(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】セレンキレートエンドウオリゴペプチド及びその調製方法と用途
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20220112BHJP
A23L 33/185 20160101ALI20220112BHJP
【FI】
C07K7/06
A23L33/185
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546031
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-04-12
(86)【国際出願番号】 CN2018121723
(87)【国際公開番号】W WO2020073486
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】201811189889.7
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521155645
【氏名又は名称】チャイナ ナショナル リサーチ インスティテュート オブ フード アンド ファーメンテーション インダストリーズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHINA NATIONAL RESEARCH INSTITUTE OF FOOD & FERMENTATION INDUSTRIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Bldg. 6, No. 24, Jiuxianqiao Middle Road, Chaoyang District, Beijing 100015 China
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】サイ、 ムイ
(72)【発明者】
【氏名】グ、 ルイゼン
(72)【発明者】
【氏名】ル、 ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、 ウェニン
(72)【発明者】
【氏名】キン、 シュウユアン
(72)【発明者】
【氏名】パン、 シンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ドン、 ツェ
(72)【発明者】
【氏名】マ、 ヨン
(72)【発明者】
【氏名】シュ、 ヤグアン
(72)【発明者】
【氏名】マ、 ヨンキン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 リアン
(72)【発明者】
【氏名】ル、 ル
(72)【発明者】
【氏名】チャン、 ハイシン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、 イン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、 ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、 ケル
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ジン
(72)【発明者】
【氏名】リ、 グオミン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、 ミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ユチェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ユキン
(72)【発明者】
【氏名】リン、 コン
(72)【発明者】
【氏名】ビ、 ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ツゥイ、 シンユエ
【テーマコード(参考)】
4B018
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018ME06
4B018ME14
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA14
4H045CA33
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA23
4H045EA29
4H045FA65
4H045FA70
(57)【要約】
セレンキレートエンドウオリゴペプチド及びその調製方法と用途である。該
セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、pH値が2で、温度が37℃である条件で、ペプシンを採用して4時間加水分解を行う方式、pH値が7.5で、温度が37℃である条件で、トリプシンを採用して6時間加水分解を行う方式、温度を37℃で一定に保ち、まずpH値が2である条件で、ペプシンを採用して4時間加水分解を行い、そしてpH値が6.8である条件でトリプシンを採用して引き続き6時間加水分解を行う方式、という3種の方式のうちの少なくとも1種の消化処理の後に、セレン含有量が消化処理前の変化率に比べて3%を超えない。その調製方法は、
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの水溶液を亜セレン酸ナトリウムと混ぜて反応させ、アルコール沈殿を行い、乾燥させることを含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドウオリゴペプチドセレンであって、前記エンドウオリゴペプチドセレンは、
pH値が2で、温度が37℃である条件で、ペプシンを採用して4時間加水分解を行う方式、
pH値が7.5で、温度が37℃である条件で、トリプシンを採用して6時間加水分解を行う方式、
温度を37℃で一定に保ち、まずpH値が2である条件で、ペプシンを採用して4時間加水分解を行い、そしてpH値が6.8である条件で、トリプシンを採用して引き続き6時間加水分解を行う方式、という3種の方式のうちの少なくとも1種の消化処理の後に、セレン含有量が消化処理前の変化率に比べて3%を超えないことを特徴とするエンドウオリゴペプチドセレン。
【請求項2】
前記エンドウオリゴペプチドセレンが100℃以下で2h熱処理された後に、セレン含有量が熱処理前の97%以上であることを特徴とする請求項1に記載のエンドウオリゴペプチドセレン。
【請求項3】
前記エンドウオリゴペプチドセレンはpHが3~11で、温度が37℃である条件で2h酸塩基処理された後に、セレン含有量が酸塩基処理前の75%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンドウオリゴペプチドセレン。
【請求項4】
前記エンドウオリゴペプチドセレンの酸可溶性タンパク質含有量が23%より高く、全窒素含有量が23%より高く、分子量が1000uより少ない成分が85%以上占めており、セレン含有量が0.08g/100g以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のエンドウオリゴペプチドセレン。
【請求項5】
前記エンドウオリゴペプチドセレンにはPPKIYPが含まれることを特徴とする請求項1又は4に記載のエンドウオリゴペプチドセレン。
【請求項6】
前記エンドウオリゴペプチドセレンはエンドウオリゴペプチドの水溶液と亜セレン酸ナトリウムとの反応生成物であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のエンドウオリゴペプチドセレン。
【請求項7】
エンドウオリゴペプチドセレンの調製方法であって、エンドウオリゴペプチドの水溶液と亜セレン酸ナトリウムとの混合系を60~90℃の条件で20min以上反応させ、得られた反応生成物をアルコール沈殿および乾燥に供して、前記エンドウオリゴペプチドセレンを得ることを特徴とするエンドウオリゴペプチドセレンの調製方法。
【請求項8】
前記混合系には、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの質量比が1~5:1であることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
前記エンドウオリゴペプチドには、分子量が1000uより少ない成分含有量が80%より高く、前記エンドウオリゴペプチドの水溶液には、エンドウオリゴペプチドの質量濃度が1~5g/100mLであることを特徴とする請求項7又は8に記載の調製方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載のエンドウオリゴペプチドセレンのヘルスケア食品での用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドウオリゴペプチドセレン及びその調製方法と用途に関し、特に、安定性が高く、ヒトによって効果的に吸収されて、抗酸化性能に優れたエンドウオリゴペプチドセレン及びその製造技法と用途に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な代謝モデルによれば、タンパク質がアミノ酸に加水分解されてから生物体によって吸収されて利用することができるが、近年来の研究によると、動物がタンパク質に対する需要も一定の量の小分子活性ペプチドに依存し、それに、オリゴペプチドがヒトの腸において専用担体や吸収通路を有し、完全な形で小腸に入って吸収されえると証明される。
【0003】
エンドウオリゴペプチドは、エンドウタンパク質が酵素分解又は加水分解の後に得られた小分子ペプチド物質である。エンドウオリゴペプチドは、抗菌、抗酸化、ACE阻害などの活性があり、幅広い用途を持つ生理活性ペプチドであることがすでに報道された。
【0004】
セレンは、ヒトが外界から取り入れなければならない微量元素の1種であり、人間の生活活動を維持する上で重要な役割を果たしている。セレン欠乏症は人間免疫力を弱め、ケシャン病などの病気を引き起こす可能性もあることが研究によって証明されている。
【0005】
現在、食物の正常摂取以外に、一般的なセレン補給方法として、亜セレン酸ナトリウムなどの無機セレンを内服する方法が挙げられる。しかし、無機セレンより有機セレンのほうは毒性が低く、吸収率がより高いことが研究によって証明されているため、大豆ペプチドセレンキレート、霊芝ペプチドセレンキレート、魚頭タンパク質ペプチドセレンキレートなどの関連オリゴペプチドセレン形の有機セレン生成物に関する研究報道が次々と現れるが、エンドウオリゴペプチドやセレンのキレート化に関する報道が滅多にない一方、セレン元素をオリゴペプチド分子に導入し、得られたオリゴペプチドセレン(通常、キレート化セレンと呼ばれる)の分子安定性により、オリゴペプチドセレンをそのまま商品として直接に使用し、有効なセレン補給を確保するか、オリゴペプチドセレンをさらなる加工の中間的原料として、後続加工の予期効果を保証するか、いずれもこの種の商品研究において注目される課題とされているが、ヒトによって有効的に吸収されて、且つ安定して組み合わせられたエンドウオリゴペプチドセレンは、さらにまれなものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術における上記欠陥に対し、本発明は、性能が安定して、腸を通してヒトによって効果的に吸収されてセレンの有効補充を実現するエンドウオリゴペプチドセレンを提供する。
【0007】
本発明は、エンドウオリゴペプチドの調製方法を提供し、該調製方法を採用すると、上記エンドウオリゴペプチドセレンを取得するだけでなく、キレート化率が高く、収率が高いという利点もある。
【0008】
本発明はまた、上記エンドウオリゴペプチドのヘルスケア食品における用途をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を実現するために、本発明によって提供されるエンドウオリゴペプチドセレンは、
pH値が2で、温度が37℃である条件で、ペプシンを採用して4時間加水分解を行う方式、
pH値が7.5で、温度が37℃である条件で、トリプシンを採用して6時間加水分解を行う方式、
温度を37℃で一定に保ち、まずpH値が2である条件で、ペプシンを採用して4時間加水分解を行い、そしてpH値が6.8である条件で、トリプシンを採用して引き続き6時間加水分解を行う方式という3種の方式のうちの少なくとも1種の消化処理の後に、セレン含有量が消化処理前の変化率に比べて3%を超えない。
【0010】
本発明によって提供されるエンドウオリゴペプチドセレン(又は、エンドウオリゴペプチドセレンキレートとも呼ばれる)は、上記消化処理の後に、セレン含有量が消化処理前の変化率に比べて(正確的に、低下比率)3%を超えない。さらに研究によって、ほぼ大多数のセレンは、共有結合(より正確的に、配位結合で)の方式でエンドウオリゴペプチドと組み合わせて、且つ両者間の共有結合が比較的に安定しており、これにより、セレン元素は、エンドウオリゴペプチドに伴って胃や腸を安定的に通過して最終的に小腸粘膜のエンドウオリゴペプチドに対する完全な吸収により間接的に吸収されることが証明されている。
【0011】
さらに、該エンドウオリゴペプチドセレンは、優れた熱安定性があり、100℃以下で2h熱処理された後に、セレン含有量が熱処理前に比べて、対照比に顕著な差異が観察されなく、変化率が3%を超えない。即ち、エンドウオリゴペプチドセレンを水に分散させたシステムが100℃以下で2h処理された後に、セレン含有量が対照群の97%以上である。セレンのヒト内での消化吸収をさらに確保することもできれば、さらなる加工の中間原料として使用される際に、後続加工の予期効果を保証することもできる。
【0012】
さらに、該エンドウオリゴペプチドは、優れた酸塩基安定性があり、pHが3~11で、温度が37℃である条件で2h処理された後に、セレン含有量が処理前の対照比に比べて、変化率が25%を超えない。即ち、エンドウオリゴペプチドを水に分散させたシステムが酸性、アルカリ性又は中性条件で2h処理された後に、セレン含有量が酸塩基処理が施されない対照群の75%以上である。優れた酸塩基安定性により、エンドウオリゴペプチドセレンにおけるセレンのヒト内での消化吸収をさらに確保することもできれば、さらなるセレン補給ヘルスケア品の中間原料として使用される際に、後続加工の予期効果を保証することもできる。
【0013】
同時に、該エンドウオリゴペプチドセレンのDPPHフリーラジカル及びヒドロキシルフリーラジカル(・OH)に対する除去能力は、原料であるエンドウオリゴペプチドと比較して、いずれもはるかに向上しており、且つ該エンドウオリゴペプチドセレンはまた、比較的に強い抗酸化能力及び還元能力があり、その還元能力がエンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの単純な重ね合わせでなく、これにより、エンドウオリゴペプチドは、抗酸化ヘルスケア食品及びセレン補給ヘルスケア食品として開発されるのが非常に適切である。
【0014】
本発明のいくつかの実施例において、提供されるエンドウオリゴペプチドセレンは、酸可溶性タンパク質含有量が23%より高く、全窒素含有量が23%より高く、これは、エンドウオリゴペプチドセレンにおけるタンパク質の分子量が低いことを示しており、低分子量のタンパク質がヒトの吸収により有利である。
【0015】
具体的に、本発明のいくつかの実施例において、エンドウオリゴペプチドセレンに、分子量が1000u未満の成分が、85%以上占めており、これは、セレンがヒトの小分子オリゴペプチドに対する吸収につれて吸収されることにより有利である。
【0016】
さらに、エンドウオリゴペプチドセレンには、PPKIYP(Pro-Pro-Lys-Ile-Tyr-Pro)が含まれ、同定により、PPKIYPは抗酸化能力が比較的に強いペプチドフラグメントである。
【0017】
定量分析後に、エンドウオリゴペプチドセレンには、ペプチドフラグメントPPKIYPの質量含有量が25ng/mg以上で、一般的に25~35ng/mgである。
【0018】
さらに、エンドウオリゴペプチドセレンにはまた、ペプチドフラグメントTGRGAP(Thr-Gly-Arg-Gly-Ala-Pro)、HQMPKP(His-Gln-Met-Pro-Lys-Pro)及びTSSLP(Thr-Ser-Ser-Leu-Pro)が含まれる。
【0019】
定量分析後に、エンドウオリゴペプチドセレンには、TGRGAPの質量含有量が通常に25ng/mg以上で、一般的に25~35ng/mgであり、HQMPKPの質量含有量が通常50ng/mg以下で、一般的に40~50ng/mgであり、TSSLPの質量含有量が一般的に1~5ng/mgである。
【0020】
さらに、本発明のいくつかの実施例において、エンドウオリゴペプチドにおけるセレン含有量が0.08g/100g以上で、即ち、エンドウオリゴペプチドセレン100gあたりに、セレン元素の質量が0.08g以上で、これによりセレン補給効果をさらに確保することができる。
【0021】
本発明のいくつかの実施例において、該エンドウオリゴペプチドセレンは、エンドウオリゴペプチドの水溶液と亜セレン酸ナトリウム(Na2SeO3)との反応による生成物であってもよい。具体的に、エンドウオリゴペプチドの水溶液と亜セレン酸ナトリウムとを混ぜて、これから60~90℃の条件で20min以上反応を行い、得られた反応生成物をアルコール沈殿および乾燥に供して、エンドウオリゴペプチドセレンを得るようになる。
【0022】
上記エンドウオリゴペプチドとして、分子量が1000uより少ない成分含有量が80%より高いエンドウオリゴペプチドから選択するのが最適で、特に、分子量が1000uより少ない成分含有量が90%以上のエンドウオリゴペプチドから選択してもよい。本発明のいくつかの実施例において、該エンドウオリゴペプチドは、以下のような調製方法によって取得されることができる。エンドウタンパク質粉末(タンパク質含有量が80%より高い)を、材料と液体との比率が1:8~12になるように水と混ぜてミックスし、材料液体のpH値が8~10であるように調整し、温度を40~60℃に制御し、アルカリプロテアーゼと中性プロテアーゼとを添加し、2種類の酵素の投与量がいずれもエンドウタンパク質粉末質量の1.0~3.0%で、酵素分解時間が3~6時間である。酵素分解終了後、材料液体の酵素を不活性化にさせ、遠心分離をし、セラミック膜によりろ過(セラミック膜の孔径が50~200nmである)し、真空濃縮をさせ、滅菌し、最後に噴霧して粉末になるように乾燥して、エンドウオリゴペプチド粉末を調製して得ることができる。
【0023】
