(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構及びモータ駆動アセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20220112BHJP
【FI】
F16H57/04 Q
F16H57/04 J
F16H57/04 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535164
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(85)【翻訳文提出日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2019124578
(87)【国際公開番号】W WO2020125514
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】201811548562.4
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511268454
【氏名又は名称】ジン-ジン エレクトリック テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】イー,ピィン
(72)【発明者】
【氏名】リィー,ヂィェンウェン
(72)【発明者】
【氏名】ホォゥ,ドゥーファン
(72)【発明者】
【氏名】ティェン,レェィ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,イォン
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA02
3J063AB02
3J063AC01
3J063BA11
3J063XD03
3J063XD16
3J063XD32
3J063XD52
3J063XD56
3J063XD62
3J063XD73
3J063XE15
3J063XF14
(57)【要約】
【課題】本発明には、水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構及びモータ駆動アセンブリが開示されており、従来の水冷モータのフロントベアリングがグリース潤滑を使用することによる深刻なベアリングの発熱、グリースの流出しやすいことによるベアリングの故障及び寿命の低下などの問題が解決される。
【解決手段】水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構は、ギアボックス又は減速ボックスに設けられた歯車飛散貯油構造と、水冷モータの前端に設けられたベアリングバッフル貯油構造とを含み、ギアボックス又は減速ボックスにおける歯車が、運転中に潤滑油を歯車飛散貯油構造内に振り飛ばし、導油管路を介してベアリングバッフル貯油構造内に送ることにより、水冷モータのフロントベアリングが潤滑され、その後、潤滑油が返油管路を通ってギアボックス又は減速ボックスに還流する。本発明は、ギアボックス又は減速ボックス内で飛散している潤滑油を水冷モータのフロントベアリングに導入することにより、水冷モータのフロントベアリングが油潤滑され、水冷モータのフロントベアリングの発熱が低減され、フロントベアリングの寿命及びモータの信頼性が向上する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構であって、ギアボックス又は減速ボックスに設けられた歯車飛散貯油構造と、水冷モータの前端に設けられたベアリングバッフル貯油構造とを含み、前記歯車飛散貯油構造と前記ベアリングバッフル貯油構造との間が導油管路を介して連通され、前記ベアリングバッフル貯油構造と前記ギアボックス又は減速ボックスとの間が返油管路を介して連通され、前記ギアボックス又は減速ボックスにおける歯車が、運転中に潤滑油を前記歯車飛散貯油構造内に振り飛ばし、前記導油管路を介して前記ベアリングバッフル貯油構造内に送ることにより、水冷モータのフロントベアリングが潤滑され、その後、潤滑油が返油管路を通って前記ギアボックス又は減速ボックスに還流する
ことを特徴とする水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項2】
前記歯車飛散貯油構造が、前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングの内壁に設けられた貯油槽を含み、前記ギアボックス又は減速ボックスにおける歯車の運転中に、前記ギアボックス又は減速ボックスの底部の潤滑油と接触する大歯車が、潤滑油を飛散させて前記貯油槽内に振り飛ばす
ことを特徴とする請求項1に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項3】
