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特表2022-508435生体適合性マイクロスイマーの作製方法、マイクロスイマー、およびそのようなマイクロスイマーの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】生体適合性マイクロスイマーの作製方法、マイクロスイマー、およびそのようなマイクロスイマーの使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/52 20170101AFI20220112BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220112BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220112BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220112BHJP
【FI】
A61K47/52
A61K47/30
A61K45/00
A61P35/00
A61K47/02
A61K31/704
A61K47/36
B33Y10/00
B33Y80/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537477
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(85)【翻訳文提出日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2018074311
(87)【国際公開番号】W WO2020052728
(87)【国際公開日】2020-03-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512247223
【氏名又は名称】マツクス-プランク-ゲゼルシヤフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシヤフテン エー フアウ
【氏名又は名称原語表記】MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FOeRDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
【住所又は居所原語表記】Hofgartenstrasse 8,80539 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(71)【出願人】
【識別番号】521094894
【氏名又は名称】コチ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シッティ,メティン
(72)【発明者】
【氏名】セイラン,ハカン
(72)【発明者】
【氏名】ヤサ,オンケイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤサ,イミハン セレン
(72)【発明者】
【氏名】キジレル,セダ
(72)【発明者】
【氏名】ボズユック,ウグル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076DD21
4C076DD29
4C076EE01
4C076EE37
4C076EE59
4C076FF32
4C076FF68
4C084AA17
4C084NA13
4C084ZB262
4C084ZC782
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、生体適合性マイクロスイマーを作製する方法であって、光架橋性バイオポリマー溶液を提供するステップと、磁性粒子および光開始剤を光架橋性バイオポリマー溶液に添加して、3D印刷可能な溶液を形成するステップと、3D印刷可能な溶液に方向付けられた可変焦点でレーザーを適用するステップと、3D印刷可能な溶液を通してレーザーの焦点を変動させ、所定の形状の生体適合性マイクロスイマーを形成するステップと、所定の形状を有する生体適合性マイクロスイマーに化学リンカーを適用するステップと、を含む、方法に関する。本発明はさらに、そのようなマイクロスイマーおよびそのようなマイクロスイマーを使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-光架橋性バイオポリマー溶液(12)を提供するステップと、
-磁性粒子および光開始剤を前記光架橋性バイオポリマー溶液に添加して、3D印刷可能な溶液(14)を形成するステップと、
-前記3D印刷可能な溶液(14)に方向付けした可変焦点でレーザー(18)を適用するステップと、
-前記3D印刷可能な溶液(14)を通して前記レーザー(18)の焦点を変動させ、所定の形状の前記生体適合性マイクロスイマー(10)を形成するステップと、
-所定の形状を有する前記生体適合性マイクロスイマー(10)に化学リンカー(26)を適用するステップと、を含む、
生体適合性マイクロスイマー(10)を作製する方法。
【請求項2】
前記化学リンカー(26)が、前記生体適合性マイクロスイマー(10)と前記マイクロスイマー(10)に付着可能であり、かつそれによって輸送可能であるカーゴ(24)との間にリンクを形成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学リンカー(26)を介して前記生体適合性マイクロスイマー(10)にカーゴ(24)を付着させるステップをさらに含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記カーゴ(24)が、酵素、分子、薬物、タンパク質、遺伝物質、ナノ粒子、治療または診断目的のための放射性種子、および前述の組み合わせからなる要素の群から選択される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロスイマー(10)と前記カーゴ(24)との間のリンクを、刺激の存在下で放出することができるように、前記化学リンカー(26)が選択される、
請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記化学リンカー(26)が、光開裂性リンカー、好ましくはNHSおよびアルキン修飾o-ニトロネジル誘導体である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記化学リンカー(26)が、酵素的に開裂可能なリンカー、例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ認識ペプチド配列のうちの1つであるか、または前記化学リンカー(26)が、熱的に開裂可能なリンカーである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光架橋性バイオポリマー溶液(12)が、生物活性、生分解性、および生体適合性ポリマー、例えば、キトサン、ゼラチン、アルギン酸塩、ポリペプチド、核酸、多糖、および前述の組み合わせ、好ましくはキトサン、を含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記磁性粒子が、5nm~200nm、特に5~200nm、好ましくは40~60nmの範囲で選択されるサイズを有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記磁性粒子が、酸化鉄粒子、鉄白金粒子、ネオジム鉄ホウ素粒子、アルミニウムニッケルコバルト粒子、鉄粒子、コバルト粒子、サマリウムコバルト粒子、好ましくは酸化鉄粒子からなる要素の群から選択される、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記光開始剤が、2光子吸収時に半分に分裂し、かつ前記光架橋を開始するラジカルを生成する分子であり、前記光開始剤が、例えば、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記カーゴ(24)が、刺激の適用、例えば、光の適用時に、または所定量の特定の酵素の近くで、前記マイクロスイマー(10)から放出可能である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記レーザー(18)を適用するステップ中に前記3D印刷可能な溶液(14)内で前記磁性粒子を整列させるために、磁場強度が選択された磁場(B)を適用するステップ、をさらに含む、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロスイマー(10)が、らせん状または二重らせん状の構造などの回転磁場の存在下で、時間に依存して非対称に移動するように構成された形状を有する、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記マイクロスイマー(10)が、細長い形状を有し、長さ対幅の比が、2:1~10:1の範囲で選択される、
