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特表2022-508360熱可塑性エラストマーに基づくゲル及びクッション材並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマーに基づくゲル及びクッション材並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20220112BHJP
   C08J 3/21 20060101ALI20220112BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20220112BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220112BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20220112BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20220112BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C08J9/06 CEQ
C08J3/21 CES
B29C45/00
C08L101/00
C08L23/12
C08K5/20
C08K5/01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533591
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(85)【翻訳文提出日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 IN2020050043
(87)【国際公開番号】W WO2020148781
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】201921001889
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521254982
【氏名又は名称】コンフォート グリッド テクノロジーズ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サロット、プリヤンカ
(72)【発明者】
【氏名】トリパシー、ヴィジェイ エス.
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA08
4F070AA15
4F070AA63
4F070AB09
4F070AB11
4F070AB16
4F070AC16
4F070AC45
4F070AC94
4F070AE01
4F070AE02
4F070AE12
4F070FA01
4F070FA02
4F070FA17
4F070FB02
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC03
4F074AA13B
4F074AA24
4F074AA98
4F074AC26
4F074AD01
4F074AG01
4F074AG02
4F074AG04
4F074BA13
4F074CA26
4F074CC22X
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA17
4F074DA45
4F206AA45
4F206AE06
4F206AE07
4F206AL14
4F206AL18
4F206AR06
4F206AR15
4F206JA07
4F206JF01
4F206JF11
4F206JL02
4F206JM01
4F206JN01
4J002AA011
4J002BB122
4J002EA006
4J002EP007
4J002FD026
4J002FD207
4J002GC00
(57)【要約】
本開示は、熱可塑性エラストマーからなるゲル材料に関する。ゲル材料中の熱可塑性エラストマー含有量は非常に少ない。熱可塑性エラストマーの低減後でさえ、ゲル材料は優れた特性を有する。本開示のゲル材料は、費用対効果が高く、良好な強度を有する。また、本開示は、熱可塑性エラストマーのゲルからなるクッション材に関する。さらに、本開示はまた、ゲル及びクッション材を作製するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
15~35重量%の熱可塑性エラストマー、
65~85重量%の鉱油、
1~10重量%のポリプロピレン、及び
0.5~4重量%のアゾジカルボンアミド
