(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】単一入力状態高偏光感度光コヒーレンストモグラフィーを用いて深度分解組織複屈折を測定するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20220112BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G01N21/17 620
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545271
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(85)【翻訳文提出日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 US2019056048
(87)【国際公開番号】W WO2020077328
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】521154899
【氏名又は名称】ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ボウマ ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ヴィリジャー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】リウ リンボ
(72)【発明者】
【氏名】リウ シンユ
(72)【発明者】
【氏名】ション チャオジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ナンシュオ
【テーマコード(参考)】
2G059
4C316
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059AA06
2G059BB12
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2G059FF01
2G059GG01
2G059GG09
2G059HH01
2G059JJ17
2G059JJ19
2G059JJ20
2G059JJ22
2G059KK01
2G059MM09
4C316AA09
4C316AB03
4C316AB08
4C316AB11
4C316FA18
4C316FB29
(57)【要約】
サンプルの層のリターダンスを決定するための方法。この方法は、偏光の第1の部分を光学システムのサンプルアームに送り、前記偏光の第2の部分を前記光学システムのリファレンスアームに送る工程と、前記サンプルアームから戻された第1の戻り光と、前記リファレンスアームから戻された第2の戻り光と、を合流させる工程と、検出器を用いて、偏光データを生成するために合流光を第1の偏光状態と前記第1の偏光状態とは異なる第2の偏光状態とに沿って検出する工程と、前記検出器に連結されたプロセッサを用いて、前記合流光の検出に基づき前記サンプルの層の上面及び下面から戻る光の偏光状態を決定する工程と、前記プロセッサを用いて、前記決定された偏光状態に基づき前記サンプルの前記層のリターダンスを決定する工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの層のリターダンスを決定するための方法において、
偏光の第1の部分を光学システムのサンプルアームに送り、前記偏光の第2の部分を前記光学システムのリファレンスアームに送る工程と、
前記サンプルアームから戻された第1の戻り光と、前記リファレンスアームから戻された第2の戻り光と、を合流させる工程と、
検出器を用いて、偏光データを生成するために合流光を第1の偏光状態と前記第1の偏光状態とは異なる第2の偏光状態とに沿って検出する工程と、
前記検出器に連結されたプロセッサを用いて、前記合流光の検出に基づき前記サンプルの層の上面及び下面から戻る光の偏光状態を決定する工程と、
前記プロセッサを用いて、前記決定された偏光状態に基づき前記サンプルの前記層のリターダンスを決定する工程と、を有する、方法。
【請求項2】
前記偏光データに関連するミラー状態を決定する工程をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ミラー状態はポアンカレ球上のポイントを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ミラー状態は反転したヘリシティを有する入力偏光状態を備える、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルの前記層は、前記サンプルの表面下の層を備える、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光学システムは、光コヒーレンストモグラフィーシステムを備え、
前記合流光を第1の偏光状態と第2の偏光状態とに沿って検出する工程が、前記光コヒーレンストモグラフィーシステムを用いて、前記合流光を第1の偏光状態と第2の偏光状態とに沿って検出する工程をさらに含む、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルの層の上面及び下面から戻る光の偏光状態を決定する工程が、
前記サンプルの前記層の前記上面及び前記下面からの前記偏光状態に関連する回転円の回転角及び回転軸を決定する工程と、
前記回転角及び前記回転軸の決定に基づいて、リターダンスレベル及び見かけの光学軸をそれぞれ決定する工程と、をさらに含む、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルは複数の層を有し、
前記決定された偏光状態に基づき前記サンプルの層のリターダンスを決定する工程が、前記決定された偏光状態に基づき前記サンプルの前記複数の層の各々のリターダンスを決定する工程をさらに含み、
前記方法が、前記サンプルの前記複数の層の各々の前記リターダンスに基づき、前記サンプルの再構成を生成する工程をさらに有する、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルの層のリターダンスを決定する工程が、アーティファクトを減少させるために前記偏光状態の波長依存性を用いて前記サンプルの前記層の前記リターダンスを決定する工程をさらに含む、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
アーティファクトを減少させるために前記偏光状態の前記波長依存性を用いて前記サンプルの前記層の前記リターダンスを決定する工程が、スペクトルビニングに基づき、アーティファクトを減少させるために前記偏光状態の前記波長依存性を用いて前記サンプルの前記層の前記リターダンスを決定する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記偏光は円偏光を備える、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記検出器は、第1の検出器及び第2の検出器を備え、
偏光データを生成するために前記合流光を第1の偏光状態と第2の偏光状態とに沿って検出する工程が、前記合流光を偏光ビームスプリッタに送る工程をさらに有し、
前記偏光ビームスプリッタは、前記第1の偏光状態を有する光を前記第1の検出器に送り、前記第2の偏光状態を有する光を前記第2の検出器に送るよう構成されている、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルは、眼科学に関するサンプル、皮膚科学に関するサンプル、血管内サンプル又は消化管サンプルのうちの少なくとも1つである、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記光学システムは、高偏光感度光コヒーレンストモグラフィー(PS-OCT)システムを備える、請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
サンプルの層のリターダンスを決定するための装置であって、
サンプルアーム及びリファレンスアームを備える干渉計光学システムと、
前記光学システムに連結された光源と、
検出器と、
前記検出器に連結されたプロセッサと、を備え、
前記光源は、偏光の第1の部分を前記サンプルアームに送り、前記偏光の第2の部分を前記リファレンスアームに送るよう構成され、
前記光学システムは、前記サンプルアームから戻された第1の戻り光と、前記リファレンスアームから戻された第2の戻り光と、を合流させるよう構成され、
前記検出器は、偏光データを生成するために合流光を第1の偏光状態と前記第1の偏光状態とは異なる第2の偏光状態とに沿って検出するよう構成され、
前記プロセッサは、
前記検出器による前記合流光の検出に基づき、前記サンプルの層の上面及び下面から戻る光の偏光状態を決定し、
前記決定された偏光状態に基づき、前記サンプルの前記層のリターダンスを決定するよう構成されている、装置。
【請求項16】
前記プロセッサは、前記偏光データに関連するミラー状態を決定するようさらに構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記ミラー状態はポアンカレ球上のポイントを備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記ミラー状態は反転したヘリシティを有する入力偏光状態を備える、請求項16又は17に記載の装置。
【請求項19】
前記サンプルの前記層は、前記サンプルの表面下の層を備える、請求項15~18の何れか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記光学システムは、光コヒーレンストモグラフィーシステムを備え、
前記プロセッサは、前記合流光を第1の偏光状態と第2の偏光状態とに沿って検出する際に、前記光コヒーレンストモグラフィーシステムを用いて、前記合流光を第1の偏光状態と第2の偏光状態とに沿って検出するようさらに構成されている、請求項15~19の何れか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記プロセッサは、前記サンプルの層の上面及び下面から戻る光の偏光状態を決定する際に、
前記サンプルの前記層の前記上面及び前記下面からの前記偏光状態に関連する回転円の回転角及び回転軸を決定し、
前記回転角及び前記回転軸の決定に基づいて、リターダンスレベル及び見かけの光学軸をそれぞれ決定するよう、さらに構成されている、請求項15~20の何れか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記サンプルは複数の層を有し、
