(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】最終硬質パーム油中融点画分を得るための乾式分画のプロセス
(51)【国際特許分類】
C11B 3/16 20060101AFI20220112BHJP
A23D 9/02 20060101ALI20220112BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20220112BHJP
A23G 1/38 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C11B3/16
A23D9/02
A23D9/00 500
A23D9/00 518
A23D9/00
A23G1/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534109
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(85)【翻訳文提出日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 SE2019050766
(87)【国際公開番号】W WO2020040687
(87)【国際公開日】2020-02-27
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521076753
【氏名又は名称】エーエーケー アクチエボラグ (パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨルト、イェップ リンデガールド
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
4H059
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG11
4B014GG14
4B014GG18
4B014GK07
4B014GL07
4B014GP01
4B026DC03
4B026DC06
4B026DG03
4B026DH02
4B026DX02
4H059BA26
4H059BA30
4H059BA33
4H059BC14
4H059CA77
(57)【要約】
軟質パーム油中融点画分(SPMF)を最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)に乾式分画するためのプロセスが開示されている。該プロセスは、軟質パーム油中融点画分(SPMF)を提供すること、第1の乾式分画(FDF)への投入物(IN1)として軟質パーム油中融点画分(SPMF)を使用して、中間オレイン画分(SPMF-O)および中間ステアリン画分(SPMF-S)を得ること、超音波支援による第2の乾式分画(SDF)への投入物(IN2)として中間オレイン画分(SPMF-O)を使用して、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)およびパーム油オレイン画分(POO)を得ることを含み、超音波支援による第2の乾式分画(SDF)は、投入物(IN2)の少なくとも一部を超音波処理(US2)に供することを含む。また、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、硬質パーム油中融点画分混合物、およびこれらの使用も開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質パーム油中融点画分(SPMF)を最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)に乾式分画するためのプロセスであって、該プロセスが、
軟質パーム油中融点画分(SPMF)を提供すること、
第1の乾式分画(FDF)への投入物(IN1)として前記軟質パーム油中融点画分(SPMF)を使用して、中間オレイン画分(SPMF-O)および中間ステアリン画分(SPMF-S)を得ること、
超音波支援による第2の乾式分画(SDF)への投入物(IN2)として前記中間オレイン画分(SPMF-O)を使用して、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)およびパーム油オレイン画分(POO)を得ること、
を含み、
前記超音波支援による第2の乾式分画(SDF)が、前記投入物(IN2)の少なくとも一部を超音波処理(US2)に供することを含む、前記プロセス。
【請求項2】
前記第1の乾式分画(FDF)が、前記投入物(IN1)の少なくとも一部を超音波処理(US2)に供することを含む、超音波支援による第1の乾式分画である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記超音波支援による第2の乾式分画(SDF)が、前記超音波処理(US2)の前に、前記投入物(IN2)を冷却(CO2)して過飽和投入物(IN2)を得ることを含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第2の乾式分画(SDF)が、その少なくとも一部が超音波処理(US2)に供されている前記過飽和投入物(IN2)の結晶化(CRY2)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記結晶化(CRY2)が結晶化装置内で行われ、前記超音波処理(US2)が前記結晶化装置の外部で行われる、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記結晶化(CRY2)が結晶化装置内で行われ、前記超音波処理(US2)が前記結晶化装置内で行われる、請求項4に記載のプロセス。
【請求項7】
前記結晶化(CRY2)が結晶化装置内で行われ、前記冷却(CO2)が前記結晶化装置内で行われる、請求項4から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記結晶化(CRY2)が結晶化装置内で行われ、前記冷却(CO2)が前記結晶化装置の外部で行われる、請求項4から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセスであって、
前記第1の乾式分画(FDF)が、
第1の溶融工程(MLT1)では、前記軟質パーム油中融点画分(SPMF)を溶融して、溶融軟質パーム油中融点画分(mSPMF)を得ること、
第1の冷却工程(CO1)では、前記溶融パーム油中融点画分(SPMF)を冷却して、過飽和軟質パーム油中融点画分(ssSPMF)を得ること、
第1の結晶化工程(CRY1)では、前記過飽和軟質パーム油中融点画分(ssSPMF)を結晶化して、第1のスラリー(SL1)を得ること、ならびに
第1の濾過工程(FLT1)では、前記第1のスラリー(SL1)を濾過して、前記中間オレイン画分(SPMF-O)および前記中間ステアリン画分(SPMF-S)を得ること、
を含む、前記プロセス。
【請求項10】
前記第1の乾式分画(FDF)が、
超音波処理(US1)では、前記過飽和軟質パーム油中融点画分(ssSPMF)の少なくとも一部を超音波に供する工程をさらに含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセスであって、
前記第2の乾式分画(SDF)が、
第2の溶融工程(MLT2)では、前記中間オレイン画分(SPMF-O)を溶融して、溶融中間オレイン画分(mSPMF-O)を得ること、
第2の冷却工程(CO2)では、前記溶融中間オレイン画分(mSPMF-O)を冷却して、過飽和中間オレイン画分(ssSPMF-O)を得ること、
超音波処理(US2)では、前記過飽和中間オレイン画分(ssSPMF-O)の少なくとも一部を超音波に供すること、
第2の結晶化工程(CRY2)では、少なくとも部分的に超音波処理(US2)に供されている前記過飽和中間オレイン画分(ssSPMF-O)を結晶化して、第2のスラリー(SL2)を得ること、
第2の濾過工程(FLT2)では、前記第2のスラリー(SL2)を濾過して、前記最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)および前記パーム油オレイン画分(POO)を得ること、
を含む、前記プロセス。
【請求項12】
前記パーム油オレイン画分(POO)が、追加の軟質パーム油中融点画分(SPMF)を得るために使用される、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
軟質パーム油中融点画分(SPMF)およびスーパーオレイン画分(SOF)を得るために、前記パーム油オレイン(POO)のさらに先行する乾式分画(PDF)を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第1の乾式分画(FDF)および前記第2の乾式分画(SDF)が、同じ乾式分画システムを使用して行われる、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記超音波処理(US2)が、少なくとも5分の持続時間を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記超音波処理(US2)が、少なくとも5重量%の前記中間オレイン画分(SPMF-O)に対して行われる、請求項1から15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記超音波処理(US2)が、5~200kHz、例えば、10~100kHzの超音波の平均周波数で行われる、請求項1から16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記投入物(IN2)1リットル当たり少なくとも50ジュール、例えば、前記投入物(IN2)1リットル当たり50~10,000ジュール、例えば、前記投入物(IN2)1リットル当たり50~5,000ジュールの音響エネルギーを有する前記超音波処理(US2)が行われる、請求項1から17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記冷却(CO2)が、過飽和閾値に達した後、少なくとも2時間、例えば、過飽和閾値に達した後、2~30時間の持続時間を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)が、前記軟質パーム油中融点画分(SPMF)の15~50重量%の量で得られる、請求項1から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
第3の乾式分画(TDF)への投入物(IN3)として前記中間ステアリン画分(SPMF-S)を使用して、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)およびパーム油ステアリン画分(POSt)を得ること、
をさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
請求項21に記載のプロセスであって、
前記第3の乾式分画(TDF)が、
第3の溶融工程(MLT3)では、前記中間ステアリン画分(SPMF-S)を溶融して、溶融中間ステアリン画分(mSPMF-S)を得ること、
