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特表2022-508682脊椎インプラント最適化のための力予測
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】脊椎インプラント最適化のための力予測
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20220112BHJP
   A61B 17/86 20060101ALI20220112BHJP
   A61B 17/84 20060101ALI20220112BHJP
   A61B 17/70 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B17/86
A61B17/84
A61B17/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544970
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(85)【翻訳文提出日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 IB2019058798
(87)【国際公開番号】W WO2020079598
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】62/745,489
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504464047
【氏名又は名称】メイザー ロボティックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100210398
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 太郎
(72)【発明者】
【氏名】スタインバーグ,シュロミット
(72)【発明者】
【氏名】ショーハム,モシェ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL24
4C160LL42
4C160LL62
(57)【要約】
術中の応力解析と組み合わせた術前有限要素解析を使用して、整形外科の脊椎インプラントの残存を最適化するための方法。臨床的に関連するデータ、有限要素解析、および脊椎パラメータの補正値に基づいて、許容可能長期応力スコアは、インプラントの形状が予測される応力値を最小化するように、インプラント候補のセットから選択された適切なインプラントに対して決定される。術前医用画像セットから、選択された脊椎アライメントパラメータの値が決定され、応力値を決定するように、インプラント候補に対して有限要素解析が実行され、選択したインプラントを医用画像セットにデジタルで配置して、仮想骨/インプラント構成を作成する。選択したインプラントを挿入して曲げて形を整えた後、実際の応力値を術中に測定する。骨/インプラント構成が許容可能長期応力スコアの範囲内に入るまで、曲げおよび応力値の測定のプロセスが繰り返される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における脊椎アライメント矯正処置のための最適な長期整形外科インプラント構成を決定する方法であって、
(a)術前医用画像のセットに基づいて、選択された脊椎アライメントパラメータの初期値および所望の補正された値のセットを決定することと、
(b)前記選択された脊椎アライメントパラメータを補正するための少なくとも1つのインプラント候補を選択することと、
(c)前記術前医用画像のセットにおいて、前記選択された脊椎アライメントパラメータを補正するための前記少なくとも1つのインプラント候補をデジタル配置して、少なくとも1つの骨/インプラント組み合わせ候補の少なくとも1つの仮想構成を作成することと、
(d)(i)前記対象の臨床的に関連するデータ、および(ii)医療データベースからの同様に特徴付けられた症例に基づいて、前記少なくとも1つの仮想構成の許容可能長期応力スコア範囲を決定することと、
(e)少なくとも1つの仮想構成に関して、(i)前記少なくとも1つのインプラント候補に対して有限要素解析を実行して、前記少なくとも1つのインプラント候補の範囲に沿って応力スコアを決定し、(ii)前記選択された脊椎アライメントパラメータの予測される補正値を計算することと、
(f)前記少なくとも1つのインプラント候補から、前記長期的な応力スコアを最小化するインプラントを選択することと、
(g)術中に、前記選択されたインプラントを前記対象の脊椎に挿入することであって、前記挿入されたインプラントが、少なくとも1つの応力検出モードを有するように適合される、挿入することと、
(h)前記少なくとも1つの応力検出モードを使用して、前記挿入されたインプラントの長さに沿った各ポイントで術中に応力スコアを測定することと、
(i)前記挿入されたインプラントを修正し、前記許容可能長期応力スコア範囲内にあるインプラント構成が達成されるまで、ステップ(g)~(h)を繰り返すことと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記許容可能長期応力スコア範囲内にあるインプラント構成が達成されない場合、前記許容可能長期応力スコア範囲内にあるインプラント構成が達成されるまで、前記少なくとも1つのインプラント候補からの第2のインプラントでステップ(f)~(i)を繰り返す、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記許容可能長期応力スコア範囲内にある前記インプラント構成が、補正された脊椎アライメントパラメータ、最小応力スコア、および最大長期残存の組み合わせを有し、従って、最適な長期整形外科インプラント構成が提供される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記挿入されたインプラントを修正することが、前記挿入されたインプラントの形状、曲率、または配向のうちの少なくとも1つを修正することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記挿入されたインプラントが、光弾性コーティングを備え、
応力スコアを前記術中に測定することが、前記光弾性コーティングの光弾性解析を使用して、その場で前記インプラントの応力場パターンを取得する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
力の測定が、ファイバブラッググレーティングタイプのセンサーによって達成される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
力の測定が、外科用ロボットからの触覚力フィードバックによって達成される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
応力解析が、スクリューサドルに、または固定ロッドに接続されたセンサーを使用して実行される、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記インプラントが、椎弓根スクリュー、椎体間およびロッドのいずれかを含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
事前選択されたインプラントの形状、サイズ、組成、配向および位置のうちの少なくとも1つが、異なるインプラントによって置き換えられ得る、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
インプラント候補構成が、各インプラントの形状、サイズ、長さ、直径、組成、位置、および配向のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記術前医用画像が、少なくとも1つの二次元または三次元のCT、MRI、X線、および動的モーションキャプチャ画像である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
脊椎アライメントパラメータが、矢状/冠状コブ、TK、LL、SVA、SS、PI、PT、AVT-T、AVT-L、CD、RAD、骨盤傾斜のうちの少なくともいくつかを含む、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記長期許容可能応力スコアが、患者ごとに計算される、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記インプラントが、少なくとも1つの椎間ロッドおよび少なくとも2つの椎弓根スクリューを含む、
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
特性が、形状、直径、長さ、および材料組成のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記選択された骨/インプラント組み合わせが、他の骨/インプラント組み合わせ候補よりも前記脊椎アライメントパラメータをより適切に補正するように選択される、
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
臨床的関連情報が、(i)過去の病歴、(ii)年齢、(iii)BMI、(iv)性別、(v)併存疾患、(vi)民族性、および(vii)現在の臨床状態のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの前記インプラントの選択が、前記選択された脊椎アライメントパラメータの前記所望の補正値、前記対象の臨床データ、医療データベース、および前記脊椎アライメントパラメータを補正する術前計画のうちの少なくとも1つに基づく、