前記プロセッサは、前記決定された偏光状態に基づき前記サンプルの層のリターダンスを決定する際に、前記決定された偏光状態に基づき前記サンプルの前記複数の層の各々のリターダンスを決定するようさらに構成されており、
前記プロセッサが、前記サンプルの前記複数の層の各々の前記リターダンスに基づき、前記サンプルの再構成を生成するよう、さらに構成されている、請求項15~21の何れか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記プロセッサは、前記サンプルの層のリターダンスを決定する際に、アーティファクトを減少させるために前記偏光状態の波長依存性を用いて前記サンプルの前記層の前記リターダンスを決定するようさらに構成されている、請求項15~22の何れか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記プロセッサが、アーティファクトを減少させるために前記偏光状態の前記波長依存性を用いて前記サンプルの前記層の前記リターダンスを決定する際に、スペクトルビニングに基づき、アーティファクトを減少させるために前記偏光状態の前記波長依存性を用いて前記サンプルの前記層の前記リターダンスを決定するよう、さらに構成されている、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記偏光は円偏光を備える、請求項15~24の何れか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記検出器は、第1の検出器及び第2の検出器を備え、
前記装置は、前記合流光を偏光ビームスプリッタに送るよう構成され、
前記偏光ビームスプリッタは、前記第1の偏光状態を有する光を前記第1の検出器に送り、前記第2の偏光状態を有する光を前記第2の検出器に送るよう構成されている、請求項15~25の何れか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記サンプルは、眼科学に関するサンプル、皮膚科学に関するサンプル、血管内サンプル又は消化管サンプルのうちの少なくとも1つである 、請求項15~26の何れか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記光学システムは、高偏光感度光コヒーレンストモグラフィー(PS-OCT)システムを備える、請求項15~27の何れか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2018年10月12日に出願された「単一入力状態高偏光感度光コヒーレンストモグラフィーを用いて深度分解組織複屈折を測定するための方法及び装置」と称される米国仮特許出願第62/744,917の利益を主張し、当該仮出願の内容は全てここに引用することにより盛り込まれているものとする。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンストモグラフィー(「OCT」)システムのイメージング光源として、近赤外スペクトルバンド広帯域又は波長掃引レーザ光源が一般的に使用されている。光源から放出された光は、通常「リファレンスアーム」と「サンプルアーム」と呼ばれる異なる経路に分割され方向づけられ、その後、方向変更されて再び合流し、Michelson又はMach-Zehnder構成、あるいは同様のハイブリッド形態を介して干渉し、その後、検出器又は分光計によって受信されてコンピュータで処理される。リファレンスアームでは、大抵の場合リフレクタを用いて光が向け戻されることで、指定された光路長を光に提供する。サンプルアームでは、光は試料に集光され、試料内部の構造によって後方散乱される。リファレンスアームとサンプルアームとの間の光の光路長差は、スペクトル領域で記録された干渉縞にエンコードされる。抽出アルゴリズム(通常は逆フーリエ変換)を用いて組織から後方散乱された光の深度分解強度が抽出されて、試料の内部構造を表す画像が形成される。
【0003】
高いイメージング速度でデータを取得しつつ、複屈折情報などの追加情報を提供する改良されたOCT法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
高偏光感度光コヒーレンストモグラフィー(「PS-OCT」)は、高偏光感度検出スキームを使用して、サンプルから後方に散乱された出力光の偏光状態を記録する。したがって、PS-OCTは、従来のサンプル反射率に加えて、組織の偏光特性を明らかにすることができる。具体的には、PS-OCTは、2つの主偏光状態間のリタデーション(retardation)及び減衰を含む組織偏光特性を検出でき、これには主偏光状態の決定も含まれる。
【0005】
複屈折は、複屈折媒体の高速及び低速の主偏光状態、つまり光学軸に沿って偏光された光が受ける屈折率の違いを表す。複屈折は、リタデーション、即ち、低速光学軸方向に沿って偏光された光の遅延をもたらし、規定の距離に沿った伝播の後、正味リターダンス、即ち遅延をもたらす。リターダンスは通常、使用する光の波長に関連して表されるが、複屈折は絶対数である。本開示においては、リタデーション及び複屈折は交換可能に使用され得る。
【0006】
「単一入力状態PS-OCT」として知られるPS-OCTの1つのタイプは、単一の、通常は円形の照明偏光状態の光を使用して組織をプローブする。サンプルにおいてリタデーションが存在することから、組織内を伝播する間に光の偏光状態が変化する。後方散乱光の深度分解偏光状態は、検出器によって記録された干渉縞から抽出でき、入力状態と比較した偏光状態の累積変化、つまり深度依存のリターダンスを計算することができる。PS-OCTの検出器は通常、光ビームの水平成分と垂直成分を分離し、各チャネルの干渉縞を別々に記録する偏光ビームスプリッタを備えている。
【0007】
プロービング光が組織構造内に集光され、収集のために散乱されることから、光の深度分解出力偏光状態の直接的解釈は、累積リタデーション及び光学軸配向を含む組織の累積偏光特性による影響に対応する。しかしながら、ほとんどの場合、検査対象の組織はさまざまな構造を有し、異なる複屈折特性を有する層で構成されているため、累積リタデーションのマップを読み取ることは困難である。一方、組織の局所リタデーション特性のマップは、本質的に特定の場所の複屈折に関連しており、関心領域の直接的な情報を提供する。したがって、組織の深度分解、即ちリタデーションを含む局所偏光特性を抽出することにより、組織の構造及び機能のより直感的かつ正確な表現が提供される。本開示において、局所又は深度分解リタデーションは、複屈折及び局所若しくは深度分解複屈折と交換可能に使用される。
【0008】
局所リタデーション特性は累積されたマップから再帰的に得ることができるが、これには、サンプルを照らす偏光状態と、検出経路内の光学部品によってもたらされる偏光変換とを知っておく必要があり、これは特にカテーテルベースのイメージングの場合、大抵実用的ではない。いくつかの方法では、組織の局所リタデーション特性は、異なる入力偏光状態で同じ組織に対して2つ以上の測定を行うことによって分解することができる。一般的に、この種のPS-OCTシステムは、偏光変調器を使用して、深度プロファイルの取得間に照明光の偏光状態を順次変更する。深度分解リタデーションマップは、異なる偏光状態を有する一対の連続した深度プロファイルの記録された干渉縞から取得でき、2つのプロファイルは組織内の同じ位置に対応していると仮定する。重要なのは、システム構成要素を通過した後に組織に入射する照明光の正確な偏光状態を知る必要はないということである。しかしながら、変調器を使用するとイメージング速度とレーザ光源の帯域幅が制限され、またシステムの複雑さとコストが増大する。一方、本明細書に記載の実施形態は、変調器を使用するという制限なしに組織の局所リタデーション測定値を取得するための解決策を提供する。
【0009】
本明細書に記載する方法及び装置には、単一入力状態シングルショットスペクトル領域PS-OCTスキーム、及びストークスベクトル推論に基づく局所複屈折抽出アルゴリズムが含まれる。上記の及び他の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲によって定義される。添付の図面と併せて読まれる例示的な実施形態に関する以下の詳細な説明は、限定ではなく単なる例示であり、範囲は添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される。
【0010】
さまざまな実施形態は、単一入力PS-OCTシステムの構造を開示している。他の実施形態は、サンプルの局所複屈折特性を分析するための方法及び装置を開示している。本明細書では、ミラー状態制約と称される近年観察及び確認された物理現象について説明し、その後、上記の装置を用いて記録されたデータに適用できる、ストークス領域の幾何学的推論に依るとともに局所組織複屈折特性のミラー状態制約に基づく処理方法について説明する。
【0011】
したがって、一態様では、本発明は、サンプルの層のリターダンスを決定するための方法を提供する。この方法は、偏光の第1の部分を光学システムのサンプルアームに送り、前記偏光の第2の部分を前記光学システムのリファレンスアームに送る工程と、前記サンプルアームから戻された第1の戻り光と、前記リファレンスアームから戻された第2の戻り光と、を合流させる工程と、検出器を用いて、偏光データを生成するために、合流光を、第1の偏光状態と前記第1の偏光状態とは異なる第2の偏光状態とに沿って検出する工程と、前記検出器に連結されたプロセッサを用いて、前記合流光の検出に基づき前記サンプルの層の上面及び下面から戻る光の偏光状態を決定する工程と、前記プロセッサを用いて、前記決定された偏光状態に基づき前記サンプルの前記層のリターダンスを決定する工程と、を有する。
【0012】
リタデーションを伴うサンプル(retarding sample)によって後方散乱され、サンプルを照らすために使用されるのと同じ経路に沿って測定された光の偏光状態は、入力状態に関連する規定の偏光状態と整列する傾向がある。このことは、検出された偏光状態の変化(evolution)に制約を与え、サンプルのリタデーションを決定するのに役立つ。これは、高偏光感度光コヒーレンストモグラフィー(PS-OCT)などの用途で単一の照明偏光状態を使用してサンプルの深度分解複屈折を測定するのに有用である。PS-OCTの以前の実装では、サンプルを照らすために2つの多重偏光状態を使用するか、複雑な再帰的再構成アルゴリズムと組み合わせて単一の既知の入力偏光状態を使用して、層状アーキテクチャを有する一般的なサンプルのサンプル特性を決定する必要があったが、本開示の方法は、この制限を克服し、特定の既知の照明偏光状態を必要とせずに、単一入力状態PS-OCTシステムを用いて深度分解複屈折イメージングを可能にし、そして、本方法は、ファイバベース又はカテーテルベースのイメージングと互換性を有する。本発明の実施形態は、例えば複数の入力偏光状態を使用する既知のシステムと比較して、より低コストで、より高速な(2つの多重化偏光状態を有する入力光源を提供する必要がないため)、そして向上した分解度を有するPS-OCTシステムなどの単一入力状態システムを提供する。複屈折イメージングは、眼科学、皮膚科学、血管内イメージング、又は胃腸管のイメージングなどの分野での用途がある。
