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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】偏光フィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220112BHJP
   G02C 7/12 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G02B5/30
G02C7/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540904
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(85)【翻訳文提出日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2019073958
(87)【国際公開番号】W WO2020058022
(87)【国際公開日】2020-03-26
(31)【優先権主張番号】18195692.1
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521117377
【氏名又は名称】エム イー アイ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソンソーニ、ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ドルチ、アンジェロ
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA22
2H149BA01
2H149BA02
2H149EA19
2H149FB03
(57)【要約】
【課題】偏光レンズのレンズ偏光軸の配向を容易に特定するための、簡潔で費用効率の高い手段を提供する。
【解決手段】本発明は、光を通すための複数の領域(25)を含み、各領域(25)が他の領域(25)から分離され、各領域(25)が直線偏光子であり、領域(25)の少なくとも2つは異なる偏光軸を有している。本発明はさらに、偏光レンズ(31)のレンズ偏光軸の向きを決定し、前記偏光フィルタ(20)を使用するための装置(1)、ならびにレンズ偏光軸の向きを決定する方法に関する。前記装置(1)を用いた偏光レンズ(31)の作製に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する複数の領域(25)であって、各領域(25)がその他の領域から分離している前記領域(25)を備え、
各前記領域(25)が直線偏光子であり、前記領域(25)のうち少なくとも2つの領域が異なる偏光軸を有する、偏光フィルタ(20)。
【請求項2】
前記偏光フィルタ(20)が、好適には固体で不透明のディスク体を好適には備える偏光フィルタディスクであり、
前記領域(25)が、好適には、前記ディスク体における窓として設けられ、
前記窓が、好適には、前記直線偏光子として、金属箔のような直線偏光フィルタ素子を備え、より好ましくは前記直線偏光フィルタ素子によって閉じられている、請求項1に記載の偏光フィルタ(20)。
【請求項3】
前記偏光フィルタ(20)が、それに基づいて前記領域(25)の偏光軸を導き出すことができる明示的又は暗示的な基準を備え、
前記基準が、好適には、
・前記偏光フィルタ(20)上、好適には前記ディスク体上の基準マークと、
・前記偏光フィルタ(20)、好適には前記ディスク体の形状と、
・少なくとも1つ以上又は全ての前記領域(25)、好適には前記窓の、互いの相対位置及び/又は前記偏光フィルタ(20)、好適には前記ディスク体上での位置と、
・少なくとも1つ以上又は全ての前記領域(25)、好適には前記窓の形状と、からなる群の少なくとも1つを備える、請求項1又は2に記載の偏光フィルタ(20)。
【請求項4】
前記領域(25)が、規定された態様で、好適には格子状、又は円(C)に沿って、且つ好適には均等に分散した態様で配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光フィルタ(20)。
【請求項5】
前記領域(25)、好適には前記窓の少なくともいくつか、好適には全てが、同一の形状、例えば、円形状、長方形状、正方形状、矢印又は部分円形状の形状を有し、
矢印形状の前記領域(25)の矢じりが、前記領域(25)の偏光軸に沿った方向を指す、請求項1~4のいずれか1項に記載の偏光フィルタ(20)。
【請求項6】