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ビッグデータ解析、統計解析、および前記長期応力スコアに従った前記個々の対象の応力スコアの前記フィードバックのモデリングのうちの少なくとも1つをさらに使用する、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記モデリングが、骨インプラントシステムの手術を受けている対象から収集された情報のデータベースに基づく、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記骨インプラントシステムの再置換手術に戻った対象の前記骨インプラントシステムの残存を解析するように、前記有限要素解析を使用した術前計画を使用する、
請求項15に記載の方法。
【請求項23】
対象における脊椎アライメント矯正のための最適な長期整形外科インプラント構成を決定するための外科的システムであって、
(i)整形外科構成の有限要素解析用モジュールと、(ii)大規模データベースにおいて文書化された従前の症例を使用してインプラント構成の長期的影響を評価するための解析エンジンと、(iii)脊椎インプラント配置を使用して矯正された脊椎の仮想構成からの脊椎アライメントパラメータを決定するための計算ユニットと、(iv)インプラント構成の予測応力スコアが長期持続可能性のための所定の許容可能応力スコア内にあるかどうかを決定するための比較器ユニットと、を含む制御ユニットであって、
(a)術前医用画像のセットに基づいて、選択された脊椎アライメントパラメータの初期値および所望の補正された値のセットを決定することと、
(b)前記選択された脊椎アライメントパラメータを補正するための少なくとも1つのインプラント候補を選択することと、
(c)前記術前医用画像のセットにおいて、前記選択された脊椎アライメントパラメータを補正するための前記少なくとも1つのインプラント候補をデジタル配置して、少なくとも1つの骨/インプラント組み合わせ候補の少なくとも1つの仮想構成を作成することと、
(d)(i)前記対象の臨床的に関連するデータ、および(ii)医療データベースからの同様に特徴付けられた症例に基づいて、前記少なくとも1つの仮想構成の許容可能長期応力スコア範囲を決定することと、
(e)少なくとも1つの仮想構成に関して、(i)前記少なくとも1つのインプラント候補に対して有限要素解析を実行して、前記少なくとも1つのインプラント候補の範囲に沿って応力スコアを決定し、(ii)前記選択された脊椎アライメントパラメータの予測される補正値を計算することと、
(f)前記少なくとも1つのインプラント候補から、前記長期的な応力スコアを最小化するインプラントを選択することと、
によって最適なインプラント構成を決定するように構成されている、制御ユニットと、
対象の前記脊椎に挿入されたインプラントにおける前記応力を測定するためのシステムであって、前記挿入されたインプラント上の光弾性コーティングの画像を解析することによって前記インプラントに生じる応力パターンを決定するように適合されたカメラを含む、システムと、
を備え、
前記少なくとも1つのインプラント候補の術中調整を可能にするように構成されてその応力スコアを最小限に抑え、それによって改善された長期整形外科インプラント構成を提供する、
外科的システム。
【請求項24】
対象における脊椎インプラント構成の長期的成功のモデル化および予測する方法であって、
(a)複数のインプラント候補について、(i)対象の脊椎の術前画像に仮想的に挿入された前記少なくとも1つのインプラント候補の仮想構成の有限要素解析を使用して決定された前記少なくとも1つのインプラント候補内の応力と、(ii)選択された脊椎パラメータの計算値と、(iii)前記対象の臨床データおよび同様の症例のデータベースからのデータに基づいて、少なくとも1つのインプラント候補の長期応力スコアを計算することと、
(b)(i)前記対象の臨床的に関連するデータと、(ii)医療データベースからの同様に特徴付けられた症例とに基づいて、前記少なくとも1つのインプラント候補の前記仮想構成の許容可能長期応力スコア範囲を決定することと、
(c)少なくとも1つのインプラント候補の前記長期応力スコアが前記許容可能長期応力スコアの範囲内にない場合、前記インプラント候補のうちの最適な1つの前記応力スコアが前記許容可能長期応力スコアの範囲内に入るまで、前記複数のインプラント候補から別のインプラント候補を選択することと、
(d)前記最適なインプラントを前記対象に術中に挿入することであって、前記インプラントが、少なくとも1つの応力検出モードを有するように適合される、挿入することと、
(e)前記挿入されたインプラントの応力場パターンを取得するように、前記挿入された最適なインプラントに沿った点で応力を測定するように、前記少なくとも1つの応力検出モードを使用することと、
(f)所与期間にわたる前記応力場パターンにおける予測される変化を決定するように、前記脊椎と前記挿入された最適なインプラントとの間の相互作用を所与期間にわたってシミュレートするように、前記応力場パターンをモデルに入力することと、
(g)前記応力場パターンにおける前記予測される変化に基づいて、前記挿入された最適なインプラントが前記所与期間にわたって最小の長期応力スコアを有するように、前記挿入された最適なインプラントの最適な形状を計算することと、
(h)ステップ(g)の計算に基づいて、前記挿入された最適なインプラントを前記計算された最適な形状に調整することと、
を含む、方法。
【請求項25】
対象における骨インプラントの成功の長期追跡のための方法であって、
(a)(i)対象の脊椎の術前画像に仮想的に挿入された前記複数のインプラント候補の各々の仮想構成の有限要素解析を使用して選択された前記複数のインプラント候補内の応力と、(ii)選択された脊椎パラメータの計算値と、(iii)前記対象の臨床データおよび同様の症例のデータベースからのデータに基づいて、複数のインプラント候補から最適なインプラントを選択することと、
(b)前記対象に前記最適なインプラントの許容可能長期応力スコアを決定することと、
(c)骨インプラントシステムを生成するように、前記最適なインプラントを前記対象に術中に挿入することであって、前記最適なインプラントは、前記骨インプラントシステム上の応力のリアルタイム測定をリモートで提供することができる少なくとも1つの応力検出モードが装備されている、挿入することと、
(d)術後一定の時間間隔で、医用画像の解析によって、および前記少なくとも1つの応力検出モードで検出された応力場パターンの有限要素解析によって、選択された脊椎パラメータを決定することと、
(e)前記選択された脊椎パラメータの、および前記応力場パターンのリアルタイムフィードバックを、前記対象および外科医のうちの少なくとも一方に提供することと、
(f)前記脊椎パラメータの、および骨インプラントシステムの前記応力場パターンのうちの少なくとも一方の進展を測定することと、
を含む、方法。
【請求項26】
前記選択された脊椎パラメータが、矢状/冠状コブ、TK、LL、SVA、SS、PI、PT、AVT-T、AVT-L、CD、RAD、骨盤傾斜のうちの少なくとも1つを含む、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ビッグデータ解析、統計解析、および前記長期応力スコアに従った前記個々の対象の応力スコアの前記フィードバックのモデリングのうちの少なくとも1つをさらに使用する、
請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記モデリングが、脊椎インプラント手術を受けた対象から収集された情報のデータベースに基づく、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記骨インプラントシステムの再置換手術に戻った対象の前記骨インプラントシステムの残存を解析するように、前記有限要素解析を使用した術前計画を使用する、
請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、特に長期のインプラントの残存および外科的結果を予測および最適化するための脊椎器具の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
軸骨格の不安定性に起因する腰痛は、衰弱を引き起こし、腰椎の安定化のために毎年多数の手術を必要とする。外科的安定化を必要とする脊椎関連の衰弱の他の原因は、後弯症、脊柱側弯症、および脊椎の他の異常な湾曲を含む。隣接する椎骨を固定するためのいくつかの外科的処置は、椎間ロッドを使用して脊柱を安定させ、真っすぐにする。脊柱および埋め込まれたロッドの両方に強い力が発生するため、このような脊椎の器具操作の多くは、計装された骨の融合を達成できないか、インプラントが失敗し、痛み、障害、および再置換治療の必要性につながる。そのような失敗は、障害を軽減し、成功の欠如を修正することを試みるために、ほとんどの場合、最初のものより複雑で困難な追加の外科的処置を必要とする。
【0003】
さらに、多くの二次的な脊椎関連の病状は、骨インプラントシステムへの応力のために、経時的に発生し得る。これらの二次的病状のいくつかは、外科的癒合に隣接する椎骨または椎間板での隣接レベルの変性、再置換手術を必要とする外科的癒合に隣接する隣接セグメント疾患と、近位接合部後弯と、近位接合部障害と、脊柱後弯代償不全症候群、脊椎再調整のための再置換手術を必要とする進行性矢状変形とを含む。これらの病状は、手術後何ヶ月、何年、または何十年も発症し得、しばしば再置換手術が必要になる。さらに、手術後しばらくすると、スクリューの引き抜きおよびインプラントの破損など、術後の器具の故障が発生し得る。これらの遅延した障害は、二次的な病状、または神経筋疾患における進行性脊柱側弯症、加齢または慢性ステロイド治療における進行性骨粗鬆症、酷使による損傷、および過度の体重増加などの要因から生じる可能性がある。
【0004】
今日、脊椎手術後の患者の病状および器具の故障の発生は、三次元画像から決定され得るように、術前および術後の脊椎アライメントパラメータ、ならびに解剖学的程度に強く関連しており、手術中の調整、および計画された脊椎手術技術が、臨床的に関連する患者固有の危険因子として、これらの要因を考慮に入れる必要があることが理解されている。
