(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】創傷接触面とその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/00 20060101AFI20220112BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20220112BHJP
A61L 15/58 20060101ALI20220112BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61F13/00 301C
A61F13/00 301J
A61L15/26 100
A61L15/58 100
A61P17/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543567
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(85)【翻訳文提出日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2019076780
(87)【国際公開番号】W WO2020070231
(87)【国際公開日】2020-04-09
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521141350
【氏名又は名称】ジョン ジェイ ライアン (シーリング プロダクツ) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JOHN J. RYAN (SEALING PRODUCTS) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ライアン
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン ガキアン
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー キャサリン マントン
(72)【発明者】
【氏名】アラン バーン
(72)【発明者】
【氏名】ダニー オトゥール
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081AA12
4C081BB04
4C081CA211
4C081CA212
4C081DB07
4C081DC03
(57)【要約】
【課題】本発明は、創傷被覆材のための創傷接触面に関する。この創傷接触面は、ドレッシングと皮膚/創傷との間に非付着性層を提供するために、フォームドレッシングなどの創傷ドレッシングに組み込むことができる。ある態様において、本発明は、接触面の調製方法およびそれを含むドレッシングにも関する。本発明の創傷ケア表面およびそれを含むドレッシングは、火傷および表皮水疱症などの水疱形成状態の治療に特に有用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷被覆材用の創傷接触面を調製する方法であって、
ポリウレタン調合物を創傷被覆材又は創傷被覆材層上に被覆して表面を形成する段階を含み、
前記ポリウレタン調合物は、ISO 29862-2018の方法1に従って測定したときに0[N]の剥離接着力を有するポリウレタンで、
前記被覆は、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、フレキソ印刷、ラミネート、グラビアまたはインクジェット印刷によって前記ポリウレタン調合物を前記創傷被覆材又は創傷被覆材層上に印刷することによって行われ、
前記創傷被覆材はフォームドレッシングである、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の創傷接触面を調製する方法であって、前記表面は連続的表面又は非連続的表面である、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の創傷接触面を調製する方法であって、前記フォームドレッシングはポリウレタンフォームである、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の創傷接触面を調製する方法であって、
ISO 29862-2018の方法1に従って測定したときに0[N]の剥離接着力を有するポリウレタン調合物を調製する段階と、
前記ポリウレタン調合物を創傷被覆材または創傷被覆材層上に被覆して前記創傷被覆材または創傷被覆材層上に表面を形成する段階と、及び、
前記表面を硬化させる段階、
を有する方法。
【請求項5】
