(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】分散型測定システムによる物理量の推定
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20220112BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J3/00 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543583
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(85)【翻訳文提出日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 FR2019052317
(87)【国際公開番号】W WO2020070434
(87)【国際公開日】2020-04-09
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521141925
【氏名又は名称】ボルタリス
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オートード,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ビノー,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】オーリー,ジャン-マルク
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AB05
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA07
5G066AA02
5G066AE01
5G066AE05
5G066AE09
(57)【要約】
本発明は、中央プラットフォームと、それぞれが通信ネットワークを介して当該プラットフォームと通信する分散された測定デバイスの集合とを包含する分散型システムによる、集合の各デバイスによる物理量を表すローカル・データの測定(100)と、あらかじめ決定済みのサンプリング期間にわたる、前記集合のデバイスの部分集合から生じる測定標本の前記通信ネットワークを介した中央プラットフォームによる収集(120)と、収集した標本に基づく当該サンプリング期間にわたる物理量の推定(130)と、に基づく時間的に変動する物理量の推定に関する。本発明によれば、前記集合の各デバイスが、各サンプリング期間内において、ランダムに、かつ各デバイスと関連付けされた送信確率に基づいて、対応する測定デバイスが前記部分集合の一部となるか否かを判定するローカル・アルゴリズムを実行する(110)。物理量は、収集される測定標本と、部分集合に属する各デバイスのためのあらかじめ定義済みの送信確率に基づいて推定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央プラットフォーム(1)、およびそれぞれが通信ネットワーク(3)を介して前記中央プラットフォーム(1)とリモート通信する能力を有する複数の分散された測定デバイス(2
i)からなる集合を包含する分散型測定システムを用いて時間的に変動する物理量を推定するための方法であって、前記集合の各測定デバイス(2
i)を用いて、前記物理量を表すローカル・データを測定するステップ(100)と、あらかじめ決定済みのサンプリング期間Tにわたって前記集合の部分集合から生じた測定標本を収集するステップ(120)であって、前記部分集合に属する各測定デバイスが前記中央プラットフォーム(1)へ、前記ローカル・データの測定標本P
iを、前記通信ネットワーク(3)を介して送信する、収集するステップ(120)と、前記収集した測定標本P
iの集計に基づいて前記サンプリング期間にわたる前記物理量を推定するステップ(130)と、を包含し、それにおいて前記方法が、各サンプリング期間T内に、前記集合の各測定デバイス(2
i)において、ランダムに、かつ各測定デバイス(2
i)と関連付けされた送信確率π
iに基づいて、前記対応する測定デバイスが前記部分集合の一部となるか否かを判定する能力を有するローカル判定アルゴリズム(22
i)を実行する段階(110)を包含することと、各サンプリング期間T内において前記物理量が、前記収集した測定標本P
