(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】気体を処理するための系および方法
(51)【国際特許分類】
C07C 2/74 20060101AFI20220112BHJP
C07C 11/24 20060101ALI20220112BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20220112BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20220112BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20220112BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20220112BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20220112BHJP
C01B 3/26 20060101ALI20220112BHJP
C01B 3/24 20060101ALI20220112BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20220112BHJP
B01J 23/50 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C07C2/74
C07C11/24
B01D53/22
B01J3/00 J
B01D53/04 220
B01D53/047
B01D53/14 200
C01B3/26
C01B3/24
C01B3/56 Z
B01J23/50 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533389
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(85)【翻訳文提出日】2021-04-02
(86)【国際出願番号】 US2019047718
(87)【国際公開番号】W WO2020041597
(87)【国際公開日】2020-02-27
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521073992
【氏名又は名称】トランスフォーム マテリアルズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ソーン,デービッド,エス.
(72)【発明者】
【氏名】アッシュクラフト,ジェームス,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】ハメルト,ジェイソン,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ソダーホルム,マーク,エリス
(72)【発明者】
【氏名】リーズ,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】サンタナ,アレクサンダー,オルソン
(72)【発明者】
【氏名】オーライリ,マシュー,イライジャ
【テーマコード(参考)】
4D006
4D012
4D020
4G140
4G169
4H006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA01
4D006MA01
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC18
4D006MC49
4D006MC54
4D006PA01
4D006PB20
4D006PB63
4D006PB64
4D006PB66
4D006PB68
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CD07
4D012CD10
4D012CG01
4D012CH01
4D012CH04
4D020AA08
4D020BA15
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB04
4D020BC01
4D020CD02
4D020CD03
4G140DA03
4G140DB04
4G140DC01
4G140DC03
4G140FA02
4G140FB05
4G140FC01
4G140FC02
4G140FC08
4G140FD01
4G140FE01
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BC32B
4G169BC75B
4G169CC07
4G169DA05
4G169EA01Y
4H006AA02
4H006AC23
4H006AD17
4H006AD18
4H006BA95
4H006BE20
(57)【要約】
本発明は、炭化水素含有流入気体を流出気体生成物に変換するための気体処理系を含み、該系は、気体送達サブ系、プラズマ反応チャンバーおよびマイクロ波サブ系を含み、気体送達サブ系はプラズマ反応チャンバーと流体連絡し、そのために気体送達サブ系は炭化水素含有流入気体をプラズマ反応チャンバーに方向づけ、マイクロ波サブ系はマイクロ波エネルギーをプラズマ反応チャンバーに方向づけて炭化水素含有流入気体にエネルギーを付与し、それによりプラズマ反応チャンバー内でプラズマを形成し、ここでプラズマは、炭化水素含有流入気体中の炭化水素の、アセチレンおよび水素を含む流出気体生成物への変換を実行する。本発明はまた、気体処理系の使用のための方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素含有流入気体を流出気体生成物に変換するための系であって、該系が:
気体送達サブ系、プラズマ反応チャンバーおよびマイクロ波サブ系を含み;
気体送達サブ系が、プラズマ反応チャンバーと流体連絡し、炭化水素含有流入気体をプラズマ反応チャンバーに方向づけ;
マイクロ波サブ系が、マイクロ波エネルギーをプラズマ反応チャンバーに方向づけて、炭化水素含有流入気体にエネルギーを付与し、それによりプラズマ反応チャンバー中でプラズマを形成し、プラズマが、炭化水素含有流入気体中の炭化水素の流出気体生成物への変換を実行し、流出気体生成物が、アセチレンおよび水素を含む、系。
【請求項2】
炭化水素含有流入気体が混合気体供給源に由来する、請求項1記載の系。
【請求項3】
混合気体供給源が天然ガスである、請求項2記載の系。
【請求項4】
混合気体供給源がバイオガスである、請求項2記載の系。
【請求項5】
炭化水素含有流入気体が、メタン、エタン、プロパンおよびブタンからなる群より選択される気体を含む、請求項1記載の系。
【請求項6】
炭化水素含有流入気体が本質的にメタンからなる、請求項5記載の系。
【請求項7】
気体送達サブ系が送達導管および気体注入器を含み、送達導管が気体注入器と流体連絡し、送達導管が1つ以上の気体を気体注入器に送達し、気体注入器が1つ以上の気体をプラズマ反応チャンバーに送達する、請求項1記載の系。
【請求項8】
送達導管が、炭化水素含有流入気体を気体注入器に送達する供給気体運搬回路を含む、請求項7記載の系。
【請求項9】
炭化水素含有流入気体がメタンを含む、請求項8記載の系。
【請求項10】
炭化水素含有流入気体が本質的にメタンからなる、請求項9記載の系。
【請求項11】
送達導管が、さらなる気体を気体注入器に送達するさらなる気体運搬回路を含む、請求項8記載の系。
【請求項12】
さらなる気体が水素である、請求項11記載の系。
【請求項13】
さらなる気体運搬回路が、補助的気体を気体注入器に送達する補助的気体運搬回路である、請求項11記載の系。
【請求項14】
さらなる運搬回路が、リサイクル気体を気体注入器に送達するリサイクル気体運搬回路である、請求項11記載の系。
【請求項15】
リサイクル気体が水素リッチ反応体気体を含む、請求項14記載の系。
【請求項16】
水素リッチ反応体気体が本質的に水素からなる、請求項15記載の系。
【請求項17】
リサイクル気体が本質的に水素リッチ反応体気体からなる、請求項16記載の系。
【請求項18】
送達導管が、1つ以上の気体のそれぞれを、別々の経路を通って気体注入器に送達する、請求項7記載の系。
【請求項19】
気体注入器が、2つ以上の同軸に整列された別々の気体送り体を含む注入器ボディ部を含み、第1の気体送り体は、1つ以上のノズルの第1の組を通して炭化水素含有流入気体をプラズマ反応チャンバーに運搬し、第2の気体送り体は、1つ以上のノズルの第2の組を通してさらなる気体をプラズマ反応チャンバーに運搬する、請求項7記載の系。
【請求項20】
1つ以上のノズルの少なくとも1つが、プラズマ反応チャンバーの長手軸に対して傾斜してまたはプラズマ反応チャンバーの横軸に対して傾斜して方向づけられる、請求項19記載の系。
【請求項21】
1つ以上のノズルの少なくとも1つが、注入器ボディ部の長手軸または横軸に対して傾斜して方向づけられる、請求項19記載の系。
【請求項22】
ノズルの第1の組およびノズルの第2の組からの合わせられた気体フローが、プラズマ反応チャンバー内で渦状のフローを生じる、請求項19記載の系。
【請求項23】
プラズマ反応チャンバーが、近位端および遠位端を有する伸長した反応器チューブ内に配置され、伸長した反応器チューブが、マイクロ波サブ系との相互作用に寸法的に適している、請求項14記載の系。
【請求項24】
伸長した反応器チューブが石英チューブである、請求項23記載の系。
【請求項25】
プラズマ反応チャンバーが、伸長した反応器チューブのほぼ中間部に配置される、請求項23記載の系。
【請求項26】
気体注入器が、炭化水素含有流入気体およびさらなる気体を、伸長した反応器チューブの近位部に運搬し、炭化水素含有流入気体およびさらなる気体が、該近位部から遠位にプラズマ反応チャンバーに向かって流れる、請求項23記載の系。
【請求項27】
気体注入器が近位部の中心に配置され、1つ以上のノズルの第1の組および1つ以上のノズルの第2の組が周辺に方向づけられる、請求項26記載の系。
【請求項28】
気体注入器が近位部内の周辺に配置され、1つ以上のノズルの第1の組および1つ以上のノズルの第2の組が中心に方向づけられる、請求項26記載の系。
【請求項29】
マイクロ波サブ系が、マイクロ波エネルギーをプラズマ反応チャンバーに方向づけるためのアプリケーターを含み、プラズマ反応チャンバーが、アプリケーターを通過しアプリケーターと垂直に交差する伸長した反応器チューブの領域に配置される、請求項23記載の系。
【請求項30】
アプリケーターがシングルアームアプリケーターである、請求項29記載の系。
【請求項31】
マイクロ波サブ系が、動力源、磁電管および導波管をさらに含み、動力源が磁電管にエネルギーを付与してマイクロ波エネルギーを生じ、マイクロ波エネルギーが導波管によりアプリケーターに運搬され、アプリケーターが、マイクロ波エネルギーを伸長した反応器チューブ内の反応チャンバーに方向づけ、それによりプラズマ反応チャンバー内でプラズマを形成する、請求項29記載の系。
【請求項32】
磁電管がLバンドマイクロ波エネルギーを生じる、請求項31記載の系。
【請求項33】
プラズマ反応チャンバー内のプラズマが、流出気体生成物を生じ、流出気体生成物が、伸長した反応器チューブの遠位端に向かって遠位にプラズマ反応チャンバー内を流れる、請求項31記載の系。
【請求項34】
流出気体生成物が、伸長した反応器チューブの遠位端から生じて、排出物分離および使い捨てサブ系に入る、請求項33記載の系。
【請求項35】
排出物分離および使い捨てサブ系が、固体フィルターおよびコールドトラップを含む、請求項34記載の系。
【請求項36】
排出物分離および使い捨てサブ系が吸着カラムを含む、請求項34記載の系。
【請求項37】
排出物分離および使い捨てサブ系が、排出物流から非水素構成要素を除去するために適合された圧力スイング吸着系を含む、請求項34記載の系。
【請求項38】
排出物分離および使い捨て系が、排出物流から高次の(higher)アセチレンを除去するために適合される温度スイング吸着系を含む、請求項34記載の系。
【請求項39】
排出物分離および使い捨てサブ系が吸収カラムを含む、請求項34記載の系。
【請求項40】
吸収カラムがアセチレンを吸収する、請求項39記載の系。
【請求項41】
排出物分離および使い捨てサブ系が、高次(higher-order)炭化水素を酸化するのに十分な量の濃縮酸を含む、請求項34記載の系。
【請求項42】
排出物分離および使い捨てサブ系が、高次炭化水素を、排出物流から分離可能な誘導体化合物に変換するのに適切な触媒を含む、請求項34記載の系。
【請求項43】
排出物分離および使い捨てサブ系が凝縮器を含む、請求項34記載の系。
【請求項44】
排出物分離および使い捨てサブ系が気体分離膜アレイを含む、請求項34記載の系。
【請求項45】
気体分離膜アレイが、排出物流から水素を分離する、請求項34記載の系。
【請求項46】
排出物分離および使い捨てサブ系が水素分離サブ系を含む、請求項34記載の系。
【請求項47】
水素分離サブ系がリサイクル気体運搬回路と流体連絡し、水素分離サブ系により収集された水素がリサイクル気体運搬回路にリサイクルされる、請求項46記載の系。
【請求項48】
排出物分離および使い捨てサブ系がアセチレン分離サブ系を含む、請求項34記載の系。
【請求項49】
排出物分離および使い捨てサブ系の1つ以上の構成要素を通過する流出生成物のための第1の減圧環境を生じる真空サブ系をさらに含む、請求項34記載の系。
【請求項50】
真空サブ系が、伸長した反応器チューブ内に第2の減圧環境を生じる、請求項49記載の系。
【請求項51】
真空サブ系が、気体送達サブ系のための第3の減圧環境を生じる、請求項50記載の系。
【請求項52】
真空サブ系が、第1、第2および第3の減圧環境を生じる、請求項51記載の系。
【請求項53】
第1、第2および第3の減圧環境が約30~約120トルの範囲内である、請求項52記載の系。
【請求項54】
減圧環境の少なくとも1つが約50~約100トルである、請求項53記載の系。
【請求項55】
減圧環境の少なくとも1つが約60~約80トルである、請求項54記載の系。
【請求項56】
第1、第2および第3の減圧環境が実質的に同様である、請求項52記載の系。
【請求項57】
冷却サブ系をさらに含む、請求項1記載の系。
【請求項58】
冷却サブ系が、水冷却サブ系および気体冷却サブ系の少なくとも1つを含む、請求項57記載の系。
【請求項59】
気体冷却サブ系が窒素系冷却回路を含む、請求項58記載の系。
【請求項60】
窒素系冷却回路が、系の構成要素のための1つ以上の囲い込みを含み、1つ以上の囲い込みが、構成要素の周囲の窒素ガスを封じ込め、該構成要素から酸素を排除するのに十分に密封される、請求項59記載の系。
【請求項61】
データ管理および安全性サブ系をさらに含む、請求項1記載の系。
【請求項62】
炭化水素含有流入気体を処理してアセチレンガスを製造するための方法であって、
炭化水素含有流入気体を提供する工程;
炭化水素含有流入気体を反応チャンバーに注入する工程;
反応チャンバー内の炭化水素含有流入気体に、マイクロ波エネルギーによりエネルギーを付与してプラズマを生成する工程;
プラズマ内で気体生成物を形成する工程、ここで気体生成物の1つは、アセチレンガスである;および
気体生成物を流して反応チャンバーから排出する工程
を含む、方法。
【請求項63】
炭化水素含有流入気体が混合気体供給源に由来する、請求項62記載の方法。
【請求項64】
混合気体供給源が天然ガスである、請求項63記載の方法。
【請求項65】
混合気体供給源がバイオガスである、請求項63記載の方法。
【請求項66】
炭化水素含有流入気体が、メタン、エタン、プロパンおよびブタンからなる群より選択される気体を含む、請求項62記載の方法。
【請求項67】
炭化水素含有流入気体が本質的にメタンからなる、請求項66記載の方法。
【請求項68】
炭化水素含有流入気体を提供する工程と同時に1つ以上のさらなる気体を提供する工程をさらに含む、請求項62記載の方法。
【請求項69】
1つ以上のさらなる気体が、水素、窒素およびリサイクル気体からなる群より選択される、請求項68記載の方法。
【請求項70】
リサイクル気体が水素リッチ反応体気体を含む、請求項69記載の方法。
【請求項71】
水素リッチ反応体気体が本質的に水素からなる、請求項70記載の方法。
【請求項72】
気体生成物を流して反応チャンバーから排出する工程の後に、気体生成物からアセチレンガスを分離する工程をさらに含む、請求項62記載の方法。
【請求項73】
気体生成物の少なくとも1つをリサイクルする工程をさらに含む、請求項62記載の方法。
【請求項74】
少なくとも1つの気体生成物が水素ガスを含む、請求項73記載の方法。
【請求項75】
少なくとも1つの気体生成物が本質的に水素ガスからなる、請求項73記載の方法。
【請求項76】
炭化水素含有流入気体を流出気体に変換するための方法であって、
炭化水素含有流入気体を提供する工程;
炭化水素含有流入気体を請求項1記載の系に方向づける工程、および
請求項1記載の系を使用して炭化水素含有流入気体を処理して、流入気体を流出気体に変換する工程、ここで流出気体はアセチレンを含む、
を含む、方法。
【請求項77】
炭化水素含有流入気体が混合気体供給源に由来する、請求項76記載の方法。
【請求項78】
混合気体供給源が天然ガスである、請求項77記載の方法。
【請求項79】
混合気体供給源がバイオガスである、請求項77記載の方法。
【請求項80】
流出気体が水素ガスを含む、請求項76記載の方法。
【請求項81】
請求項1記載の系;
請求項1記載の系により生成された流出気体生成物を含むための貯蔵系;および
貯蔵系と流体連絡する金属切断のための装置
を含む、金属切断系であって、該装置が、貯蔵系から流出気体生成物を抜き取り、金属切断における使用のために該流出気体生成物を発火させる、金属切断系。
【請求項82】
該装置が、アセチレントーチまたはオキシアセチレントーチである、請求項81記載の金属切断系。
【請求項83】
請求項1記載の系と流体連絡する水素分離系をさらに含む金属切断系であって、流出気体が水素分離系に流れ、水素分離系が、流出気体を2つの生成物流に分離し、1つの生成物流がアセチレンリッチ気体であり、金属切断のための装置が、金属切断のための燃料として、貯蔵系に貯蔵されるアセチレンリッチ気体を使用する、請求項81記載の金属切断系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年8月23日に出願された米国仮特許出願第62/721,863号、2018年9月25日に出願された米国仮特許出願第62/736,206号および2019年1月17日に出願された米国仮特許出願第62/793,763号の利益を主張する。上記出願のそれぞれの全教示は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
アセチレンは、溶接および金属切断などの工業的燃焼用途のための化学前駆物質または供給原料として使用され得る。アセチレンの商業的製造は、20世紀初期から行われている。アセチレン製造のための元来の方法では、炭化カルシウム中間物を含むプロセスを通じて、供給材料として石炭が使用された。20世紀後期には、熱クラッキングまたは電弧炉などの熱に基づく処理を主に使用する他の方法が開発された。
【0003】
石炭から製造されるアセチレンは:第1に、石炭を加熱して高炭素含有量コークスを製造し;第2に、酸化カルシウムの存在下でコークスをさらに加熱して炭化カルシウムを生じ;第3に、炭化カルシウムを水と反応させて、アセチレンおよび水酸化カルシウムを生じる、3工程のプロセスを含む。最初の2工程は、非常に高温を必要とするが、最後の工程は発熱を伴う。アセチレンを形成するためのこの方法は、特に石炭が容易に入手可能な中国で、依然として商業的に使用される。
【0004】
しかしながらこのプロセスは、石炭および石灰供給材料の不純物を最終生成物に持ち込むので、得られるアセチレンは、ホスフィン、アルシンおよび硫酸水素塩などの不純物で汚染される。これらの種の全ては、その後の化学反応についての触媒を汚染し得るので、アセチレン生成物が商業的に使用され得る前に、該生成物から洗浄される(scrub)必要がある。さらなる化学処理に使用される化学等級アセチレンは、<25ppmホスフィン/アルシン/H2Sを有する>99.6%純粋のC2H2でなければならない。溶接および金属切断用途のために燃焼される工業等級アセチレンは、より多くの不純物を許容し得る(>98.0純粋のC2H2、<500ppmホスフィン/アルシン/H2S)。そのため、石炭に由来するアセチレンの製造は、米国では工業等級のアセチレンの形成に限定されており;さらに石炭由来のアセチレンが単に溶接および金属切断に使用される場合であっても、潜在的に有害な汚染物質の存在が懸念を生じる。
