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特表2022-508429改善された風味を有する非アルコール性発酵ビール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】改善された風味を有する非アルコール性発酵ビール
(51)【国際特許分類】
   C12H 3/00 20190101AFI20220112BHJP
   C12C 12/04 20060101ALI20220112BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20220112BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C12H3/00
C12C12/04
A23L2/38 S
A23L2/38 C
A23L2/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537431
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(85)【翻訳文提出日】2021-04-16
(86)【国際出願番号】 NL2018050585
(87)【国際公開番号】W WO2020055233
(87)【国際公開日】2020-03-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508343478
【氏名又は名称】ハイネケン・サプライ・チェーン・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Heineken Supply Chain B.V.
【住所又は居所原語表記】Burgemeester Smeetsweg 1,NL-2382 PH Zoeterwoude, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナット、デボラ・カサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ブロワー、エリック・リチャード
(72)【発明者】
【氏名】オッテンス、マルセル
【テーマコード(参考)】
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LG16
4B117LK25
4B117LP10
4B128CP37
(57)【要約】
本発明は、非アルコール性ビールの製造方法であって、
・加熱された麦汁を生酵母を用いて発酵させて発酵麦汁を生成する工程、
・発酵麦汁を1以上の更なる工程に供して非アルコール性ビールを生成する工程、
・非アルコール性ビールを密閉容器に充てんする工程、
を含み、発酵は非アルコール性発酵麦汁を生成するか、又は発酵はアルコール性発酵麦汁を生成し、続いてアルコールを除去して非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールを生成するかのいずれかであり、加熱された麦汁、非アルコール性発酵麦汁及び/又は非アルコール性ビールを、SiOとAlのモル比が少なくとも15の疎水性シリケート系分子篩と接触させる方法を提供する。
非アルコール性ビール中のかすかな望ましくない風味に寄与する風味物質は、麦汁が実質的にアルコールを含有しないという条件で、発酵の前又は後に麦汁を疎水性シリケート系分子篩と接触させることによって、製造中に効果的に除去することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール含有量が1.0体積%未満の非アルコール性発酵ビールの製造方法であって、
穀物と水との混合物をマッシングしてマッシュを生成する工程、
前記マッシュを麦汁とビール粕とに分離する工程、
前記麦汁を少なくとも10分間、少なくとも80℃の温度まで加熱して、加熱された麦汁を生成する工程、
前記加熱された麦汁を生酵母を用いて発酵させて発酵麦汁を生成する工程、
前記発酵麦汁を1以上の更なる工程に供して非アルコール性ビールを生成する工程、
前記非アルコール性ビールを密閉容器に充てんする工程、を含み、
前記発酵は非アルコール性発酵麦汁を生成するか、又は前記発酵はアルコール性発酵麦汁を生成し、続いてアルコールを除去して非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールを生成するかのいずれかであり、
前記加熱された麦汁、前記非アルコール性発酵麦汁及び/又は前記非アルコール性ビールを、SiOとAlのモル比が少なくとも15の疎水性シリケート系分子篩と接触させる、方法。
【請求項2】
