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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】レーダシステム及びこの制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
G01S7/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546411
(86)(22)【出願日】2019-06-17
(85)【翻訳文提出日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 CN2019091576
(87)【国際公開番号】W WO2020107867
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】201811445465.2
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521162919
【氏名又は名称】加特▲蘭▼微▲電▼子科技(上海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】ジュー イェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジャース
(72)【発明者】
【氏名】ファン レイレイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ウンティン
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AC11
5J070AD05
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK22
5J070BE01
(57)【要約】
本発明は、レーダシステム及びこの制御方法を提供する。前記レーダシステムは、複数のレーダユニットを含み、各レーダユニットは、各RF(radio frequency)チャネルが受信信号に基づいてアナログ入力信号を生成するように構成される少なくとも一つのRFチャネルと、各RFチャネルに連結される処理モジュールとを含む。前記処理モジュールは、アナログ入力信号をサンプリングしてデジタル信号を取得し、デジタル信号に対して第1のデジタル信号処理過程を実行して中間データを取得するように構成される。ここで、複数のレーダユニットが共同作業モードにある場合、指定されたレーダユニットは、複数のレーダユニットが提供する複数の中間データに対して第2のデジタル信号処理過程を集中的に実行し、レーダシステムの結果データを取得する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダシステムにおいて、複数のレーダユニットを含み、各前記レーダユニットは、
各RFチャネルが受信信号を取得して前記受信信号に基づいてアナログ入力信号を生成するように構成される少なくとも一つのRFチャネルと、
前記少なくとも一つのRFチャネルに連結される処理モジュールとを含み、前記処理モジュールは、前記アナログ入力信号をサンプリングしてデジタル信号を取得し、前記デジタル信号に対して第1のデジタル信号処理過程を行って中間データを取得するように構成され、
ここで、前記複数のレーダユニットが共同作業モードにある場合、指定された前記レーダユニットは、前記複数のレーダユニットが提供する複数の前記中間データに対して第2のデジタル信号処理過程を集中的に実行し、前記レーダシステムの結果データを取得するレーダシステム。
【請求項2】
前記レーダユニットが独立作業モードにあるとき、前記レーダユニット内において、
前記処理モジュールが前記中間データに対して前記第2のデジタル信号処理過程を実行し、前記レーダユニットの前記結果データを取得することを特徴とする、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項3】
各前記レーダユニットにおいて、
前記少なくとも一つのRFチャネルは、
前記受信信号を取得するように構成される少なくとも一つの受信アンテナと、
前記少なくとも一つのアンテナに連結されるフロントエンドモジュールとを含み、前記フロントエンドモジュールは、局部発振器信号に基づいて前記受信信号を前記アナログ入力信号に変換するように構成され、
前記処理モジュールは、
サンプリングクロック信号に基づいて前記アナログ入力信号をサンプリングして、相応するデジタル信号を取得するように構成されるアナログ‐デジタル変換器と、
記憶ユニット及び第1ないし第Mサブ処理ユニットを含むレーダプロセッサとを含み、前記記憶ユニットは、前記中間データと前記結果データのうち少なくとも一つを記憶するように構成され、ここで第1ないし第kサブ処理ユニットは、前記第1のデータ処理過程を具現するように構成され、第k+1ないし第Mサブ処理ユニットは、前記第2のデータ処理過程を具現するように構成され、ここでMは2以上の自然数であり、kは1以上M未満の自然数であることを特徴とする、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項4】
前記少なくとも一つのRFチャネルは、
前記局部発振器信号に基づいて外部に送信信号を提供するように構成される少なくとも一つの送信アンテナをさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載のレーダシステム。
【請求項5】
前記第1ないし第Mサブ処理ユニットは、
フーリエ変換、ターゲット検出、角度検出及びポイントクラウドイメージングの各データ処理過程のうち少なくとも一部過程をそれぞれ実行することを特徴とする、請求項3に記載のレーダシステム。
【請求項6】
前記第1のデータ処理過程は、1次元フーリエ変換、2次元フーリエ変換及びターゲット検出を含むことを特徴とする、請求項5に記載のレーダシステム。
【請求項7】
前記複数のレーダユニットは、一つのマスタレーダユニット及び複数のスレーブレーダユニットを含み、
前記複数のレーダユニットが共同作業モードにあるとき、前記マスタレーダユニットは、前記局部発振器信号と前記サンプリングクロック信号を生成して前記複数のスレーブレーダユニットに提供することを特徴とする、請求項3に記載のレーダシステム。
【請求項8】
前記マスタレーダユニットは、順次前記複数のスレーブレーダユニットとカスケードされることを特徴とする、請求項7に記載のレーダシステム。
【請求項9】