請求項4に記載の創傷接触面を調製する方法であって、前記硬化させる段階は、75℃~130℃の温度で3分~30分又は赤外線照射で30秒~15分行われる、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の創傷接触面を調製する方法であって、0[N]の剥離接着力を有する前記ポリウレタン調合物は、前記ポリウレタンの構成基の比を制御することによって調製する、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の創傷接触面を調製する方法であって、前記ポリウレタン調合物はポリエステル系ポリウレタンである、方法。
【請求項8】
創傷被覆材用の創傷接触面であって、ISO 29862-2018の方法1に従って測定したときに0[N]の剥離接着力を有するポリウレタン調合物の連続的又は非連続的な表面である、創傷接触面。
【請求項9】
請求項8に記載の創傷接触面であって、前記ポリウレタン調合物はポリエステル系ポリウレタンである、創傷接触面。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の創傷接触面を有する創傷被覆材。
【請求項11】
請求項10に記載の創傷被覆材であって、ポリウレタンフォームを有する創傷被覆材。
【請求項12】
請求項11に記載の創傷被覆材であって、前記ポリウレタンフォームは、脂肪族ポリウレタンフォーム又は芳香族ポリウレタンフォームである、創傷被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷被覆材のための創傷接触面に関する。この創傷接触面は、フォームドレッシングなどの創傷ドレッシングに組み込むことができ、ドレッシングと創傷の間に非付着性の層を提供し、除去時には新しく形成された皮膚を保護し、周囲への外傷を軽減することができる。別な態様において、本発明は、創傷接触面の調製方法および創傷接触面を含む創傷ドレッシングにも関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は人体最大の器官であり、保護、調節、感覚の機能を果たしている。しかし、皮膚の主な役割は、機械的な衝撃、圧力、温度、病原菌、紫外線、及び有害な化学物質などの外力に対する保護バリアとして機能することである。怪我は皮膚のすべての機能に影響を与え、複雑な創傷治癒プロセスを引き起こす。
【0003】
皮膚の創傷治癒は医療分野において大きな関心事であり、NHSが記録する成人の創傷は、火傷、潰瘍、膿瘍、外傷などに起因するものが年間220万件以上ある(Guest J. F. , Ayoub N. , McIlwraith T. et al., "Health economic burden that wounds impose on the National Health Service in the UK", BMJ Open 2015;5)。その結果、医療従事者は多種多様な創傷被覆材を利用可能で、現在世界中で1,000種類以上の創傷ケア製品が販売されている。NHS内だけでも、医療従事者は100種類以上の発泡性の創傷ケア製品を利用できる。
【0004】
創傷被覆材-特に慢性滲出性の創傷に使用される被覆材-は、滲出液が漏れて創傷周囲の皮膚が浸食されることがないように、創傷の周囲に液密なシールを形成するために、一般的に皮膚に十分に密着しなければならない。しかし同時に、接着力が強すぎると、除去の際に傷や周囲の皮膚に外傷が生じる可能性がある。創傷被覆材の除去による外傷は、治癒を遅らせたり、逆戻りさせたり、創傷の痛みを悪化させたりする。患者にさらなるストレスや不快感を与えるだけでなく、治療期間の長期化や医療機関への費用の増加にもつながる恐れがある。
【0005】
アクリル系粘着剤は通常、皮膚との間に強固で安全なシールを形成するため、創傷被覆材の一次接触面-例えば粘着性境界-として使用される。しかし、アクリル系粘着剤は、ドレッシングを皮膚に貼り付けたときの瞬間的な粘着力と定義される高レベルの「タック」を示す(Ripponら、”Skin adhesives and their role in wound dressings”、Wounds UK (2007) Vol.3(4): pp.76-86.)。この高レベルのタックにより、アクリル系の創傷被覆材を創傷またはその周辺に外傷を与えることなく除去することは困難である。また、アクリル系接着剤は、皮膚上に望ましくない残留物を残し、皮膚の炎症を引き起こす可能性がある。
【0006】
ポリウレタンフォームドレッシングは、芳香族フォームと脂肪族フォームの両方を含み、優れた吸水性と保水性を示すため、創傷ケア製品として特に好ましい。しかし、治癒時には、新たに形成された皮膚がこれらのフォームに密着することがあり、この過程はフォームの高い吸収性によって悪化する可能性がある。この繊細な新たに形成された皮膚は、ドレッシングを剥がす際に邪魔されたり、剥がされたりすることがあり、傷口に傷をつけ、全体の治癒期間を長くしてしまう。
