IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポーラー メタリ オーワイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】引き紐組立体
(51)【国際特許分類】
   A01K 27/00 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A01K27/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540333
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(85)【翻訳文提出日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2020050780
(87)【国際公開番号】W WO2020148262
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】20195021
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521305088
【氏名又は名称】ポーラー メタリ オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】サウッコ,マッティ
(57)【要約】
犬などのペット動物用の巻き取り式引き紐組立体10が提供される。引き紐組立体は、ハンドル2が少なくとも1つのヒンジ継手11によって取り付けられたケーシング本体1と、制動装置と、延長可能なリード線3が巻き付けられ、ペット動物の首輪またはハーネスに取り付け可能に構成されたスプール機構4とを備え、前記引き紐組立体において、ハンドルは、ケーシング本体1に対して継手11を中心として関節運動するように構成され、ハンドル2の前記関節運動は、引き紐につながれた動物によってリード線3に加えられた引張力によって引き起こされ、前記関節運動によって、制動装置6は制動作用を開始し、引張力の増大に比例してリード線3の巻き出し速度を低下させる。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル(2)が少なくとも1つのヒンジ継手(11)によって取り付けられたケーシング本体(1)と、制動装置と、延長可能なリード線(3)が巻き付けられ、ペット動物の首輪またはハーネスに取り付け可能に構成されたスプール機構(4)とを備える、ペット動物用の巻き取り式引き紐組立体(10)であって、前記引き紐組立体(10)において、前記ハンドルは、前記ケーシング本体(1)に対して前記継手(11)を中心として関節運動するように構成され、前記ハンドル(2)の前記関節運動は、引き紐につながれた動物によって前記リード線(3)に加えられた引張力によって引き起こされ、前記関節運動によって、前記制動装置(6)は制動作用を開始し、引張力の増大に比例して前記リード線(3)の巻き出し速度を低下させることを特徴とする、巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項2】
前記制動装置(6)は、前記継手(11)を中心とした前記ハンドル(2)の関節運動時に、前記スプール機構(4)および/または前記リード線(3)と接触する、請求項1に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項3】
前記制動装置(6)は、引張力が前記リード線(3)に加えられている限り、前記スプール機構(4)および/または前記リード線(3)との接触を維持するように構成される、請求項1または請求項2に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項4】
前記制動装置(6)は、前記継手(11)を中心とした前記ハンドル(2)の関節運動時に、前記スプール機構(4)と相互接続するように構成される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項5】
前記継手(11)を中心とした前記ハンドル(2)の関節運動時に、前記制動装置(6)および前記スプール機構(4)は平ギヤ(スパーギヤ)系を形成し、外ギヤは前記制動装置(6)によって形成され、内ギヤ(4A)は前記スプール機構(4)によって形成される、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項6】
前記制動装置(6)は、摩擦制動装置として構成される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項7】
前記制動装置(6)と前記スプール機構(4)および前記リード線(3)のいずれか一方または両方との間の接触面積および/または摩擦力は、引張力の増大に比例して増大する、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項8】
