(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させる装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/54 20060101AFI20220112BHJP
B29C 70/38 20060101ALI20220112BHJP
B29C 70/10 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B29C70/54
B29C70/38
B29C70/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545330
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(85)【翻訳文提出日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 ES2019070618
(87)【国際公開番号】W WO2020074757
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501199047
【氏名又は名称】ユニヴェルシダッド ポリテクニカ デ マドリッド
(71)【出願人】
【識別番号】521150961
【氏名又は名称】イオン-ティ・コンポジット・テクノロジーズ・ソシエダッド・リミターダ
【氏名又は名称原語表記】AEON-T COMPOSITE TECHNOLOGIES, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】アレハンドロ・アブ-アッサリ・ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】エンリケ・チャコン-タナロ
(72)【発明者】
【氏名】フアン・マヌエル・ムニョス・ヒホサ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・エスコバル・オレリャナ
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AC03
4F205AD16
4F205AJ08
4F205HA14
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HG01
4F205HK03
4F205HK23
4F205HM13
(57)【要約】
装置は、固体マトリックス(1)と、マトリックス(1)の表面に接合された変形可能な本体(2)と、成形金型(3)と、繊維構造(4)の固定システム(5)と、を備える。マトリックス(1)は、機能面を有する固体要素であり、その形状は、製造される部品に依存する。変形可能な本体(2)は、繊維構造(4)に与えられる形状に依存する初期形状を有する。成形金型(3)は、成形金型(3)への適合処理中に繊維構造(4)に与えられる形状を有し、成形金型(3)は、変形可能な本体(2)が成形金型(3)とマトリックス(1)との間に配置されるよう配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体マトリックス(1)と、
前記マトリックス(1)の表面に接合され、様々な形状を有し、成形される部品の領域以上の領域を包囲する、変形可能な本体(2)と、
成形金型(3)と、
繊維構造(4)の固定システム(5)と、
を備え、
前記マトリックス(1)は、製造される前記部品に依存する形状を有する機能面を有する固体要素であり、前記変形可能な本体(2)は、前記マトリックス(1)の前記機能面に接合されて、アクチュエータにより作動するリニアガイドシステムにより前記成形金型(3)に向かって移動するよう構成され、
前記変形可能な本体(2)は、前記マトリックス(1)および前記成形金型(3)よりも少なくとも100倍低い剛性を有する材料で形成され、前記変形可能な本体(2)は、前記繊維構造(4)に与えられる形状に依存する初期形状を有し、前記成形金型(3)に対する前記変形可能な本体(2)の漸進的圧縮により、前記成形金型(3)への前記繊維構造(4)の適合の効果が得られ、
前記成形金型(3)は、前記成形金型(3)への適合処理中に前記繊維構造(4)に与えられる形状を有し、前記成形金型(3)は、前記変形可能な本体(2)が前記成形金型(3)と前記マトリックス(1)との間に配置されるよう配置され、
前記繊維構造(4)の前記固定システム(5)は、前記成形金型(3)への前記繊維構造(4)の適合中に移動可能に構成された少なくとも1つの固定要素(42)により前記繊維構造(4)の輪郭の少なくとも一部を包囲することを特徴とし、
それぞれの固定要素(42)は、
有効な固定領域(36)以上の領域(38)を覆う下部フレーム(29)であって、適合中に前記固定要素(42)を移動することのできるツールまたはロボット機構などの要素へのアンカリングシステムを含む前記下部フレーム(29)と、
前記有効な固定領域(36)を少なくとも覆い、前記下部フレーム(29)に配置された分離シート(30)であって、前記分離シート(30)の平面と前記下部フレーム(29)の平面とが平行であり、前記分離シート(30)の間に、固定される前記繊維構造(4)の一部を形成する層(13)が配置され、それぞれの層(13)は、前記分離シート(30)の1つにより隣接する別の層(13)から常に分離される、前記分離シート(30)と、
前記有効な固定領域(36)を少なくとも多い、前記分離シート(30)に配置された上部閉鎖フレーム(31)であって、前記上部フレーム(31)の平面と前記分離シート(30)の平面とは平行であり、前記分離シート(30)は、前記下部フレーム(29)と前記上部フレーム(31)との間に配置され、適合中に前記固定要素(42)を移動することのできるツールまたはロボット機構などのアンカリングシステムを含む前記上部フレーム(31)と、
前記下部フレーム(29)、前記分離シート(30)、および前記上部フレーム(31)を連結する結合システムであって、前記要素が配置された平面(29、30、31)に対する相対変位を防止するよう構成された、結合システムと、
前記要素が配置された面(29、30、31)に垂直な方向に対する、前記下部フレーム(29)、前記分離シート(30)および前記上部フレーム(31)の間の相対変位を防止する閉鎖システムであって、必要な閉鎖力をかけるよう構成された、閉鎖システムと、
を備える、
複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項2】
前記変形可能な本体(2)と前記繊維構造(4)との間に配置されるよう構成された弾性フィルム(34)を含み、前記変形可能な本体(2)は、高い可塑性の材料であり、20%未満の低い破断伸びを有し、前記成形金型(3)に対する適合処理中に恒久的に塑性変形する、
ことを特徴とする、
請求項1に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項3】
前記変形可能な本体(2)はその内部に、ガスおよび液体から選択される流体で満たされた一連の防水キャビティ(6)を含み、前記変形可能な本体(2)は、100%よりも大きい高い破断伸びを有する弾性体であり、前記成形金型(3)に対する適合処理中に恒久的な変形を受けない、
ことを特徴とする、
請求項1に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項4】
前記変形可能な本体(2)はその内部に、ガスおよび液体から選択される流体で満たされた一連の防水キャビティ(6)を含み、前記防水空洞構造(6)は、前記変形可能な本体(2)の体積を変化させ、前記成形金型(3)に対する繊維構造(4)での前記変形可能な本体(2)の圧縮度を変化させるよう構成された、流体注入および排出システムに接続され、前記変形可能な本体(2)は、100%よりも大きい高い破断伸びを有する弾性体であり、前記成形金型(3)に対する適合処理中に恒久的な変形を受けない、
ことを特徴とする、
請求項1に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項5】
