(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】航空機の飛行中燃料補給のための方法およびステム
(51)【国際特許分類】
B64D 39/00 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
B64D39/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542279
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(85)【翻訳文提出日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 GB2019051575
(87)【国際公開番号】W WO2020065247
(87)【国際公開日】2020-04-02
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521130011
【氏名又は名称】ブルリック リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ピットマン
(57)【要約】
飛行中の燃料補給のために燃料タンカ航空機を操作する方法は、タンカ航空機の通信ユニットから燃料レシーバ航空機の通信ユニットに展開指令信号を送信して、導管およびドローグをレシーバ航空機から展開させることと、タンカ航空機およびドローグの少なくとも一方を制御して、ドローグをタンカ航空機の燃料ホースの第1の端部と係合させることであって、燃料ホースの第2の端部がタンカ航空機に連結している、係合させることと、タンカ航空機の通信ユニットからレシーバ航空機の通信ユニットに復帰指令信号を送信し、導管およびドローグを、燃料ホースの第1の端部からレシーバ航空機に復帰させることと、と含み、タンカ航空機は、レシーバ航空機の背後に位置し、展開指令信号は、導管およびドローグをレシーバ航空機の後方に展開させるためのものである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行中燃料補給のために燃料タンカ航空機を操作する方法であって、
前記タンカ航空機の通信ユニットから燃料レシーバ航空機の通信ユニットに展開指令信号を送信して、導管およびドローグを前記レシーバ航空機から展開させることと、
前記タンカ航空機および前記ドローグの少なくとも一方を制御して、前記ドローグを前記タンカ航空機の燃料ホースの第1の端部と係合させることであって、前記燃料ホースの第2の端部が、前記タンカ航空機に連結されている、係合させることと、
前記タンカ航空機の前記通信ユニットから前記レシーバ航空機の前記通信ユニットに復帰指令信号を送信して、前記導管およびドローグを前記燃料ホースの前記第1の端部で前記レシーバ航空機に復帰させることと、を含み、
前記タンカ航空機が、前記レシーバ航空機の背後に位置し、前記展開指令信号が、前記導管およびドローグを前記レシーバ航空機の後方に展開させるためのものである、燃料タンカ航空機を操作する方法。
【請求項2】
前記タンカ航空機の燃料ポンプを作動させて、前記燃料ホースを介して前記タンカ航空機から前記レシーバ航空機に燃料を移送することをさらに含む、請求項1に記載の燃料タンカ航空機を操作する方法。
【請求項3】
前記タンカ航空機の前記通信ユニットから前記燃料レシーバ航空機の前記通信ユニットにさらなる復帰指令信号を送信して、前記導管およびドローグならび前記燃料ホースの前記第1の端部を前記タンカ航空機に復帰させることをさらに含む、請求項2に記載の燃料タンカ航空機を操作する方法。
【請求項4】
前記ドローグを前記燃料ホースの前記第1の端部から係合解除させることと、
前記タンカ航空機の前記通信ユニットから前記レシーバ航空機の前記通信ユニットにさらなる復帰指令信号を送信して、前記導管およびドローグを前記レシーバ航空機に復帰させることと、をさらに含む、請求項3に記載の燃料タンカ航空機を操作する方法。
【請求項5】
前記タンカ航空機を制御して前記ドローグを前記燃料ホースの前記第1の端部に係合させることが、前記タンカ航空機を操縦して、前記燃料ホースの前記第1の端部を前記ドローグに誘導することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料タンカ航空機を操作する方法。
【請求項6】
前記ドローグを制御して前記ドローグを前記燃料ホースの前記第1の端部に係合させることが、前記タンカ航空機の前記通信ユニットから制御信号を送信して、前記ドローグの空力制御翼面を調整することにより、前記ドローグを前記燃料ホースの前記第1の端部に誘導することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料タンカ航空機を操作する方法。
【請求項7】
飛行中燃料補給のために燃料レシーバ航空機を操作する方法であって、
前記レシーバ航空機の通信ユニットにおいて、燃料タンカ航空機の通信ユニットからの展開指令信号を取得することと、
前記展開指令信号に応答して、導管およびドローグを制御して、前記レシーバ航空機から展開し、前記ドローグが前記タンカ航空機の燃料ホースの第1の端部と係合されることを可能にすることであって、前記燃料ホースの第2の端部が、前記タンカ航空機に連結されている、制御することと、
前記レシーバ航空機の前記通信ユニットにおいて、前記タンカ航空機の前記通信ユニットからの復帰指令信号を取得することと、
前記復帰指令信号に応答し、前記導管およびドローグを制御して、前記燃料ホースの前記第1の端部で前記レシーバ航空機に復帰させることと、を含み、
前記タンカ航空機が、前記レシーバ航空機の背後に位置し、前記導管およびドローグが、制御されて、前記レシーバ航空機の後方に展開される、燃料レシーバ航空機を操作する方法。
【請求項8】
飛行中燃料補給のために航空機を操作する方法であって、
燃料タンカ航空機の通信ユニットから展開指令信号を送信することと、
燃料レシーバ航空機の通信ユニットにおいて前記展開指令信号を取得することと、
前記展開指令信号に応答して、導管およびドローグを制御して、前記レシーバ航空機から展開することと、
前記タンカ航空機および前記ドローグの少なくとも一方を制御して、前記ドローグを前記タンカ航空機の燃料ホースの第1の端部と係合させることであって、前記燃料ホースの第2の端部が、前記タンカ航空機に連結されている、係合させることと、
前記タンカ航空機の前記通信ユニットから復帰指令信号を送信することと、
前記レシーバ航空機の前記通信ユニットにおいて、前記復帰指令信号を取得することと、
前記復帰指令信号に応答して、前記導管およびドローグを制御して、前記燃料ホースの前記第1の端部で前記レシーバ航空機に復帰させることと、を含み、
前記タンカ航空機が、前記レシーバ航空機の背後に位置し、前記導管およびドローグが、制御されて前記レシーバ航空機の後方に展開される、燃料レシーバ航空機を操作する方法。
【請求項9】
飛行中燃料補給のための燃料タンカ航空機用のシステムであって、
燃料レシーバ航空機のドローグと係合するための第1の端部と、前記燃料タンカ航空機に連結された第2の端部と、を備える、燃料ホースと、
