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特表2022-508519電子呼吸作動式エアロゾル吸入デバイスを介した肺系統への低表面張力組成物の送達
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】電子呼吸作動式エアロゾル吸入デバイスを介した肺系統への低表面張力組成物の送達
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A61M11/00 300A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542080
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(85)【翻訳文提出日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 US2019054042
(87)【国際公開番号】W WO2020072478
(87)【国際公開日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】62/739,740
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518389853
【氏名又は名称】ニューマ・リスパイラトリー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】ハンター,チャールズ・エリック
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ブライアン・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ヘブランク,ジョン・エイチ
(57)【要約】
肺使用(pulmonary use)のために低表面張力組成物を液滴流として対象者へ送達するための液滴送達デバイスおよび関連する方法が開示される。液滴送達デバイスは、ハウジング、リザーバ、エゼクタ機構、および少なくとも1つの差圧センサを含む。液滴送達デバイスは、差圧センサがハウジング内での所定の圧力変化を検知すると、使用者により自動的に呼吸作動される。エゼクタ機構は、圧電アクチュエータおよび開口板を含み、開口板は、その厚さにわたって形成された複数の開口部、および、所望の表面接触角を提供するように構成された1つまたは複数の表面を有し、圧電アクチュエータは、液滴の放出流を生成するための振動数で開口板を振動させるように動作可能である。その結果、液滴送達デバイスは、使用者の肺系統を対象とするために、例えば約5~6μm未満の、呼吸に適したサイズ範囲内の平均放出粒子直径を有する液滴流を生成するように作動される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低表面張力組成物を液滴の放出流として対象者の肺系統へ送達するための、電子作動式液滴送達デバイスであって、
ハウジングと、
前記デバイスの空気流出口に位置決めされたマウスピースと、
低表面張力組成物を受容するために前記ハウジング内に配置された、または前記ハウジングと流体連通して配置されたリザーバと、
前記リザーバと流体連通し、かつ、前記液滴の放出流を生成するように構成された電子作動式エゼクタ機構と、
前記ハウジング内に位置決めされた少なくとも1つの差圧センサであって、前記マウスピース内での所定の圧力変化の検知時に前記エゼクタ機構を作動させ、それによって前記液滴の放出流を生成するように構成された、少なくとも1つの差圧センサと
を備え、
前記エゼクタ機構が、圧電アクチュエータおよび開口板を備え、前記開口板が、その厚さにわたって形成された複数の開口部、および、90度よりも大きい表面接触角を提供するように構成された1つまたは複数の表面を有し、前記圧電アクチュエータが、前記液滴の放出流を生成するための振動数で開口板を振動させるように動作可能であり、
前記エゼクタ機構が、前記液滴の放出流を生成するように構成され、使用中に前記液滴の放出流の質量の少なくとも約50%が、呼吸に適した範囲内で前記対象者の前記肺系統へ送達されるように、前記液滴の少なくとも約50%が、約6ミクロン未満の平均放出液滴直径を有する、液滴送達デバイス。
【請求項2】
前記開口板が、90度から140度の間の表面接触角を提供するように構成された1つまたは複数の表面を有する、請求項1に記載の液滴送達デバイス。
【請求項3】
前記開口板が、前記表面接触角を提供するための疎水性ポリマーで被覆される、請求項1に記載の液滴送達デバイス。
【請求項4】
前記疎水性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、シロキサン、パラフィン、およびポリイソブチレンから成る群から選択される、請求項3に記載の液滴送達デバイス。
【請求項5】
前記疎水性ポリマーが、前記開口板の液滴出口側表面の少なくとも一部分上に被覆される、請求項3に記載の液滴送達デバイス。
【請求項6】
前記疎水性ポリマーが、前記開口部のうちの少なくとも1つの開口部の内部の少なくとも一部分上に被覆される、請求項3に記載の液滴送達デバイス。
【請求項7】
前記疎水性ポリマー被覆が、化学的にまたは構造的に改質または処理される、請求項3に記載の液滴送達デバイス。
【請求項8】
前記低表面張力組成物が、溶媒としてアルコールを含む、請求項1に記載の液滴送達デバイス。
【請求項9】
前記開口板が、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ニッケル、ニッケル-コバルト、ニッケル-パラジウム、パラジウム、プラチナ、これらの金属合金、およびこれらの組合わせから成る群から選択される材料で構成される、請求項1に記載の液滴送達デバイス。
【請求項10】
前記複数の開口部のうちの1つまたは複数が、異なる平均放出液滴直径を有する放出液滴を提供するための異なる断面形状または直径を有する、請求項1に記載の液滴送達デバイス。
【請求項11】
低表面張力組成物を呼吸に適した範囲内の液滴の放出流として対象者の肺系統へ送達するための方法であって、
(a)請求項1に記載の電子作動式液滴送達デバイスを介して前記低表面張力組成物から液滴の放出流を生成するステップであって、前記液滴の放出流の少なくとも約50%が、約6μm未満の平均放出液滴直径を有する、ステップと、
(b)使用中に前記液滴の放出流の質量の少なくとも約50%が、呼吸に適した範囲内で対象者の前記肺系統へ送達されるように、前記液滴の放出流を前記対象者の前記肺系統へ送達するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記液滴送達デバイスの前記開口板が、90度から140度の間の表面接触角を提供するように構成された1つまたは複数の表面を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記液滴送達デバイスの前記開口板が、前記表面接触角を提供するための疎水性ポリマーで被覆される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記疎水性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、シロキサン、パラフィン、およびポリイソブチレンから成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記疎水性ポリマーが、前記開口板の液滴出口側表面の少なくとも一部分上に被覆される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記疎水性ポリマーが、前記開口部のうちの少なくとも1つの開口部の内部の少なくとも一部分内に被覆される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記疎水性ポリマーが、化学的にまたは構造的に改質または処理される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記低表面張力組成物が、溶媒としてアルコールを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記低表面張力組成物が、水に不溶性または難溶性の作用物質を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
水に不溶性または難溶性の前記作用物質が、カンナビノイドおよびその誘導体、フルチカゾンフロエート、ならびにフルチカゾンプロピオネートから成る群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記低表面張力組成物が、喘息、COPDてんかん、発作性疾患、疼痛、慢性疼痛、神経因性疼痛、頭痛、片頭痛、関節炎、多発性硬化症、食欲不振、吐き気、嘔吐症状、食欲不振、食欲喪失、不安症、または不眠症から成る群から選択される疾病、状態、または疾患を治療または改善するために、対象へ送達される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、2018年10月1日に出願され、「DELIVERY OF INSOLUBLE OR SPARINGLY SOLUBLE AGENTS TO THE PULMONARY SYSTEM VIA ELECTRONIC BREATH ACTUATED AEROSOL INHALATION DEVICEと題された米国仮特許出願第62/739,740号の利益を、米国特許法第119条の下で主張するものであり、この米国仮特許出願の内容のそれぞれは、参照によりそれら全体が本明細書に援用される。
