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特表2022-508702消化器系及び免疫系の障害を治療する為のヒト用栄養補助食品及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】消化器系及び免疫系の障害を治療する為のヒト用栄養補助食品及び方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20220112BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A23L33/10
A61P1/04
A61P1/02
A61P1/00
A61P3/10
A61P25/24
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/00
A61P25/22
A61P29/00
A61P19/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545270
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(85)【翻訳文提出日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 US2019056045
(87)【国際公開番号】W WO2020081417
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】16/160,658
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505413130
【氏名又は名称】フリーダム ヘルス,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】FREEDOM HEALTH,LLC
【住所又は居所原語表記】65 Aurora Industrial Parkway,Aurora,Ohio 44202-8088 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ホール,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーホー,マーク
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD19
4B018MD23
4B018MD25
4B018MD26
4B018MD31
4B018MD33
4B018MD34
4B018MD40
4B018MD46
4B018MD49
4B018MD53
4B018MD67
4B018MD80
4B018MD81
4B018MD82
4B018ME11
4B018ME14
4B018MF08
4B018MF13
(57)【要約】
消化器系障害及び免疫関連障害の治療及び/又は予防の為の栄養補助食品並びにその製造及び投与方法が開示されている。この栄養補助食品は、経口投与が可能であり、固形状(バー、ウエハース、錠剤を含む)、ペースト状、顆粒状、粉末状、液状の何れかの形態で配合され得る。本発明の栄養補助食品の成分を組み合わせることにより、個々の成分の効果の合計を大幅に上回る相乗効果が得られ、消化器系障害や免疫系障害の治療及び/又は予防に高い効果を発揮することができる。本発明の栄養補助食品は、腸内膜の不透過性を高め、微生物叢の細菌成分のバランスを取ることにより、慢性疾患の原因である全身性炎症を最小限に抑えるように配合されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化器系及び免疫関連の障害の治療及び予防の為の栄養補助食品であって、前記消化器系及び免疫補助食品が、
GI管の内膜をサポートする為のL-グルタミンと、
前記GI管の内膜の杯細胞の数と生産性を増加させる為の、L-トレオニン、L-セリン、L-プロリン、L-システインのうち少なくとも1つの粘液産生アミノ酸と、
前記L-グルタミン及び前記少なくとも1つの粘膜産生性アミノ酸の生物学的利用能及び吸収率を向上させる為のレシチンと、
少なくとも1つの健康上の有益な効果をもたらすフラクトオリゴ糖と、
少なくとも1つの健康上の有益な効果をもたらすβ-グルカンと、
少なくとも1つの健康上の有益な効果をもたらすRS-4デンプンと、
少なくとも1つの健康上の有益な効果をもたらすアラビノキシランオリゴ糖と、を含み、
前記L-グルタミン、前記少なくとも1つの粘液産生アミノ酸、レシチン、フラクトオリゴ糖、β-グルカン、RS-4デンプン、及びアラビノキシランオリゴ糖が、消化器系及び免疫系の障害を治療する為に夫々有効な量で前記栄養補助食品に存在する、栄養補助食品。
【請求項2】
前記L-グルタミンが、甜菜のビーガン菌発酵によって生産され、単離、精製され、より速い吸収の為に微粉化される、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項3】
前記L-グルタミンが、前記栄養補助食品の約1重量%~20重量%を占める、請求項2に記載の栄養補助食品
【請求項4】
前記少なくとも1つの粘液産生アミノ酸が、ビーガン菌の発酵によって生成され、単離及び精製される、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項5】
前記少なくとも1つの粘液産生アミノ酸が、夫々前記栄養補助食品の約0重量%~10重量%を占める、請求項4に記載の栄養補助食品。
【請求項6】
前記レシチンが、大豆油、オーツ麦油、ヒマワリ油、サフラワー油、又はトウモロコシ油に由来する、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項7】
前記レシチンが、前記栄養補助食品の約5重量%~約15重量%を占める、請求項6に記載の栄養補助食品。
【請求項8】
前記フラクトオリゴ糖が、ヤーコン根、チコリ根、エルサレムアーティチョーク、又はブルーアガベに由来する、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項9】
前記フラクトオリゴ糖が、前記栄養補助食品の約1重量%~約40重量%を占める、請求項8に記載の栄養補助食品。
【請求項10】
前記β-グルカンが、オーツ麦、大麦、キノコ、海藻、藻類、又は酵母の細胞壁に由来する、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項11】
前記β-グルカンが、前記栄養補助食品の約1重量%から約40重量%を占める、請求項10に記載の栄養補助食品。
【請求項12】
前記アラビノキシランオリゴ糖が、小麦、オーツ麦、大麦、米、キビ、サイリウム、亜麻、又はライ麦のふすま組織に由来する、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項13】
前記アラビノキシランオリゴ糖が、前記栄養補助食品の約1重量%~約40重量%を占める、請求項12に記載の栄養補助食品。
【請求項14】
前記RS-4デンプンが、オーツ麦、ヤーコン根、チコリ根、亜麻、アカシア、トウモロコシ、又は細菌発酵に由来し、その後、人間の酸及び酵素による消化率を低下させる為に化学的架橋を行う、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項15】
前記RS-4デンプンが、前記栄養補助食品の約1重量%~40重量%を占める、請求項14に記載の栄養補助食品。
【請求項16】
消化管内の病原性細菌に結合して排除するニュートリシンを更に含み、前記ニュートリシンが純粋なマンナン又はマンナンオリゴ糖(MOS)の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項17】
消化管内の病原性細菌に結合して排除する前記ニュートリシンが、前記栄養補助食品の約2分の1重量%から約40重量%を占める、請求項16に記載の栄養補助食品。
【請求項18】
前記栄養補助食品の構成要素が分離するのを防ぐ乳化剤を更に含む、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項19】
前記乳化剤がグアーガムを含む、請求項18に記載の栄養補助食品。
【請求項20】
前記乳化剤が前記栄養補助食品の約1~5重量%を占める、請求項19に記載の栄養補助食品。
【請求項21】
前記栄養補助食品の他の成分と共に運ばれる薬剤を更に含み、前記栄養補助食品と一緒に摂取することによって、前記薬剤の吸収又は治療価値の少なくとも一方が最大化される、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項22】
前記栄養補助食品が固形食品バーとして配合されているか、又は錠剤の形にプレスされている、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項23】
前記栄養補助食品がペーストとして配合されている、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項24】
前記栄養補助食品が、顆粒状の固体として配合されている、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項25】
前記栄養補助食品が粉末として配合されている、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項26】
前記栄養補助食品が液体として配合されている、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項27】
前記栄養補助食品が液体充填ソフトジェルカプセルとして配合されている、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項28】
前記消化器系障害が、潰瘍、大腸炎、過敏性腸症候群、憩室症、憩室炎、抗生物質誘発性炎症、クローン病、粘膜炎、及び口内炎を含む群から選択される、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項29】