指令信号を前記レシーバ航空機の通信ユニットに送信するように構成された通信ユニットと、を備え、
前記指令信号が、
前記レシーバ航空機に導管およびドローグを前記レシーバ航空機の背後の前記タンカ航空機の後方に展開させ、前記ドローグが前記燃料ホースの前記第1の端部に係合されることを可能にするための、展開指令信号と、
前記導管およびドローグを前記燃料ホースの前記第1の端部で前記レシーバ航空機に復帰させるための、復帰指令信号と、を含む、燃料タンカ航空機用のシステム。
【請求項10】
前記燃料ホースの前記第1の端部が、前記燃料タンカ航空機に取り外し可能に取り付けられるように構成された燃料プローブを備える、請求項9に記載の燃料タンカ航空機用のシステム。
【請求項11】
飛行中燃料補給のための燃料レシーバ航空機用のシステムであって、
燃料タンカ航空機の燃料ホースの第1の端部と係合するための導管およびドローグであって、前記燃料ホースの第2の端部が、前記タンカ航空機に連結されている、導管およびドローグと、
前記タンカ航空機の通信ユニットからの展開指令信号および復帰指令信号を取得するように構成された通信ユニットと、
コントローラであって、
前記展開指令信号に応答し、前記導管およびドローグを前記レシーバ航空機の背後の前記タンカ航空機の後方に展開して、前記ドローグが前記燃料ホースの前記第1の端部に係合されることを可能にするように、かつ、
前記復帰指令信号に応答し、前記導管およびドローグを前記燃料ホースの前記第1の端部で前レシーバ航空機に復帰させるように構成されたコントローラと、を備える、燃料レシーバ航空機用のシステム。
【請求項12】
前記ドローグが、飛行中に、前記燃料ホースの前記第1の端部と係合するように前記ドローグを誘導するための調整可能な空力制御翼面を備える、請求項11に記載の燃料レシーバ航空機用のシステム。
【請求項13】
前記ドローグが、前記空力制御翼面を調整するように前記タンカ航空機の前記通信ユニットから制御信号を受信するための通信ユニットをさらに備える、請求項12に記載の燃料レシーバ航空機用のシステム。
【請求項14】
前記ドローグが、前記調整可能な空力制御翼面に給電するための専用電源をさらに備える、請求項12または13に記載の燃料レシーバ航空機用のシステム。
【請求項15】
前記導管が、前記調整可能な空力制御翼面に給電するように、前記レシーバ航空機から前記ドローグに電力を送信するための導電性材料を含む、請求項12または13に記載の燃料レシーバ航空機用のシステム。
【請求項16】
飛行中燃料補給のためのシステムであって、前記システムが、
燃料レシーバ航空機であって、
導管およびドローグと、
前記導管およびドローグに対する展開指令信号および復帰指令信号を取得するように構成された通信ユニットと、
前記指令信号に応答して、前記導管およびドローグを制御するためのコントローラと、を備える、燃料レシーバ航空機と、
燃料タンカ航空機であって、
前記ドローグと係合するための第1の端部と、燃料タンカ航空機に連結された第2の端部と、を備える、燃料ホースと、
前記指令信号を送信するように構成された通信ユニットと、を備える燃料タンカ航空機と、を備え、
前記コントローラが、前記展開指令信号に応答して、前記導管およびドローグを前記レシーバ航空機の背後の前記タンカ航空機の後方に展開するように構成されており、
前記タンカ航空機および前記ドローグの少なくとも一方が、前記ドローグを前記燃料ホースの前記第1の端部に係合するように制御可能であり、
前記コントローラが、前記復帰指令信号に応答して、前記導管およびドローグを、前記燃料ホースの前記第1の端部で前記レシーバ航空機に復帰させるように構成されている、飛行中燃料補給のためのシステム。
【請求項17】
前記ドローグが、飛行中に、前記燃料ホースの前記第1の端部と係合するように前記ドローグを誘導するための調整可能な空力制御翼面を備える、請求項16に記載の飛行中燃料補給のためのシステム。
【請求項18】
前記ドローグが、前記空力制御翼面を調整するように前記タンカ航空機の前記通信ユニットからの制御信号を受信するための通信ユニットをさらに備える、請求項17に記載の飛行中燃料補給のためのシステム。
【請求項19】
前記ドローグが、前記調整可能な空力制御翼面に給電するための専用の電源をさらに備える、請求項17または18に記載の飛行中燃料補給のためのシステム。
【請求項20】
前記導管が、前記調整可能な空力制御翼面に給電するように前記レシーバ航空機から前記ドローグに電力を伝送するために導電性材料を含む、請求項17または18に記載の飛行中燃料補給のためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の飛行中(再)燃料補給のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
飛行中再燃料補給(IFR:in-flight refuelling)は、飛行中に1つの航空機(「タンカ」)から別の航空機(「レシーバ」)への燃料(典型的には液体燃料、例えば、ケロシン)の移送を含む。IFR(空中給油または空対空給油としても知られている)は、軍用航空機の航続距離またはロイター飛行時間を拡大する(または離陸有効搭載量を増やす)ために使用される十分に確立された手法となっている。典型的に、タンカは、再燃料補給作業用に特別に再設計または改造された旅客機を元にしているが、レシーバは、通常、戦闘機であるが、場合によって爆撃機もしくは偵察機である。
【0003】
IFRの試行は、1920年代に始まり、1930年代まで続いた。初期のシステムでは、グラップリング方法を使用しており、この方法により、タンカ航空機の乗組員がタンカから燃料ホースを巻き出し、次いで、レシーバ航空機の乗組員が空中でホースを把持し、それを巻き込んでレシーバの燃料タンクに取り付けることになる。本方法の変化形において、ケーブルがレシーバ航空機から投げ出され、タンカ航空機の乗組員によって空中で把持された。タンカの乗組員は、ケーブルの自由端をタンカに引き込み、それを燃料ホースに取り付けた。次いで、レシーバの乗組員は、ケーブル(およびそれに取り付けられたホース)をレシーバに引き込み、ホースをレシーバの燃料タンクに連結した。ホースが連結された状態で、タンカは、重力下で燃料を供給するために、レシーバの上方に上昇した。
【0004】
1950年代までに、IFRは軍用航空機のために十分に確立され、今日において、2つの異なる方法、すなわち、フライングブームおよびプローブアンドドローグが広く使用されている。
【0005】
フライングブームは、タンカの後部に取り付けられており、一方の端部にノズルを有し、剛性で伸縮式かつ関節式チューブを備える。ブームは、飛行中にブームを制御するための空気力を生成するために移動されることが可能な飛行制御翼面を含む。再燃料補給のために、まず、レシーバが、真っ直ぐ水平に飛行するタンカの背後に編隊を形成するように位置決めされる。次いで、タンカに搭載されたブームオペレータは、ノズルが後続のレシーバの収納容器に誘導されるように、ブームを延在させて飛行制御翼面を調整する。一旦ノズルが収納容器に確実に挿入されてロックされると、燃料がタンカからレシーバに圧送される。必要な量の燃料が移送されると、ブームオペレータによってノズルが収納容器から切り離され、次いで、2機の航空機は自由に編隊を解除することになる。