円(C)に沿って配置される前記領域(25)の偏光軸が、それぞれ、規定の態様で、好適には前記円(C)の中心(X)において、互いに交差するように配置される、請求項1~5のいずれか1項に記載の偏光フィルタ(20)。
【請求項7】
区別可能な異なる偏光軸の配向が、少なくとも90°の範囲を超えて分散、好適には均等に分散され、及び/又は、区別可能な異なる偏光軸を有する少なくとも2つの前記領域(25)の偏光軸が、それぞれ、少なくとも15°、好適には少なくとも10°、より好適には少なくとも5°、最も好適には2°の角度αを形成する、請求項1~6のいずれか1項に記載の偏光フィルタ(20)。
【請求項8】
前記偏光フィルタ(20)、好適にはディスク体が、丸い形状、好適には円形状、又は多角形状、好適には長方形若しくは正方形の形状を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の偏光フィルタ(20)。
【請求項9】
偏光レンズ(31)のレンズ偏光軸の配向を特定する装置(1)であって、
無偏光の光(11)を出射する光源(10)と、
前記偏光レンズ(31)を収容するレンズ受入部(30)と、
請求項1~8のいずれか1項に記載の偏光フィルタ(20)とを備え、
前記レンズ受入部(30)及び前記偏光フィルタ(20)が、前記光源(10)によって出射された前記光(11)が、前記偏光フィルタ(20)の前記領域(25)及び前記レンズ受入部(30)を順番に通過するように配置される、装置(1)。
【請求項10】
前記偏光フィルタ(20)の前記領域(25)及び前記レンズ受入部(30)を通過した前記光源(10)の光(31)を受光する光強度測定装置(41)を更に備え、
前記光強度測定装置(41)が、前記偏光レンズ(31)が前記レンズ受入部(30)内に位置付けられている場合、前記偏光フィルタ(20)の前記領域(25)のそれぞれに関する異なる光強度を検出するように構成され、
前記光強度測定装置(41)が、カメラ、カメラをベースとしたシステム、個別の光検出器及び/又は複数の光検出器を備える、請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記装置(1)を制御する制御システム(40)を更に備え、好適には少なくとも、それぞれの前記領域(25)に関して検出され、前記領域(25)の偏光軸のそれぞれと相関する異なる光強度に基づいて、好適には、基準(正弦波の)計算を用いて、前記レンズ受入部(30)内に位置付けられる前記偏光レンズ(31)のレンズ偏光軸の配向を特定する前記光強度測定装置を制御する制御システム(40)を更に備える、請求項9又は10に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記偏光フィルタ(20)及び前記レンズ受入部(30)が、相対位置が不変に設けられる、請求項9~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
・請求項9~12のいずれか1項に記載の装置(1)を提供する工程と、
・検出対象の直線偏光レンズ(31)をレンズ受入部(30)内に配置する工程と、
・光源(10)を操作して、無偏光の光を、偏光フィルタ(20)の領域(25)及び前記レンズ受入部(30)内の前記偏光レンズ(31)に向けて、前記領域(25)と前記偏光レンズ(31)とを順番に通過するように出射する工程と、
・前記偏光フィルタ(20)の前記領域(25)及び前記偏光レンズ(31)を通過した光の、前記偏光フィルタ(20)のそれぞれの前記領域(25)に関して異なる光強度を検出する工程と、
・それぞれの前記領域(25)で検出され、前記領域(25)の偏光軸のそれぞれと相関する異なる光強度に基づいて、前記偏光レンズ(31)のレンズ偏光軸の配向を特定する工程とを含む、偏光レンズ(31)のレンズ偏光軸の配向を特定する方法。
【請求項14】
異なる光強度を検出する前記工程が、前記光強度測定装置(41)によって実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
レンズ偏光軸の配向を特定する前記工程が、制御システム(40)によって実行され、