【0005】
代替法として、アセチレンは、例えば米国特許第5,824,834号に記載されるBASFにより開発された処理により、部分酸化により炭化水素から調製され得る。このプロセスにおいて、炭化水素供給原料および酸素は、予め加熱され、次いで燃焼チャンバー内で反応され、製造された気体を>1500℃の温度に達するようにする。燃焼反応は、迅速な冷却を行うために水でクエンチされ、アセチレン、水素、一酸化炭素、水蒸気および副生成物の気体性混合物(「切断ガス(cleavage gas)」と称される)を生じる。アセチレン製造のこの方法は、大量の水素(57%)、一酸化炭素(26%)およびメタン(5.2%)と共に約7.5%のアセチレンを生じる。副生成物の1つは煤であり、これは切断ガスがさらに処理される場合に切断ガスから除去される必要がある。他の副生成物としては、アルカン、アルケン、アルキンおよび芳香族を含む高次炭化水素(higher-order hydrocarbon)が挙げられる。切断ガスから不純物を除去することおよび切断ガスが含むアセチレンを回収することは、重大な工学的難題を含む。
【0006】
製造の問題に加えて、アセチレンは、取扱いおよび輸送することが困難である。アセチレンは高度に爆発性である。パイプラインを通して輸送される場合、アセチレンは低圧で維持され、短距離で運搬されるのみである。工業目的のアセチレンは、高圧でタンクにポンプで輸送(pumped)され、溶媒、例えばジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンまたはアセトンに溶解される。アセチレンシリンダーを開放する場合、溶解された気体は蒸発し、連結ホースを通って溶接または切断トーチに流れる。しかしながら、アセチレンの一定の量は溶媒にとけたままであり、この状態で製造業者に戻されるので、シリンダー中のアセチレンの全量が使用可能ではない。20世紀中期の石油化学工業の高まりに伴い、アセチレンは工業的に(すなわち溶接、金属切断等)使用され続けているが、アセチレンは、化学反応の前駆物質としてはずされ(displace)、石炭ではなく石油に直接由来する他の供給原料(例えばエチレン)に置き換えられた。しかしながら石油がより高価になり、天然ガスがより安価になるにつれて、石油由来供給原料に代わるさらなる化学処理のためのプラットフォーム(platform)としてのアセチレンの関心が高っている。
【0007】
さらに、天然ガスの豊富さは、この材料を燃焼することなく使用するため、天然ガスの温室効果ガス効果を減少させるためおよび単純な燃焼により天然ガスを別の温室効果ガスであるCO2に変換することを回避するためのより多くの方法の探求をもたらしている。燃料の非炭化水素供給源についての要求の高まりは、次に電力源として使用され得る水素を製造するための供給原料としての天然ガスの使用を支持する。天然ガス中のメタンから水素ガスを抽出するための従来技術が既に存在する。例えば水蒸気再形成は、水素ガスおよび一酸化炭素を製造し得;次いで、水蒸気再形成プロセスにより生成される水素は、水素燃料電池またはガスタービンなどの他の用途のために純粋な形態で使用され得、水素は酸素と化合して、温室効果ガスを放出することなく水を形成する。部分酸化などの他のプロセスは、燃料として使用され得る可燃性混合物である水素含有合成ガスを製造し得る。しかしながら、メタンから水素を製造するための従来技術は欠点を有する。水蒸気再形成は高温で行われ、エネルギー集約的であり、過酷な反応条件に耐え得る費用がかかる材料を必要とする。水蒸気再形成はメタンの水素への変換を実行するために触媒を使用するが、該触媒は一般的な汚染物質による触媒作用阻害物質(poisoning)に対して脆弱である。部分酸化は、水素を製造するための水蒸気再形成よりも効率が低い技術であり、煤を形成する傾向があり、水素収率に制限がある。
【0008】
天然ガスに加えて、海洋性クラスレート(oceanic clathrate)、炭鉱ガスおよびバイオガスなどの他の混合気体供給源もメタンガスを含む。バイオガスは、例えばごみ埋め立て地、肥料貯蔵池(manure holding ponds)、廃棄物施設等の種々のヒトが作り出した環境および例えば泥炭地、溶けている永久凍土等の自然環境における有機廃棄物材料の嫌気性分解により生成される、天然に生成される混合気体供給源である。かかる環境において生じる嫌気性細菌は、該環境に蓄積して主に二酸化炭素およびメタンで構成される気体混合物を生じる有機材料を消化する。メタンは潜在的に可燃性であるので、高メタン含有量を有するバイオガスは、ごみ埋め立て地由来気体混合物中で見られ得るように、危険であり得る。さらに、メタンは潜在的な温室効果ガスである。現在、有機分解(例えばごみ埋め立て地、廃棄物施設、貯蔵池等または腐食性有機材料を含む天然の領域)から収集されるバイオガスは、CO2および他の痕跡量のガスを除去するように精製され得、エネルギーを生成するための高濃度メタンを生じる。しかしながら、メタンリッチバイオガスを単純に燃やすことにより、別の温室効果ガスであるCO2が生じる。バイオガスまたは他の混合気体供給源を燃やすことなくそれらのエネルギー潜在能力(potential)を利用し得るバイオガスまたは他の混合気体供給源についての用途を同定して、メタンの別の温室効果ガスCO2への変換を回避しながらメタンの温室効果ガスの効果を減少することが望ましい。
【0009】
そのため、当該技術分野において、天然ガスもしくはバイオガスなどの混合気体供給源および/またはより精製された炭化水素供給原料(例えばメタン、エタン、プロパンおよびブタンならびにそれらの組合せ)を使用して、より価値の高い生成物を形成するプロセスに対する必要性がある。アセチレンを製造することが意図されるこれらのプロセスについて、供給原料として、天然ガスもしくはバイオガスなどの混合気体供給源および/またはより精製された炭化水素供給原料(例えばメタン、エタン、プロパンおよびブタン)を使用して、豊富なこれらの供給原料材料を利用しながら、他の混合気体変換プロセスまたは炭化水素燃焼プロセスの制限を回避することは有利である。同時に、当該技術分野において、天然ガスもしくはバイオガスなどの混合気体供給源および/またはさらに精製された炭化水素供給原料を使用して、便利な経済的な方法においてアセチレンを製造し得るプロセスに対する必要性がある。最少の不純物を有するアセチレンを製造することが特に有利であるので、アセチレンは、安全にかつ実質的にさらなる処理を用いずに使用され得る。さらに、当該技術分野において、大規模化可能にかつ効率的に、水素などの代替的な燃料を提供するためのさらなる必要性がある。実利的および環境的に信頼性のある方法でこれらのプロセスを行うことが望ましい。
【0010】
また、アセチレンは、種々の工業的用途、例えば金属切断のための燃料としての有用性を有する。この用途は、サイズにおいてアセチレンの種々の石油化学用途と同等の大きな市場を表す。現在、アセチレンの主要な工業的用途は、鋼鉄を切断するために使用されるオキシアセチレントーチのための燃料としてのものであり;切断に加えて、アセチレンは、鋼鉄のいくつかの溶接、浸炭および熱処理に使用される。オキシアセチレントーチは、酸水素(3,000℃)およびオキシプロパン(2,500℃)トーチなどの他の酸素燃料(oxy-fuel)トーチよりも高い炎温度(3,500℃)で燃焼し、オキシアセチレンは、より小さく、より正確な炎錐状体を形成する。これらの特徴により、他の同等の酸素燃料切断法よりも高品質でより正確な切断が可能による。さらに、アセチレンの燃焼は、プロパンなどの他の燃料よりも小さい酸素の化学量論比を必要とし、オキシアセチレントーチは、他の酸素燃料トーチよりも少ない酸素を消費し、より低い酸素運転コストをもたらす。最終的に、オキシプロパントーチなどの他の炭化水素燃料型のより低い炎温度およびより高い酸素要件により、不完全燃焼のリスクがより高くなり、作業環境内に危険な一酸化炭素が生じるようになる。前述の理由のために、オキシアセチレン切断は、鋼鉄切断のための産業において標準的である。
【0011】
しかしながら、以前に記載されたように、アセチレンの製造およびその輸送には制限がある。そのため、工業的切断のためにアセチレンを入手することは費用がかかり、ロジスティック的に(logistically)困難である。第1に、トーチの燃料として使用されるアセチレンは、爆発のリスクのために、小さな金属製のシリンダー内で輸送および貯蔵されなければならない。爆発のリスクを低減するために、シリンダー内のアセチレンはアセトンに溶解され、その分圧およびそのために爆発の可能性が低下される。アセトンはアセチレンと共にシリンダー内に存在するので、アセチレンは、低い流速(例えば、1時間当たり容器内容量の1/7を超えない)のみで抜き取られ得、アセトンがアセチレンと共に流出ラインに抜き取られる機会が低減される気体供給物内のアセトンは、炎の温度および切断プロセスの質を下げ得る。低い流出速度を用いたとしても、シリンダー内のアセチレンは急速に枯渇し得;一旦枯渇すると、再度爆発のリスクのために、高価な安全性基幹施設および専門技術無しでは、シリンダーは、その場で再充填できない。シリンダーの小さなサイズのために、シリンダーは、より大きな操作のために十分に大規模化されないが、代わりに多岐管で集配(manifolding)することにより並行に連結されなければならず、計画の複雑さが追加される。また、爆発のリスクのために、シリンダーは、輸送される際に、いくつかの安全性予防措置を必要とし、費用およびロジスティック的な難題が追加される。
【0012】
当該技術分野において、より合理的で、安全なアセチレンを入手する方法のための必要性が残る。金属細工に使用されるアセチレンガスのための貯蔵容器として、アセトン含有シリンダーについての必要性を回避することが望ましい。例えば、要求に応じておよび必要とされる場合にアセチレン燃料を入手可能にしてシリンダー貯蔵の体積および流速の制約を回避することが有用である。また、輸送に伴うシリンダー特異的困難性を回避するために、アセチレンの使用の場所の近位でアセチレンが製造されることも有利である。
【発明の概要】
【0013】
概要
態様において、炭化水素含有流入気体を流出気体生成物に変換するための気体処理系が本明細書に開示され、該系は、気体送達サブ系、プラズマ反応チャンバーおよびマイクロ波サブ系を含み、気体送達サブ系はプラズマ反応チャンバーと流体連絡し、炭化水素含有流入気体をプラズマ反応チャンバーに方向づけ、マイクロ波サブ系はマイクロ波エネルギーをプラズマ反応チャンバーに方向づけて炭化水素含有流入気体にエネルギーを付与し、それによりプラズマ反応チャンバー内でプラズマを形成し、プラズマは、炭化水素含有流入気体中の炭化水素の、アセチレンおよび水素を含む流出気体生成物への変換をもたらす。態様において、炭化水素含有流入気体は混合気体供給源に由来し得、混合気体供給源は天然ガスまたはバイオガスであり得;態様において、炭化水素含有流入気体は、メタン、エタン、プロパンおよびブタンからなる群より選択される気体を含み、炭化水素含有流入気体は本質的にメタンからなり得る。態様において、気体送達サブ系は、送達導管および気体注入器を含み、送達導管は気体注入器と流体連絡し、送達導管は、1つ以上の気体を気体注入器に送達し、気体注入器は、1つ以上の気体をプラズマ反応チャンバーに送達する。送達導管は、炭化水素含有流入気体を気体注入器に送達する供給気体運搬回路を含み得、炭化水素含有流入気体はメタンを含み得るかまたは本質的にメタンからなり得る。態様において、送達導管は、さらなる気体を気体注入器に送達するさらなる気体運搬回路を含み、さらなる気体は水素であり得る。態様において、さらなる気体運搬回路は、補助的気体を気体注入器に送達する補助的気体運搬回路であるか、またはさらなる気体運搬回路は、リサイクル気体を気体注入器に送達するリサイクル気体運搬回路である。リサイクル気体は、水素を含み得るか、またはリサイクル気体は、本質的に水素からなり得る水素リッチ反応体気体を含み得るか、またはリサイクル気体は、本質的に水素リッチ反応体気体からなり得る。
【0014】
態様において、送達導管は、1つ以上の気体のそれぞれを別々の経路を通って気体注入器に送達する。態様において、気体注入器は、2つ以上の同軸に整列された別々の気体送り体を含む注入器ボディ部を含み、第1の気体送り体は、1つ以上のノズルの第1の組を通して炭化水素含有流入気体をプラズマ反応チャンバーに運搬し、第2の気体送り体は、1つ以上のノズルの第2の組を通してさらなる気体をプラズマ反応チャンバーに運搬する。態様において、1つ以上のノズルの少なくとも1つは、プラズマ反応チャンバーの長手軸に対して傾斜してまたはプラズマ反応チャンバーの横軸に対して傾斜して方向づけられる。態様において、1つ以上のノズルの少なくとも1つは、注入器ボディ部の長手軸または横軸に対して傾斜して方向づけられる。ノズルの第1の組およびノズルの第2の組からの合わされた気体フローは、プラズマ反応チャンバー内で渦状(vortex)のフローを生成する。態様において、プラズマ反応チャンバーは、近位端および遠位端を有する伸長した反応器チューブ内に配置され、伸長した反応器チューブは、マイクロ波サブ系と相互作用に適した大きさである。伸長した反応器チューブは石英チューブであり得る。プラズマ反応器チャンバーは、伸長した反応器チューブのほぼ中央部に配置され得る。態様において、気体注入器は、炭化水素含有流入気体およびさらなる気体を、伸長した反応器チューブの近位部に運搬し、炭化水素含有流入気体およびさらなる気体は、該近位部から遠位に、プラズマ反応チャンバーに向かって流れる。気体注入器は近位部内の中心に配置され得、1つ以上のノズルの第1の組および1つ以上のノズルの第2の組は、周囲に方向づけられ;代替的に、気体注入器は、近位部内で周囲に配置され、1つ以上のノズルの第1の組および1つ以上のノズルの第2の組は中心に方向づけられる。態様において、マイクロ波サブ系は、マイクロ波エネルギーをプラズマ反応チャンバーに方向づけるためのアプリケーターを含み、プラズマ反応チャンバーは、アプリケーターを通過して、アプリケーターと垂直に交差する伸長した反応器チューブの領域に配置される。アプリケーターは、シングルアームアプリケーターであり得る。態様において、マイクロ波サブ系は、動力源、磁電管および導波管をさらに含み、動力源は磁電管にエネルギーを付与し、マイクロ波エネルギーを生じ、マイクロ波エネルギーは、導波管によりアプリケーターに運搬され、アプリケーターは、伸長した反応器チューブ内でマイクロ波エネルギーを反応チャンバーに方向づけ、それによりプラズマ反応チャンバー内でプラズマを形成する。磁電管はLバンドマイクロ波エネルギーを生じ得る。態様において、プラズマ反応チャンバー内のプラズマは流出気体生成物を生じ、流出気体生成物は、プラズマ反応チャンバー内で、伸長した反応器チューブの遠位端に向かって遠位に流れる。流出生成物は、伸長した反応器チューブの遠位端から生じて、排出物(efficient)分離および使い捨て(disposal)サブ系に入る。態様において、排出物分離および使い捨てサブ系は、固体フィルターおよびコールドトラップを含み得、および/または吸着カラムを含み得、および/または排出物流から非水素構成要素を除去するために適合される圧力スイング吸着系を含み得、および/または排出物流からより高次の(higher)アセチレンを除去するために適合された温度スイング吸着系を含み得、および/または態様においてアセチレンを吸収し得る吸収カラムを含み得、および/または高次炭化水素を酸化するのに十分な量の濃縮酸を含み得、および/または高次炭化水素を、排出物流から分離可能な誘導化合物に変換するのに適切な触媒を含み得、および/または凝縮器を含み得、および/または態様において排出物流から水素分離し得る気体分離膜アレイを含み得、および/または態様においてリサイクル気体運搬回路と流体連絡し得る水素分離サブ系を含み得、ここで水素分離サブ系により収集される水素はリサイクル気体運搬回路にリサイクルされ、および/またはアセチレン分離サブ系を含み得る。態様において、該系は、排出物分離および使い捨てサブ系の1つ以上の構成要素を通過する流出生成物のために第1の減圧環境を維持する真空サブ系をさらに含む。真空サブ系は、伸長した反応器チューブ内で第2の減圧環境を生じ得、および/または真空サブ系は、気体送達サブ系のための第3の減圧環境を生じ得る。態様において、真空サブ系は、第1、第2および第3の減圧環境を生じ;態様において、第1、第2および第3の減圧環境は約30~約120トルの範囲内である。態様において、減圧環境の少なくとも1つは約50~約100トルであるかまたは約60~約80トルである。態様において、第1、第2および第3の減圧環境は実質的に同様である。態様において、該系は、冷却サブ系をさらに含む。冷却サブ系は、水冷却サブ系および気体冷却サブ系の少なくとも1つを含み得る。態様において、気体冷却サブ系は窒素系冷却回路を含み、窒素系冷却回路は、系の構成要素のための1つ以上の囲い込みを含み得、1つ以上の囲い込みは、構成要素の周りの窒素ガスを封じ込め、囲い込みから酸素を排除するのに十分に密封される。態様において、該系は、データ管理および安全性サブ系を含む。
【0015】
炭化水素含有流入気体を処理してアセチレンガスを製造するための方法が本明細書にさらに開示され、該方法は、炭化水素含有流入気体を提供する工程、炭化水素含有流入気体を反応チャンバーに注入する工程、反応チャンバー内の炭化水素含有流入気体にマイクロ波エネルギーでエネルギーを付与してプラズマを生成する工程、プラズマ内で気体生成物を形成する工程、ここで気体生成物の1つはアセチレンガスである、および気体生成物を流して反応チャンバーから排出する工程を含む。態様において、炭化水素含有流入気体は混合気体供給源由来であり;混合気体供給源は天然ガスまたはバイオガスであり得る。態様において、炭化水素含有流入気体は、メタン、エタン、プロパンおよびブタンからなる群より選択される気体を含み、該気体は本質的にメタンからなり得る。ある実施において、該方法はさらに、炭化水素含有流入気体を提供する工程と同時に1つ以上のさらなる気体を提供する工程を含み、1つ以上のさらなる気体は、水素、窒素およびリサイクル気体からなる群より選択され得る。態様において、リサイクル気体は、本質的に水素からなり得る水素リッチ反応体気体を含む。ある実施において、該方法はさらに、気体生成物を流して反応チャンバーから排出する工程の後に、アセチレンガスを、気体生成物から分離する工程を含む。ある実施において、該方法はさらに、気体生成物の少なくとも1つをリサイクルさせる工程を含む。態様において、少なくとも1つの気体生成物は、水素ガスを含み得るかまたは本質的に水素ガスからなり得る。
【0016】
炭化水素含有流入気体を流出気体に変換するための方法も本明細書に開示され、該方法は、炭化水素含有流入気体を提供する工程、炭化水素含有流入気体を上述の気体処理系に方向づける工程、および上述の気体処理系を使用して炭化水素含有流入気体を処理し、流入気体を流出気体に変換する工程を含み、ここで流出気体はアセチレンを含む。態様において、炭化水素含有流入気体は混合気体供給源由来であり、混合気体供給源は天然ガスまたはバイオガスであり得る。態様において、流出気体はさらに水素を含む。
【0017】
さらに、金属切断系が本明細書に開示され、該系は、上述の気体処理系、および該系により製造された流出気体生成物を含むための貯蔵系;ならびに貯蔵系と流体連絡する金属切断のための装置を含み、ここで該装置は、貯蔵系から流出気体生成物を抜き取り、金属切断における使用のために該気体生成物を発火させる。態様において、該装置は、アセチレントーチまたはオキシアセチレントーチである。態様において、金属切断系はさらに、上述の気体処理系と流体連絡する水素分離系を含み、ここで流出気体は水素分離系に流れ、水素分離系は、流出気体を2つの生成物流に分離し、1つの生成物流はアセチレンリッチ気体であり;金属切断のための装置は、金属切断のための燃料として、貯蔵系に貯蔵されるアセチレンリッチ気体を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、メタンの、水素、炭素および炭化水素生成物への変換に含まれる種々の化学反応を示す概略図である。
