(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】プラズマ化学ガス/ガス混合物変換のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20220112BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B01J19/08 E
H05H1/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545348
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-04-12
(86)【国際出願番号】 RU2019000696
(87)【国際公開番号】W WO2020076186
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521155117
【氏名又は名称】ミスラフスキー,ボリス ヴラドレノヴィッチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ミスラフスキー,ボリス ヴラドレノヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】イリエフ,ロマン ラジロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】マリン,ミハイル ユーリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ゴレリク,エフゲニー パブロビッチ
【テーマコード(参考)】
2G084
4G075
【Fターム(参考)】
2G084AA26
2G084CC03
2G084CC11
2G084DD01
2G084EE05
4G075AA03
4G075BA01
4G075CA16
4G075CA48
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB41
4G075EC21
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB06
(57)【要約】
本開示は化学の分野に関し、具体的には、ガスまたはガス混合物のパルス電気放電を使用するプラズマ-化学変換のための方法を提案する。本開示の技術的効果は、正反応を誘導し、逆反応を最小限に抑えることによって、ガス/ガス混合物を所望の生成物に変換するプロセスの効率を高めることである。これは、ガス/ガス混合物の移動流において電極間に形成される高温プラズマチャネルの形態のパルス電気放電を用いてガス/ガス混合物を変換することによって達成される。平均放電電流に対する流速の比率は、以下の範囲内である:
250J/(m3*А2)<ρ*V2/I2<4,000J/(m3 *А2)、ρは反応チャンバ内のガス/ガス混合物の密度(kg/m3)であり、Vは反応チャンバ内のガス/ガス混合物の流速(m/s)であり、Iはパルス電気放電の平均電流(A)である。
ガス/ガス混合物変換の方法およびその方法を実行するための装置が提案される。2つの独立請求項、9つの従属請求項、3つの図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電チャンバと、電極と、入力および出力モジュールとを備えた反応器にガス/ガス混合物流を向けて流し、前記ガス/ガス混合物流は反応チャンバを通って所定の速度で移動すること;
前記反応チャンバ内で、電極を接続する高温プラズマチャネルを生成するパルス電気放電を発生させること;を含み、
平均放電電流に対する反応チャンバ内のガス/ガス混合物流の速度の比率は以下の範囲内であり:
250J/(m
3*А
2)<ρ*V
2/I
2<4,000J/(m
3*А
2)、
ここで、ρは反応チャンバ内のガス/ガス混合物の密度(kg/m3)であり、Vは反応チャンバ内のガス/ガス混合物の流速(m/s)であり、Iはパルス電気放電の平均電流(A)である、
ガス/ガス混合物のプラズマ-化学変換の方法。
【請求項2】
前記高温プラズマチャネルの持続時間が(10~500)nsであり、
前記チャネルが(20~300)kHzの周波数で発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応チャンバを通って流れる前記ガス/ガス混合物の流れが渦である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応チャンバ内に逆渦が形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
反応チャンバと、電極と、入力および出力モジュールと、ガス流制御器と、前記電極に接続された高電圧電源ユニットと、からなる反応器を備え、
