(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】新規抗-C-KIT抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220112BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220112BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220112BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220112BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220112BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220112BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220112BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220112BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220112BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220112BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220112BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220112BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220112BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220112BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220112BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220112BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220112BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220112BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20220112BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220112BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20220112BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220112BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20220112BHJP
G01N 33/573 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
A61P35/00
A61P35/02
A61P27/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/02
A61P17/06
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/12
A61P11/06
A61P11/02
A61P31/00
A61P29/00
A61P1/04
A61P1/02
A61P1/00
A61P15/00
A61P19/00
A61P19/08
A61P7/00
A61P37/02
A61P43/00 105
A61P27/06
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 Q
G01N33/531 A
G01N33/573 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545343
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-04-12
(86)【国際出願番号】 KR2019013310
(87)【国際公開番号】W WO2020076105
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】10-2018-0120233
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521155944
【氏名又は名称】ノヴェルティ・ノビリティ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELTY NOBILITY INC.
【住所又は居所原語表記】101‐HO, 206, WORLD CUP‐RO, YEONGTONG‐GU, SUWON‐SI, GYEONGGI‐DO 16499, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン・ギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジン‐オク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
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4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
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4B065CA46
4C085AA13
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4C085BB31
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
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4C085GG08
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、新規抗-C-KIT抗体またはその抗体断片に関する。また、本発明は、前記抗-C-KIT抗体またはその抗体断片を含む血管新生関連疾患の予防または治療用組成物、または血管新生関連疾患診断用キットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C-KITのドメインIIに特異的に結合することを特徴とする、抗-C-KIT抗体またはその抗体断片。
【請求項2】
前記抗体は、配列番号1で表示される軽鎖CDR1、配列番号2で表示される軽鎖CDR2及び配列番号3で表示される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、及び、
配列番号4で表示される重鎖CDR1、配列番号5で表示される重鎖CDR2及び配列番号6で表示される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片。