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記マイクロスイマー(10)の少なくとも1つの寸法が、0.0001~1mmの範囲で選択される、
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を使用して作製され、前記マイクロスイマー(10)が、光架橋性バイオポリマー溶液(12)、磁性粒子、および光開始剤を含む3D印刷可能な溶液(14)で形成された本体部分(10’)を備え、
前記マイクロスイマー(10)の前記本体部分(10’)が、らせん状または二重らせん状の構造などの回転磁場の存在下で、時間に依存して非対称に移動するように構成された形状を有し、前記本体部分(10’)が、化学リンカー(26)でコーティングされる、
生体適合性マイクロスイマー(10)。
【請求項18】
前記マイクロスイマー(10)の前記本体部分(10’)が、細長い形状を有し、長さ対幅の比が、2:1~10:1の範囲で選択される、
請求項17に記載の生体適合性マイクロスイマー(10)。
【請求項19】
前記マイクロスイマー(10)の少なくとも1つの寸法が、0.0001~1mmの範囲で選択される、
請求項17または請求項18に記載の生体適合性マイクロスイマー(10)。
【請求項20】
前記マイクロスイマー(10)が、0.1未満のレイノルズ数で移動するように構成される、
請求項17~19のいずれか一項に記載の生体適合性マイクロスイマー(10)。
【請求項21】
前記マイクロスイマー(10)が、その主軸に垂直な方向に磁化される、
請求項17~20のいずれか一項に記載の生体適合性マイクロスイマー(10)。
【請求項22】
1.5μg/mlのリゾチーム濃度で、前記マイクロスイマー(10)の長さが、初期の長さの最大で70%の長さに分解し、かつ前記マイクロスイマー(10)の直径が、210時間の期間内に、前記マイクロスイマー(10)の初期の直径の最大で50%の直径に分解する、
請求項17~21のいずれか一項に記載の生体適合性マイクロスイマー(10)。
【請求項23】
請求項17~22のいずれか一項に従って、かつ/または請求項1~16のいずれか一項に従って作製され、カーゴ(24)を充填されている1つのマイクロスイマー(10)を使用する方法であって、
-前記所望の標的領域に関連付けられた領域に前記マイクロスイマー(10)を提供するステップと、
-時間可変磁場を用いて前記マイクロスイマー(10)を前記所望の標的領域に方向付けするステップと、
-前記所望の標的領域で前記マイクロスイマー(10)を刺激して、前記カーゴ(24)を放出するステップと、を含む、
マイクロスイマー(10)を使用する方法。
【請求項24】
方向付けするステップが、1Hz~50Hzの範囲で選択された周波数で5mT~50mTの範囲の磁場強度を有する回転磁場の適用を含む、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記カーゴ(24)を放出するために前記所望の標的領域で前記マイクロスイマー(10)を刺激するステップが、前記標的領域に光刺激を適用することによって行われる、
請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記マイクロスイマー(10)の前記所望の標的領域への経路を追跡するために、前記マイクロスイマー(10)を方向付けするステップが、例えば、MRIを使用して、画像マッピングと併せて実施される、
請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性マイクロスイマーを作製する方法に関する。本発明はさらに、そのようなマイクロスイマーおよびそのようなマイクロスイマーを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外部磁場を動力源とする微視的なスイマーは、それらのワイヤレス作動、能動的な移動、および正確な位置特定能力により、医療用途で大きな可能性を秘めている。それらの小さいサイズおよび束縛されない制御は、深い組織浸透を可能にすることができ、したがって、低侵襲手術および治療に革命をもたらすことができる。これまで、外部電源を使用して作動する合成磁気マイクロスイマーは、標的化されたカーゴ送達、オブジェクト/細胞の操作、および組織工学用途のために、異なるプラットフォームで使用されてきた。特に、らせん状磁気マイクロスイマーは、マイクロスケール作動のための磁気勾配引きに対する磁気トルクの効率のために最近関心を集めている。
【0003】
外部回転磁場を用いて低レイノルズ数領域で動作するらせん状マイクロスイマーは、以前は、らせん状に曲がった銅線の先端に組み込まれた小さな磁石を使用してミリメートルスケールで設計されていた。次いで、自己スクロールおよび視射角堆積を含む異なる製作技術を利用して、ミクロンスケールでらせん状磁気スイマーを製作した。その後、二光子直接レーザー書き込み(TDLW)技術の進歩により、より複雑なポリマー微細構造の3次元(3D)製作が実現し、用途の広い化学部分を使用してそれらの局所的な3Dパターニングが容易になり、生体適合性の超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)をマイクロスイマーに埋め込む可能性が提供された。これまで、異なる感光性材料がTDLW技術で使用され、らせん状マイクロスイマーが製作されてきた。最初に、薬物を充填したリポソームで機能化されたらせん状マイクロスイマーを利用して、インビトロで単一細胞の薬物送達を実行した。
【0004】
この分野での最近の開発にもかかわらず、らせん状磁気マイクロスイマーは、それらの潜在的な医療用途に不可欠である生理学的に関連する生分解および制御された局所カーゴ放出能力を有するように、依然として強化する必要がある。
【0005】
無毒の分解生成物を形成することによる、既知の期間における体内で投与されたマイクロスイマーの生分解は、医療用途の重要な側面である。最近、水酸化ナトリウムベースの加水分解反応による、PEG-DA/PE-TAとSPIONとの様々な比率で構成されたらせん状マイクロスイマーの分解が実証された。しかしながら、マイクロスイマーの分解のために1M NaOH溶液を使用することは、問題となる可能性があるため、新しい自然の生理学的に関連する分解メカニズムのマイクロスイマーへの統合は、将来の医療用途に不可欠である。
【0006】
加えて、能動的なマイクロスイマーによる疾患部位での濃縮された治療薬の制御放出は、全体的な治療効率を高めることができる。らせん状マイクロスイマーは、回転磁場を使用して、作用部位への治療薬の能動的な送達の問題を克服する。
【0007】
しかしながら、治療薬の制御放出は、依然として問題であり、マイクロスイマーベースの薬物送達システムで対処する必要がある。遠隔トリガーシステムは、所望の時間に所望の部位への治療薬の放出を促進するために常に魅力的であった。
【0008】
このため、本発明の目的は、いかなる毒性分解生成物でもなく、かつそれを形成しない生分解性マイクロスイマーを利用可能にして、マイクロスイマーを幅広い医療用途で容易に使用できるようにすることである。本発明のさらなる目的は、マイクロスイマーを利用可能にし、それによってカーゴ材料の制御された能動的放出が可能であり、カーゴ材料のオンデマンドで正確かつ効果的な送達を確実にすることである。本発明のさらに別の目的は、標的領域を取り巻く組織に過度の害を及ぼすことなく、所望の標的領域に誘導することができるマイクロスイマーを利用可能にすることである。
【0009】
この目的は、請求項1に記載の生体適合性マイクロスイマーを作製する方法によって満たされる。本発明のさらなる利点および有利な実施形態は、従属請求項、説明、および添付の図面から明らかになるであろう。
【0010】
そのような方法は、
-光架橋性バイオポリマー溶液を提供するステップと、
-磁性粒子および光開始剤を光架橋性バイオポリマー溶液に添加して、3D印刷可能な溶液を形成するステップと、
-3D印刷可能な溶液に方向付けられた可変焦点でレーザーを適用するステップと、
-3D印刷可能な溶液を通してレーザーの焦点を変動させ、所定の形状の生体適合性マイクロスイマーを形成するステップと、
-所定の形状を有する生体適合性マイクロスイマーに化学リンカーを適用するステップと、を含み得る。
【0011】
光架橋性バイオポリマー溶液でマイクロスイマーを形成することにより、マイクロスイマーは、3D印刷技術を使用して迅速かつ効率的な方法で作製することができる。
【0012】
