(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】熱安定性が向上したPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体及びそのシーケンシングにおける応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/54 20060101AFI20220112BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220112BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20220112BHJP
C12Q 1/6874 20180101ALI20220112BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220112BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220112BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220112BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220112BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20220112BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20220112BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20220112BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
C12N15/63 Z
C12N9/10
C12Q1/6874 Z
C12N1/15
C12N1/21
C12N1/19
C12N5/10
C12N15/31
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6844 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546026
(86)(22)【出願日】2018-10-11
(85)【翻訳文提出日】2021-04-12
(86)【国際出願番号】 CN2018109777
(87)【国際公開番号】W WO2020073266
(87)【国際公開日】2020-04-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521151692
【氏名又は名称】深▲せん▼華大生命科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】張周剛
(72)【発明者】
【氏名】劉歓歓
(72)【発明者】
【氏名】鄭越
(72)【発明者】
【氏名】周玉君
(72)【発明者】
【氏名】夏軍
(72)【発明者】
【氏名】董宇亮
(72)【発明者】
【氏名】徐崇鈞
(72)【発明者】
【氏名】章文蔚
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050CC05
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4B050FF11E
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4B065BA02
4B065BD17
4B065CA29
(57)【要約】
熱安定性が向上したPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体及びそのシーケンシングにおける応用を提供し、前記Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体は、下記A)又はB)である。A)で示されるDNAポリメラーゼ突然変異体は、Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのうちの少なくとも1つのアミノ酸残基を修飾し、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質であり、B)で示されるDNAポリメラーゼ突然変異体は、A)で示されるタンパク質のアミノ酸配列の末端にタグ配列を付加するとともに、DNAポリメラーゼ活性を有するA)から誘導されたタンパク質である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のA)又はB)であるタンパク質。
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのうちの少なくとも1つのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である。
B)で示されるタンパク質は、A)で示されるタンパク質のアミノ酸配列の末端にタグ配列を付加するとともに、DNAポリメラーゼ活性を有するA)から誘導されたタンパク質である。
【請求項2】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのうちの少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は全てのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位及び515位の5つのうちの全てのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項4】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における224位、515位及び474位の3つのうちの全てのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項5】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位及び515位の4つのうちの全てのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項6】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、224位及び515位の4つのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項7】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における224位、474位の2つのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項8】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における217位、224位の2つのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項9】
前記修飾はアミノ酸置換である、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項10】
前記97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのサイトのアミノ酸置換方法は、それぞれ、
97位のメチオニンをアラニン又はヒスチジン又はリジン又はトレオニンに置換し、
123位のロイシンをリジン又はフェニルアラニン又はイソロイシン又はヒスチジンに置換し、
217位のグリシンをグルタミン酸に置換し、
224位のチロシンをリジンに置換し、
474位のイソロイシンをリジンに置換し、
515位のグルタミン酸をプロリン又はグリシンに置換することである、
ことを特徴とする請求項9に記載のタンパク質。
【請求項11】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位のアミノ酸残基をMからKに突然変異させ、123位をLからHに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させ、224位をYからKに突然変異させ、217位をGからEに突然変異させ、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項10に記載のタンパク質。
【請求項12】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における224位のアミノ酸残基をYからKに突然変異させ、474位をIからKに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させたものである、
ことを特徴とする請求項10に記載のタンパク質。
【請求項13】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位のアミノ酸残基をMからTに突然変異させ、123位をLからHに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させたものである、
ことを特徴とする請求項10に記載のタンパク質。
【請求項14】
前記phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列は、
(I)配列表の配列2で示されるタンパク質、
(II)配列表の配列2で示されるタンパク質と90%以上の同一性を有する枯草菌由来のタンパク質、
(III)配列表の配列2で示されるタンパク質と95%以上の同一性を有する枯草菌由来のタンパク質のうちのいずれか1つである、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項15】
前記タンパク質の安定性は前記phi29 DNAポリメラーゼより高い、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項16】
前記安定性は熱安定性である、ことを特徴とする請求項15に記載のタンパク質。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質をコーディングする核酸分子。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸分子を含む発現カセット、組み換えベクター、組み換え菌又はトランスジェニック細胞系。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質の下記1)~11)のうちの少なくとも1つにおける応用。
1)DNAポリメラーゼとする。
2)DNA複製を触媒するか、及び/又はDNA増幅を触媒する。
3)ローリングサークル増幅を触媒するか、及び/又は多重鎖置換増幅を触媒する。
4)DNAシーケンシング又はRNAシーケンシング又は全ゲノムシーケンシングを行う。
5)RCAによりライブラリを構築する。
6)ゲノム増幅の網羅率を検出する。