を含むエラストマー系ゲル材料。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマーが、A-B-A型熱可塑性エラストマーである、請求項1に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項3】
Aがアルケニルアレンポリマーなどの結晶性ポリマーを表し、Bがポリオレフィンなどのエラストマーポリマーを表す、請求項1又は2に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項4】
前記アルケニルアレンポリマーがポリスチレンである、請求項1~3に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン-[エチレン-(エチレン-プロピレン)]-スチレンブロックコポリマーである、請求項1~4に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項6】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリブチレン又はそれらの組合せである、請求項1~4に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項7】
前記ポリプロピレンが、ホモポリマーポリプロピレン及び/又はコポリマープロピレンである、請求項1又は6に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項8】
前記ゲル材料が、1~10重量%の範囲の充填剤及び0.05~0.5重量%の範囲の酸化防止剤をさらに含む、請求項1に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項9】
前記充填剤が、沈降シリカ、陶土及び/又は炭酸カルシウムから選択され、好ましくは、前記充填剤は、粘土、炭酸カルシウム(CaCO)又はシリカから選択され、より好ましくは、前記充填剤はCaCOである、請求項3に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項10】
前記ゲル材料がクッション材である、請求項1に記載のエラストマー系ゲル組成物。
【請求項11】
熱可塑性エラストマー系ゲル材料の製造方法であって、
-ミキサー内で成分(a)、(b)及び(c)を混合して粉末を製造する工程であって、
(a)は65%~85%の鉱油、
(b)は15%~35%の熱可塑性エラストマー、並びに
(c)は充填剤、アゾジカルボンアミド、ADC及び酸化防止剤、
である工程、
-前記粉末を押出機中120~160℃の温度でペレット化してペレットを製造する工程、及び
-前記ペレットを120~190℃の範囲の温度で射出成形して熱可塑性エラストマー系ゲル材料を製造する工程
を含む方法。
【請求項12】
前記のシグマ/リボンミキサー内で混合する工程が、
-シグマ/リボンミキサーの加熱されたチャンバに鉱油を注ぎ、
-前記油中に熱可塑性エラストマーを添加し、前記油が前記エラストマーに吸収されるまで混合し、
-充填剤、アゾジカルボンアミド、ADC及び酸化防止剤を添加すること
である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12に記載の熱可塑性エラストマー系ゲル材料を含むクッション材。
【請求項14】
前記クッション材の構造が、均一に分布した中空柱を有する座屈モールド構造である、請求項13に記載のクッション材。
【請求項15】
前記座屈モールド構造が、モールド設計のコア、空洞又は相補的な構成要素の複数の設計を有する雄型構成要素を有する、請求項14に記載のクッション材。
【請求項16】
マットレス、ベッドマット、ソファ、椅子に使用される場合の請求項1~9に記載のエラストマー系ゲル材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱可塑性エラストマー(TPE)の分野に関する。より具体的には、本開示は、熱可塑性エラストマーからなるゲルに関する。さらに特定すれば、本開示は、熱可塑性エラストマーのゲルからなるクッション材に関する。さらに、本開示はまた、ゲル及びクッション材を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歴史的に、マットレス業界又はクッション業界(ソファ、椅子など)では、発泡体、綿毛詰め物、金属ばね、ポリウレタンフォーム及びラテックスフォームなどの使用が主流であった。しかしながら、この10年間で、熱可塑性エラストマー材料及びケイ素は、ゆっくりではあるが確実に医療分野に参入してきている。これは、TPEが有利なことに比較的低コストであり、容易にリサイクルすることができ、したがって環境に優しいからである。その一方で以後、この業界についは重要な開発又は発明は為されていない。本開示は、より良い解決策を提供する。