【0013】
本方法の例示的な実施形態では、この方法は、偏光データに関連するミラー状態を決定することをさらに含んでもよい。
【0014】
本方法の別の例示的な実施形態では、ミラー状態は、ポアンカレ球上のポイントを含んでもよい。
【0015】
本方法のさらに別の例示的な実施形態では、ミラー状態は、反転したヘリシティ(reversed helicity)を有する入力偏光状態を含んでもよい。
【0016】
本方法のさらに別の例示的な実施形態では、サンプルの層は、サンプルの表面下の層を含んでもよい。偏光情報が得られるサンプルの層は、サンプルの上面(又は下面)の上だけでなく、例えばサンプル内の表面下の層を含んでもよい。
【0017】
本方法の別の例示的な実施形態では、光学システムは、光コヒーレンストモグラフィーシステムを含んでもよく、前記合流光を第1の偏光状態と第2の偏光状態とに沿って検出する工程が、前記光コヒーレンストモグラフィーシステムを用いて、前記合流光を第1の偏光状態と第2の偏光状態とに沿って検出する工程をさらに含む。光コヒーレンストモグラフィー(OCT)システムを用いることで、サンプル内の複数の層からデータを得ることが容易になる。
【0018】
本方法のさらに別の例示的な実施形態では、サンプルの層の上面及び下面から戻る光の偏光状態を決定する工程は、前記サンプルの前記層の前記上面及び前記下面からの前記偏光状態に関連する回転円の回転角及び回転軸を決定する工程と、前記回転角及び前記回転軸の決定に基づいて、リターダンスレベル及び見かけの光学軸をそれぞれ決定する工程と、をさらに含んでもよい。開示された方法により、回転角、回転軸、リターダンスレベル及び見かけの光学軸などの情報を決定することが容易になる。
【0019】
本方法のさらに別の例示的な実施形態では、サンプルは複数の層を含んでもよく、前記決定された偏光状態に基づき前記サンプルの層のリターダンスを決定する工程が、前記決定された偏光状態に基づき前記サンプルの前記複数の層の各々のリターダンスを決定する工程をさらに含み、前記方法が、前記サンプルの前記複数の層の各々の前記リターダンスに基づき、前記サンプルの再構成を生成する工程をさらに有する。開示された方法により、サンプルの複数の層の各々について得られたリターダンス情報に基づいて再構成を生成することが容易になる。
【0020】
本方法の別の例示的な実施形態では、前記サンプルの層のリターダンスを決定する工程が、アーティファクトを減少させるために前記偏光状態の波長依存性を用いて前記サンプルの前記層の前記リターダンスを決定する工程をさらに含んでもよい。
【0021】
本方法の別のさらなる例示的な実施形態では、アーティファクトを減少させるために前記偏光状態の前記波長依存性を用いて前記サンプルの前記層の前記リターダンスを決定する工程が、スペクトルビニングに基づき、アーティファクトを減少させるために前記偏光状態の前記波長依存性を用いて前記サンプルの前記層の前記リターダンスを決定する工程をさらに含んでもよい。
【0022】
本方法のさらに別の例示的な実施形態では、偏光は円偏光を含んでもよい。
【0023】
本方法のさらに別の例示的な実施形態では、検出器は、第1の検出器及び第2の検出器を備えてもよく、偏光データを生成するために前記合流光を第1の偏光状態と第2の偏光状態とに沿って検出する工程が、前記合流光を偏光ビームスプリッタに送る工程をさらに有し、前記偏光ビームスプリッタは、前記第1の偏光状態を有する光を前記第1の検出器に送り、前記第2の偏光状態を有する光を前記第2の検出器に送るよう構成されている。2つの検出器を使用して、2つの異なる偏光状態から同時にデータを収集することができる。2つの別々の検出器を使用することにより、2つの異なる偏光状態からのデータを同時に収集できるという技術的効果が得られ、これによりデータ収集の速度とシステムの全体的なスループットが向上する。
【0024】
本方法の別の例示的な実施形態では、サンプルは、眼科学に関するサンプル、皮膚科学に関するサンプル、血管内サンプル又は消化管サンプルのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0025】
本方法のさらなる例示的な実施形態では、光学システムは、高偏光感度光コヒーレンストモグラフィー(PS-OCT)システムを含んでもよい。
【0026】
本方法の別の例示的な実施形態では、光学システムは、自由空間光学システム又は光ファイバシステムを使用して実装することができる。
【0027】
別の態様では、本発明は、サンプルの層のリターダンスを決定するための装置を提供する。この装置は、サンプルアーム及びリファレンスアームを備える干渉計光学システムと、前記光学システムに連結された光源と、検出器と、前記検出器に連結されたプロセッサと、を備え、前記光源は、偏光の第1の部分を前記サンプルアームに送り、前記偏光の第2の部分を前記リファレンスアームに送るよう構成され、前記光学システムは、前記サンプルアームから戻された第1の戻り光と、前記リファレンスアームから戻された第2の戻り光と、を合流させるよう構成され、前記検出器は、偏光データを生成するために合流光を第1の偏光状態と前記第1の偏光状態とは異なる第2の偏光状態とに沿って検出するよう構成され、前記プロセッサは、前記検出器による前記合流光の検出に基づき、前記サンプルの層の上面及び下面から戻る光の偏光状態を決定し、前記決定された偏光状態に基づき、前記サンプルの前記層のリターダンスを決定するよう構成されている。
【0028】
本装置の例示的な実施形態では、プロセッサは、偏光データに関連するミラー状態を決定するようにさらに構成されてもよい。
【0029】
本装置の別の例示的な実施形態では、ミラー状態は、ポアンカレ球上のポイントを含んでもよい。
【0030】
本装置のさらに別の例示的な実施形態では、ミラー状態は、反転したヘリシティを有する入力偏光状態を含んでもよい。
【0031】
本装置のさらに別の例示的な実施形態では、サンプルの層は、サンプルの表面下の層を含んでもよい。偏光情報が得られるサンプルの層は、サンプルの上面(又は下面)上だけでなく、例えばサンプル内にある表面下の層を含んでもよい。
【0032】
本装置の別の例示的な実施形態では、光学システムは、光コヒーレンストモグラフィーシステムを含んでもよく、前記プロセッサは、前記合流光を第1の偏光状態と第2の偏光状態とに沿って検出する際に、前記光コヒーレンストモグラフィーシステムを用いて、前記合流光を第1の偏光状態と第2の偏光状態とに沿って検出するようさらに構成されている。光コヒーレンストモグラフィー(OCT)システムを用いることで、サンプル内の複数の層からデータを取得することが容易になる。
【0033】
本装置のさらに別の例示的な実施形態では、前記プロセッサは、前記サンプルの層の上面及び下面から戻る光の偏光状態を決定する際に、前記サンプルの前記層の前記上面及び前記下面からの前記偏光状態に関連する回転円の回転角及び回転軸を決定し、前記回転角及び前記回転軸の決定に基づいて、リターダンスレベル及び見かけの光学軸をそれぞれ決定するよう、さらに構成されていてもよい。開示された装置により、回転角、回転軸、リターダンスレベル及び見かけの光学軸などの情報を決定することが容易になる。
【0034】
本装置のさらに別の例示的な実施形態では、前記サンプルは複数の層を有してもよく、前記プロセッサは、前記決定された偏光状態に基づき前記サンプルの層のリターダンスを決定する際に、前記決定された偏光状態に基づき前記サンプルの前記複数の層の各々のリターダンスを決定するようさらに構成されており、前記プロセッサは、前記サンプルの前記複数の層の各々の前記リターダンスに基づき、前記サンプルの再構成を生成するよう、さらに構成されている。開示された方法により、サンプルの複数の層の各々について得られたリターダンス情報に基づいて再構成を生成することが容易になる。
【0035】
本装置のさらに別の例示的な実施形態では、プロセッサは、サンプルの層のリターダンスを決定する際に、アーティファクトを低減するために偏光状態の波長依存性を使用してサンプルの層のリターダンスを決定するようにさらに構成されてもよい。
【0036】
本装置の別の例示的な実施形態では、前記プロセッサが、アーティファクトを減少させるために前記偏光状態の前記波長依存性を用いて前記サンプルの前記層の前記リターダンスを決定する際に、スペクトルビニングに基づき、アーティファクトを減少させるために前記偏光状態の前記波長依存性を用いて前記サンプルの前記層の前記リターダンスを決定するよう、さらに構成されていてもよい。
【0037】
本装置のさらに別の例示的な実施形態では、偏光は、円偏光を含んでもよい。
【0038】
本装置のさらに別の例示的な実施形態では、前記検出器は、第1の検出器及び第2の検出器を備えてもよく、前記装置は、前記合流光を偏光ビームスプリッタに送るよう構成され、前記偏光ビームスプリッタは、前記第1の偏光状態を有する光を前記第1の検出器に送り、前記第2の偏光状態を有する光を前記第2の検出器に送るよう構成されている。2つの検出器を使用して、2つの異なる偏光状態から同時にデータを収集することができる。2つの別々の検出器を使用することにより、2つの異なる偏光状態からのデータを同時に収集できるという技術的効果が得られ、これによりデータ収集の速度とシステムの全体的なスループットが向上する。
【0039】
本装置の別の例示的な実施形態では、眼科学に関するサンプル、皮膚科学に関するサンプル、血管内サンプル又は消化管サンプルのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0040】
本装置のさらに別の例示的な実施形態では、光学システムは、高偏光感度光コヒーレンストモグラフィー(PS-OCT)システムを含んでもよい。
【0041】
本装置の別の例示的な実施形態では、光学システムは、自由空間光学システム又は光ファイバシステムを使用して実装することができる。
【0042】
本発明の上記の及び他の態様及び利点は、以下の説明から明らかになるであろう。以下の説明において、本明細書の一部を形成し、本発明の好ましい実施形態が例示されている添付の図面を参照する。しかしながら、そのような実施形態は必ずしも本発明の全範囲を表すわけではなく、本発明の範囲の解釈は本明細書の特許請求の範囲を参照してなされるべきである。
