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特表2022-508447再生可能な生成物を製造するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】再生可能な生成物を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 3/00 20060101AFI20220112BHJP
   C10L 1/04 20060101ALI20220112BHJP
   C10M 105/04 20060101ALI20220112BHJP
   C10L 1/182 20060101ALI20220112BHJP
   C11C 1/04 20060101ALI20220112BHJP
   B01J 23/883 20060101ALI20220112BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20220112BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C10G3/00
C10L1/04
C10M105/04
C10L1/182
C11C1/04
B01J23/883 M
B01J21/06 M
B01J23/42 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538289
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 FI2019050917
(87)【国際公開番号】W WO2020141256
(87)【国際公開日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】20186144
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(31)【優先権主張番号】20186145
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミュッリョヤ、ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】カネルボ、ヤーナ
(72)【発明者】
【氏名】マッコネン、ヤーナ
(72)【発明者】
【氏名】ティーッタ、マルヤ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H013
4H059
4H104
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA05A
4G169BA06A
4G169BA07A
4G169BB04A
4G169BC03A
4G169BC09A
4G169BC12A
4G169BC22A
4G169BC31A
4G169BC35A
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC42A
4G169BC43A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CC04
4G169CC08
4G169DA06
4H013CD02
4H059BA01
4H059BA26
4H059BA30
4H059BA33
4H059BC03
4H059BC06
4H059BC13
4H059CA38
4H059CA93
4H104BA02A
4H129AA01
4H129BA03
4H129BB05
4H129BC15
4H129KB03
4H129KC03X
4H129KC04X
4H129KC05X
4H129KC13X
4H129KD04X
4H129KD06X
4H129KD09X
4H129KD10X
4H129KD15X
4H129KD19X
4H129KD21X
4H129KD22X
4H129KD24X
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129KD28X
4H129KD30X
4H129KD31X
(57)【要約】
本発明は、遊離脂肪酸およびグリセリドを含む生物学的起源のフィードストックから再生可能なベースオイルおよび他の価値の高い再生可能な燃料成分を製造するための方法に関する。フィードストックは、最初に脂肪酸留分およびグリセリド留分を含む2つまたはそれ以上の流出流に分離される。グリセリドは、遊離脂肪酸およびグリセロールに加水分解され、そして、得られた脂肪酸は、分離工程へとリサイクルされる、脂肪酸はその後、ケトン化、水素化脱酸素化、および水素異性化によってベースオイルに変換される。グリセロールは、選択的な水素化分解によってプロパノールに変換される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
≧90wt%の飽和炭化水素、≦0.03wt%の硫黄および≧120の粘度指数を有する、APIのグループIIIベースオイル仕様を満たす再生可能なベースオイル、ならびに、再生可能な燃料成分を、生物学的起源のフィードストックから製造するための方法であって、
a)好ましくは廃棄物および残渣材料を起源とする、遊離脂肪酸およびグリセリドを含むフィードストックを提供する工程、
b)前記フィードストックを、
(i)遊離脂肪酸を含む第1の流出流、および
(ii)グリセリドを含む第2の流出流
を含む少なくとも2つの流出流に分離する工程、
c)前記第2の流出流のグリセリドを遊離脂肪酸およびグリセロールを提供するために加水分解する工程、ならびに
d)前記工程c)で得られた前記遊離脂肪酸を前記分離工程b)へとリサイクルする工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の排出流が、
iii)炭素鎖長がC12~C16である脂肪酸留分、
iv)炭素鎖長が少なくともC17である任意の脂肪酸留分、および
v)炭素鎖長がC11以下である任意の脂肪酸留分
を含む第1の流出流のセットである請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、以下の工程
e)ケトン含有流を製造するために、前記第1の流出流の脂肪酸留分(iii)の少なくとも一部または全部を、100~500℃、好ましくは300~400℃の範囲の温度で、および、大気圧~10MPa、好ましくは0.5~3MPaの範囲の圧力で、ケトン化触媒の存在下、ケトン化反応に付す工程
を含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ケトン化触媒が、金属酸化物触媒であり、および、前記金属酸化物触媒の金属が、好ましくは、Mg、K、Sc、Y、La、Ce、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Mo、Rh、Sn、Ti、Mn、Mg、Ca、Zrのうちの1つまたは複数から選択され、より好ましくは、Ti含有金属酸化物触媒であり、最も好ましくはTiO2含有触媒である請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ケトン化反応が、0.1~1.5gas/feed比(w/w)の範囲のガスの存在下で行われ、前記ガスが、CO2、H2、N2、CH4、H2Oのうちの1つまたはそれ以上から選択され、好ましくはCO2である請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
さらに、以下の工程
f)前記工程e)の前記ケトン含有流の少なくとも一部を、n-パラフィン含有流を形成するために、水素化脱酸素化に付す工程
を含む請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
さらに、以下の工程
g)前記工程e)の前記ケトン含有流の少なくとも一部を、再生可能なベースオイル含有流を形成するために、水素化脱酸素化反応および水素異性化反応に、同時にまたは順番に付す工程
を含む請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水素化脱酸素化反応および前記水素異性化反応に付すことが、順番に行われ、および、前記工程g)が、水素化脱酸素化および水素異性化のあいだに液体をガスから分離することをさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記水素化脱酸素化反応が、水素化脱酸素化触媒の存在下、100~500℃、好ましくは250~400℃の範囲の温度;大気圧~20MPa、好ましくは0.2~8MPaの範囲の圧力;好ましくは0.5~3h-1の範囲のWHSV、および、好ましくは350~900nL H2/L feedであるH2フローで行われる請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記水素化脱酸素化触媒が、担体上に担持されたPd、Pt、Ni、CoMo、NiMO、NiW、CoNiMoから選択され、ここで、前記担体は、好ましくは、アルミナおよび/またはシリカである請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記水素異性化反応が、水素異性化触媒の存在下、200~450℃、好ましくは250~400℃の範囲の温度;1~15MPa、好ましくは1~6MPaの範囲の圧力;0.5~3h-1の範囲のWHSV、および、好ましくは100~800nL H2/L feedであるH2フローで行われる請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水素異性化触媒が、任意にはアルミナおよび/またはシリカ担体上に担持された、第VIII族金属、好ましくはPd、PtまたはNi、およびモレキュラーシーブを含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
