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特表2022-508883浮き構造体の浮きモジュール、およびかかる浮きモジュールを結合するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】浮き構造体の浮きモジュール、およびかかる浮きモジュールを結合するための方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/38 20060101AFI20220112BHJP
   E01D 15/14 20060101ALI20220112BHJP
   G21C 1/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B63B35/38 B
E01D15/14
G21C1/00 210
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546454
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(85)【翻訳文提出日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2019075403
(87)【国際公開番号】W WO2020078662
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】1859672
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521165758
【氏名又は名称】サフィエ、アンジェニリ
【氏名又は名称原語表記】SAFIER INGENIERIE
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】エルシャナン、サフィエ
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059BB13
2D059GG55
(57)【要約】
本発明は、第1長手方向端部(4)と第2長手方向端部(6)との間で延びる複数の壁(2)を備える浮きモジュール(1)であって、浮きモジュール(1)は、複数の壁の各壁(2)に接続して、浮きモジュール(1)の内部容積(12)を規定する第1隔壁(8)および第2隔壁(10)を備える浮きモジュール(1)において、浮きモジュール(1)は、壁(2)の外面(16)から表れる少なくとも1つの延長部(14)を備え、延長部(14)は、第1長手方向端部(4)または第2長手方向端部(6)から突出して長手方向に延び、延長部(14)および壁(2)は、材料的に一体である浮きモジュール(1)に関する。また、本発明は、第1の浮きモジュール(3)と第2の浮きモジュール(5)とを結合するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1長手方向端部(4)と第2長手方向端部(6)との間で延びる複数の壁(2)を備える浮きモジュール(1)であって、前記浮きモジュール(1)は、複数の前記壁(2)の各壁(2)に接続して、これらの壁(2)とともに前記浮きモジュール(1)の内部容積(12)を規定する第1隔壁(8)および第2隔壁(10)を備える浮きモジュール(1)において、
前記浮きモジュール(1)は、前記壁の外面(16)から表れる少なくとも1つの延長部(14)を備え、前記延長部(14)は、前記第1長手方向端部(4)または前記第2長手方向端部(6)から突出して長手方向に延び、前記延長部(14)および当該延長部(14)が表れる前記壁(2)は、材料的に一体である、
浮きモジュール(1)。
【請求項2】
前記壁(2)の一方の長手方向端部(4、6)の1つの縁部(11)および前記延長部(14)は、少なくとも部分的にキャビティ(18)を画定する、
請求項1に記載の浮きモジュール(1)。
【請求項3】
前記キャビティ(18)の厚さは、前記延長部(14)が表れる前記壁(2)の厚さ以上である、
請求項2に記載の浮きモジュール(1)。
【請求項4】
前記壁(2)の前記外面(16)と、前記延長部(14)の内面(20)とは、同一平面(P)内にある、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の浮きモジュール(1)。
【請求項5】
延長部(14)が、前記浮きモジュール(1)の側壁のそれぞれに、および前記浮きモジュール(1)の底壁に配置される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の浮きモジュール(1)。
【請求項6】
前記壁(2)は、前記第1長手方向端部(4)の領域に配置された第1延長部(29)と、前記第2長手方向端部(6)の領域に配置された第2延長部(31)と、を備える、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の浮きモジュール(1)。
【請求項7】
複数の前記壁(2)、前記第1隔壁(8)、前記第2隔壁(10)、および前記延長部(14)は、一体材料から形成され、前記材料はコンクリートである、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の浮きモジュール(1)。
【請求項8】
金属補強体(22)が、1つの壁(2)の内部で延びるとともに前記キャビティ(18)内に表れる、
請求項2乃至7のいずれか一項と組み合わせた請求項2に記載の浮きモジュール(1)。
【請求項9】
1つの壁(2)の内部で延びるとともに前記キャビティ(18)内に表れるプレストレス・シース(24)を備える、
請求項2乃至8のいずれか一項と組み合わせた請求項2に記載の浮きモジュール(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの請求項1乃至9のいずれか一項に記載の浮きモジュール(1)を備えた浮き構造体(100)。
【請求項11】
シール手段(102)が、第1の浮きモジュール(3)と第2の浮きモジュール(5)との間に配置され、前記第1の浮きモジュール(3)および前記第2の浮きモジュール(5)は、いずれも請求項1乃至9のいずれか一項に記載のように設計され、前記シール手段(102)は、前記第1の浮きモジュール(3)の延長部(14)と前記第2の浮きモジュール(5)の延長部(14)との間に挿入される、
請求項10に記載の浮き構造体(100)。
【請求項12】
第1の浮きモジュール(3)のキャビティ(19)および第2の浮きモジュール(5)のキャビティ(21)により画定された空洞部(104)が、コンクリートで充填される、
請求項10または11に記載の浮き構造体(100)。
【請求項13】
前記第1の浮きモジュール(3)の金属補強体(22)と前記第2の浮きモジュール(5)の金属補強体(22)との連続性、および/または前記第1の浮きモジュール(3)のプレストレス・シース(24)と前記第2の浮きモジュール(5)のプレストレス・シース(24)との連続性が、前記空洞部(104)内で実現される、
請求項12に記載の浮き構造体(100)。
【請求項14】
前記第1の浮きモジュール(3)の前記壁(2)の厚さは、前記第2の浮きモジュール(5)の前記壁(2)の厚さに等しく、前記第1の浮きモジュール(3)の前記壁の前記厚さおよび前記第2の浮きモジュール(5)の前記壁の前記厚さは、前記空洞部(104)の厚さ(30)に等しい、
請求項12または13に記載の浮き構造体(100)。
【請求項15】
請求項12乃至14のいずれか一項に記載の浮き構造体(100)を組み立てるための方法であって、前記組立方法は、前記第1の浮きモジュール(3)を前記第2の浮きモジュール(5)に対して位置合わせするステップと、前記第1の浮きモジュール(3)を前記第2の浮きモジュール(5)に取り外し可能に連結するステップと、コンクリートを前記空洞部(104)内に打設するステップと、を含む、組立方法。
【請求項16】
前記組立方法は、前記隔壁(8、10)と前記第1の浮きモジュール(3)の前記延長部(14)と前記第2の浮きモジュール(5)の前記延長部(14)とにより画定されたスペース(106)を空にするステップを含む、
請求項15に記載の組立方法。
【請求項17】
前記組立方法は、前記第1の浮きモジュール(3)の金属補強体(22)と、前記第2の浮きモジュール(5)の金属補強体(22)とを機械的に接続するステップを含む、
請求項15または16に記載の組立方法。
【請求項18】
前記組立方法は、コンクリートを打設する前記ステップの後に、少なくとも1つのプレストレス・ケーブル(25)を、前記第1の浮きモジュール(3)の前記プレストレス・シース(24)および前記第2の浮きモジュール(5)の前記プレストレス・シース(24)に敷設し、次いで牽引力が前記プレストレス・ケーブル(25)に加えられるステップを含む、
請求項15乃至17のいずれか一項に記載の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、人工島またはポンツーン等の浮き構造物の分野である。また、本発明は、浮きモジュールを結合してこのような浮き構造体を形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、単一の構造体要素から形成された、いわゆるモノリシックな浮き構造体が知られている。このようなモノリシックな浮き構造体は、特に、限定された寸法を有するために、所望の寸法に適合した浮き構造体を製造することができない、あるいは、その製造中、またはその製造現場から目的地への輸送において特別なインフラを必要とすることにより製造コストが多大になるという欠点を有している。
【0003】