前記消化器系関連の障害が、悪液質、乳糖不耐症、及び高齢者の食生活の不摂生を含む群から選択される、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項30】
前記免疫系関連の障害が、関節炎、糖尿病、鬱病、不安症、及び心臓病を含む群から選択される、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項31】
前記免疫系関連の障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、及び他の神経変性疾患を含む群から選択される、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項32】
ビタミンB6、ビタミンB12、ビオチン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、及びナイアシンからなる群からの少なくとも1つのビタミンを更に含む、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項33】
更に、カルシウム、クロム、銅、マンガン、マグネシウム、マンガン、リン、カリウム、セレン、バナジウム、及び亜鉛からなる群からの少なくとも1つのミネラル微量栄養添加物を含む、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項34】
約10グラム~約60グラムの前記栄養補助食品を1日に摂取することで、有効量の前記L-グルタミン、前記少なくとも1つの粘液産生アミノ酸、レシチン、β-グルカン、フラクトオリゴ糖、RS-4、及びアラビノキシランオリゴ糖を摂取することができる、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項35】
消化器系及び免疫関連の障害の治療及び予防に使用する為の栄養補助食品を投与する方法であって、前記方法が、
適正サイズの用量の栄養補助食品を準備することを含み、前記栄養補助食品は、
GI管の内膜をサポートする為のL-グルタミンと、
前記GI管の内膜の杯細胞の数と生産性を増加させる為の、L-トレオニン、L-セリン、L-プロリン、L-システインのうち少なくとも1つの粘液産生アミノ酸と、
L-グルタミン及び前記少なくとも1つの粘膜産生性アミノ酸の生物学的利用能及び吸収率を向上させる為のレシチンと、
少なくとも1つの健康上の有益な効果をもたらすフラクトオリゴ糖と、
少なくとも1つの健康上の有益な効果をもたらすβ-グルカンと、
少なくとも1つの健康上の有益な効果をもたらすRS-4デンプンと、
少なくとも1つの健康上の有益な効果をもたらすアラビノキシランオリゴ糖と、を含み、
前記L-グルタミン、前記少なくとも1つの粘液産生アミノ酸、レシチン、フラクトオリゴ糖、β-グルカン、RS-4デンプン、及びアラビノキシランオリゴ糖が、消化器系及び免疫関連の障害を治療する為に夫々有効な量で前記栄養補助食品中に存在し、更に、
前記栄養補助食品を定期的に投与することを含む方法。
【請求項36】
前記投与するステップを少なくとも1日1回繰り返すことを更に含む請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ヒト及び動物用の栄養補助食品に関し、より詳細には、消化器系の障害及び免疫系に関連する病気の治療及び/又は予防に使用する為の新規の栄養補助食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研究者の間では、ヒトの腸内細菌(総称して微生物叢と呼ぶ)が、腸内の保護作用や免疫系への穏やかな影響を通じて、健康維持の主要な役割を果たしていることが判ってきている。
【0003】
ヒトは、産道を通って生まれてくるときに微生物叢を獲得する。帝王切開で生まれた場合は、代わりに看護師や病院から微生物叢を獲得する。又、母乳で育った赤ちゃんは、母乳に含まれる細菌やプレバイオティクス(微生物群の餌となるオリゴ糖)を摂取する。従って、帝王切開で生まれ、粉ミルクで育った赤ちゃんは、健康な微生物叢を形成する為の2つの重要なメカニズムを失ってしまう。
【0004】
食中毒等の病気も腸内微生物叢を崩壊させることがある。このような崩壊は、腸内毒素症と呼ばれ、腸全体を覆う粘液層が薄くなったり、腸内膜を形成する腸細胞が損傷を受けたりすることがある。腸内膜が破壊されると、細菌が腸から逃げ出し、全身性感染症を引き起こし得る。体は、体内のあらゆる器官に到達する可能性のある循環バクテリアに対して免疫攻撃を行うことで反応する。免疫系はしばしば付随的なダメージを与え、細菌と一緒に人間の細胞も殺してしまう。感染が長引くと、炎症が慢性化することもある。
【0005】
長期にわたる全身性炎症は、心臓病から神経系の問題まで、ほぼ全ての慢性疾患に関連している。この問題を改善する為には、病原体の血流への流入を止める為に、腸内膜を治癒する必要がある。プロバイオティクス(生きた有益なバクテリア)と、有益なバクテリアに栄養を与える様々なオリゴ糖の形でのプレバイオティクスという2つの療法が、腸内環境の異常を治療する為に用いられる。
【0006】
ここで検討する腸内細菌異常の結果は、腸内炎症、全身性炎症、神経性炎症、抗生物質誘発性炎症、自己免疫、化学療法の6つである。
【0007】
(腸内炎症)
腸内炎症は、腸内毒素症の最初の、そして最も直接的な影響である。それは、胃潰瘍、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD、潰瘍性大腸炎とクローン病からなる)、結腸癌、直腸癌の形を取る。これらの症候群は夫々リーキーガットと関連している。現在、胃潰瘍の治療にはプロトンポンプ阻害剤と制酸剤が用いられている。しかし、最近の研究では、これらの治療法は両方とも胃のpHを上昇させることで、大腸にとって有害な環境を作り出し得ることが判っている。糞便微生物移植が行われ始めているものの、その効果には変動があり、現在、IBSやIBDに対するオプションは殆どない。腸の癌は、手術、化学療法、放射線療法で治療されるが、これらの治療は夫々の問題を伴う(下記参照)。
【0008】
(全身性炎症)
全身性炎症は、心臓病、2型糖尿病、様々な癌、アレルギー、その他の臓器疾患を引き起こす。心臓病は、手術、留置型ペースメーカー/カーディオバーター、及びスタチン、血液希釈剤、ACE阻害薬及びβブロッカー等の様々な薬剤で治療され得る。2型糖尿病は、インスリン、食事療法、運動療法でコントロールできる。癌は、手術、化学療法、放射線治療で治療する。アレルギーは、抗ヒスタミン剤で治療できる。
【0009】
(神経性炎症)
神経性炎症は、腸から様々な腸-脳経路を経て、より長い時間をかけて進展する。パーキンソン病は、レビー小体が腸の細胞に感染して便秘を引き起こしてから10年のスパンで脳に辿り着くことから始まる。アルツハイマー病も、腸で発生した誤って折り畳まれたアミロイドタンパクが、同様に時間をかけて脳に移動することを表し得る。鬱病や不安障害も腸内細菌の異常と関連付けられている。パーキンソン病やアルツハイマー病の治療法はない。パーキンソン病の特定の症状はL-ドーパで治療できるが、それはジスキネジアを引き起こす可能性がある。鬱病や不安症の治療には、セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)や、ドーパミン、セロトニン、γ-アミノ酪酸(GABA)、ノルエピネフリン等の脳内物質濃度を上昇させる薬剤が用いられる。これらの薬は多くの人に効果がある訳ではなく、効果があっても体重増加を引き起こす傾向がある。
【0010】
(抗生物質誘発性炎症)
抗生物質は、細菌感染によって失われる可能性が高かった何百万もの命を救ってきた。しかし、今日、抗生物質は膨大に過使用されており、(非経口投与ではなく)経口投与は、多くの病院環境において、実際に炎症を増加させることが示されている。特に、抗生物質の投与によるクロストリジウム・ディフィシレ菌感染症は、年間50万人の感染を引き起こし、死亡率は年間3万人近くに上る。経口抗生物質は、正常な腸内細菌集団を壊滅させることにより、腸の透過性を高め、生きたバクテリアが血流に入り込み、全身性炎症を引き起こすことが明らかになっている。
【0011】
(自己免疫)
自己免疫は、バクテリアやその生成物が既存の身体組織と酷似しているという擬態によって引き起こされる問題と考えられている。免疫系がこれらの異物を攻撃すると、特定の抗原性を共有する正常な組織も攻撃してしまうことがある。これらの病気は、関節炎、狼瘡、1型糖尿病、多発性硬化症等を含む。これらの病気には治療法が無い。1型糖尿病はインスリンで治療できるが、自己免疫疾患の治療薬は殆どが実験的なものである。
【0012】
(化学療法と放射線治療)
化学療法と放射線療法は、癌細胞のターンオーバーが異常に早い為、分裂の激しい細胞を攻撃することで効果を発揮する。しかし、これらの薬剤や治療法は完全な標的化ができていない為、毛包や、週毎に自己再生する腸の内膜等、通常は寿命の短い細胞も殺してしまう。そして、これらの癌治療は、リーキーガットを引き起こし、上記のような一連の病気を招く。癌治療に直接起因する具体的な疾患は、粘膜炎、口内炎、悪液質、下痢等を含む。癌治療の文脈では、これらの疾患は治療に難渋し、一般的な予後は癌治療の期間と強さに依存する。免疫チェックポイント阻害剤を用いた新規の癌治療は、バランスのとれた微生物叢に依存している。この様に、適切なプレバイオティクス繊維は、これらの新しい免疫細胞治療を補強することができる。
【0013】
(全身性炎症につながるリーキーガット組織)
心臓病、糖尿病、肥満、IBD、IBS、関節炎、アルツハイマー病、パーキンソン病等の慢性疾患の大部分は、腸内毒素症、特に腸内透過性の増加、所謂「リーキーガット」と強く関連している。血液中に入り込んだ細菌は、体の各器官に送り込まれる為、全身に炎症が広がる。炎症は、上述の病気の前兆と考えられる。従って、リーキーガットを治癒することができる製品は、全身性炎症を抑え、慢性疾患の発生率を下げることができるということになる。
【0014】