【
図2】
図2は、プラズマ系炭化水素処理系および構成要素サブ系を概略図的に示す。
【
図8】
図8は、プラズマ系炭化水素処理系の他のサブ系と一体化される真空サブ系を示す概略図である。
【
図9】
図9は、プラズマ系炭化水素処理系および関連のあるサブ系のブロック図である。
【
図10】
図10は、反応チャンバーおよびその構成要素の概略図である。
【
図13】
図13は、気体処理のための小規模系のブロック図である。
【
図14】
図14は、気体処理のための小規模系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
不飽和炭化水素およびメタンなどの飽和炭化水素(例えば天然ガスまたはバイオガスなどの混合気体供給源に由来する)を含むC1-C4炭化水素を、水素、アセチレンおよび他の炭素系生成物に変換するための系および方法がより詳細に本明細書に開示される。態様において、これらの系および方法は、これらの変換を実行するためにマイクロ波エネルギーにより生成された非熱プラズマを使用する。態様において、本明細書に開示される系および方法は、さらなる商業化のために単離され得る生成物としてのアセチレンまたは水素の効率的な製造を最大化するために最適化され(「調整され(tuned)」)得;他の態様において、これらの系および方法は、特定の工業的目的のためにこれらの気体の組合せを製造するように調整され得る。
【0020】
1. 概観
a. 非熱プラズマ
物質の第4の状態であるプラズマは、イオン化された気体であり:任意の気体は、十分なエネルギーを該気体に適用し、荷電した種、すなわち電子およびイオンの有意な密度を生成することによりプラズマに変わり得る。プラズマは、気体の特性のいくつかを有するが、通常の気体状態とは異なり、なぜならプラズマは、電場および磁場の両方に応答し、これは、プラズマ状態で存在する荷電した種の特性であるためであるからである。これらの特性を有するにもかかわらず、プラズマは、電気的に中性であり、これは準中性と命名される特徴である。プラズマ中に存在する前駆気体由来のイオンおよび遊離電子に加えて、プラズマは、他の化学的反応に入り得る非荷電中性気体種および前駆分子を含む。いくつかの弱くイオン化された気体は、プラズマの全ての条件を必ずしも満足しないが、依然として該気体の挙動に影響する多くのプラズマ様の特質を有し得る。例えば、工業用途で使用される高圧プラズマの多くは、このカテゴリーに分類される。
【0021】
プラズマの基本的な特性の1つはその温度である。プラズマは、旧来の化学工学技術プロセスにおいて得られるものよりもかなり高い温度を生成し得るので、化学的および工業的な用途に使用されている。プラズマにおいて、エネルギーは電子に転移され、次いで電子は、衝突により、エネルギーをより重い粒子に転移する。電子はより重い粒子よりも高い温度を有し、プラズマ中の種々の粒子の衝突頻度および放射プロセスを反映する平衡温度が達成される。重い粒子の並進温度(T0)のものに近い電子温度(Te)を有するこれらのプラズマは、3,000Kよりも高い気体温度を有する熱プラズマとして定義される。対比すると、非熱プラズマにおいて、高いエネルギーの電子は、実質的に低い温度を有する種と共に存在し得る。そのため、非熱プラズマの並進温度T0は、プラズマの電子温度Teよりもかなり低くあり得、Teは、工業的プラズマにおいては11,600Kまたは他の種類のプラズマにおいてはさらに高い温度に近づき得る。
【0022】
プラズマのエネルギー状況は、プラズマが、ただの原子の代わりに分子(H2、N2またはCH4など)を含む場合、より複雑である。これらの分子は、種々の回転的および振動的な運動においてエネルギーを蓄える能力を有するので、それらに関連する回転的および振動的な温度を有する。かかるプラズマについてのこれらの温度は一般的に、プラズマの並進温度と電子温度の間にあり、これらの温度は、プラズマの挙動およびその関連のある化学に影響し得る。本明細書に開示される技術は、非熱プラズマが、気体自体を加熱するのではなく、構成的な供給気体において電気的入力エネルギーの大部分をエネルギー電子に転移する能力に基づく。電子衝突、イオン化、電離および励起により、化学反応に参加し得る荷電した原子および分子の種(例えば電子、イオン、ラジカル)が生成される。
【0023】
メタンは、その安定性のために化学的変換に対して特に耐性であり:メタン中のC-H結合の切断は、1664kJ mol-1のエンタルピー変化を必要とする。以下に記載される技術を使用して、非熱プラズマは、メタン結合を含むC1-C4炭化水素中の結合を切断するように生成および利用され得、高い効率および選択性でアセチレンおよび水素分子を生成し得る。
【0024】
b. マイクロ波プラズマ生成
態様において、これらの系および方法に使用されるプラズマは、以下により詳細に記載されるように、メタン含有供給気体にマイクロ波エネルギーを方向づけることにより形成されるマイクロ波プラズマである。メタンは本説明における例示的態様として使用されるが、他の短鎖アルカン(例えばエタン、プロパン、ブタン)も、単一気体供給気体としてまたは互いに組み合わせるかもしくはメタンと組み合わせてのいずれかで、供給気体として使用し得ることが理解される。
【0025】
本明細書に記載されるマイクロ波プラズマプロセスは、所望の気体生成物を形成するために気体反応体前駆体を使用する気相プロセスである。分子的および電子的衝突頻度に対する電場の非常に早い振動周波数のために、マイクロ波生成プラズマはしばしば、高度の非平衡にあり、これは電子および振動温度は気体温度よりもかなり高くなり得ることを意味する。態様において、マイクロ波プラズマにおける荷電した種(電子、イオン)と荷電していない種(分子、原子、粒子)の間の衝突はエネルギーを転移し:このマイクロ波によりエネルギーを付与されたプラズマは、プラズマの遊離電子に含まれるエネルギーのために、高度に反応性の化学環境を支持する。前駆体気体の高度なイオン化、中間体の化学的電離およびイオン化、ならびにプラズマにおける高い振動的および励起的エネルギーのために、以下に記載される所望の化学反応は、迅速かつ効率的に進行する。
【0026】
理論に拘束されることなく、マイクロ波照射は、気体前駆体からプラズマを生成するように以下のように作用することが理解される。前駆体気体(例えばメタン)を、かかる気体の誘電性強度を満たすかまたは超えるマイクロ波照射に供する場合、マイクロ波場領域中の(バックグラウンド照射または他の供給源から与えられる)遊離電子は、中性分子との衝突の間にマイクロ波電場から十分なエネルギーを獲得し得、別の原子または分子をイオン化し得る。二次的なイオン化電子は、その後、マイクロ波照射の電場により支配される方向で加速され、該電子は、別のイオン化事象を引き起こすまで、エネルギーも獲得する。イオン化のこのプロセスは、安定状態に達するまでマイクロ波場領域を通って進行する。プラズマ中の最終的な電子数は主に、拡散、再結合および接着(attachment)などのプラズマの電子損失プロセスにより決定される。
【0027】
本明細書に開示される系および方法は、マイクロ波照射に供される反応体前駆体気体として、メタンなどのC1-C4炭化水素を使用する。メタンは、これらの系および方法における使用に適切な反応体前駆体気体を例示するために使用され得る。
【0028】
上述の、エネルギー付与された電子との衝突により開始されるプラズマ中のメタン電離は、CHxラジカルの形成を生じる。主要な開始反応は、メタン中のC-H結合の切断であり、結果的にCH3*、CH2*、CH*、H*およびCが形成される。これらのラジカルは、再結合して、以下の式:
CH3* + CH3* → C2H6
CH2* + CH2* → C2H4
CH* + CH* → C2H2
CH3* + CH* → C2H4
CH3* + CH2* → C2H4 + H*
CH3* + CH* → C2H4
CH3* + CH* → C2H2 + H2
CH2* + CH* → C2H2 + H*
により例示される2炭素断片を形成し得る。
【0029】
また、メタンは、種々のラジカルと結合して、以下の式:
CH4 + CH3* → C2H6 + H*
CH4 + CH2* → C2H6
CH4 + CH2* → C2H4 + 2H*/H2 CH4 + CH* → C2H4
CH4 + CH* → C2H2 + H* + H2
により例示される2炭素断片を形成し得る。
【0030】
2炭素断片および水素を形成するための図示される反応に加えて、プラズマ生成ラジカルと、互いのおよび前駆体気体との再結合により、高次炭化水素が形成され得る。本明細書で使用する場合、用語「高次炭化水素」は、芳香族を含み、飽和または不飽和のいずれにせよ、3以上の炭素原子を有する任意の炭化水素をいう。
【0031】
さらに、メタンの完全な脱水素化が起こり得、元素状態の炭素および水素の気体の形成が生じる。代表的な反応を
図1に示す。
図1に示されるように、炭化水素を生じるいくつかの例示的反応を点線内に示し、元素生成物(水素および炭素)を点線の外側に示す。
【0032】
態様において、パラメーターは、アセチレン形成を最大化するために最適化され得る。他の態様において、パラメーターは、水素形成を最大化するために最適化され得る。例えば一般原理として、プラズマ反応チャンバーに入る供給ガスが炭化水素入力と比較してより少ない水素を含む場合、出力は潜在的により多くの炭素固体と組み合わせた、より多くの形成される水素である。この原理に従って、水素形成を最大化するために、純粋な炭化水素供給物を使用し得、ある量の炭素固体に加えて、より多くの所望の水素が生成される。(例えば他の種に対してアセチレンの優先的な形成を可能にする、または炭化水素生成物に対して水素の優先的な形成を可能にする)生成物選択性に影響する要素としては、限定されないが、反応体前駆体気体の同一性、系への他の気体の添加、系に入る任意の気体の流速、反応器系内の温度および圧力、プラズマを生成するために使用されるマイクロ波動力の量および流れの幾何学的構造、反応域内のエネルギー密度、プラズマの周囲の電場の配置、ならびに反応器容器の幾何学的構造および寸法が挙げられる。態様において、静的な電場および磁場を使用して、プラズマの挙動およびそのために生成物選択性に影響を及ぼし得る。
【0033】
c. 前駆体気体
本明細書に開示される系および方法について、C1-C4アルカン炭化水素(例えばメタン、エタン、プロパンおよびブタン)または他の炭化水素気体を、単独または他の気体と組み合わせて、前駆体気体として使用し得る。これらの系および方法の態様において、メタンは主要な前駆体気体である。態様において、メタンは、プラズマ反応チャンバーに入る際に水素および/または窒素と結合され得、プラズマ状態までエネルギー付与される単一気体混合物を形成する。態様において、メタンは、プラズマ反応チャンバー自体のノズルの組を通って該チャンバーに入り、他の気体(水素および/または窒素など)は、異なる組(1つまたは複数)のノズルを通って別々にプラズマ反応チャンバーに添加される。メタンは純粋な状態で使用され得るか、またはメタンは市販される気体流の構成要素として系に導入され得る。
【0034】
天然ガスまたはバイオガスなどの混合気体供給源は、この前駆体気体の特に有利な供給源である。本明細書で使用する場合、用語「バイオガス」は、種々の天然または人工の環境における有機廃棄物材料の嫌気性分解により生じる混合気体をいい;用語「バイオガス」は、かかる気体生成性嫌気性分解が起こり得る全てのこれらの天然または人工の環境、例えばごみ埋め立て地、肥料貯蔵池、自治体の廃棄物用地、汚水処理施設、農業用廃棄物用地、永久凍土腐敗などを含む。これらの用地から収集または回収されるバイオガスは、そのメタン含有量を増加し、不純物を除去するために処理または改良され得るので、バイオガスは、本明細書に開示される系および方法のための前駆体気体として特に適切になる。
【0035】
自治体廃棄物、農業廃棄物、植物材料、汚水、肥料、食品廃棄物または他の天然もしくは人工の有機物供給源などの原料から生じるバイオガスは、典型的に、有機材料の嫌気性消化または発酵を介して閉鎖系において形成される。この処理の第1の段階は加水分解であり、不溶性有機ポリマーは嫌気性酸生成(acidogenic)細菌の活性のための基質として働く糖およびアミノ酸に分解される。第2の段階において、これらの細菌は、糖およびアミノ酸を二酸化炭素、水素、アンモニアおよび有機酸に変換し;酸生成細菌はさらに、有機酸を酢酸、アンモニアおよび二酸化炭素に変換する。第3の段階として、嫌気性細菌の別の集団、メタン生成微生物は、これらの発酵生成物をメタンおよび二酸化炭素に変換する。硫化水素などの気体性副生成物と共にメタンと二酸化炭素の混合物を含むバイオガスは、収集され得、二酸化炭素および望ましくない気体性生成物を除去するように処理され得、エネルギー生成またはさらなる処理に適切な高濃度のメタンを有する気体性混合物を残す。バイオガス中のメタンは、バイオガス改良のプロセスを使用して濃縮され、化石燃料由来天然ガスと同様の性能特徴を有する生成物を生じる。
【0036】
バイオガス改良のために例えば水洗、吸着、膜分離、アミンガス処理等の処理を使用し得る。改良プロセスは、バイオガスを気体供給源として使用する前に、バイオガスから酸素を除去するために有利に実施され得る。供給気体中の酸素は、供給気体を燃焼に対して脆弱にし得;さらに、酸素は、本明細書に開示されるプラズマ系炭化水素処理系に使用される設備を腐食し得る。さらに、特定の状況下で、酸素除去は、規制的標準または他の純度要件を満たすために必要であり得る。いくつかの酸素除去技術はバイオガスを用いた使用に適切である。例として、酸素は、還元金属種と反応し得るので、金属が酸化され、酸素が消費される。次いで、酸化金属種は、水素または一酸化炭素含有気流を金属種上に通過させ金属種を還元することにより活性形態に戻して再生され、水または二酸化炭素がそれぞれ生成される。パラジウムまたはニッケルなどの金属種は、O2と混合された炭化水素種と共に、>500°Fで酸素を触媒的に燃焼させるために使用され得る。別のアプローチとして、酸素をトラップするために、使い捨ての様式で、固形の不純物除去剤を使用し得る。例えば、Fe2S3は、3モーラー当量の分子酸素と反応して、さびおよび元素状態硫黄を形成し得る。さらに別のアプローチとして、空気分離ユニット(ASU)において見られる技術と同様に5Aまたは13Xの分子ふるいなどの分子ふるいにより他の気体から酸素を分離し得る。バイオガスについての他の改良プロセスは、慣例的な実験以下のものを使用して、当業者に入手可能である。改良されたバイオガスは、U.S.パイプラインにおける天然ガスと同様の純度および品質に達し得、同じ目的に使用し得る。
【0037】
地面から抽出される場合、天然ガスは主にメタンであり、これらの系および方法のための前駆体気体の有用な供給源となる。典型的に、天然ガスはまた、非炭化水素不純物に加えて、エタン、プロパン、ブタンおよびペンタンなどの高次炭化水素を含む。以下の表(表1)は、天然ガスの例示的な組成を示す。
【表1】
【0038】
天然ガスは一般的に、天然ガスを商業的または住宅的用途に入手可能にする前に、非メタン構成要素のほとんどを除去するように処理されるので、消費者に届く際には、天然ガスはほぼ純粋なメタンである。例として、商業的に入手可能な天然ガスは、約96%のメタンを含み得る。天然ガスからその不純物を取り除いた後に天然ガスを消費者市場に運ぶために、米国には広大なパイプラインの系が存在する一方で、多くの天然ガスは、これらの市場から遠いおよびパイプライン基幹施設から遠い地域に見られる(しばしば、遠隔地のまたは「取り残された(stranded)」天然ガスと称される)。態様において、本明細書に開示される系および方法はその場(in situ)、例えば取り残された天然ガスの場所で使用されて、天然ガスをアセチレンおよび他の有用な生成物に変換し得;したがってこれらの系および方法は、この取り残された天然ガスを資源として利用するための経済的な方法を提供する。
【0039】
2. 系およびサブ系
態様において、本明細書に開示されるプラズマ系炭化水素処理系は、6つのサブ系:1)気体送達サブ系、2)マイクロ波サブ系、3)真空サブ系、4)冷却サブ系、5)排出物分離および使い捨てサブ系ならびに6)データ管理および安全性サブ系を含み得る。これらのサブ系は、以下により詳細に記載される。これらのサブ系の一体化を
図2に概略的に示す。これらのサブ系および方法からの所望の出力は、高度のメタン変換および高度のアセチレン選択性および/または高度の水素選択性を含み得る。
【0040】
図2に概略的に示されるように、プラズマ系炭化水素処理系200は、1つ以上の流入気体202、204および208の、プラズマ反応チャンバー214から生じる流出流212に含まれる気体性生成物の混合物への変換を提供し、ここでプラズマ反応チャンバーは、マイクロ波サブ系218により発生されるプラズマを含む。示される態様において、炭化水素流入気体202、例えばメタンは、流出流212の特定の画分のリサイクルから生成される水素含有流入気体208とは別にプラズマ反応チャンバー214に入る。窒素などの任意の補助的気体204は、示されるように別々に導入され得るかまたは他の流入気体202および208の1つまたは両方と混合され得る。種々の流入気体流およびそれらのプラズマ反応チャンバー214への方向づけは気体送達サブ系210に包含される。気体送達サブ系210は、適切な割合の流入気体の生成およびそれらの流速の制御に責任がある(responsible)。一旦、流入気体がプラズマ反応チャンバー214に入ると、流入気体は、マイクロ波サブ系218により生成されるマイクロ波によりエネルギーを付与され、これによりプラズマ反応チャンバー214内でプラズマ状態を生じる。流出流212は、アセチレン、水素および未反応メタンと高次炭化水素の混合物を含む流出(または「生成された」)気体生成物を運ぶ。炭素固体は流出気体流212に乗せられ得る。排出物分離および使い捨てサブ系220は、廃棄物構成要素が処分され得るように流出流212からの廃棄物構成要素の分離を可能にし、さらなる商業化のためまたは流入気体208としてのプラズマ反応チャンバー214への再導入のために、必要な場合は所望の構成要素の別の流れへの分離をさらに可能にする。例えば、アセチレン224は、分離/使い捨てサブ系220内で流出流212から分離され得、アセチレンは商業的に使用され得る。態様において、例えばアセチレンは、化学反応における使用のためにさらに精製され得る。他の態様において、アセチレンは、他の用途のためまたは使い捨てのために他の化合物を形成するかまたは元素状態の炭素を形成するかいずれかするようにさらに処理され得る。態様において、流出気体流212に乗せられた炭素固体は、別の生成物または廃棄物材料222として分離/使い捨てサブ系220により除去され得る。示される態様において、主に水素であるリサイクル流228は、分離/使い捨てサブ系から生じ、流入気体208としてプラズマ反応チャンバー214に戻してリサイクルされる。他の態様において、反応器により生成される水素の一部または全体は、流出流212から分離され得、別々に商品化され得る。さらに他の態様において、流出流212構成要素の分離は、異なるように進行し:例えば炭素は、全体的に分離され得、混合された水素および炭化水素気体流は商業化または他の用途のために分離される。分離/使い捨てサブ系は、特定の気体処理目標に従って、単一気体または気体混合物を分離するように構成され得る。
図2に概略的に示されるように、真空サブ系230は、それらを低圧で維持するために特定の系構成要素の周辺にある(surround)。冷却サブ系(示さず)はそれぞれの系構成要素に適切な冷却を提供する。
【0041】
態様において、入力気体流速(SLM)、入力圧および変換された炭化水素(例えばメタン)当たりの動力を含むいくつかの系パラメーターは、炭化水素(例えばメタン)変換速度およびアセチレンまたは水素選択性を最適化するように改変され得る。表2は、これらのパラメーターを変動することの効果を示す。異なる系パラメーターの結果を比較するための有用な測定規準は、変換されたメタン1分子当たりの使用されるエネルギー(eV/CH
4)として計算される効率である。この測定規準は、生成物1kg当たりの製造費用などの工業的用途ならびに結合強度に対する比較および熱力学効率の計算などの科学的用途の両方に容易に適用される。
【表2】
【0042】
a. 気体送達サブ系