【0007】
この問題を解決するために、吸収性の創傷ケア用ドレッシングは、低付着性の創傷接触面を備えていることが多く、ドレッシングの吸収層が創傷に付着するのを防ぐように設計されているため、装着時や取り外し時の外傷レベルを軽減することができる。多くの場合、これらの創傷接触層は、通気性のない材料で形成されており、穴を開けて格子状の構造にすることで、滲出液のフォームへの吸収と空気の創傷床への浸透を可能にしている。低付着性の創傷接触面を備えたドレッシングは、火傷、皮膚の裂傷、水疱症などの表在性創傷や、免疫不全患者、小児患者への使用に特に適している。このような創傷接触面は、特許文献1及び特許文献2に記載されているような、創傷ケア用ドレッシングに後から貼り付けられる別の層や基材で形成されるのが一般的である。
【0008】
既知の創傷接触面の中には、軟質シリコーンで形成されたものがある。軟質シリコーン製の創傷接触層は、ドレッシングと創傷の間にシールを形成し、滲出液を確実にドレッシングに吸収させて漏れを防ぐことができる。しかし、シリコーンは高価で、通気性がなく、官能化が難しく、ガンマ線滅菌ができないことが多いため、特定の臨床分野での使用が制限されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第EP1923077A1号公報
【特許文献2】国際公開第90/14109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、先行技術に関連する1つ以上の欠点を回避または軽減することである。理想的には、ドレッシングと創傷の間に非付着性の層を提供し、ドレッシング内への新しい皮膚の成長を制限し、創傷および/または周囲の皮膚への外傷を最小限に抑えて身体から除去することを容易にすることができる創傷接触表面または層を提供することが有利である。生体親和性、通気性、非アレルギー性、ガンマ線滅菌性、および容易に官能化される創傷接触表面または層は、特に有利である。また、創傷接触層を製造するための簡単で低コストの方法も有益である。また、フォームドレッシングと互換性のある創傷接触面は、特にフォームの完全性を損なうことなくそこに適用することができる場合も有利である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、創傷被覆材のための創傷接触面を調製する方法が提供され、当該方法は、ポリウレタン調合物を創傷被覆材上に被覆して表面を形成する段階を含む。前記ポリウレタン調合物は、ISO 29862-2018の方法1に従って測定したときに0[N]の剥離接着力を有するポリウレタンである。
【0012】
本発明の別の態様によれば、創傷被覆材のための創傷接触面が提供される。当該創傷接触面は、ISO 29862-2018の方法1に従って測定したときに0[N]の剥離接着力を有するポリウレタン調合物の表面又は層である。
【0013】
本発明の別の態様によれば、創傷接触面と吸収層とを含む創傷被覆材が提供される。前記創傷接触面は、ISO 29862-2018の方法1に従って測定したときに0[N]の剥離粘着力を有するポリウレタン調合物の表面又は層である。
【0014】
本発明の様々なさらなる特徴や側面は、特許請求の範囲に定義される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、同種の部品には対応する参照数字が付され、また、添付の図面を参照して例示的に説明する。
【
図1】本発明の実施形態による吸収性発泡体に被覆された創傷接触面の概略図を示している。
【
図2】本発明の実施形態による代替的な創傷接触面の概略図を示している。
【
図3】創傷接触面を有する脂肪族および芳香族ポリウレタンフォームドレッシングと、創傷接触面を有しないフォームドレッシングの剥離試験の結果を示している。
【
図4】創傷接触面を有するフォームドレッシングと、創傷接触面を有しないフォームドレッシングの吸収試験と保持試験の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、創傷被覆材のための創傷接触面を調製する方法に関する。当該方法は、ポリウレタン調合物を創傷被覆材上に被覆して表面を形成する段階を含む。前記ポリウレタン調合物は、ISO 29862-2018の方法1に従って測定された0[N]の剥離接着力を有する。
【0017】
表面は非連続面であってよい。
【0018】
「非連続的な表面」とは、ポリウレタン調合物が創傷被覆材に被覆され、表面の被覆された領域の間に1つ以上のギャップまたは非被覆領域を含むパターンを意味する。 これらのギャップまたは非被覆領域により、滲出液がフォームに吸収され、ドレッシングが設置されている間での創傷床への空気の移動が促進される。例えば、パターンは、被覆されたドット、形状またはパターンの反復列、または被覆された調合物の1つ以上のラインを含んでよい。