いわゆるモジュール式浮き構造体も知られている。モジュール式浮き構造体は、モジュール式浮き構造体を形成するように互いに結合された複数の別個の浮きモジュールであって、特にコンクリート製のモジュールを備えている。第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの接合部の領域において各浮きモジュール1つの壁の厚みの範囲内にキャビティを作製することにより、異なる浮きモジュール同士の密着を確実にする方法が知られている。次いで、第1の既知の浮きモジュールの第1キャビティおよび第2の既知の浮きモジュールにより形成された空洞部を、コンクリート等の材料、特に、固化時に既知のモジュール式浮き構造体の第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの密着を確実にする液体材料で充填する。このような既知のモジュール式浮き構造体は、欠点があり、完全に満足のいくものではない。実際に、キャビティは壁の厚みの範囲内に作製されるため、空洞部内に打設されたコンクリートの厚さは、壁の厚さのほんの一部に等しいのみである。したがって、第1モジュールと第2モジュールとを結合するとき、壁の厚さのごく一部しか第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールのアセンブリの機械的強度を提供しない。これにより、既知の浮き構造体の第1の既知の浮きモジュールと第2の既知の浮きモジュールとの結合領域において、特に静的、動的、流体力学的な疲労強度および気密性の点で構造的脆弱性が生じる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、上述の全ての欠点に対応可能である浮き構造体を提案することであり、更には他の利点を提供することである。したがって、本発明の目的は、2つの浮きモジュールを備えるモジュール式浮き構造体を製造することである。2つの浮きモジュールは、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間の空洞部に打設された材料によって互いに組み立てられるとともに結合される。空洞部が浮き構造体の浮きモジュールの壁の厚さに等しい厚さを有していることにより、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証されるとともに、浮きモジュールの標準的な部分(standard section)と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体が得られる。
【0005】
第1態様によれば、本発明は、これを、第1長手方向端部と第2長手方向端部との間で延びる複数の壁を備える浮きモジュールであって、前記浮きモジュールは、複数の前記壁の各壁に接続して、これらの壁とともに前記浮きモジュールの内部容積を規定する第1隔壁および第2隔壁を備える浮きモジュールにおいて、前記浮きモジュールは、前記壁の外面から表れる少なくとも1つの延長部を備え、前記延長部は、前記第1長手方向端部または前記第2長手方向端部から突出して長手方向に延び、前記延長部および当該延長部が表れる前記壁は、材料的に一体である浮きモジュールによって、達成する。
【0006】
壁は、主として長手方向軸において延びる。浮きモジュールを浮き構造体において施行するとき、長手方向軸は水平になるように設計される。第1長手方向端部および第2長手方向端部とは、壁の長手方向端部を指すものであり、浮きモジュールの長手方向端部を指すものではない。
【0007】
これに対し、第1隔壁および第2隔壁は、長手方向軸に対して横手方向に垂直な鉛直面内に延びる。
【0008】
壁および隔壁は、内部容積を規定する。これにより、浮きモジュールは浮くことができる。実際に、内部容積は、完全に閉鎖されている、またはほとんど完全に閉鎖されている。本例において、浮きモジュールは、1つの壁または1つの隔壁に設けられた開口、特に技術開口を有する。したがって、浮きモジュールを海、大洋、港等の水体(body of water)上に施行する場合、浮きモジュールは、内部容積の内側に水が浸透することを防止または低減するように設計されている。より具体的には、浮きモジュールの内部容積は、1未満の比重、すなわち水の比重より小さい比重を有する材料で満たされるように設計される。前記材料は、例えば、空気または発泡体、例えばポリウレタン、ポリエチレンまたはポリスチレン等の発泡体であり得る。これにより、浮きモジュールは1未満の全体比重を有するため、浮きモジュールが水上で浮くことが保証される。
【0009】
各壁は、内面と、内面に対して壁の反対側に配置された外面と、を備え、壁の内面は、内部容積の方向に配向される。したがって、壁の厚さは、壁の内面と壁の外面との間で測定される。
【0010】
したがって、延長部は、壁の外面から表れる。延長部は、同様に壁の1つの長手方向端部から突出して長手方向に延びる。延長部、および延長部が表れる壁は、一体材料から構成される。換言すれば、延長部、および延長部が表れる壁は同一材料から構成され、それらは材料の分離を一切有さない。
【0011】
本発明によるこの構成により、本発明の第1態様による少なくとも1つの浮きモジュールを備えるモジュール式浮き構造体を実現することができる。前記浮き構造体は、組み立てられた浮きモジュール同士の全体的な機械的連続性を有するとともに、既知のモジュール式浮き構造体とは異なり、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能する。実際に、本発明による第1の浮きモジュールの延長部と延長部が表れる壁とは、第1キャビティを画定する。延長部は壁の外面から表れるとともに、壁の長手方向端部から突出して長手方向に延びるため、キャビティは、壁の内面により形成される長手方向および横手方向平面に対して垂直な鉛直方向軸に沿った第1寸法と称される寸法を有する。第1寸法は、壁の外面と内面との間で測定される壁の全体厚さを少なくとも表す。また、この第1寸法は、壁の外面と内面との間で垂直方向に測定された壁の厚さより大きくてもよい。したがって、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとを結合するプロセスにおいて、キャビティにより、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとを接続する材料を位置決めすることができ、次いで、材料はキャビティの第1寸法の全体を満たすことができる。したがって、この構成により、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得ることができる。キャビティは、壁と、壁の全体厚さを少なくとも表し得る第1寸法を有する延長部とにより画定される。
【0012】
一方で、延長部の機械的強度は、延長部と延長部が表れる壁との間の材料の連続性により保証される。
【0013】
本発明の第1態様による浮きモジュールは、有利には、以下の改善点のうちの少なくとも1つを含み、これらの改善点を単独でまたは組み合わせて形成する技術的特徴を利用することができる。
-前記壁の一方の長手方向端部の1つの縁部および前記延長部は、少なくとも部分的にキャビティを画定する。縁部とは、長手方向軸に沿って壁の端部に位置する面を指す。したがって、2つの浮きモジュールを結合することを目的として互いに対して配置すると、第1キャビティと称される第1の浮きモジュールのキャビティは、第2キャビティと称される第2の浮きモジュールのキャビティに対向し、第1キャビティと第2キャビティとは一体となって空洞部を形成する。この空洞部内に、コンクリート等の材料を注入することができ、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとを構造的に接続することが可能となる。
-前記キャビティの厚さは、前記延長部が表れる前記壁の厚さ以上である。ここで記載される厚さは、平行なラインに沿って測定される。換言すれば、延長部の内面は、壁の外面が内接する平面を越えた位置に位置する平面内において、浮きモジュールの外部環境に向かって延びる。
-前記壁の前記外面と、前記延長部の内面とは、同一平面内にある。壁の外面は、壁の内面に対して壁の反対側に配置される。延長部の内面は、キャビティに面して配向される。壁の外面と延長部の内面とは、平面の位置差が5%以内の場合に、同一平面内にあると理解される。平面の位置差は、壁の内面と壁の外面との間で測定された壁の厚さを基準として測定される。本特定の実施形態において、延長部の内面と壁の外面とは、同一平面内にある。延長部の内面と壁の内面により形成される長手方向および横手方向平面との間で測定される第1寸法は、壁の外面と壁の内面との間で測定される第2寸法に等しい。換言すれば、第2寸法は壁の厚さに対応する。
【0014】
したがって、キャビティの第1寸法が壁の厚さに等しい、または実質的に等しい構成により、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、特にキャビティの第1寸法が壁の第2寸法のほんの一部にしか相当しない既知の浮きモジュールに比較して、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得ることができる。実際に、本発明によれば、壁の外面から延びる延長部により、キャビティの第1寸法が壁の厚さに等しくなるようにキャビティを構成することができる。キャビティは、コンクリート等の接続材料で充填されるように設計される。この目的は、浮き構造体の第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとを結合することで、浮き構造体が第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性を確実に得ること、および浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得て、これに作用する機械的力、特に圧縮力に耐えて第1の浮きモジュールの第2の浮きモジュールへの結合を維持する力、または、浮き構造体が位置する水体の移動により生成される機械的力に耐えることである。
-延長部が、前記浮きモジュールの前記側壁のそれぞれに、および前記浮きモジュールの底壁に配置される。側壁とは、浮きモジュールが水体上に施行されたときに、主として長手鉛直方向平面内に延びる壁を指す。底壁とは、浮きモジュールが水体上に施行されたときに、主として長手横手方向平面内に延びる壁を指す。底壁は、浮きモジュールの底部のレベルに配置され、浮きモジュールが水体上に施行されたときに、特に水没するように設計される。これに対し、浮きモジュールの上部は、浮きモジュールが水体上に施行されたときに、浮上するように設計される。