前記加熱された麦汁、前記非アルコール性発酵麦汁及び/又は前記非アルコール性ビールと前記疎水性シリケート系分子篩の接触は、前記疎水性シリケート系分子篩を含む層又はモノリスに前記麦汁又はビールを通過させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疎水性シリケート系分子篩の細孔径は0.2~1.2nmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記疎水性シリケート系分子篩はゼオライトを含み、前記ゼオライトのSiO/Al比は少なくとも40である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記疎水性シリケート系分子篩はZMS-5型ゼオライトを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記加熱された麦汁を生酵母を用いて4℃未満の温度で少なくとも1日間発酵させることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アルコール含有量が1.0体積%未満の非アルコール性発酵ビールであって、メチオナール、2-メチルブタナール、3-メチルブタナール、2-メチルプロパナール、フェニルアセトアルデヒド並びにフルフラール、及びマルトトリオースを、以下の条件を満たす濃度で含有する非アルコール性発酵ビール:
【数1】
(ここで、
[Meth]は、メチオナール濃度(μg/L)、
[2MB]は、2-メチルブタナール濃度(μg/L)、
[3MB]は、3-メチルブタナール濃度(μg/L)、
[2MP]は、2-メチルプロパナール濃度(μg/L)、
[2PA]は、フェニルアセトアルデヒド濃度(μg/L)、
[FF]は、フルフラール濃度(μg/L)、
[Maltotriose]は、マルトトリオース濃度(g/L)を表す)。
【請求項8】
前記ビールは、メチオナール、2-メチルブタナール、3-メチルブタナール、2-メチルプロパナール、フェニルアセトアルデヒド、及びフルフラールを、以下の条件を満たす濃度で含有する:
【数2】
、請求項7に記載の非アルコール性ビール。
【請求項9】
少なくとも6g/Lのマルトトリオース、好ましくは少なくとも8g/Lのマルトトリオースを含有する、請求項7又は8に記載の非アルコール性ビール。
【請求項10】
メチオナールを20μg/L未満の濃度、2-メチルブタナールを8μg/L未満の濃度、3-メチルブタナールを25μg/L未満の濃度、2-メチルプロパナールを15μg/L未満の濃度、及び/又はフェニルアセトアルデヒドを20μg/L未満の濃度で含有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の非アルコール性ビール。
【請求項11】
メチオナール及びメチオニンを0.8(μg/mg)未満の重量比で含有する、請求項7~10のいずれか一項に記載の非アルコール性ビール。
【請求項12】
100μg/L未満のフルフラールを含有する、請求項7~11のいずれか一項に記載の非アルコール性ビール。
【請求項13】
少なくとも1.0mg/Lのイソアルファ酸を含有し、前記アルファ酸はイソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロン及びそれらの組合せから選択される、請求項7~12のいずれか一項に記載の非アルコール性ビール。
【請求項14】
前記ビールはラガーである、請求項7~13のいずれか1項に記載の非アルコール性ビール。
【請求項15】
前記ビールは請求項1~6のいずれか一項に記載の方法によって得られる、請求項7~14のいずれか一項に記載の非アルコール性ビール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された風味を有する非アルコール性発酵ビールの製造に関する。より詳細には、本発明は、疎水性シリケート系分子篩、例えば疎水性ゼオライトを用いて処理することにより、いわゆるかすかな「麦汁の」風味が低減された非アルコール性発酵ビールの製造方法を提供する。
【0002】
また、本発明は望ましくないかすかな麦汁風味がなく、独特の快い風味を有する非アルコール性発酵ビールに関する。
【背景技術】
【0003】
ビールは、世界中で消費されている広く人気のある飲料である。一般的に、ビールは以下の基本的な工程を含む方法によって製造される:
・穀物と水との混合物をマッシングしてマッシュを生成する工程;
・マッシュを麦汁とビール粕とに分離する工程;
・麦汁を煮沸して煮沸した麦汁を生成する工程;
・煮沸した麦汁を生酵母を用いて発酵させて、発酵麦汁を生成する工程;
・発酵麦汁を1以上の更なる工程(例えば、熟成及び濾過)に供してビールを生成する工程;
・ビールを密閉容器、例えば瓶、缶又は樽に詰める工程。
【0004】
近年、ビール市場では非アルコール性ビールの消費量が著しく増加している。この増加は、健康及び安全性に対する関心がきっかけとなって起こり、また非アルコール性ビールの品質が実質的に改善されたという革新によって促進されている。
【0005】
非アルコール性ビールの製造には2つの方法がある。一方は、伝統的な醸造工程を行い、続いて逆浸透、透析又は蒸発などの技術によってアルコールを除去する方法である。もう一方は、アルコールの発酵生産を最小限にする条件下で煮沸した麦汁を生酵母と接触させることによって、発酵中のアルコールの形成を減少させる方法である。この方法は一般的に「制限アルコール発酵」と呼ばれている。
【0006】
通常、非アルコール性ビールは、一般に「麦汁のような味」と呼ばれるかすかなオフフレーバーを有する。このかすかな麦汁風味は、麦汁の煮沸中に形成されるアルデヒド、特にメチオナール(3-メチルチオプロピオンアルデヒド)、3-メチルブタナール、2-メチルブタナール、2-メチルプロパナール及びフェニルアセトアルデヒドに起因する。