【0019】
あるいはその代わりに表面は連続的な面であってよい。
【0020】
調合物は、ISO 29862-2018の方法1に準拠して測定された0[N]の剥離接着力を有するポリウレタンである。
【0021】
ポリウレタンは重要な接着剤の一つであり、その汎用性の高さから様々な用途に使用されている。ポリウレタン接着剤は、イソシアネートとポリオールが反応してウレタン(-NH-C(=O)-O-)骨格を形成する。ポリウレタン接着剤の特性、特に接着力とタックは、当業者であれば理解できるように、対象となる用途に合わせて調整することができる。市販のポリウレタン接着剤は、一般的に、使用目的に応じて、接着レベルを低接着から高接着まで調整するための指示を伴って販売されている。本発明によれば、ポリウレタン調合物は、ISO 29862-2018の方法1に従って測定したときに剥離接着力値が0になるように接着力が制御されたポリウレタン接着剤調合物に基づいていてもよい。このように、ポリウレタン調合物の粘着力は、最小またはゼロのレベルに調整されており、通常の粘着力の範囲外である。この接着力レベルは、例えば、ISO 29862-2018、方法1によって測定することができる。この方法を実行すると、ポリウレタン調合物はステンレススチールプレートに接着せず、それによって調合物の剥離接着力がゼロ値であることを示す。
【0022】
有利なことに、ポリウレタンは生体親和性があり、非アレルギー性で、ガンマ線滅菌が可能であるため、創傷治療用途に特に適している。他の既知の創傷被覆材とは異なり、ポリウレタン調合物は高い水蒸気透過率(MVTR)を有しており、110μmの厚さで最大2,400g/(day * m2)のMVTRが報告されている。この通気性は、創傷接触面として使用した場合、空気が創傷床の周りを循環し、治癒をさらに促進することができるので、非常に有益である。さらに、創傷や滲出液からの水蒸気は、ドレッシングを透過して大気中に蒸発する。これにより、フォームドレッシングの吸収力が高まり、より多くの滲出液を吸収することが可能になる。
【0023】
さらに、ポリウレタンは容易に入手可能であり、医療グレードのポリウレタン接着剤は、接着剤用途ではあるが、創傷ケア製品での使用がすでに知られている。驚くべきことに、粘着力が調整された、あるいは0にまで下げられた非粘着性ポリウレタンは、創傷治療用のドレッシングに非粘着性の層や表面を提供するために使用できることがわかった。この非付着性層は、吸収性ドレッシングへの新しい皮膚の侵入や形成を制限し、吸収性創傷被覆材を除去するのに必要な剥離力を低減して、除去時に創傷や周囲の皮膚に外傷を与えないようにするための単純かつ効果的な手段を提供する。これにより、創傷治癒プロセスを大幅に支援し、速めることができる。
【0024】
本発明によれば、ポリウレタン調合物の剥離接着力は、180gsmのブリストル紙に塗布した状態で、ISO29862-2018の方法1に従って測定して0[N]である。ポリウレタンの接着力は、ポリウレタンを構成する成分の操作によって制御することができる。
【0025】
例えば、ポリウレタン調合物は、ポリエーテル系ポリウレタンであってよい。
【0026】
ある実施形態では、ポリウレタン調合物は、典型的には2成分ポリウレタン接着剤として供給される2成分ポリウレタン調合物を用いて製造される。二液型ポリウレタン接着剤は、通常、ジイソシアネート/イソシアネートプレポリマーを含む第一成分と、ポリオール(および任意でアミン/ヒドロキシル鎖延長剤)を含む第二成分を含む。この2つの成分は多くの場合、触媒の存在下で反応されることで、接着剤が形成される。ポリウレタンの接着力のレベルは、当業者であれば理解できるように、成分比を適切に調整することによって、意図した用途に基づいて容易に制御できる。しかし、本発明では、ポリウレタンの接着力のレベルは、非接着性になるように、すなわち、ノータックで非接着性の調合物になるように調整される。これは、調合物が完全に架橋されていること、すなわちポリオールの側鎖がすべて架橋されていること、つまり材料がもはや流動できず、調合物のタックが除去されていることを保証することによって達成できる。
【0027】
ある実施形態では、二液型ポリウレタン接着剤は、Baymedix(商標)AP501を含む。
【0028】
ある実施形態では、二液型ポリウレタン接着剤は、Baymedix(商標)AP602を含む。
【0029】
ある実施形態では、二液性接着剤は、Baymedix(商標)AR602およびBaymedix(商標)AP501を含む。二液型ポリウレタン接着剤がBaymedix(商標)AR602とBaymedix(商標)AP501からなる場合、成分は1:0.15から1:0.18の比率で添加されてよい。
【0030】