前記制御システム(40)が、好適には、特定されたデータ及び/又は前記光強度測定装置(41)から受信したデータを出力し、好適には、出力装置に表示するため、及び/又は、他のプロセス工程、例えば、レンズ偏光軸の配向に基づいてレンズをエッジングするエッジング工程において、及び/又は、好適にはエッジング工程の後の最終点検工程において使用するために、出力する、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルタ、上記偏光フィルタを用いた偏光レンズのレンズ偏光軸の配向を特定する装置、及び上記配向を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術において、非金属面での光、通常は太陽光、の反射を軽減するために、偏光眼鏡を使用することが一般に知られている。通常、太陽光は非偏光であり、そのような光が非金属面で反射すると、上記光は、通常は地面又は反射面に対して平行に、ある程度偏光される。すなわち、上記光は、通常は水平に反射されて偏光される。表面に当たって入射する光の束はこのように集光されて、見る者の目を眩ませる。これは、(目を眩ませる)ギラつきとしても知られる。
【0003】
先行技術では、ギラつきを回避するために、偏光レンズを使用することがよく知られている。そのため、レンズ又は眼鏡は、対応する化学物質の垂直方向パターンにより被覆されており、当該パターンは水平な光を遮断してギラつきを取り除く。これは、水平な光波が化学物質の被覆パターンを通過せず、除去されるからである。従って、上記レンズから眼鏡を製造する際は、偏光レンズの偏光軸の配向が最も重要となる。
【0004】
こうした眼鏡の製造においては、上記レンズの偏光軸の配向を割り出すプロセスが知られており、次に、レンズのエッジング工程を実行して、所望の方向、すなわち、垂直方向に配向された偏光軸を有する眼鏡を製造するのに必要とされる。
【0005】
レンズにおける偏光軸の個別の配向を特定するには、通常、偏光軸の配向が既定で既知であるフィルタが使用される。このレンズは、レンズの視線方向に、偏光レンズに対して重なるように配置される。そして、フィルタ及びレンズは、レンズ及びフィルタの両方に対して垂直な軸線を中心として、互いに相対回転される。光源が、好適にはレンズの凸側に設けられて、レンズ及びフィルタの両方を通過する無偏光の光を射出する。レンズ及びフィルタの光源の反対側には、光源から出射されてレンズ及びフィルタの両方を通過した光を検出するセンサが設けられる。センサは、レンズとフィルタの積層構造を通過した光の量を測定できる。
【0006】
2枚の偏光レンズは、偏光の配向が同じである(偏光軸が互いに平行に配置された)場合、光波がこれらのレンズを通過するのを許容する一方、レンズが90°の角度に相対回転された(偏光軸が互いに垂直に配置された)場合、ほとんど全ての光波を遮断することが知られている。これは、フィルタに当たった光が、それぞれの偏光軸の配向により特定の方向に偏光されるからである。レンズの偏光軸が、フィルタの偏光軸に対して同じ、すなわち、平行に配置された場合、光は、その両方を通過できる。レンズの偏光軸の配向が、フィルタの偏光軸の配向に対して垂直に配置された場合、光は、本明細書に上記した理由により遮断される。レンズ及びフィルタの偏光軸間の角度が0°~90°にあるとき、光波の遮断の程度は滑らかに推移する。従って、こうした偏光フィルタを用いて、フィルタ及びレンズを備える系を通過した光の量に基づいてレンズの偏光の配向を検出することができる。検出は、2つの偏光光学素子を通過する非偏光の光の強度が、これらの2つの素子の偏光軸間の角度に応じて低減されるという原理に基づく。
【0007】
偏光フィルタを用いて、この構造を通過した光を異なる角度で測定することで、偏光レンズの偏光の配向を検出する機械装置が知られている。そのため、レンズ及びフィルタは、例えば平均特定等によって偏光の配向を特定可能とする複数回の測定を実行しながら、互いに相対回転される。レンズの偏光軸の配向が判明すると、それに従ってレンズをエッジングして、その偏光軸が規定(縦方向)の配向を有する眼鏡を得ることができる。通常、光強度は正弦波の法則に従って変動することから、偏光軸の配向の正確な検出には、約10回の異なる角度での測定で十分である。
【0008】
偏光レンズに対して偏光フィルタを回転させる既知の機械装置は、かなり高価であり、滑らかで正確な移動を可能としながら、一定の基準点を有する制御された回転軸線を必要とする。手動及び自動の機械装置が知られている。手動の機械装置は、操作者に、ユーザが手作業で観測した該系を通過した光の量に応じた偏光軸の配向の特定を委ねる。自動の機械装置は、光センサを用いて光量を検出することで、センサが受信した光量から偏光軸の配向を特定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、ここでは、本発明は、偏光レンズのレンズ偏光軸の配向を容易に特定するための、簡潔で費用効率の高い手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、光を通過する複数の領域であって、各領域がその他の領域から分離している領域を備える偏光フィルタが提供され、各領域は、ライナー偏光子(すなわち、規定の(配向の)偏光軸を有する)であり、領域のうち少なくとも2つの領域は、(その/それ自体の)偏光軸(の配向)が異なる、すなわち、(互いに)区別可能な異なる偏光軸を、好適には(実質上)同じ平面に有する(すなわち、全ての偏光軸が、同じ又は(実質上)平行な平面内に延在する)。