本発明はさらに、エンドウオリゴペプチドセレンの調製方法を提供し、エンドウオリゴペプチドの水溶液と亜セレン酸ナトリウムとを混ぜて、これから得られた混合システムを60~90℃の条件で20min以上反応を行い、得られた反応生成物をアルコール沈殿および乾燥に供して、エンドウオリゴペプチドセレンを得るステップを含む。
【0024】
紫外線全波長走査、走査型電子顕微鏡、フーリエ赤外分光法などの手段をもって検出することにより、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとが上記反応によって、新しいキレートが得られた。亜セレン酸ナトリウムにおけるセレンとエンドウオリゴペプチドとが共有結合の方式で安定して結合されると推測される。セレンイオンが(Se4+)配位結合の方式で、エンドウオリゴペプチドにおけるカルボキシル基とアミノ基とに結合されてもよい。即ち、Se4+により4d空軌道が提供され、OとNとにより孤立電子対が提供され、該4d空軌道をそれぞれ占用して安定した配位結合を形成し、これにより、エンドウオリゴペプチドセレンは、優れた熱安定性、酸塩基安定性及び体外消化安定性があり、セレンが順調に腸に入ることができ、腸粘膜でオリゴペプチドを摂取することによって間接的に吸収されるように確保し、これによりセレン補給効果を達成するとともに、得られたトウモロコシオリゴペプチドセレンがさらなる加工の中間原料として使用される際に、後続加工の予期効果を保証することもできるようになる。
【0025】
上記の理由により、、上記反応は、「キレート化反応」と呼ばれてもよいから、得られたエンドウオリゴペプチドセレンも、本分野の通常の呼び方にしたがって、「エンドウオリゴペプチドセレンキレート」又は「エンドウオリゴペプチドキレート化セレン」などと呼ばれてもよく、ここで、セレンとエンドウオリゴペプチドとの組み合わせ率も「キレート化率」で示される。
【0026】
エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの反応に対して、温度が大きく影響しており、温度の昇温につれて、キレート化率及びエンドウオリゴペプチドセレンの収率は、いずれも増加してからまた低下する傾向を見せている。本発明の具体的な実施過程では、より高いキレート化率と収率とを同時に得られるよう、一般的に、反応温度が70~90℃で、さらに80~85℃であるように制御している。
【0027】
本発明のいくつかの実施例において、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの質量比(ペプチド塩の質量比)は、一般的に、1~5:1になるように制御している。化学反応過程で、反応物の相対的な比率がいくつかのスペースキーの形成に影響を与える可能性がある。具体的に、本発明のいくつかの実施例において、エンドウオリゴペプチド対亜セレン酸ナトリウムの比率の増大(例えば1:1から5:1まで増大する)につれて、キレート化率は徐々に低下するが、エンドウオリゴペプチドセレンの収率は増加してからまた低下するようになっている。キレート化率と収率とを総合的に考慮すると、一般的に、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの質量比が2~4:1になるように制御している。
【0028】
本発明のいくつかの実施例において、エンドウオリゴペプチドの水溶液に、エンドウオリゴペプチドの濃度(ペプチド濃度)は一般的に、1~5g/100mLになるように制御している。ペプチド濃度の増加につれて、キレート化率とエンドウオリゴペプチドセレンとは、いずれも増加して、さらに安定になって、次に低下する変化傾向を見せている。キレート化率と収率を総合的に考慮すると、一般的に、ペプチド濃度が3~5g/100mLであるように制御している。
【0029】
エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの混合系のpH値を合理的に制御することは、より高いキレート化率と収率とを得ることに有利である。本発明のいくつかの実施例において、pH値を7.5~9になるように制御するなど、弱アルカリ性条件でキレート化反応を行うことは一般的である。エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとが完全に溶解したとき、混合系のpH値が約8程度であるため、pH値を調整しなくてもよいが、または反応前に、NaOH又は酢酸などを入れることによりpH値を調整してもよい。
【0030】
反応時間を合理に制御することは、最高値であるキレート化率と収率とを得ることにも有利である。一般的に、反応時間が延長することにつれて、キレート化率と収率とは、いずれも増加してからまた低下し、最後に徐々に安定するようになっていく傾向を見せている。本発明の具体的な実施過程では、キレート化率と収率、および時間コストを総合的に考慮すると、一般的に、反応時間を20min~60min内に制御している。
【0031】
理解されるものとして、反応原料とされるエンドウオリゴペプチドは、その分子量分布もエンドウオリゴペプチドセレンの最終分子量分布に影響を与え、本発明の具体的な実施過程では、選択されるエンドウオリゴペプチドとして、その分子量が1000uより小さい成分含有量は、80%より高いのが最適で、好ましくは、90%以上である。
【0032】
本発明のいくつかの実施例において、上記エンドウオリゴペプチドは、以下のような方法を採用し、製造して得られたものである。それは、エンドウタンパク質粉末(タンパク質含有量が80%より高い)を材料と液体との比率が1:8~12になるように水と混ぜてミックスし、材料液体のpH値が8~10であるように調整し、温度を40℃~60℃であるように制御し、アルカリプロテアーゼと中性プロテアーゼとを添加し、プロテアーゼ2種類の投与量が、いずれもエンドウタンパク質粉末質量の1.0~3.0%で、酵素分解時間が3~6時間であるような方法である。酵素分解終了後、材料液体の酵素を不活性化にさせた後に、遠心分離をし、セラミック膜によりろ過(セラミック膜孔径が50~200nmである)、真空濃縮をさせ、滅菌し、そして噴霧して粉末になるように乾燥して、上記要件が満たされるエンドウオリゴペプチド粉末を製造することができる。
【0033】
本発明はさらに、上記エンドウオリゴペプチドセレンのヘルスケア食品での用途を提供する。上記のように、該エンドウオリゴペプチドセレンは、優れた安定性があり、順調に腸に入ることができ、腸粘膜でオリゴペプチドを摂取することによって間接的に吸収され、これによりセレン補給効果を達成するため、該エンドウオリゴペプチドセレンは、新型セレン補給製剤として、セレン欠乏症人々に適用する栄養や機能食品に開発されてもよい。例えば、ミルクパウダー又はその他のヘルスケア食品に入れるか、または中間原料としてさらに加工してヘルスケア食品を得てもよい。且つ該エンドウオリゴペプチドは、DPPHフリーラジカル及びヒドロキシルフリーラジカルに対する除去能力が、原料であるエンドウオリゴペプチドと比較して、いずれもはるかに向上しており、比較的に強い還元能力及び抗酸化機能を有するため、抗酸化ヘルスケア食品及び抗酸化セレン補給食品の開発に特に適用する。
【0034】
本発明に係るエンドウオリゴペプチドセレンは、セレンがエンドウオリゴペプチドと共有結合の方式で結合され、且つ比較的に強い結合力を有するから、異なる消化方式に応じて、優れた安定性があり、ペプシンとトリプシンとの加水分解の後に、セレン含有量の低下幅が小さくなるため、セレン元素が順調に腸に入り、腸粘膜でオリゴペプチドを摂取することによって間接的に吸収され、これによりセレン補給効果を達成することができ、セレン補給ヘルスケア食品に応用すること、および中間原料として加工して予期商品を得ることも可能である。
【0035】
さらに、該エンドウオリゴペプチドセレンに、分子量が1000uより少ない成分は85%よりも高くし、且つセレン含有量が0.08g/100g以上であり、これによりセレン補給効果をさらに向上させることが可能になっている。
【0036】
且つ、該エンドウオリゴペプチドセレンのDPPHフリーラジカル及びOHフリーラジカルに対する除去能力は、原料であるエンドウオリゴペプチドと比較して、いずれもはるかに向上しており、該エンドウオリゴペプチドセレンはまた、比較的に強い抗酸化能力及び還元能力があるため、該エンドウオリゴペプチドセレンは、抗酸化ヘルスケア食品に用応用されることが可能になっている。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係るエンドウオリゴペプチドセレンの調製方法により、調製して得られたエンドウオリゴペプチドセレンにおけるセレンとオリゴペプチドとが安定した共有結合で結合され、エンドウオリゴペプチドセレンは、優れた熱安定性、酸塩基安定性、及び消化安定性があり、それに比較的に強い抗酸化能力及び還元能力があるように確保することを可能にさせるほか、且つ該還元能力がキレート化原料ペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの単純な重ね合わせでなく、該調製方法によって還元能力を向上させることである。
【0038】
同時に、エンドウオリゴペプチドセレンは、該調製方法を採用することで、以下のような利点があるようになる。水分含有量が一般的に14.17%±1.12%であるように比較的に低いため、大多数カビとブドウ球菌が阻害され、貯蔵することが容易になる。酸可溶性タンパク質含有量が23%以上で、全窒素含有量が23%以上であり、これは、エンドウオリゴペプチドセレンにおけるタンパク質の分子量がいずれも低いことを示している。1000u以下の分子量分布が占める割合は85%を超えて、そのうちのほとんどは500u以下であり、このため、ヒトによって吸収されるのに非常に有利である。セレン含有量が0.08g/100g以上であり、セレン補給効果を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明のセレン含有量を測定するために描かれるセレン標準曲線の図である。
【
図2】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドセレンの分子量分布ゲルクロマトグラムである。
【
図3】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドとエンドウオリゴペプチドセレンとの紫外線全波長走査図である。
【
図4】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドとエンドウオリゴペプチドセレンとの走査型電子顕微鏡による写真(×1000)である。
【
図5】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドとエンドウオリゴペプチドセレンとの赤外線スペクトル図である。
【
図6】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドセレンの異なる温度条件で処理されたセレン含有量の図である。
【
図7】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドセレンの異なる酸塩基条件で処理されたセレン含有量の図である。
【
図8】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドセレンの異なる消化方式で処理されたセレン含有量である。
【
図9】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドセレン及びその合成原料によるDPPHフリーラジカル除去の比較図である。
【
図10】VCによるDPPHフリーラジカル除去の対照図である。
【
図11】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドセレン及びその合成原料によるOHフリーラジカル除去の比較図である。
【
図12】VCによるOHフリーラジカル除去の対照図である。
【
図13】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドセレン及びその合成原料の還元能力の比較図である。
【
図15】ペプチドフラグメントTGRGAPの一次マススペクトル図である。
【
図16】ペプチドフラグメントTGRGAPの二次マススペクトル図である。
【
図17】ペプチドフラグメントPPKIYPの一次マススペクトル図である。
【
図18】ペプチドフラグメントPPKIYPの二次マススペクトル図である。
【
図19】ペプチドフラグメントHQMPKPの一次マススペクトル図である。
【
図20】ペプチドフラグメントHQMPKPの二次マススペクトル図である。
【
図21】ペプチドフラグメントTSSLPの一次マススペクトル図である。
【
図22】ペプチドフラグメントTSSLPの二次マススペクトル図である。
【
図23】合成ペプチドフラグメントTGRGAP標準品のマススペクトル図である。
【
図24】合成ペプチドフラグメントPPKIYP標準品のマススペクトル図である。
【
図25】合成ペプチドフラグメントHQMPKP標準品のマススペクトル図である。
【
図26】合成ペプチドフラグメントTSSLP標準品のマススペクトル図である。
【
図27】実験例1においてキレート化反応に対する温度の影響結果の図である。
【
図28】実験例2においてキレート化反応に対するペプチド塩の質量比の影響結果の図である。
【
図29】実験例3においてキレート化反応に対するエンドウオリゴペプチド濃度の影響結果の図である。
【
図30】実験例4においてキレート化反応に対するpH値の影響結果の図である。
【
図31】実験例5においてキレート化反応に対する反応時間の影響結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施例に係る図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明瞭で、且つ完全に説明し、当然ながら、記載される実施例は本発明の実施例の一部にすぎず、すべての実施例ではない。
【0041】
以下、実施例及び実験例に使用される原料情報は、以下のようにリストされている。
エンドウオリゴペプチド:自製である。亜セレン酸ナトリウム:分析的に純粋で、天津市大茂化学試薬場から購入される。3'3-ジアミノベンジジン(DAB 4HCl):試薬グレードである。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA-2Na):バイオテクノロジーグレードで、Biotopped Amresco製である。臭化水素酸:分析的に純粋で、天津市福晨化学試薬場製である。塩酸ヒドロキシルアミン、過塩素酸、硝酸、塩酸、水酸化ナトリウム、95%エタノール、トルエン、トリクロロ酢酸:分析的に純粋で、すべて北京化工場から購入される。ペプシン、トリプシン:南寧厖博生物有限公司製である。トリフルオロアセテート:分析的に純粋で、Alfa Aesar公司製である。アセトニトリル:クロマトグラフィー的に純粋で、Fisher会社製である。1,1-ジフェニル-2-トリニトロフェニルヒドラジン(DPPH):米国sigma会社製である。超純水:実験室で自製である。
【0042】
該エンドウオリゴペプチドは、具体的に以下のようなプロセスを採用し、調製して得られたものである。
エンドウタンパク質粉末(タンパク質含有量が約82%である)を材料と液体とが約1:10の比率で純水と混ぜてミックスし、均一にかき混ぜた後に、食品グレード水酸化ナトリウムを添加して材料液体のpH値が約9程度になるように調整し、温度を50±2℃に制御し、Alcalase 2.4L型アルカリプロテアーゼ2.5%及びNeutrase 0.8L型中性プロテアーゼ1.5%(2種類のプロテアーゼがすべてNovozymesから購入される)を添加し、酵素分解時間が約4.5時間程度である。酵素分解時間終了後、材料液体をプレート式熱交換器によって120±2℃まで昇温し、時間が約20sで、酵素不活性化された材料液体に対し、遠心分離をし、セラミック膜によりろ過し、真空濃縮をさせた後に滅菌し、そして噴霧して粉末になるように乾燥して、エンドウオリゴペプチド粉末を製造することができる。
【0043】
文献「劉文頴、林峰、金振濤などの、インビトロでのトウモロコシオリゴペプチドの抗酸化効果[J]. 食品科学, 2011, 32(5):22-26.」に記載の高性能ゲルろ過クロマトグラフィー方法を採用し、ピーク面積のパーセンテージによってエンドウオリゴペプチド分子量及び分布状況を確定し、ここで、分子量>5000uの成分が占める割合が0で、分子量が2000~5000uの成分が占める割合が0.95%で、分子量が1000~2000uの成分が占める割合が7.79%で、分子量が500~1000uの成分が占める割合が25.25%で、分子量が140~500uの成分が占める割合が60.50%で、分子量<140uの成分が占める割合が5.51%である。計算により、分子量が1000uより少ない成分が占める割合が91.26%である。
【0044】
以下、実施例及び実験例に使用される機器情報は、以下のようにリストされている。
EL20 pHメーター:Mettler Toledo製である。KQ-250E超音波発振器:昆山市超音波儀器有限公司製である。1204007恒温水浴槽:蘇州POXIWAR実験設備有限公司製である。マイクロプレートリーダー:Dynex Spectra Mr製である。DHG-9075A電気加熱恒温ブラスト乾燥オーブン:北京陸希科技有限公司製である。ユニバーサル電気炉:北京科偉永興儀器有限公司製である。LC-20AD 型高速液体クロマトグラフ:株式会社島津製作所製である。F30200150 ケルダールデバイス:Velp Scientifica社製である。
【0045】
以下、実施例及び実験例において、エンドウオリゴペプチドセレンを検出と評価する方法は、以下のようにリストされている。
1、分子量分布測定
高性能ゲルろ過クロマトグラフィー方法を採用して測定する。グリシン-グリシン-グリシン(分子量189)、グリシン-グリシン-チロシン-アルギニン(分子量451)、バチルス酵素(分子量1450)、アプロチニン(分子量6500)、シトクロムC(分子量12500)ような5種類のペプチド標準品を選択してそれぞれ0.1%(M/V)溶液に調製し、孔径が0.2μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターメンブレンを利用して試料をろ過して試料を注入し、相対分子量検量線を作成し、高速液体クロマトグラフを利用してゲルろ過を行う。移動相:V(アセトニトリル):V(水):V(トリフルオロアセテート)=45:55:0.1とし、試料注入体積が10μLで、流量が0.5mL/minで、検出波長が220nmで、カラム温度が30℃で、紫外線検出器を利用して検出し、GPCソフトウェアを使用してデータを処理する。試料のクロマトグラフィーデータを検量線方程式に代入して計算すると、試料のペプチド分子量及びその分布範囲を得ることができる。ピーク面積正規化法を利用して異なる分子量範囲ペプチドの相対パーセンテージを計算して得ることができる。
