(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブを含むヤーンの製造方法、これから製造されたヤーン
(51)【国際特許分類】
D01F 9/12 20060101AFI20220112BHJP
D01F 9/10 20060101ALI20220112BHJP
C01B 32/158 20170101ALI20220112BHJP
【FI】
D01F9/12
D01F9/10 Z
C01B32/158
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544078
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(85)【翻訳文提出日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 KR2019011752
(87)【国際公開番号】W WO2020071655
(87)【国際公開日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0118535
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521141394
【氏名又は名称】オーエックスオーム レイ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ギム, セ フン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, クアン ス
(72)【発明者】
【氏名】ジュン, ヨン ス
【テーマコード(参考)】
4G146
4L037
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC16A
4G146AC16B
4G146AD19
4G146AD21
4G146AD26
4G146BA12
4G146BC02
4G146CB01
4L037CS04
4L037CT22
4L037FA01
4L037FA04
4L037PA05
4L037PA06
4L037PA11
4L037PA19
4L037UA04
(57)【要約】
本発明は、加熱手段を具備する反応チャンバー内に炭素源(carbon source)および触媒を含む原料物質を投入する段階、前記加熱手段による熱エネルギーで前記反応チャンバーの加熱部内で前記炭素源を複数のカーボンナノチューブに変換させる段階および前記カーボンナノチューブを鉛直方向に成長させることによって、カーボンナノチューブの間の相互作用によってヤーン(yarn)を形成する段階を含むヤーンの製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段を具備する反応チャンバー内に炭素源(carbon source)および触媒を含む原料物質を投入する段階;
前記加熱手段による熱エネルギーで前記反応チャンバーの加熱部内で前記炭素源を複数のカーボンナノチューブに変換させる段階;および
前記複数のカーボンナノチューブを鉛直方向に成長させることによって、カーボンナノチューブの間の相互作用によってヤーン(yarn)を形成する段階を含み、
下記のパラメータMが150℃・m・mg/sec~1,800℃・m・mg/secに維持されるように制御するヤーンの製造方法:
【数1】
前記式において、Tは加熱手段の作動温度(℃)、Lは加熱部の長さ(m)、Fは原料物質の供給速度(mg/sec)である。
【請求項2】
前記パラメータMが160℃・m・mg/sec~1,400℃・m・mg/secに維持されるように制御する、請求項1に記載のヤーンの製造方法。
【請求項3】
前記炭素源に対する触媒の質量比(=触媒の質量/炭素源の質量)が0.01~0.2である、請求項1に記載のヤーンの製造方法。
【請求項4】
前記ヤーンは偏光ラマン比(polarized raman ratio)が5~10である、請求項1に記載のヤーンの製造方法。
【請求項5】
前記ヤーンは破断強度が13cN以上である、請求項1に記載のヤーンの製造方法。
【請求項6】
前記加熱手段の作動温度は550℃~2,500℃であり、
前記加熱部の長さは0.01m~10mであり、
前記原料物質の供給速度は0.05mg/sec~10mg/secである、請求項1に記載のヤーンの製造方法。
【請求項7】
前記加熱手段の作動温度は1,050℃~1,500℃であり、
前記加熱部の長さは0.1m~2mであり、
前記原料物質の供給速度は0.1mg/sec~3mg/secである、請求項6に記載のヤーンの製造方法。
【請求項8】
前記反応チャンバーは、
原料物質が投入されるようにその上端に形成されている流入部;
前記流入部から下向きに延長されており、その内面および/または外面に前記加熱手段が備えられており、前記作動温度が造成され前記炭素源が複数のカーボンナノチューブに変換される加熱部;
前記加熱部から下向きに延長されており、複数のカーボンナノチューブが集合してπ-π相互作用によってヤーンを形成する集合部;および
前記集合部から下向きに延長されており、前記カーボンナノチューブが集合したヤーンが排出される排出部を含む、請求項1に記載のヤーンの製造方法。
【請求項9】
変換されるおよび/または変換が完了した複数のカーボンナノチューブの下端部が鉛直方向を向くよう整列するために、前記集合部および前記排出部のうち少なくとも一つの外側および/または内側で磁性を印加する、請求項8に記載のヤーンの製造方法。
【請求項10】
前記炭素源はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、セチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、ボレミトール、アリルアルコール、ゼラニオール、プロパルギルアルコール、イノシトール、メントール、メタン、ヘキサン、エチレン、アセチレン、メチルアセチレンおよびビニルアセチレンから選択される少なくとも一つを含む、請求項1に記載のヤーンの製造方法。