【0043】
本開示のさらなる目的、特徴及び利点は、本開示の例示的な実施形態を示す添付の図面を参照して以下の発明の詳細な説明を読むことで明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】一実施形態による、単一入力状態シングルショット自由空間スペクトル領域高偏光感度光コヒーレンストモグラフィーシステムの概略図である。
【
図2A】異なる複屈折特性を有する複数の層からなるサンプルを示す。
【
図2B】検出された偏光状態の変化において観察された制約の原理を示す。
【
図3】異なる複屈折を伴う層を有するファントムの複屈折画像を示し、従来の再構成ストラテジーと比較して、提案された方法において検知能力が向上したことが示されている。
【
図4】提案された方法と従来の二入力状態PS-OCTとで測定された層状ファントムにおける複屈折の比較を示す。
【
図5】偏光ミラー状態のデモンストレーションを示す。(a)は採用した光学系の概略図である。L1~L4はレンズ、Mはミラー、Plは偏光子、PCは偏光コントローラ、Q1は1/4波長板、SMFはシングルモードファイバである。(b)~(d)は、青い矢印で示されている、それぞれ円形、楕円形、直線偏光の入力状態を使用した場合に、PCの3つのパドルを動かしたことによるポアンカレ球上での偏光状態の変化を示す。偏光ミラー状態は、特定のポイントでの偏光状態の変化の繰り返しの交差によって現れ、各ポアンカレ球の赤い矢印で強調表示される。
【
図6】偏光ミラー状態の理論的説明のための図である。(a)は、複屈折が変化するM(x)及び固定要素Aを含む、レシプロカルサンプルを通る往復伝播のモデルを示す。(b)は、すべての線形リターダの回転ベクトルがポアンカレ球のQU平面内の半径πの円内で局在化していることを示す。緑のトレースは、偏光コントローラのパドルの同期運動についてシミュレーションされた回転ベクトルの変化を表している。青い曲線は、異なるAとM(x)の3つの代表的なセットについて、リタデーションが直線的に増加するM(x)のD・A
T・M
T(x)・D・M(x)・Aの回転ベクトルを表している。赤い曲線は、ランダムに選択された入力偏光状態[x,y,z]
Tをそのミラー状態に正確にマッピングする回転ベクトルの終点を表している。緑の線及び青の線が赤の線と交差することは、その都度、ミラー状態を介した偏光状態が変化することに対応する。
【
図7】3層複屈折ファントムにおけるコヒーレンスゲート偏光状態の実験的変化を示す。(a)は、色分けされた層を備えたファントムの概略スケッチを示し、各層は異なる光学軸の向き(配向)を特徴としている。(b)~(d)は、異なる入力偏光状態のポアンカレ球上の各層の偏光状態変化トレース(色分けは(a)に対応)を示す((b)は円偏光の入力光を示し、(c)は楕円偏光の入力光を示し、(d)は直線偏光の入力光を示している)。紫色の線は、各ファントム層の偏光状態の変化のフィッティング円である。ミラー状態と入力偏光状態は、それぞれ赤と青の矢印で示されている。ミラー状態と入力状態はQU平面に対して対称であり、反転した偏光ヘリシティを有する光に対応していることがわかる。
【
図8】ファントム及びブタ網膜の強度及び複屈折画像を示す。(a)~(c)は、それぞれ、2層ファントムサンプルの概略スケッチ、累積リタデーション画像、及び局所リタデーション画像を示す。(d)~(f)は、それぞれ、反転したファントムサンプルの概略スケッチ、累積リタデーション画像、及び局所リタデーション画像を示す。(b)~(c)及び(e)~(f)についての(b)に示すスケールバーは、垂直:100μm、水平:400μmである。(g)は、ブタ網膜の断面強度画像を示す。(h)は、偏光ミラー状態を使用して再構成されたブタ網膜の断面局所複屈折画像を示す。(g)~(h)についての(h)に示すスケールバーは、垂直:100μm、水平:400μmである。(i)は、ブタ網膜のRNFL層の正面強度投影を示す。黄色の破線は(g)及び(h)に示す断面画像の位置を示す。(j)は、RNFL層内の平均局所複屈折を示す。パネル(i)~(j)についての(j)に示すスケールバーは、垂直:400μm、水平:400μmである。
【
図9】ファイバベースのシステムにおけるミラー状態制約の適用、及びスペクトルビニングを用いる見かけの光学軸(apparent optic axis)と深度依存偏光状態のアライメントから生じるアーティファクトの抑制のデモンストレーションを示す。
【
図10】ジョーンズ行列及びミュラー行列によってそれぞれ記述された、AからBへ、そしてAへ戻る、要素を通る往復伝達の概略図を示す。
【
図11】入力状態uをそのミラー状態u’にマッピングする考え得る回転ベクトルのトレースを示す。(a)は、ポアンカレ球上の最大回転角及び最小回転角α,βと、対応する回転軸τ
An,τ
Bnを示す。(b)は、τ
Anとτ
Bnが考え得る回転ベクトルのトレースの配向と曲率を定義することを示す(赤い線)。
【
図12】本明細書に開示されるさまざまな実施形態において使用され得るセットアップを示す。
【
図13】開示される主題のいくつかの実施形態による、サンプルの層の複屈折を決定するためのシステムの例を示す。
【
図14】開示される主題のいくつかの実施形態による、コンピューティングデバイス及びサーバを実装するために使用することができるハードウェアの例を示す。
【
図15】開示される主題のいくつかの実施形態による、サンプルの層の複屈折を決定するためのプロセスの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
したがって、本出願は、累積複屈折情報ではなく局所複屈折情報を提供することができる、サンプルの複屈折情報を取得するためのシステム及び方法の実施形態を開示する。光ファイバベースの実装は、内視鏡及び血管内イメージングにおいてより好適である。自由空間バルク光学の実装は、眼科学イメージングに適している。
【0046】
本発明について、本出願のレーザ光源デバイスへの変更は、光コヒーレンストモグラフィーのための装置の一部である自由空間光学デバイスの例を用いて示しているが、当業者は、実施形態を、光ファイバ素子の使用と共に実施してもよいこと、また独立したデバイスとして使用してもよいことを理解するであろう。
【0047】
リタデーションを伴うサンプルによって後方散乱され、サンプルを照らすために使用されるのと同じ経路に沿って測定された光の偏光状態は、入力状態に関連する規定の偏光状態と整列する傾向がある。このことは、検出された偏光状態の変化に制約を与え、これはサンプルのリタデーションを決定するのに役立つ。このことは、高偏光感度光コヒーレンストモグラフィー(PS-OCT)で、単一照明偏光状態を使用してサンプルの深度分解複屈折を測定するのに有用である。
【0048】
これに対し、PS-OCTの以前の実装では、層状アーキテクチャを有する一般的なサンプルのサンプル特性を決定するために、サンプルを照らすために2つの多重化偏光状態を必要とし、あるいは複雑な再帰的再構成アルゴリズムと組み合わせた単一の既知の入力偏光状態を必要とした。本発明は、この制限を克服し、ファイバベース及びカテーテルベースのイメージングと互換性のある、特定の既知の照明偏光状態を不要とする単一入力状態PS-OCTシステムを用いた深度分解複屈折イメージングを可能にする。
【0049】
本発明の実施形態は、複数の入力偏光状態を用いるより複雑なシステムよりも低コストの単一入力状態PS-OCTシステムを提供する。PS-OCTによる複屈折イメージングは、眼科学、皮膚科学、血管内イメージング、消化管のイメージングなどの分野での用途がある。
【0050】
図1は、自由空間光学ベースの単一入力状態シングルショットPS-OCTシステム100の実施形態のブロック図を示すが、上記のように、さまざまな実施形態において、同じ原理を使用してファイバベースのPS-OCTシステムを実装してもよい。
図1に示す光源素子101は、さまざまなスペクトル帯域に調整された1つ又は複数のレーザを含んでもよい。光源素子101からの光ビームは、レンズ103によってシングルモードファイバ102に結合され、偏光子104及び1/4波長板105を通過し、これによって円偏光にされてもよい。その後、光ビームは、非偏光ビームスプリッタ106によって「リファレンスアーム」(
図1でRの符号が付されている)と「サンプルアーム」(
図1でSの符号が付されている)に分割される。リファレンスアームRにおいて、光ビームは偏光子107を通過し、レンズ109によってリフレクタ108へと中継され、反射されて同じ経路を通って戻る。サンプルアームSにおいて、走査ミラー110及び対物レンズ111は走査システムを定め、光ビームによって生成される光スポットをサンプルS’上で横方向に移動させる。リファレンスアームRから反射されたビームと、サンプルアームSから後方散乱されたビームは、ビームスプリッタ106で再結合されて高偏光感度検出スキームによって検出され、高偏光感度検出スキームは、1/2波長板112、偏光維持ファイバ113の一部、偏光ビームスプリッタ114、4つのコリメーションレンズ115~118及び2つの高速分光計119,120を備えている。
【0051】
上で概説した自由空間PS-OCTの実施形態と併せて実施することができる別の実施形態において、
図2A及び
図2Bは、局所組織複屈折特性を抽出するための単一入力状態高偏光感度OCTハードウェア構成のデータ処理方法を示す。但し、ハードウェア構成及びデータ処理方法は、必ずしも同じ実装で使用される必要はなく、さまざまな実施形態において互いに独立して使用され得る。
【0052】
図2A及び
図2Bは、ミラー状態制約を用いる局所複屈折の幾何学的推論を示し、これについては以下でより詳細に説明する。この推論はストークス領域偏光測定において説明されているが、ジョーンズ形式で表現することもできる。ミラー状態の制約は、複屈折サンプルの光偏光状態の変化について我々のグループが最近行った観察に基づいており、つまり、ランダムで均一な複屈折(減衰なし)の積層された層を有するサンプルの場合、深度の関数としての後方散乱偏光状態の変化は、ポアンカレ球上にあるつながっているが不連続な円弧を含む。転置対称システムでは、円弧が存在する円はすべて「ミラー状態」を通過し、これは入力偏光状態のQU平面反射であり、これは反転した偏光ヘリシティを有する入力偏光状態に対応する。この制約の適用には、「ミラー状態」を決定して、関心のある薄いサンプル層の上面と下面から反射された偏光状態間のポアンカレ球上の複屈折回転円を推定することが含まれる。回転円を知ることにより、関心のある層についての見かけの光学軸及び複屈折レベルにそれぞれ対応する回転軸及び回転角を得ることができる。
【0053】
例示的なサンプルが
図2Aに示されており、このサンプルは異なる光学軸を有する3つの層を含む。