【0015】
有利には、底壁が水線の下方で浮きモジュールの側壁同士を互いに結合し、浮きモジュールの上部に配置された上壁が浮きモジュールの側壁同士を互いに結合するため、側壁は部分的に沈むとともに部分的に浮上する。この構成により、特に水体上で互いに結合されることが意図された第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間に位置する容積部を狭くすることができる一方、特に第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとを結合するために必要な種々のステップを実施しなければならない技術者が、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間に位置する容積部に、特に浮きモジュールの上部の領域においてアクセスすることができる。特に上壁は延長部を有しないため、技術者がアクセスできる通路が形成される。
-延長部は、長手方向軸に垂直な横手方向に沿って、壁の厚さ全体に亘って延びる。
-有利には、第1壁に配置された延長部は、第1壁に直接隣接する第2壁に配置された延長部に、一体材料によって結合される。この構成により、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体、および第1壁に配置された延長部と第2壁に配置された延長部との緊密な結合を得ることができる。
-前記壁は、前記第1長手方向端部の領域に配置された第1延長部と、前記第2長手方向端部の領域に配置された第2延長部と、を備える。壁とは、特に浮きモジュールの単一の壁、または同様に浮きモジュールの各壁、または同様に浮きモジュールの側壁および/または底壁の全てを指す。この構成により、本発明の第1態様による第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの接続を単純にすることができる。第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとは、次いでそれら各々の延長部の領域において互いに結合される。より具体的および有利には、第1の浮きモジュールに配置された第1延長部は、第2の浮きモジュールに配置された第2延長部に接続されるように設計される。
-複数の前記壁、前記第1隔壁、前記第2隔壁、および前記延長部は、一体材料から形成され、前記材料はコンクリートである。換言すれば、浮きモジュールの全体的なバックボーンはコンクリートから形成される。この構成により、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能して機械的力、特に機械的圧縮力に耐えるモジュール式浮き構造体を得ることができる。
【0016】
さらに、この構成により、液状コンクリートが注入された型枠を使用して形成され得る浮きモジュールの製作を単純にすることができる。有利には、コンクリートは補強される。すなわち、少なくとも1つの金属補強体がこれを通過することにより、浮きモジュールの機械的力、特に牽引力に対する強度が向上する。有利には、コンクリートは予め圧縮応力を加えられる(プレストレスされる)。すなわち、プレストレス・ケーブル(prestressing cable)がコンクリートを通過して延び、牽引力がプレストレス・ケーブルに加えられることにより、浮きモジュールに対応する圧縮力を加えることができ、浮きモジュールを形成するコンクリートは圧縮力を受ける。コンクリートは、圧縮力に対して高い耐性を有するが牽引力に対してほとんど耐性がない。
-金属補強体が、1つの壁の内部で延びるとともに前記キャビティ内に表れる。したがって、金属補強体は、長手方向軸に沿って延びる。換言すれば、金属補強体は、壁の厚みの範囲内に、すなわち、壁の内面と外面との間に配置される。金属補強体は、それがキャビティに到達したとき、すなわち、金属補強体が壁の長手方向端部の縁部まで長手方向に延びているとき、または金属補強体がキャビティの内部で延びているとき、キャビティ内に表れることが理解される。金属補強体は、浮きモジュールの機械的力、特に牽引力に対する耐性を向上させる。一方で、第1の浮きモジュールの金属補強体は、第2の浮きモジュールの金属補強体に連結されるように設計されている。この目的は、第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールにより形成された浮き構造体の機械的力、特に牽引力に耐えるように、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性を保証するとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得ることである。
【0017】
有利には、第1の浮きモジュールの金属補強体と第2の浮きモジュールの金属補強体との連結により、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとを結合する際に、第1の浮きモジュールの第2の浮きモジュールに対する相対位置を確定させることができる。有利には、前述の特徴と併せて、浮きモジュールのバックボーン(backbone)をコンクリートから構成することで、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証されるとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能して機械的圧縮力に耐えるモジュール式浮き構造体が得られ、かつ金属補強体により機械的牽引力に対する耐性が確保される。
-浮きモジュールは、1つの壁の内部で延びるとともに前記キャビティ内に表れるプレストレス・シースを備える。したがって、プレストレス・シースは、長手方向軸に沿って延びる。換言すれば、プレストレス・シースは、壁の厚みの範囲内に、すなわち、壁の内面と外面との間に配置される。プレストレス・シースは、それがキャビティに到達したとき、すなわち、プレストレス・シースが壁の長手方向端部の縁部まで長手方向に延びているとき、またはプレストレス・シースがキャビティの内部で延びているとき、キャビティ内に表れることが理解される。プレストレス・シースは、複数のストランド(strand)により形成されたプレストレス・ケーブルを受容するように設計される。プレストレス・ケーブルは、プレストレス・シースの内部に格納される。より具体的には、プレストレス・シースは、複数の金属ストランドから形成された金属プレストレス・ケーブルを受容するように設計され、好適には金属ストランドは捩じられている。したがって、同一の整列軸上に整列した複数の浮きモジュールを互いに結合させる際、プレストレス・ケーブルが各浮きモジュールのプレストレス・シースに挿入される。第1の浮きモジュールの各プレストレス・シースは、第2の隣接する浮きモジュールのプレストレス・シースと整列するように適合されている。したがって、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとを互いに結合するとき、プレストレス・ケーブルは、第1の浮きモジュールのキャビティおよび第2の浮きモジュールのキャビティを通過して延びる。次いで、整列軸上に整列した浮きモジュールの集合体に圧縮力を及ぼすように、プレストレス・ケーブルに張力をかける。このように張力をかけることにより、コンクリート製の各浮きモジュールが圧縮力を受けることが可能になる。コンクリートは、圧縮力に対し高い耐性を示す。その一方で、浮きモジュールは、潜在的にほんのわずかしか牽引力を受けない。コンクリートは、牽引力に対してほとんど耐性を示さない。プレストレス・ケーブルが第1の浮きモジュールのキャビティおよび第2の浮きモジュールのキャビティを通過して延びる構成により、プレストレス・ケーブルにより加えられる圧縮力を第1の浮きモジュールのキャビティおよび第2の浮きモジュールのキャビティの面に確実に及ぼすことができる。
【0018】
換言すれば、プレストレス・ケーブルにより加えられる圧縮力は、圧縮力が加えられる表面に対して中心からずれていない。同様にこの構成により、特に浮き構造体が同一軸に沿って結合された少なくとも3つの浮きモジュールを備える特定の実施形態において、プレストレス・ケーブルによりこれら全ての浮きモジュールを互いに結合し、次いで、圧縮力をプレストレス・ケーブルによって前記浮きモジュールの全てに及ぼすことができる。これにより、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証されるとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得ることができる。
-好適には、プレストレス・ケーブルは、金属補強体の直径より大きい直径を有する。
-有利には、浮きモジュールは、5メートル乃至100メートルの長手方向寸法、または任意の所望の長さを有する。本発明は、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性を保証するとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得るように利用され得る。浮きモジュールの長手方向寸法は、浮きモジュールの第1長手方向終端部と第2長手方向終端部との間で測定される。第1長手方向終端部は、壁から突出して長手方向に延びる第1延長部の第1端部の領域に配置され、第2長手方向終端部は、第1終端部に対して長手方向軸に沿って浮きモジュールの反対側に配置される。第2終端部は、特に、第1端部に対して長手方向軸に沿って壁の反対側に配置された第2延長部の第2端部により形成され得る。換言すれば、浮きモジュールは、第1長手方向終端部と第2長手方向終端部との間において長手方向に延びている。この構成により、既存の手段により簡単な態様で建設可能且つ輸送可能でありながら、大型の浮きモジュールを作製することができる。
-浮きモジュールの複数の壁は、3つ乃至6つの壁、特に4つの壁である。