第3の冷却工程(CO3)では、前記溶融中間ステアリン画分(mSPMF-S)を冷却して、過飽和中間ステアリン画分(ssSPMF-S)を得ること、
第3の結晶化工程(CRY3)では、前記過飽和中間ステアリン画分(ssSPMF-S)を結晶化して、第3のスラリー(SL3)を得ること、
前記第3のスラリー(SL3)を濾過して、前記第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)および前記パーム油ステアリン画分(POSt)を得ること、
を含む、前記プロセス。
【請求項23】
最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)であって、
前記最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)が、前記最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)の少なくとも62重量パーセントの量のPOP-トリグリセリドを含み、
前記最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)が、前記最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)の2重量パーセント未満の量のPPP-トリグリセリドを含み、
前記最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)が、38未満のヨウ素価(IV)を有し、
前記最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)が、15を超える、SatOSat-トリグリセリドとSatSatO-トリグリセリドとの重量比を有する、
最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)。
【請求項24】
前記最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)が、請求項1から22のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる、請求項23に記載の最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)。
【請求項25】
第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)であって、
前記第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)が、前記第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)の少なくとも64重量パーセントの量のPOP-トリグリセリドを含み、
前記第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)が、前記第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)の3重量パーセント未満の量のPPP-トリグリセリドを含み、
前記第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)が、35未満のヨウ素価(IV)を有し、
前記第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)が、10を下回る、SatOSat-トリグリセリドとSatSatO-トリグリセリドとの重量比を有する、
第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)。
【請求項26】
前記第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)が、請求項21から22のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる、請求項25に記載の第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)。
【請求項27】
請求項23から24のいずれか一項の最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、または請求項1から20のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)と、
請求項25から26のいずれか一項の第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、または請求項21から22のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)と、
を含む、硬質パーム油中融点画分混合物であって、
前記硬質パーム油中融点画分混合物が、0.4~0.6、例えば、0.5の、前記最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)と前記第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)との重量比を有する、硬質パーム油中融点画分混合物。
【請求項28】
食用製品または食品を製造する際の、請求項23から24のいずれか一項の最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、もしくは請求項1から22のいずれか一項のプロセスによって得られる最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、請求項25から26のいずれか一項に記載の第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、もしくは請求項21から22のいずれか一項のプロセスによって得られる第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、請求項27に記載の硬質パーム油中融点画分混合物、またはそれらの任意の混合物の使用。
【請求項29】
チョコレートなどの菓子製品を製造する際の、請求項23から24のいずれか一項の最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、もしくは請求項1から22のいずれか一項のプロセスによって得られる最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、請求項25から26のいずれか一項に記載の第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、もしくは請求項21から22のいずれか一項のプロセスによって得られる第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、請求項27に記載の硬質パーム油中融点画分混合物、またはそれらの任意の混合物の使用。
【請求項30】
ココアバター同等物を製造する際の、請求項23から24のいずれか一項の最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、もしくは請求項1から22のいずれか一項のプロセスによって得られる最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、請求項25から26のいずれか一項に記載の第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、もしくは請求項21から22のいずれか一項のプロセスによって得られる第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、請求項27に記載の硬質パーム油中融点画分混合物、またはそれらの任意の混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に超音波支援による乾式分画を使用して、最終硬質パーム油中融点画分(mid fraction)を得るための乾式分画のプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
硬質パーム油中融点画分への軟質パーム油中融点画分の分画は一般的に使用され、典型的には溶媒分画を含む。
【0003】
溶媒分画の1つの欠点は、運用費用の点でも建設費用の点でも非常に高価なプロセスであることである。
【0004】
乾式分画を使用しようとする場合、欠点には、満足のいく生産品品質および生産品収率を得ることに関する問題が含まれる。
【0005】
Hashimoto,S.,Nezy,T.,Arakawa,H.,Ito,T.,Maruzeni,S.「Preparation of Sharp-Melting Hard Palm Midfraction and Its Use as Hard Butter in Chocolate」、J.Am.Oil.Chem.Soc.,Vol.78,No.5,2001,page 455-460に、パーム油オレインの乾式分画の例が記載されている。PMF IV 45は、結晶化フィルター内に非常に長い時間(48~65時間)保持され、そこで加熱されてオレインがさらに除去される。収率は非常に低く、この方法は生産規模では実行可能ではない。低収率に関する問題を克服するために超音波処理を使用することについては、この論文のどこにも言及されていない。
【0006】
特開2014162859号公報は、脂肪に対する超音波の一般的な効果を記載し、超音波を使用して非常に小さな結晶を生成することができる方法を記載している。乾式分画が機能するためには、分離が実際に行われるために一定の大きさの結晶が存在しなければならない。したがって、この文献中の教示に基づくと、乾燥画分プロセスで超音波を使用することは明らかではない。
【0007】
いくつかの出版物には、脂肪を超音波に供した後の非常に小さな結晶の生成が記載されている。Yubin Yeらによる論文(「Using High Intensity Ultrasound as a Tool to Change the Functional Properties of Interesterified Soybean Oil」、Journal of Agricultural and Food Chemistry,2011,59,page 10712-10722)では、高強度超音波を使用して、大豆油の結晶化挙動を変化させ、小さな結晶を生成することができる方法が記載されている。Fangfang Chenら(「Effects of Ultrasonic Parameters on the Crystallization Behavior of Palm Oil」、AOCS 2013,90,page 941-949)は、超音波処理後のパーム油中の小さく均一な結晶の同じ生成について記載している。
【0008】
したがって、従来技術に基づくと、小さな結晶が望ましくなく、代わりに良好な分離が必要とされる乾式分画に関連して超音波が作用するということは、直観に反する。
【0009】