図2Bには、関心のあるサンプル層における往復偏光状態変化が示されている。この例では、関心のある層が3番目の層であると仮定し、この層は3つの層の中で最も低い/最も深い層であり、
図2A中に示している。
図2Bに示すように、偏光状態201及び203は、関心のある層の上面及び下面から後方散乱された光から測定される。ミラー状態204を用いて、関心のある層の複屈折回転円である回転円202が構築される。具体的には、回転角は局所リタデーションであり、回転軸は見かけの光学軸である。
【0054】
表1は、単一入力状態PS-OCTシステムを用いる測定から深度分解複屈折情報を復元するためのデータ処理方法の個々のステップを示す。さまざまな実施形態において、分光計119及び120によって記録されたスペクトル干渉縞は、バックグラウンド除去、k空間リサンプリング及び/又は分散補償などのステップを含む従来のフーリエ領域OCTで通常使用されるアルゴリズムを用いて前処理される。xy平面の走査に対応する分光計からの前処理された干渉縞は、H(x,y,λ)、V(x,y,λ)として示される。
【0055】
【0056】
異なる光学軸配向及び複屈折の層及び領域を有する複屈折ファントムがイメージングされ、
図3(上)に示すように、複屈折領域301及び302は異なる光学軸を有する。従来の単一入力状態PS-OCT実装(図中右下)では、複屈折層の下にある領域の真の局所複屈折について分解することは不可能である。しかしながら、本発明の実施形態(左下のパネル)を使用することで、真の複屈折をファントム内で特定することができる。
【0057】
本発明の実施形態は、従来の二入力状態PS-OCTと同じコントラストを有するより高い分解度の画像を提供することができる。一般に、本発明に従って実装される装置に関連するコストは、現在のデバイスよりも大幅に低く、そのような装置は、偏光変調器によって制限されない分解度を提供することができる。例えば、
図4は、二入力PS-OCT(左)及び本発明(右)によってイメージングされた同じファントムを示す。さらに、本発明の実施形態は、単一入力状態シングルショット高偏光感度OCTで局所複屈折コントラストを可能にする。知られている単一入力PS-OCT手順は、局所複屈折コントラストを再構成せず、代わりに累積複屈折コントラストを提供するが、これは有用性の高い局所組織構造情報を視覚化することはできない。
【0058】
偏光によって、リモートセンシングから生物医学光学までさまざまな用途に魅力的なコントラストメカニズムが提供される。従来、サンプルの偏光特性を完全に特徴づけるには、複数の入力偏光状態が必要であった。後方散乱光又は反射光の偏光状態は、同一の照明及び検出経路で測定した場合、ポアンカレ球の水平面によって「ミラーリング」された使用された入力偏光状態と大抵一致することが観察された。ここでは、このミラー状態の素因を調査し、これが高偏光感度光コヒーレンストモグラフィー(PS-OCT)を用いて測定された偏光状態の深度依存変化をどのように制約するかを示すことによって、単一入力偏光状態を用いたときでも深度分解組織複屈折の分析を可能にする。
【0059】
シングルモードファイバの偏光特性に関する初期の調査では、偏光ミラー状態の側面について報告されているが、その発現は解明されていない。偏光ミラー状態を調べるために、
図5に示すように、長さ1.5mのシングルモード光ファイバを介して往復信号を測定した。ファイバの複屈折を変更するために偏光コントローラを使用してコントローラのパドル位置をランダムに移動させたことにより生じる時間変化する偏光状態を測定した。ポアンカレ球のQ、U、及びV座標で正規化されたストークスベクトルとして視覚化された偏光状態は、特定の状態u’を介して複数回、明らかに変化する(
図5の(b))。ファイバに入る前に光を検出器に反射することによって測定された異なる放出偏光状態uを用いて繰り返すことで、我々は、状態u’=D・u(ここでD=diag(1,1,-1))を、水平QU平面によってミラーリングされた入力状態として特定し、これを偏光ミラー状態として指定する(
図5の(c)及び(d))。注目すべきことに、すべての測定は受信機の固定座標で行われ、照明経路の座標の向きとは無関係である。
【0060】
ミラー状態現象を理解するために、リタデーションがx(例えば偏光コントローラのパドル位置)の関数として変化する一般的なリターダM(x)を考える。これは固定要素Aによって先行されてもよい。
図6の(a)に示す結合系は、入力偏光状態uを以下の式で表される出力状態vに変換する。
【0061】
【0062】
ここで、P=D・A
T・M
T・D・M・Aであり、すべてのベクトル及び行列は回転群SO(3)内にある。我々は、光の伝播方向に関係なく、空間xy座標の向きを維持するという慣例に従うことを選択した。レシプロカル媒体では、要素Mを通る逆伝達は、D・M
T・D(以下を参照)で表される。往復伝達PはD転置対称P=D・P
T・Dであることに注意することが重要であり、これにより、Pは線形リターダになる。往復により旋光性又は円形リタデーションが効果的に打ち消される。入力状態に対するPの影響は、ポアンカレ球のQU平面にある回転ベクトルω(P)によって記述することができ、その方向は回転軸を示し、その長さは回転量を定義する。これらの2πに関するあいまいさを考慮して、すべての考え得る線形リターダの回転ベクトルは、QU平面内の半径πの円に限定される(
図6の(b))。偏光コントローラのパドルを移動させると、ω(P)はQU平面内の複雑な経路をトレースし、このことは3つのパドルの同期運動のシミュレーションに関する
図6の(b)の緑の線で示されている。
【0063】
QU平面内には、所定の入力状態uを任意の出力状態vに回転させる1つの回転ベクトルのみが存在する。この回転ベクトルは、QU平面とuとvを二等分する平面との交差部によって定義される。uがvを通過するには、ω(P)は、QU平面のπ円内のこの特定のポイントを通って変化しなければならない。唯一の例外は、uをミラー状態u’=D・uにマッピングする回転ベクトルの連続体が存在することであり、何故なら、この場合はQU平面が二等分平面と一致するからである。回転ベクトルは、QU平面内の曲線r上に位置する(
図6の(b)の赤い曲線;詳細については、以下を参照)。ω(P)とrのすべての交差は、その都度、ミラー状態u’を介して変化するvに対応し、変化が頻繁に起こることを説明している。
【0064】
我々は次に、PS-OCTを使用して、散乱サンプル内で後方散乱された光の偏光状態を、その往復深度関数として測定した。OCTの空間分解能のスケールで、組織は、異なる光学軸配向を有する均一な線形複屈折層のシーケンスとしてモデル化できる。M(x)は、深度xとともに線形的に増大するリターダンスを有する線形リターダを表し、D・M
T・D=Mが得られる。パラメータAは、システム構成要素と先行する組織層との組み合わせ効果を表す。結果として得られる回転ベクトルω(P)は、π円にわたる規則的な曲線を表す(
図6の(b)の青い曲線)。可能なすべてのトレースは、曲線rと正確に1回交差し、u’を周期的に横切ることを保証する。vの変化をより詳細に調べるために、xに関する導関数を取り、u=P
T(x)・vを置換する。
【0065】
【0066】
P・PT=Iであるため、(δP/δx)・PT=-P・(δPT/δx)はスキュー対称であり、外積演算子τ×として表すことができ、これは、xとともに線形的に増大するリターダンスについて一定である(詳細については以下を参照)。したがって、vはポアンカレ球上でu’を通過する円上において一定の速度で変化する。
【0067】
実験的検証のために、我々は、異なる光学軸配向を有する3つの線形複屈折層からなる散乱ファントムを準備した(
図7の(a))。
図7を参照すると、(b)~(d)は、3つの異なる入力偏光状態についてPS-OCTを用いて測定された深度依存偏光状態を示す。予想した通り、各層内の偏光状態の変化に円をフィッティングすると、近い一致が示され、すべての円は偏光ミラー状態u’を介して変化する。
【0068】
単一入力状態PS-OCTにおける永続的な課題は、サンプルの局所リタデーション、つまり深度でP(x)のリターダンスを微分したものを測定することであり、これは|τ|のノルムによって与えられ、サンプルの複屈折に比例する。式(2)に従うと以下の式が得られる。以下の式では|v|=1を用いた。
【0069】
【0070】
αは、回転ベクトルτと偏光状態vの間の角度であり、局所リタデーションを推定するために必要である。vからu’までの変化により、δv/δxと(v-u’)の両方がτに直交する同じ平面内にある。したがって、方向は外積τ0=(δv/δx)×(u’-v)、及びsinα=|τ0×v|/|τ0|によって得ることができ、いくつかの代数操作後に以下の式を計算できる。
【0071】
【0072】
局所リタデーションを再構成する偏光ミラー状態の能力を検証するために、我々は、長い複屈折帯域と、それに続く、異なる複屈折レベル及び長い帯域とは異なる光学軸配向を有する4つの平行な要素からなる組織のようなファントムをイメージングした(
図8の(a)及び(d))。
図8に示すように、(b)及び(e)は、単一入力状態PS-OCTのための従来のアルゴリズムで再構成されたP(x)のリタデーションに対応する、サンプルのいずれかの側からの累積リタデーション画像を表す。
図8に示すように、(c)及び(f)は、偏光ミラー状態を用いて再構成された局所リタデーションの画像を示す。累積リタデーションの解釈は困難である一方、局所リタデーションは、個々のサンプルセグメントをこれらの異なる複屈折のレベルとともに明らかにし、サンプルの向きに関係なく回収された。
【0073】
図8の(g)~(j)は、切除されたブタ網膜の局所リタデーションイメージングを示す。強度画像は、網膜の層状構造を視覚化する(
図8の(g))。局所リタデーションは、網膜神経線維層(RNFL)の複屈折を明らかにし、これを、より複屈折の少ない後続の層と明確に区別している(
図8の(h))。RNFL複屈折は、緑内障に関連するRNFLの早期変性を診断する可能性に関連して調査されている。
【0074】