iおよび前記部分集合に属する各測定デバイスと関連付けされた前記送信確率π
iに基づき、かつ、
N′を前記部分集合の測定デバイスの数とする式:
【数5】
の関係に従った計算によって推定されることと、を特徴とする方法。
【請求項2】
前記集合の少なくとも1つの測定デバイス(2
i)と関連付けされた前記送信確率π
iが、取り込まれた前記測定標本P
iの値、および/または前記測定が行われる条件、および/または前記測定の時に応じて変化できる値を有することと、前記少なくとも1つの測定デバイス(2
i)が前記部分集合の一部である場合に、前記収集するステップ(120)において、前記少なくとも1つの測定デバイスが前記送信確率を前記中央プラットフォーム(1)へ、前記通信ネットワーク(3)を介して前記ローカル・データの前記測定標本P
iと同時に送信することと、を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送信確率π
iが、前記中央プラットフォーム(1)へ、前記収集するステップ(120)において、前記部分集合に属する各測定デバイス(2
i)によって、前記通信ネットワーク(3)を介して前記ローカル・データの前記測定標本P
iと同時に送信されること、を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、前記集合の少なくとも1つの測定デバイス(2
i)と関連付けされた前記ローカル判定アルゴリズムおよび/または前記送信確率π
iを更新するステップを包含すること、を特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプリング期間Tが10分以下であること、を特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプリング期間Tが、数秒台または約10秒であること、を特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
時間的に変動する物理量を推定するための分散型測定システムであって、前記システムが、中央プラットフォーム(1)、およびそれぞれが通信ネットワーク(3)を介して前記中央プラットフォーム(1)とリモート通信する能力を有する複数の分散された測定デバイス(2
i)からなる集合を包含し、前記システムが、測定ステップ(100)において、前記集合の各測定デバイス(2
i)が、前記物理量を表すローカル・データを測定し、収集ステップ(120)において、あらかじめ決定済みのサンプリング期間Tにわたって前記集合の部分集合に属する各測定デバイスが、前記中央プラットフォーム(1)へ、前記ローカル・データの測定標本P
iを、前記通信ネットワーク(3)を介して送信し、かつ、推定ステップ(130)において、前記中央プラットフォーム(1)が、前記収集した測定標本の集計に基づいて前記サンプリング期間にわたる前記物理量を推定するように構成され、それにおいて、前記集合の各測定デバイス(2
i)が、各サンプリング期間内に、ランダムに、かつ各測定デバイス(2
i)と関連付けされた送信確率π
iに基づいて、前記対応する測定デバイスが前記部分集合の一部となるか否かを判定する能力を有するローカル判定アルゴリズムを実行するべく構成されたソフトウエア・モジュール(22
i)を包含することと、前記中央プラットフォーム(1)が、各サンプリング期間T内において前記物理量を、前記収集した測定標本P
iおよび前記部分集合に属する各測定デバイスと関連付けされた前記送信確率π
iに基づき、かつ、
N′を前記部分集合の測定デバイスの数とする式:
【数6】
の関係に従った計算によって推定するべく構成されていることと、を特徴とする分散型測定システム。
【請求項8】
前記ローカル・データは、配電網に接続された1つ以上の家庭用電気機器を包含するローカル負荷によって引き込まれる電力であり、前記物理量は、消費される総電力である、請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、中央プラットフォームおよび複数の分散された測定デバイスからなる集合を包含する分散型測定システムによる時間的に変動する物理量の推定に関し、前記分散された測定デバイスは、それぞれが前記物理量を表すローカル・データを測定し、かつ通信ネットワークを介して前記中央プラットフォームとリモート通信する能力を有する。