前記マトリックス(1)に対して前記変形可能な本体(2)で追加の金型(24)をプレスすることにより、前記変形可能な本体(2)をその初期の形状に戻すよう構成された追加の金型(24)を備え、前記変形可能な本体(2)は、前記マトリックス(1)と前記追加の金型(24)との間に配置され、前記変形可能な本体(2)が弾性材料の本体ではなく、高い可塑性を有し、20%未満の低い破断伸びを有する材料の本体である場合に、前記追加の金型(24)が必要とされる、
ことを特徴とする、
請求項2に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項6】
前記追加の復元金型(24)および前記成形金型(3)は、両方の金型(3,24)を前記マトリックス(1)に整列して交互に配置することができるよう構成された移動システム(27)を含む、
ことを特徴とする、
請求項5に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項7】
前記マトリックス(1)をロボット機構により、前記追加の金型(24)が配置された位置に移動させるよう構成された移動システムを含み、前記マトリックス(1)は、前記追加の金型(24)に対して圧縮される、
ことを特徴とする、
請求項5に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項8】
前記変形可能な本体(2)に接触する前記マトリックス(1)の前記機能面と、前記追加の復元金型(24)の表面とは、前記変形可能な本体(2)と前記マトリックスとの間の付着度が前記変形可能な本体(2)と前記追加の復元金型(24)との間に存在する付着度よりも高い表面構造を有し、前記追加の金型(24)から前記マトリックス(1)を分離させる場合に、前記変形可能な本体(2)は、前記マトリックス(1)に付着したままであり、前記追加の金型(24)に付着していない、
ことを特徴とする、
請求項5から7のいずれか1項に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項9】
さらに、前記追加の復元金型(24)の表面に配置された、ラテックスなどの弾性材料のフィルム(44)を備え、前記フィルム(44)は、前記変形可能な本体(2)と前記追加の復元金型(24)との間に配置され、前記フィルム(44)は、前記追加の金型(24)の空間に進入しない締結システム(45)により固定され、前記フィルム(44)は、多孔質の本体と、前記フィルムと前記変形可能な本体(2)に封入された空気を排出することのできる穿孔(47)を有する本体と、から選択される本体を有する、
ことを特徴とする、
請求項5から7のいずれか1項に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項10】
前記フィルム(44)の前記締結システム(45)は、前記追加の復元金型(24)に強固に接合されている、
ことを特徴とする、
請求項9に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項11】
前記フィルム(44)の前記締結システム(45)は前記マトリックス(1)に強固に接合されている、
ことを特徴とする、
請求項9に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項12】
前記フィルム(44)の前記締結システム(45)は、前記追加の金型(24)および前記マトリックス(1)に対して相対的に動くよう構成された独立システムであり、前記フィルム(44)の締結は前記追加の金型(24)および前記フィルム(44)自体に対して独立である、
ことを特徴とする、
請求項9に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項13】
さらに、100%よりも大きい高い破断伸びを有する弾性材料に基づく弾性ガスケット(46)を備え、前記弾性ガスケット(46)は、前記追加の金型(24)の輪郭に配置され、前記弾性ガスケット(46)はその内部に、キャビティまたは補強材を含んでもよい、
ことを特徴とする、
請求項5から12のいずれか1項に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項14】
さらに、100%よりも大きい高い破断伸びを有する弾性材料に基づく弾性ガスケット(46)を備え、前記弾性ガスケット(4)は前記マトリックス(1)にその輪郭に沿って配置され強固に接合され、前記弾性ガスケット(46)は、前記マトリックス(1)と前記変形可能な本体(2)との間に囲まれた前記マトリックス(1)の内部空間に向かってスカート(49)を有し、前記弾性ガスケット(46)はその内部に、キャビティまたは補強材を含むよう構成される、
ことを特徴とする、
請求項5から12のいずれか1項に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項15】
前記追加の金型(24)は、その接触面に、溝または細孔により形成される排気構造(48)を有し、前記排気構造(48)の前記接触面に面する前記変形可能な本体(2)の復元中に、フィルム(44)と前記追加の金型(24)との間に封入された空気を排出することができる、
ことを特徴とする、
請求項13または14に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項16】
前記繊維構造(4)の前記固定システム(5)はさらに、前記上部フレーム(31)と前記分離シート(30)との間、および前記下部フレーム(29)と前記分離シート(30)との間、に配置される、弾性ポリマーフォームなどの弾性要素(32)を備え、前記弾性要素(32)は、前記有効な固定領域(36)以上の領域(37)を覆う、
ことを特徴とする、
請求項1から15のいずれか1項に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項17】
前記分離シート(30)は、ノンスティック材料、および前記ノンスティック材料でコーティングされた任意の可撓性材料から選択される材料を含む、
ことを特徴とする、
請求項1から16のいずれか1項に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項18】
前記弾性フィルム(34)は、前記マトリックス(1)と前記成形金型(3)とから選択される要素に固定される、
ことを特徴とする、
請求項2に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項19】
前記繊維構造(4)の前記固定システム(5)はさらに、前記弾性フィルム(34)を備え、前記弾性フィルム(34)は、前記下部フレーム(29)、前記上部フレーム(31)、またはその両方の要素(29、31)のいずれかに固定され、前記弾性フィルム(34)は、クランプなどの締結システム(35)により固定される、
ことを特徴とする、
請求項2に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項20】
前記下部フレーム(29)、前記分離シート(30)、および前記上部フレーム(31)を連結する結合システムは、円筒形ピンとねじ式ロッドとから選択される少なくとも1つの結合要素(33)を備え、
前記結合要素(33)は、前記上部フレーム(31)または前記下部フレーム(29)のいずれかに強固に固定され、
前記結合要素(33)は、前記下部フレーム(29)、前記分離シート(30)、および前記上部フレーム(31)の平面に垂直な方向に配置され、
前記結合要素(33)は、前記分離シート(30)およびそれぞれの前記フレーム(29、31)に含まれる穴を通って、前記分離シート(30)およびそれぞれの前記フレーム(29、31)を通過する、
ことを特徴とする、
請求項1から19のいずれか1項に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項21】