再生可能なベースオイル、および好ましくは、再生可能な液化石油ガス、再生可能なナフサ、再生可能なジェット燃料および/または再生可能なディーゼルから選択される1つまたは燃料成分を得るために、前記再生可能なベースオイル含有流を、好ましくは蒸留による、分離に付すことを含む請求項7~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
再生可能なプロパノール、および任意には再生可能なプロパンジオールを生成するために、前記工程c)の前記グリセロールを、触媒の存在下、好ましくはPt修飾ZrO2触媒の存在下、昇温で、好ましくは150~350℃、より好ましくは150~270℃で、水素を用いて処理することを含む請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記脂肪酸留分(iv)が、オレオ化学品へと変換される請求項2記載の方法。
【請求項16】
前記脂肪酸留分(v)が、オレオ化学品へと変換される請求項2記載の方法。
【請求項17】
前記工程e)の前記ケトン含有流の一部が、オレオ化学品へと変換される請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の排出流が、前記脂肪酸留分(iv)を含み、
前記脂肪酸留分(iv)の少なくとも一部を、100~500℃、好ましくは300~400℃の範囲の温度で、および、大気圧~10MPa、好ましくは0.5~3MPaの範囲にある圧力で、ケトン化触媒の存在下、前記脂肪酸留分(iv)由来のケトンを含むストリームを製造するために、ケトン化反応に付すこと、ならびに、前記脂肪酸留分(iv)由来の前記ケトンの少なくとも一部をオレオ化学品へと変換することをさらに含む請求項2記載の方法。
【請求項19】
前記第1の排出流が、前記脂肪酸留分(v)を含み、
前記脂肪酸留分(v)の少なくとも一部を、100~500℃、好ましくは300~400℃の範囲の温度で、および、大気圧~10MPa、好ましくは0.5~3MPaの範囲にある圧力で、ケトン化触媒の存在下、前記脂肪酸留分(v)由来のケトンを含むストリームを製造するために、ケトン化反応に付すこと、ならびに、前記脂肪酸留分(v)由来の前記ケトンの少なくとも一部をオレオ化学品へと変換することをさらに含む請求項2記載の方法。
【請求項20】
前記ケトン化触媒が、金属酸化物触媒であり、および、前記金属酸化物触媒の金属が、好ましくは、Mg、K、Sc、Y、La、Ce、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Mo、Rh、Sn、Ti、Mn、Mg、Ca、Zrのうちの1つまたは複数から選択され、より好ましくは、Ti含有金属酸化物触媒であり、最も好ましくはTiO2含有触媒である請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
前記ケトン化反応が、0.1~1.5gas/feed比(w/w)の範囲のガスの存在下で行われ、前記ガスが、CO2、H2、N2、CH4、H2Oのうちの1つまたはそれ以上から選択され、好ましくはCO2である請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記オレオ化学品が、アルカン、アミン、イミン、エナミン、アセタール、第二級アルコール、および第三級アルコールからなる群より選択される請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記再生可能なベースオイルが、≧90wt%の飽和炭化水素、≦0.03wt%の硫黄および≧140の粘度指数を有する、APIのグループIII+ベースオイル仕様を満たす請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記フィードストックが、2~98重量%、好ましくは5~90重量%の遊離脂肪酸、および、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%のグリセロールを含む請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記フィードストックが、植物性脂肪、植物オイル、植物性ワックス、動物性脂肪、動物オイル、動物性ワックス、魚脂肪、魚オイル、PFADおよび魚ワックスから、好ましくはPFADおよび動物性脂肪からなる群より選択される請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記再生可能なプロパノールおよび前記再生可能なナフサが、ガソリン成分としての使用のために混合される請求項13または14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能なベースオイルおよび再生可能な燃料成分を製造するための方法、特には、遊離脂肪酸および脂肪酸グリセロールを含む生物学的起源のフィードストックを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能な原料およびバイオベースのフィードストックは、石油化学原料への持続可能な代替を提示する。フィードストックは、例えば、様々な植物オイル、動物性脂肪、リサイクルされた廃棄物オイルに、および海藻オイルにも由来している。水素化された、例えばパーム油などの種々の植物オイル、それらの誘導体、動物性脂肪、および他の廃棄物または残渣が、世界的な再生可能燃料市場を支配している主なフィードストックとなっている。
【0003】
燃料に加えて、脂肪およびオイルは、再生可能な化学品および再生可能なベースオイルへと段階的に処理され得る。これらのプロセスの一つはケトン化を含み、これは、高い反応性のカルボン酸官能基の除去を可能にし、他方で、同時に、炭素鎖長を増大させる。形成されたケトンは、必要とされる応用のために適した生成物を得るための、例えば水素化脱酸素化などのさらなる凝縮のためのビルディングブロックである。
【0004】
特許文献1は、脂肪酸および脂肪酸エステルを含む様々な酸素含有の有機分子を含むフィードストックを、凝縮反応およびその後の水素化脱官能基化および異性化反応に付す工程を含むベースオイルを製造するための方法を記載している。
【0005】
特許文献2は、生物起源の新しい種類の、高品質な炭化水素ベースオイルを製造するためのプロセスを記載している。プロセスは、ケトン化、水素化脱酸素化、および異性化工程を含む。生物学的原料に基づく脂肪酸および/または脂肪酸エステルが好ましくはフィードストックとして使用される。
【0006】
しかしながら、低価値の生物学的フィードストックを高価値な製品へと処理することのできる、さらに効率のよい方法の必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/152200号
【特許文献2】国際公開第2007/068795号
【発明の概要】
【0008】
以下の説明は、発明の様々な態様のうちのいくつかの様態の基本的な理解を提供するための簡単な概略を示しているものである。概略は、本発明の広範な概説ではない。それは、発明の重要な鍵となるものまたは要素を特定することや、発明の範囲を描写することを意図するものではない。以下の概略は、単に、発明のいくつかの概念を、発明の例示されている態様のより詳細な記載への前置きとして、簡略された形で示しているに過ぎない。
【0009】
本発明において、
遊離脂肪酸およびグリセリドを含むフィードストックから製造される再生可能なベースオイルまたは再生可能なベースオイル成分および再生可能な燃料成分の総収率が、フィードストックが最初に遊離脂肪酸流へと、およびグリセリド流へと分離され、その後にグリセリドの加水分解によって遊離脂肪酸およびグリセリドへとされる場合に増大され得ることが観察された。したがって加水分解を経て生成される遊離脂肪酸は、リサイクルされ、そしてさらなる処理の前に、先に分離されていた遊離脂肪酸流と併せられ得る。
【0010】
したがって、本発明の目的の1つは、≧90wt%の飽和炭化水素、≦0.03wt%の硫黄および≧120の粘度指数を有する、APIのグループIIIベースオイル仕様を満たす再生可能なベースオイル、ならびに、再生可能な燃料成分を、生物学的起源のフィードストックから製造するための方法であって、該方法は、
a)好ましくは廃棄物および残渣材料を起源とする、遊離脂肪酸およびグリセリドを含むフィードストックを提供する工程、
b)フィードストックを、
(i)遊離脂肪酸を含む第1の流出流、および
(ii)グリセリドを含む第2の流出流
を含む少なくとも2つの流出流に分離する工程、
c)第2の流出流のグリセリドを遊離脂肪酸とグリセロールとに加水分解する工程、ならびに
d)続いて、工程c)から得られた遊離脂肪酸を分離工程b)へとリサイクルする工程
を含む。
【0011】
本発明のさらなる目的は、再生可能なベースオイル生成物の収率を増大させることである。
【0012】
本発明のさらなる別の目的は、再生可能なベースオイル生成物に加えて、プロセスによって得られる再生可能な燃料成分の収率を増大させることである。
【0013】
数々の本発明の例示的かつ非限定的な態様は、付随の従属請求項に記載されている。
【0014】