【背景技術】
【0002】
本発明が特に目標とする応用の1つの分野は、排他的な意味ではないが、電気機器、たとえば、特に多くの消費者のいる家庭内に据えられ、かつ配電網に接続された家庭用電気機器の電力消費量の管理および/または監視の分野である。
【0003】
その種のシステムにおいては、監視される少なくとも1つの電気機器の電力消費量を好ましくは連続的に測定する能力を有するように、その電気機器とローカルに接続される少なくとも1つの電子測定デバイスが、複数の現場(世帯、商業施設、コミュニティ等)に取り付けられることが従来的に行われている。その場合においては、1つ以上のサーバの形式の専用の中央プラットフォームが、システムの各ローカル測定デバイスによって伝えられる電力消費量測定標本を、好ましくはリアルタイムで獲得する。中央プラットフォームは、したがって、基本負荷曲線、すなわち、監視されている負荷または電気機器のそれぞれにおける相対的な消費量の時間的変動を決定し、かつそれらの基本負荷曲線を集計することによって、それらから全体的な負荷曲線を演繹する能力を有する。
【0004】
電力消費量だけを監視する専用のシステムについては、多様な現場にわたって分散される測定デバイスを、通常、1つ以上の電気機器によって消費される電力を測定する能力を有する『スマート』電力量計として電力消費量測定標本が周期的に引き渡されるようにすることができる。
【0005】
また、出願人は、多数のユーザの家庭内に据えられている非常に多数の電気機器(温水器、電気ヒータ、エアコンディショナ等)からなる集合による消費量を調整するための分散型システムも提案しており、それにおいては、分散された測定デバイスによって獲得された多様な負荷曲線が、特に、分散型負荷制限サービスを提供することを可能にし、それによって、システム、特に中央プラットフォームが、それらの電気機器とローカルに接続されているすべての測定デバイスの集合から、その集合の電力消費量が所定のセットポイント値まで低減されるように一時的に動作を停止させるための命令を送信することになる測定デバイスの部分集合を、リアルタイムで選択することが可能になる。このタイプのシステムは、たとえば、特許文献1または特許文献2に見られる。このシステムは、多数のユーザの消費量を分析することによって、特定の電気機器に対する電力の供給を選択的に、停止および再開の命令を介して調整する能力も有しているが、その一方、所定時において利用可能な発電に対して電力消費量を適応させることを可能にする。
【0006】
その測定システムが、非常に多数の分散された測定デバイスを包含する集合を伴って大規模に分散されたときには、多様な測定デバイスによって取り込まれる測定標本から集計される物理量の知識に、それらの測定デバイスによる非常に多数の、通常は何十万もの(または、それさえも超える)測定の送信が必要になる。これにより、データの送信にどのような通信ネットワークが使用されたとしても、相当な量のネットワークの帯域幅が食われる。それに加えて、セルラ・ネットワーク等といったいくつかのタイプの通信ネットワークについては、この送信のために必要とされるデータ量が、有意のコストを必然的に伴う可能性がある。この問題は、したがって、これらのシステムの範囲、すなわち、分散される測定デバイスの数の増加に関する限界を構成する。
【0007】
上記の問題は、上で引用した特許文献1および特許文献2に述べられているような、多数の消費量測定のリアルタイム送信に基づいて正確な集計負荷曲線をリアルタイムで知ることが重要となる大規模な分散型電力消費量測定システムにおいて増加する。
【0008】
その種のシステムにおいては、中央プラットフォームが、概して、約10分台のサンプリング期間を用いて電力消費量測定標本を獲得する。より精密な集計負荷曲線は、サンプリング期間を短縮することによって、たとえば、通常、約10秒台、または数秒にさえ至る大幅に短縮したサンプリング期間を使用することによって獲得可能である。この場合においては、中央プラットフォームにより、収集だけでなく、集計もサンプリング期間にわたってなされなければならない測定の数が大きくなりすぎる。
【0009】
集合内の測定デバイスの数および/または測定のサンプリング頻度に直接依存する、多数の収集される測定に起因する問題を解決するために、サンプリング部分集合と呼ばれる部分集合内において収集される限られた数の測定を使用し、その後、この部分集合から収集された測定からの補外によって物理量を、たとえば全体的な負荷曲線を推定することは周知の実践である。推定の精度は、サンプリング部分集合がどのように構成されたかに大きく依存する。