本発明は、乾式分画を超音波と組み合わせることにより、低収率および低品質という上記の問題を解決する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、
軟質パーム油中融点画分を最終硬質パーム油中融点画分に乾式分画するためのプロセスであって、該プロセスが、
軟質パーム油中融点画分を提供すること、
第1の乾式分画への投入物として軟質パーム油中融点画分を使用して、中間オレイン画分および中間ステアリン画分を得ること、
超音波支援による第2の乾式分画への投入物として中間オレイン画分を使用して、最終硬質パーム油中融点画分およびパーム油オレイン画分を得ること、
を含み、
超音波支援による第2の乾式分画は、投入物の少なくとも一部を超音波処理に供することを含む、前記プロセスに関する。
【0011】
本発明の利点は、費用効果の高いプロセスを実現しながら、良好な品質を有する最終硬質パーム油中融点画分を高い収率で得ることを含む。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、該プロセスは、
第3の乾式分画への投入物として中間ステアリン画分を使用して、第2の硬質パーム油中融点画分およびパーム油ステアリン画分を得ることをさらに含む。
【0013】
本発明はさらに、最終硬質パーム油中融点画分であって、
最終硬質パーム油中融点画分は、最終硬質パーム油中融点画分の少なくとも62重量パーセントの量のPOP-トリグリセリドを含み、
最終硬質パーム油中融点画分は、最終硬質パーム油中融点画分の2重量パーセント未満の量のPPP-トリグリセリドを含み、
最終硬質パーム油中融点画分は、38未満のヨウ素価(IV)を有し、
最終硬質パーム油中融点画分は、15を超える、SatOSat-トリグリセリドとSatSatO-トリグリセリドとの重量比を有する最終硬質パーム油中融点画分に関する。
【0014】
本発明はさらに、第2の硬質パーム油中融点画分であって、
第2の硬質パーム油中融点画分は、第2の硬質パーム油中融点画分の少なくとも64重量パーセントの量のPOP-トリグリセリドを含み、
第2の硬質パーム油中融点画分は、第2の硬質パーム油中融点画分の3重量パーセント未満の量のPPP-トリグリセリドを含み、
第2の硬質パーム油中融点画分は、35未満のヨウ素価(IV)を有し、
第2の硬質パーム油中融点画分は、10を下回る、SatOSat-トリグリセリドとSatSatO-トリグリセリドとの重量比を有する第2の硬質パーム油中融点画分に関する。
【0015】
本発明はさらに、
本発明、もしくはその実施形態のいずれかによる最終硬質パーム油中融点画分、または本発明、もしくはその実施形態のいずれかによるプロセスによって得られる最終硬質パーム油中融点画分と、
本発明、もしくはその実施形態のいずれかによる第2の硬質パーム油中融点画分、または本発明、もしくはその実施形態のいずれかによるプロセスによって得られる第2の硬質パーム油中融点画分と、を含む硬質パーム油中融点画分混合物であって、
硬質パーム油中融点画分混合物は、0.4~0.6、例えば、0.5の、最終硬質パーム油中融点画分と第2の硬質パーム油中融点画分との重量比を有する硬質パーム油中融点画分混合物に関する。
【0016】
本発明はさらに、食用製品または食品を製造する際の、本発明、もしくはその実施形態のいずれかによる最終硬質パーム油中融点画分、もしくは本発明、もしくはその実施形態のいずれかによるプロセスによって得られる最終硬質パーム油中融点画分、本発明、もしくはその実施形態のいずれかによる第2の硬質パーム油中融点画分、もしくは本発明、もしくはその実施形態のいずれかによるプロセスによって得られる第2の硬質パーム油中融点画分、本発明、もしくはその実施形態のいずれかによる硬質パーム油中融点画分混合物、またはそれらの任意の混合物の使用に関する。
【0017】
本発明はさらに、チョコレートなどの菓子製品を製造する際の、本発明、もしくはその実施形態のいずれかによる最終硬質パーム油中融点画分、もしくは本発明、もしくはその実施形態のいずれかによるプロセスによって得られる最終硬質パーム油中融点画分、本発明、もしくはその実施形態のいずれかによる第2の硬質パーム油中融点画分、もしくは本発明、もしくはその実施形態のいずれかによるプロセスによって得られる第2の硬質パーム油中融点画分、本発明、もしくはその実施形態のいずれかによる硬質パーム油中融点画分混合物、またはそれらの任意の混合物の使用に関する。
【0018】
本発明はさらに、ココアバター同等物を製造する際の、本発明、もしくはその実施形態のいずれかによる最終硬質パーム油中融点画分、もしくは本発明、もしくはその実施形態のいずれかによるプロセスによって得られる最終硬質パーム油中融点画分、本発明、もしくはその実施形態のいずれかによる第2の硬質パーム油中融点画分、もしくは本発明、もしくはその実施形態のいずれかによるプロセスによって得られる第2の硬質パーム油中融点画分、本発明、もしくはその実施形態のいずれかによる硬質パーム油中融点画分混合物、またはそれらの任意の混合物の使用に関する。
【0019】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)を得るための、軟質パーム油中融点画分SPMFの乾式分画のプロセスを示す。
【
図2】本発明の一実施形態による、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)および第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)を得るための、軟質パーム油中融点画分SPMFの乾式分画のプロセスを示す。
【
図3】本発明の一実施形態による第1の乾式分画(FDF)を詳細に示す。
【
図4】本発明の一実施形態による第2の乾式分画(SDF)を詳細に示す。
【
図5】本発明の一実施形態による第3の乾式分画(TDF)を詳細に示す。
【
図6】得られた硬質パーム油中融点画分およびそのブレンドについて測定されたSFC値を示す。
【
図7】得られた硬質パーム油中融点画分に基づいて、得られたココアバター同等物について測定されたSFC値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「脂肪酸」は、トリグリセリド中の遊離脂肪酸および脂肪酸残基を包含する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「%」または「パーセンテージ」はいずれも、他に何も示されていない場合は重量パーセント、すなわち、重量%(wt.%)または重量%(wt.-%)に関する。
【0023】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ」は、1つ以上、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10などを意味することを意図している。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「トリグリセリド」は、用語「トリアシルグリセロール」と区別なく使用され得、グリセロールおよび3つの脂肪酸に由来するエステルとして理解されるべきである。「トリグリセリド」は、TGまたはTAGと省略され得る。特定の分子式を有する単一のトリグリセリド分子は、植物性由来または非植物性由来のいずれかである。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「冷却」は、温度を低下させるプロセスを意味することを意図している。これは様々な方法で行われ得るが、典型的には、例えば、表面の片側が冷却対象の組成物と接触し、反対側の表面が冷却剤と接触するように、冷却された表面と当該組成物を接触させることを含む。いくつかの実施形態には特定の冷却工程が含まれるが、他の工程にも追加の冷却が含まれ得ることに留意されたい。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「画分」は、分画プロセスの生成物を意味することを意図している。分画生成物、すなわち画分は、様々な他の方法でさらに処理されてもされなくてもよい。ただし、特定の画分がさらに分画される場合、2つの新しい別個の画分が得られることを理解されたい。言い換えると、ある画分をさらに分画すると、元の画分は存在しなくなるが、2つの新しい別個の画分がそれに置き換わる。場合によっては、用語「画分」は省略され得、例えば、用語「ステアリン」および「ステアリン画分」は区別なく使用され得、用語「オレイン」および「オレイン画分」も区別なく使用され得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「過飽和」は、過飽和溶液のその通常の意味を有することを意図しており、すなわち、通常の状況下で溶媒によって溶解され得るよりも多くの溶解物質(溶質)を含有する溶液を意味することを意図している。したがって、組成物が過飽和になると、「過飽和閾値」に達する。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「乾式分画」は、有機溶媒を使用しない分画を意味することを意図している。固体画分の結晶を分散させるか、油の液体部分を洗い流すために、有機溶媒、例えば、アセトンおよびヘキサンなどが溶媒分画に使用される。乾式分画には、少なくとも投入物を溶融して任意の固体部分を液体状態に変換すること、最終濾過の前に溶融した投入物を冷却および結晶化して、結果として生じた画分を得ることが含まれる。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「溶融した」は、完全に溶融した画分、すなわち、すべてのトリグリセリドが完全に溶融し、したがって結晶性トリグリセリドの含有量を有しない画分を指すことを意図している。溶融した組成物は、初期組成物を溶融することによって、またはそのような溶融した組成物の供給源から溶融した組成物を得ることによって得られ得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「超音波処理」は、特に第1および第2の乾式分画では、過飽和軟質パーム油中融点画分および中間オレイン画分をそれぞれ超音波に供することによって、超音波により投入物を処理するプロセスを意味することを意図している。第1の乾式分画での超音波の使用は、任意であり、本発明のいくつかの実施形態に含まれる。第2の乾式分画および第1の乾式分画では、超音波処理が適用される場合、投入物が過飽和状態に処理された際に超音波処理が適用される。超音波処理は、それぞれの乾式分画での超音波処理に結晶化の少なくとも一部が続くように行われる。超音波処理は、過飽和パーム油オレイン中に比較的効果的かつ均質に結晶核形成を誘発する。適用全体を通して、用語「超音波(ultrasound)」および「超音波(ultrasonic)」は区別なく使用され得る。超音波処理は、超音波放射装置によって行われ得る。適用可能な平均超音波周波数には、5~200kHz、例えば、10~100kHzの範囲内の周波数が含まれる。高強度超音波が適用可能である。例えば、使用可能な音響エネルギーには、投入物1リットル当たり少なくとも50ジュール、例えば、投入物1リットル当たり50~10,000ジュール、例えば、投入物1リットル当たり50~5,000ジュールが含まれる。