前記高電圧電源ユニットは、前記電極を接続する高温プラズマチャネルの形態で、前記反応チャンバでパルス電気放電を発生させる、
ガス/ガス混合物のプラズマ-化学変換のための装置。
【請求項6】
前記高温プラズマチャネルは、(20~300)kHzの周波数で発生する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記電極は、アノードおよびカソードの高電圧入力を介してそれらに接続された高電圧電源ユニットを有する、前記アノードおよび前記カソード、または複数の前記アノード-前記カソード対であり、
前記電極のそれぞれは複数の前記高電圧入力を有してもよい、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記電極は、平坦な底部を有する円筒、鋭い縁部を有する一端を有する円筒、一端から突き出る棒もしくは針を有する円筒、ならびに/または鋭い端部および放射状の孔を有する円錐として設計されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記入力モジュールは前記反応チャンバを通る前記ガス/ガス混合物の向けられた流れを、例えば、渦巻く流れの形態に、生成する請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記ガス/ガス混合物の試薬を再循環および再使用するための伝熱式熱交換器およびガス分離ユニットをさらに備える、請求項5に記載の装置。
【請求項11】
再循環送風器をさらに備える、請求項5に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は化学の分野に関し、具体的には、ガスまたはガス混合物のパルス電気放電を使用するプラズマ化学変換のための方法を提案する。石油化学産業において天然ガスまたは関連する石油ガスを処理するために使用することができ、二酸化炭素を結合および処理するための環境に優しい技術、ならびに他の種類の石油化学プロセスにおいて使用することができる。
【背景技術】
【0002】
プラズマは、例えば、合成ガスの生産、CO2およびH2Sの変換などにおいて、高い活性化エネルギーを有する化学反応を促進するための非常に強力なツールと見なすことができる。周知のプラズマベースの技術があり、それらはDBDおよびパルスコロナ放電、電気アーク、またはマイクロ波放電を利用して、高温または非平衡プラズマによって誘導されるプラズマ-化学反応を生じさせる。非平衡プラズマという名称は、ガス分子が比較的低温のまま(それらの温度は上昇しない)であっても、電子は分子を解離およびイオン化するのに十分であるエネルギー以上の非常に高いエネルギーを有するという事実に起因する。
【0003】
プラズマ-化学反応を生じさせるためのプラズマパラメータの最適化は、所望の生成物の収率を最大にしながら、エネルギーコストを最小にすることである。正化学反応を誘導するために、プラズマは試薬の分子を解離または励起して、ラジカルまたは他の活性粒子を生成する。ラジカルまたは他の活性粒子は、互いに反応して所望の生成物を得ることができる。
【0004】
このような反応を生成するには2つの方法がある。
【0005】
1つは、源となる分子を十分なエネルギーを有する電子と直接的に衝突させる手段によって解離させることによる。この場合、プラズマの重要な特徴は電界の電圧であり、もっと厳密にいえば、ガスの濃度に対する電界電圧の比率である。このガスの濃度に対する電界電圧の比率は、電界中のガス分子との2つの衝突の間の電子によって獲得されるエネルギーが、ラジカルまたは活性粒子を形成する所望のプロセスに十分であるかどうかを決定する。
【0006】
この方法は、誘電体バリア放電(DBD)のような、すべてのタイプの非平衡プラズマの典型的なものであり、バーストモードの論文DBDに記載されている断続的バリア放電を含む:より効率的なCO2変換のための解決策?А.Oskan et al(Plasma Sources Science and Technology,IOP Publishing,2016,25 (5),p.055005を参照),https://hal.sorbonne-universite.fr/hal-01367345にて公開。
【0007】
同じことが、ナノ秒パルス放電にも適用される。ナノ秒パルス電気放電は、例えば、Nanosecond-Pulsed Discharge Plasma Splitting of Carbon Dioxide,Moon Soo Bak et al,(IEEE TRANSACTIONS ON PLASMA SCIENCE,VOL.43,NO.4,APRIL 2015,pp.1002-1007を参照)の論文に記載されている。