単一入力状態PS-OCTから局所複屈折を再構成するための以前のストラテジーは、イメージングシステムの固有の対称性に依存する。重要なことに、ミラー状態を介するvの変化は、ファイバベースのシステムでよくあるように、照明又は検出経路のみにおいて追加の固定シングル経路システム構成要素B及びCをそれぞれ有するイメージングシステムでも持続する。これらは、観測された偏光状態をv(x)=C・P(x)・B・uに変える。P(x)は本質的にD転置対称であり、したがって線形リターダであるが、B及びCの存在により、伝達全体が変更されて全体的なリターダになる。但し、B・uは、変更された入力状態u’=B・uを定義するだけであり、これは、P(x)を介して伝達されると、ミラー状態D・u’を介して繰り返し変化する。ユニタリ行列Cは、この偏光状態の変化を単純に回転させ、見かけのミラー状態を観測されたミラー状態C・D・B・uにマッピングする。固定の、場合によっては別個のシステム構成要素が存在する場合、サンプル伝達がない場合に受信機で観測される「入力」偏光状態はC・B・uである。ミラー状態現象は、サンプルP(x)中を伝播することを含む偏光状態の変化が、ミラー状態C・D・B・u=C・D・CT・(C・B・u)を介して変化することを保証する。ここで、C・D・CTは新しい対称面を定義し、これはCによる相似変換の下でDによって定義されたQU平面から移動されたものである。局所リタデーションの再構成では、入力状態又は対称面ではなく、ミラー状態のみが必要とされる。
【0075】
残りの課題は、vがu’と整列するたびに現れ、局所リタデーションの再構成を阻害し、不自然に高い局所リタデーションをもたらす(
図8の(c)の白い矢印)。円偏光の入力光を使用すると、この整列を実現するためにリタデーションが半波長、必要になり、これは、多くの生体サンプルでは一般的ではない。しかしながら、一部の組織はかなりの複屈折を特徴としており、入力状態の制御が必ずしも可能であるとは限らない。結果として生じるアーティファクトは、システムに適度な量の偏光モード分散(PMD)を導入し、再構成にスペクトルビニングを使用することで回避できる。
図9に示すように、τは、vとu’との整列を表す信頼性マップとともに、個々のスペクトルビン毎に再構成される。PMDは入力偏光状態をスペクトルビンにわたって分散させるため、すべてのビンでvとu’が同時に整列する可能性はほとんどない。PMDについて補償するためにスペクトルビン間で回転ベクトルを整列させた後、回転ベクトルは信頼性メトリックで重み付けされ、ベクトル的に平均化される(詳細については以下を参照)。平均化されたτのノルムは、
図9の(i)において組織のようなファントムについて示すように、アーティファクトのない局所サンプルリタデーションを最終的に提供する。
【0076】
図9は、ファイバベースのシステムにおけるミラー状態制約の適用、及びスペクトルビニングを伴う偏光状態の波長依存性を使用することによる整列により生じたエラーの除去のデモンストレーションを示す。(a)は、ファイバベースの干渉計イメージングシステムのサンプルアームの簡略化された概略図を示す。L1~L2はレンズ、PCは偏光コントローラ、Mは走査ミラー、SMFはシングルモードファイバである。(b)は、スペクトルビニングの原理を示し、この原理では、9つのハニングウィンドウを乗算することにより、スペクトル全体が9つのビンに分割される。(c)は、各スペクトルビンの照明偏光状態(illumination state of polarization)(SOP)を示す。SOPの変動は、偏光コントローラによって生じるPMDによりもたらされる。(d)~(i)は、異なるスペクトルビンで再構成された2層ファントムの断面画像を示す。(d)は、1番目のスペクトルビンを使用して分解された局所リタデーションを示す。(e)は、9番目のスペクトルビンを使用して分解された局所リタデーションを示す。(f)は、1番目のスペクトルビンの信頼性メトリックマップを示す。(g)は、9番目のスペクトルビンの信頼性メトリックマップを示す。(h)は、スペクトル全体を使用して再構成された断面複屈折画像を示す。(i)は、スペクトルビニング法で再構成された断面複屈折画像を示す。(d)~(i)についての(i)に示すスケールバーは、垂直:100μm、水平:400μmである。
【0077】
このように、本明細書において示されているのは、偏光依存損失のない同一の照明及び検出経路に沿って後方散乱光を測定するときのミラー偏光状態の特有の特性に基づいてサンプルから偏光情報を取得するための装置、方法及びシステムである。PS-OCTでは、ミラー状態によって、深度依存偏光状態の変化が抑制され、複数の入力状態を使用したかなりより複雑な測定なしでは以前はPS-OCTで利用できなかった局所リタデーションイメージングが可能となる。
【0078】
実験のセットアップ
単一入力状態高偏光感度スペクトル領域光コヒーレンストモグラフィー(PS-SD-OCT)システムが、本明細書に開示される特定の実施形態に使用された。スーパーコンティニウム光源からの非偏光状態の光は、直線偏光にされ、別途記載のない限り、無彩色の1/4波長板で円偏光に調整され、自由空間ビームスプリッタによってリファレンスアームとサンプルアームに分割された。リファレンスアーム内で45°の向きに配された直線偏光子は、光源の偏光とは無関係にリファレンス偏光状態を定義している。干渉計アームの各々において、光は、フリップミラーを使用して、自由空間においてサンプル及びリファレンスミラーにそれぞれ向けられた、あるいは別の実施形態では最初に1.5mのシングルモードファイバを介して結合された。偏光の管理のために、3つのパドルを有する偏光コントローラが各ファイバに適用された。サンプルイメージングでは、焦点距離30mmのレンズで光の焦点を合わせ、FWHMスポット径を約8μmにし、ガルバノミラーで両横方向に走査した。ビームスプリッタの出口ポートでは、1/2波長板により、サンプルとリファレンス光の偏光軸を、偏光維持(PM)ファイバの低速軸と高速軸に正確に整列された。続いて、PMファイバの偏光状態を、偏光ビームスプリッタを使用して、2つの同一のカスタム構築された分光計に向けて分割し、それぞれ、水平(h)偏光成分及び垂直(v)偏光成分の干渉パターンを記録した。検出された光源帯域幅は、840nmを中心に約160nmであり、空気中で約2.5μmの軸方向分解能が測定された。記録されたスペクトルは、バックグラウンド除去、2つの分光計間のアライメント、線形波数kへの補間及びサンプルアームとリファレンスアーム間の分散不均衡の補償によって前処理された。光学システムの詳細について以下に記載する。
【0079】
データ処理
偏光ミラー状態の最初のデモンストレーションでは、光はファイバを通過し、サンプルアーム内のミラーで反射された。サンプルアームの偏光コントローラのパドルは、干渉信号を記録しながら動的に移動された。前処理された干渉パターンfh,v(k)の解析信号は、負の遅延をゼロに設定することによって構成された。f’h,v(k)=FT-1{FT{fh,v(k)}・H(z)}であり、ここで、H(z)はヘヴィサイドの階段関数、FTはフーリエ変換、zはフーリエ変換変数であり、光路長の差に対応する。次に、ストークスパラメータ[IQUV]T=[|f’h|2+|f’v|2|f’h|2-|f’h|2 2Re{f’hf’v
*}-2lm{f’hf’v
*}]Tを計算する(*は複素共役を示す)。記録されたスペクトル幅全体の1/5のガウスカーネルを使用して中心波数kcの周りのストークスベクトルを平均し、正規化された3成分ストークスベクトルs=[QUV]T/(Q2+U2+V2)1/2を計算した。測定値は、従来の旋光計を単色レーザ光源と組み合わせて使用する場合と同等である。入力偏光状態は、2つのアーム内にファイバセグメントがない状態で決定された。
【0080】
3層ファントム内の偏光状態を変化させるために、前処理されたスペクトル干渉縞データをフーリエ変換して断層像th,v(z)=FT{fh,v(k)}を取得し、上記のようにストークスパラメータに投入され、軸方向に幅20μm、横方向に幅80μmの2次元ガウスカーネルで空間フィルタリングされ、正規化されて3成分ストークスベクトルs(z)が取得された。網膜データを処理するために、同じカーネルを使用して、2番目の横方向についてもフィルタリングが実行された。
【0081】
局所リタデーションの再構成のために、前較正された偏光ミラー状態u’を採用し、v=(s[n+l]+s[n])/2及びδv/δx=(s[n+l]-s[n])/Δzを近似することにより、式(4)を実装した(nは、深度z=nΔzに沿ったピクセルインデックスであり、Δzは軸方向のサンプリング距離である)。隣接するポイント間の差を取ることによって生じる高周波ノイズを回避するために、再構成された回転ベクトルτ(z)を長さ20ピクセルの長方形のガウスウィンドウで軸方向に平均してから、そのノルムを局所リタデーション画像として計算し、深度あたりのリタデーション度(°/μm)にスケーリングした。比較のために、累積リタデーションは、各深度でのs(z)とs(zsurf)との間の角度を評価することによって計算され、zsurfは、各深度プロファイル内のサンプル表面の軸方向の位置である。
【0082】
ミラー状態が見かけの光学軸と一致するときのアーティファクトを抑制するために、前処理されたスペクトルに、利用可能なkサポート内のmΔk/(2N)を中心とする幅Δk/Nのハニングウィンドウhan(k,m)を乗算し(Δk,m∈[l,2N-1],N=5)、結果として9つのスペクトルビンが生成されて、ビン化されたストークスベクトルs(z,m)が計算される。我々がまた、偏光度DOP=<(Q2+U2+V2)1/2/I>を評価し、ここで、<>はスペクトルビン全体の平均を示し、Q,U,V及びIは正規化前の空間フィルタリングされたストークス成分であり、これは、後で意味のある偏光信号を特定するためのメトリックとして機能する。各ビンについて上記と同じ局所リタデーションの処理を行った後、回転ベクトルτ(z,m)を取得した。これらはすべて同じサンプル複屈折を表すが、サンプルアームファイバの偏光コントローラパドルによってもたらされるシステムPMDにより、相対的な配向がオフセットされる場合がある。各ビンのベクトルを最小二乗の意味で中央のビンNに整列させるために必要な回転R(m)は、次の式で与えられる。
【0083】
【0084】
上式において、w(x,z)=1-v
T・u’は、ミラー状態からの投影距離によって与えられたストークスベクトルの信頼性を表す重みであり、R(m)はB走査全体で一定であると仮定し、十分なDOP>0.8及び信号強度SNR>5dBで、すべてのポイントについて総和を出した。総和
【数6】
によって定義される3×3行列の特異値分解から、
【数7】
によって式(5)の解が得られる。最後に、整列された回転ベクトルは、それらの重みw(x,z)を考慮してスペクトルビン間で平均化され、その後、前と同じように軸方向にフィルタリングされて、最終的な局所リタデーション画像が得られる。
【0085】
複屈折ファントム
アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)の散乱膜からバンドを切り取り、ガラス転移温度以上に加熱した後、これらのバンドを伸ばした。3層ファントムは、第1層に対して約30°及び60°に配向された3つの複屈折バンドから組み立てられた。第2のサンプルは、異なる複屈折を有する4つの短いセグメントとその上の1つの長いバンドから構成されている。第1層と第2層のバンドの伸縮方向間の角度は約45°である。非複屈折散乱マトリックスを提供するため、バンドはポリスチレンビーズ(Polysciences Inc.,直径300nm)と混合された超音波ゲル内に埋設された。