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「超音波放射装置」は、本発明の超音波処理で使用可能な超音波を放射することができる装置を意味することを意図している。超音波放射装置は、例えば、超音波セル、超音波フローセル、ソノトロードなどであり得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「結晶化」は、状況に応じて、完全にまたは部分的に超音波処理に供されていても供されていなくてもよい過飽和組成物を維持することを意味することを意図している。本発明の実施形態によれば、結晶化の工程は、結晶化装置内で行われ、すなわち、当該のあらゆる組成物は、結晶化装置内で結晶化される。適用全体を通して、用語「結晶化する(crystallizing)」および「の結晶化(crystallization of)」は区別なく使用され得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「硬質パーム油中融点画分」は、パーム油の分画によって得られ、硬質パーム油中融点画分の少なくとも62重量%のPOP-トリグリセリドの含有量を有し、硬質パーム油中融点画分の4重量%未満のPPP-トリグリセリドの含有量を有し、38未満のヨウ素価(IV)を有し、5を超える、SatOSat-トリグリセリドとSatSatO-トリグリセリドとの重量比を有する画分を指すことを意図している。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「軟質パーム油中融点画分」は、パーム油の分画によって得られ、軟質パーム油中融点画分の40~55重量%のPOP-トリグリセリドの含有量を有し、軟質パーム油中融点画分の5重量%未満のPPP-トリグリセリドの含有量を有し、50~38のヨウ素価(IV)を有する画分を指すことを意図している。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「比較的高い溶融画分」は、所与の分画プロセスからの最も高い融点を有する画分を指すことを意図している。用語「ステアリン画分」は、それと区別なく使用される。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「比較的低い溶融画分」は、所与の分画プロセスからの最も低い融点を有する画分を指すことを意図している。用語「オレイン画分」は、それと区別なく使用される。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「中間オレイン画分」は、第1の乾式分画の比較的低い溶融画分、すなわち、最も低い融点を有する画分を指すことを意図している。第1の乾式分画の後に第2の乾式分画が続くため、第1の乾式分画の分画生成物は最終生成物ではないことから、これらは中間分画生成物と呼ばれる。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「中間ステアリン画分」は、第1の乾式分画の比較的高い溶融画分、すなわち、最も高い融点を有する画分を指すことを意図している。第1の乾式分画の後に第2の乾式分画が続くため、第1の乾式分画の分画生成物は最終生成物ではないことから、これらは中間分画生成物と呼ばれる。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「スラリー」は、結晶成分および液体成分の両方を含み、したがって、ともにスラリー様状態を有する組成物を意味することを意図している。言い換えると、用語「スラリー」は、少なくともいくつかの結晶が存在する部分的に溶融した組成物である。したがって、「スラリー」は、部分的に溶融した懸濁液、部分的に融解した懸濁液、またはペーストとして理解されてもよい。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「脱トッピング(de-topping)」は、PPP-トリグリセリドを除去する任意のプロセスを意味することを意図している。それは、典型的には、PPP-トリグリセリドを除去するために、パーム油中融点画分を高温、例えば、摂氏約25~30度で分画するプロセスである脱トッピング分画であり得る。分画脱トッピングが行われる高温は、PPP-トリグリセリドの比較的高い融点に起因する。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「ヨウ素価」は、特に明記しない限り、IUPAC 2.205/4、第7版に従って得られたヨウ素価を意味することを意図している。ヨウ素価は、「Wijsヨウ素価」、「Wijs IV」または単に「IV」とも呼ばれ得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「結晶化装置」は、結晶化を行うための容器を意味することを意図している。結晶化装置は、動的結晶化装置、すなわち、撹拌を伴う結晶化装置、または撹拌を伴わない静的結晶化装置であり得る。結晶化装置は、例えば、ウォータージャケットの形態の冷却設備を備えていることが多いが、これはあらゆる実施形態に必要ではない。使用可能な結晶化装置の例には、DeSmet Ballestra L-FracユニットまたはTirtiux、DeSmet Ballestra Mobulizerなどの動的結晶化装置、およびDeSmet Ballestra Statoliserなどの静的結晶化装置が挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「ココアバター同等物」は、非常に類似した物理的特性を有し、チョコレートの挙動に顕著な影響を与えることなくココアバターと適合する食用脂肪を意味することを意図している。ココアバターおよびココアバター同等物のいずれでも、脂肪酸は、典型的には、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸であり、トリグリセリドは、典型的には、2-オレオジ飽和(2-oleo di-saturated)(SatOSat)である。ココアバター同等物は、ココアバターと類似しているにもかかわらず、ココアバターとは明らかに異なるそれらのトリグリセリド比によってチョコレート中に検出され得る。ココアバター同等物は、例えば、パーム中融点画分とシアステアリンの分画部分との混合物から作製される。
【0045】
略語:
P=パルミチン酸/パルミタート
O=オレイン酸/オレアート
St=ステアリン酸/ステアラート
Li=リノール酸/リノラート
POP-トリグリセリド=1,3-ジパルミタート-2-オレイン酸グリセロール(oleate glycerol)
POO-トリグリセリド=1-パルミタート-2,3-ジオレイン酸グリセロール(dioleate glycerol)
OOO-トリグリセリド=1,2,3-トリオレイン酸グリセロール(trioleate glycerol)
PPP-トリグリセリド=1,2,3-トリパルミタートグリセロール(triplamitate glycerol)
SatOSat-トリグリセリド=1,3-ジ飽和-2-オレイン酸グリセロール
SatSatO-トリグリセリド=1,2-ジ飽和-3-オレイン酸グリセロール
SatSatSat-トリグリセリド=1,2,3-トリ飽和グリセロール
SatUU-トリグリセリド=1-飽和-2,3-ジ不飽和グリセロール
UUU-トリグリセリド=1,2,3-トリ不飽和グリセロール
XYZ-トリグリセリド=脂肪酸X、YおよびZの1-X-2-Y-3-Zグリセロール
IV=ヨウ素価
【0046】
本発明は、
軟質パーム油中融点画分(SPMF)を最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)に乾式分画するためのプロセスであって、該プロセスが、
軟質パーム油中融点画分(SPMF)を提供すること、
第1の乾式分画(FDF)への投入物(IN1)として軟質パーム油中融点画分(SPMF)を使用して、中間オレイン画分(SPMF-O)および中間ステアリン画分(SPMF-S)を得ること、
超音波支援による第2の乾式分画(SDF)への投入物(IN2)として中間オレイン画分(SPMF-O)を使用して、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)およびパーム油オレイン画分(POO)を得ることを含み、
超音波支援による第2の乾式分画(SDF)は、投入物(IN2)の少なくとも一部を超音波処理(US2)に供することを含む、前記プロセスに関する。
【0047】
本発明の1つの利点は、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)の驚くほど高い収率が得られることである。特に、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)の収率と、対応する従来の乾式分画、すなわち、超音波を利用しない乾式分画の収率とを比較する場合。この点で、高い収率とは、中間オレイン画分から硬質パーム油中融点画分が得られない従来のプロセスと比較して、軟質パーム油中融点画分からの硬質パーム油中融点画分の高い収率と考えられるべきであることが強調される。
【0048】
さらに、本発明のさらなる利点は、中間オレイン画分の従来の分画と比較して、得られた最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)の品質の向上が達成されることである。この驚くほど高い品質は、一般に、高融点トリグリセリドから低融点トリグリセリドを効率的に分離することを特徴とし、本文脈では、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)が高含有量のPOP-トリグリセリドを含むことを特徴とする。
【0049】
さらに、上記の高い収率が有利に得られるのと同時に、中間オレイン画分の従来の分画と比較して、高い品質の最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)も得られる。従来、高い収率および高い品質は、2つのパラメーターと考えられることが多く、プロセスは、収率と品質との間の望ましい妥協点に調整される。したがって、例えば、高い収率を有することは、典型的には、品質の低下を犠牲にしてもたらされ、逆もまた同様である。それにもかかわらず、本発明は、驚くべきことに、超音波支援による分画を使用して、高い品質の最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)を高い収率で得るプロセスを確立する。
【0050】
上記の利点は、超音波支援による乾式分画を使用して、すなわち溶媒分画を使用せずに得られる。溶媒分画の方が多くの場合かなり費用がかかる可能性があり、表示の観点から品質の低い製品が得られる可能性もある。特に、溶媒分画プラントの建設費用は非常に高く、既存の乾式分画プラントは比較的単純かつ低費用の方法で本発明に従って動作するように改良され得るため、本発明は、乾式分画を使用して、すなわち溶媒分画を用いず最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)を得、それによって、分画プラントのための建設費用を著しく低下させることを提供する。