ある実施形態では、二液性接着剤がBaymedix(商標)AR602とBaymedix(商標)AP501を含む場合、これらの成分は1:0.15から1:0.25、または1:0.15から1:0.18の比率で添加されてよい。
【0031】
本発明によれば、ポリウレタン調合物は、創傷被覆材または創傷被覆材層上に被覆されることで表面を形成する。調合物は、任意の適切な方法でドレッシング上に被覆することができる。例えば、被覆は、印刷、堆積、またはパターニングによって行うことができる。 有利には、創傷接触面は、創傷ドレッシング上に直接印刷することができる。本実施形態では、創傷被覆材に別のフィルムや層をラミネートする必要がありません。これは、製造およびコストの面で大きな利点がある。被覆前に調合物を溶媒に溶解しないため、この調合物は、ジクロロメタン(DCM)などの溶媒を使用することで完全性や特性が損なわれる可能性のある、フォームドレッシングなどのドレッシングに適合する。
【0032】
本発明のある実施形態では、被覆は印刷技術を用いて行われる。ポリウレタン調合物が印刷によって創傷被覆材または創傷被覆材層に被覆される場合、調合物は、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、フレキソ印刷、ラミネート、グラビアまたはインクジェット印刷などの方法で印刷されてよい。
【0033】
ある実施形態では、調合物はロータリースクリーン印刷またはグラビア印刷によって印刷される。
【0034】
あるいはその代わりに被覆は、堆積又はパターニング技術を用いて行うことができる。ポリウレタン調合物を創傷被覆材または創傷被覆材層上への被覆での使用に適した堆積またはパターニング技術には、ラングミュア・ブロジェット、スピンコーティング、ディップコーティング、原子層堆積、溶液堆積、及びスパッタリング技術が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
一旦ポリウレタン調合物がドレッシング上に被覆されると、そのポリウレタン調合物は硬化可能となる。ある実施形態では、ポリウレタン調合物は、75℃から130℃の間の温度で硬化可能である。ある実施形態では、ポリウレタン調合物は3分から20分の期間で硬化可能である。あるいはその代わりに、調合物はIR光の下で30秒から15分の期間で硬化可能である。
【0036】
ある実施形態では、表面は非連続的な表面である。この実施形態では、被覆又は印刷のパターンは、この表面を介して空気の移動および/または滲出液のフォームへの吸収を可能にする十分な隙間または非被覆領域を有していれば、特に限定されない。典型的には、非被覆領域は、全表面積の1%から99%、または5から95%の範囲で変化し得る。これは、当業者であれば容易に確認することができ、ドレッシングの意図された用途(および予想される滲出物の量)、およびドレッシングの性能要件などの要因が考慮されてよい。例えば、表面の最大10%は被覆されていなくてよい。別の実施形態では、表面の最大20%、最大30%、最大40%または最大50%が被覆されていなくてもよい。
【0037】
好適にはパターンは繰り返しのパターンである。
【0038】
あるいはその代わりに、表面は連続した表面である。この実施形態は、火傷などの非滲出性の創傷に適していると考えられる。有利なことに、ポリウレタン調合物の高い通気性により、創傷床の周りの空気の移動が可能であり、滲出物がないということは、被覆された表面には必ずしも隙間が必要されないことを意味する。
【0039】
本発明によれば、ポリウレタン調合物は、創傷被覆層上に被覆される。この層は、創傷被覆材自体の表面であってもよいし、後に創傷被覆材に貼付または積層されて創傷接触面を提供する別の層または基材であってもよい。ある実施形態では、ポリウレタン調合物は、創傷被覆材の表面上に直接被覆される。
【0040】
本発明の例示的な実施形態では、ポリウレタン調合物は、0[N]の剥離接着値で示される低タックまたは無タック調合物を提供するように接着特性が制御された2成分ポリウレタン接着剤調合物を用いて形成される。
【0041】
当業者であれば理解できるように、ポリウレタン調合物は、ポリウレタン調合物の剥離接着特性に影響を与えない限り、選択した被覆または印刷技術との相性を保証するために、例えばレオロジー改質剤などを使用して変更することができる。また、ポリウレタン調合物は、ポリウレタンのみで構成されていてもよい。
【0042】
ある実施形態では、したがって、創傷被覆材のための創傷接触面を調製する方法が提供される。当該方法は:ISO 29862-2018の方法1に従って測定したときに0Nの剥離接着力を有するポリウレタン調合物を調製する段階と、前記ポリウレタン調合物を創傷被覆材または創傷被覆材層上に被覆して前記創傷被覆材または創傷被覆材層上に表面を形成する段階;および、前記表面を硬化させる段階を有する。
【0043】