【0007】
メチオナールは、ストレッカー分解反応によるα-ジカルボニル化合物(メイラード反応における中間生成物)とメチオニンとの相互作用によって形成される。同様に、3-メチルブタナール、2-メチルブタナール及び2-メチルプロパナールは、α-ジカルボニル化合物とそれぞれロイシン、イソロイシン及びバリンとの相互作用によって形成される。
【0008】
フルフラールは、麦汁の煮沸中に形成され、非アルコール性ビールの風味に悪影響を及ぼし得る別の風味化合物である。フルフラールは、熱誘導カラメル化反応によって生成される。
【0009】
非アルコール性ビールにおいて、上記麦汁風味物質及びフルフラールのビール全体の風味への寄与は甚だしい。これは、一部には、非アルコール性ビール、特に制限アルコール発酵によって製造された非アルコール性ビール中のこれらの風味物質の濃度が通常のビールよりも高いことによる。更に、非アルコール性ビール中にアルコールが存在しないことは、消費者がこれらの風味物質を知覚する程度を増加させる。
【0010】
非アルコール性ビールの麦汁風味の要素を低減させる試みがなされてきた。
【0011】
米国特許出願公開第2013/0280399号明細書には、テルペン、例えばテルピノレンを添加することによって、麦汁に由来するオフフレーバーを低減することを含む、アルコールフリービール様麦芽飲料の製造方法が記載されている。
【0012】
米国特許出願公開第2012/0207909号明細書には、麦汁を活性炭と接触させて不快な麦汁の風味を低減することを含む、未発酵のビール風味麦芽飲料の製造方法が記載されている。
【0013】
ビールの製造におけるゼオライトの使用は先行技術に記載されている。
【0014】
米国特許第5308631号明細書には、天然のアルコール性ビールからアルコールフリービールを得る方法であって、
(a)アルコール性ビールを疎水性ゼオライトからなる固体吸着剤と接触させて、水性溶離剤相及び当該吸着剤上に吸着された生成物を形成する工程、
(b)水性溶離剤相を吸着剤から分離する工程、
(c)当該吸着された生成物を熱的に脱着させて、脱着相を形成する工程、
(d)脱着相を回収する工程、
(e)脱着相をアルコール相と芳香族水相とに分離する工程、及び
(f)(b)及び(e)の終了時に回収された水相を混合することによってアルコールフリービールを再構成する工程
からなる方法が記載されている。
【0015】
国際公開第03/068905号には、ビールの濁りを低減するための方法であって、粉砕ゼオライトの層に飲料を通過させて濾過する工程を含み、ゼオライトは、A型ゼオライト、X型ゼオライト及びY型ゼオライトを含むリストから選択される方法が記載されている。
【0016】
米国特許出願公開第2016/0319230号明細書には、金属担持ゼオライトを用いてアルコール飲料に含まれる不要な硫黄化合物を除去することによりアルコール飲料を精製することを含むアルコール飲料の製造方法であって、金属担持ゼオライトはβ型ゼオライト及びY型ゼオライトから選ばれる少なくとも1種のゼオライトと当該ゼオライトに担持された銀とを含む方法が記載されている。実施例では、以下の硫黄化合物:ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド及びジメチルトリスルフィドを除去することが記載されている。
【0017】
Zeolite(商標)63(旧Murphy&Son Ltd.製)は天然に存在する火山性物質(近似実験式:(Ca,Fe,K,Mg,Na)3-6Si30Al72.24HOを有する結晶性アルミノシリケート鉱物)と銅塩とのブレンドであり、発酵飲料の硫化物のオフフレーバー(硫化水素及び硫化ジメチル)を低減すると言われている。この製品は、発酵終了時又は低温熟成開始時にビールに添加される。
【0018】
アルデヒドを吸着するための疎水性ゼオライトの使用は、米国特許第6596909号明細書に記載されている。この米国特許には、イオン種としてNH を有し、SiO/Alのモル比が30~190であるZSM-5型ゼオライトが記載されている。このゼオライトを用いて、ガス流からアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドを吸着させた。
【発明の概要】
【0019】
本発明者らは、非アルコール性ビールのかすかな望ましくない風味に寄与する風味物質は、麦汁が実質的にアルコールを含有しないという条件において、発酵の前又は後に麦汁を疎水性シリケート系分子篩と接触させることによって、製造中に効果的に除去できることを見出した。従って、本発明は、アルコール含有量が1.0体積%未満の非アルコール性ビールの製造方法であって、
・穀物と水との混合物をマッシングしてマッシュを生成する工程、
・マッシュを麦汁とビール粕とに分離する工程、
・麦汁を少なくとも10分間、少なくとも80℃の温度まで加熱して、加熱された麦汁を生成する工程、
・加熱された麦汁を生酵母を用いて発酵させて発酵麦汁を生成する工程、
・発酵麦汁を1以上の更なる工程に供して非アルコール性ビールを生成する工程、
・非アルコール性ビールを密閉容器に充てんする工程、を含み、