【0086】
網膜イメージング
肉屋から豚の目を集め、眼球の採取後2時間以内にイメージングを実施した。赤道に沿って眼球を切断し、レンズを除去し、硝子体房を空にして、網膜を走査している間、鏡面反射を防ぐのに十分な量の生理食塩水を注入した。走査領域は視神経頭部を中心とした。
【0087】
レシプロカル媒体を通る逆伝達(reverse transmission)のミュラー行列
このセクションでは、対応するジョーンズ表現からレシプロカル要素を通る逆伝達の決定論的(つまり非偏光解消)ミュラー行列を導出する。A及びBがこの要素の前部及び後部インターフェースを示す場合、ジョーンズ行列J
ABは、この要素を通る順方向伝播を記述する(
図10に示す)。伝播方向に関係なく空間xy座標の向きを維持する場合、逆伝達は、この行列J
BA=J
T
ABの転置によって与えられる。
【0088】
ジョーンズ形式の行列Jは、次式を用いて対応するミュラー行列Mに変換できる。
【0089】
【0090】
ジョーンズ行列の転置は、対応するミュラー行列の転置に対応し、対角成分を除く最後の行と列の符号が反転する。これは、レシプロカル要素を通る逆伝達を表す。SO(3)形式の純粋なリタデーション行列Rの場合、これはRBA=D・RT
AB・Dになり、D=diag(1,1,-1)である。
【0091】
回転ベクトルの決定
線形リターダの効果は、回転ベクトルω=φ・p=φ・[cosα,sinα,0]Tとして表すことができ、pは単位長さをもち、αはQ軸に対する方位角であり、φは回転角である。対応するSO(3)回転行列は次のとおりである。
【0092】
【0093】
ここでは、入力状態u=[u1,u2,u3]Tをある状態v=[v1,v2,v3]Tにマッピングする線形リターダP(φ,α)を探している。その回転軸は、QU平面と、uとvを二等分する平面と、の交差部によって与えられる。
【0094】
【0095】
一般に、uとvは単一の回転軸を明確に定義する。ミラー偏光状態の場合のみ、分子(nominator)と分母の両方が消えるが、αは未定義であり、任意の値をとることができる。uをvにマッピングするために必要なこの軸の周りの回転量を見つけるために、両方のベクトルを回転軸に直交する平面に投影し、これらの相対角度を評価する。
【0096】
【0097】
ここで、p=[cosα,sinα,0]
Tであり、p
T・u=p
T・vである。QU平面内の定義された回転ベクトルωによりuが一般的なvにマッピングされる。ミラー状態v=u’の場合のみ、QU平面内の任意の方位角方向の回転が存在し、これにより、φ∈(-π,π)にラッピングされたときにQU平面内の連続曲線がトレースされる(
図11の(b)の赤い曲線)。
【0098】
このトレースの形状と向きはuによって決定される。uの方位角及び仰角がそれぞれη及びεであると仮定すると(η∈[0,2π],ε∈[-π/2,π/2])、回転ベクトルがQU平面へのuの投影と整列する場合に、最大回転角φ=πが現れ、これは
図11の(a)のτ
Anによって示される。最小の回転角は、回転軸τ
Bnがτ
Anに垂直なときに現れる。この場合、回転軌道は球の経度と一致し、ω
B=2|ε|(εはuの仰角である)の回転角に対応する。
図11の(b)において視覚化されるように、トレースの長軸は、入力状態uの方位角と整列し、その曲率は、uの仰角によって決定される。
【0099】
ミラー状態を介する偏光状態の変化
式(2)によると、偏光状態vの変化はτ×によって決定される。Pを式(1)の表現に置き換えると、以下の式が得られる。
【0100】
【0101】
q×はスキュー対称であるだけでなく、D転置対称であり、qをQU平面に限定する。但し、D・AT・MT・Dによるq×の相似変換は、一般に、見かけの光学軸qをQU平面の外に回転させる。式(2)の∂v/∂xを所定のxで再積分すると、vの変化に対する一次近似が得られる。
【0102】
【0103】
ここで、v=D・AT・MT・D・M・A・u及び行列指数関数の特性exp(A・B・A-1)=A・exp(B)・A-1を用いた。Δxは、線形リターダexp(Δx・q×)のリターダンスの量を決定する。上で説明したように、QU平面内のqの所定の向きに適したリターダンスを見つけて、M・A・uをそのミラー状態D・M・A・uにマッピングすることは常に可能であり、これにより、v=D・uになる。したがって、所定の深度での偏光状態の変化の一次近似は、ミラー状態を介して(周期的に)変化する円上にある。q×は均一複屈折サンプル層内で一定であるため、一次変化はこの層内の深度に依存せず、偏光状態は近似円に厳密に従う。注目すべきことに、見かけの回転軸τは、D・AT・MT・Dとの相似変換を介して、真のサンプル光学軸q×に関連している。
【0104】
図12は、本明細書に開示されるさまざまな実施形態において使用され得るセットアップを示す。SCLはスーパーコンティニュアムレーザ、L1~L15はレンズ、P1~P2は偏光子、Q1は1/4波長板、H1は1/2波長板、BSはビームスプリッタ、PBSは偏光ビームスプリッタ、SPは分光計、M1~M5はミラー、FM1~FM2はフリップミラー、PC1~PC2は偏光コントローラ、SMFはシングルモードファイバ、PMFは偏光維持ファイバ、DCは分散補償である。SCL:スーパーコンティニウムレーザは、DK-3460、NKT Photonics Inc.製であり、P1、P2:偏光子は、LPNIRE100-B、Thorlabs Inc.製であり、Q1:1/4波長板は、AQWP10M-980、Thorlabs Inc.製であり、H1:1/2波長板は、AHWP10M-980、Thorlabs Inc.製であり、BS:非偏光ビームスプリッタ(50/50)は、BS014、Thorlabs Inc.製であり、PBS:偏光ビームスプリッタ(50/50)は、PBS202、Thorlabs Inc.製であり、DC:分散補償は、BK7ガラスプレートである。SP:分光計について、各カスタム分光計は、透過型回折格子(Wasatch TG:1200ライン/mm)、カメラレンズ(L9:Nikon AF 85mm f/l.8D)及びライン走査CCD(E2V AVIIVA EV71YEM4CL2010-BA9)から構成されている。SMF:シングルモードファイバは、780HP、Thorlabs Inc.製であり、PMF:偏光維持ファイバは、P3-780PM-FC-2、Thorlabs Inc.製である。PC:偏光コントローラは、3つのパドルにそれぞれ1本、2本、1本のファイバループを備えた3パドル偏光コントローラである。
【0105】
図13を参照すると、サンプルの層のリターダンスを決定するためのシステムの例1300が、開示された主題のいくつかの実施形態に従って示されている。
図13に示されるように、コンピューティングデバイス1310は、PS-OCTシステムに関連する検出器などの検出器1302から偏光データを受信することができる。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス1310は、リターダンス決定システム1304の少なくとも一部を実行して、検出器1302から受信した偏光データに基づいてサンプルの層のリターダンスを決定することができる。加えて又は代替的に、いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス1310は、検出器1302から受信した偏光データに関する情報を通信ネットワーク1306を介してサーバ1320に通信することができ、リターダンス決定システム1304の少なくとも一部を実行して、検出器1302から受信した偏光データに基づいてサンプルの層のリターダンスを決定することができる。いくつかのそのような実施形態では、サーバ1320は、リターダンス決定システム1304の出力を示す情報をコンピューティングデバイス1310(及び/又は任意の他の適切なコンピューティングデバイス)に戻すことができる。この情報は、ユーザへ送信及び/若しくは提示されてもよく(例えば、オペレータ、臨床医など)、並びに/又は(例えば、対象に関連する医療記録の一部として)保存されてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス1310及び/又はサーバ1320は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、サーバコンピュータ、物理的コンピューティングデバイスによって実行されているバーチャルマシンなどの任意の適切なコンピューティングデバイス又はこのようなデバイスの組み合わせであってもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、検出器1302は、高偏光感度光コヒーレンストモグラフィー(PS-OCT)の実行に使用するための任意の適切な検出器であってもよい。いくつかの実施形態では、干渉検出器1302は、コンピューティングデバイス1310にローカルに配することができる。例えば、検出器1302は、コンピューティングデバイス1310に組み込まれてもよい(例えば、コンピューティングデバイス1310は、PS-OCTシステムの一部として光を検出するためのデバイスの一部として構成されてもよい)。別の例として、検出器1302は、ケーブル、ダイレクトワイヤレスリンクなどによってコンピューティングデバイス1310に接続されてもよい。加えて又は代替的に、いくつかの実施形態では、検出器1302は、コンピューティングデバイス1310にローカルに及び/又はコンピューティングデバイス1310から遠隔に配置されてもよく、通信ネットワーク(例えば、通信ネットワーク1306)を介ししてコンピューティングデバイス1310(及び/又はサーバ1320)に偏光情報を通信することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、通信ネットワーク1306は、任意の適切な通信ネットワーク又は任意の適切な通信ネットワークの組み合わせであってもよい。例えば、通信ネットワーク1306は、Wi-Fiネットワーク(1つ又は複数の無線ルータ、1つ又は複数のスイッチなどを含むことができる)、ピアツーピアネットワーク(例えば、Bluetooth(商標登録)ネットワーク)、セルラーネットワーク(例えば、CDMA、GSM、LTE、LTE Advanced、WiMAX(商標登録)などの任意の適切な規格に準拠する3Gネットワーク、4Gネットワーク、5Gネットワークなど)、有線ネットワークなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、通信ネットワーク1306は、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、パブリックネットワーク(例えば、インターネット)、プライベート若しくはセミプライベートネットワーク(例えば、企業又は大学のイントラネット)、任意の他の適切なタイプのネットワーク又は任意の他の適切なタイプのネットワークの適切な組み合わせであってもよい。
