(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ビス-R1,R2-ジチオカルバメート-金属錯体と配位子とを含む分子錯体集合体粒子、その調製方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/69 20170101AFI20220112BHJP
A61K 31/30 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/315 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/28 20060101ALI20220112BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220112BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220112BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220112BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220112BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220112BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220112BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220112BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20220112BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220112BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220112BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20220112BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220112BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220112BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220112BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220112BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K31/30
A61K31/315
A61K31/28
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/42
A61K47/34
A61K47/26
A61K47/28
A61K47/04
A61K47/02
A61K51/04 100
A61K51/04 200
A61P35/00
A61K48/00
A61K47/18
A61K47/20
A61K9/19
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543579
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(85)【翻訳文提出日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2019077222
(87)【国際公開番号】W WO2020074514
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514145785
【氏名又は名称】パラッキ ユニバーシティ,オロモウツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ミストリク,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】バルテク,ジリ
(72)【発明者】
【氏名】スクロット,ズデニェク
(72)【発明者】
【氏名】ジュバク,ペトル
(72)【発明者】
【氏名】ハイドゥッフ,マリアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C206
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB31
4C076CC27
4C076CC41
4C076CC45
4C076DD23Z
4C076DD26Z
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD41Z
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4C076DD56
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4C076DD70
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4C206AA02
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4C206MA05
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4C206MA72
4C206MA75
4C206MA83
4C206NA02
4C206ZB26
(57)【要約】
本発明は、ジチオカルバメート-金属化合物と、ポリマーまたは洗浄剤である少なくとも1つの配位子との錯体粒子形態を提供する。錯体粒子形態は、各成分を連続してまたは同時に添加し、これによりそれらを自己集合させることを含む方法によって、得られる。錯体粒子形態の乾燥形態または水性分散液は、医薬の経口、局所および非経口による投与、ならびに癌の治療および画像化に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジチオカルバメート-金属化合物と、ポリマーおよび洗浄剤から選択される少なくとも1つの配位子と、からなるか、またはこれらを含む分子錯体集合体粒子形態であって、
前記粒子は、好ましくは有機溶媒を実質的に含まない、粒子形態。
【請求項2】
前記金属は、銅、亜鉛、銀および金から選択され、
好ましくは、前記金属は、銅である、請求項1に記載の粒子形態。
【請求項3】
前記金属は、
63Cu、
65Cu、
64Cuおよびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の粒子形態。
【請求項4】
前記ジチオカルバメートは、式(R1)(R2)N-CH
2S
2
-を有し、
式中、R1およびR2は、同一または異なり、独立して、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C3~C10シクロアルキル、C6~C14アリール、O、S、Nから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC4~C14ヘテロアリール、O、S、Nから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC3~C10ヘテロシクリルから選択されるか;または、R1およびR2は、それらが結合している窒素原子と共に複素環を形成し、-R1-R2-は、C2~C6アルキレンまたはC2~C6アルケニレンであり、1~2個の炭素原子は、任意で、O、S、NHから選択されるヘテロ原子によって置換されてもよく、
R1およびR2を形成する部分は、置換されていなくてもよく、または、C1~C4アルキル、ヒドロキシ、メルカプト、C1~C4アルコキシ、C1~C4アルキルチオ、ハロゲン、フェニル、ベンジル、ケト基、カルボキシル基、C1~C4アルキルオキシカルボニルから選択される少なくとも1つの置換基によってさらに置換されていてもよい、
請求項1~3のいずれか1項に記載の粒子形態。
【請求項5】
R1およびR2は、独立して、C1~C6(またはC1~C4)アルキル、C2~C6(またはC1~C4)アルケニル、C3~C6シクロアルキル、フェニルから選択されるか;または、R1およびR2は、それらが結合している窒素原子と共に複素環を形成し、-R1-R2-は、C2~C6アルキレンまたはC2~C6アルケニレンである、請求項4に記載の粒子形態。
【請求項6】
前記配位子は、多糖類、ポリオキシアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシ酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリエチレングリコールエーテル、ポリ-D-アミノ酸、ステアリン酸系ポリマー、ゼラチン系ポリマー、核酸、混合コポリマーから選択される水溶性ポリマーであるか;または、
前記配位子は、コール酸塩またはコール酸塩誘導体である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粒子形態。
【請求項7】
前記配位子は、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、スルホブチルエーテル-ベータシクロデキストリン、ウルソデオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムから選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子形態。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の分子錯体集合体粒子形態の調製方法であって、
前記分子錯体集合体特定形態は、少なくとも1つの配位子をジチオカルバメートまたは金属塩から選択される第1成分と水性溶媒中で混合し、同時にまたは続けて、ジチオカルバメートまたは金属塩から選択される第2成分を添加することによって、調製され、
前記第1成分がジチオカルバメートである場合は、前記第2成分は金属塩であるのに対して、前記第1成分が金属塩である場合は、前記第2成分はジチオカルバメートである、
方法。
【請求項9】
(a)少なくとも1つの配位子を0.001%(w/w)~飽和溶液の範囲の濃度で水性溶媒に溶解する工程と、
(b)水性溶媒に溶解した少なくとも1つのジチオカルバメートを、1μM~100mM、好ましくは1~10mMの範囲で添加する工程と、
(c)1μM~100M、好ましくは1~10mMの範囲の金属塩濃度を有するように、水性溶媒中の金属塩溶液を添加する工程と、
を含み、
ここで、上記工程は、工程(a)、(b)、(c)の順番で行われるか、もしくは工程(a)、(c)、(b)の順番で行われるか、または、工程(b)および(c)が同時に行われ;
(d)任意に、得られた溶液を凍結乾燥または乾燥する工程を含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
金属イオン:ジチオカルバメートイオンのモル比は、1:5~5:1である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記水性溶媒は、水、または、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、Tris、HEPES、生理食塩水、グルコース溶液などの水系バッファであり、
好ましくは、前記水性溶媒は、無菌である、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
治療薬および/または診断薬としての使用するための、請求項1~7のいずれか1項に記載の分子錯体集合体粒子形態。
【請求項13】
癌の化学療法、遺伝子療法、および/もしくは免疫療法、癌の放射線療法もしくは温熱療法、交流電場腫瘍治療から選択される治療方法において、ならびに/または腫瘍の画像化方法において、使用するための、請求項1~7のいずれか1項に記載の分子錯体集合体粒子形態。
【請求項14】
前記錯体粒子形態は、経口、局所または非経口で投与され、好ましくは、濾過滅菌されている、請求項12または13に記載の使用のための分子錯体集合体粒子形態。
【請求項15】
前記粒子形態は、
乾燥形態、好ましくは、凍結乾燥形態にあり、