【0051】
さらに、本発明のプロセスは、驚くほど短い期間内に、特に結晶化の時間を短縮して行われ得る。これは、上記の高い収率および高い品質を実現しながら行うこともできる。
【0052】
したがって、所与の分画プラントの分画能力の顕著な増加が得られ得る。これは、短縮された分画時間に部分的に起因し得る。ただし、品質の向上に部分的に起因する可能性もあり、それによって余分な分画工程が回避される。
【0053】
特に、高い収率および品質、ならびに分画品質の向上を含む上記の利点により、プロセス全体の費用対効果の顕著な増加が得られる。
【0054】
本発明のさらなる利点は、従来の分画プラントに、超音波処理を適用するためのシステムを後付け装着することができ、すなわち、新しい分画プラントを構築する必要なく利点を得ることができることである。
【0055】
さらに、本発明者は、驚くべきことに、本発明が、第1の投入物として使用される軟質パーム油中融点画分を変化させた場合であっても、顕著な一定の生産品をもたらすプロセスを提供することを見出した。これは、例えば、追加の画分を加えたり、追加の処理を行ったりすることなく、本発明のプロセスの生産品として一定の生成物を単純に得ることができ、それによって、投入物に対する生産品の値を増加させ、投入物に関して、したがって、供給者、様々な地域などに関して有利な柔軟性を提供することが可能になるため、重要な利点である。
【0056】
また、得られた最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)は、高い対称比とも呼ばれる、SatOSat-トリグリセリド(すなわち、1位および3位に飽和脂肪酸、ならびに2位にモノ不飽和脂肪酸を有するトリグリセリド)とSatSatO-トリグリセリド(すなわち、1位および2位に飽和脂肪酸、ならびに3位にモノ不飽和脂肪酸を有するトリグリセリド)との驚くほど高い比を有するという意味で有利であることに留意されたい。高い対称比を有することは、高い対称比を有する他の脂肪、例えばココアバターとブレンドする際に有利である。対称比は、トリグリセリドの重量パーセント含有量の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定値から得ることができる。そのような方法は当業者に周知である。当業者であれば、営利的な分析機関が分析を行うことができるのと同様に、トリグリセリドの位置異性体を測定する方法を知るであろう。
【0057】
本発明のさらなる利点は、得られた最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)が、特に、非対称SatSatO-トリグリセリドの低い含有量を有し、SatOSat-トリグリセリドとSatSatO-トリグリセリドとの対応する高い比を有するという点で、有利な組成を有し得ることである。
【0058】
本発明のさらに一層の利点は、プロセスが、比較的明確に定義された生産品、特に、得られた硬質パーム油中融点画分に関して明確に定義された生産品を提供することである。これは、生産品の組成に関する標準偏差が小さいことから理解することができる(例に示されているように)。実際、本発明のプロセスのための投入物として様々な軟質パーム油中融点画分を用いても、生産品の結果として得られる品質および組成は著しく類似している。
【0059】
したがって、本文脈では、第1および第2の乾式分画への投入物は、それぞれ、軟質パーム油中融点画分および中間オレイン画分である。本発明の一実施形態では、軟質パーム油中融点画分を最初に溶融した後、軟質パーム油中融点画分を冷却して、過飽和軟質パーム油中融点画分を提供する。同様に、中間オレイン画分を溶融した後、中間オレイン画分を冷却して過飽和中間オレイン画分を提供する。したがって、第1または第2の乾式分画の「投入物」に言及する場合、軟質パーム油中融点画分または中間オレイン画分とは、それぞれ、上記「投入物」が、例えば乾式分画中に、溶融、冷却、結晶化などの処理に供されていることを意味する。
【0060】
第1の乾式分画は、いくつかの異なる方法で行われ得る。いくつかの実施形態では、第1の乾式分画は超音波処理を含み得るが、他の実施形態は超音波処理を含まない。
【0061】
したがって、本発明の一実施形態によれば、上記第1の乾式分画(FDF)は、投入物(IN1)の少なくとも一部を超音波処理(US2)に供することを含む、超音波支援による第1の乾式分画である。
【0062】
これの利点は、収率および生産品品質をさらに向上させることが可能になることである。
【0063】
あるいは、第1の乾式分画(FDF)は、超音波処理を含まないという意味で、従来の乾式分画である。
【0064】
所望の画分の収率および品質に関して有利な生産品を得るために、超音波処理(US2)を利用する前に、第2の乾式分画(SDF)の投入物の過飽和状態への冷却を使用することが有益である。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、超音波支援による第2の乾式分画(SDF)は、超音波処理(US2)の前に、投入物(IN2)を冷却(CO2)して過飽和投入物(IN2)を得ることを含む。
【0066】
本発明の実施形態では、第1および/または第2の乾式分画は、過飽和状態を得た後であっても、投入物(IN1、IN2)をさらに冷却することを含む。
【0067】
さらなる実施形態では、第2の乾式分画(SDF)は、その少なくとも一部が超音波処理(US2)に供されている過飽和投入物(IN2)の結晶化(CRY2)を含む。
【0068】
一実施形態では、結晶化(CRY2)は、結晶化装置内で行われ、超音波処理(US2)は、結晶化装置の外部で行われる。
【0069】
これの利点には、結晶化と超音波処理とが互いにさらに独立しているという意味で、さらに柔軟な設定が実現されることが含まれる。
【0070】
本発明の一実施形態では、第1および第2の結晶化は、同じ結晶化装置内で行われる。
【0071】
さらなる実施形態では、結晶化(CRY2)は結晶化装置内で行われ、超音波処理(US2)は結晶化装置内で行われる。
【0072】
これの利点には、超音波処理(US2)が統合されているため、結晶化装置から超音波処理への投入物(IN2)の取扱いおよびその逆が回避され得ることが含まれる。
【0073】
本発明のさらなる実施形態によれば、結晶化(CRY2)は結晶化装置内で行われ、冷却(CO2)は結晶化装置内で行われる。
【0074】
本発明のなお別の実施形態によれば、結晶化(CRY2)は結晶化装置内で行われ、冷却(CO2)は結晶化装置の外部で行われる。
【0075】
本発明のさらに別の実施形態によれば、結晶化(CRY2)は結晶化装置内で行われ、冷却(CO2)は、結晶化装置の内部および結晶化装置の外部の両方で行われる。
【0076】
例えば、第2の溶融(工程)、第2の冷却(工程)、第2の結晶化(工程)、第2の濾過(工程)および第2のスラリーとして、上記の実施形態での「第2」の使用は、第2の乾式分画との関連を示すことに留意されたい。したがって、「第2」は、そのような工程がプロセスに存在するかどうかにかかわらず、任意の対応する「第1」の工程と区別するためにのみ使用される。
【0077】
前述のように、いくつかの実施形態では、第1の乾式分画(FDF)は、超音波処理(US1)を含む。
【0078】
さらに別の実施形態では、第1の乾式分画(FDF)は、その少なくとも一部が超音波処理(US1)に供されている過飽和投入物(IN1)の結晶化(CRY1)を含む。
【0079】
一実施形態では、第1の乾式分画(FDF)は超音波処理(US1)を含み、第1の乾式分画(FDF)は、超音波処理(US1)の前に、投入物(IN1)を冷却(CO1)して過飽和投入物(IN1)を得ることを含む。
【0080】
さらなる実施形態では、第1の乾式分画(FDF)の結晶化(CRY1)は結晶化装置内で行われ、第1の乾式分画(FDF)の超音波処理(US1)は結晶化装置の外部で行われる。
【0081】
なお別の実施形態では、第1の乾式分画(FDF)の結晶化(CRY1)は結晶化装置内で行われ、第1の乾式分画(FDF)の超音波処理(US1)は結晶化装置内で行われる。
【0082】
本発明のさらに別の実施形態によれば、第1の乾式分画(FDF)の結晶化(CRY1)は結晶化装置内で行われ、第1の乾式分画(FDF)の冷却(CO1)は結晶化装置内で行われる。
【0083】
本発明のさらになお別の実施形態によれば、第1の乾式分画(FDF)の結晶化(CRY1)は結晶化装置内で行われ、第1の乾式分画(FDF)の冷却(CO1)は結晶化装置の外部で行われる。
【0084】
本発明のなお別の実施形態によれば、第1の乾式分画(FDF)の結晶化(CRY1)は結晶化装置内で行われ、第1の乾式分画(FDF)の冷却(CO1)は結晶化装置内および結晶化装置の外部で行われる。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、第1の乾式分画(FDF)は、
第1の溶融工程(MLT1)では、軟質パーム油中融点画分(SPMF)を溶融して、溶融軟質パーム油中融点画分(mSPMF)を得ること、
第1の冷却工程(CO1)では、溶融パーム油中融点画分(SPMF)を冷却して、過飽和軟質パーム油中融点画分(ssSPMF)を得ること、
第1の結晶化工程(CRY1)では、過飽和軟質パーム油中融点画分(ssSPMF)を結晶化して、第1のスラリー(SL1)を得ること、ならびに
第1の濾過工程(FLT1)では、第1のスラリー(SL1)を濾過して、中間オレイン画分(SPMF-O)および中間ステアリン画分(SPMF-S)を得ることを含む。
【0086】
例えば、第1の溶融工程、第1の冷却工程、第1の結晶化工程、第1の濾過工程および第1のスラリーとして、上記の実施形態での「第1」の使用は、第1の乾式分画との関連を示すことに留意されたい。したがって、「第1」は、そのような工程がプロセスに存在するかどうかにかかわらず、任意の対応する「第2」の工程と区別するためにのみ使用される。
【0087】
さらなる実施形態によれば、第1の乾式分画(FDF)は、
超音波処理(US1)では、過飽和軟質パーム油中融点画分(ssSPMF)の少なくとも一部を超音波に供する工程をさらに含む。
【0088】
本発明の一実施形態によれば、第2の乾式分画(SDF)は、
第2の溶融工程(MLT2)では、中間オレイン画分(SPMF-O)を溶融して、溶融中間オレイン画分(mSPMF-O)を得ること、
第2の冷却工程(CO2)では、溶融中間オレイン画分(mSPMF-O)を冷却して、過飽和中間オレイン画分(ssSPMF-O)を得ること、
超音波処理(US2)では、過飽和中間オレイン画分(ssSPMF-O)の少なくとも一部を超音波に供すること、
第2の結晶化工程(CRY2)では、少なくとも部分的に超音波処理(US2)に供されている過飽和中間オレイン画分(ssSPMF-O)を結晶化して、第2のスラリー(SL2)を得ること、
第2の濾過工程(FLT2)では、第2のスラリー(SL2)を濾過して、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)およびパーム油オレイン画分(POO)を得ることを含む。