図13に示す通信リンクは、各々、有線リンク、光ファイバリンク、Wi-Fi(登録商標)リンク、Bluetooth(商標登録)リンク、セルラーリンクなどのような任意の適切な通信リンク又はそのような通信リンクの組み合わせであってもよい。
【0109】
図14は、開示された主題のいくつかの実施形態による、コンピューティングデバイス1310及びサーバ1320を実装するために使用することができるハードウェアの例1400を示す。
図14に示すように、いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス1310は、プロセッサ1402、ディスプレイ1404、1つ又は複数の入力1406、1つ又は複数の通信システム1408、及び/又はメモリ1410を含むことができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ1402は、中央処理装置、グラフィックス処理装置などの任意の適切なハードウェアプロセッサ又はそのようなプロセッサの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、ディスプレイ1404は、コンピュータモニタ、タッチスクリーン、テレビなどの任意の適切な表示デバイスを含むことができる。いくつかの実施形態では、入力1406は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、マイクなどのユーザ入力を受信するために使用することができる任意の適切な入力デバイス及び/又はセンサを含むことができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、通信システム1408は、通信ネットワーク1306及び/又は任意の他の適切な通信ネットワークを介して情報を通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。例えば、通信システム1408は、1つ又は複数の送受信機、1つ又は複数の通信チップ及び/又はチップセットなどを含むことができる。より具体的な例では、通信システム1408は、Wi-Fi(登録商標)接続、Bluetooth(登録商標)接続、セルラー接続、イーサネット接続など確立するために使用できるハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、メモリ1410は、任意の適切なストレージデバイスを含むことができ、あるいは、例えば(複数の)通信システム1408などを介してサーバ1320と通信するためにディスプレイ1404を使用してコンテンツを提示するためにプロセッサ1402が使用できる命令、値などを格納するのに使用できるデバイスを含むことができる。メモリ1410は、任意の適切な揮発性メモリ、非揮発性メモリ、ストレージ又はこれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ1410は、RAM、ROM、EEPROM、1つ又は複数のフラッシュドライブ、1つ又は複数のハードディスク、1つ又は複数のソリッドステートドライブ、1つ又は複数の光学ドライブなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、メモリ1410は、コンピューティングデバイス1310の動作を制御するためのコンピュータプログラムがエンコードされたものであってもよい。そのような実施形態では、プロセッサ1402は、コンピュータプログラムの少なくとも一部を実行して、コンテンツ(例えば、画像、ユーザインターフェース、グラフィックス、テーブルなど)を提示する、サーバ1320からコンテンツを受信する、サーバ1320などに情報を送信することなどができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、サーバ1320は、プロセッサ1412、ディスプレイ1414、1つ又は複数の入力1416、1つ又は複数の通信システム1418、及び/又はメモリ1420を含むことができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ1412は、中央処理装置、グラフィックス処理装置などの任意の適切なハードウェアプロセッサ又はこれらのプロセッサの組み合わせとすることができる。いくつかの実施形態では、ディスプレイ1414は、コンピュータモニタ、タッチスクリーン、テレビなどの任意の適切なディスプレイデバイスを含むことができる。いくつかの実施形態では、入力1416は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、マイクなどの、ユーザ入力を受信するために使用できる適切な入力デバイス及び/又はセンサを含むことができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、通信システム1418は、通信ネットワーク1306及び/又は任意の他の適切な通信ネットワークを介して情報を通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。例えば、通信システム1418は、1つ又は複数の送受信機、1つ又は複数の通信チップ及び/又はチップセットなどを含むことができる。より具体的な例では、通信システム1418は、Wi-Fi(登録商標)接続、Bluetooth(登録商標)接続、セルラー接続、イーサネット接続など確立するために使用できるハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、メモリ1420は、任意の適切なストレージデバイスを含むことができ、あるいは、例えば1つ又は複数のコンピューティングデバイス1310などと通信するためにディスプレイ1414を使用してコンテンツを提示するためにプロセッサ1412が使用できる命令、値などを格納するのに使用することができるデバイスを含むことができる。メモリ1420は、任意の適切な揮発性メモリ、非揮発性メモリ、ストレージ又はこれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ1420は、RAM、ROM、EEPROM、1つ又は複数のフラッシュドライブ、1つ又は複数のハードディスク、1つ又は複数のソリッドステートドライブ、1つ又は複数の光学ドライブなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、メモリ1420は、サーバ1320の動作を制御するためのサーバプログラムがエンコードされたものであってもよい。そのような実施形態では、プロセッサ1412は、サーバプログラムの少なくとも一部を実行して、情報及び/又はコンテンツ(例えば、組織の特定結果及び/又は分類結果、ユーザインターフェースなど)を1つ又は複数のコンピューティングデバイス1310に送信する、1つ又は複数のコンピューティングデバイス1310から情報及び/又はコンテンツを受信する、1つ又は複数のデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、など)から命令を受信することなどができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、任意の適切なコンピュータ可読メディアを使用して、本明細書に記載の機能及び/又はプロセスを実行するための命令を格納することができる。例えば、いくつかの実施形態では、コンピュータ可読メディアは一時的又は非一時的であってもよい。例えば、非一時的なコンピュータ可読メディアは、磁気メディア(ハードディスク、フロッピーディスクなど)、光学メディア(コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、Blu-ray(登録商標)ディスクなど)、半導体メディア(RAM、フラッシュメモリ、電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)など)、送信中において非一時的な又は永続性の類似性を欠いていない適切なメディア、及び/又は適切な有形メディアなどのメディアを含むことができる。別の例として、一時的なコンピュータ可読メディアは、ネットワーク、有線、導体、光ファイバ、回路、又は送信中の一時的な及び永続性の類似性を欠く任意の適切なメディア、及び/又は任意の適切な無形メディアを含むことができる。
【0116】
本明細書で使用される場合、メカニズムという用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の適切な組み合わせを包含することができることに留意されたい。
【0117】
図15は、開示された主題のいくつかの実施形態による、サンプルの層のリターダンスを決定するためのプロセスの例1500を示す。
図15に示すように、1502において、プロセス1500は、偏光の第1の部分を光学システムのサンプルアームに送り、偏光の第2の部分を光学システムのリファレンスアームに送ることができる。1504において、プロセス1500は、サンプルアームから戻された第1の戻り光とリファレンスアームから戻された第2の戻り光とを合流させることができる。1506において、プロセス1500は、合流光を第1の偏光状態及び第2の偏光状態に沿って検出して偏光データを生成することができ、第2の偏光状態は、第1の偏光状態とは異なる場合がある。1508において、プロセス1500は、合流光の検出に基づいて、サンプルの層の上面及び下面から戻る光の偏光状態を決定することができる。最後に、1510において、プロセス1500は、決定された偏光状態に基づいて、サンプルの層のリターダンスを決定することができる。
【0118】
図15のプロセスの上記のステップは、図に示され説明されている順番及びシーケンスに限定されない任意の順番又はシーケンスで遂行又は実行することができることは理解されるべきである。また、
図15のプロセスの上記のステップのうちのいくつかは、待ち時間及び処理時間を短縮するために、必要に応じて実質的に同時に又は並行して遂行又は実行することができる。
【0119】
本発明の上記の具体的な実施形態に対する多くの他の変更及び修正が本発明の範囲内で可能であることは、当業者であれば理解できるであろう。したがって、本明細書における記載は全て説明を目的としたものであり限定を意図するものではないと解釈されるべきである。
【国際調査報告】