルギーを含むエネルギーパルスを送達するためのエネルギーパルス発生器(51s)と、
○前記エネルギーパルス発生器(51s)を作動させるための電源(52)と、
○前記迷走神経結合ユニットへエネルギーパルスを送達するように前記エネルギーパルス発生器に命令するように構成された埋め込まれたコントローラ(54)と、
○外部エミッタ(153e)からの信号を受信するための埋め込まれたレシーバ(53r)と、
を封入する、封入ユニット(50)と、
●前記封入ユニットの前記エネルギーパルス発生器(51s)と前記迷走神経結合ユニット(60)との間において電気エネルギー及び/又は光エネルギーを伝達するための1つ又は複数の導電体(41e)及び/又は光ファイバ(41f)を備える、埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)と、
を備える、埋め込み式刺激装置(10)と、
(b)外部コントローラ装置(100)において、制御エネルギーパルスの制御パルスパラメータを入力するための設定ユニット(151)を有する外部制御ユニット(150)を備える、外部コントローラ装置(100)とを備え、
前記外部コントローラ装置(100)が、
●喉頭領域(Lx)の高さで患者の首の皮膚に結合されるのに適し、前記喉頭領域における喉頭の電気的活動を測定するのに適した喉頭電極(161)を備える喉頭電極ユニット(160)と、
●前記喉頭電極ユニットからの電気信号又は光信号を外部制御ユニット(150)又は前記外部制御ユニット(150)と通信する中間コントローラ(150a)に伝達するための1つ又は複数の導電体又は光ファイバを備える外部エネルギー伝達ユニット(141)において、前記電気信号又は光信号が、前記喉頭領域において測定された喉頭の電気的活動を表す、外部エネルギー伝達ユニット(141)とを備え
記外部制御ユニット(150)が
●前記設定ユニット(151)において入力された前記制御パルスパラメータによって定義された1つ又は複数の制御エネルギーパルスを前記迷走神経結合ユニット(60)へ送達するように前記エネルギーパルス発生器(51s)に命令するように前記埋め込まれたコントローラ(54)に命令する信号を前記埋め込まれたレシーバ(53r)に送信するように構成された外部エミッタ(153e)と、
●前記外部エネルギー伝達ユニットによって伝達された電気信号又は光信号を前記喉頭領域において測定された前記喉頭の電気的活動の強度を示す視覚表示(155)又は聴覚表示(157)に変換する変換器と
を備えることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項2】
請求項1に記載のキット・オブ・パーツにおいて、
●前記埋め込まれたコントローラが、前記エネルギーパルス発生器(51s)によって制御エネルギーパルスが送達されたことを通知する信号を前記外部制御ユニット(150)に送信するための埋め込まれたエミッタ(53e)を備え、
●前記外部制御ユニットが、
○制御エネルギーパルスが前記迷走神経に送達された時間tvを表すトリガ時間t0を保存するように構成され、t0が、1つ又は複数の制御エネルギーパルスを送達するために前記外部エミッタ(153e)によって前記埋め込まれたレシーバ(53r)に前記信号が送信された時間であり、
○前記埋め込まれたエミッタ(53e)によって送信された信号を受信し、制御エネルギーパルスが前記迷走神経に送達された送達時間tvを表す送達信号時間tdを保存するための外部レシーバ(153r)を備え、tdが、前記エネルギーパルス発生器によって制御エネルギーパルスが送達されたことを通知する、前記埋め込まれたエミッタによって送信された前記信号を前記外部レシーバが受信した時間であることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキット・オブ・パーツにおいて、
●前記迷走神経結合ユニット(60)が、2つの電極(61)間に流れる電流によって、又は前記迷走神経結合ユニット(60)のオプトロード(62)により放出される光によって作動するパルスフィードバックユニット(71)を備え、
●前記埋め込まれたエネルギー伝達ユニット(41)が、前記パルスフィードバックユニット(71)からの電気エネルギー又は光エネルギーを前記封入ユニットに封入され、且つ前記埋め込まれたコントローラ(54)に結合されたフィードバックセンサ(171)に伝達するための導電体(41e)又は光ファイバ(41f)を備え、
●前記埋め込まれたコントローラが(54)、前記パルスフィードバックユニットが作動されたことを通知する信号を前記外部制御ユニットに送信するための埋め込まれたエミッタ(53e)に結合され、
●前記外部制御ユニット(150)が、前記埋め込まれたエミッタによって送信された前記信号を受信するための外部レシーバ(153r)を備え、制御エネルギーパルスが前記迷走神経に実際に送達された実際の送達時間tvを表すフィードバック信号時間tfを保存するように構成されることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項4】
請求項3に記載のキット・オブ・パーツにおいて、前記迷走神経結合ユニットが電極(61)を備え、前記パルスフィードバックユニット(71)が、導電体(41e)によって、又は発光ダイオード(LED)(5Ld)に結合された光ファイバ(41f)によって前記フィードバックセンサ(171)に接続されたフィードバック電気回路を備えることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項5】
請求項3に記載のキット・オブ・パーツにおいて、前記迷走神経結合ユニットが少なくともオプトロード(62)を備え、前記パルスフィードバックユニット(71)が前記組織を透過又は散乱した光エネルギーを受信するための集光器(71c)を備え、前記集光器(71c)が光起電力セル(71pv)に結合された導電体(41e)によって、又は直接光ファイバ(41f)によって前記埋め込まれたコントローラに接続されることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のキット・オブ・パーツにおいて、前記迷走神経結合ユニットが、互いに分離されて絶縁シートの内面に露出させた3つの電極(61)を含むトリポーラ電極を備えることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のキット・オブ・パーツにおいて、
●前記外部制御ユニット(150)に結合された、患者の心電図を測定するための装置
を更に備え、
●前記外部制御ユニットが、喉頭の電気的活動(L1、L2)が予期される時間tlxが前記心電図の等電期に対応するように、前記迷走神経結合ユニットに1つ又は複数の制御エネルギーパルスを送達するための前記信号の前記送信を同期させるように構成されることを特徴とするキット・オブ・パーツ。
【国際調査報告】