【0010】
しかしながら、これまでのところ、周知の解決策は、代表的な標本の形成、すなわち、この場合であればサンプリングされる測定デバイスの部分集合の選択が、慣習的に、サンプラのイニシアチブにおいて、完全にランダムに、階層化によって、クラスタ・サンプリングによって、または割り当てサンプリングによって、一度だけ実施される従来的なサンプリング・テクニックに基づいている。
【0011】
したがって、これらのタイプのサンプリングは、システム内の集合を構成する測定機器の一部だけをあらかじめ選択することを提供し、代表していると見做される標本の帰属は、過去の振る舞い(過去の時間、過去の日等にわたる消費量)または特定の構成(測定デバイス、加入者価格、場所等)の観察に起因する。
【0012】
この代表的部分集合または標本は、形成のためにどのような方法が使用されたとしても静的であるか、またはほぼ静的であり、すなわち、その構成は、測定が取り込まれる頻度に関して少しも変化しない。
【0013】
しかしながら、観察期間にわたる代表的部分集合の選択における明らかな困難を超えるよりほかは、過去において観察されたこの代表性が将来の測定を適切に予測することは保証されない。
【0014】
経験から、将来の観察にわたる代表となるべき部分集合について、サンプリングされる部分集合が非常に大きなサイズでなければならないことが明らかであり、そのことは、サンプリングの利点を相当に制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2008/017754号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2012/172242号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前述の従来的なサンプリング・テクニックを使用するシステムの欠点を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そのため、本発明の1つの要旨は、中央プラットフォーム、およびそれぞれが通信ネットワークを介して前記中央プラットフォームとリモート通信する能力を有する複数の分散された測定デバイスからなる集合を包含する分散型測定システムを用いて時間的に変動する物理量を推定するための方法であって、前記集合の各測定デバイスを用いて、前記物理量を表すローカル・データを測定するステップと、あらかじめ決定済みのサンプリング期間Tにわたって前記集合の部分集合から生じた測定標本を収集するステップであって、前記部分集合に属する各測定デバイスが前記中央プラットフォームへ、前記ローカル・データの測定標本P
iを、前記通信ネットワークを介して送信する、収集するステップと、前記収集した測定標本P
iの集計に基づいて前記サンプリング期間にわたる前記物理量を推定するステップと、を包含し、それにおいて前記方法が、各サンプリング期間T内に、前記集合の各測定デバイスにおいて、ランダムに、かつ各測定デバイスと関連付けされた送信確率π
iに基づいて、前記対応する測定デバイスが前記部分集合の一部となるか否かを判定する能力を有するローカル判定アルゴリズムを実行する段階を包含することと、各サンプリング期間T内において前記物理量が、前記収集した測定標本P
iおよび前記部分集合に属する各測定デバイスと関連付けされた前記送信確率π
iに基づき、かつ、
N′を前記部分集合の測定デバイスの数とする式:
【数1】
の関係に従った計算によって推定されることと、を特徴とする方法である。
【0018】
したがって、本発明は、各サンプリング期間内において、サンプリングに関与することになる測定デバイスの部分集合を動的かつランダムに作り出すことを可能にし、かつ、集計により、物理量の精密かつ迅速な推定を可能にする。それに加えて、部分集合の作成が測定デバイスだけによって実施され、それにおいては、それぞれがランダムに、各サンプリング期間内におけるサンプリングに関与するか否かを判定する。
【0019】