【0002】
[0002]本開示は、吸入送達デバイスを介した肺への作用物質の送達に関し、より具体的には、電子エアロゾル吸入送達デバイスを介した肺への作用物質の送達に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]肺系統への物質の送達のためのエアロゾル生成デバイスの使用は、多いに関心を引く領域である。大きな課題は、標的とする通路への物質の上首尾の送達に適した液滴サイズで、正確で、一貫性のある、かつ検証可能な用量を送達するデバイスを提供することである。
【0004】
[0004]所望の時間における正確な量のエアロゾルの検証、送達、および吸入が、重要である。使用者がエアロゾルデバイスを正しく使用すること、および、使用者が所望の時刻に適切な量を投与することを保証する必要性が存在する。使用者が誤用したとき、または肺系統に不正確に物質を送達したときに、問題が起きる。
【0005】
[0005]0.5μmから7μmの間の直径を有する液滴は、物質を肺内に効率的に堆積させる。このサイズ範囲よりも大きな液滴は、大部分は口および上気道内に堆積され、この範囲よりも小さな液滴は、大部分は沈降することができずに吐き出される。肺送達を介した迅速な体内吸収(systemic uptake)を目的とする組成物は、典型的には、血液-ガス界面(blood-gas interface)が肺胞から血流への物質の迅速な移送を実現する、肺胞領域を標的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]液滴送達デバイスを介して肺系統に液滴を送達するための改善された方法およびデバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本開示の特定の態様は、低表面張力組成物を液滴の放出流として対象者の肺系統へ送達するための電子作動式液滴送達デバイスに関する。いくつかの実施形態では、低表面張力組成物は、溶媒としてアルコールを含む。他の実施形態では、低表面張力組成物は、水に不溶性または難溶性の作用物質を含む組成物である。
【0008】
[0008]1つの実施形態では、デバイスは、ハウジングと、デバイスの空気流出口に位置決めされたマウスピースと、低表面張力組成物を受容するためにハウジング内に配置されるかまたはハウジングと流体連通して配置されたリザーバと、リザーバと流体連通し、かつ、液滴の放出流を生成するように構成された、電子作動式エゼクタ機構と、ハウジング内に位置決めされた少なくとも1つの差圧センサであって、マウスピース内での所定の圧力変化の検知に応じてエゼクタ機構を作動させ、それにより液滴の放出流を生成するように構成された、少なくとも1つの差圧センサと、を備える。
【0009】
[0009]特定の実施形態では、エゼクタ機構は、圧電アクチュエータおよび開口板を備え、開口板は、その厚さにわたって形成された複数の開口部、および、90度よりも大きい表面接触角を提供するように構成された1つまたは複数の表面を有し、圧電アクチュエータは、液滴の放出流を生成するための振動数で開口板を振動させるように動作可能である。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態では、エゼクタ機構は、使用中に液滴の放出流の質量の少なくとも約50%が呼吸に適した範囲内で対象者の肺系統へ送達されるように、液滴の少なくとも約50%が約6ミクロン未満の平均放出液滴直径を有する液滴の放出流を生成するように構成される。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態では、開口板は、90度から140度の間の表面接触角を提供するように構成された1つまたは複数の表面を有する。
[0012]さらに他の実施形態では、開口板は、上記表面接触角を提供するための疎水性ポリマーで被覆される。いくつかの実施形態では、疎水性ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、シロキサン、パラフィン、およびポリイソブチレンから成る群から選択される。さらに他の実施形態では、疎水性ポリマー被覆は、化学的にまたは構造的に改質または処理される。
【0012】
[0013]いくつかの実施形態では、疎水性ポリマーは、開口板の液滴出口側表面の少なくとも一部分上に被覆される。他の実施形態では、疎水性ポリマーは、開口部のうちの少なくとも1つの開口部の内部の少なくとも一部分内に被覆される。
【0013】
[0014]いくつかの態様では、液滴送達デバイスは、デバイスの空気流入口において空気流内に位置決めされ、かつ、開口板の出口側を横断する非乱流の(すなわち、層流および/または遷移流の)空気流を促進するように、また、使用中に液滴の放出流が液滴送達デバイスを通って流れることを確実にするのに十分な空気流を提供するように構成された、空気流入要素をさらに含む。いくつかの実施形態では、空気流入要素は、マウスピース内に位置決めされ得る。
【0014】
[0015]特定の実施形態では、ハウジングおよびエゼクタ機構は、開口板の出口側が空気流の方向に対して直角に位置して液滴流が空気流の方向と平行に放出されるように配向される。他の実施形態では、ハウジングおよびエゼクタ機構は、開口板の出口側が空気流の方向と平行に位置して液滴流が空気流の方向に対して実質的に直角に放出されるように配向され、それにより、液滴の放出流は、ハウジングからの放出に先立って、おおよそ90度の軌道変化でハウジングを通って案内される。
【0015】
[0016]特定の態様では、液滴送達デバイスは、開口板とリザーバとの間に表面張力板をさらに含み、この表面張力板は、流体の体積と開口板との間の接触を増大させるように構成される。他の態様では、エゼクタ機構および表面張力板は、平行な配向で構成される。さらに他の態様では、表面張力板は、表面張力板と開口板との間に毛細管流動を提供するのに十分な静水力(hydrostatic force)を作り出すために、開口板から2mm以内に配置される。
【0016】
[0017]さらに他の態様では、液滴送達デバイスの開口板は、ドーム形状を備える。他の態様では、開口板は、例えばステンレス鋼、ニッケル、コバルト、チタン、イリジウム、プラチナ、もしくはパラジウム、またはこれらの合金といった金属で形成され得る。あるいは、他の態様では、板は、他の金属またはポリマーを含む適切な材料で形成され得る。
【0017】
[0018]特定の実施形態では、開口板は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ニッケル、ニッケル-コバルト、パラジウム、ニッケル-パラジウム、プラチナ、もしくは他の適切な金属合金、またはこれらの組合わせで構成される。他の態様では、開口板の複数の開口部のうちの1つまたは複数が、異なる平均放出液滴直径を有する放出液滴を提供するための異なる断面形状または直径を有する。
【0018】
[0019]さらに他の態様では、液滴送達デバイスのリザーバは、ハウジングと取外し可能に結合される。他の態様では、液滴送達デバイスのリザーバは、エゼクタ機構に結合されて組合わせリザーバ/エゼクタ機構モジュールを形成し、この組合わせリザーバ/エゼクタ機構モジュールは、ハウジングと取外し可能に結合される。
【0019】
[0020]他の態様では、液滴送達デバイスは、無線通信モジュールをさらに含み得る。いくつかの態様では、無線通信モジュールは、ブルートゥース(登録商標)送信器である。
[0021]さらに他の態様では、液滴送達デバイスは、赤外線送信器、光検出器、追加の圧力センサ、およびこれらの組合わせから選択される1つまたは複数のセンサをさらに含み得る。
【0020】
[0022]別の態様では、本開示は、低表面張力組成物を呼吸に適した範囲内の液滴の放出流として対象者の肺系統へ送達するための方法に関し、この方法は、(a)本開示の電子作動式液滴送達デバイスを介して低表面張力組成物から液滴の放出流を生成するステップであって、液滴の放出流の少なくとも約50%が、約6μm未満の平均放出液滴直径を有するステップと、(b)使用中に液滴の放出流の質量の少なくとも約50%が呼吸に適した範囲内で対象者の肺系統へ送達されるように、液滴の放出流を対象者の肺系統へ送達するステップと、を含む。
【0021】
[0023]いくつかの実施形態では、低表面張力組成物は、溶媒としてアルコールを含む。他の実施形態では、低表面張力組成物は、水に不溶性または難溶性の作用物質を含む。いくつかの実施形態では、水に不溶性または難溶性の作用物質は、カンナビノイドおよびその誘導体、フルチカゾンフロエート、およびフルチカゾンプロピオネートから成る群から選択される。
【0022】
[0024]他の実施形態では、低表面張力組成物は、喘息、COPDてんかん、発作性疾患、疼痛、慢性疼痛、神経因性疼痛、頭痛、片頭痛、関節炎、多発性硬化症、食欲不振、吐き気、嘔吐症状、食欲不振、食欲喪失、不安症、または不眠症から成る群から選択される疾病、状態、または疾患を治療または改善するために、対象へ送達される。
【0023】