【0089】
例えば、第2の溶融工程、第2の冷却工程、第2の結晶化工程、第2の濾過工程および第2のスラリーとして、上記の実施形態での「第2」の使用は、第2の乾式分画との関連を示すことに留意されたい。したがって、「第2」は、そのような工程がプロセスに存在するかどうかにかかわらず、任意の対応する「第1」の工程と区別するためにのみ使用される。
【0090】
本発明のさらなる実施形態によれば、パーム油オレイン画分(POO)は、追加の軟質パーム油中融点画分(SPMF)を得るために使用される。
【0091】
本発明のさらに別の実施形態によれば、該プロセスは、軟質パーム油中融点画分(SPMF)およびスーパーオレイン画分(SOF)を得るために、パーム油オレイン(POO)のさらに先行する乾式分画(PDF)を含む。
【0092】
有利には、さらに先行する乾式分画は、パーム油オレインの少なくとも一部を超音波処理して軟質パーム油中融点画分およびスーパーオレイン画分を得ることを含む、超音波支援による先行する乾式分画であり得る。
【0093】
本発明の一実施形態によれば、第1の溶融工程および第2の溶融工程は、同じ溶融装置によって行われる。
【0094】
本発明のさらなる実施形態によれば、第1の冷却工程および第2の冷却工程は、同じ冷却装置によって行われる。
【0095】
本発明のさらに別の実施形態によれば、第1および第2の乾式分画(FDF、SDF)の超音波処理(US1、US2)は、同じ超音波装置によって行われる。
【0096】
本発明のなお別の実施形態によれば、第1の結晶化工程および第2の結晶化工程は、同じ結晶化装置によって行われる。
【0097】
本発明のさらになお別の実施形態によれば、第1の濾過工程および第2の濾過工程は、同じ濾過装置によって行われる。
【0098】
本発明の一実施形態によれば、第1の乾式分画(FDF)および第2の乾式分画(SDF)は、同じ乾式分画システムを使用して行われる。
【0099】
本発明のさらなる実施形態によれば、パーム油オレイン(POO)を冷却する工程は、上記結晶化装置CRS内で行われ、過飽和パーム油オレインssPOの少なくとも一部は、結晶化装置CRSから、上記結晶化装置CRSの外部に配置された超音波放射装置に供給され、上記超音波放射装置内で超音波処理に供されているパーム油オレインは、上記結晶化装置CRSに戻される。
【0100】
本発明の一実施形態によれば、超音波処理(US2)は、少なくとも5分の持続時間を有する。
【0101】
本発明のさらなる実施形態によれば、超音波処理は、5分~180分の持続時間を有する。
【0102】
本発明のさらに別の実施形態によれば、超音波処理は、10分~180分の持続時間を有する。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、超音波処理(US2)は、少なくとも5重量%の中間オレイン画分(SPMF-O)に対して行われる。
【0104】
本発明の一実施形態によれば、超音波処理(US2)は、5~200kHz、例えば、10~100kHzの超音波の平均周波数で行われる。
【0105】
本発明の一実施形態によれば、投入物(IN2)1リットル当たり少なくとも50ジュール、例えば、投入物(IN2)1リットル当たり50~10,000ジュール、例えば、投入物(IN2)1リットル当たり50~5,000ジュールの音響エネルギーを有する超音波処理(US2)が行われる。
【0106】
本発明の一実施形態によれば、冷却(CO2)は、過飽和閾値に達した後、少なくとも2時間、例えば、過飽和閾値に達した後、2~30時間の持続時間を有する。
【0107】
本発明の一実施形態によれば、冷却は、過飽和閾値に達した後、少なくとも4時間、例えば、過飽和閾値に達した後、4~30時間の持続時間を有する。
【0108】
本発明の一実施形態によれば、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)は、軟質パーム油中融点画分(SPMF)の15~50重量%の量で得られる。
【0109】
本発明の一実施形態によれば、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)は、軟質パーム油中融点画分(SPMF)の20~40重量%の量で得られる。
【0110】
本発明の一実施形態によれば、該プロセスは、
第3の乾式分画(TDF)への投入物(IN3)として中間ステアリン画分(SPMF-S)を使用して、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)およびパーム油ステアリン画分(POSt)を得ることをさらに含む。
【0111】
したがって、この実施形態は、本発明の最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)とは別個の追加の画分である、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)を非常に有利に提供する。それにより、硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A、sHPMF-B)を生成するための軟質パーム油中融点画分(SPMF)の非常に効率的な利用が得られる。
【0112】
さらに、第3の乾式分画(TDF)から得られる、得られた第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)では、非対称トリグリセリドの含有量が増加し、具体的には、非対称SatSatO-トリグリセリドとSatOSat-トリグリセリドとの比が増加する。これは、例えば、チョコレートを製造する際に、例えば、ココアバター同等物の一部として第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)を使用する場合に、ブルーム抑制をもたらす。
【0113】
本発明の一実施形態によれば、第3の乾式分画(TDF)は、
第3の溶融工程(MLT3)では、中間ステアリン画分(SPMF-S)を溶融して、溶融中間ステアリン画分(mSPMF-S)を得ること、
第3の冷却工程(CO3)では、溶融中間ステアリン画分(mSPMF-S)を冷却して、過飽和中間ステアリン画分(ssSPMF-S)を得ること、
第3の結晶化工程(CRY3)では、過飽和中間ステアリン画分(ssSPMF-S)を結晶化して、第3のスラリー(SL3)を得ること、
第3のスラリー(SL3)を濾過して、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)およびパーム油ステアリン画分(POSt)を得ることを含む。
【0114】
本発明はさらに、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)であって、
最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)は、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)の少なくとも62重量パーセントの量のPOP-トリグリセリドを含み、
最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)は、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)の2重量パーセント未満の量のPPP-トリグリセリドを含み、
最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)は、38未満のヨウ素価(IV)を有し、
最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)は、15を超える、SatOSat-トリグリセリドとSatSatO-トリグリセリドとの重量比を有する最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)に関する。
【0115】
本発明の一実施形態によれば、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)は、本発明、またはその実施形態のいずれかによるプロセスによって得られる。
【0116】
本発明の利点は、得られた最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)が、特に、非対称SatSatO-トリグリセリドの比較的低い含有量を反映して、SatOSat-トリグリセリドとSatSatO-トリグリセリドとの高い比を有するという点で、有利な組成を有することである。
【0117】
本発明はさらに、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)であって、
第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)は、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)の少なくとも64重量パーセントの量のPOP-トリグリセリドを含み、
第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)は、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)の3重量パーセント未満の量のPPP-トリグリセリドを含み、
第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)は、35未満のヨウ素価(IV)を有し、
第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)は、10を下回る、SatOSat-トリグリセリドとSatSatO-トリグリセリドとの重量比を有する第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)に関する。
【0118】
有利なことに、第3の乾式分画(TDF)から得られる第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)では、非対称トリグリセリドの含有量が増加し、具体的には、非対称SatSatO-トリグリセリドとSatOSat-トリグリセリドとの比が増加する。これは、例えば、チョコレートを製造する際に、例えば、ココアバター同等物の一部として第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)を使用する場合に、ブルーム抑制をもたらす。
【0119】
本発明の一実施形態によれば、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)は、本発明、またはその実施形態のいずれかによるプロセスによって得られる。
【0120】
本発明はさらに、
本発明、もしくはその実施形態のいずれかの最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、または本発明、もしくはその実施形態のいずれかのプロセスによって得られる最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)と、