前記下部フレーム(29)、前記分離シート(30)、および前記上部フレーム(31)を連結する前記結合システムは、第1ヒンジ機構(55)と第2ヒンジ機構(55’)とを備え、前記上部フレーム(31)は、前記第1ヒンジ機構(55)により前記下部フレーム(29)に接続され、前記分離シート(30)は前記第2ヒンジ機構(55’)により前記下部フレーム(29)に接続される、
ことを特徴とする、
請求項1から19のいずれか1項に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項22】
前記下部フレーム(29)、前記分離シート(30)、および前記上部フレーム(31)を連結する前記結合システムは、第1ヒンジ機構(55)と、円筒形ピンまたはねじ式ロッドなどの結合要素(33)を備え、前記上部フレーム(31)は、前記第1ヒンジ機構(55)により前記下部フレーム(29)に接続され、前記結合要素(33)は、前記分離シート(30)を横切って、前記下部フレーム(29)に接合される、
ことを特徴とする、
請求項1から19のいずれか1項に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項23】
閉鎖システム(28)が、前記円筒形ピン(33)に連結されている、
ことを特徴とする、
請求項20に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項24】
前記マトリックス(1)は、前記成形金型(3)に向かって動くよう構成された複数の移動部品(8)により形成され、前記移動部品(8)は前記成形金型(1)に対して前記変形可能な材料(2)を圧縮し、少なくとも1つの機械的アクチュエータ(9)により作動する、
ことを特徴とする、
請求項1から23のいずれか1項に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項25】
前記移動部品は、それぞれの機械的アクチュエータ(9)に独立して結合されている、
ことを特徴とする、
請求項24に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項26】
前記移動部品(8)は、前記移動部品(8)を機械的アクチュエータ(9)に連結する中間機構(10)により単一の機械的アクチュエータ(9)にともに結合される、
ことを特徴とする、
請求項24に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【請求項27】
繊維(4)用の固定システム(5)の固定要素(42)は、
システムに固定され、
ロボットシステムにより作動する、またはマトリックス(1)に強固に接合されたアクチュエータ(52)により押される、移動機構(52)と、
前記移動機構(52)の移動要素(54)にその一端がアンカリングされた可撓性アーム(50)であって、前記可撓性アーム(50)の他端が前記繊維固定要素(42)にアンカリングされる、可撓性アーム(50)と、
前記可撓性アーム(50)の下に配置される剛性支持体(51)であって、前記可撓性アーム(50)と前記繊維固定要素(42)が自重により落下するのを防止するよう構成され、前記移動機構(52)の前記移動要素(54)にアンカリングされた剛性支持体と、
を備える、
ことを特徴とする、
請求項1から26のいずれか1項に記載の複合材料の部品を製造するための金型に繊維構造を適合させるための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の目的)
本発明は、繊維構造(産業用としてはカーボン、アラミド、およびガラスが最も使用されている)を3次元金型に適合させ、複合部品を製造するために繊維プリフォームを得るためのシステムに関する。
【0002】
本発明は、複合部品の製造プロセスおよび製造工学に関する。
【背景技術】
【0003】
自動化され生産性の高い複合部品の製造は、主な荷重方向に沿って整列した繊維(例えば、カーボン、アラミド、またはガラスなどが最も使用される)のフラット構造から始まる。前述の繊維は、織物の形式であり得る、または単一方向(一方向)に沿って配置され得る。必要な数の層を積み重ねると、繊維は、製造される部品の形状に適合される。これは、プリフォーミングと呼ばれる処理である。次に、繊維が事前に樹脂に含浸されていない場合、得られたプリフォームは樹脂含浸処理にかけられ、そして圧力と温度をかけて部品を硬化する。
【0004】
多種多様の既存のプリフォーミング処理の中で、業界で最も一般的なのは、高度な自動化および生産性による圧縮プリフォーミングである。繊維は張力をかけられて、オス型とメス型の2つのプリフォーミング金型の間に案内され、その間でプレスにより圧縮される。
【0005】
圧縮プリフォーミング中に、繊維は、しわ、不必要な方向への配置、織物のストランド(strand)の変形、ループの形成、などの欠陥を起こしやすい。これらのすべては、処理中の繊維への応力、金型との摩擦、および製造される部品の複雑さの程度に起因する。これらの欠陥は、プリプレグと呼ばれる、繊維が事前に樹脂に含浸されている場合に特に深刻である。この場合、層間および繊維と金型との間の接着現象が非常に顕著になり、層間の正しいスライドが妨げられ、上述の欠陥が増加する。繊維の配置での上述の欠陥を有する配列複合部品の機械抵抗は、このような現象が発生する領域では損なわれる。設計者は、部品をより大量の繊維で補強する必要がある。その結果、部品の製造コストが増加する。
【0006】
繊維方向における欠陥は、製造される部品の複雑さに大きく依存し、部品が単純で平坦であるほど減少する傾向にある。言い換えれば、これらの欠陥により、設計者は、複合部品を製造可能なより単純なユニットに細分化する必要がある。各サブエレメントがそれぞれの製造ラインを必要とするため、このような部品数の増加は製造コストの大幅な増加を伴う。このため、複雑な形状の部品で発生する上述の欠陥を回避できるような繊維に適合させるための処理を開発することは、業界の大きな関心事である。本発明は、この問題に対する解決策を開示している。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、複合材料の部品を製造するための、業界ではプリフォーミングとして知られている処理である、金型に繊維構造を適合させるための装置について説明する。これは、処理中の繊維に影響を及ぼす摩擦を大幅に低減し、現在の圧縮プリフォーミング処理では繊維方向における欠陥が生じるために適していない複雑な金型に対して、樹脂プリプレグ繊維を適合させることさえ可能である。
【0008】
織物は2つの剛体金型の間で圧縮されることにより部品の形状を獲得することを強制される、現在の圧縮プリフォーミング処理と異なり、本発明では、織物(繊維構造)は剛体成形金型と、製造される部品の形状に依存する、詳細を説明しない初期形状を有する容易に変形可能な本体との間に案内される。繊維構造および金型上での上述の変形可能な本体の制御された変形により、繊維は、金型に対して徐々に圧縮される。非常に低い応力レベルでそれに適合し、したがって、その応力の結果として生成される繊維の配置における多くの欠陥を回避することができる。
【0009】
変形可能な本体の制御された変形は、2つの方法により達成される。マトリックスに動きを与える方法、または、制御された体積増加を引き起こす流体が充填された内部空洞を有する伸縮する変形可能な本体を使用する方法、である。2つの方法の組み合わせが想定されることに注意することが重要である。
【0010】
装置は、少なくとも次の要素、マトリックス、変形可能な本体、成形金型、および、繊維の固定システム、を備える。
【0011】
マトリックスは金型に似た固体要素であり、詳細を説明しない形状を有し、繊維構造に与えられる形状に依存する。その機能は、その1つの面上でマトリックスに接合される変形可能な本体を支持することである。
【0012】
変形可能な本体がマトリックスと金型との間に配置されるよう、繊維構造に与えられる形状を有する成形金型が配置される。
【0013】
繊維構造は、繊維の少なくとも1つの層により形成され、一方向配置または織物配置などの任意の構成であってもよい。その方向は、その負荷状態に応じて問題の部品に要求される方向である。繊維は、事前に、「プリプレグ」として知られる材料である樹脂に含浸されているものであってもよい。または、繊維は、「ドライファイバー」と呼ばれる樹脂を含まないものであってもよい。