そのような3D印刷技術は、マイクロスイマーの形成を可能にし、マイクロスイマーは、マイクロスイマーの少なくとも1つの寸法が0.0001~1mmの範囲で選択される構成要素として定義される。
【0013】
さらに、バイオポリマー溶液を使用してマイクロスイマーを形成すると、マイクロスイマーは、それら自体もそれらの分解生成物も、生活環境内で毒性応答を形成しないように形成することができる。これは、胃腸管に直接接続されていない体の部分でそのような磁気マイクロスイマーを使用する可能性を利用できるようにする。
【0014】
さらに、マイクロスイマーでの化学リンカーの提供は、異なる化学物質および他の材料を簡単にマイクロスイマーに付着させることができ、それにより、カーゴ材料を所望の標的領域に輸送することができるマイクロスイマーを利用可能にすることを意味する。
【0015】
マイクロスイマー内に存在する磁性粒子を使用することにより、カーゴ材料を、制御されかつ標的化された方法で所望の標的領域に送達することができ、それにより、カーゴ材料の標的領域へのオンデマンドで正確かつ効果的な送達を確実にする。
【0016】
化学リンカーは、生体適合性マイクロスイマーと、マイクロスイマーに付着可能であり、かつマイクロスイマーによって輸送可能であるカーゴとの間のリンクを形成し得る。このようにして、カーゴは、マイクロスイマーに化学的に結合され得る。
【0017】
この方法は、化学リンカーを介して生体適合性マイクロスイマーにカーゴを付着させるステップをさらに含み得る。したがって、カーゴ材料は、マイクロスイマーに化学的に結合することができ、それによって、例えば、マイクロスイマーの表面上に存在して、所望の標的領域でカーゴ材料の効率的な放出を可能にする。
【0018】
化学リンカーは、好ましくは、マイクロスイマーとカーゴとの間のリンクを刺激の存在下で放出できるように選択される。このようにして、マイクロスイマーが形成され、それによってカーゴ材料の制御された能動的放出が可能であり、カーゴ材料のオンデマンドで正確かつ効果的な送達を確実にする。
【0019】
これに関連して、カーゴは、酵素、分子、薬物、タンパク質、遺伝物質、ナノ粒子、治療または診断目的のための放射性種子、および前述の組み合わせからなる要素の群から選択され得ることに留意されたい。
【0020】
化学リンカーは、光開裂性リンカー、好ましくはNHSおよびアルキン修飾o-ニトロネジル誘導体であり得る。光開裂性リンカーを使用することにより、カーゴ材料を、例えばレーザー光、例えば赤外線または紫外線レーザー光によって、マイクロスイマーから放出することができる。
【0021】
これに関連して、化学リンカーは、酵素的に開裂可能なリンカー、例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ認識ペプチド配列のうちの1つであり得ることに留意されたい。このようにして、特定の酵素、例えば癌性組織に存在する酵素の存在下で、カーゴ材料をマイクロスイマーから放出することができ、すなわち、刺激は、特定のレベルの特定の酵素によって提供される。
【0022】
さらに、化学リンカーは、熱の影響下でカーゴ材料を放出するように構成された熱的に開裂可能なリンカーであり得る、すなわち、刺激は、特定の範囲内の温度の適用によって提供されることに留意されたい。
【0023】
光架橋性バイオポリマー溶液は、生物活性、生分解性、および生体適合性ポリマー、例えば、キトサン、ゼラチン、アルギン酸塩、ポリペプチド、核酸、多糖類、および前述の組み合わせ、好ましくはキトサンを含む溶液であり得る。このようにして、マイクロスイマーが導入され得るホスト内で毒性反応を形成しない、大量かつ比較的安価な材料から容易に形成することができるマイクロスイマーが利用可能になる。
【0024】
これに関連して、生分解性という用語は、生体適合性マイクロスイマーが、酵素活性によって、かつ取り巻く組織に損傷を与えることなく、生体内で経時的に分解することを意味することに留意されたい。これは、水酸化ナトリウムベースの加水分解反応によって分解される従来技術から既知のマイクロスイマーには当てはまらない。そのような反応は、有毒な副産物を形成するため、人体または動物の体内の組織に深刻な害を及ぼす。
【0025】
さらに、磁性粒子は、レーザーの適用時にマイクロスイマーを形成する前に、光架橋性バイオポリマー溶液中に均一に懸濁されるコロイド粒子であることに留意されたい。
【0026】
磁性粒子は、5nm~200nm、特に5~100nm、好ましくは40~60nmの範囲で選択されるサイズを有する。このようにして、磁性粒子の均一な分散を可能にする3D印刷可能な溶液を利用可能にすることができる。マイクロスイマー内に存在し、かつ変化する磁場強度に供されるサイズが200nmを超える磁性粒子または磁性粒子の凝集体は、誤ってマイクロスイマーを所望の経路から逸脱させ、したがってマイクロスイマーの操舵能力を低下させる可能性がある。さらに、サイズが200nmを超える磁性粒子または磁性粒子の凝集体は、TDLW印刷技術と互換性がなくなる。したがって、構造の忠実度は、低くなる。
【0027】
磁性粒子は、酸化鉄粒子、鉄白金粒子、ネオジム鉄ホウ素粒子、アルミニウムニッケルコバルト粒子、鉄粒子、コバルト粒子、サマリウムコバルト粒子からなる要素の群から選択され得る。この材料は、生体適合性があり、かつ宿主内で無毒であることが既知なので、好ましくは酸化鉄粒子が使用される。
【0028】
光開始剤は、2光子吸収時に半分に分裂し、光架橋を開始するラジカルを生成する分子であり、光開始剤は、例えば、LAPである。2光子吸収を使用して反応する光開始剤を使用することにより、サイズが、例えば1~1000μmの範囲の長さおよび例えば、0.1~100μmの範囲の幅の3Dマイクロスイマーを形成することが可能である。
【0029】
これに関連して、光開始剤は、理想的には水溶性であることに留意されたい。3Dプリンターで使用できるようにするには、光開始剤が3Dプリンターの波長の光子を吸収して、ラジカルを生成し、その結果、所望の形状のマイクロスイマーを形成できる必要がある。この目的のために、光開始剤が2光子吸収を伴うラジカル生成を可能にする2光子断面を有することが理想的である。
【0030】
カーゴは、刺激の適用、例えば光の適用時に、または宿主内の病的状態のために所定量の特定の酵素の近くで、例えば特定の癌性細胞の近くの存在下で、マイクロスイマーから放出可能であることが好ましい。
【0031】
この方法は、レーザーを適用するステップ中に3D印刷可能な溶液内で磁性粒子を整列させるために、磁場強度が5~30mTの範囲で選択される磁場を適用するステップをさらに含み得る。このようにして、マイクロスイマーの磁気配向を事前に定義することができる。
【0032】
マイクロスイマーは、らせん状または二重らせん状の構造などの回転磁場の存在下で、時間に依存して非対称に移動するように構成された形状を有し得る。そのようにマイクロスイマーを形成することにより、マイクロスイマーをより正確に操縦および移動させることが可能になる。
【0033】
マイクロスイマーは、細長い形状を有し得、長さ対幅の比は、2:1~10:1の範囲で選択される。そのような形状は、回転磁場を使用して有利な方法で移動することができ、マイクロスイマーで所望の量のカーゴを輸送することが可能になる。
【0034】
さらなる態様によれば、本発明はさらに、特に本明細書で論じられる方法を使用して作製された生体適合性マイクロスイマーであって、マイクロスイマーが、光架橋性バイオポリマー溶液、磁性粒子、および光開始剤を含む3D印刷可能な溶液で形成された本体部分を備え、マイクロスイマーの本体部分が、らせん状または二重らせん状の構造などの回転磁場の存在下で、時間に依存して非対称に移動するように構成された形状を有し、本体部分が、化学リンカーでコーティングされる、生体適合性マイクロスイマーに関する。
【0035】
マイクロスイマーは、理想的には、前述の作製方法に従ってさらに開発することができ、それにより、マイクロスイマーは、作製方法に関連して説明した結果として得られる利点を有することができる。
【0036】
したがって、マイクロスイマーは、ある部位で製造された後、別の部位に出荷され、次いで、そこでカーゴを充填することができる。例えば、カーゴ材料が放射性造影剤である場合、マイクロスイマーが、例えば、カーゴ材料とともに放射線検査室への出荷時にまだ充填されていないが、放射性材料が崩壊して、したがって不活性になるのを防ぐためにそれを使用する直前にのみ充填する場合に、それは有益である。
【0037】
マイクロスイマーは、宿主内で簡単に分解し、この分解中に害を及ぼす可能性のあるいかなる毒性反応物も形成しないため、生分解性マイクロスイマーを提供することで、以前に必要だった回収ステップを排除することが可能になる。
【0038】
マイクロスイマーの本体部分は、細長い形状を有し得、長さ対幅の比は、2:1~10:1の範囲で選択される。これに関連して、マイクロスイマーの少なくとも1つの寸法は、0.0001~1mmの範囲で選択され得ることに留意されたい。