【請求項3】
前記抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び、
配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片。
【請求項4】
前記抗体は、ヒトIgG1由来不変領域を含むことを特徴とする、請求項1に記載の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片。
【請求項5】
請求項1に記載の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸。
【請求項6】
前記核酸は、(i)配列番号9乃至14、(ii)配列番号15及び16、(iii)配列番号17乃至22、または(iv)配列番号23及び24、を含むことを特徴とする請求項5に記載の核酸。
【請求項7】
請求項5に記載の核酸を含むベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターで形質転換された細胞。
【請求項9】
請求項1に記載の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片を含む、血管新生関連疾患の予防または治療用の薬学組成物。
【請求項10】
前記血管新生関連疾患は、癌、白血病、眼血管疾患、リウマチ関節炎、乾癬、慢性創傷、慢性炎症、血管腫、血管線維腫、血管奇形、動脈硬化、血管癒着、血管炎、化膿性肉芽腫、水疱疾患、肺高血圧症、喘息、鼻ポリープ、感染性疾患、炎症性腸疾患、歯周疾患、腹膜癒着、子宮内膜、子宮出血、卵巣嚢腫、骨髄炎、骨病、敗血症及び自己免疫疾患からなる群から選択されたことを特徴とする請求項9に記載の薬学組成物。
【請求項11】
前記癌は、骨癌、肺癌、頭部癌、頸部癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、非小細胞性肺癌、胃癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、皮膚または眼球内黒色腫、直腸癌、肛門付近癌、結腸癌、子宮癌、乳癌、卵巣癌、喇叭管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頸癌腫、腟癌腫、陰門癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、輸尿管癌、腎細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫、中枢神経系腫瘍、中枢神経系リンパ腫、脊髄腫瘍、膠芽腫、脳幹神経膠腫及び脳下垂体腺腫からなる群から選択されたことを特徴とする請求項10に記載の薬学組成物。
【請求項12】
前記眼血管疾患は、糖尿性網膜病、黄斑変性、老人性黄斑変性、緑内障、緑内障性網膜色素変性、脈絡膜血管新生、未熟網膜症、角膜ジストロフィー及び網膜層間分離からなる群から選択されたことを特徴とする請求項10に記載の薬学組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片を含む血管新生関連疾患診断用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規抗-C-KIT抗体またはその抗体断片に関する。また、本発明は、前記抗-C-KIT抗体またはその抗体断片を含む血管新生関連疾患の予防または治療用組成物、または血管新生関連疾患診断用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
新生血管形成(Angiogenesis)は、既存の血管から新たな血管が生成される機序を意味する。非正常的または過度な血管新生は、多様な疾患の原因となる。例えば、血管新生は、腫瘍の成長だけではなく腫瘍の良性から悪性への発展の原因のうち一つであり、この他にも、年齢-関連黄斑変性(Age-related Macular Degeneration)、糖尿性網膜病症(Diabetic Retinopathy)、緑内障(Glaucoma)等のような眼疾患とリウマチ関節炎(Rheumatoid Arthritis)、乾癬(Psoriasis)、慢性炎症(Chronic inflammation)等、多様な疾患で新生血管の過多形成が報告されたことがある(Cameliet and Jain,Nature,407:249,2000(非特許文献1))。このような理由により新生血管形成抑制剤を利用して血管新生関連疾患を治療するための研究がなされており、血管内皮細胞の成長、移動、分化等のような血管形成過程に関与する多数の新生血管促進及び抑制因子が発見された。
【0003】
新生血管形成抑制剤は、作用機序によってマトリックス-分解抑制剤(Matrix-breakdown inhibitor)、内皮細胞抑制剤(Endothelial cell inhibitor)、血管生成抑制剤(Angiogenesis inhibitor)等、いくつかのカテゴリに分けられ得るが、この中で、前記血管生成抑制剤には、VEGFR2、VEGFR1、PDGFR、C-KIT、FLT3等をターゲットしてこれらの活性、信号伝達、生産等を阻害する薬物が含まれる。
【0004】
前記血管生成抑制剤のターゲットのうち一つであるC-KITは、受容体チロシンキナーゼ(Receptor Tyrosine Kinase、RTK)のクラスIII(class III)に属し、SCF(幹細胞因子:Stem Cell Factor)の受容体とも知られている。前記SCFは、C-KIT受容体に結合するサイトカインであって、血液細胞、精子、メラニン細胞の分化及び生成に重要な役割を果たすものと報告されている。
【0005】
前記SCFは、C-KITのリガンド結合ドメインに結合して相互作用した結果、C-KITタンパク質はリン酸化されて活性を有するようになり、PI3K/AKTシステム、RAS/MAPキナーゼ等の信号伝達過程を通して細胞成長、分化及び増殖等、多様な生物学的機能を調節することとなる。特に、新生血管形成において、SCF/C-KIT刺激(stimulation)の作用について報告されたことがある(Angiogenesis in Health,Disease and Malignancy,pp33-36(非特許文献2))。
【0006】
C-KITをターゲットする市販の薬物としてグリベック(イマチニブメシル酸塩)及びスーテント(スニチニブリンゴ酸塩)があるが、これらは、様々なキナーゼを抑制する多重標的治療剤であって、これによる多くの副作用、低い特異性と生体利用率、抗原性及び不適な薬物動態等のような治療的限界点が報告されている。従って、C-KITの活性化による血管新生と関連した疾患に対してC-KITに特異的かつ副作用がなく有効な治療剤の開発が要求されている。
【0007】
本発明者らは、血管新生関連疾患の治療物質を見出すために鋭意努力した結果、C-KITに特異的に結合する特定抗-C-KIT抗体が新生血管形成を有意的に抑制させることができ、これによって血管新生関連疾患に対して優れた治療能を有することができるという点を確認し、本発明を完成するようになった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【特許文献1】Cameliet and Jain,Nature,407:249,2000