様々な例示的かつ非限定的な発明の態様は、追加の目的および優位点と共に、以下の特定の例示的および非限定的な態様から、それを添付の図面に関連して読んだ場合に、最もよく理解されるであろう。
【0015】
動詞「含む(to comprise)」および「含む(to include)」は、本明細書の中で、言及されていない特徴の存在を排除または必要とすることのないオープンエンド型の限定としてこの記載の中で使用される。従属請求項に言及される特徴は、そうではないと明確に述べられていない限り、交互に自由に組み合わされ得る。さらに、「一つの(a)」または「一つの(an)」の使用、すなわち単数の形式は、本明細書を通して、複数を排除するものではないということが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の、組み合わされたグリセロール処理および再生可能なベースオイル製造プロセスの主な特徴を示す。
図2図2は、本発明によるパーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)からの再生可能なベースオイル生成の例示的、非限定的な模式的概観を示す。
図3図3は、本発明による動物性脂肪からの再生可能なベースオイル生成の例示的、非限定的な模式的概観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の記載において提供される特定の例は、添付の特許請求の範囲および/または適用可能性を限定しているものと理解されるべきではない。本明細書中に提供される例のリストおよびグループは、そうではないと明確に述べられていない限り、網羅的なものではない。
【0018】
本明細書中に規定されるように、ベースオイルは、潤滑油製造における使用のために適切であるオイル成分である。ベースオイルの主な使用は、潤滑油の製造においてであり、潤滑油には何千もの種類が存在している。最も良く知られているものは、自動車用の潤滑油であるが、例えば金属加工など、潤滑油が使用されるはるかに多くの適用例が存在しており、それらのいくつかは高度に専門化されている。潤滑油1リットルは、50~90容量%のあいだのどれかの割合のベースオイルで構成され得、残りは添加剤で構成されている。
【0019】
アメリカ石油協会(API)は、ベースオイルを、表1に示されるように5つの主要なカテゴリーに分類している。グループI~IIIが、様々な品質の石油ベースオイルである。
【0020】
【表1】
【0021】
APIは、グループIIおよびIIIの相違を粘度指数(VI)という点のみで定義しており、そして、グループIIIベースオイルは、また、高粘度ベースオイル(VHVI)とも称されている。しかしながら、低温流動性およびノアク揮発度もまたベースオイルの重要な特性である。
【0022】
潤滑油産業は、通常、表1のグループ用語法を[Handbook on Automobile & Allied Products 2nd Revised Edition, 2013, Ajay Kr Gupta,10 Lube Oil: page 117]を含むように拡張している:
グループI+:グループIのベースオイルであるが、粘度指数が103~108であるもの
グループII+:グループIIのベースオイルであるが、粘度指数が113~119であるもの
グループIII+:グループIIIのベースオイルであるが、粘度指数が少なくとも140であるもの。
【0023】
本明細書中に規定されるように、本発明の再生可能なベースオイルは、APIのグループIIIベースオイルの仕様を少なくとも満たすものであり、≧90wt-%の飽和炭化水素、≦0.03wt-%の硫黄、および≧120である粘度指数を有しており、および、好ましくは、APIのグループIII+ベースオイル仕様を満たしており、≧90重量%の飽和炭化水素、≦0.03重量%の硫黄、および≧140である粘度指数を有している。グループIII+タイプのベースオイルは、低温条件において、明らかに良好な潤滑油特性を有しており、同時に、グループIIIベースオイルよりも熱いエンジン中での潤滑性を保障している。
【0024】
本明細書中にさらに規定されるように、ケトン化反応は、2つの化合物の化学反応を通じて、特には、2つの脂肪酸中のまたは2つの脂肪酸エステル中のアシル基のあいだの反応によって、ケトンを製造する反応である。
【0025】
本明細書中に規定されるように、脱酸素化は、有機分子から共役結合している酸素を除去するための方法である。脱酸素化は、酸素が水素化によって除去される水素化脱酸素化(HDO)を含む。
【0026】
本明細書中に規定されるように、水素化は、触媒の影響下で分子水素の手段によって、炭素-炭素二重結合を飽和させるための方法である。
【0027】
本明細書中に規定されるように、脂肪酸とは、生物学的起源の、C4より長い炭素鎖長、例えばC4~C28などを有するカルボン酸を意味する(Glossary of class names of organic compounds and reactivity intermediates based on structure (IUPAC Recommendations 1995) on p. 1335を参照のこと)。
【0028】
本明細書中に規定されるように、脂肪酸エステルは、トリグリセリド、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸と脂肪アルコールとのエステル、および、天然のワックスを意味し、これら全ては生物学的起源である。
【0029】
本明細書中に規定されるように、動物性脂肪は、肉類チェーン全体の副生成物である。動物性脂肪はそのものとしては製造されない。それらは、肉、卵、ミルク、またはウールの製造のために動物を育てることに関連して製造されているだけである。動物性脂肪は、別の動物性製品の製造の、副(side)生成物、共(co-)製品、または副(by-)産物である(Alm, M, (2013) Animal fats. Available at http://lipidlibrary.aocs.org/OilsFats/content.cfm?ItemNumber=40320 [Accessed 21. 12. 2018])
)。
【0030】
本明細書中に規定されるように、フィードストックは、生物学的起源である。本明細書中にさらに規定されるように、生物学的起源のフィードストックの再生可能な成分の含有量は、出発物質によって決定され、ASTM D6866(2018)に記載されているように14C、13C、および/または12Cを含む同位体分布によって生成物中で決定される。
【0031】
図1は、本発明の方法による組み合わされたグリセロール処理および再生可能なベースオイル生成プロセスの主な特徴を示している。図1において、矢印よび符号は、それぞれ、生成物流およびプロセスを示している。
【0032】
したがって、図1において、遊離脂肪酸(FFAs)およびグリセリドを含むフィードストックは、少なくとも2つの流出流への分離11に付される。第1の流出流は、主に、好ましくは少なくとも95重量%の脂肪酸を含み、および、第2の流出流は、主に、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%のグリセリドを含む。グリセリドは、グリセロール流およびさらなるFFA流を生成するために加水分解12に付される。さらなるFFA流は、分離11へと戻されてリサイクルされる。したがって、リサイクルは、さらなる処理のために使用可能であるFFAsの収率を増加させる。遊離脂肪酸の炭素鎖長は、好ましくは、C8~C24である。
【0033】
好ましい態様において、合わせられたFFA流、すなわち加水分解12を経て得られたおよび分離11に戻されてリサイクルされたものと併せられた分離11から直接得られるFFAsは、ケトン化、すなわちケトン化反応13、続いて水素化脱酸素化、すなわち水素化脱酸素化反応14、および異性化、すなわち異性化反応15へと、再生可能なベースオイルを含むストリームを得るために付され、ここで該ストリームは、再生可能なベースオイルおよび再生可能な液化石油ガス(LPG)、ガソリン成分としての使用に適切である再生可能なナフサ、再生可能なディーゼルおよび/または再生可能なジェット燃料を含む、様々な再生可能な炭化水素成分を製造するために分留16に付される。代わって、グリセロール流は、アルコール、好ましくはプロパノール、すなわち再生可能なプロパノールを得るために水素化17に付され、ここで、該プロパノールは、(図1に示されるような)FFAケトン化から得られる再生可能なナフサと併せられ得、したがって、全てが生物学的起源であり得るガソリン成分、すなわち再生可能なガソリンの収率を増加させる。
【0034】
したがって、本発明の方法は、再生可能なベースオイルを製造するだけでなく、所望の場合にプロセスから単離され得る再生可能なケトン、再生可能なn-パラフィンおよび再生可能な分岐パラフィンをまた製造する。
【0035】
第1の流出流の遊離脂肪酸は、典型的には、様々な炭素鎖長をもつ遊離の脂肪酸を含む。
【0036】
一態様において、本発明は、≧90wt%の飽和炭化水素、≦0.03wt%の硫黄および≧120の粘度指数を有する、APIのグループIIIベースオイル仕様を満たす、好ましくは、≧90wt%の飽和炭化水素、≦0.03wt-%の硫黄、および≧140である粘度指数を有するAPIのグループIII+ベースオイル仕様を満たす、再生可能なベースオイル、ならびに、生物学的起源のフィードストックからの燃料成分を製造するための方法に関し、該方法は、以下の工程を含む:
a)遊離脂肪酸およびグリセリドを含むフィードストックを提供する工程、