【0014】
繊維を適合させる処理で必要に応じて、接着剤を塗布することにより、または縫い付けることにより、層を完全にまたはその特定の領域で一緒に接合することができる。この接合の目的は、固定システムの固定要素により生成される応力をそれを必要とする層に伝達することである。すでに樹脂に含浸された繊維の場合、特定の領域に圧力をかけて、または、単に重力の効果により、樹脂自体の付着力を使用して2つの連続する層を接続することができる。後者により、縫い付けまたは接着剤の塗布などの追加の処理を実装する必要がなくなるため、必要とされる装置が簡素化される。さらに、ドライプリフォームの使用に関連する高価な樹脂射出装置を除去することができる。ドライプリフォームを使用することで、樹脂の堆積、気泡、多孔性、または樹脂の前部の層間剥離などの部品の欠陥が発生しやすくなる。
【0015】
本発明の繊維構造体を適合させる装置により、繊維層の大きさを最適化することができる。その中には、完全なプリフォームに対応する繊維構造の全領域をカバーすることができないものもある。このようにして、使用される繊維の量を低減し、それによりそれぞれの部品に関連するコストを低減し、必要な方向に配置されたより多くの層で部品の特定の領域を強化することができる。これに関して、それぞれの層がプリフォームの全領域を覆う必要がなく、また、層の大きさおよび位置を最適化することにより必要な繊維の量を低減することができる繊維積層処理を示す国際公開第2015/144411号明細書の発明との類似点が存在する。しかし、その処理では、層は、積層されて繊維に応力を伝達する役割を有する基板に接合される。その基板は、本発明では存在しない、すなわち、層をともに接合することができるか、または、層の間にいかなる接合もせずに単に層を積層することができる。
【0016】
請求項1によると、固定システムは、繊維構造を固定する機能を有する。その機能は、繊維構造をプリフォーミングステーションに配置することができ、同時に、適合処理中に必要な応力を同じものに与え、必要な場合にそれぞれの層を相互にスライドさせることができる。固定システムは、下部フレーム、分離シート、上部フレーム、下部フレームとシートと上部フレームとの間の結合システム、および閉鎖システム、を有する少なくとも1つの固定要素により形成される。
【0017】
上部フレームおよび上部または閉鎖フレームは、その間で繊維が固定される固定システムの構造要素であり、鋼板、アルミニウム、プラスチックなどの任意の材料により形成することができ、「サンドイッチ」の方法でそれらの間に配置される繊維構造に応力を加える役割を担う。これらの要素は、詳細を説明しない、それらの取り扱い、移動、または保管に必要なアンカーまたは接合要素を有することが想定される。
【0018】
分離シートは、繊維構造に接触する唯一の要素であり、有効な固定領域、すなわち、適合処理の初期段階で繊維固定システムにより覆われている領域以上の領域を覆う。請求項17によると、分離シートは、任意の可撓性材料、好ましくはプラスチックにより形成することができ、テフロン(登録商標)または特定のシリコーンなどのノンスティック(non-stick)媒体によりコーティングされ、繊維構造のいくつかの層をスライドさせることができる。あるいは、全体をノンスティック媒体により形成することもできる。
【0019】
繊維構造への圧力の均一な分布を保証するため、請求項16によると、両方のフレームの表面に、特に、分離シートに隣接する表面に必要な厚さの弾性要素、例えば柔軟なPVCフォームなどを有効な固定領域以上の領域を覆うように配置することが想定されている。例えば、繊維構造が適合される成形金型の形状が非常に多くの量の繊維を必要とするため、繊維構造の様々な層がそれを必要とする領域で固定要素から突出していてもよいことも想定される。
【0020】
結合システムは、下部および上部フレームとその平面に応じたシートとの間の相対的な滑りを回避し、固定効果を可能にする必要があり、その要素と連結するピンまたはヒンジ機構などの任意の幾何学的結合システムであってもよい。例えば、下部フレームとシートとを接合するピン、および、上部フレームと下部フレームとを接合するヒンジ機構、といった、ピンまたはヒンジ機構からなる混合解決策も想定される。ヒンジ機構により、上部フレームとシートとを下部フレームに接続することも可能である。
【0021】
ピンに基づく結合システムの特定の解決策は、請求項20に示されるものであり、下部フレームと強固に接合され、ぴったりな穴を通過してシートと上部フレームとを貫通する円筒形ピンを含む。その変位は、唯一の相対自由度として要素の平面の法線に従う。
【0022】
閉鎖システムは、上部フレームと下部フレームとの間に調整された力を加え、その力により、繊維構造の層は圧縮され、要素がアンロックされるのを防止する。閉鎖システムは、クランプ、磁石、空気圧または油圧シリンダ、サーボモータ、または、閉鎖力を調整し、固定システムの要素が誤って分解されるのを防止することができる任意の他の既存システムなどの、機械的、磁気的、電気機械的要素であってもよい。
【0023】
閉鎖システムの一例は、機械的接合によりシリンダに固定され、上部フレームに接触する部分に詳細を説明しないスプリングを有する要素である。そのシステムは、市場で入手可能な多種多様な解決策のうち、新規性や進歩性を有するものではないため、説明を省略する。
【0024】
閉鎖システムの別の例は、上部フレームと下部フレームとの間の閉鎖システムがヒンジにより形成される場合に、「クランプ」によりその回転の自由度によりフレームを動かすヒンジに統合された回転型アクチュエータである。
【0025】
対応する下部フレームおよび/または上部フレームに有するツールまたは固定アンカーは、好ましくはロボットシステムにより、詳細を説明しないツールを活用して、すべての固定要素を同時に保管、輸送、または操作するのに役立つことに留意すべきであり、これらはともに繊維固定システム全体を形成する。
【0026】
この発明の一部として説明される繊維固定システムは、上述の国際公開第2015/144411号明細書の発明と対照的に、プリフォームの一部を形成する繊維を直接固定することを特徴としており、国際公開第2015/144411号明細書に記載されたシステムでは繊維の異なる層が付着する基板だけが固定されることを強調することが重要である。
【0027】
固定システムはさらに、繊維構造の輪郭を完全にまたは部分的に包囲することを特徴とする。
【0028】
固定システムの特徴により、必要に応じて中間製造工程で繊維構造とともに保管することができることに留意すべきである。
【0029】
本発明の動作は、繊維構造および金型に対して変形可能な本体の漸進的かつ制御された変形により繊維構造を適合させ、繊維構造に金型の形状を強制的に採用させることからなる。適合における漸進性により、現在の圧縮プリフォーミング処理と比較して層間の応力を大幅に低減することができ、繊維固定システムにより層間の相対的なスライドが可能になる。繊維が金型の正しい位置に到達する前に金型と接触した際に生じる閉塞が回避されるためであり、したがって、上述の効果が生じた繊維の配置による不具合が解消される。プリプレグ繊維の場合はさらにより顕著な改善が見られ、現在の処理では上述の閉塞効果が非常に大きく、単純な形状を形成することさえ妨害する。
【0030】
本発明の好ましい実施の形態、および請求項1によると、変形可能な本体の漸進的かつ制御された変形を達成するために、マトリックスは、好ましくはプレスにより、繊維構造に対して変形可能な本体を圧縮し、繊維構造に金型の形状を強制的に採用させて、金型に向かって移動する能力を有する。
【0031】
マトリックスは、ジョイント、リニアガイド、スプリングなどの様々な要素により形成することができる機構に従って移動する1つまたは複数の要素により形成することができる。それは、少なくとも1つのアクチュエータ、好ましくは油圧シリンダにより作動する。この機構の目的は、変形可能な本体に圧力をかけるマトリックスのそれぞれの要素に特定の動きを提供することであり、システムが変形可能な本体の軌道、したがって繊維構造の適合性をよりうまく制御することである。本発明の1つの例示的な実施の形態では、機構は、油圧シリンダによってのみ作動し、マトリックスの要素の動きを制限するジョイントおよびスプリングを有する。その要素を、独立して動かすこともでき、油圧シリンダにより変位させることもできる。