【特許文献2】Angiogenesis in Health,Disease and Malignancy,pp33-36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、C-KITタンパク質のドメインIIに特異的に結合して優れたC-KIT抑制能を有する抗-C-KIT抗体またはその抗体断片を提供することを目的とする。また、本発明は、前記抗-C-KIT抗体またはその抗体断片を含む血管新生関連疾患の予防または治療用組成物及び診断キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一様態によれば、本発明は、C-KITに特異的に結合する抗-C-KIT抗体またはその抗体断片を提供する。
【0011】
本発明の一様態によれば、本発明に係る抗-C-KIT抗体またはその抗体断片は、C-KITのドメインIIに特異的に結合する。
【0012】
本明細書において使用される用語「抗体」は、免疫学的に特定抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子または抗原を特異的に認識する受容体の役割を果たすタンパク質分子を意味する。従って、本発明において「抗体」は広範な意味で使用され、ポリクロナール抗体、モノクロナール抗体、全長(whole)抗体(ジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる抗体)及び抗体断片を全て含むものと解釈される。前記全長抗体は、IgA、IgD、IgE、IgM及びIgGを含む。また、前記IgGは、亜型(subtype)としてIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むことができる。
【0013】
本明細書において使用される用語「抗体断片」は、母抗体の結合特異性を少なくとも一部保有し、母抗体の抗原結合領域の一部(例えば、一つ以上のCDR)または可変領域を含む抗原-結合断片または抗体の類似体を意味する。前記抗体断片は、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、sc-Fv、ユニボディ(unibody)、ジアボディ、線形抗体、ナノボディ、ドメイン抗体または抗体断片から形成された多特異的抗体であってよい。
【0014】
本明細書において使用される用語「重鎖」は、重鎖可変領域(Variable Region)と重鎖不変領域(Constant Region)を含む全長重鎖及びその断片を意味する。重鎖には、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びエプシロン(ε)型がある。
【0015】
本明細書において使用される用語「軽鎖」は、軽鎖可変領域と軽鎖不変領域を含む全長軽鎖及びその断片を意味する。軽鎖には、カッパ(κ)及びラムダ(λ)型がある。
【0016】
本発明において、抗体は、全長抗体であるか、または抗原結合能を有する抗体断片であり、重鎖は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)またはエプシロン(ε)型のいずれか一つであってよく、軽鎖は、カッパ(κ)またはラムダ(λ)型であってよい。本発明の一様態によれば、軽鎖は、カッパ型である。
【0017】
本明細書において使用される用語「C-KIT」は、受容体チロシンキナーゼ(Receptor Tyrosine Kinase、RTK)のクラスIII(class III)に属し、SCFの受容体とも知られている。
【0018】
前記血管生成抑制剤のターゲットのうち一つであるC-KITは、受容体チロシンキナーゼ(Receptor Tyrosine Kinase、RTK)のclass IIIに属し、血液生成(haematopoiesis)で重要な役割を果たすSCF(幹細胞因子:Stem Cell Factor)の受容体である。
【0019】
本明細書において使用される用語「抗-C-KIT抗体」は、C-KITに特異的に結合する抗体を意味する。具体的に、前記抗-C-KIT抗体は、C-KITのドメインIIに特異的に結合し、これによってC-KITの活性または活性化を抑制または中和させることができる。
【0020】
本発明のまた他の一様態によれば、本発明の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片は、配列番号1で表示される軽鎖CDR1、配列番号2で表示される軽鎖CDR2、及び配列番号3で表示される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0021】
本発明のまた他の一様態によれば、本発明の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片は、配列番号4で表示される重鎖CDR1、配列番号5で表示される重鎖CDR2、及び配列番号6で表示される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域を含む。
【0022】
本発明のまた他の一様態によれば、本発明の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片の軽鎖可変領域は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0023】
本発明のまた他の一様態によれば、本発明の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片の重鎖可変領域は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0024】
本発明のまた他の一様態によれば、本発明の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片は、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。
【0025】
本発明のまた他の一様態によれば、本発明の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0026】
本明細書において使用される用語「CDR(相補性決定領域:Complementarity determining region)」は、B細胞及びT細胞により生成された抗体の可変領域の一部として抗原結合部位を形成している超可変領域(Hypervariable region)のアミノ酸配列を意味する。重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列には、それぞれ非連続的に配列された3個のCDR、即ち、重鎖CDRH1、CDRH2、CDRH3及び軽鎖CDRL1、CDRL2、CDRL3が含まれている。CDRは、抗原の認識に関与する部位で抗体が抗原またはエピトープと結合するにあたって主要な接触残基を提供して抗原特異性の多様性に決定的な役割を果たす。
【0027】
本発明の抗体またはその抗体断片は、配列目録に記載の配列と実質的な同一性を示す配列を含む。前記実質的な同一性とは、二つの配列を最大限対応するように整列した後、当業界において通常利用されるアルゴリズムを使用して分析した結果、80%、90%または95%以上の配列間相同性を示すことを意味する。
【0028】
また、本発明の抗-C-KIT抗体は、C-KITを特異的に認識して結合できる範囲内で本明細書に記載の抗-C-KIT抗体の配列だけではなく、その生物学的均等物を含むことができる。例えば、抗体結合親和度及び/または生物学的特性等を改善させるための配列のさらなる変異を含むことができ、分子の全体的活性を変更させない範囲内でさらなる変異を含むことができる。