プレバイオティクスは、短鎖脂肪酸(SCFA)を産生する有益な微生物の数を増やし、その結果、腸内の損傷した組織の修復と再生を促進することが知られている。しかし、透過性の高い腸内膜が存在する場合に微生物を増やすことは、全身性炎症を引き起こす危険性がある。
【0015】
これらの疾患は全て炎症と関連している為、プレバイオティクスやプロバイオティクスで治療することで成功を収めている。これらの炎症を伴う多くの慢性疾患を予防、改善、治癒する為には、微生物叢のバランスをとる必要があることを示す証拠が圧倒的に多い。
【0016】
この様に、当技術分野では、上記の問題に相乗的に対処する栄養補助食品が必要とされている。本発明は、そのような栄養補助食品を提供するものである。本発明のこれら及び他の利点、並びに追加の発明的特徴は、本明細書で提供される本発明の説明から明らかになるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の主な目的は、ヒト及び潜在的には他の動物において、腸内毒素症及びそれに伴う腸内膜への影響、ひいては対応する免疫反応を治療することである。これらの病気を治療することに加えて、本発明は、腸内毒素症とそれに伴う病気をも予防することも目的としている。
【0018】
本発明の更なる目的は、安全な成分のみを使用することである。本発明は、グルテンフリー、アレルゲンフリー、非遺伝子組み換え、ミルクフリー、卵フリー、ナッツフリー、防腐剤フリーであり、人工的な添加物を使用していない。更に、本発明は、ペースト、固形物(棒状、プレスされた錠剤、ビスケット等)、液体又は粉末の形態で、単独で又は他の食品や飲料と混合して、便利に経口摂取できることを目的とする。本発明の更なる目的は、出荷や保存を容易で便利にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、商業的に許容される保存期間で安定するように設計されている。本発明は、プロトンポンプ阻害剤のような腸を治癒することを目的とした薬剤と比較して、比較的安価である。上記の目的の全ては、現在の治療法に対する実質的な相対的不利益を回避するように設計されている。
【0020】
本発明により、多数の消化管障害並びに幾つかの免疫関連障害を治療及び/又は予防する為に配合された新規の栄養補助食品が提供される。本発明が教示する方法に従って、この栄養補助食品をヒト又は他の動物に定期的に投与することにより、そのようなヒト及び他の動物において、幾つかの消化管障害及び幾つかの免疫関連障害が効果的に治療及び/又は予防される。当業者には明らかなように、本発明の栄養補助食品は、その成分の合計以上のものであり、成分の組み合わせは、夫々が単独で作用する成分をヒト又は他の動物に提供した場合に生じる結果よりも実質的に効果的な相乗効果をもたらしている。
【0021】
本発明の栄養補助食品は、幾つかの異なる形態で製造され得るものであり、これらは、栄養補助食品として直接摂取されるか、又は飲食物に添加され得る。本発明の栄養補助食品は、固体、顆粒状固体、粉末、ペースト、又は液体として製造され得る。固形物として製造する場合は、少量のオーツ麦ブラン又はオーツ麦粉(又はその代替品)を添加して、食品バーの形に増粘させたり、プレスして錠剤の形にしたりすることができる。混合物を撹拌しながら、より多くの割合のオーツ麦ブラン又はオーツ麦粉を加えることによって、顆粒状形態の栄養補助食品を製造することができる。更に小麦粉を加えることで、粉末状の栄養補助食品を製造することができる。更に油(オーツ麦油、ヒマワリ油、サフラワー油、又は他の油)を添加することで、混合物をピーナッツバターのような粘り気のあるペースト状にすることができる。更に油を添加することで、粘性のある液体にすることができる。
【0022】
本発明の栄養補助食品は、液体、粉末、又はペーストとして製造し、ゼラチンカプセルに入れて(ゲルキャップとして)保存することもできるので、栄養補助食品の投与量を一定にすることができる。本発明の栄養補助食品は、消化管内の成分の最適なレベルを維持する為に、定期的に摂取されることが好ましく、好ましい実施形態では、毎日又は1日複数回(例えば、食事と共に)摂取される。
【0023】
本発明の栄養補助食品を当業者に開示すれば、その栄養補助食品が単にその成分の合計以上のものであることを直ちに理解するであろう。
【0024】
本発明の極性脂質は、様々な消化管疾患の治療及び予防における本発明の有用性に加えて、幾つかの免疫関連疾患の治療及び予防にも有用である。本発明の栄養補助食品の特定の所望の用途に応じて、ビタミン及びミネラルのような追加の成分を添加することもできる。
【0025】
従って、本発明は、ヒト及び他の動物において、消化管障害及び免疫関連障害を効果的に治療する栄養補助食品を教示するものであることが判る。本発明の栄養補助食品は、薬物ではなく安全な成分のみで構成されている。本発明の栄養補助食品は、経口投与が可能である為、その投与が容易である。本発明の栄養補助食品は、ペースト状、固体状、液体状、又は液体に添加して送達することができる粉末状若しくは顆粒状の何れかの形態で配合され得る。更に、本発明の栄養補助食品は、出荷、保存、摂取の何れも容易な方法で包装され得る。
【0026】
本発明の栄養補助食品は、安定しており保存期間が長く、使用前に保存期間中に使用者が特別なケアをする必要がない。本発明の栄養補助食品は、従来知られている消化管障害治療薬や免疫関連障害治療薬に比べて安価でもある為、市場への訴求力が高まり、可能な限り幅広い市場に提供することができる。最後に、本発明の栄養補助食品及びその投与方法の上述の利点及び目的の全てが、実質的な相対的不利益を被ることなく達成される。
【0027】
以上のことから、本発明の一態様は、消化器系及び免疫関連の障害の治療及び予防の為の栄養補助食品を提示する。このような栄養補助食品の一実施形態は、以下を含む。
・L-グルタミン
・L-トレオニン、L-セリン、L-プロリン、L-システインの粘液産生アミノ酸のうち少なくとも1つ
・レシチン
・フラクトオリゴ糖
・β-グルカン
・RS-4デンプン
・アラビノキシランオリゴ糖
【0028】
前記L-グルタミン、少なくとも1つの粘液産生アミノ酸、レシチン、フラクトオリゴ糖、β-グルカン、RS-4デンプン及びアラビノキシランオリゴ糖は、消化器系及び免疫関連の障害を治療する為に、夫々の量で前記栄養補助食品に存在する。
【0029】
この態様による実施形態では、L-グルタミンは、甜菜のビーガン細菌発酵によって生成され、分離され、精製され、より良く、より速い吸収の為に微粉化される。含まれるL-グルタミンは、前記栄養補助食品の約1重量%~20重量%を占める。
【0030】
この態様による実施形態では、少なくとも1つの粘液産生アミノ酸は、ビーガン細菌発酵によって生成され、単離及び精製される。少なくとも1つの粘液産生アミノ酸の各々は、前記栄養補助食品の約0重量%~10重量%を占める。
【0031】
この態様による実施形態では、レシチンは、大豆油、オーツ麦油、ヒマワリ油、サフラワー油、又はトウモロコシ油に由来する。レシチンは、前記栄養補助食品の約1重量%~約15重量%を占める。
【0032】
この態様による実施形態では、フラクトオリゴ糖は、ヤーコン根、チコリ根、エルサレムアーティチョーク、又はブルーアガベに由来する。フラクトオリゴ糖は、前記栄養補助食品の約1重量%~約40重量%を占める。
【0033】
この態様による実施形態では、β-グルカンは、オーツ麦、大麦、キノコ、海藻、藻類、又は酵母の細胞壁に由来する。β-グルカンは、前記栄養補助食品の約1重量%~約40重量%を占める。
【0034】
この態様による実施形態では、アラビノキシランオリゴ糖は、小麦、オーツ麦、大麦、米、キビ、サイリウム、亜麻、又はライ麦のふすま組織に由来する。アラビノキシランオリゴ糖は、前記栄養補助食品の約1重量%~約40重量%を占める。
【0035】
この態様による実施形態では、RS-4デンプンは、オーツ麦、ヤーコン根、チコリ根、亜麻、アカシア、トウモロコシ、又は細菌発酵に由来し、その後、人間の酸及び酵素による消化率を低下させる為に、化学的架橋を施す。RS-4デンプンは、前記栄養補助食品の約1重量%~約40重量%を占める。
【0036】
この態様による実施形態では、栄養補助食品は、消化管内の病原性細菌に結合して排除するニュートリシンをも含み、そのニュートリシンは、純粋なマンナン又はマンナンオリゴ糖(MOS)のうち少なくとも1つを含む。消化管内の病原性細菌に結合して排除するニュートリシンは、前記栄養補助食品の約2分の1重量%~約40重量%を占める。
【0037】
この態様による実施形態では、栄養補助食品は、前記栄養補助食品の構成要素が分離するのを防ぐ乳化剤も含む。乳化剤はグアーガムを含んでいてもよい。乳化剤は、前記栄養補助食品の約1~5重量%を占める。
【0038】
この態様による実施形態では、前記栄養補助食品は、前記栄養補助食品の他の成分と一緒に運ばれる薬も含み、前記薬の吸収又は治療的価値の少なくとも一方は、前記栄養補助食品と一緒に摂取されることによって最大化される。
【0039】
この態様による実施形態では、栄養補助食品は、固形食品バーとして、ペーストとして、顆粒状固体として、粉末として、液体として、及び/又は液体充填ソフトジェルカプセルとして配合されてもよい。
【0040】
この態様による実施形態では、前記消化器系障害が、潰瘍、大腸炎、過敏性腸症候群、憩室症、憩室炎、クローン病、粘膜炎、及び口内炎を含む群から選択される。この態様による実施形態では、前記消化器系関連の障害は、悪液質、乳糖不耐症、及び高齢者の食生活の不摂生からなる群から選択される。
【0041】
この態様による実施形態では、前記免疫系関連障害は、関節炎、糖尿病、鬱病、不安、及び心臓病を含む群から選択される。この態様による実施形態では、関連障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、及び他の神経変性疾患を含む群から選択される。
【0042】
この態様による実施形態では、栄養補助食品は、ビタミンB6、ビタミンB12、ビオチン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE及びナイアシンからなる群からの少なくとも1つのビタミンも含む。
【0043】