【請求項11】
前記触媒は1種以上のメタロセンを含み、
前記メタロセンは鉄、ニッケル、コバルト、白金、ルテニウム、モリブデンまたはバナジウムの化合物である、請求項1に記載のヤーンの製造方法。
【請求項12】
前記メタロセンはフェロセンである、請求項11に記載のヤーンの製造方法。
【請求項13】
前記原料物質は炭素源100重量部に対して0.01重量部~5重量部の触媒活性剤をさらに含む、請求項1に記載のヤーンの製造方法。
【請求項14】
前記原料物質を投入する段階で、運搬ガスを前記原料物質と共に反応チャンバー内に投入する、請求項1に記載のヤーンの製造方法。
【請求項15】
前記運搬ガスは、窒素ガスおよびアルゴンガスのうち少なくとも一つおよび水素ガスを含み、
前記水素ガスは前記運搬ガスの総体積を基準として、0体積%超過~90体積%以下で含まれる、請求項14に記載のヤーンの製造方法。
【請求項16】
前記運搬ガスは1mg/sec~200mg/secの供給速度で投入される、請求項14に記載のヤーンの製造方法。
【請求項17】
前記カーボンナノチューブに変換させる段階は、前記触媒上で前記炭素源が黒鉛化および/または炭化する炭素再配列が進行されて、前記触媒上から前記カーボンナノチューブが鉛直方向に成長する段階である、請求項1に記載のヤーンの製造方法。
【請求項18】
前記ヤーンを収得する段階は、反応チャンバーの外部に排出されたヤーンを溶媒に浸漬させる段階、および浸漬されたヤーンを円筒形ローラまたはプレートを用いて巻く段階を含む、請求項1に記載のヤーンの製造方法。
【請求項19】
請求項1~請求項18に記載されたヤーンの製造方法により製造された、ヤーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンナノチューブを含むヤーンの製造方法、これから製造されたヤーンに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素同素体の一種であるカーボンナノチューブ(CarbonNanotube、CNT)は直径が数~数十nmで長さが数百μm~数mmの物質であり、1991年Iijima博士によってNatureジャーナルに報告された以来、優秀な熱的、電気的、物理的性質と高いアスペクト比より多様な分野で研究が行われてきた。
【0003】
このようなカーボンナノチューブの固有の特性は、炭素のsp2結合に起因しており、鉄より強く、アルミニウムより軽く、金属に準ずる電気伝導性を示す。カーボンナノチューブの種類はナノチューブの壁の数によって、単一壁カーボンナノチューブ(single-wall carbon nanotube、SWNT)、二重壁カーボンナノチューブ(double-wall carbon nanotube、DWNT)、多重壁カーボンナノチューブ(multi-wall carbon nanotube、MWNT)に大別することができ、非対称性/巻かれる角度(chirality)によってジグザグ(zigzag)、アームチェア(armchair)、キラル(chiral)構造に分かれる。
【0004】
カーボンナノチューブ自らの機械的強度、特に引張強度が100GPaを越えるほど非常に優れるものの、合成したカーボンナノチューブは長さが短い単繊維であるため応用に制約を受けている。このような問題を解決するため単繊維のカーボンナノチューブを連結して長繊維であるカーボンナノチューブヤーンを作る方法について最近多く研究されている。
【0005】
カーボンナノチューブを含む繊維形態のヤーン(yarn)を製作する方法としては、フォレスト紡糸法と直接紡糸法があるところ、前記フォレスト紡糸法は、基板に触媒を蒸着した後、基板に垂直の方向にカーボンナノチューブフォレストを合成し、基板の終端に位置するカーボンナノチューブをピンセットやテープなどで引っ張ると、カーボンナノチューブの間のファンデルワールス引力によって、カーボンナノチューブが連結された形態で付いて出ながらカーボンナノチューブヤーンを紡糸する方法である。ただし、このような方法は、連続工程が不可能であるため生産量を増やすことができないという短所がある。
【0006】
直接紡糸法とは、垂直に立てられた高温の加熱炉の上端の注入口に、液相または気相の炭素供給源と触媒を移送(carrier)ガスと共に注入して加熱炉内でカーボンナノチューブを合成し、移送(carrier)ガスと共に加熱炉の下端に降りてきたカーボンナノチューブヤーンを加熱炉の内部または外部で巻いてヤーンを得る方法である。
【0007】
カーボンナノチューブヤーンの強度に影響を及ぼす変数には、カーボンナノチューブの長さ、直径、カーボンナノチューブの間の結合力などが含まれる。また、カーボンナノチューブヤーンの強度を向上させるために整列度を向上させる方法もある。
【0008】
カーボンナノチューブヤーンの整列度とは、ヤーンをなすカーボンナノチューブがヤーンにおいて一定の方向に並んで集合している程度を意味する。カーボンナノチューブがよく整列したヤーンは、カーボンナノチューブの間の相互作用が相対的に強力であるため強度が優秀であり、付随的に、例えばヤーンを電界放出エミッタの電極として使用するとき、カーボンナノチューブそれぞれから放出される電子が一定の方向に放出することから、ヤーンの用途の側面においても非常に好ましい。
【0009】
カーボンナノチューブヤーンの整列度を向上させる方法として、カーボンナノチューブヤーンを回収する段階で回収の速度を高める方法がある。このような方法は、例えば20~50m/min以上の高い速度でヤーンを回収することであるところ、かかる場合、整列度を向上させることはできるものの、回収速度が高いほどカーボンナノチューブヤーンが切れやすくなるため、連続生産に困難がある。
【0010】