発酵は非アルコール性発酵麦汁を生成するか、又は発酵はアルコール性発酵麦汁を生成し、続いてアルコールを除去して非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールを生成するかのいずれかであり、
加熱された麦汁、非アルコール性発酵麦汁及び/又は非アルコール性ビールを、SiOとAlのモル比が少なくとも15の疎水性シリケート系分子篩と接触させる方法を提供する。
【0020】
驚くべきことに、疎水性シリケート系分子篩は、相当量の他の重要なビール風味物質を除去することなく、麦汁風味物質を効果的に除去できることが見出された。従って、本方法は、残りのビール風味に多大な影響を及ぼすことなく、麦汁風味物質、例えばメチオナールを選択的に除去することを可能にする。
【0021】
本発明は更に、アルコール含有量が1.0体積%未満の非アルコール性発酵ビールであって、メチオナール、2-メチルブタナール、3-メチルブタナール、2-メチルプロパナール、フェニルアセトアルデヒド並びにフルフラール、及びマルトトリオースを、以下の条件を満たす濃度で含有する非アルコール性発酵ビールに関する:
【数1】
(ここで、
[Meth]は、メチオナール濃度(μg/L)、
[2MB]は、2-メチルブタナール濃度(μg/L)、
[3MB]は、3-メチルブタナール濃度(μg/L)、
[2MP]は、2-メチルプロパナール濃度(μg/L)、
[2PA]は、フェニルアセトアルデヒド濃度(μg/L)、
[FF]は、フルフラール濃度(μg/L)、
[Maltotriose]は、マルトトリオース濃度(g/L)を表す)。
マルトトリオース濃度が少なくとも5g/Lの非アルコール性ビールは、典型的には制限アルコール発酵によって製造される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の態様は、アルコール含有量が1.0体積%未満の非アルコール性発酵ビールの製造方法であって、
・穀物と水との混合物をマッシングしてマッシュを生成する工程、
・マッシュを麦汁とビール粕とに分離する工程、
・麦汁を少なくとも10分間、少なくとも80℃の温度まで加熱して、加熱された麦汁を生成する工程、
・加熱された麦汁を生酵母を用いて発酵させて発酵麦汁を生成する工程、
・発酵麦汁を1以上の更なる工程に供して非アルコール性ビールを生成する工程、
・非アルコール性ビールを密閉容器に充てんする工程、を含み、
発酵は非アルコール性発酵麦汁を生成するか、又は発酵はアルコール性発酵麦汁を生成し、続いてアルコールを除去して非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールを生成するかのいずれかであり、加熱された麦汁、非アルコール性発酵麦汁及び/又は非アルコール性ビールを、SiOとAlのモル比が少なくとも15の疎水性シリケート系分子篩と接触させる方法に関する。
【0023】
本明細書において使用される「アルコール」という用語は、「エタノール」と同義である。
【0024】
本明細書において使用される「非アルコール性」という用語は、別段の指示がない限り、アルコール含有量が1.0体積%未満であることを意味する。
【0025】
本明細書において使用される「アルコール性」という用語は、別段の指示がない限り、アルコール含有量が1.0体積%を超えることを意味する。
【0026】
本明細書において使用される「マッシング」という用語は、デンプン含有穀物と、水と、デンプンを加水分解することができる酵素とを混合することを指す。当該酵素は、例えば、麦芽から、又は別の酵素源(例えば、麦芽中に含まれているデンプン分解酵素、特にα-アミラーゼ、β-アミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼを含有する市販の酵素調製物)から得てもよい。好ましくは、当該酵素は本方法において麦芽の形態で使用される。マッシング中、デンプンが加水分解され、発酵性糖が形成される。
【0027】
本明細書において使用される「発酵(させる)」という用語は、加熱された麦汁を少なくとも1時間、生酵母と接触させることを指す。
【0028】
本明細書において使用される「制限アルコール発酵」という用語は、加熱された麦汁の発酵であって、非アルコール性発酵麦汁を生成する発酵を指す。これは、アルコールの発酵生産を最小にする発酵条件を適用することによって達成される。これは、例えば以下の種々の方法によって行うことができる:
・短い発酵時間を、任意に低い発酵温度と組合せて用いる(例えば、「低温接触法」);
・例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)を産生することができない及び/又はマルトースを発酵することができないという理由で、多量のアルコールを産生しない酵母株を使用する;
・エタノールを消費する酵母株(例えば、サッカロマイセス・ロキシー(Saccharomyces rouxii))を含む酵母株の組合せを用いる;及び/又は
・加熱された麦汁中の発酵性糖の濃度を低下させる。
【0029】
本明細書において使用される「低温接触法」という用語は、加熱された麦汁を生酵母と4℃以下の温度で少なくとも1日間、接触させることによって、加熱された麦汁を発酵することを指す。
【0030】
本明細書において使用される「分子篩」という用語は、直径2nm以下の細孔を有する微孔性材料を指す。