この態様による実施形態では、栄養補助食品は、カルシウム、クロム、銅、マンガン、マグネシウム、マンガン、リン、カリウム、セレン、バナジウム及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つのミネラル微量栄養添加物も含む。
【0044】
この態様による実施形態では、約10グラム~約60グラムの前記栄養補助食品を1日に摂取することで、有効量の前記レシチン、前記βグルカン、及び前記アミノ酸が提供される。
【0045】
別の態様では、本発明は、消化器系及び免疫関連の障害の治療及び予防に使用する為の、上述の栄養補助食品の投与方法を提供する。そのような方法の一実施形態は、適正サイズの用量の栄養補助食品を準備し、前記栄養補助食品を定期的に投与することを含む。又、この方法は、前記投与ステップを少なくとも1日1回繰り返すことを含んでもよい。
【0046】
上述した既存の技術の状態の欠点、制限、及び高コストは、本発明によって克服される。本発明の他の態様、目的及び利点は、添付の図面と併せて考慮した場合の以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の幾つかの態様を示しており、説明と合わせて本発明の原理を説明する役割を果たす。
図1】ヒトの消化管の解剖学的構造を示すヒトの概略図である。
図2】本発明のプレバイオティクス対それらが標的とする消化管及びフローラの部分を示す概略図である。
図3】アミノ酸の吸収率のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明するが、本発明をそれらの実施形態に限定する意図はない。逆に、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の主旨及び範囲内に含まれる、全ての代替物、修正物、及び等価物を網羅することが意図されている。
【0049】
本発明の栄養製品及びその製造及び投与方法の議論に先立って、ヒトの消化器系の解剖学的構造を簡単に説明することが有用である。図を参照すると、ヒトの頭部及び胴体が、ヒトの消化管の概略図と共に示されている。ヒトの消化管は、口1から始まり、食道2を経て胃4へと続いている。口中で、食物が噛まれ、唾液が食物と混ざって炭水化物の消化が始まる。食物は飲み込まれ、食道を通って胃に入り、そこでペプシンがタンパク質の消化を助ける。
【0050】
胃から、食物は小腸7の最初の部分である十二指腸5を流れ、肝臓3と膵臓6から分泌される化学物質により、十二指腸で脂肪を分解することができる。その後、十二指腸から食物は小腸7に移動し、そこで消化プロセスが完了すると共に腸内細菌が存在する。消化された食物は結腸8に移動し、そこで水分とナトリウムが除去されると共にそこに腸内微生物叢の大部分が存在し、次に直腸9に移動する。そして、残った未消化の固形物は、肛門10を通って体外に排出される。
【0051】
本発明の栄養補助食品は幾つかの主要な成分を含み、その各々は、栄養補助食品に特定の成分又は成分の混合物を配合することによって促進される健康に対する有益な効果を提供する。以下の、本発明の栄養補助食品の成分について説明中、本発明の栄養補助食品によって達成される利益は、栄養補助食品の各成分の個々の利益の合計よりも実質的に大きいことが、当業者にはすぐに明らかになるだろう。簡単に言えば、これらの幾つかの成分は以下を含む。
・L-グルタミン
・腸内膜の杯細胞の数と生産性を増加させ、腸内の病原体に対する保護を強化する1つ以上の極性粘液産生アミノ酸、特にL-トレオニン、L-セリン、L-プロリン、L-システインの少なくとも1つ
・前述の極性アミノ酸の生物学的利用能と吸収率を高め、以下のプレバイオティクスが作用する前に極性アミノ酸が作用するようにする為に含まれるレシチン
・フラクトオリゴ糖(FOS)-主に遠位回腸と上行結腸で作用するプレバイオティクスであり、GI管のこの領域で有益な微生物、特にラクトバチルス種とクロストリジウム種を増加させる
・β-グルカン-主に上行結腸及び横行結腸で働くプレバイオティクスであり、GI管のこの領域で有益な微生物、特にビフィズス菌及びフィーカリバクテリウム種を増加させる
・RS-4-主に横行結腸及び下行結腸で作用し、GI管のこの領域で有益な微生物、特にラクノスピラ科及びロゼブリア種を増加させるプレバイオティクスであり、化学修飾耐性トウモロコシデンプンである
・アラビノキシランオリゴ糖(AXOS)-主に下行結腸及び直腸で作用するプレバイオティクスであり、GI管のこの領域で有益な微生物、特にベイロネラ種及びプレボテラ族(種)を増加させる
【0052】
本明細書の開示から理解されるように、本発明は、有効に2部式である配合物を提示する。この配合物の第1部分は、L-グルタミン、1つ以上の粘液産生アミノ酸、及びレシチンを含む。これらの成分は、先ず、密着結合を強化し、腸内の粘液層を改善することによって腸を治癒するように作用する。レシチンを配合することで、アミノ酸の吸収率を高めている。この配合物の第2部分は、プレバイオティクスを含み、本明細書で論じる様に腸内微生物叢を改善する。これら2つの部分には相乗効果がある。最初に腸を治癒し、細胞結合を強化し、粘膜を強化しておかないと、プレバイオティクスが腸から逃げ出し、有益な効果が得られない虞がある。
【0053】
グルタミンと1つ以上の粘液産生アミノ酸は互いに協調して栄養の吸収を助ける。特に、透過性の腸を持つ人は、前述のプレバイオティクスを配合することで恩恵を受けられない可能性がある。余分な誘導菌が腸内膜を通して血流に漏れてしまう可能性があるからである。L-グルタミンと粘液産生アミノ酸を添加することで、腸内膜を迅速に治癒し、余分な常在菌が腸内に留まるようにすることができる。更に、本出願人は、粘液産生アミノ酸が粘膜を増加させ、その結果、腸内膜の忠実度を向上させることを発見した。これは、ひいては、余分な常在菌が腸から脱出する可能性を減少又は排除する。本明細書で使用されるL-グルタミンは、非限定的な例として、甜菜のビーガン細菌発酵によって生産され、単離、精製、及び微粉化されたものであってもよい。
【0054】
L-グルタミンは、腸内膜の腸細胞及び結腸細胞の好ましい食物である。L-グルタミンは、腸の内膜に栄養を与えると同時に治癒し、コロノサイトを結合する密着結合タンパク質の数を増やすことによってこれらの組織の透過性を防ぎ、病原性生物が循環系に入るのを防ぐ。L-グルタミンは、通常の状態では条件付必須アミノ酸と考えられているが、それは、グルタミンのサプリメントを摂取しなくても、必要な分だけ体内で生成できるからである。しかし、潰瘍等で消化器系に負担がかかると、大量のL-グルタミンが消費される為、補給の為にサプリメントが必要になることがある。
【0055】
L-グルタミンは、タンパク質を分解することで生成される天然に産生される非必須アミノ酸である。L-グルタミンは、血流中で最も豊富なアミノ酸であり、主に骨格筋及び肺で形成及び貯蔵される(又、腸球の主要な燃料であり、その成長、再生、及び修復に不可欠である)。又、L-グルタミンは成長ホルモンを増加させ、摂取すると粘膜腸管の完全性を高めることを含めて、粘膜の完全性を維持・向上させる実質的な効果がある。L-グルタミンは、細胞組織の生成や腸管粘膜の成熟に関与するヌクレオチドの形成を「スタート」させる機能を持ち、免疫プロセスやエネルギーシステムに直接関与する。グルタミンが不足した食生活では、ヌクレオチドの形成も不足する可能性が高い。この様に、L-トレオニンとL-グルタミンは共に、粘性腸膜の完全性を高めることで、胃の内壁を保護する作用がある。
【0056】
上に挙げた粘液産生アミノ酸の何れかが適しているが、本出願人は、L-トレオニンが特によく働くことを見出した。L-トレオニンは、天然に産生される必須アミノ酸であり、腸管全体に分布する杯細胞によって産生されるムチンを作成する化学経路の重要な構成要素である。ムチンの生成に関与する他のアミノ酸は、セリン、ロイシン、イソロイシン、システイン等を含む。トレオニンは、代謝や栄養吸収を助けることで消化管の円滑な機能に貢献する。トレオニンが不足すると、腸壁の再生が遅くなり、粘液の産生が低下する。L-トレオニンは、特に傷の治癒やストレスの治療に役立つが、免疫グロブリンの産生にも不可欠であり、免疫機能を高める。
【0057】
L-トレオニンとL-グルタミンは、どちらもタンパク質を分解することで生成される天然産生アミノ酸であり、更なる利点をもたらす。L-トレオニンは、コラーゲン、エラスチン、及びエナメルタンパク質を構成し、代謝及び同化を補助し、粘性腸膜の完全性を高めることによって消化系を補助する。又、L-トレオニンは、β-グルカンとの相乗効果により、胃の中の運動を更に遅らせる効果があることが本発明者らによって観察されている。L-トレオニン及びL-グルタミンは、多数の異なる供給者から広く入手可能であり、又、粉末である。
【0058】
レシチンは、乳化剤として働き、腸内膜の腸細胞への極性及び脂溶性の栄養素(グルタミン、トレオニン、セリン、システイン、及び多くの薬物を含む)の生物学的利用能を高める。この極性脂質は、消化器系の腸管組織を保護・強化し、消化管内の粘液の保護効果を増強する。このレシチンは、サフラワー、トウモロコシ、ヒマワリ、オーツ麦、大豆等の植物油から得られたものであってもよい。或いは、アルコール抽出したオーツ麦油由来であってもよい。任意で、極性脂質に含まれる量を変化させる為に、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、トウモロコシ油、又は大豆油等の異なる植物油をブレンドしてもよい。液状で配合される栄養補助食品の形態では、レシチンとヒマワリ油の混合物を含むことができる(ヒマワリ油は極性脂質を多く含まないので、不活性成分と考えてもよい)。顆粒状や固形状にする場合は、ヒマワリ油等の植物性油脂は栄養補助食品に配合しないのが一般的である。数ある利点の中でも取り分け、極性脂質はマクロファージの活性を高め、免疫機能を調節する。
【0059】
本出願人は、レシチン(極性脂質)を配合することが、栄養補助食品の他の成分の極性アミノ酸の生物学的利用能を高めるので、重要な役割を果たすことを見出した。極性脂質は、2つのメカニズムによって生物学的利用能を高める。先ず、極性脂質の消化産物と胆汁酸塩は、腸内膜の結腸細胞の透過性を変化させる可能性がある。第2に、極性分子が極性脂質と共に可溶化し、水性拡散層を介した移動を促進する可能性がある。本出願人は、このメカニズムが、極性残基を介して極性脂質が標的の極性分子を引き付け、次に親油性残基を用いてこれらの分子を細胞膜を越えて腸細胞及び腸内膜の結腸細胞に輸送する能力に関連していると推論している。本出願人は、レシチンとオーツ麦油の両方が、この強化された膜輸送に優れていることを発見した。