-好適には、浮きモジュールは、まっすぐな歩道の形状を有し得る。あるいは、浮きモジュールは、L字形状を有し得る。これにより、浮きモジュールの壁の領域に角度を形成することができる。好適には、前記角度は、略90°プラスマイナス10°である。これにより、全体として矩形形状を有する浮き構造体を作製することができ、前記浮きモジュールは、浮き構造体の1つの隅部を形成する。あるいは、浮きモジュールは任意の他の形状を有し得る。
-以下に説明する浮きモジュールは、延長部と一体化されたシール手段を備え得る。特に、このシール手段は、延長部を画定する1つの端部に配置され得る。この端部は、浮きモジュールの長手方向終端部を形成する。
【0019】
第2態様によれば、本発明は、また、本発明の第1態様による少なくとも1つの浮きモジュールを備えた浮き構造体に関する。
【0020】
本発明の第2態様によるこの構成によって、特に、橋、石油掘削プラットフォーム、港、埠頭、再生可能エネルギー用の浮桟橋、原子力構造体、人工島等の浮き構造体、または任意の他のタイプの浮き構造体を形成することができる。より具体的には、この構成により、いわゆるモジュール式浮き構造体、すなわち、互いに結合された複数の別個の浮きモジュールから形成されるものの建設が可能となる。実際に、単一の大型構造要素から形成されるモノリシックな浮き構造体の建設に比較して、大型のモジュール式浮き構造体の建設は単純化されている。実際に、モノリシックな浮き構造体の建設には、例えば、製作場所から目的地まで輸送するのに適合した特別なインフラや輸送手段が必要であるのに対し、モジュール式浮き構造体の場合には、前記モジュール式浮き構造体を形成する浮きモジュールは、モジュール式浮き構造体のサイズより小さいサイズを個々に有している。さらに、浮きモジュールを、モジュール式浮き構造体の輸送先で直接モジュール式構造体を形成するように互いに結合することもできるため、浮き構造体に対する輸送上の制約が排除される。一方で、本発明の第1態様による浮きモジュールを使用することにより、既知のモジュール式浮き構造体と異なり、本発明は、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性を保証し得るとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得ることを可能にする。
【0021】
本発明の第2態様による浮き構造体は、有利には、以下の改善点のうちの少なくとも1つを含み、これらの改善点を単独でまたは組み合わせて形成する技術的特徴を利用することができる。
-有利には、浮き構造体は、複数の浮きモジュールを備え、複数の前記浮きモジュールのうちの全ての浮きモジュールが、本発明の第1態様による。あるいは、複数の前記浮きモジュールのうちの一部の浮きモジュールのみが、本発明の第1態様による。
-シール手段が、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間に配置され、前記シール手段は、前記第1の浮きモジュールの延長部と前記第2の浮きモジュールの延長部との間に挿入される。これは、浮きモジュールに関して上記したシール手段であり得る。有利には、シール手段は、第1の浮きモジュールの側壁および/または底壁と、第2の浮きモジュールの側壁および/または底壁との間に挿入される。シール手段により、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの緊密な接続が保証され得る。したがって、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとを互いに結合すると、一定の弾性を有するシール手段が押しつぶされて、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間の界面の気密性が確保される。
【0022】
有利には、シール手段は、第1の浮きモジュールまたは第2の浮きモジュールの一方または他方の延長部と一体化される。好適には、シール手段は、ガスケット、特にゴムまたはプラスチック製のガスケットである。
-前記第1の浮きモジュールのキャビティおよび前記第2の浮きモジュールのキャビティにより画定された空洞部が、コンクリートで充填される。この構成により、浮き構造体の第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとが互いに結合し密着することが可能となる。より具体的および有利には、この構成により、コンクリートを空洞部に打設することによって第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとが互いに結合されたモノリシックな集合体が得られる。これにより、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間の材料の連続性を実現することができる。有利には、第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールは、コンクリートから構成される。換言すれば、空洞部に存在する材料は、第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールを形成する材料と同一である。したがって、この構成により、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能して浮き構造体の機械的力、特に圧縮力に耐えるモジュール式浮き構造体を得ることができる。空洞部に打設されたコンクリートにより、第1の浮きモジュールの1つの壁と第2の浮きモジュールの1つの壁との間における機械的力の伝達が保証されることで、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間において力、特に圧縮力が確実に伝わる。
-前記第1の浮きモジュールの金属補強体と前記第2の浮きモジュールの金属補強体との連続性、および/または前記第1の浮きモジュールのプレストレス・シースと前記第2の浮きモジュールのプレストレス・シースとの連続性が、前記空洞部内で実現される。第1の浮きモジュールの金属補強体と第2の浮きモジュールの金属補強体との連続性は、特にカップラ(coupler)により実現される。これにより、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間において機械的力、特に牽引力が伝わり得る。
【0023】
第1の浮きモジュールのプレストレス・シースと第2の浮きモジュールのプレストレス・シースとの連続性は、特に中空スリーブにより実現される。これにより、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間にプレストレス・ケーブルを敷設することができるため、プレストレス・ケーブルに加えられた牽引力により及ぼされる圧縮力を、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間で伝達することができる。したがって、この構成により、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間の材料、特に強化および/またはプレストレスト・コンクリートの連続性が保証され得ることにより、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体が形成される。このため、モジュール式でないモノリシックな構造体のように機能する浮き構造体は、浮き構造体の寿命の種々の段階において、これに作用する静的および動的な力、流体力、疲労現象に、国際規制に準拠して耐えることができる。
-前記第1の浮きモジュールの前記壁の厚さは、前記第2の浮きモジュールの前記壁の厚さに等しく、前記第1の浮きモジュールの前記壁の前記厚さおよび前記第2の浮きモジュールの前記壁の前記厚さは、前記空洞部の厚さ以下である。各壁の厚さは、当該壁の外面と内面との間で規定される。空洞部の厚さは、第1キャビティの第1寸法、ならびに第2キャビティの第1寸法に対応する。2つの厚さは、空洞部の厚さを基準として厚さの差が5%以下の場合、互いに等しいことが理解される。有利には、第1の浮きモジュールの壁の外面と第2の浮きモジュールの壁の外面とは、同一平面内にある。一実施形態において、第1の浮きモジュールから表れる延長部の内面と、第2の浮きモジュールから表れる延長部の内面とは、同一平面内にある。前記平面は、有利には、第1の浮きモジュールの壁の外面および第2の浮きモジュールの壁により形成される平面である。同様に、第1の浮きモジュールの壁の内面と、第2の浮きモジュールの壁の内面とは、同一平面内にある。したがって、この構成により、空洞部の領域において、第1の浮きモジュールの壁の厚さと第2の浮きモジュールの壁との完全な連続性を得ることができる。空洞部は、特にコンクリートで充填されることが意図される。したがって、この構成により、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得ることができる。空洞部の厚さは、第1の浮きモジュールの壁の全体厚さおよび第2の浮きモジュールの全体厚さを示す。
-浮き構造体は、特に、橋、石油掘削プラットフォーム、港、埠頭、再生可能エネルギー用の浮桟橋、原子力構造体、人工島等の浮き構造体、または任意の他のタイプの浮き構造体であり得る。
【0024】
第3態様によれば、本発明は、本発明の第2態様による浮き構造体を組み立てるための方法に関し、前記組立方法は、前記第1の浮きモジュールを前記第2の浮きモジュールに対して位置合わせするステップと、前記第1の浮きモジュールを前記第2の浮きモジュールに取り外し可能に連結するステップと、補強体、プレストレス・シース、およびプレストレス・ケーブルを連結するステップと、コンクリートを前記空洞部内に打設するステップと、を含む。
【0025】