【0029】
本発明のまた他の様態によれば、抗-C-KIT抗体またはその抗体断片は、ヒトIgG1由来不変領域を含むことができる。本発明の一様態によれば、本発明は、前記軽鎖可変領域及び重鎖可変領域とヒトIgG1由来不変領域を含むヒト抗-C-KIT抗体を提供する。
【0030】
本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、フレームワーク及びCDR領域がヒト免疫グロブリン配列から由来した可変領域を有する抗体を意味するものと理解される。本発明において、ヒト抗体は、ヒト由来免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、試験管内無作為または部位-特異的突然変異誘発によりまたは生体内体細胞突然変異により導入された突然変異)を含むことができる。前記ヒト抗体は、全長抗体形態または抗体分子の機能的な断片を含む形態であってよい。前記ヒト抗体の全ての構成要素はヒトから由来したところ、ヒト化抗体またはマウス抗体に比べてヒトに投与時に免疫反応が起こる確率が少ない。従って、ヒトを対象とする治療用抗体として有利な利点を有する。
【0031】
後述する多様な実施例を通して新生血管形成抑制効果と関連した効果を確認したところによれば、本発明の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片は、新生血管形成を有意的に抑制することで血管新生関連疾患を効果的に予防または治療することが可能である。
【0032】
本発明のまた他の様態によれば、本発明は、抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸を提供する。
【0033】
本発明に係る抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸は、配列番号9、配列番号10及び配列番号11の塩基配列を含むことができる。ここで、配列番号9、配列番号10及び配列番号11の塩基配列は、それぞれ配列番号1で表示される軽鎖CDR1、配列番号2で表示される軽鎖CDR2及び配列番号3で表示される軽鎖CDR3をコードする。配列番号9乃至11の塩基配列は、それぞれCHO細胞に対してコドン最適化され得、このようにコドン最適化された塩基配列を含む核酸は、本発明に係る抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸の範囲内に含まれるものと解釈されるべきである。例えば、本発明に係る抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸は、配列番号17、配列番号18及び配列番号19を含むことができる。
【0034】
選択的に、本発明に係る抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸は、配列番号12、配列番号13及び配列番号14の塩基配列を含むことができる。ここで、配列番号12、配列番号13及び配列番号14の塩基配列は、それぞれ配列番号4で表示される重鎖CDR1、配列番号5で表示される重鎖CDR2及び配列番号6で表示される重鎖CDR3をコードする。配列番号12乃至14の塩基配列は、それぞれCHO細胞に対してコドン最適化され得、このようにコドン最適化された塩基配列を含む核酸は、本発明に係る抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸の範囲内に含まれるものと解釈されるべきである。例えば、本発明に係る抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸は、配列番号20、配列番号21及び配列番号22を含むことができる。
【0035】
本発明の一様態によれば、本発明に係る抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸は、配列番号15または配列番号23を含む軽鎖可変領域コード核酸を含むことができる。
【0036】
本発明のまた他の一様態によれば、本発明に係る抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸は、配列番号16または配列番号24を含む重鎖可変領域コード核酸を含むことができる。
【0037】
本発明のまた他の一様態によれば、本発明に係る抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸は、配列番号27または配列番号29を含む軽鎖コード核酸を含むことができる。
【0038】
本発明のまた他の一様態によれば、本発明の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸は、配列番号28または配列番号30を含む重鎖コード核酸を含むことができる。
【0039】
本明細書において使用される用語「核酸」は、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNAを包括的に含む意味を有する。核酸分子で基本構成単位をなすヌクレオチドは、天然ヌクレオチドだけではなく、糖または塩基部位が変形された類似体(analogue)ヌクレオチドを含む(Scheit,Nucleotide Analogs,John Wiley,New York(1980);Uhlman and Peyman,Chemical Reviews,90:543-584(1990))。
【0040】
本発明の抗-C-KIT抗体またはその抗体断片をコードする核酸分子は、上述したヌクレオチド配列に対して実質的な同一性を示すヌクレオチド配列を含む。前記実質的な同一性とは、二つの配列を最大限対応するように整列した後、当業界において通常利用されるアルゴリズムを使用して分析した結果、80%、90%または95%以上の配列間相同性を示すことを意味する。
【0041】
本発明のまた他の様態によれば、本発明は、前記核酸を含むベクター及び前記ベクターで形質転換された細胞を提供する。
【0042】
本明細書において使用される用語「ベクター」は、宿主細胞に挿入されて遺伝子複製ができる任意のものを意味する。このようなベクターとして、プラスミド、線形核酸、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクター等があり、前記ウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス等があるが、これに限定されるものではない。本発明の組換えベクターシステムは、当業界に公知になった多様な方法を通して構築され得る。また、本発明のベクターは、クローニングまたは発現のためのベクターとして構築され得、原核細胞または真核細胞を宿主として構築され得る。
【0043】
また、本発明において、前記細胞は、原核細胞、真核細胞または動物細胞であってよい。適切に選択された宿主細胞を前記ベクターで形質転換させ、標的タンパク質の発現及び/または分泌させるのに利用できる。前記宿主細胞は、不滅化されたハイブリドーマ細胞、N/SO骨髄腫細胞、293細胞、HuT 78細胞、CHO細胞、HELA細胞、COS細胞等であってよく、好ましくはCHO細胞であってよい。ただし、これに限定されるものではなく、当業界に公知になっているいかなる宿主細胞も本発明の宿主細胞として利用が可能である。
【0044】