【0060】
極性脂質、特にレシチンは、この様にして、薬物及び栄養素の為の多目的送達手段を提供する。研究では、極性脂質が、ステロイド、抗生物質、抗ヒスタミン剤、制吐薬等、共溶解した親油性又は極性の薬剤の生物学的利用能を高めることができるということを示している。乳化剤としての使用に加えて、極性脂質は消化管内の粘液の保護効果を物理的に増強する。本発明の栄養補助食品の極性脂質として使用できる極性脂質の潜在的な供給源は幾つかある。好ましい実施形態では、大豆油からのレシチンが使用される。
【0061】
極性脂質の良好な供給源でもある他の油は、オーツ麦油、ヒマワリ油、サフラワー油、大豆油、オリーブ油、パーム油、トウモロコシ油、菜種油、アマニ油等である。本発明の栄養補助食品に使用される極性脂質の好ましい濃度は、栄養補助食品の約1重量%~約15重量%の範囲である。典型的な値は10%である。「約」という用語は、当業者が容易に理解できる典型的な処方の製造公差を見込む為に、本願を通して使用されている。本明細書で特に明記しない限り、栄養補助食品の構成要素の割合は全て、栄養補助食品の重量パーセントである。
【0062】
本出願人は、レシチンが、L-グルタミン及び(主に極性の)粘液産生アミノ酸の生物学的利用能の吸収率を高めるのに特に良く機能することを見出した。特に、本出願人は、レシチンを配合することによって、L-グルタミン及び粘液産生アミノ酸の生物学的利用能と吸収率が、自然界に存在するものよりもかなり大きいことを発見した。その結果、栄養補助食品、特にレシチンを配合したものは、天然由来成分の何れか、又は関連する天然由来成分の組み合わせとは著しく異なる特性を有する化合物となる。
【0063】
上述したように、本発明の実施形態は、指定された微生物叢及びGI管の一部を標的にする為に提供される、幾つかのプレバイオティクスも含む。プレバイオティクスであるβ-グルカンの配合には幾つかの利点がある。例えば、β-グルカンは免疫系を強力に刺激する。又、β-グルカンは血中のLDLコレステロールを低下させる。又、β-グルカンは、他の糖と結合して一定期間にわたって糖を放出し、糖の高低差を減らして血糖値を安定させる。好ましい実施形態では、使用されるβ-グルカンはオーツ麦の水溶性食物繊維であり、オーツ麦のカーネルに含まれるオリゴ糖であり、乾燥すると粉末になる。β-グルカンの代替源は、大麦、酵母、及び他の植物源である。β-グルカンは、胃液や水と共に働くゲル化剤である。一実施形態では、使用される水溶性食物繊維は、オーツ麦に由来するβグルカンである。その他の水溶性食物繊維としては、大麦や大豆由来のβ-グルカンが挙げられる。β-グルカンは、多数の異なる供給者から広く入手可能であり、小麦粉として製粉してもよい。
【0064】
前述のプレバイオティクスのブレンドはFOSも含む。本出願人は、FOSを配合することによっても大きな利益が得られることを発見した。実際、酪酸は、腸細胞及びコロノサイトにとって重要な栄養素として知られている。実際、酪酸は抗癌剤として知られており、腸内膜に好ましい食品であり、細胞を治癒し、細胞間の密着結合を強化し、透過性を制限するのに役立つ。しかし、酪酸塩は腐ったバターのような臭いがして、口に合わない。従って、酪酸塩を栄養補助食品の直接の成分として導入することは好ましくない。FOSを配合すると、特定の常在菌の増殖が促進され、酪酸が生成される。言い換えれば、FOSを配合すると、内部で酪酸を生成することができ、その付随する利点が達成される。この様に、本発明のもう1つの利点は、味気ない臭気を伴わずに酪酸を導入できることである。
【0065】
前述のプレバイオティクスのブレンドには、RS-4とアラビノキシランオリゴ糖も含まれる。RS-4は、化学修飾耐性トウモロコシデンプンであり、主に横行結腸及び下行結腸で作用するプレバイオティクスであり、GI管のこの領域で有益な微生物、特にラクノスピラ科及びロゼブリア種を増加させる。アラビノキシランオリゴ糖(AXOS)は、主に下行結腸及び直腸で作用するプレバイオティクスであり、GI管のこの領域で有益な微生物、特にベイロネラ及びプレボテラ種を増加させる。
【0066】
その結果、栄養補助食品には多様なプレバイオティクスが提供されており、これらのプレバイオティクスは夫々、規定範囲のpH及び酸素濃度で作用し、回腸末端から直腸までのGI管の異なるセグメントに存在する微生物を標的とする。実際、FOSは主に回腸末端と上行結腸で作用する。β-グルカンは主に上行結腸と横行結腸で作用する。RS-4は主に横行結腸と下行結腸で作用する。AXOSは、主に下行結腸と直腸で作用する。この様に、本発明による栄養補助食品は、GI管の異なる領域に存在する特定の微生物を標的とし、セグメントごとに重複したカバレッジを提供する。このスペクトルは、図2に纏められている。
【0067】
プレバイオティクスは、GI管のヒトの酵素では消化されない複合糖質である。従って、これらの糖は無傷で大腸に入り、特に特定のラクトバシラス種及びビフィドバクテリウム種を含む大腸の微生物群のエネルギー源となる。これらの微生物は、短鎖脂肪酸を生成することで、バランスのとれた腸内のホメオスタシスを維持する重要な種として働く。これらの微生物は、有益な種であるクロストリジウム、ルミノコッカス、ユーバクテリウム等の他の常在生物との相互摂食の基礎を築く。
【0068】
プレバイオティクスの発酵は、腸内のpHを低下させ、ペプチドの分解とそれに伴うアンモニアやアミン等の毒性化合物の生成を抑制し、腸内菌共生バランス失調性細菌酵素の活性を低下させる。イヌリンを含む、一般的に配合されている或る種のプレバイオティクスは過剰なガス及び鼓腸を生じるので、本発明では除外される。
【0069】
本出願人は、111頭の馬の剖検を行い、大腸の異なる領域から細菌スワブを採取した。本出願人は、大腸の環境が遠位端でpH5.5からpH7に変化すると、大腸のそれらの様々な象限に生息する細菌の種類が変化することを発見した。又、本出願人は、腸内を通る距離が長くなると酸素が減少し、遠位端にかけて嫌気性菌が優勢になることを発見した。本出願人は、ヒトの腸内における微生物の同様の分布を発見し、やはり遠位端にかけてより高いpHとより低い酸素を追跡した。
【0070】
本発明の各種のプレバイオティクスは、これらの独自のpH及び嫌気性の生息環境を占める特定の微生物を標的とする。これらのニッチの各々は、異なるレベルの酸性度及び酸素濃度を示す。単一のプレバイオティクスでは、これらの非常に多様な環境を標的にすることはできないが、多くの製品に見られる任意の組み合わせでのプレバイオティクスも理想的ではない。その代わりに、本発明では、5つの特定の生息環境を対象とし、各生息環境が、回腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、直腸にほぼ対応する、夫々が異なるpHと酸素の範囲を有する。更に、プレバイオティクスは、微生物群集に大きな影響を与えるキーストーン種に主に作用する。この新規のアプローチにより、遠位回腸だけでなく、結腸全体の透過性の問題を治療することができる。
【0071】
XOS、GOS、FOS等のオリゴ糖は(OS)、ビフィドバクテリウム(ビフィドジェニック)種とラクトバシラス種の数を増加させ、病原性大腸菌、腸球菌、クロストリジウムディフィシル及びウェルシュ菌の数を減少させる。FOSは、フィーカリバクテリウム・ プラウスニッツィイ、E.レクターレ、ロゼブリア・イヌリニボランス等の酪酸産生種の数を増やす。FOSはpH6.8でビフィドゲン効果を最も良く発揮し、GOSはpH6でビフィドゲン効果を最も良く発揮する。
【0072】
オーツ麦ブラン由来のアラビノキシランオリゴ糖(AXOS)は、遠位結腸のビフィドバクテリウム種に作用し、プロピオン酸産生微生物を刺激する。ビフィドバクテリウム種は酪酸を産生しないが、アナエロスティペス、ユーバクテリウム・ハリイ等の酪酸を産生する種によって代謝される酢酸や乳酸を産生する。
【0073】
これらのオリゴ糖は、大腸全体に影響を与えるが、主に遠位回腸と上行結腸に影響を与える、AXOSは例外的に遠位結腸と直腸を標的とする。
【0074】
β―グルカンのような多糖類は、バクテロイデス種やクロストリジウムベイジェリンキの数を増加させるが、ビフィドバクテリウムやラクトバシラス種の数には影響を与えない。グアーガムは、pHの低下を補助し、有益なストレプトコッカスサーモフィルスの数を増やす別の多糖類である。これらの多糖類は、上行結腸と横行結腸の微生物集団に最も大きな影響を与える。
【0075】
RS-4のようなレジスタントスターチ(RS)は、ビフィドバクテリウムとパラバクテロイデス・ディスタノシスの数を増加させ、フィルミクテスの数を減少させる。RS-4及びその類似物は、酪酸を産生するルミノコッカスブロミイの数を増加させる。本発明では、大腸の最初の2つのセグメント、すなわち上行部及び横行部全体で通常の消化酵素に対して耐性を持たせる為に、硫黄の結合によって化学的に架橋された耐性繊維RS-4を使用する。この化学的に架橋された形で、RS-4は下行結腸と直腸まで無傷で到達し、pH6.8~7.0の環境下でバクテリアによって消化され得る。
【0076】
レジスタントスターチは、横行結腸と下行結腸の微生物群に最も大きな影響を与え、直腸でも若干の活性が見られる。
【0077】
本発明のもう一つの直接的な利点は、L-グルタミン及び他の極性粘液産生アミノ酸が、前述のプレバイオティクスによる腸の活動増加に先立って、有益な腸内膜の治癒及び補強を提供することができることである。上述したように、この利点は、主に極性脂質(この場合はレシチン)を含むことによって達成され、前述のアミノ酸の生物学的利用能を有利に高めることができる。図3は、アミノ酸の吸収率対分単位の時間をプロットした図である。この図から分るように、レシチンが有る場合の吸収は、レシチンが無い場合よりも有意に早く、繊維だけの場合よりも有意に早い。
【0078】