前記制動装置(6)は、前記ハンドル(2)の内部に配置される、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項9】
ばね式巻取機構として構成されるのが好ましい巻取機構(5、5A)をさらに備える、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項10】
前記巻取機構(5、5A)は、前記ケーシング本体(1)の内部に配置される、請求項9に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項11】
前記スプール機構(4)から前記リード線(3)が巻き出される速度を調整するように構成された制動力制御装置(7)をさらに備える、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項12】
位置ロック機構(9)を具備するのが好ましい瞬時停止制動機構(8)をさらに備える、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項13】
前記リード線(3)は、コードまたは平紐として構成される、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)。
【請求項14】
ペット動物の歩行および訓練のための請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の巻き取り式引き紐組立体(10)の使用。
【請求項15】
犬の歩行および訓練のための請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
全般的には、本発明は、犬などのペットおよびコンパニオンアニマル用の巻き取り式引き紐に関する。特に、本発明は、引っ張る動物によって引き紐機構に加えられる牽引力の量に比例して制動作用を生成し、発揮するように構成された巻き取り式引き紐組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットおよびコンパニオンアニマル用、特に犬用の巻き取り式引き紐またはリードは、当技術分野で周知である。従来の巻き取り式引き紐は、プラスチックケーシングによって形成され、コードまたは平バンドがスプールに巻き付けられたばね式スプールを備え、首輪またはハーネス用の取り付け手段を具備した外側端部を有する、ハンドルとして提供される。
【0003】
犬が引っ張ると、コードは巻き出され、典型的には所定の長さまでケーシングの外側に延びる。牽引力がない場合、コードは、ケーシング内に引き戻されながら、ばね付勢作用によってスプールに自動的に巻き戻される。典型的には、巻き取り式犬用引き紐は、コードの伸長を制御するためのレバー、ボタンなど、および/または制動器具のようなユーザ制御手段を有する。
【0004】
従来の引き紐装置の利用に関連する最も一般的な欠点の1つは、上述の制動器具が主に急制動用に構成されており、そのために、スプールが直ちにロックされることである。その結果、全速力で走ることが多い犬は、突然、無理に停止させられる。これは犬にとって苦痛であり、犬の首および脊椎に損傷を引き起こすことがある。大きな停止力の結果として、犬の飼い主も手に裂傷を負ったり、腕または肩を捻挫したり、さらには転倒することもある。さらに、突然の衝撃は、コードを破断させることがあり、その場合、放された動物は、重傷を負うか、または他の動物を怯えさせるか、さらには傷つけることもある。
【0005】
段階的な制動を発揮するための多くの解決策が知られている。例えば、米国特許第9339014号明細書(Wettermannら)には、巻き取り式ペット用引き紐システムが開示されている。このシステムでは、使用者が押しボタンを押すことによって摩擦による制動作用が開始される。したがって、制動効率は、(使用者によって)押しボタンに加えられる力に比例する。同様の装置が、米国特許出願公開第2012/079994号明細書(Chefetz)および国際公開第2014/118758号パンフレット(Vaccari)に開示されている。これらの装置は全て、適切なスイッチを切り替えるかまたはボタンを押すことによって、制動作用を手動で開始することに基づいている。
【0006】
欧州特許第2621265(B1)号明細書(Ek)は、所定の閾値を超える速度で引き出された場合にケーシングからのコードの引き出しを防止するように構成された自動制動機構を有する中実ハンドルとして提供された巻き取り式引き紐を開示している。自動制動作用は、遠心力が増大すると互いに押し付けられる多くの内部器具を介して行われる。かなりの数の内部相互接続部品のために、該機構は、機械的衝撃による損傷を受けやすい。
【0007】