b)フィードストックを
i)遊離脂肪酸を含む第1の流出流のセット、および
ii)グリセリドを含む第2の流出流
の少なくとも2つの流出流に分離する工程、
c)第2の流出流のグリセリドを遊離脂肪酸およびグリセロールへと加水分解する工程、ならびに
d)その後に、工程c)から得られた有脂肪酸を工程b)へと戻してリサイクルする工程
を含む。
【0037】
特定の態様において、第1の排出流のセットは、
iii)炭素鎖長がC12~C16である脂肪酸留分、
iv)炭素鎖長が少なくともC17である任意の脂肪酸留分、および
v)炭素鎖長がC11以下である任意の脂肪酸留分
を含む。
【0038】
好ましい態様において、方法はさらに、第1の流出流の留分(iii)の少なくとも一部または全部を、100~500℃、好ましくは300~400℃の範囲の温度で、および、大気圧~10MPa、好ましくは0.5~3MPaの範囲の圧力で、および、ケトン化触媒の存在下、ケトン含有流を製造するために、ケトン化反応に付す工程e)を含む。
【0039】
別の好ましい態様において、発明はさらに、工程e)に加えて、工程e)のケトン流の少なくとも一部を、脱酸素化された再生可能なベースオイル含有のストリーム、すなわちn-パラフィンを形成するために、水素化脱酸素化に付すさらなる工程f)を含む。
【0040】
別の好ましい態様において、方法はさらに、工程e)に加えて、工程e)のケトン流の少なくとも一部を、脱酸素化されたおよび異性化された再生可能なベースオイル含有流を形成するために、水素化脱酸素化および水素異性化に、同時にまたは順番に付すさらなる工程g)を含む。
【0041】
工程c)から得られるグリセロールは、好ましくは、アルコール、好ましくはプロパノール、および任意にはプロパンジオールへと水素化すれる。
【0042】
一態様において、第1の排出流のセットは、(iii)炭素鎖長がC12~C16である脂肪酸留分および(iv)炭素鎖長が少なくともC17である任意の脂肪酸留分を含む。脂肪酸留分(iv)は、別個で、または、脂肪酸留分(iii)の一部とプレミックスされた後に、ケトン化反応に付されてもよい。別の態様において、脂肪酸留分(iv)は、少なくても部分的にオレオ化学品へと変換される。
【0043】
したがって、一態様において、第1の流出流のセットは、炭素鎖長が少なくともC17である脂肪酸留分、すなわち脂肪酸留分(iv)を含み、および、脂肪酸留分(iv)の少なくとも一部または全てを、100~500℃、好ましくは300~400℃の範囲の温度で、および、大気圧~10MPa、好ましくは0.5~3MPaの範囲にある圧力で、ケトン化触媒の存在下、ケトン含有流を製造するために、ケトン化反応に付すことを含み、ここで、ケトンは、脂肪酸留分(iv)を由来とする。ケトン流は、脂肪酸留分(iii)を由来とするケトン流と混合されてもよいし、または別個に処理に付されてもよい。
【0044】
別の態様において、方法は、脂肪酸留分(iv)の少なくとも一部または全部と脂肪酸留分(iii)の少なくとも一部とを混合物を得るために混合することを含み、および、混合物を、100~500℃、好ましくは300~400℃の範囲の温度で、および、大気圧~10MPa、好ましくは0.5~3MPaの範囲にある圧力で、ケトン化触媒の存在下、ケトン含有流を製造するために、ケトン化反応に付すことを含み、ここで、ケトンは、脂肪酸留分(iii)および脂肪酸留分(iv)を由来とする。
【0045】
フィードストック
本発明の方法における使用に適切なフィードストックは、遊離脂肪酸およびグリセリド、好ましくは2~98重量%、好ましくは5~90重量%の遊離脂肪酸、および、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%のグリセリドを含む。再生可能なベースオイル製造のためにとりわけ適切なフィードストックは、多くのC16脂肪酸、好ましくは少なくとも10重量%のC16脂肪酸、より好ましくは少なくとも15重量%のC16脂肪酸を含むものである。
【0046】
いくつかのオイルおよび脂肪が顕著な量のC16脂肪酸(FA)を含む。脂肪酸の一部はすでに遊離脂肪酸(FFA)の形状であるが、一部はグリセリドに結合しており、例えばC16FA含有グリセリドなどである。
【0047】
表2は、C16およびC18遊離脂肪酸の入手可能性、ならびに、本発明の方法における使用に適切である例示的な脂肪およびオイルの脂肪酸の炭素鎖長および不飽和度を示している(Distillation - Advances from modeling to applications, Cermak, S et al., Distillation of Natural Fatty Acids and Their Chemical Derivatives; National Center for Agricultural Utilization Research, Agricultural Research Service, United States Department of Agriculture, USAを参照のこと)。
【0048】
【表2】
【0049】
植物および魚のオイルならびに動物性脂肪の典型的な基本骨格はトリグリセリドである。トリグリセリドは、グリセロールと3つの脂肪酸分子とのエステルであり、以下の構造を有する:
【化1】
(ここで、R1、R2およびR3は、同一または異なっていてもよく、および、C3~C27炭化水素鎖を示す)。炭化水素鎖長は、典型的には、融資脂肪酸としての形状である場合、16個の炭素(C16)および18個の炭素(C18)である。他の2つの水酸基に結合している脂肪酸の典型的な炭素数は、偶数であり、一般的には、C12~C22の炭素鎖長のあいだである。
【0050】
プロセスに付される前に、生物学的起源のフィードストックは、適切な周知の方法、例えば、熱的に、例えばせん断力などで機械的に、例えば酸または塩基を用いて化学的に、または、放射線照射、蒸留、冷却またはろ過を用いて物理的に前処理されてもよい。化学的および物理的な前処理の目的は、プロセスを妨害するまたは触媒を不活性化する不純物を除去すること、および、望ましくない副反応を減少させることである。
【0051】
したがって、本発明の方法に適切であるフィードストックは、典型的には、モノ-、ジ-および/またはトリグリセリドおよび遊離脂肪酸を含む。例示的なフィードストックは、植物性脂肪、植物オイル、植物性ワックス、動物性脂肪、例えばラード、獣脂、イエローグリース、ブラウングリース、動物オイル、動物性ワックス、魚脂肪、魚オイル、および魚ワックスなどである。好ましくは、フィードストック材料は、廃棄物および/または上述した例示的なフィードストックの残渣に起源をもつ。より好ましくは、廃棄物および/または残渣は、持続可能に製造された製品であって、その製造ルートが追跡可能である製品を起源としてもつ。
【0052】
脂肪酸グリセロールおよび遊離脂肪酸の分離
本発明の方法において、グリセリドは、遊離脂肪酸から、好ましくは真空蒸留によって、分離され、少なくとも2つの流出流を提供し、ここで、第1の流出流は、遊離脂肪酸を含み、および、第2の流出流は、グリセリドを含む。遊離脂肪酸の炭素鎖長は、好ましくは、少なくとも90重量%がC8~C24由来である。
【0053】
第1の流出流の遊離脂肪酸は、好ましくは、種々の炭素鎖長を有する脂肪酸留分を含む。一態様において、遊離脂肪酸は、第1の流出流のセット、すなわち、(iii)の炭素鎖長はC12~C16であり、(iv)の炭素鎖長は少なくともC17である、少なくともストリームを含むいくつかの異なるストリームと、炭素鎖長がC11以下であるストリーム(v)とに分離される。
【0054】
分離は、少なくとも1つの真空蒸留カラム、好ましくは、分離に必要とされる正確性およびフィードストックの脂肪酸分布、フィードストックの種類および質に依存して、順になっていてもよい2~4つのカラムを用いることによって行われ得る。
【0055】
例示的な態様において、分離は、
少なくとも90%の脂肪酸がC11以下である炭素鎖長を有する脂肪酸留分、すなわち大気圧下で、260℃未満、好ましくは240℃未満で沸騰する任意の流出流(v)、
少なくとも90%の脂肪酸がC12~C16である炭素鎖長を有する脂肪酸留分、すなわち大気圧下で、260℃~360℃の範囲で、好ましくは298℃~352℃の範囲で沸騰する任意の流出流(iii)、
少なくとも90%の脂肪酸がC17以上である炭素鎖長を有する脂肪酸留分、すなわち大気圧下で、360℃より高い、好ましくは374℃より高い温度で沸騰する任意の流出流(iv)
を含む第1の流出流のセット、ならびに
グリセリドを含む留分、すなわち、蒸留塔底である第2の流出流
を製造する。
【0056】
蒸留温度は、典型的には、蒸留カラムの出口において測定されるものである。本明細書中において、蒸留温度は、大気圧に対して数学的に調整されている。
【0057】
蒸留塔底の不揮発性の不純物は、例えば脱ガムおよび/または漂白などの従来の方法によって除去され得る。一態様において、分離からの第2の流出流の取り出しの後に別の精製ユニットが存在していてもよい。
【0058】
分離は、単一の蒸留工程で行われてもよいし、2つまたは3つまたはそれ以上の蒸留工程で行われてもよい。蒸留はさらに、蒸留の後に塔底留分に存在しているであろう金属および他の重質の不純物から蒸留物流を精製する。グリセロールから加水分解によって分離された脂肪酸は、グリセロール相に残っている不純物に起因して、純度が高いまま保たれている。続いて過剰の水が水素化分解の前にグリセロールから分離される際に、不純物は水相と共に除去されるであろう。
【0059】