【0011】
換言すると、偏光フィルタは、視線方向視において何らかの態様で隣り合って設けられた複数の領域を備える。これらの領域は、それぞれ、特定の偏光の光のみを通過させる直線偏光を行う。本発明において、「異なる偏光軸」又は「区別可能な異なる偏光軸」は、領域のうち少なくとも2つの領域の偏光軸が、これら2つの領域間の偏光差の特定を可能とする角度αを示すことを意味する。上記角度αは、好適には1°~45°、より好ましくは1°、2°、5°、7.5°、10°、15°、20°、22.5°又は45°であってもよい。
【0012】
本発明に係る偏光フィルタによって、1枚の偏光フィルタのみを用いて、一方のフィルタの偏光軸と他方の検出対象の偏光レンズの偏光軸との間の多くの異なる相対配向を同時に考慮することが可能となり、その結果、検出対象の偏光レンズの偏光軸の特定を容易に可能としながら、上記フィルタとその偏光レンズとの相対移動を回避できる。
【0013】
偏光フィルタは、好適にはディスク体を備える偏光フィルタディスクであってもよい。ディスク体は固体であってもよい。従って、偏光フィルタを容易に提供できる。ディスク体は不透明であってもよい。領域は、特に、ディスク体が不透明性素材によって作られている場合には、ディスク体における窓として設けられてもよい。これらの窓は、直線偏光子として、金属箔等の直線偏光フィルタ素子を備えてもよく、好適にはそれによって閉じられる。
【0014】
偏光フィルタは、それに基づいて領域の偏光軸(の配向)を導き出すことを可能とする明示的又は暗示的な基準を備えてもよい。従って、領域の区別可能な異なる偏光軸が設定されることにより、既知のものとなる。これによって、偏光フィルタから領域の偏光軸を容易に導き出すことが可能となり、検出対象の偏光レンズの偏光軸の配向の正確且つ容易な測定が可能となる。基準は、好適には、偏光フィルタ(好適にはディスク体)上の基準マーク、偏光フィルタ(好適にはディスク体)の形状、少なくとも1つ以上又は全ての領域(好適には窓)の相対位置及び/又は偏光フィルタ(好適にはディスク体)上での位置、及び/又は少なくとも1つ以上又は全ての領域(好適には窓)の形状からなる群の少なくとも1つを備える。当然のことながら、先行技術において既知のいかなる他の基準を設けて、その基準から領域の偏光軸を導き出すようにしてもよい。例えば、領域のそれぞれに、偏光軸の方向を向いた矢印、コード(例えばバーコード)、又は、例えば、基準軸線に対する偏光軸の角度を示す数字等といった、視覚的な基準を設けてもよい。
【0015】
領域は、規定された態様で、好適には格子状、又は円に沿って、且つ好適には均等に分散した態様で配置されてもよい。これによって、偏光レンズの偏光軸の配向の容易な特定が可能となる。特に、円に沿った配置によって、領域の偏光軸の明確に規定された認識可能な配向を可能としてもよい。例えば、円に沿って配置された領域の偏光軸は、それぞれ、規定の態様で互いに交差するように配向されてもよい。好適には、偏光軸は、(仮想)円の中心で互いに交差して、領域の位置によって、領域のそれぞれの偏光軸を容易に導き出すことが可能となるようにしてもよい。
【0016】
領域(好適には窓)の少なくともいくつか、好適には全てが、同一の形状を有する。これらの領域の形状は、例えば、円形状、長方形状、正方形状、矢印又は「部分円形状」の形状であってもよい。矢印形状の領域の場合、上記領域の矢じりが、この領域の偏光軸に沿った方向を指してもよい。これも、それに基づいて領域の偏光軸を容易に導き出すことを可能とする明示的な基準であってもよい。
【0017】
区別可能な異なる偏光軸の配向は、少なくとも90°の範囲を超えて分散され、好適には均等に分散される。更に又は或いは、区別可能な異なる偏光軸を有する少なくとも2つの領域の偏光軸は、それぞれ、少なくとも15°、好適には少なくとも10°、より好適には少なくとも5°、最も好適には2°の角度αを形成する。実際は、上記角度αは、好適には1°~45°の範囲にあってもよく、より好ましくは1°、2°、5°、7.5°、10°、15°、20°、22.5°又は45°であってもよい。つまり、本明細書で上述したように、ある他の領域に対して区別可能な異なる偏光軸を有する各領域が、上記の他の領域の偏光軸との間に角度αを示す偏光軸をそれぞれ有する。これにより、所定の偏光フィルタを用いて、極めて正確でありながら極めて容易且つ費用効率の高い手法で検出対象の偏光レンズの偏光軸の配向を容易に特定することが可能となる。