前記貯油槽が、前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングの内壁に鋳造されるか、或いは、溶接又はボルト締めされており、前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングには、前記導油管路に接続される油出口が前記貯油槽に対応して設けられており、
前記貯油槽における潤滑油を受け入れる側の側壁が、弧形をなしている
ことを特徴とする請求項2に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項4】
前記ベアリングバッフル貯油構造が、前記水冷モータのハウジングの前端に設けられたベアリングシートを含み、前記水冷モータのフロントベアリングが前記ベアリングシートに設けられ、前記ベアリングシートの後端には、前記ベアリングシートを半密閉するベアリングバッフルが設けられ、前記水冷モータのフロントベアリングが前記ベアリングバッフルに押し付けられており、前記ベアリングシートの底部に貯留された潤滑油が、前記水冷モータのフロントベアリングを潤滑し、
前記ベアリングバッフルの内孔と前記水冷モータの軸との間に隙間を有し、前記ベアリングシートの底部に貯留された潤滑油は、その液面の高さが前記ベアリングバッフルの内孔の縁を超えると、前記ベアリングシートから流れ出て、前記水冷モータのハウジングの内部に流れ込む
ことを特徴とする請求項1に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項5】
前記水冷モータのハウジングがフロントエンドカバーを含み、前記ベアリングシートが前記フロントエンドカバーに設けられ、前記フロントエンドカバーには、前記導油管路に接続される油入口が前記ベアリングシートに対応して設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項6】
前記返油管路が前記水冷モータの下部のハウジングの内壁に設けられており、前記返油管路の入口が前記水冷モータのハウジングの内部に位置し、前記潤滑油が前記ベアリングシートから流れ出て、前記返油管路を通って前記ギアボックス又は減速ボックスに還流することにより、完全な油路が形成される
ことを特徴とする請求項4に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項7】
前記導油管路が前記水冷モータの上部のハウジングの内壁に設けられており、
前記フロントエンドカバーにおいて、前記ベアリングシートの上部には、前記導油管路に連通される油入力通路が設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項8】
前記水冷モータのハウジングの後端が前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングのフロントエンドカバーに取り付けられ、前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングのフロントエンドカバーには、前記返油管路に連通される油入口が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項9】
前記歯車飛散貯油構造における潤滑油の液面が前記ベアリングバッフル貯油構造における潤滑油の液面よりも高く、潤滑油が、重力の作用下で、前記歯車飛散貯油構造から前記導油管路を通って前記ベアリングバッフル貯油構造内に送られる
ことを特徴とする請求項1に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項10】
水冷モータと、ギアボックス又は減速ボックスとを含むモータ駆動アセンブリであって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構をさらに含む
ことを特徴とするモータ駆動アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油送り機構に関し、具体的には、水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構に関する。本発明は、さらにモータ駆動アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、モータのフロントベアリングの潤滑方式は、主に2種類に分けられている。1つは、油冷モータで使用される油潤滑であり、もう1つは、水冷モータで使用されるグリース潤滑である。油潤滑方式では、油路の循環を完了させるために油ポンプが必要となり、構造が複雑であり、製造コストが高くなる。一方、グリース潤滑では、潤滑グリースが流出しやすく、ベアリングの摩擦が大きく、放熱が悪く、許容される回転速度がより低く、ベアリングの寿命がある程度短くなり、高回転速度の場合に対応できない。
【0003】