カスケードされた前記レーダユニットは、現在段階の中間データに対応するアドレスまたはそれ以前の段階のレーダユニットで提供するアドレスを合わせたアドレスをそれぞれ次の段階のレーダユニットに提供し、最後の段階の前記レーダユニットで最終アドレスを取得し、
各前記スレーブレーダユニットは、自身が生成した前記中間データをそれぞれ前記マスタレーダユニットに直接またはカスケードされた前記スレーブレーダユニットを介して伝送し、前記マスタレーダユニットは、前記指定されたレーダユニットであって、前記結果データを生成することを特徴とする、請求項8に記載のレーダシステム。
【請求項10】
カスケードされた前記レーダユニットは、現在段階の中間データに対応するアドレスまたはそれ以前の段階のレーダユニットで提供するアドレスを合わせたアドレスをそれぞれ次の段階のレーダユニットに提供し、現在段階の中間データと各前の段階のレーダユニットの中間データを次の段階のレーダユニットに提供し、
最後の段階のスレーブレーダユニットは、前記指定されたレーダユニットであって、前の段階のレーダユニットで提供するアドレスと各段階のレーダユニットで提供する中間データに基づいて最終の前記結果データを生成するように構成されることを特徴とする、請求項8に記載のレーダシステム。
【請求項11】
カスケードされた前記レーダユニットは、現在段階の中間データまたは現在段階の中間データと前の段階の中間データを合わせた後のデータを次の段階のレーダユニットに提供し、
最後の段階のスレーブレーダユニットは、前記指定されたレーダユニットであって、前の段階のレーダユニットが提供するデータに基づいて最終の前記結果データを生成するように構成されることを特徴とする、請求項8に記載のレーダシステム。
【請求項12】
各前記レーダユニットは、独立的なSocチップによってそれぞれ具現されることを特徴とする、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項13】
各前記レーダユニットは、バス構造を介して同期化及びデータ交換を具現することを特徴とする、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項14】
前記バス構造は、回路基板上またはチップパッキング構造内に設けられることを特徴とする、請求項13に記載のレーダシステム。
【請求項15】
前記複数のレーダユニットは、アレイで配列されることを特徴とする、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項16】
レーダシステムの制御方法において、
前記レーダシステムは、複数のレーダユニットを含み、前記制御方法は、
各前記レーダユニットが取得されたそれぞれの受信信号に基づいてアナログ入力信号を生成し、前記アナログ入力信号をサンプリングして相応するデジタル信号を取得する段階と、
各前記レーダユニットがそのサンプリングして取得した前記デジタル信号に対して第1のデジタル信号処理過程をそれぞれ行い、相応する中間データを取得する段階と、
前記複数のレーダユニットが共同作業モードにある場合、指定された前記レーダユニットが前記複数のレーダユニットで提供する複数の前記中間データに対して第2のデジタル信号処理過程を集中的に実行し、前記レーダシステムの結果データを取得する段階と、を含むレーダシステムの制御方法。
【請求項17】
前記制御方法は、
前記レーダユニットが独立作業モードにある場合、前記レーダユニットがその生成された前記中間データに対して前記第2のデジタル信号処理過程を実行し、前記レーダユニットの前記結果データを取得する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載のレーダシステムの制御方法。
【請求項18】
各前記レーダユニットが取得された受信信号に基づいてアナログ入力信号をそれぞれ生成し、前記アナログ入力信号をサンプリングして相応するデジタル信号を取得する段階は、各前記レーダユニットにおいて、
局部発振器信号に基づいて前記受信信号を前記アナログ入力信号に変換する段階と、
サンプリングクロック信号に基づいて前記アナログ入力信号をサンプリングして相応する前記デジタル信号を取得する段階と、を含むことを特徴とする、請求項16に記載のレーダシステムの制御方法。
【請求項19】
前記局部発振器信号に基づいて外部に送信信号を提供する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載のレーダシステムの制御方法。
【請求項20】
各前記レーダユニットは、第1ないし第Mサブ処理ユニットを含み、
ここで、第1ないし第kサブ処理ユニットは、前記第1のデータ処理過程を具現するように構成され、第k+1ないし第Mサブ処理ユニットは、前記第2のデータ処理過程を具現するように構成され、ここでMは2以上の自然数であり、kは1以上M未満の自然数であることを特徴とする、請求項18に記載のレーダシステムの制御方法。
【請求項21】
前記第1ないし第Mサブ処理ユニットは、
フーリエ変換、ターゲット検出、角度検出及びポイントクラウドイメージングの各データ処理過程のうち少なくとも一部過程をそれぞれ実行することを特徴とする、請求項20に記載のレーダシステムの制御方法。
【請求項22】
前記第1のデータ処理過程は、1次元フーリエ変換、2次元フーリエ変換及びターゲット検出を含むことを特徴とする、請求項21に記載のレーダシステムの制御方法。
【請求項23】
前記複数のレーダユニットは、一つのマスタレーダユニットと複数のスレーブレーダユニットを含み、
前記複数のレーダユニットが共同作業モードにあるとき、前記マスタレーダユニットは、前記局部発振器信号と前記サンプリングクロック信号を生成して前記複数のスレーブレーダユニットに提供することを特徴とする、請求項18に記載のレーダシステムの制御方法。
【請求項24】
前記マスタレーダユニットは、順次前記複数のスレーブレーダユニットとカスケードされることを特徴とする、請求項23に記載のレーダシステムの制御方法。
【請求項25】
カスケードされた前記レーダユニットは、現在段階の中間データに対応するアドレスまたはそれ以前の段階レーダユニットで提供するアドレスを合わせたアドレスをそれぞれ次の段階のレーダユニットに提供し、最後の段階の前記レーダユニットで最終アドレスを取得し、
各前記スレーブレーダユニットは、自身が生成した前記中間データを前記マスタレーダユニットに直接またはカスケードされた前記スレーブレーダユニットを介してそれぞれ伝送し、前記マスタレーダユニットは、前記指定されたレーダユニットであって、前記結果データを生成することを特徴とする、請求項24に記載のレーダシステムの制御方法。
【請求項26】