本発明、もしくはその実施形態のいずれかの第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、または本発明、もしくはその実施形態のいずれかのプロセスによって得られる第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)と、を含む硬質パーム油中融点画分混合物であって、
硬質パーム油中融点画分混合物は、0.4~0.6、例えば、0.5の、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)と第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)との重量比を有する硬質パーム油中融点画分混合物に関する。
【0121】
この実施形態の利点は、得られた硬質パーム油中融点画分混合物が、従来の硬質パーム油中融点画分と非常に類似した組成を有し得、したがって、硬質パーム油中融点画分混合物が、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)および第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)の両方を得るための軟質パーム油中融点画分の非常に効果的な利用に起因して、増加した量で生成され得ることである。
【0122】
本発明はさらに、食用製品または食品を製造する際の、本発明、もしくはその実施形態のいずれかの最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、もしくは本発明、もしくはその実施形態のいずれかのプロセスによって得られる最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、本発明、もしくはその実施形態のいずれかの第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、もしくは本発明、もしくはその実施形態のいずれかのプロセスによって得られる第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、本発明、もしくはその実施形態のいずれかの硬質パーム油中融点画分混合物、またはそれらの任意の混合物の使用に関する。
【0123】
本発明はさらに、チョコレートなどの菓子製品を製造する際の、本発明、もしくはその実施形態のいずれかの最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、もしくは本発明、もしくはその実施形態のいずれかのプロセスによって得られる最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、本発明、もしくはその実施形態のいずれかの第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、もしくは本発明、もしくはその実施形態のいずれかのプロセスによって得られる第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、本発明、もしくはその実施形態のいずれかの硬質パーム油中融点画分混合物、またはそれらの任意の混合物の使用に関する。
【0124】
本発明はさらに、ココアバター同等物を製造する際の、本発明、もしくはその実施形態のいずれかの最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、もしくは本発明、もしくはその実施形態のいずれかのプロセスによって得られる最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、本発明、もしくはその実施形態のいずれかの第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、もしくは本発明、もしくはその実施形態のいずれかのプロセスによって得られる第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、本発明、もしくはその実施形態のいずれかの硬質パーム油中融点画分混合物、またはそれらの任意の混合物の使用に関する。
【0125】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による、軟質パーム油中融点画分(SPMF)を最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)に乾式分画するためのプロセスが開示されている。まず、軟質パーム油中融点画分(SPMF)が提供される。
【0126】
次いで、この軟質パーム油中融点画分(SPMF)は、第1の乾式分画(FDF)への投入物(IN1)として使用される。中間オレイン画分(SPMF-O)および中間ステアリン画分(SPMF-S)が、第1の乾式分画(FDF)からの生産品として得られる。一実施形態による第1の乾式分画(FDF)を
図3に示す。
【0127】
次に、中間オレイン画分(SPMF-O)は、超音波支援による第2の乾式分画(SDF)への投入物(IN2)として使用される。最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)およびパーム油オレイン画分(POO)は、第2の乾式分画(SDF)からの生産品として得られる。
【0128】
第2の乾式分画(SDF)は、投入物(IN2)の少なくとも一部を超音波処理(US2)に供することを含む。
【0129】
一実施形態による第2の乾式分画(SDF)を
図4に示す。
【0130】
様々な方法を使用して、投入物(IN2)の少なくとも一部を超音波処理(US2)に供してもよい。本発明の範囲内で使用可能な超音波放射装置の例には、例えば、超音波セル、超音波フローセル、ソノトロードなどが挙げられる。当業者であれば、本発明の所与の実施形態にどの超音波放射装置を使用すべきかを知るであろう。
【0131】
いくつかの実施形態では、第1の乾式分画(FDF)はまた、投入物(IN1)の少なくとも一部を超音波処理(US1)に供することを含み得る。ただし、他の実施形態では、第1の乾式分画(FDF)は、投入物(IN1)の超音波処理を使用しない従来の乾式分画である。
【0132】
図2を参照すると、本発明のさらなる実施形態による、軟質パーム油中融点画分(SPMF)を最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)に乾式分画するためのプロセスが示されている。
【0133】
図2のプロセスは、
図1の実施形態の工程に加えて、第3の乾式分画(TDF)を含み、ここで、中間ステアリン画分(SPMF-S)は、パーム油ステアリン画分(POSt)および第2の硬質パーム油中融点画分sHPMFに分画される。
【0134】
また、
図2は、第1の乾式分画(FDF)での超音波処理(US1)の使用を示している。例えば、
図3に示すように、第1の乾式分画は、特定の実施形態に応じて、超音波処理(US1)を伴っても伴わなくてもよい。
【0135】
図3を参照すると、本発明の一実施形態による第1の乾式分画(FDF)がさらに詳細に示されている。この実施形態では、第1の乾式分画は、第1の溶融工程(MLT1)と、その後の第1の冷却工程(CO1)と、次いで第1の結晶化工程(CRY1)と、最後に第1の濾過工程(FLT1)とを含む。
【0136】
第1の溶融工程(MLT1)では、第1の乾式分画(FDF)への投入物(IN1)として使用される軟質パーム油中融点画分(SPMF)が溶融され、これにより、結果として得られる溶融軟質パーム油中融点画分(mSPMF)が後の段階で残留結晶性トリグリセリドを含有しないことを確実にする。典型的には、軟質パーム油中融点画分(SPMF)は、その完全な溶融を確実にするために、所定の持続時間にわたり高温に保たれる。
【0137】
第1の冷却工程(CO1)では、溶融軟質パーム油中融点画分(mSPMF)が過飽和閾値未満まで冷却され、それによって、過飽和軟質パーム油中融点画分(ssSPMF)が得られる。
【0138】
次いで、第1の結晶化工程(CRY1)では、過飽和軟質パーム油中融点画分(ssSPMF)を結晶化して、第1のスラリー(SL1)を得る。
【0139】
結晶化に関して、結晶は、結晶化工程中に形成され得るが、冷却工程および超音波処理などの他の工程中にも形成され得ることに留意されたい。結晶化工程(CRY1)とは、過飽和軟質パーム油中融点画分(ssSPMF)を能動的に処理して、第1のスラリー(SL1)を得ることを意味する。この処理は、当業者に公知のプロセスである結晶化として知られている。
【0140】
最後に、第1の濾過工程(FLT1)では、第1のスラリー(SL1)を濾過して、中間オレイン画分(SPMF-O)および中間ステアリン画分(SPMF-S)を得る。
【0141】
次いで、中間オレイン画分(SPMF-O)は、
図4に示す第2の乾式分画(SDF)に供される。
【0142】
図3に戻ると、いくつかの実施形態では、過飽和軟質パーム油中融点画分(ssSPMF)の少なくとも一部が、第1の超音波処理(US1)に供される。第1の超音波処理(US1)はいくつかの実施形態に含まれるが、他の実施形態には含まれず、したがって任意であるため、
図3では破線で示されている。他の工程も
図3の図から外れることがあるが、これらは全体的には第1の乾式分画を行う典型的な方法を表しており、必須である。
【0143】
いくつかの実施形態では、中間ステアリン画分(SPMF-S)を第3の乾式分画(TDF)に供して、第2の硬質パーム油中融点画分sHPMFを得る。これを
図2に示す。
【0144】
典型的には、第3の乾式分画(TDF)は、特にPPP-トリグリセリドを除去するための脱トッピング分画であり得る。POP-トリグリセリドなどの一定量の他のトリグリセリドも、PPP-トリグリセリドとともに除去され得る。
【0145】
第3の乾式分画(TDF)は、本発明の一実施形態による
図5にさらに詳細に示されている。この実施形態では、中間ステアリン画分(SPMF-S)が投入物(IN3)として使用され、第3の溶融工程(MLT3)に供される。次いで、得られた溶融中間ステアリン画分(mSPMF-S)が冷却工程(CO3)に供され、それによって、過飽和中間ステアリン画分(ssSPMF-S)が得られる。この過飽和中間ステアリン画分(ssSPMF-S)を結晶化工程(CRY3)で結晶化して第3のスラリー(SL3)を得、これを濾過(FLT3)して、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)およびパーム油ステアリン画分(POSt)を得る。
【0146】
上記の図は乾式分画を行う典型的な方法を表しているが、これらは本発明の範囲を限定するものではなく、当業者であれば方法の変形例が存在することを理解するであろうことに留意されたい。
【実施例】
【0147】
例1-硬質パーム油中融点画分の製造
まず、軟質パーム油中融点画分を摂氏60度に加熱し、それによって、これを完全に溶融し、この温度で2時間保持する。
【0148】