【0008】
両方の研究は本開示の先行技術と見なすことができ、非常に低い変換プロセス効率という1つの主要な欠点を有する。
【0009】
非平衡プラズマの1つの主要な問題は、電子のすべてのタイプのエネルギー損失(エラストック衝突、分子の振動励起などを含む)である。エネルギー損失は、不可逆的なガスの加熱につながり、最も重要なのは、この場合には役に立たないことである。残念ながら、これらのタイプの損失は、通常、反応の分子解離エネルギーおよび熱(エンタルピー)よりもはるかに大きい。この理由から、非平衡プラズマのエネルギー効率(反応エンタルピーおよびエネルギーコストの速度)は、通常、非常に低く、約10%~20%である。
【0010】
代替の方法は、反応チャンバ内のガス分子を、それらが反応の活性化障壁を突破するのに十分である温度まで加熱することである。この場合、加熱は有用なプロセスであり、また、より多くの熱発生をもたらすいかなるプロセスも損失ではない。
【0011】
しかしながら、反応チャンバを加熱する場合には別の問題がある:全ての分子は加熱され、エネルギーは実施者が必要とする試薬の加熱および解離だけでなく、反応の最終生成物の加熱および解離にも費やされる。この場合、主な問題は逆反応である。逆反応は、プロセスの変換率およびエネルギー効率を低下させる。
【0012】
解決策は、反応生成物をできるだけ早く高温領域から除去することである。逆反応を抑制するこの方法により、所望の生成物の収率およびプラズマ-化学プロセスのエネルギー効率を実質的に増加させることができる。このアプローチは、プラズマ-化学反応の生成物のクエンチングと呼ばれることもある。
【0013】
2011年1月11日に公開された特許US 7867457 B2に記載されているように、プラズマ-化学反応を行う技術が知られている。この技術は逆旋回として構築されたガスの流れを通って移動するグライディングアークを使用する特殊なプラズマ-化学反応器を備える。これは、生成物を、プラズマチャネルを通って移動させることにより、生成物のクエンチングの問題を部分的に解決する。しかしながら、この解決法はまた、ガスに対するプラズマチャネルの速度(滑り速度)が約1メートル毎秒で比較的低いという事実に由来するいくつかの大きな欠点を有している。したがって、少なくともいくつかの反応生成物は、二次処理を受けることがある。二次処理は逆反応の重大な寄与をもたらし、プロセスの変換率およびエネルギー効率を低下させる。
【0014】
反応生成物の高温ゾーンでの最適なガス変換条件を確実にしつつ、有効なクエンチングを確実にすることにより、変換プロセスのエネルギー効率と同様に最大の変換を達成することが可能になる。
【発明の概要】
【0015】
本開示の技術的効果は、正反応を誘導し、逆反応を最小限に抑えることによって、ガス/ガス混合物を所望の生成物に変換するプロセスの効率を高めることである。
【0016】
この効果を達成するために、プラズマ-化学ガス/ガス混合物変換プロセスの新しい方法を使用することが提案される。この新たなプロセスは、所定の速度で反応チャンバ内を移動するガス/ガス混合物の流れにパルス電気放電を生成することを含む。このプロセスは、反応チャンバ内部に位置する電極を接続する短寿命のプラズマチャネルを生成する。
【0017】
提案した方法は、高温プラズマチャネルで発生する反応生成物のクエンチングの問題を解決する。反応チャンバ内で所定の速度で移動するガス/ガス混合物の流れは、変換のための試薬の新しい部分を供給する一方で、形成されたばかりのプラズマチャネルを迅速に消滅させるのを促進し、それによってその持続時間を制限する。最適なプラズマ-化学変換プロセスは、反応チャンバ内のガス/ガス混合物の流速と放電中の平均電流との比率が下記の通りである場合に達成される:
250J/(m3*А2)<ρ*V2/I2<4,000J/(m3*А2)
ここで、ρは反応チャンバ内のガス/ガス混合物の密度(kg/m3)であり、Vは反応チャンバ内のガス/ガス混合物の流速(m/s)であり、Iは前記放電の平均電流(A)である。
【0018】
この方法は、反応チャンバと入力/出力モジュールとからなる反応器、反応チャンバ部内の電極に接続された高電圧電源ユニット、およびガス流速制御器を備えるガス/ガス混合物のプラズマ-化学変換のための特殊な装置を作ることにより実行される。高電圧電源ユニットは(10~500)ns持続し、(20~300)kHzの周波数を有する高温プラズマチャネルの形態で、電極間にパルス電気放電を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、提案されたガス/ガス混合物プラズマ-化学変換装置の図を示す。
【
図2】
図2は、ガス/ガス混合物の反復処理を伴うガス/ガス混合物プラズマ-化学変換装置を示す。
【