[0025]複数の実施形態が開示されるが、本開示の説明に役立つ実施形態を示しかつ説明する以下の詳細な説明から、本開示のさらに他の実施形態が当業者には明らかになるであろう。認識されるであろうように、本発明は、本開示の精神および範囲から全く逸脱することなく、種々の態様における修正が可能である。したがって、詳細な説明は、事実上説明に役立つものであって制限的なものではないものと見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】[0026]図1Aは、本開示の実施形態による、例示的な液滴送達デバイスの斜視図である。 図1Bは、本開示の実施形態による、例示的な液滴送達デバイスの斜視図である。
図2】[0027]本開示の実施形態による、図1A図1Bの液滴送達デバイスの分解組立図である。
図3A】[0028]本開示の一実施形態による、薬剤送達アンプルと、空気流入要素を含むマウスピースと、マウスピースカバーとを備える、図1A図1Bの直列形液滴送達デバイスの部分断面斜視図である。
図3B】[0029]本開示の一実施形態による、薬剤送達アンプルと、空気流入要素を含むマウスピースとを備える、図1A図1Bの直列形液滴送達デバイスの正面図である。
図3C】[0030]本開示の一実施形態による、マウスピースと内部ハウジングとを含む、図1A図1Bの直列形液滴送達デバイスの構成要素の分解組立図である。
図4】[0031]図4Aは、本開示の実施形態による、別の例示的な液滴送達デバイスの斜視図である。 図4Bは、本開示の実施形態による、別の例示的な液滴送達デバイスの斜視図である。
図5】[0032]本開示の実施形態による、流体リザーバ/エゼクタ機構モジュールが挿入されていない、図4A図4Bの液滴送達デバイスの斜視図である。
図6】[0033]図6Aは、本開示の実施形態による、流体リザーバ/エゼクタ機構モジュールおよびマウスピースカバーの正面を示す斜視図である。 図6Bは、本開示の実施形態による、流体リザーバ/エゼクタ機構モジュールおよびマウスピースカバーの背面を示す斜視図である。
図7】[0034]本開示の一実施形態による、所望の表面張力を提供するように構成された例示的な開口部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0035]低表面張力組成物、特に水に不溶性または難溶性の作用物質を含む低表面張力組成物のエアロゾル生成吸入デバイスを介した効果的な送達は、常に問題を提起してきた。そのような作用物質は、それらの水溶性のなさを考慮して、非水系溶液、乳剤、懸濁液、または封入剤などの低表面張力組成物で処方されることが多い。
【0026】
[0036]本開示の態様によれば、非水溶性/難溶性作用物質の組成物を形成するための任意の知られた方法論が、非水系溶液、溶媒としてアルコールを使用する組成物、懸濁液の形成、乳剤の形成、脂質封入、などを含む、そのような処方を作成するために使用され得る。本開示の実施形態は、低表面張力組成物、特に、例えば非水系溶液、溶媒としてアルコールを含む溶液、脂質封入剤乳剤(例えば、油/水)、懸濁液、などのような、水に不溶性または難溶性の作用物質の組成物を送達するためのデバイスおよび方法を含む。
【0027】
[0037]特定の態様では、水に不溶性または難溶性である作用物質は、水における溶解性を有さないか、または、水における溶解性が低い、例えば25℃において約500mg/L未満といった、任意の知られた作用物質であり得る。しかし、本開示のデバイスおよび方法は、そのように限定されるものではなく、任意の知られた作用物質を送達するために使用され得る。
【0028】
[0038]限定的ではない例として、水に不溶性または難溶性の作用物質は一般に、エタノールおよびイソプロパノールを含むアルコールに可溶であり得る。したがって、本開示の特定の態様では、これらの作用物質の溶液は、作用物質をアルコール溶媒で溶かすこと、またはアルコール溶媒中に作用物質を抽出することによって調製され得る。例えば、特定の実施形態では、カンナビノイドが、アサ属植物からアルコール溶媒溶液中に抽出される場合があり、アルコール溶媒溶液は、場合により種々の賦形剤を含み得る。特定の態様では、アルコール溶液は、低い含水比を有する場合があり、例えば、少なくとも50%アルコール、75%、90%、95%、100%アルコールであり得る。特定の実施形態では、95%USPまたは100%エタノールが、作用物質を溶解または抽出するために使用され得る。
【0029】
[0039]他の実施形態では、封入剤または乳剤が、任意の知られた技術、例えば脂質封入技術または乳剤技術を使用して、例えばシクロデキストリン、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン)、油/水、などの作用物質から形成され得る。作用物質が脂質封入されるかまたは乳剤が形成されると、ナノ脂質またはナノ乳剤を形成するために、ナノ脂質またはナノ乳剤が5μm未満、4μm未満、3μm未満、などになるように例えば超音波処理、ミリング、などの任意の知られた技法が使用される。この点に関して、ナノ脂質またはナノ乳剤は、(本明細書において説明されるように)生成される液滴が肺系統内に浸透することができるようなサイズとされ得るだけでなく、ナノ脂質はまた、それらが液滴送達デバイスのエゼクタ機構の開口部(本明細書においてさらに詳細に説明される)を塞がないようなサイズとされ得る。
【0030】
[0040]この点に関して、本開示の特定の態様は、低表面張力組成物、具体的には水に不溶性または難溶性の作用物質を含む低表面張力組成物の肺系統への送達のために特に構成された、液滴送達デバイスまたはソフトミスト吸入器(SMI:soft mist inhaler)デバイスとして本明細書で説明される電子呼吸作動式エアロゾル送達デバイスに関する。他の態様では、本開示は、低表面張力組成物を送達するために特に構成された電子呼吸作動式エアロゾル送達デバイスを介したそのような組成物の肺系統への送達のための方法を提供する。
【0031】
[0041]特定の実施形態では、本開示は、ハウジングと、低表面張力組成物を受容するためのリザーバと、圧電アクチュエータおよび開口板を含むエゼクタ機構と、を備える、流体を液滴の放出流として対象者の肺系統へ送達するための液滴送達デバイスであって、エゼクタ機構が、約5~6ミクロン未満、好ましくは約5ミクロン未満の平均放出液滴直径を有する液滴流を放出するように構成される、液滴送達デバイスを提供する。本明細書において論じられるように、特定の態様では、液滴送達デバイスは、開口板を有するエゼクタ機構を含むことができ、この開口板は、低表面張力組成物からの液滴の生成を促進するように構成された開口板の少なくとも1つの表面を有する。
【0032】
[0042]特定の実施形態では、低表面張力組成物からの液滴の生成を促進するために、開口板の1つまたは複数の表面が、80度よりも大きい所望の表面接触角、例えば90度超、90度から140度の間、90度から135度の間、100度から140度の間、100度から135度の間、90度から110度の間、などの表面接触角を提供するように構成(例えば、処理、被覆、表面改質、またはこれらの組合わせを)され得る。本開示の様々な実施形態では、開口板は、1つまたは複数の表面において、例えば、液滴出口表面の少なくとも一部分、少なくとも1つの開口部内、液滴入口表面の少なくとも一部分、およびこれらの組合わせにおいて、所望の表面接触角を提供するように構成され得る。特定の実施形態では、開口板は、液滴出口表面の少なくとも一部分において、または、液滴出口表面の少なくとも一部分および少なくとも1つの開口部内において、所望の表面接触角を提供し得る。
【0033】
[0043]特定の実施形態では、開口板は、所望の表面接触角を得るために、1つまたは複数の表面上に疎水性ポリマーを有して構成(例えば、処理、被覆、表面改質、またはこれらの組合わせを)され得る。特定の実施形態では、開口板の液滴出口側表面は、疎水性ポリマーで構成(例えば、処理、被覆、表面改質、またはこれらの組合わせを)される。医学的用途での使用に適した任意の知られた疎水性ポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、シロキサン、パラフィン、ポリイソブチレン、などが使用され得る。所望に応じて、疎水性被覆の表面は、表面接触角をさらに強化または制御するために、化学的にまたは構造的に改質または処理され得る。
【0034】
[0044]本開示の態様によれば、開口板上に疎水性表面を作り出すための例示的な方法には、浸漬被覆法および化学堆積法が含まれる。浸漬被覆法は、所望の被覆および溶媒を含む溶液に開口板を浸すことを含み、この溶液は、溶媒が蒸発するときに開口板上に被覆を形成する。化学堆積法は、例えばプラズマエッチング、プラズマ被覆、プラズマ蒸着、CVD、無電解めっき、電気めっき、などの知られた堆積法を含み、この場合、化学堆積は、酸素分子または水酸基分子が開口板の表面に付着してその表面を有極性にするように、プラズマまたは蒸気を使用して開口板の表面上の結合を開く。特定の実施形態では、堆積される疎水性層は、生成される液滴のサイズに影響を与えないように、開口部サイズよりも著しく薄いものである。
【0035】
[0045]本開示の態様によれば、水に不溶性または難溶性の作用物質を含む組成物は、低表面張力(すなわち、水の表面張力よりも低い表面張力)を有し得る。例えば、アルコールは一般に、水よりも低い表面張力を有する。例として、エタノールは、1メートル当たり20ミリニュートンの表面エネルギーを有し、これは、水(約73mN/M)よりも低い。水溶液中の5%エタノールは、1メートル当たり42mNの表面エネルギーを有する。さらに、脂質の二重層および乳剤は、水よりも低い表面エネルギーをしばしば示し得る。理論によって制限されることなしに、本開示の特定の態様では、本開示の例示的な液滴送達デバイスのエゼクタ機構は、放出されるべき溶液により適合した接触角を開口板表面が示すのであれば、低表面張力溶液、例えばエタノール溶液の液滴をより効率的に生成することができる。