本発明のまた他の様態によれば、本発明は、抗-C-KIT抗体またはその抗体断片を含む血管新生関連疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0045】
本発明のまた他の様態によれば、血管新生関連疾患の治療または予防を必要とする対象体に抗-C-KIT抗体またはその抗体断片またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、対象体の血管新生関連疾患治療または予防方法を提供する。
【0046】
本発明において使用される用語「治療」は、本発明に係る組成物の投与により血管新生関連疾患の症状が好転、逆転、完治等がなされる全てのものを意味する。
【0047】
本発明において使用される用語「予防」は、本発明に係る組成物の投与により血管新生関連疾患の発生または再発の抑制、遅延、防止等がなされる全てのものを意味する。
【0048】
本発明において使用される用語「血管新生関連疾患」は、血管新生から引き起こされる疾患を意味する。ここには、癌、白血病、眼血管関連疾患、リウマチ関節炎、乾癬、慢性創傷、慢性炎症、血管腫、血管線維腫、血管奇形、動脈硬化、血管癒着、血管炎、化膿性肉芽腫、水疱疾患、肺高血圧症、喘息、鼻ポリープ、感染性疾患、炎症性腸疾患、歯周疾患、腹膜癒着、子宮内膜、子宮出血、卵巣嚢腫、骨髄炎、骨病、敗血症及び自己免疫疾患等が含まれる。好ましくは癌及び眼血管関連疾患であってよいが、これに限定されるものではない。
【0049】
前記癌は、骨癌、肺癌、頭部癌、頸部癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、非小細胞性肺癌、胃癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、皮膚または眼球内黒色腫、直腸癌、肛門付近癌、結腸癌、子宮癌、乳癌、卵巣癌、喇叭管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頸癌腫、腟癌腫、陰門癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌または輸尿管癌、腎細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫、中枢神経系腫瘍、中枢神経系リンパ腫、脊髄腫瘍、膠芽腫、脳幹神経膠腫、脳下垂体腺腫であってよい。
【0050】
前記眼血管関連疾患は、糖尿性網膜病症、黄斑変性、老人性黄斑変性、緑内障、緑内障性網膜色素変性、脈絡膜血管新生、未熟児網膜症、角膜ジストロフィー及び網膜層間分離であってよい。
【0051】
本発明に係る薬学組成物は、前記抗-C-KIT抗体またはその断片を単独で含有することもでき、または一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤をさらに含有することもできる。
【0052】
前記薬学的に許容される担体としては、例えば、経口投与用担体または非経口投与用担体をさらに含むことができる。経口投与用担体は、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等を含むことができる。また、非経口投与用担体は、水、適した油、食塩水、水性グルコース及びグリコール等を含むことができ、安定化剤及び保存剤をさらに含むことができる。安定化剤の例として、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。保存剤の例として、塩化ベンザルコニウム、メチル-またはプロピル-パラベン及びクロロブタノールがある。その他の薬学的に許容される担体として、当業界に公知になっているものを利用することができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed,Mack Publishing Company,Easton,PA,1995)。
【0053】
本発明の薬学組成物は、ヒトをはじめとする哺乳動物にいかなる方法でも投与できる。例えば、経口または非経口的に投与できる。非経口投与方法として、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸内投与であってよく、これに限定されるものではない。例えば、本発明の薬学組成物を注射型剤形に製造し、それを30ゲージの細い注射針で皮膚を軽く刺す(prick)方法、または皮膚に直接的に塗布する方法で投与され得る。
【0054】
本発明の薬学組成物は、上述したような投与経路によって経口投与用または非経口投与用製剤に剤形化することができる。経口投与用製剤の場合に、本発明の組成物は、粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液等に当業界に公知になった方法を利用して剤形化され得る。例えば、経口用製剤は、活性成分を固体賦形剤と配合した後、それを粉砕し、適した補助剤を添加した後、顆粒混合物に加工することで錠剤または糖衣錠剤を収得することができる。賦形剤の例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール及びマルチトール等を含む糖類と、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン及びジャガイモデンプン等を含むデンプン類、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチル-セルロース等を含むセルロース類、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等のような充填剤が含まれ得る。また、場合によって、架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウム等を崩壊剤として添加できる。また、本発明の薬学組成物は、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤等をさらに含むことができる。非経口投与用製剤の場合は、注射剤、クリーム剤、ローション剤、外用軟膏剤、油剤、保湿剤、ゲル剤、エアロゾル及び鼻腔吸入剤の形態に当業界に公知になった方法で剤形化することができる。これらの剤形は、全ての製薬化学に一般的に公知になった文献(Remington’s Pharmaceutical Science,15th Edition,1975 Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania 18042,Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0055】
本発明の薬学組成物の総有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与され得、多重投与量(multiple dose)で長期投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与され得る。本発明の薬学組成物は、疾患の症状程度によって有効成分の含量を異にすることができる。例えば、本発明の薬学組成物の1日投与量は、0.0001~100mg/kgであってよい。しかし、前記本発明の薬学組成物の容量は、投与経路及び治療回数だけではなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌及び排泄率等、多様な要因を考慮して患者に対する有効投与量を考慮し、当分野における通常の知識を有する者が適切な有効投与量を決定できるだろう。本発明に係る薬学組成物は、本発明の効果を示す限り、その剤形、投与経路及び投与方法に特に制限されない。