【0032】
解決策の組み合わせも想定され、マトリックスの要素のいくつかがその独立作動システムを有することができ、残りの要素が機構により接合されることに留意することが重要である。
【0033】
本発明の好ましい実施の形態では、変形可能な本体は、塑性変形または降伏過程により容易に変形する、つまり、一度変形し、圧力が停止した後に変形可能な本体がその初期の形状に回復しない、請求項2に記載されているような、湿潤粘土などの低抵抗材料である。本発明の本実施の形態に主張される、このタイプの材料の塑性変形の順序は、繊維に配置ミスを起こさないよう繊維を適合させる場合に、極めて重要であり、適合をのより硬度な制御を可能にする。
【0034】
初期の形状は、適合される部品の形状に依存するため詳細は説明しないが、処理にとって非常に重要である。
【0035】
この場合、装置はさらに、変形可能な本体の初期の形状を復元するためのシステムを必要とする。このため、処理を周期的に繰り返すことができ、連続生産に適している。そうでなければ、本発明は、工業生産にとって興味のないことないであろう。復元システムは、変形可能な本体に与えられる初期形状を有し、プレスによりマトリックスに対して押し付けられる追加の金型を備える。変形可能な本体は、これらの最後の要素の間に残り、したがって、マトリックスと追加の復元金型との間に存在する空洞に充填するよう強制する。変形可能な本体を追加の復元金型ではなくマトリックスに取り付けるために、変形可能な本体の形状が完成すると、追加の復元金型およびマトリックスの異なる表面構造の使用が想定される。このため、請求項8に記載されているように、変形可能な本体のマトリックスへの付着力は、変形可能な本体と追加の復元金型との間の付着力よりも大きい。追加の金型を使用して、変形可能な本体は、初期形状を取得するよう強制され、新しい繊維構造に適合するよう再利用することができる。
【0036】
想定され、請求項9に反映される別の戦略は、変形可能な本体と追加の復元金型との間に弾性フィルムを導入することである。弾性フィルムは、追加の復元金型に強固に接合され得る、または、固定要素を使用して独立して復元金型と変形可能な本体との間に導入され得る。
【0037】
本発明の第1の実施の形態では、フィルム締結システムが、追加の復元金型に強固に接合される。本発明の第2の実施の形態では、フィルム締結システムは、マトリックスに強固に接合される。本発明の第3の実施の形態では、フィルム締結システムは、追加の金型に対して、およびそれぞれのマトリックスに対して、相対的に移動するよう構成される独立システムである。
【0038】
その形状の復元中に変形可能な本体の体積を制御するため、および、材料があふれ出るのを防止するため、大きな変形を受けることのできる弾性ガスケットが使用される。弾性ガスケットは、復元金型の輪郭に配置され、金型に対してマトリックスを圧縮することにより、本発明の正しい自動操作を妨げる、ガスケットが成形領域から材料が脱落することを防止する。これにより、次の適合に利用可能な変形可能な材料の体積を修正する。弾性ガスケットは、局所的または全体的な補強を含むことができる、または、異なる断面を有することができる。
【0039】
弾性ガスケットは、変形可能で、請求項13に記載されているように、復元金型に配置されてもよい。または、請求項14に記載されているように、マトリックスに対して連結可能であってもよい。この場合、弾性ガスケットは、変形可能な材料に接触するマトリックスの内部に向かうスカートを有し、スカートは、復元金型とマトリックスとの間に含まれる体積から材料が離れるのを防止する追加のバリアとして機能する。
【0040】
マトリックス、復元金型、および変形可能な材料の間にとらえられた空気の排気を達成するために、変形可能な材料から復元金型を分離するフィルムは、空気は流れるが変形可能な材料は流れない小さな穿孔を有する。補完的に、復元金型は多孔質表面を有する、または、外部に接続された穴を有する。このため、完全な排気が可能である。
【0041】
本発明の主な実施の形態において、請求項2によると、繊維固定システムは、繊維構造の汚染を防ぐために、適合中に繊維構造を変形可能な本体から分離する弾性フィルムを有していなければならない。弾性フィルムは、繊維固定システムの外部の要素であってもよい。それは、適合中に、単に変形可能な本体と繊維構造との間に配置される。弾性フィルムは、マトリックスに、または成形金型に固定されてもよい。
【0042】
弾性フィルムはまた、クランプなどの固定システムを使用して上部フレーム、下部フレームまたは両方の要素に固着することにより固定システムに強固に接合されてもよい。フィルムはまた、上述の要素が分離される必要がある場合、繊維構造として、金型と繊維構造との間に配置されてもよい。事前に含浸されている場合、フィルムは、一度適合された繊維構造の抽出を妨げる成形金型に対する過度な付着力を有することがある。
【0043】
本発明の別の実施の形態では、請求項3によると、変形可能な本体は、エラストマーのように可塑性やクリープに至ることなく弾性変形し、マトリックスにより及ぼされる圧力が停止した場合にその元の形状を復元する物体であり、その内部には、互いに接続された、または互いに接続されていないキャビティまたはダクト、多孔質、または上述の組み合わせの空洞構造が存在し、ガスまたは液体が充填されていることが想定されている。流体は、逃げ道がないため密閉されている。内部構造およびその外部形状の適切な設計により、金型に対して動くよう構成されるマトリックスの変位により圧縮されるときに、変形可能な本体の有する変形軌道を制御することができる。
【0044】
本発明の別の実施の形態では、請求項4によると、変形可能な本体の漸進的な制御された変形を達成するために、変形可能な本体は、エラストマーのように可塑性やクリープに至ることなく弾性変形する材料により形成される。その内部は、互いに接続された、または互いに接続されていないキャビティまたはダクト、多孔質、または上述の組み合わせの空洞構造が存在し、ガスまたは液体が充填されている。流体は、外部ポンプシステムに接続された少なくとも1つのダクトを通って外部との出入りが可能であり、これは、マトリックスの内部に配置することができる、または変形可能な本体から外部に直接向けることもできる。流体を注入することにより、変形可能な本体は、その設計によって特定の変形軌道に従いその体積を増加させる。それにより、繊維構造の成形金型への漸進的な適合を達成する。
【0045】
マトリックスは、ジョイント、リニアガイド、スプリングなどの様々な要素により形成され得る、少なくとも1つのアクチュエータ、好ましくは油圧シリンダにより作動する機構に従って動く、1つまたは複数の要素により形成されることも想定される。アクチュエータの目的は、変形可能な本体に圧力をかけるマトリックスのそれぞれの要素に特定の動きを与えることであり、変形可能な本体の軌道、したがって、繊維構造の適合をシステムがよりうまく制御できるようにすることである。
【0046】
本発明の一実施の形態では、アクチュエータは、油圧シリンダのみで作動し、マトリックスを構成する要素の動きを制限するジョイントとスプリングとを有する。要素はまた、独立した動きを有し、油圧シリンダにより変位させることができる。
【0047】
いくつかの記載された解決策の組み合わせもまた想定され、マトリックスのいくつかの要素はその独立作動システムを有することが可能であり、マトリックスの残りの要素は特定の機構により接合されてもよい、ということに留意することが重要である。
【0048】
繊維構造は、変形可能な本体と金型との間に配置され、少なくとも1つの繊維層により形成される。繊維および繊維層は、接着処理または縫製処理によりともに接合されてもよい。繊維および繊維層は、ポリマーフォーム、コルク、木、金属などのインサート(inserts)およびコアパーツ(core parts)を含んでもよい。
【0049】