カスケードされた前記レーダユニットは、現在段階の中間データに対応するアドレスまたはそれ以前の段階のレーダユニットで提供するアドレスを合わせたアドレスをそれぞれ次の段階のレーダユニットに提供し、現在段階の中間データと各前の段階のレーダユニットの中間データを次の段階レーダユニットに提供し、
最後の段階のスレーブレーダユニットは、前記指定されたレーダユニットであって、前の段階のレーダユニットで提供するアドレスと各段階のレーダユニットで提供する中間データに基づいて最終の前記結果データを生成するように構成されることを特徴とする、請求項24に記載のレーダシステムの制御方法。
【請求項27】
カスケードされた前記レーダユニットは、現在段階の中間データまたは現在段階の中間データと前の段階の中間データを合わせたデータを次の段階のレーダユニットに提供し、
最後の段階のスレーブレーダユニットは、前記指定されたレーダユニットであって、前の段階のレーダユニットで提供するデータに基づいて最終の前記結果データを生成するように構成されることを特徴とする、請求項24に記載のレーダシステムの制御方法。
【請求項28】
各前記レーダユニットは、バス構造を介して同期化及びデータ交換を具現することを特徴とする、請求項16に記載のレーダシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月29日に出願された出願番号が201811445465.2、発明の名称が「レーダシステム及びこの制御方法」である中国特許出願を優先権として主張し、本出願はその全体内容を参照として引用した。
【0002】
発明は、レーダ技術分野に関するものであって、より詳しくは、レーダシステム及びこの処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来のレーダシステムは、一般的にプロセッサ及びアレイで配列された複数のRF(radio frequency)チップ(或いはRFモジュール)を含み、各RFチップの同期化を具現するために、プロセッサは、各RFチップに相応する同期化信号(sync)を提供しなければならない。各RFチップは、対応するアンテナを介して受信信号をそれぞれ取得し、同期化信号(sync)に基づいて受信信号を中間周波数信号(IF)に変換する。プロセッサは、各RFチップからの中間周波数信号(IF)に対する信号処理を行い、受信信号が提供する最終データを解析して取得する。
【発明の詳細な説明】
【0004】
本発明の実施例において提供するレーダシステム及びこの制御方法は、少なくとも一部信号処理過程を各レーダユニット内に分散させて開発難易度及び実装コストを低くする。また、拡張性に優れ、レーダシステムに比較的多くのRFチャネルを集積させることによって大規模なレーダシステムを構築することが容易であるため、探知距離及び探知角度の精度と解像度を向上させることができる。
【0005】
本発明の一様相は、レーダシステムを提供し、これには複数のレーダユニットが含まれる。各前記レーダユニットは、各RFチャネルが受信信号を取得して前記受信信号に基づいてアナログ入力信号を生成するように構成される少なくとも一つのRFチャネルと、前記少なくとも一つのRFチャネルに連結される処理モジュールとを含む。前記処理モジュールは、前記アナログ入力信号をサンプリングしてデジタル信号を取得し、前記デジタル信号に対して第1のデジタル信号処理過程を実行して中間データを取得するように構成される。ここで前記複数のレーダユニットが共同作業モードにある場合、指定された前記レーダユニットは、前記複数のレーダユニットにおいて提供する複数の前記中間データに対して第2のデジタル信号処理過程を集中的に実行し、前記レーダシステムの結果データを取得する。
【0006】
本発明の異なる一様相は、レーダシステムの制御方法をさらに提供する。前記レーダシステムは、複数のレーダユニットを含む。前記制御方法は、各前記レーダユニットが取得された受信信号に基づいてアナログ入力信号をそれぞれ生成し、前記アナログ入力信号をサンプリングして相応するデジタル信号を取得する段階と、各前記レーダユニットがそのサンプリングして取得した前記デジタル信号に対して第1のデジタル信号処理過程をそれぞれ実行して、相応する中間データを取得する段階と、前記複数のレーダユニットが共同作業モードにある場合、指定された前記レーダユニットが前記複数のレーダユニットにおいて提供する複数の前記中間データに対して第2のデジタル信号処理過程を集中的に実行し、前記レーダシステムの結果データを取得する段階と、を含む。
【0007】
本発明の実施例によるレーダシステム及びこの制御方法は、一部またはすべての信号処理過程を各レーダユニット内に分散させて処理を行うことによって、従来技術においてデータ処理を統合的に行うプロセッサに代替した。したがって、各レーダユニットの処理能力に対する要求基準が比較的低く、レーダシステムの拡張性が向上してレーダシステムの実装コストが減少する。RFチャネル数を増やして大規模なレーダシステムを構築することが容易であり、レーダシステムの探知距離及び探知角度の精度と解像度を向上させることができる。また、各レーダユニットの構造が類似し、または完全に同一であるため、レーダシステムを設計または拡張する際に要する設計時間とシステムの複雑さが大幅に減少する。異なるチップやモジュールを再設計する必要がないため、設計の効率性が向上し、設計コストが減少し、設計の難易度が低くなる。
【0008】
選択的実施例において、各レーダユニットはグループを成し,または独立してシステムオンチップ(SoC)チップによって具現されてレーダシステムのオンチップ集積度を向上させることができる。
【0009】
一部選択的実施例において、レーダシステム及びこの制御方法は、バス構造を備える伝送ユニットを採択して各レーダユニットの同期化及びデータ伝送を具現し、構造が簡単である。異なる一部選択的実施例において、レーダシステム及びこの制御方法は、マスタ‐スレーブ構造を有する伝送ユニットを採択する。これは、信号処理過程を複数部分に分割し、各部分は単一レーダユニット内で集中的に行ったり、複数のレーダユニット内で分散して実行したりできるため、上述した技術的効果を具現すると同時に各レーダユニットの処理能力に対する要求基準を低くする。また、データ伝達能力及び伝送能力が強いバスを設ける必要がないため、柔軟性がより高く、レーダシステムの拡張難易度とコストがより低い。したがって、探知距離及び探知角度の精度と解像度をより容易に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の前記内容及びその他の目的、特徴、利点は、以下の添付図面と実施例を参照して、より明確に説明する。
【0011】
図1】本発明の選択的一実施例によるレーダシステムのうち、各レーダユニットの構造図である。
図2】本発明の選択的一実施例による処理モジュールによって行われるデータ処理過程の段階図である。
