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特表2022-508537体内で外科手術を行うための医療デバイスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】体内で外科手術を行うための医療デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A61M37/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542262
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(85)【翻訳文提出日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2019075590
(87)【国際公開番号】W WO2020064663
(87)【国際公開日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】18315028.3
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521130310
【氏名又は名称】アルテドローン
【氏名又は名称原語表記】ARTEDRONE
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プーレティ,フィリップ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA80
4C267CC08
(57)【要約】
本発明は、医療デバイス(10)、好ましくは体内で働かせるためのマイクロロボット、好ましくは人体(2)内で働かせるためのマイクロロボット、に関する。医療デバイス(10)は、本体部(11)と、テール部(12)とを含む。テール部(12)には、回収ひも(13)が取り付けられる。回収ひも(13)は、デバイスを引き戻すに足る引張り強さ、および、医療デバイス(10)を押すには十分ではないコラム強さを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは身体血管内で使用するためのマイクロロボット、好ましくは人体(2)内で働かせるためのマイクロロボット、である医療デバイス(10)であって、前記医療デバイス(10)は、
本体部(11)と、
テール部(12)とを含み、
回収ひも(13)が前記デバイス、好ましくは前記テール部(12)に取り付けられ、 前記回収ひも(13)は、前記医療デバイス(10)を標的位置から引き戻すように適合され、前記医療デバイス(10)を標的位置へ移動させるには不十分である剛性に適合されることを特徴とする、医療デバイス(10)。
【請求項2】
前記医療デバイス(10)は、
i)前記デバイスをある方向へ能動的に移動させるための駆動装置(15)、および、
ii)外的効果によって体内での移動方向を変えるための制御部材(16)、
のうちの少なくとも一方を有することを特徴とする、請求項1に記載の医療デバイス(10)。
【請求項3】
前記医療デバイス(10)は、前記体内における前記医療デバイス(10)のポジションを決定するための位置合わせ手段(18)を有することを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の医療デバイス(10)。
【請求項4】
前記回収ひも(13)は、前記医療デバイス(10)へエネルギーおよび/またはデータを、特に光または電気信号を、伝送するための伝送ケーブル(30、31)を備えることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス(10)。
【請求項5】
前記回収ひも(13)は、金属、特に銅、ポリマー、炭素繊維、グラフェン、布、絹、タンパク質繊維およびカーボンナノチューブからなる材料群のうちの1つの材料を含むことを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の医療デバイス(10)。
【請求項6】
前記回収ひもは、前記医療デバイスより小さい断面を有することを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の医療デバイス(10)。
【請求項7】
前記医療デバイス(10)は、IRM、スキャナ、超音波検査法、X線、蛍光透視法を含むイメージング技術群のうちの少なくとも1つによる検出を可能にする材料を含むことを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の医療デバイス(10)。
【請求項8】