【0003】
弾性変形に対する抵抗性を示し、形状記憶回復が可能であり、寸法的に安定しており、0.6~0.99の範囲の密度を有する、ふわふわした固体の強い弾性ゲルが、20年ほど前に発見され、医療分野へ応用された。これらの物質は、熱可塑性エラストマーと呼ばれ、これらを溶融状態にして、成形することができ、再び成形された物品を、加熱によって溶融状態にすることができるが、ゴムのような弾性特性が保持され得るという点で熱可塑性プラスチックの特性を組み合わせたものとされる。
【0004】
熱可塑性エラストマーがクッション材用ゲルに使用される参考文献は入手できるが、本発明に開示される特定の熱可塑性エラストマーからなる特定のゲルは、いずれの参考文献にも開示されていない。
【0005】
クッション材として熱可塑性エラストマー系ゲルを製造するための以前に報告された方法及び配合表は複雑であり、多くの成分を含んでいたが、所望の結果は得られなかった。本開示で使用される配合表は、それほど多くの成分を含まない。いくつかの参考文献で示唆されているような高温溶融プロセスによる成分のブレンドは、特に充填剤の添加後の混合物の融点が非常に高くなり、可塑化油の引火点を超えることが多いため、非常に危険である。本事例における全体の混合及びブレンドは、油の引火点よりはるかに低い70℃で行われる。従来の方法では、高価なノンブリード剤をかなり添加した後であっても、油のブリードが生じた。本組成物により、ノンブリード性製品がもたらされる。これは、ポリプロピレン(PP)及びアゾジカルボンアミド(ADC)を配合表に加えた後に可能になった。油のブリードは、報告された配合表のいずれについても長年の問題となっている。要求される強度及び剛性を得るために、多くの場合、より多くの割合のTPEが配合物に使用されるが、これは費用の面で望ましくない。
【発明の概要】
【0006】
先行技術の問題を克服するための本開示の配合表/組成物及びプロセスは、熱可塑性エラストマー(TPE)含有量を増加させることなくポリプロピレン(PP)及びアゾジカルボンアミド(ADC)を添加することにより、良好な強度及び剛性という点でより良好な製品をもたらす。
【0007】
本発明において開示されるゲルは、従来から入手可能なゲル、ケイ素系ゲル、並びにラテックス及び形状記憶フォームなどの他のクッション材と比較して低コストである。
【0008】
開示されたゲルは、綿、発泡体、ばねなどの従来のクッション材と比較して、より良好な物理的特性及び圧力緩和特性を有する。開示されたゲルは、形状記憶フォーム、ラテックス及び発泡体のような他の伝統的なクッション材よりも優れた引張強度、伸び及び圧縮永久歪み(経時的なたるみの評価)を有する。
【0009】
本発明はまた、熱可塑性エラストマーに基づくゲルの製造方法を開示する。本発明はまた、重量を分散させるのに役立つマットレスの設計に関する。
【0010】
本開示又はゲル材料が対処する最大の問題は、クッション材における快適性及び圧力軽減の向上である。本開示の材料には、既存の材料の大きな欠点である経時的なたるみがない。したがって、本開示は、既存の材料と比較して、寿命及びたるみ特性の改善を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】均一に分布した中空柱を有するクッションエレメントのカラー画像を示す。
図2】25/25mmの中空柱についての隔壁を示す上記構造の2D図を示す。
図3】クッションの小さな断面の3D図である。
図4a】発泡体/ばね/ラテックスのマットレスに取って代わる、開発されたエラストマーゲルを用いたアセンブリを示す図である。
図4b】発泡体/ばね/ラテックスのマットレスに取って代わる、開発されたエラストマーゲルを用いたアセンブリを示す図である。
図4c】発泡体/ばね/ラテックスのマットレスに取って代わる、開発されたエラストマーゲルを用いたアセンブリを示す図である。
図4d】発泡体/ばね/ラテックスのマットレスに取って代わる、開発されたエラストマーゲルを用いたアセンブリを示す図である。
図4e】発泡体/ばね/ラテックスのマットレスに取って代わる、開発されたエラストマーゲルを用いたアセンブリを示す図である。
図4f】発泡体/ばね/ラテックスのマットレスに取って代わる、開発されたエラストマーゲルを用いたアセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、様々な修正形態及び代替形態が想到され得るものであり、その具体的な実施態様を、例として図面に示し、以下で詳細に説明する。しかしながら、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、逆に、本発明は、本発明の精神及び範囲内にあるすべての修正、等価物、及び代替物を網羅することを理解されたい。