カーボンナノチューブヤーンの整列度を向上させる他の方法としては、製造されたヤーンを回収する段階で超音波などの手段を利用して、ヤーンにおいてカーボンナノチューブの整列を誘導する方法が考慮されている。しかし、以上の方法は、カーボンナノチューブがすでに集合した状態でなされる後処理工程であることから、カーボンナノチューブを一定の方向を向くよう整列させることに明白な限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、カーボンナノチューブを含むヤーンの製造方法、これから製造されたヤーンを提供することにその目的がある。
【0012】
本発明の一側面によると、所望する形態のヤーンを具現するために、特定の工程条件、例えば原料物質の供給速度、原料物質を加熱する加熱部区間の長さおよび加熱温度が必須の因子として開示される。
【0013】
特に、前記各因子と関連する後述の特定のパラメータMの値が本発明に係る範囲に属する場合、本発明の製造方法により製造されたヤーンは5~10の偏光ラマン比(polarized raman ratio)を有することができ、このような範囲ではヤーンをなすカーボンナノチューブが所望の水準に整列されることができる。
【0014】
また、前記パラメータMの値が本発明に係る範囲に属するときに、ヤーンにおいてカーボンナノチューブの間のπ-π相互作用が最大化されることができ、これはヤーンの強度向上に主要に作用することができる。
【0015】
したがって、本発明は、これを具現するための具体的実施例を提供することにその実質的な目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、原料物質の供給速度、原料物質を加熱する加熱部区間の長さおよび加熱温度のような因子を制御することで、カーボンナノチューブを含むヤーンの特性を所望の水準に具現できることに注目し、ゆえに、前記因子間の関係に対する下記のようなパラメータMを定立した。
【0017】
【0018】
前記式において、Tは加熱手段の作動温度(℃)、Lは加熱部の長さ(m)、Fは原料物質の供給速度(mg/sec)である。
【0019】
具体的に、前記パラメータMを150℃・m・mg/sec~1,800℃・m・mg/secに制御する場合、カーボンナノチューブの間の相互作用が優秀であるため強度が優秀であり、カーボンナノチューブがよく整列しているヤーンを具現することができる。
【0020】
したがって、本発明は、カーボンナノチューブを含むヤーンの製造方法および前記ヤーンの製造方法で製造されたヤーンを提供するところ、以下に記載する実施形態を通じて本発明を詳細に説明する。
【0021】
これを具体的に説明するに先立って、本明細書および特許請求の範囲に使われた用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則って、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきである。
【0022】
したがって、本明細書に記載された実施例の構成は、本発明の最も好ましい一つの実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないため、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例が存在できることを理解するべきである。
【0023】
本明細書で単数の表現は、文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「具備する」または「有する」等の用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものと理解されるべきである。
【0024】
本明細書に使われた用語「投入」は、本明細書内で「流入、注入」と共に混用して記載されてもよく、液体、気体または熱等を必要なところに流したり入れることを意味するものと理解される。
【0025】
本明細書で「ヤーン(yarn)」という用語は、カーボンナノチューブが繊維の形態で成長して形成されたり複数個のカーボンナノチューブが繊維の形態で集合、凝集および/または融合して形成されたものをすべて指称する。
【0026】
一つの実施形態において、本発明に係るヤーンの製造方法は、
【0027】
加熱手段を具備する反応チャンバー内に炭素源(carbon source)および触媒を含む原料物質を投入する段階;
【0028】
前記加熱手段による熱エネルギーで前記反応チャンバーの加熱部内で前記炭素源を複数のカーボンナノチューブに変換させる段階;および
【0029】
前記カーボンナノチューブを鉛直方向に成長させることによって、カーボンナノチューブの間の相互作用によってヤーン(yarn)を形成する段階を含み、
【0030】
下記のパラメータMが150℃・m・mg/sec~1,800℃・m・mg/secに維持されるように制御することができる:
【0031】
【0032】
前記式において、Tは加熱手段の作動温度(℃)、Lは加熱部の長さ(m)、Fは原料物質の供給速度(mg/sec)である。
【0033】
一般的に原料物質は、重力の影響を受けて反応チャンバーの上端から下端に流動することになり、そのため、流動する触媒上で炭素源が炭化および/または黒鉛化する炭素再配列が誘発される。その後、炭素源は単繊維の形態のカーボンナノチューブに変換され、触媒上で生成されたばかりのカーボンナノチューブは、連続して供給される炭素源によって鉛直方向に延長されながら成長する。
【0034】
整理すると、前記カーボンナノチューブに変換させる段階は、前記触媒上で前記炭素源が黒鉛化および/または炭化する炭素再配列が進行されて、前記触媒上から前記カーボンナノチューブが鉛直方向に成長する段階である。
【0035】
このように成長するカーボンナノチューブは、他のカーボンナノチューブとの相互作用によって互いに集合してもよく、最終的には複数のカーボンナノチューブが集合してヤーンの形態をなすことができる。
【0036】