【0046】
2、セレン含有量測定
Na2SeO3・5H2Oを正確的に2.190g量り、少量超純水で溶解させた後に、48%臭化水素酸を入れ、そして超純水で容積を1Lまで定め、657.4746mg/Lのセレン標準原液として調製する。
【0047】
セレン標準原液を1mL吸い取り、超純水で容積を100mLまで定め、6.57μg/mLのセレン標準作業溶液として調製する。
【0048】
セレン標準作業溶液を0、2、4、6、8、10mL正確に量り取り、酸で分解後に、3, 3'-ジアミノベンジジンと還元セレンとが反応した後に生成される黄色複合体の420nmでの吸光度を測定し、具体的な操作方法は、文献「陳甫、賈▲冊▼▲冊▼、朱連勤等の、3,3'-ジアミノベンジジンによるセレンの分光光度定量[C].中国畜牧獣医学会家畜内科学分会代表大会及び年学術研討会.2011.」で提案された分光光度法を参照する。
【0049】
図1に示すように、セレン濃度を横座標として、吸光度と縦座標とし、セレン標準曲線を描く。
【0050】
一定の量の測定対象である試料を正確に量り、10mLの超純水で溶解させた後に、上記方法を採用して試料を処理し、そして処理された吸光度を測定する。標準曲線に対応してセレン含有量を確定する。
【0051】
3、キレート化率及び収率
キレート化率の計算式は、
キレート化率(%)=m1÷m2×100%であり、ここで、m1がエンドウオリゴペプチドセレンのセレン含有量(エンドウオリゴペプチドセレンでのセレン元素の質量)であり、m2が亜セレン酸ナトリウムでのセレン元素の質量である。
キレート収率の計算式は、
収率(%)=m3÷m4×100%であり、ここで、m3がキレート化生成物の質量であり、m4がキレート化体系に入れる物質総量の質量である。
【0052】
4、基礎的な物理的および化学的性質の測定
国家標準法GB 5009.3-2010を採用し、エンドウオリゴペプチドセレンの水分含有量を測定する。国家標準法GB 5009.5-2010を採用してエンドウオリゴペプチドセレンの全窒素(タンパク質)含有量を測定する。国家標準法GB 22729-2008を参照して、エンドウオリゴペプチドセレンでの酸可溶性タンパク質の含有量を測定する。
【0053】
5、熱安定性実験
エンドウオリゴペプチドセレン試料を超純水に溶けて、濃度が2mg/mLである溶液を調製し、溶液を30mL取り遠心分離管に置き、それぞれ25、40、60、80、100℃で恒温水浴を2h行い、ここで、25℃が室温対照群である。そして室温まで冷却し、分子量分布を検出して、3mLサンプリングして透析バッグに置き、60時間透析してセレン含有量を検出する。
【0054】
6、酸塩基安定性実験
エンドウオリゴペプチドセレン試料を超純水に溶けて、濃度が2mg/mLである溶液を調製し、溶液を30mL取り遠心分離管に置き、それぞれ1mol/LのHClと1mol/LのNaOHで各管のpHを3、5、7、9、11まで調整し、37℃の恒温水浴槽に2h放置し、同時に、1つの未処理の対照群を設置し、室温に冷却した後に分子量分布を検出して、3mLサンプリングして透析バッグに置き、60時間透析してセレン含有量を検出する。
【0055】
7、胃腸消化管の体外シミュレーション実験
7.1 ペプシン消化実験
エンドウオリゴペプチドセレン試料を超純水に溶けて、濃度が2mg/mLである溶液を調製し、溶液を40mL取り遠心分離管に置く。1mol/LのHClでpH=2になるように溶液を調整し、37℃の恒温水浴で20min予熱する。そして、6‰(材料比)のペプシンを添加し、均一に混ぜた後に20mL速く取り出し他の遠心分離管に置き、100℃の沸騰水浴で10min処理して消化前対照とする。残り部分を37℃の恒温水浴に置いて4h処理し、そして100℃の沸騰水浴で酵素を失活させる。室温で冷却されてから分子量分布を検出して、3mLサンプリングして透析バッグに置き、60時間透析してセレン含有量を検出する。
【0056】
7.2 トリプシン消化実験
エンドウオリゴペプチドセレン試料を超純水に溶けて、濃度が2mg/mLである溶液を調製し、溶液を40mL取り遠心分離管に置く。1mol/LのNaOHでpH=7.5になるように溶液を調整し、37℃の恒温水浴で20min予熱する。2‰(材料比)のトリプシンを添加し、均一に混ぜた後に20mL速く取り出し他の遠心分離管に置き、100℃の沸騰水浴で10min処理して消化前対照とする。残り部分を37℃の恒温水浴に置いて6h処理し、そして100℃の沸騰水浴で酵素を失活させ、室温で冷却されてから分子量分布を検出して、3mLサンプリングして透析バッグに置き、60時間透析してセレン含有量を検出する。
【0057】
7.3 先にペプシン消化実験、次にトリプシン消化実験
7.1のペプシン消化実験の方法にしたがってペプシン消化を行った後に、1mol/LのNaOHをもってpHが6.8になるように調整し、37℃の恒温水浴槽で20min予熱し、2‰(材料比)トリプシンを入れ、均一に混ぜた後に20mL速く取り出し他の遠心分離管に置き、100℃の沸騰水浴で10min処理して消化前対照とする。残り部分を37℃の恒温水浴に置いて6h処理し、そして100℃の沸騰水浴で酵素を失活させ、室温で冷却されてから分子量分布を検出して、3mLサンプリングして透析バッグに置き、60時間透析してセレン含有量を検出する。
【0058】
8、抗酸化機能評価
8.1 DPPHフリーラジカル除去能力の測定
濃度が異なる試料を取り0.1mol/LのDPPH-絶対エタノール溶液と1:1の体積比率で混ぜて、暗所で30min保管し、紫外線-可視スペクトルにおける517nmで混合液の吸光度を測定し、A
iと記す。相応的に、質量濃度が異なる試料溶液をもって絶対エタノール溶液と1:1の体積比率で均一に混ぜて、暗所で室温で30min保管し、紫外線-可視スペクトルにおける517nmで吸光度を測定し、A
jと記す。蒸留水を0.1mol/LのDPPH-絶対エタノール溶液と1:1の体積比率で均一に混ぜて、暗所で室温で30min保管し、紫外線-可視スペクトルにおける517nmで吸光度を測定し、A
cと記す。各実験を3回繰り返し、平均値を取り標準偏差を算出する。亜セレン酸ナトリウムとエンドウオリゴペプチドとをキレート化前の原料対照とし、アスコルビン酸をポジティブ対照とし、下式にしたがって試料のDPPHフリーラジカルに対する除去率を計算して得る。
【数1】
【0059】
8.2 OHフリーラジカル除去能力の測定
濃度が異なる試料溶液を取り、5mol/LのFeSO
4、5mol/Lのサリチル酸-絶対エタノール溶液と1:2:2の体積比率で均一に混ぜて、1体積の5mol/LのH
2O
2溶液で反応を開始し、37℃の水浴で1h反応し、紫外線-可視スペクトルにおける510nmで吸光度を測定し、A
2と記す。相応的に、1体積の水で5mol/LのH
2O
2溶液を代替し、その他の試薬の比率が変わらず、37℃の水浴で1h反応し、紫外線-可視スペクトルにおける510nmで吸光度を測定し、A20と記す。蒸留水で試料溶液を代替し、その他の試薬の比率が変わらず、37℃の水浴で1h反応し、510nmで吸光度を測定し、A
02と記す。各実験を3回繰り返し、平均値を取り標準偏差を算出する。亜セレン酸ナトリウムとエンドウオリゴペプチドとをキレート化前の原料対照とし、アスコルビン酸をポジティブ対照とし、下式にしたがって試料のOHフリーラジカルに対する除去率を計算して得る。
【数2】
【0060】
8.3 還元能力の測定
濃度が異なる試料溶液を取り、0.2mol/Lのリン酸緩衝液(pH6.6)、質量濃度が1%のK3[Fe(CN)6]溶液と1:1:1の体積比率で均一に混ぜて、50℃の水浴で10min保管した後に、冷水で早く冷却する。1体積比率で、質量濃度が10%のトリクロロ酢酸溶液を入れ、暗所で早く充分且つ均一に振り、そしてその中から1体積比率の反応混合物を取り出し、1体積比率の蒸留水と0.2体積比率で、質量濃度が0.1%のFeCl3溶液を入れ、暗所で充分且つ均一に振った後に、10min静置し、700nmで吸光度を測定し、A3と記す。亜セレン酸ナトリウムとエンドウオリゴペプチドとをキレート化前の原料対照とし、アスコルビン酸を全体対照とし、直接に吸光度A3を試料還元能力パラメータとする。各実験を3回繰り返し、平均値を取り標準偏差を算出する。
【0061】
9、ペプチドフラグメント同定及び抗酸化能力同定
【0062】
9.1 ペプチドフラグメント同定
(1)LC-MS/MSの設定
ペプチドフラグメントを液相クロマトグラフィー-タンデム質量分析法を利用して分析し、以下のようなパラメータで液相クロマトグラフィーを設定することにより分離させる。
【0063】
試料濃度が5mg/mLであり、Q Exactive質量分析計(LC-MS/MS、Thermo Scientific社)に接続されたUltimate 3000 HPLC液相システムを使用して30分間のグラジエント溶出を行い、流量が0.30μL/minである。分析カラムは、C18パッキング(300Å, 5μm, Varian, Lexington, MA)含有の自製石英キャピラリ(内径が75μmで、カラム長が15cmで、Upchurch, Oak Harbor, WA)である。移動相Aが0.1%ギ酸水であり、移動相Bが80%のアセトニトリル、0.1%のギ酸を含有する。
【0064】
Q Exactive質量分析は、Xcalibur 2.1.2 ソフトウェアデータ依存型収集方法を使用し、一次検出タイプがオービトラップで、一次全走査の質量範囲が100~1200m/zで、分解能が70,000で、信号強度の順に最初の20のイオンを選択して二次フラグメンテーションを行い、二次検出タイプがイオントラップで、分解能が17500で、衝突エネルギーが27%である。
【0065】
(2)データの処理
質量分析の生データは、それぞれデータベース及びペプチドフラグメントに対するデノボ配列決定(de novo方法)を利用して得られ、データベースで得られた疑わしいペプチドフラグメントとPEAKSでデータベースを検索して得られた疑わしいペプチドフラグメントとを比較する。
【0066】
Proteome Discoveryソフトウェア(Version PD1.4, Thermo-Fisher Scientific, USA)を使用してデータベースを検索し、検索条件は、酵素消化なしで、動的修飾は、oxidation(M)を含み、プリカーサーイオンの質量偏差は20ppmに設定され、二次質量偏差は0.02Daに設定され、PDライブラリのPercolatorを使用してFDR値を計算し、FDRがペプチドフラグメント偽陽性率を示す。q値が1%より小さいと、ペプチドスペクトルマッチングが正しいと見なすことができる。特定のタンパク質として指定されたペプチドフラグメントは唯一無二と見なすことができる。タンパク質認識に、偽陽性率が0.01に設定される。
【0067】
(3)ペプチドフラグメント合成
ペプチドフラグメント標準品は、上海吉爾生化有限公司GL Biochem (Shanghai) Ltd.によって提供される。ペプチドフラグメント合成ルートは、FMOC-ARG(PBF)-WANG RESIN 樹脂選定→ヘキサヒドロピリジンで樹脂でのFMOCを除去→HOBT及びDICを縮合剤として使用して第2のアミノ酸FMOC-CYS(TRT)-OH 反応に入れ→完全に反応された後に、続いてFMOCを除去して、次のアミノ酸に連結し、最後のアミノ酸に連結するまで循環させ→TFA溶液を使用してつくられた樹脂を処理し、粗生成物ポリペプチドを得て→粗生成物ポリペプチドを溶けて、グルタチオンを適切な比率で添加し、低温でかき混ぜ、6~12時間間隔でMSに移動して酸化状態を確認し、同時にスルフヒドリル検出剤を使用して完全に酸化されたかどうかを判断することに補助し→完全に酸化された後精製して標準合成ペプチドフラグメント(合成ペプチドフラグメント標準品)を得る。
【0068】
9.2 ペプチドフラグメント抗酸化性同定
ABTS+法を利用してエンドウオリゴペプチドセレン及びペプチドフラグメントの抗酸化性を同定し、Troloxを抗酸化標準物質として使用して標準曲線を描き、調製された標準合成ペプチドフラグメント(5mg/mL)及びエンドウオリゴペプチドセレン(5mg/mL)をそれぞれABTSキット(碧雲天)を使用して反応させ、734nmでその吸光度を測定し、抗酸化能力をそれぞれ調査する。
【0069】
9.3 ペプチドフラグメント定量分析
エンドウオリゴペプチドセレンのペプチドフラグメントに対して定量分析を行い、具体的な機器条件は以下の通りである。
【0070】
(1)機器試薬情報
機器モデルがHPLC-MS/MS(LC液相がDIONEX社製で、Ultimate3000-MS質量分析が米国AB社のAPI 3200 Q TRAPである)であり、メタノール、ニトリルなどはすべてfisher社から購入する。
【0071】
(2)試料前処理
適量の蒸留水及び等体積のタンパク質沈殿剤(アセトニトリル、内部標準100ng/mL含有)を加え、2minボルテックスし、2min超音波をかけ、13200回転で4min遠心分離し、上澄みを取り測定対象にする。
【0072】
(3)液相条件:
クロマトグラフィーカラム:MSLAB HP-C18(150*4.6mm 5μm 120a)、カラム温度:50℃、流量:1mL/min。
移動相:A水相:水(2MMOL/Lギ酸アンモニウム)、B有機相:アセトニトリル(2MMOL/Lギ酸アンモニウム)。
試料注入量:10μL。
グラジエント:0~2min:95%A+5%B、2.1~5.0min:20%A+80%B、5.1~7 min:0%A+100%B、7.1~10min:95%A+5%B。
【0073】
【0074】
10、統計学処理
SPSS 13.0ソフトウェアを採用して実験データに対して統計学処理を行い、t検定を使用して組間の比較を行い、P<0.05の場合、両者の差異が著しいである。
【0075】
実施例1
【0076】
エンドウオリゴペプチド5gを超純水100mLに溶けて、5g/100mLのエンドウオリゴペプチド水溶液を調製して得て、そして、亜セレン酸ナトリウムを2.5g入れ、超音波発振器でよく混ぜる。pHが9.0になるように調整し、恒温水浴が80℃である条件で30min反応させる。熱いうちに4倍の体積量の95%エタノールを注ぐ。一晩静置する。上澄み液を捨て、残り部分を35℃の恒温ブラスト乾燥オーブンで乾燥させ、エンドウオリゴペプチドセレンを得る。
【0077】
実施例2
【0078】
エンドウオリゴペプチド4gを超純水100mLに溶けて、4g/100mLのエンドウオリゴペプチド水溶液を調製して得て、そして、亜セレン酸ナトリウムを2g入れ、超音波発振器でよく混ぜる。pHが8.0になるように調整し、恒温水浴が85℃である条件で30min反応させる。熱いうちに4倍の体積量の95%エタノールを注ぐ。一晩静置する。上澄み液を捨て、残り部分を35℃の恒温ブラスト乾燥オーブンで乾燥させ、エンドウオリゴペプチドセレンを得る。
【0079】
実施例3
【0080】
エンドウオリゴペプチド5gを超純水100mLに溶けて、5g/100mLのエンドウオリゴペプチド水溶液を調製して得て、そして、亜セレン酸ナトリウムを1.67g入れ、超音波発振器でよく混ぜる。pHが8.0になるように調整し、恒温水浴が90℃である条件で30min反応させる。熱いうちに4倍の体積量の95%エタノールを注ぎ、一晩静置する。上澄み液を捨て、残り部分を35℃の恒温ブラスト乾燥オーブンで乾燥させ、エンドウオリゴペプチドセレンを得る。
【0081】
実施例4
【0082】
エンドウオリゴペプチド3gを超純水100mLに溶けて、3g/100mLのエンドウオリゴペプチド水溶液を調製して得て、そして、亜セレン酸ナトリウムを1.5g入れ、超音波発振器でよく混ぜる。pHが8.5になるように調整し、恒温水浴が90℃である条件で30min反応させる。熱いうちに4倍の体積量の95%エタノールを注ぎ、一晩静置する。上澄み液を捨て、残り部分を35℃の恒温ブラスト乾燥オーブンで乾燥させ、エンドウオリゴペプチドセレンを得る。
【0083】
上記実施例1~4におけるエンドウオリゴペプチドセレンを検出し、ここで、基礎的な物理的および化学的性質を表1に示す。表1から分かるように、実施例1~4によって得られたエンドウオリゴペプチドセレンの基礎的な物理的および化学的性質が似ており、酸可溶性タンパク質含有量がいずれも23%以上で、全窒素含有量がいずれも23%以上であり、酸可溶性タンパク質が粗タンパク質の97%以上を占め、これは、エンドウオリゴペプチドセレンにおけるタンパク質の分子量がすべて低いことを示しており、ヒトの吸収に有利である。
【0084】
実施例1~4において、エンドウオリゴペプチドセレンの水分含有量がいずれも14.17%±1.12%範囲内にある。この水分含有量は水分含有量が15~17%の小麦粉の水分含有量に相当し、対応するaw値が0.80~0.87であり、大多数のカビとブドウ球菌が阻害できるため、貯蔵することが容易になる。
【0085】
表1に示すように、実施例1~4において、エンドウオリゴペプチドセレンのセレン含有量がいずれも0.08g/100g以上で、セレン含有量が高いエンドウオリゴペプチドセレン生成物を得られることが証明される。実施例1~4に係る方法を採用してさらに計算すると、エンドウオリゴペプチドセレンのキレート化率が20%以上で、ひいては50%以上に達することができ、同時に、エンドウオリゴペプチドセレンの収率が10%以上で、ひいては30%以上に達することができる。
【0086】
【0087】
実施例1~4で調製して得られたエンドウオリゴペプチドセレンの具体的な分子量分布状況を表2に示す。ここで、実施例1においてエンドウオリゴペプチドセレンの分子量分布ゲルクロマトグラムを
図2に示す。
【0088】
表2及び
図2から分かるように、85%を超えた分子量分布が1000u以下で、最も高い含有量は<500uの小さなペプチドであり、約68%以上を占め、この種の小さなペプチドは生物体内でより機能しやすい。
【0089】
【0090】
実施例1で調製して得られたエンドウオリゴペプチドセレンを試料として、以下のようなテスト、キャラクタリゼーション及び評価を行い、以下を含む。
【0091】
1、紫外線全波長走査
エンドウオリゴペプチド水溶液とエンドウオリゴペプチドセレン水溶液をそれぞれ0.05g/mL調製し、紫外線全波長走査を行い、走査波長範囲が200~600nmで、結果を
図3に示す。
【0092】