【0013】
本出願人は、本明細書の説明の恩恵を受ける当業者に容易に明らかになる詳細を述べることで本開示を不明瞭にしないように、本開示の実施態様を理解するのに適切な特定の詳細のみを示すために例を挙げていることに言及したい。
【0014】
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」という用語、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な含有事象を網羅することを意図しており、その結果、構成要素の列挙を含む方法は、それらの構成要素のみを含むのではなく、明示的に列挙されていない、又はかかるプロセスに固有の他の構成要素を含むこともあり得る。言い換えれば、「を含む(comprises...a)」の後に続く方法における1つ以上の要素は、さらなる制約なしで、本方法における他の要素又は追加の要素の存在を排除するものではない。
【0015】
したがって、本開示は、熱可塑性エラストマーからなるゲルと、熱可塑性エラストマーからなるゲルからなるクッション材とを提供する。さらに、本開示は、ゲル及びクッション材を作製するための方法を提供する。ゲル材料中の熱可塑性エラストマー含有量は非常に少ない。熱可塑性エラストマーの低減後でさえ、ゲル材料は優れた特性を有する。本開示のゲル材料は、良好な強度、剛性を有し、費用対効果が高い。
【0016】
本開示の一実施形態において、ゲル材料は、熱可塑性エラストマーを15~35重量%、鉱油を65~85重量%、ポリプロピレンを1~10%及びアゾジカルボンアミドを0.5~4%の割合で含む。
【0017】
本開示の別の実施形態において、熱可塑性エラストマーは、A-B-A型熱可塑性エラストマーである。
【0018】
本開示のさらに別の実施形態では、熱可塑性エラストマーはA-B-A型であり、式中、Aはアルケニルアレンポリマーなどの結晶性ポリマーを表し、Bはポリオレフィンなどのエラストマーポリマーを表す。
【0019】
本開示のさらに別の実施形態では、アルケニルアレンポリマーはポリスチレンである。
【0020】
本開示のさらに別の実施形態において、熱可塑性エラストマーは、スチレン-[エチレン-(エチレン-プロピレン)]-スチレンブロックコポリマーである。
【0021】
本開示のさらに別の実施形態では、ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリブチレン又はそれらの組合せである。
【0022】
本開示のさらに別の実施形態において、ポリプロピレンは、ホモポリマーポリプロピレン及び/又はコポリマープロピレンである。
【0023】
本開示のさらに別の実施形態において、ゲル材料は、1~10重量%の範囲の充填剤及び0.05~0.5重量%の範囲の酸化防止剤をさらに含む。
【0024】
本開示のさらに別の実施形態において、充填剤は、沈降シリカ、陶土及び/又は炭酸カルシウムから選択され、好ましくは、充填剤は、粘土、炭酸カルシウム(CaCO)又はシリカから選択され、より好ましくは充填剤はCaCOである。
【0025】
本開示のさらに別の実施形態において、ゲル材料はクッション材である。
【0026】
本開示の別の実施形態における、成分(a)65%~85%の鉱油、(b)15%~35%の熱可塑性エラストマー並びに(c)充填剤、アゾジカルボンアミド、ADC及び酸化防止剤をミキサー中で混合して粉末を製造し、この粉末を押出機中120~160℃の温度でペレット化してペレットを製造し、このペレットを120~190℃の範囲の温度で射出成形して熱可塑性エラストマー系ゲル材料を製造する工程を含む、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー系ゲル材料の製造方法。
【0027】
本開示のさらに別の実施形態において、混合する工程は、シグマ/リボンミキサー内で、シグマ/リボンミキサーの加熱されたチャンバに鉱油を注ぎ、前記油中に熱可塑性エラストマーを添加し、前記油が前記エラストマーに吸収されるまで混合し、充填剤、アゾジカルボンアミド、ADC及び酸化防止剤を添加することにより行われる。チャンバを加熱すると吸油量が増加するが、これは、より柔らかく0未満のショアAの物品を製造するために重要であり、エラストマーを最初に混合する方が、充填剤、ポリプロピレンを最初に混合するよりも均質な混合物が得られる。
【0028】
本開示の別の実施形態における、本発明の熱可塑性エラストマー系ゲル材料を含んでいるクッション材。
【0029】
本開示のさらに別の実施形態において、クッション材は、均一に分布した中空柱を有する座屈モールド構造を有する。
【0030】