7)DNA複製を触媒するか、及び/又はDNA増幅を触媒するためのキット製品を調製する。
8)ローリングサークル増幅を触媒するか、及び/又は多重鎖置換増幅を触媒するための製品を調製する。
9)DNAシーケンシング又はRNAシーケンシング又は全ゲノムシーケンシングを行うための製品を調製する。
10)RCAによりライブラリを構築するための製品を調製する。
11)ゲノム増幅の網羅率を検出するための製品を調製する。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質をコーディングする核酸分子、前記核酸分子を含む発現カセット、前記核酸分子を含む組み換えベクター、前記核酸分子を含む組み換え菌又は前記核酸分子を含むトランスジェニック細胞系の下記1)-10)のうちの少なくとも1つにおける応用。
1)DNA複製を触媒するか、及び/又はDNA増幅を触媒する。
2)ローリングサークル増幅を触媒するか、及び/又は多重鎖置換増幅を触媒する。
3)DNAシーケンシング又はRNAシーケンシング又は全ゲノムシーケンシングを行う。
4)RCAによりライブラリを構築する。
5)ゲノム増幅の網羅率を検出する。
6)DNA複製を触媒するか、及び/又はDNA増幅を触媒するための製品を調製する。
7)ローリングサークル増幅を触媒するか、及び/又は多重鎖置換増幅を触媒するための製品を調製する。
8)DNAシーケンシング又はRNAシーケンシング又は全ゲノムシーケンシングを行うための製品を調製する。
9)RCAによりライブラリを構築するための製品を調製する。
10)ゲノム増幅の網羅率を検出するための製品を調製する。
【請求項21】
phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのうちの少なくとも1つのアミノ酸残基を、請求項1~17のいずれか一項に記載の修飾方法により修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、DNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質を得るステップを含むphi29 DNAポリメラーゼの安定性向上方法。
【請求項22】
前記安定性は熱安定性である、ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術の分野に属し、特に、熱安定性が向上したPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体及びそのシーケンシングにおける応用に関する。
【背景技術】
【0002】
Phi29 DNAポリメラーゼは、枯草菌(Bacillus subtilis)のPhi29ファージに由来するポリメラーゼであり、この酵素は、ファミリーBのDNAポリメラーゼに属する。Phi29 DNAポリメラーゼの結晶構造は、一般的なファミリーBのDNAポリメラーゼの保守的なパーム(Palm)、親指(Thumb)、指(Finger)及びエキソドメイン(Exo domain、3’→5’エキソヌクレアーゼ校正活性を有する)を有するだけではなく、Phi29 DNAポリメラーゼが、TPR1とTPR2ドメインという2つの特別なドメインをさらに有することを示している。TPR2ドメインは、下流のDNA鋳型鎖を囲む狭い通路の形成に参与し、二本鎖DNAを強制的に乖離させる。これとともに、Palm、Thumb、TPR1とTPR2ドメインは、円状の構造を形成し、上流の鋳型鎖が形成した二本鎖DNAに緊密に結合する。Phi29 DNAポリメラーゼの構造特徴によって、特殊な高い持続的合成能、強い鎖置換機能と高い忠実度が付与される。微量の環状DNAのローリングサークル増幅(Rolling Circle Amplification、RCA)やゲノムの多重鎖置換増幅などの等温増幅などの用途によく応用され、例えば、華大基因社の遺伝子シーケンサーのDNAナノボール技術(DNA Nanoball Technology)と単細胞全ゲノムシーケンシング技術である。
【0003】
DNAナノボール技術(DNB Technology)は、華大基因社の遺伝子シーケンサーの中核技術の1つである。ゲノムDNAを物理的又は酵素的に断片化した後に、リンカーを加え、一本鎖環状DNAに環状化し、その後、Phi29 DNAポリメラーゼ又はBst DNAポリメラーゼのような高忠実度の鎖置換型DNAポリメラーゼを用い、一本鎖環状DNAに対してローリングサークル増幅(Rolling circle amplification、RCA)を行い、増幅生成物はDNAナノボール(DNA nanoball、DNB)と呼ばれる。ナノボールはDNB搭載技術によりアレイ化したシリコンチップ上に固定され、後続のオンマシンシーケンシングを行う。性質の異なるphi29 DNAポリメラーゼ突然変異体は、基質DNAとの結合能が異なり、増幅したDNAナノボール生成物の大きさ、均一性、分岐構造、緊密度などの特性も異なり、さらにDNBがシリコンチップに搭載された後のシーケンシングの品質も異なる。Phi29 DNAポリメラーゼの性質も同様にMDA(Multiple Displacement Amplification、MDA)法で増幅した単細胞全ゲノムの増幅効果に影響し、さらに、例えば網羅率(Coverage)、マッピング率(Mapping Rate)、変異検出の正確度及び特異性などの単細胞シーケンシングの品質に影響し、これらは、単細胞シーケンシングの科学的応用において十分に注目されているパラメータでもある。
【0004】
Phi29 DNAポリメラーゼは中温性ポリメラーゼであり、65℃で10min加熱すれば、活性が失われる。市場での一部の商品化されたPhi29 DNAポリメラーゼは、安定性などの原因で、シーケンシングライブラリ増幅、単細胞全ゲノム増幅などの特殊な応用において、チップ上の有効なシグナルサイト、増幅好み性、網羅率、変異検出評価などの面の問題が存在するため、キット製品開発の要求を満たし難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、タンパク質を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により提供されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体であり、下記A)又はB)である。
【0007】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのうちの少なくとも1つのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である。
【0008】
B)で示されるタンパク質は、A)で示されるタンパク質のアミノ酸配列の末端にタグ配列を付加するとともに、DNAポリメラーゼ活性を有するA)から誘導されたタンパク質である。
【0009】
上記タンパク質において、A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのうちの少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は全てのアミノ酸残基を修飾することで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である。
【0010】
上記修飾は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのみに対して、上記した修飾が必要なサイトを修飾したものであり、この6つ以外のアミノ酸残基は変わらない。
【0011】
上記タンパク質において、A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位及び515位の5つのうちの全てのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質であり、具体的には、実施例におけるphi29-337である。
【0012】
上記タンパク質において、A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における224位、515位及び474位の3つのうちの全てのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質であり、具体的には、実施例におけるphi29-464である。
【0013】
上記タンパク質において、A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位及び515位の3つのうちの全てのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質であり、具体的には、実施例におけるphi29-414である。
【0014】
上記タンパク質において、A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位及び515位の4つのうちの全てのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質であり、具体的には、実施例におけるphi29-458である。
【0015】
上記タンパク質において、A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、224位及び515位の4つのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質であり、具体的には、実施例におけるphi29-459である。
【0016】
上記タンパク質において、A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における224位、474位の2つのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質であり、具体的には、実施例におけるphi29-463である。
【0017】
上記タンパク質において、A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における217位、224位の2つのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質であり、具体的には、実施例におけるphi29-335である。
【0018】
上記タンパク質において、前記修飾はアミノ酸置換である。
【0019】
上記タンパク質において、前記97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのサイトのアミノ酸置換方法は、それぞれ、
97位のメチオニンをアラニン又はヒスチジン又はリジン又はトレオニンに置換し、
123位のロイシンをリジン又はフェニルアラニン又はイソロイシン又はヒスチジンに置換し、
217位のグリシンをグルタミン酸に置換し、
224位のチロシンをリジンに置換し、
474位のイソロイシンをリジンに置換し、
515位のグルタミン酸をプロリン又はグリシンに置換することである。
【0020】