【0036】
[0046]特定の実施形態では、水に不溶性または難溶性の作用物質は、アサから分離または抽出され得る。例えば、作用物質は、天然または合成のカンナビノイドであってよく、例えば、THC(テトラヒドロカンナビノール)、THCA(テトラヒドロカンナビノール酸)、CBD(カンナビジオール)、CBDA(カンナビジオール酸)、CBN(カンナビノール)、CBG(カンナビゲロール)、CBC(カンナビクロメン)、CBL(カンナビシクロール)、CBV(カンナビバリン)、THCV(テトラヒドロカンナビバリン)、CBDV(カンナビジバリン)、CBCV(カンナビクロメバリン)、CBGV(カンナビゲロバリン)、CBGM(カンナビゲロールモノメチルエーテル)、CBE(カンナビエルソイン)、CBT(カンナビシトラン)、およびこれらの様々な組合わせであり得る。他の実施形態では、作用物質は、カンナビノイド受容体1型(CB)、カンナビノイド受容体2型(CB)、またはこれらの組合わせを結合する配位子であり得る。特定の実施形態では、作用物質は、THC、CBD、またはこれらの組合わせを含み得る。例として、作用物質は、95%THC、98%THC、99%THC、95%CBD、98%CBD、99%CBD、などを含み得る。
【0037】
[0047]他の実施形態では、水に不溶性または難溶性の作用物質は、フルチカゾンフロエート、フルチカゾンプロピオネート、ならびに他の一般的な非水溶性の喘息薬および慢性閉塞性肺疾患(COPD)薬であり得る。
【0038】
[0048]いくつかの実施形態では、水に不溶性または難溶性の作用物質を含む組成物は、溶媒としてアルコールを含む組成物である。他の実施形態では、作用物質は、カンナビノイドおよびその誘導体、フルチカゾンフロエート、ならびにフルチカゾンプロピオネートから成る群から選択される。
【0039】
[0049]特定の実施形態では、本開示の方法および液滴送達デバイスは、対象者の肺系統へ作用物質を送達することにより様々な疾病、疾患、および状態を治療するために使用され得る。この点に関して、液滴送達デバイスは、肺系統へ局所的に作用物質を送達するためにも、身体へ全身的に作用物質を送達するためにも、使用され得る。特定の実施形態では、本開示の方法および液滴送達デバイスは、てんかん、発作性疾患、疼痛、慢性疼痛、神経因性疼痛、頭痛、片頭痛、関節炎、多発性硬化症、食欲不振、吐き気、嘔吐症状、食欲不振、食欲喪失、不安症、不眠症、などを治療するために使用され得る。他の実施形態では、本開示の方法および液滴送達デバイスは、喘息および/またはCOPDを治療するために使用され得る。
【0040】
[0050]他の実施形態では、組成物は、疾病、喘息、COPDてんかん、発作性疾患、疼痛、慢性疼痛、神経因性疼痛、頭痛、片頭痛、関節炎、多発性硬化症、食欲不振、吐き気、嘔吐症状、食欲不振、食欲喪失、不安症、または不眠症からなる群から選択される疾病、状態、または疾患を治療または改善するために、対象者へ送達される。
【0041】
[0051]特定の実施形態では、本開示の液滴送達デバイスは、予定されかつ制御されたカンナビノイドなどの物質を送達するために使用され得る。限定的ではない例として、特定の実施形態では、投与は、使用者のスマートフォン上のGPSロケーションによって検証される使用者の住居などの特定のロケーションにおいてのみ、使用者、医師、または薬局がデバイスとやりとりすることによってのみ可能とされてもよく、かつ/または、投与は、投与スケジュール、量、誤用コンプライアンス(abuse compliance)、などにより服薬順守を監視することによって制御されてもよい。特定の態様では、規制作用物質の高度に制御された分注に関するこの機構は、規制物質の誤用または過剰投与を防ぐことができる。
【0042】
[0052]特定の実施形態では、エゼクタ機構は、液滴送達デバイスのハウジング内に配置された少なくとも1つの差圧センサにより、ハウジング内での所定の圧力変化を検知すると、電子的に呼吸作動される。特定の実施形態では、そのような所定の圧力変化は、本明細書においてさらに詳細に説明されるように、デバイスの使用者による吸気周期中に検知され得る。
【0043】
[0053]本開示の特定の態様によれば、肺内への効果的な沈着は一般に、直径が約5~6μm未満の液滴を必要とする。理論によって限定される意図はないが、流体を肺へ送達するためには、液滴送達デバイスが、デバイス外への放出を可能とするのに十分に高いが舌上または咽喉の奥での堆積を防ぐのに十分に低い運動量を与えなければならない。直径がおおよそ5~6μmを下回る液滴が、それら自体の運動量によってではなく、それらを運ぶ気流および同伴空気の運動によってほぼ完全に移送される。
【0044】
[0054]特定の態様では、本開示は、約5~6μm未満、好ましくは約5μm未満の呼吸に適した範囲内で液滴流を放出するように構成されたエゼクタ機構を含み、かつそれを提供する。エゼクタ機構は、所望の表面接触角を提供するように構成された開口板から成る。開口板は、圧電アクチュエータに直接にまたは間接的に結合される。特定の実施では、開口板は、圧電アクチュエータに結合されるアクチュエータ板に結合され得る。開口板は一般に、開口板の厚さにわたって形成された複数の開口部を含み、圧電アクチュエータは、患者が吸入するときに開口板の開口部から肺内へ指向性の液滴のエアロゾル流を生成するための振動数および電圧で、流体を開口板の1つの表面に接触させながら、開口板を直接にまたは間接的に(例えば、アクチュエータ板を介して)振動させる。開口板がアクチュエータ板に結合される他の実施では、アクチュエータ板は、指向性のエアロゾル流またはエアロゾル液滴の噴煙を生成するための振動数および電圧で圧電発振器によって振動される。
【0045】
[0055]特定の態様では、本開示は、対象者の肺系統へ液滴の放出流として流体を送達するための液滴送達デバイスに関する。特定の態様では、治療薬は、別の投与経路および標準的な吸入技術と比較して、高い投与濃度および効能で送達され得る。
【0046】
[0056]特定の態様では、液滴送達デバイスは、使用中に適切かつ再現可能な高率の液滴が気道、例えば対象者の肺胞気道内の所望の部位内へ送達されるように、定められた量の流体を液滴の放出流の形態で送達することが可能である。
【0047】
[0057]上述のように、肺気道内深くへの液滴の効率的な送達は、直径が約5~6ミクロン未満の液滴、具体的には約5ミクロン未満の空気力学的質量中央径(MMAD)を有する液滴を必要とする。空気力学的質量中央径は、液滴の50質量パーセントがそれより大きくなり液滴の50質量パーセントがそれより小さくなる直径として定義される。本開示の特定の態様では、肺胞気道内に堆積させるために、この粒径範囲内の液滴は、デバイス外への放出を可能とするのに十分な高さであるが舌(軟口蓋)または咽頭上への堆積を克服するのに十分な低さである運動量を有さなければならない。
【0048】
[0058]本開示の他の態様では、本開示の液滴送達デバイスを使用して使用者の肺系統へ送達するための液滴の放出流を生成する方法が提供される。特定の実施形態では、液滴の放出流は、制御可能かつ規定された液滴粒径範囲内で生成される。例として、液滴粒径範囲は、約5μm未満の呼吸に適した範囲内の放出される液滴の、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、約50%から約90%の間、約60%から約90%の間、約70%から約90%の間、などを含む。
【0049】
[0059]他の実施形態では、液滴の放出流は、気道内の複数の領域(口、舌、咽喉、上気道、下気道、肺深部、など)を対象とするために多様な直径を有する液滴が生成されるように、1つまたは複数の直径を有し得る。例として、液滴直径は、約1μmから約200μm、約2μmから約100μm、約2μmから約60μm、約2μmから約40μm、約2μmから約20μm、約1μmから約5μm、約1μmから約4.7μm、約1μmから約4μm、約10μmから約40μm、約10μmから約20μm、約5μmから約10μm、およびこれらの組合わせに及び得る。特定の実施形態では、液滴の少なくとも一部は、呼吸に適した範囲内の直径を有し、一方で、他の液滴は、非呼吸性部位を対象とするように、他のサイズでの直径を有し得る(例えば、5μmよりも大きい)。この点に関して、説明に役立つ放出液滴流は、液滴の50%~70%を呼吸に適した範囲内に有し(約5μm未満)、液滴の30%~50%を呼吸に適した範囲外に有し得る(約5μm~約10μm、約5μm~約20μm、など)。
【0050】
[0060]本開示の特定の態様では、液滴の放出流を対象者の肺系統へ送達するための液滴送達デバイスが提供される。液滴送達デバイスは一般に、ハウジングと、ハウジング内に配置されるかまたはハウジングと流体連通するリザーバと、リザーバと流体連通するエゼクタ機構と、ハウジング内に位置決めされた少なくとも1つの差圧センサと、を含む。差圧センサは、ハウジング内での所定の圧力変化を検知するとエゼクタ機構を電子的に呼吸作動させるように構成され、エゼクタ機構は、液滴の放出流の制御可能な噴煙を生成するように構成される。液滴の放出流は、低表面張力組成物、特に水に不溶性または難溶性の作用物質を含む組成物から形成される。エゼクタ機構は、開口板に直接にまたは間接的に結合される圧電アクチュエータを備え、開口板は、80度よりも大きい所望の表面接触角を提供するように構成され、かつ、その厚さにわたって形成された複数の開口部を有する。圧電アクチュエータは、液滴の放出流を生成するための振動数で開口板を直接にまたは間接的に振動させるように動作可能である。