前記回収ひも(13)は、10~1000μm、好ましくは50μm~200μmの外径を有することを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の医療デバイス(10)。
【請求項9】
前記本体部(11)は、磁気部(14)を含むことを特徴とする、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の医療デバイス(10)。
【請求項10】
前記本体部(11)は、少なくとも1つの機能ユニット(51)を含み、該機能ユニット(51)は、特に、クランプ、メス、ドリル、フック、ステント、レッグ、キャタピラ、プロペラ、起爆装置、カメラおよびセンサよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の医療デバイス(10)。
【請求項11】
前記本体部(11)は、薬剤(62)を貯蔵しかつ放出するように構成されるコンパートメント(41)を備えることを特徴とする、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の医療デバイス(10)。
【請求項12】
前記本体部(11)は、前記医療デバイスから受信機(18)へ、特に前記回収ひも(13)を介して、データを送信するように構成される送信機(17)を含むことを特徴とする、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の医療デバイス(10)。
【請求項13】
前記医療デバイスは、8~2000μmのサイズ、好ましくは50~1000μm、より好ましくは200~500μmのサイズを有することを特徴とする、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の医療デバイス(10)。
【請求項14】
前記医療デバイス(10)の前記本体部(11)およびテール部(12)は、金属、プラスチック、ガラス、鉱物、セラミック、炭水化物、ニチノール、炭素、生体材料または生分解性材料の群から選択される材料を含むことを特徴とする、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の医療デバイス(10)。
【請求項15】
医療デバイス、好ましくは人体(2)、を制御するための方法であって、
-前記医療デバイス(10)、好ましくは請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の医療デバイス(10)を、身体の挿入部位へ挿入するステップであって、前記医療デバイスは、本体部(11)と、テール部(12)とを含む、挿入するステップと、
-前記医療デバイス(10)を標的部位(25)へ、回収ひも(13)を押すことなくナビゲートするステップであって、該回収ひもは、好ましくは、前記医療デバイス(10)の前記テール部(12)へ取り付けられる、ナビゲートするステップと、
-前記医療デバイス(10)を前記標的部位(25)から、前記回収ひも(13)を引っ張ることによって除去するステップと、を含む方法。
【請求項16】
請求項9に記載の医療デバイス(10)と磁場発生器(23)とを備える、医療デバイス(10)を制御するためのシステムであって、前記医療デバイス(10)は、前記磁場発生器(23)により発生される磁場(21)によって誘導可能であることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内で外科手術を行うための医療デバイスおよび方法に関する。一部の非限定的な例において、この医療デバイスは、人体内部で働かせるためのマイクロロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
最小侵襲手術としても知られる最小侵襲処置は、必要とされる切開サイズが最小限のみでよく、したがって、必要な創傷治癒時間が短く、患者における外傷リスクを低減する外科技術である。最小侵襲手術用として、カテーテル、光ファイバケーブル、グリッパ、および長いスティックまたは小型ビデオカメラ上のはさみなどの特定のツールが設計されている。
【0003】
最小侵襲手術における制約は、外科医が、長時間の手術では極度に疲労することになり得る動きの少ない手技を求めるツールを使用しなければならない場合があることにある。
【0004】
最小侵襲手術の分野におけるさらなる展開が、ロボット支援手術またはロボット手術である。これにより、外科的処置において、外科医を支援するためにロボットシステムが使用される。複数のロボットアームは、外科医が、たとえばジョイスティックを用いてロボットアームを操作しながら、最小侵襲手術を実行し得る。しかしながら、それでも手術は、ある程度侵襲的であり、内的および外的創傷を作り出し、その治癒に時間を要する。