上記タンパク質において、A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位のアミノ酸残基をMからKに突然変異させ、123位をLからHに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させ、224位をYからKに突然変異させ、217位をGからEに突然変異させ、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である。
【0021】
上記タンパク質において、A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における224位のアミノ酸残基をYからKに突然変異させ、474位をIからKに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させたものである。
【0022】
上記タンパク質において、A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位のアミノ酸残基をMからTに突然変異させ、123位をLからHに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させたものである。
【0023】
上記タンパク質において、前記phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列は、下記(I)又は(II)又は(III)の通りである。
【0024】
(I)配列表の配列2、
(II)配列表の配列2で示されるタンパク質と90%以上の同一性を有する枯草菌由来のタンパク質のアミノ酸残基配列、
(III)配列表の配列2で示されるタンパク質と95%以上の同一性を有する枯草菌由来のタンパク質のアミノ酸残基配列。
【0025】
上記タンパク質において、前記タンパク質の安定性は前記phi29 DNAポリメラーゼより高い。
【0026】
上記タンパク質において、前記安定性は熱安定性である。
【0027】
上記タンパク質をコーディングする核酸分子も、本発明の保護範囲である。
【0028】
上記核酸分子を含む発現カセット、組み換えベクター、組み換え菌又はトランスジェニック細胞系も、本発明の保護範囲である。
【0029】
上記タンパク質の下記1)-11)のうちの少なくとも1つにおける応用も、本発明の保護範囲である。
1)DNAポリメラーゼとする。
2)DNA複製を触媒するか、及び/又はDNA増幅を触媒する。
3)ローリングサークル増幅を触媒するか、及び/又は多重鎖置換増幅を触媒する。
4)DNAシーケンシング又はRNAシーケンシング又は全ゲノムシーケンシングを行う。
5)RCAによりライブラリを構築する(DNAナノボール搭載)。
6)ゲノム増幅の網羅率を検出する。
7)DNA複製を触媒するか、及び/又はDNA増幅を触媒するためのキット製品を調製する。
8)ローリングサークル増幅を触媒するか、及び/又は多重鎖置換増幅を触媒するための製品を調製する。
9)DNAシーケンシング又はRNAシーケンシング又は全ゲノムシーケンシングを行うための製品を調製する。
10)RCAによりライブラリを構築するための製品を調製する。
11)ゲノム増幅の網羅率を検出するための製品を調製する。
【0030】
上記タンパク質をコーディングする核酸分子、前記核酸分子を含む発現カセット、前記核酸分子を含む組み換えベクター、前記核酸分子を含む組み換え菌又は前記核酸分子を含むトランスジェニック細胞系の下記1)-10)の少なくとも1つにおける応用も、本発明の保護範囲である。
1)DNA複製を触媒するか、及び/又はDNA増幅を触媒する。
2)ローリングサークル増幅を触媒するか、及び/又は多重鎖置換増幅を触媒する。
3)DNAシーケンシング又はRNAシーケンシング又は全ゲノムシーケンシングを行う。
4)RCAによりライブラリを構築する。
5)ゲノム増幅の網羅率を検出する。
6)DNA複製を触媒するか、及び/又はDNA増幅を触媒するための製品を調製する。
7)ローリングサークル増幅を触媒するか、及び/又は多重鎖置換増幅を触媒するための製品を調製する。
8)DNAシーケンシング又はRNAシーケンシング又は全ゲノムシーケンシングを行うための製品を調製する。
9)RCAによりライブラリを構築するための製品を調製する。
10)ゲノム増幅の網羅率を検出するための製品を調製する。
本発明のもう1つの目的は、phi29 DNAポリメラーゼの安定性向上方法を提供することである。
【0031】
本発明により提供される方法は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのうちの少なくとも1つのアミノ酸残基を上記した修飾方法により修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、DNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質を得るステップを含む。
【0032】
上記方法において、前記安定性は熱安定性である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の前記Phi29 DNAポリメラーゼは、独立して包装されるDNAポリメラーゼ製品の形で存在してもよく、DNA増幅キット又はDNAシーケンシングキットに包装されてもよい。本発明は、部位特異的突然変異と選別技術によって、熱安定性が大幅に向上した突然変異体が得られる。その中のいくつかの突然変異体は、単細胞全ゲノム増幅において増幅網羅率が大幅に向上し、変異検出の正確度及び感度がある程度向上し、QIAGENの同類商品と同等のレベルに達している。本発明の他のいくつかの突然変異体は、RCAライブラリ増幅の応用においてDNBの搭載効果に対して良好な改善効果を奏する。
【0034】
前記組み換えベクターは、発現ベクターに前記核酸分子を挿入して得られたものである。
【0035】
前記発現ベクターは、具体的にpET28a(+)ベクターであり得る。
【0036】
前記組み換え菌は、前記組み換えベクターを原株に導入して得られた菌である。
【0037】
前記原株は、大腸菌であり得る。
【0038】
前記大腸菌は、具体的に大腸菌BL21(DE3)であり得る。
【0039】
前記トランスジェニック細胞系は、前記組み換えベクターを受容体細胞に形質転換して得られたものであり得る。前記トランスジェニック細胞系は、非植物繁殖材料である。
【0040】
前記安定性は具体的に熱安定性であり得る。前記熱安定性は、具体的に37℃での熱安定性であり得る。
【0041】
前記phi29 DNAポリメラーゼは、具体的に下記(I)又は(II)又は(III)であり得る。
(I)配列表の配列2で示されるタンパク質、
(II)配列表の配列2で示されるタンパク質と90%以上の同一性を有する枯草菌由来のタンパク質、
(III)配列表の配列2で示されるタンパク質と95%以上の同一性を有する枯草菌由来のタンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】Phi29遺伝子発現ベクターの構築模式図である。
【
図2】多重PCRにより検出したMDA生成物におけるハウスキーピング遺伝子の網羅率である。
【
図3】RCAによりライブラリを構築してオンマシン測定を行って得られたデータの分析である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の実施例は、本発明に対する理解を容易にするが、本発明を限定するものではない。後述の実施例における実験方法は、特に説明がない限り、通常の方法である。後述の実施例で使用される試験材料は、特に説明がない限り、通常の生化学試薬商店で購入したものである。以下の実施例における定量実験は、いずれも3回の反復実験を設け、結果として平均値を取る。後述の実施例における各溶液又は緩衝液は、特に説明がない限り、いずれも溶剤が水である。
【0044】
pET28a(+)ベクター:Novagen社。
大腸菌BL21(DE3):TIANGEN、CB105-02。
保存緩衝液:10mMのTris-HCl、100mMのKCl、1mMのDTT、0.1mMのEDTA、0.5%(v/v)のTween (登録商標) 20、0.5%(v/v)のNP-40、50%(v/v)のグリセリン、25℃でのpH 7.4。
【0045】
後述の実施例における141 RCA Primer:TCCTAAGACCGCTTGGCCTCCGACT。
【0046】
後述の実施例における141Ad ssDNA:BGI社により自主的に調製され、一定の大きさ範囲の一本鎖環状ライブラリであり、固定した配列がない(A/T/C/Gの4つのヌクレオチドからなるランダムライブラリであり、主バンドの長さが200~300bpである)。
【0047】
後述の実施例において、配列表の配列1で示されるDNA分子は、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのコード遺伝子であり、その発現配列表の配列2で示されるタンパク質は、野生型Phi29 DNAポリメラーゼ(WTで表す)である。
【0048】
実施例1、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体の調製
Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体は、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の97位、123位、217位、224位、474位及び515位のうちの少なくとも1つを突然変異させたものであり、具体的な単一点突然変異の形は、表1に示され、多点組み合わせ突然変異の形は、表2に示される。
【0049】
一、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体を発現する組み換えベクターの構築
1、Phi29 DNAポリメラーゼ単一点突然変異体を発現する組み換えベクター
配列表の配列2で示されるDNA分子をpET28a(+)ベクター(
図1)のNdeIとBamHI酵素切断サイトの間に挿入し、野生型Phi29 DNAポリメラーゼを発現する組み換えベクターWTが得られる。
【0050】
組み換えベクターWTを出発ベクターとし、表1に示される各プライマー対を用いて点突然変異を導入し、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体を発現する各組み換えベクターが得られる。
【0051】
上記した表1に示される各プライマー対を用いて点突然変異を導入する方法は、以下の通りである。
【0052】
組み換えベクターWTを鋳型として、2.5ul 10x Pfu Reaction Buffer with Mg2+、2ul dNTP Mix(2.5mM each)、25ng pET28a-Phi29 plasmid、0.5ul Pfu DNA Polymeraseを含む部位特異的突然変異PCR反応系(25ul)に、それぞれ突然変異サイトの突然変異プライマー(表1)加えて、PCR増幅を行う。
【0053】