本開示のさらに別の実施形態において、座屈モールド構造は、モールド設計のコア、空洞又は相補的な構成要素の複数の設計を有する雄型構成要素を有する。
【0031】
本開示の別の実施形態において、エラストマー系ゲル材料は、マットレス、ベッドマット、ソファ、椅子、ベビーヘッドレスト、ニーパッド、アンクルパッド、ヒールパッド、圧力及び疼痛緩和用途などに使用される。
【0032】
本開示における熱可塑性エラストマーは、日本のクラレ社製のSEPTONをはじめ、様々なメーカーから供給されており、本発明ではAPAR Industries Ltd(インド)製のAparpreneを用いている。ほとんどのSeptonグレードでは、末端基はスチレンであるが、トリブロックコポリマーの中間部分は水素化ポリイソプレン、ポリブタジエン又はポリイソプレン/ブタジエンであり得る。これらの熱可塑性エラストマー中のポリスチレン含量は、10~70%の範囲で変動し得る。様々な分子量及び物理的特性が様々なグレードのSeptonで採用されている。
【0033】
鉱油は、限定される訳ではないが、Apar Industries製のpearl(パール)70、pearl 85、pearl 250及びpearl 300、Savita Oil Technologies製のsavanol(サバノール)10、savanol 15及びsavanol 20の油、Gandhar Oil Refineries Ltd.製の油から選択される。好ましくは、鉱油は、油がより低い動粘度を有するように選択される。より好ましくは、鉱油は白色鉱油から選択される。
【0034】
充填剤は、沈降シリカ、陶土及び/又は炭酸カルシウムから選択されるが、これらに限定されない。好ましくは、充填剤は、粘土、炭酸カルシウム(CaCO)又はシリカから選択される。より好ましくは、CaCOは、費用対効果が高く、審美的により良好な特性を製品にもたらす。
【0035】
酸化防止剤は、BASFによって提供されるIrganoxから選択されるが、これに限定されない。好ましくは、2つの酸化防止剤、すなわち一次及び二次の酸化防止剤が関与する。一次酸化防止剤はIrganox 1010であり、二次酸化防止剤はIrgafos 168である。
【0036】
ポリプロピレンは、ホモポリマーポリプロピレン及び/又はコポリマープロピレンであり得る。より好ましくは、耐衝撃性ポリプロピレンが、クッション材のための本開示の熱可塑性エラストマー系ゲルに使用される。さらに、中~高MFIの耐衝撃性(22~35など)を有するPPにより、引張強度及び伸びのより良好な組合せと効果的な加工性がもたらされる。
【0037】
本熱可塑性エラストマーゲル組成物において、1%~10%の範囲の開示されたPPがゲル配合表/組成物の一部である場合、ブリード防止剤を添加する必要はない。したがって、油ブリードの問題は、所望の生成物においても克服される。ポリプロピレンはまた、マットレスのようなクッション/寝具において重要な要件である硬度、圧縮永久歪みに関するより良好な結果をもたらすのに役立つ。特定の組成物は、最終製品において所望される特性の要件に従って使用される。
【0038】
本開示は、A-B-A型熱可塑性エラストマー(Aは、ポリスチレンのようなモノアルケニルアレンポリマーなどの結晶性ポリマーを表し、Bは、ポリエチレン、ポリブチレンのようなエラストマーポリマーである)又はSEEPS、すなわちスチレン-エチレン-エチレン/プロピレンスチレンコブロックポリマー、熱可塑性材料、可塑化油、及びゴム配合に使用される他の一般的に使用される成分を含む配合表/組成物を提供し、これは、摂氏150度~200度の温度範囲で、オープンダイキャスト、圧縮成形又は射出成形などの任意の成形方法によって所望の製品に変換することができる。この配合表から製造されたマットレスは、PUフォーム、形状記憶フォーム、ばね、ラテックスなどのような利用可能な従来のマットレス材料よりもはるかに優れている。優れた引張強度、1000%超の伸び、適切な剛性、物体からの圧力を除去した後の形状の寿命及び瞬間的な回復は、この材料をクッション/マットレス業界で使用される一般的なエラストマー及びプラスチック及び材料と比較して全く異なるものにする特性の一部である。
【0039】
所望の物体の製造に使用することができる様々な成形方法、すなわち、オープンダイキャスト、圧縮成形及び射出成形といった方法がある。物品の製造のために、任意の成形方法を選択することができる。オープンダイキャストは、低ゲル含有量の物品に選択される方法であり得る。おそらく低コストで合理的な速度であるために、この方法は現在、理学療法及び快適さのための医療機器の成形に使用されている。圧縮成形は非常に緩慢なプロセスであり、商業生産ではほとんど使用されない。射出成形は、必要な速度及び製品における適切な剛性を有するクッションエレメントを製造するための好ましい方法であり、これは、比較的中程度から高い度合のエラストマー含有量及びPPのような特殊な添加剤を有する化合物を有することによってのみ達成することができる。