【0005】
さらなる展開は、診断、手術または治療を行うために人体へ注入されるマイクロロボットである。これらのマイクロロボットは、糖尿病患者の血糖値をリアルタイムで測定して疾病を診断または監視するために、または、標的場所、たとえば腫瘍、へ薬剤を送達するために使用されることが可能である(Ornes著、PNAS、2017年)。これらのマイクロロボットは、小型デバイスであり、サイズは、数ミリメートル~数ミクロンである。
【0006】
Edd et al.は、人の尿管内を泳動して腎臓結石を破壊する新規方法を提供することが企図される外科用マイクロロボットを開示している(2003年IEEE会報)。Peyer et al.は、異なる粘度の流体内をナビゲートするための人工鞭毛構造を備える泳動マイクロロボットを開示している(2012年、IEEE)。マイクロロボットは、サイズに起因してバッテリおよびモータを搭載することができない。マイクロロボットを標的場所へ誘導する一般的な方法は、磁性材料を含むマイクロロボットを、外部磁場を用いて制御するというものである。スイス連邦工科大学チューリッヒ校のマルチスケールロボティクス研究室は、眼科手術を行うための、直径が285μmであるテザーなしのマイクロロボットを開示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらのマイクロロボットの小型サイズは、血流などの流体の流れに逆らって動く能力を制限する。磁場は、ロボットを誘導または停止させることができるが、その強さは、反対方向へ流れる血流に逆らってロボットを動かすに足るものではない場合もある。
【0008】
本発明の目的は、上述の問題点のうちの1つまたはそれ以上を軽減すること、特に、製造および使用が容易な医療デバイス、好ましくはマイクロロボット、を提供することにある。実施形態の中には、信頼性が高く、よって回収セーブを可能にするという追加の利点を有するものがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記課題は、独立請求項の特徴的記載部分における特徴によって解決される。
【0010】
本発明は、医療デバイスに関する。医療デバイスは、身体血管内で用いるためのマイクロロボットであってもよい。特に、医療デバイスまたはマイクロロボットは、人体内部で働かせることに適するものであってもよい。医療デバイスは、本体部と、テール部とを含む。デバイスには、好ましくはテール部に、回収ひもが取り付けられ、これは、医療デバイスを第1のポジションから引き戻すように適合されてもよい。ある実施形態において、回収ひもは、医療デバイスを標的位置へ移動させるには不十分な剛性を有してもよい。
【0011】
第1のポジションは、特に、医療デバイスの標的部位であってもよい。
回収ひもは、医療デバイスを引き戻すに足る引張り強さを有してもよく、かつ、静的または動的な体液により生み出される力に逆らって医療デバイスを押すほどのものではないコラム強さを有してもよい。したがって、ひもは、本体ダクトへ容易に挿入できるほどの細さで形成されることが可能である。
【0012】
本明細書で使用する「ひも」という用語は、デバイスを引っ張るというタスクを履行し、一方で、場合により、他の非限定的なタスクをも履行することができる、あらゆる構造体をカバーすることを意図したものである。
【0013】
医療デバイスは、体内へ、特に人体内へ、注入されるように適合されてもよい。テール部および場合により本体部は、回収ひもより大きい断面を有してもよい。医療デバイスは、機械的に引き戻されても、手動で引き戻されてもよい。このような回収ひもは、対向する流体の流れ、たとえば血流、を通して医療デバイスを引っ張ることを可能にする。この引っ張る動きは、ポジションの微調整であることも、医療デバイスの回収であることもある。特に、本デバイスは、回収ひも用の取っ手を備えてもよい。
【0014】
回収ひもは、医療デバイスから医療デバイスの挿入部位まで延びるように構成される長さを有してもよい。本発明の一実施形態は、ポートと、医療デバイスとを備え、回収ひもがテール部からポートまで延びるシステムに関する。
【0015】
回収ひもは、糸、特に軟質糸であってもよい。効果的には、糸は、曲げることができる。1つの利点は、このような医療デバイスは、既知のカテーテルデバイスに比べて小型サイズであり得、よって小さい切開で足りることにある。
【0016】
医療デバイスは、身体血管内へ放たれ、身体血管内を流体の流れによって血管内の標的部位へと運ばれ、かつ簡単な方法で回収されることが可能である。デバイスは、回収ひもを緩めること、または回収ひもを引っ張ることによって位置を変えられてもよい。