単糖類、二糖類、アミノ酸、多糖類、ポリマー、および凍結保護性を有する他の物質、ならびにそれらの誘導体から選択される少なくとも1つの凍結保護剤、特に、マンニトール、トレハロース、サッカロース、アルブミン、ラクトース、デキストロース、スクロース、グルコース、マルトース、イノシトール、ラフィノース、イヌリン、マルトデキストリン、ヘパリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、グリセロール、ソルビトール、メルカプタン、ポリエチレングリコール、アドニトール、アミノ酸、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ドデシル硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ポリビニルピロリドン、デキストランから選択される少なくとも1つの凍結保護剤をさらに含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の粒子形態、または請求項12~14のいずれか1項に記載の使用のための粒子形態。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのビス-R1,R2-ジチオカルバメート-金属錯体と、少なくとも1つの配位子と、を含む単核または多核分子錯体粒子(すなわち、分子錯体集合体粒子)を含む粒子に関する。配位子は、典型的には、薬学的に許容可能な水溶性の賦形剤物質、すなわちポリマーまたは洗浄剤である。粒子は、癌の治療および診断を含む医学用途に有用である。このような粒子の製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
R1,R2-ジチオカルバメート(DTC)は、文献で公知となっている強力な金属イオンキレート剤である。ひとたびDTCが金属と反応すると、新しい化学物質、すなわち、化合物(ジチオカルバメート金属キレート)が形成される。こういった化合物の一部は、種々の癌細胞モデルを用いた細胞系において抗癌活性を示す。しかしながら、提唱される抗腫瘍活性を有する化合物は水溶性ではないため、このような錯体を患者に投与することはとりわけ困難である。また、このような化合物は癌細胞に対する優先毒性が低く、したがって治療指数がほぼ狭い。上記の2つの制限は、本発明によって克服し得る。
【0003】
ジチオカルバメート(DTC)は、特に種々の二価金属とのキレート錯体について、種々の前臨床モデルにおいて有望な抗癌活性を示す。DTCの金属キレート特性は、抗腫瘍活性と同様に、長年知られている。いくつかの特許文献には、種々の悪性腫瘍の治療戦略として、重金属(特に銅、亜鉛、金または銀)とのジチオカルバメート錯体の使用が含まれている(例えば、US20030229064、US20050096304を参照)。しかしながら、これらの特許文献のいずれも、これまでヒトにおける実用化には至っていない。明らかに、臨床手順におけるジチオカルバメート-金属化合物の使用に対する主な障害は、好ましくない薬理学的特性(すなわち、安定性および水性製剤化能)である。例えば、最も有望な抗癌化合物であるビス(ジエチルジチオカルバメート)銅(II)(または銅ビス(ジエチルジチオカルバメート))については、水中での溶解度定数が1リットル当たりナノグラムの範囲にすぎず、これは患者において治療用量を送達するには不十分である。
【0004】
アルブミン溶液中のビス-R1,R2-ジチオカルバメート金属錯体の製剤がSkrott Zら(Nature(2017)552(7684))に記載されている。しかしながら、製剤におけるタンパク質の使用には、技術面ばかりでなく衛生面、毒性面および倫理面での問題など、いくつかの欠点がある。免疫反応性の問題が生じることもあり、動物モデルでの試験の際に異なる種類のタンパク質を使用する必要がある。タンパク質を含む製剤の安定性は、かなり低くなり得る。製剤は、pH値が低かったり高かったりするか温度が高いと変性しやすく、またプロテアーゼの作用によって分解しやすい。医薬での使用が認められているタンパク質はわずかである。さらに、大規模に市販されているタンパク質もわずかであり、そして、製造および/または精製に費用が掛かるため、かなり高価である。
【0005】
したがって、本発明は、安定性、経済性、汎用性が高く、倫理面、衛生面、毒性面、免疫反応性の面で問題を伴わない、ビス-R1,R2-ジチオカルバメート金属錯体を含む生体利用可能な粒子を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、分子錯体集合体粒子の形態をとっている、配位子を有するジチオカルバメート-金属錯体の粒子形態である。この配位子は、典型的には、コール酸塩誘導体等の水溶性ポリマーおよび/または洗浄剤である。
【0007】
用語「水溶性」は、脱イオン水において水への溶解度(すなわち、飽和水溶液濃度)が少なくとも0.001%w/w(すなわち、0,01‰w/w)、好ましくは、少なくとも0.01%w/w、または少なくとも0.1%w/w、または少なくとも1%w/wである物質を示す。
【0008】
水溶性ポリマーは、モノマー単位、典型的には反復モノマー単位を含む物質であり、脱イオン水における水への溶解度が少なくとも0.001%w/w、好ましくは、少なくとも0.01%w/w、または少なくとも0.1%w/wである。
【0009】
水溶性洗浄剤は、脱イオン水における水への溶解度が少なくとも0.001%w/w、好ましくは、少なくとも0.01%w/w、または少なくとも0.1%w/wである界面活性剤である。
【0010】
ポリマーおよび/または洗浄剤としては、医薬用賦形剤としての使用が許容可能であるものが好ましい。このような配位子は、毒性が低いかまたは無毒であり、そして、医薬製剤(治療用または診断用調製物等)での使用が試験され登録されている。
【0011】
本発明の粒子は、抗癌剤または診断薬としての使用に適している。
【0012】
本発明の粒子は、ジチオカルバメート-金属錯体と、少なくとも1つの配位子と、を含むか、またはこれらからなる。そして、この粒子は、典型的にはジチオカルバメート-金属錯体の複数の分子と1以上の種類の複数の配位子分子とを含む、分子錯体集合体の形態をとっている。好ましくは、粒子のサイズは、1~2000nmの範囲にわたる。粒子形態は、好ましくは有機溶媒を実質的に含まない。
【0013】
好ましくは、錯体粒子は、ジチオカルバメート-銅錯体と、少なくとも1つの配位子と、を含むか、またはこれらからなり、より具体的には、ジエチルジチオカルバメート-銅錯体と、少なくとも1つの配位子と、を含むか、またはこれらからなり、典型的にはジチオカルバメート-銅錯体の複数の分子と複数の配位子分子とを含む分子錯体集合体の形態をとっている。好ましくは、粒子のサイズは、1~2000nmの範囲にわたる。粒子形態は、好ましくは有機溶媒を実質的に含まない。
【0014】
本発明によれば、錯体粒子は、少なくとも1つの配位子をジチオカルバメートまたは金属塩から選択される第1成分と水性溶媒中で混合し、同時にまたは続けて、ジチオカルバメートまたは金属塩から選択される第2成分を添加することによって、調製される。第1成分がジチオカルバメートである場合は、第2成分は金属塩であるのに対して、第1成分が金属塩である場合は、第2成分はジチオカルバメートである。
【0015】
本発明の構成の範囲内において、本明細書に記載されるように試薬が同時にまたは順次添加されると、第2成分の添加後には、配位子は、溶液中で急速に形成されるジチオカルバメート-金属化合物と結合し、かつ、より大きな分子錯体集合体(典型的には、サイズは1~2000nmの範囲にわたる)に自発的に集合する能力が高く、したがって生体利用可能な分散液が形成されることが見いだされた。この形態において、ジチオカルバメート-銅錯体の分子は、集合体内に均一に分布し、元来の化学的特性を維持したままインビトロおよびインビボの両方で実質的に改善された生物学的活性を示す。したがって、不溶性の化合物であっても、癌治療および腫瘍画像化における使用を含む治療的または診断的使用が可能になる。
【0016】
錯体粒子の調製方法は、非常に短時間(1分未満)で、単一の反応容器中で有機溶媒を必要とせずに実施することができ、即時または持続的な、非経口、局所または経口投与が可能になる。
【0017】
さらに、本発明は、ジチオカルバメートと、金属塩と、少なくとも1つの配位子と、滅菌水性溶媒(好ましくは、水性溶媒は水または水系バッファである)と、少なくとも1つの配位子、ジチオカルバメート、金属塩を無菌条件下において水性溶媒中で混合するための容器と、を含むパーツキットをさらに含む。キットの構成要素は、キット内の別個の容器に提供されていてもよい。
【0018】
本発明の粒子は、多数の利点を有している。ポリマーおよび洗浄剤は非ヒト起源であるため、血液タンパク質配位子に関連する倫理面、安全面、および免疫毒性面での問題を生じない。粒子は、安定であり、低pH値もしくは高pH値、または高温によって変性せず、かつ、プロテアーゼ等の酵素に耐性を有する。配位子は、工業規模で市販されており、かつ無毒である。種々のポリマーおよび/または洗浄剤を使用することができるため、得られる粒子の最終的な所望の物理化学的性質の微調整が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、「分子錯体集合体粒子」は、多核分子錯体粒子を意味し、典型的には、1つの粒子が、ビス-ジチオカルバメート金属錯体の1または複数の分子と、配位子の1または複数の分子と、を含む。分子錯体は、典型的には非共有結合により互いに結合された少なくとも2つの分子により形成された錯体に相当する。
【0020】
「特定形態」との表現は、「粒子」を意味する。
【0021】
本発明において、「金属」は、遷移金属(またはd-金属)ならびに周期表のIIIA族およびIVA族の金属から選択される金属を意味する。好ましくは、金属は、遷移金属である。より好ましくは、金属は、銅、亜鉛、カドミウム、水銀から選択される。最も好ましくは、金属は、銅である。本発明の全ての利点は、銅においても最も強く顕著である。
【0022】
金属は、単一の同位体または同位体混合物の形態であってもよい。同位体は、放射性同位体であっても非放射性同位体であってもよい。銅については、非放射性同位元素は、63Cuおよび65Cuであり、放射性同位元素は、好ましくは64Cuまたは67Cuである。64Cuが銅の陽電子放出同位体であり、分子放射線療法および陽電子放出断層撮影法に適用される。
【0023】
「金属塩」は、陽イオンと陰イオンとの形態にある金属の塩を意味する。粒子分散液(より大きな粒子の分散液は、懸濁液ともいう)の意図される医薬用途に関して、当業者は、陰イオンが薬学的に許容可能な陰イオンであるべきであり、好ましくは水溶性であることを理解するであろう。陰イオンは例えば、ハロゲン化物(特に塩化物、臭化物、ヨウ化物)、硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物、リン酸塩、硝酸塩、炭酸塩等の無機酸陰イオンから選択してもよく;カルボン酸陰イオン、ジカルボン酸陰イオン、トリカルボン酸陰イオン、スルホン酸陰イオン、アミノ酸陰イオンから選択してもよく、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩(maleinates)、フマル酸塩、マレイン酸塩(maleates)、クエン酸塩、トリフラート、グルコン酸塩、ビスグリシン酸塩から選択してもよい。
【0024】
「ジチオカルバメート」は、式(R1)(R2)N-CS2
-(本明細書では、R1,R2-ジチオカルバメートとも示す)を有する部分を意味する。式中、R1およびR2は、同一または異なり、独立して、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C3~C10シクロアルキル、C6~C14アリール、O、S、Nから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC4~C14ヘテロアリール、O、S、Nから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC3~C10ヘテロシクリルから選択されるか;または、R1およびR2は、それらが結合している窒素原子と共に複素環を形成し、-R1-R2-は、C2~C6アルキレンまたはC2~C6アルケニレンであり、1~2個の炭素原子は、任意で、O、S、NHから選択されるヘテロ原子によって置換されてもよい。R1およびR2を形成する部分は、置換されていなくてもよく、または、C1~C4アルキル、ヒドロキシ、メルカプト、C1~C4アルコキシ、C1~C4アルキルチオ、ハロゲン、フェニル、ベンジル、ケト基、カルボキシル基、C1~C4アルキルオキシカルボニルから選択される少なくとも1つの置換基によってさらに置換されていてもよい。