炭素源からカーボンナノチューブへの変換速度は、加熱手段の作動温度と比例することができる。しかし、カーボンナノチューブの速い変換速度がヤーンにおいてカーボンナノチューブのよく整列する程度(「整列度」)と比例するものではない。
【0037】
例えば、相対的高温によるカーボンナノチューブへの速い変換は、重力方向以外の他の無作為の方向に紡糸する形態で成長する分岐型カーボンナノチューブの発生頻度を増加させることがある。これは、その後収得されるヤーンにおけるカーボンナノチューブの整列度を低下させる恐れがある。
【0038】
また、無作為に分散している触媒上から成長するそれぞれのカーボンナノチューブは、互いの相互作用によって集合してヤーンを形成するところ、速い変換の下では、互いに異なるカーボンナノチューブが一定の方向性を有して集合するのが難しく、一定の方向性を有する前に集合することによってヤーンでの整列度が不良となる可能性がある。因みに、カーボンナノチューブが互いに一定の方向性を有して集合すること、すなわち、整列することとは、互いに離隔した位置で成長するカーボンナノチューブが実質的に平行に位置する状態で鉛直方向に成長する状態を意味することができる。
【0039】
反面、相対的低温によるカーボンナノチューブへの遅い変換は、成長するカーボンナノチューブの整列を誘導するには容易であるものの、カーボンナノチューブの結晶化度および強度の低下を誘発することがある。これはまた、反応チャンバー内で未反応触媒の増加を誘発して、未反応触媒がカーボンナノチューブと共にヤーンに含まれて、カーボンナノチューブの間の相互作用を妨害する原因となることがある。
【0040】
したがって、加熱手段の作動温度を好ましい範囲で可変的に制御することは、所望する品質のヤーンを製造するために要求される。
【0041】
さらに他の側面で、カーボンナノチューブは、触媒および炭素源が加熱範囲(加熱部)にある反応チャンバーの上端から下端に流動するによって生成および成長するところ、加熱部の区間が長くなる場合、炭素源からカーボンナノチューブへの変換が充分になされるため、結晶性を高めるに有利である。
【0042】
この場合はまた、カーボンナノチューブが成長する時間を相対的に長く確保して、この時間の間に成長するカーボンナノチューブが相対的により長い長さに延長するので互いに対して整列しやすくなる。
【0043】
それにもかかわらず、加熱範囲の区間を無条件的に長くすることは好ましくなく、これは重力方向以外の他の無作為の方向に紡糸する形態で成長する分岐型カーボンナノチューブの発生頻度もまた大きく増加するからである。
【0044】
したがって、カーボンナノチューブへの適切な変換の進行と、それによってよく整列した状態でヤーンを製造するためには、加熱手段の作動温度および加熱部の長さを好ましい範囲で選択および制御することが必要となる。ただし、注目しなければならないことは、この二つの工程条件が相補的に作用することがあるという点である。
【0045】
例えば、加熱手段の作動温度が相対的に低くても加熱部の長さを長く設定する場合、未反応触媒を最小化しながらもカーボンナノチューブの変換、成長および整列度を所望の水準に誘導することができる。
【0046】
したがって、本発明は、前記二つの条件の間に対する相関関係に注目したものであり、詳細には加熱手段の作動温度Tと加熱部の長さLの積算値を定立して、これを前記パラメータMに導入した。
【0047】
本発明はまた、このようなパラメータMに原料物質の供給速度をさらに導入した。
【0048】
前記供給速度が速いほど炭素源の供給が迅速になされるため、カーボンナノチューブの長さが延長される成長が速く進行されるものの、無条件的に供給速度を速くすることが好ましいことではない。
【0049】
例えば、任意の作動温度と任意の加熱部長さで相対的に速い供給速度で原料物質を投入すると、原料物質の迅速な供給に比べて前記任意の条件におけるカーボンナノチューブの変換および成長が相対的に遅く進行される。この場合、カーボンナノチューブの結晶化度と強度が低下することがあり、非晶質炭素などの多数の異物も発生することがある。
【0050】
反対に、任意の作動温度と任意の加熱部長さで相対的に遅い供給速度で原料物質を投入すると、カーボンナノチューブの変換と成長が所望の水準に達しないため工程効率が低下することがある。また、原料物質の供給速度に比べてカーボンナノチューブへの変換が速く起きて反応チャンバー内で局所的に原料物質が足りなくなり、カーボンナノチューブの連続生産に対する障害要素として作用し結晶化度および強度が低下することがある。
【0051】
したがって、本発明は、カーボンナノチューブへの適切な変換に要求される加熱手段の作動温度T、加熱部の長さLおよび供給速度Fの関係に対するパラメータMを定立した。
【0052】
このようなパラメータMは、作動温度、加熱部の長さおよび供給速度それぞれを一つの独立的な工程制御手段として活用する代わりに、これらが複合的に関係することを反映して、パラメータMによる結果物であるヤーンの品質、例えば、ヤーンの強度およびヤーンをなすカーボンナノチューブの整列度のような定性的特性を定量的に予測するに役立つことに相当な意義がある。
【0053】
これに対する一つの例において、加熱部の長さが不可変的因子であるとき、作動温度と供給速度を制御するとパラメータMによる値が本発明の範囲を満足することができる。他方、供給速度が不可変的な因子であるときには、作動温度と加熱部の長さを制御すればパラメータMによるまた他の値が本発明の範囲を満足することができる。このように異なる条件にもかかわらず、前者と後者の場合のパラメータMの値が実質的に同一であれば、収得されるヤーンの強度およびヤーンをなすカーボンナノチューブの整列度などが非常に類似することがあり、これが前述した定量的予測に対する本発明の主な利点である。
【0054】