図3】本発明の選択的一実施例によるレーダシステムのブロック図である。
図4】本発明の異なる選択的一実施例によるレーダシステムのブロック図である。
図5】レーダシステムの同期化メカニズムに対する部分構造図である。
図6図5におけるレーダシステムの第1具現構造のブロック図である。
図7図5におけるレーダシステムの第2具現構造のブロック図である。
図8図5におけるレーダシステムの第3具現構造のブロック図である。
図9】本発明の第4実施例によるレーダシステムの制御方法のフロー図である。
【発明の実施のための形態】
【0012】
以下では、添付図面を参照して本発明をより詳しく説明する。各添付図面において同一の要素は類似した添付図面符号で表示する。明確性のために、添付図面の各部分は比率に合わせて製図しなかった。また、図面において一部公知された部分は図示しなかった。
【0013】
図1は、本発明の第1実施例によるレーダシステムのうち、各レーダユニットの構造図である。
【0014】
図1に図示された通り、本発明の第1実施例によるレーダシステムは、複数のレーダユニット2100を含む。ここで各レーダユニット2100は、アレイで配列され得る。
【0015】
また、各レーダユニット2100は、フロントエンドモジュール2110、処理モジュール2120、及び少なくとも一つのアンテナを含む。ここで各アンテナは、受信アンテナ及び/または送信アンテナであって、受信信号を取得、及び/または外部に送信信号を提供するように構成される。
【0016】
フロントエンドモジュール2110は、局部発振器信号(LO)に基づいて各アンテナで提供する受信信号を相応するアナログ入力信号に変換し、フロントエンドモジュール2110は、前記少なくとも一つのアンテナ(アンテナアレイを形成することができる)と前記レーダユニット2100の少なくとも一つのRFチャネルを形成する。具体的な実施例において、送信アンテナは、同一の局部発振器信号(LO)に基づいて外部に送信信号を提供することができる。具体的な実施例において、図1に図示された通り、フロントエンドモジュール2110は、送信チャネル(Tx)を提供する複数のアンテナ、受信チャネル(Rx)を提供する複数のアンテナ、複数の周波数混合器(Mx)、アナログ処理回路2111、及び局部発振器信号2112を含む。受信過程において各周波数混合器(Mx)は、対応する受信チャネル(Rx)で提供する受信信号を局部発振器信号(LO)と周波数をそれぞれ混合して1次アナログ信号を取得し、各1次アナログ信号は、アナログ処理回路2111でアナログ入力信号に変換される。一部実施例において、局部発振器信号生成器2112によって生成された局部発振器信号(LO)は、各送信チャネル(Tx)と受信チャネル(Rx)によって共有される。
【0017】
処理モジュール2120は、各RFチャネルに連結され、アナログ入力信号をサンプリングしてデジタル信号を取得し、デジタル信号に対して第1のデジタル信号処理過程を行って中間データを取得するように構成される。具体的に、処理モジュール2120は、アナログ‐デジタル変換器2121とレーダプロセッサ2122を含む。ここでアナログ‐デジタル変換器2121は、サンプリングクロック信号(clk_sample)に基づいてアナログ入力信号をサンプリングして相応するデジタル信号を取得するように構成される。レーダプロセッサ2122は、第1ないし第Mサブ処理ユニットと中間データ及び/または結果データを記憶するように構成される記憶ユニットを含む。ここで第1ないし第kサブ処理ユニットは、前記第1のデータ処理過程を具現するように構成され、第k+1ないし第Mサブ処理ユニットは、前記第2のデータ処理過程を具現するように構成される。ここでMは2以上の自然数であり、kは1以上M未満の自然数である。
【0018】
レーダユニット2100は、相応するポート(C_OUT)を介して中間データを外部回路に提供する(例えば、異なるレーダユニットまたは異なる外部回路)。
【0019】
選択的に、各レーダユニット中の各RFチャネル及び処理モジュール2120は、同一のSoCチップ内に集積される。
【0020】
一部実施例において、各レーダユニットの処理モジュール2120は、レーダプロセッサ2122で提供する出力結果に基づいて追加的な処理を行うことができ、処理後に取得された中間データは、相応するポート(C_OUT)を介して出力することができる補助プロセッサ2123をさらに含む。
【0021】
本実施例のレーダシステムにおいて、各レーダユニットで受信した受信信号は、最終的に第1のデジタル信号処理過程と第2のデジタル処理過程を経てレーダシステムの結果データに変換され得る。各レーダユニットは、独立作業モードまたは共同作業モードで作動することができる。共同作業モード下では、指定されたレーダユニットが各レーダユニットで提供する中間データに対して第2のデジタル信号処理過程を実行してレーダシステムの結果データを取得する。独立作業モード下では、独立作業レーダユニットがレーダシステムを構成し、前記レーダユニット中の処理モジュールは、その取得された結果データに対して第2のデジタル信号処理過程を継続実行して前記レーダユニットの結果データを取得する。
【0022】
本発明の実施例のレーダシステムにおいて、複数のレーダユニットは、受信データの処理を共同で具現することによって、ターゲットの距離、速度及び角度情報などの結果データを取得したり、結果データを基盤としてポイントクラウドレーダイメージを取得したりすることができる。以下ではこれを例に挙げてさらに説明する。
【0023】
図2は、本発明の一実施例による処理モジュールによって実行されるデータ処理過程の段階図である。
【0024】
図2に図示された通り、本実施例において結果データは、例えば角度検出の結果データ及び/またはポイントクラウドイメージングの結果データである。レーダプロセッサ2122中の第1ないし第Mサブ処理ユニットは、例えばフーリエ変換、ターゲット検出、角度検出及びポイントクラウドイメージングの各データ処理過程のうち少なくとも一部過程をそれぞれ実行する。ここでフーリエ変換は、1次元FFT変換(1D‐FFT)と2次元FFT変換(2D‐FFT)を含む。
【0025】
図2に図示された通り、前記レーダユニットが独立して作動する場合、処理モジュール中のアナログ‐デジタル変換器は、まず、アナログ入力信号をサンプリングしてデジタル信号を取得する。その後、レーダプロセッサが前記デジタル信号を基盤としてフーリエ変換(1次元FFT変換(1D‐FFT)と2次元FFT変換(2D‐FFT))、ターゲット検出などを行って最終結果を取得する。この場合、前記レーダ装置は独立してレーダシステムとして作動し、図2の実線矢印で関連プロセスを図示した。
【0026】