図3】パルス電気放電を生成するための高電圧電源ユニットの電気回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ガスまたはガス混合物の所望の生成物へのプラズマ変換は、初期試薬の分子の解離または励起を含む。初期試薬の分子の解離または励起は外部作用なしには化学反応に入らず、反応生成物に対して影響することを防ぎ、逆反応を回避するために形成される。例えば、アセチレンが天然ガス(メタン)から製造される場合、アセチレン分子ではなく、メタン分子がプラズマ処理される必要がある。そして、COおよび水素が、CO2およびメタンの混合物から生成される場合、COおよびH2反応生成物ではなく、CO2およびCH4初期試薬が処理に供される必要がある。
【0021】
提案したガス変換プロセスの背景にあるアイデアは、電極を接続する高温プラズマチャネルの形態でパルス電気放電中にガス領域を生成することである。チャネル内部の温度はセ氏数千度に達する。高温は、プラズマチャネル内のガス中の分子の解離または励起を引き起こす。プラズマチャネルの消失後、ラジカルまたは励起されたガス粒子が関与する必要な化学反応が起こり、その結果、所望の成分が生成される。環境の温度が(100~150)℃より低いため、所望の成分は、その後も安定したままである。
【0022】
その連続使用を仮定したこのガス変換プロセスの効率は、生成されるパルス電気放電の形態に直接依存する。最大効率は、パルス電気放電の形態が断続的に出現と再出現する高温プラズマチャネルである場合に達成される。断続的なプラズマチャネルの形態の放電は、処理のための最適な放電の形態である。
【0023】
所定の速度で移動するガス流中で最適放電形態を発生させるためのパラメータは、静止ガス中で同じタイプの放電を生成するためのパラメータとは異なっている。実験の過程で、ガス流の速度とパルス電気放電の平均電流との間に相関があることを確立した。パルス電気放電は、所定のガス組成において最適放電形態を作り出すために必要である。最適放電形態を維持するために必要な放電の平均電流に対するガス流の速度の比率について、以下の値の範囲を決定した:
250J/(m3*А2)<ρ*V2/I2<4,000J/(m3*А2) ここで、ρは反応チャンバ内のガス/ガス混合物の密度(kg/m3)であり、Vは反応チャンバ内のガス/ガス混合物の流速(m/s)であり、Iは放電の平均電流(A)である。
【0024】
上記の式で使用されるガス/ガス混合物流の速度Vは、単位時間当たりに反応チャンバに入るガス/ガス混合物の体積の反応チャンバの作業ゾーンの断面に対する比率として計算される。この速度は、ドップラー効果の手段によって直接的に測定することができる。
【0025】
移動するガス流中で断続的パルス電気放電を使用することにより、同時にいくつかの問題を解決することが可能になる:
1)変換に必要な試薬の新しい部分が常に供給されており、より少ない時間でより多くの試薬を処理することを可能にする。
【0026】
2)反応の最終生成物は、反応器の活性ゾーンから迅速に除去され、したがって、逆反応の可能性を最小限に抑え、変換プロセスの効率を高める。
【0027】
3)高温プラズマチャネルはガス流と共に吹き飛ばされ、その結果、より良好なその消滅を促進し、その持続時間を制御する。
【0028】
プラズマチャネルの持続時間はガス変換の効率に影響する。短すぎると、チャネル内の解離は全てのガス分子に起こるわけではない。従って、反応に関与し得る粒子の数が減少し、それによって、所望の生成物を発生させる正反応の数も減少する。プラズマチャネルが長く持続しすぎると、高い温度は、試薬だけでなく所望の生成物の得られた分子に対して、それらを解離させ逆反応をもたらすという影響を与える。
【0029】
プラズマチャネルが十分に高い温度を有するための、および、これゆえに10,000オーム未満のチャネルの電気抵抗を確実にする十分に高い程度の分子イオン化を得るための、最適な持続時間は(10~500)nsである。プラズマチャネルの持続時間が10ns未満であると、正反応のエネルギー効率が低下する。また、500nsを超えると、逆反応の影響が大きくなり、クエンチングの効果が低下する。
【0030】
また、実験により、(20~300)kHzという、プラズマ‐化学変換を行うためのプラズマチャネルの最適周波数を決定することができた。低い周波数では反応器の生産性は低下し、高い周波数では、放電の最適な形態を安定化することに関して技術的な困難があった。
【0031】
プラズマ-化学ガス/ガス混合物変換を行う原理を、
図1に示す装置の図を用いて以下に説明する。
【0032】
プラズマ-化学ガス/ガス混合物変換装置は、反応チャンバ2ならびに入力モジュール3および出力モジュール4からなる反応器1と、反応チャンバ2の内部に配置された電極6および7に接続された高電圧電源ユニット5と、を備える。