【0017】
医療デバイスは、好ましくは、デバイスをある方向へ能動的に動かすための少なくとも1つの駆動装置と、医療デバイスの体内での動きを制御しかつ好ましくは変更するための制御部材とを有する。医療デバイスは、体液の流れの中を移動しかつ/または組織上を移動することができる。
【0018】
駆動装置は、医療デバイスを動かすあらゆる種類の機能であることが可能である。可能な実施形態としては、プロペラ、ホイール、キャタピラ、鞭毛、レッグ、フックまたは外部操舵用の磁気駆動装置が挙げられる。制御部材は、デバイスを、外的効果、たとえば信号、によって移動、操縦または停止することができる。制御部材は、駆動装置の速度または回転方向を調整することができ、よってこれにより、ポジションを制御することができる。駆動装置は、医療デバイスが鋭く曲がった血管を通って進むことを可能にし得る。
【0019】
医療デバイスは、好ましくは、体内における医療デバイスのポジションを決定するための位置合わせ手段を有する。位置合わせ手段は、信号を発し、信号は、受信機により受信される。次いで、受信機は、医療デバイスのポジションを計算する。この信号は、電波、放射性トレーサ、音波、ブルートゥース(登録商標)、または他の任意の無線信号である可能性もある。ある代替実施形態において、位置合わせ手段は、温度、pH、レドックス電位、塩濃度、粘度、圧力、電位、ガス濃度、放射能、および/または代謝水準などの異なる環境パラメータを測定するためのセンサを含む可能性もある。位置合わせ手段は、測定されたパラメータを受信機へ送信し、受信機は、医療デバイスのポジションを計算する。測定されるパラメータは、環境の分析に使用される可能性もある。
【0020】
医療デバイスの回収ひもは、好ましくは、医療デバイスとの間でエネルギーおよび/またはデータを、特に光または電気信号を、伝送するための伝送ケーブルを備える。伝送ケーブルは、2つの別個のケーブル、すなわち、エネルギーおよびデータを配信するためのケーブルと、データを受信するためのケーブルと、を含む可能性もある。また、伝送ケーブルは、回収ひもとしての、エネルギーとデータおよび画像とを伝送するための単一ケーブルである可能性もある。
【0021】
回収ひもは、生体適合性材料を含んでも、生体適合性材料から成ってもよい。回収ひもは、好ましくは、金属、特に銅、ポリマー、炭素繊維、ナイロン、ポリマー、絹、およびカーボンナノチューブ、特にグラフェン、からなる材料群のうちの1つの材料を含み、または該1つの材料から実質的に成る。
【0022】
これらの材料は、生体適合性があり、かつ医療デバイスを引っ張るに足る長手方向強さを有する。さらに、上述の材料は、好ましくは少なくとも数時間または数日に渡って分解に耐え、デバイスが失われた場合には、やがて分解し得る。これは、医療デバイスが、必要に応じていつでも取り出され得ることを保証する。さらに、これらの材料は、様々なpHまたは酸化ストレスなどの体内の環境影響に耐える。
【0023】
医療デバイスは、好ましくは、イメージング技術により、たとえば、MRI、CTスキャナ、超音波検査法、X線または蛍光透視法により検出可能な材料を含む。
【0024】
これにより、デバイスのポジションは、処置中のいつでも決定されることが可能である。必要であれば、ポジションは、特にリアルタイムで追跡されることも可能である。医療デバイスの誘導は、流体の粘性または体液の流れによる外圧などのパラメータに依存して複雑になる可能性があることから、継続的な位置確認プロセスが有益である。
【0025】
医療デバイスは、血管、特に動脈または静脈、に特に適するものであり得る。他の適用部位は、尿道または尿管であり得る。医療デバイスの回収ひもは、好ましくは、10~1000μm、より好ましくは50~200μmの外径を有する。
【0026】
本体部は、磁気部を備えてもよい。この磁気部は、医療デバイスを外部磁場との相互作用によって誘導するように使用可能である。磁気部は、磁性材料製の、または磁性材料、磁性マイクロ粒子またはナノ粒子をマトリクスまたはコーティング内に含む、内核であってもよい。
【0027】
医療デバイスは、好ましくは、クランプ、メス、ドリル、フック、ステント、レッグ、キャタピラ、プロペラ、起爆装置、カメラまたはセンサなどの少なくとも1つの機能ユニット、または薬剤放出コンポーネントを備える。
【0028】
機能ユニットは、医療デバイスへ取り付け可能であり得る。機能ユニットは、医療デバイスを組織上で、または流体を介して移動させるために使用されることが可能である。また、これは、医療デバイスを組織部位へ取り付けるために、または、塞がれた開口内に通路を開けるために、または、新しい開口を作り出すためにも使用可能である。あるいは、機能ユニットは、身体環境からデータを収集するために使用されることも可能である。