図3から分かるように、エンドウオリゴペプチドは309nmで最大吸収ピークがあり、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとが反応してエンドウオリゴペプチドセレンを形成するとき、最大吸収ピークが322nmに赤方偏移して、且つ最大吸収ピークのO.D値も増加した。これは、エンドウオリゴペプチドの物質構造に変化が発生し、セレン元素とペプチドの組み合わせによって光に対する吸収性能がより強くなる構造が形成され、これはエンドウオリゴペプチドとセレンとが反応した後に、価電子遷移の程度の変化の結果であることを証明している。
【0093】
2、走査型電子顕微鏡による写真
図4(a)と
図4(b)とは、それぞれエンドウオリゴペプチドとエンドウオリゴペプチドセレンとの走査型電子顕微鏡による写真である。
図4(a)から分かるように、反応前に、エンドウオリゴペプチドは明らかな球形の粒状であり、1000倍の倍率で、エンドウオリゴペプチド粒子表面にひだが存在し、完全な粒子の粒径がいずれも50μmより小さい。
図4(b)から分かるように、反応後に、エンドウオリゴペプチドセレンの粒子の形状が大きく変化し、球状形態を失った。最も遠い粒径が300μmより大きい。エンドウオリゴペプチドセレンの表面ひだの大部分が展開し、且つ穴が存在する。粒子は前後で明らかな変化があり、2種類の物質であることが証明される。キレート化反応によって、エンドウオリゴペプチドの表面が展開し、構造に変化が発生し、これによりセレンとの結合部位を提供すると推測される。
【0094】
3、フーリエ赤外分光法
図5に示すように、エンドウオリゴペプチド(pea oligopetide)とエンドウオリゴペプチドセレン(chelta)との吸収ピークを比べて、ピークの形状が変化した。具体的に、エンドウオリゴペプチドは吸収ピークが3040cm
-1、954cm
-1付近にあり、-COOHの存在が証明されるが、エンドウオリゴペプチドセレンは吸収ピークが3040cm
-1付近で狭くなり、954cm
-1付近で非常に弱くなるから、遊離カルボキシル基が存在せず、カルボキシル基が共有結合の形でセレンと結合する可能性があることが証明される。エンドウオリゴペプチドセレンは3158cm
-1及び3436cm
-1付近に二重ピークがあり、1216cm
-1付近にピークがあるから、-NH
2が存在し、且つ-NH
2がフリーラジカルであることが証明される。
【0095】
理論的に分析すると、エンドウオリゴペプチドセレンのキレート化メカニズムはSe4+と-NH2とが結合し、カルボキシル基も共有結合でSe4+と結合する。エンドウオリゴペプチドセレンキレートに、Se4+により4d空軌道が提供され、OとNとにより孤立電子対が提供され、空軌道をそれぞれ占用して配位結合を形成することができると推測される。この推測もその他の関連研究に一致し、具体的に、文献「高菲, 王維有, 魯軍等の、海産魚コラーゲンペプチドカルシウムキレートの調製と赤外分光法によるキャラクタリゼーション[J]. 中国海洋大学学報(自然科学版), 2015, 45(1):47-54.」および文献「宋莎莎, 高菲, 任迪峰等の、黒骨ニワトリペプチド鉄(II)キレートの調製とその赤外分光法による同定[J]. 食品及び発酵工業, 2013, 39(6):13-17.」を参照してもよい。
【0096】
4、エンドウオリゴペプチドセレンの熱安定性
エンドウオリゴペプチドセレンは40、60、80、100℃で2h処理された後に、その分子量分布を表3に示す。表3から分かるように、熱処理後に、エンドウオリゴペプチドセレンに、1000u未満の分子量が占める割合は93%前後で変動し、1000uよりも大きい分子量が占める割合の変化範囲は2%よりも小さい。
【0097】
【0098】
全体からみると、温度の影響により140~1000uの比率が増加するようになった。異なる温度で処理された後に、エンドウオリゴペプチドセレンのセレン含有量を
図6に示す。対照に比べて、エンドウオリゴペプチドセレンは、異なる温度によって処理された後に、セレン含有量に顕著な差異が観察されない(a=0.05)。エンドウオリゴペプチドセレンは、優れた熱安定性があることが証明される。エンドウオリゴペプチドがタンパク質の一次構造しか持たず、温度に対して強い耐受能力を有するからである可能性があると推測される。
【0099】
5、エンドウオリゴペプチドセレンの酸塩基安定性
エンドウオリゴペプチドセレンキレートは異なるpH値条件で処理された後に、その分子量分布を表4に示す。中性条件で、140u未満の分子量が占める割合は約10%増加し、同列で変化が最も大きい。これは、この種の小さなペプチド(特に500u未満の分子量)は酸塩基環境に耐性があるが、中性条件で破壊されやすくなるからである可能性がある。1000uより少ない分子量は比率が大きく変化せず、最大変化率が3%を超えない。さらにペプチド鎖が酸塩基環境に耐性があることが証明されることができる。
【0100】
【0101】
図7では、異なるpHで処理された後にセレン含有量の変化を呈している。略酸性及び中性環境で、セレン含有量が著しく低下し(a=0.05)、変化率が約20%程度である。アルカリ性環境で、セレン含有量が小さく変化する。しかし、pHが3~11内で、セレン含有量が依然として78%以上のままであることは、エンドウオリゴペプチドとセレンのキレート化の生成物が酸塩基環境に対して強い安定性を有することを証明する。
【0102】
6、エンドウオリゴペプチドセレンの体外消化安定性
エンドウオリゴペプチドセレンは、それぞれペプシン、トリプシンで処理され、先にペプシンで処理されて次にトリプシンで処理され、分子量分布結果を表5に示す。表5から分かるように、エンドウオリゴペプチドセレンは異なる体外消化方式で処理された後に、1000u未満の分子量が占める比率は増加し、ここで、ペプシンによって処理されたエンドウオリゴペプチドセレンは分子量が約7%増加し、トリプシンによって処理されたエンドウオリゴペプチドセレンが約9%増加し、先にペプシンで処理されて次にトリプシンで処理されたエンドウオリゴペプチドセレンが約12%増加した。これは、エンドウオリゴペプチドが酵素によって消化処理され、より小さな分子量のペプチドフラグメントに分解されたことを証明する。酵素分解後に、1000u以下の比率がいずれも90%以上であり、小分子ペプチドフラグメント、特にジペプチド、トリペプチドがヒトの吸収に有利である。
【0103】
図8に示すように、異なる消化方式で処理された後に、エンドウオリゴペプチドセレンにはセレン含有量の変化が小さくし、消化処理前の変化に比べていずれも3%より小さい。エンドウオリゴペプチドセレンは、分子量分布の変化表を参照して、酵素による消化された後に、加水分解によって小さなペプチドフラグメントに分解されたが、セレンとペプチドとの配位構造が完全に破壊されないから、エンドウオリゴペプチドとセレンとの配位結合が比較的に安定しており、ペプチド鎖の切断に伴って破壊されることがないことが推測できる。セレンは、小さなペプチドフラグメントに伴って胃液と腸液とを安定して通過し、最後に腸で小腸粘膜のペプチドに対する吸収により間接的に吸収されることができる。
【0104】
【0105】
7、エンドウオリゴペプチドセレンキレートのDPPHフリーラジカル除去
図9では、■、●、▲はそれぞれ亜セレン酸ナトリウム、エンドウオリゴペプチド及びエンドウオリゴペプチドセレンを代表する。
図9に示すように、亜セレン酸ナトリウムのDPPHフリーラジカルに対する除去能力が弱く、且つ亜セレン酸ナトリウムの濃度に関係なく、その除去率がほぼ約20%程度に安定されている。
【0106】
エンドウオリゴペプチドはDPPHフリーラジカルに対する除去能力があり、且つ除去率がエンドウオリゴペプチド濃度の増加につれて増加し、放物線状の傾向を呈しており、除去変化率が徐々に下がり、放物線式にしたがってエンドウオリゴペプチドのDPPHフリーラジカルに対する除去のIC50値が3.39±0.02mg/mLであると計算して得る。
【0107】
エンドウオリゴペプチドセレンのDPPHフリーラジカルに対する除去能力が比較的に強く、且つキレート用量の変化に伴って変化する。キレート濃度の上昇につれて、そのDPPHフリーラジカルに対する除去率も徐々に上昇し、キレート濃度が5mg/mLより小さい濃度範囲内に、除去率の変化傾向がほぼ直線的であり、濃度が上昇し続けることにつれて、除去変化率が徐々に緩やかになり、放物線状の傾向を呈するようになる。
【0108】
計算により、エンドウオリゴペプチドセレンのIC
50=1.77±0.01である。キレート化後に、キレートのDPPHフリーラジカルに対する除去能力が強くなり、原料であるエンドウオリゴペプチド及び亜セレン酸ナトリウムよりも強くし、そのIC
50値がほぼエンドウオリゴペプチドの半分である。
図10にしたがって計算すると、ポジティブ対照アスコルビン酸のIC
50値が4.85±0.02μg/mLである。
【0109】
8、エンドウオリゴペプチドセレンキレートのOHフリーラジカル除去
図11では、■、●、▲はそれぞれ亜セレン酸ナトリウム、エンドウオリゴペプチド及びエンドウオリゴペプチドセレンを代表する。
図11に示すように、亜セレン酸ナトリウム濃度の上昇につれて、そのOHフリーラジカルに対する除去能力がほぼ直線的変化を呈しており、且つ傾きが大きい。亜セレン酸ナトリウム濃度が5mg/mLである場合、そのOHフリーラジカルに対する除去率が100%に達することができる。フィッティングカーブ式にしたがって亜セレン酸ナトリウムのOHフリーラジカル除去のIC
50=1.23±0.02mg/mLを計算して得る。
【0110】
エンドウオリゴペプチドはOHフリーラジカルに対して一定の除去能力があり、且つ除去率がエンドウペプチド濃度の増加につれて放物線状の変化傾向を呈する。フィッティング放物線方程式にしたがって、エンドウオリゴペプチドのOHフリーラジカル除去のIC50値が23.55±0.07mg/mLであると算出した。
【0111】
エンドウオリゴペプチドセレンのOHフリーラジカルに対する除去能力が強く、
図11から見られるものとして、その濃度が5mg/mLより小さい範囲内に、除去率が濃度変化につれて直線的曲線に近く、傾きが大きいが、濃度が増加し続けることにつれて、除去曲線の変化が緩やかになる傾向があり、傾きが小さくなり、エンドウオリゴペプチドの変化傾きとほぼ同じである。濃度が5mg/mLより小さい範囲内に、エンドウオリゴペプチドセレンのOHフリーラジカルに対する除去能力が亜セレン酸ナトリウム濃度から大きい影響を受けるが、この範囲を超えたら、亜セレン酸ナトリウムのOHフリーラジカルに対する除去能力が飽和状態になり、エンドウオリゴペプチドセレンのフリーラジカルに対する除去能力が主に原料であるエンドウオリゴペプチド濃度から影響を受けているとと推測される。フィッティング曲線にしたがってエンドウオリゴペプチドセレンのOHフリーラジカルを除去するIC
50値が3.28±0.04 mg/mLであると算出した。
図12にしたがって計算すると、ポジティブ対照アスコルビン酸のOHフリーラジカルを除去するIC
50値が1024.87±5.96μg/mLである。
【0112】
9、エンドウオリゴペプチドセレンの還元能力
図13では、■、●、▲はそれぞれ亜セレン酸ナトリウム、エンドウオリゴペプチド及びエンドウオリゴペプチドセレンを代表する。
図13に示すように、亜セレン酸ナトリウムは還元能力がない。エンドウオリゴペプチド還元能力がその濃度の増加につれて増加して、且つ変化が直線的傾向を呈している。エンドウオリゴペプチドセレンの還元能力もその濃度の増加につれて増加し、変化も直線的ものに近い傾向であるが、エンドウオリゴペプチドセレンの還元能力が原料であるエンドウオリゴペプチドより高い。
【0113】
図14に示すように、ポジティブ対照アスコルビン酸の還元能力は濃度の変化につれて放物線状変化傾向を呈する。アスコルビン酸の濃度が200μg/mLより小さい範囲内に、曲線変化が直線的ものに近くし、濃度が徐々に上昇することにつれて、還元能力の変化率が徐々に低下する。アスコルビン酸の還元能力に対応する吸光度が約1.6である場合、必要とされるアスコルビン酸の濃度が400μg/mLであり、相応的に、この吸光度に達するには、必要とされるエンドウオリゴペプチドセレン濃度が50mg/mLである。エンドウオリゴペプチドは濃度が50mg/mLである場合、その達することができる吸光度が約0.8しかない。
図13から、エンドウオリゴペプチドセレン還元能力の向上は原料であるエンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの単純な重ね合わせでなく、キレート化技法によって還元能力を増強させることが推測されることができる。
【0114】
10、エンドウオリゴペプチドセレンのペプチドフラグメント同定及び抗酸化能力
エンドウオリゴペプチドセレンの可能なペプチドフラグメントを正確的に同定するために、データベースとPEAKSデータベース検索結果によって同定された結果を比較し、可能なペプチドフラグメントを探し出す。データベースによって同定されたペプチドフラグメントを、de novo方法でPEAKSデータベース検索結果によって同定されたペプチドフラグメントと組み合わせて分析して比較し、信頼できるペプチドフラグメントを4本選択し、質量分析構造の同定を行う。
【0115】
選択された4本の信頼できるペプチドフラグメントの一次マススペクトルと二次マススペクトルは
図15乃至
図22を参照し、4本の標準合成ペプチドフラグメントのマススペクトルは
図23乃至
図26を参照し、質量分析構造の同定結果および定量分析結果は表6を参照し、標準合成ペプチドフラグメント及びエンドウオリゴペプチドセレンの抗酸化性の同定結果は表7を参照する。
【0116】
表7により分かるものとして、エンドウオリゴペプチドセレンは比較的に強い抗酸化能力がある。質量分析によって同定された4本のペプチドフラグメントで、PPKIYPがエンドウオリゴペプチドセレンで抗酸化能力が比較的に強いペプチドフラグメントである。
【0117】
【0118】
【0119】
実験例1 反応温度のキレート化結果に対する影響
エンドウオリゴペプチド水溶液の濃度が1%(即ち、1g/100mL)であり、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの質量比(ペプチド塩の質量比)が2:1で、pH値が8.5で、それぞれ60、70、80、85、90℃条件で30min反応させ、反応温度の収率とキレート化率とに対する影響を調査する。
【0120】
図27から分かるように、温度のキレート化反応に対する影響が大きく、温度の昇温につれて、キレート化率と収率とがいずれも徐々に上昇し、温度の昇温がキレート化過程の進行に寄与することが証明される。温度が85℃を超えた場合、収率が徐々に低下するが、キレート化率が基本的に変わらないように保たれ、温度が高すぎるのも反応が阻止されるようになることが証明される。分散分析により、85℃組の収率は、80℃組との差異が著しく、他の組(80℃以外)との差異が極めて著しく、85℃でのキレート化率は、80℃及び90℃との差異が著しくなく、他の組(80℃、90℃以外)との差異が極めて著しいため、一般的、反応温度が70~90℃であるように制御し、好ましくは、80~85℃である。
【0121】
実験例2 ペプチド塩の質量比のキレート化結果に対する影響に関する研究
エンドウオリゴペプチド水溶液の濃度が1%(即ち1g/100mL)で、pH値が8.5で、反応温度が85℃に設定され、それぞれペプチド塩の質量比が1:1、2:1、3:1、4:1、5:1の条件で30 min反応し、ペプチド塩の質量比の収率とキレート化率とに対する影響を調査する。
【0122】
図28から分かるように、ペプチド塩の質量比が徐々に増加することに伴って、キレート化率が徐々に低下するが、収率が徐々に増加し、2つの指標の変化傾向が逆であり、ペプチド塩の質量比の増加に伴って、ペプチド濃度が変わらないように保たれると、塩の質量が減少する。塩質量の減少は、キレート化率を低下させる主な原因である。しかし、ペプチド塩の質量比が3:1を超えた場合、生成物収率も低下する傾向を呈するが、キレート化率の低下傾向が徐々に緩やかになる。ペプチド塩の質量比が3:1である条件が、キレート化収率が最高値に達する条件である。分散分析により、3:1である場合の収率及びキレート化率は、他の組と比較すると、差異が極めて著しいから、一般的に、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの質量比が2~4:1であるように制御される。
【0123】
実験例3 ペプチド濃度の収率とキレート化率とに対する影響
ペプチド塩の質量比が3:1で、キレート化pH値が8.5で、キレート化温度が85℃に設定され、それぞれエンドウオリゴペプチド水溶液の濃度が2%(即ち2g/100mL)、3%(即ち3g/100mL)、4%(即ち4g/100mL)、5%(即ち5g/100mL)の条件で30min反応させる。ペプチド濃度の収率とキレート化率とに対する影響を調査する。
【0124】
図29から分かるように、エンドウオリゴペプチド水溶液の濃度の増加に伴って、キレート化率と収率とがいずれも先に増加して、さらに安定になって、さらに低下する変化傾向を見せている。分散分析により、ペプチド濃度が3%である場合の収率とキレート化率は、他の組(4%以外)の2つの指標と比較すると、差異が極めて著しいが、4%での2つの指標と比較すると、差異が著しくないため、一般的に、エンドウオリゴペプチド水溶液の濃度を3~5g/100mLに制御する。
【0125】
実験例4 反応pH値の収率とキレート化率とに対する影響
エンドウオリゴペプチド水溶液の濃度が4%(4g/100mL)に設計され、ペプチド塩の質量比が3:1で、キレート化温度が85℃に設定され、それぞれキレート化pHが6.5、7、8、8.5、9である条件で30min反応させ、反応pH値の収率とキレート化率とに対する影響を調査する。
【0126】
図30から分かるように、溶液pH値の増加に伴って、キレート化率と収率とが全体的に増加する傾向を呈するが、pHが8を超えたら、2つの指標が低下する傾向を呈しており、徐々に緩やかになっていく。これは、該キレート化反応が弱アルカリ性の環境で反応結果がよりよくなることが証明される。分散分析により、pH=8の場合、収率及びキレート化率は、他の組と比較すると、いずれも差異が極めて著しい。且つ事実上、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとが完全に溶解したとき、溶液のpH値が約8程度である。
【0127】
実験例5 反応時間の収率とキレート化率とに対する影響
エンドウオリゴペプチド水溶液の濃度が4%(4g/100mL)で、ペプチド塩の質量比が3:1で、キレート化温度が85℃に設定され、キレート化pH値が8.5であり、それぞれ20、30、40、50、60min反応させ、反応時間の収率とキレート化率とに対する影響を調査する。