この点に関して、段階的な制動によりペットに不快な停止を行わせることを回避することができるように構成された巻き取り式引き紐装置を提供することが依然として望ましい。さらに、制動機構は信頼性および耐久性に優れていることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、関連技術の欠点を取り除く、または少なくとも軽減することである。この目的は、独立請求項1において定義された内容に従って提供される巻き取り式引き紐組立体の様々な実施形態によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
好ましい実施形態では、ハンドルが少なくとも1つのヒンジ継手によって取り付けられたケーシング本体と、制動装置と、延長可能なリード線が巻き付けられ、ペット動物の首輪またはハーネスに取り付け可能に構成されたスプール機構とを備える、ペット動物用の巻き取り式引き紐組立体であって、前記引き紐組立体では、ハンドルは、ケーシング本体に対して継手を中心として関節運動するように構成され、ハンドルの前記関節運動は、引き紐につながれた動物によってリード線に加えられた引張力によって引き起こされ、前記関節運動によって、制動装置は制動作用を発揮し、引張力の増大に比例してリード線の巻き出し速度を低下させる、巻き取り式引き紐組立体が提供される。
【0010】
一実施形態では、前記巻き取り式引き紐組立体において、制動装置は、継手を中心としたハンドルの関節運動時に、スプール機構および/またはリード線と接触する。
【0011】
一実施形態では、巻き取り式引き紐組立体において、制動装置は、引張力がリード線に加えられている限り、スプール機構および/またはリード線との接触を維持するように構成される。
【0012】
一実施形態では、巻き取り式引き紐組立体において、制動装置は、継手を中心としたハンドルの関節運動時に、スプール機構と相互接続するように構成される。
【0013】
一実施形態では、巻き取り式引き紐組立体において、継手を中心としたハンドルの関節運動時に、制動装置およびスプール機構は平歯車(スパーギヤ)系を形成し、外ギヤは制動装置によって形成され、内ギヤはスプール機構によって形成される。
【0014】
別の実施形態では、巻き取り式引き紐組立体において、制動装置は摩擦制動装置として構成される。
【0015】
一実施形態では、巻き取り式引き紐組立体において、制動装置とスプール機構およびリード線のいずれか一方または両方との間の接触面積および/または摩擦力は、引張力の増大に比例して増大する。
【0016】
一実施形態では、巻き取り式引き紐組立体において、制動装置はハンドルの内部に配置される。
【0017】
一実施形態では、巻き取り式引き紐組立体は、好ましくはばね式巻取機構として構成される巻取機構をさらに備える。一実施形態では、巻取機構は、ケーシング本体の内部に配置される。
【0018】
一実施形態では、巻き取り式引き紐組立体は、スプール機構からリード線が巻き出される速度を調整するように構成された制動力制御装置をさらに備える。
【0019】
一実施形態では、巻き取り式引き紐組立体は、好ましくは位置ロック機構を具備した瞬時停止制動機構をさらに備える。
【0020】
一実施形態では、巻き取り式引き紐組立体において、リード線はコードまたは平紐として構成される。
【0021】
別の態様では、独立請求項14において定義された内容に従って、ペット動物の歩行および訓練のための先の態様の巻き取り式引き紐組立体の使用が提供される。一実施形態では、犬の歩行および訓練のための使用が提供される。
【0022】
本発明の有用性は、その各々の特定の実施形態に応じて様々な理由から生じる。全体として、本発明により、使用者は、ペット動物の引っ張りを穏やかな方法で防止することが可能である。本明細書で提供される引き紐組立体では、制動作用は、引き紐につながれたペット動物によってリード線上に加えられた引張力によって発揮されて維持され、その結果、ほとんどの場合、ペットは、自身によってその引張力を「制御」することができる。このような構成により、ペット動物、特に、犬は、効率的に、および/またはより短期間で、(引っ張り無しの)適切な引き紐歩行の訓練が可能になる。
【0023】
加えて、本明細書に開示される引き紐組立体は、使用者に、ペットが突然停止させられる瞬時制動を回避するように促す。したがって、ペットおよび使用者の両方の不都合および怪我を効果的に回避することができる。
【0024】
さらに、本明細書で提供される引き紐組立体は、製造が簡単であり、かつ製造のコスト効率が良い。
【0025】
本開示の文脈では、用語「関節運動する」は、用語「回転する」と同じ意味で利用されている。
【0026】
「~の数」という表現は、ここでは、1から始まる任意の正の整数を示すのに使用される。
【0027】
本発明の異なる実施形態は、詳細な説明および添付の図面を考慮することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A-1B】一実施形態に係る巻き取り式引き紐組立体10の正面図および側面図である。
図2A-2B】ケーシングの一方の半部が取り外された引き紐組立体10の斜視図および側面図である。
図3A-3B】「ブレーキオフ」位置および「ブレーキオン」位置における引き紐組立体10の側面図である。