態様において、気体送達サブ系は、流入気体をプラズマ反応チャンバーに方向づけるように構築される。気体送達サブ系は2つの構成要素、送達導管および気体注入器を含む。(i)反応器に供給される気体(流入気体);(ii)流入気体をプラズマ反応チャンバーに運搬するための送達導管、ここで送達導管は、気体フローのための1つ以上の別々の回路(または「運搬回路」)を含み、運搬回路は、主要供給気体運搬回路、主要供給気体に加えてさらなる気体のための補助的気体運搬回路および/またはその後の反応のために流入気体として使用される1つ以上の生成された気体(例えば水素)の戻りを可能にするためのリサイクル気体運搬回路を含み得る、ならびに(iii)送達導管および構成要素流入気体をプラズマ反応チャンバー自体に導入するその構成要素運搬回路と流体的に連絡する気体注入器アセンブリのさらなる説明が本サブ系の説明に含まれる。
【0043】
i. 流入気体
流入気体は、C1-C4アルカン炭化水素などの前駆体反応体気体を種々の組合せで含み得る。前駆体反応体気体は、プラズマ状態でのさらなる反応のために水素または炭素を提供するものである。態様において、流入気体はメタンおよび水素であり、窒素は任意にメタンと合わされる。ある態様において、メタンおよび水素は反応体である。反応体気体の割合は、任意の窒素添加物と共に、生成物プロフィールおよび収率を最適化するように経験的に変更され得る。
【0044】
プラズマ系炭化水素処理系により使用される流入気体は、供給タンク、供給ラインから直接および/またはリサイクルを介して供給され得る。本明細書で使用する場合、用語「流入気体」は、プラズマが形成されるプラズマ反応チャンバーに添加される任意の気体を意味する。流入気体は、メタンまたは水素などの反応体気体であり得、
図1に記載されるように、これはプラズマ状態により種々の生成物に変換される。流入気体は、窒素などの補助的添加気体であり得る。流入気体は、「供給ライン」と称される外部気体供給源から、または系内リサイクルから供給され得、ここで系により生成された気体は、その後の反応のために、全体的または部分的にプラズマ反応チャンバーに再導入される。
【0045】
外部気体供給源または供給ラインを介して系に入る流入気体は、貯蔵タンクなどの気体レザバーに由来し得るか、または混合気体供給源ライン(例えば天然ガスラインまたはバイオガスライン)などの外部に位置を決められた流動気体ラインに由来し得る。態様において、流入気体は単独で(または実質的にそれのみで)反応体メタンおよび水素を含み、さらなる気体性添加物が故意に添加されることはない。流入気体中のメタンは、天然ガスまたはバイオガスなどのより複雑な流動気体混合物の構成要素として得られ得る。態様において、メタンおよび任意に窒素は、供給ライン(すなわち貯蔵タンクまたは流動気体ライン)から供給され、一方で水素は、貯蔵タンクから供給され得るか、または生成物流からリサイクルされて反応器へと逆に方向づけられ得る。
【0046】
系内リサイクルのために使用されるリサイクル気体流はプラズマ反応チャンバーからの排出物(すなわち流出気体)であり、任意に種々の構成要素気体に分離され、該気体(1つまたは複数)のいくつかまたは全ては、プラズマ反応チャンバーに再導入される。態様において、流出気体生成物流中の水素は、他の気体から分離されて、精製された形態でリサイクルされる。態様において、炭化水素流入気体は、流動気体供給ライン、例えば天然ガスラインまたはバイオガスラインを介してプラズマ反応チャンバーに導入され、一方で水素は、炭化水素流入とは別にプラズマ反応チャンバーに導入され;この水素は、全体的または部分的にリサイクル気体流に由来し得る。
【0047】
態様において、リサイクル気体は水素リッチ反応体気体を含み得、ここで水素は主要構成要素であり、反応し得るいくつかの炭化水素も存在する。水素リッチ反応体気体は本質的に水素からなり得、すなわち約95%以上の水素または約96%以上の水素または約97%以上の水素または約98%以上の水素または約99%以上の水素を含み得る。態様において、水素リッチ反応体気体は、約90%以上のリサイクル気体または約91%以上のリサイクル気体または約92%以上のリサイクル気体または約93%以上のリサイクル気体または約94%以上のリサイクル気体を含む。態様において、リサイクル気体は本質的に、水素リッチ反応体気体からなり、すなわち水素リッチ反応体気体は、約95%以上のリサイクル気体または約96%以上のリサイクル気体または約97%以上のリサイクル気体または約98%以上のリサイクル気体または約99%以上のリサイクル気体を含む。態様において、リサイクル気体は、水素リッチ反応体気体に加えて、窒素などの非反応体気体を含む。態様において、水素リッチ反応体気体を除けばリサイクル気体の残りは窒素である。他の態様において、窒素は、リサイクル気体中のその存在または非存在とは別に独立した補助的気体として添加される。系内で使用される水素および窒素の体積は総メタンフローに関連して表され得る。例えば、流入気体供給物の以下の比、1:0~3:0.1のメタン:水素:窒素が使用され得;他の態様において、流入気体供給物の以下の比、1:1~2:0.1のメタン:水素:窒素が使用され得る。態様において、メタンおよび水素の同様の比が窒素の非存在下で使用され得る。一態様において、反応器への300~400SLM(約11~14SCFM)のメタンフローが使用され得る。一態様において、約380SLM(13.4SCFM)のメタンフローが使用され得る。態様において、これらのフローは、100kWの反応器動力に適切である。
【0048】
態様において、より多いまたはより少ないアセチレン製造について選択するために、反応器に入る水素の量は変動され得る。反応器に入る水素の量を増加することにより、メタンと反応するために入手可能なこの気体の量が増加し、それによりアセチレン製造のための変換選択性が向上され、望ましくない煤蓄積の量が減少される。態様において、反応器に入る水素の増加した量は、アセチレンと比較して、流出中のエチレンの量を減少させる。
【0049】
態様において、水素は水素シリンダーから提供される。他の態様において、水素は、系全体により生成される水素をリサイクルすることにより提供され得:すなわちプラズマ反応中のメタンなどのC1-C4炭化水素供給原料から生成される水素は反応体として再利用され得る。ある態様において、流入気体として水素を系へと逆に運搬するリサイクル気体運搬回路は、例えばこの水素の入力を調整するために水素供給タンクからの水素の別の流入供給源と合わされ得る。このアプローチは、製造サイクル中の特定の時点、例えばリサイクルされた水素がまだ生成されない系の開始時に有利であり得るか、またはリサイクルの際に生成される水素の変動に関わらず、水素流入を一定のレベルで維持するために有利であり得る。
【0050】
一態様において、気体送達サブ系は、気体の混合の均衡を保つためおよび気体フローをマイクロ波エネルギーにより調和させるために、例えば系の開始時に予め充填され得る。第1に、系は空気を抜かれて、真空に近い圧力で設定され得る。第2に、系は、水素の外部供給源から充填され得、逆行してリサイクル気体運搬回路に導入された水素により逆に充填され得るか、または別の水素流入ラインから順方向に充填(front-filled)され得るかのいずれかをされ得る。第3に、C1-C4炭化水素(例えばメタン)またはC1-C4炭化水素/窒素混合物は、流入気体として添加され得、フローは流量計により測定される。適切な気体をこのように予め充填された系を用いて、反応器にエネルギーを付与し得、流入気体を処理し得る。流入気体がプラズマ反応チャンバー内で処理されるにつれて、水素は、他の気体生成物と共に、流出気体生成物流内で生成される。次いで、流出気体生成物流から捕捉された水素を系にリサイクルさせ得、同時に外部水素流入を減少させる。(外部供給ラインからおよびリサイクルからの)外部および内部の水素流入の均衡を保つことにより、全体的な系のための円滑な開始手順が容易になり得る。
【0051】
態様において、メタンは、これらの系および方法において記載されるプラズマ系炭化水素気体処理のための炭化水素含有流入気体の主成分である。態様において、メタンは、気体シリンダーから、パイプラインからまたは以前に記載されるように混合気体(例えば天然ガスまたはバイオガス)の流入から導入され得る。一組のコンプレッサを使用し得るので、メタンは正確な圧力、例えば少なくとも約2atmの供給圧力で導入される。天然ガスまたはバイオガスを使用してメタン供給気体を提供する場合、入手可能なメタンの量は、例えばベンチトップガスクロマトグラフを使用してモニタリングされ得、天然ガス中の不純物が同定されて除去され得る。例えば、天然ガスまたはバイオガス供給物が硫黄を含む場合、硫黄はアセチレン生成物流の純度に影響を及ぼし得;かかる不純物は、処理の前に除去されなければならない。天然ガスまたはバイオガス中に一般的に見られる種々の不純物(例えば二酸化炭素、メルカプタン、硫化水素等)は、一連のプレスクラバー(pre-scrubber)により除去され得、ここで選択されるスクラバーの種類は、除去される不純物に依存する。
【0052】
望ましくは、メタンを含む混合気体は、実質的に不純物または他の気体を含まないような高濃度のメタンを含み得る。商業的な処理をしない天然の供給源から直接由来する天然ガスは、約90%以上のメタンを含み得る。しかしながら、商業的に入手可能なように処理された天然ガスまたは同等に処理されたバイオガスは、実質的に非メタン気体および不純物を含み得ない。かかる供給源由来の炭化水素含有流入気体は、本質的にメタンからなると考えられ、この用語は約95%以上のメタンを含む流入気体をいう。本質的にメタンからなるかかる気体は、例えば約95%以上のメタンまたは約96%以上のメタンまたは約97%以上のメタンまたは約98%以上のメタンまたは約99%以上のメタンを含み得る。その場の天然ガス(処理前に鉱井中に見られる)などまたはバイオガスなどの天然供給源から提供される気体は、より少ない量のメタンを含み得るが、炭化水素含有流入気体としての使用のために予め処理され得るので、かかる気体は、より高濃度のメタンを有し;態様において、かかる予め処理された気体は、これらの系および方法のための炭化水素含有流入気体として使用される場合、本質的にメタンからなる。
【0053】
態様において、他の補助的気体は、流入気体流の構成要素としてまたは該気体流への添加物、例えば窒素、二酸化炭素および/または他の反応性もしくは不活性気体などの添加物として使用され得る。一態様において、窒素は、流入供給気体の構成要素として任意に使用され得;窒素はまた、以下に記載される真空ポンプのための密封気体として使用され得る。一態様において、流入供給気体は約10%の窒素を含むが、この量は、アセチレン製造の効率および選択性を最適化するために変動または調整され得;他の態様において、窒素は、約0%~約10%の量で存在し得、窒素は故意に添加されるか、または例えば供給気体の外部に見られる微量な構成要素として外部に存在するかのいずれかである。他の態様において、さらなる窒素は含まれない。流入気体構成要素としての窒素の使用に加えて、気体および液体形態の窒素は種々の構成要素を冷却し、以下に記載されるように、反応器の周囲に窒素「緩衝剤」を提供するための冷却サブ系の一部として使用され得る。二酸化炭素は、流入気体の別の構成要素として含まれ得るか、または反応器排出物のガスクロマトグラフィー分析のための内部標準として働くために反応器排出物と混合され得る。一態様において、二酸化炭素は、下流のガスクロマトグラフィー測定において良好な精度を達成するために、メタン供給物の30%の量で排出物に添加される。反応体気体に加えて、他の補助的気体、例えばガスクロマトグラフィーのためのヘリウムおよびアルゴンを流入気体として使用し得る。
【0054】
ii. 気体送達導管
気体送達導管は、種々の流入気体(反応体気体、添加物または補助的気体およびリサイクル気体を含む)を気体注入器に運搬し;気体注入器は、種々の流入気体をプラズマ反応チャンバーに送達する。気体送達導管は、特定の気体流を専門にされる運搬回路を含み:供給気体は供給気体運搬回路内で運ばれ、さらなる気体は1つ以上のさらなる気体運搬回路により運ばれ、リサイクル気体(1つまたは複数)は1つ以上のリサイクル気体運搬回路により運ばれる。態様において、これらの系および方法は、主要な気体供給物として、炭化水素保有流入流、例えばメタン流または混合気体流(例えば天然ガスまたはバイオガス)を使用し、主要な気体供給物は、供給気体運搬回路により運ばれる。態様において、主要な気体供給物に加えてさらなる気体流も、気体送達導管を通過し得、窒素などの不活性気体を添加し、および/またはそれらの指定された運搬回路を介して、別々の流れとして水素などの反応体を添加する。さらに、態様において、リサイクル気体流は、以下により詳細に記載されるように、リサイクル気体運搬回路を通って混合物に添加され得;リサイクル気体流は、少量の未反応メタンおよび他の炭化水素構成要素と共に、主要な構成要素として水素を含み得る。態様において、それぞれの運搬回路は気体注入器アセンブリと流体連絡し、例えば専門のノズル、バルブまたは導管を通って、その気体を別々に気体注入器アセンブリに運搬する。
【0055】
これらの系および方法に従う気体送達サブ系300の態様の概略図を
図3に示す。この図に示されるように、炭化水素保有流入気体流302は、水素保有流入気体流304および任意の補助的気体流308と合わされて、プラズマ反応チャンバー310に入る。示される態様において、3つの気体流は、プラズマ反応チャンバー310中で3つの別々のフローの渦状の混合(intemingling)314が生じるような方向および速度で種々のフローを分散させる気体注入器312(以下により詳細に記載される)を通って入る。渦状の混合314内の混合された気体は、プラズマ反応チャンバー310の反応領域318に入り、ここで混合された気体は、マイクロ波サブ系322内で生成されるマイクロ波エネルギーによりエネルギーを付与され、プラズマ反応チャンバー310の反応領域318内でプラズマ320を形成する。示される態様において、流入気体302、304および308はそれぞれ、別々の流入口を通って別々の流れとして気体注入器312に入り、それぞれは、気体注入器から、気体注入器自体の流出口を通ってプラズマ反応チャンバー310に入る。それぞれの流出口からの流れの方向、流れの速度および流速は、それが、プラズマ反応チャンバー310内で気体の渦状の混合314を生じるように方向づけられる。
【0056】
流入気体は、一定または可変性の流動パターンで、および連続流動パターンまたは不連続流動パターンで、およびこれらのパターンの任意の組合せでプラズマ反応チャンバーに導入され得る。態様において、可変の流動パターンは、その変動性において規則的または不規則であり得、該パターンは流動パターンを記述する基礎をなす波形の上に重ね合わされるフローの断続的なパルスまたはサージを含み得る。シヌソイド状の流動パターンは、異なる量のフローを詳細に描写するために矩形波を使用する階段状または「ボックスカー(boxcar)」の流動パターンのように、可変の流動パターンの一例である。態様において、これらの可変流動パターンは、フローがない期間を含み得るので、可変流動パターンは不連続である。態様において、気体は全ての流入口を通って同時に導入され得るか、または気体は異なる流入口を通って異なる時間に導入され得る。気体は、それぞれの流入口で異なる流速および異なる流動パターンで導入され得る。例えば、供給気体は一定の流動パターンにより連続して導入され得、一方で1つ以上の補助的気体流は、ばらばらに、すなわち不連続に導入され得る。または、例えば供給気体は不連続に(すなわちその流入の中断を有して)導入され得、1つ以上の補助的気体は、補助的気体が流れて供給気体が流れないように、変動的および/または不連続に導入され得る。または別の例として、供給気体は連続の流動パターンで連続して導入され得、一方で1つ以上の補助的気体は連続するが、供給気体とは異なる流動パターンで導入され得る。特定の気体処理目標を達成するために、例えばプラズマ反応チャンバー中の煤形成を減少するためにまたはアセチレン選択性を増加するためにまたは反応チューブの内部を断続的に清掃することを可能にするために、連続/不連続パターン化および流動パターン変動性の他の組み合わせが計画され得る。
【0057】
先に記載されるように、プラズマ状態にエネルギー付与される気体は、炭化水素供給気体が他の炭化水素および水素に変換されるように、一連の(a spectrum of)反応を経験する。
図3は、プラズマ320から生じる、所望の炭化水素生成物(1つまたは複数)、特定の外部の炭化水素生成物および水素ガスを含む流出流324を示す。流出流324の構成要素は、以前に記載した排出物分離/使い捨て系328により互いに分離される。
【0058】
iii. 気体注入器
気体注入器は、複数の流入口を通って、種々の流入気体流をプラズマ反応チャンバーに導入する。態様において、種々の流入気体流のためのフローチャンネルを含む気体注入器は、高温の樹脂からプリントアウト(printed out)され得る。気体注入器は、反応器内で展開され得るかまたは反応器内のプラズマ反応チャンバーから種々の距離で反応器と流体連絡して配置され、ここで用語「プラズマ反応チャンバー」は、マイクロ波エネルギーが供給気体流と遭遇する反応器内の領域をいう。一態様において、気体注入器は、反応器の近位端に配置され得、反応器の長軸に沿って、近位から遠位への順行性の気体フローを可能にする。他の態様において、気体注入器は、反応器の遠位端に配置され得るかまたは反応器の長軸に沿った任意の他の位置に配置され得る。態様において、気体注入器は、反応器チューブ内の中心に配置され、気体フローは周囲に方向づけられる。他の態様において、気体注入器は、反応器チューブ内の周囲に配置され、気体フローは中心に方向づけられる。ノズルから出る気体フローは、チューブの長軸に沿って任意の角度に向けられ得るので、気体は軸方向で近位または遠位に流れ得る。ノズルは、対称または非対称な渦状のフローを生じるように整列され得る。
【0059】
態様において、流入気体フローは、気体注入器により、螺旋形または渦状(vortical)の気体フローを生じるように向けられ得、該気体フローは種々の気体流を混合することを補助する。気体注入器は、流入気体流が反応器に入る際にそれぞれの流入気体流に別々のノズルまたはポートを提供するように構成される。渦状のフローは、2つ以上のノズルまたはポートを有する反応器内の中心に配置される気体注入器デバイスから生じ得、ここでそれぞれの流入気体は、1つ以上のノズルまたはポートのそれ自体のサブセットを通って別々に送達される。一態様において、反応器内の中心に配置されるこれらのノズルまたはポートは、周囲に向けられ得、所望の気体流動パターンを生じるように角度がつけられ得る。他の態様において、渦状のフローは、反応器の周囲に沿って整列される2つ以上のノズルまたはポートを有する気体注入器を通って反応器内に流れる気体により生成され得、ここでそれぞれの流入気体は、2つ以上のノズルまたはポートのそれ自体の別々のサブセットを通って別々に送達される。態様において、渦状のフローは、プラズマを、反応器の内部領域に向かうように制限するように働く。当業者に理解されるように、逆の渦状のフローなどのさらなる渦状のフローの構成も使用され得る。
【0060】
図4Aおよび4Bは、これらの系および方法と適合性の気体注入器の態様を示す。
図4Aは、気体注入器404が中心に配置されるプラズマ反応器400の反応チャンバー402の近位部の横断面を示し;
図4Aの示される断面の近位の位置は、
図3のラインAに示される。この
図4Aに示される気体注入器404は、2つの同軸上にあるが別々の気体フロー、中心気体フロー408および第2の気体フロー410を包む。中心気体フロー408は、1つの気体、例えば主要な反応体であるメタンを含み得る主要な供給気体を含む。第2の気体フロー410は、別々かつ異なる気体、例えば水素などのさらなる気体または補助的気体を含み;この気体は水素などのリサイクル気体でもあり得る。代替的に、中心気体フロー408はさらなる気体を含み得、一方で第2の気体フローは主要な供給気体を含み得る。他の態様において(図示せず)、リサイクル気体フローは、補助的気体についてのフローチャンネルとは別の別々の同軸チャンバー内に維持され得、それぞれのフローチャンネルは、プラズマ反応チャンバー402に入る1つ以上の気体ノズルのそれ自体の組を有する。