【0005】
以前の努力は、関節置換のために骨インプラントを最適化するために術中の力を計算することを試みたが、これらの以前の取り組みは、はるかに複雑な整形外科および神経系である脊椎以外の骨および関節への適用のためであった。そのような参考文献のいくつかは、膝関節形成術に関連する、関節に対してインプラントを移植する方法である“Intraoperative Scanning for Implant Optimization”についてのM.D.HughesのUS第9,358,114号、関節置換手術に関連する、手術中の関節負荷を測定する“Intraoperative Joint Force Measuring Device,System and Method”についてのBanksらのUS7,458,989、ならびに“Automated Patient-Specific Bone-Implant Biomechanical Analysis”についてのHoffmannらのUS8,855,389およびEdwardsらのUS8,126,234の両方を含む。これらの後者の2つの特許において、計画は、「一般的な骨インプラント有限要素メッシュのデジタルライブラリ」に基づいており、実際の骨インプラント関係には従っていない。前述の参考文献における方法は、術中の力を測定しており、それらは、長期的な結果を予測していない。
【0006】
Heckerらの米国特許第9,918,642号は、ファイバブラッググレーティングセンサー(FBGセンサー)を備えるが、術中測定用ではない、生物学的圧力測定デバイスを記載している。SatoらのOral Surg.Oral Med.Oral Pathol.Oral Radiol.2012;Vol.114 (suppl 5);pp.S60-S68において掲載された“A comparative evaluation of the hybrid technique for fixation of the sagittal split ramus osteotomy in mandibular advancement by mechanical,photoelastic,and finite element analysis”というタイトルの記事において、 計装された骨の合成モデルの応力測定の様々な方法について記載されている。
【0007】
例えば、Asian Spine J 2016;10(2):205-214において掲載された“Long-Term Effects of Segmental Lumbar Spinal Fusion on Adjacent Healthy Discs:A Finite Element Study”というタイトルのSrinivasらによる記事において、有限要素解析の使用によって、融合した椎骨に隣接する椎間板に対する様々なタイプの脊椎介入の長期的影響を予測する試みがなされてきた。このような仮想解析により、特定の外科的介入の長期的影響の可能性を予測できるが、特定のインプラントに関連する実際のデータをリアルタイムで提供することはできない。Hoffmanらの“Automated patient-specific bone-implant biomechanical analysis”に関する上記のUS8,855,389は、骨インプラントシステムへの負荷のリアルタイム解析を提供せずに、骨インプラント解析のみを有する骨インプラントシステムの生体力学的解析の方法を記載している。米国で出願第16/509,630号として出願され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、共有の国際特許公開第WO/2018/131044号は、脊椎手術の結果を予測するための画像ベースの病理学および人工知能を使用する方法を記載している。
【0008】
このセクションにおいて、および本明細書の他のセクションにおいて言及されている各刊行物の開示は、各々がその全体において、参照によって本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0009】
術中の力を決定するだけでなく、好ましい長期の外科的結果および長期の骨インプラントの残存をもたらすインプラントにかかる力のレベルを予測するために、従来技術のシステムおよび方法の少なくともいくつかの欠点を克服する方法の必要性が存在する。
【0010】
脊椎変形の外科的矯正の分野における課題は、より真っ直ぐな脊柱と、長期間残存するインプラントシステムの両方を提供する必要があることである。インプラントによって矯正された脊椎にかかる応力は、スクリューの引き抜きにつながるか、インプラント自体の故障の素因となり得るため、応力測定および最適な脊椎矯正は、反対方向にある傾向となり得る。したがって、高応力のロッドの使用を必要となり得る、脊椎変形の最適な矯正の必要性と、ロッドに加えられる力の高レベルのためにより制限され得る、長寿命予測の必要性との間の妥協点を提供する必要がある。
【0011】
本開示は、術中の光弾性応力解析と組み合わせたインプラントの術前有限要素解析を使用して、脊椎インプラントの残存を最適化するための新しい例示的なシステムおよび方法を記載する。方法の第1の段階において、前述のWO/2018/131044において説明されているように、術前の画像ベースの予測は、骨インプラントシステムとその事前選択されたインプラントの有限要素解析と組み合わされ、それらが融合または再調整することを目的とした椎骨内に仮想的にその場で配置される。本開示において、異なるインプラントは、長さ、厚さ、もしくは材料などの異なる物理的特性を有するインプラント、またはその曲率を調整することによって異なる形状の単一の物理的インプラント、または多成分インプラント構成のいずれかとして区別されると理解される。有限要素解析は、骨インプラントシステムの長さに沿った要素の応力スコアの決定を生成する。これらの応力スコアは、インプラントシステム全体の個々のロッドコンポーネントの範囲に沿った各ポイントにかかる可能性のある術後応力のレベルを示す。椎弓根スクリューと骨の間、椎弓根スクリューとロッドの間、および各インプラントコンポーネントの特定の部分内の接触領域は、システムによって考慮される最大の潜在的応力の領域を構成する。
【0012】
予測される応力スコアは、短期および経時の両方の、一連の時点で計算される。許容可能短期および長期応力スコアは、少なくとも関連する人口統計学的特徴、BMI、骨密度、器具の必要性、現在または将来の予測される病状、予測される活動レベル、および予測される寿命の特定の組み合わせに応じて、特定の対象で異なる。予測ソフトウェアに入力された術前患者データにより、特定の骨病変の発症の可能性およびその他の長期的な結果に関する追加の計算が可能になる。選択したインプラントコンポーネントごとに、許容可能応力スコアのセットは、決定され、これにより、骨インプラントの長期的な残存の可能性が最大になる。予測は、他の患者に対する以前の脊椎矯正処置の結果に基づいており、脊椎固定術か変形矯正かを問わず、同じタイプの処置を受けた患者に関する関連する長期情報を含む大規模なデータベースによって追跡される。特定の患者について、有限要素解析および将来の患者の健康状態シナリオの統計的予測を含む術前解析は、予測アルゴリズムに組み込まれる。移植されるロッド(複数可)は、外科医または他の開業医が処置を実行する経験に従って、または機械で生成された計画と協調して選択され、輪郭が描かれ、患者の病状に適切な解決策を提供し、骨インプラントシステムの全長に沿って、所定の許容範囲内にある、結果として生じる応力スコアを有する。その患者に対して示された許容範囲内の応力スコアは、提案されたロッドの形状および寸法が、患者の問題に対する長期的な解決策を提供する上で許容可能であることを示している。その患者に示された許容範囲外の応力スコアは、提案されたロッドの形状および寸法が許容できないことを示し、代替の骨インプラント構成を選択する必要がある。
【0013】
処置は、より詳細には、次のステップを含む。
術前データは、収集され、予測ソフトウェアに入力される。収集されたデータは、少なくとも、
(i)年齢、性別、民族性、身長、体重、BMIを含むが、これらに限定されない患者の人口統計データ、
(ii)骨密度測定、チャールソン併存疾患指数(Charlson Comorbidity Index)(CCI)を使用した併存疾患、米国麻酔科学会(American Society of Anesthesiologists)グレード(ASA)および診断、患者が喫煙者であるかどうか、1日あたりのタバコの本数などの健康適格要因を含む術前臨床データ、
(iii)胸椎後弯症、腰椎前彎、穂軸、脊椎垂直軸、骨盤発生率-骨盤前彎の不一致、骨盤傾斜、仙骨傾斜などであるが、限定はされない、脊椎アライメントパラメータ、
(iv)脊椎すべり症のグレード、椎間間距離、狭窄、椎間板の高さの比率、可動域などの脊椎安定性パラメータ、
(v)2DX線スキャンおよび3D、CTおよび/またはMRIスキャンを含む放射線データ、および/または他の医用画像のうちのいくつかを含む。
【0014】
外科医は、自分の以前の経験に基づいてインプラント候補のセットを選択するか、機械学習および少なくとも1つの医療データベースから収集した情報に基づいて、インプラント候補のセットを選択するようにシステムに指示する。このシステムは、特定の患者の個々のインプラントの最大許容応力スコアを含む、インプラント候補のセットの選択を支援するように、統計解析、ビッグデータ、および人工知能解析を患者データと組み合わせて使用する。その後、インプラントに沿った応力分布およびそれに続くひずみを示す、有限要素解析を使用したコンピューターによる評価は、様々なレベルの機械的応力下での各骨インプラントシステムの成功の可能性を判断するように、実行される。追加の関連する生体力学的測定は、インプラントに与えられた力の下でのインプラントの全体的な変位を含む、インプラントの安定性の定量的測定を提供する。このシナリオのさらなる実装は、より多くのデータの取得、より良いイメージング、および臨床的に関連するパラメータを決定するための改善された技術によって追加される可能性がある。