【0031】
「シリケート系」という用語は、上記材料が少なくとも67重量%のシリケートを含有することを意味する。
【0032】
本明細書において使用される「ゼオライト」という用語は、微孔性アルミノシリケートを指す。本発明により使用されるゼオライトは、天然ゼオライト又は合成ゼオライトであってもよい。
【0033】
SiOを含有しAlを含有しない疎水性シリケート系分子篩は、SiOとAlのモル比が少なくとも15であるという条件を満たすことを理解されたい。
【0034】
マッシュの麦汁とビール粕とへの分離は、醸造技術において周知の方法、例えばロータリングによって行うことができる。
【0035】
麦汁の加熱は、酵素不活性化、タンパク質沈殿、アルファ酸のホップからイソアルファ酸への変換、及びジメチルスルフィド及びアルデヒドといった揮発性風味物質の散逸を含む、いくつかの目的を果たす。これを達成するために、典型的には麦汁は少なくとも10分間、少なくとも90℃、より好ましくは少なくとも95℃、最も好ましくは沸騰温度まで加熱される。より好ましくは、麦汁は、少なくとも30分間、最も好ましくは60~300分間、上記温度まで加熱される。
【0036】
本方法は、好ましくは、ホップ及び/又はホップ抽出物の添加を含む。ホップ及びホップ抽出物は、好ましくは加熱前又は加熱中に麦汁に添加される。
【0037】
加熱された麦汁の発酵前に、澱を麦汁清澄器内、例えば回転プール内において、加熱された麦汁から除去してもよい。
【0038】
本方法における、疎水性シリケート系分子篩(疎水性分子篩)と接触させる加熱された麦汁、非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールは、好ましくは、少なくとも1μg/Lのメチオナール、少なくとも1μg/Lの2-メチルブタナール、少なくとも2μg/Lの3-メチルブタナール、少なくとも1μg/Lの2-メチルプロパナール、及び/又は少なくとも4μg/Lのフェニルアセトアルデヒドを含有する。より好ましくは、加熱された麦汁、非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールは、当該接触前に、少なくとも3μg/Lのメチオナール、少なくとも3μg/Lの2-メチルブタナール、少なくとも6μg/Lの3-メチルブタナール、少なくとも3μg/Lの2-メチルプロパナール、及び/又は少なくとも12μg/Lのフェニルアセトアルデヒドを含有する。
【0039】
特に好ましい実施形態によれば、加熱された麦汁、非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールは、疎水性分子篩と接触させる前に、少なくとも2μg/Lのメチオナール、少なくとも2μg/Lの2-メチルブタナール及び少なくとも4μg/Lの3-メチルブタナールを含有する。
【0040】
加熱された麦汁、非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールと疎水性分子篩との接触は、いくつかの方法で行うことができる。疎水性分子篩の粒子を麦汁又はビールと混合して麦汁風味物質を吸着させ、続いて固液分離して吸着した麦汁風味物質を含有する粒子及び処理された麦汁又はビールを回収することができる。固液分離技術としては、濾過、遠心分離及びデカンテーションを用いることができる。
【0041】
また、麦汁又はビールの接触は、疎水性分子篩の粒子を含む層に麦汁又はビールを通過させることによって、又は疎水性分子篩を含むモノリスに麦汁又はビールを通過させることによって達成することができる。この特定の実施形態は、分離工程を必要とせず、好適な溶離剤を使用して、比較的容易に、吸着された風味物質を脱着によって回収できるという重要な利点をもたらす。
【0042】
好ましい実施形態では、疎水性分子篩は少なくとも80重量%のメタロシリケートを含有する。より好ましくは、疎水性分子篩は、アルミノシリケート、チタンシリケート、フェロシリケート、ボロシリケート及びそれらの組合せから選択されるメタロシリケートを少なくとも85重量%、特に少なくとも90重量%含有する。特に好ましい実施形態によれば、疎水性分子篩は、少なくとも50重量%、特に少なくとも80重量%のアルミノシリケートを含有する。最も好ましくは、疎水性分子篩はアルミノシリケートである。
【0043】
本発明の疎水性分子篩は、好ましくは、疎水性ゼオライト、疎水性粘土及びガラスから選択される1以上のシリケートを含む。より好ましくは、疎水性分子篩は結晶質シリケートを含む。
【0044】
特に好ましい実施形態によれば、疎水性分子篩は疎水性ゼオライトである。
【0045】
本方法において用いられる疎水性ゼオライトは、SiO/Alモル比が好ましくは少なくとも40、より好ましくは少なくとも100、更に好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも250である。
【0046】
疎水性シリケート系分子篩は、典型的には、SiOと金属酸化物とを、少なくとも40、より好ましくは少なくとも100、更に好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも250のモル比で含有する。
【0047】