【0025】
より好ましくは、R1およびR2は、独立して、C1~C6(またはC1~C4)アルキル、C2~C6(またはC2~C4)アルケニル、C3~C6シクロアルキル、フェニルから選択されるか;または、R1およびR2は、それらが結合している窒素原子と共に複素環を形成し、-R1-R2-は、C2~C6アルキレンまたはC2~C6アルケニレンである。
【0026】
最も好ましくは、ジチオカルバメートは、ジエチルジチオカルバメートである(R1およびR2は、エチルである)。
【0027】
ジチオカルバメートは、負に帯電した陰イオンの形態、典型的にはジチオカルバメート-金属錯体として存在し得る。本発明の方法における出発化合物としては、中性化合物(R1)(R2)N-C(S)SHの形態として使用してもよい。好ましくは、[(R1)(R2)N-CS2]m-Catm+の塩の形態として使用してもよい。当該塩の例は、アルカリ金属塩(Cat+はアルカリ金属陽イオンであり、m=1である)、アンモニウム塩(Cat+はアンモニウム陽イオンであり、m=1である)、または、アルカリ土類金属塩(Cat+はアルカリ土類金属陽イオンであり、m=2である)である。当業者は、用語「ジチオカルバメート」が使用される文脈に応じて、どの形態を意味しているか、またはどの形態が必要であるかを理解する。
【0028】
「ジチオカルバメート-金属化合物」は、少なくとも1つのジチオカルバメート部分と、少なくとも1つの金属(好ましくは、1つの金属)と、を含む。例えば、ジチオカルバメート-金属化合物は、式(I)に対応し得る。
【0029】
【0030】
式中、Mは金属であり、好ましくは銅であり、
Anは、薬学的に許容可能な陰イオンであり、好ましくは本明細書で定義されるとおりであり、
nは、金属の原子価であり、典型的には、nは、1、2、または3であり、
R1およびR2は、本明細書中で定義されるとおりである。
【0031】
ジチオカルバメートに対する金属の比率(金属:ジチオカルバメート)は、例えば、1:5~5:1の範囲、または1:2~5:1の範囲であり得る。ジチオカルバメートに対する金属の比率は、化合物中のそれらの化学量論比、またはそれらの化学量論比±20%、またはそれらの化学量論比率±50%に最適に対応し得る。例えば、銅について、化学量論比は1:2である。
【0032】
「配位子」は、分子錯体集合体粒子を形成することと、ヒト医学および獣医学においてこの粒子の経口、局所、非経口投与を可能にすることと、によってジチオカルバメート-金属錯体の溶解度および吸収を著しく高める物質である。
【0033】
配位子は、水溶性ポリマーおよび洗浄剤から選択される。
【0034】
ポリマーは、非ペプチドポリマー、すなわち、モノマー単位としてL-アミノ酸を含有しないポリマーである。ポリマーは、1kDa~10MDaの範囲の数平均分子量を有し得る。ポリマーは、多糖類、ポリオキシアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシ酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリエチレングリコールエーテル、ポリ-D-アミノ酸、ステアリン酸系ポリマー、ゼラチン系ポリマー、核酸、混合コポリマーを含んでもよい。より詳細には、ポリマーは、セルロースおよびセルロース誘導体、グリコサミノグリカンおよびその誘導体、シクロデキストリンおよびその誘導体、デンプンおよびデンプン誘導体、ポロキサマー(ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、マクロゴール(ポリエチレングリコール)およびその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリエトキシル化ヒマシ油、ステアリン酸系ポリマー、ゼラチン系ポリマー、リボ核酸、デオキシリボ核酸、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーを含む。
【0035】
より具体的には、ポリマーは、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Ficoll、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(Voluven(登録商標))、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、スルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン(Captisol(登録商標))、ポロキサマー(例えば、Pluronic(登録商標)F-127)、マクロゴール、リシノール酸マクロゴールグリセロール、ヒドロキシステアリン酸マクロゴール15、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ乳酸、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(HPMA)、ポリエトキシル化ヒマシ油(例えば、クレモフォール)、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(Soluplus(登録商標)BASF)、ポリオキシエチル化12-ヒドロキシステアリン酸(Solutol(登録商標)HS 15(BASF))、スクシニル化ゼラチン(Gelaspan(登録商標))、リボ核酸、デオキシリボ核酸を含む。
【0036】
さらに具体的には、ポリマーは、Pluronic(登録商標)F127(ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール))、ポリビニルピロリン(ポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(Soluplus(登録商標))、スルホブチルエーテル-ベータシクロデキストリン(Captisol(登録商標))から選択される。
【0037】
洗浄剤は、薬学的に許容可能な水溶性洗浄剤であり、特に、ステロイド系洗浄剤であり、より詳細には、コール酸塩およびコール酸塩誘導体(コール酸の塩等)である。洗浄剤は、好ましくは、ウルソデオキシコール酸ナトリウムまたはデオキシコール酸ナトリウムである。
【0038】
「水性溶媒」は、水または水系バッファ(リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、Tris、HEPES、生理食塩水、グルコース溶液、または他の一般的なバッファ等)である。好ましくは、水性溶媒は無菌である。
【0039】
自己集合錯体粒子(すなわち、分子錯体集合体)のサイズは、1~2000nmである。好ましくは、錯体の少なくとも90%が1~500nmのサイズを有する。いくつかの実施形態では、粒子の少なくとも50%、または少なくとも70%、または少なくとも90%が、1~1000nm、または10~500nm、または20~500nm、または1~220nmの範囲のサイズを有する。錯体サイズおよびそれらの分布は動的光散乱(DLS)法によって測定した。本明細書を通して使用される用語「サイズ」または「平均径」は、DLSによって決定される平均径を示す(Z平均)。
【0040】
ジチオカルバメート-金属錯体と、少なくとも1つの配位子と、からなるか、またはこれらを含む粒子形態は、濾過滅菌してもよい。好ましくは、0.22マイクロメートルフィルターを使用して濾過滅菌してもよい。
【0041】
ジチオカルバメート-金属錯体と、少なくとも1つの配位子と、からなるか、またはこれらを含む粒子形態は、注射液または注入液(溶液、分散液または懸濁液)の形態で提供され得る。注射液または注入液は、バッファ、界面活性剤、キレート剤、等張性調整剤、pH調整剤、保存剤、安定剤、抗酸化剤、還元剤、可溶化剤、金属イオンから選択される少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。
【0042】
ジチオカルバメート-金属錯体と、少なくとも1つの配位子と、からなるか、またはこれらを含む粒子形態は、乾燥形態において、特に凍結乾燥(lyophilized)(凍結乾燥(freeze-dried))形態で、または噴霧乾燥形態で提供することができる。凍結乾燥製剤は、典型的には、凍結保護剤、バッファ、界面活性剤、キレート剤、等張性調整剤、pH調整剤、防腐剤、安定剤、抗酸化剤、還元剤、可溶化剤、金属イオンから選択される少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。噴霧乾燥製剤は、バッファ、界面活性剤、キレート剤、等張性調整剤、pH調整剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、還元剤、可溶化剤、金属イオンから選択される少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含んでもよい。特に、凍結乾燥によって安定性がさらに改善するので、貯蔵および物流が容易になる。
【0043】
さらに、乾燥形態は、液体製剤を調製するための粉末として製剤化されてもよく、または、経口投与に適した形態、例えば、錠剤、丸剤、軟カプセル、硬カプセルとして製剤化されてもよい。さらに、液体または乾燥形態は、局所投与に適した形態、例えば、ローション、軟膏、クリーム、パッチ、ドレッシングとして製剤化されてもよい。
【0044】
バッファは、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、トリエタノールアミン、アルギニン、リン酸塩バッファを含み得る。
【0045】
界面活性剤は、例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー188、ポロキサマー407であってもよい。
【0046】
キレート剤は、エデト酸ナトリウム、グルタミン酸、アスパラギン酸を含み得る。
【0047】
等張性調整剤は、例えば、マンニトール、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、ソルビトール、デキストロースから選択され得る。
【0048】
pH調整剤としては、例えば、酢酸、塩酸を用いることができる。
【0049】
安定剤は、アルギニン、メチオニン、グルタミン酸、グリシン、ロイシン、アスパラギン酸、脂肪酸、ホスファチジルコリン、エタノールアミン、アセチルトリプトファネート、PEG、PVP(10,24,40)、ソルビトール、グルコース、プロピレングリコール、エチレングリコールを含み得る。
【0050】
抗酸化剤は、グリセリン、アスコルビン酸、システインHCl、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、グルタチオン、アルファ-トコフェロール、二硫化ナトリウムを含み得る。
【0051】
還元剤は、例えばチオールである。
【0052】
可溶化剤は、例えばアラニンであってもよい。
【0053】
金属イオンは、Ca2+、Ni2+、Mg2+、Mn2+を含み得る。
【0054】
防腐剤は、フェノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メタクレゾールおよびパラベンを含み得る。
【0055】
凍結保護剤(cryoprotectants)(または凍結保護剤(lyoprotectants))は、単糖類、二糖類、多糖類、アミノ酸、多糖類、ポリマー、および凍結保護性を有する他の物質、ならびにそれらの誘導体を含み得る。特に、凍結保護剤(または凍結保護剤)は、マンニトール、トレハロース、サッカロース、アルブミン、ラクトース、デキストロース、スクロース、グルコース、マルトース、イノシトール、ラフィノース、イヌリン、マルトデキストリン、ヘパリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、グリセロール、ソルビトール、メルカプタン、ポリエチレングリコール、アドニトール、アミノ酸、Tween 80、Pluronic、Brij、ドデシル硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ポリビニルピロリドン(PVP K15)、デキストランから選択され得る。
【0056】
特に明記しない限り、パーセンテージはw/w%である。
【0057】