【0006】
プローブアンドドローグシステムにおいて、タンカ航空機には、可撓性ホースが装備されている。シャトルコックに似たドローグ(またはバスケット)が、ホースの一方の端部に取り付けられている。他方の端部は、ホースドラムユニット(HDU:hose drum unit)に取り付けられており、ホースは、使用されていないときにはHDUに巻き付けられている。プローブは、レシーバ航空機の機首または胴体から延在する剛性の管状アームである。プローブは、典型的に引き込み式であるため、使用しないときは格納しておくことができる。
【0007】
再燃料補給のために、ホースおよびドローグは、タンカが真っ直ぐ水平に飛行している間に、タンカの背後かつ下方に引きずられる。ホースは、飛行中、ドローグのシャトルコック形状によって安定される。レシーバのパイロットは、レシーバをタンカの背後かつ下方に位置決めする。次いで、パイロットは、レシーバ航空機をタンカに向かって飛行させ、これにより、延在されたプローブが漏斗形状のドローグに挿入される。プローブがドローグと適切に係合されると、燃料が、タンカからレシーバに圧送される。HDU内のモーターは、レシーバ航空機が前後に移動するときにホースが引き込まれる、および延在されるように制御し、これによって、適切な量の張力を維持してホースの好ましくない屈曲を防止する。必要な量の燃料が移送されると、プローブはドローグから切り離され、2機の航空機は編隊を解除することができる。
【0008】
フライングブームシステムとは異なり、プローブアンドドローグシステムは、タンカ航空機に搭載される専用のブームオペレータを必要としない。また、タンカの設計は、より単純である。さらに、タンカには、複数のホースおよびドローグを設けることができ、これにより、2機以上のレシーバ航空機に同時に燃料補給することができるが、これに対し、フライングブームシステムは、一度に1機のレシーバ航空機にのみ燃料補給することができる。その反面、プローブアンドドローグシステムの燃料流量はフライングブームシステムの燃料流量よりも低く、燃料補給時間が長くなる。加えて、プローブアンドドローグシステムは、悪天候および乱気流の影響を受けやすい。さらに、プローブアンドドローグシステムは、すべてのレシーバ航空機に再燃料補給プローブを取り付ける必要がある。
【0009】
IFRは軍用航空機には日常的に使用されるようになっているが、燃料消費量の低減によるコスト削減という点で大きな潜在的利益があるにもかかわらず、商用航空機の運航にはあまり適用されていない。主な理由は、レシーバ航空機のパイロットが、危険な燃料補給作業中にレシーバ航空機を安全に制御するのに高度なスキルが必要とされることである。これには、専門的かつ定期的なトレーニングが求められ、商用旅客機の乗組員には現実的ではない。
【0010】
さらに、IFRシステム自体の一部の要素は、レシーバ航空機として旅客機に使用するには適していないように思われる。例えば、軍用航空機のフライングブームシステムで使用されるその種のブームは、レシーバが大型旅客機である場合、タンカとレシーバとの安全な離隔距離を提供するには短すぎる。
【0011】
これらの理由から、少なくとも軍事オペレータによって使用されるその種類のIFRシステムは、大型の民間航空機での使用には適しておらず、商用旅客機の運航に対して安全認証を得る可能性は低いと思われる。
【0012】
したがって、本発明は、民間航空機の飛行中(再)燃料補給のための方法およびシステムを提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の一態様によれば、飛行中燃料補給のために燃料タンカ航空機を操作する方法が提供され、タンカ航空機の通信ユニットから燃料レシーバ航空機の通信ユニットに展開指令信号を送信して、導管およびドローグをレシーバ航空機から展開されることと、タンカ航空機およびドローグの少なくとも一方を制御して、ドローグをタンカ航空機の燃料ホースの第1の端部と係合させることであって、燃料ホースの第2の端部はタンカ航空機に連結されている、係合させることと、タンカ航空機の通信ユニットからレシーバ航空機の通信ユニットに復帰指令信号を送信して、導管およびドローグを燃料ホースの第1の端部からレシーバ航空機に復帰させることと、を含み、タンカ航空機はレシーバ航空機の背後に位置し、展開指令信号は、導管およびドローグをレシーバ航空機の後方に展開させるためのものである。
【0014】
燃料タンカ航空機を操作する方法は、タンカ航空機の燃料ポンプを作動させて、燃料ホースを介してタンカ航空機からレシーバ航空機に燃料を移送することをさらに含み得る。
【0015】
燃料タンカ航空機を操作する方法は、タンカ航空機の通信ユニットから燃料レシーバ航空機の通信ユニットにさらなる復帰指令信号を送信して、導管およびドローグならび燃料ホースの第1の端部をタンカ航空機に復帰させることをさらに含み得る。
【0016】
燃料タンカ航空機を操作する方法は、ドローグを燃料ホースの第1の端部から係合解除させることと、タンカ航空機の通信ユニットからレシーバ航空機の通信ユニットにさらなる復帰指令信号を送信して、導管およびドローグをレシーバ航空機に復帰させることと、をさらに含み得る。
【0017】
タンカ航空機を制御してドローグを燃料ホースの第1の端部に係合させることは、タンカ航空機を操縦して燃料ホースの第1の端部をドローグに誘導すること、を含み得る。
【0018】
ドローグを制御してドローグを燃料ホースの第1の端部に係合させることは、タンカ航空機の通信ユニットから制御信号を送信して、ドローグの空力制御翼面を調整することにより、ドローグを燃料ホースの第1の端部に誘導することを含み得る。
【0019】
本発明の別の態様によれば、飛行中燃料補給のために燃料レシーバ航空機を操作する方法が提供され、レシーバ航空機の通信ユニットにおいて、燃料タンカ航空機の通信ユニットからの展開指令信号を取得することと、展開指令信号に応答し、導管およびドローグを制御してレシーバ航空機から展開し、ドローグがタンカ航空機の燃料ホースの第1の端部と係合されることを可能にすることであって、燃料ホースの第2の端部はタンカ航空機に連結されている、可能にすることと、レシーバ航空機の通信ユニットにおいて、タンカ航空機の通信ユニットからの復帰指令信号を取得することと、復帰指令信号に応答し、導管およびドローグを制御して、燃料ホースの第1の端部からレシーバ航空機に復帰させることと、を含み、タンカ航空機は、レシーバ航空機の背後に位置し、導管およびドローグは、制御されてレシーバ航空機の後方に展開される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、飛行中燃料補給のために航空機を操作する方法が提供され、燃料タンカ航空機の通信ユニットから展開指令信号を送信することと、燃料レシーバ航空機の通信ユニットにおいて展開指令信号を取得することと、展開指令信号に応答して、導管およびドローグを制御して、レシーバ航空機から展開することと、タンカ航空機およびドローグの少なくとも一方を制御して、ドローグをタンカ航空機の燃料ホースの第1の端部と係合させることであって、燃料ホースの第2の端部はタンカ航空機に連結されている、係合させることと、タンカ航空機の通信ユニットから復帰指令信号を送信することと、レシーバ航空機の通信ユニットにおいて、復帰指令信号を取得することと、復帰指令信号に応答し、導管およびドローグを制御して、燃料ホースの第1の端部からレシーバ航空機に復帰させることと、を含み、タンカ航空機は、レシーバ航空機の背後に位置し、導管およびドローグは、制御されてレシーバ航空機の後方に展開される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、飛行中燃料補給のための燃料タンカ航空機用のシステムが提供され、燃料レシーバ航空機のドローグと係合するための第1の端部と、および燃料タンカ航空機に連結された第2の端部と、を備える、燃料ホースと、指令信号をレシーバ航空機の通信ユニットに送信するように構成された通信ユニットと、を備え、指令信号が、レシーバ航空機に導管およびドローグをレシーバ航空機の背後のタンカ航空機の後方に展開させ、ドローグが燃料ホースの第1の端部に係合されることを可能にするための、展開指令信号と、導管およびドローグを燃料ホースの第1の端部からレシーバ航空機に復帰させるための、復帰指令信号と、を含む。
【0022】
燃料ホースの第1の端部は、燃料タンカ航空機に取り外し可能に取り付けられるように構成された燃料プローブを備え得る。
【0023】
本発明の別の態様によれば、飛行中燃料補給のための燃料レシーバ航空機用のシステムが提供され、燃料タンカ航空機の燃料ホースの第1の端部と係合するための導管およびドローグであって、燃料ホースの第2の端部はタンカ航空機に連結されている、導管およびドローグと、タンカ航空機の通信ユニットからの展開指令信号および復帰指令信号を取得するように構成された通信ユニットと、コントローラであって、展開指令信号に応答し、導管およびドローグをレシーバ航空機の背後のタンカ航空機の後方に展開して、ドローグが燃料ホースの第1の端部に係合されることを可能にし、復帰指令信号に応答し、導管およびドローグを燃料ホースの第1の端部から前レシーバ航空機に復帰させるように構成されたコントローラと、を備える。
【0024】
ドローグは、飛行中に、燃料ホースの第1の端部と係合するようにドローグを誘導するための調整可能な空力制御翼面を備え得る。
【0025】
ドローグは、空力制御翼面を調整するようにタンカ航空機の通信ユニットから制御信号を受信するための通信ユニットをさらに備え得る。タンカ航空機の通信ユニットからの制御信号は、ドローグの通信ユニットによって直接受信されるか、またはレシーバ航空機の通信ユニットおよびドローグへの導管を介して間接的に受信され得る。
【0026】
ドローグは、調整可能な空力制御翼面に給電するための専用電源をさらに備え得る。電源は、例えば、空気駆動発電機、または電池、任意選択的に充電式電池を備え得る。
【0027】
導管は、調整可能な空力制御翼面に給電するように、レシーバ航空機からドローグに電力を送信するための導電性材料を含み得る。
【0028】
本発明の別の態様によれば、飛行中燃料補給のためのシステムが提供され、システムは、燃料レシーバ航空機であって、導管およびドローグと、導管およびドローグに対する展開指令信号および復帰指令信号を取得するように構成された通信ユニットと、指令信号に応答して、導管およびドローグを制御するためのコントローラと、を備える燃料レシーバ航空機と、燃料タンカ航空機であって、ドローグと係合するための第1の端部と、燃料タンカ航空機に連結された第2の端部と、を備える、燃料ホースと、指令信号を送信するように構成された通信ユニットと、を備える、燃料タンカ航空機と、を備え、コントローラは、展開指令信号に応答して、導管およびドローグをレシーバ航空機の背後のタンカ航空機の後方に展開するように構成され、タンカ航空機およびドローグの少なくとも一方は、ドローグを燃料ホースの第1の端部に係合するように制御可能であり、コントローラは、復帰指令信号に応答して、導管およびドローグを、燃料ホースの第1の端部からレシーバ航空機に復帰させるように構成されている。
【0029】
ドローグは、飛行中に、燃料ホースの第1の端部と係合するようにドローグを誘導するための調整可能な空力制御翼面を備え得る。
【0030】
ドローグは、空力制御翼面を調整するようにタンカ航空機の通信ユニットから制御信号を受信するための通信ユニットをさらに備え得る。
【0031】
ドローグは、調整可能な空力制御翼面に給電するための専用電源をさらに備え得る。
【0032】
導管は、調整可能な空力制御翼面に給電するように、レシーバ航空機からドローグに電力を送信するための導電性材料を含み得る。
【0033】
タンカ航空機は、燃料補給作業中、レシーバ航空機の背後または機体尾部方向にある。これにより、レシーバ航空機およびその乗客に対する後方乱気流(すなわち、タンカ航空機によって生成される)のリスクを回避する。タンカ航空機は、レシーバ航空機の真背後にあり得る、すなわち、タンカ航空機の機首とレシーバ航空機の尾部の間には、長手方向の離隔距離はあるが、2機の航空機の機首の間には横方向の離隔距離がない。または、タンカ航空機は、レシーバ航空機の背後かつ斜めにあり得る、すなわち、タンカ航空機の機首とレシーバ航空機の尾部の間には、長手方向の離隔距離があり、さらに2機の航空機の機首の間にも横方向の離隔距離がある。
【0034】
タンカ航空機は、タンカ航空機とレシーバ航空機の間に高度の離隔距離分離があるように、レシーバ航空機の下方に位置し得る、すなわちタンカ航空機はレシーバ航空機よりも低い高度である。または、タンカ航空機は、レシーバ航空機と同一の高度に位置し得る、すなわち、タンカ航空機とレシーバ航空機の間に高度の離隔距離がない。または、タンカ航空機は、タンカ航空機とレシーバ航空機の間に高度の離隔距離があるようにレシーバ航空機の上方に位置し得る、すなわちタンカ航空機がレシーバ航空機よりも高い高度である。
【0035】
燃料がタンカ航空機からレシーバ航空機に移送されている間に、レシーバ航空機に対するタンカ航空機の高度が変更され得る。例えば、タンカ航空機は、最初はレシーバ航空機よりも低い高度であり得るが、レシーバ航空機と同一の高度またはそれよりも高い高度に移動し得る。または、タンカ航空機は、最初はレシーバ航空機と同一の高度であり得るが、レシーバ航空機よりも高いまたは低い高度に移動し得る。または、タンカ航空機は、最初はレシーバ航空機よりも高い高度であり得るが、レシーバ航空機と同一の高度またはそれよりも低い高度に移動し得る。
【0036】
本発明は、以下のように多くの利点を提供する。
【0037】
レシーバ航空機からの導管およびドローグの展開、ドローグとの燃料ホースの係合、およびレシーバ航空機への燃料ホースの取り付けはすべて、これらの操作に必要な専門的なスキルを有するタンカ航空機の乗組員によって制御される。したがって、編隊飛行に関してまたは燃料補給システムの取り扱いに関していずれも、レシーバ航空機の商用乗組員は特別に訓練される必要はない。
【0038】