【0039】
有利なことに、マイクロスイマーは、レイノルズ数が0.1未満で移動するように構成され得る。これにより、マイクロスイマーは、制御された方法でホスト内で移動できるようになる。
【0040】
マイクロスイマーは、その主軸に垂直な方向、すなわちその細長い範囲に垂直な方向に磁化し得る。これにより、マイクロスイマーの磁気配向を事前定義することが可能になる。
【0041】
マイクロスイマーは、リゾチーム濃度が1.5μg/mlの溶液中で210時間以内に、マイクロスイマーの長さが、初期の長さの最大で70%、好ましくは最大で65%の長さに分解し、かつマイクロスイマーの直径が、マイクロスイマーの初期の直径の最大で50%、好ましくは最大で45%の直径に分解するように、分解するように構成され得る。これは、マイクロスイマーの生体適合性をさらに示している。
【0042】
さらなる態様によれば、本発明は、前述のように、カーゴ材料が充填された1つのマイクロスイマーを使用する方法に関する。この方法は、
-所望の標的領域に関連付けられた領域にマイクロスイマーを提供するステップと、
-時間可変磁場を用いてマイクロスイマーを所望の標的領域に方向付けするステップと、
-所望の標的領域でマイクロスイマーを刺激して、カーゴを放出するステップと、を含む。
【0043】
このようにして、作用部位での治療薬、すなわちカーゴ材料の濃度を、従来技術のシステムと比較して、制御しかつ増加させることができる。さらに、従来技術と比較して、遠隔トリガーシステムを使用して、全体的な注入用量を減らすことができる。例えば、光刺激を提供することにより、特に実用的な光トリガー放出が利用可能になる。他のトリガーまたは刺激メカニズムには、それらの時空間精度が高いため、pH、温度、超音波、および磁場が含まれ得る。
【0044】
紫外線(UV)光トリガー放出システムを使用すると、UV光の組織浸透深度が不十分なため、人体または動物の体内の特定の場所から皮膚に近いそれらの領域への潜在的な医療用途の数が制限される。しかしながら、光アップコンバージョンプロセスでは、低エネルギーの光子(例えば、より深い侵入深さを有する近赤外光)が、体内で高エネルギーの光子(例えば、UV光)に変換され得る。そのようなシステムは、UV光を使用して浸透することができない人体または動物の体の領域におけるマイクロスイマーの刺激を可能にするために利用され得、それにより、体の異なる部分における可能な医療用途の数を増加させる。
【0045】
方向付けするステップは、1Hz~50Hzの範囲で選択された周波数で、5mT~50mTの範囲の回転磁場強度の適用を含み得る。人体および/または動物の体内での磁場の使用ならびにそれらの周囲の磁場の使用は、既知のいかなる副作用もなしに有益な方法で行うことができる。
【0046】
カーゴを放出するために所望の標的領域でマイクロスイマーを刺激するステップは、標的領域に光刺激を適用することによって行われる。光刺激の適用は、所望の標的領域でのカーゴ材料の標的化放出のための効率的なトリガーメカニズムをもたらすことが見出された。
【0047】
マイクロスイマーを方向付けするステップは、マイクロスイマーの所望の標的領域への経路を追跡するために、例えばMRIを使用して、画像マッピングと併せて実施され得る。これは、マイクロスイマーの現在の位置のフィードバックを有利に可能にし、また、カーゴの放出のより正確な標的化刺激を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明は、以下に示されている図面を参照しながら、実施形態により以下に詳細に説明される。
【0049】
図1A-C】合成および製作プロセスならびにその結果得られるマイクロスイマーの概要を示す図であり、A)光架橋性溶液の合成の詳細であり、B)二光子直接レーザー書き込み技術を使用したマイクロスイマーの3D印刷を示し、C)マイクロスイマーの3D印刷された3x3アレイの光学顕微鏡画像を示す。
図2A-B】回転磁場を使用したマイクロスイマーの作動および操舵能力を示す図であり、図2A)磁気励起周波数の関数としてのマイクロスイマーの前進速度を示し、図2B)ωの点線で示されている4.5Hzの10mTの回転磁場の適用時のマイクロスイマーの制御された水泳軌道スナップショット(破線)を示す。
図3A-E】リゾチームを使用したマイクロスイマーの酵素分解を示す図であり、図3A)15μg・mL-1のリゾチームで処理したマイクロスイマーの光学顕微鏡画像を示し、図3Aiは、時間t=0hであり、図3Aiiは、時間t=204hであり、表面腐食に基づく分解メカニズムを明らかにし、図3B)異なるリゾチーム濃度に合わせたマイクロスイマーの長さの変化を示し、図3C)異なるリゾチーム濃度に合わせたマイクロスイマーの直径の変化を示し、図3D)SKBR3乳癌細胞の死染色を示し、図3Diは、未処理を示し、図3Diiは、マイクロスイマーの分解生成物で1日間処理されたそれらの細胞を示し、白抜きの点は、生細胞を表し、実線の点は、死細胞を表し、図3E)分解生成物で処理されたSKBR3乳癌細胞の生存率の定量化を示す。
図4A-D】マイクロスイマーからの光トリガー薬物放出のプロセスを示す図であり、図4Aは、DOX修飾マイクロスイマーを得るための概略的な反応経路を示し、マイクロスイマー上のアミノ基は、o-ニトロベンジル光開裂性化学リンカー分子のNHS基と反応し、マイクロスイマーのアルキン末端との以下のアジド修飾DOX反応であり、図4Bは、i)時間t=0分および図4Bii時間t=30分で30mWの光強度に曝露されたマイクロスイマーからのDOX放出、ならびにマイクロスイマーからのDOXの開裂およびその放出を示す蛍光強度の減少を示し、図4C)3mW(丸い点)および30mW(四角い点)の光強度に対するマイクロスイマーからの累積DOX放出を示し、図4D)マイクロスイマーからのDOXのスマートな投薬を示し、t=0~1分およびt=6~7分の実線のバーは、365nmの波長のレーザーの適用およびマイクロスイマーから毎分約15%のDOXが放出されたことを示している。
図5】2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)アッセイを使用したメタクリル化度の決定を示す図である。
図6】マイクロスイマーの2光子ベースの3D印刷に利用されたマイクロチャネル設定の写真を示す図である。
図7A-B】15keVで10分間実行されたマイクロスイマーのエネルギー分散型X線分光法元素マッピングを示す図であり、図7Bは、マイクロスイマー内の炭素原子の存在を示している。
図8i-iv】ωで示される10mTの回転磁場下の5Hzで泳いだマイクロスイマーの図2Bと同様の制御された水泳軌道スナップショット(点線)を示す図である。
図9A-B】薬物分子のマイクロスイマーへの化学的統合を示す図である。A)o-ニトロベンジルリンカー修飾されていないマイクロスイマーは、薬物分子(アジド-DOX)で直接処理した。B)o-ニトロベンジルリンカー修飾されたマイクロスイマーは、薬物分子(アジド-DOX)で処理した。画像は、同じ蛍光強度および曝露時間でキャプチャし、マイクロスイマーへのアジド-DOXの制御された統合を表している。
図10A-C】制御放出実験前の薬物分子の光退色試験を示す図であり、図10A)陰性群(o-ニトロベンジルリンカー修飾されていないマイクロスイマー)への30分間の470nm波長の光励起を示し、10B)陰性群への30分間の3mW 365nm波長の露光を示し、図10C)陰性群への30分間の30mW 365nm波長の露光を示す。
図11A-B】マイクロスイマーからの制御されたかつ局所的な薬物放出を示す画像であり、図11A)マイクロスイマーに焦点を合わせた365nm波長の露光(左の列)、露光時の薬物分子の制御放出(中央の列)を示し、一方、残りの群(右の列)は、依然として統合された薬物分子を有し、図11B)マイクロスイマー本体の半分からの正確かつ制御された薬物放出を示している。
【0050】
以下、同じまたは同様の機能を有する特徴について、同じ参照番号を使用して以下で説明する。一実施形態で使用される参照番号に関して与えられた説明は、何か反対のことが述べられていない限り、他の実施形態に関連して同じ参照番号にも適用されることも理解される。
【0051】
図1A~Cは、生体適合性マイクロスイマー10を作製するプロセスおよび結果として得られるマイクロスイマー10の概要を示している。この方法は、容器中に光架橋性バイオポリマー溶液12を提供するステップと、磁性粒子および光開始剤(両方とも図示せず)を光架橋性バイオポリマー溶液に添加して、3D印刷可能な溶液14を形成するステップと、を含む。
【0052】