【0015】
有限要素解析およびインプラントの安定性の評価に基づいて、椎骨の高さ、深さ、角度に関連する、長さおよび直径、材料および組成、曲率または形状、位置および配向のうちの少なくともいくつかを含む、最適なインプラント特性が選択される。最適なインプラントを選択する際に考慮すべき他の要因は、融合する椎骨のアイデンティティおよび数、ならびに上部および下部の計装された椎骨の位置を含む。続いて、各患者および各インプラント構成について、ビッグデータ、統計解析、および人工知能評価にかけられた有限要素解析および術前患者データに従って、骨インプラントシステムに対する許容可能レベルの応力が選択される。
【0016】
方法の第2段階は、外科的処置自体の間に物理的に実行される術中段階であり、光弾性材料でコーティングされた事前選択されたインプラントが、患者の所望の矯正と一致する形状に曲げられ、光弾性応力解析にかけられる。初期の計画された形状は、上で記載の予測処置によって決定された術前計画によって決定され、手術中に外科医によって修正され得る。光弾性解析は、選択した骨インプラントシステムで実行され、ディスプレイシステムで、インプラントの長さに沿った実際のひずみ分布が明らかになる。外科医は、インプラントの輪郭を調整して、骨インプラントシステムへの応力を低減し、応力スコアが所定の許容範囲内に入るようにすることができる。術前モデリングにおいて、考慮すべき追加の結果は、例えば、ロッドの長さに沿った特定の位置でのロッドの破損、または椎弓根スクリューの軸方向の引き抜き限界など、非常に高いまたは仮想の負荷条件下での骨インプラント構造の強度を含む。出力は、骨インプラントシステムの局所的な障害のリスク推定値を含む可能性がある。したがって、術中応力解析は、術前仮想有限要素解析と並行して、インプラントの様々な潜在的に許容可能な形状に関する一連の応力スコアを提供する。その後、このシリーズは、術前に割り当てられた所定の許容可能応力スコア範囲と比較される。
【0017】
方法のこのステップの目新しさは、術前外科的計画だけに頼るのではなく、術中の応力解析に基づいて外科医が外科的結果を最適化できることである。
【0018】
対象の骨の将来の構成のみを考慮する従来技術の方法とは異なり、現在開示されている方法のいくつかは、骨とインプラントの相互関係を考慮して、骨インプラントシステムの長期残存を予測し、近位接合部後弯、近位接合部不全、遠位接合部後弯、遠位接合部不全、隣接レベルの疾患などであるがこれらに限定されない、インプラント不全のリスクを低減することによって、外科的結果を最適化する際に使用する。
【0019】
さらに、現在の骨構成および機械的特性のみに基づいて最適な外科的計画を決定する従来技術の方法とは異なり、現在開示されている方法は、骨インプラントシステムの経時変化の予測に基づいて最適なインプラント構成を決定するように、使用され得る。経時に伴うそのような予測される変化は、対象の加齢、喫煙、癌または他の病状の影響、および結果として生じる骨密度の変化、インプラント疲労破壊、元の脊椎のずれの矯正による骨およびインプラントの応力、ロッドおよびスクリューの数、サイズ、配置、ロッドの構成、曲げ、およびインプラントの構造、ならびに患者の生理機能に対する機器の影響に関連するその他の要因を考慮に入れている。例えば、成人の奇形手術において、術後の正の矢状面の不均衡および残存する胸腰椎後弯の増加の存在は、高い失敗の発生率を有する。これらは、応力集中および遷移の2つの領域である。胸腰椎および腰仙椎領域における癒合の失敗および器具の緩みは、骨インプラントシステムの引張力および剪断力の増加に関連し得る。
【0020】
データベースを使用し、機械学習または他の形式の人工知能を適用することで、数年または数十年先の時点を含む、将来の複数の時点で予測を実行し得る。有利な実装において、骨インプラントシステムの相互作用の動的モデルまたは仮想シミュレーションも、使用し得る。骨インプラントシステムの経時的な予測される相互作用を決定する際には、対象の脊椎全体の解析を実行することが好ましい。関連性のある脊椎パラメータは、上で画定されている。例えば、過度の腰椎前彎は、対象の椎骨(複数可)に作用する力を増加させ得、対象の椎骨を支持するために挿入されたロッドの現在の生体力学的特性に影響を与えるだけでなく、腰椎前彎が特定の病的状態で経時とともに増加するため、将来の力にも影響を及ぼす。ジストロフィーまたは他の進行性の原因による筋力低下のある患者において、後弯症および脊柱側弯症は、経時とともに悪化する傾向があり、骨インプラントシステムに追加の応力をかける可能性がある。骨インプラントシステムの相互進展を決定する際には、強力なインプラントと骨の境界面の作成が構造的、生体力学的および機能的安定性の重要な要素であるため、経時的なインプラントのオッセオインテグレーションも考慮される。
【0021】
システムは機械学習をデータベースに適用し、特定の患者の特定の機能を考慮するため、これらすべての要素をシステムで考慮に入れ得る。長期にわたる骨インプラントシステムのモデリングは、ビッグデータ解析および予測モデルを使用して行われる。さらに、骨インプラントが失敗し、再置換手術に戻った手術患者において、応力スコアに応じたインプラントの残存率をモデリングによって計算できるため、将来の患者の脊椎矯正の計画にさらに使用できる遡及情報が提供される。モデルに組み込まれる相対パラメータは、少なくとも術前の外科的計画、術中の応力スコア、術後のイメージング、および有限要素解析を使用した応力の計算を含む。それにより、応力スコアと患者の転帰との間の相関関係を決定することができ、したがって、長期骨インプラント残存のための閾値または最適な応力スコアも決定することができる。
【0022】
他の実装によれば、インプラントまたはスクリューなどの付随する器具は、術後にリアルタイムで負荷を測定し、負荷レベルに関してリアルタイムで更新されるユーザーによって監視されるアプリケーションに出力を送信するセンサーを装備され得る。この出力に基づいて、ユーザーは、必要に応じて自分の活動または位置を矯正することを実行し得る。このオプションは、術前および術中の解析のバックアップであり、このような矯正の必要性を防ぐように設計されている。長期フォローアップは、X線画像、オスウェストリー障害指数(Oswestry Disability Index)(ODI)を使用した反復評価によって対象のフィードバック、および臨床評価によっても達成され得る。
【0023】
骨インプラントシステムの長期的な成功をモデル化および予測する関連する方法には、術中インプラント処置中に、選択したインプラントを対象の脊椎に挿入するステップが追加され、該インプラントは、少なくとも1つの応力検出モードを持つように適合される。インプラントの応力場パターンを取得するために、関連する応力検出モードを使用して、要素に沿った各ポイントで応力を測定する。それでも術中に、応力場パターンをモデルに入力して、特定の期間にわたる骨とインプラントの間の相互作用をシミュレートし、その期間における応力場パターンの予測される変化を決定する。最後に、応力場パターンのこれらの予測される変化に基づいて、所定の期間にわたって所定の許容可能応力スコア内に入るようにインプラントの最適な形状を計算する。上記の長期予測計算に基づいて、許容可能長期応力スコア内にあるインプラント構成が達成されるまで、インプラントを曲げる。
【0024】
骨インプラントの成功を長期的に追跡するための第3の関連する方法は、骨インプラントシステム上の応力の遠隔のリアルタイム測定を提供することができる少なくとも1つの応力検出モードを備えたインプラントを使用することを含む。術後の一定の時間間隔で、脊椎パラメータ(矢状/冠状コブ、TK、LL、SVA、SS、PI、PT、AVT-T、AVT-L、CD、RAD、および骨盤傾斜)の決定は、有限要素解析による医用画像および応力場パターンの解析によって達成される。脊椎パラメータおよび応力場パターンのリアルタイムフィードバックは、外科医に提供される。データは、保存され、脊椎パラメータの進展および骨インプラントシステムの応力場パターンは、経時的に追跡される。骨インプラントシステムの進展に続くデータのレビューにより、外科医は長期的なフィードバックを提供することができる。この方法は、ビッグデータ解析と、統計解析と、長期応力スコアに従った個々の対象の応力スコアのフィードバックのモデリングのうちの少なくとも1つを使用し得る。
【0025】
脊椎器具の長期追跡および予測のためのこの方法のさらなる変形は、モデリングが、骨インプラントシステム手術を受けている対象から収集された、有形の、非一時的な、コンピューター可読の記憶媒体などの情報のデータベースに基づくものであり、または有限要素解析を伴う術前計画を使用して、骨インプラントシステムの再置換手術に戻った対象の骨インプラントシステムの残存を解析する。
【0026】
本開示の方法およびシステムの他の例示的な実装に従って、対象における脊椎アライメント矯正処置のための最適な長期整形外科インプラント構成を決定する方法であって、
(a)術前医用画像のセットに基づいて、選択された脊椎アライメントパラメータの初期値および所望の補正された値のセットを決定することと、
(b)選択された脊椎アライメントパラメータを補正するための少なくとも1つのインプラント候補を選択することと、
(c)術前医用画像のセットにおいて、選択された脊椎アライメントパラメータを補正するための少なくとも1つのインプラント候補をデジタル配置して、少なくとも1つの骨/インプラント組み合わせ候補の少なくとも1つの仮想構成を作成することと、
(d)(i)対象の臨床的に関連するデータ、および(ii)医療データベースからの同様に特徴付けられた症例に基づいて、少なくとも1つの仮想構成の許容可能長期応力スコア範囲を決定することと、
(e)少なくとも1つの仮想構成に関して、(i)少なくとも1つのインプラント候補に対して有限要素解析を実行して、少なくとも1つのインプラント候補の範囲に沿って応力スコアを決定し、(ii)選択された脊椎アライメントパラメータの予測される補正値を計算することと、