マトリックスを構成するパーツは、ジョイント、リニアガイド、スプリングなどの中間機構のいくつかの形式で結合されてもよいし、または、油圧シリンダなどのそれぞれの機械的アクチュエータにより作動される独立した動きを有してもよい。
【0050】
本発明のすべての実施の形態では、繊維固定要素は、可撓性アーム、剛性支持体、および移動機構を含むシステムにより固定されることが想定される。
【0051】
繊維固定要素は、可撓性アームに固定され、可撓性アームは、移動機構の移動要素に対してその反対側の端部で固定される。アームは、繊維の応力の作用下で曲げられるよう柔軟性を有する。そのため、固定要素が応力に沿うようになり、固定要素の端部で繊維を引き裂くリスクを低減する。
【0052】
繊維、固定要素、および可撓性アームにより形成されるアセンブリの撓みを回避するため、剛性支持体は可撓性アームの下に配置される。支持体は、可撓性アームと同じ移動機構の移動要素に固定される。すなわち、可撓性アームの一端と剛性支持体とは、強固に接合されている。
【0053】
移動機構は、適合処理により必要とされる方向、すなわち、マトリックスの動きの方向であり、主に垂直方向に沿って、繊維のアセンブリを移動する機能を有する。移動機構は、独立自動要素により、またはマトリックスに結合されたプッシャにより作動することができる。そのため、マトリックスの動きと移動機構の移動要素とが結合される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】請求項1に記載の繊維固定システムを有する繊維構造を示す平面図
【
図2】請求項2に記載の適合フェーズの初期の瞬間における適合システムを示す断面図
【
図3】請求項2に記載の適合フェーズの中間点における適合システムを示す断面図
【
図4】請求項3に記載の変形可能な本体における異なる特徴を示す図
【
図5】
図4と同様に、請求項4に記載の変形可能な本体を変形させる別の方法を示す図
【
図6】
図2と同様に、独立した動きを有する異なる要素により形成されるマトリックスを示す図
【
図7】
図6と同様に、変形可能な本体のキャビティまたは細孔のシステムを示す図
【
図8】
図3と同様に、単一アクチュエータにより操作される異なる接合要素により形成されるマトリックスを示す図
【
図9】
図8と同様に、請求項3に記載の変形可能な本体の異なる特徴を示す図
【
図10】本発明の好ましい実施の形態による、適合の最後の瞬間における適合装置を示す断面図
【
図11】繊維の適合部品を取得する完全な処理を示す図
【
図12】請求項5および6に記載の繊維を適合させる装置に統合された復元システムを示す図
【
図13】請求項1に記載の繊維固定システムにより固定された繊維構造を示す図
【
図14】
図13に記載の繊維固定システムの要素の14-14断面図
【
図15】
図13に記載の繊維固定システムの要素の15-15断面図
【
図16】
図14と同様に、適合中に繊維層に発生する独立スライドを示す図
【
図17】
図14と同様に、弾性フィルムと固定システムの場合を示す図
【
図18】繊維固定システムの一部である固定要素を示す斜視図
【
図19】繊維固定システムの自動アセンブリを示す図
【
図20】請求項14に記載の変形可能な本体の形状を復元するシステムの要素を示す断面図
【
図21】
図20と同様に、請求項15に記載のガスケットがマトリックスに強固に接合された場合を示す図
【
図22】
図20と同様に、追加の金型上で変形可能な本体を圧縮中の場合を示す断面図
【
図23】繊維固定システムの要素の固定およびガイド装置を示す断面図
【
図24A】繊維固定システムに連結された結合システムの可能な実施の形態を示す図
【
図24B】繊維固定システムに連結された結合システムの可能な実施の形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、後に3次元金型(3)に成形または適合される、請求項1に記載の繊維構造(4)を示す平面図であり、これは、異なる形状の一連の層(13)により形成され、対応する複合部品の負荷経路に沿って配向されている。層(13)は、縫製により、または接着剤を使用して部分的にまたは完全に互いに接合することができる。事前に樹脂に含浸された繊維、またはプリプレグを使用する場合、樹脂自体により生成される粘着力を使用して層を接合することができる。
【0056】
この接合の目的は、繊維固定システム(5)により生成された応力を、それを必要とする繊維構造(4)の領域に伝達し、そうでなければ層(13)間のいかなる接合も実行されないようにすることである。
図13~19に詳細に示されるように、固定システム(5)は、繊維構造(4)の輪郭を少なくとも部分的に包囲し、例えば、より険しい形状に起因する領域など、より大量の繊維を必要とする部分に繊維をスライドさせることができる。繊維固定システム(5)は、その要素(42)のそれぞれに詳細を説明しないアンカリングポイントを有し、この目的のために用意されたツールを使用してこれらの要素(42)を同時に固定し、好ましくはロボットを使用して、真空状態で、または繊維(4)を固定した状態で必要な位置に移動させることができる。
【0057】
例えば、
図19に詳細に示されるように、固定システム(5)の取り付け領域(19)から適合領域(20)に、特に、マトリックス(1)と成形金型(3)との間に、移動させる。
【0058】
さらに、提示される固定システム(5)のコンセプトは、適合領域(20)に運ばれる前に、すでに繊維(4)に取り付けられたものと同じものの中間保管を可能にし、製造フェーズの生産的不均衡を吸収することができる。
【0059】
繊維(4)に取り付けられる固定システム(5)の設計は、マトリックス(1)と成形金型(3)との間に設置された後、それぞれの要素(42)に繊維の適合中に独立した動きをさせることができ、したがって、複雑な形状の部品での適合を容易にすることができることに留意することが重要である。この独立ガイドシステムは、ロボットアームなどの市場に存在する幅広い解決策を使用して達成することができるため、詳細を説明しない。
【0060】
図2は、請求項2に記載の適合装置を示す断面図であり、特に、繊維適合フェーズの初期の瞬間を示す。システムは、異なる形状を有するマトリックス(1)により構成され、その表面には、容易に変形可能な本体(2)が接着されている。これは、特定の初期形状を有し、製造される部品の形状に依存する。金型(3)は、変形可能な本体が金型(3)とマトリックス(1)との間に位置するよう、配置される。
【0061】
繊維固定システム(5)により支持された繊維構造(4)を変形可能な本体(2)と金型(3)との間に配置した後、請求項2によると、マトリックス(1)は特定の速さで、好ましくはプレスの助けを借りて、金型に向かって移動する。このため、変形可能な本体は、金型(3)に対して圧縮され、繊維構造(4)は、その形状を漸進的に採用することを強制される。これにより、層間の応力が低減され、繊維(4)でのずれやしわの出現を回避し、樹脂に含浸された繊維からプリフォームを取得することができるようになる。
【0062】
初期には2次元平面に配置された繊維(4)の適合中に、繊維(4)は、3次元形状をとるにつれて、固定要素(42)に対してスライドする。
【0063】
繊維(4)の適合が必要とする自由度に応じて、固定システム(42)は独立した動きを有することが想定されていることに留意することが重要である。つまり、要素(42)は、プロセス全体を通して動かないままであるか、特定の自由度に応じて動くか、自由度に応じて強制的に動かされるか、または上述の組み合わせである。
【0064】
図3は、
図2と同様に、より進んだ状態の適合フェーズの場合を示し、繊維構造(4)はすでに、金型(3)の形状を部分的に採用している。示されている例では、繊維固定システム(5)は、必要な応力を維持するが、同時にそのスライドを可能にすることに留意されるべきである。
【0065】
図4は、
図2と同様に、請求項3に記載の異なる特徴を有する変形可能な本体(2)を示す。本体(2)は、可塑性またはクリープに至ることなく弾性変形し、キャビティ、ダクト、多孔質、または上述の任意の組み合わせ(6)を有し、そこにガスまたは液体が封入されている。キャビティ(6)の適切な設計により、本体は、繊維構造(4)の適合のための最適な順序に従って変形させられる。適合効果は