【0018】
偏光フィルタ、及び好適にはディスク体は、丸い形状、好適には円形状、又は多角形状、好適には長方形若しくは正方形の形状を有してもよい。しかしながら、偏光フィルタの形状は、本発明によって限定されるものではない。非対称的な形状の場合、既に本明細書で上述したように、偏光フィルタ自体の形状がそれに基づいて領域の偏光軸を導き出すことを可能とする基準であってもよい。
【0019】
本発明における他の態様によれば、偏光レンズのレンズ偏光軸の配向を特定する装置が提供される。上記装置は、無偏光の光を出射する光源を備える。また、装置は、レンズを収容するレンズ受入部を備える。レンズ受入部は、好適には、レンズを単体で収容可能に構成されるか、レンズ受入部による収容時にレンズが既にフレームに取り付けられた状態とするように構成される。また、装置は、本発明に係る偏光フィルタを備える。レンズ受入部及び偏光フィルタは、光源から出射された光が、偏光フィルタの領域及びレンズ受入部を順番に通過するように配置され、すなわち、上記の順序又は逆の順序で配置される。従って、この装置を用いることで、レンズ受入部に収容された検出対象の偏光レンズのレンズ偏光軸の配向を、区別可能な異なる偏光軸を有する複数の領域に基づいて測定することができ、レンズ及び偏光フィルタの相対回転が不要な、容易且つ正確な手法によってレンズ偏光軸の配向を容易に特定できる。
【0020】
装置は、偏光フィルタの領域及びレンズ受入部を通過した光源の光を受光する光強度測定装置を更に備えてもよい。光強度測定装置は、検出対象の偏光レンズがレンズ受入部内に位置付けられている場合、偏光フィルタの領域のそれぞれに関する異なる光強度を検出するように構成されてもよい。これによって、レンズと共にそれぞれの領域を通過した光の異なる光量を容易に検出して、偏光レンズのレンズ偏光軸の配向を特定することが可能となる。光強度測定装置は、光センサ、カメラ、カメラをベースとしたシステム、及び/又は個別の光検出器及び/又は複数の光検出器等の光検出器を備えてもよい。また、他の既知の光強度測定装置、すなわち、任意の種類の光センサを本発明に係る装置内で用いてもよい。
【0021】
装置は、装置を制御する制御システムを更に備えてもよく、好適には少なくとも、それぞれの領域に関して検出され、それらの偏光軸のそれぞれと相関する異なる光強度に基づいて、レンズ受入部内に位置付けられる偏光レンズのレンズ偏光軸の配向を特定する光強度測定装置を制御する制御システムを更に備えてもよい。これは、好適には、基準(正弦波の)計算を用いて行われる。制御システムを用いることで、好適には、検出対象の偏光レンズのレンズ偏光軸の配向を、半自動的又は自動的に特定することが可能となる。
【0022】
最も好ましい実施形態では、偏光フィルタ及びレンズ受入部は、相対位置が不変に設けられ、好適には、偏光フィルタは固定偏光フィルタである。これが可能なのは、特定対象となるレンズ偏向軸について、異なる領域によって異なる偏向軸の相対配向が検出可能となり、偏光レンズと偏光フィルタとの相対移動を回避可能とするからである。
【0023】
本発明の他の態様によれば、偏光レンズのレンズ偏光軸の配向を特定する方法が提供される。上記方法は、
・本発明に係る装置を提供する工程と、
・検出対象の直線偏光レンズをレンズ受入部内に配置する工程であって、好適には、直線偏光レンズの凸側が光源側に向けられる、又は突出するようになっており、レンズを単体で収容可能とするか、レンズ受入部内に配置される際にレンズが既にフレームに取り付けられている状態とする、工程と、
・偏光フィルタの領域及びレンズ受入部内の偏光レンズに向けて無偏光の光を出射し、該光が偏光フィルタの領域及び偏光レンズを順番に通過する(すなわち、光がまず領域を通過し次いで偏光レンズへ、又は逆の順序で順番に通過でき、換言すると、光源の無偏光の光が、偏光フィルタと偏光レンズの第1素子を通過した後、偏光フィルタと偏光レンズの第2素子に到達する前に偏光される)ように、光源を操作する工程と、
・偏光フィルタの領域のそれぞれ及び偏光レンズを通過した光の、偏光フィルタの領域のそれぞれに関する異なる光強度を検出する工程と、
・それぞれの領域で検出され、それらの偏光軸のそれぞれと相関する異なる光強度に基づいて、偏光レンズのレンズ偏光軸の配向を特定する工程とを含む。