本発明は、ジチオカルバメート-銅化合物および少なくとも1つの配位子の錯体粒子へのインサイチュ自己集合のプロセスを記載する。当該プロセスは、以下の工程を含む方法によって達成される:
(a)少なくとも1つの配位子を0.001%(w/w)~飽和溶液の範囲の濃度(好ましくは0.1%~10%(w/w)の範囲の濃度)で水性溶媒に溶解する工程;
(b)水性溶媒に溶解した少なくとも1つのジチオカルバメートを、1μM~100mM、好ましくは1~10mMの範囲の濃度になるように添加する工程;
(c)1μM~100M、好ましくは1~10mMの範囲の金属塩濃度を有するように、水性溶媒(例えば、水または水系バッファ)中の金属塩溶液を添加する工程;
ここで、上記工程は、工程(a)、(b)、(c)の順番で行われるか、または工程(a)、(c)、(b)の順番で行われ、工程(b)および(c)は同時に行われてもよいし、続けて行われてもよい。
【0058】
好ましくは、個々の工程の間に、振盪またはボルテックスを伴う少なくとも10秒間の遅延を生じさせてもよい。
【0059】
この単一管反応は、配位子-ジチオカルバメート-金属粒子の迅速で自発的な自己集合をもたらし、分散液を形成する。
【0060】
工程(b)において、ジチオカルバメートは、好ましくは中性化合物または塩の形態をとっている。
【0061】
ジチオカルバメートに対する金属の比率(金属:ジチオカルバメート)は、例えば、1:5~5:1の範囲、または1:2~1:5の範囲であり得る。ジチオカルバメートに対する金属の比率は、化合物中のそれらの化学量論比、またはそれらの化学量論比±20%、またはそれらの化学量論比率±50%に最適に対応し得る。例えば、銅について、ジチオカルバメートに対する金属の化学量論比は1:2である。
【0062】
好ましい実施形態では、金属イオン:ジチオカルバメートイオンのモル比は、1:2である。
【0063】
水性溶媒の使用は、さらなる精製の必要なしに、生物学的に適合性であるナノ粒子形態をもたらす。ジチオカルバメートを溶解するのに好ましい有機溶媒が使用される場合、得られる粒子は、除去することが困難な残留量の有機溶媒を含み得る。これは、粒子の生体適合性および生体利用可能性を低下させる。したがって、本発明の枠組み内で、驚くべきことに、調製方法が水性溶媒中で実施される場合、ジチオカルバメートは水中で低い溶解度を有するが、分子集合体構造を有する水溶性のナノ粒子形態が形成されることが見出された。水性溶媒を使用することによって、有機溶媒の使用に起因して生じ得る欠点が解消される。
【0064】
本発明により形成された分子錯体粒子は、生体利用可能な分散液を形成し、このような治療を必要とする患者に投与することができる。分散液は、特に、化学療法および放射線療法の両方の癌治療に使用することができ、例えば、黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腎癌、結腸直腸癌、乳癌、膵癌、胃癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮癌、リンパ腫、前立腺癌、骨髄腫、結腸の腺癌、リンパ節転移または肝転移、脳腫瘍および脳転移を含む固形腫瘍の治療に使用することができる。分散液は、例えば陽電子放出断層撮影法による、腫瘍イメージング等の診断にも使用することができる。
【0065】
本発明にしたがって反応が行われる場合、得られた配位子-ジチオカルバメート-銅粒子の分散液は、抽出、分離、製品洗浄、濃度増強等の追加の化学的または物理的処理を必要とせず、処置される被験体(ヒトまたは動物)への直接的な非経口、局所または経口投与を可能にすることに留意することが重要である。
【0066】
本発明による粒子の調製のための出発物質は、十分な純度のグレードで高価ではない価格で市販されており、調製手順は簡単で経済的に有利である。例えば、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ジエチルジチオカルバメート、およびCuCl2は、医薬グレードで一般に市販されている。このような手順は、高価な化学反応器や、追加の装置での処理を必要とせず、法的な承認を単純化することができる。
【0067】
本発明の反応は、例えば上述のパーツキットなど、薬学的に許容可能な成分の組み合わせを用いて、患者の病床の真横で、または病院の薬局で実施することができる。本実施形態は、分散液の貯蔵に関連するロジスティックな問題の一部を著しく減少させることができ、つまり、必要なときに新鮮な薬物を高い再現性で調製して直ちに投与することができる。
【0068】
また、本発明によれば、集合した粒子のサイズを簡単に変更することが可能になる。ジチオカルバメート-金属(特に、銅)錯体と配位子との間の比率を変化させることによって、形成される錯体粒子のサイズも変化する。粒子のサイズは、インビボでのその挙動、特に生体内分布(例えば、血液脳関門浸透)および動態の重要な決定因子であるので、最適な反応条件を決定して、最適な薬理学的特性を有する錯体粒子を生成することができる。
【0069】
調製された錯体粒子の分散液は、安定であり、4℃で数週間、有意な分解または沈殿なしに保存することができる。形成された配位子-ジチオカルバメート-金属の錯体粒子は、安定性、貯蔵および物流をさらに改善するために、上述の凍結保護剤によってさらに安定化させ、乾燥または凍結乾燥によってさらに処理することができる。乾燥錯体粒子は、無菌の水系バッファに繰り返し溶解され、治療に使用され得る。配位子-ジチオカルバメート-金属錯体粒子の特性のこの重要な側面は、大規模および小規模の両方において、工業生産、貯蔵および物流の面で特に価値がある。
【0070】
この錯体粒子の一般的な適用性を示すために、以下の実施例は、選択された薬学的に許容可能な賦形剤またはその組み合わせを含むジチオカルバメート-金属化合物の調製および特徴付けを示し、一般的な製剤および癌のターゲティングを実証する。実施例は、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】
図1は、実施例1~5によって調製した粒子の、動的光散乱(DLS)により測定した平均径を示す表である。粒子は、多分散系を形成し、その平均径は、使用した賦形剤に応じて変化し、約40~1100nmの範囲にわたっている。
【
図2】
図2(
図2-1および
図2-2)は、実施例1、4および5によって調製された粒子の多分散系の代表的な動的光散乱(DLS)スペクトルを示す。
【
図3】
図3は、実施例2によって調製された粒子の多分散系の代表的な動的光散乱(DLS)スペクトルを示しており、粒径分布に対して凍結乾燥の影響が最小限であることが示されている。
【
図4】
図4は、実施例2、3、5~13によって調製された粒子の抗癌活性を、標準条件においてインビトロで培養した選択癌細胞株に対する細胞毒性効果として測定して示す表である。
【
図5】
図5は、実施例1~17によって調製された粒子の抗癌活性を、腫瘍スフェロイドとして培養した選択癌細胞株に対する細胞毒性効果として測定して示す表である。
【
図6】
図6は、実施例2、3および11によって調製された粒子が、腫瘍スフェロイドの完全性(integrity)に対して生じる効果を示す。図は、種々の賦形剤を伴うジチオカルバメート銅化合物の粒子によって処理されたスフェロイド3D画像を示している。
【実施例】
【0072】
<材料および方法>
調製したナノ粒子の平均径およびサイズ分布の測定が可能な動的光散乱(DLS)分析を、Zetasizer Nano ZS器具(Malvern、U.K.)によって、以下のパラメータ設定で行った:V=400uL、T=25℃、実行回数:10、実行持続時間:1s、測定回数:3、測定角度:173°後方散乱(NIBSデフォルト)、セルタイプ:ZEN0040。
【0073】
<細胞株>
細胞株を、10%ウシ胎仔血清およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充した適切な培地中で培養し、そして加湿された37℃の5%CO2雰囲気下で維持した。以下の細胞株をサプライヤーの推奨通りに培養した。U-2-OS(European Collection of Authenticated Cell Cultures、ECACCから入手)、CCRF-CEM(ATCC)、K562(ATCC)、細胞株A549(ATCC)、K562(ATCC)、DLD-1(ATCC)、DU-145(ATCC)、HeLa(ATCC)、BJ(ATCC)、MRC5(ATCC)、HCT116およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)、およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系(maternal)細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。
【0074】
<細胞生存率試験>
MTSアッセイをロボットプラットフォーム(HighResBiosolutions)によって行った。細胞懸濁液を調製し、特定のセルタイプおよび予想される標的細胞密度(細胞増殖特性に基づいて25000~35000細胞/mL)にしたがって、希釈した。細胞は、オートピペッター(30μL)を用いて384ウェルマイクロタイタープレートに添加した。全ての試験製剤は、上記のように調製し、意図した試験濃度の4倍希釈液を、マイクロタイタープレートウェルに0.15μLアリコートで時間ゼロにおいて、添加した。添加は、エコー音響非接触リキッドハンドラーEcho550(Labcyte)を用いた。実験は、少なくとも、技術的反復を2度、生物学的反復を3度、行った。細胞を、試験化合物と共に37℃、5%CO2雰囲気下、湿度100%で72時間、インキュベートした。インキュベーション期間の終わりに、MTS試験を用いて細胞をアッセイした。MTSストック溶液のアリコート(5μL)を各ウェルにピペットで移し、さらに1~4時間インキュベートした。このインキュベーション期間の後、Envisionリーダー(Perkin Elmer)を用いて490nmで光学濃度(OD)を測定した。腫瘍細胞生存(TCS)は、次式を用いて計算した:
TCS=(OD(薬物暴露ウェル)/平均OD(コントロールウェル))×100%
IC50値、すなわち腫瘍細胞の50%が死亡する薬物濃度を、Dotmaticsソフトウェアを用いて適切な用量-反応曲線から算出した。
【0075】
<腫瘍スフェロイド完全性試験>
リキッドオーバーレイ法の改変版を用いて、CellCarrier透明底384WP中にスフェロイドを形成した。プレートコーティングのため、0.75%(w/v)低融点アガロース(Sigma-Aldrich)ストック溶液を、FBSを含まないフェノールレッドフリーMcCoy培地において調製した。次いで、アガロース溶液をオートクレーブして滅菌した。滅菌条件下でMultidrop Combi試薬ディスペンサー(Thermo Fisher Scientific Oy、ヴァンター、フィンランド)を用いて、濾過した0.75%アガロース15μLでプレートをコーティングした。コーティングしたプレートは、その日の内に使用するか、または4℃で2週間まで無菌で保管した。スタンダードチューブディスペンスカセット(Thermo Fisher Scientific Oy)を使用するMultidrop試薬ディスペンサーを用いて、細胞を増殖培地に1ウェルあたり2.5×104細胞/mLの密度で播種した。次いで、プレートを4gで10分間、遠心分離し、室温で1時間静置した。プレートを37℃で4日間静置した。培地を、EL406洗浄マニホールドによって3日毎に定期的に交換し、そして等量の培地をEL406のペリポンプディスペンサーによって添加した。スフェロイドは、倒立型蛍光顕微鏡Axio Observer.D1(Carl Zeiss Microscopy GmbH、イエナ、ドイツ)で定期的にモニタした。
【0076】
<ハイコンテントイメージングおよび画像解析>
6日目にHCT116、HeLa、DU145、およびDLD1スフェロイドを、賦形剤を伴ったジチオカルバメート銅化合物の錯体粒子によって、またはDMSO中のジエチルジチオカルバメート銅溶液によって、72時間処理し、全自動CellVoyagerハイコンテントイメージングシステム(モデルCV7000、横河電機株式会社、東京、日本)によって、4×空気対物レンズを使用して撮像した。スフェロイドの明視野z-スタック画像を10~20μmの間隔で撮影した。画像は、TIFFフォーマットで保存し、MatLab R2013b(MathWorks、Inc.、ネイティック、マサチューセッツ州)で開発した社内アルゴリズムを用いて、スフェロイド特性を分析した。簡単に述べると、最大の画像勾配のL1ノルムを有する最も鮮鋭な画像をz-スタック画像から選択した。その後の画像解析での干渉を防ぐため、視認できるウェルの境界を画像から切り取った。次に、スフェロイドを、所定の円状フィルタを用いて畳み込みを行うことによって局所化した。画像のセグメント化を行って、スフェロイド(より暗い)をより明るいバックグラウンドから正確に区別した。最適閾値によって識別して、スフェロイド特性(面積、短軸および長軸の長さなど)をピクセル単位で計算した。