(f)少なくとも1つのから、長期的な応力スコアを最小化するインプラントを選択することと、インプラント候補
(g)術中に、選択されたインプラントを対象の脊椎に挿入することであって、挿入されたインプラントが、少なくとも1つの応力検出モードを有するように適合される、挿入することと、
(h)少なくとも1つの応力検出モードを使用して、挿入されたインプラントの長さに沿った各ポイントで術中に応力スコアを測定することと、
(i)挿入されたインプラントを修正し、許容可能長期応力スコア範囲内にあるインプラント構成が達成されるまで、ステップ(g)~(h)を繰り返すことと、を含む、方法がさらに提供される。
【0027】
そのような方法において、許容可能長期応力スコア範囲内にあるインプラント構成が達成されない場合、ステップ(f)~(i)は、許容可能長期応力スコア範囲内にあるインプラント構成が達成されるまで、少なくとも1つのインプラント候補からの第2のインプラントで繰り返される。上で記載の方法のいずれかにおいて、許容可能長期応力スコア範囲内にあるインプラント構成は、補正された脊椎アライメントパラメータ、最小応力スコア、および最大長期残存の組み合わせを有し、従って、最適な長期整形外科インプラント構成が提供されるべきである。さらに、挿入されたインプラントを修正することは、挿入されたインプラントの形状、曲率、または配向のうちの少なくとも1つを修正することを含み得る。
上で記載の方法の追加の実装において、挿入されたインプラントは、光弾性コーティングを含み得、応力スコアを術中に測定するステップは、光弾性コーティングの光弾性解析を使用して、その場でインプラントの応力場パターンを取得し得る。
【0028】
さらに、前述の方法のいずれかにおいて、力の測定は、ファイバブラッググレーティングタイプのセンサーによって達成され得るか、または外科用ロボットからの触覚力フィードバックによって達成され得る。さらに、応力解析は、スクリューサドルに、または固定ロッドに接続されたセンサーを使用して実行され得る。さらに、インプラントは、椎弓根スクリュー、椎体間およびロッドのいずれかを含み得、事前選択されたインプラントの形状、サイズ、組成、配向および位置のうちの少なくとも1つは、異なるインプラントによって置き換えられ得る。さらに、インプラント候補構成は、各インプラントの形状、サイズ、長さ、直径、組成、位置、および配向のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0029】
上で記載の方法のさらなる実装によれば、術前医用画像は、少なくとも1つの二次元または三次元のCT、MRI、X線、および動的モーションキャプチャ画像である。さらに、脊椎アライメントパラメータは、矢状/冠状コブ、TK、LL、SVA、SS、PI、PT、AVT-T、AVT-L、CD、RAD、骨盤傾斜のうちの少なくともいくつかを含み得る。
【0030】
いずれかの方法において、長期許容可能応力スコアは、患者ごとに計算され得る。さらに、インプラントは、少なくとも1つの椎間ロッドおよび少なくとも2つの椎弓根スクリューを含み得、インプラントの特性は、形状、直径、長さ、および材料組成のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0031】
これらの方法において、選択された骨/インプラント組み合わせは、他の骨/インプラント組み合わせ候補よりも脊椎アライメントパラメータをより適切に補正するように選択され得る。さらに、臨床的関連情報は、(i)過去の病歴、(ii)年齢、(iii)BMI、(iv)性別、(v)併存疾患、(vi)民族性、および(vii)現在の臨床状態のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0032】
最後に、これらの方法は、骨インプラントシステムの再置換手術に戻った対象の骨インプラントシステムの残存を解析するように、有限要素解析を使用した術前計画を使用し得る。
【0033】
本開示に記載されるさらなる実装によれば、対象における脊椎アライメント矯正のための最適な長期整形外科インプラント構成を決定するための外科的システムであって、
(i)整形外科構成の有限要素解析用モジュールと、(ii)大規模データベースにおいて文書化された従前の症例を使用してインプラント構成の長期的影響を評価するための解析エンジンと、(iii)脊椎インプラント配置を使用して矯正された脊椎の仮想構成からの脊椎アライメントパラメータを決定するための計算ユニットと、(iv)インプラント構成の予測応力スコアが長期持続可能性のための所定の許容可能応力スコア内にあるかどうかを決定するための比較器ユニットとを含む制御ユニットであって、制御ユニットが、
(a)術前医用画像のセットに基づいて、選択された脊椎アライメントパラメータの初期値および所望の補正された値のセットを決定することと、
(b)選択された脊椎アライメントパラメータを補正するための少なくとも1つのインプラント候補を選択することと、
(c)術前医用画像のセットにおいて、選択された脊椎アライメントパラメータを補正するための少なくとも1つのインプラント候補をデジタル配置して、少なくとも1つの骨/インプラント組み合わせ候補の少なくとも1つの仮想構成を作成することと、
(d)(i)対象の臨床的に関連するデータ、および(ii)医療データベースからの同様に特徴付けられた症例に基づいて、少なくとも1つの仮想構成の許容可能長期応力スコア範囲を決定することと、
(e)少なくとも1つの仮想構成に関して、(i)少なくとも1つのインプラント候補の範囲に沿って応力スコアを決定するように、少なくとも1つのインプラント候補に対して有限要素解析を実行して、(ii)選択された脊椎アライメントパラメータの予測される補正値を計算することと、
(f)少なくとも1つのインプラント候補から、長期的な応力スコアを最小化するインプラントを選択することと、によって最適なインプラント構成を決定するように構成されている、制御ユニットと、
対象の脊椎に挿入されたインプラントにおける応力を測定するためのシステムであって、システムが、挿入されたインプラント上の光弾性コーティングの画像を解析することによってインプラントに生じる応力パターンを決定するように適合されたカメラを含む、システムとを備え、システムは、少なくとも1つのインプラント候補の術中調整を可能にするように構成されてその応力スコアを最小限に抑え、それによって改善された長期整形外科インプラント構成を提供する、外科的システムが提供される。
【0034】
24.対象における脊椎インプラント構成の長期的成功のモデル化および予測する方法であって、
(a)複数のインプラント候補について、(i)対象の脊椎の術前画像に仮想的に挿入された少なくとも1つのインプラント候補の仮想構成の有限要素解析を使用して決定された少なくとも1つのインプラント候補内の応力と、(ii)選択された脊椎パラメータの計算値と、(iii)対象の臨床データおよび同様の症例のデータベースからのデータに基づいて、少なくとも1つのインプラント候補の長期応力スコアを計算することと、
(b)(i)対象の臨床的に関連するデータと、(ii)医療データベースからの同様に特徴付けられた症例とに基づいて、少なくとも1つのインプラント候補の仮想構成の許容可能長期応力スコア範囲を決定することと、
(c)少なくとも1つのインプラント候補の長期応力スコアが許容可能長期応力スコアの範囲内にない場合、インプラント候補のうちの最適な1つの応力スコアが許容可能長期応力スコアの範囲内に入るまで、複数のインプラント候補から別のインプラント候補を選択することと、
(d)最適なインプラントを対象に術中に挿入することであって、インプラントが、少なくとも1つの応力検出モードを有するように適合される、挿入することと、
(e)挿入されたインプラントの応力場パターンを取得するように、挿入された最適なインプラントに沿った点で応力を測定するように、少なくとも1つの応力検出モードを使用することと、
(f)所与期間にわたる応力場パターンにおける予測される変化を決定するように、脊椎と挿入された最適なインプラントとの間の相互作用を所与期間にわたってシミュレートするように、応力場パターンをモデルに入力することと、
(g)応力場パターンにおける予測される変化に基づいて、挿入された最適なインプラントが所与期間にわたって最小の長期応力スコアを有するように、挿入された最適なインプラントの最適な形状を計算することと、
(h)ステップ(g)の計算に基づいて、挿入された最適なインプラントを計算された最適な形状に調整することと、を含む、方法。
【0035】
本開示に記載されるさらなる実装によれば、対象における骨インプラントの成功の長期追跡のための方法であって、
(a)(i)対象の脊椎の術前画像に仮想的に挿入された複数のインプラント候補の各々の仮想構成の有限要素解析を使用して選択された複数のインプラント候補内の応力と、(ii)選択された脊椎パラメータの計算値と、(iii)対象の臨床データおよび同様の症例のデータベースからのデータに基づいて、複数のインプラント候補から最適なインプラントを選択することと、
(b)対象に最適なインプラントの許容可能長期応力スコアを決定することと、
(c)骨インプラントシステムを生成するように、最適なインプラントを対象に術中に挿入することであって、最適なインプラントは、骨インプラントシステム上の応力のリアルタイム測定をリモートで提供することができる少なくとも1つの応力検出モードが装備されている、挿入することと、
(d)術後一定の時間間隔で、医用画像の解析によって、および少なくとも1つの応力検出モードで検出された応力場パターンの有限要素解析によって、選択された脊椎パラメータを決定することと、
(e)選択された脊椎パラメータの、および応力場パターンのリアルタイムフィードバックを、対象および外科医のうちの少なくとも一方に提供することと、
(f)脊椎パラメータの、および骨インプラントシステムの応力場パターンのうちの少なくとも一方の進展を測定することと、を含む、方法が提供される。
【0036】