図4Aに示される注入器設計について、中心気体フロー408は、遠位に向けられかつここで断面図のみにおいて見られる中心気体ノズル412の中心を通って気体注入器404から排出され、一方で第2の気体フロー410は、周囲に向けられる気体ノズル412aおよび412bを通って気体注入器404から排出される。この図に示されるように、第2の気体ノズル412aおよび412bは、第2の気体フロー414aおよび414bがプラズマ反応チャンバー402に入って、反応器400内で気体の渦を形成する角度に方向づけられる。
【0061】
図4Bは、
図4Aに図示される原理を組み込んだ気体注入器450の態様の長手方向の断面を示す。
図4Bに示される気体注入器450は、第2の気体フロー454に取り囲まれた中心気体フロー452の同軸の整列を示す。気体注入器450は、反応器(この図には示さず)内で中心に配置され、中心気体フロー452および第2の気体フロー454からの気体フローは、気体注入器450から排出されて反応器内に流れる。第2の気体ノズル458aおよび458bは、これらのノズルから排出される第2の気体が渦状のフローを生成するように向けられるような角度(
図4Aに示される)で整列され得る。同様に、第1の気体ノズル460から排出される気体は、渦状のフローを生成するかまたは渦状のフローに寄与するように方向づけられ得る。態様において、気体注入器450により反応器400内で生成された渦状のフローは、気体の混合を可能にし、次いで、気体流のプラズマへの暴露を最適化し得る。
【0062】
b. マイクロ波サブ系
態様において、マイクロ波サブ系は、供給気体をその生成物に変換する非熱プラズマを形成するためのマイクロ波動力を生成、誘導および適用するために使用される種々の構成要素を含む。
【0063】
マイクロ波サブ系の態様の概略図を、以下により詳細に記載される
図5および6に示す。
図5は、サブ系の構成要素の概観を提供する。
図5に示されるように、マイクロ波サブ系500の態様は、動力源502、磁電管504、導波管アセンブリ508およびアプリケーター510を含み、磁電管504により生成されるマイクロ波エネルギーは、伸長した反応器チューブ514(ここで断面図に見られる)内のプラズマ反応チャンバー512内で流入気体と遭遇してプラズマを生成する。反応器チューブ514は、以下により詳細に記載されるように石英で作製され得る。一態様において、磁電管にエネルギーを付与するために動力源502は、96%の効率で20kV、5.8Aの低リプルDC動力を発生させるように480V、150AのAC電力を必要とする。一態様において、磁電管504は、100kWとも評価され、83~89%の効率でマイクロ波動力を生じる。態様において、生じたマイクロ波は、915MHzの周波数を有するLバンド内にある。
【0064】
この図に示されるように、マイクロ波は、マイクロ波をアプリケーター510に方向づける導波管アセンブリ508に入り、アプリケーターは次いでマイクロ波を反応器チューブ514内のプラズマ反応チャンバー512に方向づける。示される態様において、導波管アセンブリ508は、2つのサーキュレーター518および520を含み、サーキュレーターは、マイクロ波をアプリケーター510に方向づけ、かつ反射されたマイクロ波動力が逆に磁電管504にカップリングして磁電管を損傷することを防ぐ。それぞれのサーキュレーター518および520は、以下により詳細に記載されるように、マイクロ波をアプリケーター510およびプラズマ反応チャンバー512に方向づけるために、反射されたマイクロ波を偏向させるフェライトアレイ516および526のそれぞれを含む。それぞれのサーキュレーター518および520は、反射したマイクロ波を収集するために、その末端でそれぞれの水負荷(water load)522および524を有する。示されるように、第2のサーキュレーター520は、3スタブ同調器とアプリケーターの接合の遠位にあるアームにおいて、3スタブ同調器(stub tuner)530を使用して動力を下げる動力同調器528を含む。アプリケーター510とインターフェースで連結される(interface)第2のサーキュレーター520のアームにおいて、3スタブ同調器532は、双方向カプラー534に対して遠位に配置され;この配置は、マイクロ波反射を最小化することおよびアプリケーター510に方向づけられるマイクロ波エネルギーを最適化することを意図する。アーク(arcing)を防ぐために、第2のサーキュレーター520とアプリケーター510の間に石英窓538が挿入される。プラズマがオフになりマイクロ波がオンになる場合、電場が、プラズマ反応チャンバー512を含む反応器チューブ514内の供給気体の分解を開始させるのに十分になるように、定常波は、3スタブ同調器532とアプリケーター510の末端の摺動短絡プレート(shorting plate)540の間のアプリケーター510で構成される。反応器チューブ514は、アプリケーター510の広い壁を通って進むが、マイクロ波導波管508とは直接接触しない。一旦、プラズマ状態の初期化が達成されると、次いで、3スタブ同調器532は、プラズマ負荷アプリケーター510に入るマイクロ波信号のインピーダンスを適合させるように調整され得る。アプリケーター510に入るマイクロ波エネルギーは、プラズマが形成される空洞の寸法を変化させる必要がある場合は短絡プレート540を使用して、プラズマ反応チャンバー512の中心でピークに達するように調整される。
【0065】
プラズマを生成するための動力を最適化するために、プラズマの存在下および非存在下で導波管508のインピーダンスをアプリケーター510のインピーダンスに適合させることが望ましい。しかしながら、プラズマインピーダンスは動的であり、プラズマ反応チャンバー512内の操作圧力、気体フローおよび気体組成に基づいて変化し得る。態様において、マイクロ波サブ系は、導波管に挿入される3つの金属スタブを有する標準的な3スタブ自動同調器(autotuner)532を備え得る。これらのスタブのぞれぞれが導波管に挿入される深さは、反応器510に入るマイクロ波の位相を変化させ、動力がプラズマに適合することを可能にする。自動同調器532におけるマイクロ波の動力および位相の測定により、自動同調器532はスタブの深さをアルゴリズム的に(algorithmically)変更するので、反射される動力(すなわちプラズマにより吸収されない動力)は最小化される。態様において、サブ系における順方向および反射された動力を測定するために、動力ダイオード(標識しない)が取り付けられた双方向カプラー534が含まれ得る。カプラー534には、既知の減衰を有するマイクロ波を、マイクロ波を電圧に変換するダイオードにカップリングさせる2つの小さな穴が取り付けられ得る。態様において、反射された動力は、系に送信される総マイクロ波動力の1%未満である。態様において、マイクロ波アプリケーター510は、マイクロ波を、プラズマ反応チャンバー512内の流動気体供給物にカップリングさせる単一モード共振空洞である。総空洞長さを変化させるために、摺動電気短絡540がアプリケーター510に組み込まれ得る。態様において、100kWデモ単位についてプラズマは、水および気体冷却サブ系を介して除去され得る10kWより多くの熱を発生させ得る。
【0066】
プラズマは、伸長した反応器チューブ514内のプラズマ反応チャンバー512内で生成される。態様において、反応器チューブ514は長いアスペクト比の融解石英チューブを含み得、その外径は約30~約120mmであり、長さは約6ftであり、厚さは約2.5~約6.0mmで変化する。一態様において、反応器チューブは50mmの外径または38mmの外径を有し得る。態様において、チューブサイズは、120/114mm OD/IDまたは120/108mm OD/IDまたは80/75mm OD/IDまたは50/46mm OD/IDまたは38/35mm OD/IDの外径(OD)および対応する内径(ID)を有し得る。態様において、反応器チューブ514は、その長さを通して一定の直径を有する。他の態様において、反応器チューブ514は、変動する直径を有し得、チューブ514の特定の部分はより小さい直径を有し、その他の領域はより大きい直径を有する。態様において、チューブは、先端で約50mmおよび底で約65mmの外径を有し得る。態様において、チューブは、チューブの予め選択された部分、例えばチューブのほぼ中間でより狭い直径を有し得る。石英は、高温取扱い、熱衝撃耐性および低いマイクロ波吸収を有するので、反応器チューブ514の材料として有利である。
【0067】
図6は、より詳細に、
図5に示されたものなどのマイクロ波サブ系600ならびにマイクロ波サブ系内を流れるマイクロ波エネルギー605、607および615の経路を示し;
図6において、マイクロ波サブ系600のある特徴は概略的に示されるが、明確性のために、該特徴が
図5にある場合と同様には標識されなかった。
図6に示される態様に示されるように、磁電管604により生成されるマイクロ波エネルギーは、磁電管604から、そこからマイクロ波エネルギーが順行性(順方向)反射経路607に沿って反射される導波管アセンブリ608の遠位端までの順方向エネルギー経路605に沿って、順方向に方向づけられる。順行性(順方向)反射経路607の方向は、第2のサーキュレーター620内のフェライトアレイ626と順行性反射経路の遭遇により形作られ、フェライトアレイは、反射したマイクロ波607をアプリケーター610およびプラズマ反応チャンバー612に向かって偏向させる。マイクロ波はまた、逆行性(逆方向)反射経路615に沿ってアプリケーター610から逆行性に反射され得、逆行性反射経路は、第2のサーキュレーター620を通って第1のサーキュレーター618へと逆向きに進み、ここでこの経路615内のマイクロ波は、第1のサーキュレーター618内の水負荷622により収集される。逆行性(逆方向)反射経路615は、第2のサーキュレーター620内のフェライトアレイ626、次いで第1のサーキュレーター618内のフェライトアレイ616により、その最終的な方向を確立するように偏向される。一態様において、系内の順方向動力は約25kWであり、反射される動力はこの1%以下であり、0%の反射されるマイクロ波エネルギーが目標である。態様において、系内の順方向動力は約30kWであり;他の態様において、系内の順方向動力は約100kWである。さらに他の態様において、約8kW、約10kWまたは約19~20kWの順方向動力レベルが使用され得る。態様において、系は、約100kW未満のレベルの順方向動力を有利に含み得る。
【0068】
一態様において、マイクロ波サブ系は、
図5および
図6に示されるプラズマ反応チャンバーに向かう単一アーム経路を含む。他の態様において、
図7において以下に示されるように2アームアプリケーター経路が使用され得る。
図7に概略的に示されるように、2アームマイクロ波サブ系700は、「1」および「2」で標識される2つのサーキュレーターを含むサーキュレーターアセンブリ703に入るマイクロ波エネルギーを生成する磁電管704を含む。マイクロ波エネルギーは、実質的に
図6に示されるサーキュレーターを通り、マイクロ波を2つの導波管アーム709aおよび709bに方向づける動力スプリッター706に入り、該アーム内で、マイクロ波は該アームのそれぞれのアプリケーター710aおよび710bに向けられる。態様において、2アーム導波管709aおよび709bならびにアプリケーター710aおよび710bは、入射動力を50:50の比に分割し得るが、他の態様において、選択された比の動力分割が巧みに実行され得る。
【0069】
マイクロ波サブ系における特定の維持処置(measures)は、構成要素の寿命を延長し得、生成物出力を最適化し得る。態様において、例えば反応器は定期的に清掃され得る。非熱プラズマ技術を使用してメタンをアセチレンに変換する場合に炭素の煤の蓄積が反応器チューブ内で生じ得、煤の存在は、石英表面上の局所的な領域の過熱をもたらし得、その後に反応器チューブに損傷をもたらし得ることが理解される。また、マイクロ波カップリングの遠位で蓄積する煤は伝導性になり得、望ましくないアークの形成をもたらす。そのため、態様において、これらの問題を最小化するために、反応器の規則的な清掃がなされる。清掃は定期的な規準でなされ得るか、または商業的操作のために不連続的な要求に基づいてなされ得るか、またはプラズマもしくは排出物の観察可能な特性に応答してなされ得る。清掃目的で、典型的にいくつかの工程:1)プラズマを生成するマイクロ波動力のスイッチをオフにするか、または気体流入を、プロセス気体から不活性清掃気体もしくは気体混合物(例えば純粋なN2または窒素と、空気もしくは他の清掃気体の組合せ)へと切り替えることのいずれかあるいはその両方により、プラズマ反応チャンバー内のプラズマプロセスに対するエネルギーを付与しない工程;2)供給気体流入を中断して可燃性供給気体の流入ラインをパージする不活性気体混合物(例えば窒素)を導入する工程;3)反応器に清掃気体(例えば空気と混合された窒素)を充填する工程;4)効果的な清掃を可能にするためにマイクロ波エネルギーおよび圧力をモニタリングおよび調整することを含む、プラズマ反応チャンバーにマイクロ波エネルギーで再度エネルギー付与して、清掃気体からプラズマ状態を生成する工程;5)一旦反応器チューブをきれいにして、清掃気体の排出または供給気体による清掃気体の置き換えによりプロセスを逆転して、反応器チューブに供給気体を充填し、その後供給気体にエネルギー付与してプラズマを形成することをもたらす工程、が使用される。
【0070】
態様において、流入気体の水素構成要素を増加することにより煤の堆積(およびそのための清掃の必要性)を最小化し得るが;このアプローチは、炭化水素(例えばメタン)変換の効率の低下という欠点を有する。他の態様において、煤の堆積は、定期的な手動の清掃により直接管理され得;このアプローチは、煤が蓄積する反応器チューブの内表面にアクセスするために物理的な介入が必要であるという欠点を有する。さらに他の態様において、煤の堆積は、プラズマ反応チャンバーへの気体流入を、アセチレンを生成するために使用される炭化水素:水素供給原料から、反応器チューブの内表面に堆積した煤を除去するプラズマを低電力で形成する水素:窒素混合物へと、定期的に変えることにより管理され得る。一態様において、純粋なCO2プラズマを、清掃プラズマとして使用し得る。一態様において、水素:窒素気体混合物を使用し得、5~15:1のH:N比を約8kWの動力で使用し得る。一態様において、この気体系清掃プロトコルは、定期的な規準(例えば1時間または2時間毎に1~2分の清掃試行)で、連続試行スキームの中から清掃のために1~2%の休止時間を目標として実行され得る。他の態様において、50:4の比の窒素:空気混合物を使用して、2~3時間毎に約3分の清掃時間を生じ得る。
【0071】
この系の態様は、反応器チューブおよび熱交換器ならびにそれぞれの反応器についてではあるが真空ポンプを共有する隔離バルブの後に連結される、第1の反応器および第2の反応器と一緒に複合化(multiplex)された並行マイクロ波反応器設定を含む。第2の反応器を操作してそのプラズマ反応チャンバー内の供給原料気体にエネルギーを付与しながら、第1の反応器の磁電管を遮断し得、反応器は隔離バルブにより隔離され得、次いで代替の真空系に対して開放され得る。次いで第1の反応器に対して清掃プラズマを使用し得る。一旦清掃がなされると、第1の反応器系から清掃気体混合物が排出されて、窒素でパージされ、次いで該プロセスに使用される新たな供給気体のそれぞれの混合物およびリサイクル気体により再度パージされ、次いで主要な真空系に対して再度開放されて再度発火される。同じ順序を使用して、第2の反応器を次いで清掃し得る。いくつかの態様において、並列の反応器の総数は、3以上の反応器を含むように増加され得、複合化された系の総処理量が一定であり、一方でいずれか1つの反応器が清掃を受けるように、それらの清掃サイクルが配列される。そのため、この清掃工程は複合化された反応器系中で、個々にまたは小さな群で限界なく(indefinitely)サイクル化され得、サイクル時間は、連続使用にわたり生成物処理量の損失がないように設定される。
【0072】
c. 真空サブ系
態様において、反応器に気体流入を提供する気体注入器と、該反応器に対して遠位にある生成物流出流の間の全ての構成要素の周りに真空系が配置される。系内で低圧力を維持することは、系の効率に寄与する(ここで効率は、アセチレンに変換される1molのメタン当たりのエネルギーのeVにより測定される)。態様において、反応器内で真空が維持されるか、または低圧環境が、だいたい約30~約120トルまたは約60~約100トルまたは約70~約80トルで生成される。一態様において、約120トルの操作圧力で処理されるエタン以外の全ての炭化水素供給気体について、約70トルの操作圧力が維持される。
【0073】
真空サブ系802aおよび802bを強調するプラズマ系炭化水素処理系800の簡易化された概略図を
図8に示し、矢印は、系800中の気体フローの方向を示す。真空サブ系802aおよび802bは、処理系800の特定の構成要素を囲い、かかる構成要素中の圧力を約30~約120トルの範囲に維持する。
図8に示されるように、点線802aで示された真空サブ系は、全てが以下により詳細に記載されるように反応器810およびその流出流816の周囲ならびに反応器810から下流の種々の構成要素の周囲に第1の減圧環境を作製し;点線802bで示される真空サブ系は、気体送達サブ系804の周囲に第2の減圧環境を作製する。明確性の目的で、真空サブ系の一部は点線802aで識別し、真空サブ系の一部は点線802bで識別し;これらの2つの点線は、別々のサブ系を表し得るか、またはこれらの点線は、単一の真空サブ系を表すために合流して一緒になり得る。明確性のためにこの図に示されるサブ系および構成要素は:(i)炭化水素供給気体806および水素含有リサイクル気体812を含む流入気体を、それらのそれぞれの供給気体流入口(示さず)を通って反応器810へと通過させる気体送達サブ系804;(ii)反応器810内で流入気体(すなわち炭化水素供給気体806および水素保有リサイクル気体812)に作用して反応器810のプラズマ反応チャンバー811領域中の2つの流入気体806および812の化学変換を実行するマイクロ波808bを形成するマイクロ波送達系808a、ここでこれらの化学変換の生成物は流出流816として反応器810から排出される;(iii)流出流816をその気体構成要素に分離するアセチレンセパレータ814および水素セパレータ818を含む排出物分離および使い捨て系、ここでアセチレンセパレータ814および水素セパレータ818の遠位にある流出流816の残部はリサイクル気体流812になる、を含む。以前に記載し、この図に示されるように、反応器810から下流に位置する、流出流816のためのフィルター820、熱交換器/セパレータ822ならびに一連のポンプ824および828などの特定の構成要素も、点線802aで示される真空サブ系内に含まれる。この図において、高次炭化水素を除去するためのコールドトラップ830は、アセチレンセパレータ814および水素セパレータ818と同様に、点線802aで示されるように真空サブ系の外部に位置する。
【0074】
この図に示されるフィルター820は、流出流816から炭素固体を除去することが意図される。態様において、プラズマプロセスは、副生成物として少量の炭素固体を作製し;例えば炭素固体は、0.1~0.5%の範囲で生成され得る。そのため、これらの粒子が系の下流の構成要素を汚すことを防ぐために、流出流816を濾過してこれらの炭素固体を除去することが望ましい。フィルター820は、流出流816が反応器810を離れた後で遭遇する最初の表面であるので、この流れ中の気体は非常に熱い(だいたい400~1000℃)。そのため、フィルター820のための材料は、さらなる冷却ありまたはなしで、かかる温度に耐え得るように選択される。態様において、フィルター820は、必要な場合は冷却を付加して、セラミック材料またはステンレス鋼で作製され得る。
【0075】
d. 冷却サブ系