【0033】
反応チャンバ2は、セラミック又は石英ガラスのような耐熱性誘電体材料から製造され、通常は円筒のような形状でありうる。
【0034】
電極6および7は、それぞれがそれ自体の電源を有するアノードおよびカソード、または複数のアノードおよびカソードの対からなり、電極はいくつかの形状をとることができる。例えば、それらは、平坦な端部を有する円筒、鋭い縁部を有する一端を有する円筒、一端に棒もしくは針を有する円筒、または鋭い端部および放射状の穴を有する円錐として成形することができる。デザインと形状の任意の組合せが可能である。以下の材料を電極およびそれらの部品に使用することができる:鋼、ステンレス鋼、銅、真鍮、青銅、チタン、タングステン、モリブデン、ハフニウム、ジルコニウム、またはそれらの任意の組み合わせ。
【0035】
電源ユニット5はそれぞれ、アノード8およびカソード9の高電圧端子を介して、電極6および7に接続されている。電極6および7のそれぞれのための高電圧入力8、9の数は変化してもよい;それらの数は、必要なプラズマチャネル持続時間を達成するために、放電回路における必要なインダクタンスに基づいて選択される。
【0036】
初期ガス状試薬またはその流量が1つまたはいくつかのガス流制御器によって設定されるいくつかの初期ガス状試薬が、反応器1に送り込まれる。反応器1において、ガス状試薬は、入力モジュール3の孔を通って反応チャンバ2に向けて流される。反応チャンバ内に入ると、それらは所定の速度で移動し始める。高電圧電源ユニット5はプラズマ-化学変換を達成するために、最適な持続時間および周波数パラメータを有する断続的な高温プラズマチャネルが電極6および7の間に生成されることを確実にする。反応チャンバ2内の試薬の十分な流速および電極6および7の形状は、プラズマチャネルを迅速に消滅させる。プラズマチャネルの消滅は、逆反応の可能性を最小限にする。変換の結果として生成された構成要素は残りの試薬と同様に、出力モジュール4の孔を通ってチャンバ2から放出されて、反応チャンバ内の必要なガス速度を維持するのを助ける。
【0037】
図2は、反応しなかった試薬を再び反応チャンバ2に向けて流すことができるプラズマ-化学変換装置の型を示す。
【0038】
試薬と混合され、生成品が出力モジュール4から放出された後、伝熱式熱交換器10を通過し、そこでガス分離ユニットに適した温度まで冷却される。次いで、混合物はガス分離ユニット11に送り込まれ、そこで生成物は試薬から分離される。その後、残りの試薬は初期試薬の供給チャネルに、そして反応器1に向けて流される。ガス流制御器13から初期試薬が送り込まれる速度が不十分である場合、装置は反応チャンバ2内に必要なガス流量を生成するために、再循環送風器12をさらに設けることもできる。
【0039】
生成物1および2は、例えば、CO2がプロセスで使用される原料である場合、COおよび酸素であり得る。このシステムはまた、単一の生成物、例えばメタンからアセチレンを生成することができる。たとえば、目的がCO2およびメタンの混合物から合成ガス(H2とCOの混合物)を生成することである場合は、生成物を互いに分離する必要はない。
【0040】
ガス分離モジュール11の設計のための1つの選択肢として、2段階システムとすることができる。このシステムは、メタンからのアセチレンの製造に使用されるものと同様である。そして、ガス分離モジュール11はアセチレンを溶媒に溶解するためのユニット、または圧力スイング吸収(PSA)によってアセチレンを抽出するためのユニット、およびメタンの残留物から水素を分離するためのPSAユニットを備える。
【0041】
入力および出力モジュールは、金属、耐熱プラスチック、またはセラミックで製造された部品である。それらの役割は、電極に隣接する領域内において局所化されたガス流を生成することである。このガス流は、ガスが放電チャンバに入り、次いでこれらのモジュールの孔を通って放出するというものである。このプロセスの間に、電極に隣接する領域内に局在した速度場が生成される(これはガス/ガス混合物速度Vとは異なる)。必要な場合は、ガスを電極上に吹き付けることができ、ガスをスパイラル状に移動させることで放電チャンバ内に逆渦を形成させることができる。
【0042】
放電チャンバ内のガスの回転は、プラズマチャネルが放電チャンバの中心に生成される領域を安定化させ、プラズマチャネルが反応器の壁に「固着」するのを防止するために生成される。このプラズマチャネルの反応器の壁への付着は、過熱による反応チャンバの壁の破損につながり得る望ましくない危険な現象である。固着効果は、放電チャンバの壁の不均一な加熱の結果として起こり、したがって、入力および出力モジュールの接線の孔によってチャンバを通るガス渦を向けて流すことを促進して防止することができる。これは、反応器内の温度を均等にする役割を果たし、カソードとアノードとの間の最も近い距離に近い軌道に従うプラズマチャネルの形成を引き起こす。