このような方法において、選択された脊椎パラメータは、矢状/冠状コブ、TK、LL、SVA、SS、PI、PT、AVT-T、AVT-L、CD、RAD、骨盤傾斜のうちの少なくとも1つを含み得る。さらに、方法は、ビッグデータ解析、統計解析、および長期応力スコアに従った個々の対象の応力スコアのフィードバックのモデリングのうちの少なくとも1つをさらに使用し得る。そのような場合において、モデリングは、脊椎インプラント手術を受けた対象から収集された情報のデータベースに基づき得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明は、以下の図面と併せて、以下の詳細な説明からより完全に理解および認識されるであろう。
【0038】
図1】本開示の方法の実行を可能にする使用の例示的なシステムを概略的に示す。
図2】脊椎インプラントの予測される長期応力スコアを術前に計算する例示的な方法のフローチャートである。
図3図2の術前仮想結果と、図1のシステムによって実行される骨インプラントシステムの術中物理的応力解析との統合方法の概略図を示す。
図4】骨インプラント構成の短期および長期応力を測定するための3つの対応するスケールの比較を示す。
図5】計装の応力時のインプラントの光弾性応力解析を模式的に示す。
図6A図2および図3の術前仮想骨インプラント解析の各ステップを詳細に説明し、最適なインプラントがどのように選択されるかを示す。
図6B図2および図3の術前仮想骨インプラント解析の各ステップを詳細に説明し、最適なインプラントがどのように選択されるかを示す。
図7図3の術中モデリングを実行するステップを示すが、患者の病状または臨床状態において予測される進行の長期予測に基づいている。
図8】システムにかかる過度の応力の望ましくない結果を予測および防止するために、システムの継続的な成功した機能を決定するための骨インプラントシステムの長期フォローアップの方法を示す。
図9】本開示の方法を実施することができるシステムにおいて使用するためのコントローラーの構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ここで、経時とともに骨インプラント統合および機能性を最適化するための潜在的に許容可能骨インプラントシステムの実際の採用のために、本開示の方法の実行を可能にする使用の例示的なシステムを概略的に示す図1を参照する。ステップAにおいて、対象14は、対象の脊柱15の外科的移植処置の間、手術台17上に横たわって示されている。この場合、マルチレベル脊椎固定ロッドであるインプラント12は、術前計画またはその外科医の適応に従って形状を有し、患者の臨床状況への適応のための解析に供されて選択される。インプラントロッド(複数可)は、外面上に光弾性コーティング、またはそれに接続された別のタイプの応力センサーを有し、椎弓根スクリュー16または他のハードウェアによって、融合される椎骨位置または再配置される椎骨領域に取り付けられる。CCDカメラまたはスキャナなどであるがこれらに限定されない、リアルタイムイメージングデバイス11は、インプラント12を含む、脊椎の関連領域を画像化する。カメラシステム、またはシステムコントローラーおよび関連するコンピューティングシステムは、光弾性応力解析を表示し、および記録し得、出力は、モニター13にリアルタイムで表示され得る、インプラント上の応力分布を生成するように使用される。応力分布は、示されている椎弓根スクリューへのロッドのアタッチメントの近くの明るい影付きの部分によって概略的に示す。次に、以下で説明するように、計算は、輪郭のあるロッドインプラントのどの領域が、許容応力スコアの範囲外であるのを示すように、外科医にフィードバックを提供するように、長期間にわたって所定の許容可能応力レベルをインプラントに沿った異なる点での現在の応力分布と比較することによって実行され得る。この例示的な実装において使用されるインプラントは、単一のマルチレベルロッドであるが、方法は、完全なマルチロッドインプラント構成を作り上げる、一連の単一の椎間ロッドに対しても実行され得ることが理解されるべきである。
【0040】
ステップBに示されている第1の応力スコア解析が許容可能と見なされない場合、外科医は、ロッドを除去し、形状を変更し、オプションで取り付け位置を補正して再挿入し、ステップCに示すように、光弾性解析を繰り返し得る。この処置は、使用するインプラントの輪郭に許容可能応力レベルを決定するために、より頻繁に繰り返すことができる。外科医は、許容可能応力レベルが達成されるまでインプラントの形状を調整し、許容可能応力レベルが達成されるステップDに示すように、その時点で外科的癒合処置が完了する。このプロセスの詳細は、次の図でさらに記載される。この方法の目新しさは、術前外科的計画だけに頼るのではなく、術中の応力解析に基づいて外科医が外科的結果を最適化できることである。
【0041】
ここで、脊椎インプラントの予測される長期応力スコアを術前に計算する例示的な方法のフローチャートを示す図2を参照する。ステップ21~24において、様々なカテゴリーの患者データは、システムに入力される。このような詳細なデータは、人口統計(21)、生理学的/臨床的パラメータ(22)、病理学的診断(23)、およびX線検査(24)を含み得る。人口統計データ21は、対象の年齢、性別、民族性、体重、身長、および肥満度指数のうちの少なくともいくつかを含み得る。臨床的パラメータ22は、骨密度Zスコア、血清ビタミンDおよびカルシウムレベル、ならびに併存疾患のうちの少なくともいくつかを含み得る。病理学的入力23は、少なくとも臨床診断および存在する脊椎変形のタイプを含み得る。解剖学的データ24は、少なくとも外科的に矯正されるべき領域の脊柱の2Dまたは3D放射線画像の形で取得される。次に、脊椎の病状または変形を画定する脊椎アライメントパラメータは、放射線画像24から計算される。このようなパラメータは、矢状/冠状コブ角、胸椎後弯(TK)、腰椎前彎(LL)、矢状垂直軸(SVA)、骨盤傾斜(PI)、仙骨傾斜(SS)、骨盤傾斜(PT)、頂端椎骨並進-胸椎(AVT-T)、頂端椎骨並進-腰椎(AVT-L)、CD、RAD、および骨盤傾斜のうちの少なくともいくつかを含み得る。
【0042】
ステップ25において、ステップ21~24において入力されたデータのコンピューター化された解析に基づいており、また、脊椎変形の1つ以上の大規模データベースから取得されたデータと、各々の場合に関連する脊椎変形の矯正における長期的な成功または失敗を含み、統計解析および人工知能を使用して、最適な脊椎アライメントとその最適なアライメントを達成するために必要な適切なインプラント(複数可)の決定が導き出され、そこから、インプラントの形状、サイズ、長さ、直径、組成、位置、および配向のうちの少なくとも1つを含む、インプラント候補のセットの決定を取得できる。インプラントと脊椎の間の予測された相互作用に基づいて、補正された脊椎アライメントパラメータは、計算され、各インプラントの許容可能応力スコアは、決定される。インプラント(複数可)は、脊柱の放射線画像またはその他の画像上に、計装される椎骨に正しく並置されて仮想的に配置される。ステップ24において行われたように、繰り返し計算は、各骨/インプラント組み合わせの脊椎パラメータについて実行される。ステップ26において、次に、生体力学的技術で知られているように、各々の骨/インプラント組み合わせ候補は、有限要素解析にかけられる。各インプラントの長さに沿った応力値は、計算され、個々のインプラントの長さに沿った応力値の生体力学的解析に基づいて、完全な骨インプラントシステムの全体的な応力スコアが決定される。
【0043】
ステップ27において、この全体的な応力スコアは、ステップ25においてその患者に許容可能であると画定された長期応力スコアと比較される。これらの長期的な応力スコアは、患者のデータベースからの入力および経時的な臨床経過に基づいて決定されるため、患者が増え、フォローアップが長くなると、予測の精度が向上する。選択されたインプラントから生じる応力値および脊椎パラメータは、ステップ28において許容範囲内であると見なされる値と比較され、そうでない場合、別のインプラント構成が、ステップ25~28のプロセスを繰り返すためにステップ29において選択される。選択に失敗したインプラントの特性は、将来の選択基準のために有用なインプラントおよびあまり有用でないインプラントに関する情報を増やすために、オプションでデータベースに追加され得る。他方で、応力値および結果として生じる脊椎パラメータが許容可能範囲内にある場合、ステップ30において示すように、そのインプラントは、この患者にとって最適なインプラントであると判断される。
【0044】
ステップ26~28の機械的解析および比較、ならびにステップ25のコンピューター化されたデータ解析から、インプラントの長さおよび直径、インプラントの形状、インプラントの材料および組成、上部および下部の計装された椎骨を含む融合する椎骨のアイデンティティおよび数、ならびに計装された椎骨内の位置および配向のパラメータのうちの少なくともいくつかを含んでいる、患者に最適なインプラント特性は、ステップ30において決定される。取得され計算されたデータのすべては、骨インプラントシステムに予測される長期応力の数値出力が取得されるように、人工知能、ビッグデータ、遡及的および保険数理統計解析25のうちの少なくともいくつかによって再び解析にかけられる。さらに、インプラントの長期残存のための許容範囲の応力スコアは、個々の対象に対して選択される。インプラントがこの患者にとって互換性があり許容可能であるとして選択されると、許容可能スコアを持つインプラントのより狭いサブセットに含まれる。このサブセットから、最良の形状、すなわち最低の応力スコアを備えた最良の単一または少数のインプラントは、実際の器具処置に使用される。
【0045】
許容可能応力の選択に寄与する要因は、対象の年齢、骨密度、および予測される活動レベルを含む。例えば、活動的な子供は、活動性の低い高齢者よりも低い許容長期応力スコアを許可される可能性があり、これは、活動的な子供が骨インプラントシステムにより多くの術後応力をかけることが予測されるためである。
【0046】