硬化は、75℃~130℃の温度で3分~30分、または赤外線照射で30秒~15分行われてよい。
【0044】
表面は、連続した表面であってもよいし、非連続の表面であってもよい。
【0045】
ある実施形態では、ポリウレタン調合物は、創傷被覆材又は創傷被覆材層上に印刷されてもよい。
【0046】
本発明のある態様によれば、創傷被覆材のための創傷接触面が提供される。当該創傷接触面は、ISO 29862-2018の方法1に従って測定したときに0[N]の剥離接着力を有するポリウレタン調合物の連続又は非連続の表面である。
【0047】
ポリウレタン調合物の連続又は非連続の表面は、ポリウレタン調合物の硬化層である。
【0048】
本発明の態様によれば、創傷接触面を含む創傷被覆材が提供される。当該創傷接触面は、ISO 29862-2018の方法1に従って測定したときに0[N]の剥離接着力を有するポリウレタン調合物の連続又は非連続の表面である。
【0049】
創傷被覆材は、ラミネート構造またはマルチラミネート構造であってもよい。ある実施形態では、創傷被覆材は吸収性層を備える。創傷被覆材は、例えば、吸収性フォームを含んでもよいし、吸収性フォームで構成されてもよい。適切な吸収性フォームには、芳香族フォームおよび脂肪族フォームの両方が含まれる。芳香族および/または脂肪族のフォームは、その中に組み込まれた抗菌剤を有していてもよい。
【0050】
一実施形態では、創傷被覆材は、ポリウレタンフォームを含む。ポリウレタンフォームは、脂肪族ポリウレタンフォームまたは芳香族ポリウレタンフォームであってもよい。ある実施形態では、ポリウレタンフォームは、脂肪族ポリウレタンフォームである。代替実施形態では、ポリウレタンフォームは、芳香族ポリウレタンフォームである。
【0051】
本発明による創傷被覆材が
図1(a)に示されている。当該創傷被覆材は、ポリウレタンフォーム(1)の層を有し、その上に創傷接触面が直接被覆されている。創傷接触面は、非被覆領域(2)によって散在または分離される一連の六角形のドット(1)を有し、非被覆領域(2)を介して滲出液が吸収性フォームに入ることができ、また、空気が創傷床の周りを循環することができる。図示された実施形態では、非被覆領域は、ドレッシングの表面の約40%を占める。創傷接触面は、アクリル系接着剤(図示せず)などの接着剤の境界線で囲まれていてもよい。
図1(b)は、ポリウレタンフォーム表面(1)上でのポリウレタン接着剤(2)の六角形のドットの被覆を示すドレッシングの側面図である。
【0052】
ドレッシングの代替実施形態を
図2に示す。
図2(a)では、ポリウレタン調合物は一連のダイヤモンド形状として被覆されており、
図2(b)では、ポリウレタン調合物は、印刷表面に非連続的なギャップを有する一連の織り込み線として被覆されている。当業者であれば、被覆のパターンは限定されないことを認識するであろうし、一旦接触面が十分なギャップまたはパターン内の非被覆領域を有すると、ドレッシングが創傷上に配置されている間でのドレッシングへの予想される滲出液の吸収と、創傷床の周りの空気の移動を可能にする。好ましくは、ポリウレタン調合物は繰り返しパターンで被覆され、創傷や周囲の皮膚への外傷をさらに最小限にするために、ドレッシングを除去する際の一貫した剥離強度を確保する。また、これらの実施形態では、創傷接触面は、アクリル系接着剤(図示せず)などの接着剤の境界線で囲まれていてもよい。
図2(c)は、ポリウレタン調合物が連続した層または表面として被覆されている代替の実施形態を示している。この実施形態は、非滲出性の創傷に適していると考えられる。
【0053】
次に、例示のみを目的とした以下の実施例を参照して本発明を説明する。
【0054】
[実施例]
【0055】
[実施例1:ポリウレタン調合物の調製]
市販の2液型ポリウレタン接着剤をBaymedix(商標)社から購入し、ポリオール:イソシアネートの比率が1:0.165になるように調製された。具体的には79.90gのポリオール成分(Baymedix(商標)AR602)が適切な容器に加えられた。
【0056】
上記とは別に、Coscat 83を0.31g、BorchiKat 0761を0.19g混合して1.0:0.6の触媒混合物が調製され、続いてその触媒混合物はポリオール成分100gに加え得られることで、マスターバッチが生成された。
【0057】
その後マスターバッチ成分が、Hauschild DAC 400.1 FVZ Speedmixerを用いて、2,750rpmで30秒間混合された。
【0058】
このマスターバッチ20.10gがBaymedix AP501(イソシアネート成分)16.55gと一緒に容器に加えられ、2,750rpmで30秒間、再び混合された。
【0059】
ポリウレタン調合物はすぐに用いられた。
【0060】
[実施例2:ポリウレタン製剤の剥離接着力の測定]