疎水性ゼオライトは、好ましくは、ZMS-5型ゼオライト、Y型ゼオライト、β型ゼオライト、シリカライト、全シリカフェリエライト、モルデナイト及びそれらの組合せから選択される。より好ましくは、疎水性ゼオライトは、ZMS-5型ゼオライト、Y型ゼオライト、β型ゼオライト及びそれらの組合せから選択される。最も好ましくは、疎水性ゼオライトはZMS-5型ゼオライトである。
【0048】
疎水性分子篩の細孔径は、好ましくは0.2~1.2nm、より好ましくは0.3~1.0nm、更に好ましくは0.4~0.8nm、最も好ましくは0.45~0.70nmである。疎水性分子篩の細孔径は、77Kでの窒素吸着等温線をt-プロットで分析-DeBoer法-することによって決定することができる。
【0049】
本明細書において先に説明したように、疎水性分子篩は本方法において粒子の形態又はモノリスの形態で使用することができる。好ましくは、疎水性分子篩は粒子の形態で適用する。粒子状疎水性分子篩は、好ましくは1~2000μm、より好ましくは10~800μm、最も好ましくは100~300μmの質量加重平均粒径を有する。粒子状疎水性分子篩の粒径分布は、メッシュの大きさが異なる1組の篩を使用して決定することができる。
【0050】
疎水性分子篩の表面積は、好ましくは少なくとも100m/g、より好ましくは150~2000m/g、最も好ましくは200~1000m/gである。疎水性分子篩の表面積はBET法によって決定することができる。
【0051】
本方法の好ましい実施形態によれば、疎水性分子篩との接触は、加熱された麦汁、非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールに含まれる2-メチルブタナール及び/又は3-メチルブタナールを少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%除去する。
【0052】
本方法において、加熱された麦汁、非アルコール性発酵麦汁及び/又は非アルコール性ビールは、少なくとも10秒間、より好ましくは少なくとも20秒間、最も好ましくは30秒間、疎水性分子篩と接触させる。ここで、「接触時間」という用語は、麦汁又はビールが疎水性分子篩と直接接触している時間を指す。非アルコール性発酵麦汁又はビールを疎水性分子篩の層に通過させることによって疎水性分子篩と接触させる場合には、接触時間(すなわち、ビール又は麦汁の画分が当該層を通過するのに必要な時間)を非常に短くすることができる。しかし、疎水性分子篩を非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールに添加する場合、好適な接触時間は容易に10分を超える可能性がある。一般的には、接触時間は4時間を超えない。
【0053】
加熱された麦汁、非アルコール性発酵麦汁及び/又は非アルコール性ビールを疎水性分子篩と接触させる温度は、典型的には、0~95℃、より好ましくは2~20℃である。
【0054】
別の好ましい実施形態によれば、疎水性分子篩との接触は、加熱された麦汁、非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールに含まれるメチオナールを少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも85%除去する。
【0055】
本発明によれば、疎水性分子篩は発酵前に、加熱された麦汁に適用することができ、或いは発酵麦汁又はビールが非アルコール性であるならば、発酵後に適用することができる。
【0056】
一実施形態によれば、疎水性分子篩は発酵前に適用する。すなわち、加熱された麦汁を疎水性分子篩と接触させる。この実施形態は、発酵中に形成された望ましい風味物質が除去されることを回避するという利点をもたらす。
【0057】
別の実施形態によれば、疎水性分子篩は発酵後に適用する。好ましくは、発酵麦汁を濾過して酵母を除去し、続いて麦汁又はビールを疎水性分子篩と接触させる。
【0058】
特に好ましい実施形態によれば、本方法は、例えば制限アルコール発酵を採用することによって非アルコール性発酵麦汁を生成する発酵工程を用いる。これは、好ましくは、アルコールをほとんど又は全く生成しない酵母株を用いることによって、及び/又は酵母によるアルコール産生を最小限にする条件下で発酵を行うことによって達成される。特に好ましい実施形態によれば、発酵はアルコール生成を最小限にする条件下で行い、非アルコール性発酵麦汁を生成する。このような発酵過程の好ましい実施形態は、低温接触法である。好ましくは、本方法は、加熱された麦汁を、少なくとも1日間、より好ましくは少なくとも2日間、4℃未満、より好ましくは2℃未満の温度で、生酵母を用いて発酵させることを含む。低温接触法では、麦汁風味物質は酵母が代謝するが、その程度は限られている。従って、発酵がかすかな麦汁風味を減少させるとしても、低温接触法によって製造された非アルコール性ビールは明らかに知覚可能な、かすかな麦汁風味を有している。
【0059】
低温接触法では、発酵性糖は限られた画分のみが代謝される。従って、低温接触法によって得られる発酵麦汁は、典型的には少なくとも5.0g/Lのマルトトリオースを含有する。
【0060】