さらに、最も厳しい認証要件の対象となる可能性が高いシステムの部品である燃料ホースおよび関連構成部品は、タンカ航空機側に備えられるが、レシーバ航空機には最小限の機器、すなわち、導管とドローグ、通信ユニット、および制御ユニットを取り付けることのみが必要とされる。これにより、レシーバ航空機の大規模な機隊を運航し得る航空会社のコストを最小限に抑える。レシーバ航空機に取り付けられるシステムの部品は、何ら火災リスクを内在しておらず、これにより、旅客機の安全上の懸念が緩和される。
【0039】
燃料補給システムは、新しいレシーバ航空機およびタンカ航空機の設計において、説明することができる。有利なことに、レシーバ航空機は、燃料補給システムの関連構成部品を「後付け」することができる。これらの構成部品は、レシーバ航空機の後部貨物室に収まる一般的なユニットロード装置(ULD:unit load device)、例えばLD3の標準寸法を有する自蔵式ユニット内に簡便に設けることができることが想定される。同様に、既存のタンカ航空機には、燃料ホースおよび燃料プローブを後付けされ得る。
【0040】
したがって、本発明は、民間航空機を含む、航空機の安全かつ実用的な飛行中(再)燃料補給を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図9】
図9は、飛行中(再)燃料補給操作を示す。 ここで、飛行中(再)燃料補給操作を示す付帯の
図1~
図9を参照して実施例を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、商用旅客機である燃料レシーバ航空機100を示している。レシーバ航空機100は、一定速度で順方向Fに真っ直ぐ水平に飛行している。すなわち、レシーバ航空機100は、定常巡航で飛行している。
【0043】
レシーバ航空機100は、通信ユニット(例えば、アンテナを含む)100aを備える。レシーバ航空機100は、航空機100の尾部に位置するケーブルドラムユニット(図示せず)をさらに備える。この実施例において、ドラムは、レシーバ航空機100の進行方向に対して任意の方向に展開できるように関節式に連結された、電動多段変速ギア付きドラムである。ケーブルドラムユニットは、ドラムに巻き付けられたケーブル100b(
図1には図示せず)を収容し、ケーブル100bの一方の端部はドラムに固定的に取り付けられている。この実施例において、ケーブル100bはスチールで作製されている。代替的に、ケーブル100bは、高い引張強度および可撓性を有する他のいくつかの材料、例えば炭素繊維複合材料で作製され得る。ケーブル100bの他方の端部(すなわち、自由端)は、ドローグ100c(
図1に図示せず)に固定的に取り付けられている。この実施例において、ドローグ100cの構造は、レシーバ航空機100の尾部に便利に格納するために折り畳み可能である。レシーバ航空機100は、制御ユニット100dをさらに備え、制御ユニット100dは、ケーブルドラムユニットを動作可能に制御し、さらに、それによってケーブル100bおよびドローグ100cを動作可能に制御するように構成されている。レシーバ航空機100は、燃料導管を介してレシーバ航空機100の燃料タンクに連結された燃料ノズルをさらに備える(これらの要素のいずれも図示せず)。
【0044】
さらに
図1を参照すると、改造された商用旅客機である燃料タンカ航空機200が、燃料レシーバ航空機100の背後かつ下方に位置する。タンカ航空機200は、水平上昇でレシーバ航空機100に接近している。
【0045】
タンカ航空機200は、通信ユニット(例えば、アンテナを含む)200aを備える。タンカ航空機200は、航空機200の機首部分に位置するホースドラムユニット(図示せず)をさらに備える。この実施例において、ドラムは電動多段変速ギア付きドラムである。ホースドラムユニットは、ドラムに巻き付けられた燃料ホース200b(
図1に図示せず)を収容し、燃料ホース200bの一方の端部はドラムに固定的に取り付けられている。この実施例において、燃料ホース200bはゴム材料で作製されている。燃料ホース200bの他方の端部は、細長い燃料プローブ200cの後端部に固定的に取り付けられている。燃料プローブ200cは、タンカ航空機200の機首から前方に突出し、そこから離脱可能であるように構成されている。この実施例において、燃料プローブ200cはチタン合金で作製されている。タンカ航空機200は、制御ユニット200dをさらに備え、制御ユニット200dは、ホースドラムユニットを動作可能に制御し、さらに、それによって燃料ホース200bを動作可能に制御するように構成されている。タンカ航空機200は、燃料を収容する燃料格納タンク、および格納された燃料を燃料ホース200bを通して圧送するための燃料ポンプをさらに備える(これらの要素のいずれも図示せず)。
【0046】
ここで
図2を参照すると、タンカ航空機200は、レシーバ航空機100の背後かつ下方の位置につけている。この位置において、タンカ航空機200は、一定速度で順方向Fに真っ直ぐ水平に飛行している。タンカ航空機200の前進速度は、レシーバ航空機100の前進速度と実質的に同一であるように制御されている。さらに、タンカ航空機200は、レシーバ航空機100から一定の横方向および縦方向の離隔距離を維持するように制御されている。すなわち、タンカ航空機200は、レシーバ航空機100に対して固定位置に留まるように制御されている。これにより、タンカ航空機200およびレシーバ航空機100は、互いに編隊を組んで飛行している。飛行編隊が確立されると、以下のように飛行中(再)燃料補給操作が実行される。
【0047】
図3を参照すると、第1の指令信号S1が、タンカ航空機200の通信ユニット200aによって送信される。第1の指令信号S1は、レシーバ航空機100の通信ユニット100aによって受信され、その制御ユニット100dによって処理される。第1の指令信号S1に応答して、制御ユニット100dは、ケーブルドラムユニットを制御して、レシーバ航空機100からケーブル100bおよびドローグ100cを展開する。
図3から分かるように、ケーブル100bおよびドローグ100cは、第1の方向D1にレシーバ航空機100の後方に展開される。この実施例において、ケーブル100bは、ドローグ100cがレシーバ航空機100から外に出てくるときに、最初はローギアでドラムから低速で繰り出され、次いで、ドローグ100cがレシーバ航空機100からさらに離れるにつれて、ハイギアでより速く繰り出される。次いで、ドローグ100cがタンカ航空機200に接近するにつれて、ローギアが微調整のために再び使用される。ケーブル100bおよびドローグ100cの展開中、レシーバ航空機100およびタンカ航空機200は、順方向Fへの直進および水平飛行において一定速度での編隊を維持している。
【0048】
次に
図4を参照すると、ケーブル100bは、ドローグ100cがタンカ航空機200の機首およびそこから延在する燃料プローブ200cに近接するように十分に延在する。タンカ航空機200は、燃料プローブ200cがドローグ100cと係合するように、ドローグ100cに向かって飛行(例えば、加速)される。詳細的には、タンカ航空機200は、燃料プローブ200cが漏斗形状のドローグ100cの後端部に入り、ドローグ100cの前端部から外向きに突出するように、ドローグ100cの中央開口を通過するように操縦される。このようにして、一旦ドローグ100cが燃料プローブ200cに被せて位置決めされると、ドローグ100cは、燃料プローブ200cに固定的に結合される。この実施例において、この結合動作は、ドローグ100cおよび燃料プローブ200cの一方または両方によって構成された自己作動式機械的クランプによるものであり、これを作動させ、燃料プローブ200cがドローグ100cを前方に通過することによって閉じる。