長期残存のために骨インプラントの統合および機能を最適化する出力を生成するように、図2の術前仮想結果と、図1の方法に示されている骨インプラントシステムの術中物理的応力解析との統合方法の概略図を示す、図3をここで参照する。ステップ21~24において記載されているように、術前の人口統計、臨床、およびその他の関連データは、ステップ31において収集される。ステップ25~29において記載するように、取得した2Dまたは3D画像、概して、CT研究だけでなく、X線、MRI、または動的運動研究との組み合わせから、脊椎アライメントパラメータは、決定され、ステップ32において有限要素解析が実行される。ステップ33において、ステップ30において選択された最適なインプラントは、実際の外科的処置において使用される。さらに、これらの解析(31~33)から、およびステップ30の結果から、ステップ34において、許容可能応力スコア範囲は、個々の患者について決定される。外科的処置の間、ステップ35において、光弾性または他の応力解析は、骨に計装されたインプラントに対して実行される。インプラントの長さに沿った連続的な応力は、モニターまたは他の表示デバイスに表示され、色の変化、陰影強度、および聴覚出力などのいくつかの方法の1つによって、所定の許容可能範囲よりも高い応力スコアを持つ骨インプラント境界面の領域は、識別される。フィードバックは、すべてステップ36において示すように、オプションで、インプラントを除去してその形状および輪郭を修正し、インプラントを直径、長さ、材質などの異なる特性を持つものに変更し、または、椎弓根スクリューの数を減らして使用することを決定できる、外科医に提供される。このプロセスは、反復的であり、応力解析により、インプラントの全長に沿った応力スコアが許容範囲内にあることが示されるまで、この処置を繰り返すことができる。1つの例示的な実装において、インプラントは、光弾性コーティングで覆われ、応力は、光弾性解析によって測定される。例示的な光弾性、リアルタイムおよび長期応力スケールの詳細は、以下の図5に示す。処置の目標は、最適な脊椎アライメントの形で、最小の変形、最大のインプラントの残存、および最良の外科的結果を保証するために、最適な曲率のインプラントを製造することである。
【0047】
ここで、骨インプラントシステムの応力を測定するための3つの対応するスケールを示す、図4を参照する。0、1、2、および3次の応力が示される色付きスペクトルとして現れる、光弾性応力スケールが示される、この実施形態において、図の左側に、術中応力解析の表現が示されている。色分けされた光弾性応力スケールは、カメラ制御システムによって、応力の増加を示す数値、疑似色、または段階的強度の線形スケールに変換され得る。これは、中央の図のように、術中にディスプレイに表示され得る、スケールである。図の右側は、スケール上の決定されたポイントに先のとがったバーによって示される、特定の患者の最大予測許容可能長期応力を持つ術前有限要素解析によって決定された応力スケールである。すべてのスケールは、垂直矢印によって示されているように、スケールの上部から下部に向かってますます高い応力を示す。各スケールの数値は、様々なスケール間で同等の応力レベルを示す。他の実装において、応力を測定する様々な方法は、使用され得え、対応するスケールは、同様に、有限要素解析スケールに示される応力レベルに調整され得る。
【0048】
ここで、器具の応力の間に光弾性解析を受けているインプラントを概略的に示す、図5A図5Cを参照する。図5Aにおいて、インプラントは、計装された椎骨、この場合は腰椎L3、L4、およびL5の内側にあるとして、側面図に示されている。図5Bは、前後から見た骨インプラントシステムを示す。図5Aおよび図5Bの両方において、矢印は、椎弓根スクリューがインプラントを椎骨L3~L4に取り付ける、曲げ点でのインプラントにかかる最大の力を表す。光弾性力は、陰影として示され、図5Cの対応するスケールで定量化される。光弾性解析において、高い応力は、陰影がより濃く表現される。光弾性解析の使用は、方法の唯一の実装であり、それに限定されることを意図していないと理解され、応力は、光弾性解析以外の任意の方法を使用して測定することができる。さらなる実装において、インプラントは、応力の長期モニタリングのための一連のセンサーを備え得る。このようなセンサーは、ひずみゲージであり得、ファイバブラッググレーティングタイプ、またはその他の便利な応力センサーであり得る。さらなる実施形態は、スクリューサドル、ロッド、または骨インプラントシステムの他の任意の部分上のセンサーを含み得る。
【0049】
ここで、図2および図3の術前仮想骨インプラント解析の各ステップを詳細に説明し、最適なインプラントがどのように選択されるかを示す、図6A図6Cを参照する。完全な方法の概要として、少なくとも対象の脊椎の手術領域の3D医用画像のセットは、取得される。これらの画像から、ならびに上記および図2において詳述されている追加の患者データから、インプラント候補構成のセット(サイズ/長さ、形状/直径、組成)は、選択される。インプラント候補構成ごとに、インプラントは、医用画像にデジタルで配置され、骨インプラントの有限要素解析は、実行される。各骨インプラントシステムの選択された生体力学的特性は、構成候補ごとに測定され、これは、脊椎の複数の手術領域を含み得、例えば、いくつかの脊椎奇形において、脊柱の頸部、胸部、および腰部セグメントの両方またはすべてのセクションを計装する必要がある。構成候補から、最適な生体力学的特性のインプラント(複数可)は、選択され、インプラントの最適な予測曲率が決定される。患者の解剖学的構造に対するインプラントの曲率の相互作用に基づく応力スコアは、決定され、これは、与えられた条件下でのインプラントの予測寿命についてのデータベース情報をまだ使用していないため、手術直後の理論上の短期スコアである。患者の個々のパラメータ(年齢、体重、骨密度スキャンからのZスコア、疾患の進行)に基づいて、同様の脊椎歪みの問題を抱える対象の大規模なデータベースから取得されたインプラント残存のデータと組み合わせて、長期的なインプラントの成功と互換性がある応力スコアの許容範囲は、選択される。ここで、術中段階において、インプラントは、患者の解剖学的制約に従って、事前に指定された曲率に曲げられる。次に、インプラントは、患者の脊椎に固定され、その場で応力が測定される。これを行う便利な方法は、インプラントに適用された光弾性コーティングを使用して、光学システムと、光弾性応力のレベルを決定できるコントローラーとを備えたイメージングデバイスを使用することの使用による。応力測定に基づいて、所定の許容可能応力スコア範囲内にある形状が得られるまで、インプラントの曲率は、修正され、応力解析は、繰り返される。許容可能応力スコアを使用して、手術を長期的に成功させるためのインプラントの最適な曲率は、決定される。
【0050】
次に、特定の臨床シナリオを解決するための本発明のいくつかの変形について説明する。事前に計装された脊椎が大きく変形している場合、骨インプラントシステムの理想的な解剖学的アライメントは、脊椎に大きな応力がかかり得る。過度の応力は、器具が失敗する原因となる傾向があり、インプラント(複数可)は、統合に失敗するか、または極端な場合には、壊れることさえある。骨インプラントシステムへの応力が脊椎椎弓根にスクリューを保持する力よりも大きい場合にも、椎弓根スクリューの引き抜きは、発生し得る。したがって、予測プログラムは、術前インプラント特性と許容応力の組み合わせを比較および評価して、長期にわたる成功した骨インプラントの統合および残存を実現する。
【0051】
要約すると、有限要素解析によって決定された許容可能術前応力スコアは、統計解析および人工知能学習から取得された予測疫学および保険数理データと組み合わせて使用される。これらのデータは、個々の対象のインプラントの長期残存と両立する可能性が高い許容可能応力スコア範囲を決定するように、組み合わせられる。次に、このモデルは、インプラントの長期的な成功の予測評価をさらに改善するように、上記で選択したインプラント構成を使用して生体内の応力を測定し、さらに許容応力スコアと比較することによって、さらに洗練される。
【0052】
ここで、図6A図6Cにおいて示されるように、完全な予測方法の詳細を参照すると、この例示的な予測モデルのステップは、以下を含み得る。
【0053】
ステップ60において、少なくとも対象の脊椎の手術領域の術前3D医用画像のセットを取得する。
【0054】
ステップ61において、例えば、インプラントのサイズ、形状、組成、および位置を含む、インプラント候補構成のセットを選択する。
【0055】
ステップ62において、インプラント候補構成ごとに、医用画像にインプラントをデジタルで配置し、骨インプラントシステムで有限要素解析を実行する。
【0056】
ステップ63において、インプラント候補構成ごとに、隣接する椎間板への応力、隣接する椎間板内の圧力、インプラントと骨との間の摩擦境界面条件、可変境界面引張強度、椎弓根スクリューの軸方向引き抜き強度など、複数の手術領域を含み得る、各骨インプラントシステムの選択された生体力学的特性を測定する。
【0057】
ステップ64において、測定された生体力学的特性に基づいて、各インプラント候補の予測される術後の生体力学的成功を表す、各インプラント候補構成にスコア、すなわち短期スコアを割り当てる。
【0058】
ステップ65において、インプラント候補構成ごとに、モデルを使用して、対象の加齢による骨の予測される進展と、累積力などからその結果として生じる生体力学的特性の予測される変化に基づいて、一定期間にわたる骨とインプラントとの間の相互作用をシミュレートする。このステップは、好ましくは、脊椎全体の生体力学的特性、およびLL、TKなどの認識された異常な脊椎パラメータ、ならびに期間にわたるこれらのパラメータの予測される増加または減少を組み込む。このステップは、現在診断されている健康状態または病状およびその予測される進展についても考慮し得る。
【0059】
ここで図6Bに移ると、ステップ66において、スコアは、各々の予測される長期の術後生体力学的成功を表す各インプラント候補構成に割り当てられ、これは、加齢長期スコアになる。
【0060】