【0051】
[0061]特定の実施形態では、液滴送達デバイスは、ハウジング、エゼクタ機構、および関連する電子構成要素が、小型のハンドヘルド形デバイスを形成するように全体的に直列のまたは平行な構成に配向されるという点で、直列配向に構成され得る。
【0052】
[0062]特定の実施形態では、液滴送達デバイスは、処方薬または大衆薬に適し得るように、定期的に、例えば日ごとに、週ごとに、月ごとに、必要な場合に、などで交換可能または処分可能であり得る、組合わせリザーバ/エゼクタ機構モジュールを含み得る。
【0053】
[0063]本開示はまた、高度の影響を受けない液滴送達デバイスを提供する。特定の実施では、液滴送達デバイスは、使用者が海面から海面下へ移動するときおよび高高度にいるときに生じ得る圧力差、例えば圧力差が4psiほどの大きさになり得る航空機での移動中に生じ得る圧力差に影響を受けないように構成される。本明細書でさらに詳細に論じられるように、本開示の特定の実施では、液滴送達デバイスは、超疎水性フィルタを、場合により螺旋状防湿材との組合わせで含むことができ、これは、リザーバ内外への空気の自由な行き来を実現するのと同時に、水分または流体がリザーバに入るのを阻止し、それにより、流体の漏れまたは開口板表面上での堆積を軽減または防止する。
【0054】
[0064]特定の実施形態では、液滴送達デバイスは、組合わせ流体リザーバ/エゼクタ機構と、差圧センサ、マイクロプロセッサ、および3本の単四電池を含むハンドヘルド形ユニットとから成る。マイクロプロセッサは、用量送達、投与計数、および無線通信技術を通じて送信され得るソフトウェア設計された監視パラメータを制御する。エゼクタ機構は、所定の液滴粒径範囲内の液滴を高度の正確さおよび再現性で作り出すことにより、使用者への液滴送達を最適化し得る。
【0055】
[0065]特定の態様では、液滴送達デバイスは、開口板とリザーバとの間に表面張力板をさらに含み、この表面張力板は、流体の体積と開口板との間の接触を増大させるように構成される。他の態様では、エゼクタ機構および表面張力板は、平行な配向に構成される。さらに他の態様では、表面張力板は、表面張力板と開口板との間に毛細管流動を提供するのに十分な静水力を作り出すために、開口板から2mm以内に配置される。
【0056】
[0066]特定の態様では、本開示のデバイスは、吸入の開始に応答して圧電エゼクタを起動するための差圧センサを使用することにより、患者/デバイス調整の必要性を排除する。デバイスは、液滴送達の手動トリガリングを必要としない。さらに、本開示のデバイスからの液滴送達は、エアロゾル形成プロセスから固有の速度をほとんど持たずに引き起こされ、また、もっぱら使用者の吸い込む息がマウスピースチューブを通過することにより、肺に吸入される。液滴は、同伴空気に乗り、肺内での改善された堆積を提供する。
【0057】
[0067]特定の実施形態では、本明細書においてさらに詳細に説明されるように、流体リザーバがハンドヘルド形本体に嵌合されると、電池を含むベースとエゼクタ機構との間に電気接点が作られる。特定の実施形態では、ハンドヘルド形ベース内の視覚および音声表示器(例えば、LED、および小型スピーカ)が、使用者通知を提供する。限定的ではない例として、デバイスは、例えば、高さ3.5cm、幅5cm、長さ10.5cmであってよく、かつ、空の流体リザーバ、および挿入された電池を含んでおおよそ95グラムの重さであってよい。
【0058】
[0068]本明細書において説明されるように、いくつかの実施形態では、容易にアクセス可能なオン/オフスライドバー、または電源押しボタンが、デバイスを作動させ、かつ、エゼクタ機構を開封し得る。視覚表示器は、出力を表示してよく、また、残りの投与数は、ユニットの電源が入れられていていつでも使用できることを示す任意選択の投与カウンタ数値表示器上に示されてもよい。
【0059】
[0069]使用者がユニットを通して吸息すると、差圧センサは、例えばマウスピースの後部におけるベンチュリ板両端での圧力降下を測定することにより、流れを検出する。所望の圧力減退(8リットル/分)が達成されると、マイクロプロセッサは、エゼクタ機構を作動させ、その時点で、視覚および/または音声表示器が、投与が開始したことを使用者に警告し得る。マイクロプロセッサは、例えば始動の1.45秒後に(または、所望の投与用量が達成されるように指定されたタイミングで)エゼクタ機構を停止させることができる。特定の実施形態では、本明細書でさらに詳細に説明されるように、デバイスは、投与開始後に明確なチャイム音を発して、指定された時間、例えば10秒間にわたって息を止めることを始めるように使用者に指示してもよい。息止め時間中、他の視覚または音声表示が、使用者に提示されてもよく、例えば、3つの緑色LEDが点滅してもよい。さらに、呼息、吸息、および息止めに適したタイミングについて使用者に指示する音声命令が存在してもよい。
【0060】
[0070]いくつかの実施形態では、スライドスイッチまたは電源押しボタンはまた、さらなる安全性および無菌性のために、エゼクタ機構を密閉するハンドヘルド形ユニット上の引戸を開(電源オン)/閉(電源オフ)し得る。閉(オフ)状態では、エゼクタ機構は、空気中浮遊汚染物質および潜在的な蒸発効果に対して密封され得る。特定の実施形態では、任意選択の音声命令、および使用のための指示が、使用の終わりにスイッチまたは電源ボタンをオフ位置までスライドさせる(戸は閉じられる)ように使用者に指示し得る。タイムアウト時間後、例えば20秒間の不作動状態後にユニットがオフにされていなかった場合、使用者は、光および音声により、戸をスライドさせて閉じるようにまたは電源をオフにするように注意され得る。
【0061】
[0071]本デバイスのいくつかの特徴は、特定の液滴粒径の正確な投与を可能にする。液滴粒径は、開口板内の開口部の直径によって設定され、開口部は、高い精度で形成される。例として、開口板内の開口部の大きさは、1μmから6μmまで、2μmから5μmまで、3μmから5μmまで、3μmから4μmまで、などに及び得る。特定の実施形態では、開口板は、異なる平均放出液滴直径を有する放出液滴を提供するための異なる断面形状または直径を有する開口部を含み得る。
【0062】
[0072]例として、液滴直径(したがって、開口部直径)は、約1μmから約200μm、約2μmから約100μm、約2μmから約60μm、約2μmから約40μm、約2μmから約20μm、約1μmから約5μm、約1μmから約4.7μm、約1μmから約4μm、約10μmから約40μm、約10μmから約20μm、約5μmから約10μm、およびこれらの組合わせに及び得る。特定の実施形態では、液滴の少なくとも一部は、呼吸に適した範囲内の直径を有し、一方で、他の液滴は、非呼吸性部位を対象とするように、他のサイズでの直径を有し得る(例えば、約5μmよりも大きい)。この点に関して、説明に役立つ放出液滴流は、液滴の50%~70%を呼吸に適した範囲内に有し(約5μm未満)、液滴の30%~50%を呼吸に適した範囲外に有し得る(約5μm~約10μm、約5μm~約20μm、など)。
【0063】
[0073]1秒当たりの液滴の放出速度は、マイクロプロセッサによって作動される板の振動の振動数、例えば108kHzによって決定される。特定の実施形態では、吸入の開始の検出と完全な液滴生成との間には、50ミリ秒未満のずれが存在する。
【0064】
[0074]呼吸に適した範囲内での液滴生成は、吸入サイクルにおいて早期に起こり、それにより、吸入の終わりに口または上気道内に堆積される液滴の量が最小限に抑えられる。液滴送達デバイスの設計は、エゼクタ機構との安定した溶液接触を維持し、したがって、振ることおよびプライミングの必要性をなくす。さらに、エゼクタ機構の構成(出口側表面に疎水性被覆を含む)および流体リザーバ上のベント構成は、溶液の蒸発を制限する。
【0065】
[0075]デバイス内のマイクロプロセッサは、圧電材料の正確なタイミングおよび作動を保証し、かつ、各放出事象の日付時刻、および投与吸入中の使用者の吸入流速を記録する。ハンドヘルド形ベースユニット上の数値表示器が、薬剤カートリッジ内に残っている分の投与回数を示す。ベースユニットは、個々のカートリッジの固有の電気抵抗に基づいて、新たなカートリッジが挿入されたときにそれを検知する。投与の計数およびロックアウトは、マイクロプロセッサに予めプログラムされる。
【0066】
[0076]デバイスは、FDAの認可を受けたデバイスに現在使用されている材料で構成される。製造方法は、抽出物を最小限に抑えるために用いられる。
[0077]例として、開口板は、例えばステンレス鋼、ニッケル、コバルト、チタン、イリジウム、プラチナ、もしくはパラジウム、またはこれらの合金といった金属で形成され得る。あるいは、板は、適切なポリマー材料で形成され、かつ、例えば所望の接触角を得るために、上記のように被覆または処理され得る。より詳細には、開口板は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ニッケル、ニッケル-コバルト、ニッケル-パラジウム、パラジウム、プラチナ、これらの金属合金、およびこれらの組合わせから成る群から選択される材料で構成され得る。さらに、特定の態様では、開口板は、ドーム形の形状を備え得る。