本方法は、疎水性分子篩で処理された麦汁又はビールの、以下の風味物質:メチオナール、2-メチルブタナール、3-メチルブタナール、2-メチルプロパナール、フェニルアセトアルデヒド及びフルフラールの含有量が高い場合に特に有利である。好ましくは、当該麦汁又はビールは、以下の条件を満たす:
【数2】
(ここで、
[Meth]は、メチオナール濃度(μg/L)を表し、
[2MB]は、2-メチルブタナール濃度(μg/L)を表し、
[3MB]は、3-メチルブタナール濃度(μg/L)を表し、
[2MP]は、2-メチルプロパナール濃度(μg/L)を表し、
[2PA]は、フェニルアセトアルデヒド濃度(μg/L)を表し、
[FF]はフルフラール濃度(μg/L)を表す)。
【0061】
本方法において、発酵麦汁は好適には、1以上の更なる工程に供して非アルコール性ビールを製造する。更なる工程としては、熟成及び濾過がある。
【0062】
本方法の最後に、非アルコール性ビールを密閉容器に充てんする。好適な容器の例としては、瓶、缶、樽及びタンクが挙げられる。
【0063】
本方法は、好ましくは、アルコール含有量が0.5体積%未満の非アルコール性発酵ビールを生成する。
【0064】
本方法によって製造される非アルコール性ビールは、好ましくは、4~15、好ましくは5~11EBC単位の淡色ビールである。ここで、EBCは「European Brewery Convention」を表す。EBC法は定量法であり、波長430nmの分光光度計に配置された、キュベット中のビール試料の色を測定することを含む。色を測定するための実際の式は、EBC=25×D×A430であり、
ここで、Dは試料の希釈係数であり、A430は1cmキュベットにおける430nmの吸光度である。
【0065】
本方法によって製造されるビールは、好ましくはラガーである。
【0066】
本発明の別の態様は、アルコール含有量が1.0体積%未満、より好ましくは0.5体積%未満の非アルコール性発酵ビールであって、メチオナール、2-メチルブタナール、3-メチルブタナール、2-メチルプロパナール、フェニルアセトアルデヒド並びにフルフラール、及びマルトトリオースを、以下の条件を満たす濃度で含有する非アルコール性発酵ビールに関する:
【数3】
(ここで、
[Meth]は、メチオナール濃度(μg/L)を表し、
[2MB]は、2-メチルブタナール濃度(μg/L)を表し、
[3MB]は、3-メチルブタナール濃度(μg/L)を表し、
[2MP]は、2-メチルプロパナール濃度(μg/L)を表し、
[2PA]は、フェニルアセトアルデヒド濃度(μg/L)を表し、
[FF]はフルフラール濃度(μg/L)を表し、
[Maltotriose]は、マルトトリオース濃度(g/L)を表す)。
より好ましくは、上記の比は0.35を超えず、最も好ましくは、0.03~0.30である。
【0067】
特に好ましい実施形態によれば、非アルコール性発酵ビールは、風味物質であるメチオナール、2-メチルブタナール、3-メチルブタナール、2-メチルプロパナール、フェニルアセトアルデヒド、及びフルフラールを、以下の条件を満たす濃度で含有する:
【数4】
より好ましい実施形態によれば、これらの風味物質の濃度は以下の条件を満たす:
【数5】
最も好ましくは、これらの濃度は以下の条件を満たす:
【数6】
【0068】
特に好ましい実施形態によれば、本発明による非アルコール性発酵ビールは、制限アルコール発酵を用いる方法によって製造される。低温接触法は、そのような制限アルコール発酵の好適な例である。制限アルコール発酵は、発酵中の発酵性糖の制限された代謝を特徴とする。従って、本発明の非アルコール性発酵ビールは、好ましくは少なくとも6g/L、より好ましくは少なくとも7g/L、更に好ましくは少なくとも7.5g/L、最も好ましくは8~20g/Lのマルトトリオースを含有する。
【0069】
本発明の非アルコール性ビールは、典型的には、メチオナールを20μg/L未満の濃度、より好ましくは10μg/L未満の濃度、最も好ましくは0.4~5μg/Lの濃度で含有する。
【0070】
非アルコール性ビールは、典型的には、2-メチルブタナールを8μg/L未満の濃度、より好ましくは6μg/L未満の濃度、最も好ましくは0.3~4μg/Lの濃度で含有する。
【0071】
非アルコール性ビールは、典型的には、3-メチルブタナールを25μg/L未満の濃度、より好ましくは15μg/L未満の濃度、最も好ましくは1~10μg/Lの濃度で含有する。
【0072】
非アルコール性ビールは、典型的には、フェニルアセトアルデヒドを20μg/L未満の濃度、より好ましくは12μg/L未満の濃度、最も好ましくは1~9μg/Lの濃度で含有する。
【0073】
非アルコール性ビールのフルフラール含有量は、典型的には、50μg/L未満、より好ましくは20μg/L未満、最も好ましくは0.2~10μg/Lである。
【0074】
本発明による非アルコール性ビールは、典型的には、メチオニンを少なくとも2mg/L、より好ましくは少なくとも3mg/L、最も好ましくは5~15mg/Lの濃度で含有する。
【0075】
好ましい実施形態では、非アルコール性ビールは、メチオナールを20μg/L未満の濃度、2-メチルブタナールを8μg/L未満の濃度、3-メチルブタナールを25μg/L未満の濃度、2-メチルプロパナールを15μg/L未満の濃度、及びフェニルアセトアルデヒドを20μg/L未満の濃度で含有する。