図2および
図3の場合と同様であり、相違点は発生する変形現象であることに留意すべきである。
【0066】
図5は、請求項4に記載の適合装置を示す断面図である。変形可能な本体(2)は、弾性材料により形成され、可塑性またはクリープに至ることなく変形し、キャビティ、ダクト、多孔質、または上述の任意の組み合わせ(6)を有し、その内部に少なくとも1つのダクトを通して外部に接続されたガスまたは液体を含んでいる。
【0067】
この場合、適合を達成するためにマトリックス(1)を金型(3)に向けて動かす代わりに、ガスまたは液体が少なくとも1つのダクト(7)を通って変形可能な本体(2)に注入され、その体積の増加を引き起こす。キャビティ(6)の適切な設計により、変形順序が制御されて所望の適合を生成することができる。
【0068】
図6は、
図2と同様に、請求項25で想定されているように、マトリックス(1)が機械的アクチュエータ、好ましくは油圧シリンダ(9)、により独立して動く複数の要素(8)に分割されている場合を示し、請求項2に記載されている。これにより、変形順序のより優れた制御が達成され、より複雑な金型形状の適合が可能になる。
【0069】
図7は、
図6と同様に、
図3に記載の変形可能(2)な本体の場合を示し、可塑性またはクリープに至ることなく弾性変形し、キャビティ、ダクト、多孔質、または上述の任意の組み合わせ(6)を有し、その内部に封入されたガスまたは液体を含む。
【0070】
図8は、
図3と同様に、マトリックス(1)が、請求項26に記載の任意の機構(10)により接合された複数の要素(8)に分割されている例を示し、機械的アクチュエータ、好ましくは油圧シリンダ(9)により作動する。この図は、ジョイント(11)およびスプリング(12)を含む機構(10)の例を示し、単一のアクチュエータでシステム全体が動作するようになっている。
【0071】
図9は、
図8と同様に、請求項3に記載のキャビティ、ダクト、多孔質、または上述の組み合わせ(6)を有し、その内部に封入されたガスまたは液体を含む弾性または粘弾性の変形可能な本体(2)の場合を示す。キャビティ(6)の適切な設計により、本体は、繊維構造(4)を適合する最適な順序により変形させられる。
【0072】
図10は、繊維の適合が完了した瞬間、特に
図3に示す瞬間の後の、本発明の装置オブジェクトを示す断面図である。この場合、マトリックス(1)が持ち上げられてその初期の位置に戻り、すでにプリフォームされた繊維(4)を解放する。請求項1に記載されているように、繊維に対する固定システム(5)は、必要とされる領域でそのスライドを可能にし、繊維の応力がもはや必要とされない適切な時期に固定システム(5)から取り外す(14B)ことができ、または、逆に、適合処理が終わるまでシステムに固定されたまま(14A)であってもよい、ということに留意されるべきである。
【0073】
図10に示される場合、請求項2によると、変形可能な本体(2)は、塑性変形し、圧力がかからなくなってもその初期形状に復元しない材料により形成される。したがって、その初期の形状になるよう変形可能な本体(2)を再形成する必要がある。このため、請求項5で説明されているように、装置はさらに、追加の復元金型(24)を備えることが想定される。
【0074】
図11は、本発明に開示されている装置が統合され、領域(18)、(19)、および(20)に対応する、繊維プリフォームを取得するプロセスを示す図である。
【0075】
領域(17)は、数値制御(15)または自動繊維堆積システム(16)、またはAFPによる切断などのすでに存在する処理による繊維部品(13)の取得に対応する。
【0076】
次に、領域(18)は、ロボット(21)などの自動位置決めシステムによる繊維層(13)または層の準備に対応する。
【0077】
この空間(18)内で、事前に樹脂に含浸されている場合、縫製、接着剤の追加、または2以上の層(13)の間の加圧などの、それを必要とする層間の接合処理の実行もまた想定される。さらに、ポリマーフォーム、コルク、木、または金属などの複合材料の芯材、および異なる材料のインサートを挿入することができる。ステップ(18)中に起こり得る上述の追加の処理は、製造中に異なる位置で実行されてもよく、ロボット(39)などの自動化ツールにより実行されてもよいことに留意することが重要である。
【0078】
次の領域(19)では、
図19に詳細が示されるように、繊維構造(4)は繊維固定システム(5)に固定されている。層(13)は固定システムのシート(30)の間に積層されて封入される、および、事前に積層され、縫製され、芯材を有し、または個別に提示されてもよい。個別に提示される場合、すなわち、追加の縫製、芯材挿入、または接着作業をしない場合、層(13)は、層を取得するために領域(17)から直接生成することが可能である。
【0079】
固定に関して、層(13)の輪郭を少なくとも部分的に包囲することに留意すべきである。
【0080】
適合に対応する領域(20)では、成形金型(3)とマトリックス(1)とが変形可能な本体(2)とともに配置され、領域(19)で繊維(4)とともに取り付けられた固定システム(5)が配置されている。固定システム(5)および繊維(4)をともに配置することは、好ましくは、固定システムの要素(42)のそれぞれ1つを固定するツールを有するロボット(22)により実行される。
【0081】
変形可能な本体(2)の初期形状を復元するための追加の金型(24)は、この図には詳細に記載されていない。
【0082】
図12は、本発明の繊維適合装置オブジェクトの一部である復元システムを示す図である。繊維適合および復元は、請求項6によると、同じ場所(20)で、同じプレス(23)で実行され、金型(3)と追加の復元金型(24)とは、マトリックス(1)と交互に整列させることのできる移動システム(27)を有する。追加の復元金型(24)がマトリックス(1)と整列する場合、プレス(23)において、成形金型(3)が別の位置(26)に移動する。ロボットは適合された繊維(4)を収集し、本発明で提案される固定システム(5)により新しい繊維を成形金型(3)上に配置することが期待される。
【0083】
この図は、繊維構造(4)が必要とされる形状をすでに採用し、成形金型(3)が領域(26)に向かって動くのと同時に、追加の復元金型がマトリックス(1)とのその整列位置に向かって動き始める瞬間の装置の動作を示す。
【0084】
追加の復元金型(24)がマトリックス(1)の整列位置に配置されると、変形可能な本体(2)は、要素(1)と(24)との間でプレス(23)により圧縮され、変形可能な本体(2)の形状を復元する。
【0085】
復元は、繊維の適合(20)以外の場所で実行されることも想定されることに留意することが重要である。この場合、請求項7に記載されているように、マトリックス(1)は、追加の復元金型(24)により占有されている位置に移動させるためにプレス(23)から切り離すことができるシステムを有する。
【0086】
図13は、繊維固定システム(5)の一部を構成する2つの要素(42)を示す部分平面図である。繊維構造(4)は、それぞれの要素(42)の少なくとも1点で作動する閉鎖システム(28)を有する少なくとも1つの要素(42)を使用して必要なそれらの領域に固定される。また、クランプ、ピン、またはスレッド(threads)などの他のタイプの締め具が想定される。上部または閉鎖フレーム(31)は、その下に配置される下部フレーム(29)とともに固定システムに一貫性を与える要素であり、この図には示されていない。
【0087】
図14は、
図13に示す繊維固定システムの要素(42)の14-14断面図である。上部または閉鎖フレーム(31)とともに固定システムに一貫性を与える下部フレーム(29)を示し、それは、それぞれのプリフォームの要求に従い、例えば、アルミニウム、鋼板、またはポリマー材料などの任意の材料から製造することができる。フレーム(29)と(31)との間で、分離シート(30)がそれぞれの繊維層(13)の両側に配置されている。シート(30)は、繊維層のスライドを可能にするために、好ましくは、テフロン(登録商標)またはノンスティックシリコーンなどのノンスティック媒体によりコーティングされた可撓性材料により形成される。または、上述のノンスティック材料で直接形成されてもよい。