一態様において、方法は、炭素鎖長がC11以下である脂肪酸留分を分離することを含む。この軽質の脂肪酸留分は、オレオ化学品の製造のために使用され得る。この留分の除去は、その後のケトン化反応において有益である。
【0060】
ベースオイルの粘度は、フィード中の脂肪酸の分布の調整によって制御され得る。C12~C16である炭素鎖長を有する脂肪酸を含む流出流は、再生可能なベースオイル製造のためのフィードとして非常に優れている。この選択は、低い粘度および低い揮発性という機能をベースオイル製品に与える。
【0061】
炭素鎖長がC17以上である脂肪酸を含む流出流もまた、ケトン化されるフィードの一部として使用され得、また、より炭素鎖長の長いケトンを製造するために別にケトン化されてもよく、および、より高い粘度のベースオイル応用のために粘度を上昇させるために使用されてもよい。この流出流は、さらに、部分的にまたは代替的に、オレオ化学品に加工されてもよい。
【0062】
一態様において、第1の流出流(iii)の少なくとも一部が、オレオ化学品の製造のために使用される。通常、これは再生可能なベースオイルおよび燃料成分の製造のためのC12~C16脂肪酸の使用可能性を制限する。
【0063】
好ましくは、存在する二重結合は、ケトン化の前に水素化される。
【0064】
グリセリドの加水分解
遊離脂肪酸から分離されたグリセリドは、加水分解される。加水分解は、例えば従来の様式でのColgate-Emeryプロセスなどの周知の方法(Bailey's Industrial Oil & Fat products; 6th editionを参照のこと)を用いて、加水分解ユニット中で行われ得る。加水分解工程は、遊離脂肪酸流および水性グリセロール流を生成する。
【0065】
一態様において、分離されたグリセリドは、加水分解工程に導入される前に、精製に付される。この精製としては例えば、漂白および/または脱臭などが挙げられ得る。
【0066】
例示的な態様において、パーム油が、加水分解カラムの底からフィードされ、そして水がカラムの上からフィードされる。例えば約250℃などの高温、および、例えば約50MPaなどの高圧が、オイルの加水分解が起きる油相への水の溶解性を促進する。粗油は、加水分解タワーの底から頂部までコヒーレントな相として通過し、ここで、より重質なスプリッティング水は分散相としてオイルおよび脂肪酸の混合物を通り抜けながら下方に向かって移動する。脂肪酸およびトラップされた水の混合物が頂部で得られ、そして、10~18%のグリセリドを含む淡水が塔底から回収される。約2時間の反応時間が、99%までの程度のスプリッティングに達するために必要とされる。脂肪酸は、スプリッティングカラムの頂部からエバポレーターへと排出され、ここで、トラップされた水が分離されるか、フラッシュオフされる。含有水分は、脂肪酸の酸化および分解を防止するために除去される。水蒸気がその後凝縮され、そして、フィード水タンクで収集される。
【0067】
別の態様において、グリセリドは、従来の様式で塩基、例えば水酸化ナトリウムなどによって加水分解される(Bailey's Industrial Oil & Fat products; 6th edition参照のこと)。プロセスは、グリセロールと脂肪酸の塩を形成する。脂肪酸は、さらなる処理の前に、それらを例えば硫酸などの強鉱酸塩に接触させることによって、塩から遊離される。過剰の硫酸および形成される硫酸ナトリウムまたはカリウムは、水と洗浄することによって除去される。
【0068】
加水分解ユニットは、酸または腐食性の試薬に適切である機器材料を備える。本発明の方法が有機脂肪酸の主要部分を加水分解の前にフィードストックから分離することを含んでいるため、加水分解ユニットのサイズは、フィードストックがそれ自体として分離の前に加水分解される場合と比較して、顕著に減少され得る。
【0069】
ケトン化
好ましい態様において、脂肪酸を含む1つまたは複数の流出流がケトン化に付される。
【0070】
ケトン化反応は、燃料およびベースオイルの製造においてしばしばそうであるように、生成物の脱酸素化、安定性およびエネルギー密度が標的である場合、非常に優れた脱酸素化反応である。ケトン化は、水素なしに、カルボン酸分子に結合した酸素の75mol-%を除去する。これは、温室効果ガス(GHG)排出量の減少を意図している燃料適用にとって非常に重要なことである。ケトン化反応のあいだ、2つの脂肪酸分子がともに反応され、対応する鎖状ケトンを形成する。1分子のCO2および水が反応中に同時に遊離される。
【0071】
ケトン化反応は、高い変換率で、例えば95%、または98%、または99.9%で、および、優れた選択性で、例えば85%、または92%または95%で起こり得、これは再生可能なベースオイルの収率がほぼ理論値であり得るかの理由である。非常に選択性の高いケトン化のおかげで、ごく少量の軽質炭化水素しか生じないかまたは全く生じず、したがって、ケトン化反応から回収されるbio-CO2は、非常に純度が高く、好ましくは少なくとも99容量%であり、そして、さまざまな応用例に使用可能である。もちろん、本発明の方法によって得られる遊離脂肪酸留分から製造されるケトンもまた、ベースオイルまたは燃料成分製造以外の様々な応用例のための化学品として使用され得る。
【0072】
ケトン化条件は、典型的には、リアクター温度および圧力、使用される触媒、キャリアガス/フィード比、およびフィードの重量空間速度によって特定される。選択される範囲は、最適化されるパラメーターに依存して必要に応じて組み合わせられてもよい。
【0073】
本発明において、ケトン化反応は、100~500℃、好ましくは300~400℃、より好ましくは330~370℃、最も好ましくは340~360℃の範囲の反応温度で行われ得る。圧力は、ケトン化触媒の存在下、大気圧~10MPa好ましくは0.5~3.0MPa、より好ましくは1.0~2.5MPa、最も好ましくは1.5~2.0MPaの範囲の圧力であり得る。適切なケトン化触媒は、1つまたは複数の金属酸化物触媒を含む。金属酸化物触媒の金属は、好ましくは、Ti、Mn、Mg、K、CaおよびZr含有金属酸化物触媒のうちの1つまたは複数から選択される。好ましい触媒は、Ti含有金属酸化物触媒であり、もっとも好ましくは、TiO2含有触媒である。重量空間速度(WHSV)は、0.25~3.0h-1、好ましくは0.5~2.0h-1、より好ましくは1.0~1.5h-1の範囲である。ケトン化反応は、0.1~1.5、好ましくは0.25~1.0、最も好ましくは0.5~0.75gas/feed比(w/w)の範囲のガスの存在下で行われ得、ここで、gas/feed比(w/w)は、ケトン化リアクター中の液体フィードの入口での脂肪酸重量当たりの、ケトン化リアクター中にフィードされたガスの重量を意味する。ガスは、CO2、H2、N2、CH4、H2Oのうちの1つまたはそれ以上から選択され得る。好ましいガスは水素であり、これは、優位には、同様に水素を必要とする例えばHDOなどの次のフェーズへとリアクターを通って流れ得る。特に好ましいガスは、それが生成物ガスであり、そして、フィードへと戻されて効率良くリサイクルされ得、そして、最も選択性の高いケトン化反応を提供することから、CO2である。
【0074】
一態様において、ケトンは、オレオ化学品に変換される。例示的な態様において、オレオ化学品は、アルカン、アミン、イミン、エナミン、アセタール、第二級アルコール、および第三級アルコールからなる群より選択される。ケトンをオレオ化学品に変換するのに適切である例示的、非限定的な反応が以下に示されている。
【0075】
【化2】
【0076】
一態様において、脂肪酸留分(iii)由来のケトンの一部は、オレオ化学品に変換される。
【0077】
一態様において、第1の流出流は、脂肪酸留分(iv)を含み、および、脂肪酸留分(iv)の少なくとも一部は、100~500℃、好ましくは300~400℃の範囲の温度で、および、大気圧~10MPa、好ましくは0.5~3MPaの範囲にある圧力で、ケトン化触媒の存在下、脂肪酸留分(iv)由来のケトンを含むストリームを製造するために、ケトン化反応に付され、そして、脂肪酸留分(iv)由来のケトンの少なくとも一部がオレオ化学品に変換される。
【0078】
さらなる別の態様において、第1の流出流は、脂肪酸留分(v)を含み、および、脂肪酸留分(v)の少なくとも一部は、100~500℃、好ましくは300~400℃の範囲の温度で、および、大気圧~10MPa、好ましくは0.5~3MPaの範囲にある圧力で、ケトン化触媒の存在下、脂肪酸留分(v)由来のケトンを含むストリームを製造するために、ケトン化反応に付され、そして、脂肪酸留分(v)由来のケトンの少なくとも一部がオレオ化学品へと変換される。
【0079】
一態様において、得られたケトン流は、脱酸素化されたおよび異性化された、再生可能なベースオイルを含む生成物流を得るために、水素化脱酸素化(HDO)反応条件および水素異性化反応条件の両方に、同時にまたは順番に、付される。
【0080】
別の一態様において、ケトン流の一部は、脱酸素化されたおよび異性化された、再生可能なベースオイルを含むベースオイル生成物流を得るために、水素化脱酸素化(HDO)反応条件および水素異性化反応条件の両方に、同時にまたは順番に、付され、そして、ケトン流の一部は、オレオ化学品を製造するために使用される。
【0081】
さらに別の態様において、ケトン流の一部は、HDOへと付され、そして水素異性化反応は省略される。この態様において、生成物はn-パラフィンである。
【0082】
水素化脱酸素化(HDO)