【0076】
別の好ましい実施形態によれば、非アルコール性ビールは、メチオナール及びメチオニンを0.8(μg/mg)未満、より好ましくは0.5(μg/mg)未満、最も好ましくは0.3(μg/mg)未満の重量比で含有する。
【0077】
イソアルファ酸は疎水性分子篩の細孔に入ることができないので、疎水性分子篩による処理はイソアルファ酸の濃度にわずかな影響しか与えない。この点で、分子篩は他の疎水性吸着剤、例えば活性炭とは異なる挙動を示す。典型的には、非アルコール性ビールは、少なくとも1.0mg/Lのイソアルファ酸、より好ましくは少なくとも1.5mg/L、最も好ましくは2.0~80mg/Lのイソアルファ酸を含有し、当該イソアルファ酸は、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロン、これらのイソアルファ酸の還元型及びこれらの組合せから選択される。イソアルファ酸の還元型は、テトラヒドロイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸である。
【0078】
本明細書において先に説明したように、本発明の非アルコール性ビールは、好ましくは4~15、より好ましくは5~11EBC単位の淡色ビールである。
【0079】
特に好ましい実施形態によれば、非アルコール性ビールは非アルコール性ラガーである。
【0080】
本発明のビールは、好ましくは、本明細書において上記した方法によって得られる。
【0081】
本発明を以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例
【0082】
実施例1
多くの市販のシリケート系分子篩(8種のゼオライト及びチタンシリケート)について、メチオナール、2-メチルブタナール及び3-メチルブタナールを選択的に吸収する能力を調べた。これらの分子篩の特性を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
9つの分子篩について、分子篩の乾燥重量1g当たり100gの麦汁の相比で、ホップで香り付けした麦汁を用いてバッチ取り込み実験を行った。
【0085】
アルデヒドを、Vesely et al. (Analysis of Aldehydes in Beer Using Solid-Phase Microextraction with On-Fiber Derivatization and Gas Chromatography/Mass Spectrometry, Journal of Agricultural and Food Chemistry, (2003); 51(24),6941-6944.)に記載の方法を用いて、ヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS-SPME)によって、GC-MS(Agilent 7890A及び5975C MSD)及び30m×0.25mm×0.25μm VF17MSカラムにおいて分析した。誘導体化反応を、O-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル)-ヒドロキシルアミン(PFBOA)を用いて行った。キャリアガスとして、ヘリウムを1mL/minの流速で使用した。
【0086】
結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
実施例2
アルコールを含まない3つの市販のビール(ビールA~C)を、ビール100g当たり1gのゼオライトを用いて、本発明に従って疎水性シリケート系分子篩(Zeolyst International製のゼオライトCBV28014及びACS Materials製のゼオライトZSM-5P-360)で処理した。
【0089】
表3a~3cは、処理前後のそれぞれの試験ビールのストレッカーアルデヒド及びマルトトリオースの濃度を示す(CB1=ゼオライトCBV28014、ZS1=ゼオライトZSM-5P-360)。
【0090】
【表3a】
【表3b】
【表3c】
【0091】
実施例3
アルコールを含まない別のラガービールを低温接触法により製造した。このビールを、ACS Materials製の粒状ゼオライトZSM-5G-360を充てんしたカラムに通過させることによって処理した。粒子を粉砕し、ふるいにかけて、直径50~500μmの粒子を選択した。内径1cm及び長さ2.7cmのカラムに、ふるい分けした粒子のスラッジ(1.524gの乾燥ゼオライト)をフローパッキングによって充てんし、20体積%のエタノール中に貯蔵した。次に、これをAkta explorer 10(GE Healthcare)システムに接続し、UVシグナルが安定するまでMilli-Q水で調整した。次いで、滅菌濾過したビールを流速2mL/分でカラムに通過させ、自動フラクションコレクターシステムで10mLの画分毎に回収し、直ちに凍結した。この工程は、一定の常温及び最大圧力降下40barで行った。最初の3つの画分を廃棄し、画分4(30~40mL)及び5(40~50mL)を合わせ、分析のために試料を採取した。
【0092】
表4は、処理前後のストレッカーアルデヒド及びマルトトリオースの濃度を示す。
【0093】
【表4】
【国際調査報告】