PCR条件は、95℃ 3min、19 cycle for[95℃ 30s、53℃ 30s、68℃ 8min]、68℃ 10min、4℃ foreverである。反応生成物は、DpnIで消化した後に、DH5aコンピテントセルに形質転換し、カナマイシン耐性のLBプレートに塗布し、37℃で、インキュベーターで一晩培養した後に、単クローン株を選択してプラスミドを単離し、シーケンシングを行い、特定のアミノ酸サイトの突然変異が成功したか否かを検証する。
【0054】
【0055】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97Hを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の289~291位のヌクレオチドを「ATG」から「CAT」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体M97Hをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体M97Hの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の97位のアミノ酸残基をMからHに突然変異させたことのみにある。
【0056】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97Aを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の289~291位のヌクレオチドを「ATG」から「GCG」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体M97Aをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体M97Aの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の97位のアミノ酸残基をMからAに突然変異させたことのみにある。
【0057】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97Kを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の289~291位のヌクレオチドを「ATG」から「AAA」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体M97Kをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体M97Kの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の97位のアミノ酸残基をMからKに突然変異させたことのみにある。
【0058】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体L123Kを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の367~369位のヌクレオチドを「CTG」から「AAA」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体L123Kをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体L123Kの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の123位のアミノ酸残基をLからKに突然変異させたことのみにある。
【0059】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体L123Fを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の367~369位のヌクレオチドを「CTG」から「TTT」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体L123Fをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体L123Fの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の123位のアミノ酸残基をLからFに突然変異させたことのみにある。
【0060】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体L123Iを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の367~369位のヌクレオチドを「CTG」から「ATT」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体L123Iをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体L123Iの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の123位のアミノ酸残基をLからIに突然変異させたことのみにある。
【0061】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体L123Hを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の367~369位のヌクレオチドを「CTG」から「CAT」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体L123Hをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体L123Hの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の123位のアミノ酸残基をLからHに突然変異させたことのみにある。
【0062】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体E515Pを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の1543~1545位のヌクレオチドを「GAA」から「CCG」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体E515Pをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体E515Pの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の515位のアミノ酸残基をEからPに突然変異させたことのみにある。
【0063】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体Y224Kを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の670~672位のヌクレオチドを「TAT」から「AAA」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体Y224Kをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体Y224Kの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の224位のアミノ酸残基をEからKに突然変異させたことのみにある。
【0064】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体G217Eを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の649~651位のヌクレオチドを「GGC」から「GAA」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体G217Eをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体G217Eの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の217位のアミノ酸残基をGからEに突然変異させたことのみにある。
【0065】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体I474Kを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の1420~1422位のヌクレオチドを「ATT」から「TTT」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体I474Kをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体I474Kの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の474位のアミノ酸残基をIからKに突然変異させたことのみにある。
【0066】
2、Phi29 DNAポリメラーゼ多点突然変異体を発現する組み換えベクターの構築
組み換えベクターWTを出発ベクターとし、表1に示す各プライマー対を用いて点突然変異を順に導入し、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体を発現する各組み換えベクターが得られる。具体的な突然変異の形は、表2に示す通りである。
【0067】
【0068】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97K-L123H-E515P-Y224K-G217Eを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の289~291位のヌクレオチドを「ATG」から「AAA」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の367~369位のヌクレオチドを「CTG」から「CAT」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の1543~1545位のヌクレオチドを「GAA」から「CCG」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の670~672位のヌクレオチドを「TAT」から「AAA」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の649~651位のヌクレオチドを「GGC」から「GAA」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体M97K-L123H-E515P-Y224K-G217Eをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体M97K-L123H-E515P-Y224K-G217Eの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の97位のアミノ酸残基をMからKに突然変異させ、123位をLからHに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させ、224位をYからKに突然変異させ、217位をGからEに突然変異させたことのみにある。