【0049】
この結合状態において、タンカ航空機200は、ケーブル100bおよびドローグ100cによってレシーバ航空機100に係留される。タンカ航空機200は、レシーバ航空機100に対して固定位置(すなわち、横方向および縦方向の離隔距離に関して)に留まるように再び制御され、その結果、2機の航空機は、互いに編隊飛行している。制御ユニット100dは、ケーブル100bの張力を維持するためにケーブルドラムユニットのドラムを制御するように動作可能であり、これにより、レシーバ航空機100およびタンカ航空機200を互いに対して瞬間的に移動させ得る乱気流を軽減する。
【0050】
ここで
図5を参照すると、第2の指令信号S2が、タンカ航空機200の通信ユニット200aによって送信される。第2の指令信号S2は、レシーバ航空機100の通信ユニット100aによって受信され、その制御ユニット100dによって処理される。第2の指令信号S2に応答して、制御ユニット100dは、ケーブルドラムユニットを制御して(すなわち、逆転させて)、ケーブル100bおよびドローグ100cを、第1の方向D1と反対の第2の方向D2にレシーバ航空機100に向かって引き込む。
【0051】
ケーブル100bにかかる引張(引き寄せる)力により、(ドローグ100cに結合された)燃料プローブ200cをタンカ航空機200の機首から離脱させる。これにより、燃料プローブ200cの後端部に取り付けられた燃料ホース200bは、タンカ航空機200の機首から引き出される。ケーブル100bがレシーバ航空機100のケーブルドラムユニットのドラムに巻き付けられると、燃料ホース200bは、タンカ航空機200のホースドラムユニットから放出される。この実施例において、タンカ航空機200の制御ユニット200dは、燃料ホース200bの展開を支援するようにホースドラムユニットを制御する。したがって、この実施例において、燃料ホース200bは、タンカ航空機200のホースドラムユニットとレシーバ航空機100のケーブルドラムユニットとの同時作用によって延在され、ケーブル100bは引き込まれる。代替的に、ケーブルドラムユニットの作用だけで燃料ホース200bが延在されるように、ホースドラムユニットが「惰性回転」することを可能にされ得る。
【0052】
これにより、ケーブル100b、ドローグ100c、燃料プローブ200c、および燃料ホース200bは、レシーバ航空機100に向かって引き寄せられる。この動作中、レシーバ航空機100およびタンカ航空機200は、編隊を維持している。
【0053】
ドローグ100cおよび燃料プローブ200cがレシーバ航空機100に到達すると、ケーブルドラムユニットのローギアが適用され、燃料プローブ200cがレシーバ航空機100の燃料ノズルに誘導される。燃料ノズルは、上記のようにドローグ100cの前方に突出した燃料プローブ200cの前端部を受け入れる。この状態において、燃料ホース200bは、
図6に示されるように、タンカ航空機200とレシーバ航空機100との間の全距離にわたって延在する。2機の航空機100、200は編隊を維持している。ケーブルドラムユニットによってケーブル100b(および、それによりドローグ100c)に加えられる引張(引き寄せる)力は、燃料プローブ200cの前端部をノズル内に安全に保持し、漏れのない燃料移送を容易にする。非常に高圧の燃料移送が必要な場合は、ラッチ機構を設けて、燃料プローブ200cを燃料ノズルに確実にロックし得る。
【0054】
タンカ航空機200の燃料ポンプが作動して、タンカ航空機200の燃料格納タンクからレシーバ航空機100の燃料タンクに(すなわち、方向D2に)燃料を移送する。燃料移送は、タンカ航空機200の乗組員によって制御される。
【0055】
任意選択的に、レシーバ航空機100は、レシーバ航空機100の別の燃料タンクに燃料を向けるための1つ以上の燃料ポンプおよび/またはバルブを含む。このようにして、レシーバ航空機100のトリムおよびバランスを制御することができる。レシーバ航空機100の燃料ポンプのうちの1つ以上が、燃料ホース200bを介してタンカ航空機200から燃料を引き出し得る。レシーバ航空機100の燃料ポンプおよび/またはバルブは、例えば、タンカ航空機200の通信ユニット200aによってレシーバ航空機100の通信ユニット100aに送信され、レシーバ航空機100の制御ユニット100dによって処理される信号を介して、タンカ航空機200の乗組員によって制御され得る。
【0056】
レシーバ航空機100に移送される燃料の量は、タンカ航空機200の乗組員によって監視(および、任意選択的に記録)される。レシーバ航空機100の乗組員は、例えば無線通信によって、必要な燃料の総量についてタンカ航空機200の乗組員に知らせ得る。代替的に、タンカ航空機200の乗組員は、第三者、例えば、レシーバ航空機100を所有する航空会社の基地のオペレータから、移送される燃料の総量について知らされ得る。移送される燃料の総量は、予め決定され得る。移送された燃料の量は、レシーバ航空機100の燃料流量装置を使用して記録され得、このデータは後で遠隔から入手され得る。
【0057】
必要な量の燃料が移送され終わると、タンカ航空機200の燃料ポンプが停止状態にされ(加えて、使用されていれば、レシーバ航空機100の燃料ポンプも)、燃料ホース200bを通過する燃料の流れは停止する。燃料ホース200bは、燃料ホース200bからレシーバ航空機100の燃料タンクに残留燃料を移動させるために、通気され得る。
【0058】
次に
図7を参照すると、第3の指令信号S3が、タンカ航空機200の通信ユニット200aによって送信される。第3の指令信号S3は、レシーバ航空機100の通信ユニット100aによって受信され、その制御ユニット100dによって処理される。第3の指令信号S3に応答して、制御ユニット100dは、ケーブルドラムユニットを制御して、ケーブル100bおよびドローグ100cを展開し、それによってドローグ100cに結合された状態の燃料プローブ200cを展開する。その上、タンカ航空機200の制御ユニット200dは、ホースドラムユニットを制御して、燃料ホース200bを引き込む。したがって、レシーバ航空機100のケーブルドラムユニットおよびタンカ航空機200のホースドラムユニットの同時作用により、ケーブル100bが延在され、燃料ホース200bが引き込まれる。このようにして、ケーブル100bおよびドローグ100c、燃料プローブ200cおよび燃料ホース200bは、タンカ航空機200に向かって第1の方向D1に移動される。代替的に、ホースドラムユニットの作用だけでケーブル100bが延在されるように、ケーブルドラムユニットが「惰性回転」することを可能にされ得る。この動作中、レシーバ航空機100およびタンカ航空機200は、編隊を維持している。
【0059】