1つ以上の追加の成分が配合されていてもよい。そのような好ましい追加成分の1つは、マンナン又はマンナンオリゴ糖(MOS)からなり、これらは病原体を結合して排泄させる糖類である。マンナンやマンナンオリゴ糖は、病原体が標的とする腸細胞や大腸細胞の表面に存在する受容体と類似している。栄養補助食品に含まれるマンナン及びマンナンオリゴ糖は、病原体と強固に結合し、病原体が腸内膜に付着するのを防ぐことで、病原体を排泄させることができる。本発明の栄養補助食品において、マンナン及びマンナンオリゴ糖は、酵母抽出物であるサッカロミセス・セレビシエ(ビール酵母)の細胞壁からの天然由来のものであるが、マンナンオリゴ糖の他の供給源も許容される。
【0079】
栄養補助食品の様々な成分が分離しないようにする為に、乳化剤を使用してもよい。そのような乳化剤の1つは、グアーガム(ギャランとも呼ばれる)であり、マメ科の低木クラスタマメの種子から抽出されたガラクトマンナンオリゴ糖である。グアーガムは、乳化剤、増粘剤、安定剤として一般的に使用されている。グアーガムはプレバイオティクス繊維としても作用する。
【0080】
一実施形態では、病原性細菌を結合して排除する為、病原体を吸収して封じ込める為、マイコトキシンを吸収又は染み込ませる為、及び腸内膜の細胞の再生と成長をサポートする為に、本発明の栄養補助食品に追加の成分を配合してもよい。
【0081】
任意に、病原体に結合し、結合した病原体と共に消化器系を通過して便中に排泄されるニュートリシンを使用してもよい。この追加成分は、マンナン又はマンナンオリゴ糖(MOS)から構成され、これらは病原体を結合し、同時に有益なバクテリアに栄養を与える為に使用される複合糖質である。マンナンやマンナンオリゴ糖は、病原菌の付着部位に結合し、病原菌が腸管膜の受容体に結合するのを防ぐ。マンナン又はマンナンオリゴ糖は、酵母抽出物であるサッカロミセス・セレビシエ(ビール酵母)の細胞壁からの天然由来であるが、マンナン又はマンナンオリゴ糖の他の供給源も許容される。
【0082】
任意に、バクテリアを引きつけ、吸収された病原性バクテリアと共に消化器系を通過する病原性バクテリア吸収材を使用してもよく、例えば、フランスのセデックスにあるS.I.ル・サッフル(S.I.Lesaffre)社からサフマン(SAFMANNAN)という商標で販売されている材料等である。代わりに使用され得る他の病原菌吸収性栄養剤には、S.I.ル・サッフル社の、商標BIOSAFで販売されている材料、ケンタッキー州ニコラスビルのオーテック・インク社(Alltech,Inc.)の商標BIO-MOSで販売されている材料、及び他のマンナンオリゴ糖(酵母の細胞壁に由来する複合マンノース糖)が含まれる。
【0083】
任意に、同じくサッカロミセス・セレビシエに基づくマイコトキシン吸収剤も、大腸内のマイコトキシンを吸収又は吸収する為に使用され得る。そのようなマイコトキシン吸収剤の1つであるニュートリシンは、オールテック・インク(Alltech,Inc.)から登録商標マイコソーブ(MYCOSORB)で販売されている材料である。代わりに使用され得る他のマイコトキシン吸収性ニュートリシンには、バイオミン・ディストリビューションインク(Biomin Distribution,Inc.により商標マイコフィックスプラス(MYCOFIX PLUS)で販売されている材料、及びカンツイー・メディファーム・インク社(Kanzy Medipharm, Inc.)により商標D-マイコトック(D-MYCOTOCで)販売されている材料が含まれる。
【0084】
本発明の栄養補助食品に含まれ得る任意の有効成分は、ヌクレオチドを含む栄養補助食品から構成され、このヌクレオチドは、急速に複製される腸内膜に組み込まれ得る。分裂している細胞は、外因性のヌクレオチドを使用してその複製を強化することができる。腸壁には、栄養を吸収する為の「絨毛」と呼ばれる幾つかの微小な指状の粘膜の突起があり、隣接する絨毛の間には陰窩がある。陰窩には幹細胞があり、これが増殖して腸球を絨毛の長さ方向に押し上げ、組織を絶えず複製している。食品ヌクレオチドは絨毛の高さを増やし、それによって栄養の体内への取り込みや他の栄養成分の効果が高まることが研究で実証されている。ヌクレオチドには幾つかの供給源があるが、その中でもビール酵母やパン酵母に由来するものが最も優れている。
【0085】
最後に、本発明の栄養補助食品に、その要素が分離するのを防ぐ為に乳化剤として添加される非活性成分がある。この特定の実施形態の栄養補助食品に使用される乳化剤はグアーガムであり、これは増粘及び安定化特性も有する。グアーガムの代わりに、カラギーネン、キサンタン、寒天等、適切な特性を有する他の乳化剤も使用され得る。
【0086】
当業者であれば、本発明の栄養補助食品は、単にその成分の総和以上のものであり、成分の組み合わせによって相乗的で高い効果が得られることをすぐに理解できるであろう。例えば、極性脂質は、消化管全体の内膜の細胞膜に亘る極性アミノ酸の輸送を促進することで、極性アミノ酸の有効性と作用速度を向上させる拡散剤として機能する。プレバイオティクス繊維は、極性脂質とアミノ酸の通過を遅らせ、両者が消化管内で有益な効果を発揮する時間を増やす。アミノ酸も又、密着結合の数を増やすことで腸管膜の完全性を高めるが、極性脂質と組み合わせることで、極性脂質なしの場合よりも遙かに効果的且つ迅速な作用を示す。
【0087】
各成分の量の相対的な範囲、及びそれらの好ましい量について、ここで説明する。
【0088】
アミノ酸:本発明の本実施形態における粘性腸管膜の完全性を高めるニュートリシンには、L-グルタミン及び上述の粘液産生アミノ酸のうち少なくとも1つが含まれる。
【0089】
少なくとも1つの粘液産生アミノ酸の量の範囲は、栄養補助食品の各重量に対して約0重量%~約10重量%である。L-トレオニンを使用する1つの非限定的な例として、L-トレオニンは、栄養補助食品の約10重量%である。
【0090】
L-グルタミンの量の範囲は、栄養補助食品の約1重量%~約20重量%である。しかし、2%未満のL-グルタミンでは、効果的な結果が減少すると考えられている。非限定的な例としては、L-グルタミンの量は、栄養補助食品の約5重量%である。
【0091】
極性脂質:本発明における極性脂質の濃度は、栄養補助食品の約1重量%~約15重量%であってよい。ヒマワリ又は他の植物油が、液体栄養補助食品を製造する為に、シンナーとして加えられてもよい。極性脂質は、典型的にはレシチンの形態であり、オーツ麦油、ヒマワリ油、サフラワー油、トウモロコシ油又は大豆油等の油から得られる。これらの極性脂質を他の植物油で薄めて、本発明の液体又はペースト状の製剤を作ることができる。
【0092】
プレバイオティクス:上述したプレバイオティクス、すなわちFOS、β-グルカン、AXOS及びRS-4の量の範囲は、栄養補助食品の夫々約1重量%~約40重量%である。プレバイオティック繊維の好ましい量は、栄養補助食品の約1重量%~約40重量%である。最も好ましいプレバイオティクス繊維の量は、栄養補助食品の約25重量%である。FOSは、例えば、ヤーコン根、チコリ根、エルサレムアーティチョーク、ブルーアガベ、アカシア、又は他の食物繊維を豊富に含む野菜から得ることができる。β-グルカンは、例えば、オーツ麦、大麦、キノコ類、海藻、藻類、酵母の細胞壁等から得ることができる。AXOSは、例えば、小麦、オーツ麦、大麦、米、キビ、サイリウム、亜麻、ライ麦のふすま組織から得ることができる。RS-4は、オーツ麦、ヤーコン根、チコリ根、亜麻、アカシア、トウモロコシ、又は細菌発酵から得ることができ、その後、人間の酸や酵素による消化率を低下させる為に、化学的な架橋を施してもよい。
【0093】
例えば純粋なマンナン又はマンナンオリゴ糖のような、消化管内の病原性細菌に結合して排除するニュートリシンを含むそれらの実施形態では、ニュートリシンは栄養補助食品の約0.5重量%~約20重量%で存在してもよい。
【0094】
栄養補助食品の成分が分離するのを防ぐ為の乳化剤、例えばグアーガムをも含むこれらの実施形態では、乳化剤は栄養補助食品の約1重量%~約5重量%で存在してもよい。
【0095】
本発明の栄養補助食品は、固体として、顆粒状固体として、粉末として、ペーストとして、又は液体として製造され得る。固形物として製造する為には、少量のオーツ麦ブラン又はオーツ麦粉(又はその代替品)を添加して、食品バーの形態に増粘させる。プレスして錠剤の形にしてもよい。追加成分を添加して、標準的なサイズのヘルスバーを作ってもよい。混合物を撹拌しながら、より高い割合のオーツ麦ブラン又はオーツ麦粉を加えることにより、粒状形態の栄養補助食品を製造することができる。この顆粒状の栄養補助食品は、シリアルやフルーツに振りかけたり、液体に加えたりすることができる。混合物を撹拌しながら更に小麦粉を加えることで、粉末形態の栄養補助食品を製造することができる。
【0096】
更に油(オーツ麦油、ヒマワリ油、サフラワー油、又は他の油)を加えることで、混合物をピーナッツバターのような粘り気のあるペースト状にすることができる。ペースト状になった本発明の栄養補助食品は、ゼラチンカプセル(液体充填ソフトジェルカプセルとして)に入れて保存することができ、これによっても栄養補助食品の安定した投与量が得られる。油を更に加えることで、スプーンで摂取できる粘性のある液体にすることもできる。
【0097】
本発明の栄養補助食品は、定期的に摂取されることが好ましく、好ましい実施形態では、消化管内の成分の最適なレベルを維持する為に毎日である。好ましい投与量は、毎日約2分の1ティースプーンから約3ティースプーンの間である。本発明の栄養補助食品は、1日に少なくとも1回、場合によっては2回又は3回、経口摂取され得る。
【0098】
栄養補助食品の重量はその形態によって異なり、ペースト状の形態は約0.8の比密度を有し、顆粒状又は粉状の形態は0.5~0.6の比密度を有している。従って、本発明の栄養補助食品の好ましい投与量は、1日あたり約1グラム~約30グラムの間での変動があり得る。
【0099】
本発明の栄養補助食品は、(極性脂質の作用により)腸の内膜の腸細胞及び結腸細胞への栄養素の吸収を増加させ、消化管を通過する食材の運動を遅くするので、栄養補助食品の投与と併せて薬物を経口投与することにより、薬物も消化管内での滞留時間が長くなることは、当業者には理解されるであろう。これにより、薬の吸収が促進され、薬の治療効果を高めることができる。所望であれば、薬物は、栄養補助食品の投与と同時に投与されるか、又は栄養補助食品の投与前に栄養補助食品に混合又は懸濁させることができる。