【0069】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97T-L123K-E515Pを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の289~291位のヌクレオチドを「ATG」から「ACC」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の367~369位のヌクレオチドを「CTG」から「AAA」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の1543~1545位のヌクレオチドを「GAA」から「CCG」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体M97T-L123K-E515Pをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体M97T-L123K-E515Pの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の97位のアミノ酸残基をMからTに突然変異させ、123位をLからKに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させたことのみにある。
【0070】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97K-L123H-E515Pを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の289~291位のヌクレオチドを「ATG」から「AAA」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の367~369位のヌクレオチドを「CTG」から「CAT」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の1543~1545位のヌクレオチドを「GAA」から「CCG」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体M97T-L123H-E515Pをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体M97K-L123H-E515Pの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の97位のアミノ酸残基をMからTに突然変異させ、123位をLからHに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させたことのみにある。
【0071】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体Y224K-I474K-E515Pを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の670~672位のヌクレオチドを「TAT」から「AAA」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の1420~1422位のヌクレオチドを「ATT」から「TTT」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の1543~1545位のヌクレオチドを「GAA」から「CCG」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体Y224K-I474K-E515Pをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体Y224K-I474K-E515Pの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の224位のアミノ酸残基をYからKに突然変異させ、474位をIからKに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させたことのみにある。
【0072】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97K-L123H-E515P-G217Eを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の289~291位のヌクレオチドを「ATG」から「AAA」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の367~369位のヌクレオチドを「CTG」から「CAT」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の1543~1545位のヌクレオチドを「GAA」から「CCG」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の649~651位のヌクレオチドを「GGC」から「GAA」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体M97K-L123H-E515P-G217Eをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体M97K-L123H-E515P-G217Eの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の97位のアミノ酸残基をMからKに突然変異させ、123位をLからHに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させ、217位をGからEに突然変異させたことのみにある。
【0073】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97K-L123H-E515P-Y224Kを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の289~291位のヌクレオチドを「ATG」から「AAA」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の367~369位のヌクレオチドを「CTG」から「CAT」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の1543~1545位のヌクレオチドを「GAA」から「CCG」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の670~672位のヌクレオチドを「TAT」から「AAA」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体M97K-L123H-E515P-G217Eをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体M97K-L123H-E515P-G217Eの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の97位のアミノ酸残基をMからKに突然変異させ、123位をLからHに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させ、224位をYからKに突然変異させたことのみにある。
【0074】
組み換えベクターWTと比較すれば、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体Y224K-I474Kを発現する組み換えベクターの違いは、配列表の配列1で示されるDNA分子の670~672位のヌクレオチドを「TAT」から「AAA」に突然変異させ、配列表の配列1で示されるDNA分子の1420~1422位のヌクレオチドを「ATT」から「TTT」に突然変異させたことのみにある。突然変異後のDNA分子は突然変異体Y224K-I474Kをコーディングする。野生型Phi29 DNAポリメラーゼと比較すれば、突然変異体Y224K-I474Kの違いは、野生型Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の224位のアミノ酸残基をYからKに突然変異させ、474位のアミノ酸残基をIからKに突然変異させたことのみにある。
【0075】
二、Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体を発現する組み換え菌の構築
それぞれステップ一で構築した組み換えベクターWTとPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体を発現する各組み換えベクターを大腸菌BL21(DE3)に導入し、野生型Phi29 DNAポリメラーゼを発現する組み換え菌とPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体を発現する各組み換え菌が得られる。
【0076】
三、組み換え菌の誘導発現
ステップ二で得られた野生型Phi29 DNAポリメラーゼを発現する組み換え菌とPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体を発現する各組み換え菌を取り、誘導と純化を順に行い、N末端にHis6タグを融合した野生型Phi29 DNAポリメラーゼとN末端にHis6タグを融合した各Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体を獲得する。
【0077】