【0024】
上記方法によって、レンズのフィルタに対する相対移動が不要な、容易且つ正確な手法によって、検出対象の偏光レンズのレンズ偏光軸の配向を容易に特定できる。そして、配向を手動で検出できるだけでなく、半自動的又は自動的にも検出できる。
【0025】
例えば、異なる光強度を検出する工程は、領域及びレンズの両方を通過した全ての光を受光する/検出する、本明細書で定義した光強度測定装置によって実行されてもよい。
【0026】
また、レンズ偏光軸の配向を特定する工程は、制御システムによって実行されてもよい。これに関連して、制御システムは、好適には、特定されたデータ及び/又は光強度測定装置から受信した若しくは光強度測定装置によって検出されたデータを出力してもよい。これは、例えば、出力装置に上記データを表示するため、及び/又は、他のプロセス工程、例えば、レンズ偏光軸の配向に基づいてレンズをエッジングするエッジング工程において、及び/又は、好適にはエッジング工程の後の最終点検工程において使用するために、行われてもよい。エッジング工程及び/又は最終点検も、本発明に係る方法に含まれてもよい。
【0027】
本発明の更なる態様、詳細及び利点を、添付の図面の図を参照しながら、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る装置の概略側面図を示す。
図2図2は、本発明に係る偏光フィルタの3つの異なる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、偏光レンズ31のレンズ偏光軸の配向を特定する装置1を示す。装置1は、無偏光の光11を出射する光源10を備える。上記光源10は、一般的な電球、LED照明、蛍光灯照明などのような任意の種類の光源10、又は、無偏光の光を放射するその他の任意の種類の光源10でよい。
【0030】
装置1は、偏光レンズ31を収容するレンズ受入部30を更に備える。図1では、偏光レンズ31が、既にレンズ受入部30内に設置されている。レンズ受入部30は、例えばクランピングによって、レンズを適所に収容して保持する任意の種類の構造的特徴を備えてもよい。レンズ受入部30は、好適には、偏光レンズ31を容易且つ取り外し可能にその内部に配置可能とし、偏光レンズ31を、規定の態様で装置内に位置付ける。好適には、偏光レンズ31は、その凸面が光源10側に向けられる、つまり、光源10に向かって突出するようにレンズ受入部30内に配置される。
【0031】
図1に示す検出対象の偏光レンズ31は、レンズ受入部30内でその凸面が光源10側となるように位置づけられた矯正レンズである。しかしながら、検出対象の偏光レンズ31は、偏光レンズ31である限り、任意の大きさ、素材、色、倍率であってよく、任意の種類のコーティングを備えていてもよい。偏光レンズ31は、処方箋不要のプラノレンズ、又はフルシールドレンズであってもよい。更に、偏光レンズ31の外形/形状又はそのエッジング後の最終形状は、本発明によって限定されるものではない。
【0032】
また、装置1は、本発明に係る偏光フィルタ20を備える。この偏光フィルタ20は、装置1内に固定的に設けられてもよい。しかしながら、偏光フィルタ20を装置1に取り外し可能に設けることで、保守目的や、異なる種類の偏光フィルタ20を装置1内に設けるために、偏光フィルタ20を取り外し可能又は交換可能とすることも可能であり、好ましい。更に、偏光フィルタ20は、単体で、本発明の個別の部品、すなわち、主題を形成する。
【0033】
偏光フィルタ20は、光を通過させる複数の領域25を備える。図2から分かるように、各領域25は、その他の領域25から分離しており、図2に示すように、視線方向視、すなわち、動作する視線方向視で重ならないようになっている。領域25は、好適には、全てが同じ又は平行な平面に延在する。
【0034】
図2の様々な実施形態に示すように、領域25の全てが同一の形状を有してもよい。図2Aでは、領域25は矢印形状を有し、図2Bでは、領域25は長方形の形状を有し、図2Cでは、領域25は「部分円形状」の形状を有する。当然のことながら、領域25は、任意の他の種類の形状でよい。また、領域25は、異なる形状を有してもよい。
【0035】
領域25のそれぞれは直線偏光子であり、少なくとも2つ、好適にはより多くの領域25が、(その/それ自体の偏光軸の配向が)互いに区別可能な異なる偏光軸を有する。好適には、領域25の偏光軸は、少なくとも一部、しかし好適には全てが、実質的に同じ平面又は(実質的に)平行な平面内に延在する。例えば、図2Aを参照すると、矢印形状の領域25は、ここでは、それぞれの領域25の偏光軸に沿った方向を指す矢じりを有する。