【0067】
[0078]流体リザーバは、意図された医学的用途のための任意の適切な材料で構成される。詳細には、流体接触部分は、所望の作用物質に適合する材料から作られる。例として、特定の実施形態では、作用物質は、流体リザーバの内側、ならびに開口板および圧電駆動装置の内側面にのみ接触する。圧電エゼクタをベースユニットに収容された電池に接続する線が、作用物質との接触を回避するために、流体リザーバシェルに埋め込まれる。圧電エゼクタは、可撓性ブッシュにより、流体リザーバに取り付けられる。ブッシュは、作用物質に接触し、また、例えば、圧電噴霧器に使用されるような、そのような目的に適した当技術分野で知られている任意の材料であってよい。
【0068】
[0079]デバイスのマウスピースは、取外し可能、交換可能であってよく、また、清掃可能であってよい。同様に、デバイスのハウジングおよび流体リザーバは、湿った布で拭うことによって清掃され得る。エゼクタ板は、アンプル内に凹設され、また、アンプルをベースから取り外すこと、および、噴霧器を尖った物体に直接ぶつけることなしには、損傷を受けることはない。
【0069】
[0080]任意の適切な材料が、液滴送達デバイスのハウジングを形成するために使用され得る。特定の実施形態では、材料は、デバイスの構成要素または放出されるべき流体と相互作用しないように選択されるべきである。例えば、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリウレタン、フェノール類、ポリカーボネート、ポリイミド類、芳香族ポリエステル類(PET、PETG)、などを含む、製薬用途での使用に適したポリマー材料が使用され得る。
【0070】
[0081]本開示の特定の態様では、静電気の帯電に起因する使用中の放出液滴の堆積を減少させるのを支援するために、ハウジングの1つまたは複数の部分、例えば空気流経路に沿ったハウジングの内側表面に、静電塗装が適用され得る。あるいは、ハウジングの1つまたは複数の部分が、電荷散逸性ポリマーから形成され得る。例えば、導電性充填材が市販されており、かつ、医学的用途で使用されるより一般的なポリマー、例えばPEEK、ポリカーボネート、ポリオレフィン類(ポリプロピレンまたはポリエチレン)、またはポリスチレン共重合体もしくはアクリルブタジエンスチレン(ABS)共重合体などのスチレン類に配合され得る。
【0071】
[0082]本明細書においてさらに詳細に説明されるように、本開示の液滴送達デバイスは、吸気流を検出し、かつ、吸気流を(デバイス、スマートフォン、アプリ、コンピュータ、などの)記憶装置に記録/記憶することができる。予め設定された閾値(例えば、8L/min)が、定められた時間、例えば1.5秒間にわたる薬剤の送達をトリガする。吸気流は、流れが止まるまで、頻繁に標本抽出される。送達がトリガされる回数が取り込まれて、デバイス上の投与カウンタLEDに表示される。ブルートゥース(登録商標)機能が、データの無線送信を可能にする。
【0072】
[0083]デバイス内の無線通信(例えば、ブルートゥース(登録商標)、ワイファイ、セルラー、など)が、セッションごとの日付、時刻、および作動回数を使用者のスマートフォンに伝えてもよい。ソフトウェアプログラミングが、チャート、図形、投薬リマインダ、および警告を、患者、およびデータへの許可が与えられた誰にでも提供し得る。ソフトウェアアプリケーションは、本開示のデバイスを使用する複数の作用物質を組み入れることができるであろう。
【0073】
[0084]本開示のデバイスは、吸入サイクルの適切な過程中に液滴を分注するように構成され、かつ、例えば吸入後に適切な時間にわたって息を止めるように指示することによる、患者がデバイスを適切に使用できるように支援するための指示および/または指導機能を含み得る。本開示のデバイスは、吸入中に空気流を監視するのみならず、吸入の終わりを(測定される流量に基づいて)検出しかつ吸入が終わった後で一定の持続時間にわたって息を止めるように患者に合図することができる内部センサ/制御装置も有するので、この二重機能性を可能にする。
【0074】
[0085]1つの例示的な実施形態では、患者は、吸入の終わりにオンにされて定められた時間(すなわち、所望の息止め時間)、例えば10秒間の後にオフにされるLEDにより、息を止めるように指導され得る。あるいは、LEDは、吸入後に点滅し、かつ、息止め時間が終わるまで点滅し続けてもよい。この場合、デバイスにおける処理は、吸入の終わりを検出し、LEDをオンにし(または、LEDの点滅を引き起こす、など)、定められた時間を待ち、次いでLEDをオフにする。同様に、デバイスは、音響信号の間にわたって息を止めるように患者に合図するために、吸入の終わりに音声指示、例えば1回または複数回の音の突発(例えば、1000Hzの50ミリ秒パルス)、息を止めさせる言語指示、言語による秒読み、音楽、旋律、メロディ、などを発することができる。必要に応じて、デバイスはまた、息止め時間中または息止め時間の終了時に振動してもよい。
【0075】
[0086]理想的には、デバイスは、息止め時間が始まったときおよび息止め時間が終わったときに使用者に知らせるために、上記の音声法および視覚法の組合わせ(または、音声、光、および振動)を提供する。または、デバイスは、進行(例えば、視覚的なまたは音声による秒読み)を示すために、息止め中に上記の音声法および視覚法の組合わせ(または、音声、光、および振動)を提供する。
【0076】
[0087]他の態様では、本開示のデバイスは、より長い吸入、より深い吸入、などのための指導を提供し得る。吸入(または投与)中の平均ピーク吸気流が、指導を提供するために利用され得る。例えば、患者は、デバイス、電話機、またはクラウドに記憶されるような、吸入(投与)中に測定されたときの患者の平均ピーク吸気流の90%に患者が達するまで、より深く呼吸する命令を聞いてもよい。
【0077】
[0088]さらに、カメラ、スキャナ、または限定されることはないが例えば電荷結合素子(CCD)といった他のセンサを含む、画像取得デバイスが、放出されるエアロゾル噴煙を検出および測定するために設けられ得る。これらの検出器、LED、デルタPトランスデューサ(delta P transducer)、CCDデバイスは全て、例えばブルートゥース(登録商標)を介して、液滴の噴煙の放出を監視、検知、測定、および制御するために、ならびに、服薬順守、処置時間、用量、および患者の使用履歴などを報告するために使用される、デバイス内のマイクロプロセッサまたは制御装置に制御信号を提供する。
【0078】
[0089]特定の実施形態では、リザーバ/カートリッジモジュールは、ハウジング電子装置によって読み取られる、エゼクタ機構機能性、薬剤識別、および患者投与間隔に関連する情報などの重要なパラメータを含む情報を伝えることができる構成要素を含み得る。一部の情報は、工場においてモジュールに追加されてよく、また、一部の情報は、薬局において追加されてもよい。特定の実施形態では、工場によって配置された情報は、薬局による変更から保護され得る。モジュール情報は、印刷されたバーコード、またはモジュール幾何形状にエンコードされた(ハウジング上のセンサによって読み取られる、フランジ上の光透過穴などの)物理的なバーコードとして運ばれ得る。情報はまた、ハウジング内の電子装置と通信する、モジュール上のプログラム可能なまたはプログラム不可能なマイクロチップによって運ばれ得る。
【0079】
[0090]例として、工場または薬局におけるモジュールプログラミングは、薬剤コードを含んでもよく、この薬剤コードは、デバイスによって読み取られ、無線通信を介して関連する使用者のスマートフォンに伝えられ、次いで使用者に対して正しいものであると検証され得る。不正確なモジュール、ジェネリックのモジュール、損傷したモジュール、などを使用者がデバイスに挿入した場合、スマートフォンは、デバイスの動作をロックアウトするよう促され、したがって、受動吸入器デバイスでは不可能である、使用者の安全性および保護に関する手段を提供し得る。他の実施形態では、デバイス電子装置は、薬剤の経年劣化またはデバイスハウジング内での汚染物質もしくは粒子の集積に関連する問題を回避するために、使用を一定期間(おそらく、1日、または数週間、または数ヶ月)までに制限し得る。
【0080】
[0091]本明細書においてさらに説明されるように、液滴送達デバイスは、デバイスの作動、噴霧の検証、服薬順守、診断機構を促進するために、または、データ保存、ビッグデータ解析のためのより大きなネットワークの一部として、また、対象者の介護および治療のために使用される相互作用しかつ相互接続されるデバイスのためのより大きなネットワークの一部として、様々なセンサおよび検出器をさらに含み得る。さらに、ハウジングは、種々の状態通知、例えばオン/レディ、エラー、などを示すために、その表面上にLED組立体を含み得る。
【0081】
[0092]次に、同様の構成要素が同様の参照番号で示されている図を参照する。
[0093]図1Aおよび図1Bは、本開示の例示的な液滴送達デバイスを示し、図1Aは、閉位置にあるマウスピースカバー102を有する液滴送達デバイス100を示しており、図1Bは、開位置にあるマウスピースカバー102を有する液滴送達デバイス100を示している。図示のように、液滴送達デバイスは、ハウジング、その内部構成要素、および種々のデバイス構成要素(例えば、マウスピース、空気流入要素、など)が小型のハンドヘルド形デバイスを形成するように(例えば、空気流経路に沿って)実質的に直列のまたは平行な構成に配向されるという点で、直列配向に構成されている。