態様において、冷却サブ系は、本明細書に記載される気体処理系の種々の構成要素の操作温度を制御するように実行され得る。態様において、反応器内で形成されるプラズマは、2000~3000K(1700~2700℃)の温度に達し、約400~約1100℃の温度で反応器から排出される。熱損傷から系の下流の構成要素を保護するために冷却が提供される。また、例えば反応器チューブの外側の温度を500℃未満に維持するように反応器自体を冷却することが望ましい。さらに、反応器チューブは、アセチレン製造の間に比べて気体系清掃(上述される)の間に熱をより保持しやすいので、反応器チューブを熱ストレスから保護するためのより多くの冷却動力が断続的に必要とされ得る。態様において、系のための冷却は、2種類の冷却:水冷却および気体冷却を含む。水冷却は、系の多くの構成要素、例えば磁電管、動力源、真空ポンプ、アプリケーター等のために使用され得る。気体冷却は、適切な場合に他の構成要素、例えば反応器チューブ、反応器自体および系内の種々のOリングシールのために使用され得る。態様において、気体冷却のために窒素が使用される。窒素は、系の閉じ込められた部分における大気気体を置き換えることのさらなる利益を有し、そのために安全性を高める。一態様において、反応器チューブおよびアプリケーターは、密封された窒素パージ(酸素非含有)環境に閉じ込められ得、ここで窒素の存在は、冷却を提供し、反応器系の周囲の環境の酸素を置き換えることにより安全性機構としても働き、窒素気体冷却体は、漏れが生じた場合に爆発の可能性を低減する。
【0076】
e. 排出物分離および使い捨てサブ系
態様において、流出流は、真空サブ系により生成される低圧環境から生じ、次いで互いからおよび廃棄生成物から所望の気体生成物を分離するためのさらなる管理を受ける。メタンおよび他の炭化水素含有気体、例えばエタン、プロパン、ブタン等は、粒状炭素および高次炭化水素と共に、本明細書に記載されるように非熱プラズマ内でエネルギーを付与される場合にアセチレンおよび水素を生成する。プロセスの経済的な側面を最適化するためおよびリサイクルのためのカスタマイズされた気体フローを提供するために、真空サブ系の遠位に一組の構成要素が配置され、流出流中の特定の気体構成要素が互いに分離される。
【0077】
態様において、本明細書に記載されるプラズマ系炭化水素処理系およびその使用方法は、1モルのメタンが消費される毎に1.5モルの水素が生成される正味の水素プラスである化学量論においてメタンを変換することが構想される。したがって、流出流は、優勢な(a predominance of)水素と共に、所望の生成物アセチレンを含む炭化水素の混合物を含む。態様において、この水素は、例えば排出物の残りから水素を分離するための膜セパレータを使用することにより、流出流から分離され得る。分離後、水素は精製され得、別の気体生成物として商品化され得;代替的にまたは付加的に、水素は、以前の図に図示されるように系内にリサイクルされ得る。他の態様において、水素分離の代わりにまたは水素分離に加えて、アセチレンが流出流から分離され得る。例えば、アセチレンは、吸収カラムに吸収され得、次いで脱着および収集され得る。一態様において、反応器からの流出流は、第1に粒状炭素および凝縮物を除去するように処理され得、次いでアセチレンが除去され得る。アセチレンが除去される後、水素は任意に除去され得るか、捕捉され得るかまたはリサイクルされ得る。
【0078】
流出流がプラズマ反応チャンバーを出る場合、流出流は、気体、揮発された高次炭化水素および粒状炭素の組合せを含む。以前に記載されるように、粒状炭素は、反応器チャンバーからすぐ下流で濾過され得る。態様において、流出流から凝縮物として特定の高次炭化水素を除去するために、流出流は続いて、コールドトラップを通過し得る。コールドトラップを通過した後、流出流はさらに分離され得る。例えば、他の高次炭化水素は、以下に記載されるように流出流から除去され得る。これらの化合物は典型的に、廃棄生成物とみなされ、それらの除去後に廃棄または処分され得る。高次炭化水素の除去後またはそれと同時に、アセチレンおよび水素は、排出物分離および使い捨てサブ系を介して流出流から分離される。分離プロセスは、例えば吸着技術、吸収技術、化学反応技術、例えば酸化または触媒媒介変換などの1つ以上の分離技術を使用して進行する。
【0079】
i. 吸着
ある態様において、例えば流出流は、吸着カラムを通過し得、ここでカラムは、カラムを通って流れる流出流からアセチレンまたは高次炭化水素を選択的に除去し得る高表面積吸着物質を含む。態様において、吸着物質としては、活性炭、ゼオライト、シリカエアロゾル、分子ふるい、金属有機構造体(MOF)、配位ポリマー、粘度、珪藻土または軽石などの適切なサイズの材料が挙げられ得る。吸着材料は粉末またはフィルムであり得るか、または球状ペレット、ロッドまたは有用であり得る他の形状に形成され得る。これらの吸着材料は、高温での焼成、イオン交換または吸着親和性もしくは能力を高める分子でのドーピングにより改変され得る。さらに、複数の物理的特性を利用するために2つ以上の吸着材料の組合せを使用し得る。吸着材料は、単一の吸着カラム内に含まれ得るか、または異なる位置で流出流から異なる不純物をトラップするための複数の吸着カラムに分割され得る。有利なことに、吸着材料は、流出流が吸着体カラムを通過する場合に、生成物損失を最小化するように選択され得:いくつかの例において、高次炭化水素不純物は、所望の生成物よりも高い吸着材料への親和性を有し;他の例において、不純物は、吸着体の表面から生成物分子を置き換え得る。いずれの場合にも、生成物損失は最小である。
【0080】
特定の状況下で、吸着体は、吸着体の能力および不純物の濃度が、処分の前に十分な不純物を除去することを可能にする場合に、単回使用の後に処分され得る。他の状況下で、例えば経済的またはロジスティックな理由のために処分が実行できない場合、吸着体は再生され得、循環的に再利用され得る。吸着体を再生するための方法は、圧力減少、溶媒洗浄、加熱および別の気体での置き換えを含む。再生の際に、不純物は、吸着体の表面から脱着され得るか、またはその場で脱着がより容易な別の化学物質に変換され得る。不純物が許容可能な誘導体分子に変換された場合、この分子は、インライン(in-line)で脱着され得、プロセス流に放出され得る。不純物が吸着体の表面上で変化しない場合、不純物は、下流のフローに放出され得ず、廃棄物処分のために排出される、焼却されるまたは収集される側方の流れに逸らされ得る。態様において、自動化された系は、複数の吸着器容器の間またはその中で変更を計画し得、連続操作における再生サイクルを可能にし得;かかる系は、当該技術分野においてスイング吸着器と称されている。
【0081】
吸着器は、高次炭化水素の除去後に流出流のさらなる分離のために使用され得る。吸着および脱着の好ましい様式に応じて、圧力スイング吸着器(PSA)、真空スイング吸着器(VSA)または温度スイング吸着器(TSA)が使用され得る。例えば、ある態様において、流出流から水素ガスを分離するために、流出流はPSA系に供給され得る。PSA系において、流出流は、加圧されて、全ての非水素構成要素が吸着材料に吸着される吸着カラムに供給される。全ての非水素材料が流れから除去されて、精製された水素がカラムから排出される。態様において、PSA系のための供給は、プラズマ反応器からの流出流であり得るか、または上述の第1の吸収カラムからの収集された気体であり得るか、またはそれらのいくつかの組合せであり得る。
【0082】
または、例えば流出流は、流出流から高次のアセチレンを分離するために適合されるTSA系に供給され得る。本明細書で使用する場合、用語「高次の(higher)アセチレン」は、3および4個の炭素原子を含むアルキンを少なくともいうが、該高次のアセチレンはまた、全ての気体アルキンおよび気体芳香族に適用され得る。TSA系の使用を通じて、高次のアセチレンは、アセチレン損失を有することなくアセチレン流から有意に、さらに完全に分離され得る。態様において、高次のアセチレン分子は、吸着体の表面でアセチレンを置き換え得、アセチレン流からの高次のアセチレンの分離において最大の選択性を可能にする。これを達成するために、吸着プロセスは有利に、高次のアセチレン自体を、ベンゼンなどのさらに重い分子により置き換える前に終了される。そのため、TSA内の吸着サイクルは、高次のアセチレンを吸着させ、吸着器表面に保持させるが、高次のアセチレンが置き換えられることを防ぐように調整されるべきである。したがって、高次のアセチレンを吸着体表面から置き換える前に、反応器は、プロセス流に対して封鎖される。次いで、吸着体は、処分および置換され得るか、または代替的には再生され得る。再生において、流出流は吸着器から逸らされ、熱い空気(>300℃)が吸着体床上に通される。不純物は、吸着体から放出されかつ排出されるかまたは燃焼されるかのいずれかをされる。いくつかの繰り返しにおいて、いくつかの容器が吸着しておりその他が再生されている連続操作のために、複数の容器が使用され得る。
【0083】
ii. 吸収
ある態様において、流出流は、吸収カラムを通過し得、ここで流出流に対する向流で流れる最適な流速での溶媒は、アセチレンなどの所望の気体生成物を吸収する代わりに、流れる流出流から高次炭化水素を優先的に吸収する。次いで、高次炭化水素は、第2のカラム中で溶媒から分離され得、溶媒は、吸収カラムに戻される。所望の気体生成物を超えて高次炭化水素についてより強い親和性を有する溶媒の例としては、メタノール、アンモニア、トルエン、ベンゼン、灯油、ブチロラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、アセトン、フルフラール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-ホルミルモルホリンおよびN-アルキルピロリドン、例えばN-メチルピロリドン(NMP)が挙げられる。
【0084】
他の態様において、流出流は、吸収カラムに通され得、ここでアセチレンについて強い親和性を有し、好ましくは流出流に対する向流で流れる溶媒は、流れる流出流からアセチレンを吸収する。吸収されたアセチレンは、溶媒を元に戻すために第2のカラム中の溶媒を加熱することにより、溶媒から除去され得、次いで元に戻された溶媒は、吸収カラムに戻され得る。他の流出気体を超えてアセチレンについてより強い親和性を有する溶媒の例としては、メタノール、アンモニア、トルエン、ベンゼン、灯油、ブチロラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、アセトン、フルフラール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-ホルミルモルホリンおよびN-アルキルピロリドン、例えばN-メチルピロリドン(NMP)が挙げられる。
【0085】
iii. 化学反応
ある態様において、流出流中の高次炭化水素は、酸化され得、それにより流出流から除去され得る。例えば、特定の高次炭化水素、特にジアセチレンならびにメチルアセチレンおよびビニルアセチレンなどの置換されたアセチレンは、アセチレンから分離することが困難であり得、特定の高次炭化水素を非アセチレン化合物に変換することにより除去され得る。これを達成するために、流出流は、酸化剤として作用し得る濃縮液体酸、例えば硝酸、硫酸、リン酸などの酸化剤を含むカラムまたは容器に通過され得る。ジアセチレンおよび置換されたアセチレンなどの高次炭化水素は、例えば酸化剤または濃縮酸と反応して、流出流からより容易に分離され得る他の炭化水素化合物を生成し得る。ある態様において、流出流は、固体支持体上でリン酸と接触され、ジアセチレンおよび置換されたアセチレンなどの高次炭化水素を、流出流からより容易に分離され得る他の炭化水素生成物に変換し得る。
【0086】
ある態様において、種々の高次炭化水素を、気体生成物流からより容易に分離可能な他の炭素種に変換するために、流出流は、遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属塩またはゼオライトを含む触媒を使用して、触媒床に通過させ得る。適切な触媒に暴露される場合、これらの高次炭化水素は、重合、酸化、水素付加および不均化などの触媒誘導機構により、より容易に除去可能な化合物に変換され得る。触媒変換の機械的様式および得られる生成物に応じて、高次炭化水素のこれらの誘導体は、本明細書に記載されるものなどのさらなる下流のプロセスを通じて除去され得る。
【0087】
iv. 他の分離技術
ある態様において、高次炭化水素は、凝縮器を使用して流出流から除去され得、凝縮器は、例えばシリカゲル、活性炭、活性アルミナ、ゼオライトなどの高表面積材料上でこれらの化合物を収集する。例えば、特定の高次炭化水素、例えばメチルアセチレンおよびビニルアセチレンは、気体形態ではアセチレンから分離することが困難であり得るが、それらの凝縮点(それぞれ5.01℃および10.3℃)は、アセチレンの凝縮点(-84℃)と対照的であり、該特定の高次炭化水素を、流出流からの凝縮を介した除去に適切にする。この態様において、-84℃~10℃の温度で高表面積材料を含む冷却床は、流出流から高次炭化水素を効果的に凝縮させ得る。
【0088】
ある態様において、流出流は、気体分離膜系に通され得、ここで気体分子は、サイズ排除により分離される。例えば、水素などのより小さい分子は、膜要素を優先的に通って流れ透過流を形成し、一方でメタン、アセチレン、高次炭化水素、窒素、二酸化炭素および任意の他のより大きな分子などのより大きな分子は、膜を通って流れず(膜の孔隙率に応じる)、保持(retentate)流を形成する。ある態様において、透過流は水素富化流であり、保持流は水素枯渇流である。気体分離膜要素は、種々の物質、例えば:ポリマーがポリカーボネート、ポリアミドまたは酢酸セルロースであり得る中空線維ポリマー膜;無機材料がメソポーラスシリカ、ゼオライト、金属有機構造体または混合酸化金属であり得る無機膜;金属がパラジウムまたはパラジウム-銀合金であり得る金属膜等で形成され得る。態様において、膜分離系のための供給物は、プラズマ反応器からの流出流であり得るか、または上述の第1の吸収カラムからの収集された気体もしくはそれらのいくつかの組合せであり得る。
【0089】
特定のこれらの流出分離規準に従って、態様において、アセチレン、水素および高次炭化水素を含む流出流は、所望の気体生成物が回収され得るようにその構成要素にさらに分離され得る。他の態様において、流出流は、例えばさらなる化学処理のために使用される場合、または混合流として消費者もしくは最終使用者に提供される場合は、さらなる分離には供されない。
【0090】
f. データ管理および安全性サブ系
有利なことに、全気体製造系は、相互に連結データ管理サブ系および安全性サブ系を含み、これらの系および方法に組み込まれた安全性処置は、系の性能について収集されたデータにより情報を与えられる。態様において、データ管理は、データ収集および性能診断のためのデバイス、手順およびアルゴリズム、ならびにデータの記録および保存のための記憶設備を含み得る。態様において、性能診断は、正常パラメーター内の系の状態をモニタリングして、全体的な統合および制御を容易にすること、ならびにやがて現れるかまたは能動的な失敗状態の信号を同定することを含む。光学的診断法、例えば可視光カメラ、中-IR高温計、ブロードバンド分光計等は、プラズマ領域の監視に割り当てられ得る。装置診断法は、圧力変換器、熱電対、流量計、マイクロ波動力センサー等を含み得る。他の診断装置、例えばフルスケール分光計およびオシロスコープは適切な場合に使用され得る。態様において、種々の診断モダリティは、試行の間に自動および/または手動で統合およびモニタリングされ得る。
【0091】
態様において、手動および自動診断手順は、誤り連結系(fault-interlock)を含み得る安全性手順と一体化され得る。一態様において、診断入力は、ハードウェアおよびソフトウェアにより能動的にモニタリングされ得る。異常が検出される場合、所定の応答パターンを作動させる誤り信号が誘発され得る。突然確認された圧力スパイクなどのこれらの最も深刻な誤りについて、即座の自動化された「ハード」のシャットダウンが誘発され得る。結果がより重大ではない中程度の重症度(severity)の誤りについて、より遅い自動化されたシャットダウンが誘発され得、数秒の経過にわたり操作を停止させることが意図される。パラメーターが予測範囲外にあるが、重大な結果が予想されないこれらの誤りについて、系のシャットダウンを必要とすることなく状況を訂正し、誤りを明確にするために、適切な行為が採用され得るようにオペレーターが変えられ得る。
【0092】
3. 例示的な系およびサブ系
a. 100kW動力プラズマ系炭化水素処理系
炭化水素含有流入気体をアセチレンおよび水素に変換するためのプラズマ技術を使用するプラズマ系炭化水素処理系により、アセチレンおよび/または水素の製造のための高度の選択性と組み合わせて、高度の供給源炭化水素変換が得られ得る。以下に記載される系は、プラズマを形成して化学変換を実行するマイクロ波を生成するために、100kW動力源を使用する。
【0093】
このプロセスの中心反応は、メタン(例えば天然ガスまたはバイオガスに由来する)または別のC2-C4供給源炭化水素が、それプラズマに分解されるマイクロ波エネルギー付与領域に供給される場合に起こる。理論に拘束されないが、プラズマは、炭化水素を、プラズマエネルギー状態の後に再結合して炭化水素生成物および水素のスペクトルを形成する励起したCHxラジカルに分解することにより、供給源炭化水素からアセチレンおよび水素への反応を駆動することが仮定される。供給物としてC2-C4炭化水素を使用することにより、メタンと比較して全体的なプロセス効率が向上し、一方でアセチレンに対する高度の選択性が維持され得る。しかしながら、天然ガスまたはバイオガスに含まれるメタンを使用することは、操作効率および費用有効性の利点を有する。
【0094】
100kW動力処理系におけるメタン変換プロセス(すなわち天然ガスもしくはバイオガス供給物中に見られ得るようなメタンまたは純粋なメタン供給物を使用する)は、形成されるアセチレン生成物1kg当たり約9.5kWhrを使用し、アセチレン収率は90%であり:使用される供給気体について、約90%がアセチレンに変換される。生じる生成物混合物は、プラズマ温度の非熱的性質により影響を受ける。気体温度は3000~4000Kであり、一方で振動温度および電気温度は2~3倍高く、反応平衡を押し、選択性が高くかつ副生成物としての水素が豊富であるアセチレンを形成する。プラズマ反応により生成される水素は、その後の反応に使用される二次的供給気体として、この系へと逆にリサイクルされ得るか、および/または水素は別々の気体生成物として分離され得る。反応の構成要素として水素および炭化水素が共に存在することで、反応の固体生成が低減される。反応について水素およびメタンの所望の割合を達成するために、以下により詳細に記載されるように、系は、生成された水素を、メタン系反応に参加するようにリサイクルする。
【0095】
i. 全体的な系
100kW動力プラズマ系炭化水素処理系は、4つのサブ系:気体送達、マイクロ波、真空および冷却を含む。気体送達サブ系は、2つの流入ラインを含む。第1の流入ラインは、主にメタンと少量のエタン、プロパン、二酸化炭素および窒素(未処理混合気体の供給源に依存する)の混合物を含む、地方公益事業会社(local utility company)から連続的に供給される天然ガスなどまたは改良されたバイオガスなどの混合気体を運搬する供給ラインである。この流入は、プラズマ反応チャンバーに入る前に従来技術を使用して洗浄され得、ほぼ純粋なメタン流を生じ、他の残存混合気体構成要素は、だいたい約100ppmで存在する。この流入ラインからの総フローは、およそ約3SLMメタン/kWマイクロ波動力のフローを伴う、系の全マイクロ波動力により大規模化可能である。第2の流入ラインは、少量のメタン、他の反応体および約5~約6%の量の非反応性の窒素と共に、約85~約90%の水素を含む反応器により生成されたリサイクル気体を運搬する。この流入ラインからの総フローはまた、約5SLMリサイクル気体/kWマイクロ波動力のフローを伴う、系の全マイクロ波動力により大規模化される。
【0096】
それぞれの流入流は、プラズマ反応チャンバー自体の流入口を介して、プラズマ反応チャンバーに送られ、プラズマ反応チャンバーは、そのフローを、石英チューブの進入領域へと注入して、プラズマが生成される領域へとチューブを通して流す。それぞれの流入流の流入口は、該流入流が反応領域、すなわちプラズマ反応チャンバーに向かって流れる際に、石英チューブ内の流れを混合する渦状のフローを生じるように、気体注入器デバイスにより角度をつけられ得る。それぞれの流入口を通って進入する気体のフローは、1.5H2:1CH4の水素-対-メタンのモル比を生じるように調整された質量フロー制御器により制御される。メタンがプラズマに変換される際に、反応生成物のスペクトルは、石英チューブ内のプラズマ反応チャンバー内で形成される。