新エネルギー自動車の継続的な発展に伴い、モータは、ますます複雑な作動環境に対応しなければならない。ユーザから求められるモータの最高回転速度、温度上昇状況および寿命を両立させるニーズは、ますます切実になっている。従来の潤滑方式を使用したモータは、新エネルギー自動車産業に要求されている高出力、高トルク、最高速度と最大寿命を両立させるという車両の発展に適応できなくなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新エネルギー自動車の継続的な発展に伴い、モータは、ますます複雑な作動環境に対応しなければならない。ユーザから求められるモータの最高回転速度、温度上昇状況および寿命を両立させるニーズは、ますます切実になっている。従来の潤滑方式を使用したモータは、新エネルギー自動車産業に要求されている高出力、高トルク、最高速度と最大寿命を両立させるという車両の発展に適応できなくなっている。
【0005】
本発明は、上記水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構が取り付けられたモータ駆動アセンブリをさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するように、本発明の技術案は、以下のように実現される。
【0007】
本発明の一つの局面では、水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構であって、ギアボックス又は減速ボックスに設けられた歯車飛散貯油構造と、水冷モータの前端に設けられたベアリングバッフル貯油構造とを含み、前記歯車飛散貯油構造と前記ベアリングバッフル貯油構造との間が導油管路を介して連通され、前記ベアリングバッフル貯油構造と前記ギアボックス又は減速ボックスとの間が返油管路を介して連通され、前記ギアボックス又は減速ボックスにおける歯車が、運転中に潤滑油を前記歯車飛散貯油構造内に振り飛ばし、前記導油管路を介して前記ベアリングバッフル貯油構造内に送ることにより、水冷モータのフロントベアリングが潤滑され、その後、潤滑油が返油管路を通って前記ギアボックス又は減速ボックスに還流する水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構が提供されている。
【0008】
また、前記歯車飛散貯油構造が、前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングの内壁に設けられた貯油槽を含み、前記ギアボックス又は減速ボックスにおける歯車の運転中に、前記ギアボックス又は減速ボックスの底部の潤滑油と接触する大歯車が、潤滑油を飛散させて前記貯油槽内に振り飛ばすようにしてもよい。
【0009】
また、前記貯油槽が、前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングの内壁に鋳造されるか、或いは、溶接又はボルト締めされており、前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングには、前記導油管路に接続される油出口が前記貯油槽に対応して設けられていてもよい。
【0010】
また、前記貯油槽における潤滑油を受け入れる側の側壁が、弧形をなしていてもよい。
【0011】
また、前記ベアリングバッフル貯油構造が、前記水冷モータのハウジングの前端に設けられたベアリングシートを含み、前記水冷モータのフロントベアリングが前記ベアリングシートに設けられ、前記ベアリングシートの後端には、前記ベアリングシートを半密閉するベアリングバッフルが設けられ、前記水冷モータのフロントベアリングが前記ベアリングバッフルに押し付けられており、前記ベアリングシートの底部に貯留された潤滑油が、前記水冷モータのフロントベアリングを潤滑するようにしてもよい。
【0012】
前記ベアリングバッフルの内孔と前記水冷モータの軸との間に隙間を有し、前記ベアリングシートの底部に貯留された潤滑油は、その液面の高さが前記ベアリングバッフルの内孔の縁を超えると、前記ベアリングシートから流れ出て、前記水冷モータのハウジングの内部に流れ込むようにしてもよい。
【0013】
また、前記水冷モータのハウジングがフロントエンドカバーを含み、前記ベアリングシートが前記フロントエンドカバーに設けられ、前記フロントエンドカバーには、前記導油管路に接続される油入口が前記ベアリングシートに対応して設けられていてもよい。
【0014】
また、前記返油管路が前記水冷モータの下部のハウジングの内壁に設けられており、前記返油管路の入口が前記水冷モータのハウジングの内部に位置し、前記潤滑油が前記ベアリングシートから流れ出て、前記返油管路を通って前記ギアボックス又は減速ボックスに還流することにより、完全な油路が形成されるようにしてもよい。
【0015】
また、前記導油管路が前記水冷モータの上部のハウジングの内壁に設けられていてもよい。
【0016】
また、前記フロントエンドカバーにおいて、前記ベアリングシートの上部には、前記導油管路に連通される油入力通路が設けられていてもよい。
【0017】