第1の浮きモジュールを第2の浮きモジュールに対して位置合わせするステップにより、第1キャビティを第2キャビティに対して配置することができる。したがって、第1の浮きモジュールの長手方向終端部が、第2の浮きモジュールの長手方向終端部に対向して配置される。換言すれば、第1の浮きモジュールを第2の浮きモジュールに対して位置合わせするステップにより、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとを同一の長手方向軸線に位置決めすることができる。次いで、取り外し可能に連結するステップを可能とするように、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとが、互いに近づけられる。
【0026】
取り外し可能に連結するステップは、組立プロセスにおいて、特に、組立プロセスが水体上で直接実施されることで第1の浮きモジュールの第2の浮きモジュールに対する移動が生じ得る場合に、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとを確実に位置決めするように接続フレームを利用する。接続フレームは、浮きモジュールの周縁に配置される。接続フレームは、取り外し可能な態様において、第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールの両方に結合される。したがって、本発明の第3態様による組立プロセスが終了すると、接続フレームは取り外され得る。一実施形態において、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとを互いに近づける前に、接続フレームを第1の浮きモジュールに固定する。あるいは、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとを近づける作業の完了後に、接続フレームを第1の浮きモジュールに、次いで第2の浮きモジュールに固定する。一方で、取り外し可能に連結するステップにより、シール手段が第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間の界面の気密性を確保することができる。
【0027】
注入工程において、液状のコンクリートを、第1キャビティおよび第2キャビティにより形成された空洞部に注入する。したがって、固化後のコンクリートは、圧縮力に対する機械的耐性、ならびに第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの密着を保証する。第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとは、一体となってモノリシックな集合体を形成する。
【0028】
本発明の第3態様による組立方法は、有利には、以下の改善点のうちの少なくとも1つを含み、これらの改善点を単独でまたは組み合わせて形成する技術的特徴を利用することができる。
-前記組立方法は、前記隔壁と前記第1の浮きモジュールの前記延長部と前記第2の浮きモジュールの前記延長部とにより画定されたスペースを空にするステップを含む。スペースは、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間に位置する。この構成により、特に、水体上で組立方法を実施することが可能になる。この場合、連結ステップの前であって、シール手段がまだ第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間の界面の気密性を確保していないとき、水がスペースに侵入し得る。したがって、空にするステップにより、スペース内に存在する水、特に第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間に配置された空洞部内の水を除去することができる。
【0029】
有利には、空にするステップは、取り外し可能に連結するステップの直後に、すなわち、シール手段が第1浮き浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間の界面の気密性を確保した後に実施される。
-前記組立方法は、前記第1の浮きモジュールの金属補強体と、前記第2の浮きモジュールの金属補強体とを機械的に接続するステップを含む。機械的接続ステップは、コンクリート注入ステップの前に実施される。実際に、補強体は壁の厚みの範囲内に配置されてキャビティ内に表れているため、キャビティをコンクリートで充填する前に、機械的接続ステップを始める必要がある。有利には、機械的接続ステップは、取り外し可能に連結するステップの後、または、空にするステップが存在する場合にはその後に実施される。これにより、機械的連結ステップを容易とすることができる。
-組立方法は、第1の浮きモジュールのプレストレス・シースと第2の浮きモジュールのプレストレス・シースとを機械的に接続するステップを含む。機械的接続ステップは、コンクリート注入ステップの前に行われる。実際に、プレストレス・シースは壁の厚みの範囲内に配置されてキャビティ内に表れているため、キャビティをコンクリートで充填する前に、機械的接続ステップを始める必要がある。有利には、機械的接続ステップは、取り外し可能に連結するステップの後、または、空にするステップが存在する場合にはその後に実施される。これにより、機械的連結ステップを容易とすることができる。
-前記組立方法は、コンクリートを打設する前記ステップの後に、少なくとも1つのプレストレス・ケーブルを、前記第1の浮きモジュール前記プレストレス・シースおよび前記第2の浮きモジュールの前記プレストレス・シースに敷設し、次いで牽引力が前記プレストレス・ケーブルに加えられるステップを含む。互いに結合されることで複数の浮きモジュールを形成するように、少なくとも2つ、好適には3つの浮きモジュールが同一軸上に整列する一実施形態において、プレストレス・ケーブルは、複数の浮きモジュールの浮きモジュールのそれぞれのプレストレス・シースに敷設され、次いで牽引力がプレストレス・ケーブルに加えられる。プレストレス・ケーブルに加えられた牽引力により、プレストレス・ケーブルが敷設された浮きモジュールに対応する圧縮力が加えられることで、複数の浮きモジュールのうちの浮きモジュールが互いに確実に保持され得る。一方で、プレストレス・ケーブルにより及ぼされる圧縮力により、壁および/または空洞部に収容されたコンクリートは、機械的牽引力ではなく機械的圧縮力を受けることが保証される。コンクリートは、機械的圧縮力に対し高い耐性を有するが、機械的牽引力に対してはほとんど耐性がない。
【0030】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、以下の説明を読む一方、限定ではなく情報伝達を目的として添付の概略図面を参照してなされる複数の例示的実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の第1態様による浮きモジュールの例示的実施形態の部分断面図である。
図2図2は、図1に示す浮きモジュールの斜視図である。
図3図3は、図1および図2に示す浮きモジュールの第1長手方向終端部の領域の詳細な断面図である。
図4図4は、互いに結合されて本発明の第2態様による浮き構造体を形成するように設計された第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールの例示的実施形態の部分断面図である。
図5図5は、互いに結合されて本発明の第2態様による浮き構造体を形成するように設計された第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールの例示的実施形態の部分斜視図である。
図6図6は、組立プロセス中の第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールの例示的な実施形態の部分図である。
図7図7は、図6に示す第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールの部分断面図である。
図8図8は、図6に示す第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールの部分斜視図である。
図9図9は、本発明の第2態様による浮き構造体の例示的実施形態の部分断面図である。
図10図10は、本発明の第2態様による浮き構造体の例示的実施形態の部分斜視図である。
図11a図11aは、浮き構造体を形成するように設計された第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールの組立の第1モードを示す図。
図11b図11bは、浮き構造体を形成するように設計された第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールの組立の第2モードを示す図。
図12a】本発明の第2態様による浮き構造体の例示的実施形態を示す図。
図12b】本発明の第2態様による浮き構造体の例示的実施形態を示す図。
図12c】本発明の第2態様による浮き構造体の例示的実施形態を示す図。
図12d】本発明の第2態様による浮き構造体の例示的実施形態を示す図。
図12e】本発明の第2態様による浮き構造体の例示的実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の特徴、変形例および種々の実施形態は、それらが両立しないか相互に排他的でない限り、種々の組み合わせにおいて互いに関連付けられ得る。特に、以下に記載の特徴の1つの選択肢のみを記載の他の特徴から別個に含む本発明の変形が、この特徴の選択肢が技術的利点を提供するか、本発明を先行技術に対して区別するのに十分である場合に想定され得る。
【0033】
特に、記載された全ての変形例および全ての実施形態は、技術的観点から組み合わせが妨げられない場合、互いに組み合わせられ得る。
【0034】
図1は、本発明の第1態様による浮きモジュールの例示的実施形態の部分断面図である。したがって、浮きモジュール1は、第1終端部26と第2終端部28との間で主として長手方向軸Xに沿って延びている。同様に、図1に示すように、浮きモジュールは、長手方向軸に対して垂直な鉛直方向軸Zに沿って延び、長手方向軸Xおよび鉛直方向軸Zは、平面Dを形成している。したがって、図1は、浮きモジュール1の側断面図である。最後に、浮きモジュール1は、平面Dに対して垂直な横手方向軸Yに沿って延びている。