本発明に従った方法の1つの可能性のある実装によれば、前記集合の少なくとも1つの測定デバイスと関連付けされた前記送信確率πiが、取り込まれた前記測定標本Piの値、および/または前記測定が行われる条件、および/または前記測定の時に応じて変化できる値を有し、この場合において、前記少なくとも1つの測定デバイスが前記部分集合の一部である場合に、前記収集するステップにおいて、前記少なくとも1つの測定デバイスが、前記送信確率を前記中央プラットフォームへ、前記通信ネットワークを介して前記ローカル・データの前記測定標本Piと同時に送信する。
【0020】
本発明に従った方法の別の可能性のある実装によれば、前記送信確率πiが、前記中央プラットフォームへ、前記収集するステップにおいて、前記部分集合に属する各測定デバイスによって、前記通信ネットワークを介して前記ローカル・データの前記測定標本Piと同時に送信される。
【0021】
1つの可能性のある実装においては、さらにこの方法が、前記集合の少なくとも1つの測定デバイスと関連付けされた前記ローカル判定アルゴリズムおよび/または前記送信確率πiを更新するステップを包含し得る。
【0022】
いくつかの場合においては、前記サンプリング期間Tは10分以下であってもよい。
【0023】
前記サンプリング期間Tは、特に、都合よく、実質的に数秒台または約10秒であり得て、リアルタイムでサンプリング期間にわたる物理量を推定しなければならないシステムにとっては、特にこれが有用となる。
【0024】
本発明のもう1つの要旨は、時間的に変動する物理量を推定するための分散型測定システムであって、前記システムが、中央プラットフォーム、およびそれぞれが通信ネットワークを介して前記中央プラットフォームとリモート通信する能力を有する複数の分散された測定デバイスからなる集合を包含し、前記システムが、測定ステップにおいて、前記集合の各測定デバイスが、前記物理量を表すローカル・データを測定し、収集ステップにおいて、あらかじめ決定済みのサンプリング期間Tにわたって前記集合の部分集合に属する各測定デバイスが、前記中央プラットフォームへ、前記ローカル・データの測定標本P
iを、前記通信ネットワークを介して送信し、かつ、推定ステップにおいて、前記中央プラットフォームが、前記収集した測定標本の集計に基づいて前記サンプリング期間にわたる前記物理量を推定するように構成され、それにおいて、前記集合の各測定デバイスが、各サンプリング期間内に、ランダムに、かつ各測定デバイスと関連付けされた送信確率π
iに基づいて、前記対応する測定デバイスが前記部分集合の一部となるか否かを判定する能力を有するローカル判定アルゴリズムを実行するべく構成されたソフトウエア・モジュールを包含することと、前記中央プラットフォームが、各サンプリング期間T内において前記物理量を、前記収集した測定標本P
iおよび前記部分集合に属する各測定デバイスと関連付けされた前記送信確率π
iに基づき、かつ、
N′を前記部分集合の測定デバイスの数とする式:
【数2】
の関係に従った計算によって推定するべく構成されていることと、を特徴とする分散型測定システムである。
【0025】
前記ローカル・データは、たとえば、配電網に接続された1つ以上の家庭用電気機器を包含するローカル負荷によって引き込まれる電力であり、その場合には、前記物理量が、消費される総電力になる。
【0026】
本発明は、添付図面の参照とともに与えられる以下の説明を読むことからより良好に理解されることになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明を実装する能力を有する分散型測定システムのアーキテクチャの1つの例を与える説明図である。
【
図2】本発明に従った物理量を推定するための方法に実装され得るステップを、たとえば、
図1のシステムを用いて説明したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この開示の残りの部分においては、本発明を、複数の電気機器の電力消費量の時間的進展に対応する基本負荷曲線の集計を包含する全体的な負荷曲線を決定するという面において説明する。したがって、この場合は、推定されるべき物理量が、複数の電気機器によって消費される総電力になる。それにもかかわらず、本発明の原理は、上に示されているとおり、このほかの物理量、たとえば、このほかのタイプの消費されるエネルギに適用することが可能である。
【0029】
図1は、電気機器(図示せず)、たとえば、配電網(図示せず)に接続され、かつN個の現場に配置される家庭用電気機器によって消費される電力の推定を可能にする分散型測定システム1のアーキテクチャを図解している。このシステムは、1つ以上のインターネット・サーバによってホストされる中央プラットフォーム1と、ここではN個の現場にわたって分散されたN個の測定デバイス2