一つの具体的な例において、前記パラメータMの値は150℃・m・mg/sec~1,800℃・m・mg/sec、詳細には160℃・m・mg/sec~1,400℃・m・mg/sec、さらに詳細には200℃・m・mg/sec~1,200℃・m・mg/secに維持されるように制御することができ、この範囲で制御するときに、カーボンナノチューブが所望の結晶化度と強度を内在した状態に変換され、また、よく整列された状態で集合するため、結果的に収得されたヤーンの品質が優秀となることができる。
【0055】
特に注目すべきことは、本発明の製造方法の場合、前記パラメータMの値が所定の範囲に属するよう制御して、ヤーンを製造した後ではなく、ヤーンが製造されるまでの過程のうち、詳細にはカーボンナノチューブへの変換とその成長過程で、カーボンナノチューブそれぞれが整列した状態で成長するようにして、最終的に収得されるヤーンにおいてカーボンナノチューブがよく整列しており、また強度も優秀であるという点である。
【0056】
典型的には、製造が完了したヤーンを巻く過程において、ワインディング速度を調節してヤーンに所定の張力を印加し、これに伴いカーボンナノチューブがヤーンの長さ方向に配向するように誘導したものの、このような通常の方法では、既に集合してヤーンの一部をなすカーボンナノチューブを一定の方向に整列させることが容易でない。
【0057】
一方、前記パラメータMの値が前記範囲で制御されるとき、最終的に収得されたヤーンは所定の偏光ラマン比(polarized raman ratio)を有することができる。
【0058】
前記偏光ラマン比は、ヤーンをなすカーボンナノチューブの整列度を評価する尺度として、カーボンナノチューブの整列度は偏光ラマン比に比例することができ、通常のヤーンの場合、偏光ラマン比が1~4の水準である。
【0059】
前記偏光ラマン比はラマンスペクトルを分析するときに、1560cm-1~1600cm-1の範囲でヤーンの長さ方向とその垂直方向のGピーク最大強度の比(IGII/IG⊥)で表すことができ、本発明により製造されたヤーンは、前記偏光ラマン比の値が5~10で通常のヤーンに比べ優秀である。
【0060】
前記パラメータMの値を前記範囲で制御する場合のさらに他の利点は、製造されたヤーンの破断強度が非常に優れることであり、本発明の製造方法により収得されるヤーンは、その破断強度が13cN以上、詳細には16cN以上、さらに詳細には16cN~30cNであってもよい。
【0061】
前記パラメータMの値が前記範囲に存在できるよう選択される加熱手段の作動温度T、加熱部の長さL、原料物質の供給速度Fの好ましい値は、下記の範囲から選択することができる。
【0062】
前記加熱手段の作動温度は550℃~2,500℃、詳細には1050℃~1,500℃、さらに詳細には1,200℃~1,300℃であってもよい。
【0063】
前記加熱部の長さは0.01m~10m、詳細には0.1m~2m、さらに詳細には0.15m~1.5mであってもよい。
【0064】
前記原料物質の供給速度は0.05mg/sec~10mg/sec、詳細には0.1mg/sec~3mg/sec、さらに詳細には0.1mg/sec~1.1mg/secであってもよい。
【0065】
本発明の製造方法によりヤーンを製造する過程の全般において、前記範囲から好ましい値が可変的に選択されるか、または選択されたいずれか一つの値が不変的であってもよい。
【0066】
前記パラメータMとは独立的であるものの、本発明が目的にすることを充足するヤーンを収得するために、前記炭素源に対する触媒の質量比(=触媒の質量/炭素源の質量)を制御することを考慮できる。
【0067】
これに対する一つの例において、前記炭素源に対する触媒の質量比は0.01~0.2、詳細には0.02~0.08であってもよい。
【0068】
もし、触媒に対して炭素源が過度で前記範囲から外れる場合、カーボンナノチューブへの変換および成長が非常に遅く進行される可能性があり、結果的にカーボンナノチューブの結晶化度、強度などが良くなく、収得されたヤーンの品質も低下することがある。
【0069】
その反対として、炭素源に比べて触媒が過量に存在する場合、生成されたカーボンナノチューブに触媒の含量が増加して、ヤーンをなすカーボンナノチューブの間の相互作用を妨害することができる。
【0070】
前記炭素源は、液相または気相の炭素化合物であってもよく、その非制限的な例は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、セチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、ボレミトール、アリルアルコール、ゼラニオール、プロパルギルアルコール、イノシトール、メントール、メタン、ヘキサン、エチレン、アセチレン、メチルアセチレンおよびビニルアセチレンからなるグループから選択された少なくとも一つであってもよい。前記炭素源は、詳細にはアセチレンおよび/またはメタンであってもよい。
【0071】
前記触媒は触媒反応の系内において、それ自体が触媒サイクルの中には含まれないものの、活性的な二次触媒に変化する(あるいは活性的な触媒を生成する)物質であってもよく、前記触媒が二次触媒を形成した後にカーボンナノチューブを合成することができる。このような触媒は1種以上のメタロセンを含むことができ、前記メタロセンは、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、白金、ルテニウム、モリブデンまたはバナジウムの化合物、またはこれらの酸化物であってもよい。前記触媒の一つの例において、前記メタロセンはフェロセン(ferrocene)であってもよい。
【0072】
前記原料物質は前記炭素源100重量部に対して0.01重量部~5重量部の触媒活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0073】
通常的にカーボンナノチューブの変換は、触媒が溶融した状態で炭素源が触媒に拡散した後、析出しながら進行されるところ、前記触媒活性剤はカーボンナノチューブ変換時にプロモータとして作用して炭素拡散率(diffusion rate)を増加させることによって、短時間内にカーボンナノチューブが合成されるようにすることができる。