得られたケトンの水素化脱酸素化は、例えば、国際公開第2007/068795号、国際公開第2016/062868号、および欧州特許第2155838号明細書などに記載されているように、および、従来の水素化処理触媒および水素を用いて行われ得る。
【0083】
脂肪酸の変換が高く、95~99%である場合、ケトンの脱酸素化は、より温和な条件、例えば、特には、約280~330℃であるエステルまたはカルボン酸の温度と比較して、約250~280℃であるより低い反応温度で行われ得る。HDO変換および対応するn-パラフィンに反応するケトンの選択性は、高く、ほぼ理論値であり、そしてそれゆえ、これらのベースオイル範囲のパラフィンの収率もまた、高い。ケトン化工程からの未変換の酸がフィード中に依然として残存している場合、そのような脂肪酸の脱炭酸が、行われてCO2が生成される。脱炭酸された脂肪酸は、異性化の後、再生可能なディーゼル応用例において、より少ないGHG排出成分として使用され得る。
【0084】
一態様において、水素化脱酸素化は、100~500℃、好ましくは250~400℃、より好ましくは280~350℃、最も好ましくは300~330℃の温度;および、大気圧~20MPa、好ましくは0.2~8MPa、より好ましくは3~6MPa、最も好ましくは4~5MPaの圧力を含む反応条件で行われる。好ましくは、WHSVは、0.5~3h-1、より好ましくは1.0~2.5h-1、最も好ましくは1.0~2.0h-1の範囲である。好ましくは、H2フローは、350~900、より好ましくは350~750、最も好ましくは350~500nL H2/L feedであり、ここで、nL H2/Lは、水素化脱酸素化触媒の存在下、HDOリアクター中のフィードのリットル当たりの、水素のノルマルリットルを意味する。水素化脱酸素化触媒は、好ましくは、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの任意の組み合わせから選択され、例えば、担体上に担持されたCoMo、NiMO、NiW、CoNiMoなどであり、ここで、担体は、好ましくは、アルミナおよび/またはシリカである。
【0085】
異性化
異性化は、国際公開第2007/068795号、国際公開第2016/062868号、および欧州特許第2155838号明細書に記載されているような従来の水素異性化ユニットにおいて行われ得る。水素が異性化工程へと添加される。
【0086】
水素化処理工程および異性化工程の両方は、同じリアクターで、同じリアクター床ででも行われ得る。異性化触媒は、Pt含有の市販の触媒などの貴金属二官能性触媒であり得、例えば、Pt/SAPOまたはPt/ZSM触媒または、例えば非貴金属触媒、例えばNiWなどであり得る。水素化脱酸素化および水素異性化工程は、水素化処理および異性化の両方において例えばNiW触媒を用いて、同じ触媒床で行われてもよい。NiW触媒は、追加で、ディーゼルおよびナフサ製品へのより多くの水素分解をもたらし得、そして、そのような製品がまた再生可能なベースオイル製品と共に望まれている場合に優位な触媒となり得る。
【0087】
異性化工程は、200~400℃、好ましくは250~400℃、より好ましくは280~370℃、最も好ましくは300~350℃の温度で典型的には行われる。圧力は、典型的には、1~15MPa、好ましくは1~6MPa、より好ましくは2~5MPa、最も好ましくは2.5~4.5MPaである。WHSVは、好ましくは0.5~3 1/h、より好ましくは0.5~2 1/h、最も好ましくは0.5~1 1/hであり、H2フローは、好ましくは100~800、より好ましくは200~650、最も好ましくは350~500のin-liter H2/liter feedである。上述した温度、圧力、WHSVおよびH2フローの値の適切な組み合わせを選択することによって、再生可能なベースオイル生成物の分解を避けるまたはその量を減らすために、異性化反応の厳しさを低下させることが好ましいかもしれない。
【0088】
一態様において、水素異性化触媒は、任意にはアルミナおよび/またはシリカ担体上に担持されている、第VIII族金属、好ましくはPd、PtまたはNiおよびモレキュラーシーブを含む。
【0089】
異性化のあいだ、n-パラフィンは、枝分かれされる、すなわちi-パラフィンを形成する。好ましくは、条件は、分岐が分子の末端に、または末端近くに位置されるように選択され、そしてこれゆえ、再生可能なベースオイルまたは再生可能な燃料の低温流動特性が改良される。
【0090】
n-パラフィンの燃料成分またはベースオイル成分のどちらかへの従来の水素異性化のあいだには、分解が存在し得る。したがって、触媒の選択および反応条件の最適化は、異性化工程のあいだ、常に重要である。ベースオイル成分の異性化のあいだの分解に起因して、いくつかの再生可能なディーゼルおよびナフサがまた、形成される。したがって得られる再生可能なディーゼル成分は、非常に優れた低温流動特性を有し、そして、そのまま、すなわち100%で、化石中間蒸留物に混合することなしに、冬用グレードのディーゼル燃料として使用され得る。
【0091】
異性化の後、生成物は、従来の分離プロセス、特には真空蒸留による分留を用いて分留されてもよく、これは、生成物の混合物を含む再生可能なベースオイルを、C3およびC4炭化水素成分を含む再生可能な液化石油ガス(LPG);ガソリン成分としての使用に適切な再生可能なナフサ;再生可能なディーゼルおよび/またはジェット燃料、すなわち例えばHEFAまたはHEFA+成分などの航空燃料、例えば280~300℃または代替的には280~350℃の沸点を有する変圧器オイルなどの変圧器オイル成分;および再生可能なベースオイルに分離し得る。これらの分留物および生成物の一部はまた、例えば熱制御または選択性向上などのプロセスの追加の利益を得るために、ケトン化、HDOまたは異性化ユニットに戻されてリサイクルされ得る。
【0092】
プロパノールおよびプロパンジオールの製造
加水分解から得られるグリセロール流は、さらに、価値の高い燃料成分へと処理されてもよい。
【0093】
一態様において、グリセロール流は、選択的水素化によって、プロパノールおよび/またはプロパンジオールに変換される。
【0094】
例示的な態様において、水素化分解は、それに適した触媒、例えばプラチナ触媒、または、プラチナおよび任意には例えばケイタングステン酸、リンタングステン酸(PTA)、リンモリブデン酸またはケイモリブデン酸などのヘテロポリ酸(HPA)を含み、ジルコニア上に担持されている金属酸二官能性触媒(Pt-HPA/ZrO2)を用いて、大気圧で、または好ましくは、過圧下で行われる。具体的な触媒は、Pt-PTA/ZrO2である。反応は、昇温された温度で、典型的には、150~350℃、好ましくは150~270℃の温度で、H2フローの下で行われる。WHSVは、典型的には、約1 1/hである。
【0095】
プロパノールは、水、プロパノールおよびプロパンジオールを含む反応混合物から、例えば蒸留によって、分離され得る。
【0096】
本発明の方法によって製造されるプロパノールは、ガソリン成分として使用され得、これゆえ、ケトン化ルートのみによって得られるガソリンに適切な成分の収率を高める。収率の向上は、数パーセントであり得る。プロパノールは、ガソリン成分として典型的に使用されるエタノールと比較して、より低い揮発性をもつ。加えて、プロパノールは、良好なオクタン価を有する。
【0097】
この再生可能なガソリン成分は、再生可能なベースオイル製造から得られる再生可能なナフサと混合されてもよく、したがって、完全に再生可能である酸素化された炭化水素燃料の製造を可能にする。現在のところ、生物起源の廃棄特性を改善する酸素化された成分と高いエネルギー密度を提供する炭化水素成分の両方を有する、100%再生可能な市販のガソリン製品は存在しない。本発明の再生可能なベースオイル生成物からの、芳香族を含まないがむしろ低オクタン価の再生可能なナフサ成分へのプロパノールの混合は、プロパノールがブレンドのオクタン価を改善させることができ、および、芳香族を含まない再生可能ナフサが燃料ブレンドのエネルギー密度を増加させているため、有益である。
【0098】
脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル含有流、または、蒸留された再生可能なベースオイルは、100ppm未満の酸素含有量をもち、100℃で3~15sCtの粘度、120より大きい粘度指数、120より大きい、好ましくは140より大きい、例えば140~170のあいだなどの粘度指数を有し得る。
【0099】
例えば、脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流は、380℃より高い沸点
例えば450℃より高い、例えば460℃より高い、例えば470℃より高い、例えば480℃より高い、または例えば500℃より高い沸点を有する留分中に再生可能なベースオイルが得られるように蒸留され得る。例えば、蒸留は、例えば380℃より高い1つまたは複数の再生可能なベースオイルの留分、例えば380~450℃のあいだの留分、および、450℃より高い留分を与える。蒸留のあいだ、他の留分、例えばナフサ留分および/またはディーゼル留分などがまた単離され得る。これらの留分は、水素化脱酸素化および水素異性化反応のあいだの分解、ならびに、ケトン化工程からの非常に少量の未変換の遊離脂肪酸の結果である。
【0100】
さらなる任意のプロセスの工程