また、前記水冷モータのハウジングの後端が前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングのフロントエンドカバーに取り付けられ、前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングのフロントエンドカバーには、前記返油管路に連通される油入口が設けられていてもよい。
【0018】
前記歯車飛散貯油構造における潤滑油の液面が前記ベアリングバッフル貯油構造における潤滑油の液面よりも高く、潤滑油が、重力の作用下で、前記歯車飛散貯油構造から前記導油管路を通って前記ベアリングバッフル貯油構造内に送られる。
【0019】
本発明のもう一つの局面では、水冷モータと、ギアボックス又は減速ボックスとを含む水冷モータ駆動アセンブリであって、上記に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構をさらに含む水冷モータ駆動アセンブリが提供されている。
【発明の効果】
【0020】
上記構造を用いて配置された水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構は、以下の利点を有する。
【0021】
本発明では、水冷モータと、ギアボックス又は減速ボックスとのそれぞれに貯油構造が設けられ、合計2つの貯油構造が設けられており、潤滑油は、ギアボックス又は減速ボックス内で、飛散する形で第1の貯油構造に入り、導油管路を通って第2の貯油構造内に送られ、水冷モータのフロントベアリングが第2の貯油構造に位置することで、水冷モータのフロントベアリングが油潤滑され、ベアリングの発熱が効果的に低減され、水冷モータのフロントベアリングの寿命が向上し、高速運転の作動環境に適している。
【0022】
本発明の水冷モータのフロントベアリングは、油潤滑を採用しており(水冷モータのリアベアリングも油潤滑を採用)、高速回転に適し、高温安定性が良好であり、冷却降温の役割を果たし、ベアリング内部の摩耗粉及びほこりを簡単に取り除き、ベアリングの寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例による水冷モータ駆動アセンブリの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的、技術案及び利点が更に明白になるように、以下、図面を参照して、本発明の実施形態について更に詳しく説明する。
【0025】
図1に示すように、本発明の実施例に係る水冷モータは、回転子4、固定子5、水冷モータのハウジング6等の部品を含む。回転子4が軸に取り付けられ、軸の前後両段がそれぞれ水冷モータのフロントベアリング1及び水冷モータのリアベアリング7によって固定されている。水冷モータのハウジング6の内部に冷却通路が設けられており、冷却液が冷却通路内に入ってモータを冷却する。
【0026】
電気自動車において、水冷モータがギアボックス又は減速ボックスと組み合わされて、車両の走行を駆動するための駆動アセンブリを形成する。
【0027】
実施例1
図1、
図2、
図3には、本発明の実施例1が示されている。本実施例では、水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構が提供されており、前記水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構は、ギアボックスに設けられた歯車飛散貯油構造と、水冷モータの前端に設けられたベアリングバッフル貯油構造とを含み、歯車飛散貯油構造とベアリングバッフル貯油構造との間が導油管路9を介して連通され、ベアリングバッフル貯油構造とギアボックスとの間が返油管路3を介して連通され、ギアボックスにおける歯車が、運転中に潤滑油を歯車飛散貯油構造内に振り飛ばし、導油管路9を介してベアリングバッフル貯油構造内に送ることにより、水冷モータのフロントベアリング1が潤滑され、その後、潤滑油が返油管路3を通ってギアボックスに還流する。
【0028】
歯車の円周面に伝動歯が設けられているため、歯車が潤滑油を通過する際に、伝動歯が少量の潤滑油を掻き揚げることが必然になり、歯車の回転に伴い、これらの潤滑油が歯車の回転方向に沿って振り回され、ギアボックスの内部では、潤滑油が飛散している状態であるといえる。
【0029】
具体的に、歯車飛散貯油構造が、ギアボックスのハウジング8の内壁に設けられた貯油槽10を含み、ギアボックスにおける歯車の運転中には、ギアボックスの底部の潤滑油と接触する大歯車12が潤滑油を貯油槽10内に振り飛ばす。
【0030】
実際のギアボックスには、複数の伝動比を形成する複数の歯車が設けられる。これらの歯車は、直径が異なる。一部の小歯車、例えば小歯車11は、直径が小さいことで、ギアボックスの底部に貯留されている潤滑油に接触できず、運転中に潤滑油を掻き揚げることができないため、運転中に潤滑油を掻き揚げることができる、直径が大きな大歯車、例えば大歯車12を頼りにする必要がある。ギアボックスの底部の潤滑油に接触できる大歯車は、少なくとも1つあればよいが、複数の大歯車が何れも、ギアボックスの底部の潤滑油に接触できる場合もあり得る。この場合、掻き揚げられる潤滑油の量が比較的十分となる。