図1Aの実施例における3D印刷可能な溶液14は、ddHOを含有する8%(v/v)酢酸で調製することにより形成され、30mg・mL-1のChMA、20mg・mL-1のフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)光開始剤、および5mg・mL-1のPEG/アミン官能化された50nmの生体適合性超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)から構成される。続いて、この溶液を15時間撹拌および超音波処理する。
【0053】
キトサンは、世界で2番目に豊富な天然ポリマーであるキチンから得られる線状のカチオン性ポリマーである。キトサンは、生体適合性、生分解性、生体接着性、ならびに抗菌、抗腫瘍および抗酸化作用などのその固有の特性により、医療用途に理想的なポリマーとなる。
【0054】
これに関連して、光架橋性バイオポリマー溶液12は、生物活性、生分解性、および生体適合性ポリマー、例えば、キトサン、ゼラチン、アルギン酸塩、ポリペプチド、核酸、多糖類、および前述の組み合わせを含み、かつ前述に示されるような溶液であり、好ましい選定は、キトサンであることに留意されたい。
【0055】
キトサンのような感光性のないポリマーは、その多糖骨格を変化させることなく残しながら化学的に修飾することができる。このため、キトサンの感光性形態であるメタクリルアミドキトサン(ChMA)を最初に調製した。これは、ポリマーのアミノ基を無水メタクリル酸と反応させることによって実行した。キトサンのアミノ基を、一定の反応時間で無水メタクリル酸/キトサン比に従って感光性のメタクリルアミド基に変換させた(図1A)。
【0056】
次いで、新しく形成されたポリマー鎖は、光開始剤の存在下で互いに架橋される能力、および約350nm波長の波長を有するUV光を有する。
【0057】
これに関連して、光開始剤は、2光子吸収時に半分に分裂し、光架橋を開始するラジカルを生成する分子であり、例えば、光開始剤は、前述のLAPであることに留意されたい。光架橋能力は、3D印刷可能な溶液14から固体マイクロスイマー10を形成するために必要とされる。
【0058】
3Dポリマー溶液14の合成後、ChMA高分子のメタクリル化度を2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)アッセイを使用して決定した。この試験の結果は、図5に関連して論じられる。TNBSは、遊離アミノ基を決定するために使用される分光光度試薬である。無水メタクリル酸/キトサン比は、一定の反応時間で変化し、アッセイは、無水メタクリル酸/キトサン比の増加とともにアミノ基が消費されたことを実証した。
【0059】
印刷時間を促進するために、70%のメタクリル化度を有するメタクリルアミドキトサン高分子を3D印刷用に選択した。このChMA高分子では、約70%の感光性メタクリルアミド基で構成された骨格を製作手順に選択した。
【0060】
図1Bに示されるように、3D印刷溶液14の液滴14’は、ペトリ皿の形態で基板16上に配置される。ペトリ皿には6つのマイクロスイマー10が示されている。また、焦点20に焦点を合わせた2つのレーザービーム18も示されている。
【0061】
マイクロスイマー10を形成するために、使用されるレーザー18は、可変焦点を有し、これは、レーザー18の焦点20の位置が、例えば、それぞれのレーザー18の焦点距離または基板16に対するレーザー18の位置を変動させて、焦点20を移動させることによって、事前定義可能な方法で変化させることができることを意味する。焦点20の位置のこの変動は、図1Bの原点によって示されるように、3つの空間次元x、y、およびzすべてにおいて起こり得る。レーザー18を適用し、3D印刷可能な溶液14を通してレーザー18の焦点を変動することにより、生体適合性マイクロスイマー10を所定の形状で形成することができる。
【0062】
図1Bおよび1Cに示されるキトサンベースのマイクロスイマー10は、二光子直接レーザー書き込み(TDLW)技術を使用して二重らせん形状で製作した。このようにして、所定の構造を形成するための3D印刷可能な溶液14のプレポリマーの光重合を近接チャネルで実行した。一般的に言えば、マイクロスイマー10は、らせん状または二重らせん状の構造などの回転磁場の存在下で、時間に依存して非対称に移動するように構成された形状を有する。
【0063】
さらに、3D印刷可能な溶液14を形成するために添加される磁性粒子は、5nm~200nm、特に5~200nm、好ましくは40~60nmの範囲で選択されるサイズを有することに留意されたい。磁性粒子は、それらの生体適合性のために好ましくはSPIONであるが、他の生体適合性磁性粒子も使用され得る。
【0064】
この理由は、マイクロスイマー10の設計でSPIONを使用することは、2つの主な利点を有するためである:(1)SPIONは、生体適合性があり、かつインビボで深刻な副作用がないと見なされ、かつ(2)SPIONは、コバルトまたはニッケルベースの表面コーティングと比較して、薬物およびカーゴの放出部位の可用性を劇的に高める。
【0065】
マイクロスイマー10は、細長い形状を有し得、長さ対幅の比は、2:1~10:1の範囲で選択され、マイクロスイマーの少なくとも1つの寸法は、0.0001~1mmの範囲で選択することができる。
【0066】
マイクロスイマー10を磁場で移動できるようにするために、マイクロスイマーは、磁化される必要がある。この目的のために、図6も参照され、マイクロスイマー10が形成される領域の両側のペトリ皿16上に2つの永久磁石22が配置され、その結果、磁場Bが矢印の方向に適用される。マイクロスイマー10を形成する際にレーザー18を適用するステップの間に、3D印刷可能な溶液14内の磁性粒子を整列させるために、磁場Bの強度が選択される。
【0067】
永久磁石22を所定の方法で配列することにより、SPIONの磁気配向が整列される。整列した磁気配向を有するマイクロスイマー10中に存在するSPIONは、その後、制御および操縦することができ、その結果、マイクロスイマーは、回転磁場を使用して3D水性環境で移動することができる。
【0068】
個々のマイクロスイマー10の平均印刷速度は、約10秒であった。形成されたマイクロスイマー上で行われたエネルギー分散型X線分光法(EDS)の元素マッピングにより、マイクロスイマー10中の鉄原子の均一な分散が確認された。
【0069】
図1Cにさらに示されるように、マイクロスイマー10は、直径6μmおよび長さ20μmを有し、低振幅の回転磁場を伴う低レイノルズ数領域で動作するための二重らせんから構成される。図1Cに示すマイクロスイマー10は、10mTおよび4.5Hzの回転磁場を使用して、平均速度3.34±0.71μm・s-1の水性環境で作動および制御することができる。これに関連して、低レイノルズ数レジームは、レイノルズ数が0.1未満のレジームであることに留意されたい。
【0070】
図2AおよびBは、マイクロスイマー10が、回転磁場を使用して作動および操縦することができることを示している。図2Aは、磁気励起周波数の関数としてのマイクロスイマー10の前進速度を示している。実証されているように、図1Cに示されているサイズを有するマイクロスイマー10は、4.5Hzのステップアウト周波数を有する。
【0071】
これを行うために、5コイルの電磁セットアップ(図示せず)を使用して、マイクロスイマー10を作動および操縦した。マイクロスイマー10の動きを追跡するために、5コイルの電磁セットアップを倒立光学顕微鏡(図示せず)上に実装することができる。5コイルの磁気セットアップは、それ自体が既知の方法で制御して、所望の回転磁場、例えば、2~50mTの範囲で生成および制御することができ、周波数は、1Hz~50Hzの範囲で選択され、2cm×2cm×2cmの体積全体で95%を超える均一性を有する。
【0072】
これは、マイクロスイマー10を所望の方向に方向付けするために、磁場の勾配および配向を変動できることを意味する。磁場の正確な磁場強度および周波数は、一般に、マイクロスイマーのサイズおよびその結果としてそこに存在するSPIONの量に応じて選択され得る。
【0073】
図2Aに示す結果は、10mTの回転磁場を使用して記録した。最初に、マイクロスイマーのステップアウト周波数は、適用される回転磁場の周波数を0.5Hzステップで1Hzから6Hzに徐々に増加させることによって調査した。製作されたマイクロスイマーは、10mTの回転磁場下の4.5Hzで最適に作動および操縦されることが実証された。4.5Hzの最適作動周波数でのマイクロスイマーの平均前進速度は、3.34±0.71μm・sec-1と測定した。
【0074】
倒立光学顕微鏡上に5コイルの電磁セットアップを配置することにより、マイクロスイマー10を異なる経路で操縦し、顕微鏡によってこれらの経路でのそれらの進行を記録して、マイクロシステムの制御可能性の画像を実証および記録することが可能である。10mTの回転磁場下の4.5Hzおよび5Hzの両方でマイクロスイマーを操縦することが可能であることが示され(図2Bi~ivおよび図8)、これに関連して、図8i~8ivが、図2Bi~ivと同様の画像を示しているが、違いは適用された磁場の周波数であることに留意されたい。