【0043】
高電圧電源ユニット5は、電極6と7との間にプラズマチャネルの破壊および形成を引き起こすのに十分な電圧を電極上に維持する。チャネルが加熱され、その抵抗が降下した後、放電容量はその電荷を失い、放電ギャップ内の電圧は、ある時点でゼロを通過して同様に降下する。そして回路内のインダクタンスにより負圧となる。この時点で、プラズマチャネル内で発生しているエネルギーはゼロに近い。放電容量が次の破壊に十分な電圧を取得するまでには、しばらく時間がかかる。この時間は、電源ユニット5のパラメータによって決まる。ユニット5は、パルス電気放電の間に必要な休止を確実にする。次のプラズマチャネルは、異なる場所に形成され、反応生成物に影響を及ぼさず、反応生成物が理想的な焼戻し状態に到達することを確実にする。記述した像はパルス周期スパーク放電に類似しているが、この場合、プラズマチャネルの寿命およびそれらの繰り返し周波数は2倍低く、プラズマ-化学変換のための記載された装置における適用に必要な品質を提供する。
【0044】
パルス電気放電を発生させる装置に使用される高電圧電源ユニット5の電気回路図の例については、
図3を参照されたい。
【0045】
高電圧電源ユニットは、周波数変換器14、高電圧高周波変圧器15、倍電圧回路16、および出力パルスコンデンサー17を備える。倍電圧回路16は、高電圧ダイオード18および高電圧キャパシタ19を備える。
【0046】
ダイオード18およびコンデンサー19に基づく高電圧変圧器15および倍電圧回路16は、出力パルスコンデンサー17の充電電流の制限器として動作する。充電電流は、そのユニットに送り込まれる高電圧の周波数または電力周波数変換器14によって生成されるインパルスの周波数を変化させることによって制御することができる。一旦、出力パルスコンデンサーがプラズマ-化学反応器1の電極間ギャップ破壊に十分な電圧まで充電されると、出力パルスコンデンサー17は、プロセスで形成されるプラズマチャネルを通って放電する。コンデンサー17の静電容量は、理想的にはI*100 mkFよりも大きくなければならない。ここで、Iは平均放電電流である。
【0047】
プラズマチャネルが消滅すると、プロセス自体が繰り返される。高い繰返し周波数は、試薬の必要な変換度および反応器の生産性を確実にする。
【0048】
実験では、100pFコンデンサーが倍電圧回路16においてコンデンサー19として使用された。周波数変換器14は、60kHzまたは120kHzの周波数を発生させた。出力パルスコンデンサー16は300pFの容量を有していた。したがって、プラズマチャネルの点火および消滅の安定した体制が得られ、それぞれ周波数は30kHzまたは60kHzであった。プラズマ-化学反応器1内のプラズマチャネルを通る出力パルスコンデンサー16の回路の有効なインダクタンスは、0.5μH、0.125μH、または0.03μHであった。一方、プラズマチャネルの持続時間は、それぞれ、180 ns、80 ns、および30 nsであった。
【0049】
実験中に得られた結果の例を以下に示す。
【0050】
〔例1.〕
大気圧におけるメタンおよび水素の50/50混合物からのアセチレンの製造。密度は0.4kg/m3であった。平均放電電流は0.4Aに設定した。放電チャンバ内の平均ガス流速は11.5m/sであった。従って、平均放電電流に対する流速の比は:
ρ*V2/I2=330.6J/(m3*А2)であり、目標の範囲内に収まった。
【0051】
実験中、上述のような純粋な形態の放電が得られ、アセチレン分子生成のエネルギーコストは1分子当たり8eVであった。
【0052】
〔例2.〕
メタンおよび水素の50/50混合物からのアセチレンの製造。密度は0.38kg/m3であった。平均放電電流は0.4Aに設定した。放電チャンバ内の平均ガス流速は3.5m/sであった。従って、平均放電電流に対する流速の比は:
ρ*V2/I2=29J/(m3*А2)であり、目標の範囲外である。
【0053】
実験中、放電は電極を接続する連続的な絶え間ないプラズマフィラメントの形態をとり、ガス流中の収縮グロー放電であった。アセチレンの分子を製造するためのエネルギーコストは、1分子当たり32eVであった。
【0054】
〔例3.〕
1.5気圧の絶対圧力におけるメタンおよび水素の50/50混合物からのアセチレンの製造。密度は0.57kg/m3であった。平均放電電流は0.4Aに設定した。放電チャンバ内の平均ガス流速は12m/sであった。従って、平均放電電流に対する流速の比は:
ρ*V2/I2=513J/(m3*А2)であり、目標範囲内である。
【0055】
実験中、上述のような最適な放電形態が得られ、アセチレン分子生成のエネルギーコストは1分子当たり10.5eVであった。
【国際調査報告】