【0128】
図31から分かるように、キレート化時間が延長することに伴って、キレート化率と収率とが徐々に増加する。キレート化時間が30minを超えたとき、キレート化率と収率とがいずれも低下して、一定値の範囲内に安定して変動する。分散分析により、30min場合の収率及びキレート化率は、20min組の2つの指標との差異が極めて著しいレベルに達し、他の組(20min組以外)との差異が著しい。40、50、60min組間の2つの指標は差異が著しくない。
【0129】
以上の各実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためのものだけであり、当業者であれば、依然として前述の各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、またはそのうちの一部又はすべての技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の主旨から逸脱しない。
【手続補正書】
【提出日】2021-04-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレンキレートエンドウオリゴペプチド及びその調製方法と用途に関し、特に、安定性が高く、ヒトによって効果的に吸収されて、抗酸化性能に優れたセレンキレートエンドウオリゴペプチド及びその製造技法と用途に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な代謝モデルによれば、タンパク質がアミノ酸に加水分解されてから生物体によって吸収されて利用することができるが、近年来の研究によると、動物がタンパク質に対する需要も一定の量の小分子活性ペプチドに依存し、それに、オリゴペプチドがヒトの腸において専用担体や吸収通路を有し、完全な形で小腸に入って吸収されえると証明される。
【0003】
エンドウオリゴペプチドは、エンドウタンパク質が酵素分解又は加水分解の後に得られた小分子ペプチド物質である。エンドウオリゴペプチドは、抗菌、抗酸化、ACE阻害などの活性があり、幅広い用途を持つ生理活性ペプチドであることがすでに報道された。
【0004】
セレンは、ヒトが外界から取り入れなければならない微量元素の1種であり、人間の生活活動を維持する上で重要な役割を果たしている。セレン欠乏症は人間免疫力を弱め、ケシャン病などの病気を引き起こす可能性もあることが研究によって証明されている。
【0005】
現在、食物の正常摂取以外に、一般的なセレン補給方法として、亜セレン酸ナトリウムなどの無機セレンを内服する方法が挙げられる。しかし、無機セレンより有機セレンのほうは毒性が低く、吸収率がより高いことが研究によって証明されているため、大豆ペプチドセレンキレート、霊芝ペプチドセレンキレート、魚頭タンパク質ペプチドセレンキレートなどの関連オリゴペプチドセレン形の有機セレン生成物に関する研究報道が次々と現れるが、エンドウオリゴペプチドやセレンのキレート化に関する報道が滅多にない一方、セレン元素をオリゴペプチド分子に導入し、得られたオリゴペプチドセレン(通常、キレート化セレンと呼ばれる)の分子安定性により、オリゴペプチドセレンをそのまま商品として直接に使用し、有効なセレン補給を確保するか、オリゴペプチドセレンをさらなる加工の中間的原料として、後続加工の予期効果を保証するか、いずれもこの種の商品研究において注目される課題とされているが、ヒトによって有効的に吸収されて、且つ安定して組み合わせられたセレンキレートエンドウオリゴペプチドは、さらにまれなものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術における上記欠陥に対し、本発明は、性能が安定して、腸を通してヒトによって効果的に吸収されてセレンの有効補充を実現するセレンキレートエンドウオリゴペプチドを提供する。
【0007】
本発明は、セレンキレートエンドウオリゴペプチドの調製方法を提供し、該調製方法を採用すると、上記セレンキレートエンドウオリゴペプチドを取得するだけでなく、キレート化率が高く、収率が高いという利点もある。
【0008】
本発明はまた、上記セレンキレートエンドウオリゴペプチドのヘルスケア食品における用途をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を実現するために、本発明によって提供されるセレンキレートエンドウオリゴペプチドは、
pH値が2で、温度が37℃である条件で、ペプシンを採用して4時間加水分解を行う方式、
pH値が7.5で、温度が37℃である条件で、トリプシンを採用して6時間加水分解を行う方式、
温度を37℃で一定に保ち、まずpH値が2である条件で、ペプシンを採用して4時間加水分解を行い、そしてpH値が6.8である条件で、トリプシンを採用して引き続き6時間加水分解を行う方式という3種の方式のうちの少なくとも1種の消化処理の後に、セレン含有量が消化処理前の変化率に比べて3%を超えない。
【0010】
本発明によって提供されるセレンキレートエンドウオリゴペプチド(又は、エンドウオリゴペプチドセレンキレートとも呼ばれる)は、上記消化処理の後に、セレン含有量が消化処理前の変化率に比べて(正確的に、低下比率)3%を超えない。さらに研究によって、ほぼ大多数のセレンは、共有結合(より正確的に、配位結合で)の方式でエンドウオリゴペプチドと組み合わせて、且つ両者間の共有結合が比較的に安定しており、これにより、セレン元素は、エンドウオリゴペプチドに伴って胃や腸を安定的に通過して最終的に小腸粘膜のエンドウオリゴペプチドに対する完全な吸収により間接的に吸収されることが証明されている。
【0011】
さらに、該セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、優れた熱安定性があり、100℃以下で2h熱処理された後に、セレン含有量が熱処理前に比べて、対照比に顕著な差異が観察されなく、変化率が3%を超えない。即ち、セレンキレートエンドウオリゴペプチドを水に分散させたシステムが100℃以下で2h処理された後に、セレン含有量が対照群の97%以上である。セレンのヒト内での消化吸収をさらに確保することもできれば、さらなる加工の中間原料として使用される際に、後続加工の予期効果を保証することもできる。
【0012】
さらに、該セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、優れた酸塩基安定性があり、pHが3~11で、温度が37℃である条件で2h処理された後に、セレン含有量が処理前の対照比に比べて、変化率が25%を超えない。即ち、セレンキレートエンドウオリゴペプチドを水に分散させたシステムが酸性、アルカリ性又は中性条件で2h処理された後に、セレン含有量が酸塩基処理が施されない対照群の75%以上である。優れた酸塩基安定性により、セレンキレートエンドウオリゴペプチドにおけるセレンのヒト内での消化吸収をさらに確保することもできれば、さらなるセレン補給ヘルスケア品の中間原料として使用される際に、後続加工の予期効果を保証することもできる。
【0013】
同時に、該セレンキレートエンドウオリゴペプチドのDPPHフリーラジカル及びヒドロキシルフリーラジカル(・OH)に対する除去能力は、原料であるエンドウオリゴペプチドと比較して、いずれもはるかに向上しており、且つ該セレンキレートエンドウオリゴペプチドはまた、比較的に強い抗酸化能力及び還元能力があり、その還元能力がエンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの単純な重ね合わせでなく、これにより、セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、抗酸化ヘルスケア食品及びセレン補給ヘルスケア食品として開発されるのが非常に適切である。
【0014】
本発明のいくつかの実施例において、提供されるセレンキレートエンドウオリゴペプチドは、酸可溶性タンパク質含有量が23%より高く、全窒素含有量が23%より高く、これは、セレンキレートエンドウオリゴペプチドにおけるタンパク質の分子量が低いことを示しており、低分子量のタンパク質がヒトの吸収により有利である。
【0015】
具体的に、本発明のいくつかの実施例において、セレンキレートエンドウオリゴペプチドに、分子量が1000u未満の成分が、85%以上占めており、これは、セレンがヒトの小分子オリゴペプチドに対する吸収につれて吸収されることにより有利である。
【0016】
さらに、セレンキレートエンドウオリゴペプチドには、PPKIYP(Pro-Pro-Lys-Ile-Tyr-Pro)が含まれ、同定により、PPKIYPは抗酸化能力が比較的に強いペプチドフラグメントである。
【0017】
定量分析後に、セレンキレートエンドウオリゴペプチドには、ペプチドフラグメントPPKIYPの質量含有量が25ng/mg以上で、一般的に25~35ng/mgである。
【0018】
さらに、セレンキレートエンドウオリゴペプチドにはまた、ペプチドフラグメントTGRGAP(Thr-Gly-Arg-Gly-Ala-Pro)、HQMPKP(His-Gln-Met-Pro-Lys-Pro)及びTSSLP(Thr-Ser-Ser-Leu-Pro)が含まれる。
【0019】
定量分析後に、セレンキレートエンドウオリゴペプチドには、TGRGAPの質量含有量が通常に25ng/mg以上で、一般的に25~35ng/mgであり、HQMPKPの質量含有量が通常50ng/mg以下で、一般的に40~50ng/mgであり、TSSLPの質量含有量が一般的に1~5ng/mgである。
【0020】
さらに、本発明のいくつかの実施例において、エンドウオリゴペプチドにおけるセレン含有量が0.08g/100g以上で、即ち、セレンキレートエンドウオリゴペプチド100gあたりに、セレン元素の質量が0.08g以上で、これによりセレン補給効果をさらに確保することができる。
【0021】
本発明のいくつかの実施例において、該セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、エンドウオリゴペプチドの水溶液と亜セレン酸ナトリウム(Na2SeO3)との反応による生成物であってもよい。具体的に、エンドウオリゴペプチドの水溶液と亜セレン酸ナトリウムとを混ぜて、これから60~90℃の条件で20min以上反応を行い、得られた反応生成物をアルコール沈殿および乾燥に供して、セレンキレートエンドウオリゴペプチドを得るようになる。
【0022】
上記エンドウオリゴペプチドとして、分子量が1000uより少ない成分含有量が80%より高いエンドウオリゴペプチドから選択するのが最適で、特に、分子量が1000uより少ない成分含有量が90%以上のエンドウオリゴペプチドから選択してもよい。本発明のいくつかの実施例において、該エンドウオリゴペプチドは、以下のような調製方法によって取得されることができる。エンドウタンパク質粉末(タンパク質含有量が80%より高い)を、材料と液体との比率が1:8~12になるように水と混ぜてミックスし、材料液体のpH値が8~10であるように調整し、温度を40~60℃に制御し、酵素分解のためにアルカリプロテアーゼと中性プロテアーゼとを添加し、2種類の酵素の投与量がいずれもエンドウタンパク質粉末質量の1.0~3.0%で、酵素分解時間が3~6時間である。酵素分解終了後、材料液体の酵素を不活性化にさせ、遠心分離をし、セラミック膜によりろ過(セラミック膜の孔径が50~200nmである)し、真空濃縮をさせ、滅菌し、最後に噴霧して粉末になるように乾燥して、エンドウオリゴペプチド粉末を調製して得ることができる。
【0023】
本発明はさらに、セレンキレートエンドウオリゴペプチドの調製方法を提供し、エンドウオリゴペプチドの水溶液と亜セレン酸ナトリウムとを混ぜて、これから得られた混合システムを60~90℃の条件で20min以上反応を行い、得られた反応生成物をアルコール沈殿および乾燥に供して、セレンキレートエンドウオリゴペプチドを得るステップを含む。
【0024】
紫外線全波長走査、走査型電子顕微鏡、フーリエ赤外分光法などの手段をもって検出することにより、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとが上記反応によって、新しいキレートが得られた。亜セレン酸ナトリウムにおけるセレンとエンドウオリゴペプチドとが共有結合の方式で安定して結合されると推測される。セレンイオンが(Se4+)配位結合の方式で、エンドウオリゴペプチドにおけるカルボキシル基とアミノ基とに結合されてもよい。即ち、Se4+により4d空軌道が提供され、OとNとにより孤立電子対が提供され、該4d空軌道をそれぞれ占用して安定した配位結合を形成し、これにより、セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、優れた熱安定性、酸塩基安定性及び体外消化安定性があり、セレンが順調に腸に入ることができ、腸粘膜でオリゴペプチドを摂取することによって間接的に吸収されるように確保し、これによりセレン補給効果を達成するとともに、得られたセレンキレートエンドウオリゴペプチドがさらなる加工の中間原料として使用される際に、後続加工の予期効果を保証することもできるようになる。
【0025】
上記の理由により、上記反応は、「キレート化反応」と呼ばれてもよいから、得られたセレンキレートエンドウオリゴペプチドも、本分野の通常の呼び方にしたがって、「エンドウオリゴペプチドセレンキレート」又は「エンドウオリゴペプチドキレート化セレン」などと呼ばれてもよく、ここで、セレンとエンドウオリゴペプチドとの組み合わせ率も「キレート化率」で示される。
【0026】
エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの反応に対して、温度が大きく影響しており、温度の昇温につれて、キレート化率及びセレンキレートエンドウオリゴペプチドの収率は、いずれも増加してからまた低下する傾向を見せている。本発明の具体的な実施過程では、より高いキレート化率と収率とを同時に得られるよう、一般的に、反応温度が70~90℃で、さらに80~85℃であるように制御している。
【0027】
本発明のいくつかの実施例において、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの質量比(ペプチド塩の質量比)は、一般的に、1~5:1になるように制御している。化学反応過程で、反応物の相対的な比率がいくつかのスペースキーの形成に影響を与える可能性がある。具体的に、本発明のいくつかの実施例において、エンドウオリゴペプチド対亜セレン酸ナトリウムの比率の増大(例えば1:1から5:1まで増大する)につれて、キレート化率は徐々に低下するが、セレンキレートエンドウオリゴペプチドの収率は増加してからまた低下するようになっている。キレート化率と収率とを総合的に考慮すると、一般的に、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの質量比が2~4:1になるように制御している。
【0028】
本発明のいくつかの実施例において、エンドウオリゴペプチドの水溶液に、エンドウオリゴペプチドの濃度(ペプチド濃度)は一般的に、1~5g/100mLになるように制御している。ペプチド濃度の増加につれて、キレート化率とセレンキレートエンドウオリゴペプチドとは、いずれも増加して、さらに安定になって、次に低下する変化傾向を見せている。キレート化率と収率を総合的に考慮すると、一般的に、ペプチド濃度が3~5g/100mLであるように制御している。
【0029】
エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの混合系のpH値を合理的に制御することは、より高いキレート化率と収率とを得ることに有利である。本発明のいくつかの実施例において、pH値を7.5~9になるように制御するなど、弱アルカリ性条件でキレート化反応を行うことは一般的である。エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとが完全に溶解したとき、混合系のpH値が約8程度であるため、pH値を調整しなくてもよいが、または反応前に、NaOH又は酢酸などを入れることによりpH値を調整してもよい。
【0030】
反応時間を合理に制御することは、最高値であるキレート化率と収率とを得ることにも有利である。一般的に、反応時間が延長することにつれて、キレート化率と収率とは、いずれも増加してからまた低下し、最後に徐々に安定するようになっていく傾向を見せている。本発明の具体的な実施過程では、キレート化率と収率、および時間コストを総合的に考慮すると、一般的に、反応時間を20min~60min内に制御している。
【0031】
理解されるものとして、反応原料とされるエンドウオリゴペプチドは、その分子量分布もセレンキレートエンドウオリゴペプチドの最終分子量分布に影響を与え、本発明の具体的な実施過程では、選択されるエンドウオリゴペプチドとして、その分子量が1000uより小さい成分含有量は、80%より高いのが最適で、好ましくは、90%以上である。
【0032】
本発明のいくつかの実施例において、上記エンドウオリゴペプチドは、以下のような方法を採用し、製造して得られたものである。それは、エンドウタンパク質粉末(タンパク質含有量が80%より高い)を材料と液体との比率が1:8~12になるように水と混ぜてミックスし、材料液体のpH値が8~10であるように調整し、温度を40℃~60℃であるように制御し、酵素分解のためにアルカリプロテアーゼと中性プロテアーゼとを添加し、プロテアーゼ2種類の投与量が、いずれもエンドウタンパク質粉末質量の1.0~3.0%で、酵素分解時間が3~6時間であるような方法である。酵素分解終了後、材料液体の酵素を不活性化にさせた後に、遠心分離をし、セラミック膜によりろ過(セラミック膜孔径が50~200nmである)、真空濃縮をさせ、滅菌し、そして噴霧して粉末になるように乾燥して、上記要件が満たされるエンドウオリゴペプチド粉末を製造することができる。
【0033】
本発明はさらに、上記セレンキレートエンドウオリゴペプチドのヘルスケア食品での用途を提供する。上記のように、該セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、優れた安定性があり、順調に腸に入ることができ、腸粘膜でオリゴペプチドを摂取することによって間接的に吸収され、これによりセレン補給効果を達成するため、該セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、新型セレン補給製剤として、セレン欠乏症人々に適用する栄養や機能食品に開発されてもよい。例えば、ミルクパウダー又はその他のヘルスケア食品に入れるか、または中間原料としてさらに加工してヘルスケア食品を得てもよい。且つ該セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、DPPHフリーラジカル及びヒドロキシルフリーラジカルに対する除去能力が、原料であるエンドウオリゴペプチドと比較して、いずれもはるかに向上しており、比較的に強い還元能力及び抗酸化機能を有するため、抗酸化ヘルスケア食品及び抗酸化セレン補給食品の開発に特に適用する。