ドローグ100cおよび燃料プローブ200cがタンカ航空機200に到達すると、燃料プローブ200cは(ホースドラムユニットによって)タンカ航空機200の機首に引き戻されて、これに再び取り付けられる。燃料プローブ200cがタンカ航空機200の機首の中に引き戻されると、自己作動式機械的クランプが解放されて、ドローグ100cが燃料プローブ200cから脱結合される。この状態において、ケーブル100bは、
図8に示されるように、レシーバ航空機100とタンカ航空機200との間の全距離にわたって延在される。2機の航空機100、200は編隊を維持している。
【0060】
ここで
図9を参照すると、第4の指令信号S4が、タンカ航空機200の通信ユニット200aによって送信される。第4の指令信号S4は、レシーバ航空機100の通信ユニット100aによって受信され、その制御ユニット100dによって処理される。第4の指令信号S4に応答して、制御ユニット100dは、ケーブルドラムユニットを制御(すなわち、逆転)して、第2の方向D2にレシーバ航空機100に向かってケーブル100bおよびドローグ100cを引き込む。ケーブル100bは、最初はローギアでドラムに巻き付けられる。ケーブル100bにかかる引張(引き寄せる)力により、ドローグ100cは、固定された燃料プローブ200cに引張力を伝達し、燃料プローブ200cから分離する。この分離された状態において、タンカ航空機200は、レシーバ航空機100から係留解除されており、自由に編隊を解除することができる。ケーブル100bは、ドローグ100cをレシーバ航空機100に向かって引き寄せるように、ハイギアでドラムに巻き付けられる。次いで、ドローグ100cがレシーバ航空機100に接近するにつれて、再びローギアを使用して微調整が行われる。ケーブル100bは完全に引き込まれ、そうすることによって、ケーブル100bはケーブルドラムユニットによって格納され、ドローグ100cはレシーバ航空機100の尾部に格納される。ケーブル100bおよびドローグ100cの引き込み中に、レシーバ航空機100は、好ましくは、順方向Fへの直進および水平飛行において一定速度を維持している。
【0061】
上記の実施例において、レシーバ航空機100およびタンカ航空機200は、それぞれのパイロットによって手動で飛行される。代替的に、レシーバ航空機100およびタンカ航空機200の一方または両方の速度および方向は、例えば自動操縦によって自動的に、または無人航空機の場合は制御ステーションから遠隔で制御され得る。レシーバ航空機100およびタンカ航空機200の編隊速度および方向(地上航跡)は、飛行中燃料補給作業に最適となるように、タンカ航空機200の乗組員によって予め決定され得る。
【0062】
また、上記の実施例において、タンカ航空機200は、燃料プローブ200cがドローグ100cと係合するように、ドローグ100cに向かって操縦(飛行)される。代替的に(または、さらに)、ドローグ100cは、燃料プローブ200cと係合するように飛行中のタンカ航空機200によって制御可能であるように構成され得る。このような実施例において、ドローグ100cは、飛行中のドローグ100cの位置および/または向きを制御可能に変更し、それによってドローグ100cを燃料プローブ200cと係合するように誘導するために調整可能な空力制御翼面を備える。
【0063】
例えば、ドローグ100cは、複数の安定化フィンを備え得、制御翼面は、フィンの偏向可能な後縁を備え得る。ケーブル100bは、電力がケーブル100bを介してレシーバ航空機100によって制御翼面に供給され得るように、導電性材料を含み得る。代替的に、ドローグ100cは、制御翼面に電力を供給するための空気駆動発電機または他の専用電源を備え得る。
【0064】
ドローグ100cは、タンカ航空機200の通信ユニット200aから制御翼面への制御信号を直接受信するための通信ユニットを備え得る。代替的に、制御翼面を調整するための制御信号は、タンカ航空機200の通信ユニット200aからレシーバ航空機100の通信ユニット100aに送信され、レシーバ航空機100の制御ユニット100dによって処理され、ケーブル100bを介してドローグ100cの制御翼面に送信され得る。
【0065】
フィンは、展開中のレシーバ航空機100またはタンカ航空機200への損傷のリスクを最小限にするために、耐衝撃性材料を含む丸みを帯びた前縁を備え得る。
【0066】
ドローグ100cは、レーダトランスポンダを備え得、タンカ航空機200は、タンカ航空機200の燃料プローブ200cによる低視程の取得およびドローグ100cの係合を支援するための近距離レーダシステムを備え得る。ドローグ100cは、低視程状態でのドローグ100cの目視操縦を支援するために、様々な色彩の信号灯を備え得る。
【0067】
別の実施例において、燃料プローブ200c(または燃料ホース200bの自由端)は、タンカ航空機200の乗組員によって、ドローグと係合するように操縦可能であるように構成されている。
【0068】
燃料補給中に燃料ホース200bが壊滅的に破裂した場合、燃料ホース200bの投棄シーケンスが、レシーバ航空機100の乗組員またはタンカ航空機200の乗組員のいずれかによって開始され得、これにより、燃料ホース200bとタンカ航空機200との衝突のリスクが最小限に抑えられることになる。投棄操作は、好ましくは、レシーバ航空機100の端部で仕掛け、燃料プローブ200cをドローグ100cから解放することによって行うか、または燃料ホース200bを切断することによって行う。シュートは(例えば、車両のエアバッグで使用されるものと同様の爆発物を使用して)迅速に展開し、高速で燃料ホース200bの遠位端をレシーバ航空機100から引き離し得る。このシーケンスの直後に、同様のシュートを、タンカ航空機200に近接する燃料ホース200bの他方の端部において展開され得る。タンカ航空機200の端部において、燃料ホース200bは、シュートによって上方に投棄されるように方向付けられ、その結果、展開されたシュートは、燃料ホース200bをタンカ航空機200、特にその翼、エンジン、および尾部から引き離す。燃料ホース200bは、回収を可能にするために作動させることができるトランスポンダを含み得る。これは、燃料再補給作業が、通常、水域または人口の少ない地域で行われるため有用である。燃料ホース200bは、水中からの回収を支援するための浮揚装置を含み得る。
【0069】
以下のように、他の安全機能が提供され得る。防火システムが、レシーバ航空機100およびタンカ航空機200の一方または両方に組み込まれ得る。燃料流量バルブが、燃料ホース200b内に設けられ、圧力センサーに連係され、その結果、突然の圧損の場合には、バルブおよび燃料ポンプ(複数可)を自動的に停止させ得る。不活性ガスを供給する不活性化システムが提供され、燃料移送の完了時に燃料ホース200bを通気し、レシーバ航空機100内の燃料導管を通気し得る。燃料ホース200bは、落雷を消散させるために、雷拡散手段、例えば、燃料ホースの表面またはその下に配置された導電性メッシュを備え得る。
【0070】
本発明は、好ましい実施例に関連して説明されており、付帯の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの様々な方法で修正され得ることが理解されるであろう。