【0035】
浮きモジュール1は、複数の壁を備え、各壁2は、第1長手方向端部4と第2長手方向端部6との間で長手方向軸Xに沿って延びている。壁2は、第1長手方向端部4および第2長手方向端部6にそれぞれ近接して配置された第1隔壁8および第2隔壁10により互いに結合されている。したがって、複数の壁と第1隔壁8と第2隔壁10とは、実質的に閉鎖した内部容積12を規定している。内部容積12は、浮きモジュール1が確実に浮くように、水の比重より小さい比重を有する材料で充填されるように設計されている。したがって、浮きモジュール1の第1部分41は水没している、すなわち、水線43の下方に位置し、第1部分41に対して鉛直方向軸Zに沿って浮きモジュールの反対側に配置された第2部分42は、浮上している、すなわち、水線の上方において大気中に位置している。
【0036】
図示の実施形態において、第1隔壁8と第2隔壁10の間で主として長手方向軸に沿って延びる中間壁2’が、内部容積12を横断している。これにより、内部容積12は、第1チャンバ13および第2チャンバ15を形成している。中間壁2’により、浮きモジュール1の構造が補強され得る。
【0037】
したがって、各壁2は、内面17と、内面に対して壁2の反対側に配置された外面16と、を備え、前記内面17は、内部容積12に面して配向されている。
【0038】
複数の金属補強体22が、浮きモジュールを貫通して長手方向に延びている。各金属補強体22は、第2の浮きモジュールの金属補強体22に接続されるように設計されている。したがって、金属補強体22により、複数の浮きモジュールを互いに結合することができる。一方で、特に浮きモジュールの壁2、第1隔壁8、および第2隔壁10が、機械的圧縮力に対して高い耐性を有するが機械的牽引力に対してほとんど耐性がないコンクリート等の材料から構成されている場合、金属補強体22により、浮きモジュール1および浮き構造体の機械的力、具体的には機械的牽引力に対する耐性が確保される。図示の例示的実施形態において、金属補強体22は中間壁2’の内部を延びていることに留意されたい。
【0039】
同様に、浮きモジュール1は、浮きモジュール1を貫通して長手方向に延びる複数のプレストレス・シース24を備えている。各プレストレス・シース24は、第2の浮きモジュールのプレストレス・シース24に接続されるように設計されている。各プレストレス・シース24は、全ての浮きモジュールが互いに結合されて同一軸に沿って整列した後、プレストレス・シース24を貫通するプレストレス・ケーブルを受容するように構成されている。プレストレス・ケーブルが同一軸上で整列したそれぞれの浮きモジュールのプレストレス・シースに敷設されると、プレストレス・ケーブルに牽引力が加えられ、これにより前記浮きモジュールに対応する圧縮力を及ぼすことが可能になる。図示の例示的実施形態において、プレストレス・シース24は、各壁2の内部で延びており、前記プレストレス・シースは、内面17と外面16との間において、壁を構成する材料を貫通して配置されている。金属補強体22および/またはプレストレス・シース24は、浮きモジュールの任意の場所、特に壁2の内部に配置され得るとともに、金属補強体22および/またはプレストレス・シース24は、主として長手方向に延びていることに留意されたい。
【0040】
延長部14が、第1長手方向端部4の外面16から表れている。別の延長部14も各壁2の第2長手方向端部6から同様に表れている。換言すれば、各壁2は、その第1長手方向端部4の領域における第1延長部29と、その第2長手方向端部6の領域における第2延長部31と、を備えている。したがって、延長部14と壁2とは一体材料から構成されている。
【0041】
各延長部14は、前記延長部14が延び出る壁2の長手方向端部4、6から突出して長手方向に延びている。すなわち、延長部14は、前記壁の第1長手方向端部4または第2長手方向端部6により形成された壁の縁部11を超えて長手方向に延びている。したがって、壁の延長部14および縁部11は、キャビティ18を画定している。キャビティ18は、コンクリート等の材料で充填されるように設計されており、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得ることができる。
【0042】
浮きモジュール1は、第1隔壁8から内部容積12の反対方向にそれぞれ長手方向に延びる2つの第1端部ストッパ33を備えている。同様に、浮きモジュール1は、第2隔壁10から内部容積12の反対方向にそれぞれ長手方向に延びる2つの第2端部ストッパ35を備えている。したがって、第1端部ストッパ33および第2端部ストッパ35は、浮きモジュール1に結合されることが予定される第2の浮きモジュールに存在する端部ストッパと接触するように設計されている。したがって、第1端部ストッパ33および第2端部ストッパ35により、浮き構造体を形成するべく浮きモジュール1を第2の浮きモジュールに近づけたとき、浮きモジュール1と第2の浮きモジュールとが互いに十分に接近した時が明確になり得る。
【0043】
図2は、図1に示した浮きモジュールの斜視図である。このように、浮きモジュール1は、横手方向軸Yおよび鉛直方向軸Zを含む平面E、いわゆる第2平面Eにおいても同様に延びていることがわかる。したがって、第2平面Eは、長手方向および鉛直方向の平面D、いわゆる第1平面Dに対して垂直である。
【0044】
浮きモジュール1は、上部50を備えている。上部50は、浮きモジュール1が水体上に造営されたときに鉛直方向上方に配向されるように設計されている。したがって、浮きモジュールは、鉛直方向軸Zに沿って上部50に対して浮きモジュール1の反対側に配置された下部51も備えている。下部は、浮きモジュール1が水体上に造営されたときに水没するように設計されている。
【0045】
上部50は、横手方向軸Yおよび長手方向軸Xを含む第3平面F内で主として延びる上壁52を備えている。同様に、下部51も第3平面F内で主として延びる下壁53を備えている。
【0046】
浮きモジュール1は、第1平面D内で主として延びる第1側壁54および第2側壁55を備えている。第1側壁54、第2側壁55、上壁52および下壁53は、第1側壁54と第2側壁55とが上壁52と下壁53とによって互いに結合されるとともに、上壁52と下壁53とが第1側壁54と第2側壁55とによって互いに結合されるように配置される。上壁52、下壁53、第1側壁54および第2側壁55は、特に、本発明の意味における壁2をそれぞれ形成し得る。
【0047】
図示の例示的実施形態において、下壁53、第1側壁54、および第2側壁55は、それぞれ延長部14を備えていることに留意されたい。一方で、上壁52は、延長部を有していない。したがって、上壁52は通路56を形成している。これにより、特に、技術者が、浮きモジュールと浮き構造体を形成するべく取付が予定される第2の浮きモジュールとの間に位置するスペースに容易にアクセスすることができる。
【0048】
図3は、図1および図2に示す浮きモジュール1の第1長手方向終端部26の領域の詳細な断面図である。
【0049】
したがって、壁の延長部14と縁部11とは、壁の外面16と延長部14の内面20とが同一平面P内にあるように配置されていることがわかるであろう。延長部の前記内面20は、キャビティ18に面するように配向されている。より具体的には、キャビティ18は、延長部の内面20と、延長部14が表れる壁2の内面17により形成される平面Pとの間で測定される第1寸法30の間に延びている。同様に、壁2は、その外面17とその内面16との間で測定される第2寸法32の間に延びている。したがって、第2寸法32は、壁2の厚さに対応し、第1寸法30は、第2寸法32と等しい。第1寸法30と第2寸法32との差が第2寸法32の5%以下である場合、延長部の内面と壁の外面とは、同一平面P内にあるとみなされることに留意されたい。
【0050】
本発明の一代替例において、第1寸法30が第2寸法32より大きいことが考えられる。このような場合、延長部はさらに周囲側に至り、2つの隣接する浮きモジュール間の材料の連続性を確保するのに必要な最小厚さが確保される。
【0051】
したがって、キャビティ18を充填するように設計された材料により、壁2の第2寸法全体の間において、換言すれば壁の厚さ全体の間において、壁2を長手方向に延長することができる。したがって、第1の浮きモジュールと称される浮きモジュール1を第2の浮きモジュールと称される隣接する浮きモジュールに結合して本発明の第2態様による浮き構造体を形成すると、この構造により、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、キャビティ、より具体的にはキャビティ18全体を充填する材料によって、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能して機械的力、特に圧縮力に、前記キャビティの第1寸法30の間において耐えるモジュール式浮き構造体を得ることができる。
【0052】
シール手段102が、第1延長部29の1つの長手方向端部111に配置されている。シール手段102は、具体的には、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間に位置するスペースの気密性を確保するように第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの間で圧縮されることが意図されたガスケットである。このシール手段102は、第1の浮きモジュールまたは第2の浮きモジュールと一体であってもよい。
【0053】
金属補強体22は、壁の第1長手方向端部4から突出して長手方向に延びている。同様に、プレストレス・シース24は、壁の第1長手方向端部4から突出して長手方向に、特に壁の内部で延びている。したがって、プレストレス・シースは、キャビティ18内に表れる。
【0054】
図4および図5は、それぞれ、浮き構造体を形成するべく互いに結合されるように設計された第1の浮きモジュール3および第2の浮きモジュール5の例示的実施形態の部分断面図、および部分斜視図である。したがって、図3および図4は、本発明の第3態様による組立プロセスにおける位置合わせのステップを示している。