【0056】
また、本発明の薬学組成物は、個別治療剤で投与されるか、他の治療剤と併用して投与され得る。他の治療剤と併用して投与される場合、本発明の組成物と他の治療剤は、同時に、個別的にまたは順次に投与され得る。前記他の治療剤は、新生血管関連疾患の治療または改善効果を有するものと既に知られている物質であってよく、放射線治療等、薬物療法以外のその他の抗がん療法をいずれも含む。
【0057】
本発明の薬学組成物が他の治療剤と併用して投与される場合、本発明の組成物に含有される抗-C-KIT抗体と他の治療剤は、それぞれ別途の容器に分離させて剤形化されるか、同じ容器で共に剤形化され得る。
【0058】
本発明のまた他の一様態によれば、本発明は、抗-C-KIT抗体またはその抗体断片を含む血管新生関連疾患診断用キットを提供する。
【0059】
本明細書において使用される用語「生物学的試料」は、組織、細胞、血液、血清、血漿、組織剖検試料(脳、皮膚、リンパ節、脊髄)等を含むが、これに限定されるものではない。
【0060】
本発明の抗体を生物学的試料と反応させて血管新生関連疾患の発病有無または発病可能性を診断することができる。具体的に、抗-C-KIT抗体またはその機能的断片と生物学的試料を接触させて抗原-抗体複合体の形成有無を確認することで診断することができる。本発明の診断キットは抗体を含むため、多様な免疫分析(Immunoassay)または免疫染色(Immunostaining)に適するように作製され得る。前記免疫分析または免疫染色は、酵素免疫分析法(ELISA)、免疫蛍光(Immunofluorescence)、ウェスタンブロッティング(Western Blotting)、免疫組織化学染色(Immunohistochemistry staining)、フローサイトメトリー(Flow cytometry)、免疫細胞化学法、放射能免疫分析法(RIA)、免疫沈殿分析法(Immunoprecipitation Assay)、放射能免疫分析法(RIA)及びプロテインチップ(Protein Chip)等を含むが、これに限定されるものではない。
【0061】
抗原-抗体複合体の形成有無を定性的または定量的に測定するためのラベルには、酵素、蛍光物、リガンド、発光物、微小粒子(microparticle)、レドックス分子及び放射線同位元素等があるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0062】
本発明に係る新規抗-C-KIT抗体またはその抗体断片は、C-KITの特定ドメインIIに特異的に結合し、強い親和度を有する。これによって、本発明に係る抗体またはその抗体断片は、非正常的または過度な新生血管の生成を有意的に抑制させる効果が非常に優れ、血管新生関連疾患を効果的に予防または治療することができる。それだけではなく、本発明に係る抗体またはその抗体断片は、ヒトの他にもマウスとラットに対して交差反応性があるので、血管新生関連疾患の研究に効果的に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】HUVEC細胞をSCFで処理したとき、計15種の抗-C-KIT単一クローン抗体のチューブ形成抑制効果を非-処理対照群に対比して相対的な水準で示したグラフである。
【
図2】HUVEC細胞をSCFで処理したとき、2G4抗体の濃度別のチューブ形成抑制効果を非-処理対照群に対比して相対的な水準で示したグラフである。
【
図3】マウス由来内皮細胞MS-1をSCFで処理したとき、2G4抗体の濃度別のチューブ形成抑制効果を示したグラフである。
【
図4】2G4抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域バンドを示す。
【
図5】2G4抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域バンドを示す。
【
図6】2G4抗体の軽鎖可変領域の塩基配列、アミノ酸配列及びCDR領域を示す。
【
図7】2G4抗体の重鎖可変領域の塩基配列、アミノ酸配列及びCDR領域を示す。
【
図8】クローニング、分離及び精製を通して収得された2G4抗体のSDS-PAGE分析結果を示す。
【
図9】2G4抗体のC-KIT親和度を確認するためのSPR分析結果を示すグラフである。
【
図10】2G4抗体のC-KIT結合ドメインを確認するための実験結果を示す。
【
図11】マウス酸素誘導網膜症モデルを利用して2G4抗体と市販中であるEyleaの非正常的血管形成抑制能を比較した結果を示す。
【
図12】ブラウンノルウェーラット黄斑変性モデルを利用して2G4抗体と市販中であるEyleaの非正常的血管形成抑制能を比較した結果を示す。
【
図13】HUVEC細胞株でSCFによるAKTリン酸化に対して2G4抗体の抑制能を示す。
【
図14】TF-1細胞株でAKTリン酸化、C-KITリン酸化、ERK 1/2リン酸化及びβ-カテニンに対して2G4抗体の抑制能を示し、これを通して白血病細胞増殖抑制を示す。
【
図15】2G4抗体によるHUVECとTF-1細胞増殖抑制能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものではない。本明細書において特に定義されていない用語に対しては、本発明の属する技術の分野において通常使用される意味を有するものと理解されるべきである。
【0065】
実施例1.C-KIT抗体生成細胞株の作製
1-1.免疫化されたマウスの作製
Elabscience社から購買した組換えC-KITタンパク質(cat# PKSH030939)50μg(マウス1匹基準)を同じ体積の完全フロイントアジュバント(Freund’s Adjuvant)(sigma,USA)と混合してエマルジョンを製造した。このように製造されたエマルジョンを7週齢の雌human CD34+細胞注射で作製されたヒト化NSGマウス6匹の腹腔内に注入した。抗原50μgを総体積500μlでそれぞれのマウスに注入した。1週間及び2週間経過後、それぞれ不完全フロイントアジュバント(Sigma,USA)と抗原を混合したエマルジョンをマウスの腹腔内にさらに注入した。
【0066】
1-2.抗体生成の確認
前記方法を通して免疫化されたマウスの眼球から血液を採取し、1.5ml微細遠心分離チューブに入れた後、13,000rpmで10分間遠心分離した。血清を分離し、抗体生成を確認する実験を実施するまで-20℃で保管した。抗原タンパク質を用いた酵素免疫測定法を実施して抗体生成を確認した後、細胞融合3日前に不完全フロイントアジュバント(Sigma,USA)と抗原を混合したエマルジョンをもう一度マウスの腹腔内に注入した。
【0067】
1-3.ハイブリドーマの製造
抗体生成を確認した後、マウスを犠牲にさせた。脾臓細胞を分離して骨髄腫細胞P3X63Ag 8.653(ATCC CRL-1580)と融合させてハイブリドーマを製造した。
【0068】
具体的に、10%ウシ胎児血清を補充したRPMI1640培地を使用して培養プレート内でマウスのP3X63Ag 8.653細胞を培養した。細胞融合を実施するために、P3X63Ag 8.653細胞を無血清RPMI1640培地(Hyclone,USA)で2回洗滌し、1×107細胞濃度となるように調整した。マウスを頚椎脱臼により犠牲にさせて脾臓を採取した後、メッシュ容器(Sigma,USA)に入れて細胞を分離した。脾臓細胞の懸濁液を製造した後、遠心分離を利用して懸濁液を洗滌した。脾臓細胞溶液をTris-NH4Cl(TRIS 20.6g/L、NH4Cl 8.3g/L)に露出させて赤血球細胞を溶解した。完全に分離された抗体-生成細胞を400×gで5分間遠心分離した。その後、無血清培地で2回洗滌し、10ml培地で再懸濁させた。リンパ細胞を血球計を利用して計数し、リンパ球1×108を無血清培地内でP3X63Ag 8.653細胞1×10(10:1)と混合した。