N末端にHis6タグを融合した野生型Phi29 DNAポリメラーゼ及びN末端にHis6タグを融合した各Phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体は、His6タグを有する野生型Phi29 DNAポリメラーゼ、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97H、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97A、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97K、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体L123K、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体L123F、His6タグを有するPhi29 DNA突然変異体L123I、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体L123H、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体E515P、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体E515G、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体Y224K、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体G217E、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体I474K、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97K-L123H-E515P-Y224K-G217E、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97T-L123K-E515P、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97K-L123H-E515P、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体Y224K-I474K-E515P、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97K-L123H-E515P-G217E、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体M97K-L123H-E515P-Y224K、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体Y224K-I474K、His6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体Y224K-G217Eと順に命名される。
【0078】
1、誘導の具体的なステップは以下の通りである。
(1)生菌
組み換え菌を3mlのKana耐性を有する液体LB培地に接種し、一晩培養する。
(2)接種
ステップ(1)を完成した後、1/100体積で以上の菌液を2mlのKana耐性を有する液体LB培地に接種し、37℃で、220rpmで振動しながら、OD600nm=0.6になるまで(実際の応用では、OD600nm=0.4~0.8であってもよい)培養する。
(3)誘導
ステップ(2)を完成した後、システムに最終濃度0.5mMのIPTGを加え、16℃で、220rpmで振動しながら、12h培養する。
(4)菌体の収集
ステップ(3)を完成した後、4℃で、8000rpmで5分間遠心分離し、菌体を収集する。
【0079】
2、GE社のAKTA Pure純化システムを用いて、純化を行う。具体的なステップは以下の通りである。
【0080】
(1)ステップ1で得た菌体を取り、再懸濁緩衝液(20mMのTris-HCl、500mMのNaCl、20mMのイミダゾール、5%のグリセリン、25℃でのpH 7.9)で振動して均一に混合した後、氷上に置いて超音波破砕を行い、続いて、4℃で、12000rpmで30min遠心分離し、上澄み液を収集する。
(2)ステップ(1)で得た上澄み液を取り、ニッケルカラムアフィニティークロマトグラフィー(HisTrap FF 5mlプレパックカラム)で純化を行う。具体的なステップとしては、まず、10カラム容量のBuffer Aで平衡させ、続いて、サンプルローディングを行い、続いて、20カラム容量のBuffer Aで洗い流し、続いて、15カラム容量の溶出液で溶出し、目的タンパク質を有するポストカラム溶液を収集する(溶出液はBuffer AとBuffer Bからなり、溶出過程でBuffer Bの体積分率は0%から100%に線形上昇し、それに応じて、Buffer Aの体積分率は100%から0%に線形降下する)。
Buffer A:20mMのTris-HCl、500mMのNaCl、20mMのイミダゾール、5%(v/v)のグリセリン、25℃でのpH 7.9。
Buffer B:20mMのTris-HCl、500mMのNaCl、500mMのイミダゾール、5%(v/v)のグリセリン、25℃でのpH 7.9。
(3)ステップ(2)で得たポストカラム溶液を取り、強陰イオンカラムクロマトグラフィー(HiTrap Q HP 5mlプレパックカラム)で純化を行う。具体的なステップとしては、まず、10カラム容量の体積分率59%のBuffer Aと体積分率41%のBuffer Bからなる混合緩衝液で平衡させ、続いて、サンプルローディングを行い、タンパク質ピックが現れた後に、素通り画分を収集する(UV検出値が20mAuまで上昇すると収集し、UV検出値が50mAuまで低下した後に収集を中止する)。
Buffer A:20mMのTris-HCl、150mMのNaCl、5%(v/v)のグリセリン、25℃でのpH7.5。
Buffer B:20mMのTris-HCl、1MのNaCl、5%(v/v)のグリセリン、25℃でのpH7.5。
(4)ステップ(3)で得た素通り画分を取り、陽イオン交換クロマトグラフィー(HiTrap SP HPプレパックカラム)で純化を行い、純度が95%より大きいタンパク質サンプル溶液が得られる。具体的なステップとしては、まず、10カラム容量のBuffer Aで平衡させ、続いて、サンプルローディングを行い、15カラム容量のBuffer Aで洗い流し、続いて、10カラム容量の溶出液で溶出し(溶出液はBuffer AとBuffer Bからなり、溶出過程でBuffer Bの体積分率は0%から50%に線形上昇し、それに応じて、Buffer Aの体積分率は100%から50%に線形下降する)、目的タンパク質を有するポストカラム溶液を収集する(UV検出値が50mAuまで上昇すると収集し、UV検出値が100mAuまで低下した後に収集を中止する)。
Buffer A:20mMのTris-HCl、150mMのNaCl、5%(v/v)のグリセリン、25℃でのpH7.5。
Buffer B:20mMのTris-HCl、1MのNaCl、5%(v/v)のグリセリン、25℃でのpH7.5。
(5)ステップ(4)で収集した目的タンパク質を透析バッグに移し、透析緩衝液で一晩透析した後に、透析バッグ内のタンパク質溶液を収集し、他の試薬を加え、タンパク質濃度が1mg/mlの目的タンパク質溶液が得られる。目的タンパク質溶液における他の成分の濃度は、10mMのTris-HCl(25℃でのpH 7.4)、100mMのKCl、1mMのDTT、0.1mMのEDTA、0.5%(v/v)のNP-40、0.5%(v/v)のTween20、50%(v/v)のグリセリンである。
透析緩衝液:23.75mMのTris-HCl(25℃でのpH 7.4)、237.5mMのKCl、2.375mMのDTT、0.2375mMのEDTA、5%(v/v)のグリセリン。
【0081】
実施例2、Phi29 DNAポリメラーゼの野生型と突然変異体の重合活性テスト
実施例1で調製したHis6タグを有する野生型Phi29 DNAポリメラーゼ溶液及びHis6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体溶液を取って、被検酵素液とする。
【0082】
1、各被検酵素液を貯蔵緩衝液で5000倍勾配希釈し、渦発振器により十分に均一に混合し、氷上で5min静置し、各被検溶液を獲得する。
予備反応系をPCRチューブで均一に混合し、PCR装置に置き、95℃ 1min、65℃ 1min、40℃ 1minのプロセスを行い、ヒートリッド温度を102℃に設定する。
予備反応系(80.8μl):50mMのTris-HCl(pH7.5)、4mMのDTT、10mMの(NH4)2SO4、10mMのMgCl2、50nMのdNTP混合物、2pMの141 RCAプライマー及び18ngの一本鎖環状DNA鋳型141 Ad ssDNA。
【0083】
2、ステップ1を完成した後に、温度が4℃になると、PCRチューブを取り出して、氷上に置く。試験グループはそれぞれ1μlの各被検溶液を加え、陰性対照グループは1μlの貯蔵緩衝液を加える。続いて、渦発振器を用いて振動して均一に混合し、遠心機で5s短時間遠心分離した後、PCR装置に置き、30℃ 60minのプロセスを行い、ヒートリッド温度を65℃に設定する。
【0084】
3、ステップ2を完成した後、5μlの0.5MのEDTA溶液を加えて反応を中止させ、振動して均一に混合する。
【0085】
4、Qubit ssDNA Assay Kit(Q10212、INVITROGEN社)を採用し、マニュアルに従って操作し、Qubit fluorometer 3.0を使用して、反応生成物におけるDNB(DNAナノボール)濃度を検出する。
被検酵素液の酵素活性=ΔDNB×5000÷37.38。
【0086】
説明:ΔDNBは、試験グループと陰性対照グループの反応中止後のシステムにおける反応生成物の濃度平均値の差であり、5000は希釈倍数であり、37.38は酵素活性とΔDNBとの関数関係の傾きである。
【0087】
一部の被検酵素液の酵素活性結果は表3に示す通りである。
【0088】
実施例3、Phi29 DNAポリメラーゼの野生型と突然変異体の熱安定性テスト
37℃ 10min実験:
実施例1で調製した目的タンパク質溶液(His6タグを有する野生型Phi29 DNAポリメラーゼ溶液及びHis6タグを有するPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体溶液)を取って、2つに分けて、それぞれ以下のように処理する。
【0089】
一つ目:37℃に予熱した金属浴で10min置き、4℃で、13000rpmで1min遠心分離し、上澄み液を収集し、続いて、前記上澄み液を取り、貯蔵緩衝液で1000倍希釈し、渦発振器により十分に均一に混合し、続いて氷上で5min静置し、被検溶液1を獲得する。
【0090】
二つ目:貯蔵緩衝液で5000倍希釈し、渦発振器により十分に均一に混合し、続いて氷上で5min静置し、被検溶液2を獲得する。
【0091】
実施例2のステップ1~4に従って行う。
【0092】
非熱処理の酵素活性(U1)=ΔDNB×5000÷37.38であり、ΔDNBは試験グループ(二つ目)と陰性対照グループの反応終了後のシステムにおける反応生成物の濃度平均値の差である。
【0093】
熱処理後の酵素活性(U2)=ΔDNB×1000÷37.38であり、ΔDNBは試験グループ(一つ目)と陰性対照グループの反応終了後のシステムにおける反応生成物の濃度平均値の差である。
【0094】
5000と1000はそれぞれ希釈倍数であり、37.38は酵素活性とΔDNBとの関数関係の傾きである。
【0095】
非熱処理と熱処理された酵素液の活性に基づいて、酵素活性損失率を計算する。
【0096】
酵素活性損失率(%)=(U1-U2)÷U1×100%である。
【0097】
U1は非熱処理の酵素液の活性であり、U2は熱処理された酵素液の活性である。
-20℃実験:37℃ 10min実験との違いは、37℃の金属浴で10min置くことを-20℃の冷蔵庫で10min置くことに置き換えるだけである。
【0098】
各突然変異体の比酵素活性と酵素活性損失率は、表4に示す通りである。野生型(WT)と比較すれば、示された突然変異体の酵素活性損失率は、全てある程度上昇する。酵素活性損失率の値が大きいほど、酵素が不安定になり、熱安定性が悪くなる。
【0099】
【0100】