図4】引き紐組立体10の分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の詳細な実施形態は、添付図面を参照しながら本明細書に開示されている。以下の通り、図面全体を通して同一の参照番号は同一の部材を示すのに使用されている。
10-引き紐組立体
10A-ケーシング
1-ケーシング本体
2-ハンドル
1A、2A-ケーシング内の内部(成形)骨格構造
3、3A-リード線およびケーシング内の関連する穴
4、4A-スプール機構および環状内ギヤ
5、5A-巻取機構の部品 6-制動装置(引張力作動式)
7-制動力制御装置
8-瞬時停止制動装置
9-位置ロック機構
11-ヒンジ継手
12-ケーシング本体とハンドルとの間に形成された間隙
13-持ち手用開口部
【0030】
図1Aおよび図1Bは、本発明に係るペット動物用の巻き取り式引き紐組立体(以下、「引き紐組立体」という)の様々な実施形態の基礎となる概念を10で示す。引き紐組立体10は、接続部品(ここでは、1および2)が所定の回転軸を中心として互いに対して回転することを可能にする少なくとも1つの機械的軸受11によってハンドル2が取り付けられた本体1を有するケーシング10Aを備える。軸受11は、好ましくは、例えば、ヒンジ継手などの回転継手11として構成される。本体1およびハンドル2は、使用者に快適なハンドグリップを提供するように設計されるのが好ましい開口部13を形成する(図1B)。
【0031】
スプール機構(図示せず)に巻き付けられたリード線3は、一実施形態では、ケーシング本体1上に配置された穴3Aを介してケーシング10Aから外に延びるように構成される。引き紐組立体10は、ハンドル2上に穴3Aを備えるようにさらに構成され得る(図示せず)。リード線3は、好ましくは、コード/ストリングまたは平紐として構成される。リード線3は、好ましくは、所定の長さ(ペット動物の大きさ、体重、種類および/または品種に応じて、例えば、5m、10mまたは25mで変化し得る)で提供される。
【0032】
リード線3は、穴3Aを通って延長可能な端部に、適宜にリード線および引き紐組立体をペットの動物の首輪またはボディハーネスに取り付けるための手段を備える。前記取付手段は、好ましくは、当技術分野で周知のスナップフックまたはいわゆるカラビナクリップ取付具である。当業者には明らかなように、前記取付手段の定義は、例えば、単一の引き紐組立体で一度に数匹のペットを歩行させることを可能にするカプラをさらに含み得る。
【0033】
一実施形態では、ケーシング10Aの各部品、すなわち、本体1およびハンドル2は、線X-X’(図1A)に沿って互いに接合された2つの半部、右半部および左半部(図4)から構成される。半部は、好ましくは、成形または任意の他の適切な方法によって耐久性プラスチックから作製される。
【0034】
図2Aおよび図2Bは、側壁(成形された半部の一方で表される)が取り外された状態の引き紐組立体10を示す。ケーシング10Aの内部には、リード線3が巻き付けられたスプール機構4が配置されている。図1A図2Bに示されている引き紐組立体では、スプール機構4は、内側面に切削された歯を有する環状ギヤ装置4Aを備える、または環状ギヤ装置4Aからなるリムとして構成される。いくつかの実施形態では、本発明は、ギヤ機構によって確立される平ギヤ(スパーギヤ)の原理を主に利用しており、この原理では、いわゆる内ギヤ(内側面に切削された歯を有するリムまたはシリンダ)が外ギヤ(外側面に切削された歯を有する)と噛み合わされる。
【0035】
引き紐組立体は、巻取機構5、5Aをさらに備える。巻取機構は、好ましくは、ケーシング本体1の内部に配置される。巻取機構は、少なくとも1つのばねまたはコイル、例えば、渦巻ばねを含む、ばね式巻取機構であるのが好ましい。このばねによって生じた張力により、ペット動物が動き回ることができるようにリード線3が伸縮し、リード線が緩んで地面に落ちることが防止される。
【0036】
図2A図2Bに示されている引き紐組立体では、渦巻ばね(図示せず)は、スタブシャフト軸受5A(図4に示されている)上の外ギヤ5として具現化されたハウジング内に配置され得、このギヤ5は、スプール機構4の環状ギヤ4Aと噛み合う。ばねは、その一方の端部によってスタブシャフト5Aに接続され、その他方の端部によってギヤ5の内部に接続され得る。スタブシャフト軸受5Aは、巻取機構5の静止部分を形成する。
【0037】
説明されている実施形態(図1A図1B図4)では、引き紐組立体10が完全に組み立てられたときに、ギヤ5はケーシング10Aの内部に留まり、軸受要素5Aはケーシング10Aの両側面の側部パネルを形成する。このようにして、要素5、5Aおよび少なくとも1つのばねは、巻取機構を形成する。
【0038】
いくつかの構成では、ばねはギヤ5の外側に配置され得、その場合、軸受5Aは、ばね(図示せず)の回転運動を変換するように構成され得る。
【0039】