【0082】
[0094]図1Aおよび図1Bに示された実施形態では、液滴送達デバイス100は、ベースユニット104、および流体リザーバ/エゼクタ機構モジュール106を含む。この実施形態に示されるように、また、本明細書においてさらに詳細に論じられるように、流体リザーバ106は、スライド112を介してベースユニット104の前部に滑り込む。特定の実施形態では、マウスピースカバー102は、流体リザーバ106の挿入を促進する押し要素102aを含み得る。1つまたは複数の空気流入口もしくは開口部110も示されている。例として、デバイスの反対側に空気流入口があってもよく、デバイスの同じ側に複数の空気流入口があってもよく、またはこれらの組合わせがあってもよい(図示せず)。液滴送達デバイス100はまた、デバイスの空気流出口側にマウスピース108を含む。
【0083】
[0095]図2を参照すると、ハウジングの内部構成要素を含む図1Aおよび図1Bの例示的な液滴送達デバイスの分解組立図が示されており、ハウジングの内部構成要素には、電源/作動ボタン201、電子回路板202、エゼクタ機構(図示せず)およびリザーバを備える流体リザーバ/エゼクタ機構モジュール106、ならびに関連する接触子203aを伴う電源203(例えば、場合により再充電可能であり得る3本の単四電池)が含まれる。特定の実施形態では、リザーバは、交換可能、処分可能、または再利用可能であり得る、単一単位用量または複数単位用量のものであり得る。1つまたは複数の圧力センサ204、および任意選択の噴霧センサ205も示されている。特定の実施形態では、デバイスはまた、ベースユニット内への薬剤送達アンプル106の挿入に応じたデバイスの作動を促進するために、種々の電気接触子210および211を含み得る。同様に、特定の実施形態では、デバイスは、ベースユニット内への薬剤送達アンプル106の挿入を促進するために、スライド212、支柱213、ばね214、およびアンプルロック215を含み得る。
【0084】
[0096]構成要素は、ハウジング内に詰め込まれ、かつ、全体的に直列構成に配向される。ハウジングは、処分可能または再利用可能な、単回投与または複数回投与のものであってよい。ハウジングを形成するための様々な構成が本開示の範囲に含まれるが、図2に示されるように、ハウジングは、上カバー206、下カバー207、および内側ハウジング208を備え得る。ハウジングはまた、電源ハウジングまたは電源カバー209を含み得る。
【0085】
[0097]特定の実施形態では、デバイスは、例えば、使用者に指示および情報を提供するために、音声および/または視覚指示を含み得る。そのような実施形態では、デバイスは、スピーカもしくは音声チップ(図示せず)、1つまたは複数のLED灯216、および、LCD表示器217(LCD制御盤218およびレンズカバー219に適合する)を含み得る。ハウジングは、ハンドヘルド形であってよく、また、例えば対象者のスマートフォン、タブレット、またはスマートデバイス(図示せず)との通信のために、ブルートゥース(登録商標)通信モジュールまたは類似の無線通信モジュールを介して他のデバイスと通信するように適合されてもよい。
【0086】
[0098]特定の実施形態では、空気流入要素(図示せず)が、ハウジングの空気流入口において空気流内に位置決めされ、かつ、開口板の出口側を横断する非乱流の(すなわち、層流および/または遷移流の)空気流を促進するように、また、使用中に液滴の放出流が液滴送達デバイスを通って流れることを確実にするのに十分な空気流を提供するように、構成され得る。空気流入要素は、それを通して形成された1つまたは複数の開口部を備えてもよく、かつ、使用中の液滴送達デバイス内の内部圧力抵抗を増大または減少させるように構成され得る。いくつかの実施形態では、空気流入要素は、1つまたは複数の開口部のアレイを備え得る。他の実施形態では、空気流入要素は、1つまたは複数の阻流板を備え得る。特定の態様では、1つまたは複数の阻流板は、1つまたは複数の空気流開口部を備え得る。
【0087】
[0099]いくつかの実施形態では、空気流入要素は、マウスピース内に位置決めされ得る。他の実施形態では、空気流入要素は、空気流の方向に沿って開口板の出口側の後方に位置決めされ得る。なおも他の実施形態では、空気流入要素は、空気流の方向に沿って開口板の出口側に直列にまたは出口側の前部に位置決めされる。
【0088】
[00100]本明細書においてさらに詳細に説明されるように、本実施形態の態様は、内部圧力抵抗を選択的に増大または減少させるために、様々なサイズおよび様々な構成の開口部を有する層流要素の配置を可能にすることにより粒子送達デバイスの内部圧力抵抗をカスタマイズすることを、さらに可能にする。
【0089】
[00101]図3A図3Cは、本開示のいくつかの例示的な空気流入要素を示す。図3A図3Cはまた、圧力センサ、マウスピース、および基準圧力検知のためのチャネルの位置を示す。しかし、本開示は、そのように限定されるものではなく、本明細書において説明されるものを含む他の構成が、本開示の範囲に含まれるものとして意図されている。そのように限定されるものではないが、図3A図3Cの空気流入要素は、図1A図1Bの液滴送達デバイスでの使用に特に適する。
【0090】
[00102]より詳細には、図3Aは、マウスピースカバー1001、マウスピース1002、薬剤リザーバ1004およびエゼクタ機構1005を備える薬剤送達アンプル1003を含む、本開示の部分的に直列形の液滴送達デバイス1000の断面図を示す。示されるように、液滴送達デバイスは、マウスピース1002の空気入口に、穴1006aのアレイを有する空気流入要素1006を含む。圧力センサポート1007も示されており、この圧力センサポート1007は、マウスピース内での圧力の変化を検知するために使用され得る。図3Bを参照すると、デバイス1000の正面図が示されており、ここでは、基準圧力または周囲圧力の検知を実現するための第2の圧力センサポート1008が示されている。
【0091】
[00103]図3Cは、マウスピース1002および内側ハウジング1011を含む、部分的な分解組立図を示す。示されるように、マウスピース1002は、穴1006aのアレイを有する空気流入要素1006、および圧力センサポート1007を含む。さらに、マウスピース1002は、使用中のデバイスの気流内への液滴流の放出を可能にするために、例えばエゼクタ機構と位置が合うようにマウスピースの上面上に位置決めされた放出ポート1114を含み得る。他のセンサポート1115が、所望のセンサ機能、例えば噴霧検出を可能にするために、マウスピースに沿って要望通りに位置決めされ得る。マウスピースはまた、挿入時にベースユニットと整合する位置決め阻流板1116を含み得る。内側ハウジング1011は、基準圧力または周囲圧力の検知を促進するための圧力センサ盤1009および外側チャネル1010を含む。内側ハウジングは、デバイス内の(例えば、マウスピースまたはハウジング内の)圧力変化の検知を促進するための第1の圧力検知ポート1112と、基準圧力または周囲圧力の検知を促進するための第2の圧力検知ポート1113とをさらに含む。
【0092】
[00104]別の実施形態では、図4Aおよび4Bは、流体リザーバ/エゼクタ機構モジュールがベースユニットの前部に挿入される、本開示の代替的な液滴送達デバイスを示す。図4Aを参照すると、閉位置におけるマウスピースカバー402を有するベースユニット404を含む液滴送達デバイス400が示されており、図4Bを参照すると、開位置におけるマウスピースカバー402を有するベースユニット404を含む液滴送達デバイス400が示されている。示されるように、液滴送達デバイスは、ハウジング、その内部構成要素、および種々のデバイス構成要素(例えば、マウスピース、空気流入要素、など)が小型のハンドヘルド形デバイスを形成するように(例えば、空気流経路に沿って)実質的に直列のまたは平行な構成において配向されるという点で、直列配向において構成されている。
【0093】
[00105]図4Aおよび4Bに示された実施形態では、液滴送達デバイス400は、ベースユニット404および流体リザーバ406を含む。この実施形態に示されるように、また、本明細書においてさらに詳細に論じられるように、流体リザーバ406は、ベースユニット404の前部に滑り込む。特定の実施形態では、マウスピースカバー402は、開口板栓412を含むことができ、この開口板栓412は、カバー402が閉位置にあるときに、開口板414を覆うことができる。マウスピース408内の1つまたは複数の空気流入口または開口部410も示されている。例として、デバイスの反対側に空気流入口があってもよく、デバイスの同じ側に複数の空気流入口があってもよく、または、これらの組合わせがあってもよい(図示せず)。液滴送達デバイス400はまた、デバイスの空気流出口側にマウスピース408を含む。
【0094】
[00106]図5は、流体リザーバ/エゼクタ機構モジュールが挿入されていない、図4Aおよび図4Bの実施形態のベースユニット404を示す。流体リザーバ/エゼクタ機構モジュールが挿入されていないので、モジュールを所定の位置まで導くための軌道440、電気接触子442、およびセンサポート444が示されている。解放ボタン450も示されている。
【0095】