【0055】
第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールを、長手方向軸Xおよび横手方向軸Yを含む第3平面Fにおける図4に示す。換言すれば、図4は、第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュールの上面断面図である。
【0056】
したがって、第1の浮きモジュールの第1長手方向終端部26は、第2の浮きモジュールの第2長手方向終端部28に対向して配置される。このように、第1キャビティ19と称される第1の浮きモジュールのキャビティは、第2キャビティ21と称される第1の浮きモジュールのキャビティに対面する。同様に、第1の浮きモジュール3の第1延長部29は、第2の浮きモジュール5の第2延長部31に対向して配置される。
【0057】
第1の浮きモジュール3の第1端部ストッパ33は、第2の浮きモジュール5の第2端部ストッパ35に対面する。第1端部ストッパ33は、第2の浮きモジュール5の第2端部ストッパ35から距離を置いている。
【0058】
一方で、第1の浮きモジュール3から表れる第1プレストレス・シースと称される各プレストレス・シース24は、これが結合される予定の第2の浮きモジュール5から表れる第2プレストレス・シースと称されるプレストレス・シース24と対面する。同様に、第1の浮きモジュール3から表れる第1金属補強体と称される各金属補強体22は、これが結合される予定の第2の浮きモジュール5から表れる第2金属補強体と称される金属補強体22に対面する。
【0059】
図6は、組立プロセスにおける第1の浮きモジュール3および第2の浮きモジュール5の例示的実施形態の部分図である。したがって、図6は、本発明の第3態様による組立プロセスにおける取り外し可能な連結のステップを示す。第1の浮きモジュール3および第2の浮きモジュール5を、第1長手方向および鉛直方向平面Dにおいて示す。したがって、図6は、第1の浮きモジュール3および第2の浮きモジュール5の側面図である。
【0060】
このように、接続フレーム110が、第1の浮きモジュール3の第2の浮きモジュール5に対する位置を確定させている。より具体的には、剛性を有する構造体、特に少なくとも部分的に金属である構造体により形成されたものである接続フレーム110が、1つの壁2に、より具体的には、第1の浮きモジュール3の壁の外面16に、および1つの壁に、より具体的には、第2の浮きモジュール5の壁の外面16に固定される。図示の例示的実施形態において、接続フレーム110は、第1の浮きモジュール3の上壁52、および第2の浮きモジュール5の上壁52に固定される。接続フレーム110の第2の浮きモジュール5に対する固定は、接続フレーム110の第1の浮きモジュール3に対する固定の前に実施してもよい。したがって、第2の浮きモジュール5を、第1の浮きモジュール3と同一平面となるように第1の浮きモジュール3に近づけることによって、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5とが十分に近接する。次いで、接続フレーム110を、第2の浮きモジュール5に固定することで、第1の浮きモジュール3に対する第2の浮きモジュール5の相対位置が確定される。あるいは、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5との近接の達成後に、接続フレーム110を、第1の浮きモジュール3および第2の浮きモジュール5に同時に、またはほとんど同時に固定してもよい。
【0061】
第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5との近接の達成後、第1の浮きモジュール3の第1長手方向端部26の領域に配置され、第1の浮きモジュール3の第1延長部29と第2の浮きモジュール5の第2延長部31との間に挿入されたシール手段102である前記シール手段102は、第1延長部29と第2延長部31との間で圧縮される。したがって、第1キャビティ19と第2キャビティ21とが、空洞部104を形成する。空洞部104は、第1延長部と第2延長部とにより横手方向に画定されるとともに、第1の浮きモジュール3の壁の縁部11と第2の浮きモジュール5の壁の縁部11とにより長手方向に画定される。さらに、シール手段102は、スペース106の気密性を同様に確保する。スペース106は、第1延長部29と第2延長部31とにより横手方向に画定されるとともに第1の浮きモジュール3の第1隔壁8と第2の浮きモジュール5の第2隔壁10とにより長手方向に画定される。
【0062】
したがって、空洞部104は、第1キャビティ19および第2キャビティ21の合計に対応し、スペース106は第1の浮きモジュール3および第2の浮きモジュール5の延長部14により鉛直方向に、且つ隔壁8、10により長手方向に画定された容積に対応することが理解されるであろう。
【0063】
第1の浮きモジュール3の上壁52および第2の浮きモジュール5の上壁52にはいずれも延長部がないため、それらはスペース106へのアクセスを可能にする通路56を形成する。通路56は、特に第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5とを互いに結合するその後のステップ、例えばスペース106を空にするステップ、または第1の浮きモジュール3の金属補強体と第2の浮きモジュール5の金属補強体とを機械的に接続するステップのためのものである。
【0064】
したがって、シール手段102は、特に第1の浮きモジュール3および第2の浮きモジュール5の側壁および下壁の領域におけるスペース106の気密性を確保するため、このスペース106を空にするステップを実施することができる。実際に、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5とは、水体上で組み立てられ、それらの各々は部分的に水没しているため、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5とを互いに近づける際に、水がスペース106の内部に存在する。したがって、スペース106を空にするステップにより、スペース106に存在する水を除去することができる。この目的は、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5とを互いに結合するさらなるステップを実施すること、または容易にすることである。
【0065】
第1の浮きモジュール3の第1端部ストッパ33は、第2の浮きモジュール5の第2端部ストッパ35に近づけられるが、第2の浮きモジュール5の第2端部ストッパ35から依然として離間している。これは、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュールとを、それらの組立を完了するためにさらに近づける必要があることを示す。
【0066】
図7および図8は、それぞれ、図6に示す第1の浮きモジュール3および第2の浮きモジュール5の断面図、および斜視図である。図7は、第3平面Fにおける第1の浮きモジュールおよび第2の浮きモジュール5を示す。したがって、図7は上面図である。より具体的には、図7および図8は、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5との機械的接続のステップを示す。理解しやすくするため、接続フレーム110は示されていない。図7は上面図、すなわち第1平面における図である。
【0067】
第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5とは、第1金属補強体と第2金属補強体との機械的接続ステップによって互いに結合される。第1金属補強体と第2金属補強体との機械的接続はカップラ34により提供され、これにより第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5とが互いに隣接した状態が確保される。さらに、第1金属補強体と第2金属補強体との接続により、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5との間での機械的力、特に牽引力の伝達が保証される。
【0068】
同様に、各第1プレストレス・シースは、中空スリーブ36により第2プレストレス・シースに接続されることによって、各プレストレス・シース24の内部の気密性が確保されるとともに、第1プレストレス・シースの内部と第2プレストレス・シースの内部との連通が可能となる。これにより、第1プレストレス・シースおよび第2プレストレス・シースにプレストレス・ケーブルを通すことが可能になる。
【0069】
また、機械的接続ステップにより、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5とが十分に近接していることを保証することができる。実際に、特にカップラ34を介した第1金属補強体と第2金属補強体との接続によって、第1の浮きモジュール3が第2の浮きモジュール5にさらに近づけられることにより、第1の浮きモジュール3の第1端部ストッパ33が第2の浮きモジュール5の第2端部ストッパ35に当接するようになる。したがって、第1端部ストッパ33および第2端部ストッパ35により、特に、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5とが、いつ第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5との間に挿入されたシール手段102の十分な圧縮を確保することでスペース106の気密性を保証するのに十分なほど近接したか、を特定することができる。
【0070】
機械的接続ステップ、すなわち、カップラ34による第1金属補強体と第2金属補強体との接続、ならびにスリーブ36による第1プレストレス・シースと第2プレストレス・シースとの接続は、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5とが水体上で組み立てられる場合、空にするステップを事前に実施すると容易になる。