ポリウレタン製剤の剥離接着力をISO:29862-2018に準拠して測定した。方法1は「自己粘着テープ。180°の角度でのステンレス鋼からの剥離接着力の測定」。簡単に述べると、ポリウレタン調合物を180gsmのブリストル紙上に被覆した。被覆された紙の25×2.5cmのサンプルが切り取られて、20×5cmのステンレススチールプレートに接着され(ようとし)た。剥離接着力は、Zwick Z0.5剥離接着力試験機を用いて、グリップからグリップまでの距離を185mm、速度を585mm/分として、180°で測定された。
【0061】
被覆されたブリストル紙はプレートに接着しないため、0[N]の値の剥離接着力が記録された。サンプルは4回測定され、すべてのサンプルで0 Nの値が記録された。
【0062】
[実施例3:接触層の印刷]
上記実施例1で調製したポリウレタン調合物が、以下のように脂肪族および芳香族ポリウレタンフォームのドレッシングに直接スクリーン印刷された。
【0063】
ポリウレタン調合物は、設定されたパターンのスクリーン印刷(本実施例では
図1のような等間隔の六角形の連続からなるパターンで、被覆率60%/未被覆率40%であった。)の上に、スキージを用いて一回で拭き取られた。その後、フォームを取り除き、バインダーベンチトップオーブンFED115のファンアシストオーブンで100℃で7分間硬化させた。
【0064】
[実施例4:創傷を模倣した剥離試験]
模擬創傷面の模倣からドレッシングを除去するのに必要な剥離力を評価するために、実施例3で印刷したような接触面を有する脂肪族および芳香族ポリウレタンフォームドレッシングと、この接触面のない同じフォームドレッシングが以下のように試験された。
【0065】
高温(70℃)の脱イオン水に40%(w/v)混合したゼラチン(Sigma Aldrich Cat.No.48723)250mlに、赤色染料(赤色染料(Sigma Aldrich CAS No.553-24-2の脱イオン水に溶解したNeutral Red dye)が5滴加えられて、模擬創傷滲出液が調製された。その後、溶液30mlがプラスチック製の箱(20×5cm)に注がれ、3分間放置された。試験するフォームドレッシングの25×2.5cmのサンプルが、乾燥しているゼラチンミックスの上に静かに置かれ、サンプルの端を箱の縁から垂らして、剥離試験の手順で掴めるようにした。その後、サンプルを室温(22℃)で2時間放置された。次に、Zwick Z0.5剥離接着試験機を用いて、グリップからグリップまでの距離を185mm、速度を585mm/minとして、180°での剥離力が測定された。すべてのサンプルは、4回(脂肪族フォームのドレッシング)および3回(芳香族フォームのドレッシング)測定された。創傷接触層を含むドレッシングと創傷接触層を含まないドレッシングの剥離試験の結果が表1と
図3に示された。
【表1】
表1:創傷接触層を有するドレッシングと創傷接触層を有しないドレッシングの模擬創傷面からの剥離試験
【0066】
表1の結果から、創傷接触層を有する脂肪族フォームドレッシングは、平均0.50[N]の剥離力を必要としたのに対し、接触層を有していないドレッシングは平均1.53の剥離力を必要とした。創傷接触層を有する芳香族フォームドレッシングでは、平均0.232Nの剥離力が必要とされたのに対し、接触層を有さない芳香族フォームドレッシングでは0.670の剥離力が必要とされた。
【0067】
[実施例5:吸光度と保持力の試験]
創傷接触面の組み込みがフォームドレッシングの吸収性に影響するかどうかを評価するために,BS:EN 13726 Aspects of Absorbency(パート1;3.2)に従って吸収性および保持力試験が実施された。簡単に述べると、5×5cmの脂肪族フォームサンプルが秤量され、試験溶液A(BS:EN 13726のセクション3.2.2.3-8.298gの塩化ナトリウムと0.368gの塩化カルシウム二水和物を1Lの脱イオン水に溶解したもの)に入れられて、37℃で30分間、創傷環境が模擬された。その後、サンプルをドレッシングの角で30秒間垂直に吊り下げた後、再度重量が測定されて吸光度が評価された。
【0068】
次に,上記の実験で使用した飽和状態の5×5cmのフォームサンプルを用いて,流体保持力が測定された。このサンプルは,フォームサンプルが平坦になるような幅の台座に座った状態で,6kgの重りを30秒間かけた。その後,重りを取り除き,試料の重さを測り直した。吸光度と保持力の試験結果が表2と
図4に示された。
【表2】
[表2:創傷接触面を有するドレッシングと創傷接触層を有しないドレッシングの吸水性と保持力試験]
【0069】
これらの結果から、創傷接触面を追加しても、フォームドレッシングの吸収・保持特性には大きな影響がないことがわかる。
【0070】