【0077】
データは、GraphPad Prism(バージョン6、サンディエゴ、カリフォルニア州)を用いて分析した。
【0078】
<銅-ジチオカルバメート錯体(CuET)のHPLC/MS分析>
HR-MRM分析は、HPLC-ESI-QTOFシステムで行った。当該システムは、AB Sciex TripleTOF 5600+質量分析計を備えたHPLCクロマトグラフThermo UltiMate 3000からなり、DuoSpray ESI源を、イオン源電圧5500V、イオン源ガス流量40単位、カーテンガス流量30単位、デクラスタリング電位100V、および温度400℃で操作して使用した。データは、CuETの分析のため、2つの親質量(358.9および360.9)を有する生産イオンモードで取得した。クロマトグラフィー分離は、強力な金属キレート剤の分析用として特別に設計され、C18吸着剤で満たされたPTFEカラムによって行った。分析は、アイソクラティッククロマトグラフィーを用いて室温で流量1500μL/分で行った。移動相は、HPLCグレードのアセトン(Lachner)99.9%、HPLC水(Merck Millipore)0.1%および0.03%のHPLCギ酸(Sigma)からなる。取得したマススペクトルをソフトウェアPeakView1.2で評価した。ここでは、0.1質量許容誤差で、トランジションが88.0と116.0(両親質量共通)である抽出イオンクロマトグラムを2点の幅でガウス平滑化した。次いで、ピーク面積を記録し、検量線に従ってng/mlへ再計算した。
【0079】
<HPLC/MS分析のための試料の調製>
液体窒素凍結生物試料を、メスを用いて小片に切断した。試料(30~100mg)を、試料対アセトンの比率が1:10(血漿または血清については、比率は1:4であった)となるように100%アセトン中でホモジナイズすることによって直ちに処理した。ホモジナイズは、冷室(4℃)に設置された卓上ホモジナイザ(Retsch MM301)において、2mlのエッペンドルフチューブ中において、2個のガラスボール(5mm)と共に1分間、30Hzにて行った。そして直ちに、チューブを4℃、20.000Gで2分間、遠心分離した。上清を、新しい1,5mlエッペンドルフチューブにデカントし、直ちに-80℃フリーザ内に設置した小型卓上遠心分離機(BioSan FVL-2400N)を用いて30分間、遠心分離した。上清を、ガラスHPLCバイアルに迅速にデカントし、-80℃にて6時間以下で維持した。バイアルは、HPLC分析の直前に、予め冷却(4℃)したLCサンプルラックに入れ、直ちに分析した。分析したCuETを近似的に定量可能とするため、検量線を作成した。次いで、標準物質を上述の試料と同様に処理した。血漿試料は、同様の手順であるが組織のホモジナイズ工程を単に省略した手順で処理した。
【0080】
<マウスのインビボ実験>
急性毒性試験は、NMRIマウス動物モデルを用いて行った。実施例1によって調製され、各動物に与えられたジチオカルバメート銅化合物の錯体粒子の量は、腹腔内または静脈内で1、3、および5mg/kgであった。最大耐量は、実験動物の生存率に影響を及ぼさず実験動物に病的状態を誘発しない配合薬の濃度と定義した。
【0081】
血中薬物動態および組織分布の測定を、ジチオカルバメート銅分子集合体(1mg/kgのCuETに相当する濃度)を注射したマウスにおいて行った。動物は、指示時点(典型的には、注射後の0.5、1、3、6、9、12、24および36時間)で屠殺し、血液を収集して血清を分離し、また、特定の器官を取り出して急速凍結し、分析まで血清と共に-80℃で保存した。
【0082】
反復投与毒性試験は、NMRIマウス動物モデルを用いて行った。実施例1によって調製され、1、3または5mg/kgの用量で腹腔内投与されるジチオカルバメート銅化合物の錯体粒子の量を、1~5日目および8~12日目の各日に、各動物に投与した。
【0083】
動物実験は、そのすべての側面で、実験動物の管理および実験におけるその使用のための合格基準を満たしており、プロトコルは、オロモウツのパラツキー大学の動物実験委員会(Animal Research Committee)によって承認されている。
【0084】
使用化学物質:
メチルセルロース(Sigma-Aldrich)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Sigma-Aldrich)、Pluronic(登録商標)F-127(Sigma-Aldrich)、ポリビニルピロリドン(Kollidon(登録商標)-17(BASF)、PVP40(Sigma-Aldrich)、PVP360(Sigma-Aldrich))、ポリメタクリルアミド(例えば、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(HPMA))(Sigma-Aldrich)、クレモフォール(Sigma-Aldrich)、Soluplus(登録商標)(BASF)、Gelofusine(登録商標)4%(Braun)、ポリ-D-リジン(Sigma-Aldrich)、Ficoll 400(Sigma-Aldrich)、Kolliphor(登録商標)(BASF)、Captisol(登録商標)(Abmole)、Solutol(登録商標)HS 15(BASF)、ヒドロキシエチルデンプン(Voluven 10%、Fresenius Kabi)、ヒアルロン酸(Sigma-Aldrich)、コンドロイチン硫酸(Sigma-Aldrich)、デオキシリボ核酸(サケ精子DNA)(Sigma-Aldrich)、デオキシコール酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)。
【0085】
特に明記しない限り、パーセンテージはw/w%である。
【0086】
〔実施例1〕
2%ポリビニルピロリドン(PVP40、MW40kDa)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0087】
手順:
2%PVP40水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、2%PVP40に添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む2%PVP40溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0088】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-PVP40錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析し、直径で50±10nmの平均径が示された(
図1参照)。また、DLSスペクトル分析は、粒子のサイズが約20~100nmの範囲にわたり、40~50nmの最大画分を有する多分散系を粒子が形成することも示した(
図2参照)。また、粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。急性リンパ芽球性白血病(CCRF-CEM)、肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)を含む癌由来のヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(BJ、MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4参照)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5参照)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-PVP40錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5参照)。
【0089】
また、錯体粒子の分散液は、マウスの腹腔内の急性および反復投与毒性についてインビボでも試験を行い、CuET濃度>3mg/kgおよび1mg/kgにそれぞれ対応する用量でMTDを示した。
【0090】
また、錯体粒子の分散液は、乾燥およびそれに続く再溶解の可能性についても試験した。ナノ粒子を真空下で16時間凍結乾燥させた。乾燥した粉末を4℃で1週間保存し、次いで滅菌水に溶解させた。得られた再溶解粒子をDLSにより分析すると、物理的特性の変化は最小限であった。
【0091】
〔実施例2〕
5%ポリビニルピロリドン(PVP40、MW40kDa)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0092】
手順:
5%PVP40水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%PVP40に添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%PVP40溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0093】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-PVP40錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で50±10nmの平均径が示された(
図1参照)。5%PVP溶液を粒子の調製に用いた場合に、ジエチルジチオカルバメート-銅-PVP40錯体粒子のサイズ増加が観察された。このような観察結果は、例えば、元の賦形剤濃度が、得られる粒子のサイズに影響を及ぼし得ることを証明している。また、DLSスペクトル分析は、粒子のサイズが約20~100nmの範囲にわたり、40~50nmの最大画分を有する多分散系を粒子が形成することも示した(
図2参照)。また、粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。急性リンパ芽球性白血病(CCRF-CEM)、肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)を含む癌由来のヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(BJ、MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4参照)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5参照)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-PVP40錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5参照)。
【0094】
また、錯体粒子の分散液は、乾燥およびそれに続く再溶解の可能性についても試験した。ナノ粒子を真空下で16時間凍結乾燥させた。その乾燥した粉末を4℃で1週間保存し、次いで滅菌水に溶解させた。得られた再溶解粒子をDLSにより分析すると、物理的特性の変化は最小限であった。(
図1の表1、
図3)。
【0095】
〔実施例3〕
0.1%ヒアルロン酸(HA)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0096】
手順:
0,1%ヒアルロン酸(HA)水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、0,1%HAに添加して最終濃度0.56mMとし、続いて短時間撹拌する。0.56mMのDTCを含む0,1%HA溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度0.28mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0097】
結果:
得られた溶液は、0.28mM(0.1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-HA錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で1076±63nmの平均径が示された(
図1)。また、粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)を含む癌由来のヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4参照)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5参照)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-HA錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5参照)。
【0098】
〔実施例4〕
0,75%デオキシコール酸ナトリウム(DCH)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0099】
手順:
0.75%DCH水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、0.75%DCHに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む0.75%DCH溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0100】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-DCH錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で46.4±1,9nmの平均径が示された(
図1)。また、DLSスペクトル分析は、粒子のサイズが約20~100nmの範囲にわたり、40~50nmの最大画分を有する多分散系を粒子が形成することも示した(
図2)。また、粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。急性リンパ芽球性白血病(CCRF-CEM)、肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)を含む癌由来のヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(BJ、MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-DCH錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0101】
また、錯体粒子の分散液は、マウスの腹腔内の急性および反復投与毒性についてインビボでも試験を行い、CuET濃度>5mg/kgおよび1.5mg/kgにそれぞれ対応する用量でMTDを示した。
【0102】
また、錯体粒子の分散液は、乾燥およびそれに続く再溶解の可能性についても試験した。ナノ粒子を真空下で16時間凍結乾燥させた。乾燥した粉末を4℃で1週間保存し、次いで滅菌水に溶解させた。得られた再溶解粒子をDLSにより分析すると、物理的特性の変化は最小限であった。(
図1、
図3)。
【0103】
〔実施例5〕
5%Soluplus(登録商標)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0104】
手順:
5%Soluplus(登録商標)水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%Soluplus(登録商標)に添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%Soluplus(登録商標)溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0105】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-Soluplus(登録商標)錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で53,4±2,7nmの平均径が示された(
図1)。また、DLSスペクトル分析は、粒子のサイズが約20~100nmの範囲にわたり、40~50nmの最大画分を有する多分散系を粒子が形成することも示した(
図2参照)。また、粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。急性リンパ芽球性白血病(CCRF-CEM)、肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)を含む癌由来のヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(BJ、MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4参照)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-Soluplus(登録商標)錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0106】
また、錯体粒子の分散液は、乾燥およびそれに続く再溶解の可能性についても試験した。ナノ粒子を真空下で16時間凍結乾燥させた。乾燥した粉末を4℃で1週間保存し、次いで滅菌水に溶解させた。得られた再溶解粒子をDLSにより分析すると、物理的特性の変化は最小限であった。
【0107】
〔実施例6〕
0.2%メチルセルロース(MC)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0108】
手順:
0.2%MC水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、0.2%MCに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む0.2%MC溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0109】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-MC錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で233,6±98,13nmの平均径が示された(
図1)。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-MC錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0110】
〔実施例7〕
5%ポリビニルピロリドン(PVP360、MW360kDa)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0111】
手順:
5%PVP360水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%PVP360に添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%PVP360溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0112】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-PVP360錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で451,13±342,62nmの平均径が示された(
図1)。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-PVP360錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0113】
〔実施例8〕
5%ヒドロキシエチルデンプン(HES)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0114】
手順:
市販されている10%HES溶液(Voluven(登録商標))をH2Oで2倍に希釈し5%HESを得て、これを使用する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%HESに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%HES溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0115】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-HES錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で57,25±20,93nmの平均径が示された(
図1)。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-HES錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0116】
〔実施例9〕
4%スクシニル化ゼラチン(SG)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0117】
手順:
市販されている4%SG(Gelofusine(登録商標))溶液を用いる。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%HESに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%SG溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0118】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-SG錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で28,1±10,2nmの平均径が示された(
図1)。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-SG錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0119】
〔実施例10〕
2%コンドロイチン硫酸(CHS)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0120】
手順:
2%CHS水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、2%CHSに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む2%CHS溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0121】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-CHS錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で298.17±32.07nmの平均径が示された(
図1)。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4参照)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-CHS錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0122】
〔実施例11〕
5%Pluronic(登録商標)F-127(PL)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0123】
手順:
5%PL水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%PLに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%PL溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0124】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-PL錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で74,54±9,5nmの平均径が示された(