脂肪酸中に存在する二重結合は、ケトン化に先だって水素化されてもよい。前水素化(図1には示さず)は、好ましくは、90~300℃、より好ましくは110~280℃、最も好ましくは120~260℃の温度で行われる。圧力は、好ましくは1.0~7.0MPa、より好ましくは2.0~6MPa、最も好ましくは3~5MPaである。WHSVは、好ましくは0.25~3 1/h、より好ましくは0.5~2 1/h、最も好ましくは1~1.5 1/hである。H2フロー nL H2/liter feedは、好ましくは100~500、より好ましくは150~450、最も好ましくは200~400である。
【0101】
水素化脱酸素化および水素異性化が、順に起こる場合、水素化脱酸素化および水素異性化のあいだにストリッピング工程が存在していてもよく、ここで、ガスは液体から分離される。これは、高温および高圧の分離工程において、例えば、300~350℃、好ましくは320~330の温度、および、3MPa~6MPaのあいだ、好ましくは4MPa~5MPaのあいだの圧力で、行われ得る。ストリッピング工程は、図1には示されていない。
【0102】
水素異性化の後、任意の水素化仕上げ工程があってもまたよく、ここで、生成物は、さらなる水素化工程を、例えばアルミナ担体上に担持されているNiMoなどの水素化触媒の存在下で行うことによって安定化される。しかしながら、例えばアルミナおよび/またはシリカ担体上に担持された元素周期表の第VIII族の金属を含む他の水素化仕上げ触媒もまた使用され得る。水素化仕上げ触媒は、好ましくは担持されたPd、Pt、またはNi触媒であり、担体はアルミナおよび/またはシリカである。水素化仕上げ工程は、反応条件に関して前水素化工程と同様である。しかしながら、水素化処理工程においては、典型的には、より高い圧力、およびある程度のより高い温度が使用される。これは、フィードがこの段階では、行う可能性のある、ケトン化に先立つ脂肪酸の前水素化と比較して、完全に脱酸素化されているためである。水素化仕上げ工程は、生成物を安定化し、および脱色するために存在しており、特には、存在しているか、または例えば水素異性化のあいだなどその前の工程のあいだに形成された、二重結合または芳香族化合物の水素化を含んでいる。水素化仕上げ工程は、300℃未満、例えば280℃未満、または260℃未満の温度で行われ得る。水素化仕上げはまた、180℃より高く、例えば190℃より高く、または200℃より高くてもよい。水素化仕上げのための温度は、好ましくは、180~300℃、より好ましくは190~280℃、最も好ましくは200~250℃である。圧力は、好ましくは、5~20MPa、より好ましくは10~18MPa、最も好ましくは14~16MPaである。WHSVは、好ましくは0.5~3.0 1/h、より好ましくは0.75~2.5 1/h、最も好ましくは1.0~2.0 1/hである。水素化仕上げ工程は、図1には示されていない。
【0103】
例示的な態様
図2および3は、パーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)および動物性脂肪のそれぞれを出発物質として再生可能なベースオイルおよびその他の価値の高い再生可能な生成物を製造するための本発明のプロセスの例示的な態様を示している。図において、反応工程および流出流は、符号および矢印/大文字でそれぞれ印が付けられている。図において、記号C16FA、C18FA+、および軽質 FA’sは、それぞれ、第1の流出流(iii)、(vi)および(v)を示している。それぞれの工程の収率は、表3(フィードストックとしてRFAD)および表4(フィードストックとして動物性脂肪)に、フィードストックの1000ktonから出発した場合のktonとして示されている。比較例の収率もまた、グリセリドの脂肪酸(脂肪酸リサイクル)を使用することなく行われた比較例のプロセスで与えられている。
【0104】
フィードとしてPFADの使用
図2に示されている態様において、フィードとして使用されたPFAD Aは、88重量%の遊離脂肪酸、および12重量%の脂肪酸グリセリドを含む。PFAD中の遊離脂肪酸はそれぞれ、ほぼ、C16FAおよびC18FAの1:1混合物である。
【0105】
グリセリドは、真空蒸留カラムである分離ユニット21において脂肪酸から分離される。120ktonのグリセリドBが分離後に得られ、その他は遊離脂肪酸である。
【0106】
グリセリドは、水性の酸とともに加水分解22に付され、水性のグリセロール流Lおよび遊離脂肪酸Cを与える。PFAD中に存在するグリセリドの加水分解は、115ktonの遊離脂肪酸Cを形成し、このうち53ktonがC16FAであり、57ktonがC18FAである。加水分解は、遊離脂肪酸に、および生成されたグリセロールに水を付加する(K、約6.4重量%、すなわち7.7ton)ため、これらの生成物の重量もまた増大する。PFAD中に存在したグリセリドの加水分解は、約115ktonの遊離脂肪酸Cを生成し、グリセロールLの収率は、12ktonである。グリセロールは、蒸留によって水から分離される。
【0107】
加水分解からの遊離脂肪酸Cは、分離ユニット21に戻されてリサイクルされ、そして、フィード中に元から存在していた遊離脂肪酸と併せられる。併せられたFFAsは、真空蒸留によって分離ユニット21内で分留される。脂肪酸の分留は、好ましくは、250~275℃の温度、1~5MPaの圧力、例えば2MPaの圧力で行われる。分留は、460ktonのC16FA Dおよび492ktonのC18FA+ Eを生成する。
【0108】
C16FA D留分は、ケトン化されたC16FA流Gをもたらすために、ケトン化
触媒の存在下でケトン化23に付される。ケトン化触媒は、Ti含有金属酸化物触媒である。ケトン化反応は、340~360℃の温度、1.5~2MPaの圧力で行われる。WHSVは、1~1.5 1/hである。ケトン化反応は、約0.5~0.75gas/feed比(w/w)である二酸化炭素ガスの存在下で行われる。
【0109】
ケトン化反応から得られる液体のケトン流Gは、ガス状生成物および水からフラッシュドラムを用いて分離される。CO2および水はさらに、冷却によって分離される。ケトン化工程は、非常に選択的であり、および、85wt-%より多い(ケトン収率の理論値は87.9wt-%である)高い収率で所望の長鎖ケトンを生成し、およびまた、反応において生成された、ケトンおよび水からの分離後のCO2は、高い純度(>99wt-%)のものである。したがって生成されたbio-CO2は、収集され、そして、様々な応用に使用され得る。
【0110】
本発明で用いた、1000ktonのPFADを起源とするC16FAのケトン化は、39.5ktonのbio-CO2を生成した。ケトン化にフィードされたC16FA留分は、395.2ktonのケトンGを生成する。
【0111】
ケトン化されたC16FA Gは、水素化脱酸素化24および水素異性化反応25の両方に付される。水素化脱酸素化および水素異性化反応は、順番に行われる。生成物は、脱酸素化および水異性化された、再生可能なベースオイルJを含むベースオイル流Iである。
【0112】
水素化脱酸素化反応は、アルミナ担体上に担持された水素化脱酸素化触媒、NiMoの存在下で行われる。水素化脱酸素化工程は、n-パラフィンHを提供するために、水素化脱酸素化条件の下で固定床リアクター中で行われる。水素化における温度は、300~330℃であり、および、圧力は、4~5Mpaである。WHSVは、便宜的に約1~2 1/hであり、および、H2フローは、350~500nL H2/L feedである。
【0113】
PFADを起源とするケトン化されたフィードの水素化脱酸素化は、376.6ktonのn-パラフィンを生成した。
【0114】
水素化脱酸素化工程の生成物Hは、水素および異性化触媒の存在下で異性化工程に付される。異性化触媒は、Pt含有の市販の触媒である。異性化工程は、300~350℃のあいだで行われ、圧力は、2.5~4.5Mpaのあいだである。WHSVは、0.5~1.0 1/hのあいだであり、および、H2フローは、350~500nL H2/liter feedである。
【0115】
PFADフィードを起源とする水素化脱酸素化されたn-パラフィンの水素異性化は、301.3ktonの分岐パラフィンを生成した。
【0116】
得られた脱酸素化されたおよび異性化された生成物流Iは、再生可能なベースオイルおよび燃料成分を含む。生成物の分留26が真空蒸留によって行われ、これは、再生可能なLPG(液化石油ガス;C3およびC4炭化水素成分)、再生可能なナフサ(ガソリン成分)、再生可能なディーゼルおよび/またはジェット燃料、および再生可能なベースオイルを分離する。
【0117】
分離工程21は、遊離脂肪酸Cおよびグリセロール Lへと加水分解される、120ktonのグリセリドBを生成する。生成されたグリセロールは、選択的な水素化27によってプロパノールに変換され、ここで、プロパノールは、200~300℃で、Pt修飾ZrO2触媒の存在下でのグリセロールの触媒的変換によって調製される。
【0118】
プロパノールMの収率は、PFADがフィードストックとして使用された場合、8ktonである。プロパノールは、水相から分離28され、そして、ケトン化ルートからの再生可能なナフサと混合され得る。
【0119】
C18FA+留分Eは、オレオ化学品の製造のために使用され得、または、ケトン化され得る。ケトン化される場合、C18FA+留分Eは、ケトン化の前に、C16FA留分 Dと混合されてもよく、またはそれは別個にケトンがされ、およびケトン流Gと混合されてもよい。生成物の粘度は、ケトン化反応におけるC18FA+/C16FA比を変化させることによって調節され得る。C18FA+留分およびC16FA留分が別々にケトン化される場合、形成された2つのケトン流が所望のとおり混合され得、そして、所望のとおりさらに一緒に処理され得る。
【0120】