【0069】
400×gで5分間遠心分離した後、37℃で温められた50%(M/V)ポリエチレングリコール1500(sigma,USA)を使用して1ml溶液を滴下して1分間混合した。このように製造された融合混合溶液を無血清RPMI1640で希釈し、400×gで3分間遠心分離した。細胞を20%ウシ胎児血清及びHAT(100μMヒポキサンチン、0.4μMアミノプテリン、16μMチミジン)を補充したRPMI1640選択培地35mlで懸濁した。懸濁液100μlを1日前にフィーダー細胞(RPMI1640を使用した腹腔から分離された大食細胞)をコーティングした96-ウェルプレートにローディングし、37℃、5%CO2で培養した。5日後、HAT培地は2~3日おきに取り替え、細胞を14日間培養した。14日後、20%ウシ胎児血清及びHT(HATから0.4μMアミノプテリンを除去した培地)を補充したRPMI1640培地に取り替えて2次培養した。
【0070】
1-4.抗体生成融合細胞の選択及び分離
先に製造した融合された細胞培養液の上層液を収集し、酵素免疫測定法を実施して、前記製造された抗原に対して特異的な抗体生成有無を確認した。陰性対照群に比して4倍以上の適正濃度を示した融合細胞の培養液を選択し、24-ウェルプレートに移して培養した。さらに96-ウェルプレートに1ウェル当たり1個の細胞が入るように希釈して(limiting dilution)培養した後、培養液を回収して、96-ウェルプレートに抗原として使用したC-KITタンパク質を1ウェル当たり0.1μgでコーティングした。その後、酵素免疫測定法を実施して最終的に15個の単クローン抗体(1C6、1H2、1A6、AFA、2B3、2G4、4G5、4C4、4C7、4D7、1E1、2H6、1G3、1A3、1D3)を生産する融合細胞を選択した。
【0071】
実施例2.C-KIT抗体の選別
2-1.HUVECを用いたチューブ(Tube)形成分析
マトリゲル(Matriegel)(Corning,USA)300μlを24-ウェルプレートに分注した後、HUVEC(Human Umbilical Vein Endothelial Cells)をSCF(50ng/ml)またはSCF(50ng/ml)+抗-C-KIT抗体(1μg/ml)をマトリゲルに分注した。以後、HUVECのチューブ形成を観察し、その結果を
図1に示した。
【0072】
図1において、HUVECを用いたチューブ形成分析(in vitro angiogenesis)の結果によれば、SCFにより誘導されるHUVECチューブ形成を抑制する効果は、15個の抗体のうち2G4が最も強力であるということが確認された。これは、2G4と称される抗-C-KIT抗体が血管新生関連疾患の予防または治療に効果的に使用され得るということを示唆する。
【0073】
2-2.2G4抗体の濃度別処理による血管新生抑制効能
マトリゲル(Corning,USA)300μlを24-ウェルプレートに分注した後、HUVECをSCF(50ng/ml)、SCF(50ng/ml)+2G4抗体(0.1μg/ml)またはSCF(50ng/ml)+2G4抗体(1μg/ml)をマトリゲルに分注した。以後、HUVECのチューブ形成を観察し、その結果を
図2に示した。
【0074】
図2において、HUVECを用いたチューブ形成分析の結果によれば、2G4抗体は、濃度依存的にHUVECチューブ形成を抑制するということが確認された。特に、2G4抗体は、濃度0.1μg/mlでも血管新生抑制能に優れていた。
【0075】
2-3.マウスに対する交差反応試験
2G4抗体のマウスに対する交差反応力をテストするために、マウス由来内皮細胞MS-1を利用して実施例2-2の方法と同様に遂行した。
【0076】
その結果、
図3に示したように、マウス由来内皮細胞MS-1で2G4抗体がマウス内皮細胞の血管新生抑制能が有意的に現れるということが確認された。
【0077】
実施例3.抗-C-KIT抗体IgG可変領域の塩基配列分析
実施例1及び実施例2から収得した融合細胞2G4クローン5×105から全体RNAを分離した。ランダムプライマー(Random primer)(bioneer,Korea)と逆転写酵素を利用してcDNAを合成した。
【0078】
PROGEN社のヒトIgGライブラリープライマーセット(human IgG library primer set)を利用して前記cDNAからカッパ軽鎖ドメインを増幅させた。増幅させた核酸は、アガロースゲル電気泳動で確認し、その結果を
図4に示した。重鎖ドメインに対しても同様にPROGEN社のヒトIgGライブラリープライマーセット(human IgG library primer set)を利用して増幅させ、その結果を
図5に示した。
【0079】
図4及び
図5に示したように、カッパ軽鎖ドメイン(414 bp)と重鎖ドメイン(483 bp)との間でバンドが見出され、予想された大きさのPCR産物が生成されることを確認した。
【0080】
以後、前記PCR産物をアガロースゲルに展開してバンドを切断し、アガロースゲルを60℃で溶かした後、スピンカラム(Qiagen社)を利用して核酸を精製した。このように精製された核酸をTOPO-TAベクターにクローニングして、大腸菌DH5αに形質転換(transformation)させてコロニーを収得した後、コロニーを培養してプラスミドを抽出した。以後、再びPCRを遂行して4個のプラスミドを収得した後、2G4抗体の塩基配列を分析した。
【0081】
図6は、2G4抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列及び塩基配列を示し、これはそれぞれ本明細書に添付の配列目録で配列番号7のアミノ酸配列及び配列番号15の塩基配列に相応する。また、
図6において、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3は、赤色で順に表示されており、これはそれぞれ本明細書に添付の配列目録で配列番号1乃至3のアミノ酸配列及び配列番号9乃至11の塩基配列に相応する。
【0082】
図7は、2G4抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列及び塩基配列を示し、これはそれぞれ本明細書に添付の配列目録で配列番号8のアミノ酸配列及び配列番号16の塩基配列に相応する。また、
図7において、重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3は、赤色で順に表示されており、これはそれぞれ本明細書に添付の配列目録で配列番号4乃至6のアミノ酸配列及び配列番号12乃至14の塩基配列に相応する。
【0083】
実施例4.抗-C-KIT抗体の製造
4-1.完全ヒト化抗体クローニング
実施例3で収得した2G4抗体の可変領域をヒトFcアミノ酸配列にグラフティングし、pCHOベクター(lifetechnology社)内にクローニングした。
【0084】