【0074】
前記触媒活性剤の例としては、チオフェン(thiophene、C4H4S)を利用することができる。チオフェンは触媒の融点を減少させ、異物である非晶質炭素を除去して比較的低い温度でも高純度のカーボンナノチューブを合成できるようにする。触媒活性剤の含量はカーボンナノチューブの構造にも影響を及ぼし、例えば、前記炭素化合物であるアセチレン100重量部に対してチオフェンを1~10重量部、詳細には1~5重量部で混合する場合、多重壁カーボンナノチューブ繊維を収得することができ、アセチレンに対してチオフェンを0.5重量部以下で混合する場合、単一壁カーボンナノチューブ繊維を収得することができる。前記触媒および触媒活性剤は、液相炭素源では液相であってもよく、気相炭素源では気相であってもよい。
【0075】
以上で説明したような原料物質以外にも、運搬ガスが本発明の製造方法に使用されることができ、以下の非制限的な例を通じて運搬ガスについて詳術する。
【0076】
一つの具体的な例において、前記原料物質を投入する段階で運搬ガスを前記原料物質と共に反応チャンバー内に投入することができる。
【0077】
このような運搬ガスは、反応チャンバーの上端から下向きに流動しながら、反応チャンバーへの、または反応チャンバー内における炭素源および触媒の流動が円滑になるように助けて、反応チャンバー内に残留する多様な不純物を反応チャンバー内から外部に排出させるのに役立てる。このような利点を発現するために、運搬ガスは1mg/sec~200mg/secの供給速度で投入することができる。その反面、前記範囲を上回るまたは下回る場合、炭素源および触媒の流動が過度に遅くまたは速くなって、カーボンナノチューブの成長に否定的な影響を及ぼすことができ、ヤーンに含まれる不純物の濃度を高めることがあるため好ましくない。
【0078】
前記運搬ガスは、不活性ガスおよび/または還元ガスを含んでいてもよく、前記不活性ガスは例えば、アルゴンガス(Ar)、窒素ガス(N2)またはこれらの混合物であってもよく、還元ガスは例えば、水素ガス(H2)、アンモニアガス(NH3)またはこれらの混合物であってもよい。
【0079】
一つの具体的な例において、前記運搬ガスは窒素ガスおよびアルゴンガスのうち少なくとも一つおよび水素ガスを含み、
【0080】
前記水素ガスは、前記運搬ガスの総体積を基準として、0体積%超過~90体積%以下、詳細には1体積%~10体積%で含まれていてもよい。
【0081】
炭素源が炭化するためには還元過程を経なければならず、前記水素ガスは、還元反応を通じて炭素源を炭化し、炭素以外の物質を除去してカーボンナノチューブの歩留まりおよび生産速度を向上させるために使用できる。
【0082】
しかし、前記運搬ガスのうち前記水素ガスの量が前記範囲を上回ると、炭素源の中の炭素も水素によって還元され、これに伴いカーボンナノチューブの歩留まりが不良となることがある。また、過量の水素ガスは、炭素源中の水素原子が水素分子の形態に還元されることを妨害して、炭素源からカーボンナノチューブへの変換を阻害することがある。
【0083】
他の側面で、前記水素ガスと反応して還元された不純物は、運搬ガスと共に流動して反応チャンバーから除去されるのが一般的であるところ、前記水素ガスの量が前記範囲を下回る場合、炭素以外の物質を還元させる反応が不充分になることがある。これに伴い、その他の副反応の発生と不純物の濃度の増加によって黒鉛化および/または炭化反応が円滑に進行されないことはもちろん、カーボンナノチューブの品質が低下する恐れがある。
【0084】
以下では、図面を参照して本発明の製造方法に利用される反応チャンバーおよびこの反応チャンバーからヤーンを収得する過程について具体的に説明する。
【0085】
図1は本発明の一つの実施例に係る反応チャンバーを示したものであって、
【0086】
前記反応チャンバー100は原料物質が投入されるようにその上端に形成されている流入部110;
【0087】
前記流入部110から下向きに延びており、その内面および/または外面に加熱手段122が備えられており、作動温度が造成されて前記炭素源が複数のカーボンナノチューブに変換される加熱部120;
【0088】
加熱部120から下向きに延びており、複数のカーボンナノチューブが集合してπ-π相互作用によってヤーンを形成する集合部130;および
【0089】
前記集合部130から下向きに延びており、前記カーボンナノチューブが集合したヤーンが排出される排出部140を含むことができる。
【0090】
前記反応チャンバー100に形成されている流入部110には、必要に応じて、炭素源および触媒を注入するための噴射ノズルおよび運搬ガスや触媒活性剤などを注入するための分散板が設置されてもよい。また、前記流入部110には、必要に応じて、前記反応チャンバー100に原料物質を供給する原料物質供給ユニットと、運搬ガスなどを供給するガスタンクがさらに備えられてもよい。
【0091】
前記流入部110から流入する運搬ガスは、加熱部120内で層流を形成できるように、線速度で前記反応チャンバー100に供給されてもよく、これが容易であるように分散板を利用することができる。前記運搬ガスは、ガスタンクと流量調節手段を具備した運搬ガス供給ユニットから流入部110を通じて反応チャンバー100内に流入することができる。
【0092】
加熱部120を説明する。加熱部120は加熱手段122を具備しており、前記原料物質と前記流入部110を通じて加熱部120に流入すると、これに含まれていた触媒が加熱部120の上端から下端に流動し、加熱手段122による高温が加熱部120内に造成される。このように供給された熱エネルギーによって炭素源は触媒上でカーボンナノチューブに変換されてもよい。また、原料物質は連続して加熱部120に供給されるため、変換されたカーボンナノチューブは鉛直方向に成長が進行される。このような成長は、カーボンナノチューブとカーボンナノチューブ間の融合や、カーボンナノチューブ末端でカーボンナノチューブが生成される現象を総称することができる。