ケトン化されたC16FA留分Gの一部は、アルカン、アミン、イミン、エナミン、アセタール、第二級アルコール、および第三級アルコールなどのオレオ化学品に変換され得る。
【0121】
C18FA+留分Eの一部または全部は、ケトン化され得、および、アルカン、アミン、イミン、エナミン、アセタール、第二級アルコール、および第三級アルコールなどのオレオ化学品に変換され得る。
【0122】
軽質FA留分Fもまた、ケトン化の後に、アルカン、アミン、イミン、エナミン、アセタール、第二級アルコール、および第三級アルコールなどのオレオ化学品に変換され得る。
【0123】
本発明の方法を用いてPFADから得られた生成物の収率が表3にまとめられている。表はさらに、比較例のプロセス、すなわちフィード中に存在するグリセリドを利用することのないプロセスに関する収率を示している。
【0124】
【表3】
【0125】
フィードとして動物性脂肪の使用
図3に示されている態様において、動物性脂肪が、20重量%の遊離脂肪酸および80重量%の脂肪酸グリセリドを含むフィードとして使用される。動物性脂肪は、C16脂肪酸よりも顕著に多いC18脂肪酸を含む(重量で60.6%対25.6%)、
【0126】
フィードは、RFADフィードに関して記載されたものと同様にプロセスに付される。図3中の参照番号、矢印、大文字は、図2において上記で説明されているものである。
【0127】
本発明の方法を用いて動物性脂肪フィードから出発して得られる生成物の収率が、表4にまとめられている。表はさらに、グリセリド加水分解およびリサイクルから得られるFFFAを使用しないでプロセスが行われる場合の収率も示している。
【0128】
【表4】
【0129】
表3および表4からわかるように、グリセリドが加水分解された場合、そして、したがって形成された遊離脂肪酸がプロセスにリサイクルされる場合、いくつかの有用な生成物の収率が顕著に増大した。例えば、C16FA RBOの収率は、476%増加した。さらに、グリセロール留分は、例えばガソリン成分として使用され得る高価値なバイオプロパノールへと処理され得る。
【0130】
上記の記載において提供された特定の例は、添付の特許請求の範囲および/または適応性を制限するものとして考えられるべきではない。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
≧90wt%の飽和炭化水素、≦0.03wt%の硫黄および≧120の粘度指数を有する、APIのグループIIIベースオイル仕様を満たす再生可能なベースオイル、ならびに、再生可能な燃料成分を、生物学的起源のフィードストックから製造するための方法であって、
a)好ましくは廃棄物および残渣材料を起源とする、遊離脂肪酸およびグリセリドを含むフィードストックを提供する工程、
b)前記フィードストックを、
(i)遊離脂肪酸を含む第1の流出流、および
(ii)グリセリドを含む第2の流出流
を含む少なくとも2つの流出流に分離する工程、
c)前記第2の流出流のグリセリドを遊離脂肪酸およびグリセロールを提供するために加水分解する工程、ならびに
d)前記工程c)で得られた前記遊離脂肪酸を前記分離工程b)へとリサイクルする工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の排出流が、
iii)炭素鎖長がC12~C16である脂肪酸留分、
iv)炭素鎖長が少なくともC17である任意の脂肪酸留分、および
v)炭素鎖長がC11以下である任意の脂肪酸留分
を含む第1の流出流のセットである請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、以下の工程
e)ケトン含有流を製造するために、前記第1の流出流の脂肪酸留分(iii)の少なくとも一部または全部を、100~500℃、好ましくは300~400℃の範囲の温度で、および、大気圧~10MPa、好ましくは0.5~3MPaの範囲の圧力で、ケトン化触媒の存在下、ケトン化反応に付す工程
を含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ケトン化触媒が、金属酸化物触媒であり、および、前記金属酸化物触媒の金属が、好ましくは、Mg、K、Sc、Y、La、Ce、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Mo、Rh、Sn、Ti、Mn、Mg、Ca、Zrのうちの1つまたは複数から選択され、より好ましくは、Ti含有金属酸化物触媒であり、最も好ましくはTiO2含有触媒である請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ケトン化反応が、0.1~1.5gas/feed比(w/w)の範囲のガスの存在下で行われ、前記ガスが、CO2、H2、N2、CH4、H2Oのうちの1つまたはそれ以上から選択され、好ましくはCO2である請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
さらに、以下の工程
f)前記工程e)の前記ケトン含有流の少なくとも一部を、n-パラフィン含有流を形成するために、水素化脱酸素化に付す工程
を含む請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
さらに、以下の工程
g)前記工程e)の前記ケトン含有流の少なくとも一部を、再生可能なベースオイル含有流を形成するために、水素化脱酸素化反応および水素異性化反応に、同時にまたは順番に付す工程
を含む請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水素化脱酸素化反応および前記水素異性化反応に付すことが、順番に行われ、および、前記工程g)が、水素化脱酸素化および水素異性化のあいだに液体をガスから分離することをさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記水素化脱酸素化反応が、水素化脱酸素化触媒の存在下、100~500℃、好ましくは250~400℃の範囲の温度;大気圧~20MPa、好ましくは0.2~8MPaの範囲の圧力;好ましくは0.5~3h-1の範囲のWHSV、および、好ましくは350~900nL H2/L feedであるH2フローで行われる請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記水素化脱酸素化触媒が、担体上に担持されたPd、Pt、Ni、CoMo、NiMO、NiW、CoNiMoから選択され、ここで、前記担体は、好ましくは、アルミナおよび/またはシリカである請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記水素異性化反応が、水素異性化触媒の存在下、200~450℃、好ましくは250~400℃の範囲の温度;1~15MPa、好ましくは1~6MPaの範囲の圧力;0.5~3h-1の範囲のWHSV、および、好ましくは100~800nL H2/L feedであるH2フローで行われる請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水素異性化触媒が、任意にはアルミナおよび/またはシリカ担体上に担持された、第VIII族金属、好ましくはPd、PtまたはNi、およびモレキュラーシーブを含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
再生可能なベースオイル、および好ましくは、再生可能な液化石油ガス、再生可能なナフサ、再生可能なジェット燃料および/または再生可能なディーゼルから選択される1つまたは燃料成分を得るために、前記再生可能なベースオイル含有流を、好ましくは蒸留による、分離に付すことを含む請求項7~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
再生可能なプロパノール、および任意には再生可能なプロパンジオールを生成するために、前記工程c)の前記グリセロールを、触媒の存在下、好ましくはPt修飾ZrO2触媒の存在下、昇温で、好ましくは150~350℃、より好ましくは150~270℃で、水素を用いて処理することを含む請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記脂肪酸留分(iv)が、オレオ化学品へと変換される請求項2記載の方法。
【請求項16】
前記脂肪酸留分(v)が、オレオ化学品へと変換される請求項2記載の方法。
【請求項17】
前記再生可能なベースオイルが、≧90wt%の飽和炭化水素、≦0.03wt%の硫黄および≧140の粘度指数を有する、APIのグループIII+ベースオイル仕様を満たす請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記フィードストックが、2~98重量%、好ましくは5~90重量%の遊離脂肪酸、および、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%のグリセロールを含む請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記フィードストックが、植物性脂肪、植物オイル、植物性ワックス、動物性脂肪、動物オイル、動物性ワックス、魚脂肪、魚オイル、PFADおよび魚ワックスから、好ましくはPFADおよび動物性脂肪からなる群より選択される請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記再生可能なプロパノールおよび前記再生可能なナフサが、ガソリン成分としての使用のために混合される請求項13または14記載の方法。
【国際調査報告】