[00107]図6Aおよび図6Bは、マウスピースカバー402が取り付けられかつ閉位置にある流体リザーバ/エゼクタ機構モジュール406を、正面図(図6A)および背面図(図6B)で示す。図6Bは、モジュールの電気接触子436およびセンサポート437、ならびに挿入時の軌道440内へのモジュールの設置を促進するための突出スライド452を示す。例として、流体リザーバ/エゼクタ機構モジュール406がベースユニット404に挿入されるときに、突出スライド452は、軌道440と嵌合し、センサポート437は、センサポート444と嵌合し、電気接触子436は、電気接触子442と嵌合する。流体リザーバ/エゼクタ機構モジュールは、ベースユニットに押し込まれて、互いに係合する突出スライドと軌道とによって所定の位置に係止される。使用中、制御盤上に配置された圧力センサが、(例えば、マウスピース内の)圧力検知ポートを介してデバイス内の圧力変化を検知する。圧力変化の検出を促進するために、ベースユニットは、基準圧力または周囲圧力の検知を促進するための第2の圧力検知ポートおよび外側チャネル(図示せず)を含む。
【0096】
[00108]この場合もやはり、特定の実施形態では、空気流入要素(図示せず)が、ハウジングの空気流入口において空気流内に位置決めされ、かつ、開口板の出口側を横断する非乱流の(すなわち、層流および/または遷移流の)空気流を促進するように、また、使用中に液滴の放出流が液滴送達デバイスを通って流れることを確実にするのに十分な空気流を提供するように、構成され得る。空気流入要素は、それを通して形成された1つまたは複数の開口部を備えてもよく、かつ、使用中の液滴送達デバイス内の内部圧力抵抗を増大または減少させるように構成され得る。いくつかの実施形態では、空気流入要素は、1つまたは複数の開口部のアレイを備え得る。他の実施形態では、空気流入要素は、1つまたは複数の阻流板を備え得る。特定の態様では、1つまたは複数の阻流板は、1つまたは複数の空気流開口部を備え得る。
【0097】
[00109]いくつかの実施形態では、空気流入要素は、マウスピース内に位置決めされ得る。他の実施形態では、空気流入要素は、空気流の方向に沿って開口板の出口側の後方に位置決めされ得る。なおも他の実施形態では、空気流入要素は、空気流の方向に沿って開口板の出口側に直列にまたは出口側の前部に位置決めされる。
【0098】
[00110]本実施形態の態様は、内部圧力抵抗を選択的に増大または減少させるために、様々なサイズおよび様々な構成の開口部を有する層流要素の配置を可能にすることにより粒子送達デバイスの内部圧力抵抗をカスタマイズすることを、さらに可能にする。
【0099】
[00111]図の種々の実施形態に示されるように、液滴デバイスの特定の実施形態では、ハウジングおよびエゼクタ機構は、開口板の出口側が空気流の方向に対して直角に位置して液滴流が空気流の方向と平行に放出されるように配向される。他の実施形態では、ハウジングおよびエゼクタ機構は、開口板の出口側が空気流の方向と平行に位置して液滴流が空気流の方向に対して実質的に直角に放出されるように配向され、それにより、液滴の放出流は、ハウジングからの放出に先立って、おおよそ90度の軌道変化でハウジングを通って案内される。
【0100】
[00112]図7を参照すると、本開示の例示的な開口板700の開口部702の断面が示されている。示されるように、開口部702は、液滴入口702aから液滴出口702bまで、全体的に曲線状のテーパを有して構成され、液滴入口702aは、液滴出口702bよりも大きな直径/断面サイズを有して形成される。しかし、本開示の開口板は、曲線状のテーパ構成に限定されるものではなく、開口部の任意の適切な断面形状または構造が、本開示に関連して利用され得る。
【0101】
[00113]疎水性被覆704が、開口板700の液滴出口側上に形成される。少なくとも液滴出口表面の一部分に、少なくとも1つの開口部内に、少なくとも液滴入口表面の一部分に、およびこれらの組合わせ。特定の実施形態では、開口板は、少なくとも液滴出口表面の一部分において、または、少なくとも液滴出口表面の一部分および少なくとも1つの開口部内において、所望の表面接触角を提供し得る。示された実施形態では、疎水性被覆704は、液滴出口表面の表面に沿って、また、液滴出口領域702bに近い開口部702の内部の小部分702cに沿って、形成される。
【0102】
[00114]本開示のデバイスがそのように限定されるのではないが、開口板は、30μmから300μmまでの液滴入口側における最大直径を有する開口部、および、約0.5μmから6μmの(または、本明細書において論じられるように、所望の液滴放出直径に応じて、より大きな)液滴出口側における最大直径を有する開口部とともに、約100μmから300μmの間の厚さを有し得る。疎水性被覆の厚さは、所望の表面接触角を得るのに十分な厚さであってよいが、開口部を完全に塞ぐほどの厚さであってはならない。限定的ではない例として、疎水性被覆の厚さは、約50nmから約200nmまで、約50nmから約150nmまで、約75nmから約110nmまで、などに及び得る。当業者によって認識されるであろうように、開口部の直径は、必要に応じて、疎水性被覆の厚さに対応するように調整され得る。
【0103】

[00115]制御された接触角を有する開口板の低表面張力溶液を放出する能力を調べるために、ニッケル-パラジウム合金の開口板を含むエゼクタ機構が使用された。一般に、ニッケル-パラジウム合金は、約40度から約70度の間の接触角を示す。そのようなニッケル-パラジウム合金から形成された開口板は、本開示の圧電駆動の液滴送達デバイスにおいて、水溶液から効果的にエアロゾルを生成する。しかし、これらの開口板は、エタノールをベースとする溶液のエアロゾルを生成することができなかった。
【0104】
[00116]したがって、本開示の態様により、ニッケル-パラジウム合金の開口板は、エタノール液滴生成を評価するために、89度の間で表面接触角を変更するように被覆された。開口板の両面が、89度の接触角を与えるプラズマ処理によるプロセスで被覆された。しかし、これらの開口板の一部には、漏れが認められた。
【0105】
[00117]別の実施形態では、ニッケル-パラジウム合金の開口板が、100から110度の表面接触角を与えるポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))被覆により表面被覆された。試験は、これらの開口板が毎秒約17mGの質量流量において液滴を生成することを示した。
【0106】
[00118]Nordson Marchによるポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))で被覆された3つの開口板、および、被覆されていない3つのニッケル-パラジウム開口板を用いて、試験が行われた。被覆された表面は、100度から110度の水との接触角を有した。試験は、水中の0%、5%、50%、70%、および100%エタノールにおける質量放出に対して行われた(N=10@28.3slm)。質量放出は、分注前後のカートリッジを計量することによって測定された。各エゼクタ機構は、開口板を通したまたは開口板の周りでの漏れ、およびエゼクタ機構の表面上に堆積した液滴を確認するために、10回の放出後に乾燥された。
【0107】
[00119]10回の、1.5秒間の分注に対する平均の放出として、以下の表に結果が提示されている。良好な放出は、100%エタノールおよび5%エタノールの両方に見られたが、50%または70%のエタノール-水溶液では放出は見られなかった。開口板を通したごくわずかな漏れが認められた。
【0108】
【表1】
【0109】
[00120]他の例では、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))およびシロキサンで被覆された開口板を含むデバイスが試験された。被覆された表面は、100度から130度の水との接触角を有した。試験は、水中の5%、10%、30%、50%、70%、90%、95%、および100%エタノールにおける質量放出に対して行われた。質量放出は、分注前後のカートリッジを計量することによって測定された。各エゼクタ機構は、開口板を通したまたは開口板の周りでの漏れ、およびエゼクタ機構の表面上に堆積した液滴を確認するために、10回の放出後に乾燥された。
【0110】
[00121]結果は、上記の結果に似て、水中の100%、95%、90%、10%、および5%エタノールに対しては良好な放出であったが、中域の、水中の70%、50%、および30%エタノールでは、放出はなかった。
【0111】
[00122]中域、すなわち70%、50%、および30%溶液での放出の欠如は、これらの溶液のより高い粘性と一致する。さらに、被覆されていないニッケル-パラジウム開口板の場合、いずれの溶液でも放出は認められなかった。
【0112】
[00123]本明細書に挙げられる全ての刊行物および特許出願は、あたかもそれぞれの個々の刊行物または特許出願が参照により援用されることが明確にまた個々に示されているかのように、参照により本明細書に援用される。
【0113】
[00124]本発明は例示的な実施形態に関して説明されたが、本発明の範囲から逸脱することなしに、種々の変更がなされ得ること、および、それらの要素に換えて均等物が使用され得ることが、当業者によって理解されるであろう。さらに、その基本的な範囲から逸脱することなしに、特定の状況または材料を本教示に適合させるために、多くの修正がなされ得る。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載の範囲に含まれる全ての実施形態を含むものである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
【国際調査報告】