【0036】
このように、領域25は、領域25が円形に沿って配置される図2A及び図2Cに例示するように、規定の態様で配置されてもよい。また、領域25は、均等に分散する態様で配置されてもよい。また、領域25は、格子状に設けられてもよい。しかしながら、図2Bに示すような、領域25の未規定配置も可能である。これに関連して、それぞれの領域25の偏光軸は、それらの長方形の構造の長手方向の延在に沿って配向されてもよい。
【0037】
再び図2Cを参照し、円形に沿って配置される領域25の偏光軸は、それぞれ、規定の態様で、ここでは好適には(仮想)円Cの中心Xにおいて、互いに交差するように、配向されてもよい。
【0038】
いずれの場合も、偏光フィルタ20は、それに基づいて領域25の偏光軸を導き出すことを可能とする明示的又は暗示的な基準を備えてもよい。基準は、好適には、偏光フィルタ20上に基準マークを備える。基準は、例えば長方形の形状を有する場合は、偏光フィルタ20の形状を備えてもよい。しかしながら、偏光フィルタ20は、円形状の偏光フィルタ20を示す図2A及び図2Cに示すような丸い形状といった、基準として用いられる任意の他の形状や、基準として用いられることさえない任意の他の形状を有してもよい。偏光フィルタ20は、図2Bに示すような矩形の形状といった、多角形の形状で設けられてもよい。基準は、少なくとも1つ以上又は全ての領域25の相対位置、及び/又は偏光フィルタ20上での位置を備えてよい。この位置は、図2A及び図2Cに示すような、円Cに沿った領域25の配置であってもよいし、例えば図2Bに示すような、既知の又は明確に規定された領域25の配置であってもよい。基準は、図2Aにおける矢印形状の領域25の配向、図2Bにおける長方形状の領域25の長手方向の延在、又は上記円Cの中心Xで全ての偏光軸が交差しうる、円Cに沿って配置される領域の配向といった、少なくとも1つ以上又は全ての領域25の形状を備えてもよい。
【0039】
領域25の区別可能な異なる偏光軸の配向は、分散されてもよく、好適には均等に分散され、偏光フィルタにおける複数の偏光軸、つまり、領域の、その検出対象である偏光レンズのレンズ偏光軸に対する相対配向の全範囲を覆うように、好適には少なくとも90°の範囲を超えることが好ましい。図2の領域25は、例えば、180/360°の範囲を超えた偏光軸の配向を有する。これは、図2A及び図2Cについては、互いに対向する2つの明るい領域25と、互いに対向し、明るい領域25に対して垂直な(すなわち、90°の角度をもった)2つの暗い領域25と、それらの間の幾つかの中間的な領域25とが存在しうることを意味する。
【0040】
区別可能な異なる偏光軸を有する少なくとも2つの領域25の偏光軸は、それぞれ、少なくとも15°、好適には少なくとも10°、より好適には少なくとも7.5°、更に好適には少なくとも5°、最も好適には少なくとも2°の角度αを形成する。少なくとも2つの領域25の偏光軸は、好適には、これら2つの領域間の偏光差の特定を可能とする角度αを示してもよい。上記角度αは、好適には1°~45°であり、より好ましくは1°、2°、5°、7.5°、10°、15°、20°、22.5°又は45°であってもよい。
【0041】
偏光フィルタ20は、好適には、固体であってもよく不透明であってもよい、ディスク体22を備えてもよい偏光フィルタディスクである。そして、領域25は、窓23としてディスク体22に設けられてもよい。そして、窓23は、直線偏光子として、金属箔24等の直線偏光フィルタ素子を備えてもよく、より好ましくは直線偏光フィルタ素子によって閉じられてもよい。そして、領域25の形状は、窓23の形状によって与えられる。ディスク体22は、任意の形状及び透過性を有してもよく、任意の素材から作られてもよい。
【0042】
ここで、再び図1へと戻り、レンズ受入部30及び偏光フィルタ20は、光源10によって出射された光11が、偏光フィルタ20の領域25及びレンズ受入部30を順番に通過するように配置され、これら2つの素子を光が通過する順序は、本発明によって限定されるものではない。すなわち、領域25及びレンズ受入部30(すなわち、レンズ受入部30に収容されているかその中に位置付けられている場合の偏光レンズ31)の両方を光が順番に通過する限り、光は、まず領域25を通過してから、ここでの検出対象である偏光レンズ31を保持しているレンズ受入部30を通過してもよいし、まずレンズ受入部30を通過してから、領域25を通過してもよい。
【0043】