【0029】
提案するこのデバイスは、動脈内の血栓形成を除去し、動脈瘤を塞ぎ、または腫瘍へ薬剤を送達することに特に適する。起爆装置は、血栓を開ける可能性もある。
【0030】
機能ユニットは、起動可能であってもよい。実施形態によっては、機能ユニットは、磁場によって起動され、または、所定の実施形態では、電磁波によって起動される。これにより、たとえば薬剤の制御された放出が可能となる。機能ユニットは、エネルギー、たとえば電気信号、によって起動可能であってもよい。
【0031】
医療デバイスは、好ましくは、薬剤を貯蔵しかつ放出するためのリザーバを備える。リザーバは、薬剤を特有の適用部位へ投与するために使用されることが可能である。たとえば、腫瘍細胞は、毒性のある薬剤で局所的に治療されることが可能である。これにより、医療デバイスは、毒性のある薬剤を適用部位へ輸送し、かつこれをそこで放出するために使用される。薬剤の制御された放出は、時限的な薬剤投与の可能性をも可能にする。医療デバイスは、挿入され、適用部位まで誘導され、かつ薬剤の予定された放出時間まで待つことができる。また、2種の異なる薬剤、たとえば作用薬および薬剤を不活性化する酵素、の遅延放出を制御することも可能である。
【0032】
医療デバイスは、好ましくは、医療デバイスから受信機へ、特に回収ひもを介してデータを送信するための送信機を備える。
【0033】
回収ひもは、エネルギーを伝達するように適合化されてもよい。これにより、医療デバイス内のセンサにより入手されるデータが送信されてもよい。
【0034】
本デバイスは、回収ひもを介してエネルギーを受信し、かつ/または、医療デバイス内の、特に本体部内のセンサにより入手されるデータを、回収ひもを介して送るように適合化される可能性もある。追加的実施形態または代替実施形態において、医療デバイスまたは回収ひもは、エネルギーまたはデータを送信しかつ/または受信するための無線送信機および/または無線受信機を備えてもよい。
【0035】
医療デバイスは、好ましくは、8~2000μmのサイズ、好ましくは50~1000μm、より好ましくは200~500μmのサイズを有する。このサイズは、医療デバイスの長さ、直径または最長寸法であってもよい。
【0036】
医療デバイスの本体部および/またはテール部は、好ましくは、金属、プラスチック、ガラス、鉱物、セラミック、炭水化物、ニチノール、炭素、生体材料または生分解性材料などの材料を含む。
【0037】
本発明は、さらに、体内で、好ましくは人体内で外科手術を行うための方法を提供する。第1のステップにおいて、医療デバイスが体内に挿入される。医療デバイスは、次に、回収ひもを押すことなく、相互作用する場所までナビゲートされる。特に、医療デバイスは、標的部位の上流へ挿入される。流体の流れが、医療デバイスを標的部位まで運ぶこともある。医療デバイスは、回収ひもを緩める、または引っ張ることによって位置合わせされてもよい。
【0038】
医療デバイスは、1つまたは複数の場所で1つまたは複数の作用を実行してもよい。医療デバイスは、回収ひもを引っ張ることによって体から取り出される。
【0039】
本発明は、さらに、医療デバイスを制御するためのシステムを提供する。本システムは、医療デバイス、好ましくはこれまでに述べたような医療デバイスと、磁場発生器とを備える。医療デバイスは、次に、磁場発生器により生成される磁場によって誘導される。
【0040】
外部磁場発生器は、0.1~20T/m、好ましくは0.2~1T/mの勾配を有する磁場を生成する。医療デバイスが体内に挿入されると、磁場を用いて医療デバイスを適用部位まで誘導することができる。したがって、医療デバイスは、特に体液の流れの中に浮かんでいる間に、磁場により移動され、または停止され、または操縦される。医療デバイスは、ずっと、回収ひもに取り付けられたままである。
【0041】
さらなる実施形態において、医療デバイスは、磁気異方性を有してもよい。これにより、医療デバイスは、磁場によって配向されることが可能である。
【0042】
本発明はさらに、体内で、好ましくは人体内で働かせるための医療デバイス、好ましくはマイクロロボットに関する。
【0043】
本発明の非限定的な実施形態を、添付の図面に関連して、単なる例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】医療デバイスの略図である。
図2】医療デバイスの人体挿入部位の略図である。
図3】駆動装置と制御部材とを備える医療デバイスの略図である。
図4】位置合わせ手段を備える医療デバイスの略図である。
図5】医療デバイスを磁場で引っ張る略図である。
図6】医療デバイスの回収ひもを介してデータおよびエネルギーを伝送する略図である。