【0100】
本発明の栄養補助食品を当業者に開示すれば、その栄養補助食品が単にその成分の合計以上のものであることを直ちに理解するであろう。記載されている成分の組み合わせは、各成分を単独で使用した場合に生じる結果の合計よりも実質的に効果的な相乗効果をもたらすものである。本発明の栄養補助食品は、様々な消化器系疾患の治療や予防という有用性に加えて、幾つかの免疫関連疾患の治療や予防にも有用である。本発明の栄養補助食品の特定の所望の用途に応じて、ビタミン及びミネラルのような追加の成分をそれに加えることもできる。
【0101】
添加され得るビタミンの例は、ビタミンB6、B12、ビオチン、C、D、E、及びナイアシンを含む。添加され得るミネラル微量栄養添加物の例は、カルシウム、クロム、銅、マグネシウム、マンガン、リン、カリウム、セレン、バナジウム、及び亜鉛を含む。又、α-リポ酸(ALA)やタウリン等の他のアミノ酸を加えてもよい。又、糖尿病を対象とした栄養補助食品の例として、コエンザイムQ10(CoQ10)、イノシトール、月見草オイル等の他の栄養補助食品を加えてもよい。当業者であれば、特定の消化器系や免疫関連の疾患に適用する為のカスタム処方を作ることができることは理解されるだろう。
【0102】
(治療対象)
本発明は、その好ましい1つ以上の実施形態において、腸内毒素症と免疫の問題に関連する疾患を予防、改善又は治癒することを目的とする。腸内微生物叢の乱れによってもたらされる炎症は、何十もの慢性疾患の根源にあり、これらの疾患は、ここでは、腸内炎症、全身性炎症、神経性炎症、抗生物質誘発性炎症、自己免疫、及び化学療法の6つのカテゴリーに整理される。本明細書の教示は、栄養補助食品自体だけでなく、栄養補助食品を用いた治療方法も企図している。そのような方法は、適正サイズの用量の栄養補助食品を準備すること、及び栄養補助食品を投与することを含む。又、本方法は、病気に基づいて、及び/又は同時治療に基づいて、治療集団を最初に特定することを含み得る。更に、本方法は、本明細書に記載された消化器系又は免疫関連の障害の何れかを有する個人又は集団を具体的に診断することを含み得る。
【0103】
(腸内炎症)
腸内炎症は、腸内毒素症の最初で最も直接的な影響である。それは、潰瘍、IBS、IBD(潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む)、憩室炎、食事の不摂生、結腸癌、及び直腸癌の形を取る。これらの症候群の夫々はリーキーガットと関連している。本発明は、短鎖脂肪酸である酪酸を産生する常在菌の餌となるように設計されたプレバイオティクスを含む。酪酸は、腸内膜の腸細胞や結腸細胞の主要な代謝エネルギー源である。酪酸は細胞間の密着結合を封止して透過性を最小にし、炎症を起こし難くする助けとなる。これは、潰瘍、IBS、IBDの予防と治療に役立つ。
【0104】
潰瘍:極性脂質のレシチンは粘液の成分であり、下層の粘液や腸壁を保護する連続したシート状の疎水性層を形成し、腸内全体を酸、ペプチド、病原体から保護する役割を果たしている。極性脂質は、この様に腸内膜の腸細胞の不透過性を高め、潰瘍から保護する。グルタミンとトレオニンは、粘液を作る際の制限反応物質であることが知られており、潰瘍性大腸炎(UC)の場合、粘液層が減少し、腸を感染症や病気に罹り易くする。レシチンを経口投与することで、粘液層が増強されることが判っている。プラセボ対照試験では、治療を受けたUC患者の53%が寛解したのに対し、プラセボを受けた患者では10%であった。
【0105】
IBS:IBSは、腸の透過性が変動する病気である。プレバイオティクス繊維、極性脂質、特定のアミノ酸は、腸の不透過性を高め、症状を軽減し、長期的に寛解に導くことができる。IBSの注意点は、症状が悪化している場合、その時点での腸は発酵性基質を受け入れるには透過性が高すぎる可能性がある為、治療を避けることである。
【0106】
憩室炎:本発明の栄養補助食品のこの応用は、食事中の極性脂質とプレバイオティック繊維の存在によって腸の流れが改善されるという観察に基づいている。憩室炎は、小腸のポケットや憩室に食物の粒子が巻き込まれることで起こる。水溶性β-グルカン食物繊維は、通過時間を遅らせ、体内での食物の消化を促進する。極性脂質を配合することで、消化器系をコーティングし、不透過性を高めて滑り易くする。これにより、粒子が引っ掛かったり、憩室に集まったりするのを防ぐことができる。
【0107】
高齢者の食生活の不摂生:本発明の栄養補助食品のこの応用は、高齢者が消化器系の障害に、より効果的に対処するのを助けることができる。この応用は、グルタミン及びプレバイオティック繊維が、腸の筋緊張を高め、免疫系を刺激するのに役立つというエビデンスに基づいている。水溶性β-グルカン食物繊維は、消化物の通過を遅らせることが知られており、食物塊を穏やかにし、水分を再吸収させて下痢を回避すると同時に、便秘を最小限に抑える増量剤となる。その結果、より良い筋緊張、より予測可能な排泄及びより少ない胃の苦痛をもたらす。
【0108】
大腸/直腸癌:酪酸は結腸細胞のアポトーシスと分化を制御し、機能不全の細胞を除去して入れ替える為、大腸癌の予防に役立つ。食物繊維の消費量は大腸癌と逆相関することが研究で示されている。プレバイオティクス繊維は、最低値と最高値の五分位間の相対リスクを60%削減する。現代社会のように食物繊維の摂取量が少ない集団では、食物繊維の摂取量を2倍にすることで、大腸癌のリスクを40%減らすことができる。特に、β-グルカンやFOS等の穀物由来の食物繊維は、直腸癌のリスクを低下させることが判っている。又、500人の中国人を対象とした研究でも同様の結果が得られており、欧米の食生活での結果を更に発展させている。
【0109】
(全身性炎症)
全身性炎症は、心臓病、2型糖尿病、様々な癌、アレルギー、及び他の慢性疾患を生じさせる。腸内毒素症を減らし、全身性炎症を低下させることで、本発明は、炎症を起こした臓器のこれらの疾患を予防、治療し、更には治癒させることができる。又、オメガ3系多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)は、心臓や膵臓等の炎症の対象を助けることが知られているが、現代の食生活では食物性オメガ3系が十分に含まれていない。本発明の極性脂質は、食物性オメガ3の生物学的利用能を高める。これらは、血漿及び赤血球のn-3レベルのドコサヘキサエン酸(DHA)及びエイコサペンタエン酸(EPA)を増加させる相乗効果を有する。レシチン極性脂質分子のコリン頭部は、オリゴ糖等の親水性物質を引き寄せて結合させ、それによって生物学的利用能を高める。
【0110】
2型糖尿病:マイクロバイオティクスの異常は、2型糖尿病及びその併存疾患(糖尿病性網膜症、高血圧、糖尿病性足潰瘍等を含む)と関連している。本発明のプレバイオティクス繊維は、腸内膜の不透過性を補強し、微生物叢を介して炎症を抑制することで、2型糖尿病の予防、治療、寛解をもたらすことができる。プレバイオティクス繊維は、消化物の通過を遅らせ、食事のグリセミック指数を効果的に低下させる。水溶性βグルカン繊維は、デンプンや糖を吸収して封じ込め、長い時間をかけて放出する食物繊維である。その結果、グリセミック指数が低くなり、糖分がゆっくりと血液中に放出される。これにより、血糖値の大きな変動に対応する為のインスリンの必要性が減り、膵臓機能障害がある人でも、栄養摂取にうまく対応できるようになる。僅かに糖尿病の傾向があるだけの人は、本発明の栄養補助食品を使い続ける限り、毎日のインスリンの注射を控えることができる可能性がある。
【0111】
他の慢性疾患:同様に、炎症に関連する他の疾患も、本発明における極性脂質によって強化されたプレバイオティクス及びアミノ酸によって予防又は治療することができる。この配合成分は、腸の為の食物及び微生物群の為の食物として作用し、その両方が丈夫で不浸透性の腸内膜に貢献し、全身性炎症を大幅に減少させる。
【0112】
(神経性炎症)
神経性炎症は、迷走神経、ホルモン、免疫系のサイトカイン等、さまざまな腸-脳経路を介して腸から進展する可能性がある。
【0113】
パーキンソン病とアルツハイマー病:パーキンソン病は、感染した腸細胞のレビー小体と呼ばれるタンパク質の蓄積から始まり、それが数年かけて脳に到達する。アルツハイマー病は、誤って折り畳まれたアミロイド蛋白質が腸から脳へと移動することを表し得る。鬱病や不安障害も、腸内微生物叢の乱れと関連している。プレバイオティクス繊維を混ぜて腸内細菌のバランスを整えることで、アルツハイマーやパーキンソン病を予防できる可能性がある。
【0114】
鬱病と不安:プレバイオティクス繊維は又、動物と人間の両方において、鬱病と不安を軽減することが示されている。ここでのメカニズムは、プレバイオティクス繊維が酪酸に発酵することに基づいており、酪酸は血液脳関門を通過して脳内に入ることができる。酪酸は脳内の遺伝子発現を変化させ、神経細胞に栄養を与え、健康状態を改善する。更に、本発明のような厳選されたプレバイオティクスを摂取した微生物は、多くの抗うつ薬や抗不安薬の標的であるドーパミンやセロトニンを含む神経伝達物質を直接作り出すことができる。
【0115】
(抗生物質誘発性炎症)
抗生物質は、感染の可能性を減らす為に、術前及び術後の両方の病院環境で一般的に使用されている。しかし、経口抗生物質は、広義の抗生物質が病原性細菌だけでなく有益な細菌も殺すことになる為、細菌異常の大きなリスクを伴う。バランスのとれた細菌群は、単一の種が優勢になることを避ける為に必要である為、腸内毒素症は、抗生物質に耐え得る胞子生成細菌の毒性過剰を引き起こす可能性がある。特に、クロストリジウム・ディフィシレという胞子生成種は、腸内微生物叢を容易に支配し、腸内膜を損傷し、腸内膜を越えて細菌が移動することで全身性炎症を引き起こすことで、病気を引き起こし、更には死まで招き得る。アミノ酸のL-グルタミンとL-トレオニンは、腸内膜の治癒と保護を助け、特別に標的を絞ったプレバイオティクスは、よりバランスの取れた微生物叢を養い、抗生物質によって引き起こされる炎症の合併症を克服するのに役立つ。
【0116】