図1から分かるように、装置1は、好適には、偏光フィルタ20の領域25及びレンズ受入部30を通った光源10の光32を受光する光強度測定装置41を備えてもよい。光強度測定装置41は、図示のような偏光レンズ31がレンズ受入部30内に位置付けられている場合、偏光フィルタ20の領域25のそれぞれに関する異なる光強度を検出するように構成される。従って、装置1は、対応する光センサ素子41を用いて、偏光レンズ31のレンズ偏光軸の配向を特定できる。光強度測定装置41は、任意の種類の光センサ、カメラ、カメラをベースとしたシステム、個別の光検出器並びに/若しくは複数の光検出器といった光検出器、及び/又は任意の他の種類の光センサ/検出器を備えてもよい。
【0044】
好ましい実施形態では、装置1は、装置1を制御する制御システム40を更に備えてもよく、好適には少なくとも、レンズ受入部30内に位置付けられる偏光レンズ31のレンズ偏光軸の配向を、領域25で検出され、それらの偏光軸のそれぞれと相関する光強度に基づいて特定する光強度測定装置41を制御する制御システム40を更に備えてもよい。これは、好適には、基準(正弦波の)計算を用いて行われる。本発明の好ましい実施形態では、制御システム40は、前記領域の偏光軸の配向を、偏光フィルタ20の明示的な/暗示的な基準に基づき、すなわち、該基準から導出して自動的に特定してもよい。
【0045】
偏光フィルタ20が複数の領域25を備えることから、偏光フィルタ20及びレンズ受入部30(そして延いては、レンズ受入部30に収容されている場合は偏光レンズ31も)は、相対位置が不変に設けられてもよい。
【0046】
以下に、偏光レンズ31のレンズ偏光軸の配向を特定する方法を説明する。
【0047】
第1工程では、本発明に係る装置が提供される。
【0048】
第2工程では、検出対象の直線的な偏光レンズ31がレンズ受入部30内に配置され、偏光フィルタ20と直列に位置付けられる。レンズは、その凸側が光源側に向けられる、又は突出するように、レンズ受入部30内に位置付けられてもよい。
【0049】
第3工程では、光源10は、偏光フィルタ20の領域25及びレンズ受入部30内の偏光レンズ31に向けて無偏光の光11を出射するように操作され、該光は、領域25及び偏光レンズ31を順番に通過する。ここで、無偏光の光11は、偏光フィルタ20を通過する際に、領域25の偏光軸のそれぞれの配向に応じて領域25のそれぞれに対して偏光され、それにより、該光は、ここでは偏光レンズ31又はレンズ受入部30に向かう偏光した光21として進行する。偏光レンズ31を通過後、領域25のそれぞれに対する光の光強度は、偏光レンズ31のレンズ偏光軸に対する、それぞれの領域25の偏光軸の配向の差に応じて異なる。
【0050】
第4工程では、偏光フィルタ20の領域25のそれぞれに関し、偏光フィルタ20の領域25及び偏光レンズ31を通過した光32の異なる光強度が検出される。好ましい実施形態では、異なる光強度を検出する工程は、光強度測定装置41によって実行されてもよい。
【0051】
第5工程では、領域25のそれぞれに関して検出され、それらの偏光軸(の配向)のそれぞれと相関する異なる光強度に基づいて、偏光レンズ31のレンズ偏光軸の配向が特定される。この特定は、例えば、操作者が、領域25に対応するそれぞれの光領域/スポットにおける、それぞれの領域25の偏光軸(の配向)と相関する光強度を単に比較することにより、手動で行われてもよい。しかしながら、少なくとも最後の工程、或いは方法全体を、半自動的又は自動的に実行してもよい。例えば、少なくとも、レンズ偏光軸の配向を特定する工程を、制御システム40によって実行してもよい。制御システム40は、特定されたデータ及び/又は光強度測定装置41から受信したデータを出力してもよい。データは、好適には、出力装置上に表示されたり、及び/又は、他のプロセス工程において使用されたりしてもよい。他のプロセス工程とは、レンズ偏光軸の配向に基づいてレンズをエッジングするエッジング工程であってもよい。エッジング工程は、例えば、本発明に係る方法と統合されてもよいし、後から実行される分離した方法工程であってもよい。これに関連して、レンズ偏光軸の配向を識別するために、任意の手法でレンズに印を付けると、有用となりうる。また、データは、好適にはエッジング工程の後に、最終点検工程でも使用でき、この点検工程も、本発明に係る方法に統合できる。
【0052】
本発明は、添付の請求項に含まれる限り、本明細書に上述した実施形態によって限定されるものではない。実施形態において上述した全ての特徴を、任意の所定の態様で、組み合わせたり置き換えたりすることができる。
図1
図2(A)】
図2(B)】
図2(C)】
【国際調査報告】