1、・・・、2
i、・・・、2
Nからなる集合とを包含する。残りの説明全体を通じて、添え字iは、iを1から多くともNまで変化する整数とし、現場iに配置された測定デバイス2
iに対する任意の参照に使用される。
【0030】
各測定デバイス2iは、通信ネットワーク3を介して中央プラットフォーム1とリモート通信する能力を有する。そのために、各測定デバイス2iは、中央プラットフォーム1における対応する通信モデム10との、GPRS、3G、または4Gといったパケット・テレフォニ・タイプの接続の確立を可能にする、たとえば無線通信モデム20iを包含する。それに代わるものとして、イーサネット・タイプのリンクを介して接続を行うことができる。
【0031】
また、各測定デバイス2iは、それが接続されている電気機器によってローカルに消費される電力を、電圧および電流を測定するためのモジュール22iを介して測定する能力も有する。測定デバイス2iは、たとえば、各現場iに取り付けられているスマート電力量計である。このシステムが、分散型負荷制限サービスを提供することによって電力を調整できる別の可能性のあるアーキテクチャにおいては、各測定デバイス2iが、参照によって援用される、上で引用した出願WO2008/017754およびWO2012/172242の中に記述されているドライバ・ユニットおよびモジュレータ・ボックス等の1つ以上のユニットからなる。メータとは異なり、これらのデバイスは、それが接続されている1つ以上の電気機器の動作を停止/再開する命令を実行する能力も有し、それらの命令は、限定的な負荷制限の管理のために中央プラットフォームから受信される。
【0032】
いずれの場合に該当するとしても、大きなデータ送信を回避するために、システムは、代表と見做される測定デバイスの部分集合またはサンプリング部分集合によって取り込まれた測定標本に基づいて総電力消費量を推定するべく構成される。具体的に述べれば、システムは、次に示すステップを実装するべく構成される:
- N個のデバイスの集合のうちの各測定デバイス2iが、ローカルに消費される電力Piを測定する測定ステップと;
- 測定デバイス2iのうちのNより小さい数の、サンプリング部分集合に対応するN′個だけが、ローカルに消費される電力Piの測定標本を、通信ネットワーク3を介して、あらかじめ決定済みのサンプリング期間Tにわたって中央プラットフォーム1へ送信する収集ステップと;
- 中央プラットフォーム1が、サンプリング期間Tにわたる総電力消費量を、収集された測定標本の集計に基づいて推定する推定ステップ。
【0033】
固定された代表の部分集合を用いる従来的なサンプリング・テクニックを使用するシステムとは異なり、本発明に従ったシステムは、各サンプリング期間T内におけるサンプリング部分集合の範囲、すなわち、収集ステップにおいて、それぞれが実際に測定を送信することになる測定デバイスの選択の変更に規定を設ける。
【0034】
そのため、本発明によれば、N個の測定デバイス2iのそれぞれが、各サンプリング期間T内において、ソフトウエア・モジュール21i内にストアされているローカル判定アルゴリズムを実行し、各測定デバイス2iと関連付けされている送信確率πiに基づいて、対応する測定デバイスが、それぞれの測定標本Piを中央プラットフォーム1へ送信することになるか否かをランダムに判定する能力を有する。
【0035】
言い換えると、各測定デバイス2iは、サンプリング期間Tにわたって測定標本を送信するサンプリング部分集合の一部となるか否かをランダムに判定する能力を有する。
【0036】
1つの可能性のある実施態様においては、すべての測定デバイス2iが、同一のあらかじめ定義済みの、期間Tにわたる送信確率πiおよび同一のローカル判定アルゴリズムを有する。
【0037】
ローカル判定アルゴリズムは、ベルヌーイ分布に従い、たとえば、次に示すステップを実装し得る:
- たとえば、0と100の間の値を伴う乱数を生成し;
- 生成した乱数が、送信確率πiのパーセンテージに割り当てられた値より小さい場合、たとえば、送信確率πiが10%に等しいときであれば10より小さい場合に、その測定デバイス2iは、測定標本Piを中央プラットフォーム1へ送信する(言い換えると、その測定デバイスは、その後、サンプリング部分集合の一部を形成する)。