【0075】
図3A~Eは、リゾチームを使用したマイクロスイマー10の酵素分解を示している。前述のように、生分解性材料は、その機能を実行した後、自然に分解して体から消えることができるため、医薬品においてますます注目を集めている。生分解性材料としてのキトサンは、主にリゾチーム酵素によって分解され、これは、様々な組織および体液中に約1~15μg・mL-1濃度の範囲で存在する。この効果は、リゾチーム酵素がポリマー骨格におけるモノマー間のグリコシド結合を切断し、結果として生じる小さな鎖が自然に除去されるためである。
【0076】
図3Aiおよび3Aiiは、マイクロスイマー10の3D印刷アレイの光学顕微鏡画像を示し、図3Aiは、マイクロスイマー10で実施された生分解実験の開始を示し、図3Aiiは、水および酵素が架橋構造の内部に浸透することができず、したがって、最初はマイクロスイマー10の外面を分解し始めた発生した表面侵食を示している。マイクロスイマー10のらせんおよび鋭いエッジは、まずリゾチーム酵素によって分解されたことが示された。マイクロスイマー10は、15μg・mL-1のリゾチーム濃度での分解を示す図3Aiiに示されるように、204時間後に部分的に分解された。
【0077】
マイクロスイマー10の分解を試験するために、3つの異なるリゾチーム酵素濃度(図3BおよびCの三角形の点で示されている1.5μg・mL-1図3BおよびCの丸い点で示されている15μg・mL-1、ならびに図3BおよびCの三角形の点で示されている150μg・mL-1)は、マイクロスイマー10の生分解のために選定し、150μg・mL-1は、非現実的に高い状態を表している。
【0078】
図3Bは、異なるリゾチーム濃度に対する時間におけるマイクロスイマー10の長さの変化を示し、図3Cは、異なるリゾチーム濃度に対する時間におけるマイクロスイマーの直径の変化を示す。すべての濃度について、マイクロスイマー10の長さは、初期の長さの最大で70%の長さに分解し、マイクロスイマー10の直径は、210時間の期間内のマイクロスイマー10の初期の直径の最大で50%の直径に分解することが見出された。
【0079】
予想通り、非現実的に高いリゾチーム酵素濃度群(150μg・mL-1)は、最小の直径および長さのマイクロスイマー10を残して、最速の分解をもたらす。一方、1.5μg・mL-1リゾチーム濃度群は、204時間後に最大のマイクロスイマー10が残っていた(図3Bおよび3C)。表面侵食によりらせんおよびエッジがまず分解したため、すべての群で直径および長さが急速に変化した。 マイクロスイマー10の全身と比較して体積が小さいらせんおよびエッジの生分解後、直径および長さの変化率は、予想どおり劇的に減少した。
【0080】
次いで、リゾチーム酵素は、らせんと比較して表面積対体積の比が低い円筒形のマイクロスイマー本体10’を分解しようとしたため、これは必ずしも生分解速度の低下を意味するわけではない。表面侵食現象により、ある時点以降の生分解、長さ、および直径の変化を観察することがより困難になった。204時間でのマイクロスイマーについての部分的な生分解は、ほとんどの研究で数週間後に完全な分解が観察されなかった文献と一致している。
【0081】
生分解に加えて、分解生成物のインビトロ生体適合性は、SKBR3乳癌細胞を使用して調査した。SKBR3細胞は、分解されたマイクロスイマー10の分解生成物で1日処理し、次いで、毒性分析のために生死アッセイで染色した。結果は、マイクロスイマー10の分解生成物がSKBR3細胞に毒性作用を及ぼさず、対照群および処理群の両方の生/死細胞比が同様であり、細胞集団全体の約90%であることを示した(図3Dおよび3E)。
【0082】
これに関連して、図3Dは、SKBR3乳癌細胞の生死染色の光学顕微鏡画像の概略図を示し、図3Diは、未処理を示し、図3Diiは、マイクロスイマー10の分解生成物で1日間処理された癌細胞を示している。中空の点は、生細胞を表し、完全な点は、死細胞を表す。図3Eは、分解生成物で処理したSKBR3乳癌細胞の生存率の定量化の結果を示している。分解生成物で処理した細胞では生存率は、変わらなかった(p>0.05)。エラーバーは、標準偏差を表しており、これは、重要ではない(n.s.)。したがって、マイクロスイマー10もそれらの分解生成物も、例えば人体内に害を及ぼす可能性のある毒性反応を形成しないことが本明細書に示されている。
【0083】
図4Aは、DOX修飾マイクロスイマー10を得るための反応経路を概略的に示している。DOXは、肝臓癌の治療に使用される物質である。DOXは、マイクロスイマー10によって輸送することができるカーゴ材料24である。カーゴ材料24を付着させるために、化学リンカー26は、最初に、例えばコーティングによって、マイクロスイマー10の本体部分10’に付着させる。
【0084】
化学リンカー26の機能は、生体適合性マイクロスイマー10への化学結合28およびマイクロスイマー10へ付着可能かつそれによって輸送可能なカーゴ材料24への化学結合30を形成することによって、カーゴ24とマイクロスイマー10との間に放出可能なリンクを形成することである。化学リンカー26のさらなる機能は、刺激の適用、例えば、光および/もしくは熱の適用時に、または「病的状態による」所定量の特定の酵素近くで、マイクロスイマー10からカーゴ材料24を放出することができることである。
【0085】
これに関連して、カーゴ24またはカーゴ材料24は、酵素、分子、薬物、タンパク質、遺伝物質、ナノ粒子、治療または診断目的のための放射性種子、および前述の組み合わせからなる要素の群から選択され得ることに留意されたい。
【0086】
これに関連して、化学リンカー26は、光開裂性リンカー、好ましくはNHSおよびアルキン修飾o-ニトロネジル誘導体、酵素的に開裂可能なリンカー、例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ認識ペプチド配列のうちの1つ、熱的に開裂可能なリンカー、すなわち、体の温度より高い融点を有し、かつカーゴ24を放出するために、熱が局所的に適用されると融解する化学リンカー、ならびに/または前述の組み合わせからなる要素の群から選択され得ることにさらに留意されたい。
【0087】
図4Aの例では、マイクロスイマー10上に存在するアミノ基(NH)は、o-ニトロベンジル光開裂性リンカー分子26のNHS基と反応して、化学結合28を形成する。次いで、アジド修飾DOX 24は、マイクロスイマー10のアルキン末端と反応して、化学結合30を形成する。
【0088】
図4Bは、30mWの光強度の外部光刺激に30分間曝露されたマイクロスイマー10からのDOX放出を示している。図4Biは、光の適用前の蛍光強度を示し、図4Biiは、30分後の蛍光強度を示している。蛍光強度の減少は、マイクロスイマー10からのDOXの開裂およびその放出を示している。
【0089】
図4Cは、3mW(丸い点)および30mWの光強度(四角い点)に対して2つの異なるレーザー強度を使用したマイクロスイマー10からのDOX放出を示している。30mWの光強度を使用すると、30分間の曝露後にDOXの60~70%が放出されるが、3mWの光強度で30分間の曝露後にはDOXの30~40%のみが放出される。図4Cにも示されているように、DOXの約60%は、30mWの光強度での曝露の最初の5分以内に放出される。
【0090】
オンデマンドの光トリガー薬物放出を実証するために、365nm波長で2つの異なる光強度(3mWおよび30mW)を選択した。30mWの場合、30分後に蛍光強度が大幅に低下し、これは、図4Bに示すように、DOX 24がマイクロスイマー10から放出されたことを意味する。結合したDOXの約60%が、30mWの光強度で5分以内に放出された(図4C)。
【0091】
放出速度は、5分後に劇的に減少した。不完全な放出は、ニトロベンジル基で観察された低い光化学的変換によるものある。マイクロスイマー10の中心から開裂されたDOX分子24のより遅い拡散のために、5分後の遅い放出がおそらく観察された。30mWの光強度と比較して3mWの光強度の場合、より遅い薬物放出が観察された。累積薬物24の放出速度は、減少し、約40%に収束した(図4C)。薬物放出が少ないことは、光強度が低いために反応速度が遅いこととして説明することができる。
【0092】
したがって、光強度を変動させることにより、放出されるDOXの量を制御することができ、したがって、刺激の強度および刺激が適用される時間に応じて、刺激の適用時に放出のタイプを合わせることができる。
【0093】