引き紐組立体10は、制動装置6をさらに備える。制動装置は、好ましくは、ハンドル2の内部に配置される。図3Aおよび図3Bを参照すると、本発明の概念に従って、動物が引き紐を引っ張ることによって加えられた引張力の増大に比例して制動作用が段階的に発揮されることの基礎となるメカニズムが示されている。図3Aは、リード線3に引張力が加えられていない状態(制動作用なし、「ブレーキオフ」位置)の引き紐組立体を示しており、図3Bは、リード線が引っ張る動物に取り付けられた(制動作用開始、「ブレーキオン」位置)引き紐組立体を示している。
【0040】
明確にするために、ケーシング10Aおよび引き紐組立体10の内部に設けられた着脱可能な要素は、例えば、ケーシング(したがって、左半部および右半部)の内側に成形によって設けられた内部骨組構造1A、2A(図3B図4参照)によって支持されることに留意されたい。
【0041】
引き紐組立体10において、ハンドル2は、ケーシング本体1に対して継手11を中心として関節運動するように構成されることが好ましい。前記関節(または回転)運動は、引き紐につながれた動物によってリード線3に加えられた引張力によって生じる。さらに、動物がリード線3を引っ張ることで引き起こされる関節運動によって、制動装置6は制動作用を開始して、引張力の増大に比例してリード線3の巻き出し速度を低下させる。
【0042】
図3Aおよび図3Bに示されている引き紐組立体10では、制動作用は以下のように発揮される。引き紐組立体が使用されていないとき、または引き紐組立体が引っ張っていないペット動物を歩行させるために使用されるとき、ハンドル2はケーシング本体1と緊密に係合される。ケーシング本体1とハンドル2との間の接続点は、図3Aに破線の円で示されている。リード線3は、ケーシング10Aの外側に残っている(ペット用首輪またはハーネスの)取付手段(図示せず)を除いて、スプール機構4に完全に巻き付けられる。巻取機構5は、張力から解放される。
【0043】
ペット動物が速度を上げると、リード線3はスプール機構4から巻き出しを開始する。動物は、リード線3に牽引(引張)力を付与し、そのことにより、引張力から生じるトルクがハンドル2に加えられ、ハンドル2は、ケーシング本体1に対して継手11を中心として回転させられる。ハンドルは、継手軸を中心として所定の角度まで回転し、その結果、制動装置6は、スプール機構4および/またはリード線3と接触する。トルクの増大は、引張力の増大に比例する。
【0044】
制動装置6がスプール機構4および/またはリード線3と接触すると、スプール機構の回転速度が低下する。同時に、それに応じてリード線3の巻き出し速度が低下する。スプールの回転速度およびリード線の巻き出し速度は、リード線および引き紐組立体に加わる引張力の増大に比例して低下する。同時に、制動装置6とスプール機構4およびリード線3のいずれか一方または両方との間の接触面積および/または摩擦力は、引張力の増大に比例して増大する。換言すれば、ペット動物が引き紐を引っ張るほど、制動作用が大きくなる。
【0045】
制動装置6は、引張力がリード線3に加えられている限り、スプール機構4および/またはリード線3との接触を維持することが好ましい。
【0046】
いくつかの構成では、上述した形のケーシング本体1に対する継手11を中心としたハンドル2の関節運動/回転は、制動装置6をスプール機構4と相互接続させる、または連動させる。したがって、図3Aおよび図3Bに示されている実施形態では、制動装置6は、スタブシャフト軸受、スプール、またはバレル上に任意選択的に設けられたギヤ要素として構成され、そのことにより、前記制動装置6およびスプール機構4は(その内ギヤ4Aを介して)共に、上記で開示した平ギヤ系を形成する。
【0047】
図3A図3Bとを比較すると、(継手11を中心としたハンドル2の回転を引き起こす)制動作用時に、本体1からのハンドル2の部分的な係脱が生じ、そのことにより、図3Bの矢印Aで示されている割れ目が形成されることが分かる。ハンドル2は、継手11によって本体1に取り付けられた状態のままである。ケーシング10Aの前記割れ目の形成は、ケーシング内(すなわち、ハンドル2内)の内部骨格構造2Aを引張力の方向と本質的に反対の方向へ変位させ、この場合、(リード線3および引き紐組立体10に作用する)引張力の方向は、ペット動物の移動方向に本質的に一致する。
【0048】
内部骨格構造2Aにおける上述の変位時に、制動装置6は、スプール機構4と接触するように「押し込まれ」、「押し込み」は、引張力の方向と本質的に反対の方向に生じる。
【0049】
したがって、外ギヤとして構成された制動装置6は、スプール機構4の内ギヤ4Aと相互接続する、または噛み合う。環状ギヤ4A上の「ピニオン」ギヤ6の空間的移動は、内部骨格構造2Aを設けることにより制限される(図3B参照)。その結果、スプール4の回転が減速され、それに応じて前記スプールに巻き付けられたリード線3の巻き出し速度が低下する。スプール機構4の回転速度およびリード線3の巻き出し速度は、引き紐につながれた動物によってリード線3に加えられた引張力の増大に比例して低下する。
【0050】
上述の構成により、ペット動物に及ぼされる段階的な制動作用が実現され得る。