前記レーダユニットがその他のレーダユニットまたはその他の回路装置と共同で作動する場合、図2に図示された通り、レーダユニット中のアナログ‐デジタル変換器がサンプリングを介してデジタル信号を取得した後、レーダプロセッサは、前記デジタル信号を基盤として1次元FFT変換結果、2次元FFT変換結果、ターゲット検出結果などを中間データとして使用してその他のレーダユニットまたはその他の回路に出力する。したがって、原則的に、ある一つのデータ処理段階において、前記レーダユニットと外部回路のデータ交換を具現することができ、前記中間データを受信するレーダユニットまたはその他の回路は、前記中間データを異なる回路に引き続き伝達したり、前記中間データに対して第2のデータ処理過程を引き続き実行したりすることができる(例えば、図2に図示された角度検出及びポイントクラウドイメージング)。この場合、前記レーダユニットとその他のレーダユニット及び/またはその他の回路は、分散型レーダ処理システムを具現する。
【0027】
代替的な実施例において、本発明において提供するレーダシステムは、一部下位段階を一括的に実行した後、再びデータを各レーダユニットに分散させ、追加的な処理を行って再び結果データを一括的に取得することもできる。つまり、レーダシステムのデータ処理過程は、少なくとも一回の一括処理過程(指定されたレーダユニットで実行すること)と少なくとも一回の分散処理過程(各レーダユニットで個別的に実行すること)を含むことができる。
【0028】
選択的実施例において、各一括処理過程で計算されるデータの量は、分散処理過程より小さいため、各レーダユニット間のデータ伝送能力及び一括処理過程を行うように指定されたレーダユニットのデータ伝達能力に負担を与えることを防止する。
【0029】
図2に図示されたデータ処理過程を例に挙げると、ターゲット検出前のデータ処理量及び必要な貯蔵空間が大きいため、レーダシステムのリアルタイム性能に対する要求基準を満たし難い。レーダシステムの性能を補償するために、選択的実施例として、各レーダユニットは、ターゲット検出のデータ処理段階をすべて完了した後に中間データを提供して、各レーダユニットで提供する中間データのデータ量及び必要な貯蔵空間が比較的小さい範囲内で制限されるように補償する。また、各レーダユニット間では、ターゲット検出後、取得したターゲットアドレス及びそれに対応する2D‐FFT情報のみ交換すればよい。その後、指定されたレーダユニット内で各レーダユニットが提供するターゲットアドレス及びそれに対応する2D‐FFT情報を集め、角度検出などの追加的なデータ処理を集中的に実行して、最終的に指定されたレーダユニット内で結果データを取得する。
【0030】
図3は、本発明の第2実施例によるレーダシステムのブロック図である。
【0031】
図3に図示された通り、本発明の第2実施例によるレーダシステム2000は、バス構造(DATABUS0)を用いて各レーダユニット2100間の同期化及びデータの伝送と交換を具現する。各レーダユニット2100の内部構造は、図1に図示されたレーダユニットと同一であるため、ここで繰り返し説明しない。
【0032】
選択的に、バス構造は、レーダシステムが位置する回路基板上に設けられて複数のSoCチップ間に分布され、各レーダユニットは、グループを成し、または個別的に対応するSoCチップ内に集積される。また、選択的に、前記複数のSoCチップは、バス構造の両側に分布される。代替的な実施例として、バス構造は、チップパッキング構造に直接設けられることもある。
【0033】
前記実施例によるレーダシステムは、各レーダユニット内にそれぞれ設けられた処理モジュールを用いて、従来技術でデータ処理を統合的に行うプロセッサに代替した。また、各レーダユニットに連結されたバス構造の具現時に、クロック同期化、データ同期化及びデータ交換を採択することによって、処理モジュールの処理能力に対する要求基準を下げ、レーダシステムの拡張性を向上させてレーダシステムの実装コストを下げた。これにより、RFチャネル数を増やして大規模なレーダシステムを構築することが容易であり、レーダシステムの探知距離及び探知角度の精度と解像度を向上させることができる。また、各レーダユニットの構造が類似し、または完全に同一であるため、レーダシステムを設計または拡張する際に要する設計時間とシステムの複雑さがすべて大幅に減少する。異なるチップやモジュールを再設計する必要がないため、設計効率が高く、設計コストと設計難易度が低い。
【0034】
前記実施例のレーダシステムは、バス構造を採択する。しかし、RFチャネル数が増加するにつれて、バス構造がより高いデータ伝達能力とデータ伝送速度を備えてはじめてレーダユニット間のデータ共有を支援することができ、同時に各レーダユニット間に非常に厳格な同期化メカニズムも設定しなければならない。このために、本発明は、図1に図示されたレーダシステムを基盤として第2実施例のレーダシステムを提供して伝送ユニットと同期化メカニズムの設計難易度を低くした。
【0035】
図4は、本発明の第3実施例によるレーダシステムのブロック図である。
【0036】
図4に図示された通り、本発明の第3実施例によるレーダシステムは、同様に複数のレーダユニットを含む。ここで、各レーダユニットの内部構造は、図1に図示されたレーダユニットと同一であるため、繰り返し説明しない。
【0037】
前述した第2実施例のレーダシステムと異なり、本実施例では、複数のレーダユニットが、一つのマスタレーダユニット2100Aと複数のスレーブレーダユニット2100Bを含み、バス構造と異なるマスタ‐スレーブ構造を形成する。本実施例において、各レーダユニットの処理モジュールによって生成された中間データは、指定された一つのレーダユニット(マスタレーダユニットと複数のスレーブレーダユニットのうち一つ)で第2のデジタル処理過程がさらに実行され、前記指定されたレーダユニットを用いて最終結果データを取得することができる。
【0038】
具体的に、マスタレーダユニット2100Aは、各スレーブレーダユニット2100Bと順次カスケードされ得る。以下ではこれを例に挙げて詳しく説明する。
【0039】
複数のレーダユニットが共同作業モードにある場合、マスタレーダユニット2100Aとスレーブレーダユニット2100Bが同期化されるように同期化メカニズムを設計しなければならない。前記同期化メカニズムは、主に局部発振器信号(LO)の同期化、アナログ‐デジタル変換器のサンプリングクロック信号の同期化、及びレーダユニット内部の各プロセッサの同期化の3つの側面を含む。具体的な一実施例として、マスタレーダユニット2100Aは、局部発振器信号(LO)とサンプリングクロック信号(clk_sample)を生成して各スレーブレーダユニット2100Bに提供し、各レーダユニットの処理モジュールは、同一のサンプリングクロック信号(clk_sample)を基盤として相応するアナログ入力信号をサンプリングする。フロントエンド送受信リンク中の各フロントエンドモジュールは、同一の局部発振器信号(LO)を共有して(例えば、マスタレーダユニット2100A中の位相同期回路構造で各スレーブレーダユニット2100Bのフロントエンドモジュール2110に直接または間接的にマスタ局部発振器信号(LO)を提供する)、各レーダユニット間の同期化を具現する。