図4Dは、マイクロスイマー10からのDOX 24のそのようなスマートな投薬がどのように起こり得るかの例を示している。t=0~1分およびt=6~7分の実線のバーは、365nmの波長のレーザーの形態での刺激を示している。刺激の適用中に、DOXの約15%がマイクロスイマー10から毎分放出された。
【0094】
マイクロスイマー10からの急激な薬物放出は、光が1分間オン(30mWの光強度)のときに観察され、その後、光が5分間オフのとき、マイクロスイマーからの薬物放出はまったくなかった、またはわずかであった(図4D)。全薬物の約15%が1回の用量で放出された。これは、使用者がマイクロスイマー10からのオンデマンドの薬物放出プロファイルを制御できることを示した。また、投薬される薬物24の量は、光強度または曝露時間のいずれかを変化させることによって調節することができる。
【0095】
したがって、様々な速度の異なる薬物分子を放出するように制御することができる、光開裂ベースの光トリガー送達システム10が示されている。これらのシステムでは、薬物分子24は、光開裂性リンカー分子26に化学的に結合している。光開裂性リンカー分子26は、例えば、光放射時に2つの部分に分裂し、薬物分子24は、付着した構造から放出される。o-ニトロベンジルは、光開裂性基24であり、機能的なo-ニトロベンジル誘導体は、様々な生体分子の送達に使用されてきた。N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)およびアルキンを有するo-ニトロベンジル誘導体は、その化学的機能性により、分子24の放出に非常に効果的である。
【0096】
NHS基は、アミノ基(NHS-アミンカップリングとして既知)と選択的に反応して、化学結合28を形成し、アルキン基は、アジド基(銅(I)触媒クリック反応として既知)と反応して、化学結合30を形成する。光開裂性リンカー分子26のNHS末端は、マイクロスイマー10の遊離アミノ基にコンジュゲートされた。次いで、モデル薬物24として利用されたアジド修飾DOXは、付着した光開裂性リンカー分子26のアルキン末端に結合して、化学結合30を形成する。
【0097】
したがって、2つの異なる化学反応を実行して、DOXで機能化されたマイクロスイマー10を得た(図4A)。第1のステップでは、溶液を含有するo-ニトロベンジル光開裂性リンカー分子26でマイクロスイマー10を処理した。この後、アルキン末端マイクロスイマー10、いわゆるNHS-アミンカップリング反応が得られた。第2のステップとして、反応混合物24を含有するアジド-DOXでアルキン末端マイクロスイマー10を処理した。
【0098】
多くの薬物24は、深刻な標的外の副作用を有するので、治療薬24のスマートな投薬は、様々な送達システム10の別の重要な考慮事項である。提示されるように、マイクロスイマー10からの制御された薬物放出24は、レーザー光をオンデマンドでオンおよびオフに切り替えることによって可能である。
【0099】
図5は、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)アッセイを使用したメタクリル化度の決定を示している。ChMA高分子のメタクリル化度は、未修飾の遊離アミノ基の定量に基づく2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)アッセイで分析した。
【0100】
対照群としての未修飾のキトサン、および0.05%(w/v)のChMA高分子をそれぞれ0.2%(v/v)の酢酸溶液に溶解した。80μLの溶液を40μLの2%(w/v)のNaHCOおよび60μLの0.1%(v/v)のTNBS試薬(Thermo Fisher Scientific)とともに37℃で2時間インキュベートした。
【0101】
潜伏期間後、60μLの1N HClを溶液に添加し、次いでサンプルの吸光度をプレートリーダー(BioTek Gen5 Synergy 2、Bad Friedrichshall、Germany)を使用して345nmで測定した。メタクリル化度は、以下の式に従って計算した。
【数1】
【0102】
図5に示すように、未反応のキトサンは、345nm波長の光(アミノ基に関して)で最も高い吸光度をもたらす。さらに、キトサンと無水メタクリル酸との反応中にアミノ基が消費されるため、これにより波長345nmの光の吸光度が徐々に低下する。
【0103】
前述の3D印刷プロセスでキトサンを使用できるようにするには、未反応のキトサンの吸光度よりも吸光度を低くする必要がある。70%のメタクリルアミドと反応したキトサンは、3D印刷プロセスに必要な範囲内の吸光度を有するため、この製品が使用された。
【0104】
図6は、マイクロスイマー10の2光子ベースの3D印刷に利用されたマイクロチャネル設定を示している。水泳実験中に最適な磁気作動効率を得るために、永久磁石20を使用して、プレポリマー溶液14内のSPIONを整列させる。マイクロスイマー10は、磁場Bに垂直に縦方向に印刷した。
【0105】
図7AおよびBは、それぞれのマイクロスイマー10のエネルギー分散型X線分光法の元素マッピングを示している。マイクロスイマー10の元素マッピングは、15keVで10分間実行した。二重らせん状構造は、両方の画像で見ることができ、下の画像は、マイクロスイマー10内の炭素原子(ハッシュ領域)の存在を示している。
【0106】
図9AおよびBは、薬物分子、すなわち、カーゴ材料24のマイクロスイマー10への化学的統合の光学顕微鏡画像を示している。図9Aは、化学リンカー24で処理されていない、すなわち、o-ニトロベンジルリンカー修飾されていないが、薬物分子(アジド-DOX)で直接処理されているマイクロスイマー10を示している。
【0107】
図9Bは、これらにカーゴ材料24を投薬する前に化学リンカー26が適用されるマイクロスイマー10を示している。o-ニトロベンジルリンカー修飾は、薬物分子24(アジド-DOX)で処理した。画像は、同じ蛍光強度および曝露時間でキャプチャし、マイクロスイマー10へのアジド-DOX 24の制御された統合を表している。
【0108】
クリック反応によりアジド-DOX 24がマイクロスイマー10に結合したことを確認するために、図9Aに示すように、陰性対照群としてマイクロスイマー10の別の群を用いて第2のステップのみを実行した。陰性対照では、アミノ基とアジド基との間に反応がなかったため、アジド修飾DOX 24をマイクロスイマー10に結合できなかった。蛍光顕微鏡を使用して、DOX修飾群と陰性対照群とを比較した。
【0109】
図9Bに示されるように、DOX修飾群は、同じ曝露強度および時間での陰性群と比較して、有意に高く、かつ均一な蛍光発光を有した(図9A)。一方、陰性群からの低い蛍光発光は、薬物分子24のマイクロスイマー10への拡散によるものであった。これらの結果により、o-ニトロベンジルリンカーおよびアジド修飾DOXのマイクロスイマー10への化学的結合が確認された。
【0110】
したがって、一般に、カーゴ24をマイクロスイマー10に結合するために、化学リンカー26を使用することが推奨される。
【0111】
図10A~Cは、制御放出実験前の薬物分子についての光退色試験を示している。図10Aは、470nm波長のレーザー光で30分間励起された陰性群を示し、陰性群は、化学リンカー26を含まない、すなわち、o-ニトロベンジルリンカー修飾されていないマイクロスイマー10を含む。図10Bは、陰性群の3mW 365nm波長レーザー光への曝露を示している。図10Cは、陰性群の30mW 365nm波長光への曝露を示している。
【0112】
マイクロスイマー10からの漂白試験および制御された薬物放出
マイクロスイマー10とDOX 24との間のo-ニトロベンジルリンカー分子26は、365nm波長および3~30mWの強度での光照射により選択的な結合開裂を受けた。
【0113】
薬物放出実験の場合、主な仮定は、マイクロスイマー10の初期蛍光強度が、マイクロスイマー10への100%の薬物24の充填に対応するというものであった。マイクロスイマー10からの薬物24の放出は、経時的な蛍光強度の減少に基づいて特徴付けられた。
【0114】
マイクロスイマー10に光退色および拡散に関連する蛍光強度の変化がないことを確認するために、漂白試験を実行した。したがって、陰性群は、リンカー分子26の開裂に使用された365nm波長で露光し、DOX 24の励起および蛍光強度変化分析に使用された470nm波長で露光した。
【0115】
365nm(図10A)ならびに470nm波長(図10Bおよび10C)の両方で励起した場合、蛍光強度の低下は、観察されず、これは、薬物分子24が露光時にそれらの蛍光を失わなかったことを意味するが、マイクロシステム全体の蛍光変化は、制御された薬物24の放出によるものであった。
【0116】
図11AおよびBは、マイクロスイマー10からの薬物24の制御されたかつ局所的な放出を示す光学顕微鏡画像を示している。図11Aは、左の列(図11Ai)に見られるマイクロスイマー10に焦点を合わせた365nm波長のレーザー光を示している。薬物分子24は、露光時に放出が制御されたが、右の列(図11Aiii)に見られる他の群は、依然として統合された薬物分子24を有していた。