ステップ67において、各骨インプラントシステム候補の測定された生体力学的特性に基づいて、対象が将来1つ以上の新しい病状を発症する確率が計算される。
【0061】
ステップ68において、患者が1つ以上の新しい病状を発症する可能性が非常に高いかどうかに関して、インプラント候補構成ごとに決定が下される。結果がネガティブである場合、方法は次に最終ステップ75に移り、そこで、選択されたインプラント候補構成のセットからの最適なインプラント構成は、(i)すべての計算された短期スコア、(ii)すべての計算された加齢長期スコア、(iii)(存在する場合)すべての計算された病理学長期スコア、(iv)(存在する場合)すべての計算されたシナリオ長期スコア、(v)病状を発症している対象の計算された確率、および(vi)条件付き確率を使用するなどによって、選択されたシナリオの計算された確率のうちの少なくともいくつかの加重臨床関連性に基づいて計算される。
【0062】
他方で、患者が新しい病状を発症する可能性が非常に高いことがわかった場合、ステップ69において、1つ以上の病状の可能性が高いインプラント候補構成ごとに、およびそのような病状ごとに、モデルを使用して、病理の予想される進展と、累積力などの生体力学的特性の結果として予測される変化に基づいて、一定期間にわたる骨とインプラントとの間の相互作用をシミュレートする。
【0063】
ステップ70において、スコアは、各インプラント候補構成に割り当てられ、ある期間にわたる各インプラント構成の予測される長期の術後生体力学的成功を表し、これは、病理学の長期スコアになる。
【0064】
ここで図6Cに移り、ステップ71において、対象が、医学または追加の手術、可能なライフスタイルの変更、車椅子または杖の必要性などを含む予測される治療的介入のような、骨インプラントシステムの生体力学的特性に影響を与え得る、将来において1つ以上のシナリオを受けるかどうかを考慮する。
【0065】
結果がネガティブである場合、方法は次に、上で記載のように、最終ステップ75に移動し、選択プロセスを終了する。他方で、そのような将来の変化が予測される場合、ステップ72において、各インプラント候補構成についての各シナリオの発生の確率は、計算される。
【0066】
ステップ73において、そのような破壊的な発生のかなりの可能性があるそのようなインプラント候補構成のそれぞれについて、モデルを使用して、予測されるシナリオおよび累積力で表されるような、生体力学的特性の結果として予測される変化に基づいて、一定期間にわたる骨とインプラントとの間の相互作用をシミュレートする。
【0067】
次に、ステップ74において、スコアは、その期間にわたる予測される長期の術後生体力学的成功を表す各インプラント候補構成に割り当てられ、これは、その予測される一連の状況に対する長期スコアとなる。
【0068】
最後に、ステップ75において、(i)すべての計算された短期スコア、(ii)すべての計算された加齢長期スコア、(iii)存在する場合、すべての計算された病理学長期スコア、(iv)(存在する場合)すべての計算されたシナリオ長期スコア、(v)病状を発症している対象の計算された確率、および(vi)選択されたシナリオの計算された確率(すなわち、条件付き確率を使用する)のうちの少なくともいくつかの加重臨床関連性に基づいて、選択されたインプラント候補構成のセットからその最適なインプラント構成に対して、計算が実行される。
【0069】
いくつかの臨床シナリオにおいて、患者の病状または臨床状態において予測される進行の長期予測に基づいて、図3の術中モデリングを実行することが望まれ得る。これは、図7に示す1つの例示的な方法によって示される。このような状況において、インプラントは、ステップ76において最適化されている、図3のステップにおいて記載されているように、図3のステップ34および35において前述したように、術中に実行される実際の応力解析に基づく構成が挿入される。構成を完成させる前に、追加のモデリングステップは、図6A図6Cにおいて記載されている長期予測を使用することが含まれる。次に、このアプリケーションにおけるモデリングは、ステップ77に示すように、患者が特定の骨関連の病状を経時的に発症する統計的確率、およびライフスタイルの予測される変化または日常生活動作の独立性を考慮に入れる。ステップ78において、これらの予測要素は、インプラントを成形し、椎弓根スクリュー、椎体間、および他のロッド関連器具の最適な数、位置、およびサイズを決定するように、手術前または手術中に使用されることができる。これらの修正のそれぞれは、特定の患者の骨インプラントシステムの長期的な成功の可能性を高める。例えば、外科医は、術後の可動域または許容される活動を制限することと引き換えに、脊椎の整列を最適化するように、骨インプラントシステムにより高い応力を許容することを選択し得る。特定のシナリオの統計的確率を予測できることで、骨インプラントシステムの長期残存と対象の機能の組み合わせが最適化される。
【0070】
ステップ79において、インプラントの長期性能を改善するために、所望の応力スコア範囲が達成されていない場合、インプラントは、許容可能応力スコア範囲内にあるインプラント構成が達成されるまで、除去されるか、またはその形状、サイズ、組成および位置が調整されるか、あるいは追加のインプラントが骨インプラントシステム内に組み込まれ得る。
【0071】
本開示の方法のこの実装を結論付けるために、ステップ80において、この処置は、最適なインプラント構成が達成されるまで繰り返され、予測される進行性の病状および被検者の可動性の変化を考慮して、骨インプラントシステムの長期的な成功を確実にする。
【0072】
本明細書に記載の実施形態は、主に椎間ロッドインプラントに関するものであるが、これらの構成要素の適切な応力測定を適用できる場合、同様の計画、予測、ならびに術前および術中応力解析を、椎弓根スクリューおよび椎体間を含む器具の他の要素に適用することができる。
【0073】
最後に、さらなる臨床シナリオにおいて、骨インプラントシステムの長期フォローアップを取得して、システムの継続的な成功した機能を決定し、システムにかかる過度の応力の望ましくない結果を予測および防止することが所望であり得る。このような方法は、図8に示される。そのような方法において、ステップ81において、外科医は、ユーザーまたは外科医にリアルタイムで応力状況の遠隔フィードバックを提供するためのセンサーを備えたハードウェアを移植し得る。ステップ84におけるそのようなフィードバックは、ステップ83に示されるように、一定の時間間隔で骨インプラントシステムに対して有限要素解析を実行することによって、術後に提供されるであろう。外科医またはユーザーは、応力レベルが短期および長期にわたって推奨値を超えた場合に、様々な望ましくないシナリオが発生する可能性を判断することができる。この情報は、ステップ86における骨インプラントシステムの長期残存および最適な機能を最終目標として、ステップ85における術後のライフスタイルの選択肢に関する対象に助言するように使用されることができる。
【0074】
本開示の実施形態によるシステムは、図9に示されるように、コントローラー90を備え得る。コントローラー90は、プロセッサ92、メモリ91、ユーザーインターフェース93、1つ以上のデータベース94、1つ以上の応力検出器インターフェース95、およびネットワークインターフェース96を備える。
【0075】
ここで、本開示の方法を実施することが可能なシステムにおける使用のためのコントローラーの構造を示す、図9を参照する。
【0076】
メモリ91は、任意のコンピューター可読の、非一時的な記憶媒体であり得る。メモリ91は、脊椎アライメント評価(例えば、1つ以上の術前画像または術中画像から脊椎アライメントパラメータを決定するため)に必要な情報および/または命令97、複数の利用可能なインプラントに関連するパラメータのデジタルライブラリ98、およびインプラント/骨組み合わせのデジタルモデルで有限要素解析を実行するために必要な命令および/または情報99を格納し得る。
【0077】
プロセッサ92は、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロプロセッサ、プログラマブルコントローラーなどであり得る。プロセッサ92は、メモリ91に格納された命令を実行する。
【0078】
コントローラー90は、ユーザーインターフェース93を介して、操作指示、術前画像、および/または他のデータを受信し得る。ユーザーインターフェース93は、例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、無線トランシーバ、および/または有線トランシーバを含む、情報を受信するためのソフトウェアおよび/またはハードウェアであり得るか、または備え得る。
【0079】
データベース94は、患者の人口統計データおよび/または術前臨床データを備え得る。
【0080】
応力検出器インターフェース95は、応力検出器から応力測定値を受信するために、およびそのような測定値をプロセッサ92に提供するために有用なハードウェアおよび/またはソフトウェアを備え得る。
【0081】
ネットワークインターフェース96は、コントローラー90がネットワークを介して1つ以上の他のデバイスと通信することを可能にする、有線もしくは無線通信トランシーバならびに/または他のハードウェアおよび/もしくはソフトウェアであり得るか、または備え得る。ネットワークは、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、またはその他のネットワークであり得る。ネットワークは、例えば、インターネットであり得る。
【0082】
本発明は、本明細書において上で具体的に図示および説明されたものによって限定されないことが当業者によって理解される。むしろ、本発明の範囲は、上で説明される様々な特徴の組み合わせおよび副次的組み合わせ、ならびに上の説明を読んだときに当業者が想到する、先行技術にはない、それらの変形および修正の両方を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
【国際調査報告】