【0040】
以下では、図5に基づいてレーダシステムの同期化メカニズムを詳しく説明する。図5は、各レーダユニット中の一部構造のみ図示したことに留意する(例えば、局部発振器信号発生器、複数のバッファまたはインバータ、複数のスイッチ、送信チャネル、受信チャネル、アナログ‐デジタル変換器(ADC)、及びレーダプロセッサなど)。また、簡略な説明のために、以下では2個のレーダユニットを含むレーダシステムを例に挙げてレーダユニット間の同期化とデータ交換を説明するが、本発明はこれに限定されない。本発明が属する技術分野の当業者は、必要に応じて以下の実施例を2個以上のレーダユニットが含まれたレーダシステムに拡張することができる。
【0041】
図5に図示された通り、マスタレーダユニット2100A(例えば第1チップ(SOC_A)によって具現される)とスレーブレーダユニット2100B(例えば第2チップ(SOC_B)によって具現される)は、局部発振器信号出力端子(LO_OUT)、局部発振器信号入力端子(LO_IN)、及びサンプリングクロック出力端子(SYNC_OUT)及びサンプリングクロック入力端子(SYNC_IN)をそれぞれ備える。
【0042】
レーダユニットが独立して作動する場合(例えばレーダシステムにマスタレーダユニットのみ作動する)、図5に図示された通り、マスタレーダユニット2100A内部のスイッチs2とs4がターンオン(turn―on)され、s1とs3はターンオフ(turn―off)される。同時にポートLO_OUT、LO_IN、SYNC_IN、SYNC_OUT(或いは相応する内部信号)は、いずれも連結解除状態(非活性状態)に置かれ、スレーブレーダユニット2100Bは閉じる。
【0043】
マスタレーダユニットとスレーブレーダユニットが共同で作動する場合、マスタレーダユニット2100Aのスイッチs2とs4がターンオフされ、s1とs3はターンオンされる。スレーブレーダユニット2100Bのスイッチs1、s2及びs4はターンオフされ、s3はターンオンされる。同時にマスタレーダユニット2100AのポートLO_OUTは、マスタレーダユニット2100AのポートLO_IN及びスレーブレーダユニット2100BのポートLO_INに局部発振器信号(LO)を提供する。マスタレーダユニット2100AのポートSYNC_OUTは、マスタレーダユニットのポートSYNC_INとスレーブレーダユニット2100BのポートSYNC_INにサンプリングクロック信号(clk_sample)を提供し、各レーダユニットの局部発振器信号の同期化とサンプリングクロック信号の同期化を具現する。マスタレーダユニットとスレーブレーダユニットが共同で作動する場合の連結関係は、図6の点線で図示された通りである。
【0044】
図6は、図5におけるレーダシステムの第1具現構造のブロック図である。前記レーダシステムは、カスケードされた3個のレーダユニットのみを示すが、本発明の実施例はこれに限定されない。本発明が属する技術分野の当業者は、これに基づいて2個以上のレーダユニットが含まれたレーダシステムを設計することができる。また、各レーダユニット中の一部モジュールは図示しなかったことに留意する必要がある。
【0045】
図6に図示された通り、マスタレーダユニット2100Aは、そのターゲット検出後に取得したターゲットアドレスをスレーブレーダユニット2100B1に伝送する。スレーブレーダユニット2100B1は、それ自身のターゲット検出後に取得したターゲットアドレス及びマスタレーダユニットで提供したターゲットアドレスに基づいて第1段階併合ターゲットアドレスを生成し(第1段階併合ターゲットアドレスはマスタレーダユニット及び/またはスレーブレーダユニットで提供するターゲットアドレスを含むことができる)、前記第1段階併合ターゲットアドレスをスレーブレーダユニット2100B2に伝送する。スレーブレーダユニット2100B2は、同様にそれ自身のターゲット検出後に取得したターゲットアドレス及びスレーブレーダユニット2100B1で提供した第1段階併合ターゲットのアドレスに基づいて第2段階併合ターゲットアドレスを生成し(第2段階併合ターゲットアドレスはスレーブレーダユニット2100B2で提供するターゲットアドレス及び/またはスレーブレーダユニット2100B1で提供する第1段階併合ターゲットアドレスを含む)、最終ターゲットアドレスを生成する。
【0046】
その後、スレーブレーダユニット2100B2は、最終ターゲットアドレスとその対応する2D‐FFT情報をスレーブレーダユニット2100B1にリターンする。スレーブレーダユニット2100B1は、最終ターゲットアドレスに基づいて、その対応する2D‐FFT情報とスレーブレーダユニット2100B2で提供する2D‐FFT情報を共にマスタレーダユニット2100Aにリターンする。マスタレーダユニット2100Aは、最終ターゲットアドレスに基づいて、その対応する2D‐FFT情報及びスライドレーダユニット2100B1、2100B2でリターンした2D‐FFT情報を共にマスタレーダユニットのレーダプロセッサに提供する。これを介してレーダプロセッサの角度検出ユニットまたはポイントクラウドイメージング処理ユニットは、各レーダユニットが提供する2D‐FFT情報に対して追加的な処理を行ってレーダシステムの結果データを生成する。
【0047】
図7は、図5におけるレーダシステムの第2具現構造のブロック図である。同様に、前記レーダシステムは、カスケードされた3個のレーダユニットのみを示すが、本発明の実施例はこれに限定されない。本発明が属する技術分野の当業者は、これに基づいて2個以上のレーダユニットが含まれたレーダシステムを設計することができる。また、各レーダユニット中の一部モジュールは図示しなかったことを留意する必要がある。
【0048】