【0034】
本発明に係るセレンキレートエンドウオリゴペプチドは、セレンがエンドウオリゴペプチドと共有結合の方式で結合され、且つ比較的に強い結合力を有するから、異なる消化方式に応じて、優れた安定性があり、ペプシンとトリプシンとの加水分解の後に、セレン含有量の低下幅が小さくなるため、セレン元素が順調に腸に入り、腸粘膜でオリゴペプチドを摂取することによって間接的に吸収され、これによりセレン補給効果を達成することができ、セレン補給ヘルスケア食品に応用すること、および中間原料として加工して予期商品を得ることも可能である。
【0035】
さらに、該セレンキレートエンドウオリゴペプチドに、分子量が1000uより少ない成分は85%よりも高くし、且つセレン含有量が0.08g/100g以上であり、これによりセレン補給効果をさらに向上させることが可能になっている。
【0036】
且つ、該セレンキレートエンドウオリゴペプチドのDPPHフリーラジカル及びOHフリーラジカルに対する除去能力は、原料であるエンドウオリゴペプチドと比較して、いずれもはるかに向上しており、該セレンキレートエンドウオリゴペプチドはまた、比較的に強い抗酸化能力及び還元能力があるため、該セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、抗酸化ヘルスケア食品に用応用されることが可能になっている。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係るセレンキレートエンドウオリゴペプチドの調製方法により、調製して得られたセレンキレートエンドウオリゴペプチドにおけるセレンとオリゴペプチドとが安定した共有結合で結合され、セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、優れた熱安定性、酸塩基安定性、及び消化安定性があり、それに比較的に強い抗酸化能力及び還元能力があるように確保することを可能にさせるほか、且つ該還元能力がキレート化原料ペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの単純な重ね合わせでなく、該調製方法によって還元能力を向上させることである。
【0038】
同時に、セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、該調製方法を採用することで、以下のような利点があるようになる。水分含有量が一般的に14.17%±1.12%であるように比較的に低いため、大多数カビとブドウ球菌が阻害され、貯蔵することが容易になる。酸可溶性タンパク質含有量が23%以上で、全窒素含有量が23%以上であり、これは、セレンキレートエンドウオリゴペプチドにおけるタンパク質の分子量がいずれも低いことを示している。1000u以下の分子量分布が占める割合は85%を超えて、そのうちのほとんどは500u以下であり、このため、ヒトによって吸収されるのに非常に有利である。セレン含有量が0.08g/100g以上であり、セレン補給効果を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明のセレン含有量を測定するために描かれるセレン標準曲線の図である。
【
図2】本発明の実施例1において
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの分子量分布ゲルクロマトグラムである。
【
図3】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドと
セレンキレートエンドウオリゴペプチドとの紫外線全波長走査図である。
【
図4】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドと
セレンキレートエンドウオリゴペプチドとの走査型電子顕微鏡による写真(×1000)である。
【
図5】本発明の実施例1においてエンドウオリゴペプチドと
セレンキレートエンドウオリゴペプチドとの赤外線スペクトル図である。
【
図6】本発明の実施例1において
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの異なる温度条件で処理されたセレン含有量の図である。
【
図7】本発明の実施例1において
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの異なる酸塩基条件で処理されたセレン含有量の図である。
【
図8】本発明の実施例1において
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの異なる消化方式で処理されたセレン含有量である。
【
図9】本発明の実施例1において
セレンキレートエンドウオリゴペプチド及びその合成原料によるDPPHフリーラジカル除去の比較図である。
【
図10】VCによるDPPHフリーラジカル除去の対照図である。
【
図11】本発明の実施例1において
セレンキレートエンドウオリゴペプチド及びその合成原料によるOHフリーラジカル除去の比較図である。
【
図12】VCによるOHフリーラジカル除去の対照図である。
【
図13】本発明の実施例1において
セレンキレートエンドウオリゴペプチド及びその合成原料の還元能力の比較図である。
【
図15】ペプチドフラグメントTGRGAPの一次マススペクトル図である。
【
図16】ペプチドフラグメントTGRGAPの二次マススペクトル図である。
【
図17】ペプチドフラグメントPPKIYPの一次マススペクトル図である。
【
図18】ペプチドフラグメントPPKIYPの二次マススペクトル図である。
【
図19】ペプチドフラグメントHQMPKPの一次マススペクトル図である。
【
図20】ペプチドフラグメントHQMPKPの二次マススペクトル図である。
【
図21】ペプチドフラグメントTSSLPの一次マススペクトル図である。
【
図22】ペプチドフラグメントTSSLPの二次マススペクトル図である。
【
図23】合成ペプチドフラグメントTGRGAP標準品のマススペクトル図である。
【
図24】合成ペプチドフラグメントPPKIYP標準品のマススペクトル図である。
【
図25】合成ペプチドフラグメントHQMPKP標準品のマススペクトル図である。
【
図26】合成ペプチドフラグメントTSSLP標準品のマススペクトル図である。
【
図27】実験例1においてキレート化反応に対する温度の影響結果の図である。
【
図28】実験例2においてキレート化反応に対するペプチド塩の質量比の影響結果の図である。
【
図29】実験例3においてキレート化反応に対するエンドウオリゴペプチド濃度の影響結果の図である。
【
図30】実験例4においてキレート化反応に対するpH値の影響結果の図である。
【
図31】実験例5においてキレート化反応に対する反応時間の影響結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施例に係る図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明瞭で、且つ完全に説明し、当然ながら、記載される実施例は本発明の実施例の一部にすぎず、すべての実施例ではない。
【0041】
以下、実施例及び実験例に使用される原料情報は、以下のようにリストされている。
エンドウオリゴペプチド:自製である。亜セレン酸ナトリウム:分析的に純粋で、天津市大茂化学試薬場から購入される。3'3-ジアミノベンジジン(DAB 4HCl):試薬グレードである。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA-2Na):バイオテクノロジーグレードで、Biotopped Amresco製である。臭化水素酸:分析的に純粋で、天津市福晨化学試薬場製である。塩酸ヒドロキシルアミン、過塩素酸、硝酸、塩酸、水酸化ナトリウム、95%エタノール、トルエン、トリクロロ酢酸:分析的に純粋で、すべて北京化工場から購入される。ペプシン、トリプシン:南寧厖博生物有限公司製である。トリフルオロアセテート:分析的に純粋で、Alfa Aesar公司製である。アセトニトリル:クロマトグラフィー的に純粋で、Fisher会社製である。1,1-ジフェニル-2-トリニトロフェニルヒドラジン(DPPH):米国sigma会社製である。超純水:実験室で自製である。
【0042】
該エンドウオリゴペプチドは、具体的に以下のようなプロセスを採用し、調製して得られたものである。
エンドウタンパク質粉末(タンパク質含有量が約82%である)を材料と液体とが約1:10の比率で純水と混ぜてミックスし、均一にかき混ぜた後に、食品グレード水酸化ナトリウムを添加して材料液体のpH値が約9程度になるように調整し、温度を50±2℃に制御し、Alcalase 2.4L(2.5%、w/w)及びNeutrase 0.8L(1.5%、w/w)(2種類のプロテアーゼがすべてNovozymesから購入される)を添加し、酵素分解時間が約4.5時間程度である。酵素分解時間終了後、材料液体をプレート式熱交換器によって120±2℃まで昇温し、時間が約20sで、酵素不活性化された材料液体に対し、遠心分離をし、セラミック膜によりろ過し、真空濃縮をさせた後に滅菌し、そして噴霧して粉末になるように乾燥して、エンドウオリゴペプチド粉末を製造することができる。
【0043】
文献「劉文頴、林峰、金振濤などの、インビトロでのトウモロコシオリゴペプチドの抗酸化効果[J]. 食品科学, 2011, 32(5):22-26.」に記載の高性能ゲルろ過クロマトグラフィー方法を採用し、ピーク面積のパーセンテージによってエンドウオリゴペプチド分子量及び分布状況を確定し、ここで、分子量>5000uの成分が占める割合が0で、分子量が2000~5000uの成分が占める割合が0.95%で、分子量が1000~2000uの成分が占める割合が7.79%で、分子量が500~1000uの成分が占める割合が25.25%で、分子量が140~500uの成分が占める割合が60.50%で、分子量<140uの成分が占める割合が5.51%である。計算により、分子量が1000uより少ない成分が占める割合が91.26%である。
【0044】
以下、実施例及び実験例に使用される機器情報は、以下のようにリストされている。
EL20 pHメーター:Mettler Toledo製である。KQ-250E超音波発振器:昆山市超音波儀器有限公司製である。1204007恒温水浴槽:蘇州POXIWAR実験設備有限公司製である。マイクロプレートリーダー:Dynex Spectra Mr製である。DHG-9075A電気加熱恒温ブラスト乾燥オーブン:北京陸希科技有限公司製である。ユニバーサル電気炉:北京科偉永興儀器有限公司製である。LC-20AD 型高速液体クロマトグラフ:株式会社島津製作所製である。F30200150 ケルダールデバイス:Velp Scientifica社製である。
【0045】
以下、実施例及び実験例において、セレンキレートエンドウオリゴペプチドを検出と評価する方法は、以下のようにリストされている。
1、分子量分布測定
高性能ゲルろ過クロマトグラフィー方法を採用して測定する。グリシン-グリシン-グリシン(分子量189)、グリシン-グリシン-チロシン-アルギニン(分子量451)、バチルス酵素(分子量1450)、アプロチニン(分子量6500)、シトクロムC(分子量12500)ような5種類のペプチド標準品を選択してそれぞれ0.1%(M/V)溶液に調製し、孔径が0.2μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターメンブレンを利用して試料をろ過して試料を注入し、高速液体クロマトグラフを利用してゲルろ過を行い、相対分子量検量線を作成する。移動相:V(アセトニトリル):V(水):V(トリフルオロアセテート)=45:55:0.1とし、試料注入体積が10μLで、流量が0.5mL/minで、検出波長が220nmで、カラム温度が30℃で、紫外線検出器を利用して検出し、GPCソフトウェアを使用してデータを処理する。試料のクロマトグラフィーデータを検量線方程式に代入して計算すると、試料のペプチド分子量及びその分布範囲を得ることができる。ピーク面積正規化法を利用して異なる分子量範囲ペプチドの相対パーセンテージを計算して得ることができる。
【0046】
2、セレン含有量測定
Na2SeO3・5H2Oを正確的に2.190g量り、少量超純水で溶解させた後に、48%臭化水素酸を入れ、そして超純水で容積を1Lまで定め、657.4746mg/Lのセレン標準原液として調製する。
【0047】
セレン標準原液を1mL吸い取り、超純水で容積を100mLまで定め、6.57μg/mLのセレン標準作業溶液として調製する。
【0048】
セレン標準作業溶液を0、2、4、6、8、10mL正確に量り取り、酸で分解後に、3, 3'-ジアミノベンジジンと還元セレンとが反応した後に生成される黄色複合体の420nmでの吸光度を測定し、具体的な操作方法は、文献「陳甫、賈▲冊▼▲冊▼、朱連勤等の、3,3'-ジアミノベンジジンによるセレンの分光光度定量[C].中国畜牧獣医学会家畜内科学分会代表大会及び年学術研討会.2011.」で提案された分光光度法を参照する。
【0049】
図1に示すように、セレン濃度を横座標として、吸光度と縦座標とし、セレン標準曲線を描く。
【0050】
一定の量の測定対象である試料を正確に量り、10mLの超純水で溶解させた後に、上記方法を採用して試料を処理し、そして処理された吸光度を測定する。標準曲線に対応してセレン含有量を確定する。
【0051】
3、キレート化率及び収率
キレート化率の計算式は、
キレート化率(%)=m1÷m2×100%であり、ここで、m1がセレンキレートエンドウオリゴペプチドのセレン含有量(セレンキレートエンドウオリゴペプチドでのセレン元素の質量)であり、m2が亜セレン酸ナトリウムでのセレン元素の質量である。
キレート収率の計算式は、
収率(%)=m3÷m4×100%であり、ここで、m3がキレート化生成物の質量であり、m4がキレート化体系に入れる物質総量の質量である。
【0052】
4、基礎的な物理的および化学的性質の測定
国家標準法GB 5009.3-2010を採用し、セレンキレートエンドウオリゴペプチドの水分含有量を測定する。国家標準法GB 5009.5-2010を採用してセレンキレートエンドウオリゴペプチドの全窒素(タンパク質)含有量を測定する。国家標準法GB 22729-2008を参照して、セレンキレートエンドウオリゴペプチドでの酸可溶性タンパク質の含有量を測定する。
【0053】
5、熱安定性実験
セレンキレートエンドウオリゴペプチド試料を超純水に溶けて、濃度が2mg/mLである溶液を調製し、溶液を30mL取り遠心分離管に置き、それぞれ25、40、60、80、100℃で恒温水浴を2h行い、ここで、25℃が室温対照群である。そして室温まで冷却し、分子量分布を検出して、3mLサンプリングして透析バッグに置き、60時間透析してセレン含有量を検出する。
【0054】
6、酸塩基安定性実験
セレンキレートエンドウオリゴペプチド試料を超純水に溶けて、濃度が2mg/mLである溶液を調製し、溶液を30mL取り遠心分離管に置き、それぞれ1mol/LのHClと1mol/LのNaOHで各管のpHを3、5、7、9、11まで調整し、37℃の恒温水浴槽に2h放置し、同時に、1つの未処理の対照群を設置し、室温に冷却した後に分子量分布を検出して、3mLサンプリングして透析バッグに置き、60時間透析してセレン含有量を検出する。
【0055】
7、胃腸消化管の体外シミュレーション実験
7.1 ペプシン消化実験
セレンキレートエンドウオリゴペプチド試料を超純水に溶けて、濃度が2mg/mLである溶液を調製し、溶液を40mL取り遠心分離管に置く。1mol/LのHClでpH=2になるように溶液を調整し、37℃の恒温水浴で20min予熱する。そして、6‰(材料比)のペプシンを添加し、均一に混ぜた後に20mL速く取り出し他の遠心分離管に置き、100℃の沸騰水浴で10min処理して消化前対照とする。残り部分を37℃の恒温水浴に置いて4h処理し、そして100℃の沸騰水浴で酵素を失活させる。室温で冷却されてから分子量分布を検出して、3mLサンプリングして透析バッグに置き、60時間透析してセレン含有量を検出する。
【0056】
7.2 トリプシン消化実験
セレンキレートエンドウオリゴペプチド試料を超純水に溶けて、濃度が2mg/mLである溶液を調製し、溶液を40mL取り遠心分離管に置く。1mol/LのNaOHでpH=7.5になるように溶液を調整し、37℃の恒温水浴で20min予熱する。2‰(材料比)のトリプシンを添加し、均一に混ぜた後に20mL速く取り出し他の遠心分離管に置き、100℃の沸騰水浴で10min処理して消化前対照とする。残り部分を37℃の恒温水浴に置いて6h処理し、そして100℃の沸騰水浴で酵素を失活させ、室温で冷却されてから分子量分布を検出して、3mLサンプリングして透析バッグに置き、60時間透析してセレン含有量を検出する。
【0057】
7.3 先にペプシン消化実験、次にトリプシン消化実験
7.1のペプシン消化実験の方法にしたがってペプシン消化を行った後に、1mol/LのNaOHをもってpHが6.8になるように調整し、37℃の恒温水浴槽で20min予熱し、2‰(材料比)トリプシンを入れ、均一に混ぜた後に20mL速く取り出し他の遠心分離管に置き、100℃の沸騰水浴で10min処理して消化前対照とする。残り部分を37℃の恒温水浴に置いて6h処理し、そして100℃の沸騰水浴で酵素を失活させ、室温で冷却されてから分子量分布を検出して、3mLサンプリングして透析バッグに置き、60時間透析してセレン含有量を検出する。
【0058】
8、抗酸化機能評価
8.1 DPPHフリーラジカル除去能力の測定
濃度が異なる試料を取り0.1mol/LのDPPH-絶対エタノール溶液と1:1の体積比率で混ぜて、暗所で30min保管し、紫外線-可視スペクトルにおける517nmで混合液の吸光度を測定し、A
iと記す。相応的に、質量濃度が異なる試料溶液をもって絶対エタノール溶液と1:1の体積比率で均一に混ぜて、暗所で室温で30min保管し、紫外線-可視スペクトルにおける517nmで吸光度を測定し、A
jと記す。蒸留水を0.1mol/LのDPPH-絶対エタノール溶液と1:1の体積比率で均一に混ぜて、暗所で室温で30min保管し、紫外線-可視スペクトルにおける517nmで吸光度を測定し、A