【0071】
一実施例において、燃料プローブ200cは、タンカ航空機200の機首以外の位置、例えば、コックピットの上、または胴体の側面の前方位置に位置する。このような例において、ホースドラムユニットは、燃料プローブ200cの近傍においてタンカ航空機200内に適切に位置する。
【0072】
一実施例において、タンカ航空機200の燃料プローブ200cは、省略される。この場合、燃料ホース200bの自由端は、タンカ航空機200の機首から突出し、ドローグ100cによって、およびレシーバ航空機100の燃料ノズルによって係合される。
【0073】
本発明のすべての実施例に関して、タンカ航空機200の通信ユニット200aによってレシーバ航空機100の通信ユニット100aに送信される指令信号は、順次送信され、処理され得る。代替的に、2つ以上(任意選択的に、すべて)の信号を同時に送信され、順次処理され得る。レシーバ航空機100の制御ユニット100dは、同時に送信された信号を受信すると、順次処理を実行するように予めプログラムされ得る。
【0074】
ドローグで使用するために、ケーブル以外の様々な種類の導線、例えば、ワイヤー、コード、ロープ、チェーンなどが想定され、これらはすべて、特許請求される本発明の範囲内にある。
【0075】
本発明は、以下のように、いくつかの関係者に利益を提供するが、主に航空機製造元、および、例えば、航空会社など商用航空機事業者に利益を提供する。
【0076】
研究によると、商用航空機の飛行中再燃料補給(IFR)の燃料節約が、タンカ航空機を介した燃料搬送への燃料補給を除いて、約11~23%であることが示されている。燃料は非常に重要な運用コストであるため(IATAは2018年の世界の航空業界の燃料費を1,880億ドルと見積もっている)、この規模の節約を実現する機会は革命的である(通常、エンジン効率による2%の燃料節約が主要な改善と見なされている)。これらの燃料節約は、航空会社の収益性、および、より長期的には業界全体に重大な影響を及ぼすことになろう。
【0077】
既存の航空機にIFR機能を提供することは、以下の利点も有する。
-離陸重量が減少し、より短い滑走路を使用するようになり、現在必要な滑走路長を有していない新しい目的地の空港へのアクセスが可能になる。
【0078】
-軽量化により離陸時に必要な推力が減少し、CO2排出量における環境上の利益、騒音および汚染の削減がもたらされる。
【0079】
-着陸料が削減され、再燃料補給停止の頻度が減り、環境への影響が軽減される。
【0080】
-着陸および離陸の回数が減少することにより、着陸装置、タイヤ、航空機構造の運用寿命を延長し、長期にわたって資産の利用率の向上が期待できる。
【0081】
-航空業界の全体的な収容能力は増加するが、空港の利用率は比例して低くなるため、空港における収容能力の制約は緩和される可能性がある。
【0082】
IFR機能を備えた航空機団の範囲が拡大すると、目的地の範囲が広がり、したがって、より良好な収容能力稼動率および市場機会が存在することになる。持続可能な競争上の優位性を、IFR機能を有する航空会社において、それを有していない航空会社に対して確立することができる。収益の向上は、他の制限要因(スタッフ、消耗品、乗客の快適さなど)に依存するとはいえ、いずれもIFRの範囲外とはならない人気のあるビジネス目的地への短い飛行時間に対して支払いを準備しているプレミアム顧客で達成できる。時間および燃料の節約の一部分は、着陸および再燃料補給のために最適経路からの迂回を必要としない直行便経路、ならびに、着陸、地上での再燃料補給、および離陸に要する実際の時間およびコストから生じることになる。
【0083】
より長期的には、航空機の設計は、必要とされるより小さな燃料タンクおよび燃料格納量および重量と、より多くの有料の乗客、より多くの貨物、または航空会社の収益率を最適化することができる他の付加価値サービスとのトレードオフで適合され得る。
【0084】
タンカサービスは、様々な高密度航行位置において提供され、近くを通過する航行便のプロファイルに対して位置を最適化し得る。タンカは、タンカの運航のみに特化し得る近くの飛行場から提供される、規定された空中回廊サービスエリア(「空のガレージ/ガソリンスタンド」または「燃料フェリー」)で定期的な燃料移送サービスを提供することになる。タンカが機体尾部から商用レシーバに、および前方位置から軍用レシーバに燃料を供給する可能性は、商用航空機(本明細書で説明されるように)および軍用航空機(確立されたプローブおよびドローグまたはフライングブーム方法によって)の両方にサービスを提供することが可能な二重機能タンカの機会を提供する。
【0085】
IFRを既存の機団(非軍事部門で約20,000機の運航航空機)に「後付け」する機会は、IFR機器、設置、およびアフターサービスからの追加の収益機会を提供する。IFR機器は、様々な航空機製造元の航空機に適合する標準サイズの貨物ULDユニットを介して後付けすることができるため、1つの製造元が、競合他社の航空機および自社の航空機にわたってこの市場を獲得する機会が存在する。航空会社が達成することになる重要な歩留りを分かち合う収益機会が存在する。
【0086】
より長期的には、航空機の設計は、長距離飛行の場合でも、より少ない燃料を搬送するニーズを考慮して、変更することができる。これにより、収益の機会を増やし、それによって収益率を高めることができる、より多くの料金を支払う乗客または付加価値サービスのための能力を導入する柔軟性が高まることになる。このIFR技術を使用した航空機の設計は、燃料効率が大幅に向上し、したがって採用者には持続可能な競争上の優位性が生じることになる。また、代替電力システムの採用およびそれらの運用に必要な投資に対する保護を強化することにもなる。環境上の利点は、ますます環境に敏感な市場における競争上の利点となる。
【0087】
新しいタンカの設計または既存のタンカ機団の適合により、この新規なIFR技術を介して、旅客機および貨物の両方の商用航空機にサービスを提供し得るだけでなく、既存のドローグおよびプローブならびにフライングブーム方法を介して軍用航空機にもサービスを提供し得る。このことは、航空機製造元に対し、両方のセグメントにわたって顧客がコストを負担することができること、および二重機能を備えた航空機をリースすること通じて、競争上の優位性を提供することになり、その結果、資産稼動率を最適化し、両方の利用者に対する受容能力のコストを大幅に低減する。
【0088】
本発明は、民間または商用航空機の運航のコンテクストにおいて概して説明されてきたが、本発明は、民間および軍事の両方のコンテクストにおいて様々なタイプの航空機に適用可能であることが理解されるであろう。例えば、本発明は、固定翼航空機および回転翼航空機(例えば、ヘリコプター)、ならびに有人航空機および無人航空機(例えば、ドローン)に関連して、使用され得る。
【0089】
また、本発明は、最も典型的には液体燃料、例えば、ケロシン(通常は、大型商用航空機に動力を供給するために使用される)での使用が想定されるが、他の種類の燃料、例えば、ガスもしくは推進剤、または電力伝達にも適用可能である。
【国際調査報告】