【0088】
フレーム(29)および(31)のそれぞれ1つと隣接する分離シート(30)との間に、可撓性ポリマーフォームまたはエラストマーなどの弾性要素(32)が配置され、有効な固定領域(36)以上の領域、すなわち、プリフォーミングの初期の瞬間に固定要素(42)により覆われている繊維(13)の領域を覆う。可撓性材料(32)は繊維(13)を包み、その目的は、繊維(13)上のフレームによりかけられる圧力を均一に分散し、過剰な摩擦力によりシート(30)に相対的にスライドする際に、繊維(13)の方向における歪みを引き起こすことがある圧力集中を回避することである。
【0089】
それぞれの固定要素(42)の一貫性を保証するために、下部フレーム(29)、分離シート(30)、および上部または閉鎖フレーム(31)がその平面と相対変位を持たないよう結合システムが配置されるこの結合システムは、この図によると、下部フレーム(29)に強固に接合され、シート(30)と上部フレーム(31)とに設けられたぴったりの穴を通る、結合要素(33)(円筒形ピン)であり、要素の相対的な移動が、繊維の平面に対する法線に沿ってのみ可能になる。
【0090】
さらに、固定システムの締め具(28)が配置され、その目的は、繊維に適切な圧力をかけることであり、したがって、摩擦現象により繊維に必要な圧力が生成される。この図では、締め具(28)は結合要素(33)に挿入された要素であり、例えば、ねじ式ジョイントやピンななどによって、一方が他方に対して保持される。このようにして、締め具(28)は上部または閉鎖フレーム(31)に必要な力を及ぼす。下部(29)および上部(30)フレームは、詳細は説明されない、その移動および保管と同様に、適合装置を異なる領域で固定を提供する、アンカー要素とともに提供される。
【0091】
図15は、
図14と同様に、
図13に示す繊維固定システムの要素(42)の15-15断面図である。この場合、結合要素(33)と締め具(28)とは、固定要素(42)の別の部分にあるため、示されていない。
【0092】
繊維構造(4)は、固定システムから突出(43)し、それを必要とする領域で、プリフォーミング処理中に繊維のより大きいスライドを可能にする。弾性要素(32)が、下部(29)および上部(31)フレームの全領域(37)を包囲することに留意すべきである。
【0093】
図16は、後の瞬間、特にプリフォーミング処理中の
図14と同じ断面であり、繊維層(13)のそれぞれが、プロセスで必要とされる程度に、固定要素に対して独立してスライドする様子を示す。
【0094】
図17は、
図14と同じ断面であり、この場合、追加の要素、特に弾性フィルム(34)であり、クランプまたは張力フレームなどの詳細を説明しない固定システム(35)により固定される場合を示し、フィルムはスライドしてもしなくてもよい。
【0095】
図18は、本発明による繊維固定要素(42)を示す斜視図である。繊維層(13)は、下部フレーム(29)と上部または閉鎖フレーム(31)との間に配置された分離シート(30)の間に配置されているのがわかる。閉鎖要素(28)は、フレーム(29)および(31)により繊維に伝達される閉鎖力を提供する。そのおかげで、摩擦現象により張力効果が得られる。
【0096】
図19は、分解した繊維固定システム(5)を示す。固定コンセプトにより提示される自動化の容易さを理解することができる。その組立のために、まず、下部フレーム(29)が層(13)を積層するために下部領域(19B)に配置された表面またはツール(40)に配置され、そこに、積層中に層(13)が沈むのを防止する支持要素(41)が存在する。次に、好ましくは固定要素の残りの要素を含む自動化システムにより、分離シート(30)が配置される。次に、好ましくはロボット(21)などの自動化システムにより、繊維(5)層が所望の位置に配置される。処理は、それぞれのプリフォームで必要なだけ、多くの層(13)とシート(30)とを交互に配置することを繰り返し、上部または閉鎖フレーム(31)に続く最後のシート(30)が配置される。最後に、締め具(28)が設置されて繊維(13)に必要な力を加え、成形金型(3)に対してその適合中に必要な応力をかける。
【0097】
図20は、
図13に示す復元システムの断面図である。追加の復元金型(24)およびマトリックス(1)は、変形可能な本体(2)がそれらの間に配置されるよう配置される。固定具またはツール(45)により配置される弾性フィルム(44)は、変形可能な本体(2)を分離して追加の復元金型(24)に付着しないようにする。フィルム(44)は、変形可能な本体(2)とフィルム(44)との間に封入された排気を可能にする穿孔(47)を有し、穿孔は変形可能な本体(2)がそこから押し出されるのを防ぐのに十分小さい。
【0098】
したがって、追加の金型(24)に対してマトリックス(1)を圧縮することにより、変形可能な本体(2)は、適合処理を再び行うに必要な、追加の復元金型(24)の形状を取得することを強制される。
【0099】
システムはさらに、追加の金型(24)の端部および弾性フィルム(44)に配置された弾性ガスケット(46)を有する。弾性ガスケットは、変形可能な本体がマトリックス(1)と追加の金型(24)との間に含まれる体積から離れるのを防止するために、変形可能な本体(2)とともに圧縮される。
【0100】
図21は、
図20と同様に、請求項14に記載されたガスケット(46)がマトリックス(1)に強固に接合され、マトリックスと変形可能な本体(2)との間に封入されたスカート(49)を有する場合を示す。
【0101】
図22は、
図20と同様に、追加の金型(24)での変形可能な本体(2)の圧縮中の断面図である。
【0102】
図23は、請求項27に記載の、繊維(4)の固定システム(5)の要素(42)に対する固定およびガイド要素の断面図である。このシステムは、ロボットシステムにより作動できる、またはマトリックス(1)に強固に接合されたアクチュエータにより押しだすことのできる移動機構(52)を備え、適合中に固定要素(42)を適切な位置に配置することができる。このため、移動機構(52)の移動要素(54)に一方端部アンカリングされ、繊維固定要素(42)に他方端部がアンカリングされた可撓性アーム(50)が存在する。このアームは、曲げたりねじったりして変形させることができ、固定要素(42)を繊維の応力の方向に自由に整列させることができる。これは、繊維層(13)が金型(3)の形状に正しく適合する前に互いに接着することを防止するために必須である。適合の前のアームは可撓性を有するため、繊維が2次元の平面に配置されることにより、固定要素(42)がその自重により落下することがある。これを回避するために、可撓性アーム(50)の下に配置された、移動機構(52)の移動要素(54)にアンカリングされた剛性支持体(51)が挿入される。
【0103】
図24Aおよび
図24Bは、請求項1に記載の、繊維固定システム(5)に連結された結合システムの可能な実施の形態を示す。固定システム(5)の固定要素(42)の断面図が提示されている。
【0104】
図24Aは、下部フレーム(29)、分離シート(30)、および上部フレーム(31)の間の結合システムの混合実施形態を示す。下部および上部フレーム(29、31)は、相対回転動作を可能にする第1ヒンジ機構(55)により連結される。分離シート(30)は、その中を通るピン(33)により下部フレーム(29)に連結される。閉鎖システムは、この図には示されていないが、下部および上部フレームの間の繊維を圧縮するのに必要な力をかける第1ヒンジ機構(55)で動作する回転アクチュエータである。
【0105】
図24Bは、一方側で上部および下部フレーム(29、31)を連結する第1ヒンジ機構(55)と、他方側で分離シート(30)と下部フレーム(29)とを連結する第2ヒンジ機構(55’)とにより構成される結合システムを示す。閉鎖システムはこの図にも示されていない。
【産業上の利用可能性】
【0106】
高品質および高生産性が要求される構造用複合部品の製造に適用される。
【国際調査報告】