【0031】
図2に示すように、貯油槽10がギアボックスのハウジング8の内壁に固定されており、ギアボックスのハウジング8には、導油管路9に接続される油出口が貯油槽10に対応して設けられている。ここでの油出口が内側に貯油槽10と連通しており、油出口が、ギアボックスのハウジング8にネジで取り付けて固定されるか、若しくは溶接して固定されてもよい。
【0032】
振り回された潤滑油を受け入れやすくするために、貯油槽10における潤滑油を受け入れる側の側壁が弧形をなしており、貯油槽10の入口面積が拡大される。側壁の弧度は、ギアボックスのハウジング8の内壁の弧度を参照して設計することが可能である。
【0033】
貯油槽10における潤滑油を受け入れる側の側壁は、潤滑油を受け入れやすく、振り飛ばされた潤滑油を保存しやすくできれば、他の形状に設計してもよい。
【0034】
貯油槽10は、ギアボックスのハウジング8の内壁に鋳造されてもよく、又は、金属板材でプレスして作製されてから又はプラスチックで射出成形されてから、ギアボックスの中部のハウジングの内壁に溶接又はボルト締めされてもよい。
【0035】
図1に示すように、ベアリングバッフル貯油構造が、水冷モータのハウジング6の前端に設けられたベアリングシートを含み、水冷モータのフロントベアリング1がベアリングシートに設けられ、ベアリングシートの後端には、ベアリングシートを半密閉するベアリングバッフル2が設けられ、水冷モータのフロントベアリング1がベアリングバッフル2に押し付けられており、ベアリングシートの底部に貯留された潤滑油が、水冷モータのフロントベアリング1を潤滑する。
【0036】
図1、
図3に示すように、ベアリングバッフル2の内孔と水冷モータの軸との間に隙間を有し、ベアリングシートの底部に貯留された潤滑油は、その液面の高さがベアリングバッフル2の内孔の縁を超えると、ベアリングシートから流れ出て、水冷モータのハウジング6の内部に流れ込む。水冷モータのフロントベアリング1は潤滑油を妨げることがない。
【0037】
水冷モータの内部の固定子巻線、回転子巻線等のケーブルが絶縁されているため、潤滑油は水冷モータのハウジング6の内部に流れ込んでから、返油管路3を通ってギアボックスに還流することができる。
【0038】
ベアリングバッフル2は、ベアリングシートの後端にネジで取り付けて固定されてもよいが、ネジ接続部からの潤滑油の漏れを防止するために、ネジ接続部をシールすることで、ベアリングシートの底部に貯留された潤滑油が一定の油面高さを維持できるようにする必要がある。
【0039】
水冷モータのハウジング6がフロントエンドカバーを含み、ベアリングシートがフロントエンドカバーに設けられ、フロントエンドカバーには、導油管路9に接続される油入口がベアリングシートに対応して設けられている。ここでの油入口が内側にベアリングシートと連通しており、油入口が、水冷モータのハウジング6にネジで取り付けて固定されるか、若しくは溶接して固定されてもよい。
【0040】
ベアリングシートの前端がフロントエンドカバーを貫通していないため密閉しており、ここに油入口を配置することが可能である。ベアリングシートの前端がフロントエンドカバーを貫通していてもよいが、この場合、ベアリングシートの前端から潤滑油が漏れないように、更に蓋を設けてそれを密閉する。
【0041】
本実施例において、返油管路3が水冷モータの下部のハウジングの内壁に設けられており、返油管路3の入口が水冷モータのハウジング6の内部に位置し、潤滑油がベアリングシートから流れ出て、返油管路3を通ってギアボックスに還流することにより、完全な油路が形成される。
【0042】
ギアボックスの底部に貯留された潤滑油は、その液面の高さが返油管路3よりも低いため、返油管路3における潤滑油がギアボックスにスムーズに還流できる。
【0043】
水冷モータのハウジング6の内部に冷却通路が設けられているため、水冷モータのハウジング6が一定の肉厚を有し、この肉厚を利用して返油管路3を設けることができる。
【0044】
本実施例において、導油管路9が単独の管路であり、
図1に示すように、導油管路9の上端がギアボックスのハウジング8における油出口に接続され、下端が水冷モータのハウジング6における油入口に接続される。導油管路9は、金属硬管又は金属軟管を用いることが可能であり、その上端と下端のいずれにも管継手が設けられている。
【0045】
水冷モータのハウジング6の後端がギアボックスのハウジング8のフロントエンドカバーに取り付けられ、ギアボックスのハウジングのフロントエンドカバーには、返油管路3に連通される油入口が設けられている。ここでの油入口が内側にギアボックスのハウジング8の内部と連通しており、潤滑油がギアボックスのハウジング8の内部に入ってから、ギアボックスのハウジング8の底部に貯留され、続いて、大歯車12に掻き揚げられて、潤滑油循環経路が形成される。