図7に図示された通り、マスタレーダユニット2100Aは、ターゲット検出後に取得されたターゲットアドレス及びその対応する2D‐FFT情報をスレーブレーダユニット2100B1に伝送する。スレーブレーダユニット2100B1は、それ自身のターゲット検出を介してターゲットアドレス及びその対応する2D‐FFT情報を取得し、それ自身のターゲットアドレス及びマスタレーダユニット2100Aで提供するターゲットアドレスに基づいて第1段階併合ターゲットアドレスを生成する(第1段階併合ターゲットアドレスはマスタレーダユニット及び/またはスレーブレーダユニットで提供するターゲットアドレスを含むことができる)。その後、前記第1段階併合ターゲットアドレス、マスタレーダユニット2100Aで提供する2D‐FFT情報及びスレーブレーダユニット2100B1で提供する2D‐FFT情報をスレーブレーダユニット(B)に伝送する。スレーブレーダユニット2100B2は、同様にそれ自身のターゲット検出を介してターゲットアドレス及びその対応する2D‐FFT情報を取得し、それ自身のターゲットアドレス及びスレーブレーダユニット2100B1で提供する第1段階併合ターゲットアドレスに基づいて第2段階併合ターゲットアドレスを生成する(第2段階併合ターゲットアドレスはスレーブレーダユニット2100B2で提供するターゲットアドレス及び/またはスレーブレーダユニット2100B1で提供する第1段階併合ターゲットアドレスを含む)。その後、スレーブレーダユニット2100B2は、第2段階併合ターゲットアドレスに基づいて最終ターゲットアドレスを取得し、最終ターゲットアドレスに基づいてスレーブレーダユニット2100B1、スレーブレーダユニット2100B2及びマスタレーダユニット2100Aで提供する2D‐FFT情報を共にスレーブレーダユニット2100B2中のレーダプロセッサに供する。これを介してレーダプロセッサ中の角度検出ユニットまたはポイントクラウドイメージング処理ユニットは、各レーダユニットで提供する2D‐FFT情報に対して追加的な処理を行ってレーダシステムの結果データを生成する。
【0049】
図8は、図5におけるレーダシステムの第3具現構造のブロック図である。同様に、前記レーダシステムは、カスケードされた3個のレーダユニットのみを示すが、本発明の実施例はこれに限定されない。本発明が属する技術分野の当業者は、これに基づいて2個以上のレーダユニットが含まれたレーダシステムを設計することができる。また、各レーダユニット中の一部モジュールは図示しなかったことに留意する必要がある。
【0050】
図8に図示された通り、マスタレーダユニットは、そのターゲット検出後に取得したターゲットアドレス及び対応する2D‐FFT情報をレーダプロセッサの角度検出とポイントクラウドイメージング処理ユニットに伝送する。前記処理ユニットは、角度検出の計算結果及びマスタレーダユニットのターゲットアドレスをスレーブレーダユニット(A)に伝送する。スレーブレーダユニット(A)は、それ自身のターゲット検出後に取得されたターゲットアドレスとマスタレーダユニットで提供するターゲットアドレスに基づいて第1段階併合ターゲットアドレスを生成する(第1段階併合ターゲットアドレスはマスタレーダユニット及び/またはスレーブレーダユニットで提供するターゲットアドレスを含むことができる)。また、第1段階併合ターゲットアドレスに対応する2D‐FFT情報をスレーブレーダユニット(A)の角度検出とポイントクラウドイメージング処理ユニットに提供する。前記処理ユニットは、第1段階併合ターゲットアドレスに基づいて自身の2D‐FFT情報を対応して取得し、前記2D‐FFT情報及びマスタレーダユニットで提供する角度検出計算結果に基づいて演算を行って第1段階併合結果を取得する。最後に、第1段階併合結果と第1段階併合ターゲットアドレスを共にスレーブレーダユニット(B)に伝送する。スレーブレーダユニット(B)は、それ自身のターゲット検出後に取得したターゲットアドレスと第1段階併合ターゲットアドレスに基づいて第2段階併合ターゲットアドレスを生成する(第2段階併合ターゲットアドレスはスレーブレーダユニット(B)で提供するターゲットアドレス及び/またはスレーブレーダユニット(A)で提供する第1段階併合ターゲットアドレスを含む)。また、第2段階併合ターゲットアドレスに対応する2D‐FFT情報をスレーブレーダユニット(B)の角度検出とポイントクラウドイメージング処理ユニットに提供する。前記処理ユニットは、第2段階併合ターゲットアドレスに基づいて自身の2D‐FFT情報を対応して取得し、前記2D‐FFT情報及びスレーブレーダユニット(A)で提供する第1段階併合結果に基づいて演算を行ってレーダシステムの結果データを生成する。
【0051】
以下では、図8のデータ処理過程を具体的に説明する。
【0052】
角度検出とポイントクラウドイメージ生成は、主に物体が異なる角度で生成したエネルギー分布スペクトルを計算するものであって、スペクトルのピークポイントは物体の方向に対応するため、スペクトルの直接出力はポイントクラウドイメージ生成に使用され得る。具体的に、各反射物は各受信チャネルの2D‐FFT情報で一つのピークが存在する。n個チャネルがあると仮定すれば、これらのピークはそれぞれx、i=1......nと記録される。異なる方向のエネルギー分布スペクトルを取得する場合、受信信号から変換して取得したデジタル信号に含まれた情報に基づいて重み係数ω(θ)を生成しなければならず、i=1......n である。ここでθは方向角度を示し、その値の範囲は、例えば-90°ないし90°である。その値の間隔は、例えば1°であり、以下のようなエネルギー分布スペクトルSpectrumBFM(θ)の計算公式を得ることができる。

【0053】
各レーダユニットが共同作業モードにあるとき、n個の受信チャネルが異なるレーダユニット上に分布するため、各レーダユニットは、一部のn個のピーク中の一部ピークxのみ提供することができる。一部実施例において、各レーダユニットもn個の重み係数中の一部重み係数ω(θ)のみ取得することができる。つまり、各レーダユニットは、一部アンテナ情報のみ取得することができる。
【0054】
2個のレーダユニットが含まれたレーダシステムを例に挙げて、第1レーダユニットにn1個の受信チャネルが含まれて第2レーダユニットにn2個の受信チャネルが含まれると仮定すれば、ここでn1とn2はそれぞれ0ではない自然数であり、n1+n2=nであるため、エネルギー分布スペクトルSpectrumBFM(θ)の計算公式は次の通り作成することができる。



【0055】
つまり、図8に図示された通り、第1段階にカスケードされたレーダユニットは、計算された
値を第2段階レーダユニットに直接伝送することができる。第2段階レーダユニットは、
値を計算して取得した後、第1段階レーダユニットを伝送してくる中間データ
値と現在段階のレーダユニットが生成する中間データ
を合わせた後にモジュロ(modulo)処理のみ行えばよく、継続して次の段階のレーダユニットを伝送する。このような方式を介して最終的に最後の段階のレーダユニットで結果データ、つまりエネルギー分布スペクトルSpectrumBFM(θ)を取得する。
【0056】