cと記す。各実験を3回繰り返し、平均値を取り標準偏差を算出する。亜セレン酸ナトリウムとエンドウオリゴペプチドとをキレート化前の原料対照とし、アスコルビン酸をポジティブ対照とし、下式にしたがって試料のDPPHフリーラジカルに対する除去率を計算して得る。
【数1】
【0059】
8.2 OHフリーラジカル除去能力の測定
濃度が異なる試料溶液を取り、5mol/LのFeSO
4、5mol/Lのサリチル酸-絶対エタノール溶液と1:2:2の体積比率で均一に混ぜて、1体積の5mol/LのH
2O
2溶液で反応を開始し、37℃の水浴で1h反応し、紫外線-可視スペクトルにおける510nmで吸光度を測定し、A
2と記す。相応的に、1体積の水で5mol/LのH
2O
2溶液を代替し、その他の試薬の比率が変わらず、37℃の水浴で1h反応し、紫外線-可視スペクトルにおける510nmで吸光度を測定し、A20と記す。蒸留水で試料溶液を代替し、その他の試薬の比率が変わらず、37℃の水浴で1h反応し、510nmで吸光度を測定し、A
02と記す。各実験を3回繰り返し、平均値を取り標準偏差を算出する。亜セレン酸ナトリウムとエンドウオリゴペプチドとをキレート化前の原料対照とし、アスコルビン酸をポジティブ対照とし、下式にしたがって試料のOHフリーラジカルに対する除去率を計算して得る。
【数2】
【0060】
8.3 還元能力の測定
濃度が異なる試料溶液を取り、0.2mol/Lのリン酸緩衝液(pH6.6)、質量濃度が1%のK3[Fe(CN)6]溶液と1:1:1の体積比率で均一に混ぜて、50℃の水浴で10min保管した後に、冷水で早く冷却する。1体積比率で、質量濃度が10%のトリクロロ酢酸溶液を入れ、暗所で早く充分且つ均一に振り、そしてその中から1体積比率の反応混合物を取り出し、1体積比率の蒸留水と0.2体積比率で、質量濃度が0.1%のFeCl3溶液を入れ、暗所で充分且つ均一に振った後に、10min静置し、700nmで吸光度を測定し、A3と記す。亜セレン酸ナトリウムとエンドウオリゴペプチドとをキレート化前の原料対照とし、アスコルビン酸を全体対照とし、直接に吸光度A3を試料還元能力パラメータとする。各実験を3回繰り返し、平均値を取り標準偏差を算出する。
【0061】
9、ペプチドフラグメント同定及び抗酸化能力同定
【0062】
9.1 ペプチドフラグメント同定
(1)LC-MS/MSの設定
ペプチドフラグメントを液相クロマトグラフィー-タンデム質量分析法を利用して分析し、以下のようなパラメータで液相クロマトグラフィーを設定することにより分離させる。
【0063】
試料濃度が5mg/mLであり、Q Exactive質量分析計(LC-MS/MS、Thermo Scientific社)に接続されたUltimate 3000 HPLC液相システムを使用して30分間のグラジエント溶出を行い、流量が0.30μL/minである。分析カラムは、C18パッキング(300Å, 5μm, Varian, Lexington, MA)含有の自製石英キャピラリ(内径が75μmで、カラム長が15cmで、Upchurch, Oak Harbor, WA)である。移動相Aが0.1%ギ酸水であり、移動相Bが80%のアセトニトリル、0.1%のギ酸を含有する。
【0064】
Q Exactive質量分析は、Xcalibur 2.1.2 ソフトウェアデータ依存型収集方法を使用し、一次検出タイプがオービトラップで、一次全走査の質量範囲が100~1200m/zで、分解能が70,000で、信号強度の順に最初の20のイオンを選択して二次フラグメンテーションを行い、二次検出タイプがイオントラップで、分解能が17500で、衝突エネルギーが27%である。
【0065】
(2)データの処理
質量分析の生データは、それぞれデータベース及びペプチドフラグメントに対するデノボ配列決定(de novo方法)を利用して得られ、データベースで得られた疑わしいペプチドフラグメントとPEAKSでデータベースを検索して得られた疑わしいペプチドフラグメントとを比較する。
【0066】
Proteome Discoveryソフトウェア(Version PD1.4, Thermo-Fisher Scientific, USA)を使用してデータベースを検索し、検索条件は、酵素消化なしで、動的修飾は、oxidation(M)を含み、プリカーサーイオンの質量偏差は20ppmに設定され、二次質量偏差は0.02Daに設定され、PDライブラリのPercolatorを使用してFDR値を計算し、FDRがペプチドフラグメント偽陽性率を示す。q値が1%より小さいと、ペプチドスペクトルマッチングが正しいと見なすことができる。特定のタンパク質として指定されたペプチドフラグメントは唯一無二と見なすことができる。タンパク質認識に、偽陽性率が0.01に設定される。
【0067】
(3)ペプチドフラグメント合成
ペプチドフラグメント標準品は、上海吉爾生化有限公司GL Biochem (Shanghai) Ltd.によって提供される。ペプチドフラグメント合成ルートは、FMOC-ARG(PBF)-WANG RESIN 樹脂選定→ヘキサヒドロピリジンで樹脂でのFMOCを除去→HOBT及びDICを縮合剤として使用して第2のアミノ酸FMOC-CYS(TRT)-OH 反応に入れ→完全に反応された後に、続いてFMOCを除去して、次のアミノ酸に連結し、最後のアミノ酸に連結するまで循環させ→TFA溶液を使用してつくられた樹脂を処理し、粗生成物ポリペプチドを得て→粗生成物ポリペプチドを溶けて、グルタチオンを適切な比率で添加し、低温でかき混ぜ、6~12時間間隔でMSに移動して酸化状態を確認し、同時にスルフヒドリル検出剤を使用して完全に酸化されたかどうかを判断することに補助し→完全に酸化された後精製して標準合成ペプチドフラグメント(合成ペプチドフラグメント標準品)を得る。
【0068】
9.2 ペプチドフラグメント抗酸化性同定
ABTS+法を利用してセレンキレートエンドウオリゴペプチド及びペプチドフラグメントの抗酸化性を同定し、Troloxを抗酸化標準物質として使用して標準曲線を描き、調製された標準合成ペプチドフラグメント(5mg/mL)及びセレンキレートエンドウオリゴペプチド(5mg/mL)をそれぞれABTSキット(碧雲天)を使用して反応させ、734nmでその吸光度を測定し、抗酸化能力をそれぞれ調査する。
【0069】
9.3 ペプチドフラグメント定量分析
セレンキレートエンドウオリゴペプチドのペプチドフラグメントに対して定量分析を行い、具体的な機器条件は以下の通りである。
【0070】
(1)機器試薬情報
機器モデルがHPLC-MS/MS(LC液相がDIONEX社製で、Ultimate3000-MS質量分析が米国AB社のAPI 3200 Q TRAPである)であり、メタノール、ニトリルなどはすべてfisher社から購入する。
【0071】
(2)試料前処理
適量の蒸留水及び等体積のタンパク質沈殿剤(アセトニトリル、内部標準100ng/mL含有)を加え、2minボルテックスし、2min超音波をかけ、13200回転で4min遠心分離し、上澄みを取り測定対象にする。
【0072】
(3)液相条件:
クロマトグラフィーカラム:MSLAB HP-C18(150*4.6mm 5μm 120a)、カラム温度:50℃、流量:1mL/min。
移動相:A水相:水(2MMOL/Lギ酸アンモニウム)、B有機相:アセトニトリル(2MMOL/Lギ酸アンモニウム)。
試料注入量:10μL。
グラジエント:0~2min:95%A+5%B、2.1~5.0min:20%A+80%B、5.1~7 min:0%A+100%B、7.1~10min:95%A+5%B。
【0073】
【0074】
10、統計学処理
SPSS 13.0ソフトウェアを採用して実験データに対して統計学処理を行い、t検定を使用して組間の比較を行い、P<0.05の場合、両者の差異が著しいである。
【0075】
実施例1
【0076】
エンドウオリゴペプチド5gを超純水100mLに溶けて、5g/100mLのエンドウオリゴペプチド水溶液を調製して得て、そして、亜セレン酸ナトリウムを2.5g入れ、超音波発振器でよく混ぜる。pHが9.0になるように調整し、恒温水浴が80℃である条件で30min反応させる。熱いうちに超純水の4倍の体積量の95%エタノールを注ぐ。一晩静置する。上澄み液を捨て、残り部分を35℃の恒温ブラスト乾燥オーブンで乾燥させ、セレンキレートエンドウオリゴペプチドを得る。
【0077】
実施例2
【0078】
エンドウオリゴペプチド4gを超純水100mLに溶けて、4g/100mLのエンドウオリゴペプチド水溶液を調製して得て、そして、亜セレン酸ナトリウムを2g入れ、超音波発振器でよく混ぜる。pHが8.0になるように調整し、恒温水浴が85℃である条件で30min反応させる。熱いうちに超純水の4倍の体積量の95%エタノールを注ぐ。一晩静置する。上澄み液を捨て、残り部分を35℃の恒温ブラスト乾燥オーブンで乾燥させ、セレンキレートエンドウオリゴペプチドを得る。
【0079】
実施例3
【0080】
エンドウオリゴペプチド5gを超純水100mLに溶けて、5g/100mLのエンドウオリゴペプチド水溶液を調製して得て、そして、亜セレン酸ナトリウムを1.67g入れ、超音波発振器でよく混ぜる。pHが8.0になるように調整し、恒温水浴が90℃である条件で30min反応させる。熱いうちに超純水の4倍の体積量の95%エタノールを注ぎ、一晩静置する。上澄み液を捨て、残り部分を35℃の恒温ブラスト乾燥オーブンで乾燥させ、セレンキレートエンドウオリゴペプチドを得る。
【0081】
実施例4
【0082】
エンドウオリゴペプチド3gを超純水100mLに溶けて、3g/100mLのエンドウオリゴペプチド水溶液を調製して得て、そして、亜セレン酸ナトリウムを1.5g入れ、超音波発振器でよく混ぜる。pHが8.5になるように調整し、恒温水浴が90℃である条件で30min反応させる。熱いうちに超純水の4倍の体積量の95%エタノールを注ぎ、一晩静置する。上澄み液を捨て、残り部分を35℃の恒温ブラスト乾燥オーブンで乾燥させ、セレンキレートエンドウオリゴペプチドを得る。
【0083】
上記実施例1~4におけるセレンキレートエンドウオリゴペプチドを検出し、ここで、基礎的な物理的および化学的性質を表1に示す。表1から分かるように、実施例1~4によって得られたセレンキレートエンドウオリゴペプチドの基礎的な物理的および化学的性質が似ており、酸可溶性タンパク質含有量がいずれも23%以上で、全窒素含有量がいずれも23%以上であり、酸可溶性タンパク質が粗タンパク質の97%以上を占め、これは、セレンキレートエンドウオリゴペプチドにおけるタンパク質の分子量がすべて低いことを示しており、ヒトの吸収に有利である。
【0084】
実施例1~4において、セレンキレートエンドウオリゴペプチドの水分含有量がいずれも14.17%±1.12%範囲内にある。この水分含有量は水分含有量が15~17%の小麦粉の水分含有量に相当し、対応するaw値が0.80~0.87であり、大多数のカビとブドウ球菌が阻害できるため、貯蔵することが容易になる。
【0085】
表1に示すように、実施例1~4において、セレンキレートエンドウオリゴペプチドのセレン含有量がいずれも0.08g/100g以上で、セレン含有量が高いセレンキレートエンドウオリゴペプチド生成物を得られることが証明される。実施例1~4に係る方法を採用してさらに計算すると、セレンキレートエンドウオリゴペプチドのキレート化率が20%以上で、ひいては50%以上に達することができ、同時に、セレンキレートエンドウオリゴペプチドの収率が10%以上で、ひいては30%以上に達することができる。
【0086】
【0087】
実施例1~4で調製して得られた
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの具体的な分子量分布状況を表2に示す。ここで、実施例1において
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの分子量分布ゲルクロマトグラムを
図2に示す。
【0088】
表2及び
図2から分かるように、85%を超えた分子量分布が1000u以下で、最も高い含有量は<500uの小さなペプチドであり、約68%以上を占め、この種の小さなペプチドは生物体内でより機能しやすい。
【0089】
【0090】
実施例1で調製して得られたセレンキレートエンドウオリゴペプチドを試料として、以下のようなテスト、キャラクタリゼーション及び評価を行い、以下を含む。
【0091】
1、紫外線全波長走査
エンドウオリゴペプチド水溶液と
セレンキレートエンドウオリゴペプチド水溶液をそれぞれ0.05g/mL調製し、紫外線全波長走査を行い、走査波長範囲が200~600nmで、結果を
図3に示す。
【0092】
図3から分かるように、エンドウオリゴペプチドは309nmで最大吸収ピークがあり、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとが反応して
セレンキレートエンドウオリゴペプチドを形成するとき、最大吸収ピークが322nmに赤方偏移して、且つ最大吸収ピークのO.D値も増加した。これは、エンドウオリゴペプチドの物質構造に変化が発生し、セレン元素とペプチドの組み合わせによって光に対する吸収性能がより強くなる構造が形成され、これはエンドウオリゴペプチドとセレンとが反応した後に、価電子遷移の程度の変化の結果であることを証明している。
【0093】
2、走査型電子顕微鏡による写真
図4(a)と
図4(b)とは、それぞれエンドウオリゴペプチドと
セレンキレートエンドウオリゴペプチドとの走査型電子顕微鏡による写真である。
図4(a)から分かるように、反応前に、エンドウオリゴペプチドは明らかな球形の粒状であり、1000倍の倍率で、エンドウオリゴペプチド粒子表面にひだが存在し、完全な粒子の粒径がいずれも50μmより小さい。
図4(b)から分かるように、反応後に、
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの粒子の形状が大きく変化し、球状形態を失った。最も
大きい粒径が300μmより大きい。
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの表面ひだの大部分が展開し、且つ穴が存在する。粒子は前後で明らかな変化があり、2種類の物質であることが証明される。キレート化反応によって、エンドウオリゴペプチドの表面が展開し、構造に変化が発生し、これによりセレンとの結合部位を提供すると推測される。
【0094】
3、フーリエ赤外分光法
図5に示すように、エンドウオリゴペプチド(pea oligopetide)と
セレンキレートエンドウオリゴペプチド(chelta)との吸収ピークを比べて、ピークの形状が変化した。具体的に、エンドウオリゴペプチドは吸収ピークが3040cm
-1、954cm
-1付近にあり、-COOHの存在が証明されるが、
セレンキレートエンドウオリゴペプチドは吸収ピークが3040cm
-1付近で狭くなり、954cm
-1付近で非常に弱くなるから、遊離カルボキシル基が存在せず、カルボキシル基が共有結合の形でセレンと結合する可能性があることが証明される。
セレンキレートエンドウオリゴペプチドは3158cm
-1及び3436cm
-1付近に二重ピークがあり、1216cm
-1付近にピークがあるから、-NH
2が存在し、且つ-NH
2がフリーラジカルであることが証明される。
【0095】
理論的に分析すると、セレンキレートエンドウオリゴペプチドのキレート化メカニズムはSe4+と-NH2とが結合し、カルボキシル基も共有結合でSe4+と結合する。エンドウオリゴペプチドセレンキレートに、Se4+により4d空軌道が提供され、OとNとにより孤立電子対が提供され、空軌道をそれぞれ占用して配位結合を形成することができると推測される。この推測もその他の関連研究に一致し、具体的に、文献「高菲, 王維有, 魯軍等の、海産魚コラーゲンペプチドカルシウムキレートの調製と赤外分光法によるキャラクタリゼーション[J]. 中国海洋大学学報(自然科学版), 2015, 45(1):47-54.」および文献「宋莎莎, 高菲, 任迪峰等の、黒骨ニワトリペプチド鉄(II)キレートの調製とその赤外分光法による同定[J]. 食品及び発酵工業, 2013, 39(6):13-17.」を参照してもよい。
【0096】
4、セレンキレートエンドウオリゴペプチドの熱安定性
セレンキレートエンドウオリゴペプチドは40、60、80、100℃で2h処理された後に、その分子量分布を表3に示す。表3から分かるように、熱処理後に、セレンキレートエンドウオリゴペプチドに、1000u未満の分子量が占める割合は93%前後で変動し、1000uよりも大きい分子量が占める割合の変化範囲は2%よりも小さい。
【0097】
【0098】
全体からみると、温度の影響により140~1000uの比率が増加するようになった。異なる温度で処理された後に、
セレンキレートエンドウオリゴペプチドのセレン含有量を
図6に示す。対照に比べて、
セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、異なる温度によって処理された後に、セレン含有量に顕著な差異が観察されない(a=0.05)。
セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、優れた熱安定性があることが証明される。エンドウオリゴペプチドがタンパク質の一次構造しか持たず、温度に対して強い耐受能力を有するからである可能性があると推測される。
【0099】
5、セレンキレートエンドウオリゴペプチドの酸塩基安定性
エンドウオリゴペプチドセレンキレートは異なるpH値条件で処理された後に、その分子量分布を表4に示す。中性条件で、140u未満の分子量が占める割合は約10%増加し、同列で変化が最も大きい。これは、この種の小さなペプチド(特に500u未満の分子量)は酸塩基環境に耐性があるが、中性条件で破壊されやすくなるからである可能性がある。1000uより少ない分子量は比率が大きく変化せず、最大変化率が3%を超えない。さらにペプチド鎖が酸塩基環境に耐性があることが証明されることができる。
【0100】
【0101】
図7では、異なるpHで処理された後にセレン含有量の変化を呈している。略酸性及び中性環境で、セレン含有量が著しく低下し(a=0.05)、変化率が約20%程度である。アルカリ性環境で、セレン含有量が小さく変化する。しかし、pHが3~11内で、セレン含有量が依然として78%以上のままであることは、エンドウオリゴペプチドとセレンのキレート化の生成物が酸塩基環境に対して強い安定性を有することを証明する。
【0102】
6、セレンキレートエンドウオリゴペプチドの体外消化安定性
セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、それぞれペプシン、トリプシンで処理され、先にペプシンで処理されて次にトリプシンで処理され、分子量分布結果を表5に示す。表5から分かるように、セレンキレートエンドウオリゴペプチドは異なる体外消化方式で処理された後に、1000u未満の分子量が占める比率は増加し、ここで、ペプシンによって処理されたセレンキレートエンドウオリゴペプチドは分子量が約7%増加し、トリプシンによって処理されたセレンキレートエンドウオリゴペプチドが約9%増加し、先にペプシンで処理されて次にトリプシンで処理されたセレンキレートエンドウオリゴペプチドが約12%増加した。これは、エンドウオリゴペプチドが酵素によって消化処理され、より小さな分子量のペプチドフラグメントに分解されたことを証明する。酵素分解後に、1000u以下の比率がいずれも90%以上であり、小分子ペプチドフラグメント、特にジペプチド、トリペプチドがヒトの吸収に有利である。
【0103】
図8に示すように、異なる消化方式で処理された後に、
セレンキレートエンドウオリゴペプチドにはセレン含有量の変化が小さくし、消化処理前の変化に比べていずれも3%より小さい。
セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、分子量分布の変化表を参照して、酵素による消化された後に、加水分解によって小さなペプチドフラグメントに分解されたが、セレンとペプチドとの配位構造が完全に破壊されないから、エンドウオリゴペプチドとセレンとの配位結合が比較的に安定しており、ペプチド鎖の切断に伴って破壊されることがないことが推測できる。セレンは、小さなペプチドフラグメントに伴って胃液と腸液とを安定して通過し、最後に腸で小腸粘膜のペプチドに対する吸収により間接的に吸収されることができる。
【0104】
【0105】
7、エンドウオリゴペプチドセレンキレートのDPPHフリーラジカル除去
図9では、■、●、▲はそれぞれ亜セレン酸ナトリウム、エンドウオリゴペプチド及び
セレンキレートエンドウオリゴペプチドを代表する。
図9に示すように、亜セレン酸ナトリウムのDPPHフリーラジカルに対する除去能力が弱く、且つ亜セレン酸ナトリウムの濃度に関係なく、その除去率がほぼ約20%程度に安定されている。
【0106】
エンドウオリゴペプチドはDPPHフリーラジカルに対する除去能力があり、且つ除去率がエンドウオリゴペプチド濃度の増加につれて増加し、放物線状の傾向を呈しており、除去変化率が徐々に下がり、放物線式にしたがってエンドウオリゴペプチドのDPPHフリーラジカルに対する除去のIC50値が3.39±0.02mg/mLであると計算して得る。
【0107】
セレンキレートエンドウオリゴペプチドのDPPHフリーラジカルに対する除去能力が比較的に強く、且つキレート用量の変化に伴って変化する。キレート濃度の上昇につれて、そのDPPHフリーラジカルに対する除去率も徐々に上昇し、キレート濃度が5mg/mLより小さい濃度範囲内に、除去率の変化傾向がほぼ直線的であり、濃度が上昇し続けることにつれて、除去変化率が徐々に緩やかになり、放物線状の傾向を呈するようになる。
【0108】
計算により、
セレンキレートエンドウオリゴペプチドのIC
50=1.77±0.01である。キレート化後に、キレートのDPPHフリーラジカルに対する除去能力が強くなり、原料であるエンドウオリゴペプチド及び亜セレン酸ナトリウムよりも強くし、そのIC
50値がほぼエンドウオリゴペプチドの半分である。
図10にしたがって計算すると、ポジティブ対照アスコルビン酸のIC
50値が4.85±0.02μg/mLである。
【0109】
8、エンドウオリゴペプチドセレンキレートのOHフリーラジカル除去
図11では、■、●、▲はそれぞれ亜セレン酸ナトリウム、エンドウオリゴペプチド及び
セレンキレートエンドウオリゴペプチドを代表する。
図11に示すように、亜セレン酸ナトリウム濃度の上昇につれて、そのOHフリーラジカルに対する除去能力がほぼ直線的変化を呈しており、且つ傾きが大きい。亜セレン酸ナトリウム濃度が5mg/mLである場合、そのOHフリーラジカルに対する除去率が100%に達することができる。フィッティングカーブ式にしたがって亜セレン酸ナトリウムのOHフリーラジカル除去のIC
50=1.23±0.02mg/mLを計算して得る。
【0110】
エンドウオリゴペプチドはOHフリーラジカルに対して一定の除去能力があり、且つ除去率がエンドウペプチド濃度の増加につれて放物線状の変化傾向を呈する。フィッティング放物線方程式にしたがって、エンドウオリゴペプチドのOHフリーラジカル除去のIC50値が23.55±0.07mg/mLであると算出した。
【0111】
セレンキレートエンドウオリゴペプチドのOHフリーラジカルに対する除去能力が強く、
図11から見られるものとして、その濃度が5mg/mLより小さい範囲内に、除去率が濃度変化につれて直線的曲線に近く、傾きが大きいが、濃度が増加し続けることにつれて、除去曲線の変化が緩やかになる傾向があり、傾きが小さくなり、エンドウオリゴペプチドの変化傾きとほぼ同じである。濃度が5mg/mLより小さい範囲内に、
セレンキレートエンドウオリゴペプチドのOHフリーラジカルに対する除去能力が亜セレン酸ナトリウム濃度から大きい影響を受けるが、この範囲を超えたら、亜セレン酸ナトリウムのOHフリーラジカルに対する除去能力が飽和状態になり、
セレンキレートエンドウオリゴペプチドのフリーラジカルに対する除去能力が主に原料であるエンドウオリゴペプチド濃度から影響を受けているとと推測される。フィッティング曲線にしたがって
セレンキレートエンドウオリゴペプチドのOHフリーラジカルを除去するIC
50値が3.28±0.04 mg/mLであると算出した。
図12にしたがって計算すると、ポジティブ対照アスコルビン酸のOHフリーラジカルを除去するIC
50値が1024.87±5.96μg/mLである。
【0112】
9、
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの還元能力
図13では、■、●、▲はそれぞれ亜セレン酸ナトリウム、エンドウオリゴペプチド及び
セレンキレートエンドウオリゴペプチドを代表する。
図13に示すように、亜セレン酸ナトリウムは還元能力がない。エンドウオリゴペプチド還元能力がその濃度の増加につれて増加して、且つ変化が直線的傾向を呈している。
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの還元能力もその濃度の増加につれて増加し、変化も直線的ものに近い傾向であるが、
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの還元能力が原料であるエンドウオリゴペプチドより高い。
【0113】
図14に示すように、ポジティブ対照アスコルビン酸の還元能力は濃度の変化につれて放物線状変化傾向を呈する。アスコルビン酸の濃度が200μg/mLより小さい範囲内に、曲線変化が直線的ものに近くし、濃度が徐々に上昇することにつれて、還元能力の変化率が徐々に低下する。アスコルビン酸の還元能力に対応する吸光度が約1.6である場合、必要とされるアスコルビン酸の濃度が400μg/mLであり、相応的に、この吸光度に達するには、必要とされる
セレンキレートエンドウオリゴペプチド濃度が50mg/mLである。エンドウオリゴペプチドは濃度が50mg/mLである場合、その達することができる吸光度が約0.8しかない。
図13から、
セレンキレートエンドウオリゴペプチド還元能力の向上は原料であるエンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの単純な重ね合わせでなく、キレート化技法によって還元能力を増強させることが推測されることができる。
【0114】
10、セレンキレートエンドウオリゴペプチドのペプチドフラグメント同定及び抗酸化能力
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの可能なペプチドフラグメントを正確的に同定するために、データベースとPEAKSデータベース検索結果によって同定された結果を比較し、可能なペプチドフラグメントを探し出す。データベースによって同定されたペプチドフラグメントと、de novo方法で同定されたペプチドフラグメントとを分析して比較し、信頼できるペプチドフラグメントを4本選択し、質量分析構造の同定を行う。
【0115】
選択された4本の信頼できるペプチドフラグメントの一次マススペクトルと二次マススペクトルは
図15乃至
図22を参照し、4本の標準合成ペプチドフラグメントのマススペクトルは
図23乃至
図26を参照し、質量分析構造の同定結果および定量分析結果は表6を参照し、標準合成ペプチドフラグメント及び
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの抗酸化性の同定結果は表7を参照する。
【0116】
表7により分かるものとして、セレンキレートエンドウオリゴペプチドは比較的に強い抗酸化能力がある。質量分析によって同定された4本のペプチドフラグメントで、PPKIYPがセレンキレートエンドウオリゴペプチドで抗酸化能力が比較的に強いペプチドフラグメントである。
【0117】
【0118】
【0119】
実験例1 反応温度のキレート化結果に対する影響
エンドウオリゴペプチド水溶液の濃度が1%(即ち、1g/100mL)であり、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの質量比(ペプチド塩の質量比)が2:1で、pH値が8.5で、それぞれ60、70、80、85、90℃条件で30min反応させ、反応温度の収率とキレート化率とに対する影響を調査する。
【0120】
図27から分かるように、温度のキレート化反応に対する影響が大きく、温度の昇温につれて、キレート化率と収率とがいずれも徐々に上昇し、温度の昇温がキレート化過程の進行に寄与することが証明される。温度が85℃を超えた場合、収率が徐々に低下するが、キレート化率が基本的に変わらないように保たれ、温度が高すぎるのも反応が阻止されるようになることが証明される。分散分析により、85℃組の収率は、80℃組との差異が著しく、他の組(80℃以外)との差異が極めて著しく、85℃でのキレート化率は、80℃及び90℃との差異が著しくなく、他の組(80℃、90℃以外)との差異が極めて著しいため、一般的、反応温度が70~90℃であるように制御し、好ましくは、80~85℃である。
【0121】
実験例2 ペプチド塩の質量比のキレート化結果に対する影響に関する研究
エンドウオリゴペプチド水溶液の濃度が1%(即ち1g/100mL)で、pH値が8.5で、反応温度が85℃に設定され、それぞれペプチド塩の質量比が1:1、2:1、3:1、4:1、5:1の条件で30 min反応し、ペプチド塩の質量比の収率とキレート化率とに対する影響を調査する。
【0122】
図28から分かるように、ペプチド塩の質量比が徐々に増加することに伴って、キレート化率が徐々に低下するが、収率が徐々に増加し、2つの指標の変化傾向が逆であり、ペプチド塩の質量比の増加に伴って、ペプチド濃度が変わらないように保たれると、塩の質量が減少する。塩質量の減少は、キレート化率を低下させる主な原因である。しかし、ペプチド塩の質量比が3:1を超えた場合、生成物収率も低下する傾向を呈するが、キレート化率の低下傾向が徐々に緩やかになる。ペプチド塩の質量比が3:1である条件が、キレート化収率が最高値に達する条件である。分散分析により、3:1である場合の収率及びキレート化率は、他の組と比較すると、差異が極めて著しいから、一般的に、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの質量比が2~4:1であるように制御される。
【0123】
実験例3 ペプチド濃度の収率とキレート化率とに対する影響
ペプチド塩の質量比が3:1で、キレート化pH値が8.5で、キレート化温度が85℃に設定され、それぞれエンドウオリゴペプチド水溶液の濃度が2%(即ち2g/100mL)、3%(即ち3g/100mL)、4%(即ち4g/100mL)、5%(即ち5g/100mL)の条件で30min反応させる。ペプチド濃度の収率とキレート化率とに対する影響を調査する。
【0124】
図29から分かるように、エンドウオリゴペプチド水溶液の濃度の増加に伴って、キレート化率と収率とがいずれも先に増加して、さらに安定になって、さらに低下する変化傾向を見せている。分散分析により、ペプチド濃度が3%である場合の収率とキレート化率は、他の組(4%以外)の2つの指標と比較すると、差異が極めて著しいが、4%での2つの指標と比較すると、差異が著しくないため、一般的に、エンドウオリゴペプチド水溶液の濃度を3~5g/100mLに制御する。
【0125】
実験例4 反応pH値の収率とキレート化率とに対する影響
エンドウオリゴペプチド水溶液の濃度が4%(4g/100mL)に設計され、ペプチド塩の質量比が3:1で、キレート化温度が85℃に設定され、それぞれキレート化pHが6.5、7、8、8.5、9である条件で30min反応させ、反応pH値の収率とキレート化率とに対する影響を調査する。
【0126】
図30から分かるように、溶液pH値の増加に伴って、キレート化率と収率とが全体的に増加する傾向を呈するが、pHが8を超えたら、2つの指標が低下する傾向を呈しており、徐々に緩やかになっていく。これは、該キレート化反応が弱アルカリ性の環境で反応結果がよりよくなることが証明される。分散分析により、pH=8の場合、収率及びキレート化率は、他の組と比較すると、いずれも差異が極めて著しい。且つ事実上、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとが完全に溶解したとき、溶液のpH値が約8程度である。
【0127】
実験例5 反応時間の収率とキレート化率とに対する影響
エンドウオリゴペプチド水溶液の濃度が4%(4g/100mL)で、ペプチド塩の質量比が3:1で、キレート化温度が85℃に設定され、キレート化pH値が8.5であり、それぞれ20、30、40、50、60min反応させ、反応時間の収率とキレート化率とに対する影響を調査する。
【0128】
図31から分かるように、キレート化時間が延長することに伴って、キレート化率と収率とが徐々に増加する。キレート化時間が30minを超えたとき、キレート化率と収率とがいずれも低下して、一定値の範囲内に安定して変動する。分散分析により、30min場合の収率及びキレート化率は、20min組の2つの指標との差異が極めて著しいレベルに達し、他の組(20min組以外)との差異が著しい。40、50、60min組間の2つの指標は差異が著しくない。
【0129】
以上の各実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためのものだけであり、当業者であれば、依然として前述の各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、またはそのうちの一部又はすべての技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の主旨から逸脱しない。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレンキレートエンドウオリゴペプチドであって、前記
セレンキレートエンドウオリゴペプチドは、
pH値が2で、温度が37℃である条件で、ペプシンを採用して4時間加水分解を行う方式、
pH値が7.5で、温度が37℃である条件で、トリプシンを採用して6時間加水分解を行う方式、
温度を37℃で一定に保ち、まずpH値が2である条件で、ペプシンを採用して4時間加水分解を行い、そしてpH値が6.8である条件で、トリプシンを採用して引き続き6時間加水分解を行う方式、という3種の方式のうちの少なくとも1種の消化処理の後に、セレン含有量が消化処理前の変化率に比べて3%を超えないことを特徴とする
セレンキレートエンドウオリゴペプチド。
【請求項2】
前記
セレンキレートエンドウオリゴペプチドが100℃以下で2h熱処理された後に、セレン含有量が熱処理前の97%以上であることを特徴とする請求項1に記載の
セレンキレートエンドウオリゴペプチド。
【請求項3】
前記
セレンキレートエンドウオリゴペプチドはpHが3~11で、温度が37℃である条件で2h酸塩基処理された後に、セレン含有量が酸塩基処理前の75%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の
セレンキレートエンドウオリゴペプチド。
【請求項4】
前記
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの酸可溶性タンパク質含有量が23%より高く、全窒素含有量が23%より高く、分子量が1000uより少ない成分が85%以上占めており、セレン含有量が0.08g/100g以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の
セレンキレートエンドウオリゴペプチド。
【請求項5】
前記
セレンキレートエンドウオリゴペプチドにはPPKIYPが含まれることを特徴とする請求項1又は4に記載の
セレンキレートエンドウオリゴペプチド。
【請求項6】
前記
セレンキレートエンドウオリゴペプチドはエンドウオリゴペプチドの水溶液と亜セレン酸ナトリウムとの反応生成物であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の
セレンキレートエンドウオリゴペプチド。
【請求項7】
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの調製方法であって、エンドウオリゴペプチドの水溶液と亜セレン酸ナトリウムとの混合系を60~90℃の条件で20min以上反応させ、得られた反応生成物をアルコール沈殿および乾燥に供して、前記
セレンキレートエンドウオリゴペプチドを得ることを特徴とする
セレンキレートエンドウオリゴペプチドの調製方法。
【請求項8】
前記混合系には、エンドウオリゴペプチドと亜セレン酸ナトリウムとの質量比が1~5:1であることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
前記エンドウオリゴペプチドには、分子量が1000uより少ない成分含有量が80%より高く、前記エンドウオリゴペプチドの水溶液には、エンドウオリゴペプチドの質量濃度が1~5g/100mLであることを特徴とする請求項7又は8に記載の調製方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の
セレンキレートエンドウオリゴペプチドのヘルスケア食品での用途。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】