前記表において、NCはバックグラウンド値であり、空白所はデータの計算処理がないからである。
【0101】
実施例4、ゲノム増幅の網羅率の検出
オンマシンシーケンシングの前に、サンプルによって広げた網羅率を検出するために、多重PCR法を用いてMDA生成物の中の複数のハウスキーピング遺伝子を増幅する。
【0102】
具体的な操作ステップとしては、200ulのPCRチューブにNA12878参照ゲノムサンプル(Coriell Institute)を加え、全体積を4ulとし、足りなければPBSを加えて4ulまで補足する。PCRチューブに3ulのBuffer D2(QIAGEN REPLI-g Single Cell Kit)を加えて、ピペットチップを液面下には入れず、管壁に接する必要があって、遠心分離し、振動は要らない。遠心分離をした後にPCR装置に置き、65℃で10min静置する。終了後、氷上に置き、PCRチューブに3ulの中和buffer(QIAGEN REPLI-g Single Cell Kit)を加えて、ピペットチップを液面下には入れず、管壁に接する必要があって、遠心分離し、振動は要らない。PCRチューブに39ulのMDA reaction buffer(10x phi29 Reaction Buffer 5ul、25mMのdNTP 2ul、1mMのN8プライマー 2ul、100x BSA 0.5ul、10%のF68 0.05ul、H2O 29.75ul)を加えた後に、1ulの実施例1で調製したphi29-337、phi29-456、phi29-458、phi29-36、phi29-335、phi29-414、phi29-464と1ulのQIAGEN REPLI-g Single Cell Kitに付されたPhi29 DNAポリメラーゼをそれぞれ加える。ピペットチップを液面下はに入れず、管壁に接する必要があって、遠心分離し、振動は要らない。遠心分離をした後にPCR装置に置き、30℃で8h、65℃で3min静置する。反応後に振動して遠心分離し、Qubit BRで濃度を検出する。濃度を検出した後に多重ハウスキーピング遺伝子のPCR検出を行う。DNA量は50~200ngとし、陰性対照(N)と陽性対照(P)を設け、陰性は水であり、陽性は増幅していないNA12878参照ゲノムであり、実験グループとしては3つの異なるサンプルを設ける。多重PCRプライマー及びプロセスは下記表5に示す通りである。
PCRプロセス:95℃ 5min、35cycles x[94℃ 30s、60℃ 50s、72℃ 1min]、72℃ 5min、12℃ holder。
【0103】
結果は
図2に示す通りであり、phi29-337、phi29-456、phi29-458、phi29-36、phi29-414は、野生型WTと比較すれば、増幅網羅率が大幅に向上し、8本のハウスキーピング遺伝子が少なくとも6本以上増幅できる。増幅生成物の濃度では、phi29-337、phi29-456、phi29-458、phi29-36、phi29-414は、野生型WTとEnzymatics社のphi29製品より高い。
【0104】
実施例5、野生型Phi29 DNAポリメラーゼとPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体の単細胞全ゲノムシーケンシングにおける応用効果
Phi29 DNAポリメラーゼの野生型と突然変異体の単細胞ゲノムシーケンシングにおける効果を検出するために、NA12878微量gDNA(200pg)をそれぞれ実施例1で調製した野生型Phi29 DNAポリメラーゼとPhi29 DNAポリメラーゼ突然変異体で増幅し、得られた生成物に対してライブラリを構築し、その後に、高深度シーケンシングを行うとともに、商品化されたQiagen単細胞増幅キットで同じNA12878微量gDNA(200pg)を増幅したものを対照とする。
【0105】
シーケンシングデータに分析及び変異検出分析を行い、NA12878標準変異データセットで評価を行い、各突然変異体とQiagenキットとの差異を比較する。具体的なデータ分析結果を表6と表7に示す。
【0106】
表から分かるように、突然変異体Phi29-337、Phi29-456、Phi29-335、Phi29-414は、マッピング率、網羅率の面で野生型WT及びQIAGENキットと同程度であるが、複製率パラメータの面で野生型WTが最も悪く、表に示されている突然変異体がいずれも野生型よりやや良く、そのうち337突然変異体が最も良く、QIAGEN(REPLI-g Single Cell Kit)キットと同程度である。同時に、変異検出評価パラメータのsnp_Precision、snp_Sensitivity、snp_F-measureの面で、337突然変異体が最も良く、QIAGENキットよりやや良く、野生型WTと456、335、414突然変異体はいずれもQIAGENキットより悪い。indel_Precision、indel_Sensitivityとindel_F-measureパラメータの面でも、337突然変異体が最も良く、QIAGENキットよりデータがやや良い。
【0107】
(注:QIAGENは商品REPLI-g Single Cell Kitによる対照である)
【0108】
実施例6、RCAによりライブラリを構築してオンマシン測定を行った効果の分析
表4の熱安定性結果を総合し、本実施例は複数の熱安定性が向上した突然変異体を選び、BGISEQ-500シーケンサーによりオンマシン測定を行い、異なる突然変異体のDNAシーケンシングにおける応用効果を検出し、BGISEQ-500シーケンサーの標準を参照する。測定全体に使用される試薬はBGI製のPE50 V2.0キットセットの全体とBGI製のE.coil Ad153スタンダードライブラリとInvitrogen製のQubit ssDNA Assay試薬である。以下に使用される試薬は、ライブラリ及びQubit ssDNA Assayを除き、全てPE50 V2.0キットに含まれているが、以下に記載されるPE50 V2.0試薬リザーバーはオンマシン測定に使用される試薬のみを指す。
【0109】
1、DNBの調製
-20℃の冷蔵庫からDNB調製緩衝液、スタンダードライブラリ、DNBポリメラーゼ混合液とDNBポリメラーゼ混合液IIを取り出し、アイスボックスで溶解させ、完全に溶解した後に、渦発振器に置いて5s持続的に振動して均一に混合し、且つハンドヘルド遠心機で3sしばらく遠心分離し、アイスボックスに置いて使用に備える。4℃の冷蔵庫から分子レベル水とDNB中止緩衝液を取り出し、アイスボックスに置いて使用に備える。マークされた8連チューブに順に20ulのDNB調製緩衝液と6ngのssDNA(E.coliスタンダードライブラリ)を加え、Nuclease Free Waterで40ulまで補足する。8連チューブを渦発振器に置いて5s持続的に振動して均一に混合し、且つハンドヘルド遠心機で3sしばらく遠心分離する。上記8連チューブをPCR装置に置き、95℃ 1min、65℃ 1min、40℃ 1min、4℃で保持する(ヒートリッド温度を103℃に設定)という反応条件を設定又は点検する。反応が完了した後に、PCR 8連チューブを取り出し、アイスボックスに置き、8連チューブのリッド温度が室温まで下った後に、それをハンドヘルド遠心機で3sしばらく遠心分離してから、直ちにアイスボックスに置く。8連チューブに、順に40ulの変性後の8連チューブ内の反応液、40ulのDNBポリメラーゼ混合液、4ulのDNBポリメラーゼ混合液IIを加える。8連チューブを渦発振器に置いて5s持続的に振動して均一に混合し、且つハンドヘルド遠心機で3sしばらく遠心分離する。直ちにPCR装置又は水浴に置いて反応し始める。30℃ 20min、4℃で保持する(ヒートリッドの設置は不要である)という反応条件を設定又は点検する。上記RCA反応が終了した後に、8連チューブを取り外してアイスボックスに置き、直ちに20μlのDNB中止緩衝液を加える。100μl広口ピペットチップ付きのピペットを用い、ゆっくり5~8回(1吸入と1吹きは1回とする)均一に吹き付け、均一に混合した後に、4℃に置いて保存して使用に備える。Qubit(登録商標) ssDNA Assay KitとQubit(登録商標) Fluorometer装置を用い、上記DNB調製生成物に濃度測定を行い、濃度が8ng/ul~40ng/ulの場合に、合格であると判定し、後続の実験での使用に備える。
【0110】
2、DNBロード
DNBを調製した後、DNBをチップ(chip)にロードする必要があり、即ち、DNBロードである。
【0111】
サンプルロード試薬プレートV2.1を取り出し、室温で融けさせ、振動して均一に混合し、しばらく遠心分離した後に、アイスボックスに置いて使用に備える。DNBロード緩衝液IIを取り出し、振動して均一に混合し、しばらく遠心分離した後に、アイスボックスに置いて使用に備える。まず、チップ(chip)とサンプルロード試薬プレートV2.1をBGIDL-50上に置く。次に、35μlのDNBロード緩衝液IIを取って、100μlのDNBを含むPCRチューブに加え、広口型吸込みヘッドで軽く15回混合して均一にする。続いて、上記混合液をロードシステムの指定したDNB配置領域に置き、DNBロードプロセス(Sample load 2.0)を選択し、ロードを開始する。最後に、ロードが完了してから、室温で30minインキュベートし、その後に2~8℃に置いて使用に備える。
【0112】
3、オンマシン測定
被検phi29ポリメラーゼ突然変異体又は野生型に対して、一枚のチップ(chip)と1つのBGISEQ‐500RSハイスループットシーケンシング試薬リザーバー(PE50V2.0)を用い、BGISEQ‐500シーケンサーでオンマシンシーケンシングを行う。オンマシン測定前に、まずシーケンシング試薬リザーバーII、dNTPs混合液(V3.0)、dNTPs混合液II(V2.0)を解凍して融けさせ、続いて4℃の冷蔵庫又はアイスボックスに置いて使用に備え、且つ振動してシーケンシング酵素を均一に混合し、アイスボックスに置いて使用に備える。まず、5番目のウェルの試薬を配置し、即ち、1mlのピペットを用いて1150μlのDNAポリメラーゼ混合液を取って、5番目のウェルに移し、かつ、1150μlのdNTPs混合液(V3.0)を5番目のウェルに移し、ピペットを用いて10~15回吹き付けて均一にする。次に、6番目のウェルの試薬を配置し、即ち、1mlのピペットを用いて890μlのDNAポリメラーゼ混合液を6番目のウェルに移し、かつ、890μlのdNTPs混合液II(V2.0)を6番目のウェルに移し、ピペットを用いて10~15回吹き付けて均一にする。続いて、14番目の試薬を配置し、即ち、5mlのピペットを用いて14番目のウェルのための全ての試薬を移し、そのうちの2.8mlの14番目のウェルの試薬を取って、400μlのphi29ポリメラーゼ突然変異体と均一に混合してから、14番目のウェルに加える。そして配置した試薬リザーバーを組み立てる。最後に、オンマシン測定を行い、即ち、シーケンサーを起動して洗浄し、試薬リザーバーをシーケンサーの指定場所に入れ、操作プロセスに従って実際のプリロードを行い、プリロードが終了した後に、上記ステップ(2)で調製したチップ(chip)を取り付け、関連するシーケンシング情報を記入し、シーケンシングを開始し、終了後にチップと試薬リザーバーと洗浄機器を取り出す。この実施例では、1つのループだけ測定する。