軽鎖可変領域は、ヒトカッパ不変領域に対するフレーム内に融合させ、重鎖可変領域は、ヒトIgG1不変領域に対するフレーム内に融合させた。全長IgG1抗体の培地内分泌のためのリーダーペプチド配列を二つの遺伝子に添加して遺伝子を合成した後、配列分析を通してもう一度検証した。CHO細胞内発現試験のために3個のクローンを選択した。3個のクローンに対するグリセロールストックを製造し、エンドトキシンのないプラスミドをCHO細胞内発現試験のために製造した。
【0085】
4-2.抗体の分離精製
前記で収得したプラスミドDNAをCHO-S細胞内に形質感染させた。形質感染の1週間前にCHO-S細胞(Invitrogen,10743-029)をDMEM補充血清内の単層培養物内に移した。そして、形質感染の1日前に細胞を分注した後、形質感染試料に対して核酸-リポフェクタミン複合体を準備して一夜インキュベーターで5%CO2、37℃で細胞をインキュベーションした。培地を2-3日に一回ずつ添加しながら1週間の間培養した。その後、培養液を回収してプロテインA/Gアガロース(Protein A/G agarose)(invitrogen社)に結合させ、PBSで洗滌した。次いで、0.1Mグリシン(pH2.8)で溶出した後、1M Tris-HCl(pH8.0)で中和させた。PBSで透析(dialysis)した後、-70℃で保管した。
【0086】
これによって分離精製された2G4抗体を6%SDS-PAGEに非還元(Non-reducing)及び還元(Reducing)の条件でラン(running)して抗体の純度及び大きさを確認した。その結果は、
図8に示した。
図8に示したように、SDS-PAGEの結果、50kDaの重鎖と25kDaの軽鎖バンドが観察され、これを通して抗体が正確に生産されたことを確認した。
【0087】
実施例5.2G4抗体の親和度
2G4抗体のC-KIT結合能を確認するためにSPR(表面プラズモン共鳴:Surface Plasmon Resonance)を遂行した。SR7500DC(Reichert,USA)を利用して、抗体の作製のために使用されたヒトC-KIT(elabscience,PKSH030939)20μg、マウスC-KIT(SB,Lot#LC05DE2304)20μg、ラットC-KIT(SB,Lot#LC06SE1787)20μgをPEG(Reichert,USA)chipに固定させた。その後、2G4抗体を濃度別に流した後、C-KITに対する親和度であるKD値をScrubber2プログラムを利用して分析した。KD値は、kdをkaで除した値であり、数値が低いほど該当ターゲットに対する結合能が大きいということを意味する。
【0088】
その結果は、
図9に示した。2G4抗体は、ヒトC-KITに対するK
D値が約2.8237(±0.9)×10
-12Mであって、強い親和度を示した。ヒトに対する親和力が最も高く、次はマウス、ラットの順に現れた。
【0089】
実施例6.ドメインマッピング
ヒトC-KIT遺伝子(NM_000222)の欠失変異体(Q26-P520、D113-P520 △domain I、A207-P520 △domain I-II、K310-P520 △domain I-III)をc-末端にFLAGをタギングしてHEK293に形質感染させた。その後、培養液で分泌させた後、FLAG抗体ビーズ(Sigma-Aldrich)を利用して精製した。次いで、ELISAを実施した。
【0090】
図10に示したように、2G4抗体は、ドメインIIが欠失されたとき、C-KITを認識できておらず、これより2G4抗体のC-KITに対する具体的な結合部位は、ドメインIIであるという点が立証された。
【0091】
比較例1.マウスモデルを用いたin vivo効能比較
増殖糖尿網膜症及び未熟網膜症疾患の動物モデルとして広く利用されるマウス酸素誘導網膜症(Mouse oxygen-induced retinopathy)(OIR)モデルを使用した。C57BL/6マウスを生後7日から5日間75%の高酸素環境に露出させると非正常的血管が形成される。
【0092】
具体的に、C57BL/6マウスを生後0日から7日までは21%の酸素環境に露出させ、生後7日から12日までは75%の高酸素環境に露出させた。生後12日目に2G4抗体(2μg/眼(eye))とEylea(2μg/眼(eye))をそれぞれ右側眼球の硝子体内注射し、左側眼球はPBSを注射して対照群として比較した。そして、生後12日から17日までまた21%の酸素環境に露出させ、生後17日目に犠牲にさせた。
【0093】
その結果、
図11に示したように、2G4抗体とEylea(2μg/眼(eye))を注射した右側眼球で非正常的血管形成抑制が観察され、その程度は、同等な水準と確認された。
【0094】
比較例2.ラットモデルを用いたin vivo効能比較
ブラウンノルウェーラット(brown Norway rat)を利用して黄斑変性モデルを構築した。
【0095】
具体的に、レーザを利用してラットの眼球にCNV(脈絡膜血管新生:choroidal neovascularization)を誘発させた。これと同時に2G4抗体(6.28μg/眼(eye))とEylea(10μg/眼(eye))をそれぞれ4μl/眼(eye)の投与量で眼球の硝子体内注射した。IgG抗体(10μg/眼(eye))を4μl/眼(eye)の投与量で注射したグループを対照群として使用した。
【0096】
14日後、BS-1レクチンを利用して分析した結果を
図12に示した。黄斑変性による非正常的血管形成がEylea群と2G4抗体群で全て有意的に抑制された。特に、2G4抗体は、Eyleaに比して投与濃度がさらに少ないにもかかわらず同等な水準の効能を示したということは、2G4抗体がEyleaに比して有効性にさらに優れるということを示す。
【0097】
実施例7.2G4抗体によるSCF/C-KITシグナリング抑制能
SCF/C-KITシグナリングは、基本的にAKTのリン酸化を誘導するものと知られている。
図13から確認できるように、HUVECにSCFを処理したとき、AKTのリン酸化が増加するということが確認された。これに対して、2G4抗体によってAKTリン酸化が減少することが確認された。
【0098】
それだけではなく、白血病細胞株TF-1でもSCFによるAKTリン酸化が2G4抗体により抑制されることを
図14から確認することができる。さらに、SCFによるC-KITのリン酸化、及びERK1/2のリン酸化もまた抑制されることを
図14から確認することができる。
【0099】
β-カテニン(catenin)は、AKTダウンストリームシグナルであって細胞増殖に重要な因子と知られている。2G4抗体は、SCFによるβ-カテニンの増加を濃度依存的に抑制することを
図14から確認することができ、これは、2G4抗体が白血病細胞株TF-1の増殖を有意的に阻害するということを意味する。白血病は、C-KIT突然変異が多くて抗がん剤抵抗性または耐性を示す場合が多数見出されるが、本発明に係る抗体は、白血病に対しても予防または治療効果を示すことができるので、従来の抗がん剤の限界点を克服することができる。
【0100】
実施例8.2G4抗体によるHUVECとTF-1細胞増殖抑制能
TF-1とHUVECに対して2G4抗体を濃度別(0、0.1、1、5、10μg/ml)に30分間前処理した。その後、50ng/mlのSCFを処理し、36時間後に細胞数を測定して細胞増殖率を比較した。
【0101】
図15に示したように、SCFを処理した群は、陰性対照群に対比してTF-1細胞数が約26%増加し、HUVEC細胞数が約70%増加した。これに対して、2G4抗体を処理した群では、SCFによる細胞増殖がTF-1とHUVECで全て濃度依存的に抑制された。これは、2G4抗体がHUVECとTF-1細胞増殖抑制能に非常に優れるという点を意味する。
【配列表】
【国際調査報告】