図7a】医療デバイスに取り付けられた機能ユニットの略図である。
図7b】医療デバイスに取り付けられた機能ユニットの略図である。
図7c】医療デバイスに取り付けられた機能ユニットの略図である。
図7d】医療デバイスに取り付けられた機能ユニットの略図である。
図8】腫瘍および医療デバイスによって腫瘍へ送達された抗体の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本体部11と、テール部12とを備える医療デバイス10を示す略図である。本体部12には、回収ひも13が取り付けられる。回収ひも13は、医療デバイス10を引っ張るために使用される。
【0046】
図2は、医療デバイス10の、人体2における挿入部位20を示す略図である。心臓1は、血流と繋がっている。血流には、大動脈3、静脈4および毛細血管5などの異なるタイプの血管6が含まれる。医療デバイス10は、血管6の挿入部位20へ挿入される。したがって、血管6は、挿入部位20でカテーテル22により穿孔される。医療デバイス10は、血流Bに挿入される。血流Bは、血管を通して医療デバイス10を、医療デバイスが相互作用部位25に到達するまで運んでいる(図5)。医療デバイス10は、随時回収ひも13へ繋がれ、かつ挿入部位20まで引き戻されることが可能である。
【0047】
図3は、血管6内の、回収ひも13を伴った医療デバイス10を示す。医療デバイス10は、駆動装置15と、駆動装置を制御するための制御部材16とを有する。駆動装置15は、医療デバイス10をある方向へ能動的に動かす。制御部材16は、駆動装置15の作用を修正する。制御部材16は、駆動装置15の回転方向を反転させる、または、その速度を調整することができる。
【0048】
図4は、血管6内の、回収ひも13を伴った医療デバイス10を示す。医療デバイス10は、位置合わせ手段17を有する。位置合わせ手段17は、信号19を発し、信号19は、受信機18によって受信される。信号19に基づいて、受信機18は、医療デバイス10のポジションを計算する。
【0049】
図5は、血管6を医療デバイス10と共に示す略図である。医療デバイス10は、血流Bによって輸送され、回収ひも13へ取り付けられる。磁場発生器23は、適用部位25で磁場21を生成している。医療デバイス10の本体部11は、磁気部14を有し、これが磁場21によって引き寄せられる。適用部位25において、医療デバイス10は、磁場21により血流Bの力に抗して保持された状態で所定位置に留まる。何らかの作用を実行した後、磁場発生器23は、オフにされ、磁場21が崩壊する。医療デバイスは、回収ひも13を引っ張ることにより、血流Bの力に逆らってとり除かれる。
【0050】
図6は、医療デバイス10の略図を示す。回収ひも13は、エネルギー伝送ケーブル30と、データ伝送ケーブル31とを備える。エネルギー伝送ケーブル30は、センサ40およびコンパートメント41へエネルギーを伝送する。センサは、データ伝送ケーブル31を介してデータを送信する。代替例として、エネルギー伝送ケーブル30およびデータ伝送ケーブル31は、同一ケーブルに統合されることが可能である。このケーブルを用いて、回収ひも13を介してエネルギーが医療デバイスへ輸送され、かつ医療デバイスとの間でデータが輸送される。
【0051】
図7a~図7dは、取り付け可能な機能ユニット51を備えた医療デバイス10を示す略図である。図7aにおいて、機能ユニット51は、医療デバイス10をデバイスの長手方向軸に沿って順方向または逆方向へ動かすためのプロペラである。図7bは、機能ユニット51がキャタピラである医療デバイス10を示す。キャタピラは、医療デバイス10を組織部位上へと動かすために使用される。図7cにおいて、医療デバイス10の機能ユニット51は、ドリルである。ドリルは、組織に穴を開け、身体的障壁を越えて移動するための開口を生成するために使用可能である。図7dにおいて、医療デバイス10の機能ユニット51は、フックである。フックは、医療デバイス10を所定位置に保持するために、または、医療デバイス10の回収に際してオブジェクトまたは物質を引きずるために使用可能である。
【0052】
図8は、腫瘍部位63を示す略図である。腫瘍細胞61は、正常細胞60よりサイズが大きく、複製周期が速い。医療デバイス10は、腫瘍部位へと誘導され、コンパートメント41内で腫瘍特異的抗体62を運ぶ。医療デバイス10は、腫瘍部位63で腫瘍特異的抗体62を放出する。抗体は、腫瘍細胞に結合し、免疫療法プロセスを誘起する。抗体62を放出した後、医療デバイス10は、回収ひも13を引っ張ることによって腫瘍部位63から除去される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
【国際調査報告】