【0117】
図11Aに示されるように、薬物24は、マイクロスイマー10の特定の群から放出することができるが、他のものは、薬物を内部に保持した(図11A)。さらに、図11Bは、マイクロスイマー10の半分から薬物24を放出することがどのように可能であるかを示し、これは、適用されるレーザー光(図示せず)の焦点の位置を変動することによって、カーゴ材料24の放出に対して局所制御を有することができることをさらに示している。
【0118】
前述のマイクロスイマー10は、例えば、人体または動物の体の肝臓または腎臓内(それぞれ図示せず)の所望の標的領域でのカーゴ材料24の標的化された送達に使用することができる。次いで、マイクロスイマー10が、例えば、胃腸管で使用される場合、これらは飲み込むことによって簡単に摂取することができ、次いで、人体全体の自然な進行を監視することで、マイクロスイマー10が、例えば、腸または胃内に存在すると、能動的に操縦することができ、次いで、マイクロスイマー10が、カーゴ材料24を例えば肝臓に送達するために使用される場合、マイクロスイマー10は、所望の標的領域に関連する領域、例えば血管に注入される。
【0119】
マイクロスイマー10が、例えば標的部位、例えば肝臓腫瘍の1~2mm以内にあると、マイクロスイマー10は、前述のように、時間可変磁場を用いて所望の標的領域に方向付けられる。マイクロスイマー10が所望の標的領域に入ると、これは、所望の標的領域でカーゴ24を放出するために刺激される。
【0120】
論じたように、カーゴ24を放出するために所望の標的領域でマイクロスイマー10を刺激するステップは、標的領域に光刺激を適用することによって行われる。
【0121】
マイクロスイマー10の所望の標的領域への経路を追跡するために、マイクロスイマー10を所望の標的領域に方向付けするステップが、例えばMRIを使用して画像マッピングと併せて実施される場合、さらに有利である。
【0122】
前述のように、カーゴ24、すなわち薬物は、マイクロスイマー10に光を集中させることによって局所的に放出することができる。
【0123】
要約すると、磁気的に作動する生体適合性および生分解性のキトサンベースのマイクロスイマー10が開発され、これは、オンデマンドの光トリガー薬物放出の能力を有する。この目的のために、感光性メタクリルアミドキトサン高分子を合成し、次いでSPIONをその中に埋め込んだ。マイクロスイマー10は、TDLW技術を使用して、この3Dポリマー溶液から製作した。さらに、マイクロスイマーは、10mTの回転磁場下の異なる周波数で作動および操縦できることが実証された。
【0124】
マイクロスイマー10がインビトロでも使用できることを示すために、人体に見られる天然酵素を使用した、インビトロ細胞毒性分解生成物を生成することなく、マイクロスイマー10の生分解も示されている。
【0125】
また、合成マイクロスイマー10内でのオンデマンドの光トリガー薬物放出の組み合わせも示されており、これにより、マイクロシステムは、様々な疾患の治療のための治療薬24の能動的かつ制御された送達に関連する課題に有望である。
【0126】
本明細書で論じられるすべての材料は、特に指定がない限り、Sigma-Aldrichから購入した。
【0127】
以下の特定の方法では、マイクロスイマー10を製造するために実施されるステップが、本発明者らの言葉を使用して論じられる。
【0128】
メタクリルアミドキトサンの合成
メタクリルアミドキトサン(ChMA)は、いくつかの修飾を伴う前述のプロトコルに従って合成した。最初に、3%(w/v)の低分子量のキトサン粉末を3%(v/v)の酢酸溶液に室温(RT)で24時間溶解した。無水メタクリル酸をキトサン溶液に3.5:1w/w比で添加して、約70%のメタクリル化度を得、反応をボルテックスミキサーを用いてRTで3時間実行した。反応を実行した後、反応混合物を水で希釈し、水に対して4日間透析した(14kDaカットオフ)。得られた混合物を凍結乾燥し、さらに使用するために-20℃で保存した。
【0129】
マイクロスイマーの3D印刷
ChMA(30mg・mL-1)、LAP開始剤(20mg・mL-1)(Tokyo Chemical Industry Co.Ltd.)、および超常磁性酸化鉄ナノ粒子(5mg・mL-1)(chemicell GmbHからの50nmの流体MAG-PEG/アミン)を8%(v/v)の酢酸溶液に溶解した。得られたプレポリマー溶液をトリクロロ(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)シラン処理されたスライドガラスに滴下し、市販の直接レーザー書き込みシステム(Photonic Professional、Nanoscribe GmbH)を用いて印刷を実行した。製作後、スライドガラスをddHOで十分に洗浄し、次いでさらに使用するためにサンプルを4℃で保管した。
【0130】
マイクロスイマーへの光開裂性リンカーと薬物分子との統合
最初に、光開裂性o-ニトロベンジルリンカー(LifeTein LLCからの1-(5-メトキシ-2-ニトロ-4-プロプ-2-イニルオキシフェニル)エチルN-スクシンイミジルカーボネート)をNHS-アミンカップリング反応を通してマイクロスイマーの表面に結合させた。簡単に言えば、500μMのリンカーを無水ジメチルスルホキシドに溶解し、マイクロスイマーをリンカー溶液によってRTで4時間処理した。その後、アジド修飾DOX(LifeTein LLC)を、マイクロスイマーに結合したリンカー分子のアルキン末端にカップリングするために、いくつかの修飾とともに前述のプロトコルを適合させた。マイクロスイマーは、50μMのアジド修飾DOX、100μMのCuSO、5mMのアスコルビン酸ナトリウム、500μMのトリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミンを含有する溶液によってRTで3時間処理した。最後に、マイクロスイマーをddHOで数回洗浄して、結合していない薬物分子を除去し、さらに使用するために暗所で保管した。
【0131】
マイクロスイマーからの漂白試験および制御された薬物放出
薬物統合したマイクロスイマーをRTに平衡化し、ddHOで数回洗浄してddHO中で一晩保管した。365nmでの露光時のマイクロスイマーからの制御された薬物放出は、蛍光倒立顕微鏡(DMi8、Leica Microsystems)を使用して調査した。タイムラプス蛍光画像は、30分の期間10秒ごとに取得した。光強度を3mWまたは30mWのいずれかに調整し、曝露時間を1秒に設定した。マイクロスイマーの蛍光強度は、LASX分析ツールボックス(Leica Microsystems)を使用して分析した。オンデマンドの制御された薬物放出実験は、1分間の露光とそれに続く5分間の不応期によって実行した。どちらの場合も、バックグラウンド蛍光は、測定値から差し引いた。
【0132】
受動拡散による薬物分子を充填したマイクロスイマーの蛍光退色は、制御放出実験と同様に、365nmまたは470nmでの露光および画像取得によって試験した。365nmでの3mWおよび30mWの両方の光パワー、および470nmでの光パワーの両方の漂白試験を30分間試験し、10秒ごとに蛍光画像を取得した。放出実験と同様に、個々のマイクロスイマーの蛍光強度をLASX分析ツールボックス(Leica Microsystems)で測定し、測定値からバックグラウンドを差し引いた。
【0133】
マイクロスイマーの分解および分解生成物の細胞毒性調査
3D印刷されたマイクロスイマーを、37℃で1xリン酸緩衝生理食塩水で調製した異なる濃度のリゾチーム溶液(1.5、15、および150μg・mL-1)で処理した。マイクロスイマーの長さおよび直径は、Nikon Eclipse Ti-E倒立顕微鏡を使用して、DICモードで20倍の倍率で、時間間隔を増やしながら測定した(3、6、12、24、48時間)。酵素の不活性化を防ぐために、酵素溶液を12時間ごとに更新した。マイクロスイマーの生体適合性および細胞毒性を調査するために、分解生成物を使用した。簡単に説明すると、SKBR3乳癌細胞(継代#8)を5000細胞/ウェルとして96ウェルプレートに播種した。次いで、約80%のコンフルエンスに達した時点で、数千の3D印刷されたマイクロスイマーまたは増殖培地(対照群)の分解生成物で1日間処理した。最後に、細胞を生死イメージング溶液(Life Technologies)によってRTで20分間染色し、蛍光倒立顕微鏡を使用してイメージングし、定量分析のためにImageJを使用してカウントした。
図1
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【国際調査報告】