【0093】
このとき、加熱部120の作動は、前記パラメータMの値が前記範囲に属するように制御されてもよく、このような作動環境で加熱部120内に分散していた触媒上から複数のカーボンナノチューブがそれぞれ鉛直方向に成長することになり、これらが互いに対して実質的に平行するように成長することができる。
【0094】
このように成長するカーボンナノチューブは、加熱部120と比較して造成される温度が低い集合部130で一つのヤーンとして集合することができる。このような集合は、カーボンナノチューブ間のπ-π相互作用が主に作用して進行され、場合によっては下向きに内径が狭くなる集合用ノズルを集合部130に設置して前記カーボンナノチューブ間の集合を容易とすることができる。
【0095】
前記集合部130の下端に位置した排出部140を通じて、ヤーンが反応チャンバー100の外側に排出されてヤーンを収得することができる。
【0096】
前記ヤーンを収得する段階は、反応チャンバー100の外部に排出されたヤーンを溶媒に浸漬させる段階、および浸漬されたヤーンをボビン(bobbin)、円筒形ローラまたはプレートを利用して巻く段階を含むことができる。
【0097】
前記ヤーンを溶媒に浸漬させる段階は、カーボンナノチューブと相互作用が可能であるものの揮発性の強い溶媒を通じて、カーボンナノチューブ間のπ-π相互作用を増大させることができる。前記溶媒の非制限的な例は、エタン、エチレン、エタノール、メタン、メタノール、プロパン、プロペン、プロパノール、アセトン、キシレン、一酸化炭素、クロロホルム、アセチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ポリエチレングリコール、エチルホーメート、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、カーボンテトラクロライド、ナフタレン、アントラセン、ジクロロメタン、ケトン、エーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ペンタン、ペンテン、ヘキセン、ベンゼン、四塩化炭素およびトルエンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0098】
前記巻く段階は、ヤーンをモータなどの駆動系によって軸回転するワインディング手段などで巻く段階であって、前記ボビン、円筒形ローラまたはプレート以外にも板状プレート、スピンドル、リール、ドラムおよびコンベヤーを利用することができる。
【0099】
一つの例において、前記軸回転するワインディング手段は1cm~100cm、詳細には20cm~40cmの直径を有するボビンであってもよい。
【0100】
前記ボビンの回転速度は、前記パラメータMが本発明の範囲を満足しカーボンナノチューブを連続生産可能であれば特に制限されないが、例えば、100RPM~5,000RPM、詳細には200RPM~1000RPMであってもよい。
【0101】
場合によっては、ヤーンを巻く前に前記溶媒の揮発を促進するために、IRランプ、風力乾燥機などを使って溶媒の揮発を誘導することができる。
【0102】
一方、本発明の製造方法は、変換されるおよび/または変換が完了した複数のカーボンナノチューブの下端部が鉛直方向を向くように整列するために、前記集合部および前記排出部のうち少なくとも一つの外側および/または内側で磁性を印加する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0103】
本発明は、所望の品質のヤーンを製造するために、原料物質の供給速度とカーボンナノチューブへの変換速度が好ましい比率をなすべきであることに注目したのであり、このため、製造過程で互いに相補的に作用して有機的な関係を有する作動温度T、加熱部の長さLおよび原料物質の供給速度Fと関連したパラメータMを定立した。
【0104】
本発明はこのようなパラメータMの値を、所定の範囲に属するように作動温度T、加熱部の長さLおよび供給速度Fを制御することによって、優秀な結晶化度と強度を有するカーボンナノチューブの生成が可能であり、また、これらがよく整列された状態で成長して一つのヤーンをなし得ることを以上で詳細に説明した。
【0105】
本発明で定立したパラメータMとこれに対する意義は、これにより、ヤーンが製造されるまでの過程中、詳細にはカーボンナノチューブへの変換とその成長過程で、カーボンナノチューブそれぞれが整列された状態で成長するようにして、最終的に収得されるヤーンでカーボンナノチューブがよく整列されるようにし、強度もまた優秀であるという点である。これは典型的な方法、例えば製造が完了したヤーンを巻く過程でヤーンに一定の張力を印加する過程と比較して、カーボンナノチューブがさらによく整列された状態のヤーンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】ヤーンを製造する反応チャンバーに対する模式図である。
【0107】
【0108】
【0109】
【
図4】実施例1により製造されたヤーンの表面をSEMで撮影した写真である。
【0110】
【
図5】実施例2により製造されたヤーンの表面をSEMで撮影した写真である。
【0111】
【0112】
【0113】
【
図8】比較例1により製造されたヤーンの表面をSEMで撮影した写真である。
【0114】
【
図9】比較例2により製造されたヤーンの表面をSEMで撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳細に説明することにする。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるものではない。
【0116】
<実施例1>
【0117】