【0040】
上述の3つの成形方法の全てを用い、添加剤と共に異なる油対エラストマー比を使用して、中空柱を有する合理的なサイズのクッション材を作製する特定の適用では、独特な配合表が開発され、その結果良好な引張強度、1000%~2200%の範囲の伸び、適切な剛性及び優れた形状記憶がもたらされた。最終的に選択された成形方法は、最大15Kgの化合物をワンショットで射出することができる1600MT容量の機械での射出成形であった。
【0041】
配合のプロセスは、以下の工程で説明される。
【0042】
成分の混合-最初の必要量65%~85%の油をシグマ/リボンミキサーの加熱チャンバに注いだ。好ましくは、最初に油中に15%~35%の範囲のSEEPSコポリマーを入れ、SEEPSコポリマーへの油の適切な吸収が確実になるためこれを混合し、次いで他の充填剤、ポリプロピレン、ADC及び酸化防止剤をシグマ/リボンミキサーに入れた。添加剤が油中に均一に分散しているように見えるまで、各添加後に数分間ミキサーを稼働させた。必要量のSepton 4055の少量を稼働中のシグマミキサーに添加し、塊全体を数十分間、ふわふわした固体塊が得られるまで撹拌した。またこのプロセスにより、Septon 4055のような好ましいTPEの3~8倍の程度に及ぶ油の度合に至る油のより高い吸油が確実となる。すなわち、Septonを最初に油に入れ、他の充填剤、ポリマー又は添加剤を混合する前にそれを混合する混合方法。TPE(Septon 4055及びSepton 4077)が最初に油に添加される混合工程により、より均質な混合物がもたらされ、油の吸着がより良好となる。
【0043】
ペレット化-L/D比が20以上の連続スクリューインジェクタを用いて、上記のようにして得られたふわふわした塊を、直径2mm及び長さ3mmの円柱に変換した。スクリュー全体の温度を120~160℃の間に維持した。推奨されるプロセスは、パレチゼーション(palletization)中にADC発泡剤を吹きとばしたくないため、押出中の温度を低く保つことである。(先行発明のように)温度が高い場合、発泡剤は最終射出成形中に脱ブロー/燃焼する可能性がある。カッターをスクリュー押出機の出口点に展開し、これを設定速度で動作させて所望の長さの円柱を得た。押出機の出口点を、化合物を凝固させるための冷却水の通過によって冷却した。
【0044】
射出成形-射出成形は、1600MT容量の機械を使用して行った。全長にわたる温度は、6つのゾーンにおいて120~190℃の間で変化した。温度は、予め決められた順序でホッパから注入点まで上昇した。マルチチャネル注入を採用し、押出機からモールドまでの全ての送出ラインを120~150℃の間で加熱した。モールドには、注入後に冷却水を通過させることによってモールド内の化合物を急速に冷却するための冷却チャネルが設けられた。1サイクルは約1~4分かかった。1分未満の冷却時間を有するように、モールドの各インサートに冷却チャネルがあってもよい。また、1分未満、より好ましくは30秒未満で複数の点を有するホットランナーシステムを介してモールド内に材料を注入する。
【0045】
本発明の射出成形工程は、圧縮成形及び手動成形を凌ぐ様々な利点を有する。推奨プロセスから制作された物品は、
a)質感がより良好であり、
b)コンシステンシーが高く、
c)拒絶反応が少なく、
d)より経済的であり、
e)労働集約的でなく、及び
f)品質がより良好である。
【0046】
本発明は、形状記憶を有し、実質的に固体であり、摂氏90度未満の温度で流動不能である可撓性で弾力性のあるゲル状クッション材を含む、クッション材用の屈曲性のある熱可塑性エラストマーゲルを製造するための方法及び配合表を開示する。本方法は、射出成形に適した適切な形態の化合物の調製を含む。
【0047】
押出された物体は、通常の大気温度をはるかに上回る摂氏90度未満でも使用可能なままである。押出材料の引張強度は、1.2~2.5N/mmの間で変化する。測定された伸びは1000超であった。成形時の収縮率は1~3%であった。成形ゴムの比重は0.6~0.9g/cmであり、配合表の調製時の初めにADCの含有量を増やすことで比重を所望の値に下げることが可能である。ADCは、はるかに経済的な発泡剤である。ゲルのショアA硬度は0~0であり、より好ましいゲルは0~1である。座屈支柱を有するクッションの形状は、異なる身体部分での空気循環及び圧力低減に役立つ。
【0048】
熱可塑性エラストマー系ゲルの製造方法の工程
シグマミキサー内の鉱油、
撹拌しながら加熱する
【数1】

油の適切な混合及び吸収のために、Septonのみを3バッチで添加する
数分間撹拌する。