【0046】
図1から分かるように、水冷モータの軸の後端には、水冷モータのリアベアリング7がさらに設けられており、水冷モータのリアベアリング7がギアボックスのハウジング8内に位置し、ギアボックスの内部は潤滑油が飛散している状態であるため、水冷モータのリアベアリング7は、ギアボックス内の潤滑油で潤滑されることができる。
【0047】
図2に示すように、歯車飛散貯油構造における潤滑油の液面が、ベアリングバッフル貯油構造における潤滑油の液面よりも高く、潤滑油が、重力の作用下で、歯車飛散貯油構造から導油管路9を通ってベアリングバッフル貯油構造内に送られる。
【0048】
本実施例におけるギアボックスは、減速ボックスであってもよい。減速ボックスの機能は、ギアボックスの機能と異なり、減速ボックスは、減速のためにのみ使用され、歯車飛散貯油構造は、ギアボックス及び減速ボックスにおける構造設置が同じであるため、これに対して繰り返して説明しない。
【0049】
本実施例における水冷モータのフロントベアリング1、水冷モータのリアベアリング7は何れも油潤滑を採用しており、高速回転に適し、高温安定性が良好であり、冷却降温の役割を果たし、ベアリング内部の摩耗粉及びほこりを簡単に取り除き、ベアリングの寿命を向上させることができる。
【0050】
実施例2
この実施例は、導油管路が水冷モータの上部のハウジングの内壁に設けられている点で、実施例1と異なる。水冷モータのハウジングの内部に冷却通路が設けられているため、水冷モータのハウジングが一定の肉厚を有し、この肉厚を利用して導油管路を設けることができる。
【0051】
それに応じて、水冷モータのハウジング6のフロントエンドカバーにおいて、ベアリングシートの上部には、導油管路に連通される油入力通路が設けられている。
【0052】
フロントエンドカバーにおける油入力通路が上下鉛直方向に沿ってもよく、フロントエンドカバーが取り付けられると、油入力通路が返油管路3に連通される。
【0053】
ギアボックス又は減速ボックスの内部の貯油槽10と連通し、歯車飛散貯油構造における潤滑油の液面が、ベアリングバッフル貯油構造における潤滑油の液面よりも高いことを保証することができるよう、導油管路は後端の方で上昇される必要がある。そのため、少なくとも水冷モータのハウジング6の後端に上向きの突起が設けられ、導油管路は、突起に沿って設けられて、貯油槽10との連通が実現される。
【0054】
本実施例において、水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構は、その他の構造が実施例1と同じであり、ここで繰り返して説明しない。
【0055】
実施例3
この実施例では、水冷モータと、ギアボックス又は減速ボックスとを含む水冷モータ駆動アセンブリであって、実施例1又は実施例2に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構をさらに含む水冷モータ駆動アセンブリが提供されている。
【0056】
ギアボックスを例として、
図1に示すように、水冷モータとギアボックスとが組み合わされており、水冷モータにリアエンドカバーが設けられなくてもよく、水冷モータのハウジング6の後端がギアボックスのハウジング8のフロントエンドカバーに取り付けられ、水冷モータの軸がギアボックスの入力軸と一体に形成されており、このように、水冷モータ駆動アセンブリの軸方向の幅を減らすことができる。
【0057】
減速ボックスの機能はギアボックスと異なり、減速ボックスは、減速のためにのみ使用され、減速ボックスと水冷モータとの組み合わせ構造は、上記のギアボックスと水冷モータとの組み合わせ構造を参照できる。
【0058】
上記は、あくまでも本発明の具体的な実施形態であり、本発明の上記教示の下で、当業者は、上記実施例に基づいて他の改良又は変形を行うことができる。当業者であれば、上記の具体的な記載は本発明の目的をより良く解釈するためのものであり、本発明の保護範囲が特許請求の範囲の保護範囲に基づくものであることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0059】
1 水冷モータのフロントベアリング、2 ベアリングバッフル、3 返油管路、4 回転子、5 固定子、6 水冷モータのハウジング、7 水冷モータのリアベアリング、8 ギアボックスのハウジング、9 導油管路、10 貯油槽、11 小歯車、12 大歯車
【手続補正書】
【提出日】2021-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構であって、ギアボックス又は減速ボックスに設けられた歯車飛散貯油構造と、水冷モータの前端に設けられたベアリングバッフル貯油構造とを含み、前記歯車飛散貯油構造と前記ベアリングバッフル貯油構造との間が導油管路を介して連通され、前記ベアリングバッフル貯油構造と前記ギアボックス又は減速ボックスとの間が返油管路を介して連通され、前記ギアボックス又は減速ボックスにおける歯車が、運転中に潤滑油を前記歯車飛散貯油構造内に振り飛ばし、前記導油管路を介して前記ベアリングバッフル貯油構造内に送ることにより、水冷モータのフロントベアリングが潤滑され、その後、潤滑油が返油管路を通って前記ギアボックス又は減速ボックスに還流