次いで、溶融軟質パーム油中融点画分を摂氏23+/-2度の温度に2時間かけて徐々に冷却する。摂氏23度で、軟質パーム油中融点画分を超音波処理に供する。超音波は、軟質パーム油中融点画分1リットル当たり1000ジュールに相当する出力で適用される。摂氏23度の温度に達した後、軟質パーム油中融点画分を摂氏23+/-0.5度の一定温度に18時間保持する。
【0149】
摂氏23+/-0.5度での18時間の等温結晶化の後、軟質パーム油中融点画分を濾過して、中間オレイン画分(SPMF-O)および中間ステアリン画分(SPMF-S)を得る。濾過中に25バールの圧力を加える。
【0150】
次に、中間オレイン画分(SPMF-O)を摂氏60度に加熱し、それによって、これを完全に溶融し、この温度で2時間保持する。
【0151】
次いで、溶融中間オレイン画分(SPMF-O)を摂氏19.5+/-2度の温度に2時間かけて徐々に冷却する。摂氏25度で、中間オレイン画分(SPMF-O)を超音波処理に供する。超音波は、中間オレイン画分(SPMF-O)1リットル当たり1000ジュールに相当する出力で適用される。摂氏19.5度の温度に達した後、中間オレイン画分(SPMF-O)を摂氏19.5+/-0.5度の一定温度に17時間保持する。
【0152】
摂氏19.5度での17時間の等温結晶化の後、中間オレイン画分(SPMF-O)を濾過して、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)およびパーム油オレイン画分(POO)を得る。濾過中に25バールの圧力を加える。
【0153】
次いで、中間ステアリン画分(SPMF-S)を摂氏60度に加熱し、それによって、これを完全に溶融し、この温度で2時間保持する。
【0154】
次いで、溶融中間ステアリン画分(SPMF-S)を摂氏37+/-2度の温度に2時間かけて徐々に冷却する。摂氏37度の温度に達した後、中間ステアリン画分(SPMF-S)を摂氏37+/-0.5度の一定温度に12時間保持する。
【0155】
摂氏37度での12時間の等温結晶化の後、中間ステアリン画分(SPMF-S)を濾過して、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)およびパーム油ステアリン画分(POSt)を得る。濾過中に25バールの圧力を加える。
【0156】
最初の軟質パーム油中融点画分(SPMF)ならびに得られた最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)、パーム油オレイン(POO)およびパーム油ステアリン(POSt)のトリグリセリド含有量を表1に示す。
【表1】
【0157】
表1から分かるように、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)では、非対称SatSatO-トリグリセリドの相対含有量がさらに低く、対称SatOSat-トリグリセリドの含有量が非常に高いという意味で対称性の高い画分を示している。
【0158】
また、第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)では、非対称SatSatO-トリグリセリドの相対含有量が顕著に増加している。
【0159】
例2-得られた組成物、およびそれに基づく組成
脂肪組成物no.1~8(Comp.no.1~8)の組成を表2に示す。組成物は、成分の単純な混合によって得られる。見て分かるように、comp.no.1~2は、例1で得られた最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)および第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)に対応する。
【表2】
【0160】
PPP-トリグリセリドの含有量を増加させるために、comp.no.3~5、8にはパーム油ステアリン(POSt)を加える。
【0161】
組成物no.6~8は、シアステアリンと組み合わせてかなりの量の硬質パーム油中融点画分を含み、したがって、ココアバター同等物(CBE)を表す。
【0162】
例3-得られた脂肪ブレンド
以下のようにして脂肪ブレンド1~4を得た。
【0163】
脂肪ブレンド1は、POStを用いて調整された、例2の脂肪Comp.no.1および2の50/50混合物である*。
脂肪ブレンド2は、POStを用いて調整された、例2の脂肪Comp.no.1である*。
脂肪ブレンド3は、POStを用いて調整された、例2の脂肪Comp.no.2である*。
脂肪ブレンド4(参照)は、標準HPMFである(参照として使用)。
*POStを用いて脂肪ブレンドno.1~3を調整して、SatSatSatの同じ含有量を得る(表3を参照)。
【0164】
上記の脂肪ブレンドは、成分の単純な混合によって得られる。
【0165】
脂肪ブレンドno.1~3および4(参照)のトリグリセリド組成を表3に示す。見て分かるように、脂肪ブレンド1は、脂肪ブレンド4(参照)に近いSatOSat/SatSatO比(SatOSat-トリグリセリドとSatSatO-トリグリセリドとの量の比)を有する。脂肪ブレンド2は、脂肪ブレンド1の約半分という比較的低いSatOSat/SatSatO比を有し、これは、対称SatOSat-トリグリセリドの比較的低い相対含有量、すなわち、非対称SatSatO-トリグリセリドの比較的高い相対含有量を意味する。したがって、脂肪ブレンド2は、比較的高度な非対称性を有すると説明され得る。
【0166】
脂肪ブレンド3は、脂肪ブレンド4(参照)のほぼ2倍という比較的高いSatOSat/SatSatO比を有し、これは、対称SatOSat-トリグリセリドの比較的高い相対含有量、すなわち、非対称SatSatO-トリグリセリドの比較的低い相対含有量を意味する。したがって、脂肪ブレンド2は、比較的高度な対称性を有すると説明され得る。
【表3】
【0167】
例4-測定されたSFC値
comp.no.1~8の固形脂肪含有量(SFC)を測定した。IUPAC 2.150 BによりSFCを測定する。
【表4】
【0168】
comp.no.1~5の結果として得られるSFC曲線を
図6に示し、comp.no.6~8の結果として得られるSFC曲線を
図7に示す。
【0169】
図6から分かるように、摂氏30度のSFCは、一定量のパーム油ステアリン(POSt)を加えることによって調整することができる。
【0170】
したがって、
図6は、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)および第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)が、SFCに関して非常に類似していることを示している。また、パーム油ステアリン(POSt)を加えると、摂氏30度で得られるSFC値が増加することが分かる。最後に、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF-A)と第2の硬質パーム油中融点画分(sHPMF-B)(comp.no.5、POStを含む)との50/50ブレンドも、その個々の主成分(comp.no.1および2)と非常に類似した挙動を示す。
【0171】
図7から分かるように、(fHPMF-A)により作製されたCBE(comp.no.6)は、(sHPMF-B)により作製されたCBE(comp.no.7)と比較して、摂氏25度および30度の温度で高いSFC値を有する。POStも加えられた(fHPMF-A)と(sHPMF-B)との混合物に基づくCBE(comp.no.8)も、摂氏25度および30度で比較的高いSFC値を示す。
【0172】
図7に示す結果は、得られたSFC値が所望の範囲内にあるという意味で、得られたCBE(comp.no.6~8)がSFCに関して良好な挙動を示すことを示している。また、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF‐A)に基づくCBE(Comp.No.6)が摂氏25度および30度で比較的高いSFC値を有するという事実は、POP‐トリグリセリドおよびPPP‐トリグリセリドの含有量の観点からは驚くべきことであるが、最終硬質パーム油中融点画分(fHPMF‐A)の対称性の程度が優れているという結果に起因し得ると考えられる。
【0173】
例5.1-脂肪ブレンド1を用いたチョコレートの製造
例3の脂肪ブレンド1をCBEとして使用して、チョコレート1(ミルクチョコレート)およびチョコレート2(ダークチョコレート)の2つのチョコレートを作製した。例3の脂肪ブレンド1の代わりに脂肪ブレンド4(参照)を使用することを除いて、同じ配合処方を使用して、2つの対応する参照チョコレート、チョコレート1(参照)およびチョコレート2(参照)を作製した。
【0174】
したがって、製造されたチョコレートはいずれも、従来のチョコレートの範囲内のSatOSat/SatSatO比を有する。
【表5】
【0175】
得られたチョコレートを評価し、参照とチョコレート1および2との間に差がないことが評価された。特に、粘度、テンパリング、食感、結晶化速度、収縮および貯蔵寿命に差が認められないことが評価された。
【0176】
例5.2-脂肪ブレンド2を用いたチョコレートの製造(choco.3)
脂肪ブレンド1を脂肪ブレンド2に交換するのみで、例5.1と同じ組成のチョコレートを作製した。
【0177】
このブレンドは、参照(choco.2(参照))と比較して、低い粘度および実質的に長い貯蔵寿命を示す。他の要因、すなわち、テンパリング、食感、結晶化速度、収縮も同様である。
【0178】
貯蔵寿命試験は、20%ヘーゼルナッツを含む100gの成形錠剤に対して20℃で行った。
【表6】
【0179】
例5.3-脂肪ブレンド3を用いたチョコレートの製造(choco.4)
脂肪ブレンド1を脂肪ブレンド3に交換するのみで、例5.1と同じ組成のチョコレートを作製した。
【0180】
このブレンドは、参照(choco.2(参照))と比較して低い粘度を示す。他の要因、すなわち、テンパリング、食感、結晶化速度、収縮も同様である。
【0181】
図の参照
SPMF.軟質パーム油中融点画分
mSPMF.溶融軟質パーム油中融点画分
ssSPMF.過飽和軟質パーム油中融点画分
fHPMF-A.最終硬質パーム油中融点画分
sHPMF-B.第2の硬質パーム油中融点画分
SPMF-O.中間オレイン画分
mSPMF-O.溶融中間オレイン画分
ssSPMF-O.過飽和中間オレイン画分
SPMF-S.中間ステアリン画分
mSPMF-S.溶融中間ステアリン画分
ssSPMF-S.過飽和中間ステアリン画分
POSt.パーム油ステアリン
SOF.スーパーオレイン画分
FDF.第1の乾式分画
SDF.第2の乾式分画
TDF.第3の乾式分画
PDF.先行する乾式分画
POO.パーム油オレイン
CO1.第1の冷却
CO2.第2の冷却
CO3.第3の冷却
CRY1.第1の結晶化
CRY2.第2の結晶化
CRY3.第3の結晶化
FLT1.第1の濾過
FLT2.第2の濾過
FLT3.第3の濾過
IN1.第1の投入物
IN2.第2の投入物
IN3.第3の投入物
MLT1.第1の溶融
MLT2.第2の溶融
MLT3.第3の溶融
SL1.第1のスラリー
SL2.第2のスラリー
SL3.第3のスラリー
US1.第1の超音波処理
US2.第2の超音波処理
【国際調査報告】