【数2】

充填剤とPPを添加する
各添加後に数分間撹拌する。
【数3】

酸化防止剤を添加する。アゾジカルボンアミド、
【数4】

ふわふわした粉末
【数5】

160C未満での押出機におけるペレット化
【数6】

通常サイズのペレット
【数7】

射出成形
【数8】

熱可塑性エラストマー系ゲル(クッション材)
【実施例
【0049】
ここで、本発明を以下の非限定的な例によって説明する。好ましい実施態様及び例としての構成が以下に示され説明されているが、当業者には明らかであり得る様々なさらなる修正及び追加の構成が開発中であることを理解されたい。開示された例は、本開示の好ましい性質の実例であり、本開示の範囲に対する限定として解釈されるべきではないものとする。
【0050】
例1:
例1のゲル材料は、1:4の比でAPAR industries pvt.Ltdからの熱可塑性エラストマー(Septon 4055)及び鉱油(Oil Pearl 70)を有する。ゲルの組成は、17%のSepton、72%の油、3%のポリプロピレン、6%の充填剤、1.5%のADC並びに少量の酸化防止剤及び顔料である。
【0051】
例1のゲル(本発明のスマートゲル)の特性を、マットレスに通常使用される発泡体1、2及び3と比較する。発泡体1、2及び3は、密度の異なる従来の発泡体である。
【表1】
【0052】
マットレスに使用される他の材料と比較して、本開示のスマートゲルは、引張強度、伸び及び圧縮永久歪みのパラメータ全体にわたってより良好な性能を示した。また、剪断後疲労を試験したとき(IS 7888による)、硬度の損失又は変化はなかった。このことは、製品が7~10年間にわたって機能を果たす必要があり、発泡体、ばねなどの他の材料で一般的に見られるたるみ及び変形を引き起こさないため、重要である。また、PPの添加は、硬度及び圧縮永久歪みの改善に役立つ。
【0053】
例2:
例2のゲル材料は、1:5の比で、APAR industries pvt.Ltdからの熱可塑性エラストマー(Septon 4055)及び鉱油(Oil Pearl 70)を有する。ゲルの組成は、17%のSepton、76%の油、7%の充填剤並びに少量の酸化防止剤及び顔料である。
【0054】
例2のゲル(本発明のスマートゲル)の特性を、マットレスに通常使用される発泡体1、2及び3と比較する。
【表2】
【0055】
マットレスに使用される他の材料と比較して、本開示のスマートゲルは、引張強度、伸び及び圧縮永久歪みのパラメータ全体にわたってより良好な性能を示した。また、剪断後疲労を試験したとき(IS 7888による)、硬度の損失又は変化はなかった。このことは、製品が7~12年間にわたって機能を果たす必要があり、発泡体、ばねなどの他の材料で一般的に見られるたるみ及び変形を引き起こさないため、重要である。先行の発明のようなこの配合表は、ポリプロピレンを含まず、Septon 4055のパーセンテージが高かった。これにもかかわらず、本開示の配合表又は組成と比較して、硬度及び圧縮永久歪みの損失に関する結果はより悪いことが分かる。また、PPの添加は、硬度及び圧縮永久歪みの改善に役立つ。
【0056】
例3:
例3のゲル材料組成物は、Septon 4055を17%、CaCO3を7%、PP320を3%、油を71%、アゾジカルボンアミド(ADC)を1.5%の割合で含む。例3のゲル材料と、ADCを含まないゲル材料とを比較する(比較例-4)。両方のゲルの特性を以下の表3に示す。
【表3】
【0057】
表3から、ADCは製品の比重を低減し、したがって費用を低減するのに役立つことが分かる。その結果、伸び及び圧縮永久歪みなどの特性がより良好なものとなる。圧縮永久歪みが良好であると、クッション製品の経時的なたるみが少なくなり、これはクッション物体にとって重要な性能パラメータである。また、1.5%のADCの添加は、10%の重量及び費用の低減に役立つ。
【0058】
例4
例4のゲル材料組成物は、Septon 4055を16%~19%、CaCO3を5%~8%、ポリプロピレンを3%、鉱油を70%~75%の割合で含み、ADCは1.5%、1%及び0%と変化した。
【0059】
ポリプロピレンを含まないゲル材料組成物の比較例5(a)、5(b)及び5(c)。これらのゲル材料の特性を以下の表4に示す。
【表4】
【0060】
表4から、ポリプロピレン、より好ましくはより高いMFIを有する耐衝撃性コポリマーの添加は、ほぼ油のブリードが無い、すなわち非粘着性の材料をもたらし、より良好な圧縮状態の助けとなることが分かる。これは、経時的なクッションのたるみを低減し、引張強度を高めるのに役立つ。一方、ポリプロピレンを含まないゲル材料は、引張強度が低く、50%圧縮後の圧縮永久歪みが大きい非常に粘着性の高い材料である。
【0061】