し、
前記ベアリングバッフル貯油構造が、前記水冷モータのハウジングの前端に設けられたベアリングシートを含み、前記水冷モータのフロントベアリングが前記ベアリングシートに設けられ、前記ベアリングシートの後端には、前記ベアリングシートを半密閉するベアリングバッフルが設けられ、前記水冷モータのフロントベアリングが前記ベアリングバッフルに押し付けられており、前記ベアリングシートの底部に貯留された潤滑油が、前記水冷モータのフロントベアリングを潤滑し、
前記ベアリングバッフルの内孔と前記水冷モータの軸との間に隙間を有し、前記ベアリングシートの底部に貯留された潤滑油は、その液面の高さが前記ベアリングバッフルの内孔の縁を超えると、前記ベアリングシートから流れ出て、前記水冷モータのハウジングの内部に流れ込む
ことを特徴とする水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項2】
前記歯車飛散貯油構造が、前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングの内壁に設けられた貯油槽を含み、前記ギアボックス又は減速ボックスにおける歯車の運転中に、前記ギアボックス又は減速ボックスの底部の潤滑油と接触する大歯車が、潤滑油を飛散させて前記貯油槽内に振り飛ばす
ことを特徴とする請求項1に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項3】
前記貯油槽が、前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングの内壁に鋳造されるか、或いは、溶接又はボルト締めされており、前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングには、前記導油管路に接続される油出口が前記貯油槽に対応して設けられており、
前記貯油槽における潤滑油を受け入れる側の側壁が、弧形をなしている
ことを特徴とする請求項2に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項4】
前記水冷モータのハウジングがフロントエンドカバーを含み、前記ベアリングシートが前記フロントエンドカバーに設けられ、前記フロントエンドカバーには、前記導油管路に接続される油入口が前記ベアリングシートに対応して設けられている
ことを特徴とする請求項
1に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項5】
前記返油管路が前記水冷モータの下部のハウジングの内壁に設けられており、前記返油管路の入口が前記水冷モータのハウジングの内部に位置し、前記潤滑油が前記ベアリングシートから流れ出て、前記返油管路を通って前記ギアボックス又は減速ボックスに還流することにより、完全な油路が形成される
ことを特徴とする請求項
1に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項6】
前記導油管路が前記水冷モータの上部のハウジングの内壁に設けられており、
前記フロントエンドカバーにおいて、前記ベアリングシートの上部には、前記導油管路に連通される油入力通路が設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項7】
前記水冷モータのハウジングの後端が前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングのフロントエンドカバーに取り付けられ、前記ギアボックス又は減速ボックスのハウジングのフロントエンドカバーには、前記返油管路に連通される油入口が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項8】
前記歯車飛散貯油構造における潤滑油の液面が前記ベアリングバッフル貯油構造における潤滑油の液面よりも高く、潤滑油が、重力の作用下で、前記歯車飛散貯油構造から前記導油管路を通って前記ベアリングバッフル貯油構造内に送られる
ことを特徴とする請求項1に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構。
【請求項9】
水冷モータと、ギアボックス又は減速ボックスとを含むモータ駆動アセンブリであって、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の水冷モータのフロントベアリング油潤滑機構をさらに含む
ことを特徴とするモータ駆動アセンブリ。
【国際調査報告】