- それ以外の場合には、測定デバイス2iが測定標本Piを中央プラットフォーム1へ送信しない。
【0038】
別の可能性のある実施態様においては、送信確率πiが、期間Tにわたってあらかじめ定義済みであるが、1つの測定デバイスと次のそれとでは異なる固定値を有し得る。
【0039】
別の可能性のある実施態様においては、前記集合の1つ以上の測定デバイス2iのための(または、すべての測定デバイスのためでさえも)送信確率πiが、取り込まれた測定標本Piの値、および/または測定が行われる条件、および/または測定の時に応じて変化できる値を有する。したがって、非限定的な例として述べるが、対象のサンプリング期間にわたって取り込まれる測定標本Piの値がゼロである場合には、測定デバイス2iのための送信確率πiを0%に等しくするための規定を設けることが可能である。言い換えると、この測定デバイス2iは、ゼロの測定を送信することはせずに、サンプリング部分集合の一部を形成しない。測定デバイス2iが、分散型負荷制限サービスを提供する調整システムの一部である場合には、例として述べるが、このデバイスに接続されている電気機器を遮断する命令が進行中であり、対象のサンプリング期間にわたって取り込まれる測定標本Piの値がゼロでなければ、この測定デバイス2iのための送信確率πiが100%に等しくなる規定を設けることも可能である。言い換えると、測定デバイス2iは、状況が異常であると認めると直ちに、それぞれの測定を体系的に送信することを選択できる。
【0040】
中央プラットフォームは、以下の説明から明らかになるとおり、それが収集する任意の測定標本に対応する送信確率πiを認識していなければならない。したがって、サンプリング部分集合に属し、かつ何らかの理由で送信確率が変動する測定デバイス2iが、収集ステップ120において、前記通信ネットワーク3を介して中央プラットフォーム1へ、それぞれの送信確率πiを、それぞれの測定標本Piと同時に送信する規定が設けられる。
【0041】
別の可能性のある実施態様においては、変動するか否かによらず、あらかじめ定義済みの送信確率πiが、収集ステップ120において、前記部分集合に属する各測定デバイス2iによって前記通信ネットワーク3を介して中央プラットフォーム1へ、それの測定標本Piと同時に体系的に送信される規定を設け得る。
【0042】
集合の測定デバイスの少なくとも1つ以上が、またはそのすべてでさえも、ローカル判定アルゴリズムおよび/またはあらかじめ定義済みの送信確率πiの更新を実施する規定を設けることは可能である。その更新は、中央プラットフォーム1によって送信され得る。変形として、更新が、測定デバイスによってローカルに計算されるか、または測定された情報に基づいて実施される。
【0043】
中央プラットフォーム1は、サンプリング部分集合のN′個の測定デバイスによって送信された多様な測定標本Pi、および該当する場合には対応する送信確率πiを一旦収集すると、処理モジュール11においてそれらの標本を処理すること、特に、前記サンプリング部分集合に属する各測定デバイスに関連付けされた収集した測定標本Piおよび送信確率πiに基づいてサンプリング期間Tにわたる総電力消費量P(T)を推定することが可能になる。
【0044】
特に、サンプリング期間Tにわたる総電力消費量P(T)の良好な推定が、次の関係によって獲得できることが示される。
【数3】
これは、サンプリング部分集合のN′個の測定デバイスだけを考慮に入れている。
【0045】
上の関係は、当然のことながら、N′個のデバイスによって送信される測定がすべて実際に受信されるという前提に基づいている。それ以外の場合には、この関係が、実際に収集された測定の数に対して適用される。
【0046】
経験から、時間(時間的シーケンス)にわたって推定されることになる値の場合には、各サンプリング期間T内においてサンプリング部分集合を動的に生成する方法の方が、『静的』または『ほぼ静的』な方法より、はるかに高精度であることが示されている。この精度は、選択バイアスが、サンプリング部分集合の動的形成に起因する変動と類似であり、したがって、誤差の平均がゼロに近づくという事実によって説明され得る。
【0047】
図2は、本発明に従った物理量を推定するための方法に実装することができるステップを、たとえば、N個の分散された測定デバイス2
iを包含する