図6及び図7に図示されたレーダシステムにおいて、レーダユニット間の最大データ伝送量とシステムのレーダユニット総数は正比例する。図8に図示されたレーダシステムにおいて、レーダユニット間のデータ伝送量は基本的に変更されないため、前記技術的解決策は、レーダユニット間の情報伝送量を減らして拡張性を高くすることができる。
【0057】
本発明の第3実施例によるレーダシステムは、マスタ‐スレーブ構造の伝送ユニットを採択する。データ処理過程を複数部分に分割し、各レーダユニットで分散方式で相応する部分を実行、または指定されたレーダユニットで相応する部分を集中的に実行するため、前記技術的効果を具現すると同時に各レーダユニットの処理能力に対する要求基準を低くする。また、データ伝達能力と伝送能力が強いバスを設ける必要がないため、柔軟性が高くなり、レーダシステムの拡張難易度とコストも下がり、探知距離及び探知角度の精度と解像度を容易に向上させることができる。
【0058】
図9は、本発明の第4実施例によるレーダシステムの制御方法のフロー図である。
【0059】
本発明の第4実施例によるレーダシステムの制御方法は、段階S410ないしS440を含む。ここでレーダシステムは、複数のレーダユニットを含む(レーダシステムは、例えば前述した実施例中のレーダシステムである)。
【0060】
段階S410において、各レーダユニットは、取得された受信信号に基づいてアナログ入力信号をそれぞれ生成し、アナログ入力信号をサンプリングして相応するデジタル信号を取得する。具体的に、各レーダユニットは、局部発振器信号に基づいて受信信号をアナログ入力信号に変換し、サンプリングクロック信号に基づいてアナログ入力信号をサンプリングして相応するデジタル信号を取得する。一部実施例において、各レーダユニットは、同一の局部発振器信号に基づいて外部に送信信号を提供する。
【0061】
段階S420において、各レーダユニットは、そのサンプリングして取得されたデジタル信号に対して第1のデジタル信号処理過程を実行して相応する中間データを取得する。
【0062】
段階S430において、複数のレーダユニットが共同作業モードにある場合、指定されたレーダユニットは、複数のレーダユニットが提供する複数の中間データに対して第2のデジタル信号処理過程を集中的に実行し、レーダシステムの結果データを取得する。
【0063】
段階S440において、レーダユニットが独立作業モードにある場合、前記レーダユニットは、その生成された中間データに対して第2のデジタル信号処理過程を実行し、前記レーダユニットの結果データを取得する。
【0064】
具体的な一実施例として、各レーダユニットは、第1ないし第Mサブ処理ユニットをそれぞれ含む。第1ないし第kサブ処理ユニットは、第1のデータ処理過程を具現するように構成され、第k+1ないし第Mサブ処理ユニットは、第2のデータ処理過程を具現するように構成される。ここでMは2以上の自然数であり、kは1以上M未満の自然数である。
【0065】
ここで第1ないし第Mサブ処理ユニットは、フーリエ変換、ターゲット検出、角度検出及びポイントクラウドイメージングの各データ処理過程のうち少なくとも一部過程をそれぞれ実行する。第1のデータ処理過程は、例えば1次元フーリエ変換、2次元フーリエ変換、及びターゲット検出を含み、第2のデータ処理過程は、例えば角度検出とポイントクラウドイメージングを含む。
【0066】
各レーダユニット間には、マスタ‐スレーブ構造の連結関係が形成され、またはバス構造を構成する連結関係が形成され得る。相応する制御方法については、前述した実施例を参照し、ここで繰り返し説明しない。
【0067】
本発明の実施例によるレーダシステム及びこの制御方法は、一部またはすべての信号処理過程を各レーダユニット内に分散させて処理を行うことによって、従来技術においてデータ処理を統合的に行うプロセッサに代替した。したがって、各レーダユニットの処理能力に対する要求基準が比較的低く、レーダシステムの拡張性が向上してレーダシステムの実装コストが減少する。したがって、RFチャネル数を増やして大規模なレーダシステムを構築することが容易であり、レーダシステムの探知距離及び探知角度の精度と解像度を向上させることができる。また、各レーダユニットの構造が類似し、または完全に同一であるため、レーダシステムを設計または拡張する際に要する設計時間とシステム複雑さが大幅に減少する。その他に異なるチップやモジュールを再設計する必要がないため、設計の効率性が向上し、設計コストが減少し、設計難易度が低くなる。
【0068】
選択的実施例において、各レーダユニットはグループを成し、または独立的にシステムオンチップ(SoC)チップによって具現されてレーダシステムのオンチップ集積度を向上させることができる。
【0069】
一部選択的実施例において、レーダシステム及びこの制御方法は、バス構造を備える伝送ユニットを採択して各レーダユニットの同期化及びデータ伝送を具現し、構造が簡単である。異なる一部選択的実施例において、レーダシステム及びこの制御方法は、マスタ‐スレーブ構造を有する伝送ユニットを採択する。これは、信号処理過程を複数部分に分割し、各部分は単一レーダユニット内で集中的に行ったり、複数のレーダユニット内で分散して実行したりできるため、上述した技術的効果を具現すると同時に各レーダユニットの処理能力に対する要求基準を低くすることができる。また、データ伝達容量及び伝送容量が強いバスを設ける必要がないため、柔軟性がより高く、レーダシステムの拡張難易度とコストがより低い。したがって、探知距離及び探知角度の精度と解像度をより容易に向上させることができる。
【0070】
本願に使用された用語「含む」、「包括」またはこの他の変形は、非排他的な「含む」まで内包するものであるので、一連の要素を含む過程、方法、物品またはデバイスは、そのような要素を含むだけでなく、明示的に羅列されない異なる要素をさらに含み、またはこれらの過程、方法、物品またはデバイス固有の要素も含むという点に留意する必要がある。これ以上の制限がない場合の「一つの...を含む」という文章で限定される要素は、該当要素を含んだ過程、方法、物品またはデバイスで異なる同一の要素が存在することを排除しない。
【0071】
上述した通りの本発明の実施例によると、これらの実施例はいずれも細部事項が詳しく説明されておらず、本発明は前記具体的な実施例に制限されない。もちろん、前記説明をもとに多くの修正及び変更が可能である。本発明の原理及び実際の適用方法を詳しく説明することによって、本発明が属する技術分野の当業者が本発明をよりよく用いて本発明を基盤として修正して使用することができるように、本明細書では上述した実施例を選択して具体的に説明した。本発明は、請求の範囲とその全体範囲及び等価物によってのみ制限される。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】