また、実験により、15%~35%の熱可塑性エラストマー(TPE)含量が、引張強度、伸び、比重などの所望の特性の組合せを得るのに適していることが見出された。Septon 4077についての熱可塑性エラストマー(TPE)の最適レベルは、組成物全体の15%~20%であり、Septon 4055については20%~35%である。
【0062】
適用分野:開示された発明は、クッション、マットレス、理学療法のための医療機器、手術室及びICU器具、玩具並びに靴付属品での適用性を有し得る。
【0063】
本発明に開示されるゲル材料により、
・良好な強度及び剛性;
・低コスト;
・より良好な物理的及び圧力緩和特性;
・より良好な引張強度、伸び及び圧縮永久歪み(経時的なたるみの評価)
が実現する。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
【手続補正書】
【提出日】2021-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
15~35重量%の熱可塑性エラストマー、
65~85重量%の鉱油、
1~10重量%のポリプロピレン、及び
0.5~4重量%のアゾジカルボンアミド
を含むエラストマー系ゲル材料。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマーが、A-B-A型熱可塑性エラストマーである、請求項1に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項3】
Aがアルケニルアレンポリマーなどの結晶性ポリマーを表し、Bがポリオレフィンなどのエラストマーポリマーを表す、請求項1又は2に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項4】
前記アルケニルアレンポリマーがポリスチレンである、請求項1~3に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン-[エチレン-(エチレン-プロピレン)]-スチレンブロックコポリマーである、請求項1~4に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項6】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリブチレン又はそれらの組合せである、請求項1~4に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項7】
前記ポリプロピレンが、ホモポリマーポリプロピレン及び/又はコポリマープロピレンである、請求項1又は6に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項8】
前記ゲル材料が、1~10重量%の範囲の充填剤及び0.05~0.5重量%の範囲の酸化防止剤をさらに含む、請求項1に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項9】
前記充填剤が、沈降シリカ、陶土及び/又は炭酸カルシウムから選択され、好ましくは、前記充填剤は、粘土、炭酸カルシウム(CaCO)又はシリカから選択され、より好ましくは、前記充填剤はCaCOである、請求項3に記載のエラストマー系ゲル材料。
【請求項10】
前記ゲル材料がクッション材である、請求項1に記載のエラストマー系ゲル組成物。
【請求項11】
熱可塑性エラストマー系ゲル材料の製造方法であって、
-ミキサー内で成分(a)、(b)及び(c)を混合して粉末を製造する工程であって、
(a)は65%~85%の鉱油、
(b)は15%~35%の熱可塑性エラストマー、並びに
(c)は充填剤、アゾジカルボンアミド、ADC及び酸化防止剤、
である工程、
-前記粉末を押出機中120~160℃の温度でペレット化してペレットを製造する工程、及び
-前記ペレットを120~190℃の範囲の温度で射出成形して熱可塑性エラストマー系ゲル材料を製造する工程
を含む方法。
【請求項12】
前記のシグマ/リボンミキサー内で混合する工程が、
-シグマ/リボンミキサーの加熱されたチャンバに鉱油を注ぎ、
-前記油中に熱可塑性エラストマーを添加し、前記油が前記エラストマーに吸収されるまで混合し、
-充填剤、アゾジカルボンアミド、ADC及び酸化防止剤を添加すること
である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記クッション材の構造が、均一に分布した中空柱を有する座屈モールド構造であり、前記座屈モールド構造が、モールド設計のコア、空洞又は相補的な構成要素の複数の設計を有する雄型構成要素を有する、請求項1~12に記載の熱可塑性エラストマー系ゲル材料を含むクッション材。
【国際調査報告】