【0097】
メタンを供給気体として使用する場合、約95%のメタンは、プラズマ内で化学変化を受ける。アセチレンは、プラズマエネルギー付与反応から生成される炭化水素の95%を占め、全体で約90%のアセチレン収率を生じる。水素は、これらの反応からの他の主要な反応生成物であり、総流出流の体積当たり約80%を占める。
【0098】
例示的な100kW動力プラズマ系炭化水素処理系900を、
図9に示されるブロック図により概略的に表す。この図に示されるように、注入領域904、反応領域908および流出領域910を含む中心反応器902は、2つの別々の気体流:(1)供給源炭化水素(例えば天然ガスもしくはバイオガスなどの混合気体中のメタンまたは単一のC
1-C
4炭化水素またはC
1-C
4炭化水素のカスタム化された混合物)を含む供給気体912ならびに (2)水素および混合炭化水素含有気体および任意に非反応性の窒素を含むリサイクル気体フロー914を受ける。
【0099】
図において概略的に表されるように、流入気体流912および914は、アセチレン、水素および小さい割合の混合炭化水素を含む流出流918を形成するように反応器902内で処理される。次いで、流出流918は、気体分離系928(例えば吸着、吸収またはそれらの組合せ)によりその気体性構成要素に分離され、アセチレン流920、ならびに水素936および炭化水素の混合物924を含む水素優勢気体流922を生じる。気体分離系928により主要な流出流918からそのように向けられて、アセチレン流920は、精製系926内で不純物のさらなる隔離により精製され得、精製されたアセチレン気体生成物932を生じる。一旦アセチレン構成要素920が流出流918から除去されると、残りの気体流922は、炭化水素反応生成物の混合物と共に主に水素であり、すなわち水素優勢である。この水素優勢気体流922は、所望の場合はさらなる分離に供され得るので、水素気体は別の気体流930として隔離される。水素気体生成物流930は、必要な場合はさらに精製され得生成物として販売され得るか、または供給気体912とのさらなる反応のために反応器902へと逆にリサイクルされ得る。この系900において、水素気体生成物流930をリサイクルする代わりに、混合された水素優勢気体流922は、リサイクル気体フロー914を形成するようにリサイクルされ、供給気体912とのさらなる反応のために反応器902に再導入される。質量フロー制御器940および942は、反応器902内で水素 対 メタン(または水素 対 他の供給源炭化水素)の所望の比を生じるように、供給気体912およびリサイクル気体914の反応器902への流入を調整する。
【0100】
ii. 反応器
図9で同定された反応器を
図10においてさらに詳細に示す。
図10は、反応器1002、その構成要素およびマイクロ波サブ系1004とのその一体化を概略的に示す。示されるようにおよび灰色の影が付いたボックスにより輪郭を示されるように、マイクロ波サブ系は、マイクロ波を生成するための動力源および磁電管複合体1016、ならびにマイクロ波プラズマ1018が形成される石英チューブ内の反応領域1012に向かってマイクロ波を誘導するための導波管アセンブリ1020を含む。
図10に示されるように、石英チューブ1008は、反応器1002の構成要素:注入領域1010、反応領域または反応チャンバー1012および流出領域1014を含む。石英チューブ1008内で、マイクロ波プラズマ1018は、チューブ1008内の気体フロー1006を目指すマイクロ波(示さず)により生成され、それにより、供給源炭化水素の、水素および種々の炭化水素由来生成物への変換が実行される。この石英チューブ1008は、マイクロ波導波管アセンブリ1020の広い壁に挿入される。石英チューブ1008のサイズは、系内で使用されるマイクロ波動力の量に依存する。マイクロ波を生じるために100kWの動力を使用する示される系について、石英チューブ1008は、80mmの外径、75mmの内径、1700mmの長さを有し、下流の真空ポンプ(示さず)により約70トルの圧力で維持される。石英チューブ1008とマイクロ波サブ系1004の関係を以下により詳細に記載する。
【0101】
図10に示されるように、リサイクル気体流1022は、反応器1002の注入領域1010内で供給気体流1024と混合され、それぞれの流れは反応器自体の流入口(示さず)を通って反応器1002の注入領域1010に入る。それぞれの気体流の気体注入器デバイス1032(
図11にも概略的に示す)を通る反応器1002への通過は、その方向、流速および速度に影響する。
図10に示されるように、任意の気体流または気体流1028は、注入領域1010に方向づけられ得、リサイクル気体流1022および供給気体流1024と混合されて、渦状の気体フロー1006を生じる。混合後、気体フロー1006内の気体は、石英チューブ1008を通って遠位に流れ、動力源および磁電管複合体1016により生成されたマイクロ波エネルギーと遭遇し、導波管アセンブリ1020を通って反応器1002の反応領域1012に送達される。反応器1002の反応領域1012内のマイクロ波エネルギーと気体の相互作用によりプラズマ1018が生じる。反応生成物を含む流出気体流1034は、プラズマ1018から生じ、石英チューブ1008の流出領域1038に入り、さらなる分離1040のために反応器1002から出て進む。この図に示されるように、マイクロ波サブ系1004は、動力源および磁電管複合体1016ならびに導波管アセンブリ1020を含み;以下の図に図示および記載されるマイクロ波サブ系のさらなる要素はこの図には示さない。
【0102】
図11Aは、
図10に示される気体注入器1032などの、100kW動力プラズマ系炭化水素処理系を用いた使用に適切な気体注入器の態様の断面概略図(一定の比例で作成されない)である。例示目的で、
図11Aの断面図は、
図10のラインA-A'で採られる断面に対応する。
図11Aは、プラズマ反応器1100の反応チャンバー1102内で位置を定められ、上述のように複数の気体がマイクロ波エネルギーと遭遇するための反応チャンバー1102内に複数の気体フローを提供する、気体注入器1106を示す。この図に示されるように、気体注入器1106は、2つの異なる気体流のための反応器1102への流路を提供し、それぞれの気体流は、気体注入器デバイス1106内の気体注入器自体のノズルおよび流路を通って反応器1102に方向づけられる。
図11Aに図示されるように、リサイクル気体フロー1104aおよび1104bのために2つおよび供給気体流1108aおよび1108bのために2つの4つの注入器ポートがある。図において、2つのリサイクル気体ノズル1104aおよび1104bは、第1の中心フローチャンネル1110と流体連絡し、そこを通ってリサイクル気体流は、気体注入器1106に入り、リサイクル気体ノズル1104aおよび1104bに方向づけられる。同様に、供給気体のために気体注入器1106内に第2の中心に配置されたチャンネル1112があり、ここでこのチャンネルは、リサイクル気体流のための第1の中心フローチャンネル1110とは異なる。第2の中心に配置されたチャンネル1112と流体連絡する、供給気体1108aおよび1108bのための2つのノズルがあり、これらのノズル108aおよび1108bは、リサイクル気体のためのノズル1104aおよび1104bとは異なるレベルで反応器1102に入る。両方の種類の気体フローのためのノズルは、反応器1102内での渦状の気体フローの形成に資する方向で方向づけられる。リサイクル気体のためのチャンネル1110および供給気体のためのチャンネル1112は、互いに交差しないが、むしろそれらのそれぞれのノズル1104a/1104bおよび1108a/1108b内に別々の気体流を提供し;どちらのノズルも互いに交差しないが、むしろ反応器1102内に別々にそれらの気体流を提供する。それぞれのノズルを通る気体フローは、流速、経路長さおよび圧力低下に関して、他のノズル内の他の気体フローと調整され得る。
【0103】
供給気体チャンネル1112とリサイクル気体チャンネル1110の相対位置は、例えば並列のチャンネルとして、螺旋形として、気体注入器1106内で異なるレベルで、または
図11Aに示されるものとは別の他の配置として再配置され得るが、ただしそれぞれの気体のためのチャンネルは、気体注入器1106内でそれぞれから別々に維持され、およびさらにそれぞれの異なる気体流は、それ自体の異なるノズル(1つまたは複数)を通って反応器1102に入ることが当業者に理解される。さらに、ノズルの数、配置および方向は変化し得るが、ただしそれぞれの構成要素気体(すなわち供給気体およびリサイクル気体ならびに任意のさらなる気体)についての気体流は、他の気体流と混合することなく反応器自体のノズルを通って反応器に入る。
【0104】
図11Bは、
図10に示される気体注入器1032などの、100kW動力プラズマ系炭化水素処理系を用いた使用に適切な気体注入器の別の態様の断面概略図(一定の比例で作成されない)である。例示目的で、
図11Bの断面図は、
図10のラインA-A'で採られる断面に対応する。
図11Bは、プラズマ反応器1150の反応チャンバー1152内で位置を定められ、上述のように複数の気体がマイクロ波エネルギーと遭遇するために、複数の気体フローを反応チャンバー1152に提供する、気体注入器1156を示す。この図に示されるように、気体注入器1156は、反応器1152内への2つの異なる気体流のための流路を提供し、それぞれの気体流は、気体注入器デバイス1156内のノズルの組を通って反応器1152中に方向づけられる。
図11Bに図示されるように、第1の気体フロー、例えばリサイクル気体フローのために4つ(1154a、1154b、1154cおよび1154d)、および第2の気体フロー、例えば供給気体流のために4つ(1158a、1158b、1158cおよび1158d)の8つの注入器ポートまたはノズルがある。該図において、第1の気体フローのための4つのノズル(1154a、1154b、1154cおよび1154d)は中心フローチャンネル1162と流体連絡し、そこを通って第1の気体流は、気体注入器1156に入り、適切なノズル1154a、1154b、1154cおよび1154dに方向づけられる。第2の気体フローのためのノズル1158a、1158b、1158cおよび1158dはそれぞれ、別々のフローチャンネル1160a、1160b、1160cおよび1160dのそれぞれにより供給される。第2の気体フローのためのノズル1158a、1158b、1158cおよび1158dに供給するためのフローチャンネルの他の配列が構想され得るが、ただし第2の気体フローのためのフローチャンネルは、第2の気体フローを第1の気体フローと混合させない。その代わり、それぞれの気体フローは、それ自体の異なる組のノズルおよびそれ自体のフローチャンネル(1つまたは複数)により運搬される。第1の気体フローのためのノズル1154a、1154b、1154cおよび1154dならびに第2の気体フローのためのノズル1158a、1158b、1158cおよび1158dは、反応器1152内での渦状の気体フローの形成に資する方向に方向づけられる。ノズルのそれぞれを通る気体フローは、流速、経路長さおよび圧力低下に関して、他のノズル内の他の気体フローと調整され得る。
【0105】
iii. マイクロ波サブ系
図10に示されるマイクロ波サブ系を、
図12においてより詳細に概略的に示す。
図10を参照して、反応器1002の反応領域1012は、導波管アセンブリ1020と交差することが見られ得、ここでマイクロ波は、反応領域1012に入ってプラズマ1018を形成するように、気体フロー1006に方向づけられる。マイクロ波サブ系1004は、マイクロ波の生成およびマイクロ波の反応器1002への方向付けの原因である。
【0106】
マイクロ波サブ系を、
図12により詳細に示す。この図に示されるように、マイクロ波サブ系1200は、動力源1208、磁電管1210、導波管アセンブリ1202(導波管1212および以下に記載される特定の他の標準的マイクロ波構成要素を含む)およびアプリケーター1204を含む。動力源1208は、480V、150A AC電力を、20kV21kV、5.8Aの低リプルDC動力に変換し、96%の変換が磁電管1210にエネルギーを付与する。磁電管1210は100kWで評価され、83~89%の効率で連続マイクロ波動力を生じる。生じるマイクロ波は、Lバンド周波数範囲、約915MHzにある。マイクロ波は導波管アセンブリ1202に発射され、その中で導波管1212は、マイクロ波を、系の他の構成要素を通ってアプリケーター1204に方向づけ、ここでマイクロ波はプラズマ反応チャンバー1214内で気体/プラズマと相互作用する。導波管1212は90°の屈曲1216を特徴とする。導波管の構成要素の1つは、水負荷1220が取り付けられ、磁電管1210の遠位に配置され、マイクロ波をフェライトコア1222により水負荷1220に方向づけることにより反射された(吸収されない)マイクロ波から磁電管1210を保護するアイソレータ1218である。導波管アセンブリ1202の他の構成要素は、マイクロ波をプラズマ反応チャンバー1214に誘導させ、その中でのプラズマの生成を最適化するように調整される。アプリケーター1204は、マイクロ波と、プラズマが生成される石英チューブ1224の間にインターフェースを提供する。プラズマは、石英チューブ1224の領域であるプラズマ反応チャンバー1214内で形成され、その中で化学的変換が起こる。
図12の断面に示されるように、石英チューブ1224は、アプリケーター1204内に配置されるが、空隙(標識しない)によりアプリケーターから分離される。
【0107】
プラズマがオフであり、マイクロ波がオンである場合、3スタブ同調器1230とアプリケーター1204の末端上の摺動短絡プレート1232の間のアプリケーター1204中で定常波が形成され、電場は、石英チューブ内で気体分子の破壊を開始させるのに十分である。アプリケーター1204に入るマイクロ波エネルギーは、プラズマ反応チャンバー1214の長さを変えるために必要な場合は短絡プレート1232を使用して、および入力マイクロ波の位相を変えるために3スタブ同調器1230を使用して、プラズマ反応チャンバー1214の中心でピークに達するように調整される。一旦プラズマが開始されると、同調器1230内のスタブの位置は、マイクロ波動力をプラズマに優先的に適合させるように変更され得、吸収されない動力を最小化する。3スタブ同調器1230は、動力および位相センサー(示さず)を含み、吸収されない動力を最小限にするためにモーター駆動スタブをアルゴリズム的に調整し得る。既知の減衰を有するマイクロ波をカップリングする2つの小さなピンホールを含む双方向カプラー1234は、3スタブ同調器1230の近位で導波管1212に含まれる。動力計測器(示さず)は、これらのピンホールポートに連結され、マイクロ波動力を電圧に変換し、前方の反射された動力の測定値を出力する。環境残骸およびほこりが導波管構成要素に入ることを防ぐために、導波管系に薄い石英窓1238を付加する。
【0108】
b. アセチレン製造のためのトーチ系
態様において、アセチレンおよび水素を製造するためのプラズマ系炭化水素処理系は、任意の規模のものであり得、所望の最終用途に応じてある範囲の純度およびアセチレン濃度を送達し得る。以前に記載されるようなプラズマ系炭化水素処理系は、小規模用途のために設計され得、最終使用者の必要性に適合され得る。このカスタマイズ化を容易にするために、プラズマ系炭化水素処理系は、反応器からの流出(排出)流を、異なる組成を有する気体流、例えばより高い濃度のアセチレンを有する流れおよびより高い濃度の水素を有する流れに分離するように構成され得る。小規模プラズマ系炭化水素処理系は、純粋な気体流を送達するように設計され得るか、または出力気体フロー内に含まれる他の気体を有するかもしくは有さずに、アセチレン-水素混合物を送達し得る。上述の小規模系または「ミニユニット」は、その反応器中でアセチレン-水素混合物のみを製造するように設計され得、気体排出物は0.5%~75%のアセチレンで変動し、そのために、必要な分離の量が最小化され、系の複雑さが低減される。態様において、最終使用者は、水素と混合されたアセチレンの所望の組成を製造するように分離サブ系のパラメーターを操作し得;態様において、ミニユニットのマイクロ波プラズマ反応器モジュールのパラメーターも調製され得るが、より広範なパラメーターカスタマイズ化のために、より大きなユニットが望ましい。
【0109】
一態様において、プラズマ系炭化水素処理系の全体のサイズは、例えばテーブルサイズミニユニット(例えば4フィートの幅×8フィートの長さ×4フィートの高さ)などのより小規模のユニットから20x20x20フィート以上の大規模なユニットまで調整され得る。一態様において、プラズマ系炭化水素処理系は、移動可能であるようなサイズであり得る。移動可能なユニットのための所望のサイジングは、テーブルサイズの寸法(例えば4x8x4)から標準的な輸送コンテナのサイズまでの範囲である。輸送コンテナのサイズは変わるが、標準的な20フィートISO輸送コンテナサイズは、移動可能なサイズのユニットの輸送を可能にし;かかるコンテナは典型的に、約8フィートの幅、20フィートの長さおよび8.5~9.5フィートの高さである。より小さな移動可能デバイス、例えば上述の高さおよび幅の寸法と組み合された10フィートまたは8フィートの長さを有するもののために他のより小さな輸送コンテナが使用され得る。
【0110】
かかる小規模系は、小さな最終使用者装置(例えばアセチレンまたはオキシアセチレントーチなどの溶接トーチ)に、または小さな貯蔵設備もしくは貯蔵タンクに取り付けられ得る。一態様において、4フィートの幅×8フィートの長さ×4フィートの高さの寸法を有する5kWプラズマ系炭化水素処理系ミニユニットは、同時、連続使用の少なくとも5の酸素燃料切断トーチを供給するのに十分な量の、50%より高いアセチレンのアセチレン-水素混合物を製造し得る。態様において、プラズマ系炭化水素処理系ミニユニットのための動力範囲は、約1kW~約500kWの範囲であり得、所望の商業用途のための動力範囲が選択され得る。このようなプラズマ系炭化水素処理系は移動可能に設計され得る。上述のように、例えば標準的なISO 20フィート輸送コンテナのサイズまでのより大きなユニットも移動可能に設計され得る。態様において、移動可能なプラズマ系炭化水素処理系は、天然ガスまたはバイオガスなどの混合気体流、電気および水の入手可能性に応じて、建築現場、解体現場、造船所またはパイプラインもしくは沖合の石油掘削装置などの遠隔操作に配備され得る。
【0111】
図13は、工業用途に適切な、小規模および大規模化可能なプラズマ系炭化水素処理系1300のブロック図を提供する。
図13に示されるように、実質的に上述されるプラズマ反応器1302は、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタンなどの炭化水素を含み、天然ガスラインまたはバイオガスタンクもしくはラインなどのタンクまたはパイプラインに由来される入力供給気体1304を有する。この入力供給気体1304は、特定の工業的目的、例えば金属切断に最終的に適切な系1300から流出(排出)気体フロー1306を製造するように較正された予め選択された流入を有する。態様において、メタンまたはメタン高密度混合物、例えば天然ガスまたはバイオガスなどの入力供給気体1304が使用され得る。態様において、プロパンまたはブタンなどの入力供給気体1304の液体供給源は、かかる供給気体供給源が天然ガスまたはバイオガスなどの現地産の気体供給源が入手可能でない特定の地域または施設において容易に入手可能であり得るので、有利である。
【0112】
この図において、気体フローの方向は、矢印1308および他の方向の矢印により示される。系1300に有用な気体フローの例として、約0~約50SLMの範囲内の気体流入が選択され得;一態様において、5SLMの気体流入は、約10SLMの気体流出を生じ得る。態様において、入力供給気体1304は、単独の気体流入としてプラズマ反応器1302に入る。他の態様において、リサイクル気体流1310からの別の気体入力は、別の流入ノズル(示さず)を通ってプラズマ反応器1302に入り、例えば以前の図に記載される気体注入器(示さず)を使用して、プラズマ反応器1302内で入力供給気体1304と合わされる。
【0113】