触媒としてフェロセン、炭素源としてメタンおよび触媒活性剤としてチオフェンを含む原料物質を、約0.5mg/sec~1mg/secの供給速度Fで反応チャンバーの流入部を通じて投入した。原料物質は、重量を基準としてチオフェン:フェロセン:メタン=1:1.46:26.3の割合で投入した。原料物質と共にアルゴン:水素の体積比が9:1をなす運搬ガスを10mg/sec~30mg/secの速度で投入した。
【0118】
このとき、反応チャンバーの加熱手段の作動温度Tを約1,200℃~1,300℃に制御し、加熱部の長さは1.2mに設定し、運搬ガスは約16mg/secで供給した。
【0119】
反応チャンバーの下端の排出部を通じて排出されるヤーンをエタノールが含まれた水槽に浸漬した後、ワインディング手段でヤーンを巻きながら溶媒をよく乾燥して長さ約1mのヤーンを収得した。
【0120】
ただし、実施例1によりヤーンを製造するとき、製造の開始から製造終了の時点まで、下記のパラメータMが約1034℃・m・mg/secに維持されるように供給速度Fおよび作動温度Tを制御した:
【0121】
【0122】
<実施例2>
【0123】
ヤーンの製造開始から製造終了時点まで、パラメータMが約235℃・m・mg/secに維持されるように供給速度Fおよび作動温度Tを制御したことを除いては、実施例1の方法により約1mのヤーンを製造した。
【0124】
<比較例1>
【0125】
ヤーンの製造開始から製造終了時点まで、パラメータMが約1851℃・m・mg/secに維持されるように供給速度Fおよび作動温度Tを制御したことを除いては、実施例1の方法により約1mのヤーンを製造した。
【0126】
<比較例2>
【0127】
ヤーンの製造開始から製造終了時点まで、パラメータMが約141℃・m・mg/secに維持されるように供給速度Fおよび作動温度Tを制御したことを除いては、実施例1の方法により約1mのヤーンを製造した。
【0128】
<実験例1:ヤーンの整列度の評価>
【0129】
カーボンナノチューブの整列度を評価するために、実施例と比較例で製造されたヤーンの偏光ラマン比(polarized raman ratio、IGII/IG⊥)を測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0130】
また、実施例1および2の偏光ラマン比のグラフを
図2および
図3にそれぞれ図示し、比較例1および比較例2の偏光ラマン比のグラフを
図6および
図7に図示した。
【0131】
【0132】
表1と
図2および
図3で確認できるように、パラメータMが本発明の範囲に属するように制御された実施例1~2は偏光ラマン比が5以上と優秀であった。
【0133】
典型的には、偏光ラマン比がヤーンをなすカーボンナノチューブの整列度と比例するため、このような整列度から本発明の製造方法により製造されたヤーンは、比較例に比べてカーボンナノチューブがよく整列されていることを推論できる。
【0134】
これと関連して、
図4には実施例1により製造されたヤーンのSEM写真が図示されており、
図5には実施例2により製造されたヤーンのSEM写真が図示されている。
【0135】
これらの図面を参照すると、実施例1および2のヤーンそれぞれは表面がなめらかに整理されており、ヤーンの表面に隙間がないことからカーボンナノチューブが高密度に集合していることを確認できる。また、カーボンナノチューブ繊維が絡んでいたりカーボンナノチューブの一部が分枝した形態などの好ましくない形態がほとんど観察されず、ほとんどのカーボンナノチューブ繊維が一方向を向き、かつ平行に整列した形態も確認することができる。したがって、実施例1および2のヤーンは強い強度を有するものと予想することができる。
【0136】
反面、表1の結果によると、パラメータMが本発明の範囲から外れる比較例1、2は偏光ラマン比が実施例に比べて顕著に低く示されることが立証され、このような結果より、実施例とは異なって比較例はカーボンナノチューブの整列度が所望の水準ではないことを推測することができる。
【0137】
これに関連して、
図8には比較例1により製造されたヤーンのSEM写真が図示されており、
図9には比較例2により製造されたヤーンのSEM写真が図示されている。
【0138】
これらの図面を参照すると、比較例1および2のヤーンはいずれもカーボンナノチューブが複数の分岐を含んでいるため相対的に滑らかではない表面を有しており、カーボンナノチューブが複雑に絡んでおり、不純物も多量含んでいることを確認できる。特に注目すべきことは、比較例1および2はカーボンナノチューブが高密度に集合せず、多数が距離をおいて離隔した形態で存在しているためヤーンの強度が弱いことを予想できる。
【0139】
実験例1に対する結果を総合すると、パラメータMが本発明の範囲を満足してこそ優秀な偏光ラマン比を有し、カーボンナノチューブが高密度でよく整列されている理想的な形態のヤーンが具現されることを理解できる。
【0140】
<実験例2:強度の評価>
【0141】
実施例と比較例で製造されたヤーンを利用して破断強度実験を実施した。破断強度実験はTextechno社のFAVIMAT+装備を用いて測定したところ、load cell範囲は210cNであった。Gauge lengthは2cmであり、2mm/minの速度で実験を進めた。前記破断強度の測定結果を下記の表2に示した。
【0142】
【0143】
表2のように、実施例1および2は比較例に比べて顕著に優秀な破断強度を示した。
【0144】
前記の実験例1と連係して、パラメータMが本発明の範囲を満足すると、優秀な偏光ラマン比を有し、カーボンナノチューブが高密度でよく整列された形態のヤーンが具現され、ヤーンがこのような形態を有するとき、初めて非常に優秀な破断強度に帰結することを理解できる。
【0145】
以上、本発明の実施例を参照して説明したが、本発明が属した分野で通常の知識を有する者であれば、前記の内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用および変形を行うことが可能であるはずである。
【国際調査報告】