現在、一部の医師は、腸内微生物叢を再増殖させる為に、抗生物質治療と共に、改善・回復剤としてプロバイオティクス栄養補助食品、特にヨーグルトやケフィア等の複数種を配合した製剤を推奨している。本発明に含まれるアミノ酸により、これらの群成長に先立って腸内膜を修復することができ、あらゆるバクテリアの爆発的発生を確実に腸内に収めることができるようになる。本発明に含まれる局所的に作用するプレバイオティクスは、バランスのとれた微生物叢を形成する為に必要な細菌種の複雑なコミュニティを促進する。従って、本発明は、経口抗生物質治療の重要な補助手段として使用され得る。
【0117】
(自己免疫)
自己免疫は、細菌やその生成物が既存の身体組織を模倣する擬態によって引き起こされることがある。免疫系がこれらの異物を攻撃すると、病原体の抗原性を共有する正常な組織も攻撃してしまうことがある。自己免疫疾患には、関節炎、狼瘡、1型糖尿病、多発性硬化症(MS)等がある。プレバイオティクスが病原体の負荷を軽減し、それによって免疫反応を鈍らせる限り、本発明は自己免疫疾患の予防に作用する。
【0118】
関節炎、狼瘡、1型糖尿病、MS:これらの自己免疫疾患は、微生物叢の不調と関連している。プレボテラ菌は関節リウマチの病因に関与しており、プレバイオティクスはこれらの病原種と競合する細菌に貢献する。狼瘡では、特定の乳酸菌が減少して腸の透過性が低下しているが、プレバイオティクスは微生物叢のバランスを取り戻し、症状を軽減する。MSは炎症性疾患であり、メタノブレビバクター種やアッケルマンシア種が多く存在する等、独特の微生物叢を有している。1型糖尿病は、バクテロイデス門種が優勢で、酪酸産生菌が枯渇している微生物叢と関連している。本発明のプレバイオティクスは、アミノ酸と共に、極性脂質によって強化され、これらの疾患を予防するのに役立つ。腸内環境を整えることで、これらの病気の症状が改善される限り、本発明は救済をもたらすことができる。しかし、一旦免疫系が自己組織を標的としてしまうと、現状ではそれを元に戻すことは困難又は不可能である。
【0119】
(化学療法)
化学療法や放射線療法は、腸内膜を含む分裂の早い細胞を攻撃することで効果を発揮する。このような癌治療は、リーキーガット、炎症、ひいては上記の全ての病気を引き起こす可能性がある。癌治療に直接関与する特定の疾病は、粘膜炎、口内炎、悪液質等を含む。このような従来の癌治療の副作用に加えて、微生物叢に依存して効果を発揮する新しい治療法もある。これらの疾患は全て腸に関連している為、本発明の極性脂質、プレバイオティクス繊維、アミノ酸によって改善され得る。
【0120】
粘膜炎及び口内炎:化学療法ではグルタミンが減少するが、本処方はそのバランスの崩れを改善する。グルタミンを経口摂取することで、放射線治療中及び放射線治療後の粘膜炎の期間と重症度を大幅に軽減することができる。グルタミンは、骨髄移植時の粘膜炎の影響を軽減できることも示されている。この用途の為の本発明の栄養補助食品の実施形態は、より高い割合のグルタミン-20%(1回当り5グラム)までを含み得る。グルタミンと同様に、粘液の生成に不可欠なトレオニンも含まれている。レシチン等の極性脂質は、配合されているアミノ酸の生物学的利用能を何倍にも高めることが知られており、その結果、必要なアミノ酸の総量を減らすことができる。これは、患者が飲食を困難と感じる場合がある為、本発明の栄養補助食品の重要な側面である。更に、本願発明の栄養補助食品には、粘膜炎や口内炎の症状を和らげることが知られている亜鉛やビタミンB12が少量含まれている。この様に、本発明の栄養補助食品は、癌治療からの回復を早めることができ、場合によっては回復率を高めることができる。
【0121】
キャッシュキシア:本発明の栄養補助食品のこの用途は、消耗性疾患、すなわち悪液質の人が体重を増やすのに役立ち、その結果、回復を早めることができる。グルタミンが悪液質のHIV患者や癌患者に役立つことは定立されている。グルタミンは豊富なアミノ酸であるが、ストレス時には消化器系が十分な量を得られず、高い成長率を適切に維持できない場合がある。本発明の栄養補助食品は、この極性アミノ酸の生物学的利用能を向上させる為に、極性脂質と共にグルタミンを含む。又、粘液生成経路の不可欠な部分であるトレオニンも含まれている。粘液は、体と消化物の間のバリアを維持するのに役立つ。このバリアを強化することで、消耗の原因となる血液や血清の損失を防ぐことができると考えられる。
【0122】
チェックポイント阻害剤:免疫チェックポイント阻害剤を含む新しい癌治療は、バランスのとれた微生物叢に依存する。これらの新規の治療法は、進行したメラノーマ、腎細胞癌、非小細胞肺癌等の癌を治療する為に、T細胞を採取し、癌細胞を攻撃するように改変した後、患者に再注入する。特定の細菌、特にクロストリジアーレス属やアッケルマンシア属ムシニフィラは、免疫チェックポイント阻害剤の効果を低下させる。腸内に適切な食物繊維を供給することで、有益な種がこれらの有害な細菌の数を調節し、これらの特定の抗癌剤の効果を向上させることができる。この様にして、本発明のプレバイオティック繊維は、これらの免疫細胞療法を増強することができる。
【0123】
従って、本発明の好ましい実施形態の上記の詳細な説明から、本発明は、消化管障害を有効に治療し、腸内膜細胞と微生物叢の有益な細菌の両方に栄養を与えることによって透過性を減少させる栄養補助食品を教示することが理解され得る。その結果、全身性炎症が減少又は除去され、ヒト及び潜在的には他の動物においても、多くの慢性疾患の予防、治療、又は治癒につながる。
【0124】
本発明の栄養補助食品は、医薬品ではなく、安全で天然の成分のみで構成されている。本発明の栄養補助食品は、経口投与が可能であり、それにより、その投与が簡単になる。本発明の栄養補助食品は、ペースト状、固形状、液体状、粉末状、又は液体に添加して投与する形態の何れかで配合され得る。又、本発明の栄養補助食品は、出荷と保管の両方が容易な方法で包装され得る。
【0125】
本発明の栄養補助食品は、安定しており、長い保存期間を有し、使用前にその保存期間中に使用者が提供する特別なケアを必要としない。又、本発明の栄養補助食品は、従来知られている消化管障害治療薬や免疫関連障害治療薬に比べて安価である為、市場への訴求力が高まり、可能な限り幅広い市場に提供することができる。最後に、本発明の栄養補助食品及びその投与方法の前述の利点及び目的の全てが、実質的な相対的不利益を被ることなく達成される。
【0126】
本発明の前述の説明は、その特定の実施形態及び応用例を参照して示され、記述されてきたが、それは例示及び説明の目的で提示されたものであり、網羅的であること、又は本発明を開示された特定の実施形態及び応用例に限定することを意図したものではない。本明細書に記載されている本発明に対して幾つかの変更、修正、変形、又は改変を行うことができ、それらは何れも本発明の主旨又は範囲から逸脱するものではないことは、当業者には明らかであろう。特定の実施形態及び用途は、本発明の原理及びその実用化を最もよく説明する為に選択され、説明されたものであり、それによって、当業者が、企図された特定の用途に適した様々な実施形態で、様々な変更を加えて本発明を利用することができる。従って、そのような全ての変更、修正、変形、及び改変は、それらが公正、法的、及び衡平に権利を有する幅に応じて解釈される場合、添付の請求項によって定められる本発明の範囲内にあると見做されるべきである。
【0127】
本明細書で引用した公報、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個別に、且つ具体的に参考文献として示され、その全体が本明細書に記載されている場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0128】
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」並びに同様の参照語の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。用語「を備える(comprising)」、「を有する(having)」、「を含む(including)」、及び「を包含する(containing)」は、別段の記載がない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「~を含むが、~に限定されない」という意味)として解釈される。本明細書での値の範囲の記載は、本明細書で別段の指示がない限り、範囲内に入る各個別の値を個別に参照する略記法として機能することを単に意図しており、各個別の値は、本明細書で個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれている。本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行され得る。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「等」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、別途主張されない限り、本発明の範囲に制限を与えるものではない。本明細書の如何なる言語も、本発明の実施に不可欠なものとして、請求項に記載されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0129】
本発明の好ましい実施形態は、本発明を実施する為に本発明者らに知られている最良の態様を含めて本明細書に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がそのような変形を適宜採用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明には、適用法で認められているように、添付の特許請求の範囲に記載されている主題の全ての変更及び同等物が含まれる。更に、本明細書に別段の記載がない限り、或いは文脈上明らかに矛盾しない限り、上述の要素のあらゆる可能なバリエーションの組み合わせが本発明に包含される。
【符号の説明】
【0130】
1 口
2 食道
3 肝臓
4 胃
5 十二指腸
6 脾臓
7 小腸
8 結腸
9 直腸
10 肛門
図1
図2
図3
【国際調査報告】