【0051】
上述したように、割れ目A(図3B)の形成および引張力の方向と本質的に反対の方向への内部骨格構造2Aの変位(ケーシング本体1に対する継手11を中心としたハンドル2の関節運動時に引き起こされる事象)は、ケーシング構造10A内の間隙12(図1図2および図3B)の形成を伴い、ケーシング本体1はハンドル2から部分的に係脱される。本実施形態では、ケーシング本体1および/またはハンドル2は、間隙12が形成されるように、本質的に環状のスプール機構4に沿って摺動するように構成される。引張力がない場合、ハンドル2および/またはケーシング本体1は、(図3Aに示されているように)摺動して初期位置に戻る。
【0052】
いくつかの代替構成(図示せず)では、制動装置6は、摩擦制動装置として構成され得る。そのような場合、制動装置は、スプール機構に巻き付けられたリード線と直接接触し得る。上述した構成では、制動装置がスプール機構およびリード線の上方に配置される(制動装置6がスプール機構4の下方に配置されている上述のギヤ媒介解決策とは逆である)ことが有利である。
【0053】
引き紐組立体10は、スプール機構の回転速度と、リード線3が前記スプール機構4から巻き出される速度とを調整するように構成された制動力制御装置7をさらに備える。制御装置7は、レバー、スイッチ、押しボタン、または少なくとも2つのスイッチモード間での切り替えを可能にする任意の他の適切な機構として構成され得る。したがって、制御装置7は、ペットの挙動に応じて制動力を調整するように構成される。
【0054】
用語「制動力」は、ここでは、制動装置6がスプール4の回転を停止させ、それに応じてリード線の巻き出しを停止させ、その結果、ペット動物も立ち止まらせる能力を示すために使用される。
【0055】
したがって、ペットが引き紐を引っ張る傾向がある場合、制御装置7は「緊縮」位置に設定され得、制動装置6はスプール機構4と接触することができる。反対に、引っ張りがない場合には、制動装置7は「弛緩」位置に設定され得、制動装置6はスプール4と接触しない。技術的解決策に応じて、制御装置7は、2つ以上の段階のモードを含み得る。
【0056】
図3A図3Bに示されている実施形態では、「緊縮」モードは、外ギヤ6を(スプール4内の)内ギヤ4Aと噛み合った状態で、または噛み合わない状態で接触させることによって実現され得る。例えば、その外側螺旋を形成するギヤ6の先端または面は、噛み合わない状態であっても、ギヤ4Aの外側螺旋を形成する先端または面と位置合わせされ得る。
【0057】
さらに好ましくは、引き紐組立体10は、例えば、ペット動物またはペット動物に対面する人間の突然の危険を考慮して「緊急停止」を可能にするための瞬時停止制動装置8を具備する。したがって、場合によっては、段階的な制動は、ペットが事故に遭う、または事故を引き起こすのを防止するには十分な速さではない。事故の発生を防止するために、瞬時停止制動装置8は、使用者によって手動で作動可能であり、そのため、スプール機構4の回転およびリード線3の巻き出しが直ちに停止される。瞬時停止制動装置8は、好ましくは、位置ロック機構9を具備する。位置ロック機構9は、スライドスイッチ、押しボタン、または任意の他の適切な機構として具現化され得る。
【0058】
例えば、暗闇の中および/または冬季における屋外活動中のペット動物の安全性を高めるために、引き紐組立体10上に背面反射要素が設けられ得、および/またはリード線3が背面反射材料(図示せず)で作製され得る。
【0059】
別の態様では、上述した実施形態のいずれかの巻き取り式引き紐組立体10の使用は、ペット動物の歩行および訓練のために提供される。好ましい実施形態では、引き紐組立体10は、犬を歩行させ、訓練するように構成される。犬の大きさ、体重および/または品種に応じて、引き紐組立体10は、少なくともケーシングのサイズ、リード線の長さおよび/または前記リード線の材料に関して、尺度変更され得ることが当業者には明らかである。
【0060】
犬以外のペット動物、例えば、猫、ウサギまたはフェレットを歩行させるための引き紐組立体10の使用は除外されない。
【0061】
技術の進歩に伴い、本発明の基本概念は、その範囲に含まれる様々な変更を包含することを意図していることは、当業者には明らかである。したがって、本発明およびその実施形態は、上述の実施例に限定されず、添付の特許請求の範囲内で概ね変化し得る。
【符号の説明】
【0062】
10 引き紐組立体
10A ケーシング
1 ケーシング本体
2 ハンドル
1A、2A ケーシング内の内部(成形)骨格構造
3、3A リード線およびケーシング内の関連する穴
4、4A スプール機構および環状内ギヤ
5、5A 巻取機構の部品
6 制動装置(引張力作動式)
7 制動力制御装置
8 瞬時停止制動装置
9 位置ロック機構
11 ヒンジ継手
12 ケーシング本体とハンドルとの間に形成された間隙
13 持ち手用開口部
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
【国際調査報告】