図1のシステムを用いて、当該物理量をサンプリング期間Tにわたって消費される総電力であるとして要約している。
【0048】
推定方法は、開始集合を形成するN個の測定デバイス2iのそれぞれが、推定されるべき物理量を表すローカル・データを測定する1番目のステップ100を包含する。
【0049】
ステップ110においては、その集合のN個の測定デバイス2iのそれぞれが、それぞれのローカル判定アルゴリズムを、対象のサンプリング期間Tにわたり測定標本Piを送信するか否かをランダムに判定するために実行する。このステップ110は、それぞれが、それぞれのローカル判定アルゴリズムの実行の完了時に、それぞれの送信確率πiに従って、それぞれの測定標本Piを送信するとの判定を行ったN′個の測定デバイス2iから形成されるサンプリング部分集合を動的に決定することを可能にする。対象の測定デバイスが、上に述べられているとおり、送信確率πiのための複数の可能な値を有している場合においては、このステップが、さらに、測定と実際に関連付けされることになる送信確率の値を選択すること(図示せず)を包含する。
【0050】
対象のサンプリング期間Tのためのサンプリング部分集合が決定されると、この方法が、中央プラットフォーム1を用いて、そのサンプリング部分集合だけの測定デバイス2iによって送信される測定標本Piを収集するステップ120へ続く。上記からわかるとおり、対応する測定標本Piとともに送信確率も送信することができるが、特定の場合においてはそのようになされなければならない。
【0051】
最後のステップ130は、中央プラットフォーム1によってステップ120において収集された多くともN′個の測定標本P
iおよびそれらに関連付けされた送信確率π
iに基づくサンプリング期間Tにわたる物理量P(T)の推定を包含し、好ましくはそれが次に示す関係を適用することによる:
【数4】
【0052】
毎回異なるサンプリング部分集合が獲得されるように、各サンプリング期間内に多様なステップが反復される。
【0053】
このことは、特に、すべての測定デバイスが関係に与ること、および時間にわたって代表性が維持されることを可能にする。
【0054】
サンプリング期間Tは、10分台とすることができる。しかしながら、動的に作成されるサンプリング部分集合の使用は、このサンプリング期間を相当に短縮することを可能にする。特に、約10万の現場を包含する大規模な分散型システムのための集計負荷曲線の精密な推定が、10秒台の、または数秒にさえ至るサンプリング期間Tを用いてもデータ通信に関する有意のコストを負うことなく、可能であることが示された。
【0055】
本発明に従った推定方法は、測定を送信しなければならない現場の数を相当に(静的な部分集合を用いる従来的なサンプリング方法の80%から、本発明による約10%へと)低減することを可能にする一方、同時に、システム・サービスへの関与のための分散型ソリューションに必要とされる精度評価基準を維持する。
【0056】
従来的なサンプリング方法と比較すると、この場合においては、代表的な部分集合を選択するために、測定デバイスのフリートの予備的な分析を実施することが必要とされない。また、フリートの事前知識(場所、価格設定のタイプ、現場のタイプ等)を有することも必要とされず、その種の知識は、常にアクセス可能であるとは限らず、その収集は、時間を費やし、費用がかさむ。それに加えて、フリートの構成は、変更を受けやすく(引っ越し、仕事等)、かつその種の知識を最新に保つことは、継続的なリソースの割り付けを必要とする。
【0057】
さらにまた、各サンプリング期間に伴ってサンプリング部分集合が変化することから、サンプリング部分集合内の選択された測定デバイスの潜在的な故障を監視することも必要とされない。
【0058】
各測定デバイスが、ある時期にサンプリング部分集合の一部となり、そのことが、代表性を、したがって推定の品質を改善する。
【0059】
測定デバイスが、可変送信確率を有する場合においては、送信される同一のデータ量に対する有用な情報も増加される。
【符号の説明】
【0060】
1 分散型測定システム、中央プラットフォーム
2i 測定デバイス
3 通信ネットワーク
10 通信モデム
11 処理モジュール
20i 無線通信モデム
21i ソフトウエア・モジュール
22i モジュール、ローカル判定アルゴリズム、ソフトウエア・モジュール
100 測定ステップ
120 収集ステップ
130 推定ステップ
【国際調査報告】