一態様において、プラズマ反応器1302からの流出1306は約14%のアセチレン、84%の水素および2%のメタンを含み、該流出はさらに、系の他の構成要素により処理され得る。特定の態様において気体生成物を最終使用者に送達する前に除去され得る高次炭素生成物および炭素粒子を含む種々の炭素種副生成物が気体流出1306に乗せられる。これらの副生成物は、固体および液体トラップ1312中で除去され得、プラズマ反応器1302内で処理された後の流出気体1306はそこを通過する。副生成物を除去した後、気体流1306は、水素を除去する水素分離膜系1314または圧力スイング吸着器により処理される。かかる処理により、アセチレンリッチ流1318は、水素リッチ流1320から分離され得、アセチレンリッチ流1318は、工業目的、例えば金属切断のために最終使用者に入手可能になる。他の態様において、例えば気体排出物が、精製されたアセチレン流を必要としない溶接または他の工業用途に使用される場合、高次炭素生成物を除去することに利点はない。しかしながら、高次炭素生成物が水素分離膜を汚し得るので、水素分離膜系を使用する場合にはこれらの種を除去すべきであること;あるいは高次炭素生成物を含む混合排出物流が、商業的に都合がよい場合には水素分離膜系の代わりに圧力スイング吸着器などの水素処理系を使用し得ることが理解される。
【0114】
図に示されるように、高次炭素生成物および水素を除去するように処理されたアセチレンリッチ流1318は、種々の最終用途または貯蔵1322に方向づけられ得る。例えば、アセチレンリッチ流1318は、加圧タンクに方向づけられ得、最終使用者は、金属切断トーチにおける使用のためにそこから気体混合物を引き抜き得;有利なことに、アセチレンリッチ流1318が貯蔵される場合、プラズマ系炭化水素処理系は、その後に使用のためにタンク(1つまたは複数)を充填するためい必要な場合という規準で、断続的に試行され得る。一態様において、アセチレンリッチ流1318は、水素、メタンおよび適用可能な場合は他の気体添加物などの他の構成要素と共に約50%のアセチレンを含み得る。アセチレンリッチ流1318は、約2.1.SLMのフローで生成され得る。一態様において、水素リッチ流1320は、約7.9SLMの総フローで約4%のアセチレンおよび96%の水素を含み得る。態様において、2つ以上の分離膜系を使用して、アセチレンリッチ生成物流1318中のアセチレンの濃度を高め得るが、装置の全体のサイズを制限するために、単一の分離膜系を有する小規模系が設計され得る。
【0115】
図13に図示されるプラズマ系炭化水素処理系の態様において、水素リッチ流1320は、水素リッチ流1320を、最終使用、廃棄および/または貯蔵のための1つ(1320a)ならびにプラズマ反応器1302へのリサイクル気体流1310としてリサイクルのための1つ(1320b)の2つのサブ流1320aおよび1320bに分離し得るスプリッター1322を通って方向づけられ得、ここでリサイクル気体流は、入力供給気体1304と共に処理され得る。スプリッター1322は、例えばYバルブ、質量フロー制御器などの当業者に良く知られた構成要素で形成され得る。リサイクルされない水素リッチサブ流1320aは、排出、処分、収集、燃焼され得るかまたはそうでなければ特定の工業的設定により必要とされる場合は使用され得る。
【0116】
リサイクルに使用される水素リッチサブ流1320bは、最終使用、処分および/または貯蔵に方向づけられるサブ流1320aと同じ組成を有し得る。一態様において、約97.5%の水素および2.5%のアセチレンの組成を有する約5SLMのリサイクルフロー1310はプラズマ反応器1302に再度方向づけられ得、約5SLMの水素のリサイクルフローを生じる。入力供給気体1304と合わされたリサイクル流1310をプラズマ反応器1302における化学変換に用いて、上述のように流出気体1306を生成する。態様において、リサイクルのための割合は、使用者の要件に基づいて調整され得る。リサイクルのために、リサイクルのための水素リッチ気体1320bの量を測定する質量フロー制御器は、特定の一貫性を提供し、残りのものは最終使用、処分または貯蔵に方向づけられる。
【0117】
図14は、より詳細に、気体フローの方向を示す矢印を有する、小規模または大規模の使用に適切なモジュール方式プラズマ系炭化水素処理系1400を示す。
図14に示されるように、気体パイプライン1404、例えば天然ガスパイプラインは、マイクロ波プラズマ反応器1402のための流入気体を提供し得るが、流入気体の任意の供給源が使用され得る(例えばC
1-C
4アルカンに入手可能であるもののような気体を含む供給タンク、またはバイオガスを送達するラインもしくはタンク)。流入気体は、水素リッチ気体を含むリサイクル流1408により補充され得る。マイクロ波プラズマ反応器1402における処理の後、流出(排出)気体は、コールドトラップおよび/または炭素吸着器の組合せを使用して高次炭化水素を除去する重い液体トラップ1412を通過する。次の段階として、流出気体は、粒状物質、例えば炭素の煤を除去するフィルター1414を通過する。次いで真空ポンプ1418により気圧を調整し、次いでコンプレッサ1422により気体を圧縮して、水素セパレータ1424に通す。プラズマ反応器1402、重い液体トラップ1412、固体フィルター1414および真空ポンプ1418は、反応器サブ系1420として一まとめにされる。これは、水素リサイクルサブ系1410および排出物管理サブ系1434の近くに配置され得るか、またはこれらのサブ系は、特定の工業用途にとって都合がいいように、互いに流体連絡し得るが、互いから遠く離れて配置され得る。
【0118】
以前に記載されるように、水素セパレータ1424は、1つ以上の水素分離ユニットを含み得;例示的な態様において、それぞれの水素分離ユニットは、1つ以上の水素分離膜を含み得るが、他の構成およびセパレータ技術(例えば水素を分離するための圧力スイング吸着器技術)が使用され得る。水素セパレータユニットの構成は、排出物アセチレンリッチ流1428においてより少ないまたはより多いアセチレン富化を可能にするように適合され得る。所望の工業用途に応じて、この排出物流1428は切断流として直接使用され得るか、または生成物流として貯蔵され得る。一態様において、アセチレンリッチ流1424を除去した後に残る気体は、高い割合の水素を含む。以前に記載されるように、この水素リッチ流は、スプリッター1432において2つのサブ流に分割され得、1つの流れ1408はリサイクルのために指定され、1つの流れ1430は、処分、排出、燃焼、商業化または所望の場合は他の用途のために指定される。
【0119】
実質的に以前に記載される排出物管理サブ系は、特定の用途のために、単一のミニユニット内で反応器サブ系(以前に記載されるが
図14に示されない気体送達サブ系、マイクロ波サブ系および真空サブ系を含む)と一体化され得る。排出物分離プロセスに必要とされる構成要素のサイズ、数および複雑さは、系全体のサイズに影響し得る。一態様において、単一のプラズマ反応器は、小さなフットプリント(footprint)を提供するために単一の水素分離サブ系を使用し得、該サブ系は、1つもしくは2つの水素分離膜または圧力スイング吸着などの他の分離サブ系技術を含み得る。一態様において、例えば水素分離のための分離サブ系は、プラズマ系炭化水素処理系と一体化され得る。
【0120】
単一の分離膜を有する単一の水素分離ユニットを使用したモジュール方式プラズマ系炭化水素処理系の態様において、反応器からの流出気体は、10SLMの流速で以下の気体構成要素:14%のアセチレン、81%の水素、2%のメタンおよび3%の窒素を含み得る。単一の分離膜を有する水素分離ユニットによる処理の後、7SLMの流速で以下の気体構成要素:4%のアセチレン、96%の水素を含む水素リッチ流が形成される。同時に、3SLMの流速で以下の気体構成要素:50%のアセチレン、27%の水素、9%のメタンおよび14%の窒素を含むアセチレンリッチ流が形成される。このプロセスを使用して、アセチレンリッチ流中93.75%のアセチレン保持が達成され、86.5%の水素がリサイクルされる。一膜水素分離系についての種々の気体流の構成要素の流速およびモル比を以下の表3に示す。
【表3】
【0121】
2膜水素分離ユニットにより、反応器の流出気体からより多くの水素が抽出され得、7SLMの流速で1.2%のアセチレンおよび98.8%の水素を含む水素リッチ流が生じる。この系を用いて、3SLMの流速で以下の気体構成要素:45%のアセチレン、38%の水素、7%のメタンおよび10%の窒素を含むアセチレンリッチ流を形成する。2膜水素分離系についての種々の気体流の構成要素の流速およびモル比を以下の表4に示す。
【表4】
【0122】
本明細書に記載される小規模またはモジュール方式プラズマ系炭化水素処理系について、広く種々の工業的用途が構想され得る。上述のように、アセチレンについての主要な工業的用途は、金工業、例えば金属切断にある。これらの目的で、本開示に従った適切なサイズのプラズマ系炭化水素処理系を、直接または貯蔵タンクを介して使用して、金属切断のための燃料を提供し得る。また、プラズマ系炭化水素処理系は、製品の用途の広さ(versatility)を提供するためおよび金工業における効率を上げるために、他の系と結び付けられ得る。例として、オキシアセチレン鋼鉄切断施設において、プラズマ系炭化水素処理系は、空気分離ユニット(ASU)と組み合わせて使用され得る。ASUは、空気を窒素リッチ流と酸素リッチ流に分離し得、次いでそれらはマイクロ波プラズマ反応器ユニットにより使用されるかまたは該反応器ユニットにより生成される気体流(1つまたは複数)と合わされ得る。装置のこの組合せを使用して、操作者は、鋼鉄製作に必要な全ての気体供給原料を、現場で生成し得る。
【実施例】
【0123】
実施例
実施例1
1分あたり60標準リットル(standard liter)の99.9%純度メタン、1分あたり90標準リットルの99.9%純度の水素および1分あたり6標準リットルの窒素で構成される前駆気体のフローを、
図4Aおよび4Bに記載されるものと同様の気体注入器装置を通して、70トルの圧力で保持された50mmの外径、45mmの内径の石英チューブに供給した。前駆気体を、
図3に記載されるものと同様のプラズマ反応器装置中、19kWの入射915MHzマイクロ波動力に供した。前駆気体に含まれるメタンの95.7%を、水素生成物および炭化水素生成物に変換した。ガスクロマトグラフィーにより分析した場合の反応器に残った流出気体の炭化水素組成を、以下の表5に記載する。
【表5】
【0124】
反応器からの流出気体を、空冷ヒートシンクに通し、次いで波形の濾紙に通し、その後真空ポンプから排出した。次いで流出気体を、10℃で作動するコールドトラップおよびさらなるフィルターに通した。
【0125】
次いで、流出気体の一部を、高表面積活性炭を含む吸着カラムに通した。吸着カラムの出口での流出気体の組成を以下の表6に示す。
【表6】
【0126】
吸着カラムを通り過ぎた後、次いで流出気体の一部を吸収カラムに通した。アセチレンを優先的に吸収するために、溶媒N-メチルピロリドンを流出気体に対して向流で流した。吸収カラムから出ると、吸収したアセチレンを有する溶媒を、溶媒を元に戻すための第2のカラムにポンプで輸送し、120~140℃に加熱した。第2のカラムにおいて、アセチレンおよび関連する気体を、精製産物気体流として溶媒から除去し、元に戻す溶媒を系にリサイクルした。以下の表7は、第2のカラムから出た精製産物気体流の組成を示す。
【表7】
【0127】
実施例2
1分あたり20標準リットルの99.9%純度のメタン、1分あたり20標準リットルのエタン、1分あたり95標準リットルの99.9%純度の水素および1分あたり6標準リットルの窒素で構成される前駆気体のフローを、実施例1に記載されるプラズマ反応器装置を通して供給し、実施例1で使用されたプラズマ反応器装置を使用して、18kWの入射915MHzマイクロ波動力と反応させた。供給気体に含まれるメタンおよびエタンの97.9%を、水素および炭化水素生成物に変換した。ガスクロマトグラフィーにより分析した場合の反応器からの流出気体の炭化水素組成を以下の表8に記載する。
【表8】
【0128】
実施例3
1分あたり110標準リットルの99.9%純度のメタンおよび1分あたり11標準リットルの窒素で構成される前駆気体のフローを、
図4Aおよび4Bに記載されるものと同様に、気体注入器装置を通して80mm外径、75mm内径の石英チューブに供給した。前駆気体を、
図3に記載されるプラズマ反応器装置中、11kWの入射915MHzマイクロ波動力に供した。前駆気体に含まれるメタンの50.7%を、水素および炭化水素生成物に変換した。変換されたメタンの7%は、炭素固体および多環式芳香族炭化水素を生じた。76%の変換されたメタンはアセチレンを生じた。
【0129】
実施例4
1分あたり100標準リットルの99.9%純度のメタン、1分あたり160標準リットルの99.9%純度の水素および1分あたり10標準リットルの窒素で構成される前駆気体のフローを、
図4Aおよび4Bに記載されるものと同様に、気体注入器を通して、70トルに維持した50mm外径、45mm内径の石英チューブに供給した。前駆気体を、
図3に記載されるものと同様のプラズマ反応器装置中29kWの入射915MHzマイクロ波動力に供した。前駆気体に含まれるメタンの90.3%を水素生成物および炭化水素に変換した。反応器に残った流出気体の炭化水素組成を以下の表9に記載する。
【表9】
【0130】
実施例5
1分あたり130標準リットルの99.9%純度のメタンおよび1分あたり13標準リットルの窒素で構成される前駆気体のフローを、
図4aおよび4bに記載されるものと同様の気体注入器装置を通して、48トルに維持された80mm外径、75mm内径の石英チューブに供給した。前駆気体を、
図3に記載されるものと同様のプラズマ反応器装置中24.3kWの入射915MHzマイクロ波動力に供した。前駆気体に含まれるメタンの85.2%を水素および炭化水素生成物に変換した。
【0131】
実施例6
1分あたり74標準リットルの99.9%純度のメタン、1分あたり40標準リットルの99.9%純度の水素および1分あたり88標準リットルの窒素で構成される前駆気体のフローを、
図4Aおよび4Bに記載されるものと同様の気体注入器装置を通して、70トルに維持された80mm外径、75mm内径の石英チューブに供給した。前駆気体を、
図3に記載されるものと同様のプラズマ反応器装置中23.9kWの入射915MHzマイクロ波動力に供した。前駆気体に含まれるメタンの95.1%を、水素および炭化水素生成物に変換した。
【0132】
実施例7
1分あたり47標準リットルの99.9%純度のメタン、1分あたり110標準リットルの99.9%純度の水素および1分あたり5標準リットルの窒素で構成される前駆気体のフローを、
図4aおよび4bに記載されるものと同様の気体注入器装置を通して、65トルに維持された80mm外径、75mm内径の石英チューブに供給した。前駆気体を、
図3に記載されるものと同様のプラズマ反応器装置中、15.6kWの入射915MHzマイクロ波動力に供した。前駆気体に含まれるメタンの89.7%を、水素および炭化水素生成物に変換した。
【0133】
実施例8
1分あたり90標準リットルの99.9%純度のメタン、1分あたり135標準リットルの99.9%純度の水素および1分あたり9標準リットルの窒素で構成される前駆気体のフローを、
図4Aおよび4Bに記載されるものと同様の気体注入器装置を通して、105トルに維持された38mm外径、35mm内径の石英チューブに供給した。前駆気体を、
図3に記載されるものと同様のプラズマ反応器装置中25kWの入射915MHzマイクロ波動力に供した。前駆気体に含まれるメタンの92.0%を、水素および炭化水素生成物に変換した。
【0134】
実施例9
1分あたり15標準リットルの99.9%純度のブタン、1分あたり90標準リットルの99.9%純度の水素および1分あたり6標準リットルの窒素で構成される前駆気体のフローを、
図4aおよび4bに記載されるものと同様の気体注入器装置を通して、50トルに維持された50mm外径、45mm内径の石英チューブに供給した。前駆気体を、
図3に記載されるものと同様のプラズマ反応器装置中17.7kWの入射915MHzマイクロ波動力に供した。前駆気体に含まれるブタンの100%を、0.6%のメタン収率を有する水素および炭化水素生成物に変換した。
【0135】
実施例10
1分あたり30標準リットルの99.9%純度のエタン、1分あたり90標準リットルの99.9%純度の水素および1分あたり6標準リットルの窒素で構成される前駆気体のフローを、
図4aおよび4bに記載されるものと同様の気体注入器装置を通して、126トルに維持された50mm外径、45mm内径の石英チューブに供給した。前駆気体を、
図3に記載されるものと同様のプラズマ反応器装置中16kWの入射915MHzマイクロ波動力に供した。前駆気体に含まれるエタンの100%を、3.3%のメタン収率を有する水素および炭化水素生成物に変換した。反応器に残った流出気体の炭化水素組成を以下の表10に記載する。
【表10】
【0136】
実施例11
1分あたり8.6標準リットルの99.9%純度のプロパン、1分あたり8.6標準リットルの99.9%純度のブタン、1分あたり88標準リットルの99.9%純度の水素および1分あたり6標準リットルの窒素で構成される前駆気体のフローを、
図4Aおよび4Bに記載されるものと同様の気体注入器装置を通して、70トルに維持された50mm外径、45mm内径の石英チューブに供給した。前駆気体を、
図3に記載されるものと同様のプラズマ反応器装置中、16kWの入射915MHzマイクロ波動力に供した。前駆気体に含まれるエタンの100%を、3.2%のメタン収率を有する水素および炭化水素生成物に変換した。反応器に残った流出気体の炭化水素組成を以下の表11に記載する。
【表11】
【0137】
実施例12
1分あたり250リットルの流出気体を生成する実施例1に記載されるプラズマ反応器系を使用した。系内の真空ポンプの後、固体炭素副生成物を、単純なインラインフィルターで除去した。14より多くの炭素原子を含む液体炭化水素凝集物を、-20℃で作動したコールドトラップ中の流れから分離した。さらなる炭化水素を除去せず、流出は、3wt%の金属パラジウムおよび4wt%の金属銀でドーピングされた1.8kgの100~200メッシュαアルミナと混合した0.4kgのブランク100~200メッシュαアルミナを含む8インチの内径を有するステンレス鋼容器に直接通した。内部、開放ループ水冷却系を有する触媒床を350℃に維持した。50%の水素、11%のエチレン、0.5%のエタンおよび38.5%のメタンを含む気体混合物を得て;気体混合物中のアセチレン含有量は、意図的に100ppm未満に維持した。
【0138】
実施例13
実施例1に記載されるプラズマ反応器系を使用した。1分あたり1リットルの流出気体の流れを、この実施例に記載されるようにさらに分割して処理した。真空ポンプの後、固体炭素副生成物を、セラミック再生フィルターで除去した。10より多くの炭素原子を含む液体炭化水素凝集物を、-30℃で作動したコールドトラップ中の流れから分離した。その後、流出気体を、0.01%金属パラジウムでドーピングされた20グラムの高表面積活性炭を含むステンレス鋼容器に通した。この時点で、流出気体は、85%の水素、8%のアセチレン、4%のエチレンおよび0.6%のビニルアセチレンおよび残り量の(balance)メタンを含んだ。室温で300mLの濃硫酸を含む500mL容器に泡立てて流し、次いで、揮発した硫酸をトラップするための100mLの室温の水を含む容器に泡立てて流すことによりビニルアセチレンを除去した。最終的に、10グラムの硫酸カルシウム乾燥剤に通して気体流を乾燥させた。
【0139】
本発明は、その好ましい態様に関して特に示され、記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、本発明において形態および詳細における種々の変更がなされ得ることが当業者に理解されよう。そうではないと記載されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される反応条件、量(quantities)、量(amounts)、範囲などを表現する全ての数は、全ての例において用語「約」により修飾されるものと理解される。したがって、それと反対と示されない限り、本明細書に記載される数的パラメーターは、本発明によりようとつとめられる所望の特性に応じて変化し得る概数である。
【国際調査報告】