【0071】
図7において、図示の実施形態では、第1の浮きモジュール3のキャビティの第1寸法30ならびに第2の浮きモジュール5のキャビティの第1寸法30に対応する空洞部104の厚さは、第1の浮きモジュール3の壁2の第2寸法32に等しいことがわかる。同様に、空洞部104の厚さは、第2の浮きモジュール5の壁の第3寸法32’に等しい。第3寸法32’は、第2の浮きモジュール5の壁2の外面16と内面17との間で測定される。したがって、この構造により、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得ることができる。したがって、浮き構造体は、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5との間において空洞部104を介して第2寸法32および第3寸法32’の全体の間における材料の連続性を有する。空洞部は、コンクリートで充填されるように設計され、空洞部104の厚さは、第2寸法32および第3寸法32’に等しい。一方で、空洞部は、鉛直方向軸Zに沿って、第1の浮きモジュールの壁2および第2の浮きモジュールの壁2と整列している。より具体的には、第1の浮きモジュール3の壁の外面16と、第2の浮きモジュール5の壁2の外面16とは、同一平面内に位置し、前記平面は、同様に第1の浮きモジュール3の第1延長部29の内面20、および第2の浮きモジュール5の第2延長部31の内面20の延長平面である。同様に、浮きモジュール3の壁の内面17と、第2の浮きモジュール5の壁2の内面17とは、同一平面内に位置する。この構造により、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5との間の浮き構造体による機械的力に耐えるように、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得ることができる。
【0072】
図9および図10は、それぞれ、本発明の第2態様による浮き構造体100の例示的実施形態の部分断面図および部分斜視図である。図9は、第3平面Fにおける浮き構造体100を示し、図9は上面図である。より具体的には、図示の浮き構造体100は、少なくとも図7および図8に示す第1の浮きモジュール3および第2の浮きモジュール5により形成されている。
【0073】
したがって、図7および図8に示すように、カップラ34およびスリーブ36が設置されて第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5との機械的接続が実現された後、特にコンクリートである材料が空洞部104に注入されることにより、第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5とがモノリシックな集合体を形成する。より具体的には、第1の浮きモジュール3の第1長手方向端部4が、空洞部104に注入されたコンクリートを介して第2の浮きモジュール5の第2長手方向端部6に接続する。したがって、第1キャビティ19および第2キャビティ21により形成される空洞部104は、第1寸法30の間において延びる。これにより、第1寸法30は壁2の厚さに対応する第2寸法32に等しいため、この構造により、空洞部104内に存在するコンクリートは、機械的力、特に圧縮力を伝達することができる。なぜならば、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、空洞部の第1寸法が壁の厚さのごく一部にしか相当しない既知の構成とは異なり、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得ることができるからである。
【0074】
したがって、空洞部104に表れるプレストレス・シース24は、空洞部に存在するコンクリートによって覆われることにも留意されたい。したがって、プレストレス・シース24の内部に挿入されたプレストレス・ケーブル25は、第1の浮きモジュール3の壁および第2の浮きモジュール5の壁の長手方向軸において前記壁の内部で延びている。これにより、特に、プレストレス・ケーブルが第1の浮きモジュールの壁および第2の浮きモジュールの壁の外面または内面上で長手方向に延びているためにプレストレス・ケーブルに及ぼされる牽引力によって加えられる圧縮力が中心からずれる既知の構成と比較して、プレストレス・ケーブルに及ぼされる牽引力によって加えられる圧縮力を、第1の浮きモジュール3の壁および第2の浮きモジュール5の壁についての中心に集中させることができる。
【0075】
したがって、壁のそれぞれにキャビティ18を画定する延長部14を有利に有する浮き構造体100は、機械的圧縮力に対する高い抵抗を呈する。これは、各キャビティ18に注入されたコンクリートにより保証される。このため、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得ることができる。一方で、第1の浮きモジュール3の各壁2は、第2の浮きモジュール5の壁2に、コンクリートからなる空洞部104であって、金属補強体22および/または内部にピンと張ったプレストレス・ケーブルが配置されるプレストレス・シース24が横断する空洞部104により結合される。このため、浮き構造体100は、特に浮き構造体100が配置された水体に対する波により引き起こされる動きを原因とする第1の浮きモジュール3と第2の浮きモジュール5との間に及ぼされる剪断および曲げ運動に対して高い抵抗を呈する。
【0076】
図11aおよび図11bは、それぞれ、浮き構造体100を形成するべく接続されるように設計された第1の浮きモジュール3および第2の浮きモジュール5の第1組立モードおよび第2組立モードをそれぞれ示す。図11aおよび図11bは、第1の浮きモジュール3、第2の浮きモジュール5、および浮き構造体100の第3平面Fにおける上面図である。
【0077】
より具体的には、図11aは、互いに類似しているとともに基本的に同一方向に延びる第1の浮きモジュール3および第2の浮きモジュール5により形成される基本的に矩形の浮き構造体100を示す。
【0078】
図11bは、角度57を有する浮き構造体100を示す。図示の例示的実施形態において、形成された角度57は直角である。すなわち、第1の浮きモジュール3の主延在軸と、浮き構造体100を形成するように第1の浮きモジュール3に取り付けられた第2の浮きモジュール5の主延在軸との間の角度を測定すると、値は90°に等しい。より具体的には、浮き構造体は、第1の浮きモジュール3および第2の浮きモジュール5により形成され、第1の浮きモジュール3は角度57を有し、第2の浮きモジュール5は実質的に直線的である。したがって、第1の浮きモジュール3は、第1の浮きモジュール3の主延在軸に対して垂直に延びる延在部58を備えている。第2の浮きモジュール5は、第1の浮きモジュール3の延在部58に結合されることにより、角度57を有する浮き構造体100を形成することができる。この構成により、浮き構造体の多様な形態を得ることができる。角度は、90°の値に限定されず、90°乃至180°の間の任意の値を取ることができる。180°の角度では、直線的な浮きモジュールが形成される。
【0079】
図12a乃至図12eは、本発明の第2態様による浮き構造体100の例示的実施形態を示す。より具体的には、図12a乃至図12eは、第3平面Fにおける本発明の第2態様による浮き構造体の可能な形状をそれぞれ示している。換言すれば、図12a乃至図12eは、これらの図面のそれぞれに示す浮き構造体100の上面図である。各浮き構造体100は、本発明の第1態様による複数の浮きモジュール1を特に備えている。
【0080】
図12a、図12b、図12c、図12dおよび図12eに示す浮き構造体は、それぞれ、正方形、長方形、正六角形、円形、およびおおむねV字形状を有する浮き構造体を形成している。浮き構造体100は、本発明の範囲を逸脱することなく他の任意の形状をとり得ることが理解される。
【0081】
当然ながら、本発明は上述の例に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの例に多くの構成を付加することができる。特に、本発明の種々の特徴、形状、変形例および実施形態は、それらが両立しないか相互に排他的でない限り、種々の組み合わせにおいて互いに関連付けられ得る。特に、上述の変形例および実施形態の全てを互いに組み合わせることができる。
【0082】
本明細書で説明したような本発明は、設定された目的を良好に達成し、第1の浮きモジュールと第2の浮きモジュールとの全体的な機械的連続性が保証され得るとともに、浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有するモノリシックな構造体のように機能するモジュール式浮き構造体を得ることを可能にする浮きモジュールを提案することができる。本発明に記載されない変形例は、本発明による浮きモジュールが、壁の外面から表れる延長部であって、壁の長手方向端部から突出して長手方向に延びる延長部を備え、延長部と延長部が表れる壁とが一体材料から構成される限り、本発明の範囲を逸脱することなく実施され得る。本発明は、水中で鉄筋コンクリートおよびプレストレスト・コンクリートから構成される2つの浮きモジュールを接続可能とすることで、互いに結合された2つの浮きモジュール間のコンクリート、補強体、およびプレストレスト鋼の全体的な連続性、および浮きモジュールの標準的な部分と同じ機械的強度を有することを保証する。それは、任意の形状を有するとともにモジュール式構成を有するコンクリート製のモノリシックな浮き構造体の製造に利用され得る。作製された接続は緊密であり、プロジェクトの寿命の種々の段階において、国際規制を理由として適用され得る静的および動的な力、流体力、疲労現象に耐えることができる。本発明は、原子力分野および他の分野において、橋、石油掘削プラットフォーム、港、埠頭、再生可能エネルギー用の浮桟橋の建設に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12a
図12b
図12c
図12d
図12e
【国際調査報告】