したがって、本発明の創傷接触面をフォームドレッシングに適用すると、ドレッシングの吸収特性や保持特性に影響を与えることなく、ドレッシングを表面から剥がすのに必要な剥離力を明らかに低減することができる。上記のテストでは、ドレッシングを剥がした後に目に見える残留物は観察されなかった。したがって、この創傷接触面は、火傷や表皮水疱症などの水疱形成疾患など、特に低外傷性の除去が必要な創傷ケア用ドレッシングに使用するのに適した特性を備えている。この創傷接触面は、容易に入手できる材料を用いて、印刷などの簡単な被覆方法でドレッシングに適用することができ、容易でコスト効率の高い製造が可能である。有利なことに、この創傷接触面は、生体親和性、通気性、非アレルギー性であり、ガンマ線滅菌が可能である。
【0071】
この明細書(添付の請求項、要約書および図面を含む)に開示されているすべての特徴、および/または、そのように開示されている任意の方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示されている各特徴は、明示的に別段の記載がない限り、同じ目的、同等の目的、または類似の目的を果たす代替の特徴で置き換えることができる。したがって、明示的に別段の記載がない限り、開示された各特徴は、同等または類似の特徴の一般的なシリーズの一例に過ぎない。本発明は、上述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規の1つ、または任意の新規の組み合わせ、あるいは、そのように開示された任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規の1つ、または任意の新規の組み合わせにまで及ぶ。
【0072】
本明細書における実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関しては、当業者であれば、文脈および/または用途に応じて、複数形から単数形へ、および/または単数形から複数形へと翻訳することができる。様々な単数/複数の順列は、明確にするために本明細書に明示的に記載することができる。
【0073】
一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲で使用される用語は、一般に「無限定(open)」な用語として意図されていることが、当業者には理解されるであろう(例えば、「including」という用語は、「~を含むがこれに限定されない」と解釈されるべきであり、「having」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「include」という用語は、「~を含むがこれに限定されない」と解釈されるべきである、など)。導入された請求項の記載の特定の数が意図されている場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合にはそのような意図は存在しないことが、当業者にはさらに理解されるであろう。例えば、理解を助けるために、以下の添付の請求項には、請求項の記載を導入するために、「少なくとも1つ」および「1つ以上」という導入フレーズの使用が含まれている。しかし、このようなフレーズの使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項の記載の導入が、そのような導入された請求項を含む特定の請求項を、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない。同じ請求項が、導入フレーズ「1つ以上」または「少なくとも1つ」および「1つ」又は「ある」などの不定冠詞(例えば、「a」および「an」)を含む場合であっても、そのような導入された請求項を含む特定の請求項は、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定されます。例えば、「1つ」又は「ある」は、「少なくとも1つ」や「1つ以上」を意味すると解釈されるべきであり、クレームの説明の導入に使用される定冠詞の使用についても同様である。さらに、導入された請求項の記載の特定の数が明示的に記載されている場合であっても、当業者であれば、そのような記載は少なくとも記載された数を意味するように解釈すべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語を伴わない「2回の再現」という裸の記載は、少なくとも2回の再現、または2回以上の再現を意味する)。
【0074】
本開示の様々な実施形態は、説明のために本明細書に記載されており、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更を加えることができることが理解されるであろう。したがって、本明細書に開示された様々な実施形態は、限定することを意図したものではなく、真の範囲は以下の請求項によって示される。
【国際調査報告】