図1)。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-PL錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0125】
また、錯体粒子の分散液は、マウスの腹腔内の急性および反復投与毒性についてインビボでも試験を行い、CuET濃度>5および>5mg/kgにそれぞれ対応する用量でMTDを示した。循環CuET濃度を測定するために、マウスにジエチルジチオカルバメート-銅-PL錯体粒子(1mg/kgのCuETに相当する)を単回腹腔内または静脈内投与し、0.5、1、3、6、9、12、24、36時間の時点で屠殺した。分析のため血清を回収し凍結した。血清中のCuETの最大測定濃度は、腹腔内投与後1時間で15,92nmol/l、静脈内投与後0.5時間で110.91nmol/lであった。脳組織についても、分析のため回収し凍結した。脳組織中のCuETの最大測定濃度は、腹腔内投与後1時間で2.21nmol/l、静脈内投与後0.5時間で23,39nmol/lであった。
【0126】
〔実施例12〕
5%クレモフォール(CR)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0127】
手順:
5%CR水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%CRに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%CR溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0128】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-CR錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で262,4±4,87nmの平均径が示された(
図1)。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4参照)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-CR錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0129】
〔実施例13〕
5%Solutol(登録商標)HS 15(SO)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0130】
手順:
5%SO水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%SOに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%SO溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0131】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-SO錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で45,08±23,32nmの平均径が示された(
図1)。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-SO錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0132】
〔実施例14〕
0.2%サケ精子DNA(DNA)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0133】
手順:
0.2%DNA水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、0.2%DNAに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む0.2%DNA溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0134】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-DNA錯体粒子を含む。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-DNA錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0135】
〔実施例15〕
5%Kollidon(登録商標)17(K17)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0136】
手順:
5%K17水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%K17に添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%K17溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0137】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-K17錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で56,6±12,16nmの平均径が示された(
図1)。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-K17錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0138】
また、錯体粒子の分散液は、マウスの腹腔内の急性および反復投与毒性についてインビボでも試験を行い、CuET濃度>5および>5mg/kgにそれぞれ対応する用量でMTDを示した。循環CuET濃度を測定するために、マウスにジエチルジチオカルバメート-銅-K17錯体粒子(1mg/kgのCuETに相当する)を単回腹腔内または静脈内投与し、0.5、1、3、6、9、12、24、36時間の時点で屠殺した。分析のため血清を回収し凍結した。血清中のCuETの最大測定濃度は、腹腔内投与後0.5時間で38,23nmol/l、静脈内投与後0.5時間で23,93nmol/lであった。脳組織についても、分析のため回収し凍結した。脳組織中のCuETの最大測定濃度は、腹腔内投与後1時間で16,38nmol/l、静脈内投与後0.5時間で14,99nmol/lであった。
【0139】
〔実施例16〕
5%Ficol 400(F400)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0140】
手順:
5%F400水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%F400に添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%F400溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0141】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-F400錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で11,46±3,68nmの平均径が示された(
図1)。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4参照)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-F400錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0142】
〔実施例17〕
5%Kolliphor EL(KEL)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0143】
手順:
5%KEL水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%KELに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%KEL溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0144】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-KEL錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で158,67±24,31nmの平均径が示された(
図1)。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-KEL錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0145】
〔実施例18〕
5%Captisol(登録商標)(Cap)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0146】
手順:
5%Cap水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%Capに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%Cap溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0147】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-Cap錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で155,93±13,93nmの平均径が示された(
図1)。粒子の分散液は、標準的な培養条件においてインビトロで培養した細胞に対する細胞毒性試験を含む生物学的実験において試験した。肺癌(A549)、結腸腺癌(HCT116)およびそのp53遺伝子ノックダウン対応物(HCT116p53-/-)としてヒト細胞株で構成されるパネルは、予後不良に頻繁に関与するp53変異をもつヒト癌のモデルである。CCRF-CEM細胞のダウノルビシン耐性亜株(CEM-DNRバルク)およびパクリタキセル耐性亜株K562-TAXは、それぞれダウノルビシンまたはパクリタキセルの濃度を増加させて行った母系細胞株の培養により当研究所において選定した(Noskovaら、2002)。骨肉腫(U2OS)、慢性骨髄性白血病(K562)、および、正常ヒト線維芽細胞(MRC5)を含む初代培養(正常)細胞。粒子の毒性を、MTSに基づく細胞生存率アッセイにおいて試験した(
図4)。粒子の分散液は、腫瘍微小環境および生理機能を模倣する癌細胞スフェロイドに対する細胞毒性試験を含む生物学的実験においても試験した。試験した腫瘍スフェロイドモデルには、HCT116(結腸腺癌)、DLD1(結腸腺癌)、DU145(転移性前立腺癌)およびHeLa(子宮頸部腺癌)細胞株が含まれた(
図5)。重要なことに、ジエチルジチオカルバメート-銅-Cap錯体粒子は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した純粋なジエチルジチオカルバメート-銅粉末よりもはるかに優れた効力を示すことが多い(
図5)。
【0148】
また、錯体粒子の分散液は、マウスの腹腔内の急性および反復投与毒性についてインビボでも試験を行い、CuET濃度>5mg/kgおよび>5mg/kgにそれぞれ対応する用量でMTDを示した。
【0149】
〔実施例19〕
5%ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(HPMA)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0150】
手順:
5%HPMA水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、5%HPMAに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む5%HPMA溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0151】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-HPMA錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で69,54±11,99nmの平均径が示された(
図1)。
【0152】
〔実施例20〕
1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびジエチルジチオカルバメートおよび塩化銅塩からの錯体粒子の分散液の調製。
【0153】
手順:
1%HPMC水溶液を調製する。ジエチルジチオカルバメートナトリウム塩(DTC)を水に溶解させて濃度280mMとし、1%HPMCに添加して最終濃度5.6mMとし、続いて短時間撹拌する。5.6mMのDTCを含む1%HPMA溶液に、滅菌塩化銅(ii)(水中で濃度1M)を添加して最終濃度2.8mMとし、続いて短時間撹拌する。
【0154】
結果:
得られた溶液は、2.8mM(1mg/ml)のジエチルジチオカルバメート-銅-HPMC錯体粒子を含む。この独特な反応から得られた錯体粒子をDLSによりさらに分析した結果、直径で330±23,16nmの平均径が示された(
図1)。
【0155】
また、錯体粒子の分散液は、マウスの腹腔内および静脈内の急性投与毒性についてインビボでも試験を行い、CuET濃度3mg/kgおよび>5mg/kgにそれぞれ対応する用量でMTDを示した。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジチオカルバメート-金属化合物と、ポリマーおよび洗浄剤から選択される少なくとも1つの配位子と、からなるか、またはこれらを含む分子錯体集合体粒
子。
【請求項2】
前記粒子は、有機溶媒を実質的に含まない、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記金属は、銅、亜鉛、銀および金から選択され
る、請求項1
または2に記載の粒
子。
【請求項4】
前記金属は、銅である、請求項3に記載の粒子。
【請求項5】
前記金属は、
63Cu、
65Cu、
64Cuおよびこれらの混合物から選択される、請求項1
または2に記載の粒
子。
【請求項6】
前記ジチオカルバメートは、式(R1)(R2)N-CH
2S
2
-を有し、
式中、R1およびR2は、同一または異なり、独立して、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C3~C10シクロアルキル、C6~C14アリール、O、S、Nから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC4~C14ヘテロアリール、O、S、Nから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC3~C10ヘテロシクリルから選択されるか;または、R1およびR2は、それらが結合している窒素原子と共に複素環を形成し、-R1-R2-は、C2~C6アルキレンまたはC2~C6アルケニレンであり
、
R1およびR2を形成する部分は、置換されていなくてもよく、または、C1~C4アルキル、ヒドロキシ、メルカプト、C1~C4アルコキシ、C1~C4アルキルチオ、ハロゲン、フェニル、ベンジル、ケト基、カルボキシル基、C1~C4アルキルオキシカルボニルから選択される少なくとも1つの置換基によってさらに置換されていてもよい、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の粒
子。
【請求項7】
前記ジチオカルバメートは、式(R1)(R2)N-CH
2
S
2
-
を有し、
式中、R1およびR2は、同一または異なり、独立して、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C3~C10シクロアルキル、C6~C14アリール、O、S、Nから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC4~C14ヘテロアリール、O、S、Nから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC3~C10ヘテロシクリルから選択されるか;または、R1およびR2は、それらが結合している窒素原子と共に複素環を形成し、-R1-R2-は、C2~C6アルキレンまたはC2~C6アルケニレンであり、1~2個の炭素原子は、O、S、NHから選択されるヘテロ原子によって置換されている、
請求項6に記載の粒子。
【請求項8】
R1およびR2は、独立して、C1~C6(またはC1~C4)アルキル、C2~C6(またはC1~C4)アルケニル、C3~C6シクロアルキル、フェニルから選択されるか;または、R1およびR2は、それらが結合している窒素原子と共に複素環を形成し、-R1-R2-は、C2~C6アルキレンまたはC2~C6アルケニレンである、請求項
6または7に記載の粒
子。
【請求項9】
前記配位子は、多糖類、ポリオキシアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシ酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリエチレングリコールエーテル、ポリ-D-アミノ酸、ステアリン酸系ポリマー、ゼラチン系ポリマー、核酸、混合コポリマーから選択される水溶性ポリマーであるか;または、
前記配位子は、コール酸塩またはコール酸塩誘導体である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の粒
子。
【請求項10】
前記配位子は、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、スルホブチルエーテル-ベータシクロデキストリン、ウルソデオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムから選択される、請求項1~
9のいずれか1項に記載の粒
子。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の分子錯体集合体粒
子の調製方法であって、
前記分子錯体集合
体粒子は、少なくとも1つの配位子をジチオカルバメートまたは金属塩から選択される第1成分と水性溶媒中で混合し、同時にまたは続けて、ジチオカルバメートまたは金属塩から選択される第2成分を添加することによって、調製され、
前記第1成分がジチオカルバメートである場合は、前記第2成分は金属塩であるのに対して、前記第1成分が金属塩である場合は、前記第2成分はジチオカルバメートである、
方法。
【請求項12】
(a)少なくとも1つの配位子を0.001%(w/w)~飽和溶液の範囲の濃度で水性溶媒に溶解する工程と、
(b)水性溶媒に溶解した少なくとも1つのジチオカルバメートを、1μM~100m
Mの範囲で添加する工程と、
(c)1μM~100
Mの範囲の金属塩濃度を有するように、水性溶媒中の金属塩溶液を添加する工程と、
を含み、
ここで、上記工程は、工程(a)、(b)、(c)の順番で行われるか、もしくは工程(a)、(c)、(b)の順番で行われるか、または、工程(b)および(c)が同時に行わ
れる、
請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
(a)少なくとも1つの配位子を0.001%(w/w)~飽和溶液の範囲の濃度で水性溶媒に溶解する工程と、
(b)水性溶媒に溶解した少なくとも1つのジチオカルバメートを、1~10mMの範囲で添加する工程と、
(c)1μM~100Mの範囲の金属塩濃度を有するように、水性溶媒中の金属塩溶液を添加する工程と、
を含み、
ここで、上記工程は、工程(a)、(b)、(c)の順番で行われるか、もしくは工程(a)、(c)、(b)の順番で行われるか、または、工程(b)および(c)が同時に行われる、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)少なくとも1つの配位子を0.001%(w/w)~飽和溶液の範囲の濃度で水性溶媒に溶解する工程と、
(b)水性溶媒に溶解した少なくとも1つのジチオカルバメートを、1μM~100mMの範囲で添加する工程と、
(c)1~10mMの範囲の金属塩濃度を有するように、水性溶媒中の金属塩溶液を添加する工程と、
を含み、
ここで、上記工程は、工程(a)、(b)、(c)の順番で行われるか、もしくは工程(a)、(c)、(b)の順番で行われるか、または、工程(b)および(c)が同時に行われる、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
(a)少なくとも1つの配位子を0.001%(w/w)~飽和溶液の範囲の濃度で水性溶媒に溶解する工程と、
(b)水性溶媒に溶解した少なくとも1つのジチオカルバメートを、1μM~100mMの範囲で添加する工程と、
(c)1μM~100Mの範囲の金属塩濃度を有するように、水性溶媒中の金属塩溶液を添加する工程と、
を含み、
ここで、上記工程は、工程(a)、(b)、(c)の順番で行われるか、もしくは工程(a)、(c)、(b)の順番で行われるか、または、工程(b)および(c)が同時に行われ;
(d)得られた溶液を凍結乾燥または乾燥する工程を含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項16】
金属イオン:ジチオカルバメートイオンのモル比は、1:5~5:1である、請求項
11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記水性溶媒は、水、または
、水系バッファであ
る、請求項
11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記水系バッファは、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、Tris、HEPES、生理食塩水、またはグルコース溶液である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記水性溶媒は、無菌である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
治療薬および/または診断薬としての使用するための、請求項1~
10のいずれか1項に記載の分子錯体集合体粒
子。
【請求項21】
癌の化学療法、遺伝子療法、および/もしくは免疫療法、癌の放射線療法もしくは温熱療法、交流電場腫瘍治療から選択される治療方法において、ならびに/または腫瘍の画像化方法において、使用するための、請求項1~
10のいずれか1項に記載の分子錯体集合体粒
子。
【請求項22】
前記錯体粒
子は、経口、局所または非経口で投与され
る、請求項
20または21に記載の使用のための分子錯体集合体粒
子。
【請求項23】
前記錯体粒子は、濾過滅菌されている、請求項22に記載の使用のための分子錯体集合体粒子。
【請求項24】
前記粒
子は、
乾燥形
態にあり、
単糖類、二糖類、アミノ酸、多糖類、ポリマー、および凍結保護性を有する他の物質、ならびにそれらの誘導体から選択される少なくとも1つの凍結保護
剤をさらに含む、
請求項1~
10のいずれか1項に記載の粒
子、または請求項
20~23のいずれか1項に記載の使用のための粒
子。
【請求項25】
前記粒子は、凍結乾燥形態にある、請求項24に記載の粒子。
【請求項26】
前記粒子は、マンニトール、トレハロース、サッカロース、アルブミン、ラクトース、デキストロース、スクロース、グルコース、マルトース、イノシトール、ラフィノース、イヌリン、マルトデキストリン、ヘパリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、グリセロール、ソルビトール、メルカプタン、ポリエチレングリコール、アドニトール、アミノ酸、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ドデシル硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ポリビニルピロリドン、デキストランから選択される少なくとも1つの凍結保護剤を含む、
請求項24に記載の粒子。
【国際調査報告】