【0113】
4、データ分析
シーケンシング終了後、分析報告書をダウンロードし、従来指定した基準と照合し、phi29 DNAポリメラーゼ突然変異体の性能を判断する。
【0114】
比較された各パラメータについて、次のように説明する。ESR(EffectiveSpots Rates)は、有効なスポット数の割合であり、Bic(basecall information content)は、ベースコールに用いられるDNBの割合であり、fit(crosstalk fit score)は、クロストークの状況を反映し、補正後の各ベースの強度分布が集中するほど、そのfit値が高くなり、SNR(Signal to Noise Ratio)は、信号対雑音比であり、1つのDNBのSNRの計算を例として、base A(max intensity)を信号とすれば、CGTが背景となり、CGTの強度の分散(variance)が雑音となり、RHO(Rho Intensity)は、補正強度から標準化された強度値を引いたものであり、直観的にはdyeの一次強度が補正された強度値であると解釈される。
その結果は
図3に示す通りであり(
図Aは各突然変異体のBIC、FIT、ESRパラメータの比較であり、
図Bは各突然変異体のSNRパラメータの比較であり、
図Cは各突然変異体のRHOパラメータの比較である)、上記各パラメータメトリクス分析をまとめてみれば、測定した突然変異体の中で、最も優れたのは464であり、その次ぎは463であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明に基づき、本発明の前記突然変異サイトのアミノ酸に飽和突然変異を行うことによって、さらに効果が良好な突然変異体を選別し、又は、本発明の前記突然変異体に基づき、さらに本発明に含まれるアミノ酸サイト以外の他のアミノ酸に突然変異を行い、類似する効果を得ることができる。本発明は、さらに食品検出、ウイルス検出、RNA検出、単細胞シーケンシングなどを含む技術分野に適用する可能性があり、第3、4世代のシーケンサー技術の開発に適用する可能性もある。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のA)又はB)であるタンパク質。
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのうちの少なくとも1つのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である。
B)で示されるタンパク質は、A)で示されるタンパク質のアミノ酸配列の末端にタグ配列を付加するとともに、DNAポリメラーゼ活性を有するA)から誘導されたタンパク質である。
【請求項2】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのうちの少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は全てのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位及び515位の5つのうちの全てのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項4】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における224位、515位及び474位の3つのうちの全てのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項5】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位及び515位の4つのうちの全てのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項6】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、224位及び515位の4つのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項7】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における224位、474位の2つのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項8】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における217位、224位の2つのアミノ酸残基を修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項9】
前記修飾はアミノ酸置換である、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項10】
前記97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのサイトのアミノ酸置換方法は、それぞれ、
97位のメチオニンをアラニン又はヒスチジン又はリジン又はトレオニンに置換し、
123位のロイシンをリジン又はフェニルアラニン又はイソロイシン又はヒスチジンに置換し、
217位のグリシンをグルタミン酸に置換し、
224位のチロシンをリジンに置換し、
474位のイソロイシンをリジンに置換し、
515位のグルタミン酸をプロリン又はグリシンに置換することである、
ことを特徴とする請求項9に記載のタンパク質。
【請求項11】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位のアミノ酸残基をMからKに突然変異させ、123位をLからHに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させ、224位をYからKに突然変異させ、217位をGからEに突然変異させ、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、得られたDNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質である、
ことを特徴とする請求項10に記載のタンパク質。
【請求項12】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における224位のアミノ酸残基をYからKに突然変異させ、474位をIからKに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させたものである、
ことを特徴とする請求項10に記載のタンパク質。
【請求項13】
A)で示されるタンパク質は、phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位のアミノ酸残基をMからTに突然変異させ、123位をLからHに突然変異させ、515位をEからPに突然変異させたものである、
ことを特徴とする請求項10に記載のタンパク質。
【請求項14】
前記phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列は、
(I)配列表の配列2で示されるタンパク質、
(II)配列表の配列2で示されるタンパク質と90%以上の同一性を有する枯草菌由来のタンパク質、
(III)配列表の配列2で示されるタンパク質と95%以上の同一性を有する枯草菌由来のタンパク質のうちのいずれか1つである、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項15】
前記タンパク質の安定性は前記phi29 DNAポリメラーゼより高い、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項16】
前記安定性は熱安定性である、ことを特徴とする請求項15に記載のタンパク質。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質をコーディングする核酸分子。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸分子を含む発現カセット、組み換えベクター、組み換え菌又はトランスジェニック細胞系。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質の下記1)~11)のうちの少なくとも1つにおける応用。
1)DNAポリメラーゼとする。
2)DNA複製を触媒するか、及び/又はDNA増幅を触媒する。
3)ローリングサークル増幅を触媒するか、及び/又は多重鎖置換増幅を触媒する。
4)DNAシーケンシング又はRNAシーケンシング又は全ゲノムシーケンシングを行う。
5)RCAによりライブラリを構築する。
6)ゲノム増幅の網羅率を検出する。
7)DNA複製を触媒するか、及び/又はDNA増幅を触媒するためのキット製品を調製する。
8)ローリングサークル増幅を触媒するか、及び/又は多重鎖置換増幅を触媒するための製品を調製する。
9)DNAシーケンシング又はRNAシーケンシング又は全ゲノムシーケンシングを行うための製品を調製する。
10)RCAによりライブラリを構築するための製品を調製する。
11)ゲノム増幅の網羅率を検出するための製品を調製する。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質をコーディングする核酸分子、前記核酸分子を含む発現カセット、前記核酸分子を含む組み換えベクター、前記核酸分子を含む組み換え菌又は前記核酸分子を含むトランスジェニック細胞系の下記1)-10)のうちの少なくとも1つにおける応用。
1)DNA複製を触媒するか、及び/又はDNA増幅を触媒する。
2)ローリングサークル増幅を触媒するか、及び/又は多重鎖置換増幅を触媒する。
3)DNAシーケンシング又はRNAシーケンシング又は全ゲノムシーケンシングを行う。
4)RCAによりライブラリを構築する。
5)ゲノム増幅の網羅率を検出する。
6)DNA複製を触媒するか、及び/又はDNA増幅を触媒するための製品を調製する。
7)ローリングサークル増幅を触媒するか、及び/又は多重鎖置換増幅を触媒するための製品を調製する。
8)DNAシーケンシング又はRNAシーケンシング又は全ゲノムシーケンシングを行うための製品を調製する。
9)RCAによりライブラリを構築するための製品を調製する。
10)ゲノム増幅の網羅率を検出するための製品を調製する。
【請求項21】
phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列における97位、123位、217位、224位、515位及び474位の6つのうちの少なくとも1つのアミノ酸残基を、請求項1~17のいずれか一項に記載の修飾方法により修飾し、残りのアミノ酸残基が変わらないようにすることで、DNAポリメラーゼ活性を有するタンパク質を得るステップを含むphi29 DNAポリメラーゼの安定性向上方法。
【請求項22】
前記安定性は熱安定性である、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【国際調査報告】